JP2017074211A - 感染症防御システムおよび抗菌剤 - Google Patents

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吉晴 増井
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Abstract

【課題】共用施設の使用者に対する感染症を効果的に防止する。【解決手段】感染症防御システム1は、抗菌剤を貯留する液体タンク3と、棒状の中空ストローであって排出口を液体タンクの外部に保持するとともに吸上口が抗菌剤に浸るよう同タンク3に差込まれる液体ストロー31と、外部から吸込んだ空気を圧縮して空気ノズルから噴射するコンプレッサ2と、空気ノズルと液体ストローの排出口が差込まれた閉空間を成し且つ同閉空間に霧状に浮遊した抗菌剤を吐出する浮遊液滴ノズル41が取付けられた霧生成室4と、噴射孔62の空いた誘導パイプを内部に格納した2台以上の柱状噴霧器6と、霧生成室の浮遊液滴ノズルと柱状噴霧器内の誘導パイプを連結する誘導チューブ5と、コンプレッサ2への電力供給を司るスイッチであって利用者の踏込操作により荷重がかかるとオンになり同荷重から解放されるとオフになる足踏式スイッチ7と、を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、穀物から抽出されたアミノ酸を主成分とする抗菌剤、および、同抗菌剤を噴霧する感染症防御システムに関する。
近年では、毎年のようにノロウイルスの集団感染・感染拡大といったニュースを耳にする。
実際のところノロウイルスの感染力は非常に強いものであり、ごくごく少ない個体数(10個〜100個)でも人に感染を及ぼしかねない。
ノロウイルスは乾燥に強く空気感染(飛沫核感染)すると言われており、人から人へウイルスが伝播して二次感染する点で他の病原体による食中毒症状と決定的に異なっている。このため一般的な食中毒対策と同様の対応では、ノロウイルスによる感染拡大を防止することは難しい。
現時点ではノロウイルスに対するこれといった有効なワクチンが存在せず、一度感染した者であっても繰返し感染するという厄介な性質がある。
またノロウイルスはかなりの耐熱性も備えており、60℃では不活化せず85℃以上の高温下で1分加熱することでようやく不活化する。
ノロウイルスは消毒剤に対しても強い耐性があり、高濃度(500〜1,000ppm)の塩素系溶剤でないと不活化しない。
同ウイルスのさらなる特徴としては、食品中では増殖せず「人の腸管内でのみ増殖」することが挙げられる。
感染者が罹病(ノロウイルス感染症)から回復した後も2週間以上にわたり、糞便に混じってノロウイルスが排出される。
なおノロウイルスの不顕性感染者(ノロウイルスに感染しているものの明瞭な感染症状が表立って顕れない感染者)についても、やはり糞便とともに同ウイルスが排出される。
このようにノロウイルスは感染者の排泄物とともに排出されることから、共用スペースである「トイレの利用時における感染経路」が問題として取り沙汰されている。
このようなノロウイルスの感染経路を示唆する根拠の1つとしては、水様下痢便を模した疑似排便を使用して「排便時に、どれだけのウイルス汚染物が便器周辺に飛散するか」検証した実験結果(長野県北信保険福祉事務所)がある。
この実験結果によれば、和式便器JTやその周辺(周辺床部・便器後方の壁面)にも大量に疑似排便の飛散物が付着することが確認されている(図12参照)。
そのため排便を行った本人の人体・衣服だけでなく、それ以降のトイレ利用者の人体・衣服にも飛散物(ウイルス汚染物VP)が付着する可能性がある。
また同実験結果によれば「排便時に、どれだけのウイルス汚染物が人体・衣服(下半身)に付着するか」についても同時に確認がなされている(図13参照)。
同図13から看取されるように和式トイレでは、靴などの履物FWやズボンPT(裾部や臀部)などに排泄物(感染者のウイルス汚染物VP)が飛散してウイルス汚染される可能性が高い。
また和式・洋式トイレともに臀部・腿への排泄物の飛散が下着・ズボン内側のウイルス汚染につながり、更衣によりウイルスが拡散されるおそれもある。
さらに上記実験時においては「排泄物の処理(尻拭)時に、手や上着の袖口にどれだけのウイルス汚染物が付着するか」も確認がなされている(図14参照)。
同図14に示す実験結果は、トイレットペーパTPのように排泄物を直接払拭するものだけでなく、同ペーパTPを保持する掌PMや衣服CLの袖口にもウイルス汚染物VPが付着することを示唆するものとなった。
さらにトイレでは水を流すための水洗レバー・ドアノブなど使用者が皆で使用する共用物も多く、ウイルス汚染物の拡散を助長する。
特に食品を扱う者(例えば、給食センターのように厨房で調理を行う従業員)のなかに不感染者と一見して区別がつかない不顕性感染者が紛れ込んでいる場合、他の厨房担当従業員にも知らず知らずのうちにウイルス汚染物VPが付着することで食品中や食器がウイルス汚染される危険性が高くなり、何百人規模で感染が容易に拡大してしまう。
食品に付着しているノロウイルスであれば85℃以上の温度で1分間加熱することで感染を防ぐことができるぶん防御が簡単ともいえる。むしろ食品を扱う者自身の体や衣服に付いた汚染物による感染の方が手洗いなどの簡単な対処だけでは防御できない分、防ぐことが難しいものと思われる。
このような類の感染症の広がりを食い止めるために、人体を消毒するための様々な技術開発が試みられている(例えば、特許文献1参照)。
さらに人体に対する直接的な消毒を行う技術ではないものの、人の居住空間に霧化した消毒液を散布する除菌消臭装置(特許文献2)、人がちょくちょく使用する物品である履物に消毒を施すことによる感染症の拡大防止を目的とした消毒装置なども考案されている(特許文献3参照)。
