JP2017077982A - 防眩膜付きガラス基材、防眩膜付きガラス基材の製造方法および物品 - Google Patents

防眩膜付きガラス基材、防眩膜付きガラス基材の製造方法および物品 Download PDF

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Abstract

【課題】ヘーズが低く、かつ視感反射率が低い防眩膜付きガラス基材、その製造方法およびこれを備える物品の提供。
【解決手段】防眩膜付きガラス基材1は、ガラス基材3と防眩膜5とを備え、防眩膜5を構成するマトリックスの屈折率が1.44〜1.80であり、防眩膜5が複数の凸部を含み、前記複数の凸部によって表面にうねりが形成され、前記うねりが形成された表面に複数の孔が開口しており、所定に表面形状解析で求められるZ範囲が0.4〜7μm、孔面積率が20〜34%、平均孔直径が200〜600nmである。
【選択図】図1

Description

本発明は、防眩膜付きガラス基材、防眩膜付きガラス基材の製造方法および防眩膜付きガラス基材を備える物品に関する。
テレビ、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、携帯電話、車両等の各種機器に備え付けられた画像表示装置(液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等)においては、室内照明(蛍光灯等)、太陽光等の外光が表示面に映り込むと、反射像によって画像の視認性が低下する。
外光の映り込みを抑制する方法として、画像表示装置の表示面に防眩処理を施す方法がある。防眩処理は、表面に凹凸を形成する処理であり、形成された凹凸によって外光を拡散反射する効果(防眩効果)が得られる。外光が拡散反射されることで、反射像が不鮮明になり、外光が表示面に映り込むことによる視認性の低下が抑制される。防眩処理としては、たとえば、ガラス等の透明基材の表面をエッチングする処理、表面に凹凸のある防眩膜を形成する処理等がある。
前記の防眩効果は、一般に、凹凸が大きくなるほど高くなる傾向がある。しかし、凹凸が大きくなると、ヘーズが増大し、画像が白化してコントラストが低下し、それによって画像の視認性が低下する問題がある。凹凸を小さくしてヘーズを小さくすると、反射率が増大し、防眩効果が不充分になる。
低ヘーズと低反射率とを両立するために、たとえば、透明支持体上に、防眩膜と、少なくとも1層の低屈折率層とをこの順序で設ける方法(特許文献1〜3)、透明基材上に、電離放射線によって硬化して低屈折率のバインダマトリックスを形成する材料(フッ素系、シリコーン系等)と特定平均粒径の粒子とを含む塗液から防眩膜を形成する方法(特許文献4)等が提案されている。
一方、ガラス基体の少なくとも一面が、複数の凹凸を有する、表面のガラス部分が凹凸化されたガラス基体において、前記複数の凹凸を特定形状としたガラス基体が提案されている(特許文献5)。このガラス基体は、表面付近の屈折率がガラスよりも低く、特定形状を有することで、優れた反射防止効果を有するとされている。このガラス基体は、ガラス基体表面をフッ素化剤で処理することにより製造される。
特開2001−264508号公報 特開2001−343503号公報 特開2002−98804号公報 特開2010−78881号公報 国際公開第2012/141311号公報
特許文献1〜4の方法では、低ヘーズと低視感反射率とを両立する効果は充分ではない。たとえば2〜8%のヘーズと、1%以下の視感反射率とを両立することはできない。また、特許文献1〜3の方法では、防眩膜の上に低屈折率層を形成する必要があり、生産性が充分とはいえない。
特許文献5では、低ヘーズと低視感反射率とを両立させることについて検討されていない。また、特許文献5のガラス基体は、表面に凹凸があるため、ガラス基体の厚さによっては、強度が不足するおそれがある。また、フッ素化剤を使用すること、ガラス基体表面をフッ素化剤で処理する際に高温で加熱すること等が必要であり、生産性が充分とはいえない。
したがって、生産性の点では、ガラス基材上に防眩膜を設け、前記防眩膜のみで充分な低ヘーズと低視感反射率とを達成できることが望ましい。
本発明は、ヘーズが低く、かつ視感反射率が低い防眩膜付きガラス基材、その製造方法およびこれを備える物品の提供を目的とする。
本発明は、以下の態様を有する。
[1]ガラス基材と、前記ガラス基材上に形成された防眩膜とを備え、
前記防眩膜を構成するマトリックスの屈折率が1.44〜1.80であり、
前記防眩膜が複数の凸部を含み、前記複数の凸部によって表面にうねりが形成され、前記うねりが形成された表面に複数の孔が開口しており、
以下に規定されるZ範囲が0.4〜7μm、孔面積率が20〜34%、平均孔直径が200〜600nmであることを特徴とする、防眩膜付きガラス基材。
Z範囲:前記うねりが形成された表面の(101μm×135μm)〜(111μm×148μm)の領域をレーザ顕微鏡で測定して得られる表面形状のXYZデータにおいて、Z方向の最小値と最大値との差。
孔面積率:前記表面形状のXYZデータを、画像処理ソフトウェアSPIP(イメージメトロロジー社製)により形状解析することにより得られる「平面に複数の孔が散らばった形状イメージ」において、平面の総面積に対する前記複数の孔の合計面積の割合。
平均孔直径:前記平面に複数の孔が散らばった形状イメージにおいて、前記複数の孔それぞれの直径(真円換算)を平均した値。
[2]以下に規定される最大孔直径が13000nm以下である[1]に記載の防眩膜付きガラス基材。
最大孔直径:前記平面に複数の孔が散らばった形状イメージにおいて、前記複数の孔それぞれの直径(真円換算)のうちの最大値。
[3]ヘーズが0.1〜10%である[1]または[2]に記載の防眩膜付きガラス基材。
[4]前記防眩膜上に撥水撥油層をさらに備え、最も視認側に前記撥水撥油層が存在する[1]〜[3]のいずれかに記載の防眩膜付きガラス基材。
[5]前記ガラス基材が曲面を有する[1]〜[4]のいずれかに記載の防眩膜付きガラス基材。
[6]車載物品用である[1]〜[5]のいずれかに記載の防眩膜付きガラス基材。
[7]ガラス基材上に、防眩膜用塗布液を塗布して塗膜を形成する塗布工程と、前記塗膜を焼成して防眩膜を形成する焼成工程と、を含み、
前記防眩膜用塗布液が、450℃、60分間の焼成時の屈折率が1.44〜1.80であるベース成分(A)と、下式(b)で表される化合物およびその加水分解縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)と、液状媒体(C)とを含み、
前記焼成工程が、350℃以上で行われることを特徴とする、防眩膜付きガラス基材の製造方法。
3−pSi−Q−SiL3−p ・・・(b)
ここで、Qは、炭素原子間に−O−、−S−、−CO−および−NR’−(ただし、R’は水素原子または1価の炭化水素基である。)から選ばれる1つまたは2つ以上を組み合わせた基を有していてもよい2価の炭化水素基であり、Lは、加水分解性基であり、Rは、水素原子または1価の炭化水素基であり、pは、1〜3の整数である。
[8]前記塗布工程が、静電塗装法により行われる、[7]に記載の防眩膜付きガラス基材の製造方法。
[9][1]〜[6]のいずれかに記載の防眩膜付きガラス基材を備える物品。
本発明によれば、ヘーズが低く、かつ視感反射率が低い防眩膜付きガラス基材、その製造方法およびこれを備える物品を提供できる。
本発明の防眩膜付きガラス基材の一実施形態を模式的に示す模式図である。 図1に示す防眩膜付きガラス基材における防眩膜を模式的に示す部分断面図である。 図2に示す防眩膜の表面形状解析により得られる、なだらかな凹凸表面形状イメージである。 静電塗装装置の一例を示す概略図である。 図4の静電塗装装置が備える静電塗装ガン17の断面模式図である。 図5の静電塗装ガン17を前方から見た正面模式図である。 [実施例]の例1〜20における孔面積率と視感反射率との関係を示すグラフである。 [実施例]の例1〜20における孔面積率とヘーズとの関係を示すグラフである。 [実施例]の例1〜20における平均孔直径と視感反射率との関係を示すグラフである。 [実施例]の例1〜20における平均孔直径とヘーズとの関係を示すグラフである。 [実施例]の例5で得た防眩膜付きガラス基材における防眩膜を観察した走査型顕微鏡(SEM)像(右上:断面(倍率100000倍)、右下:斜め上方60度からの表面(倍率10000倍)、左下:上方からの表面(倍率50000倍)、左上:上方からの表面(倍率100000倍))である。 [実施例]の例9で得た防眩膜付きガラス基材における防眩膜を観察したSEM像(右上:断面(倍率100000倍)、右下:斜め上方60度からの表面(倍率10000倍)、左下:上方からの表面(倍率50000倍)、左上:上方からの表面(倍率100000倍))である。 [実施例]の例11で得た防眩膜付きガラス基材における防眩膜を観察したSEM像(右上:断面(倍率100000倍)、右下:斜め上方60度からの表面(倍率10000倍)、左下:上方からの表面(倍率50000倍)、左上:上方からの表面(倍率100000倍))である。
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「ベアリング高さ」は、レーザ顕微鏡で測定して得られる表面形状のXYZデータから求められる高さ分布ヒストグラムにて最も優勢な高さZの値(最頻値)である。XYZデータにおける高さZは、防眩膜付きガラス基材の表面(防眩膜が設けられている面)の最低点(Zの値が最小値をとる位置)を基準とした高さ(高さZを測定する位置から、ガラス基材の表面に平行な平面であって最低点を含む平面に下した垂線の長さ)であり、以下において特に基準を規定しない場合の表面形状における高さの意味も同様である。高さ分布ヒストグラムにおける各区間の幅(bin)は1000に設定した。
≪防眩膜付きガラス基材≫
図1は、本発明の防眩膜付きガラス基材の第一実施形態を示す断面模式図である。
この例の防眩膜付きガラス基材1は、ガラス基材3と、ガラス基材3上に形成された防眩膜5とを備える。
(ガラス基材)
ガラス基材3は、透明であることが好ましい。ガラス基材3における透明とは、400〜1100nmの波長領域の光を平均して80%以上透過することを意味する。
ガラス基材3を構成するガラスとしては、たとえばソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。
ガラス基材3は、フロート法、フュージョン法、ダウンドロー法等により成形された平滑なガラス板であってもよく、ロールアウト法等で形成された表面に凹凸を有する型板ガラスであってもよい。また、エッチングにより表面が凹凸化されたガラス基材であってもよく、コーティングにより凹凸が付与された基材であってもよい。
