以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。なお、各図は、本発明を説明するために必要な要素を図示し、実際の全要素を図示しているとは限らない。また、以下の説明において、特に明示しない限り、「接続する」という場合には電気的に接続することを意味する。「巻装」は巻いて装うことを意味し、巻き回す意味の「巻回」と同義に用いる。
〔実施形態1〕
実施形態1について図1〜図10を参照しつつ説明する。図1に示す回転電機1は、車両用電動機として使用されるインナーロータ型の回転電機である。この回転電機1は、ハウジング10と、一対の軸受13,13と、シャフト15と、ロータ20と、ステータコア31及びステータ巻線35を有するステータ30と、を備えている。なお、図示を省略するが、回転電機1の内外には、回転電機1全体の制御を司る制御部が設けられる。制御部は、例えばECU(Electronic Control Unit)やコンピュータなどが該当する。
ハウジング10は、筐体やフレームなどに相当し、形状や材料等を任意に設定してよい。実施形態1のハウジング10は、軸方向一端側が開口した有底筒状の一対のハウジング半部材10a,10bにより構成されている。一対のハウジング半部材10a,10bは、開口部同士が接合した状態でボルトなどの固定具(図示せず)で連結固定されている。各ハウジング半部材10a,10bの軸方向端部(底部)の中央部には、軸方向に貫通する軸孔11,11がそれぞれ設けられている。各ハウジング半部材10a,10bの軸孔11,11の周囲には、軸方向内側(ハウジング10の中央)に向かって突出するリング状の軸受保持部12,12がそれぞれ設けられている。各軸受保持部12,12は、軸孔11,11よりも大きい内径を有する。
一対の軸受13,13は、各ハウジング半部材10a,10bの各軸受保持部12,12の内周側にそれぞれ嵌合固定されている。一対の軸受13,13として、実施形態1では、内輪及び外輪の間に複数のボールが介装されたボールベアリングが採用されているが、その他公知の軸受を採用してもよい。シャフト15は、ハウジング10の軸方向両端部に設けられた一対の軸受13,13を介して軸方向両端が回転可能に支持されている。
回転子に相当するロータ20は、所定形状に成形されており、磁石によって形成された所定数の磁極を有する。ロータ20は、シャフト15の軸方向中央部の外周に直接的または間接的に固定され、シャフト15と一体的に回転する。このロータ20は、高速回転する際の応答性や耐遠心強度の観点から、外径の小さいものが採用されている。この場合、一対の軸受13,13は、ロータ20の外径以上に大きい外径を有するものが採用されている。なお、ロータ20の具体的な構成例については後述する(図14,図16,図19,図20,図22,図23を参照)。
固定子に相当するステータ30は、図2に示すように、円環状に形成されてロータ20の外側に径方向に対向して配置されたステータコア31と、ステータコア31に巻装されてステータコア31の軸方向端面31aから軸方向外側に突出する円環状のコイルエンド36,37を有する三相のステータ巻線35と、を備えている。
ステータコア31は、円環状の複数の電磁鋼板をステータコア31の軸方向に積層して形成された一体型のものである。ステータコア31の内周側には、径方向内側へ突出し周方向に所定距離を隔てて配列された複数のティース32(図8参照)が設けられており、隣り合うティース32の間に軸方向に貫通するスロット33(図6、図8参照)が形成されている。ティース32は、ロータ20との間で磁束が流れる磁路であって、形状や数等は任意に設定してよい。スロット33は、周方向に隣り合うティース32の相互間に形成され、ステータ巻線35を収容して巻装する空間部位である。スロット33の数は、ロータ20の磁極数(実施形態1では4磁極)に対し、ステータ巻線35の一相当たり所定数(実施形態1では2)の割合で形成されている。実施形態1では、4×3×2=24より、スロット数は24個とされている。
なお、このステータコア31は、外径(A)に対する内径(B)の径比率が0.2〜0.4の範囲に設定されている。これにより、ロータ20の高速回転時に発生し易い軸振れの抑制に関して、ステータコア31の径比率が最適な範囲に設定されている。このステータコア31の径比率の最適な範囲については後で詳述する。