特開2015−100454号公報 特開2011−067614号公報 特開2005−095528号公報
特許文献1の消毒装置によれば足踏ペダルの踏込操作がされたときに、置台の上に載置された消毒液ボトルから消毒液が噴射される。そのため利用者は、消毒液ボトルの頭頂部に手で触れることなく消毒液を噴霧できる。
しかしながら同文献1の技術では、下半身や足元付近に付着したウイルスに対しては消毒効果がほとんど得られない。
特許文献2の噴霧装置は除菌消臭液を霧化して空気中に噴霧することで、居住空間の除菌・消臭を効果的に行いつつ金属腐食などの不具合発生も抑制できるように工夫がなされている。
しかしながらトイレでは一般に消臭を目的として換気扇を作動させていることも多い。そのため同文献2の噴霧装置をトイレで使用した場合、トイレの空間内を散布した霧状の消毒液が室内から排出(換気)されてしまい、せっかくの除菌消臭効果が薄らいでしまうことが想定される。
また特許文献3による技術は同文献3・図2に開示されるように「履物を消毒」することに着目した技術である。
そのため、この装置構成を直接的にノロウイルスの感染症対策(人体消毒)に適用しても足元ちかく(履物やズボンの裾)はしっかり消毒されるものの、手や上着の袖口に対する消毒は行われず、利用者がトイレから退出するときに適正な感染症防止効果を得ることは難しい。
さらに同文献3では消毒対象として自発的に動き回ることのない物品(履物)を想定しているため、利用者の入室時に光電スイッチが自動的にオンすることで履物に消毒を施したり、宿泊施設の従業員がスイッチを手動でオンにすることで消毒を施すように構成されている。
しかしながら、このようなスイッチ制御により人体に消毒を施す場合、利用者がトイレに入室したときに光電スイッチをオンにしても入口部分を短時間でさっと通り過ぎてしまったり、消毒効果が十分発揮される好適な噴霧位置に利用者が都合よく立ってくれないようなケースは現に十分起こりうる。
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり「多人数により共用される施設・設備(とりわけトイレ)の使用者が同施設から退出するとき」にノロウイルスなどに起因する「感染症を効果的に防止」することを目的とする。
〔第1発明〕
そこで上記の課題を解決するために本願の第1発明に係る感染症防御システムは、
直線の両端部または多角形領域の各頂点に2台以上の柱状噴霧器を立てた状態で配置するとともに、同柱状噴霧器の噴射孔のある面を前記直線の中点または前記多角形領域の重心に向けて設置し、穀物から抽出したアミノ酸を含む抗菌剤を各柱状噴霧器の噴射孔から同時に噴霧することで人体を消毒する感染症防御システムであって、

前記抗菌剤を貯留する液体タンクと、
棒状の中空ストローであって、その排出口を前記液体タンクの外部に保持するとともに吸上口が抗菌剤に浸るよう同液体タンクに差込まれる液体ストローと、
外部から取込んだ空気を圧縮して空気ノズルから噴射するコンプレッサと、
前記空気ノズルならびに液体ストローの排出口が差込まれた閉空間を成し、かつ同閉空間に霧状に浮遊した抗菌剤を吐出する浮遊液滴ノズルが取付けられた霧生成室と、
前記噴射孔の空いた誘導パイプを内部に格納して成る2台以上の前記柱状噴霧器と、
前記霧生成室の浮遊液滴ノズルと前記柱状噴霧器内部の誘導パイプとを連結する誘導チューブと、
前記コンプレッサへの電力供給を司るスイッチであって、利用者の踏込操作により荷重がかかるとオンになり同荷重から解放されるとオフになる足踏式スイッチと、
を備え、

前記柱状噴霧器に挟まれた直線上または柱状噴霧器に囲まれた多角形領域内に置かれた足踏式スイッチが利用者の踏込操作でオンになり、コンプレッサに電力が供給された場合、
前記空気ノズルから空気が噴射されたことで霧生成室に生じた負圧により、液体ストローから同霧生成室に抗菌剤が吸上げられるとともに霧状の同抗菌剤が浮遊液滴ノズルから吐出され、
同浮遊液滴ノズルから吐出された抗菌剤が誘導チューブと誘導パイプを介して前記柱状噴霧器の噴射孔から前記足踏式スイッチを操作した利用者に噴霧される構成とした。
上述したように特許文献1〜3のような既存技術を適用してもトイレからウイルスが持込まれるのをブロックすることは難しい。
しかしながら本願発明によれば、トイレの利用者が抗菌剤の入った容器などに触れることなく「足踏式スイッチ7を踏む」だけで、トイレの使用時に人体や衣服に付着したノロウイルス汚染物を的確に消毒できる(図4)。
また第1発明によれば、各柱状噴霧器6の抗菌剤噴射方向(噴射孔62のある面の向き)を直線の中点M・多角形領域の重心Gにすべて向けておくとともに、足踏式スイッチ7を重心G付近に設置する(図8(a)、図8(b)、図8(c)参照)。
このようにすることで足踏式スイッチ7の踏込操作を行うときに利用者が必然的に中点M・重心G付近に位置することになるため、すべての噴霧器6により抗菌剤PRが利用者に集中的に噴霧され、利用者に付着したウイルス汚染物に対する消毒効果の向上が図られる。
〔第2発明〕
また上記の課題を解決するために本願の第2発明に係る感染症防御システムは、
直線の両端部または多角形領域の各頂点に2台以上の柱状噴霧器を立てた状態で配置するとともに、同柱状噴霧器の噴射孔のある面を前記直線の中点または前記多角形領域の重心に向けて設置し、穀物から抽出したアミノ酸を含む抗菌剤を各柱状噴霧器の噴射孔から同時に噴霧することで人体を消毒する感染症防御システムであって、

前記抗菌剤を貯留する液体タンクと、
