てんかんは、反復発作を起こしやすいことを特徴とする脳の状態である。てんかんには数多くの原因があり、例えば分娩時外傷、周産期感染、無酸素、感染性疾患、毒素の摂取、脳の腫瘍、遺伝性障害または変性疾患、頭部傷害または頭部外傷、代謝障害、脳血管障害およびアルコール離脱が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
てんかんのサブタイプは数多く特徴づけられている。例えば、次に挙げる状態のリストは非特許文献1に記載されている。
I.特発性てんかん症候群(焦点性または全般性)
A.良性新生児けいれん
1.家族性
2.非家族性
B.良性小児てんかん
1.中心・中側頭部棘波を示すもの
2.後頭部棘波を示すもの
C.小児/若年欠神てんかん
D.若年ミオクロニーてんかん(覚醒時全般性強直間代発作を含む)
E.上記以外の特発性てんかん
II.症候性てんかん症候群(焦点性または全般性)
A.ウェスト症候群(乳児スパズム)
B.レノックス・ガストー症候群
C.早期ミオクロニー脳症
D.持続性部分てんかん
1.ラスムッセン症候群(脳炎型)
2.制限型
E.後天性てんかん性失語(ランドー・クレフナー症候群)
F.側頭葉てんかん
G.前頭葉てんかん
H.外傷後てんかん
I.その他の症候性焦点性または全般性てんかん
III.分類不明または複数の分類にわたる他のてんかん症候群
A.新生児発作
B.熱性発作
C.反射てんかん
D.その他
例えば上記リストのパートIIIからわかるように、てんかんにはまだ十分に特徴づけられていないサブタイプが依然として存在するので、上記のリストは決して完全ではない。てんかんのサブタイプには、ウェスト症候群、光感受性てんかん、結節性硬化症、ドゥーゼ症候群、アンジェルマン症候群、大田原症候群、ランドー・クレフナー症候群、CDLK5、睡眠期持続性棘徐波(continuous spikes and waves during sleep)が含まれる。
てんかんのこれらのサブタイプが、異なる刺激によって引き金を引かれ、異なる生物学的経路によって制御され、遺伝的であれ環境的であれ、異なる原因を有することは、当業者にはわかるであろう。言い換えると、あるてんかんサブタイプに関する教訓が他のサブタイプには必ずしも当てはまらないことは、当業者にはわかるであろう。具体的に述べると、異なるてんかんサブタイプは、異なる抗けいれん薬に対して異なる応答を示す。
ドラベ症候群は乳児期に始まる稀少難病型の難治性てんかんである。最初に、患者は遷延性発作を起こす。2年目には、他のタイプの発作も起こり始め、典型的には、これと同時に、頻回の脳低酸素によると思われる発育停滞が起こる。これが言語技能および運動技能の発達不良につながる。
ドラベ症候群を有する小児は、1日に何度も発作を起こす可能性がある。ドラベ症候群の罹患者ではてんかん発作が死をもたらす可能性がはるかに高く、ドラベ症候群と診断された患者の約10〜15%は小児期、特に2歳〜4歳の間に死亡する。加えて、患者には、整形外科的発育問題、成長障害および慢性感染を含む数多くの関連状態のリスクがある。
特に懸念されるのは、ドラベ症候群を有する小児が、てんかん重積状態のエピソードをとりわけ起こしやすいことである。この重症・難治性の状態は、典型的には入院加療を伴う即時医療介入を必要とする医学的緊急事態と分類される。てんかん重積状態は命にかかわる場合もある。また、脳組織の損傷につながりうる脳低酸素とも関連付けることができる。ドラベ症候群を有する小児の頻繁な入院加療は、患者だけでなく家族および介護者にとっても、明らかに苦痛である。
ドラベ症候群患者の治療費も高い。罹患小児は常時看護を必要とし、ティーンエイジに達すると、多くの患者は施設収容が必要になるからである。
現在、ドラベ症候群を有する患者における発作の事例を低減するためにいくつかの抗けいれん療法を使用することはできるが、それらの治療法で得られる結果は典型的には不十分であり、それらの治療法はせいぜい発作の部分的停止に影響を及ぼすにすぎない。ドラベ症候群に関連する発作は、典型的には、従来の処置に対して抵抗性である。さらに、クロバザムやクロナゼパムなどの多くの抗けいれん薬は望ましくない副作用を有し、それが小児患者ではとりわけ激烈である。
スチリペントールはドラベ症候群の処置に欧州では承認されているが、米国では承認されていない。これは、それ自体が抗けいれん活性を呈するのではなく、他の抗けいれん薬の代謝を阻害し、その結果、それらの活性を長引かせることによって作用する。しかし、スチリペントールの使用については、肝シトクロムP450に対するその阻害効果ゆえに、懸念が残る。さらに、ドラベ患者は数多くの異なる医薬を服用していることが多いので、スチリペントールと多数の薬物との相互作用は、ドラベ症候群の処置におけるその使用には問題が多いことを意味する。スチリペントールの使用は、それをバルプロエートおよびクロバザムと共に補助療法として使用することしかできないという事実によって、さらに制約される。
ドラベ症候群の主要な遺伝的原因としてニューロン特異的電位作動性ナトリウムチャネルのアルファ-サブユニット(SCN1a)における変異が2001年に発見されたことは、当技術分野において公知である(非特許文献2、非特許文献3)。非特許文献3によれば、「近年、特にその主要な遺伝的原因であるSCN1A遺伝子における変異の発見後は、診断が増加している」。
これらの遺伝子変異の検出は、他の形態のてんかんとは異なる方法でドラベ症候群の診断を確認するために使用されている。このように、ドラベ症候群の原因は、他の形態のてんかんと比べて著しく異なっている。
さらに、ドラベ症候群の症候と診断は、他の形態のてんかんとは著しく異なる。非特許文献2は、ドラベ症候群は「......1歳未満での強直間代発作の出現、その後のミオクロニー発作および運動失調の発生、発作の発症に続く精神運動発達障害、および抗てんかん薬に対する応答不良」によって、他の形態のてんかんと鑑別することができると述べている。
非特許文献3は次のように述べて、これをさらに裏付けている。「ドラベ症候群は、典型的には、既存の発育上の問題がなかった小児において、1歳未満で遷延性、熱性および無熱性、全般性間代または片側性間代てんかん発作を呈する。ミオクロニー発作、焦点性発作および非定型欠神発作を含む他の発作タイプが、1歳から4歳までの間に現れる(Dravet, 1978)」。
このように、ドラベ症候群の症候と診断は、他の形態のてんかんとは著しく相違する。何か特定の化合物がドラベ症候群において有効であるだろうということを、当業者は自明だとは思わないだろうし、当然のこととも考えないであろう。
さらにまた、前掲の非特許文献2からの抜粋で述べられているように、本発明以前は、ドラベ症候群はあらゆる既存のてんかん薬による処置に対して不応性であり、避けることのできない永続的障害につながると考えられていた。非特許文献2は次のようにも述べている。「ほとんどの場合、親はこれらの恐ろしい突然のけいれんを見て狼狽し、自分の子どもが死にかけているという第一印象を抱く。そこで彼らは、担当医が発作を管理する最も近い救急科に駆けつけることになるが、発作は持続性かつ薬物抵抗性であり、発作を止めるには通常より高用量のベンゾジアゼピンを必要とする(強調部分は引用者による)」。
非特許文献3は次のように述べて、これをさらに裏付けている。「このてんかんは通常、標準的な抗てんかん薬物療法には不応性であり(強調部分は引用者による)、患児は、2歳から、認知障害、行動障害および運動障害をもたらすてんかん性脳症を発症する」。
実際、本発明以前に、現行のてんかん薬を用いる追加薬物処置では、患者の20〜30%でしか発作頻度の50%減少が起こらず、無発作になるのは5%未満であることが見いだされていた。非特許文献2も、ドラベ症候群患者が無発作になると期待することに対して、次のように警告している。「自分の子どもが無発作になってほしいと親が願うことは理解できるが、著しく薬物抵抗性であるこの症候群では、それが十中八九、達成不可能な目標であることを、彼らは知るべきである(強調部分は引用者による)」(21頁第1欄)。
さまざまな形態のてんかんの処置に使用されてきた多種多様な薬物がある。以下のリストは網羅的ではないが、てんかんと診断された患者に広く処方されている薬物が含まれていると考えられる。
・Carbatrol、Epitol、Equetro、TEGretol(カルバマゼピン)
・Gabitril(チアガビン)
・Keppra(レベチラセタム)
・LaMICtal(ラモトリギン)
・Lyrica(プレガバリン)
