JP2017071855A - アルミニウム合金箔及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】中間焼鈍を施すことなく、マット面におけるスジ模様の発生が抑制されたアルミニウム合金箔及びその製造方法を提供する。【解決手段】アルミニウム合金箔は、Fe:0.70〜1.40質量%、Ti:0.005〜0.05質量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物であり、下記(1)で算出されるアルミニウム合金箔のマット面上の角スペクトルにおける90°方向の相対ピーク高さが0.29未満であることを特徴とする。90°方向の相対ピーク高さ=90°方向のピーク高さ÷(0〜20°及び160〜180°における最大のピーク高さ)・・・・・(1)(式中、90°方向は、アルミニウム合金箔の略圧延方向である。)【選択図】なし

Description

本発明は、アルミニウム合金箔及びその製造方法に関する。より詳しくは、中間焼鈍工程を経ないで製造された、外観に優れたアルミニウム合金箔及びその製造方法に関する。
アルミニウム箔及びアルミニウム合金箔(以下、単に「箔」ともいう。)は、日用品、食料品、薬品等の包装用に5〜200μm程度の厚みとして利用されている。この箔は、ポリエチレンやビニール、紙、樹脂等と貼合わされて使用されることが多い。このような用途に使用されるアルミニウム箔及びアルミニウム合金箔は、包装される内容物を大気中の湿気や紫外線から遮断する必要があり、ピンホールや穴疵のない品質が優れたものが要求される。また食品や薬の包装にも多用されるため、外観の美麗さも要求品質となっている。
前記アルミニウム箔及びアルミニウム合金箔についてコスト低減が要求される中で、冷間圧延工程での中間焼鈍の省略が検討されている。中間焼鈍が省略できれば、エネルギ費用や焼鈍設備が不要となる上、生産性も向上するので、コスト的に極めて有利になる。さらに製造納期も短縮されるため、中間焼鈍を省略した製造方法につき、各種提案がなされている。
例えば、特許文献1には、Fe:0.1〜1.0wt%、Si:0.3wt%以下、Cu:0.10wt%以下を必須成分とし、Mn:0.05wt%以下、Mg:0.01wt%以下、Ti:0.05wt%以下に抑え、又はこれにB:0.01wt%以下、Zr:0.05wt%以下の範囲で何れか1種又は2種を添加し、残部がAlと通常の不純物からなる合金の鋳塊を均質化処理した後、終了温度が250℃以上の熱間圧延を行い、しかる後50℃/hr以下の冷却速度で冷却して再結晶組織とし、その後箔地焼鈍を施すことなく所定の箔厚まで冷間圧延するアルミニウム箔地の製造方法が提案されている。
この製造方法は、熱間圧延後の冷却時にFe、Siを析出させることにより、加工硬化を抑制し、重合圧延におけるピンホール数と箔圧延時の切れ回数を低減させるものである。
また、特許文献2には、Fe:0.2〜2.8重量%、Si:0.05〜0.3重量%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなるアルミニウム合金鋳塊に、均質化熱処理、熱間圧延、冷間圧延をこの順に施すアルミニウム合金箔地の製造方法であって、熱間圧延上がりの板厚を3mm以下とし、冷間圧延の少なくとも最終のパス上がり温度を100〜180℃に制御するアルミニウム合金箔地の製造方法が提案されている。
この製造方法は、冷間圧延温度を高く制御し、加工硬化を抑制することにより、中間焼鈍を実施することなく、重合圧延におけるピンホール数と箔圧延時の切れ回数を低減させるものである。
また、特許文献3には、Fe:0.5〜2.5質量%、Si:0.01〜0.3質量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる組成を有するアルミニウム合金鋳塊に、均質化処理、熱間圧延を施した後、中間焼鈍を行わずに箔まで冷間圧延を施すアルミニウム合金箔地の製造方法において、固溶Feが10〜200ppm、添加Si量に対する固溶Siの比が0.2〜0.75であるアルミニウム合金箔地の製造方法が提案されている。
この製造方法は、固溶元素量を制御することにより加工硬化特性を制御し、圧延性を向上させると共にピンホール発生数を低減させるものである。
また、特許文献4には、Fe:0.8〜2.0重量%を含有すると共に、Si:0.15重量%以下に規制し、且つFe/Si比を15以上に調整し、不可避的不純物元素をそれぞれ0.05重量%以下に規制したアルミニウム合金鋳塊に、均質化熱処理、熱間圧延を施した後、中間焼鈍を行わずに箔製品まで圧延し、箔にて焼鈍することにより結晶粒径を15μm以下とするアルミニウム箔の製造方法が提案されている。
この製造方法は、均熱温度を低くし、保持時間を短時間に制御することにより晶出物数を減少させずに、強度、成形性及びピンホール特性の悪化を防ぐものである。
特開昭63−18041号公報 特開平11−217656号公報 特開2001−288524号公報 特開平3−120332号公報