棒状の中空ストローであって、その排出口を前記液体タンクの外部に保持するとともに吸上口が抗菌剤に浸るよう同液体タンクに差込まれる液体ストローと、
外部から取込んだ空気を圧縮して空気ノズルから噴射するコンプレッサと、
前記空気ノズルならびに液体ストローの排出口が差込まれた閉空間を成し、かつ同閉空間に霧状に浮遊した抗菌剤を吐出する浮遊液滴ノズルが取付けられた霧生成室と、
前記噴射孔の空いた誘導パイプを内部に格納して成る2台以上の前記柱状噴霧器と、
前記霧生成室の浮遊液滴ノズルと前記柱状噴霧器内部の誘導パイプとを連結する誘導チューブと、
当該感染症防御システムの利用者が所持する非接触型IC(Integrated Circuit)カードと、
前記コンプレッサへの電力供給を司る装置であって、利用者によってかざされた非接触型ICカードを検出したときにコンプレッサをオンにするICカードリーダと、
を備え、

前記柱状噴霧器に挟まれた直線上または柱状噴霧器に囲まれた多角形領域内に置かれたICカードリーダが利用者によりかざされた非接触型ICカードを検出することでコンプレッサのスイッチがオンになり、コンプレッサに電力が供給された場合、
前記空気ノズルから空気が噴射されたことで霧生成室に生じた負圧により、液体ストローから同霧生成室に抗菌剤が吸上げられるとともに霧状の同抗菌剤が浮遊液滴ノズルから吐出され、
同浮遊液滴ノズルから吐出された抗菌剤が誘導チューブと誘導パイプを介して前記柱状噴霧器の噴射孔から前記足踏式スイッチを操作した利用者に噴霧される構成とした。
第2発明に係る感染症防御システムによれば、スイッチとしてICカードリーダ71を採用する点で第1発明とはシステム構成が異なるものの(図11参照)、抗菌剤を噴霧する機能については第1発明と同一の技術的特徴を有することにより「ウイルス汚染物に対して第1発明と同等の消毒効果」を奏することが可能となる。
〔第3発明〕
また上記の課題を解決するために本願の第3発明に係る感染症防御システムは、第1または第2発明に係る感染症防御システムであって、
前記柱状噴霧器は立てて配置したときの高さが1m以上である構成とした。
第3発明によれば噴霧器の高さを好適な高さに選定することで、トイレから戻ったときに利用者の腕部や下半身以下に洩れなく消毒できる。
なお上記柱状噴霧器の高さは1m以上であれば任意の高さに設計可能であるが、顔部分などに抗菌剤PRがかかってしまうことによる不快感をなくすためには、肩ないしは胸部以下に噴霧されるような範囲内で数値(高さ)選択することが望ましい。
〔第4発明〕
上記の課題を解決するために本願の第4発明に係る抗菌剤は、
穀物から抽出されたアミノ酸をそれぞれに含んで成る抗菌剤であって、

加熱処理ならびに濾過処理がなされた後に凝集剤が添加された穀物の溶液から固形物を分離することで抽出されるアミノ酸混合液であって、大豆抽出アミノ酸を含んだアミノ酸混合液と、
精製水ならびにpH値が12である特殊還元性アルカリイオン水と、
ブチレングリコールと、
陽イオン界面活性剤と、
両性イオン界面活性剤と、
非イオン系界面活性剤と、
キレート剤と、
を含有する構成とした。
第4発明に係る抗菌剤によれば、ウイルス不活化効果・抗菌効果が有意に認められるため(表1ならびに図5参照)、トイレ利用者の排泄物(ウイルス汚染物)に起因する感染症の拡大を防止することが可能となる。
なお本願の感染症防御システムにおいて使用する抗菌剤PR(図1)の基本製法は、以下の通りである、
まず豆類(たとえば大豆)を水に浸漬してから、水分を十分に吸収した豆を砕いて粥状にする。続いて粥状にした豆の溶液を100℃付近で10〜20分加熱し、さらに80℃付近で20〜60分加熱する。
その後、この溶液を濾過し、濾過で得られた液に水(精製水ならびに特殊還元性アルカリイオン水)と凝集剤を添加する。そして添加後の溶液を100℃付近で20〜60分加熱し、固形物を分離することで抗菌剤PRを得ることができる。
同抗菌剤の最終的なpH値は、pH6.0〜pH7.5前後である。
上記製法にしたがって生成された抗菌剤PRは、大豆抽出アミノ酸・アミノ酸混合液・界面活性剤(陽イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤、非イオン系界面活性剤)・キレート剤・特殊還元性アルカリイオン水(pH12)・ブチレングリコール(ないしはアルコール)を含むものである。
これらのうち本発明の抗菌剤PRを特徴づける組成物は「ブチレングリコール」と「特殊還元性アルカリイオン水」である。
ブチレングリコールは元来殺菌効果が高く、さらにブチレングリコールは人間の皮膚に対する毒性がないため、本願の抗菌剤PRを利用して消毒(ウイルスの不活化、細菌に対する抗菌・殺菌)を実施する上で「利用者の安全性についても確保」することができる。
また本願発明では抗菌剤PRの全体量に対して、無色透明かつ無臭の液体「特殊還元性アルカリイオン水」を6%程度添加する。同アルカリイオン水は純水ではなく、ナトリウム・マグネシウムなどのミネラル分を含んでいる。
この特殊還元性アルカリイオン水のpH(power of hydrogen:水素イオン濃度指数)値はpH(20℃)12〜12.4であり「非常に強いアルカリ性」を示しており、比重(20℃)は1.002である。
このような強アルカリ性の特殊還元性アルカリイオン水は、ノロウイルス・インフルエンザウイルスを不活化できることが実験により確認されている。
このような効果を奏する特殊還元性アルカリイオン水をトイレ使用後の消毒に応用すれば「トイレ使用者の人体・衣服に付着したウイルス汚染物に潜む各種ウイルスの不活化や細菌の抑制」が可能である。
なお本抗菌剤PRで使用する界面活性剤は、抗菌作用を有するものであれば一般的な界面活性剤を採用できる。