ステータ巻線35は、スロット33に軸方向に挿入され且つステータコア31の軸方向端面31aから外部に延出した開放端部の所定の端末同士が互いに接合されている複数の導体セグメント40により構成されている。実施形態1では、基本となるセグメントとして、図3〜図5に示すように、U字形状をなす導体セグメント40が採用されている。なお、図3は、導体セグメント40を周方向から見た側面図であり、図4は、導体セグメント40を径方向内側から見た正面図であり、図5は、導体セグメント40を軸方向から見た平面図である。
この導体セグメント40は、一対の直線部41,41と、一対の直線部41,41の一端部同士を接続しているターン部42とを有する。各直線部41,41の所定範囲の部分は、ステータコア31のスロット33に収容されるスロット収容部45となる。ターン部42の中央部には、ステータコア31の径方向に折れ曲がるクランク部43が設けられている。なお、ターン部42には、後述の第1コイルエンド36に傾斜部38が設定されるように予め傾斜部38が設けられている。
複数の導体セグメント40は、図6に示すように、一対の直線部41,41がステータコア31の軸方向一端側から周方向に3スロット(1磁極ピッチ)離れた2個のスロット33に挿入されて組み付けられる。そして、ステータコア31の軸方向他端側の端面(スロット33)から外部に延出した一対の開放端部を互いに周方向反対側へ捻った後、所定の捻り部の端末同士を溶接等により接合して所定のパターンで電気的に接続される。なお、捻り部の端末同士を接続した後あるいは接続する前に、後述の第2コイルエンド37に傾斜部38が設定されるように捻り部に対して傾斜部38が形成される。
なお、ステータ巻線35の各相について、基本となるU字形状の導体セグメント40により、ステータコア31の周方向に周回する相巻線が形成される。このとき、ステータ巻線35の各相について、出力用引き出し線及び中性点用引き出し線と接続されたセグメントや、各周をそれぞれ接続する接続部を有するセグメントは、基本となる導体セグメント40とは異なる異形セグメントで構成される。これら異形セグメントを用いて、各相巻線の巻線端が星型結線で結線されてなるステータ巻線35が形成される。
このステータ巻線35の軸方向一端側には、ステータコア31の軸方向端面31a(スロット33)から軸方向外側に突出した複数のターン部42により、全体として円環状の第1コイルエンド36(図1、図2参照)が形成されている。この第1コイルエンド36は、軸方向内側から外側に向かって内径が次第に大きくなるように傾斜した傾斜部38を有する。実施形態1の場合には、第1コイルエンド36の全体に傾斜部38が形成されている。
また、ステータ巻線35の軸方向他端側には、ステータコア31の軸方向端面31a(スロット33)から軸方向外側に突出した複数の導体セグメント40の捻り部及び端末接合部により、全体として円環状の第2コイルエンド37(図1、図2参照)が形成されている。この第2コイルエンド37は、軸方向内側から外側に向かって内径が次第に大きくなるように傾斜した傾斜部38を有する。実施形態1の場合には、第2コイルエンド37の全体に傾斜部38が形成されている。
第1及び第2コイルエンド36,37は、図1に示すように、少なくとも軸方向外側端部の内径が各軸受13,13の外径よりも大きくされている。実施形態1の場合、第1及び第2コイルエンド36,37の軸方向外側端部の内径は、各軸受13,13及び各軸受保持部12,12の外径よりも大きくされている。これにより、各軸受13,13及び各軸受保持部12,12は、第1及び第2コイルエンド36,37の内径側に収容されている。この場合、一対の軸受13,13は、両方共に全体が第1及び第2コイルエンド36,37の内径側に収容されている。このようにして、一対の軸受13,13の軸方向離間距離が短くなるようにされているので、ロータ20の高速回転時に発生する軸振れが抑制される。
<試験1>
実施形態1の回転電機1において、ロータ20の高速回転時に発生する軸振れとステータコア31の径比率との関係を調べた試験1の結果について、図8及び図9を参照して説明する。図8に示すように、ステータコア31の外径を(A)とし、内径を(B)とする。そして、ステータコア31の外径(A)に対する内径(B)の径比率(B)/(A)を、0.1〜0.9まで0.1ずつ8段階に変化させて、各径比率(B)/(A)においてロータ20の軸振れが発生する最高回転数を調べたところ、図9に示す結果が得られた。なお、図9のグラフは、径比率(B)/(A)が横軸に示され、ロータ20の軸振れが発生する最高回転数が縦軸に示されている。
