JP2017055938A - スライドファスナー用スライダー - Google Patents

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Abstract

【課題】少なくとも弾性体が外れ難いスライダーを提供する。
【解決手段】スライドファスナー用スライダーは、前後に貫通するスライダー胴体1、スライダー胴体の上面に取り付けられると共に前後に長い弾性体2、弾性体の上方において前後に揺動可能にスライダー胴体に支持される引手3を備える。引手は、左右に延長する軸31、軸から延長する引手本体32、軸から突出するカム33を備える。スライダー胴体の上部には、上翼板、上翼板の上面であって左右から突出する一対の引手取付柱8,8を備える。上翼板は、その上面であって一対の引手取付柱の間に、凹部、弾性体を加締める加締め部43を備える。凹部は、左右に位置する一対の側方凹部42b,42b、一対の側方凹部の間に位置すると共に弾性体を収容する中央凹部42aを備える。加締め部は、一対の側方凹部の少なくとも一方から突出すると共に、その突出位置を中央凹部の前後両端よりも中央側とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、スライドファスナー用スライダーであって、揺動可能な引手を弾性体によりスライダー胴体の上面に倒伏させた状態に保持するものに関する。
スライダーの一例として、前後方向に貫通するエレメント通路を含むスライダー胴体と、スライダー胴体の上面に取り付けられる弾性体と、弾性体の上方において前後に揺動可能にスライダー胴体に支持される引手とを備えるものが存在する(特許文献1,2)。スライダー胴体の上面には、前後方向に延長すると共に凹む弾性体用の凹部を備え、スライダー胴体の上面であって凹部の後端の後側には、凹部内の弾性体を加締める加締め部を備えている。加締め部は、上方に突出すると共に前方に傾いた状態、つまり前傾状になっており、弾性体をその後端から少し前側の範囲にかけて上方から覆っている。さらに引手にはスライダー胴体に支持される側の端部に、弾性体に接触するカムを備えている。
実開昭52−69305号公報 意匠登録第407612号公報
ところで特許文献1,2のスライダーは、引手を回してカムで弾性体の長手方向の中央部を下方に押し込むと、弾性体は弾性変形し、その長手方向の前後端が上方へ変位しようとする。ところが弾性体の後端の上方は前傾状態の加締め部によって覆われているので、弾性体の後端から加締め部を押し上げる力が作用する。何度も引手を回しているうちに、加締め部が押し上げられて、その前傾が不十分になり、弾性体が凹部から外れやすくなる。
また加締め部は前傾しているので、加締め部と弾性体との上下間の隙間は、加締め部の先端に向かうにつれて広くなっていく。さらに弾性体を大量生産すると、弾性体の寸法は製品毎に微妙に異なるものとなるので、良品と不良品を区別するために公差が定められる。公差内のうち長手方向の寸法が最大寸法のものであれば、弾性体は凹部内で前後に殆どがたつきなく収容される。その結果、弾性体の後端は、凹部の後端の近傍に位置し、前傾した加締め部の下端の近傍に位置することになる。いっぽう公差内のうち長手方向の寸法が最小寸法のものであれば、弾性体は凹部内で前後に隙間のある状態で収容されることになる。そうすると場合によっては弾性体の後端は、凹部の後端から少し離れた所に位置し、前傾した加締め部の高さ中間部側に位置することもあり得る。この場合、弾性体の後端と加締め部との上下間の隙間が広くなり、スライダーを組み立てた時点から弾性体は外れやすい状態になっている。
また特許文献1のスライダーでは、凹部の後端の近傍に相当する位置で加締め部に引手が接触する構造になっている。接触箇所は引手の傷となり、外観に悪影響を与える。したがって引手は、仮に傷が付くとしても、できるだけ目立ち難いように、加締め部との接触箇所を軸側に近くすることが望ましい。
かといって特許文献2のスライダーのように、加締めに衝突しないように引手に凹みを設けると、加締め部との接触による傷は無くなるが、引手が凹みのある形態となり、引手の外観に悪影響を与えることになる。
本発明は上記実情を考慮して創作されたもので、その目的は少なくとも弾性体が外れ難いスライダーを提供することである。