その一例として陽イオン界面活性剤には、細菌細胞膜のタンパク質を変性させることによって殺菌性を発揮する塩化ベンザルコニウムが挙げられる。
また抗菌作用のある両性イオン界面活性剤の例としてラウリルアミノプロピオン酸、さらに抗菌作用のある非イオン系界面活性剤の例としてポリオキシ−プロピレングリコールが挙げられる。
界面活性剤が有する高い浸透性により、抗菌剤PRが効率よく人体・衣服に付着したウイルス汚染物に浸透できる。
さらに本抗菌剤PRに添加するキレート剤(配位結合によって金属イオンと錯イオンを形成するもの)についても、エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム(EDTA2Na)をはじめとする一般的なものを使用すればよい。
エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム(EDTA2Na)の添加により塩化ベンザルコニウムやアミノ酸などの析出防止が図られるとともに、それらの酸化防止も図られる。
なお塩素系消毒液を利用して人体に噴霧消毒を施すと、殺菌作用・抗菌作用だけでなく塩素の漂白効果により利用者が着用している衣類などの布製品が白抜きされてしまうおそれがある。
しかしながら本願の感染症防御システムで使用する抗菌剤は、染色した繊維製品に噴霧して脱色試験・変色試験を行った結果、脱色・変色の生じないことが確認されている。
そのため本抗菌剤が本システムの利用者の衣服などに付着しても、脱色(白抜き)を防止できる。
本実施形態の感染症防御システムの全体構成を示す外観模式図である。 感染症防御システムの外観図に想像線を加えた模式図である。 シリンダの内部構造を示す断面図である。 感染症防御システムにおいて利用者に抗菌剤を噴霧するときの使用状態を示す模式図である。 経過時間に対する臭気の濃度を示す模式図であって、(a)はアンモニアに対する図、(b)は硫化水素に対する図、(c)はイソ吉草酸に対する図、(d)はノルマル酪酸に対する図、(e)はトリメチルアミンに対する図である。 実施形態に係る感染症防御システムの動作フローを示す図である。 多角形領域の各頂点に対する柱状噴霧器の配置図であって、(a)は三角形領域における図、(b)は矩形領域における図である。 柱状噴霧器の噴射孔の向きを示す模式図であって、(a)は直線における図、(b)は三角形領域における図、(c)は矩形領域における図である。 隣合う柱状噴霧器の間に板部材を設置して囲いを設けたときの模式図であって、(a)は柱状噴霧器3台の配置例、(b)は柱状噴霧器4台の配置例である。 L字形に形成された柱状噴霧器の配置例を示す模式図である。 柱状噴霧器の動作制御機構としてICカードリーダを採用したときの感染症防御システムの構成を示す模式図である。 排便後のトイレにおいて、どれだけの汚染物が便器周辺に飛散するかを検証した実験結果を示す図である。 排便後のトイレにおいて、どれだけのウイルス汚染物が下半身に飛散するかを検証した実験結果を示す図である。 排泄物の払拭処理後に、どれだけのウイルス汚染物が手や上着の袖口に飛散するかを検証した実験結果を示す図である。
以下、図1乃至図14を参照して、本発明の感染症防御システムについて説明する。
[実施形態]
本発明の実施形態は、トイレから退出する際に利用者に抗菌剤を噴霧することでノロウイルスの感染症拡大を防止する感染症防御システム1(図1参照)を構成した例である。
本願の感染症防御システム1は「直線の両端部」(図1)または「多角形領域の各頂点」(図7(a)、図7(b)参照)に2台以上の柱状噴霧器6を立てた状態で配置する。
さらに同システム1は、柱状噴霧器6の噴射孔62のある面を上記直線Lの中点M(図8(a))または上記多角形領域の重心G(図8(b)・図8(c))に向けて設置し、穀物から抽出したアミノ酸を含む抗菌剤PRを各柱状噴霧器6の噴射孔62から同時に噴霧することで人体を消毒する(図1)。
本感染症防御システム1は、
抗菌剤PRを貯留する液体タンク3と、
棒状の中空ストローであって、その排出口311(図2)を液体タンク3の外部に保持するとともに吸上口312(同図2)が抗菌剤PRに浸るよう同液体タンク3に差込まれる液体ストロー31と、
外部から取込んだ空気を圧縮して空気ノズル28から噴射するコンプレッサ2と、
空気ノズル28ならびに液体ストロー31の排出口311が差込まれた閉空間を成し、かつ同空間に霧状に浮遊した抗菌剤PRを吐出する浮遊液滴ノズル41が取付けられた霧生成室4と、を備える。
さらに同システム1(図2)は、
噴射孔62の空いた誘導パイプ61を内部に格納して成る2台以上の柱状噴霧器6と、
霧生成室4の浮遊液滴ノズル41と、上記噴霧器6内部の誘導パイプ61(同図2)とを連結する誘導チューブ5と、
コンプレッサ2への電力供給を司るスイッチであって、利用者の踏込操作により荷重がかかるとオンになり同荷重から解放されるとオフになる足踏式スイッチ7と、を備えている。
上記柱状噴霧器6に挟まれた直線L(図1)上または柱状噴霧器6に囲まれた多角形領域(図7(a)・図7(b))内に置かれた足踏式スイッチ7が利用者の踏込操作でオンになり、コンプレッサ2に電力が供給された場合、
空気ノズル28(図2)から空気が噴射されたことで霧生成室4に生じた負圧により、液体ストロー31から同霧生成室4に抗菌剤PRが吸上げられるとともに霧状の同抗菌剤PRが浮遊液滴ノズル41から吐出され、
同浮遊液滴ノズル41から吐出された抗菌剤PRが誘導チューブ5と誘導パイプ61を介して柱状噴霧器6の噴射孔62から足踏式スイッチ7を操作した利用者に噴霧されるように構成される。