・Gralise、Horizant、Neurontin、Gabarone(ガバペンチン)
・Dilantin、Prompt、Di-Phen、Epanutin、Phenytek(フェニトイン)
・Topamax、Qudexy XR、Trokendi XR、Topiragen(トピラマート)
・Trileptal、Oxtellar(オキシカルバゼピン)
・Depacon、Depakene、Depakote、Stavzor(バルプロエート、バルプロ酸)
・Zonegran(ゾニサミド)
・Fycompa(ペランパネル)
・Aptiom(エスリカルバゼピン塩酸塩)
・Vimpat(ラコサミド)
・Sabril(ビガバトリン)
・Banzel、Inovelon(ルフィナミド)
・Cerebyx(フォスフェニトイン)
・Zarontin(エトスクシミド)
・Solfoton、Luminal(フェノバルビタール)
・Valium、Diastat(ジアゼパム)
・Ativan(ロラゼパム)
・Lonopin、Klonopin(クロナゼパム)
・Frisium、Onfi(クロバザム)
・Potiga(エゾガビン)
・Felbatol(フェルバメート)
・Mysoline(プリミドン)
てんかんの処置に使用される薬物の種類は非常に多く、上に示したとおり、ドラベ症候群は薬物抵抗性であると考えられていたので、ドラベ症候群を処置するための特定薬物の使用は明らかに非自明な発明である。
加えて、てんかんの処置に広く使用されている一定種類の薬物、すなわちカルバマゼピン、オキシカルバゼピン、ラモトリギン、ラコサミド、ルフィナミド、フェニトイン、およびフォスフェニトインを含むナトリウムチャネル遮断薬は、ドラベ症候群では禁忌であることがわかっている。これらの薬物は、ほとんど全てのドラベ症候群患者において、発作発生率の増大につながることがわかっている。同様に、ビガバトリンおよびチアガビンを含む選択的GABA再取り込み阻害薬/GABA T阻害薬も、ドラベ症候群では避けるべきである。
ナトリウムチャネル遮断薬は、ナトリウムチャネルの休止、活性化および不活性化というサイクルの特定段階で、多くの場合、不活性化状態からの回復を遅延させることによって、ナトリウムチャネルに優先的に作用し、その結果、Na+の累積的低減を生じさせる。
非てんかん脳は興奮(発作を惹起することができる)と抑制(発作を低減することができる)のバランスを自然にとっている。過剰な興奮性神経伝達によって引き起こされるてんかんでは、ナトリウムチャネル遮断薬が有益である。なぜなら、ナトリウム遮断薬は、過剰な興奮を引き起こす神経伝達物質を低減するからである。
対照的に、ドラベ症候群を有する患者は、ナトリウムチャネル機能の喪失を引き起こすSCN1A変異などの遺伝子変異を有する。ナトリウムチャネル遮断薬が発作活動を防止するように働く機序からすると、ナトリウムチャネルを無効に(本質的に遮断)するこれらの変異は、発作を妨げ、ドラベ症候群を有する人がてんかんを起こす傾向を低下させるはずだと考えられるだろう。しかしこの機能喪失は実際には発作活動の増加につながる。なぜなら、この変異の結果は、発作を起こりやすくする興奮性神経伝達物質を相殺するために通常は脳内に正しい量で存在する抑制性神経伝達物質量の減少だからである。この場合、脳における興奮と抑制のバランスの問題は、興奮が過剰なことではなく、抑制が過少なことである。ナトリウムチャネル遮断薬をドラベ症候群患者に与えると、脳内の抑制性神経伝達物質の量がさらに減少して、バランスをさらに発作活動側へと傾かせることになる。
非特許文献4では、「多くのAEDには効果がなく、ミオクロニー発作に有利に働くかミオクロニー発作を誘発さえしうるカルバマゼピンやビガバトリン、およびラモトリギンなど、特に若い患者にとっては、有害作用の原因になりうる」と述べられている。
非特許文献5では、「この症候群の同定から間もなく、症状を悪化させる化合物、すなわち患者の80%までを巻き込むラモトリギンが同定された......;カルバマゼピンおよびビガバトリンによる悪化は60%程度である。ラモトリギン、(および)カルバマゼピン......は、発作を悪化させうるので、避けるべきである」と述べられている。
てんかんおよび/またはドラベ症候群と関係する発作および/または関連症状を低減するための方法であって、薬学的に許容される担体と、5-HT2B受容体サブタイプを認識しない5-HT受容体アゴニストとを含む治療有効量の製剤を、患者に投与する工程を含む方法を開示する。
本発明の一局面は、5-HT受容体アゴニストが、3-[3-(2-ジメチルアミノエチル)-1H-インドール-5-イル]-N-(4-メトキシベンジル)アクリルアミド、[(4-ブロモ-3,6-ジメトキシベンゾシクロブテン-1-イル)メチルアミン臭化水素酸塩、(6aR,9R)-N-((2R,5S,10aS,10bS)-5-ベンジル-10b-ヒドロキシ-2-メチル-3,6-ジオキソオクタヒドロ-2H-オキサゾロ[3,2-a]ピロロ[2,1-c]ピラジン-2-イル)-7-メチル-4,6,6a,7,8,9-ヘキサヒドロインドロ[4,3-fg]キノリン-9-カルボキサミド、(2S)-(+)-5-(1,3,5-トリメチルピラゾール-4-イル)-2-(ジメチルアミノ)テトラリン、[1H-インドール-5-オール 3-(1-メチル-4-ピペリジニル)]、ならびにそれらの組み合わせ、塩、誘導体、断片、および複合体からなる群より選択される、本明細書に記載の処置方法である。
本発明の別の局面は、5-HT受容体アゴニストがロルカセリン[(1R)-8-クロロ-1-メチル-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-3-ベンゾアゼピン]である、本明細書に記載の処置方法である。
上に示したとおり、また当業者にはわかるであろうとおり、てんかんの処置に有用であることが公知のいくつかの薬物の使用は、ドラベ症候群を有する患者の処置においては、実際には有害である。これらに鑑み、さらにまたドラベ症候群は一般に薬物による処置が可能でないという従来の知見を考慮すると、ドラベ症候群の処置に有効な化合物があれば、改善された予想外の結果が得られるであろう。
Ceulemans et. al.(Epilepsia, 53(7):1131-1139, 2012)は、ドラベ症候群の処置におけるフェンフルラミンの使用を開示し、患者を0.12〜0.90mg/kg/日の量のフェンフルラミンによる長期処置の対象としたところ、患者の70%が無発作であったという結果を開示している。これは、ドラベ症候群の罹患者に有効な処置選択肢を初めて提供する有用で予想外の結果である。フェンフルラミンは、複数の5-HTサブタイプ受容体を活性化する強力な5-ヒドロキシトリプタミン(5-HT、セロトニン)放出薬である。現在、0.1〜1.7mg/kg/日の範囲の量またはそれを上回る量のフェンフルラミンによる処置が、ドラベ症候群における発作および関連認知機能低下の低減または排除に有効であると考えられている。
5-HT受容体は中枢神経系および末梢神経系に見いだされる一群のGタンパク質共役受容体(GPCR)およびリガンド作動性イオンチャネル(LGIC)である。これらは興奮性神経伝達と抑制性神経伝達をどちらも媒介する。セロトニン受容体は、その天然リガンドとして作用する神経伝達物質セロトニンによって活性化される。
5-HT受容体は、グルタミン酸、GABA、ドーパミン、エピネフリン/ノルエピネフリン、およびアセチルコリンを含む数多くの神経伝達物質、ならびにオキシトシン、プロラクチン、バソプレシン、コルチゾール、コルチコトロピン、およびサブスタンスPなどを含む数多くのホルモンの放出を調整する。それらは、攻撃、不安、食欲、認知、学習、記憶、気分、悪心、睡眠、および体温調節など、さまざまな生物学的プロセスおよび神経学的プロセスに影響を及ぼす。
複数の5-HTサブタイプ受容体があり、そのうちの14種類がヒトで記述されていて、そのそれぞれがさまざまな器官に分布して複数の機能を有している。これらのサブタイプ受容体には、5-HT1A、5-HT1B、5-HT1D、5-HT1E、5-HT1F、5-HT2A、5-HT2B、5-HT2C、5-HT3、5-HT4、5-HT5A、5-HT5B、5-HT6、および5-HT7がある。
フェンフルラミンは、5-HT2A、5-HT2Bおよび5-HT2C受容体サブタイプに対する高いアフィニティーとこれらの受容体サブタイプにおける活性を有することが知られていた(Rothman et al, 2015)。5-HT2Cアゴニストは食欲抑制の引き金を引くので、フェンフルラミンは、人気の減量薬Fen-Phen(フェンフルラミン/フェンテルミン)の一部として、肥満の処置に応用されていた。しかし5-HT2B受容体の活性化は心臓弁肥大と関連し、この薬物誘発性弁膜症が、結果として、1997年9月にFen-Phenを市場から撤退させることになった。