ガラス基材3の形状は、図示するような平坦な形状のみでなく、曲面を有する形状であってもよい。最近では、画像表示装置を備える各種機器(テレビ、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、カーナビゲーション等)において、画像表示装置の表示面が曲面とされたものが登場している。ガラス基材3が曲面を有する形状である防眩膜付きガラス基材1は、このような画像表示装置用として有用である。
ガラス基材3が曲面を有する場合、ガラス基材3の表面は、全体が曲面で構成されてもよく、曲面である部分と平坦である部分とから構成されてもよい。表面全体が曲面で構成される場合の例として、たとえば、ガラス基材の断面が円弧状である場合が挙げられる。
ガラス基材3が曲面を有する場合、該曲面の曲率半径(以下、「R」ともいう。)は、防眩膜付きガラス基材1の用途、ガラス基材3の種類等に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、25000mm以下であることが好ましく、10〜5000mmがより好ましく、50〜3000mmが特に好ましい。Rが前記の上限値以下であれば、平板に比較し、意匠性に優れる。Rが前記の下限値以上であれば、曲面表面へも均一に防眩膜を形成できる。
ガラス基材3の厚みは特に限定されない。たとえば厚み10mm以下のガラス板を使用できる。厚みが薄いほど光の吸収を低く抑えられるため、透過率向上を目的とする用途にとって好ましい。また、厚みが薄いほど防眩膜付きガラス基材1の軽量化に寄与する。
ガラス基材3は、強化ガラス板であることが好ましい。強化ガラス板は、強化処理が施されたガラス板である。強化処理により、ガラスの強度が向上し、たとえば強度を維持しながら板厚みを削減できる。
ただし本発明においては、強化ガラス板以外のガラス板も使用でき、防眩膜付きガラス基材1の用途等に応じて適宜設定できる。
強化処理としては、ガラス板表面に圧縮応力層を形成させる処理が一般的に知られている。ガラス板表面の圧縮応力層が、傷や衝撃に対するガラス板の強度を向上させる。ガラス板表面に圧縮応力層を形成させる手法としては、風冷強化法(物理強化法)と、化学強化法とが代表的である。
風冷強化法では、ガラスの軟化点温度付近(たとえば600〜700℃)まで加熱したガラス板表面を風冷等により急冷する。これにより、ガラス板の表面と内部との間に温度差が生じ、ガラス板表層に圧縮応力が生じる。
化学強化法では、ガラスの歪点温度以下の温度でガラス板を溶融塩に浸漬して、ガラス板表層のイオン(たとえばナトリウムイオン)を、より大きなイオン半径のイオン(たとえばカリウムイオン)へと交換する。これにより、ガラス板表層に圧縮応力が生じる。
ガラス板の厚みが薄く(たとえば2mm未満)なると、風冷強化法では、ガラス板内部と表層との間に温度差が生じにくいことから、ガラス板を充分に強化できないため、化学強化法が好ましく用いられる。
化学強化処理が施されるガラス板は、化学強化可能な組成である限り特に限定されず、種々の組成のものを使用でき、たとえばソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、ボレートガラス、リチウムアルミノシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、その他の各種ガラスが挙げられる。化学強化しやすい点では、ガラス組成として、酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを56〜75%、Alを1〜20%、NaOを8〜22%、KOを0〜10%、MgOを0〜14%、ZrOを0〜5%、CaOを0〜10%含有することが好ましい。これらの中では、アルミノシリケートガラスが好ましい。
化学強化処理が施されるガラス板の板厚みは、0.4〜3.0mmが好ましく、0.5〜2.5mmが特に好ましい。化学強化ガラス板の板厚みが前記範囲の上限値以下であれば、防眩膜付きガラス基材1が軽量で、前記範囲の下限値以上であれば、防眩膜付きガラス基材1が強度に優れる。
尚、化学強化される前後で板厚みに変化は無い。すなわち、化学強化処理が施されるガラス板の板厚みは、化学強化ガラス板(化学強化処理が施された後のガラス板)の板厚みである。
以上のガラスの物理強化処理及び化学強化処理は、ガラス板表面に防眩膜を形成する前に行ってもよく、形成した後に行ってもよい。
(防眩膜)
図2は、防眩膜5を模式的に示す部分断面図である。
防眩膜5は、複数の凸部5aを含む。この複数の凸部5aによって、防眩膜5の表面にうねり(凹凸)が形成されている。
また、防眩膜5の表面には複数の孔5bが開口している。孔5bは、防眩膜5の表面近傍にアリの巣状に形成されている。
防眩膜5においては、以下に規定されるZ範囲が0.4〜7μmであり、0.44〜6.9μmが好ましく、0.8〜3.1μmが特に好ましい。
Z範囲:前記うねりが形成された表面の観察領域をレーザ顕微鏡で測定して得られる表面形状のXYZデータにおいて、Z方向の最小値と最大値との差。
Z範囲は、うねりの形状を示す指標である。Z範囲が前記範囲の下限値以上であれば、外光を拡散反射させる効果が高く、視感反射率を充分に低く、たとえば1%以下にできる。Z範囲が前記範囲の上限値以下であれば、ヘーズを充分に低く、たとえば8%以下にできる。
防眩膜5においては、以下に規定されるうねり平均直径が10〜43μmであることが好ましく、10.9〜38μmがより好ましく、23〜37μmが特に好ましい。
うねり平均直径:前記表面形状のXYZデータにおいて、ベアリング高さ+0.05μmの高さにて観察される、直径10μm以上の前記複数の凸部の断面の平均直径(真円換算)。
うねり平均直径も、うねりの形状を示す指標である。うねり平均直径が前記範囲の下限値以上であれば、ヘーズをより低くできる。うねり平均直径が前記範囲の上限値以下であれば、外光を拡散反射させる効果がより高くなる。
防眩膜5においては、以下に規定される平均うねり高さが0.2〜1.6μmであることが好ましく、0.24〜1.53μmがより好ましく、0.4〜0.65μmが特に好ましい。
平均うねり高さ:前記表面形状のXYZデータにおいて、ベアリング高さを基準とした、直径10μm以上の前記複数の凸部の頂点の平均高さ。
平均うねり高さも、うねりの形状を示す指標である。平均うねり高さが前記範囲の下限値以上であれば、外光を拡散反射させる効果がより高くなる。平均うねり高さが前記範囲の上限値以下であれば、ヘーズをより低くできる。
観察領域は、(101μm〜111μm)×(135μm〜148μm)の範囲内の領域である。つまり観察領域は、最小で101μm×135μm、最大で111μm×148μmである。また、縦×横の比率は通常、約1.21〜1.46の範囲内とされている。
ここで、観察領域を範囲で記載したのは、同じ倍率の対物レンズを用いても、レンズの個体差により観察領域が異なるためである。測定結果は観察領域内の最大、最小、および平均値で表されるため、わずかに観察領域が異なっても、同じ倍率の対物レンズを選定すれば、結果にはほとんど違いは無い。
Z方向は、表面形状の高さ方向(防眩膜付きガラス基材の厚さ方向)であり、XY平面は、Z方向と直交する面である。
凸部の直径は、前記表面形状のベアリング高さ+0.05μmの高さでの断面における直径(真円換算)である。
うねり平均直径は、より詳細には、前記観察領域内の個々の凸部の直径を測定し、それらのうち直径10μm以上の凸部の直径を平均した値である。
平均うねり高さは、より詳細には、前記観察領域内の個々の凸部について、ベアリング高さを0としたときの頂点の高さを測定し、それらのうち直径10μm以上の凸部の高さを平均した値である。
ベアリング高さ、Z範囲、うねり平均直径、平均うねり高さはそれぞれ、レーザ顕微鏡で測定した表面形状のXYZデータを画像処理ソフトウェア(イメージメトロロジー社製「SPIP」)で解析することにより求められる。
前記レーザ顕微鏡で測定される観察領域は、防眩膜付きガラス基材1の防眩膜5側の表面から無作為に選択される1箇所である。
また、防眩膜5においては、以下に規定される孔面積率が20〜34%、平均孔直径が200〜600nmである。
孔面積率は、20〜30%が好ましく、20〜28%が特に好ましい。
平均孔直径は、200〜500nmが好ましく、250〜410nmが特に好ましい。
孔面積率が前記範囲の下限値以上であれば、視感反射率を充分に低く、たとえば1%にできる。孔面積率が前記範囲の上限値以下であれば、ヘーズを充分に低く、たとえば8%以下にできる。
平均孔直径が前記範囲の下限値以上であれば、視感反射率を充分に低く、たとえば1%にできる。平均孔直径が前記範囲の上限値以下であれば、ヘーズを充分に低く、たとえば8%以下にできる。
孔面積率:前記表面形状のXYZデータを、画像処理ソフトウェアSPIP(イメージメトロロジー社製)により形状解析することにより得られる「平面に複数の孔が散らばった形状イメージ」において、平面の総面積に対する前記複数の孔の合計面積の割合。
平均孔直径:前記平面に複数の孔が散らばった形状イメージにおいて、前記複数の孔それぞれの直径(真円換算)を平均した値。
前記平面に複数の孔が散らばった形状イメージは、具体的には、以下の(1)〜(4)の手順で得られる。
(1)品質優先モードで、前記表面形状のXYZデータの傾き補正を行い、傾き補正を行い、ベアリング高さを0と補正した表面形状イメージを得る。
(2)前記ベアリング高さを0と補正した表面形状イメージについて、「コンボリューション:スムージング:平均に設定」、「カーネルサイズ:X=25、X=Y、円形に設定」の条件で、XYデータ25個を円形単位でZを平均化するフィルタリングを行い、なだらかな凹凸表面形状イメージを得る。
(3)前記ベアリング高さを0と補正した表面形状イメージから、閾値レベル:−25nmにて孔を検出する。その後、「形状のホールを保存」し、フィルタサイズ11ポイントで「形状輪郭をスムージング」する後処理を行い、後処理された表面形状イメージを得る。
(4)前記なだらかな凹凸表面形状イメージと、前記後処理された表面形状イメージとの差分として、平面に複数の孔が散らばった形状イメージを得る。
(1)の「品質優先モード」は、SPIPで傾き補正(フラットニング)を行う際に表示されるモードで、具体的には以下の4つの操作が自動で行われる。
(1−1)「全体面補正法」として「多項式面フィット法」が選択され、多項式の次数は3とされる。
(1−2)「ステップを処理」が選択される。
(1−3)「ラインごとの補正」について「なし」が選択される。
(1−4)「Zオフセット法」として「ベアリング高さをゼロにする」が選択される。
傾き補正を行うと、レーザ顕微鏡で得られた表面形状のXYZデータについて最小二乗法で指定した0次の多項式を算出して、元のカーブから差し引くことによって平坦化を図る。定数項のみを差し引くため、Z方向の浮き沈みが除去される。