以下、この内容について詳しく説明する。
本例の感染症防御システム1は図1に示すように、コンプレッサ2と、液体タンク3と、霧生成室4と、誘導チューブ5と、柱状噴霧器6と、足踏式スイッチ7とから構成される。
また本システム1では人体や衣服に付着したウイルス汚染物の消毒用途として、抗菌作用を有する抗菌剤PRが用いられる。
抗菌剤PRは、細菌に対する抑制効果(抗菌効果・殺菌効果)やウイルスに対する不活化効果を有するものであって、人体に噴霧されるアミノ酸を含んだ液状の抗菌剤である。
同抗菌剤PRは、植物性アミノ酸の一種である「大豆アミノ酸」由来の天然系有効成分を主成分として含んでいる。
上記抗菌剤PRの効果を示す実験結果については、詳細な説明を後述する。
図1に示す液体タンク3は、上述した抗菌剤PRを貯留する容器である。
液体ストロー31(図2)は棒状の中空ストローであって、その排出口311を液体タンク3の外部に保持するとともに吸上口312が抗菌剤PRに浸るよう同タンク3に差込まれる。
図1に示すコンプレッサ2は、往復式(レシプロ式)・斜板式など任意のコンプレッサを利用できる。
本例におけるコンプレッサ2はシリンダ22内をピストン23が往復運動するレシプロ式であり(図3参照)、ピストン23の往復運動によるシリンダ22の容積変化で圧縮する。
同図3に示すようにコンプレッサ2のシリンダ22には、内向きのみに開く吸込弁25と、外向きのみに開く吐出弁26が取付けられている。
ピストン23が同シリンダ22内部の容積を広げる向きに移動するとき、吸込弁25が開いて外部から空気がシリンダ22内に取込まれる。
空気の取込後、ピストン23がシリンダ22内の容積を狭める向きに移動していくと空気は圧縮され、吐出弁26が開くことで圧縮された空気がシリンダ22外部へと排出される。
本例では吐出弁26はエアチューブ27を介して空気ノズル28につながっているため、同ノズル28から圧縮された空気が噴射される。これによりコンプレッサ2により圧縮された空気が、空気ノズル28が挿入されている霧生成室4内部へと送り込まれる。
霧生成室4は、内部に閉空間を有する中空構造となっており、液体ストロー31の排出口311と空気ノズル28が差込まれている(図2)。
さらに霧生成室4には、同閉空間に霧状に浮遊した抗菌剤PRを吐出する浮遊液滴ノズル41が取付けられている。
浮遊液滴ノズル41は、霧生成室4内部(閉空間)に浮遊している霧状の抗菌剤PRを吐出する役割を果たす。
液体ストロー31により吸上げられた抗菌剤PRは、排出口311から霧生成室4中に霧状(微小液滴の状態)となって拡散する。
さらに霧生成室4では空気ノズル28より吹込まれた圧縮空気が浮遊液滴ノズル41から排出されるため、同圧縮空気とともに霧状の抗菌剤PRも浮遊液滴ノズル41から霧生成室4の外部に吐出する。
誘導チューブ5は図2に示すように、霧生成室4に取付けられた浮遊液滴ノズル41と、柱状噴霧器6の内部に格納されている誘導パイプ61とを連結することで、浮遊液滴ノズル41と誘導パイプ61を連通させる。
柱状噴霧器6は、噴射孔62の空いた誘導パイプ61を内部に格納するように構成された装置である(図2)。
なおノロウイルスの大きさは27nm〜37nmであることから、噴霧される抗菌剤PRの粒径20μm〜30μm程度となるよう噴射孔62のノズル口径は「30μm」に形成されている。
また本例では、抗菌剤PRの噴霧時間は「2秒」であり、1回あたりの抗菌剤PRの噴霧量は「20ml〜40ml」である。
また本感染症防御システム1では柱状噴霧器6を「2台以上」設置する。これらの柱状噴霧器6は立てた状態に設置して使用される。
さらに本システム1は、トイレ利用者の人体・衣服に付着したウイルス汚染物に対して的確にかつ効率的に消毒を施せるよう「複数台の柱状噴霧器6の配置パターンにも工夫」がなされている。
上述の柱状噴霧器6は、直線Lの両端ないしは多角形領域の各頂点に1台ずつ設置される(図8(a)、図8(b)、図8(c))。また柱状噴霧器6の抗菌剤噴射方向(噴射孔62のある面の向き)はすべて「直線Lの中点M・多角形領域の重心Gに向け」られる。
足踏式スイッチ7は、モメンタリ式(ボタンが押されて荷重が加わっている間だけオン状態になり、ボタンが荷重から解放されると自動復帰してオフ状態に戻る方式)のスイッチである。
本例においては利用者の踏込操作により足踏式スイッチ7がオンになると(図4)、コンプレッサ2に電力が供給される。
なお抗菌剤PRが本システム1の利用者に効率的に噴霧されるよう、同スイッチ7は直線Lの中点M・多角形領域の重心G付近に設置することが望ましい。
また本説明例では円形の足踏式スイッチ7を採用しているが、同スイッチ7の形状は任意であり「矩形(例えば長方形)の平板型スイッチ」としてもよい。
次に、本願発明において用いられる「抗菌剤PRの効果」について実験結果に基づき説明する。
本例の抗菌剤PRは、大豆の抽出成分を抗菌成分として利用している。
大豆には、人体に必要なアミノ酸のうち人の体内で合成することのできない必須アミノ酸であるトリプトファン・リシン・メチオニン・フェニルアラニン・トレオニン・バリン・ロイシン・イソロイシン・ヒスチジンが含まれている。
さらに大豆には、人体に必要なアミノ酸のうち非必須アミノ酸に分類されるグリシン・アラニン・シスチン・セリン・アスパラギン・アスパラギン酸・グルタミン・グルタミン酸・アルギニン・チロシン・プロリンが含まれている。
なお上記表1中にあるTCID50(TCID:median Tissue Culture Infectious Dose)はウイルス感染価の測定単位であり、あらかじめ細胞を培養して付着させた試験管などにウイルス希釈液を接種したときに50%の細胞に感染を及ぼす濃度をいう。