図9から解るように、ロータ20の軸振れが発生する最高回転数は、径比率(B)/(A)が0.1から増加するにつれて次第に高くなり、0.3付近でピークになった後、径比率(B)/(A)が増加するにつれて次第に低くなる。この場合、径比率(B)/(A)が0.2よりも下回ると、一対の軸受13,13に対するロータ20の重心位置のバランスが悪いことから、径比率(B)/(A)が小さくなるほど出力軸の影響が大きくなり、ロータ20の軸振れが発生する最高回転数は低下する。また、径比率(B)/(A)が0.4を超えて大きくなると、ロータ20の外径が大きくなるにつれて重量が増大することから、径比率(B)/(A)が大きくなるほどロータ20の外径(重量増加)の影響が大きくなり、ロータ20の軸振れが発生する最高回転数は低下する。
試験1の結果から、ロータ20の軸振れが発生する最高回転数を高めるためには、ステータコア31の外径(A)に対する内径(B)の径比率(B)/(A)を0.2〜0.4の範囲に設定するのが望ましい。
<試験2>
実施形態1の回転電機1において、ステータコア外径とステータ巻線最内径の径比率に対するロータ20の最高回転数及び銅損の関係を調べた試験2の結果について、図8及び図10を参照して説明する。図8に示すように、ステータコア31の外径を(A)とし、ステータ巻線35の最内径を(C)とする。そして、ステータコア31の外径(A)に対するステータ巻線35の最内径(C)の径比率(C)/(A)を、0.18〜0.81まで0.09ずつ7段階に変化させて、各径比率(C)/(A)においてロータ20の軸振れが発生する最高回転数を調べたところ、図10に示す結果が得られた。なお、図10のグラフは、径比率(C)/(A)が横軸に示され、ロータ20の最高回転数及び銅損が縦軸に示されている。
図10から解るように、ロータ20の最高回転数は、径比率(C)/(A)が0.18〜0.81まで増加するにつれて直線的に低下している。この理由は、径比率(C)/(A)が大きくなるほどステータ巻線35のスロット収容部45がより外周側に位置するためインダクタンスが大きくなり、最高回転数が低下するからである。
また、銅損は、径比率(C)/(A)が0.18〜0.81まで増加するにつれて曲線的に低下している。この理由は、径比率(C)/(A)が大きくなると、ロータ20からの鎖交磁束によりステータ巻線35に発生する渦電流損が小さくなり、効率が良くなるためである。換言すれば、径比率(C)/(A)を小さくするほど渦電流損は大きくなり、効率が悪化することとなる。
試験2の結果から、ロータ20の最高回転数と効率のバランスを採りつつ回転電機1の高出力化を図るためには、ステータコア31の外径(A)に対するステータ巻線35の最内径(C)の径比率(C)/(A)を0.4〜0.7の範囲に設定するのが望ましい。
以上のように、実施形態1の回転電機1によれば、一対の軸受13,13は、ロータ20の外径以上に大きい外径を有すると共に、少なくとも一方の軸受13の少なくとも一部がコイルエンド36,37の内径側に収容されている。これにより、一対の軸受13,13の離間距離を短くすることができるので、ロータ20の高速回転時の軸振れを抑制することができる。
また、実施形態1では、第1及び第2コイルエンド36,37は、軸方向外側端部の内径が軸受13,13の外径よりも大きくされている。そのため、第1及び第2コイルエンド36,37の内径側に、軸受13,13を干渉することなく収容させることができるので、一対の軸受13,13の離間距離を確実に短くし、ロータ20の高速回転時の軸振れを確実に抑制することができる。
また、実施形態1では、第1及び第2コイルエンド36,37は、軸方向内側から外側に向かって内径が次第に大きくなるように傾斜した傾斜部38を有する。そのため、第1及び第2コイルエンド36,37の内径側に、軸受13,13を干渉することなく収容させることができるので、一対の軸受13,13の離間距離を確実に短くし、ロータ20の高速回転時の軸振れを確実に抑制することができる。