このように、ドラベ症候群において活性を有する1つまたは複数の5-HT受容体サブタイプに対するアフィニティーを有し、かつ他の5-HTサブタイプに関連する心臓弁肥大などの副作用を回避するために十分な特異性を有する5-HT受容体アゴニストには、まだ満たされていない医療上の必要性がある。
てんかんを有する患者における発作を処置するための化合物および/または製剤ならびにそれらの使用方法を提供することが、本発明の目的である。
ドラベ症候群を有する患者における発作を処置するための化合物および/または製剤ならびにそれらの使用方法を提供することが、本発明のさらに別の目的である。
ドラベ症候群を含むてんかんを有する患者における発作を処置するための5-HT受容体アゴニストおよび製剤ならびにそれらの使用方法を提供することが、本発明のさらに別の目的である。
ドラベ症候群を含むてんかんを有する患者における発作を低減するのに有効な1つまたは複数の5-HT受容体に対するアフィニティーを有する1つまたは複数の5-HT受容体アゴニストを提供することが、本発明のさらに別の目的である。
副作用に関連する1つまたは複数の5-HT受容体サブタイプに対するアフィニティーを有さない、ドラベ症候群を含むてんかんを有する患者における発作を低減するのに有効な5-HT受容体アゴニストを提供することが、本発明のさらに別の目的である。
5-HT1A、5-HT1B、5-HT1D、5-HT1E、5-HT1F、5-HT2A、5-HT2B、5-HT2C、5-HT3、5-HT4、5-HT5A、5-HT5B、5-HT6、および5-HT7のうちの1つまたは複数、好ましくは5-HT1D、5-HT1E、5-HT2A、5-HT2C、5-HT5A、5-HT5B、および5-HT7のうちの1つまたは複数、より好ましくは5-HT1D、5-HT2A、5-HT2C、5-HT5A、5-HT5B、5-HT7のうちの1つまたは複数、より一層好ましくは5-HT2Aまたは5-HT2Cのうちの1つまたは複数に対するアフィニティーを有する5-HT受容体アゴニストを提供することが、本発明のさらに別の目的である。好ましい一態様では、5-HT受容体アゴニストが5-HT2A受容体サブタイプに対するアフィニティーを有し、特に好ましい一態様では、5-HT受容体アゴニストが5-HT2A受容体サブタイプに対して高い特異性を有する。別の好ましい態様では、5-HT受容体アゴニストが5-HT2C受容体サブタイプに対するアフィニティーを有し、特に好ましい態様では、5-HT受容体アゴニストが5-HT2C受容体サブタイプに対して高い特異性を有する。
潜在的に危険な副作用に関連する5-HT受容体を作動させることを避けるために、十分な特異性を有する5-HT受容体アゴニストを供給することが、本発明のさらに別の目的である。好ましくは、5-HT受容体アゴニストは、5-HT1A、5-HT1B、5-HT1D、5-HT1E、5-HT1F、5-HT2A、5-HT2B、5-HT2C、5-HT3、5-HT4、5-HT5A、5-HT5B、5-HT6、および5-HT7のうちの1つまたは複数、好ましくは、5-HT1A、5-HT1B、5-HT1E、5-HT1F、5-HT2B、5-HT2C、5-HT3、5-HT4、および5-HT6のうちの1つまたは複数、より好ましくは5-HT1A、5-HT1B、5-HT1F、5-HT2B、5-HT3、5-HT4、および5-HT6のうちの1つまたは複数のアゴニストではない。5-HT受容体アゴニストが5-HT2B受容体サブタイプを作動させないことは、特に好ましい。
好ましい受容体アゴニストとして、以下のアゴニストのうちの1つまたは複数が挙げられる:
GR 46611[3-[3-(2-ジメチルアミノエチル)-1H-インドール-5-イル]-N-(4-メトキシベンジル)アクリルアミド]
BRL 54443[1H-インドール-5-オール, 3-(1-メチル-4-ピペリジニル)-]
TCB 2[(4-ブロモ-3,6-ジメトキシベンゾシクロブテン-1-イル)メチルアミン臭化水素酸塩]
ロルカセリン[(1R)-8-クロロ-1-メチル-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-3-ベンゾアゼピン]
エルゴタミン[(6aR,9R)-N-((2R,5S,10aS,10bS)-5-ベンジル-10b-ヒドロキシ-2-メチル-3,6-ジオキソオクタヒドロ-2H-オキサゾロ[3,2-a]ピロロ[2,1-c]ピラジン-2-イル)-7-メチル-4,6,6a,7,8,9-ヘキサヒドロインドロ[4,3-fg]キノリン-9-カルボキサミド]
およびAS 19[(2S)-(+)-5-(1,3,5-トリメチルピラゾール-4-イル)-2-(ジメチルアミノ)テトラリン]
ならびにそれらの塩、誘導体、断片、および複合体。
特に好ましいのはロルカセリンである。ロルカセリンは、5-HT2B受容体との比較で、5-HT2C受容体に対して100倍のアフィニティーを有するからである。したがってロルカセリンは、ドラベ症候群を含むてんかんにおいてフェンフルラミンと類似する効力を有し、5-HT2B受容体サブタイプに関連する弁膜症を含む心血管副作用を伴わないと予想される。
上述の5-HT受容体アゴニストを1つまたは複数の5-HT受容体サブタイプに対するアンタゴニストである1つまたは複数の5-HT受容体アンタゴニストと組み合わせて供給することが、本発明のさらに別の目的である。好ましくは、5-HT受容体サブタイプは、5-HT
1A、5-HT
1B、5-HT
1D、5-HT
1E、5-HT
1F、5-HT
2A、5-HT
2B、5-HT
2C、5-HT
3、5-HT
4、5-HT
5A、5-HT
5B、5-HT
6、および5-HT
7のうちの1つまたは複数、好ましくは5-HT
1A、5-HT
1B、5-HT
1E、5-HT
1F、5-HT
2B、5-HT
2C、5-HT
3、5-HT
4、および5-HT
6のうちの1つまたは複数、より好ましくは5-HT
1A、5-HT
1B、5-HT
1F、5-HT
2B、5-HT
3、5-HT
4、および5-HT
6のうちの1つまたは複数である。5-HT受容体アンタゴニストが5-HT
2B受容体サブタイプのアンタゴニストであることは、特に好ましい。好ましい5-HT
2B受容体アンタゴニストとしては、
ATC 0175[N-[cis-4-[[4-(ジメチルアミノ)-2-キナゾリニル]アミノ]シクロヘキシル]-3,4-ジフルオロベンズアミド塩酸塩]
LY 266097[1-[(2-クロロ-3,4-ジメトキシフェニル)メチル]-2,3,4,9-テトラヒドロ-6-メチル-1H-ピリド[3,4-b]インドール塩酸塩]
LY 272015[1-[(3,4-ジメトキシフェニル)メチル]-2,3,4,9-テトラヒドロ-6-メチル-1H-ピリド[3,4-b]インドール塩酸塩]
RS 127445[4-(4-フルオロ-1-ナフタレニル)-6-(1-メチルエチル)-2-ピリミジンアミン塩酸塩]
SB 200646[N-(1-メチル-1H-インドール-5-イル)-N'-3-ピリジニルウレア]
SB 204741[N-(1-メチル-1H-インドリル-5-イル)-N''-(3-メチル-5-イソチアゾリル)ウレア]
SB 206553[3,5-ジヒドロ-5-メチル-N-3-ピリジニルベンゾ[1,2-b:4,5-b']ジピロール-1(2H)-カルボキサミド塩酸塩]
SB 221284[2,3-ジヒドロ-5-(メチルチオ)-N-3-ピリジニル-6-(トリフルオロメチル)-1H-インドール-1-カルボキサミド]
SB 228357[N-[3-フルオロ-5-(3-ピリジニル)フェニル]-2,3-ジヒドロ-5-メトキシ-6-(トリフルオロメチル)-1H-インドール-1-カルボキサミド]
SDZ SER 082[(+)-cis-4,5,7a,8,9,10,11,11a-オクタヒドロ-7H-10-メチルインドロ[1,7-bc][2,6]-ナフチリジンフマル酸塩]
ならびにそれらの塩、誘導体、断片、および複合体が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。上記5-HT受容体アゴニストのうちの1つまたは複数を、てんかんを患っている患者、好ましくはドラベ症候群を患っている患者に送達する工程を含む、てんかんの処置方法を供給することは、本発明のさらに別の目的である。