しかしながら、従来の中間焼鈍を省略した箔の製造方法においては、以下の問題がある。上記のように、特許文献1〜3では、熱間圧延後の冷却時にFe、Siを析出させたり、冷間圧延温度を高く制御したり、固溶Fe量、固溶Si量を制御したりすることにより、加工硬化特性を制御している。これにより、箔圧延を容易にしたり、箔圧延時の箔切れを抑制したり、ピンホール特性を良好にしたりしている。また、特許文献4では、晶出物数を減少させずに、強度及び成形性の悪化を抑制したり、ピンホール特性の悪化を抑制することでピンホール特性を良好にしたりしている。
しかしながら、中間焼鈍で再結晶させないことは、箔のマクロ組織を微細化させないことである。そして、マクロ組織が粗大であると、自由変形となるマット面(艶消し面)に外観でスジ模様が観察される現象が起きる。このため、中間焼鈍を省略して製造された箔は、中間焼鈍を行って製造された箔に比較し美麗さに改善の余地があり、中間焼鈍を省略して製造された箔は、特定用途に限定してのみ用いられていた。
なお、硬質箔の材料組織は、熱間圧延工程或いは中間焼鈍工程において形成された再結晶粒が、その後の圧延工程及び箔圧延工程によって圧延方向に縦長に延ばされた結晶粒組織状態になる。そして、その結晶粒のアスペクト比(長径/短径)は圧延と箔圧延との総圧延率に応じた値となる。そのため、理論的には、中間焼鈍工程を経ないで製造された硬質箔の結晶粒のアスペクト比は一般的に300以上、中間焼鈍工程を経て製造された硬質箔の結晶粒のアスペクト比は一般的に150以下となる。しかしながら、アスペクト比が100を超える組織状態では、光学顕微鏡等によるミクロ組織観察手法では結晶粒境界の判別が困難となり、中間焼鈍工程を経たか否かの区別が困難である。
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、中間焼鈍を施すことなく、マット面におけるスジ模様の発生が抑制されたアルミニウム合金箔及びその製造方法を提供するものである。なお、本発明でスジ模様とは、伸長した材料組織に対応し、マット面上に形成されているごく僅かな凹凸であり、斜光反射にて存在が検知されるものである。
本発明に係る組成のアルミニウム合金鋳塊は、Fe含有量が多いため、Al−Fe系晶出物が多数存在することで熱間粗圧延においても再結晶し易い。しかしながら、熱間粗圧延パス間で再結晶と伸長とを繰り返すため、条件制御が不十分であると粗大な結晶粒組織となり易い。さらに、これを熱間仕上げ圧延すると、300℃未満の再結晶しない条件で終了する場合、熱間粗圧延での組織が単に伸長した状態となる。また、300℃以上の再結晶する条件で終了した場合であっても、熱間粗圧延までに形成された伸長結晶粒内が再結晶する、いわゆる同一結晶方位群となり易い。
本発明者等が鋭意研究した結果、重合圧延時に検出されるマット面のスジは、熱間粗圧延組織が伸長した組織若しくは同一結晶方位群が伸長したものであることを究明した。また、従来技術である冷間圧延途中で中間焼鈍を実施する場合、蓄積されたひずみ量が大きいことで熱間粗圧延組織の伸長状態から、微細な再結晶粒組織に変わるため、この状況は解消されていたことを究明した。すなわち、マット面のスジに関して、検出されるマット面模様を改善するためには、熱間粗圧延の最終段階において微細な再結晶粒組織を得ることが必要であることを究明した。
本発明に係るアルミニウム合金箔は、Fe:0.70〜1.40質量%、Ti:0.005〜0.05質量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物であり、下記(1)で算出されるアルミニウム合金箔のマット面上の角スペクトルにおける90°方向の相対ピーク高さが0.29未満であることとする。
90°方向の相対ピーク高さ=90°方向のピーク高さ÷(0〜20°及び160〜180°における最大のピーク高さ)・・・・・(1)
(式中、90°方向は、アルミニウム合金箔の略圧延方向である。)
また、本発明に係るアルミニウム合金箔は、Fe:0.70〜1.40質量%、Ti:0.005〜0.05質量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物であり、表面において、傾角が30°を超える結晶粒の個数が、圧延方向に対する垂直方向において2個/mm以下であることとする。
これらのような構成によれば、アルミニウム合金箔は、マット面におけるスジ模様の発生が抑制されている。
本発明に係るアルミニウム合金箔の製造方法は、Fe:0.70〜1.40質量%、Ti:0.005〜0.05質量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金鋳塊を熱間圧延して熱間圧延板とする熱間圧延工程と、前記熱間圧延板を焼鈍することなく冷間圧延して冷間圧延板とする冷間圧延工程と、前記冷間圧延板を焼鈍することなく箔圧延して箔圧延箔とする箔圧延工程と、前記箔圧延箔を重合圧延する重合箔圧延工程と、を含み、前記熱間圧延工程は熱間粗圧延及び熱間仕上げ圧延を含み、前記熱間粗圧延における最終パスを、下記(2)で示すZ因子が1.0E+12〜5.0E+13となる条件で行うものとする。