また、通常、ステータ巻線35のスロット収容部45をステータコア31の外周側に配置するとインダクタンスが大きくなるが、実施形態1の場合には、第1及び第2コイルエンド36,37だけを外周側に配置しスロット収容部45を内周側に配置することができるので、インダクタンスが大きくならない。そのため、ロータ20の高速回転時において電流をステータ巻線35に流すことができるので、所定の出力を確保することができる。さらに、第1及び第2コイルエンド36,37を外径側へ拡げることで、第1及び第2コイルエンド36,37の軸方向高さを低くすることができるので、回転電機1の小型化が可能となる。
また、実施形態1のステータ巻線35は、スロット33に軸方向に挿入され且つステータコア31の軸方向端面から外部に延出した開放端部の所定の端末同士が互いに接合されている複数の導体セグメント40により構成されており、いわゆるセグメント型の巻線である。そのため、第1及び第2コイルエンド36,37を所望の大きさや形状に容易に形成することができるので、一対の軸受13,13の離間距離を短くして、ロータ20の高速回転時の軸振れ抑制効果をより確実に実現することができる。
また、実施形態1では、ステータコア31の外径(A)に対する内径(B)の径比率(B)/(A)が0.2〜0.4の範囲に設定されている。これにより、ロータ20の軸振れを抑制するためにロータ20の外径を小さくした場合に、ステータコア31の径の大きさを適切な範囲に設定することができる。
また、実施形態1では、ステータコア31の外径(A)に対するステータ巻線35の最内径(C)の径比率(C)/(A)が0.4〜0.7の範囲に設定されている。これにより、渦電流損(銅損)の低減とインダクタンス増大の抑制とのバランスを採りつつ、回転電機1の高出力化を図ることができる。
〔実施形態2〕
実施形態2の回転電機2は、ステータ巻線35Aの第1及び第2コイルエンド36,37に傾斜部38が設けられていない点で、実施形態1のものと異なる。よって、実施形態1と共通する要素については、同じ符号を付して詳しい説明は省略し、以下、異なる点及び重要な点について説明する。
実施形態2のステータ30は、図11に示すように、実施形態1と同じステータコア31と、ステータコア31に巻装されてステータコア31の軸方向端面31aから軸方向外側に突出する円環状のコイルエンド36,37を有する三相のステータ巻線35Aと、を備えている。
実施形態2のステータ巻線35Aは、基本となるセグメントとして実施形態1と同じU字形状をなす導体セグメント40が採用されて、実施形態1と同様の手法で形成されている。但し、実施形態2のステータ巻線35Aは、ステータコア31のスロット33に収容されたスロット収容部45が、実施形態1に比べて外周側に位置している。また、ステータ巻線35Aの軸方向両端にそれぞれ形成された円環状の第1及び第2コイルエンド36,37は、ステータコア31の軸方向端面31aから軸方向にストレート状に突出している。よって、実施形態2の第1及び第2コイルエンド36,37は、実施形態1と異なり、傾斜部38を有していない。
なお、実施形態2のステータ30は、実施形態1と同様に、ステータコア31の外径(A)に対するステータ巻線35の最内径(C)の径比率(C)/(A)が0.4〜0.7の範囲に設定されている。また、ステータコア31の外径(A)に対する内径(B)の径比率(B)/(A)も、実施形態1と同様に、0.2〜0.4の範囲に設定されている。その他の構成も、実施形態1と同じである。
以上のように構成された実施形態2の回転電機2によれば、一対の軸受13,13は、ロータ20の外径以上に大きい外径を有すると共に、少なくとも一方の軸受13の少なくとも一部がコイルエンド36,37の内径側に収容されている。これにより、実施形態1と同様に、一対の軸受13,13の離間距離を短くすることができるので、ロータ20の高速回転時の軸振れを抑制することができる。
また、実施形態2の場合には、実施形態1の第1及び第2コイルエンド36,37に傾斜部38が設けられていることによる作用効果を除いて、実施形態1と同様の作用効果を得ることができる。
〔実施形態3〕
実施形態3は図14〜図18を参照しながら説明する。なお図示および説明を簡単にするため、特に明示しない限り、実施形態1,2で用いた要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。よって、実施形態1,2と相違する点を主に説明する。