上記5-HT受容体アゴニストの1つまたは複数を上記5-HT受容体アンタゴニストのうちの1つまたは複数と組み合わせて、てんかんを患っている患者、好ましくはドラベ症候群を患っている患者に送達する工程を含む、てんかんの処置方法を供給することは、本発明のさらに別の目的である。
本発明が、ドラベ症候群の処置と、発作の低減とをもたらすことは、本発明の利点である。
本発明が、低減した副作用および向上した安全性プロファイルで、ドラベ症候群の処置と、発作および関連する発育停滞の低減とをもたらすことは、本発明のさらに別の利点である。
本発明が、低減した副作用および向上した安全性プロファイルで、ドラベ症候群の処置と、発作および関連する発育停滞の低減とをもたらし、ここで前記副作用が、嗜癖、攻撃、食欲、血圧、心血管機能、嘔吐、心拍数、衝動性、記憶、気分、悪心、痛覚、陰茎勃起、瞳孔拡張、呼吸、性行動、睡眠、社会性、体温調節、血管収縮、学習、移動運動、片頭痛、不安、認知、想像、知覚、胃腸運動のうちの1つまたは複数に関連する副作用から選択されることは、本発明のさらに別の利点である。
本発明が、低減した副作用および向上した安全性プロファイルで、ドラベ症候群の処置と、発作および関連する発育停滞の低減とをもたらし、ここで前記副作用が、肺高血圧、弁膜症、心臓弁肥大、大動脈弁逆流、僧帽弁逆流、損傷(lesion)、および表面プラーク(surface plaques)から選択される心血管副作用から選択されることは、本発明のさらに別の利点である。
本発明のこれらの、そして他の目的、利点、および特徴は、より詳しく以下に説明する製剤および方法の詳細を読めば、当業者には明らかになるであろう。
より具体的に述べると本発明は以下を提供する:
[1]
てんかんの一形態を有する患者における発作を低減する際の、
薬学的に許容される担体と、
5-HT受容体アゴニストと、
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)と
を含む製剤の使用;
[2]
てんかんの形態がドラベ症候群である、[1]の使用;
[3]
5-HT受容体アゴニストがフェンフルラミンである、[2]の使用;
[4]
フェンフルラミンが任意のレボフェンフルラミンの非存在下でのデキスフェンフルラミンである、[3]の使用;
[5]
フェンフルラミンが任意のデキスフェンフルラミンの非存在下でのレボフェンフルラミンである、[3]の使用;
[6]
5-HT受容体アゴニストが、5-HT1D、5-HT2A、5-HT2C、5-HT5A、5-HT5B、5-HT7、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される受容体に対するアフィニティーと、その受容体における活性とを有する、[2]の使用;
[7]
SSRIが、シタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、ならびにそれらの組み合わせ、塩、誘導体、断片、および複合体からなる群より選択される、[1]の使用;
[8]
SSRIが、エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、ならびにそれらの組み合わせ、塩、誘導体、断片、および複合体からなる群より選択される、[4]の使用;
[9]
SSRIが、エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、ならびにそれらの組み合わせ、塩、誘導体、断片、および複合体からなる群より選択される、[5]の使用;
[10]
てんかんの一形態を有する患者における発作を低減する際の、
薬学的に許容される担体と、
5-HT受容体アゴニストと、
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SNRI)と
を含む製剤の使用;
[11]
てんかんの形態がドラベ症候群である、[10]の使用;
[12]
5-HT受容体アゴニストがフェンフルラミンである、[10]の使用;
[13]
フェンフルラミンが任意のレボフェンフルラミンの非存在下でのデキスフェンフルラミンである、[11]の使用;
[14]
フェンフルラミンが任意のデキスフェンフルラミンの非存在下でのレボフェンフルラミンである、[11]の使用;
[15]
5-HT受容体アゴニストが、5-HT1D、5-HT2A、5-HT2C、5-HT5A、5-HT5B、5-HT7、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される受容体に対するアフィニティーと、その受容体における活性とを有する、[11]の使用;
[16]
SNRIが、ボルチオキセチン、イミプラミン、ベンラファキシン、デスベンラファキシン、デュロキセチン、ミルナシプラン、レボミルナシプラン、ならびにそれらの組み合わせ、塩、誘導体、断片、および複合体からなる群より選択される、[11]の使用;
[17]
SNRIが、アルモトリプタン、フロバトリプタン、リザトリプタン、スマトリプタン、ゾルミトリプタン、ならびにそれらの組み合わせ、塩、誘導体、断片、および複合体からなる群より選択される、[13]の使用;
[18]
SNRIが、アルモトリプタン、フロバトリプタン、リザトリプタン、スマトリプタン、ゾルミトリプタン、ならびにそれらの組み合わせ、塩、誘導体、断片、および複合体からなる群より選択される、[14]の使用;
[19]
てんかんの一形態を有する患者における発作を低減する際の、
薬学的に許容される担体と、
5-HT受容体アゴニストと、
トリプタンと
を含む製剤の使用;
[20]
てんかんの形態がドラベ症候群である、[19]の使用;
[21]
5-HT受容体アゴニストがフェンフルラミンである、[19]の使用;
[22]
フェンフルラミンが任意のレボフェンフルラミンの非存在下でのデキスフェンフルラミンである、[21]の使用;
[23]
フェンフルラミンが任意のデキスフェンフルラミンの非存在下でのレボフェンフルラミンである、[21]の使用;
[24]
5-HT受容体アゴニストが、5-HT1D、5-HT2A、5-HT2C、5-HT5A、5-HT5B、5-HT7、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される受容体に対するアフィニティーと、その受容体における活性とを有する、[20]の使用;
[25]
トリプタンが、アルモトリプタン、フロバトリプタン、リザトリプタン、スマトリプタン、ゾルミトリプタン、ナラトリプタン、ならびにそれらの組み合わせ、塩、誘導体、断片、および複合体からなる群より選択される、[19]の方法;
[26]
トリプタンがナラトリプタンである、[25]の方法;
[27]
ドラベ症候群を有する患者における発作を低減する際の製剤の使用であって、
ドラベ症候群を有すると患者を診断する段階;および
前記患者に治療有効量の製剤を投与する段階
を含み、該製剤が
薬学的に許容される担体と、
5-HT受容体アゴニストと、
トリプタンと
を含む、製剤の使用;
[28]
トリプタンが、アルモトリプタン、フロバトリプタン、リザトリプタン、スマトリプタン、ゾルミトリプタン、ナラトリプタン、ならびにそれらの組み合わせ、塩、誘導体、断片、および複合体からなる群より選択される、[27]の使用;
[29]
トリプタンがナラトリプタンである、[27]の使用;
[30]
5-HT受容体アゴニストが任意のレボフェンフラミンの非存在下でのデキスフェンフルラミンである、[27]の使用;ならびに
[31]
5-HT受容体アゴニストが任意のデキスフェンフルラミンの非存在下でのレボフェンフルラミンである、[27]の使用。
態様の説明
発明の詳細な説明
本製剤および本方法の説明に先だって、本発明は、当然ながら、さまざまな態様をとりうるので、本発明が、ここに記載する特定の製剤および方法に限定されないことを理解すべきである。本発明の範囲は本願請求項によってのみ限定されるので、本明細書において使用する術語には特定の態様を説明するという目的しかなく、限定を意図していないことも理解すべきである。