また同表1中における菌量の単位は「CFU(Colony Forming Unit)/ml」であり、コロニーを形成する能力のある単位数(1ml中に存在する細菌の個数)を表す。
表1から看取されるように本抗菌剤PRは、ネコカリシウイルス(性質が類似するノロウイルスの代替)・SARSコロナウイルス・インフルエンザウイルスをはじめ「種々のウイルスに対する不活化効果」が有意に認められる。
ノロウイルスは、非細菌性急性胃腸炎を引起こすウイルスである。
またSARS(Severe Acute Respiratory Syndrome)コロナウイルスは、重症急性呼吸器症候群の病原体となるウイルスである。
なおインフルエンザウイルスについては、H1N1株を使用して試験を実施した。
また表1から看取されるように抗菌PRは、セレウス芽胞・黄色ブドウ球菌・腸管出血性大腸菌O−157・大腸菌・レジオネラ菌・サルモネラ菌をはじめ種々の「細菌類についても抗菌効果」が認められた。
さらに本例の抗菌剤PRは表1から看取されるように、カビの繁殖を抑制する「抗カビ効果」を有することも確認されている。
なおセレウス芽胞は、食中毒の原因となる菌であり腸管中の常在菌である。
また黄色ブドウ球菌は、人の皮膚・消化管(腸)などに常在する菌であり表皮感染症・食中毒・肺炎・髄膜炎・敗血症などを引起こすおそれがある。
腸管出血性大腸菌O−157は、加熱の不十分な食材から感染することの多い、出血性大腸炎を引起こす菌である。
また大腸菌は、尿路感染症の原因菌にもなりうる。
レジオネラ菌は、レジオネラ肺炎(在郷軍人病)をはじめとする多くのレジオネラ症を引起こす種を含んだ通性細胞内寄生性菌である。
またサルモネラ菌は、腸チフス・パラチフスないしは感染型食中毒を引起こすものを含んだ腸内細菌である。
ノロウイルス感染者の排泄物にはノロウイルスをはじめ様々なウイルスや細菌が潜んでいるため、トイレの利用者向けに感染症防止対策を打つことが望ましい。
本例の感染症防御システムで使用される抗菌剤PRは、上述のようにウイルス不活化効果・抗菌効果が有意に認められるため「トイレ利用者の排泄物(ウイルス汚染物)に起因する感染症の拡大防止」に資する。
さらに上記成分はウイルス不活化作用や抗菌作用のみならず「消臭作用」も有している。
腐敗とは、細菌などをはじめとする微生物により生物由来の有機物(特に、蛋白質などの窒素を含んだ有機物)が分解されることである。
そして、いうまでもなく排泄物は、腐敗アミン(インドール、ケトンなど)の生成分解により不快臭(主に「アンモニア」や「硫化水素」による臭気)を放つ。
しかしながら本抗菌剤PRは、図5(a)に示すように「アンモニア」に対しても、また図5(b)に示すように「硫化水素」に対しても優れた消臭効果を発揮することが実験により確認されている。
加えて本抗菌剤PRは、低級脂肪酸のうち畜産系不快臭の代表的成分をなす「イソ吉草酸」(図5(c))ならびに「ノルマル酪酸」(図5(d))に対しても優れた消臭効果を発揮する。
上述した2種類の低級脂肪酸のうちイソ吉草酸については足裏部分の臭気として、またノルマル酪酸については口臭の一原因として人体に対する関連性を有する。
さらに本抗菌剤PRが有する消臭効果は人に由来する臭気成分のみならず、魚類の腐敗臭気であるトリメチルアミン(魚類に含まれる浸透圧調節成分・トリメチルアミン−N−オキシドが還元されたもの)に対しても有効性を示した(図5(e)参照)。
上記実験に使用したアンモニア・硫化水素・イソ吉草酸・ノルマル酪酸・トリメチルアミンはすべて悪臭防止法の規制対象物質に掲げられている。
なお大豆アミノ酸に由来するウイルス不活化有効成分や界面活性剤を溶液調整する際、活性水単体もしくは活性水にブチレングリコール(または2.7%のアルコール)を配合したものを希釈液として使用すればよい。
このようにすることで抗菌剤PRの浸透性が高まり、ウイルス不活化効果・抗菌効果・消臭効果を効率的に発揮させることができる。
次に、上記構成を備える感染症防御システム1の動作について説明する。
図6に示すように足踏式スイッチ7に対する踏込動作が行われると、同スイッチ7がオンになり、コンプレッサ2に対して動作用の電力が供給される(ステップS1)。
するとコンプレッサ2のモータ21(図3)が作動する。
同コンプレッサ2においてシリンダ22中のピストン23が同シリンダ22内部の容積を広げる向きに移動すると、吸込弁25が内向きに開いて外部の空気がシリンダ22内に取込まれる(図6のステップS2)。
空気の取込後、ピストン23によりシリンダ22内の容積を小さくしていくと同シリンダ22内の空気が圧縮され、吐出弁26が外向きに開くことで圧縮空気がシリンダ22外部へと排出される。
本例では吐出弁26はエアチューブ27を介して空気ノズル28につながっているため(図2)、同ノズル28から圧縮された空気が噴射される(図6のステップS3)。するとコンプレッサ2により圧縮された空気が、空気ノズル28が挿入されている霧生成室4内部へと送り込まれる。
この際、空気ノズル28と液体ストロー31の間に生じる負圧作用によって、液体タンク3中の抗菌剤PRが同ストロー31の吸上口312から排出口311に向かって吸上げられる(ステップS4)。
吸上げられた抗菌剤PRは、排出口311から霧生成室4中に霧状(微小液滴の状態)となって拡散する。
さらに霧生成室4では空気ノズル28から吹込まれた圧縮空気が浮遊液滴ノズル41から排出される。
そのため、同圧縮空気とともに霧状の抗菌剤PRも浮遊液滴ノズル41から霧生成室4の外部に吐出する(ステップS5)。
そして誘導チューブ5と誘導パイプ61を介して、霧状の抗菌剤PRが柱状噴霧器6の噴射孔62から利用者に噴霧される(ステップS6)。