図14に示すロータ20Aは、ロータ20の一例である。このロータ20Aは、インサート成形によって一体成形され、磁石21(すなわち第1磁石部21aおよび第2磁石部21b)や第1補強部22aなどを有する。ただし、第1補強部22aは磁石21に内在し、磁石21の表面であってステータ30と対向する面には露出しない。磁石21の種類や材料等は任意に設定してよい。強い磁力を確保し、かつ、インサート成形を行い易くするには、ボンド磁石と希土類ボンド磁石とのうちで少なくとも一方を含めるとよい。
インサート成形は、例えば成形型に第1補強部22aを装填した後、溶融させた磁石21を注入して固化させる。第1補強部22aはロータ20Aの外周面に露出しないように装填されるので、磁石21は第1磁石部21aと第2磁石部21bに分かれる。第1補強部22aに加えてさらにシャフト15を成形型に装填すると、ロータ20Aを一体成形するとともに、ロータ20Aをシャフト15に固定することができる。
第1補強部22aは、補強部材22の一例であって、インサート成形を行う前に円環状に成形される。例えば、炭素繊維,ガラス繊維,人造鉱物繊維や、これらの繊維を含む強化プラスチックなどが該当する。
炭素繊維(「カーボン繊維」とも呼ぶ)は、アクリル繊維またはピッチ(石油,石炭,コールタールなどの副生成物)を原料として、高温で炭化して作った繊維である。例えば、PAN系炭素繊維やピッチ系炭素繊維のほかに、複合材料としての炭素繊維強化プラスチック(CFRP)や炭素繊維強化炭素複合材料などを含む。
ガラス繊維は、ガラスを融解して牽引した繊維であり、繊維強化プラスチックを含む。繊維強化プラスチックには、例えばガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、ガラス長繊維強化プラスチック(GMT)、炭素繊維強化プラスチック、ボロン繊維強化プラスチック(BFRP)、アラミド繊維強化プラスチック(AFRP,KFRP)、ポリエチレン繊維強化プラスチック(DFRP)などを含む。
人造鉱物繊維は、例えばロックウール,グラスウール,セラミック繊維などを含む。
図15は、磁石21(21a,21b)の着磁例を示す。この着磁例では、全体を周方向に4分割して、径方向に着磁する。この着磁によって、ステータ30に対向する磁石21の外側(すなわち外周面)はN極とS極で磁極が交互に変わる。ステータ30に対しては外側の磁極が有効であるので、ロータ20Aは4極の磁極を有する。分割数(極数)は任意に設定してよく、4以外の数で設定してもよい。磁石21を着磁する時期は問わない。
磁石21に内在される第1補強部22aの配置について、図16〜図18を参照しながら説明する。第1補強部22aは、ロータ20Aの外周面に近づくほどステータ30からの磁界を受けて誘導電流が発生し易くなる。その一方で第1補強部22aは、ロータ20Aの内周面(シャフト15側)に近づくほど、高速回転に伴う遠心力によって磁石21(特に第1磁石部21a)に生じる応力が大きくなって損傷し易くなる。
例えば図16に示すように、ロータ20Aの径を半径Rbと仮定し、第1補強部22aの径を半径Raと仮定する。第1補強部22aにも厚みTaがあるので、半径Raは中心値を採る。半径Raを半径Rbで除した比率を径比率Rr1,Rr2とする。すなわち、Rr1=Rr2=Ra/Rbである。半径Raの変化に対する渦電流損Peの変化は、特性線L1として図17に示す。渦電流損Peは、誘導電流(主に渦電流)の発生によって生じる損失である。誘導電流が大きくなるにつれて、渦電流損Peも大きくなる。また半径Raの変化に対する応力Fs2の変化は、特性線L2として図18に示す。なお、特性線L1,L2は一例に過ぎず、磁石21や第1補強部22aの材料や、第1補強部22aの厚みTaなどに応じて変わる。
図17に示す特性線L1によれば、シャフト15の外周面に第1補強部22aを配置した比率値R11における電流損値Pe1が最も小さい。これに対して、磁石21の外周面に第1補強部22aを配置した比率値R14における電流損値Pemが最も大きい。比率値R14は半径Raと半径Rbが等しい位置であり、Rr1=1.0である。第1補強部22aを内側に配置するにつれて、すなわち半径Raを小さくするにつれて、渦電流損Peが小さくなる。特に磁石21の外周面から内側に配置するほど大幅に渦電流損Peが小さくなる。そのため、比率値R13(例えばRr1=0.7)よりも小さい範囲で半径Raを設定するとよく、確実に渦電流損Peを小さく抑えるには比率値R12(例えばRr1=0.5)よりも小さい範囲で半径Raを設定するのが望ましい。比率値R13,R12は、いずれも「所定値」に相当する。