(2)において、カーネルサイズをX=25、X=Y、円形に設定した場合、25×25の四角形に内接する八角形で、円形の代用の枠(カーネル)が設定される。フィルタリングでは、カーネル形状に関係なく、カーネル内の全ポイントの単純な平均値で元のデータが置き換えられる。
フィルタリングを行うと、図3に示すような、微細な凹凸や孔が除去された、なだらかな凹凸表面形状イメージが得られる。
(3)において、閾値レベル−25nmとは、孔として深さが25nm以上のものを検出することを示す。深さは、ベアリング高さを基準としたものである。
後処理において、「形状のホールを保存」は、凸部の中に孔(凹部)がある場合、その孔を消さずに残す操作を示す。
「形状輪郭をスムージング」は、孔の形状輪郭のノイズをとる操作を示す。
フィルタサイズは、孔の形状輪郭のスムージングの程度を表すもので、値が大きい程、スムージング後の形状輪郭が円に近付く。
(4)において、なだらかな凹凸表面形状イメージから、後処理された表面形状イメージを差し引くと、平面に複数の孔が散らばった形状イメージを得る。
一般に、表面に凹凸がある場合、表面に空いた孔の数や形状を正確に測定することは難しい。上記形状解析では、なだらかな凹凸表面形状イメージと、後処理された表面形状イメージとを重ねたときに、なだらかな凹凸表面形状イメージの表面より下側にある孔を、凹凸のある表面の凹凸をなくしたときの、該表面に空いた孔と判断している。
防眩膜5においては、以下に規定される最大孔直径が、13000nm以下であることが好ましく、3000〜13000nmがより好ましく、8000〜9500nmが特に好ましい。最大孔直径が前記の上限値以下であれば、ヘーズがより低くなりやすい傾向がある。
最大孔直径:前記平面に複数の孔が散らばった形状イメージにおいて、前記複数の孔それぞれの直径(真円換算)のうちの最大値。
防眩膜5においては、以下に規定される表面孔密度が0.4個/μm以上であることが好ましく、0.4〜0.9個/μmがより好ましく、0.45〜0.65個/μmが特に好ましい。表面孔密度が前記の下限値以上であれば、ヘーズがより低くなりやすい傾向がある。
表面孔密度:前記平面に複数の孔が散らばった形状イメージにおいて、1μmあたりの孔の数。
マトリックス:
マトリックスは、防眩膜5を構成する成膜成分である。
マトリックスの屈折率は、1.44〜1.80であり、1.44〜1.60が好ましく、1.44〜1.46がより好ましい。防眩膜5の屈折率は、孔5bが存在することで、孔5bのない状態、つまりマトリックスの屈折率よりも低くなる。マトリックスの屈折率が前記範囲の上限値以下であれば、防眩膜5の表面での外光の反射率が低くなり、防眩効果が優れる。マトリックスの屈折率が前記範囲の下限値以上であれば、膜の耐久性・耐殺傷性に優れる。
マトリックスの屈折率は、(1)ガラス基板上に、マトリックス溶液をスピンコーターにて製膜し、(2)製膜済のガラス基板を450℃、60分焼成し、(3)焼成後の膜の屈折率を分光エリプソメトリーで測定し、(4)予め測定しておいたガラス単体の屈折率と、焼成後の膜の屈折率を基に、計算により、膜の屈折率の波長依存性と膜厚を算出し、波長550nmでの屈折率をマトリックスの屈折率とする、ことにより求められる。
マトリックスとしては、屈折率が前記範囲内であれば特に限定されず、たとえばシリカ、チタニア等が挙げられる。屈折率の調整のため、シリカ、チタニア等に、任意の屈折率を有する物質が添加されたものであってもよい。
マトリックスの具体例としては、後述するベース成分(A)の焼成物等が挙げられる。
マトリックスは、シリカを主成分とすることが好ましい。シリカを主成分とすれば、防眩膜5の屈折率(反射率)が低くなりやすい。また、防眩膜5の化学的安定性等も良好である。また、ガラス基材3との密着性が良好である。
「シリカを主成分とする」とは、SiOを90質量%以上含むことを意味する。
シリカを主成分とする場合、マトリックスは、シリカのみから構成されてもよく、シリカ以外の成分を少量含んでもよい。該成分としては、Li,B,C,N,F,Na,Mg,Al,P,S,K,Ca,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Sr,Y,Zr,Nb,Ru,Pd,Ag,In,Sn,Hf,Ta,W,Pt,Au,Biおよびランタノイド元素より選ばれる1つもしくは複数のイオンおよびまたは酸化物等の化合物が挙げられる。
防眩膜5は、たとえば、450℃、60分間の焼成時の屈折率が1.44〜1.80であるベース成分(A)と、下式(b)で表される化合物およびその加水分解縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)と、液状媒体(C)とを含む防眩膜用塗布液の塗膜を350℃以上で焼成することにより形成できる。前記防眩膜用塗布液は、必要に応じて、粒子(D)、その他の添加剤(E)等を含んでいてもよい。
3−pSi−Q−SiL3−p ・・・(b)
ここで、Qは、炭素原子間に−O−、−S−、−CO−および−NR’−(ただし、R’は水素原子または1価の炭化水素基である。)から選ばれる1つまたは2つ以上を組み合わせた基を有していてもよい2価の炭化水素基であり、Lは、加水分解性基であり、Rは、水素原子または1価の炭化水素基であり、pは、1〜3の整数である。
前記防眩膜用塗布液の塗膜を350℃以上で焼成すると、ベース成分(A)からマトリックスが形成されるとともにマトリックス中に複数の孔5bが形成されて、防眩膜5が形成される。孔5bの形成は、化合物(B)が膜中で気化し、マトリックス中を通って表面から揮発することによると考えられる。
前記防眩膜用塗布液を用いた防眩膜5の形成方法については後で詳しく説明する。
(ヘーズ)
防眩膜付きガラス基材1のヘーズは、0.1〜10%が好ましく、0.1〜8%がより好ましく、2〜8%が特に好ましい。ヘーズが前記範囲の下限値以上であれば、外光を拡散反射させる効果(防眩効果)がより優れる。ヘーズが前記範囲の上限値以下であれば、視感反射率の低減効果がより優れる。
「ヘーズ」は、JIS K7136:2000(ISO14782:1999)に記載された方法によって測定される。
(防眩膜付きガラス基材の製造方法)
防眩膜付きガラス基材1は、たとえば、後述する本発明の防眩膜付きガラス基材の製造方法により製造できる。ただし防眩膜付きガラス基材1を製造する方法は、この製造方法に限定されるものではない。
<作用効果>
以上説明した防眩膜付きガラス基材1にあっては、防眩膜5を構成するマトリックスの屈折率が1.44〜1.80であり、防眩膜5が複数の凸部5aを含み、複数の凸部5aによって表面にうねりが形成され、前記うねりが形成された表面に複数の孔5bが開口しており、Z範囲、孔面積率、平均孔直径がそれぞれ所定の範囲内であることで、ヘーズが低く、かつ視感反射率が低いものとなっている。
防眩膜5の表面のうねりは、従来の一般的な防眩膜の表面の凹凸に比べて、起伏が少ないものである。起伏が少ないと、一般に、ヘーズが小さくなることで防眩効果が小さくなり、視感反射率が大きくなる。防眩膜付きガラス基材1にあっては、マトリックスの屈折率が低く、かつ防眩膜5の表面に開口する複数の孔5bが形成されていることで、防眩膜5の少なくとも表層付近の屈折率が、孔5bが形成されていない場合の屈折率(マトリックスの屈折質)よりも低くなっている。そのため、表面の起伏が少なくても、視感反射率を充分に低くでき、低ヘーズと低視感反射率とを両立できる。
<用途>
防眩膜付きガラス基材1の用途としては、特に限定されない。具体例としては、車両用透明部品(ヘッドライトカバー、サイドミラー、フロント透明基板、サイド透明基板、リア透明基板等。) 、車両用透明部品(インスツルメントパネル表面等。)、メータ、建築窓、ショーウインドウ、ディスプレイ(ノート型パソコン、モニタ、LCD、PDP 、ELD、CRT、PDA等)、LCDカラーフィルタ、タッチパネル用基板、ピックアップレンズ、光学レンズ、眼鏡レンズ、カメラ部品、ビデオ部品、CCD用カバー基板、光ファイバ端面、プロジェクタ部品、複写機部品、太陽電池用透明基板(カバーガラス等。)、携帯電話窓、バックライトユニット部品(導光板、冷陰極管等。)、バックライトユニット部品液晶輝度向上フィルム(プリズム、半透過フィルム等。)、液晶輝度向上フィルム、有機EL発光素子部品、無機EL発光素子部品、蛍光体発光素子部品、光学フィルタ、光学部品の端面、照明ランプ、照明器具のカバー、増幅レーザー光源、反射防止フィルム、偏光フィルム、農業用フィルム等が挙げられる。
防眩膜付きガラス基材1の用途としては、高い水準で防眩性と低ぎらつき性が両立出来る点から、輸送機の内装部品が好ましく、車載物品がさらに好ましい。車載物品としては、画像表示装置を備える車載システム(カーナビゲーション、インストルメントパネル、ヘッドアップディスプレイ、ダッシュボード、センターコンソール、シフトノブ等)が好ましい。
以上、本発明の防眩膜付きガラス基材について、実施形態を示して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。上記実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
たとえば、ガラス基材3の表面にスプレーなどのウェットコーティングで凹凸構造を形成し、その後、ハロゲン系などのエッチャントを用いて前記凹凸構造をエッチングして所望の表面形状としてもよい。
ガラス基材3の表面に機能層が設けられていてもよい。機能層としては、アンダーコート層、反射防止層(AR層)、密着改善層、保護層等が挙げられる。
防眩膜5上に他の層をさらに備えていてもよい。他の層としては、撥水撥油層、反射防止層(AR層)、ハードコート層等が挙げられる。
アンダーコート層は、アルカリバリア層やワイドバンドの低屈折率層としての機能を有する。アンダーコート層としては、アルコキシシランの加水分解物(ゾルゲルシリカ)を含むアンダーコート用塗料組成物をガラス基材本体に塗布することによって形成される層が好ましい。
AR層は、反射率を低減する機能を有する。例えば、本実施形態の防眩膜付きガラス基材1の防眩膜5上にAR層を堆積することで、AR層を堆積する前に比べて、SCI測定方式の反射率を低減させられる。
撥水撥油層は、撥水撥油性を有する層であり、防眩膜付きガラス基材の視認側の最表層に存在することが好ましい。視認側の最表層に撥水撥油層が存在すれば、指滑り性が良好である。指滑り性が良好であることは、例えばタッチパネルの操作性の点で好ましい。
撥水撥油層としては、AFP(Anti Finger Print)層等が挙げられる。
撥水撥油層を形成する材料としては、たとえばパーフルオロアルキル基含有化合物、パーフルオロポリエーテル基含有化合物等が挙げられ、パーフルオロポリエーテル基を有するシラン化合物が好ましく用いられる。
パーフルオロポリエーテル基を有するシラン化合物としては、たとえば、下式(A)で表される化合物及び/又はその部分加水分解縮合物を含む材料が挙げられる。
Rf−Rf−Z ・・・(A)