本発明のスライドファスナー用スライダーは、前後に貫通するエレメント通路を含むスライダー胴体と、スライダー胴体の上面において取り付けられると共に前後方向を長手方向とする弾性体と、弾性体の上方において前後に揺動可能にスライダー胴体に支持される引手とを備える。引手は、左右に延長すると共にスライダー胴体に回転可能に支持される軸と、軸からその半径方向外側に延長する引手本体と、軸からその半径方向外側に突出するカムとを備える。カムは、スライダー胴体の上面の前後の一方側に引手を倒伏させた場合に弾性体を弾性変形させるものである。スライダー胴体の上部には、エレメント通路の上方を覆う上翼板と、上翼板の上面であって左右から突出する一対の引手取付柱とを備える。上翼板は、その上面であって一対の引手取付柱の間には、凹部と、弾性体を加締める加締め部とを備える。凹部は、左右に位置する一対の側方凹部と、一対の側方凹部の間に位置すると共に弾性体を収容する中央凹部とを備える。加締め部は、一対の側方凹部の少なくとも一方から突出すると共に、その突出位置を中央凹部の前後両端よりも中央側としてある。
また加締め部の位置は、弾性変形したときの弾性体に接触し難い位置であることが望ましい。それには次のようにする。
すなわち、中央凹部は、弾性体の前後端部を載せるための前後一対の載置面部と、一対の載置面部の間において載置面部よりも低い低面部とを備えるものとし、その上で、加締め部は、低面部の上方を覆っていることである。
さらに一対の側方凹部の上面と中央凹部の上面との高さの関係は問わない。しかし一対の側方凹部の方が中央凹部よりも低いと、中央凹部の上に載せた弾性体が側方凹部の方にずれ動くおそれがある。したがって弾性体を位置決めし易くするには、次のようにすることが望ましい。
すなわち、一対の側方凹部は、その上面を中央凹部の上面よりも高くすることである。
また引手を倒伏させたときに引手本体がスライダー胴体に対してどのように接触するかは問わないが、その接触によって発生する傷を目立ち難くするには、次のようにすることが望ましい。
すなわち、上翼板は、その上面であって凹部よりも前後の前記一方側に、凹部の上面よりも高い水平面の台座部を備えるものとし、引手本体は、倒伏させた状態で台座部に面接触する平面部を備えることである。
加締め部の上端の高さは問わないが、台座部の上面よりも高いと、加締め部のみが引手本体に接触する恐れがある。かとって接触を避けようとすると、引手本体の形状はたとえば加締め部に対向する部分を凹ませるようにしなければならず、引手の外観に影響を与えるようになる。それを防ぐには次のようにすることが望ましい。
すなわち、台座部の上面は、加締め部の上端に比べて上方に形成されることである。
またスライダー胴体の上面の前後の他方側に引手を回転させたときに引手をスライダー胴体がどのように保持するかは問わないが、保持した際に引手に発生する傷を目立ち難くするには次のようにすることが望ましい。
すなわち上翼板は、スライダー胴体の上面の前後の他方側に傾斜した状態で引手を保持する一対のストッパー部を備えるものとし、その上で一対のストッパー部は、スライダー胴体の上面の前後における前記他方側の先端よりも前後方向中央側に形成されることである。
また一対のストッパー部を破損しづらくするには次のようにすることが望ましい。すなわち、一対のストッパー部は、一対の側方凹部であって且つ一対の引手取付柱の対向面から中央凹部へ向かって突出することである。
本発明のスライダーによれば、従来よりも加締め部が弾性体をその前後中央側から加締めることになる。そうすると弾性変形した場合に弾性体は、前後端よりも上方への変位量が小さな部分の上方を加締め部によって覆われることになり、従来よりも加締め部は弾性体によって押し上げられ難くなる。したがってスライダーを使用しているうちに加締め部は弾性体によって塑性変形しづらくなり、弾性体が中央凹部から抜け外れ難くなる。また加締め部の位置を中央凹部の前後両端よりも中央側としてあるので、仮に加締め部との接触によって引手本体が傷つくことになっても、傷つき箇所は中央凹部の前後端よりも中央側になる。しかも上翼板の上面の側方凹部から加締め部を突出しているので、従来よりも加締め部の上端を低くでき、引手本体を傷つけ難い。これら相乗効果によって、加締め部が引手本体の外観に与える影響を小さくできる。
また弾性体の前後端部を載せるための前後一対の載置面部と、一対の載置面部の間において載置部よりも低い低面部とを中央凹部が備え、低面部の上方を加締め部が覆っているスライダーであれば、弾性体が下方に変位する部分の上側に加締め部が位置することになり、加締め部が弾性体によって塑性変形しづらくなり、弾性体が中央凹部から抜け外れ難くなる。また載置面部よりも前後方向中央側に加締め部は、位置することになるので、引手本体に接触するとしても、引手の外観に与える影響を小さくできる。
また一対の側方凹部の上面を中央凹部の上面よりも高くしてあるスライダーであれば、組立時に弾性体を位置決めし易くなる。