このような手順によれば、アルミニウム合金箔の製造方法は、熱間圧延工程の粗圧延における最終パスを、Z因子が所定の値となる条件で行うことで、熱間粗圧延の最終段階において微細な再結晶粒組織となる。これにより、マット面におけるスジ模様の発生が抑制される。
本発明のアルミニウム合金箔は、中間焼鈍を施さないため生産性に優れていると共に、マット面におけるスジ模様の発生が抑制されている。
本発明のアルミニウム合金箔の製造方法は、中間焼鈍を施さないため生産性に優れると共に、マット面におけるスジ模様の発生が抑制されたアルミニウム合金箔を得ることができる。
角スペクトルの測定結果の一例を示す模式図である。 傾角が30°を超える結晶粒の個数の算出の際のサンプリング位置を説明する模式図である。 傾角が30°を超える結晶粒の組織状態を確認するための箔表面(艶面側)の画像(供試材No.2の画像)である。 傾角が30°を超える結晶粒の組織状態を確認するための箔表面(艶面側)の画像(供試材No.6の画像)である。
以下、本発明に係るアルミニウム合金箔及びその製造方法について具体的に説明する。
《アルミニウム合金箔》
〈第1実施形態〉
アルミニウム合金箔は、Fe、Tiを必須成分として所定量含有し、残部がAl及び不可避的不純物である。また、アルミニウム合金箔は、アルミニウム合金箔のマット面上の角スペクトルにおける90°方向の相対ピーク高さ(以下、適宜、相対ピーク高さという。)を規定したものである。
以下、各構成について説明する。
[Fe:0.70〜1.40質量%]
Feは、再結晶粒の微細化、アルミニウム合金箔の強度及び加工硬化挙動を制御するために添加する。Feの含有量が0.70質量%未満では、強度を向上させる効果が十分ではなく、また、結晶粒が粗大若しくは再結晶が不十分となり、相対ピーク高さの値が大きくなる。一方、Feの含有量が1.40質量%を超えると、例えば加工硬化が停滞しても、強度の絶対値が高くなりすぎて箔圧延が困難になり、圧延割れの原因となる。従って、Feの含有量は0.70〜1.40質量%とする。Feの含有量は、再結晶粒の微細化、強度及び加工硬化挙動をより制御し易くする観点から、好ましくは0.80質量%以上、より好ましくは0.90質量%以上である。また、箔圧延をより行い易くする観点から、好ましくは1.30質量%以下である。
[Ti:0.005〜0.05質量%]
Tiは鋳塊組織の微細化のため添加する。Tiの含有量が0.005質量%未満では、鋳塊組織の微細化効果が不十分で、相対ピーク高さの値が大きくなり、マット面のスジが観察され易い。一方、Tiの含有量が0.05質量%を超えると、鋳塊組織の微細化効果は飽和しているため、コストが嵩み経済性に欠ける。従って、Tiの含有量は0.005〜0.05質量%とする。Tiの含有量は、鋳塊組織の微細化効果をより向上させる観点から、好ましくは0.007質量%以上、より好ましくは0.009質量%以上である。また、コストの低減の観点から、好ましくは0.03質量%以下、より好ましくは0.02質量%以下である。
[残部:Al及び不可避的不純物]
アルミニウム合金箔の成分は前記の他、残部がAl及び不可避的不純物からなるものである。不可避的不純物としては、例えば8079合金や8021合金のJIS規格で規定されている不純物の範囲内で含有されている限り、実質上問題はない。具体的には、不可避的不純物として、Si、Cu、Mn、Mg、Cr、Zn、Zr、V、Ni、Sn、In、Ga等を本発明の効果を妨げない範囲で含有又は添加しても良い。詳細には、Si:0.30質量%以下、Zn:0.10質量%以下、それ以外の元素は、それぞれ0.05質量%以下、それ以外の元素の合計で0.15質量%以下である。
(マット面上の角スペクトルにおける90°方向の相対ピーク高さ:0.29未満)
本実施形態に係る箔において、マット面におけるスジ模様の発生を抑制するためには、マット面上の角スペクトルにおける90°方向の相対ピーク高さの値を小さくする必要がある。具体的には、アルミニウム合金箔は、下記(1)で算出されるアルミニウム合金箔のマット面上の角スペクトルにおける90°方向の相対ピーク高さを0.29未満とする。
90°方向の相対ピーク高さ=90°方向のピーク高さ÷(0〜20°及び160〜180°における最大のピーク高さ)・・・・・(1)
ここで、式中、90°方向は、アルミニウム合金箔の略圧延方向である。また、0〜20°及び160〜180°における最大のピーク高さとは、0〜20°の範囲と、160〜180°の範囲の両方うちで、最大となるピーク高さを意味する。
相対ピーク高さが0.29以上では、圧延方向に伸長した結晶粒に起因する凹凸が顕著であり、箔におけるマット面のスジが観察され易い。従って、相対ピーク高さは0.29未満とする。さらに、マット面のスジを観察され難くするには、相対ピーク高さを0.12以下とするのが好ましい。
