JP2017075573A - 燃料供給制御装置 - Google Patents

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晶人 内田
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Abstract

【課題】噴射弁の固着を解消させるとともに、気体燃料を用いた機関運転の開始時における運転状態の安定性の低下を抑制することができる燃料供給制御装置を提供する。【解決手段】燃料供給制御装置である制御装置50は、CNGを用いた機関運転の開始前に、CNG用噴射弁32からCNGが噴射されない範囲内で同CNG用噴射弁32のソレノイドに電流を流す自己発熱処理を実施する。【選択図】図1

Description

本発明は、気体燃料を内燃機関に供給するための噴射弁を制御する燃料供給制御装置に関する。
特許文献1に記載されるように、CNG(圧縮天然ガス)などの気体燃料を内燃機関に供給する燃料供給装置には、高圧に維持された気体燃料を貯留する燃料タンクが設けられている。こうした燃料タンクに貯留される気体燃料には、高圧に圧縮する過程で混入したミスト状のオイルが含まれており、こうした気体燃料を噴射弁が噴射することとなるため、気体燃料に含まれるオイルが同噴射弁に付着してしまう。そして、外気温度が「0℃」以下となるような極低温時などでは、噴射弁に付着したオイルの粘度が高くなったり、同オイルが固化したりし、噴射弁の開弁不良、すなわち噴射弁の固着を招くことがある。
特許文献1に記載される装置にあっては、気体燃料を用いた機関運転の開始時に噴射弁が固着しているか否かを判定し、噴射弁が固着していると判定したときには噴射弁への通電時間を長くするようにしている。噴射弁はソレノイドを有しており、同ソレノイドへの通電が行われることにより噴射弁が自己発熱する。すなわち、噴射弁への通電時間を長くすることにより、噴射弁の自己発熱量が多くなり、同噴射弁の温度の上昇量が多くなる。このように噴射弁の温度が上昇すると、同噴射弁に付着しているオイルの温度もまた上昇する。すると、同オイルの粘性が低くなり、同噴射弁の固着が解消される。その結果、同噴射弁から気体燃料を噴射させることができ、気体燃料を用いた機関運転が開始されるようになる。
特開2000−282955号公報
ところで、特許文献1に記載される装置では、気体燃料を用いた機関運転の開始前、すなわち機関停止時における外気温に基づいて噴射弁が固着しているか否かを判定している。そのため、実際には噴射弁が固着していないにも拘わらず、外気温が低いために固着していると判定され、同噴射弁への通電時間が延長されることがある。この場合、同噴射弁からの気体燃料の噴射量が要求噴射量よりも過多になるおそれがある。
また、実際に噴射弁が固着していても、同噴射弁への通電の開始時点から、噴射弁の固着が解消され、気体燃料の噴射が実際に開始される時点までの長さは一定ではない。すなわち、噴射弁から気体燃料が実際に噴射されている時間の長さがばらつくこととなる。そのため、噴射弁からの気体燃料の噴射量にばらつきが生じ、気体燃料を用いた機関運転の開始時における運転状態が不安定になりやすい。
本発明の目的は、噴射弁の固着を解消させるとともに、気体燃料を用いた機関運転の開始時における運転状態の安定性の低下を抑制することができる燃料供給制御装置を提供することにある。
上記課題を解決するための燃料供給制御装置は、気体燃料を内燃機関の燃焼室内に供給する燃料供給装置に適用され、気体燃料を噴射する同燃料供給装置の噴射弁を制御する装置である。この燃料供給制御装置は、気体燃料を用いた機関運転の開始前に、噴射弁から気体燃料が噴射されない範囲内で同噴射弁のソレノイドに電流を流す自己発熱処理を実施する制御部を備える。
上記構成によれば、自己発熱処理の実施によって噴射弁のソレノイドに電流を流すことにより、同噴射弁は開弁することなく自己発熱するようになる。すると、噴射弁の温度上昇によって、同噴射弁の固着原因となるオイルなどの異物の温度も高くなる。その結果、同異物の粘性が低下し、噴射弁の固着が解消される。そして、このように噴射弁の固着を解消した上で、気体燃料を用いた機関運転が開始されることとなる。そのため、気体燃料を用いた機関運転の開始時では、噴射弁への通電時間内において実際に噴射弁から気体燃料が噴射されている時間のばらつきを抑えることができる。すなわち、気体燃料を用いた機関運転の開始時における噴射弁からの気体燃料の噴射量のばらつきを抑えることができる。したがって、噴射弁の固着を解消させるとともに、気体燃料を用いた機関運転の開始時における運転状態の安定性の低下を抑制することができるようになる。
ところで、噴射弁が固着していない状況下では同噴射弁のソレノイドへの通電時間が開弁必要時間に達すると、同噴射弁が開弁するようになっているものとする。この場合、噴射弁への通電時間が開弁必要時間よりも短いと、同噴射弁が固着しているか否かに拘わらず、同噴射弁は自己発熱するだけで開弁されない。そこで、上記燃料供給制御装置において、制御部は、自己発熱処理では、噴射弁のソレノイドへの通電時間を開弁必要時間未満とする通電を間欠的に繰り返すことが好ましい。この構成によれば、こうした自己発熱処理を実施している最中では、一回の通電は噴射弁が開弁する前に終了される。すなわち、自己発熱処理の実施中では、こうした通電が間欠的に繰り返される。そのため、噴射弁から気体燃料を噴射させることなく、同噴射弁を自己発熱させることができる。したがって、内燃機関の運転状態に何ら影響を与えることなく、当該噴射弁の固着を解消させることが可能となる。
また、噴射弁が固着していない状況下では同噴射弁のソレノイドに印加される電圧が開弁必要電圧以上であるときに、同噴射弁が開弁するようになっているものとする。この場合、噴射弁のソレノイドに印加する電圧が開弁必要電圧未満であると、同噴射弁が固着しているか否かに拘わらず、同噴射弁は自己発熱するだけで開弁されない。そこで、上記燃料供給制御装置において、制御部は、自己発熱処理では、開弁必要電圧よりも低い電圧を噴射弁のソレノイドに印加し続けるようにしてもよい。こうした自己発熱処理を実施することでも、噴射弁から気体燃料を噴射させることなく、同噴射弁を自己発熱させることができる。したがって、内燃機関の運転状態に何ら影響を与えることなく、当該噴射弁の固着を解消させることが可能となる。