(式中、Rfは、基:C2m+1(ここで、mは、1〜6の整数である。)であり、
Rfは、基:−O−(C2aO)−(ここで、aは、1〜6の整数であり、nは、1以上の整数であり、nが2以上である場合、各−C2aO−単位は、同一であっても、異なっていてもよい。)であり、
は、基:−Q−{CHCH(SiR 3−q)}−H(ここで、Qは、−(CH−(ここで、sは、0〜12の整数である。)であるか、又はエステル結合、エーテル結合、アミド結合、ウレタン結合及びフェニレン基から選ばれる1種以上を含有する−(CH−であり、−CH−単位の一部又は全部は、−CF−単位及び/又は−CFCF−単位によって置き換えられていてもよく、Rは、水素原子、又は炭素原子数1〜6の1価の炭化水素基であって、該炭化水素基は置換基を含有していてもよく、Xは、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、qは、0〜2の整数であり、rは、1〜20の整数である。)である。)
における加水分解性基としては、後述する化合物(B)において挙げるものと同様のものが挙げられる。
撥水撥油層の材料として、例えば市販されている「Afluid(商標登録) S−550」(商品名、旭硝子社製)、「KP−801」(商品名、信越化学工業社製)、「X−71」(商品名、信越化学工業社製)、「KY−130」(商品名、信越化学工業社製)、「KY−178」(商品名、信越化学工業社製)、「KY−185」(商品名、信越化学工業社製)、「オプツール(商標登録) DSX(商品名、ダイキン工業社製)等を使用できる。
撥水撥油層の厚さは、5〜15nmが好ましい。撥水撥油層の厚さが5nm以上であれば、充分な撥水撥油性が発揮され、撥水撥油層の表面での指すべり性が良好である。撥水撥油層の厚さが15nm以下であると反射防止性に与える影響が小さく好ましいが、これより厚い場合でも使用できる。
本発明の防眩膜付きガラス基材は、防眩膜5以外の防眩膜領域をさらに有していてもよい。たとえば、Z範囲、孔面積率、平均孔直径のいずれか1以上が前記で規定した範囲からはずれる防眩膜領域を有していてもよい。
≪防眩膜付きガラス基材の製造方法≫
本発明の防眩膜付きガラス基材の製造方法は、ガラス基材上に、防眩膜用塗布液を塗布して塗膜を形成する塗布工程と、前記塗膜を焼成して防眩膜を形成する焼成工程と、を含み、
前記防眩膜用塗布液が、450℃、60分間の焼成時の屈折率が1.44〜1.80であるベース成分(A)と、下式(b)で表される化合物およびその加水分解縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)と、液状媒体(C)とを含み、
前記焼成工程が、350℃以上で行われることを特徴とする。
3−pSi−Q−SiL3−p ・・・(b)
ここで、Qは、炭素原子間に−O−、−S−、−CO−および−NR’−(ただし、R’は水素原子または1価の炭化水素基である。)から選ばれる1つまたは2つ以上を組み合わせた基を有していてもよい2価の炭化水素基であり、Lは、加水分解性基であり、Rは、水素原子または1価の炭化水素基であり、pは、1〜3の整数である。
本発明の製造方法は、必要に応じて、防眩膜を形成する前にガラス基材の表面に機能層を形成する工程を有していてもよく、防眩膜を形成した後に公知の後加工を施す工程を有していてもよい。
<ガラス基材>
ガラス基材としては、前述の防眩膜付きガラス基材で挙げたガラス基材3と同様のものが挙げられる。
<防眩膜用塗布液>
防眩膜用塗布液は、ベース成分(A)と、化合物(B)と、液状媒体(C)とを含む。
防眩膜用塗布液は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、粒子(D)、その他の添加剤(E)等を含んでいてもよい。
(ベース成分(A))
ベース成分(A)は、450℃、60分間の焼成時の屈折率が1.44〜1.80である成分である。ベース成分(A)は、防眩膜のマトリックスを形成する。
ベース成分(A)の450℃、60分間の焼成時の屈折率の好ましい範囲は、前述のマトリックスの屈折率の好ましい範囲と同様である。
450℃、60分間の焼成時の屈折率は、(1)ガラス基板上に、防眩膜用塗布液をスピンコーターにて製膜し、(2)製膜済のガラス基板を450℃、60分焼成し、(3)焼成後の膜の屈折率を分光エリプソメトリーで測定し、(4)予め測定しておいたガラス単体の屈折率と、焼成後の膜の屈折率を基に、計算により、膜の屈折率の波長依存性と膜厚を算出し、波長550nmでの屈折率をマトリックスの屈折率とする、ことにより求められる。
ベース成分(A)は、焼成により構造が変化するものでもよく、焼成により構造が変化しないものでもよい。ベース成分(A)は、1種を単独で用いてもよく2種以上を組合わせて用いてもよい。
ベース成分(A)として、たとえば、アルコキシシラン(ただし化合物(B)を除く。)およびその加水分解縮合物(ゾルゲルシリカ)、シラザン等のシリカ前駆体、チタンアルコキシド、チタンキレート化合物等のチタニア前駆体、ジルコニウムアルコキシド、ジルコニウムキレート化合物等のジルコニア前駆体、アルミ前駆体、スズ前駆体等が挙げられる。
シリカ前駆体は、焼成により、シリカを主成分とするマトリックスを形成する化合物であり、たとえばアルコキシシラン(ただし化合物(B)を除く。)およびその加水分解縮合物(ゾルゲルシリカ)、シラザン等が挙げられる。
チタニア前駆体は、焼成により、チタニアを主成分とするマトリックスを形成する化合物であり、たとえばチタンアルコキシド、チタンキレート化合物等が挙げられる。
ジルコニア前駆体は、焼成により、ジルコニアを主成分とするマトリックスを形成する化合物であり、たとえばジルコニアアルコキシド、ジルコニウムキレート化合物等が挙げられる。
ベース成分(A)としては、上記の中でも、屈折率が低い点で、シリカ前駆体が好ましく、アルコキシシラン(ただし化合物(B)を除く。)およびその加水分解縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物がより好ましい。
アルコキシシラン(ただし化合物(B)を除く。)としては、テトラアルコキシシラン(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等)、アルキル基を有するアルコキシシラン(メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等)、ビニル基等のアルケニル基を有するアルコキシシラン(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等)、フェニル基等のアリール基を有するアルコキシシラン、エポキシ基を有するアルコキシシラン(2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等)、アクリロイルオキシ基を有するアルコキシシラン(3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等)、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン(パーフルオロポリエーテルトリエトキシシラン等)、パーフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン(パーフルオロエチルトリエトキシシラン等)等が挙げられる。
アルコキシシランの加水分解および縮合は、公知の方法により実施できる。
たとえばテトラアルコキシシランの場合、テトラアルコキシシランの4倍モル以上の水、および触媒として酸またはアルカリを使用する。
酸としては、無機酸(HNO、HSO、HCl等。)、有機酸(ギ酸、シュウ酸、モノクロル酢酸、ジクロル酢酸、トリクロル酢酸等。)が挙げられる。アルカリとしては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、pH10.5〜12の電解還元水等が挙げられる。触媒としては、アルコキシシランの加水分解縮合物の長期保存性の点から、酸が好ましい。
(化合物(B))
化合物(B)は、下式(b)で表される化合物およびその加水分解縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である。すなわち、p個のLおよび3−p個のRが結合したケイ素原子2つがQを介して結合した構造の化合物である。
3−pSi−Q−SiL3−p ・・・(b)
式(b)中、Qは、2価の炭化水素基である。2価の炭化水素基としては、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基等が挙げられる。
2価の炭化水素基は、炭素原子間に−O−、−S−、−CO−および−NR’−(ただし、R’は水素原子または1価の炭化水素基である。)から選ばれる1つまたは2つ以上を組み合わせた基を有していてもよい。
Qとしては、細孔を形成しやすい点から、炭素数2〜8のアルキレン基が好ましく、炭素数2〜6のアルキレン基がさらに好ましい。
Lは、加水分解性基である。
Lとしては、アルコキシ基、アシロキシ基、ケトオキシム基、アルケニルオキシ基、アミノ基、アミノキシ基、アミド基、イソシアネート基、ハロゲン原子等が挙げられる。これらの中では、化合物(B)の安定性と加水分解のしやすさとのバランスの点から、アルコキシ基、イソシアネート基およびハロゲン原子(特に塩素原子)が好ましい。
アルコキシ基としては、炭素数1〜3のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基またはエトキシ基がより好ましい。
式(b)中の複数のLは、同じであってもよく異なってもよい。入手しやすさの点では、同じであることが好ましい。
Rは、水素原子または1価の炭化水素基である。1価の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基等が挙げられる。
pは、1〜3の整数である。pは、反応速度が遅くなりすぎない点から、2または3が好ましく、3が特に好ましい。
式(b)で表される化合物の加水分解および縮合は、公知の方法により、たとえば、前述のアルコキシシランの加水分解および縮合と同様にして実施できる。
化合物(B)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(液状媒体(C))
液状媒体(C)は、ベース成分(A)および化合物(B)を溶解または分散するものである。防眩膜用塗布液が粒子(D)を含む場合、液状媒体(C)は、ベース成分(A)および化合物(B)を溶解または分散する溶媒または分散媒としての機能と、粒子(D)を分散する分散媒としての機能の両方を有するものであってもよい。
液状媒体(C)としては、たとえば、水、アルコール類、ケトン類、エーテル類、セロソルブ類、エステル類、グリコールエーテル類、含窒素化合物、含硫黄化合物等が挙げられる。