この相対ピーク高さは、前記したように、合金成分の含有量を所定範囲とするとともに、後記するように、中間焼鈍を実施することなく熱間粗圧延における最終パスを所定条件で行うことによって制御することができる。
以下、マット面上の角スペクトルにおける90°方向の相対ピーク高さの算出方法について説明する。
重合圧延を施して得られた箔について、任意の位置から検査用に所定の大きさのサンプルを切り出す。そして、サンプルをガラス板に貼付け、マット面のスジ模様評価を行う。評価に当たっては、株式会社キーエンスの形状解析レーザー顕微鏡VK−X250を用い、ISO25178に従い、測定倍率1000倍にて測定視野を縦202μm×横270μmとしてバイオレットレーザーを用い測定する。なお、測定は、箔のマット面側について行う。
所謂マット面は、圧延垂直方向に伸長した“さざなみ”状の粗面であり、圧延方向に測定するとJIS B 0601:2001に定められた算術平均粗さRaで0.2〜0.4μm程度である。これに対し、本発明の課題であるスジ模様は、圧延方向に伸長した材料組織に起因する圧延平行方向に伸長した微小な凹凸であり、重合圧延後のマット面で、マット面の粗さとスジ模様の両者は重畳したものとなっており、光学的には検出できても、算術平均粗さRaでは表せない。
前記レーザー顕微鏡による測定では、角スペクトルで、圧延垂直方向に伸長した“さざなみ”状の粗面形状を反映して、0°と180°の値が大きいこと、圧延平行方向に伸長した微小な凹凸を反映して90°に小さいピークででる特長が出力される。そして、このマット面の状態を、アルミニウム合金箔の圧延方向を90°とし、圧延方向と垂直な幅方向を0°及び180°とした、斜光反射の評価を表す角スペクトル(図1参照)とした場合において、本発明の課題であるスジ模様は90°の微小な相対ピークとして検出することができる。
なお、本発明において90°方向のピーク高さにおける「90°方向」とは、厳密に90°を意味するものではなく、測定やサンプルのばらつきにより±5°程度のズレがあってもよい。また、角スペクトルのピーク高さは測定視野によるばらつきがあるので、複数のサンプルで測定し、平均値を採用することとする。
〈第2実施形態〉
アルミニウム合金箔は、Fe、Tiを必須成分として所定量含有し、残部がAl及び不可避的不純物である。また、アルミニウム合金箔は、表面において、傾角が30°を超える結晶粒の個数が、圧延方向に対する垂直方向において2個/mm以下である。
以下、各構成について説明する。
[Fe:0.70〜1.40質量%]
Feは、再結晶粒の微細化、アルミニウム合金箔の強度及び加工硬化挙動を制御するために添加する。Feの含有量が0.70質量%未満では、強度を向上させる効果が十分ではなく、また、結晶粒が粗大若しくは再結晶が不十分となり、傾角が30°を超える結晶粒の個数が増える。一方、Feの含有量が1.40質量%を超えると、例えば加工硬化が停滞しても、強度の絶対値が高くなりすぎて箔圧延が困難になり、圧延割れの原因となる。従って、Feの含有量は0.70〜1.40質量%とする。Feの含有量は、再結晶粒の微細化、強度及び加工硬化挙動をより制御し易くする観点から、好ましくは0.80質量%以上、より好ましくは0.90質量%以上である。また、箔圧延をより行い易くする観点から、好ましくは1.30質量%以下である。
[Ti:0.005〜0.05質量%]
Tiは鋳塊組織の微細化のため添加する。Tiの含有量が0.005質量%未満では、鋳塊組織の微細化効果が不十分で、傾角が30°を超える結晶粒の個数が増え、マット面のスジが観察され易い。一方、Tiの含有量が0.05質量%を超えると、鋳塊組織の微細化効果は飽和しているため、コストが嵩み経済性に欠ける。従って、Tiの含有量は0.005〜0.05質量%とする。Tiの含有量は、鋳塊組織の微細化効果をより向上させる観点から、好ましくは0.007質量%以上、より好ましくは0.009質量%以上である。また、コストの低減の観点から、好ましくは0.03質量%以下、より好ましくは0.02質量%以下である。
[残部:Al及び不可避的不純物]
アルミニウム合金箔の成分は前記の他、残部がAl及び不可避的不純物からなるものである。不可避的不純物については第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
(傾角が30°を超える結晶粒の個数:2個/mm以下)
本実施形態に係る箔において、マット面におけるスジ模様の発生を抑制するためには、表面における傾角が30°を超える結晶粒の個数を少なくする必要がある。
ここで、「傾角が30°を超える結晶粒」とは、箔の表面において、傾角(隣接する結晶粒同士の結晶方位差)が30°を超える粒界で囲まれた結晶粒である。