また、噴射弁が固着していない状況下では同噴射弁のソレノイドに流れる電流が開弁必要電流以上であるときに、同噴射弁が開弁されるようになっているものとする。この場合、噴射弁のソレノイドに流れる電流が開弁必要電流未満であると、同噴射弁が固着しているか否かに拘わらず、同噴射弁は自己発熱するだけで開弁されない。そこで、上記燃料供給制御装置において、制御部は、自己発熱処理では、開弁必要電流よりも小さい電流を噴射弁のソレノイドに流し続けるようにしてもよい。こうした自己発熱処理を実施することでも、噴射弁から気体燃料を噴射させることなく、同噴射弁を自己発熱させることができる。したがって、内燃機関の運転状態に何ら影響を与えることなく、当該噴射弁の固着を解消させることが可能となる。
ここで、噴射弁の固着原因となるオイルなどの異物の温度が低いほど、同異物の粘度が高く、噴射弁の固着が解消されにくくなっていると予測される。そして、このように噴射弁の固着度合いが高い状況下において同噴射弁の固着を解消させるためには、自己発熱処理の実施に伴う噴射弁の温度上昇量を多くする必要がある。
そこで、上記燃料供給制御装置は、噴射弁の温度と相関するパラメータを取得し、同パラメータに基づき同噴射弁の温度が低いと予測されるほど自己発熱処理の実施時間を長くする時間設定部を備えてもよい。この場合、制御部は、気体燃料を用いた機関運転の開始前に、時間設定部によって設定された実施時間の間、自己発熱処理を実施することが好ましい。この構成によれば、噴射弁の温度が低いと予測される場合ほど、噴射弁に付着しているオイルなどの異物の粘性が高くなっていると予測できるため、自己発熱処理の実施時間を長くすることができる。その結果、同自己発熱処理の実施に伴う噴射弁の温度上昇量が多くなる分、同噴射弁の固着を解消させやすくすることができるようになる。
なお、自己発熱処理を実施すると、その分、気体燃料を用いた機関運転の開始が遅れることとなる。そこで、上記燃料供給制御装置は、噴射弁が固着しているか否かを判定する判定部を備えてもよい。この場合、制御部は、判定部によって噴射弁が固着していると判定されていないときには、自己発熱処理を実施しないことが好ましい。この構成によれば、噴射弁が固着しておらず、自己発熱処理の実施が不要と判断できるときには、同自己発熱処理が実施されることなく、気体燃料を用いた機関運転が開始されることとなる。したがって、自己発熱処理の不要な実施を抑制することができる分、気体燃料を用いた機関運転の開始の遅延を減らすことができるようになる。
ちなみに、内燃機関として、液体燃料を用いた運転と、気体燃料を用いた運転との選択が可能なバイフューエル型の内燃機関が知られている。こうした内燃機関の始動時には、気体燃料ではなく液体燃料が用いられる。そして、液体燃料を用いた機関運転が行われている状況下で切り替えが要求され、切り替えが許可されたときに、液体燃料を用いた機関運転から気体燃料を用いた機関運転に切り替えられる。
そこで、上記燃料供給制御装置は、液体燃料を用いた機関運転から気体燃料を用いた機関運転への切り替えが要求されたときに、固着している噴射弁を検出する固着検出部を備えてもよい。この場合、制御部は、上記切り替えが要求されている状況下で、固着検出部によって固着している噴射弁が検出されたときに、固着している噴射弁に対して自己発熱処理を実施し、自己発熱処理の実施終了後に液体燃料を用いた機関運転から気体燃料を用いた機関運転に切り替えるようにしてもよい。この構成によれば、固着している噴射弁に対して自己発熱処理を実施することで、同噴射弁の固着を解消させることができる。そのため、その後に気体燃料を用いた機関運転が行われているときには、各噴射弁を適切に開閉させることができるため、内燃機関の運転状態の安定性を維持することができる。
また、内燃機関がバイフューエル型の内燃機関である場合、上記燃料供給制御装置の制御部は、液体燃料を用いた運転から気体燃料を用いた運転への切り替えが要求されたときに、自己発熱処理を実施し、同自己発熱処理の実施終了後に液体燃料を用いた機関運転から気体燃料を用いた機関運転に切り替えるようにしてもよい。この構成によれば、自己発熱処理の実施によって噴射弁の固着を解消させた後に、気体燃料を用いた機関運転が開始されることとなる。そのため、気体燃料を用いた機関運転時には、各噴射弁を適切に開閉させることができるため、内燃機関の運転状態の安定性を維持することができる。
燃料供給制御装置の第1の実施形態である制御装置と、同制御装置によって運転が制御される内燃機関との概略を示す構成図。 気体燃料の一例であるCNGを噴射する噴射弁であるCNG用噴射弁の概略を示す断面図。 CNG用噴射弁の自己発熱によって同CNG用噴射弁の温度が上昇する様子を示すタイミングチャート。 同制御装置において、CNG用デリバリパイプ内の温度であるデリバリ温度に基づいて自己発熱処理の実施時間を設定するためのマップ。 同制御装置によって自己発熱処理が実施されているときにおいて、CNG用噴射弁のソレノイドに流れる電流の推移を示すタイミングチャート。 同制御装置によって実行される処理ルーチンであって、液体燃料の一例であるガソリンを用いた機関運転が行われている最中に実行される処理ルーチンを説明するフローチャート。 第2の実施形態の燃料供給制御装置である制御装置によって実行される処理ルーチンであって、ガソリンを用いた機関運転が行われている最中に実行される処理ルーチンを説明するフローチャート。 別の実施形態の燃料供給制御装置である制御装置によって自己発熱処理が実施されているときにおいて、CNG用噴射弁のソレノイドに印加される電圧の推移を示すタイミングチャート。 他の別の実施形態の燃料供給制御装置である制御装置によって自己発熱処理が実施されているときにおいて、CNG用噴射弁のソレノイドに流れる電流の推移を示すタイミングチャート。
(第1の実施形態)