アルコール類としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
エーテル類としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。
セロソルブ類としては、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等が挙げられる。
エステル類としては、酢酸メチル、酢酸エチル等が挙げられる。
グリコールエーテル類としては、エチレングリコールモノアルキルエーテル等が挙げられる。
含窒素化合物としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
含硫黄化合物としては、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
液状媒体(C)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ベース成分(A)がアルコキシシランの加水分解縮合物を含む場合、アルコキシシランの加水分解に水が必要となるため、アルコキシシランの加水分解後に液状媒体の置換を行わない限り、液状媒体(C)には少なくとも水が含まれる。
液状媒体(C)は、水と他の液体との混合液であってもよい。他の液体としては、たとえば、アルコール類、ケトン類、エーテル類、セロソルブ類、エステル類、グリコールエーテル類、含窒素化合物、含硫黄化合物等が挙げられる。他の液体のうち、ベース成分(A)の溶媒としては、アルコール類が好ましく、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールが特に好ましい。
(粒子(D))
防眩膜用塗布液が粒子(D)を含む場合、粒子(D)は、ベース成分(A)から形成されるマトリックスとともに防眩膜を構成する。
粒子(D)としては、金属酸化物粒子、金属粒子、顔料系粒子、樹脂粒子等が挙げられる。
金属酸化物粒子の材料としては、Al、SiO、SnO、TiO、ZrO、ZnO、CeO、Sb含有SnO(ATO)、Sn含有In(ITO)、RuO等が挙げられる。
金属粒子の材料としては、金属(Ag、Ru等)、合金(AgPd、RuAu等)等が挙げられる。
顔料系粒子としては、無機顔料(チタンブラック、カーボンブラック等)、有機顔料が挙げられる。
樹脂粒子の材料としては、アクリル樹脂、ポリスチレン、メラニン樹脂等が挙げられる。
粒子(D)の形状としては、球状、楕円状、針状、板状、棒状、円すい状、円柱状、立方体状、長方体状、ダイヤモンド状、星状、鱗片状、不定形状等が挙げられる。粒子(D)は、各粒子が独立した状態で存在していてもよく、各粒子が鎖状に連結していてもよく、各粒子が凝集していてもよい。
粒子(D)は、中実粒子でもよく、中空粒子でもよく、多孔質粒子等の穴あき粒子でもよい。
粒子(D)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
粒子(D)の平均粒子径は、0.01〜2μmが好ましく、0.05〜1.5μmがより好ましい。粒子(D)の平均粒子径が0.01μm以上であれば、防眩効果が充分に発揮される。粒子(D)の平均粒子径が2μm以下であれば、防眩膜用塗布液中における分散安定性が良好となる。
「平均粒子径」は、体積基準で求めた粒度分布の全体積を100%とした累積体積分布曲線において50%となる点の粒子径、すなわち体積基準累積50%径(D50)を意味する。粒度分布は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定した頻度分布および累積体積分布曲線で求められる。
(添加剤(E))
添加剤(E)としては、たとえば、極性基を有する有機化合物(E1)、紫外線吸収剤、赤外線反射/赤外線吸収剤、反射防止剤、レベリング性向上のための界面活性剤、耐久性向上のための金属化合物等が挙げられる。
防眩膜用塗布液が粒子(D)を含有する場合、防眩膜用塗布液に極性基を有する有機化合物(E1)を含ませることによって、防眩膜用塗布液中における静電気力による粒子(D)の凝集を抑制できる。
極性基を有する有機化合物(E1)としては、粒子(D)の凝集抑制効果の点から、分子中に水酸基および/またはカルボニル基を有するものが好ましく、分子中に水酸基、アルデヒド基(−CHO)、ケトン基(−C(=O)−)、エステル結合(−C(=O)O−)、カルボキシル基(−COOH)からなる群から選ばれる1種以上を有するものがより好ましく、分子中にカルボキシル基、水酸基、アルデヒド基およびケトン基からなる群から選ばれる1種以上を有するものがさらに好ましい。
極性基を有する有機化合物(E1)としては、不飽和カルボン酸重合体、セルロース誘導体、有機酸(ただし、不飽和カルボン酸重合体を除く。)、テルペン化合物等が挙げられる。有機化合物(E1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
不飽和カルボン酸重合体としては、ポリアクリル酸が挙げられる。
セルロース誘導体としては、ポリヒドロキシアルキルセルロースが挙げられる。
有機酸(ただし、不飽和カルボン酸重合体を除く。)としては、ギ酸、しゅう酸、モノクロル酢酸、ジクロルム酢酸、トリクロル酢酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸等が挙げられる。
なお、アルコキシシラン等の加水分解に触媒として有機酸を用いた場合、該有機酸も有機化合物(E1)としての有機酸に含まれる。
テルペンとは、イソプレン(C)を構成単位とする(C(ただし、nは1以上の整数である。)の組成の炭化水素を意味する。テルペン化合物とは、テルペンから誘導される官能基を有するテルペン類を意味する。テルペン化合物は、不飽和度を異にするものも包含する。
なお、テルペン化合物には液状媒体として機能するものもあるが、「イソプレンを構成単位とする(Cの組成の炭化水素」であるものは、テルペン誘導体に該当し、液状媒体には該当しないものとする。
テルペン誘導体としては、テルペンアルコール(α−テルピネオール、テルピネン4−オール、L−メントール、(±)シトロネロール、ミルテノール、ボルネオール、ネロール、ファルネソール、フィトール等)、テルペンアルデヒド(シトラール、β−シクロシトラール、ペリラアルデヒド等)、テルペンケトン((±)しょうのう、β−ヨノン等)、テルペンカルボン酸(シトロネル酸、アビエチン酸等)、テルペンエステル(酢酸テルピニル、酢酸メンチル等)等が挙げられる。
レベリング性向上のための界面活性剤としては、シリコーンオイル系、アクリル系等が挙げられる。
耐久性向上のための金属化合物としては、ジルコニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、アルミニウムキレート化合物等が好ましい。ジルコニウムキレート化合物としては、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムトリブトキシステアレート等が挙げられる。
(組成)
防眩膜用塗布液において、ベース成分(A)の含有量と化合物(B)の含有量との質量比(ベース成分(A)/化合物(B))は、99/1〜40/60が好ましく、95/5〜50/50がより好ましく、95/5〜60/40が特に好ましい。
ベース成分(A)/化合物(B)が99/1以下、つまりベース成分(A)の含有量と化合物(B)の含有量との合計に対するベース成分(A)の含有量が99質量%以下であれば、平均孔直径、孔面積率等が大きく、視感反射率が低くなりやすい。
ベース成分(A)/化合物(B)が40/60以上、つまりベース成分(A)の含有量と化合物(B)の含有量との合計に対するベース成分(A)の含有量が40質量%以上であれば、平均孔直径、孔面積率等が小さく、ヘーズが低くなりやすい。
ただし、ベース成分(A)の含有量は、ベース成分(A)がシリカ前駆体はSiO換算、チタニア前駆体の場合はTiO換算、ジルコニア前駆体の場合はZrO換算とする。また、化合物(B)の含有量は、SiO換算とする。
ベース成分(A)と化合物(B)との合計の含有量は、防眩膜用塗布液中の全固形分(100質量%)に対し、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましい。上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。
ベース成分(A)と化合物(B)との合計の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、ガラス基材3との密着性に優れる。
防眩膜用塗布液中の液状媒体(C)の含有量は、防眩膜用塗布液の固形分濃度に応じた量とされる。
防眩膜用塗布液の固形分濃度は、防眩膜用塗布液の全量(100質量%)のうち、1〜8質量%が好ましく、2〜6質量%がより好ましい。固形分濃度が前記範囲の下限値以上であれば、防眩膜用塗布液の液量を少なくできる。固形分濃度が前記範囲の上限値以下であれば、防眩膜の膜厚の均一性が向上する。
防眩膜用塗布液の固形分濃度は、防眩膜用塗布液中の、液状媒体(C)以外の全成分の含有量の合計である。
防眩膜用塗布液において、粒子(D)は必須ではないが、防眩膜用塗布液が粒子(D)を含む場合、粒子(D)の含有量は、防眩膜用塗布液中の全固形分(100質量%)に対し、0質量%超50質量%以下が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。粒子(D)の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、防眩膜付きガラス基材のヘーズが充分に高くなり、かつ防眩膜の表面における60°鏡面光沢度が充分に低くなることから、防眩効果が充分に発揮される。粒子(D)の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、充分な耐摩耗強度が得られる。
(調製方法)
防眩膜用塗布液は、たとえば、ベース成分(A)が液状媒体(C)に溶解した溶液と、化合物(B)が液状媒体(C)に溶解した溶液と、必要に応じて追加の液状媒体(C)、粒子(D)の分散液等を混合することによって調製できる。
<塗布工程>
ガラス基材上への防眩膜用塗布液の塗布方法としては、公知のウェットコート法(スプレーコート法、静電塗装法、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スクリーンコート法、インクジェット法、フローコート法、グラビアコート法、バーコート法、フレキソコート法、スリットコート法、ロールコート法等)等が挙げられる。
防眩膜用塗布液の塗布方法としては、充分な凹凸(うねり)を形成しやすい点から、スプレーコート法または静電塗装法が好ましく、静電塗装法が特に好ましい。