後述するZ因子の値が不十分であると再結晶粒が粗大となり、また、この状態ではランダム方位となり難い。ここで、箔は、熱間圧延において結晶粒が引き伸ばされるが、結晶粒径(通常の再結晶粒は「傾角が15°超え」で規定)は100μm程度以下(幅方向の寸法)と微細である。一方、スジが検知される箔では、再結晶が不十分なため同一結晶方位群が増加するため、「傾角が30°超え」で規定すると極めて粗大な結晶粒(同一結晶方位群)が存在する。傾角が極めて大きい組織では、隣接粒と変形のされ方が異なるため、圧延平行方向に伸長した微小な凹凸形状となり、このうちマット面幅方向の凹凸が斜光検知される。一方、スジが観察されない箔は、傾角が30°を超える結晶粒はほぼ存在せず、肉眼で検知されるような凹凸形状にはならない。
このように「傾角が30°を超える結晶粒」について規定した理由は、箔のマット面におけるスジ模様の発生が、「傾角が30°を超える結晶粒」の個数に強く依存していることを数多くの実験結果から突き止めたからである。
なお、結晶構造上、傾角の最大値は65°である。
そして、傾角が30°を超える結晶粒の個数が2個/mmを超えると、箔におけるマット面のスジが観察され易い。従って、傾角が30°を超える結晶粒の個数は2個/mm以下とする。傾角が30°を超える結晶粒の個数は、箔のマット面におけるスジ模様の発生をより抑制する観点から、1個/mm以下が好ましく、0個/mmがより好ましい。なお、結晶粒の個数は、幅方向(圧延方向に対する垂直な方向)における1mmあたりの個数である。
この傾角が30°を超える結晶粒の個数は、前記したように、合金成分の含有量を所定範囲とするとともに、後記するように、中間焼鈍を実施することなく熱間粗圧延における最終パスを所定条件で行うことによって制御することができる。
なお、アルミニウム合金板の結晶粒の個数の測定は、通常、板表面に対してバフ研磨、電解研磨、及び、電解エッチングを施した後、光学顕微鏡を用いて偏光観察(例えば、観察倍率100倍)する「バーカー法」によって実施されることが多い。
しかしながら、厚さが10μm以下の薄い箔に対しては、前記のような物理的前処理が困難であり、且つ、結晶粒の個数が少ないため、バーカー法では精度よく測定することはできない。
そこで、本発明者は、前処理が容易であるとともに、所望の傾角(本発明では30°を超える傾角)の結晶粒の個数を高精度で測定することが可能なEBSD法(Electron Back Scatter Diffraction)を測定法として採用した。
例えば、傾角が30°を超える結晶粒の個数の測定は、箔の表面をイオンエッチングした後、走査型電子顕微鏡を用いて箔の表面を確認し、EBSD法によって算出することができる。
《アルミニウム合金箔の製造方法》
アルミニウム合金箔の製造方法は、ここでは、鋳造工程と、均質化熱処理工程と、熱間圧延工程と、冷間圧延工程と、箔圧延工程と、重合箔圧延工程と、を含み、この順に行う。ただし、中間焼鈍は行わない。以下、各工程について説明する。
(鋳造工程)
鋳造工程は、アルミニウム合金を定法により溶解、鋳造して、下記組成のアルミニウム合金鋳塊を作製する工程である。
アルミニウム合金は、Fe:0.70〜1.40質量%、Ti:0.005〜0.05質量%を必須成分として含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるものを用いる。
アルミニウム合金の成分の限定理由等については、アルミニウム合金箔の第1実施形態及び第2実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
(均質化熱処理工程)
均質化熱処理工程は、アルミニウム合金鋳塊を均質化熱処理する工程である。均質化熱処理は、鋳塊に熱間圧延を実施するために施されるものである。
均質化熱処理は、400〜600℃の均熱温度で2時間以上保持する条件で行うことが好ましい。本発明においてはZ因子を規定するものであり、均熱温度と保持時間は特に規定するものではない。しかし、均熱温度が400℃以上であれば、熱間圧延が行い易くなる。一方、均熱温度が600℃以下であれば、熱間圧延によりアルミニウム合金材の表面に焼付き等の表面異常が発生しにくく、ピンホールが発生しにくくなる。従って、均質化熱処理は400〜600℃の均熱温度で行うことが好ましい。均熱温度は、アルミニウム合金材の表面異常の発生をより抑制する観点から、好ましくは500℃以下である。
また、均質化熱処理の保持時間は短い方が好ましい。しかし、保持時間が2時間以上であれば、鋳塊の幅方向及び長さ方向の組織の均一性が向上し易くなる。従って、均質化熱処理は400〜600℃の均熱温度で2時間以上保持することが好ましい。本発明においては、保持時間の上限値は特に規定されるものではないが、経済性の観点から24時間以下とすることが好ましい。保持時間は、鋳塊の幅方向及び長さ方向の均一性をより向上させる観点から、より好ましくは4時間以上である。また、経済性の観点から、より好ましくは10時間以下である。
(熱間圧延工程)
熱間圧延工程は、均質化熱処理したアルミニウム合金鋳塊を熱間圧延して熱間圧延板とする工程であり、熱間粗圧延及び熱間仕上げ圧延を含む。
[熱間粗圧延]
熱間粗圧延開始温度は特に規定しない。また、熱間粗圧延中の温度は特に規定しない。但し、Z因子の適正範囲への制御のためには、熱間粗圧延開始温度は、400〜500℃の範囲が好ましい。また、Z因子の適正範囲への制御をより行い易くする観点から、熱間粗圧延中の温度は、好ましくは390℃以上であり、また、好ましくは440℃以下である。