また凹部の上面よりも高い台座部を上翼板の上面に備え、台座部に面接触する平面部を引手本体に備えるスライダーであれば、例えば点接触するスライダーに比べれば引手本体が傷つき難く、引手本体の外観に与える影響を小さくできる。
また台座部の上面を加締め部の上端よりも上方に形成したスライダーであれば、たとえば台座部の上面を加締め部よりも低くしたスライダーに比べれば、加締め部が引手本体に接触しづらくなり、引手本体の外観に与える影響を小さくできる。
また一対のストッパー部を上翼板が備えるスライダーであれば、スライダー胴体の上面の前後の他方側に傾斜した状態で引手を保持するときに、一対のストッパー部が上翼板の上面の前後における他方側の先端よりも前後方向中央側において引手本体に接触するので、たとえば一対のストッパー部がスライダー胴体の上面の前後における他方側の先端において引手本体に接触するものに比べれば、接触によって生じる引手本体の傷が軸に近くなり、引手本体の外観に与える影響を小さくできる。
また一対の側方凹部であって且つ一対の引手取付柱の対向面から中央凹部へ向かって一対のストッパーが突出するスライダーであれば、ストッパーは引手取付柱によって安定し、破損しづらくなる。
本発明の第一実施形態のスライダーを示す斜視図である。 第一実施形態のスライダーを分解した状態を示す斜視図である。 第一実施形態のスライダーのスライダー胴体を示す平面図である。 図3のIV−IV線断面図である。 引手を後側に倒伏させた状態の第一実施形態のスライダーを示す平面図である。 図5のVI−VI線断面図である。 (ア)(イ)図は、図6のA部拡大図、B部拡大図である。 図5のVIII−VIII線断面図である。 引手を前側に傾斜させた状態の第一実施形態のスライダーを示す断面図である。 図6のX−X線断面図である。 図9のXI−XI線で切断された部分の端面のみを示す端面図である。 引手を後側に傾斜させた状態の第一実施形態のスライダーを示す断面図である。 図12のC部拡大図である。 第一実施形態の変形例のスライダーで用いるスライダー胴体を示す斜視図である。 本発明の第二実施形態のスライダーで用いるスライダー胴体を示す斜視図である。 本発明の第三実施形態のスライダーを分解した状態を示す斜視図である。
本発明の第一実施形態のスライドファスナー用スライダーSは図1,2に示すように、スライダー胴体1と、スライダー胴体1の上面に取り付けられる弾性体2と、弾性体2の上方で前後に揺動可能にスライダー胴体1に支持される引手3とを備える。スライダー胴体1、弾性体2、引手3は、材料を問わないが、一例としては金属製である。
以後、図5を基準にして、方向を説明する。前後方向とは、スライドファスナーを開閉するためにスライダー胴体1を移動させる方向であり、図5での上下方向である。図5での上方向は、前方向であり、且つスライドファスナーの一対のエレメント列を噛合させる方向であり、図5での下方向は、後方向であり、且つ一対のエレメント列を分離させる方向である。左右方向とは、図5での左右方向である。上下方向とは、図5での紙面に対する直交方向であり、上方向とは手前側の方向であり、下方向とは奥側の方向である。
引手3は図2,5,6に示すように、左右に延長する軸31と、軸31からその半径方向外側に延長する引手本体32と、軸31からその半径方向外側であって引手本体32の延長方向とは異なる方向に突出するカム33とを備える。
引手本体32は、指で摘まむ部分であって、長辺と短辺を有する細長い矩形の板状である。また引手本体32のうち板の厚み方向を向く両面のうち一面32aは、引手本体32を後側に倒伏させたときに、スライダー胴体1の上面の後側に対向する。この対向する一面32aは、左右方向に平行な平面部であり、引手本体32を後側に倒伏させたときに水平面になっている。いっぽう引手本体32のうち板の厚み方向を向く両面のうち他面32bは、前記一面32aに対して軸31側から先部へ向かって肉厚を厚くするように傾斜した形状になっている。また図10、11に示すように引手本体32のうち短辺方向を向く両面32c,32cは、左右側面であり、厚み方向の両面32a,32bとの近傍部分(角部)32c1を断面円弧状に膨らむ曲面としてある。また引手本体32の左右側面32c、32cは、その厚み方向中央部を最も左右方向外側に張り出した形状となっている。
軸31は円柱状で、その長手方向中間部が引手本体32と一体になっており、その長手方向両端部が引手本体32の両側面から左右に突出している。この長手方向両端部は、スライダー胴体1に回転可能に支持される。