値の範囲が提示されている場合、その範囲の上限と下限の間の各中間値も、文脈上そうでないことが明白である場合を除き、下限の10分の1単位までは、具体的に開示されているものと理解される。明示された範囲内にある任意の明示された値または中間値と、その明示された範囲内にある他の任意の明示された値または中間値とで挟まれる小範囲のそれぞれは、本発明に包含される。これらの小範囲の上限および下限は独立してその範囲に含まれる場合も除外される場合もあり、一方または両方の端点を小範囲に含むかどちらの端点も小範囲には含まない各範囲も、本発明に包含される(ただし、明示された範囲内の特に除外された端点を除く)。明示された範囲が端点の一方または両方を含む場合は、それら含まれる端点の一方または両方を除外した範囲も、本発明に含まれる。
別段の定義がある場合を除き、本明細書において使用される技術用語および科学用語は全て、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者が一般に理解しているものと同じ意味を有する。本明細書に記載するものと類似するまたは等価な方法および材料はいずれも本発明の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法および材料を以下に説明する。本明細書において言及する刊行物はいずれも、その刊行物への言及と関係する方法および材料を開示し説明するために、参照により本明細書に組み入れられる。
本明細書および本願請求項において使用される場合、単数形「一つの(a)」、「一つの(an)」および「その(the)」は、文脈上そうでないことが明白である場合を除き、複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。したがって例えば、「ある製剤(a formulation)」への言及は複数のそのような製剤を包含し、「前記方法(the method)」への言及は、1つまたは複数の方法および当業者に公知であるその等価物への言及を包含する、などである。
本明細書において議論する刊行物は、本願の出願日前にそれらが開示されていたから記載するにすぎない。本発明が先行発明を理由としてそれらの公開に先行する資格がないことの自認であると解釈すべき記述は、本明細書にはない。さらに、記載されている刊行日は実際の刊行日とは異なる可能性があり、実際の刊行日については別途確認する必要があるかもしれない。
発明の大要
上述のように、フェンフルラミンは、ドラベ症候群を含むてんかんを有する患者における発作を低減するのに有効であることが公知の5-HT受容体アゴニストである。フェンフルラミンは、5-HT2Aおよび5-HT2C受容体サブタイプに対する高いアフィニティーと前記受容体サブタイプにおける活性とを有することが知られており、ドラベ症候群における活性が、これら受容体サブタイプのうちの1つまたは複数と関連しているのか、他の5-HT受容体サブタイプと関連しているのか、あるいは他の無関係な作用様式と関連しているのかはわかっていなかった。フェンフルラミンはヒトにおいて、5-HT2B受容体に対して強い親和性を有するノルフェンフルラミンへと主に代謝される。5-HT2B受容体の活性化は心臓弁肥大と関連している。そこで本発明者らは、考えうる副作用を避けつつフェンフルラミンの効力を維持しているドラベ症候群の処置を創製することが可能かどうかを決定したいと考えた。
さまざまな5-HT受容体サブタイプに対して高い特異性とアフィニティーとを有するアゴニストを選択した。5-HT5A受容体および5-HT5B受容体に対して特異性を有するアゴニストは入手できなかったので、両者に対してアフィニティーを有するエルゴタミンを利用した。これらの化合物を、てんかんのゼブラフィッシュモデルを使用し、急性ばく露プロファイルと慢性ばく露プロファイルの両方を使って、スクリーニングし、フェンフルラミンの活性と比較した。
フェンフルラミン(3-トリフルオロメチル-N-エチルアンフェタミン)は、次の構造を有する:
(RS)-N-エチル-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]プロパン-2-アミン。
これは、そのIUPAC名が示すとおり、2つのエナンチオマー、すなわちデキスフェンフルラミンとレボフェンフルラミンのラセミ混合物である。
フェンフルラミンは、神経伝達物質の小胞貯蔵庫を破壊し、セロトニントランスポーター機能を逆転させることによって、セロトニンの放出を引き起こす。
各エナンチオマーは、ちょうど右手と左手が一つの軸に沿って反転している点以外は同じであるのと同様に(手は向きを変えるだけでは同一に見えるようにすることができない)、重ね合わせることのできない(同一でない)互いの鏡像である2つの立体異性体のうちの一つである。
フェンフルラミンは、予想どおり、急性適用後にも慢性適用後にも、高レベルの活性を示し、5-HT1D、5-HT2A、5-HT2C、5-HT5、および5-HT7特異的アゴニストも同様であった。
さらに、フェンフルラミンを前記モデルにおいて5-HT1D、5-HT2A、5-HT2C、および5-HT7受容体アンタゴニストと一緒に使用した。効力を示す大運動の減少がこれらの試行では見られなかったことから、フェンフルラミンの効力はこれらの受容体サブタイプの1つまたは複数に関係していることが示唆される。
注目すべきことに、5-HT2Bアゴニストはゼブラフィッシュモデルにおいて何の活性も示さなかったことから、5-HT2B受容体に関連する心臓副作用を回避しつつ5-HT受容体アゴニストでドラベ症候群を含むてんかんを処置することは可能であることが実証された。
異なる患者の年齢、サイズ、性別、状態および異なる5-HT受容体アゴニストの使用に依存して、異なる5-HT受容体アゴニストを異なる量で投与することができる。ただし一般的には、てんかんの処置、特にドラベ症候群の処置に関係して使用される5-HT受容体アゴニストは、肥満の処置に関係する量と比較して、大幅に少ない量で使用される。これらの少量は、肥満の処置に関係して使用される用量の半分、または4分の1、または10分の1でありうる。
この投薬は驚くほど少量で使用することができ、それでもなお、ドラベ症候群患者における発作の排除に有効でありうる。投薬は毎日の投薬であってよく、約0.8mg/kg/日未満、約0.7mg/kg/日未満、約0.6mg/kg/日未満、約0.5mg/kg/日未満、約0.45mg/kg/日未満、約0.4mg/kg/日未満、約0.3mg/kg/日未満、約0.25mg/kg/日未満、または約0.2mg/kg/日〜約0.1mg/kg/日、約0.05mg/kg/日、もしくは約0.01mg/kg/日を使用する投薬でありうる。言い換えると、各用量は、約0.5mg/kg/日未満〜約0.01mg/kg/日の用量をもたらしうる一日投薬量単位からの用量であることができる。そのような用量は、体重減少を達成するための投与について提案されているフェンフルラミンの1日量より少ない。
患者には、30mg以下、20mg以下、10mg以下、5mg以下、2mg以下、1mg以下の量の5-HTアゴニストから構成されうる一日投薬量単位を使って、1日単位で投与することができ、前記投薬単位は経口送達用であるか、または注射用であることができる。
てんかんを有する患者、特にドラベ症候群を有する患者が、極めて若い患者であるのに対して、肥満の処置を受ける患者は一般に高齢である点でも、本発明の方法を肥満の処置に使用される方法と識別することができる。肥満の処置を受ける患者は一般に20歳を越えており、ドラベ症候群の処置を受ける患者は一般に18歳未満、15歳未満、10歳未満、5歳未満、2歳未満、1歳未満、6ヶ月未満、または1ヶ月〜6ヶ月である。
肥満に関する患者の処置とてんかんおよびドラベ症候群に関する患者の処置とのさらに別の相違は、患者の検査が考えられるかどうかに関係する。具体的に述べると、ドラベ症候群に関して患者を処置する前には、その患者を遺伝子変異について検査することが望ましい。これは、変異のない患者および異なる形態のてんかんを有する患者は、5-HTアゴニスト受容体で処置すると有害な反応をするかもしれないからである。したがって処置に先だって患者を検査することが望ましい。検査は、ドラベ症候群に関連付けられているSCN1A(例えば、部分的なまたは完全な欠失変異、短縮化変異および/またはミスセンス変異、例えば電位領域または細孔領域S4〜S6におけるもの)、SCN1B(例えばナトリウムチャネルβ1サブユニットをコードする領域)、SCN2A、SCN3A、SCN9A、GABRG2(例えばγ2サブユニットをコードする領域)、GABRD(例えばσサブユニットをコードする領域)および/またはPCDH19遺伝子における変異について行うことができる。
特定の5-HTアゴニストを上に開示し説明したが、公知の化合物に基づいて他のアゴニストが創製され、試験されるかもしれない。例えばフェンフルラミンの誘導体を使って製剤が創製されるかもしれない。そのような製剤は、次のように記載することができるだろう。