以下、燃料供給制御装置を具体化した第1の実施形態を図1〜図6に従って説明する。
図1には、本実施形態の燃料供給制御装置である制御装置50と、この制御装置50によって運転が制御される内燃機関10とが図示されている。この内燃機関10は、液体燃料の一例であるガソリンを用いた運転と、気体燃料の一例であるCNG(圧縮天然ガス)を用いた運転との選択が可能なバイフューエル型の内燃機関である。
図1に示すように、内燃機関10のシリンダヘッド11には、吸気通路12の一部である吸気ポート13が設けられており、この吸気ポート13には、吸気通路12の一部である吸気マニホールド14が接続されている。そして、シリンダヘッド11には、吸気ポート13内にガソリンを噴射するガソリン用噴射弁21が取り付けられている。また、吸気マニホールド14には円筒形状の燃料噴射筒31が設けられており、この燃料噴射筒31にはCNGを噴射するCNG用噴射弁32が連結されている。内燃機関10にCNGを供給する際には、CNG用噴射弁32から噴射されたCNGが燃料噴射筒31から吸気マニホールド14内に流入される。
そして、内燃機関10では、ガソリン用噴射弁21又はCNG用噴射弁32の開閉によって供給された燃料(ガソリン又はCNG)と吸入空気とを含む混合気が吸気通路12内で生成され、当該混合気が内燃機関10の燃焼室15内に吸入される。すると、燃焼室15内で混合気が燃焼され、当該燃焼によって生じた燃焼ガス(排気)が燃焼室15内から排気通路16内に排出される。
こうした内燃機関10は、ガソリンを燃料として供給するガソリン供給系20と、CNGを燃料として供給するCNG供給系30とを備えている。本明細書では、CNG供給系30により、CNGを燃焼室15内に供給する「燃料供給装置」の一例が構成される。
図1に示すように、ガソリン供給系20は、ガソリンタンク22内からガソリンを吸引して圧送する燃料ポンプ23と、燃料ポンプ23により圧送された燃料が流入するガソリン用デリバリパイプ24とを備えている。ガソリン用デリバリパイプ24には、内燃機関10の気筒数と同数(図1に示す例では4つ)のガソリン用噴射弁21が接続されている。そして、ガソリン用噴射弁21は、内燃機関10の気筒毎、すなわち各気筒に対応する4つの吸気ポート13にそれぞれ取り付けられている。
図1に示すように、CNG供給系30は、高圧のCNGが貯留されているCNGタンク33に接続された高圧燃料配管34と、高圧燃料配管34の燃料流れ方向下流側の端部(図1では右端部)に接続されるCNG用デリバリパイプ35とを備えている。CNG用デリバリパイプ35には、内燃機関10の気筒数と同数(図1に示す例では4つ)のCNG用噴射弁32が接続されている。また、CNG用デリバリパイプ35には、カバー36がボルト締結によって固定されている。そして、各CNG用噴射弁32は、カバー36とCNG用デリバリパイプ35との間に挟み込まれた状態で、等間隔置きに配設されている。
カバー36には燃料ホース37が接続されている。このCNG供給系30では、CNG用噴射弁32においてCNGを噴射する噴射部がカバー36の内部に形成された貫通孔を介して燃料ホース37に連通されている。そして、燃料ホース37の燃料流れ方向下流側の端部に燃料噴射筒31が接続されている。そのため、CNG用噴射弁32が開閉されると、CNG用デリバリパイプ35内のCNGが、カバー36の内部及び燃料ホース37を通過して、燃料噴射筒31から吸気マニホールド14内に流入するようになる。
また、CNG供給系30には、CNGタンク33と高圧燃料配管34との間に、手動式の開閉弁である手動開閉弁38が設けられている。また、高圧燃料配管34における手動開閉弁38よりも燃料流れ方向下流側の部分には、制御装置50による制御によって開閉動作される遮断弁39が設けられている。そして、手動開閉弁38及び遮断弁39の双方が開弁している場合には、CNGタンク33から高圧燃料配管34内へのCNGの流入が許可される。一方、手動開閉弁38及び遮断弁39の少なくとも一方の弁が閉弁している場合には、CNGタンク33から高圧燃料配管34内へのCNGの流入が禁止される。
高圧燃料配管34における遮断弁39よりも燃料流れ方向下流側の部位には、CNGタンク33から供給されるCNGの圧力を減圧するレギュレータ40が設けられている。そして、このレギュレータ40により、所定圧力まで減圧されたCNGがCNG用デリバリパイプ35内に供給されるようになっている。
制御装置50には、CNG用デリバリパイプ35内の温度であるデリバリ温度TMPDCを検出する温度センサ51と、CNG用デリバリパイプ35内の圧力であるデリバリ燃圧PDCを検出する燃圧センサ52とが電気的に接続されている。また、制御装置50には、ガソリンを用いた機関運転からCNGを用いた機関運転に切り替える際に車両の乗員に操作される切替スイッチ55が電気的に接続されている。そして、制御装置50は、ガソリンを用いた機関運転を行う際には各ガソリン用噴射弁21の開閉を制御する一方、CNGを用いた機関運転を行う際には遮断弁39を開弁させた上で各CNG用噴射弁32の開閉を制御するようになっている。
次に、図2を参照し、CNG用噴射弁32について説明する。
図2に示すように、CNG用噴射弁32は、所謂常閉型の電磁弁であって、略円筒状をなす本体ハウジング60を備えている。この本体ハウジング60の軸線方向における一端(図2では上側)には、本体ハウジング60の貫通孔62の一端を閉塞する閉塞部材63が設けられている。また、貫通孔62内において上記軸線方向における中途位置には、ボビン64とボビン64の外周側に巻かれたソレノイド66とが設けられている。また、ボビン64の内周側には、閉塞部材63に支持されるスプリング67が上記軸線方向に伸縮自在に設けられている。
また、本体ハウジング60の軸線方向における他端側(図2では下側)には、バルブボディ69が設けられている。このバルブボディ69の一端(図中上端)は本体ハウジング60の貫通孔62内に位置し、バルブボディ69の他端(図中下端)は本体ハウジング60外(すなわち、本体ハウジング60の図2における下方)に位置している。