カム33は、軸31の長手方向中間部からその半径方向外側であって且つ引手本体32の平面部32a側へ突出している。より詳しくは図6に示すように、スライダー胴体1の上面の後側に引手本体32を倒伏させた状態のときにカム33は、引手本体32の平面部32aであって軸31の中心よりも前方から下方へ向かって突出している。平面部32aに対するカム33の下方への突出長は、図12,13に示すように引手本体32を後方に傾斜させた状態のときに弾性体2を弾性変形させるのに十分な長さとなっており、カム33による弾性体2の弾性変形によって引手本体32を押し込み、後側に倒伏させる。
弾性体2は図2に示すように、板バネであり、一定の厚みの平板であって、短辺に比べて長辺が十分に長い長方形状である。図の例では、短辺に比べて長辺が3倍以上に長くなっている。この板バネ2はスライダー胴体1に固定される。
スライダー胴体1は図1〜4に示すように、上下に間隔をあけて対向する上翼板4及び下翼板5、上翼板4と下翼板5を互いの前部の左右方向中央部で連結する連結柱6、上翼板4及び下翼板5の上下の間隔を狭めるように上翼板4及び下翼板5の少なくとも一方(図では両方)の左右端部から上または下に突出する一対のフランジ7,7と、左右に間隔をあけて対向する状態で上翼板4の上面の前後中央部から突出する一対の引手取付柱8,8とを備えている。
またスライダー胴体1は、その内部空間として、左右方向の中央部には一対のエレメント列を通すエレメント通路11を備え、左右方向の両端部には、エレメントが取り付けられたテープを通す一対のテープ溝12,12を備える。
エレメント通路11は、前後方向に貫通するもので、後側が横幅の広い一本の通路で、前側が連結柱6によって左右に二又に分岐した二本の通路になっている。またエレメント通路11よりも上側の部分が、スライダー胴体1の上部に相当する。
テープ溝12は、前後方向に貫通すると共に、左右方向については、スライダー胴体1の左右中央側をエレメント通路11に連通すると共に、スライダー胴体1の左右端側を外部に開口している。
一対の引手取付柱8,8は、左右に間隔をあけて対向するもので、上翼板4の上面の前後中央部に形成されている。また引手取付柱8は、前後に間隔をあけて対向する前柱81と後柱82とを備える。引手3を取り付ける前には前柱81と後柱82の間には、側面視すると上向きに開口するU字状の軸挿入溝83が形成されており、前柱81と後柱82の上端部の前後間隔は、引手3の軸31の直径より広くなっている。また引手3を取り付けた後には、前柱81と後柱82は互いに接近する方向に塑性変形させられてほぼ接触しており、軸挿入溝83が側面視して円形状の軸孔84になり、前柱81と後柱82の上端部の間隔は軸31の直径よりも狭くなる。また一対の軸孔84,84となる一対の軸挿入溝83,83の下端は、上翼板本体41の上面のうち一対の引手取付柱8,8の左右外側よりも段差状に低く形成されている。そして一対の軸孔84,84の左右寸法は、軸31の左右寸法よりも僅かに長く形成されているので、軸31ひいては引手3は左右に殆どがたつくことなく、一対の軸孔84,84内で回転可能に支持される。
上翼板4は、エレメント通路11の上方を覆う板状の上翼板本体41と、上翼板本体41の上面であって一対の引手取付柱8,8の間において凹む凹部42と、凹部42の上面の左右から突出する一対の加締め部43,43と、凹部42の上面前側の左右から突出すると共に引手3の揺動範囲の前側を定める一対のストッパー部44,44と、上翼板本体41の上面であって凹部42よりも後側において引手3の揺動範囲の後側を定める台座部45とを備える。
凹部42は、その周囲よりも凹んでおり、一対の引手取付柱8,8の間の左右方向の全範囲に亘って形成されている。また凹部42は、一対の引手取付柱8,8の各々に隣接する一対の側方凹部42b,42bと、一対の側方凹部42b,42b間に位置する中央凹部42aとを備える。中央凹部42aは、上翼板本体41の左右中央に位置するのが好ましいが、一対の側方凹部42b,42b間に位置していればよく、上翼板本体41の左右中央から左右方向の一方にずらした位置に形成してもよい。
中央凹部42aは平面視すると、一対の軸挿入溝83,83を結ぶ直線に対して直交するように前後方向に延長する長方形状で、しかも前後及び左右方向の寸法を板バネ2の寸法よりも少し大きくしてある。また中央凹部42aの上面(底面)の前後端部は、上下方向において、同じ高さに形成されると共に、上面の中央部(前後端部の間の部分)よりも高く形成されている。また図6,7に示すように中央凹部42aの上面の前後端部は、板バネ2を載せる一対の載置面部42a1,42a2であると共に、水平面であり、前側の載置面部42a1は、後側の載置面部42a2よりも前後寸法を短くしてある。また中央凹部42aの中央部は、一対の載置面部42a1,42a2の間に位置し、一対の載置面部42a1,42a2よりも低い低面部42a3であり、その前後端から中央へ向かって徐々に深くなる円弧状の湾曲面となっている。また中央凹部42aは図3に示すように、低面部42a3の後部の横幅W2(左右方向の寸法)が、他の部分(特に一対の載置面部42a1,42a2)の横幅W1よりも左右に広がった幅広の形態となっている。より詳しくは低面部42a3の左辺は、その後部が前部よりも左側に、低面部42a3の右辺は、その後部が前部よりも右側に位置している。