図18に示す特性線L2によれば、シャフト15の外周面に第1補強部22aを配置した比率値R21における応力値F21が最も大きい。これに対して、磁石21の外周面に第1補強部22aを配置した比率値R24における応力値F21が最も小さい。比率値R24は比率値R14と同じ位置であり、Rr2=1.0である。第1補強部22aを外側に配置するにつれて、すなわち半径Raを大きくするにつれて、応力Fs2が小さくなる。特にシャフト15の外周面から外側に配置するほど大幅に応力Fs2が小さくなる。そのため、比率値R22(例えばRr2=0.5)よりも大きい範囲で半径Raを設定するとよく、確実に応力Fs2を小さく抑えるには比率値R23(例えばRr2=0.7)よりも大きい範囲で半径Raを設定するのが望ましい。
上述した特性線L1,L2によれば、第1補強部22aの半径Raは、R22≦Ra≦R13の範囲内で設定するとよい。こうすれば、渦電流損Peを小さく抑制しながらも、応力Fs2を小さく抑制できて磁石21(特に第1磁石部21a)の損傷を抑制できる。R23≦Ra≦R12の範囲内で半径Raを設定すると、より効果が高まる。
上述した実施形態3によれば、以下に示す各作用効果を得ることができる。
(1)ロータ20Aにおいて、円環状に成形された第1補強部22aと、所定形状に成形された磁石21(すなわち第1磁石部21aや第2磁石部21b)とを有し、第1補強部22aは磁石21の表面であってステータ30と対向する面に露出しないように、磁石21に内在される構成とした(図14〜図16を参照)。この構成によれば、第1補強部22aは表面に露出することなく磁石21に内在される。言い換えると、第1補強部22aは磁石21に覆われる。そのため、ロータ20Aが高速回転して回転磁界を受けても、第1補強部22aには誘導電流が発生し難くなる。したがって、トルクの低下を抑制したり、発熱による強度低下を抑制したり、寿命低下を抑制したりすることができる。
(2)第1補強部22aと、磁石21とは、インサート成形によって一体成形される構成とした(図14〜図16を参照)。この構成によれば、接着剤や金具及びネジを必要としないので、ロータ20Aの偏りを最小限に抑えられる。また、磁石21は第1補強部22aに浸透するので、第1補強部22aと磁石21とが強固に一体化する。したがって、騒音や磁石21の損傷が発生しない回転数を従来よりも高めることができる。
(3)磁石21の径をRbとし、第1補強部22aの径をRaとするとき、これらの径の比率であるRa/Rbは比率値R13,R12(所定値に相当する)以下になるように設定する構成とした(図17を参照)。この構成によれば、第1補強部22aに生じる誘導電流を目的電流値(図17では目的とする渦電流損Pe)に抑えられる。したがって、トルクの低下をより確実に抑制したり、発熱による強度低下をより確実に抑制したり、寿命低下をより確実に抑制したりすることができる。
(7)第1補強部22aは、炭素繊維,ガラス繊維,人造鉱物繊維のうちで一以上を含めて成形される構成とした。この構成によれば、第1補強部22aは磁石21が浸透し易いので、磁石21との一体化を強化することができる。したがって、ロータ20Aの高速回転に伴う遠心力によって磁石21に生じる応力Fs2を低減することができる。
(8)磁石21は、ボンド磁石と希土類ボンド磁石とのうちで少なくとも一方を含む構成とした。この構成によれば、第1補強部22aに対して浸透し易いので、第1補強部22aとの一体化を強化することができる。したがって、ロータ20Aの高速回転に伴う遠心力によって磁石21に生じる応力Fs2を低減することができる。
(9)回転電機1は、ロータ20Aと、ロータ20Aに対向して設けられるステータ30とを有する構成とした(図1を参照)。この構成によれば、誘導電流の発生を抑制するとともに、応力Fs2を抑えて磁石21の損傷を抑制できるロータ20Aを備えた回転電機1を提供することができる。
〔実施形態4〕