こうしたバルブボディ69は、収容孔68内において上記軸線方向に摺動する可動鉄心70を支持している。この可動鉄心70には、スプリング67によって常に上記軸線方向における他方側(図2では下側)に付勢されている。こうした可動鉄心70は、ソレノイド66に電力が供給された場合、該ソレノイド66で発生する電磁力によって、スプリング67からの付勢力に抗して軸線方向における一方側(図2では上側)に摺動する。
また、バルブボディ69の内側には、可動鉄心70と一体摺動可能に設けられた弁体71と、バルブボディ69の収容孔68の上記軸線方向における他方側(図2では下側)の開口を閉塞する弁座72とが設けられている。この弁座72に設けられた噴射口73は、ソレノイド66への通電が行われていない場合には弁体71によって閉塞される。一方、ソレノイド66への通電が行われている場合、ソレノイド66から発生した電磁力によって可動鉄心70及び弁体71が弁座72から離れる方向に移動し、噴射口73が開放される。これにより、図示しない吸入口からCNG用噴射弁32内に供給されたCNGが、噴射口73から噴射される。
ところで、CNG供給系30から供給されるCNGには、ミスト状のオイルが混入している。そのため、CNG用噴射弁32の構成部品である弁体71及び弁座72には、当該オイルが付着してしまう。そして、弁体71及び弁座72に付着したオイルの温度が低くなり、同オイルの粘度が高くなったり、同オイルが固化したりすると、ソレノイド66への通電を行っても弁座72から弁体71を離間させにくくなる。このように弁体71が弁座72から離間しにくい状態のことを「CNG用噴射弁32の固着」という。
そこで、本実施形態の燃料供給制御装置である制御装置50では、車両の乗員による切替スイッチ55の操作によってガソリンを用いた機関運転からCNGを用いた機関運転への切り替えが要求されたときに、CNG用噴射弁32のソレノイド66に電流を流す自己発熱処理を実施するようにしている。自己発熱処理は、ガソリンを用いた機関運転が行われており、CNGを用いた機関運転の開始前に実施される。しかも、自己発熱処理では、CNG用噴射弁32が開弁しないように通電態様が調整される。そのため、自己発熱処理の実施によって、CNG用噴射弁32からCNGを噴射させることなく、CNG用噴射弁32を自己発熱させることができる。こうしたCNG用噴射弁32の自己発熱により、CNG用噴射弁32の温度が上昇され、同CNG用噴射弁32に付着しているオイルの温度が上昇される。これにより、当該オイルの粘度が低下し、弁体71が弁座72から離間しやすくなる。
ちなみに、図3に示すように、オイルの粘度と、同オイルが付着しているCNG用噴射弁32の温度との間にはある程度相関がある。すなわち、CNG用噴射弁32の温度が固着判定温度TMPop以上であるときには、オイルの粘度が十分に低くなっており、CNG用噴射弁32の固着は発生しないと判断することができる。そのため、CNG用噴射弁32を自己発熱させる前でのCNG用噴射弁32の温度が低いときほど、CNG用噴射弁32の固着が解消したと判定できるまでに要する時間が長くなる。すなわち、自己発熱処理の実施前のCNG用噴射弁32の温度が低いと予測されるときほど、自己発熱処理の実施時間TMCを長くすることが好ましい。
本実施形態の燃料供給制御装置である制御装置50では、CNG用噴射弁32の温度と相関するパラメータとして、CNG用デリバリパイプ35内のデリバリ温度TMPDCを取得し、同デリバリ温度TMPDCに基づいて自己発熱処理の実施時間TMCを設定している。すなわち、自己発熱処理の実施時間TMCは、同自己発熱処理の実施前のデリバリ温度TMPDCが低いほど長くされる。
図4には、デリバリ温度TMPDCに基づいて自己発熱処理の実施時間TMCを設定するためのマップの一例が図示されている。なお、図4に示すマップにあっては、第1の温度TMP1は第2の温度TMP2よりも低く、第2の温度TMP2は上記固着判定温度TMPopよりも低いものとする。
図4に示すように、デリバリ温度TMPDCが第1の温度TMP1以下である場合、実施時間TMCは第1の時間TMC1に設定される。また、デリバリ温度TMPDCが第1の温度TMP1よりも高く且つ第2の温度TMP2以下である場合、実施時間TMCは、第1の時間TMC1よりも短い第2の時間TMC2に設定される。また、デリバリ温度TMPDCが第2の温度TMP2よりも高い場合、実施時間TMCは、第2の時間TMC2よりも短い第3の時間TMC3に設定される。
次に、図5を参照し、本実施形態の燃料供給制御装置である制御装置50によって実施される自己発熱処理について説明する。
自己発熱処理は、CNG用噴射弁32からCNGを噴射させる際における同CNG用噴射弁32への電流制御と基本的には同じである。ただし、CNG用噴射弁32のソレノイド66への一回の通電に要する時間である通電時間TMonは、CNG用噴射弁32からCNGを噴射させる際のソレノイド66への通電時間よりも極めて短い。すなわち、CNG用噴射弁32にあっては、ソレノイド66への通電によって同ソレノイド66が発生する電磁力が徐々に大きくなる。そして、ソレノイド66が発生する電磁力が大きくなり、弁体71が弁座72から離間するとCNG用噴射弁32が開弁してCNGが噴射される。
オイルなどの異物が付着しておらず、CNG用噴射弁32が固着していない状況下では、ソレノイド66への通電が開始された時点からCNG用噴射弁32からCNGが噴射され始める時点までの時間である開弁必要時間TMopenは、CNG用噴射弁32の諸元などによって予め把握することができる。すなわち、ソレノイド66への通電時間TMonが開弁必要時間TMopen未満である場合、CNG用噴射弁32が固着しているか否かに拘わらず、CNG用噴射弁32は自己発熱するだけで開弁されないこととなる。
そこで、図5に示すように、自己発熱処理では、ソレノイド66への通電時間TMonが開弁必要時間TMopen未満となる通電が間欠的に繰り返されるようになっている。こうした間欠的な通電が、実施時間TMC継続される。すなわち、自己発熱処理では、CNG用噴射弁32からCNGが噴射されない範囲でのソレノイド66への通電が行われる。