熱間粗圧延は、最終パスをZ因子が1.0E+12〜5.0E+13となる条件で行う。Z因子の適正範囲は、多くの実験により導き出したものである。最終パスのZ因子は、ワークロール径、圧延速度、圧下率、圧延温度等により制御することができる。
熱間加工において、アルミニウムの変形応力は、広いひずみ速度範囲においてZ因子を
用いて整理される。Z因子は(2)式で示されるZである。
なお、式(2)の各単位は、ひずみ速度:s−1、活性化エネルギ:kJ・mol−1、気体定数:J・mol−1・K−1、絶対温度:Kである。
また、熱間加工中に形成される亜結晶粒の粒径dは(3)式に従うことが報告されており、次段階の再結晶粒の粒径も同一の関係に従うと考えられている。
上記の関係より、本発明者等は熱間圧延中の再結晶粒を微細とするため、Z因子を制御することとした。すなわち、(2)式においてひずみ速度及び温度を適正に制御すれば、再結晶粒の粒径を微細とすることが出来る点に注目して研究を進めた。ここで、ひずみ速度としては、Ford & Alexanderの式(4)により求めた平均ひずみ速度を用いた。
なお、Z因子の算出に当たり活性化エネルギは155kJ・mol−1を選定し、気体定数は8.314J・mol−1・K−1である。
Z因子が「1.0E+12」未満では、再結晶が完了しない若しくは再結晶粒が粗大なままであり、相対ピーク高さの値が大きくなり、また、傾角が30°を超える結晶粒の個数が増え、箔におけるマット面のスジの課題が解決しない。一方、Z因子は大きいほど再結晶粒は小さくなるが、Z因子が「5.0E+13」を超える条件では、熱間粗圧延終了後の温度が、次工程の熱間仕上げ圧延を行うための適正温度未満となり、熱間仕上げ圧延が円滑に実施できない。また、Z因子が「5.0E+13」を超える条件では、熱間粗圧延終了パスでの圧下率が大きくなりすぎて表面異常が発生し箔においてピンホール発生につながる等の不具合が生じる。従って、Z因子は1.0E+12〜5.0E+13とする。
[熱間仕上げ圧延]
熱間仕上げ圧延の終了温度及び終了板厚については、マット面のスジ特性を左右するものではないため、特に規定しない。しかし、中間焼鈍を省略して箔を製造するためには、加工硬化の抑制のため加工率が少ないことが好ましく、終了板厚3mm以下が好ましく、さらには2.5mm以下が好ましい。また終了温度は、300℃以上で再結晶組織とさせ、十分に軟化させることにより加工硬化が抑制され、中間焼鈍省略工程に適する。なお、終了温度が300℃未満の場合は、箔圧延は可能であるが、加工硬化の程度が高くなり、ピンホールが多数発生する恐れがある。
(冷間圧延工程・箔圧延工程)
冷間圧延工程は、前記熱間圧延板を焼鈍することなく冷間圧延して冷間圧延板とする工程である。箔圧延工程は、前記冷間圧延板を焼鈍することなく箔圧延して箔圧延箔とする工程である。箔圧延は冷間圧延の一種である。すなわち、これらの工程は冷間圧延・箔圧延工程として、前記熱間圧延板を焼鈍することなく、冷間圧延・箔圧延して箔(箔圧延箔)とする工程である。
冷間圧延・箔圧延の条件は特に規定されるものでなく、後工程で重合箔圧延を行うのに適した箔厚になるまで圧延を行えばよい。
(重合箔圧延工程)
重合箔圧延工程は、箔圧延箔を重合圧延する工程である。重合圧延とは、箔圧延の最終パスにおいて箔を2枚重ねて上下ワークロールの間に供給し、圧延するものである。重合箔圧延は、冷間圧延及び箔圧延の一種である。
重合箔圧延の条件は特に規定されるものでなく、所望のアルミニウム合金箔の箔厚になるまで圧延を行えばよい。重合箔圧延は、一例として、圧下率が30〜60%となる条件で行う。また、重合箔圧延後の箔厚は、一例として、5〜40μmである。
アルミニウム合金箔の製造方法は、以上説明したとおりであるが、アルミニウム合金箔の製造を行うにあたり、前記各工程に悪影響を与えない範囲において、前記各工程の間或いは前後に、他の工程を含めてもよい。例えば、鋳塊を面削する表面平滑化工程や、板や箔の表面の異物を除去する異物除去工程や、各工程で発生した不良品を除去する不良品除去工程等を含めてもよい。
このようにして製造されたアルミニウム合金箔は、マット面にスジ模様がないため、或いはマット面にスジ模様が発生しても次工程の貼合せ等の加工にてスジ模様が外観として認められにくくなるため、例えば、日用品、食料品、薬品等の見栄えを重視する包装用に用いることができる。
以上、本発明を実施するための形態について述べてきたが、以下に、本発明の効果を確認した実施例を、本発明の要件を満たさない比較例と対比して具体的に説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
〔供試材作製〕