側方凹部42bは側面視すると、その前部を前方に向かうにつれて上昇する斜面42b1とし、斜面42b1よりも後側を水平面42b2としている。斜面42b1は軸孔84(軸挿入溝83)の前端とほぼ同じ前後位置を基準位置として、その前方の範囲に形成されており、水平面42b2は同様に前記基準位置に対して、その後方の範囲に形成されている。また側方凹部42bは平面視すると、長方形状で、前後方向の寸法を左右方向の寸法よりも長いものとし、しかも前後方向の寸法を中央凹部42aのそれよりも短くし、左右方向の寸法(最大寸法)である横幅W3を中央凹部42aの一対の載置面部42a1,42a2の横幅W1よりも狭くしてある。また前後方向に関して、側方凹部42bの前端は、引手取付柱8の前端よりも前で、且つ中央凹部42aの前端よりも後に位置し、側方凹部42bの後端は、引手取付柱8の後端よりも後で、且つ中央凹部42aの後端よりも前に位置している。
また低面部42a3の後部の横幅W2がその前後よりも幅広になっている関係上、その幅広部分において左側の側方凹部42bの右辺は左側に凹み、右側の側方凹部42bの左辺は右側に凹んでいる。そして側方凹部42bの上面であって凹み部分の側方に位置する部分から加締め部43が1つずつ突出しており、加締め部43で板バネ2を加締めたときに、凹み部分は加締め部43の下端部の変形領域となる。
加締め部43は、先端が細くなる突起であって、板バネ2を加締める前の段階では、上方へ突出する矩形の角柱状であって、平面視すると矩形の四辺方向は、前後方向及び左右方向に一致する。また加締め部43は図10に示すように板バネ2を加締めた後の段階では、側方凹部42bの上面から板バネ2の上方へ向かって側方へ傾いた状態に突出し、板バネ2を上方から覆うようにして抑えている。なお一対の加締め部43,43は、左右対称に形成されている。
ストッパー部44は図2〜4,11に示すように、上翼板本体41の上面の前側の先端よりも前後方向中央側から、より詳しくは側方凹部42bの上面の前部(斜面42b1)から上方に突出すると共に、前柱81のうち側方凹部42b側の側面から側方に突出している。しかも一対のストッパー部44,44部は左右対称に形成されていることから、一対の引手取付柱8,8の対向面から中央凹部42a側へ向かって一対のストッパー部44,44部が突出していることになる。一対のストッパー部44,44は左右に対向しており、その後部の上端部が引手3の左右側面32c,32cに点接触する部分、より詳しく言えば引手本体32の左右側面32c,32cの角部32c1に点接触する部分となる。また、一対のストッパー部44,44に接触したときの引手3は、前側の揺動を阻止され、前側に傾斜した状態で上翼板本体41の上面から離れている。いっぽう引手3の後側の揺動を阻止するのが台座部45である。
台座部45は図2〜4,6,10に示すように、上翼板本体41の上面であって、左右方向に関しては一対の引手取付柱8,8の間であり、前後方向に関しては凹部42よりも後方の部分、より詳しく言えば一対の側方凹部42bの後端と中央凹部42aの後端から後方の部分である。また台座部45は水平面となっており、平面視してコ字状となっている。しかも板バネ2を加締めた後の段階の加締め部43の上端よりも台座部45は高く、この台座部45に引手本体32の平面部32aの一部が面接触する。また台座部45の上面は、加締め部43が形成される側方凹部42bの上面(側方凹部42bの後部の水平面42b2)よりも高く形成されている。ちなみに側方凹部42bの水平面42b2は、中央凹部42aの上面(底面)の載置面部42a1,42a2よりも高く形成されている。
上記した本発明の第一実施形態のスライダーSは、次の(1)〜(3)の手順で組み立てる。
(1)板バネ2を上翼板4の中央凹部42aに載せる。このとき設計で、一対の側方凹部42b,42bの上面を中央凹部42aの上面よりも高くし、一対の側方凹部42b,42bの前後両端を中央凹部42aの前後両端よりも中央側としているので、板バネ2の前後端部が左右にずれ難くなり、板バネ2を位置決めし易くなる。