次に、図6に示すフローチャートを参照し、ガソリンを用いた機関運転が行われているときに制御装置50が実行する処理ルーチンについて説明する。なお、この処理ルーチンは、予め設定された制御サイクル毎に実行される。
図6に示すように、制御装置50は、CNGを用いた機関運転への切り替えが要求されているか否かを判定する(ステップS11)。すなわち、ガソリンを用いた機関運転が行われている最中で切替スイッチ55が操作されたことを検知したときに、CNGを用いた機関運転への切り替えが要求されていると判断することができる。そして、切り替えが要求されていない場合(ステップS11:NO)、制御装置50は、本処理ルーチンを一旦終了する。
一方、切り替えが要求されている場合(ステップS11:YES)、制御装置50は、CNG供給系30の遮断弁39を開弁させる(ステップS12)。続いて、制御装置50は、温度センサ51によって検出されているCNG用デリバリパイプ35内のデリバリ温度TMPDCを取得する(ステップS13)。そして、制御装置50は、取得したデリバリ温度TMPDCが上記の固着判定温度TMPopよりも高いか否かを判定する(ステップS14)。デリバリ温度TMPDCが固着判定温度TMPopよりも高いときにはCNG用噴射弁32が固着していないと判断することができる一方、デリバリ温度TMPDCが固着判定温度TMPop以下であるときにはCNG用噴射弁32が固着している可能性があると判断することができる。この点で、本明細書では、制御装置50により、CNG用噴射弁32が固着しているか否かを判定する「判定部」の一例が構成される。
そのため、デリバリ温度TMPDCが固着判定温度TMPopよりも高い場合(ステップS14:YES)、制御装置50は、自己発熱処理を実施することなく、その処理を後述するステップS17に移行する。一方、デリバリ温度TMPDCが固着判定温度TMPop以下である場合(ステップS14:NO)、制御装置50は、図4に示すマップを用い、自己発熱処理の実施時間TMCを、デリバリ温度TMPDCに応じた値に設定する(ステップS15)。この点で、本明細書では、制御装置50により、CNG用噴射弁32の温度と相関するデリバリ温度TMPDCを取得し、同デリバリ温度TMPDCに基づきCNG用噴射弁32の温度が低いと予測されるほど自己発熱処理の実施時間TMCを長くする「時間設定部」の一例が構成される。
続いて、制御装置50は、設定した実施時間TMCの間、自己発熱処理を実施する(ステップS16)。この点で、本明細書では、制御装置50により、CNGを用いた機関運転の開始前に、CNG用噴射弁32からCNGが噴射されない範囲内でCNG用噴射弁32のソレノイド66に電流を流す自己発熱処理を実施する「制御部」の一例が構成される。そして、自己発熱処理の実施の終了後、制御装置50は、その処理を次のステップS17に移行する。
ステップS17において、制御装置50は、ガソリンを用いた機関運転からCNGを用いた機関運転への切り替えを許可する。その後、制御装置50は、本処理ルーチンを一旦終了する。
次に、ガソリンを用いた機関運転からCNGを用いた機関運転に切り替わる際の作用について説明する。
ガソリンを用いた機関運転が行われている最中に切替スイッチ55が操作されると(ステップS11:YES)、CNG供給系30によるCNGの供給の準備が行われる。すなわち、遮断弁39が開弁され(ステップS12)、CNG用デリバリパイプ35内にCNGが供給されるようになる。この状態でのデリバリ温度TMPDCが固着判定温度TMPop以下である場合(ステップS14:NO)、自己発熱処理の実施によって、CNG用噴射弁32のソレノイド66への通電が行われる(ステップS16)。
そして、自己発熱処理の実施が終了されると、CNGを用いた機関運転への切り替えが許可される(ステップS17)。その後、ガソリン用噴射弁21からのガソリンの噴射が禁止され、CNG用噴射弁32からCNGが噴射されるようになる。これにより、切り替えが完了する。
以上、上記構成及び作用によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)CNG用噴射弁32を開弁させることなく同CNG用噴射弁32の温度を上昇させる自己発熱処理が、CNGを用いた機関運転の開始前に実施される。そのため、CNG用噴射弁32の固着を解消した上で、ガソリンを用いた機関運転からCNGを用いた機関運転に切り替えることができる。そのため、CNGを用いた機関運転の開始時では、CNG用噴射弁32への通電時間内において実際にCNG用噴射弁32からCNGが噴射されている時間のばらつきを抑えることができる。すなわち、CNGを用いた機関運転の開始時におけるCNG用噴射弁32からのCNGの噴射量のばらつきを抑えることができる。したがって、CNG用噴射弁32の固着を解消させるとともに、CNGを用いた機関運転の開始時における運転状態の安定性の低下を抑制することができる。
(2)本実施形態の燃料供給制御装置である制御装置50にあっては、自己発熱処理では、CNG用噴射弁32のソレノイド66への通電時間TMonを開弁必要時間TMopen未満とする通電を、間欠的に繰り返している。その結果、CNG用噴射弁32からCNGを噴射させることなく、CNG用噴射弁32を自己発熱させることができる。したがって、ガソリンを用いた運転を行っている内燃機関10の運転状態に何ら影響を与えることなく、CNG用噴射弁32の固着を解消させることができる。
(3)CNG用噴射弁32の温度が低いと予測される場合ほど、CNG用噴射弁32に付着しているオイルなどの異物の粘性が高くなっていると予測できるため、自己発熱処理の実施時間TMCが長くされる。その結果、自己発熱処理の実施に伴うCNG用噴射弁32の温度上昇量が多くなる分、CNG用噴射弁32の固着を解消させやすくすることができる。
また、この場合、CNG用噴射弁32の固着を比較的容易に解消できるときには、自己発熱処理の実施時間TMCが短くされる。したがって、同実施時間TMCが不要に長くされることが抑制される分、CNGを用いた機関運転を早期に開始させることができる。また、CNG用噴射弁32の固着を解消させるのに要する消費電力量の増大を抑制することもできる。