スプレーコート法に用いるノズルとしては、2流体ノズル、1流体ノズル等が挙げられる。
ノズルから吐出される塗布液の液滴の粒径は、通常、0.1〜100μmであり、1〜50μmが好ましい。液滴の粒径が1μm以上であれば、防眩効果が充分に発揮される凹凸を短時間で形成できる。液滴の粒径が50μm以下であれば、防眩効果が充分に発揮される適度な凹凸を形成しやすい。
液滴の粒径は、ノズルの種類、スプレー圧力、液量等により適宜調整できる。たとえば、2流体ノズルでは、スプレー圧力が高くなるほど液滴は小さくなり、また、液量が多くなるほど液滴は大きくなる。
液滴の粒径は、前述の平均粒子径を測定する方法を適用せず、レーザ測定器によって測定されるザウター平均粒子径である。
スプレーコート法で塗布する場合、防眩膜の表面形状は、一定の塗布条件下では、塗布時間、すなわちスプレーコート法によるコート面数(重ね塗り回数)によって調整できる。コート面数が多くなるほど、防眩膜の表面の凹凸(Z範囲、平均うねり高さ等)が大きくなる傾向がある。
スプレーコート法にて防眩膜用塗布液を塗布する際には、ガラス基材を加熱せずに実施できるが、ガラス基材をあらかじめ20〜90℃に加熱・保温してもよい。ガラス基材の温度が20℃以上であれば、液状媒体(C)がすばやく蒸発するため、充分な凸凹を形成しやすい。ガラス基材の温度が90℃以下であれば、ガラス基材と防眩膜との密着性が良好となる。ガラス基材が厚さ5mm以下のガラス板の場合、あらかじめガラス基材の温度以上の温度に設定した保温板をガラス基材の下に配置し、ガラス基材の温度低下を抑えてもよい。
静電塗装法では、静電塗装ガンを備える静電塗装装置を用いて、防眩膜用塗布液を帯電させて噴霧する。静電塗装ガンから噴霧された防眩膜用塗布液の液滴は、マイナス電荷を帯びているため、接地されたガラス基材に向かって静電引力によって引き寄せられる。そのため、帯電させずに噴霧する場合に比べて、ガラス基材上に効率よく付着する。特にガラス基材が曲面を有する場合には、曲面内で均一な防眩膜を形成でき、使用者に外観上均質な視認性を与える。またガラス基材が曲面と平坦面の両者を有していても、曲面と平坦面で均一な防眩膜を形成でき、使用者に外観上均質な視認性を与える。
以下に、静電塗装装置の一例を示す。この例の静電塗装装置は、回転霧化頭を備える静電塗装ガンを備えるものである。また、この静電塗装装置を用いてガラス基材上に防眩膜用塗布液を塗布する方法について説明する。
(静電塗装装置)
図4は、静電塗装装置の一例を示す概略図である。
静電塗装装置10は、コーティングブース11と、チェーンコンベア12と、複数の静電塗装ガン17と、高電圧発生装置18と、排気ボックス20とを具備する。
チェーンコンベア12は、コーティングブース11を貫通し、導電性基板21およびこの上に載せられたガラス基材3を所定方向に搬送するようになっている。
複数の静電塗装ガン17は、チェーンコンベア12の上方のコーティングブース11内に、ガラス基材3の搬送方向に交差する方向に並んで配置され、それぞれに高電圧ケーブル13、防眩膜用塗布液の供給ライン14、防眩膜用塗布液の回収ライン15、および2系統のエアの供給ライン16a、16bが接続されている。
高電圧発生装置18は、高電圧ケーブル13を介して静電塗装ガン17に接続され、かつ接地されている。
排気ボックス20は、静電塗装ガン17およびチェーンコンベア12の下方に配置され、排気ダクト19が接続されている。
静電塗装ガン17は、ノズルセットフレーム(図示略)に固定されている。ノズルセットフレームによって、静電塗装ガン17のノズル先端からガラス基材3までの距離、ガラス基材3に対する静電塗装ガン17の角度、ガラス基材3の搬送方向に対する複数の静電塗装ガン17が並ぶ方向等を調整できるようになっている。
静電塗装ガン17のノズル先端部および防眩膜用塗布液の供給ライン14、および回収ライン15には高電圧が印加されるため、静電塗装ガン17、供給ライン14、および回収ライン15と、金属(ノズルセットフレーム、コーティングブース11の側壁貫通部分等)との接続部分は、樹脂等で絶縁処理されている。
チェーンコンベア12は、複数のプラスチックチェーンからなる、複数のプラスチックチェーンの一部は導電性プラスチックチェーンである。導電性プラスチックチェーンは、プラスチックチェーンを嵌め込む金属チェーン(図示略)およびその駆動モータ(図示略)の接地ケーブル(図示略)を介して、接地されている。
導電性基板21は、その上に載せられるガラス基材3を、チェーンコンベア12の導電性プラスチックチェーン、金属チェーンおよび駆動モータの接地ケーブルを介して充分に接地するために用いられる。ガラス基材3が充分に接地されることで、防眩膜用塗布液が均一にガラス基材3上に付着する。
導電性基板21としては、ガラス基材3の温度降下を抑制し、かつ温度分布を均一化できることから、金属メッシュトレイが好ましい。
(静電塗装ガン)
図5は、静電塗装ガン17の断面模式図である。図6は、静電塗装ガン17を前方から見た正面模式図である。
静電塗装ガン17は、ガン本体30と、回転霧化頭40とを備える。回転霧化頭40は、ガン本体30の前端部に、軸線を前後方向に向けて配置されている。
静電塗装ガン17においては、回転霧化頭40を回転駆動することにより、回転霧化頭40に供給された防眩膜用塗布液を遠心力により霧化して放出(噴霧)するようになっている。
なお、静電塗装ガン17の説明において、前方、前端等における「前」は、防眩膜用塗布液の噴霧方向を示し、その反対方向が後方である。図4、5中の下方が、静電塗装ガン17中の前方である。
ガン本体30内には、回転霧化頭40と同軸上に、塗料供給管31が固定して収容されている。
ガン本体30内には、図示しないエアタービンモータが設けられ、このエアタービンモータには回転軸32が設けられている。また、エアタービンモータには、2系統のエアの供給ライン16a、16bのうちの1系統(たとえば供給ライン16a)が接続され、供給ライン16aからのエア圧によって回転軸32の回転数を制御できるようになっている。回転軸32は、回転霧化頭40と同軸上に、塗料供給管31を包囲するように配置されている。
なお、ここでは回転軸32の回転駆動手段としてエアタービンモータを用いる例を示したが、エアタービンモータ以外の回転駆動手段を用いてもよい。
ガン本体30には、シェービングエア(シェーピングエアともいう。)の吹出口33が複数形成され、複数の吹出口33それぞれにシェービングエアを供給するためのエア供給路35が形成されている。また、エア供給路35には、2系統のエアの供給ライン16a、16bのうちの1系統(たとえば供給ライン16b)が接続され、エア(シェービングエア)を、エア供給路35を介して吹出口33に供給できるようになっている。
複数の吹出口33は、静電塗装ガン17の正面視において、軸心を中心とする同心円上に等間隔で開口するように形成されている。また、複数の吹出口33は、静電塗装ガン17の側面視において、静電塗装ガン17の前方に向かって次第に軸心から離れるように形成されている。
回転霧化頭40は、第1部品41と、第2部品42とを備える。第1部品41および第2部品42はそれぞれ筒状である。
第1部品41は、軸取付部43と、軸取付部43から前方に延出した形態の保持部44と、保持部44から前方に延出した形態の周壁45と、周壁45から前方へ延出した形態の拡径部47と、周壁45と拡径部47の境界位置において第1部品41の中心孔を前後に区画する形態の前面壁49とが一体に形成されたものである。
保持部44は、第2部品42を第1部品41に対して同軸状に保持するものである。
周壁45の内周面は、回転霧化頭40の軸線方向における全領域に亘り、前方に向かって次第に拡径するテーパ状の誘導面46となっている。
拡径部47は、前方に向かってカップ状に拡径した形態であり、拡径部47の前面は、前方に向かって次第に拡径した形態の拡散面48となっている。
拡径部47の拡散面48の外周縁48aには、全周にわたって、防眩膜用塗布液の微粒化のための微細な切り込みが多数、略等間隔に設けられている。
前面壁49には、前面壁49の外周縁を前後に貫通した形態の流出孔50が形成されている。流出孔50は、円形をなし、周方向において等角度ピッチで複数形成されている。また、流出孔50の貫通方向は、周壁45の誘導面46の傾斜方向と平行である。
前面壁49の後面のうち中央部分は後方に向かって突出した円錐状となっている。また、この中央部分には、前面壁49の前面の中心部から後方に延び、途中で3つに分岐して円錐状の部分の周面上に開口する貫通孔53が形成されている。
第2部品42は、筒状部51と後面壁52とを一体に形成したものである。後面壁52は、筒状部51の前端部に配置されている。後面壁52の中央には、円形の貫通孔が形成されており、塗料供給管31の前端部を挿入できるようになっている。
回転霧化頭40においては、前面壁49、周壁45及び後面壁52によって囲まれた空間が貯留室Sとされている。この貯留室Sは複数の流出孔50を介して拡散面48に連通している。
静電塗装ガン17においては、塗料供給管31の前端の吐出口31aが貯留室S内に開口するように、塗料供給管31の前端部が後面壁52の中央の貫通孔に挿入されている。これにより、塗料供給管31を介して防眩膜用塗布液を貯留室S内に供給できるようになっている。
なお、静電塗装装置および静電塗装ガンは、図示例のものに限定はされない。静電塗装装置は、公知の静電塗装装置を採用できる。静電塗装ガンは、図示例以外の回転霧化頭を備えるものであってもよく、回転霧化頭を備えないものであってもよく、公知の静電塗装ガンを採用できる。
(塗布方法)
静電塗装装置10においては、下記のようにしてガラス基材3上に防眩膜用塗布液が塗布される。
ガラス基材3を、導電性基板21上に設置する。また、高電圧発生装置18によって、静電塗装ガン17に高電圧を印加する。同時に、防眩膜用塗布液の供給ライン14から防眩膜用塗布液を静電塗装ガン17に供給するとともに、2系統のエアの供給ライン16a、16bそれぞれからエアを静電塗装ガン17に供給する。
エアの供給ライン16bから供給されるエアは、ガン本体30内のエア供給路35にエアが供給され、シェービングエアとして吹出口33の開口から吹き出される。
エアの供給ライン16aから供給されるエアは、ガン本体30内のエアタービンモータを駆動させ、回転軸32を回転させる。これにより、防眩膜用塗布液の供給ライン14から塗料供給管31を通して貯留室S内に供給された防眩膜用塗布液が、遠心力により周壁45の誘導面46に沿って前方へ移動し、流出孔50を通過して拡散面48へ供給される。防眩膜用塗布液の一部は、中央部分の貫通孔53を通過して拡散面48へ供給され得る。ここで、周壁45の誘導面46は、流出孔50に向かって拡径したテーパ状をなすので、貯留室S内の防眩膜用塗布液は、遠心力により、貯留室S内に残留することなく確実に流出孔50に到達する。