なお抗菌剤PRは、利用者が着用している衣服の袖口、エプロン・前掛、ズボンの裾部分、靴などの履物にも噴霧される(図4)。
以上で、トイレから利用者が退出するときに抗菌剤PRを噴霧することで、同利用者に付着したノロウイルス汚染物を効果的に消毒する一連の動作が終了する。
以上説明したように本実施形態に係る感染症防御システムによれば、足踏式スイッチ7を取囲むように配置された柱状噴霧器6から抗菌剤PRが噴霧されることで、同抗菌剤PRがトイレから退出した利用者の下半身・腕・手などに効率的に浸透する。
これにより「多人数で共用される施設・設備(とりわけトイレ)の使用者が同施設から退出するとき」にノロウイルスなどに起因する「感染症を効果的に防止」することができる。
〔変形例:柱状噴霧器の配置パターン〕
上記実施形態に係る感染症防御システムでは柱状噴霧器6の配置パターンとして、多角形領域の各頂点に柱状噴霧器6を1台ずつ設置することも可能である。
図7(a)の例では三角形領域(同図7(a)の破線部)の3つの頂点に柱状噴霧器6を1台ずつ配置し、図7(b)の例では矩形領域(同図7(b)の破線部)の4つの頂点に柱状噴霧器6を1台ずつ配置している。
なお各柱状噴霧器6の抗菌剤噴射方向(噴射孔62の向き)を多角形領域の重心Gにすべて向けておくとともに、足踏式スイッチ7を重心G付近に設置することが望ましい(図8(b)、図8(c)参照)。
このような構成を採用することで、足踏式スイッチ7の踏込操作を行うときに利用者が必然的に上述した重心G付近に位置することになるため、すべての柱状噴霧器6から抗菌剤PRが利用者に集中的に噴霧され、利用者に付着したウイルス汚染物に対する消毒効果の向上が図られるからである。
〔変形例:柱状噴霧器の囲い〕
本感染症防御システムでは、隣合う柱状噴霧器6同士の間に板部材を立てることで囲いを構成してもよい(図9(a)、図9(b))。
これにより、人体・衣服に噴霧された抗菌剤PRが柱状噴霧器6の周囲に飛散することを防止できる。
また囲いを設けることで抗菌剤PRが囲いの中で滞留するため、抗菌剤PRが本システム利用者の全身にくまなく行き渡り、消毒効果が高まることも期待できる。
〔変形例:柱状噴霧器の柱形状〕
本感染症防御システムでは、柱状噴霧器6の全体形状は直線形状に限定されず、L字形(図10参照)・コの字形など消毒効果を高めるための任意の形状を採用してもよい。
〔変形例:車輪付きの柱状噴霧器〕
さらに本感染症防御システムでは、柱状噴霧器6の底面部分に車輪(いわゆるキャスタ)を設けてもよい。
このようにすることで本システムの設置場所を変更する際に、運搬作業負担が大幅に軽減される。
また本システムはトイレなどの多人数で共用する設備における利用を想定しているため、本システムそのものは勿論、本システムの設置されている場所(例えば床など)についても比較的汚れるのが早いと考えられる。
そのような対処として定期的(例えば日次レベル)な清掃を行う場合にも柱状噴霧器6に車輪が設けられていれば、清掃開始時にいったん移動させておいた後、清掃完了後に柱状噴霧器6を元の位置に戻すときも労力を少なくできる。
〔変形例:コンプレッサへの電力供給を制御するスイッチ方式〕
本感染症防御システムでは、コンプレッサ2への電力供給を司るスイッチとして任意の方式のスイッチを採用することが可能である。
しかしながらノロウイルスの感染拡大リスクを考慮して、本システムの利用者が「直接触れることなくオン・オフ操作を行えるスイッチ方式」が望ましい。
このように利用者が非接触でオン・オフを操作できるスイッチとしては、上記実施形態において例示した足踏式スイッチ7に限らず「IC(Integrated Circuit)カードリーダ71と非接触型ICカード72」を採用することも可能である(図11)。
上記のICカードリーダ71を用いてコンプレッサ2への電力供給制御を行う場合、利用者が非接触型ICカード72をかざしてICカードリーダ71に近づけたときに、ICカードリーダ71と非接触型ICカード72の間で近距離無線通信を行う。
そして同無線通信によりICカードリーダ71が非接触型ICカード72を検出したときに、ICカードリーダ71はコンプレッサ2のスイッチをオンする。
なお図11のシステム構成を採用する場合、スイッチ部分については図1に示した構成(足踏式スイッチ7)と異なるものの、抗菌剤PRを噴霧する構成部分については同図1と同一の構成を踏襲すればよい。
また同図11に示したシステム1Aの導入先が企業などの場合、「社員証を非接触型ICカード72で構成」しておき、社員1人1人を個々に識別可能とすることもできる。
このようにすれば、ICカードリーダ71による非接触型ICカード72の読取履歴に基づいて「社員が、トイレの利用時に感染症防御システム1Aによる消毒を実施したかどうかの履歴」を電子データに記録することも可能になる。
そのため従業員による「消毒実施について、より一層の周知徹底」が図られることを期待できる。
〔変形例:抗菌成分〕
本例の抗菌剤PRの抗菌有効成分は、大豆由来のアミノ酸に限らず、タンパク質の構成成分となるアミノ酸であるグリシン・システイン、または、グリシンの2分子がペプチド結合したグリシルグリシンなど、ウイルス不活化作用のある任意の植物性または動物性由来のアミノ酸を採用することも可能である。
なお抗菌剤PRそのものは、この抗菌有効成分に界面活性剤を配合して調製する。
またグリシン・システイン・グリシルグリシンは強い消臭作用も併せ持つため、トイレの利用者にノロウイルスなどが混じった汚物(糞便や嘔吐物)が付着している場合でも、これらの汚物から放たれる臭気を抑制することができる。