薬学的に許容される担体と、
治療有効量の、構造(I):
の化合物であって、式中、R
4が、水素および1〜4個の炭素を含むアルキル基からなる群より選択され、R
1、R
2およびR
3のそれぞれが、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択され、ただし、R
4が水素である場合、R
1、R
2およびR
3のそれぞれは同時にはFでないものとする、化合物と
を含む製剤。
併用療法(SSRI)
本発明は、5-HT受容体アゴニストを選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)と組み合わせる併用療法を包含する。具体的に述べると、本方法は、てんかんの一形態を有する患者における発作を低減することを含み、ここで本方法は、薬学的に許容される担体、5-HT受容体アゴニスト、および選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を含む治療有効量の製剤を患者に投与する工程を含む。
本方法は、ドラベ症候群などの特別な形態のてんかんを処置するための上述の薬物の共投与を含み、フェンフルラミンとSSRIとの組合せを含む。
5-HT受容体アゴニストは、5-HT1D、5-HT2A、5-HT2C、5-HT5A、5-HT5B、5-HT7およびそれらの組み合わせからなる群より選択される受容体に対するアフィニティーと、その受容体における活性とを有する化合物でありうる。
SSRIは、シタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、ならびにそれらの組み合わせ、塩、誘導体、断片、および複合体からなる群より選択されるSSRIなど、任意のSSRI化合物であることができる。
5-HT受容体アゴニストの投薬は上に示したように行うことができる。SSRI化合物の投薬は、1日1回、1日2回、1日3回、または1日4回投与される1mg〜50mgの範囲の量で、行うことができる。投薬量は、1日1回1mgから1日4回50mgまでの間の任意の量であってよく、例えば1日1回、1日2回、1日3回、1日4回投与される1mg、5mg、10mg、20mg、30mgなどであることができる。
併用療法(SNRI)
本発明は、5-HT受容体アゴニストを選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SNRI)と組み合わせる併用療法を包含する。具体的に述べると、本方法は、てんかんの一形態を有する患者における発作を低減することを含み、ここで本方法は、薬学的に許容される担体、5-HT受容体アゴニスト、および選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SNRI)を含む治療有効量の製剤を患者に投与する工程を含む。
本方法は、ドラベ症候群などの特別な形態のてんかんを処置するための上述の薬物の共投与を含み、フェンフルラミンとSNRIとの組合せを含む。
5-HT受容体アゴニストは、5-HT1D、5-HT2A、5-HT2C、5-HT5A、5-HT5B、5-HT7およびそれらの組み合わせからなる群より選択される受容体に対するアフィニティーと、その受容体における活性とを有する化合物でありうる。
SNRIは、ボルチオキセチン、イミプラミン、ベンラファキシン、デスベンラファキシン、デュロキセチン、ミルナシプラン、レボミルナシプラン、ならびにそれらの組み合わせ、塩、誘導体、断片、および複合体からなる群より選択されるSSRIなど、任意のSNRI化合物であることができる。
5-HT受容体アゴニストの投薬は上に示したように行うことができる。SNRI化合物の投薬は、1日1回、1日2回、1日3回、または1日4回投与される1mg〜50mgの範囲の量で、行うことができる。投薬量は、1日1回1mgから1日4回50mgまでの間の任意の量であってよく、例えば1日1回、1日2回、1日3回、1日4回投与される1mg、5mg、10mg、20mg、30mgなどであることができる。
併用療法(トリプタン)
本発明は、5-HT受容体アゴニストをトリプタンと組み合わせる併用療法を包含する。具体的に述べると、本方法は、てんかんの一形態を有する患者における発作を低減することを含み、ここで本方法は、薬学的に許容される担体、5-HT受容体アゴニスト、および選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を含む治療有効量の製剤を患者に投与する工程を含む。
本方法は、ドラベ症候群などの特別な形態のてんかんを処置するための上述の薬物の共投与を含み、フェンフルラミンとトリプタンとの組合せを含む。
5-HT受容体アゴニストは、5-HT1D、5-HT2A、5-HT2C、5-HT5A、5-HT5B、5-HT7およびそれらの組み合わせからなる群より選択される受容体に対するアフィニティーと、その受容体における活性とを有する化合物でありうる。
SSRIは、アルモトリプタン、フロバトリプタン、リザトリプタン、スマトリプタン、ゾルミトリプタン、ナラトリプタン、ならびにそれらの組み合わせ、塩、誘導体、断片、および複合体からなる群より選択されるSSRIなど、任意のSSRI化合物であることができる。
5-HT受容体アゴニストの投薬は上に示したように行うことができる。トリプタン化合物の投薬は、1日1回、1日2回、1日3回、または1日4回投与される1mg〜50mgの範囲の量で、行うことができる。投薬量は、1日1回1mgから1日4回50mgまでの間の任意の量であってよく、例えば1日1回、1日2回、1日3回、1日4回投与される1mg、5mg、10mg、20mg、30mgなどであることができる。
以下の実施例は、本発明をなす方法および本発明を使用する方法を当業者に完全に開示し説明するために提示するものであって、本発明者らがその発明であるとみなす範囲を限定する意図はなく、下記の実験が、実施した全てのまたは唯一の実験であることを表すというつもりでもない。使用した数字(例えば量、温度など)については正確性を確保するように努めたが、多少の実験誤差および偏差は考慮されるべきである。別段の表示がある場合を除き、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏温度であり、圧力は大気圧または大気圧近傍である。
実施例1
scn1Lab変異に関してヘテロ接合(scn1Lab+/-)であるゼブラフィッシュ胚(Danio rerio)を、タッフル・ロングフィン(Tupfel longfin)野生型(WT scn1Lab+/+)と戻し交配した。成体ゼブラフィッシュは、標準的水産養殖条件下、28.0℃、14時間/10時間の明/暗周期で飼育した。受精卵は自然産卵によって収集した。麻酔下の魚(トリカイン0.02%)を鰭切除し、PCRによって遺伝子型判定を行った。遺伝子型判定後に、試料を精製し(MinElute PCR精製キット)、LGC Genomicsによって配列決定が行われた。同齢のタッフル・ロングフィン野生型幼生を対照群として使用した(WT scn1Lab+/+)。これらの胚および幼生は、28.0℃のインキュベーター中、胚培地(ダニー(Danieau)液): 1.5mM HEPES、pH7.6、17.4mM NaCl、0.21mM KCl、0.12mM MgSO4、および0.18mM Ca(NO3)2において、14時間/10時間の明/暗周期に保った。実行したゼブラフィッシュ実験は全て、ルーヴェン大学倫理委員会(Ethische Commissie van de KU Leuven、承認番号061/2013)およびベルギー連邦公衆衛生・食品安全・環境局(Federale Overheidsdienst Volksgezondheid, Veiligheid van de Voedselketen en Leefmileu、承認番号LA1210199)によって承認された。
ホモ接合scn1Lab-/-変異体と対照WT scn1Lab+/+の移動運動活動を評価するために、4〜8dpfのゼブラフィッシュ幼生を96ウェルプレートにおいて100μLの胚培地に入れた。毎日、自動追跡デバイス(ZebraBox(商標)装置; ViewPoint、フランス国リヨン)で、30分間の順化後に10分間、幼生の軌道を追跡した(100秒の積分間隔)。記録は全て、日中の同じ時刻に行った。ZebraLab(商標)ソフトウェア(ViewPoint、フランス国リヨン)を使って、大運動の総距離を記録し、定量化した。1条件あたり少なくとも24匹の幼生を使った少なくとも3回の独立した実験からのデータをプールした。