(2)一対の加締め部43,43を左右中央側へ向かって傾けるように押し込んで、塑性変形させることによって、一対の加締め部43,43で板バネ2を加締めて、中央収容部から板バネ2が抜け外れないようにする。このとき加締め部43の上端の高さが台座部45の上面と同じ高さか、それよりも低くなるようにする。ちなみに図10の例では低くなるようにしてある。
(3)引手3の軸31の両端部を一対の引手取付柱8,8の軸挿入溝83,83に載せて、前柱81及び後柱82の上端部を互いの前後間隔を狭めるように塑性変形させる。
このようにして組み立てたスライダーSは、以下の効果を有する。図6,10に示すように引手3を後方に倒伏させると、板バネ2の前後中央部に引手3のカム33が上から接触、または近接する。接触するか近接するかは、スライダーSの部品の寸法精度による。また接触形態は、二通りある。第一の接触形態は、カム33が板バネ2をその厚み方向にわずかに弾性変形させる場合である。第二の接触形態は、板バネをその厚み方向に全く弾性変形させることなく、単に接している場合である。第一の接触形態の場合、板バネ2の復元力によってカム33ひいては引手3が上方へ押し上げられ、引手本体32の平面部32aの一部と台座部45とが面接触する。第二の接触形態の場合および近接形態の場合、板バネ2の復元力は得られないが、引手本体32の平面部32aの一部と台座部45とが面接触する。接触形態および近接形態のいずれの場合でも、平面部32aのうち面接触する部分は、台座部45に接触するごとに傷つくことになるが、面接触しているので、傷が目立ち難く、引手3の外観に与える影響を小さくできる。また引手3を後方に倒伏させたときに、加締め部43の上端が台座部45の上面よりも低いことから、引手本体32と加締め部43とは離れた状態になる。
またスライドファスナーのエレメント列を分離させるために、引手2を少し上方へ回して後方に傾斜させた状態でスライダーSを使用したとき、図12,13に示すように板バネ2は、カム33によって押され、弾性変形する。弾性変形した場合に、板バネ2が一対の加締め部43,43によって覆われるのは、板バネ2のうち前後端よりも中央側の部分(軸31側の部分)である。板バネ2は、弾性変形すると、その前端部が前側の載置面42a1の後端を支点として上方へ変位し、その後端部が後側の載置面42a2の前端を支点として上方へ変位する。そのうえ板バネ2は弾性変形すると、カム33によって押された部分が下方へ変位する。そして板バネ2のうち一対の加締め部43,43の下方に位置する部分は、板バネ2の前後端よりも前後方向中央側に位置するので、板バネ2の弾性変形時に、板バネ2の前後端よりも上方への変位量が小さくなり、従来よりも加締め部43は板バネ2によって押し上げられ難くなる。しかも図示の例では板バネ2のうち一対の加締め部43,43の下方に位置する部分は、前側の載置面42a1の後端と、後側の載置面42a2の前端との間に位置するので、板バネ2の弾性変形時に、下方へ変位することになるので、加締め部43は板バネ2によって押し上げられなくなる。したがってスライダーSを使用しても加締め部43は板バネ2によって塑性変形しづらくなり、板バネ2が中央凹部42aから抜け外れ難くなる。言い換えれば一対の載置面部42a1,42a2の上に板バネ2の前後端部が載っており、低面部42a3の上側を一対の加締め部43,43が覆っているので、板バネ2が下方に変位する部分の上側に一対の加締め部43,43が位置することになり、一対の加締め部43,43が板バネ2によって塑性変形しづらくなり、板バネ2が中央凹部42aから抜け外れ難くなる。
なお一対の加締め部43,43は、その上端を台座部45よりも低くしてあるので、引手本体32に接触せず、使用により引手3を傷つけるおそれはないが、仮にその上端を台座部45以上にして引手本体32に接触したとしても、軸31側に近い位置なので、傷が目立ち難い。
また加締め部43は、加締められて塑性変形した際に、その下端部が中央凹部42a側へ入り込むが、中央凹部42aの後部は幅広形状としてあるので、加締め部43は板バネ2の側面に接触せずに済む。したがって板バネ2が一対の加締め部43,43によって左右方向から押し込まれることは無く、一対の加締め部43,43によって板バネ2の弾性変形が邪魔されることは無い。なお仮に一対の加締め部43,43が板バネ2に接触していたとしても、板バネ2は一対の加締め部43,43との接触部分の下側に空間があるので、弾性変形に与える影響は小さくてすむ。