そして、拡散面48に供給された防眩膜用塗布液は、遠心力により拡散面48に沿って拡散されながら外周縁48a側へ移動し、拡散面48に防眩膜用塗布液の液膜を形成し、拡径部47の拡散面48の外周縁48aにおいて微粒化され、液滴となって放射状に飛散する。
回転霧化頭40から飛散した防眩膜用塗布液の液滴は、シェービングエアの流れによってガラス基材3方向に導かれる。また、前記液滴は、マイナス電荷を帯びており、接地されたガラス基材3に向かって静電引力によって引き寄せられる。そのため、ガラス基材3の表面に効率よく付着する。
静電塗装ガン17から噴霧されなかった一部の防眩膜用塗布液は、防眩膜用塗布液の回収ライン15を通って防眩膜用塗布液タンク(図示略)に回収される。また、静電塗装ガン17から噴霧され、ガラス基材3に付着しなかった一部の防眩膜用塗布液は、排気ボックス20に吸引され、排気ダクト19を通って回収される。
ガラス基材3の表面温度は、60℃以下が好ましく、15〜50℃が好ましく、20〜40℃がより好ましい。ガラス基材3の表面温度が前記範囲の下限値以上であれば、防眩膜用塗布液の液状媒体(B)がすばやく蒸発するため、充分な凸凹を形成しやすい。
ガラス基材3の搬送速度は、0.6〜20m/分が好ましく、1.5〜15m/分がより好ましい。ガラス基材3の搬送速度が0.6m/分以上であれば、生産性が向上する。ガラス基材3の搬送速度が20m/分以下であれば、ガラス基材3上に塗布される防眩膜用塗布液の膜厚を制御しやすい。
ガラス基材3の搬送回数、すなわちガラス基材3に静電塗装ガン17の下を通過させて防眩膜用塗布液を塗布する回数は、所望のヘーズ、光沢度等に応じて適宜設定できる。防眩性の点では、1回以上が好ましく、2回以上がより好ましい。生産性の点では、10回以下が好ましく、8回以下がより好ましい。
静電塗装ガン17の回転霧化頭40の外周縁48aの直径(拡散面48の最大径、以下「カップ径」ともいう。)Dcは、50mm以上が好ましく、55〜90mmが好ましく、60〜80mmが特に好ましい。カップ径が前記の下限値以上であれば、回転霧化頭40の回転時の遠心力が大きく、回転霧化頭40から飛散する防眩膜用塗布液の液滴がより微細になり、所望の表面形状の防眩膜が形成されやすい。カップ径が前記範囲の上限値以下であれば、安定的にカップを回転させられる。
静電塗装ガン17のノズル先端(防眩膜用塗布液の噴霧方向における回転霧化頭40の前端)からガラス基材3までの距離(以下、ノズル高さともいう。)は、ガラス基材3の幅、ガラス基材3上に塗布される防眩膜用塗布液の膜厚等に応じて適宜調整される。通常は、150〜450mmである。ガラス基材3までの距離を近づけると塗布効率は高まるが、近づけ過ぎると放電を起こす可能性が高くなり安全上の問題が発生する。一方、ガラス基材3までの距離が離れるにしたがって塗布領域は拡大するが、離れ過ぎると塗布効率の低下が問題となる。
静電塗装ガン17に印加される電圧は、ガラス基材3上に塗布される防眩膜用塗布液の塗布量等に応じて適宜調整され、通常は、−30kV〜−90kVの範囲である。電圧の絶対値が大きい方が塗着効率が高まる傾向にある。なお、液特性、塗布環境および塗布条件にもよるが、印加電圧がある程度の高さになると、塗布効率は飽和に達する。
静電塗装ガン17への防眩膜用塗布液の供給量(以下、コート液量ともいう。)は、ガラス基材3上に塗布される防眩膜用塗布液の塗布量等に応じて適宜調整される。好ましくは、70mL/分未満であり、より好ましくは10〜50mL/分である。コート液量が前記の上限値以下であれば、回転霧化頭40から飛散する防眩膜用塗布液の液滴がより微細になり、所望の表面形状の防眩膜が形成されやすい。コート液量が前記の下限値以上であれば、膜が均一性となる。
2系統のエアの供給ライン16a、16bそれぞれから静電塗装ガン17に供給されるエアの圧力は、ガラス基材3上に塗布される防眩膜用塗布液の塗布量等に応じて適宜調整され、通常は、0.01MPa〜0.5MPaである。
2系統のエアの供給ライン16a、16bそれぞれから静電塗装ガン17に供給するエア圧によって、防眩膜用塗布液の塗布パターンを制御できる。
防眩膜用塗布液の塗布パターンとは、静電塗装ガン17から噴霧された防眩膜用塗布液の液滴によってガラス基材上に形成されるパターンを示す。
静電塗装ガン17内のエアタービンモータに供給されるエアのエア圧を高くすると、回転軸32の回転速度が上昇し、回転霧化頭40の回転速度が上昇することにより、回転霧化頭40から飛散する液滴の大きさが小さくなり、塗布パターンが大きくなる傾向を示す。
静電塗装ガン17内のエア供給路35に供給されるエアのエア圧を高くし、吹出口33から吹き出されるエア(シェービングエア)のエア圧を高くすると、回転霧化頭40から飛散する液滴の広がりが抑制され、塗布パターンが小さくなる傾向を示す。
エアタービンモータに供給するエアのエア圧は、回転霧化頭40の回転速度(以下、カップ回転数ともいう。)に応じて設定される。該エア圧が高いほど、カップ回転数が多くなる。
カップ回転数は、30000rpm以上が好ましく、30000〜80000rpmがより好ましく、32000〜80000rpmが特に好ましい。カップ回転数が前記範囲の下限値以上であれば、回転霧化頭40から飛散する防眩膜用塗布液の液滴がより微細になり、所望の表面形状の防眩膜が形成されやすい。カップ回転数が前記範囲の上限値以下であれば、塗着効率に優れる。
カップ回転数は、静電塗装装置10に付属の計測器(図示略)により測定できる。
エア供給路35に供給するエアのエア圧は、シェービングエアのエア圧(以下、シェーブ圧ともいう。)が0.01〜0.3MPaの範囲内となる圧力とすることが好ましい。シェーブ圧は、0.01〜0.25MPaがより好ましく、0.01〜0.2MPaが特に好ましい。シェーブ圧が前記範囲の下限値以上であれば、液滴の飛散防止効果向上による塗着効率向上に優れる。シェーブ圧が前記範囲の上限値以下であれば、塗布幅を確保できる。
<焼成工程>
焼成工程では、塗布工程でガラス基材上に形成された、防眩膜用塗布液の塗膜を焼成して防眩膜とする。
焼成工程は、防眩膜用塗布液をガラス基材に塗布する際にガラス基材を加熱することによって塗布と同時に行ってもよく、防眩膜用塗布液をガラス基材に塗布した後、塗膜を加熱することによって行ってもよい。
焼成工程における焼成温度は、350℃以上であり、350〜750℃がより好ましく、400〜550℃がさらに好ましい。350℃以上で焼成することで、ベース成分(A)からマトリックスが形成されるとともに、化合物(B)が揮発して、表面にうねり(凹凸)があり、複数の孔が開口した防眩膜が形成される。
なお、マトリックスの形成のみであれば、350℃以下、たとえば30℃付近の温度でも充分に進行する。
以上説明した製造方法にあっては、ベース成分(A)と化合物(B)とを含む防眩膜用塗布液を塗布し、350℃以上で焼成することによって、直径が10μm以上である複数の凸部を含み、前記複数の凸部によって表面にうねりが形成され、前記うねりが形成された表面に複数の孔が開口し、前述のZ範囲が0.4〜7μm、孔面積率が20〜34%、平均孔直径が200〜600nm、との条件を満たす防眩膜を形成できる。
本発明の製造方法にあっては、防眩膜用塗布液の固形分濃度、塗布工程での塗布条件(たとえばカップ径、コート液量、カップ回転数等)、焼成工程の温度等によって、形成される防眩膜5の表面形状を制御できる。たとえば、カップ回転数を増加させることで、ぎらつきを抑制できる。防眩膜用塗布液中の化合物(B)の含有量が多いほど、孔面積率と平均孔直径が大きくなる傾向がある。防眩膜用塗布液の塗布量、固形分濃度、製膜回数がそれぞれ多くなるほど、Z範囲および平均うねり高さが増大し、うねり平均直径が減少する傾向がある。
≪物品≫
本発明の物品は、前記防眩膜付きガラス基材を備える。
本発明の物品は、前記防眩膜付きガラス基材からなるものでもよく、前記防眩膜付きガラス基材以外の他の部材をさらに備えるものでもよい。
本発明の物品の例としては、前記で防眩膜付きガラス基材の用途として挙げたもの、それらのいずれか1種以上を備える装置、等が挙げられる。
装置としては、たとえば画像表示装置およびこれを備えるシステム、照明装置およびこれを備えるシステム、太陽電池モジュール等が挙げられる。
本発明の物品は、ヘーズ、視感反射率等の光学特性の点で、画像表示装置またはこれを備えるシステムであることが好ましい。
本発明の物品が画像表示装置である場合、該画像表示装置は、画像を表示する画像表示装置本体と、画像表示装置本体の視認側に設けられた本発明の防眩膜付きガラス基材とを具備する。
画像表示装置本体としては、液晶パネル、有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネル、プラズマディスプレイパネル等が挙げられる。
前記防眩膜付きガラス基材は、画像表示装置本体の保護板として、画像表示装置本体に一体に設けられてもよく、各種フィルタとして、画像表示装置本体の視認側に配置されてもよい。特に本発明の物品である前記防眩膜付きガラス基材は、車載用基材として、特に車載用表示装置本体の保護板として非常に有用である。車載用基材として前記防眩膜付きガラス基材を備えることにより車内の室内灯や車外からの光などあらゆる方向からの映り込みを抑制でき、また運転者からの均質な視認性を確保できるため、運転に支障が出るような視覚的外乱を抑制できる。
以上説明した画像表示装置またはこれを備えるシステムにあっては、本発明の防眩膜付きガラス基材が画像表示装置本体の視認側に設けられているため、視認性が良好である。
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。
後述する例1〜20のうち、例5〜6、11〜12は実施例であり、例1〜4、7〜10、13〜20は比較例である。
各例で使用した評価方法および材料を以下に示す。
<評価方法>
(表面形状測定)
キーエンス社製レーザー顕微鏡VK−X100を用いて測定した。対物レンズは×100を用いた(観察領域:107×143μm、倍率:1000倍)。測定品質は標準(1024×768)、ピッチ(Z方向の測定刻み値)は0.08μmとした。
(表面形状解析)
表面形状測定で得られた表面形状のXYZデータを、イメージメトロロジー社製画像処理ソフトウエアSPIPを用いて解析し、以下の項目を求めた。
Z範囲:Z方向の最小値と最大値との差。
うねり平均直径:ベアリング高さ+0.05μmの高さにて観察される、直径10μm以上の複数の凸部の断面の平均直径(真円換算)。
平均うねり高さ:ベアリング高さを基準とした、直径10μm以上の複数の凸部の頂点の平均高さ。
また、前記表面形状のXYZデータを前述の(1)〜(4)の手順で形状解析して平面に複数の孔が散らばった形状イメージを得て、以下の項目を求めた。
孔面積率:前記平面の総面積に対する前記複数の孔の合計面積の割合。
平均孔直径:前記複数の孔それぞれの直径(真円換算)を平均した値。
最大孔直径:前記複数の孔それぞれの直径(真円換算)のうちの最大値。