表1に示す組成のアルミニウム合金を溶解し、500mm厚に半連続鋳造にて鋳造して表1に記載した組成の鋳塊とした。この鋳塊に面削を施した後に、均質化熱処理を施し、50mmの厚さまで熱間粗圧延を実施した。熱間粗圧延において、ワークロール径、圧延速度、圧下率、圧延温度を制御し、最終パスのZ因子を各々の値に制御した。熱間粗圧延終了後、引き続き、熱間仕上げ圧延を実施し、2.3mm厚にて終了した。冷間圧延は、途中、中間焼鈍を施すことなく、冷間圧延、箔圧延を行い、6.5μm箔とした。箔圧延は、箔圧延最終パスの14μm厚から6.5μm厚とするまでの圧延を重合圧延とした。各条件は表1に示すとおりである。
〔評価〕
(角スペクトルによる評価)
各アルミニウム合金箔のマット面におけるスジ模様の発生状態について角スペクトルによる評価を次の手順で行った。
(1)重合圧延を施して得られた箔について、任意の位置から縦横20mm×20mm程度の大きさのサンプルを3枚(n=3)切り出した。
(2)平らなガラス板(表面の平らなスライドガラス)上に各アルミニウム合金箔の艶面側(光沢面側)を下にして四隅をテープでできるだけ皺のないように貼り付けた。
(3)株式会社キーエンス製の形状解析レーザー顕微鏡VK−X250を用い、ISO25178に従い、バイオレットレーザーを用いてマット面側の角スペクトルを測定した。測定の際、アルミニウム合金箔の圧延方向と角スペクトルの90°方向とを略一致させた。なお、角スペクトルの測定時の観察倍率は1000倍で、視野のサイズは、縦202μm×横270μmとした。角スペクトルの測定結果の一例を図1に示す。
(4)角スペクトルの測定結果を示す半円チャートにおいて90°方向のピーク高さと、0〜20°及び160〜180°における最大のピーク高さとを測長し、上記(1)式を用いて90°方向の相対ピーク高さを求めた。
(5)前記した3枚(n=3)における90°方向の相対ピーク高さを平均した。
(結晶粒の個数による評価)
各アルミニウム合金箔のマット面におけるスジ模様の発生状態について傾角が30°を超える結晶粒の個数による評価を次の手順で行った。
なお、結晶粒の個数の測定は、マット面側の観察で行うことは困難なため、艶面側を観察することにより行った。マット面におけるスジ模様は、艶面側の組織の状態が反映されるものとなるため、艶面側で結晶粒の個数を測定することで、マット面におけるスジ模様の発生状態を調べることができる。
(1)重合圧延を施して得られた箔について、箔の左端を基準として、圧延幅の幅方向中央部、1/4部及び3/4部の3箇所より、検査用に、それぞれ縦横20mm×20mm程度の大きさのサンプルを切り出した(図2参照)。
(2)供試材である箔を有機溶剤に浸漬させることにより表面の油分を軽く除去した。
(3)日本電子株式会社製、ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis、型式JPS−9010MC)を用い、加速電圧600V、電流13mAにて500秒間のイオンエッチングを箔の表面に施した。
(4)日本電子株式会社製、FESEM(Field Emission Scanning Electron Microscope、型式JSM−700F)を用い、加速電圧20KVの条件の下、株式会社TSLソリューションズ製の測定ソフトであるTSL−OIM(Orientation Imaging Microscope)−Data Collectionバージョン5にて箔表面を測定した。測定は、200倍(0.5μmステップ、400μm×200μm)で行った。
(5)測定データを、株式会社TSLソリューションズ製の解析ソフトであるTSL−OIM(Orientation Imaging Microscope)−Analysisバージョン7にて解析を行った。
(6)まず、傾角が30°を超える結晶粒の定義として、Grain Tolerance Angle:30°、ピクセル(ステップ):2と規定し、2ピクセル間で方位差が30°以下の場合は、それらのピクセルは同一結晶粒であるとした。
(7)Unique Grain Color Quick Map にて結晶粒観察を行い、幅方向の1mmあたりにおける、傾角が30°を超える結晶粒の個数を求めた。
(8)前記した3箇所(n=3)における傾角が30°を超える結晶粒の個数を平均した。
図3、図4は、前記(1)〜(6)の方法に基づいて得られた供試材No.2(図3)とNo.6(図4)の「傾角が30°を超える結晶粒」の組織状態をそれぞれ示す箔表面(艶面側)の画像であり、圧延幅の幅方向中央部のものである。この図3、4の画像から、後記するマット面スジ評価において5点のもの(No.2)は、1点のもの(No.6)に比べ、「傾角が30°を超える結晶粒」が少ないことを確認することができる。なお、圧延幅の幅方向1/4部及び3/4部のものも同様であった。
(マット面スジ評価)
各アルミニウム合金箔のマット面におけるスジ模様の発生状態について目視で評価した。
評価は、斜光による肉眼判定にて1〜5点の5段階とし、1点:著しいスジ模様の発生、2点:スジ模様が多く発生、3点:スジ模様が発生し不合格、4点:スジ模様が若干観察される(合格下限)、5点:スジ模様が観察されない、として評価し、4点以上を合格とした。