(4)CNG用噴射弁32が固着しておらず、自己発熱処理の実施が不要と判断できるときには、同自己発熱処理が実施されることなく、CNGを用いた機関運転が開始されることとなる。したがって、自己発熱処理の不要な実施を抑制することができる分、ガソリンを用いた機関運転からCNGを用いた機関運転に早期に切り替えることができる。また、CNG用噴射弁32での不要な電力の消費を抑制することもできる。
(第2の実施形態)
次に、燃料供給制御装置を具体化した第2の実施形態を図7に従って説明する。本実施形態の燃料供給制御装置では、各CNG用噴射弁32が固着しているか否かを個別に検査し、固着を検出したCNG用噴射弁32に対してのみ自己発熱処理を実施する点などが第1の実施形態と相違している。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1の実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
本実施形態の燃料供給制御装置である制御装置50では、ガソリンを用いた機関運転が行われているときに固着判定処理が実施される。
すなわち、固着判定処理では、全ての気筒のうち、1つの気筒を対象気筒とした場合、当該対象気筒に対してCNGが試験的に供給され、それ以外の他の気筒に対してガソリンが供給される。この場合、対象気筒用のCNG用噴射弁32が固着していないときには、CNG用噴射弁32への通電に伴って同CNG用噴射弁32からCNGが噴射されるため、CNG用デリバリパイプ35内の圧力であるデリバリ燃圧PDCが減少される。一方、対象気筒用のCNG用噴射弁32が固着しているときには、CNG用噴射弁32に通電が行われても同CNG用噴射弁32からCNGが噴射されない又は噴射されても噴射量は微量である。そのため、デリバリ燃圧PDCが変化しない、又は、デリバリ燃圧PDCが変化してもその変化量は微量である。すなわち、このように対象気筒に対応するCNG用噴射弁32に対して試験的に通電させることで、当該CNG用噴射弁32が固着しているか否かを判定することができる。
そして、1つのCNG用噴射弁32の固着判定が終了されると、別の気筒が対象気筒として選択され、当該対象気筒に対してCNGが燃料として試験的に供給され、対象気筒以外の他の気筒に対してはガソリンが燃料として供給される。こうした固着判定が全てのCNG用噴射弁32に対して行われると、固着判定処理の実施が終了される。なお、こうした固着判定処理は、内燃機関10の1サイクルで1つの気筒(すなわち、CNG用噴射弁32)に対して実施する。
次に、図7に示すフローチャートを参照し、ガソリンを用いた機関運転が行われているときに制御装置50が実行する処理ルーチンについて説明する。なお、この処理ルーチンは、予め設定された制御サイクル毎に実行される。
図7に示すように、制御装置50は、CNGを用いた機関運転への切り替えが要求されていない場合(ステップS11:NO)、本処理ルーチンを一旦終了する。一方、CNGを用いた機関運転への切り替えが要求されている場合(ステップS11:YES)、制御装置50は、CNG供給系30の遮断弁39を開弁させ(ステップS12)、CNG用デリバリパイプ35内のデリバリ温度TMPDCを取得する(ステップS13)。
そして、制御装置50は、上記の固着判定処理を全てのCNG用噴射弁32に対して順番に実施する(ステップS141)。全てのCNG用噴射弁32に対する固着判定処理の実施が完了した後、制御装置50は、固着しているCNG用噴射弁32を検出したか否かを判定する(ステップS142)。この点で、本明細書では、ガソリンを用いた機関運転からCNGを用いた機関運転への切り替えが要求されたときに、固着しているCNG用噴射弁32を検出する「固着検出部」の一例が構成される。
固着しているCNG用噴射弁32を検出していない場合(ステップS142:NO)、制御装置50は、自己発熱処理を実施することなく、その処理を後述するステップS17に移行する。一方、固着しているCNG用噴射弁32を検出した場合(ステップS142:YES)、制御装置50は、図4に示すマップを用い、自己発熱処理の実施時間TMCを、取得したデリバリ温度TMPDCに応じた値に設定する(ステップS15)。
続いて、制御装置50は、設定した実施時間TMCの間、自己発熱処理を実施する(ステップS16)。このとき、制御装置50は、固着しているCNG用噴射弁32に対しては自己発熱処理を実施し、固着していないCNG用噴射弁32に対しては自己発熱処理を実施しない。そして、自己発熱処理の実施の終了後、その処理を次のステップS17に移行する。
ステップS17において、制御装置50は、ガソリンを用いた機関運転からCNGを用いた機関運転への切り替えを許可する。その後、制御装置50は、本処理ルーチンを一旦終了する。
以上、本実施形態の燃料供給制御装置によれば、上記第1の実施形態の効果(1)〜(4)と同等の効果に加え、以下に示す効果をさらに得ることができる。
(5)本実施形態の燃料供給制御装置にあっては、固着判定処理によってCNG用噴射弁32が実際に固着しているか否かが判定される。そして、固着しているCNG用噴射弁32に対しては自己発熱処理が実施されるものの、固着していないCNG用噴射弁32に対しては自己発熱処理が実施されない。そのため、少なくとも1つのCNG用噴射弁32の固着が検出されたときには全てのCNG用噴射弁32に対して自己発熱処理を実施する場合と比較し、自己発熱処理の実施対象となるCNG用噴射弁32の数を減らすことも可能となる。したがって、CNG用噴射弁32の固着を解消させる際の消費電力量の増大を抑制することが可能となる。
(6)また、固着判定処理の結果、固着しているCNG用噴射弁32が検出されなかったときには、自己発熱処理が実施されない。すなわち、上記第1の実施形態の場合と比較し、CNG用噴射弁32が実際には固着していないにも拘わらず、自己発熱処理が実施されてしまう事象が生じにくくなる。したがって、自己発熱処理の不要な実施を抑制することができる。