いっぽう図9,11に示すように引手3を前方へ回すと、一対のストッパー部44,44と引手本体32とが衝突して、引手3の前方への揺動が阻止される。このとき軸31に対して引手3の先端は上側に位置するようになっており、それゆえ引手3は前方に傾斜した状態となる。なお、このとき一対のストッパー部44,44は、前後方向において、引手3の先端と軸部31との間、より詳しくは、上翼板本体41の上面の前側の先端よりも前後方向中央側に位置し、当該位置において引手本体32に接触する。この一対のストッパー部44,44は、たとえば一対のストッパー部44,44が上翼板本体41の上面の前側の先端において引手本体32に接触するものに比べれば、接触によって生じる引手本体32の傷が軸31に近くなり、引手本体32の外観に与える影響を小さくできる。また一対のストッパー部44,44の上端部と引手本体32の左右側面32c,32cの角部32c1,32c1とが点接触する。そして点接触によって生じる傷は、引手本体32の左右側面32c,32c、しかも一対の角部32c1,32c1なので、引手本体32の外観に与える影響を小さくできる。
またストッパー部44は、引手取付柱8の側面と側方凹部42bの上面からなる2つの面に支えられているので、破損しづらい。
本発明の第一実施形態のスライダーSは加締め部43を左右に1つずつ備える構成であったが、この構成に本発明は限らない。第一実施形態のスライダーSの変形例に用いるスライダー胴体1が図14に示されている。このスライダー胴体1は、加締め部43を前後左右に間隔をあけて4つ備えることを特徴とする。より詳しく言えばスライダー胴体1は、左側の側方凹部42bの上面であって軸挿入溝83に対して前後に間隔をあけた位置に加締め部43を1つずつ備え、右側の側方凹部42bの上面にも同様に加締め部43を1つずつ備えるものである。したがって板バネ2はその左右側部の上方を前後の1カ所ずつ加締め部43によって加締められる。
本発明の第二実施形態のスライダーSに用いるスライダー胴体1は図15に示すように加締め部43を1つのみ備えていること、各引手取付柱8から側方に離した位置にストッパー部44を備えていること、各引手取付柱8の下端部の前後に溝部41aを備えていることについて、第一実施形態のスライダーSに用いるスライダー胴体1と相違する。より詳しくは以下の通りである。
加締め部43は、板バネ2を加締める前の段階では、板バネ2の上面の最高位置よりも高く上方へ突出する長いものであり、板バネ2を加締めた後の段階では、板バネ2を横幅のほぼ全長に亘って覆うようになっている。
ストッパー部44は、前柱81から中央凹部42a側の側方に離れた位置において側方凹部42bの上面から上方へ突出している。
溝部41aは、上翼板本体41の上面に合計4つ形成されている。たとえば1つの溝部41aは、左側の後柱82の下端の後方において後柱82の幅全長に亘って形成されている。他の3つの溝部41aも、左右の前柱81及び右側の後柱82に同様に形成されている。これら溝部41aによって引手取付柱8の全高が、溝部41aのない場合に比べて高くなり、軸31を取り付ける際に、前柱81と後柱82の上端部を塑性変形させ易くなる。
本発明の第三実施形態のスライダーSは図16に示すようにスライダー胴体1が左右の加締め部43を前後方向に関して異なる位置に備えること、各引手取付柱8が左右方向にのみ貫通する軸孔84を備えること、引手3が二部品を組み合わせたものであることについて、第一実施形態のスライダーSと相違する。より詳しくは以下の通りである。
引手3は、引手本体32とカム33との一体物と、軸31とを別々の部品として備える。引手本体32とカム33との一体物は、引手本体32の長手方向の一端部に左右方向に貫通する軸連結孔32hを備え、軸連結孔32hの半径方向外側に突出するようにして引手本体32の平面部32aの当該一端部側からカム33を突出させてある。軸31は、軸連結孔32hの貫通方向の寸法よりも長い円柱状の棒で、その半径を軸連結孔32hの半径よりもわずかに大きくしてある。
左右の加締め部43,43のうち一方(図では左側の加締め部43)は前後方向に関して軸孔84よりも前側に、他方(図では右側の加締め部43)は軸孔84よりも後側に形成されている。
引手取付柱8は、上翼板4の上面から上方に突出する平板85であり、平板85の前後及び上下の中央部に左右方向に貫通する軸孔84が形成されたものである。
第三実施形態のスライダーSを組み立てる場合は、スライダー胴体1の中央凹部42aに板バネ2を載せてから、引手本体32の長手方向におけるカム33側の一端部を一対の引手取付柱8,8の間に配置し、一対の引手取付柱8,8の軸孔84,84及び引手本体32の軸連結孔32hに軸31を通すようにする。なお引手本体32の軸連結孔32hに軸31を圧入することによって、引手本体32と軸31とは一体化する。以上である。