前記評価のうち、1〜3点は、従来技術のようにマット面のスジ模様に関して不良のものであり、4点、5点は問題ないもので、4点より5点のほうがよりよいものである。なお、5点の評価は、スジ模様が観察されないものであり、4点の評価は、次工程の貼合せ加工での条件によりスジ模様が観察されなくなると認識できるものである。
以上の評価を表1に示す。なお、表1において、「−」は評価ができなかったもの、或いは、表面不良により箔として不向きなため、評価しなかったものである。また、本発明の規定を満たさないものは下線を引いて示す。
表1に示すように、No.1〜5は、本発明の範囲を満たすため、マット面の表面状態に優れていた。即ち、目視によるマット面のスジ模様は観察されなかったか、観察されたとしても極僅かであり、美麗な外観を呈していた。また、角スペクトルによる評価においても90°(度)方向の相対ピーク高さが所定の値未満であり、スジ模様の発生が抑制されていることがわかった。また、結晶粒の個数による評価においても傾角が30°を超える結晶粒の個数が所定の値以下であり、スジ模様の発生が抑制されていることがわかった。
一方、No.6〜13は、本発明の範囲を満たさないため、以下の結果となった。
No.6は、Ti含有量が不十分で、且つZ因子の値が低いため、角スペクトルによる評価及び結晶粒の個数による評価が悪く、著しいスジ模様が発生した。
No.7は、Z因子の値は適正であるがTi含有量が不十分であり、角スペクトルによる評価及び結晶粒の個数による評価が悪く、スジ模様が発生した。
No.8は、Z因子の値、Ti含有量とも適正であるが、Fe含有量が不十分なため、角スペクトルによる評価及び結晶粒の個数による評価が悪く、スジ模様が発生した。
No.9は、Z因子の値が低いため、角スペクトルによる評価及び結晶粒の個数による評価が悪く、スジ模様が発生した。
No.10は、Z因子の値、Ti含有量とも適正であるが、Fe含有量が多いため、加工硬化が大きく6.5μmへの圧延時に箔が破断し、評価不可であった。
No.11は、Z因子の値が低かった。この供試材は、熱間粗圧延開始温度が高すぎて、所定時間内に適正温度域まで下げることが困難であった。また、熱間圧延で焼き付きも発生し、箔に不向きなものであった。
No.12は、Z因子の値が高かった。この供試材は、熱間粗圧延最終パスにて、速度3000mm/s、終了温度360℃(熱間仕上げ圧延の終了温度は300℃)、の圧延を行ったものであり、表面不良となり箔に不向きなものであった。
No.13は、Z因子の値が高かった。この供試材は、熱間粗圧延最終パスにて、速度2500mm/s、終了温度360℃(熱間仕上げ圧延の終了温度は300℃)、の圧延を行ったものであり、表面不良となり箔に不向きなものであった。
以上、本発明について実施の形態及び実施例を示して詳細に説明したが、本発明の趣旨は前記した内容に限定されることなく、その権利範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて解釈しなければならない。なお、本発明の内容は、前記した記載に基づいて改変・変更等することができることはいうまでもない。

Claims (3)

  1. Fe:0.70〜1.40質量%、Ti:0.005〜0.05質量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物であり、
    下記(1)で算出されるアルミニウム合金箔のマット面上の角スペクトルにおける90°方向の相対ピーク高さが0.29未満であることを特徴とするアルミニウム合金箔。
    90°方向の相対ピーク高さ=90°方向のピーク高さ÷(0〜20°及び160〜180°における最大のピーク高さ)・・・・・(1)
    (式中、90°方向は、アルミニウム合金箔の略圧延方向である。)
  2. Fe:0.70〜1.40質量%、Ti:0.005〜0.05質量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物であり、
    表面において、傾角が30°を超える結晶粒の個数が、圧延方向に対する垂直方向において2個/mm以下であることを特徴とするアルミニウム合金箔。
  3. Fe:0.70〜1.40質量%、Ti:0.005〜0.05質量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金鋳塊を熱間圧延して熱間圧延板とする熱間圧延工程と、
    前記熱間圧延板を焼鈍することなく冷間圧延して冷間圧延板とする冷間圧延工程と、
    前記冷間圧延板を焼鈍することなく箔圧延して箔圧延箔とする箔圧延工程と、
    前記箔圧延箔を重合圧延する重合箔圧延工程と、を含み、
    前記熱間圧延工程は熱間粗圧延及び熱間仕上げ圧延を含み、前記熱間粗圧延における最終パスを、下記(2)で示すZ因子が1.0E+12〜5.0E+13となる条件で行うことを特徴とするアルミニウム合金箔の製造方法。
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