なお、上記各実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・自己発熱処理は、CNG用噴射弁32からCNGが噴射されない範囲内で同CNG用噴射弁32を自己発熱させることができるのであれば、上記各実施形態とは異なる処理であってもよい。
例えば、図8に二点鎖線で示すように、CNG用噴射弁32が固着していない状況下ではCNG用噴射弁32のソレノイド66に印加される電圧Vonが開弁必要電圧Vopen以上であるときに、CNG用噴射弁32が開弁するようになっているものとする。この場合、ソレノイド66に印加する電圧Vonが開弁必要電圧Vopen未満であると、CNG用噴射弁32が固着しているか否かに拘わらず、CNG用噴射弁32は自己発熱するだけで開弁されない。そこで、図8に実線で示すように、自己発熱処理では、開弁必要電圧Vopenよりも低い電圧VonをCNG用噴射弁32のソレノイド66に印加し続けるようにしてもよい。こうした自己発熱処理を実施することでも、CNG用噴射弁32からCNGを噴射させることなく、同CNG用噴射弁32を自己発熱させることができる。したがって、ガソリンを用いた機関運転に何ら影響を与えることなく、CNG用噴射弁32の固着を解消させることができる。
また、このようにCNG用噴射弁32のソレノイド66に電圧Vonを印加し続ける場合、同電圧Vonが高いほど、CNG用噴射弁32の自己発熱量が多くなると予測される。そこで、CNG用噴射弁32の温度が低いと予測される場合ほど、自己発熱処理では、開弁必要電圧Vopen未満の範囲で、ソレノイド66に印加する電圧Vonを高くするようにしてもよい。このようにCNG用噴射弁32の温度の予測によって電圧Vonを可変とする場合には、自己発熱処理の実施時間TMCを固定としてもよい。
また、図9に二点鎖線で示すように、CNG用噴射弁32が固着していない状況下ではCNG用噴射弁32のソレノイド66に流れる電流Ionが開弁必要電流Iopen以上であるときに、CNG用噴射弁32が開弁されるようになっているものとする。この場合、ソレノイド66に流れる電流Ionが開弁必要電流Iopen未満であると、CNG用噴射弁32が固着しているか否かに拘わらず、CNG用噴射弁32は自己発熱するだけで開弁されない。そこで、自己発熱処理では、開弁必要電流Iopenよりも小さい電流IonをCNG用噴射弁32のソレノイド66に流し続けるようにしてもよい。こうした自己発熱処理を実施することでも、CNG用噴射弁32からCNGを噴射させることなく、同CNG用噴射弁32を自己発熱させることができる。したがって、ガソリンを用いた機関運転に何ら影響を与えることなく、CNG用噴射弁32の固着を解消させることができる。
また、このようにCNG用噴射弁32のソレノイド66に電流Ionを流し続ける場合、同Ionが大きいほど、CNG用噴射弁32の自己発熱量が多くなると予測される。そこで、CNG用噴射弁32の温度が低いと予測される場合ほど、自己発熱処理では、開弁必要電流Iopen未満の範囲で、ソレノイド66に流す電流Ionを大きくするようにしてもよい。このようにCNG用噴射弁32の温度の予測によって電流Ionを可変とする場合には、自己発熱処理の実施時間TMCを固定としてもよい。
・第2の実施形態では、固着判定処理を実施し、固着しているCNG用噴射弁32に対してのみ自己発熱処理を実施するようにしている。しかし、これに限らず、固着しているCNG用噴射弁32が1つでもある場合、固着しているCNG用噴射弁32を含む全てのCNG用噴射弁32に対して自己発熱処理を実施するようにしてもよい。
・自己発熱処理の実施後には、CNG用噴射弁32からCNGを噴射できるか否かを確認する処理を実施し、CNG用噴射弁32からCNGが噴射できることを確認できたときに限り、ガソリンを用いた機関運転からCNGを用いた機関運転への切り替えを許可するようにしてもよい。確認方法としては、以下に示す方法を一例として挙げることができる。
すなわち、ガソリンを用いた機関運転を行っている最中で、排気のエミッションに影響を与えない程度の量のCNGをCNG用噴射弁32から噴射させる。そして、このときの排気の酸素濃度(すなわち、気筒内で燃焼された混合気の空燃比)やデリバリ燃圧PDCの変化を検出できたときには、CNG用噴射弁32からCNGが噴射できることを確認することができる。
また、判定対象となる1つの気筒に対応するCNG用噴射弁32からCNGを試験的に供給させ、それ以外の他の気筒に対してガソリンを供給させる。そして、このときにデリバリ燃圧PDCの変化を検出できたときに、当該CNG用噴射弁32からCNGが噴射できることを確認することができる。
・内燃機関10の使用環境の温度が低いほど、CNG用噴射弁32に付着しているオイルの粘度が低くなりやすい。そこで、内燃機関10の使用環境の温度が低いほど、自己発熱処理の実施時間TMCを長くするようにしてもよい。この場合、内燃機関10の使用環境の温度が、「CNG用噴射弁32の温度と相関するパラメータ」に相当することとなる。こうした制御構成を採用しても、上記(3)と同等の効果を得ることができる。
・CNG用噴射弁32が吸気マニホールド14に直接接続されていることがある。この場合、デリバリ温度TMPDCよりも内燃機関10の冷却水の温度のほうがCNG用噴射弁32の温度との相関性が高い。そこで、このようにCNG用噴射弁32が吸気マニホールド14に直接接続されている場合、内燃機関10の冷却水の温度が低いほど、自己発熱処理の実施時間TMCを長くするようにしてもよい。この場合、内燃機関10の冷却水の温度が、「CNG用噴射弁32の温度と相関するパラメータ」に相当することとなる。こうした制御構成を採用しても、上記(3)と同等の効果を得ることができる。
・自己発熱処理の実施時間TMCを、CNG用噴射弁32の温度によらず固定値としてもよい。この場合、自己発熱処理の実施時間TMCを、CNG用噴射弁32の使用が想定される最低温度に応じた長さとすることが好ましい。