表面孔密度:前記平面1μmあたりの孔の数(前記表面孔個数を前記平面の面積で除した値)(個/μm)。
なお、本実施例の測定条件において、最小孔直径の検出限界は28.74nmである。
(視感反射率)
防眩層付きガラス基材の視感反射率(%)は、大塚電子社製、瞬間マルチ測光システムMCPD−3000により測定した。
(ヘーズ)
防眩層付きガラス基材のヘーズ(Hz)(%)は、ヘーズメーター(村上色彩研究所社製HR−100型)を用いて、JIS K7136:2000に規定されている方法に従って測定した。
<使用材料>
(ES40溶液)
以下の手順でES40溶液を調製した。
液状媒体(C)としてのソルミックス(登録商標)AP−11(日本アルコール販売社製、エタノールを主剤とした混合溶媒。以下「変性エタノール」という。)に、ベース成分(A)としてシリケート40(多摩化学工業社製、テトラエトキシシランおよびその加水分解縮合物の混合物)を加え、30分間撹拌した。これに、イオン交換水および硝酸水溶液(硝酸濃度:61質量%の混合液を加え、60分間撹拌し、固形分濃度(SiO換算)4質量%のES40溶液を調製した。
450℃、60分間の焼成時の屈折率の測定:
(1)ガラス基板上に、マトリックス溶液(ES40溶液)をスピンコーターにて製膜し、(2)製膜済のガラス基板を450℃、60分焼成し、(3)焼成後の膜の屈折率を分光エリプソメトリーで測定し、(4)予め測定しておいたガラス単体の屈折率と、焼成後の膜の屈折率を基に、計算により、膜の屈折率の波長依存性と膜厚を算出し、波長550nmでの屈折率をマトリックスの屈折率とすることにより、シリケート40の450℃、60分間の焼成時の屈折率を求めたところ、1.45であった。
(C6溶液の調製)
以下の手順でC6溶液を調製した。
変性エタノールに、イオン交換水および硝酸水溶液(硝酸濃度:61質量%)の混合液を加え、5分間撹拌した。そこに化合物(B)として1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン(信越化学工業社製、KBM−3066)を加え、ウォーターバス中60℃で15分間撹拌し、固形分濃度(SiO換算)4質量%のC6溶液を調製した。
〔例1〕
(ガラス基材の洗浄)
ガラス基材として、ソーダライムガラス(旭硝子社製。FL1.1。サイズ:100mm×100mm、厚さ:1.1mmのガラス基板。)を用意した。該ガラスの表面を炭酸水素ナトリウム水で洗浄後、イオン交換水でリンスし、乾燥させた。
(防眩膜用塗布液の調製)
ES40溶液とC6溶液とを、固形分(SiO換算)での質量比(ES40/C6)が85/15となるように混合し、変性エタノールで希釈して固形分濃度(SiO換算)0.5質量%の防眩膜用塗布液を調製した。
(静電塗装装置)
図4に示した静電塗装装置10と同様の構成の静電塗装装置(液体静電コーター、旭サナック社製)を用意した。静電塗装ガンとしては、回転霧化式自動静電ガン(旭サナック社製、サンベル、ESA120、カップ径70mm)を用意した。
ガラス基材の接地をより取りやすくするために導電性基板として金属メッシュトレイを用意した。
(静電塗装)
静電塗装装置のコーティングブース内の温度を25±1℃の範囲内、湿度を50%±10%の範囲内に調節した。
静電塗装装置のチェーンコンベア上に、あらかじめ25℃に加熱しておいた洗浄済みのガラス基材を、導電性基板を介して置いた。チェーンコンベアで等速搬送しながら、ガラス基材のT面(フロート法による製造時に溶融スズに接した面の反対側の面)に、表1に示す塗布条件による静電塗装法によって、25±1℃の範囲内の温度の防眩膜用塗布液を塗布した後、大気中、450℃で30分間焼成し、防眩膜付きガラス基材を得た。
得られた防眩膜付きガラス基材について、前記の評価を行った。結果を表2に示す。
〔例2〜例6〕
防眩膜用塗布液の塗布条件、ガラス基材の温度(塗布前)を表1に示すようにした以外は例1と同様にして防眩膜付きガラス基材を得た。
得られた防眩膜付きガラス基材について前記の評価を行った。結果を表2に示す。
〔例7〜例12〕
ES40溶液とC6溶液との固形分での混合比率(SiO換算、ES40/C6)を90/10とし、防眩膜用塗布液の塗布条件、ガラス基材の温度(塗布前)を表1に示すようにした以外は例1と同様にして防眩膜付きガラス基材を得た。
得られた防眩膜付きガラス基材について前記の評価を行った。結果を表2に示す。
〔例13〜例20〕
防眩膜用塗布液として、ES40溶液を変性エタノールで表1に示す固形分濃度となるように希釈したものを使用し、防眩膜用塗布液の塗布条件、ガラス基材の温度(塗布前)を表1に示すようにした以外は例1と同様にして防眩膜付きガラス基材を得た。
得られた防眩膜付きガラス基材について前記の評価を行った。結果を表2に示す。
例1〜20の評価結果から、孔面積率を横軸、視感反射率を縦軸にとったグラフ(図7)、孔面積率を横軸、ヘーズを縦軸にとったグラフ(図8)、平均孔直径を横軸、視感反射率を縦軸にとったグラフ(図9)、平均孔直径を横軸、ヘーズを縦軸にとったグラフ(図10)、をそれぞれ作成した。
また、図11〜13にそれぞれ、例5、例9、例11で得た防眩膜付きガラス基材における防眩膜を観察したSEM像を示す。図11〜13中、右上には断面のSEM像、右下には斜め上方60度からの表面のSEM像、左下には上方からの表面のSEM像、左上にはその拡大図を示す。SEM像は日立ハイテクフィールディング社製走査電子顕微鏡S−3400Nを用いて撮影した。
表1中、製膜回数は、ガラス基材の搬送回数(防眩膜用塗布液の塗布回数)を示す。液量は、フローメータで設定された、静電塗装ガンへの防眩膜用塗布液の供給量を示す。コンベア速度は、ガラス基材の搬送速度を示す。カップ回転数は、静電塗装ガンの回転霧化頭の回転速度を示す。ノズル高さは、静電塗装ガンのノズル先端からガラス基材までの距離を示す。カップ径は、静電塗装ガンの回転霧化頭の外周縁の直径を示す。電圧(出力)は、静電塗装ガンに印加される電圧を示す。
図11〜13に示すとおり、例5、例11で得た防眩膜は、表面にうねりがあり、また、表面に複数の孔が開口していた。複数の孔はそれぞれ、防眩膜の表面付近でアリの巣状に形成されていた。
表2に示すとおり、例5〜6、11〜12の防眩膜付きガラス基材は、ヘーズが10%以下でありながら視感反射率が1%以下に抑制されていた。また、ヘーズが0.1%以上であり、防眩性を有していた。
一方、孔面積率が20%未満、平均孔直径が200nm未満の例1〜2、7〜8の防眩膜付きガラス基材は、ヘーズは低いものの、視感反射率が1%を超えていた。
孔面積率が20%未満の例3〜4、9〜10の防眩膜付きガラス基材も、ヘーズは低いものの、視感反射率が1%を超えていた。
化合物(B)を併用せず、ベース成分(A)を単独で用いた例13〜20においては、塗布条件を変化させても、孔面積率20%以上や平均孔直径200nm以上を達成できなかった。また、得られた防眩膜付きガラス基材のうち、視感反射率が1%以下となったのはヘーズが14%または19.4%と高い場合のみであり、ヘーズが10%以下である場合には視感反射率が1%を超えていた。
図7〜10に示すとおり、ベース成分(A)と化合物(B)とを併用した場合、孔面積率と視感反射率との間、孔面積率とヘーズとの間、平均孔直径と視感反射率との間、平均孔直径とヘーズとの間にはそれぞれ明らかな相関関係が見られた。
一方、ベース成分(A)を単独で用いた例13〜20においては、孔面積率や平均孔直径に対する視感反射率やヘーズの値のばらつきが大きかった。
1 防眩膜付きガラス基材
3 ガラス基材
5 防眩膜
5a 凸部
5b 孔

Claims (9)

  1. ガラス基材と、前記ガラス基材上に形成された防眩膜とを備え、
    前記防眩膜を構成するマトリックスの屈折率が1.44〜1.80であり、
    前記防眩膜が複数の凸部を含み、前記複数の凸部によって表面にうねりが形成され、前記うねりが形成された表面に複数の孔が開口しており、
    以下に規定されるZ範囲が0.4〜7μm、孔面積率が20〜34%、平均孔直径が200〜600nmであることを特徴とする、防眩膜付きガラス基材。
    Z範囲:前記うねりが形成された表面の(101μm×135μm)〜(111μm×148μm)の領域をレーザ顕微鏡で測定して得られる表面形状のXYZデータにおいて、Z方向の最小値と最大値との差。
    孔面積率:前記表面形状のXYZデータを、画像処理ソフトウェアSPIP(イメージメトロロジー社製)により形状解析することにより得られる「平面に複数の孔が散らばった形状イメージ」において、平面の総面積に対する前記複数の孔の合計面積の割合。
    平均孔直径:前記平面に複数の孔が散らばった形状イメージにおいて、前記複数の孔それぞれの直径(真円換算)を平均した値。
  2. 以下に規定される最大孔直径が13000nm以下である、請求項1に記載の防眩膜付きガラス基材。
    最大孔直径:前記平面に複数の孔が散らばった形状イメージにおいて、前記複数の孔それぞれの直径(真円換算)のうちの最大値。
  3. ヘーズが0.1〜10%である請求項1または2に記載の防眩膜付きガラス基材。
  4. 前記防眩膜上に撥水撥油層をさらに備え、最も視認側に前記撥水撥油層が存在する請求項1〜3のいずれか一項に記載の防眩膜付きガラス基材。
  5. 前記ガラス基材が曲面を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の防眩膜付きガラス基材。
  6. 車載物品用である請求項1〜5のいずれか一項に記載の防眩膜付きガラス基材。
  7. ガラス基材上に、防眩膜用塗布液を塗布して塗膜を形成する塗布工程と、前記塗膜を焼成して防眩膜を形成する焼成工程と、を含み、
    前記防眩膜用塗布液が、450℃、60分間の焼成時の屈折率が1.44〜1.80であるベース成分(A)と、下式(b)で表される化合物およびその加水分解縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)と、液状媒体(C)とを含み、
    前記焼成工程が、350℃以上で行われることを特徴とする、防眩膜付きガラス基材の製造方法。
    3−pSi−Q−SiL3−p ・・・(b)
    ここで、Qは、炭素原子間に−O−、−S−、−CO−および−NR’−(ただし、R’は水素原子または1価の炭化水素基である。)から選ばれる1つまたは2つ以上を組み合わせた基を有していてもよい2価の炭化水素基であり、Lは、加水分解性基であり、Rは、水素原子または1価の炭化水素基であり、pは、1〜3の整数である。
  8. 前記塗布工程が、静電塗装法により行われる、請求項7に記載の防眩膜付きガラス基材の製造方法。
  9. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の防眩膜付きガラス基材を備える物品。
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