7dpfのゼブラフィッシュ幼生前脳におけるオープンフィールド記録によって、てんかん様活動を測定した。前脳にガラス電極を配置するために、ホモ接合scn1Lab-/-変異体と対照WT scn1Lab+/+を、2%低融点アガロース(Invitrogen)に包埋した。このガラス電極は、124mM NaCl、2mM KCl、2mM MgSO4、2mM CaCl2、1.25mM KH2PO4、26mM NaHCO3および10mM グルコースでできた人工脳脊髄液(aCSF)(抵抗1〜5MΩ)で満たし、高インピーダンス増幅器に接続した。次に、電流クランプモードで、1kHzのローパスフィルタをかけ、0.1Hzのハイパスフィルタをかけて、デジタルゲイン10、10μsのサンプリング間隔で、記録を行った(MultiClamp 700B増幅器、Digidata 1440Aデジタイザー、どちらもAxon Instruments、米国)。1回の記録を10分間行った。以前に記述されたように(Orellana-Paucar et al, 2012)、棘波状突発活動の持続時間によって、てんかん様活動を定量化した。Clampfit 10.2ソフトウェア(Molecular Devices Corporation、米国)を利用してエレクトログラムを分析した。自発的てんかん様イベントは、振幅がバックグラウンドノイズの3倍を超え、かつ50ミリ秒(ms)より長く持続した場合に、考慮した。野生型ZF幼生では50msより短い持続時間を有するてんかん様イベントの観察頻度が低かったことから、この閾値を選んだ。
フェンフルラミンはPeak International Products B.V.から入手した。機能的類似体(アゴニスト)およびアンタゴニストは、異なる5-HTサブタイプ受容体に対するそれぞれの選択的高アフィニティー(エルゴタミンを除く、下記参照)(ナノモル濃度域のKi)と、それぞれのlogP値(すなわち>1、ゼブラフィッシュ幼生において良好なバイオアベイラビリティを呈すると予想される(Milan, 2003))とに基づいて選択した。化合物は、Sigma-Aldrichから購入した5-HT2Aアンタゴニスト(ケタンセリン)、5-HT4アゴニスト(シサプリド)および5-HT5Aアゴニスト(エルゴタミン)を除いて、Tocris Bioscienceから入手した。化合物をジメチルスルホキシド(DMSO、99.9%分光法用、Acros Organics)に溶解し、最終DMSO濃度が0.1%w/vになるように胚培地で希釈し、これを媒体対照(VHC)にもした。
各化合物の最大許容濃度(MTC)を評価するために、6dpf齢のWT scn1Lab+/+ゼブラフィッシュ幼生を、96ウェルプレート(組織培養プレート、平底、FALCON(登録商標)、米国)中、標準的な水産養殖条件下、28℃、14時間/10時間の明/暗周期で、さまざまな濃度の化合物またはVHCと共にインキュベートした(培地は毎日補充した)。各幼生を、次に挙げる毒性の徴候について、48時間にわたって顕微鏡下で個別にチェックした:尾に軽く接触した時の接触応答の減少または欠如、姿勢の崩れ、身体変形、浮腫、心拍数または循環の変化、および死亡。最大許容濃度(MTC)を、試料へのばく露から48時間以内に12匹のゼブラフィッシュ幼生中12匹に毒性の徴候が観察されない最も高い濃度と定義した。この実験研究の全体を通して、このMTC(表1および表2)を使用した。
scn1Lab-/-変異体およびWT scn1Lab+/+の幼生を同じプレートに配置し、受精後6日目(6 days post fertilization(dpf))に、96ウェルプレートの個々のウェルにおいて、フェンフルラミン(25μM)、機能的類似体(それぞれのMTC)またはVHCで処置した。28℃、14時間/10時間の明/暗周期でのインキュベーションと、30分間のチャンバー順化後に、6dpfおよび7dpfの幼生を、暗条件下で10分間、移動運動活動について追跡した(100秒の積分間隔)。1.5時間のインキュベーション時間をさらに短時間処置という(6dpf)。さらにまた、これらの幼生を22時間超インキュベートした後、すなわち長時間処置後に分析した(7dpf)。パラメータlardistを使って総移動運動活動を定量化し、cmの単位でプロットした。各処置条件あたり少なくとも9匹の幼生を使った2回(5-HT1Bアゴニスト、5-HT1Fアゴニスト、5-HT3アゴニスト、5-HT4アゴニスト、5-HT5Aアゴニスト、5-HT6アゴニスト、および5-HT1Bアンタゴニストと、5-HT7アンタゴニストを除く全てのアンタゴニスト)または3回(フェンフルラミン、5-HT1Aアゴニスト、5-HT1Dアゴニスト、5-HT1Eアゴニスト、5-HT2Aアゴニスト、5-HT2Bアゴニスト、および5-HT2Cアゴニスト)の独立した実験から得たデータを一つにプールした。
上述のように、7dpfのゼブラフィッシュ幼生前脳におけるオープンフィールド記録によって、てんかん様活動を測定した。scn1Lab-/-変異体およびWT scn1Lab+/+幼生を、6dpf時に、フェンフルラミン(25μM)、先のアッセイ(下記参照)において移動運動低減活性を呈した機能的類似体(5-HT5Aアゴニストを除く)(MTC)、陰性対照(3.125μM 5-HT2Bアゴニスト)またはVHCと共に、最低22時間インキュベートした(長時間処置)。各実験条件につき少なくとも8匹のscn1Lab-/-変異体幼生から、7dpfの幼生の記録をとった。野生型幼生ではてんかん様活動があまり観測されないので、処置WT scn1Lab+/+幼生については、各条件につき少なくとも5匹を分析した。さまざまな処置条件についてエレクトログラフ記録を定量化した。
7dpf齢のゼブラフィッシュ幼生の頭部を使って神経伝達物質ドーパミン、ノルアドレナリンおよびセロトニンの存在量を決定した。チューブ1本につき6つの頭部を、100μlの0.1M酸化防止剤バッファー(ビタミンCを含有するもの)中、氷上で1分間ホモジナイズした。ホモジネートを4℃、15000gで、15分間遠心分離した。上清(70μl)を滅菌チューブに移し、分析するまで-80℃で保存した。
神経伝達物質の決定はマイクロボアLC-ECD法に基づき(Sophie Sarre, Katrien Thorre, Ilse Smolders, 1997)、VUBの神経科学センター(Center for Neurosciences)C4N(ベルギー国ブラッセル)と共同して行った。クロマトグラフィーシステムは、LC Packings/Dionex(オランダ国アムステルダム)のFAMOSマイクロオートサンプラー、Gilson(フランス国ヴィリエ-ル-ベル)の307ピストンポンプ、DionexのDEGASYS DG-1210脱気装置、およびAntec(オランダ国ズーテルワウデ)のμ-VT03フローセル(0.7mmグラッシーカーボン作用電極、Ag/AgCl基準電極、25μmスペーサー)を装着したDECADE II電気化学検出器からなった。移動相は、87%V/V水性バッファー溶液pH5.5(100mM酢酸ナトリウム三水和物、20mMクエン酸一水和物、2mMデカンスルホン酸ナトリウム、0.5mMエデト酸二ナトリウム)および13%V/Vアセトニトリルであった。この移動相を60μL/分の流速で注入した。オートサンプラートレイの温度は15℃に設定し、注入体積は10μLとした。Bioanalytical Systems(米国インディアナ州ウエストラファイエット)のマイクロボアUniJet C8カラム(100×1.0mm、5μm)を固定相として使用した。分離と検出は35℃で行い、検出電位はAg/AgClに対して+450mVとした。データ取得はData Apex(チェコ共和国プラハ)のClarityクロマトグラフィーソフトウェア・バージョン3.0.2によって行った。神経伝達物質の量(単位:nmol)を6つの頭部の総質量に基づいて計算した。
統計的解析はGraphPad Prism 5ソフトウェア(GraphPad Software, Inc.)を使って行った。一元配置ANOVAとその後のDunnett多重比較検定を使って幼生の移動運動活動を評価した。値を平均±標準偏差(SD)として表す。LFP測定(エレクトログラフ上の脳活動)はマン・ホイットニー検定によって分析した。処置群と等価な対照群(scn1Lab-/-変異体またはWT scn1Lab+/+)との間の統計的に有意な差(p<0.05)は、ゼブラフィッシュ幼生の移動運動またはエレクトログラフ上の脳活動の減少または増加を示すとみなした。scn1Lab-/-変異体の神経伝達物質量は、全てのデータが正規性検定(ダゴスティーノ・ピアソン(D'Agostino & Pearson)オムニバス正規性検定)に合格したので、スチューデントのt検定によってWT scn1Lab+/+幼生と比較した。