本発明のスライダーは上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
S スライダー
1 スライダー胴体
11 エレメント通路
12 テープ溝
2 弾性体(板バネ)
3 引手
31 軸
32 引手本体
32a 厚み方向の一面(平面部)
32b 厚み方向の他面
32c 短辺方向を向く面(側面)
32c1 角部
32h 軸連結孔
33 カム
4 上翼板
41 上翼板本体
41a 溝部
42 凹部
42a 中央凹部
42a1、42a2 載置面部
42a3 低面部
W1 載置面部の横幅
W2 低面部の後部の横幅
42b 側方凹部
42b1 斜面
42b2 水平面
W3 側方凹部の横幅
43 加締め部
44 ストッパー部
45 台座部
5 下翼板
6 連結柱
7 フランジ
8 引手取付柱
81 前柱
82 後柱
83 軸挿入溝
84 軸孔
85 平板

Claims (7)

  1. 前後に貫通するエレメント通路(11)を含むスライダー胴体(1)と、
    前記スライダー胴体(1)の上面において取り付けられると共に前後方向を長手方向とする弾性体(2)と、
    前記弾性体(2)の上方において前後に揺動可能に前記スライダー胴体(1)に支持される引手(3)とを備え、
    前記引手(3)は、左右に延長すると共に前記スライダー胴体(1)に回転可能に支持される軸(31)と、前記軸(31)からその半径方向外側に延長する引手本体(32)と、前記軸(31)からその半径方向外側に突出するカム(33)とを備え、
    前記カム(33)は、前記スライダー胴体(1)の上面の前後の一方側に前記引手(3)を倒伏させた場合に前記弾性体(2)を弾性変形させるものであり、
    前記スライダー胴体(1)の上部には、前記エレメント通路(11)の上方を覆う上翼板(4)と、前記上翼板(4)の上面であって左右から突出する一対の引手取付柱(8,8)とを備え、
    前記上翼板(4)は、その上面であって一対の前記引手取付柱(8,8)の間には、凹部(42)と、前記弾性体(2)を加締める加締め部(43)とを備え、
    前記凹部(42)は、左右に位置する一対の側方凹部(42b,42b)と、一対の前記側方凹部(42b,42b)の間に位置すると共に前記弾性体(2)を収容する中央凹部(42a)とを備え、
    前記加締め部(43)は、一対の前記側方凹部(42b,42b)の少なくとも一方から突出すると共に、その突出位置を前記中央凹部(42a)の前後両端よりも中央側としてあることを特徴とするスライドファスナー用スライダー。
  2. 前記中央凹部(42a)は、前記弾性体(2)の前後端部を載せるための前後一対の載置面部(42a1,42a2)と、一対の前記載置面部(42a1,42a2)の間において前記載置面部(42a1,42a2)よりも低い低面部(42a3)とを備え、
    前記加締め部(43)は、前記低面部(42a3)の上方を覆っていることを特徴とする請求項1記載のスライドファスナー用スライダー。
  3. 一対の前記側方凹部(42b,42b)は、その上面を前記中央凹部(42a)の上面よりも高くしていることを特徴とする請求項1又は2記載のスライドファスナー用スライダー。
  4. 前記上翼板(4)は、その上面であって前記凹部(42)よりも前後の前記一方側に、前記凹部(42)の上面よりも高い水平面の台座部(45)を備え、
    前記引手本体(32)は、倒伏させた状態で前記台座部(45)に面接触する平面部(32a)を備えることを特徴とする請求項1、2又は3記載のスライドファスナー用スライダー。
  5. 前記台座部(45)の上面は、前記加締め部(43)の上端に比べて上方に形成されることを特徴とする請求項4記載のスライドファスナー用スライダー。
  6. 前記上翼板(4)は、前記スライダー胴体(1)の上面の前後の他方側に傾斜した状態で前記引手(3)を保持する一対のストッパー部(44,44)を備え、
    一対の前記ストッパー部(44,44)は、前記上翼板(4)の上面の前後における前記他方側の先端よりも前後方向中央側に形成されることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のスライドファスナー用スライダー。
  7. 一対の前記ストッパー部(44,44)は、一対の前記側方凹部(42b,42b)であって且つ一対の前記引手取付柱(8,8)の対向面から前記中央凹部(42a)へ向かって突出することを特徴とする請求項6に記載のスライドファスナー用スライダー。
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