・自己発熱処理を、CNGを用いた機関運転が実際に開始される直前まで実施するようにしてもよい。
・上記各実施形態では、ガソリンを用いた機関運転からCNGを用いた機関運転への切り替えが要求されたときには、CNG用噴射弁32が固着しているか否かの判定を行うことなく、全てのCNG用噴射弁32に対して自己発熱処理を実施するようにしてもよい。
・CNG供給系30を備える内燃機関は、ガソリン供給系20を備えないモノフューエル型の内燃機関であってもよい。この場合、機関始動時からCNGを内燃機関の燃焼室内に供給することとなる。そのため、運転者によって機関始動が要求された場合、自己発熱処理を実施した上で、機関運転が開始されることとなる。
・燃料供給制御装置を備えた車両を、動力源として内燃機関10の他にモータを備えたハイブリッド車両に具体化してもよい。この場合、モータの駆動によって車両を走行させている状況下でCNGを用いた機関運転が要求されたときに、CNGを用いた機関運転の開始前に自己発熱処理を実施することとなる。
・各実施形態において、気体燃料は、内燃機関で燃焼可能な燃料であって且つ噴射弁に気体として供給されるものであれば、CNG以外の他の気体燃料(水素ガスなど)であってもよい。例えば、気体燃料が水素ガスである場合、液体燃料としてはガソリンを挙げることができる。
また、気体燃料は、LPG(液化石油ガス)であってもよい。LPGにはタールなどの異物が混入しており、LPGを噴射する噴射弁には当該タールが付着することがある。そして、タールの温度が低くなると、タールの粘度が高くなり、当該噴射弁の固着を招くことがある。そこで、こうした場合であっても、自己発熱処理の実施によって噴射弁を自己発熱させることにより、同噴射弁に付着しているタールなどの異物の粘度が低くなり、同噴射弁の固着を解消させることが可能となる。
10…内燃機関、15…燃焼室、30…燃料供給装置の一例であるCNG供給系、32…CNG用噴射弁、50…燃料供給制御装置の一例である制御装置(制御部、時間設定部、判定部、固着検出部)、66…ソレノイド、Ion…電流、Iopen…開弁必要電流、TMC…実施時間、TMon…通電時間、TMopen…開弁必要時間、TMPDC…パラメータの一例であるデリバリ温度、Von…電圧、Vopen…開弁必要電圧。

Claims (8)

  1. 気体燃料を内燃機関の燃焼室内に供給する燃料供給装置に適用され、気体燃料を噴射する同燃料供給装置の噴射弁を制御する燃料供給制御装置であって、
    気体燃料を用いた機関運転の開始前に、前記噴射弁から気体燃料が噴射されない範囲内で同噴射弁のソレノイドに電流を流す自己発熱処理を実施する制御部を備える
    ことを特徴とする燃料供給制御装置。
  2. 前記噴射弁が固着していない状況下では同噴射弁のソレノイドへの通電時間が開弁必要時間に達すると、同噴射弁が開弁するようになっており、
    前記制御部は、前記自己発熱処理では、前記噴射弁のソレノイドへの通電時間を前記開弁必要時間未満とする通電を間欠的に繰り返す
    請求項1に記載の燃料供給制御装置。
  3. 前記噴射弁が固着していない状況下では同噴射弁のソレノイドに印加される電圧が開弁必要電圧以上であるときに、同噴射弁が開弁するようになっており、
    前記制御部は、前記自己発熱処理では、前記開弁必要電圧よりも低い電圧を前記噴射弁のソレノイドに印加し続ける
    請求項1に記載の燃料供給制御装置。
  4. 前記噴射弁が固着していない状況下では同噴射弁のソレノイドに流れる電流が開弁必要電流以上であるときに、同噴射弁が開弁されるようになっており、
    前記制御部は、前記自己発熱処理では、前記開弁必要電流よりも小さい電流を前記噴射弁のソレノイドに流し続ける
    請求項1に記載の燃料供給制御装置。
  5. 前記噴射弁の温度と相関するパラメータを取得し、同パラメータに基づき同噴射弁の温度が低いと予測されるほど前記自己発熱処理の実施時間を長くする時間設定部を備え、
    前記制御部は、気体燃料を用いた機関運転の開始前に、前記時間設定部によって設定された実施時間の間、前記自己発熱処理を実施する
    請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の燃料供給制御装置。
  6. 前記噴射弁が固着しているか否かを判定する判定部を備え、
    前記制御部は、前記判定部によって前記噴射弁が固着していると判定されていないときには、前記自己発熱処理を実施しない
    請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載の燃料供給制御装置。
  7. 前記内燃機関は、液体燃料を用いた運転と、気体燃料を用いた運転との選択が可能なバイフューエル型の内燃機関であり、
    液体燃料を用いた機関運転から気体燃料を用いた機関運転への切り替えが要求されたときに、固着している前記噴射弁を検出する固着検出部を備え、
    前記制御部は、
    前記切り替えが要求されている状況下で、前記固着検出部によって固着している前記噴射弁が検出されたときに、
    固着している噴射弁に対して前記自己発熱処理を実施し、同自己発熱処理の実施終了後に液体燃料を用いた機関運転から気体燃料を用いた機関運転に切り替える
    請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載の燃料供給制御装置。
  8. 前記内燃機関は、液体燃料を用いた運転と、気体燃料を用いた運転との選択が可能なバイフューエル型の内燃機関であり、
    前記制御部は、液体燃料を用いた運転から気体燃料を用いた運転への切り替えが要求されたときに、前記自己発熱処理を実施し、同自己発熱処理の実施終了後に液体燃料を用いた機関運転から気体燃料を用いた機関運転に切り替える
    請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載の燃料供給制御装置。
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