結果
ヘテロ接合またはホモ接合scn1Lab変異体における点変異により、遺伝子型判定で、それら変異体をWT scn1Lab+/+と識別することが可能になった(図1)。ヘテロ接合scn1Lab+/-変異体では、PCR産物がAT3632G(野生型アレル)とAG3632G(点変異を有するアレル)とを含有する(図1A)。この点変異はチミン(AT3632G)をグアニン(AG3632G)に変え、それがメチオニン(M)をアルギニン(R)に転換する(図1B)。PagIによる消化は、長さが異なる2つの断片(250塩基対および500塩基対)をもたらす。これに反して、成体WT scn1Lab+/+ゼブラフィッシュのPCR産物はAT3632Gだけしか含有せず、したがってPagI消化後は1つの断片(250塩基対)しか見えないことになる。ホモ接合scn1Lab-/-変異体はAG3632Gだけを有する。PagIはAT3632Gだけを認識するので、これらホモ接合変異体の遺伝子型判定は1つの可視断片(500塩基対)をもたらす。さらにまた、配列決定データ(LGC Genomics)により、野生型scn1Lab+/+と比較したヘテロ接合scn1Lab+/-変異体の遺伝的差異(T-G変異)が確認された(図1D)。
WT幼生と比較して、ホモ接合scn1Lab-/-変異体は、大運動の総距離(lardist)として表される移動運動活動の増加を呈し、これにより、以前に公表されたデータ(Baraban et al, 2013)が確認される。この行動の相違は、4dpfには既に存在し、6dpf〜8dpfの間で最大であった(図3)。
反復てんかん様イベントは、scn1Lab-/-変異体では4.31±0.33イベント/10分間記録の平均頻度で、また同齢のWT scn1Lab+/+幼生では0.91±0.19イベント/10分間記録の頻度で起こった。このてんかん様イベントの頻度の相違は統計的に有意であった(図5A、p<0.0001)。その結果、てんかん様イベントの平均累積持続時間は、WT scn1Lab+/+幼生と比較して、scn1Lab-/-変異体では有意に高かった(scn1Lab-/-変異体は692.0±69.18ms/10分間記録、対してWT scn1Lab+/+は89.62±20.33ms/10分間記録)(図5B、p<0.0001)。さらにまた、この相違はてんかん様イベントの平均持続時間、すなわち1回のてんかん活動に費やされた時間にも反映された(scn1Lab-/-変異体は160.2±11.81ms/10分間記録、対してWT scn1Lab+/+は48.88±8.807ms/10分間記録)(図5C、p<0.0001)。
フェンフルラミン(25μM)による長期処置(22時間)は、7dpfのホモ接合scn1Lab-/-変異体におけるてんかん様移動運動活動を有意に減少させた(図6、p<0.0001)。短時間のインキュベーション(1.5時間)でも同様の結果が得られた(データ未掲載)。フェンフルラミンの6つの機能的類似体、すなわち5-HT1Dアゴニスト、5-HT1Eアゴニスト、5-HT2Aアゴニスト、5-HT2Cアゴニスト、5-HT5Aアゴニストおよび5-HT7アゴニストも、移動運動低減活性を呈した(ほとんどの場合、短時間処置後および長時間処置後に観察された)。エルゴタミンは興味深い活性を示したが、この化合物はあまり選択的な5-HT5Aアゴニストではないので、この結果は多少注意して解釈すべきである。残念なことに、これ以上に選択的な他の5-HT5Aアゴニストは市販されていない。さらにまた、5-HT2Cアゴニストと5-HT7アゴニストを例外として、これらの化合物は同齢の野生型ゼブラフィッシュ幼生では移動運動活動を減少させなかったことから、scn1Lab-/-変異体に対する選択的効果が示される(表3)。本発明者らは、ホモ接合scn1Lab-/-変異体に対する5-HTアンタゴニストの移動運動修飾活性も調査した。しかし、活性であるものはなく(データ未掲載)、一定のセロトニン受容体を(遮断ではなく)刺激することがscn1Lab-/-変異体の移動運動活動に及ぼす有利な効果が強調された。
てんかん様活動の低減を、フェンフルラミンおよび先のアッセイで移動運動低減活性を呈した機能的類似体(5-HT5Aアゴニストを除く)を使った長時間処置後に、7dpfのゼブラフィッシュ幼生前脳におけるオープンフィールド記録によって測定した。5-HT2Bアゴニストを陰性対照として含めた。フェンフルラミンはホモ接合scn1Lab-/-変異体におけるてんかん様イベントの頻度、平均累積持続時間および平均持続時間を劇的に減少させた(それぞれ1.7±0.4046イベント/10分間記録、200.8±50.38ms/10分間記録、85.11±18.28ms/10分間記録)(図7)。一般に、5-HT1Dアゴニスト、5-HT2Cアゴニスト、そしてとりわけ5-HT2Aアゴニストで匹敵する効果が、少なくともてんかん様イベントの頻度および平均累積持続時間の場合は観察されたが(図7Aおよび図7C)、5-HT1Eアゴニスト、5-HT7アゴニストおよび5-HT2bアゴニストでは観察されず、後者は予想どおりであった(図7)。
フェンフルラミンの作用機序を調査するために、本発明者らはこの化合物を、先に観察されたとおり移動運動活動の低減に関与することを示した5-HTサブタイプ受容体のアンタゴニスト、すなわち5-HT1D-、5-HT2A-、5-HT2C-および5-HT7-のアンタゴニストと併用した。アゴニスト5-HT5Aは先に述べた理由から含めなかった。著しく特異的な5-HT1Eアンタゴニストは現時点では入手することができないので、目下のアッセイでこの5-HTサブタイプ受容体を調査することはできなかった(Leung, 2009)。しかし、5-HT1EアゴニストはLFP測定においててんかん様活動を低減できないことが先の結果で示されているので、この受容体がフェンフルラミンの抗てんかん様作用に関与する可能性は低い。
5-HT1Dアンタゴニストまたは5-HT2Cアンタゴニストによる処置は、短時間処置後でも長時間処置後でも、scn1Lab-/-幼生においてフェンフルラミンが引き出す移動運動活動の減少を有意に打ち消した(p<0.05)(表4)。同様の結果が5-HT2Aアンタゴニストでも見られたが、長時間処置後には見られなかった(表3)。
さらにまた、5-HT7アンタゴニストによるフェンフルラミンの効果の阻害はなかった。さらに、5-HT7アゴニストを除くと、これらの化合物は一般に同齢の野生型ゼブラフィッシュ幼生では効果がなかった(表3)。
先の結果ではscn1Lab-/-変異体幼生におけるセロトニン作動性アゴニストの有益な効果が強調されているので、これらのDSゼブラフィッシュは神経伝達障害を有する可能性が高い。そこで本発明者らは、scn1Lab-/-変異体における神経伝達物質の量を、同齢の野生型ゼブラフィッシュ幼生と比較して決定した。7dpfのscn1Lab-/-変異体の頭部ホモジネートは、同齢のWT scn1Lab+/+幼生と比較して、統計的に有意なセロトニンの減少を示した(スチューデントのt検定、p<0.05)。ドーパミンおよびノルアドレナリンの量も減少していたが、これは統計的に有意ではなかった(スチューデントのt検定、それぞれp=0.1150、p=0.0772)(図8)。
図9、図10、図11は、レーダー表示で図示した5-HTサブタイプアゴニストとフェンフルラミンの活性プロファイルの要約である。スポークの長さが観察された活性の統計的有意性を表している。
ここでは、本発明を、最も実用的で最も好ましい態様であるとみなされる方法で示し、説明した。しかし、本発明の範囲内でのそこからの逸脱は可能であり、そしてこの開示を読めば当業者は自明な変更を思いつくであろうと、認識される。
本発明をその具体的態様に関して説明したが、本発明の真の要旨および範囲から逸脱することなく、さまざまな改変を加えることができ、等価物で置き換えうることは、当業者には理解されるはずである。加えて、特定の状況、材料、組成物、プロセス、1つまたは複数のプロセスステップを本発明の目的、要旨および範囲に適合させるために、多くの変更を加えることもできる。そのような変更は全て本願請求項の範囲内にあるものとする。