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が理解し得る各種の変形が可能である。
1 感染症防御システム
2 コンプレッサ
21 モータ
22 シリンダ
23 ピストン
24 ピストンロッド
25 空気吸入弁
26 空気排出弁
27 エアチューブ
28 空気ノズル
3 液体タンク
31 液体ストロー
311 排出口
312 吸上口
4 霧生成室
41 浮遊液滴ノズル
5 誘導チューブ
6 柱状噴霧器
61 誘導パイプ
62 噴射孔
7 足踏式スイッチ
71 ICカードリーダ
72 ICカード
PR 抗菌剤

Claims (4)

  1. 直線の両端部または多角形領域の各頂点に2台以上の柱状噴霧器を立てた状態で配置するとともに、同柱状噴霧器の噴射孔のある面を前記直線の中点または前記多角形領域の重心に向けて設置し、穀物から抽出したアミノ酸を含む抗菌剤を各柱状噴霧器の噴射孔から同時に噴霧することで人体を消毒する感染症防御システムであって、

    前記抗菌剤を貯留する液体タンクと、
    棒状の中空ストローであって、その排出口を前記液体タンクの外部に保持するとともに吸上口が抗菌剤に浸るよう同液体タンクに差込まれる液体ストローと、
    外部から取込んだ空気を圧縮して空気ノズルから噴射するコンプレッサと、
    前記空気ノズルならびに液体ストローの排出口が差込まれた閉空間を成し、かつ同閉空間に霧状に浮遊した抗菌剤を吐出する浮遊液滴ノズルが取付けられた霧生成室と、
    前記噴射孔の空いた誘導パイプを内部に格納して成る2台以上の前記柱状噴霧器と、
    前記霧生成室の浮遊液滴ノズルと前記柱状噴霧器内部の誘導パイプとを連結する誘導チューブと、
    前記コンプレッサへの電力供給を司るスイッチであって、利用者の踏込操作により荷重がかかるとオンになり同荷重から解放されるとオフになる足踏式スイッチと、
    を備え、

    前記柱状噴霧器に挟まれた直線上または柱状噴霧器に囲まれた多角形領域内に置かれた足踏式スイッチが利用者の踏込操作でオンになり、コンプレッサに電力が供給された場合、
    前記空気ノズルから空気が噴射されたことで霧生成室に生じた負圧により、液体ストローから同霧生成室に抗菌剤が吸上げられるとともに霧状の同抗菌剤が浮遊液滴ノズルから吐出され、
    同浮遊液滴ノズルから吐出された抗菌剤が誘導チューブと誘導パイプを介して前記柱状噴霧器の噴射孔から前記足踏式スイッチを操作した利用者に噴霧される
    ように構成されたことを特徴とする、感染症防御システム。
  2. 直線の両端部または多角形領域の各頂点に2台以上の柱状噴霧器を立てた状態で配置するとともに、同柱状噴霧器の噴射孔のある面を前記直線の中点または前記多角形領域の重心に向けて設置し、穀物から抽出したアミノ酸を含む抗菌剤を各柱状噴霧器の噴射孔から同時に噴霧することで人体を消毒する感染症防御システムであって、

    前記抗菌剤を貯留する液体タンクと、
    棒状の中空ストローであって、その排出口を前記液体タンクの外部に保持するとともに吸上口が抗菌剤に浸るよう同液体タンクに差込まれる液体ストローと、
    外部から取込んだ空気を圧縮して空気ノズルから噴射するコンプレッサと、
    前記空気ノズルならびに液体ストローの排出口が差込まれた閉空間を成し、かつ同閉空間に霧状に浮遊した抗菌剤を吐出する浮遊液滴ノズルが取付けられた霧生成室と、
    前記噴射孔の空いた誘導パイプを内部に格納して成る2台以上の前記柱状噴霧器と、
    前記霧生成室の浮遊液滴ノズルと前記柱状噴霧器内部の誘導パイプとを連結する誘導チューブと、
    当該感染症防御システムの利用者が所持する非接触型IC(Integrated Circuit)カードと、
    前記コンプレッサへの電力供給を司る装置であって、利用者によってかざされた非接触型ICカードを検出したときにコンプレッサをオンにするICカードリーダと、
    を備え、

    前記柱状噴霧器に挟まれた直線上または柱状噴霧器に囲まれた多角形領域内に置かれたICカードリーダが利用者によりかざされた非接触型ICカードを検出することでコンプレッサのスイッチがオンになり、コンプレッサに電力が供給された場合、
    前記空気ノズルから空気が噴射されたことで霧生成室に生じた負圧により、液体ストローから同霧生成室に抗菌剤が吸上げられるとともに霧状の同抗菌剤が浮遊液滴ノズルから吐出され、
    同浮遊液滴ノズルから吐出された抗菌剤が誘導チューブと誘導パイプを介して前記柱状噴霧器の噴射孔から前記足踏式スイッチを操作した利用者に噴霧される
    ように構成されたことを特徴とする、感染症防御システム。
  3. 請求項1または2に記載の感染症防御システムであって、
    前記柱状噴霧器は、立てて配置したときの高さが1m以上である
    ように構成されたことを特徴とする、感染症防御システム。
  4. 穀物から抽出されたアミノ酸をそれぞれに含んで成る抗菌剤であって、

    加熱処理ならびに濾過処理がなされた後に凝集剤が添加された穀物の溶液から固形物を分離することで抽出されるアミノ酸混合液であって、大豆抽出アミノ酸を含んだアミノ酸混合液と、
    精製水ならびにpH値が12である特殊還元性アルカリイオン水と、
    ブチレングリコールと、
    陽イオン界面活性剤と、
    両性イオン界面活性剤と、
    非イオン系界面活性剤と、
    キレート剤と、
    を有するように構成されたことを特徴とする、抗菌剤。
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