実施形態4は図19〜図21を参照しながら説明する。なお図示および説明を簡単にするため、特に明示しない限り、実施形態1〜3で用いた要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。よって、実施形態1〜3と相違する点を主に説明する。
図19に示すロータ20Bは、ロータ20の一例である。このロータ20Bは、ロータ20Aと同様のインサート成形によって一体成形され、ロータ20Aの変形例である。ロータ20Bは、図14に示すロータ20Aに対し、さらに第2補強部22bを有する点が相違する。第2補強部22bは、第1補強部22aと同様に、補強部材22の一例である。第1補強部22aと第2補強部22bは、相異なる径で成形され、磁石21に同心円状に配置されて内在する。磁石21は、第1補強部22aと第2補強部22bが内在するため、第1磁石部21a,第2磁石部21bおよび第3磁石部21cに分かれる。
磁石21に内在される第1補強部22aと第2補強部22bの配置について、図20,図21を参照しながら説明する。第1補強部22aの配置については、実施形態3で説明した通りである(図16〜図18を参照)。ここでは第1補強部22aの配置を固定し、第2補強部22bの配置を変化させるとき、応力の影響について説明する。なお、第2補強部22bに生じる渦電流損Peは、第1補強部22aに生じる渦電流損Peに比べて無視できるほど小さいので、図示や説明を省略する。
例えば図20に示すように、ロータ20Aと同様に、ロータ20Bの径は半径Rbと仮定する。また、第1補強部22aの径を半径Rcと仮定し、第2補強部22bの径は半径Rdと仮定する。第1補強部22aは厚みTaがあり、第2補強部22bは厚みTbがあり、半径Rc,Rdはいずれも中心値を採る。厚みTaと厚みTbはそれぞれ任意に設定してよい。すなわち、Ta=Tbでもよく、Ta≠Tbでもよい。半径Rdを半径Rcで除した比率を径比率Rr3とする。すなわち、Rr3=Rd/Rcである。なお、第1補強部22aの径について、本形態の半径Rcと、実施形態1の半径Ra(図16を参照)とは、Rc=Raでもよく、Rc≠Raでもよい。
半径Rdの変化に対する応力Fs3の変化は、特性線L3として図21に示す。特性線L3は一例に過ぎず、第1補強部22aと第2補強部22bを同じ材料かつ同じ厚み(すなわちTa=Tb)で成形した例を示す。なお、磁石21,第1補強部22a,第2補強部22bの各材料や、第1補強部22aの厚みTa、第2補強部22bの厚みTbなどに応じて特性線L3も変わる。
図21に示す特性線L3によれば、第1補強部22aに接触させて第2補強部22bを配置した比率値R37における応力値F35が最も大きく、次いでシャフト15の外周面に第2補強部22bを配置した比率値R31における応力値F34が大きい。これに対して、シャフト15と第1補強部22aとの中間位置に第2補強部22bを配置した比率値R34における応力値F31が最も小さい。比率値R34はRr3=0.5、すなわち2Rc=Raである。そのため、応力値F33以下となる径比率Rr3の範囲、すなわちR32≦Rr3≦R36となるように半径Rdを設定するとよい。さらに確実に応力Fs3を小さく抑えるには、応力値F33よりも小さい応力値F32以下となる径比率Rr3の範囲、すなわちR33≦Rr3≦R35となるように半径Rdを設定するとよい。応力値F32,F33は、それぞれ回転電機1の特性等に応じて適宜に設定してよい。
図示を省略するが、厚みTbを厚みTaよりも大きく設定する場合(Tb>Ta)は、第2補強部22bが第3磁石部21cに生じる遠心力を受けとめる許容量が増大する。この場合、図21に示す応力値F31になる径比率Rr3は、比率値R34よりも大きな値になる。その一方、厚みTbを厚みTaよりも小さく設定する場合(Tb<Ta)は、第2補強部22bが第3磁石部21cに生じる遠心力を受けとめる許容量が減少する。この場合、図21に示す応力値F31になる径比率Rr3は、比率値R34よりも小さな値になる。したがって、厚みTa,Tbに応じて半径Rc,Rdを適切に設定するとよい。
上述した実施形態4によれば、実施形態3と同様の作用効果を得ることができるとともに、下記の各作用効果を得ることができる。
(4)複数の補強部材22に相当する第1補強部22aと第2補強部22bは、相異なる径で成形され、磁石21に同心円状に配置されて内在する構成とした(図19,図20を参照)。この構成によれば、ロータ20Bを高速回転させても、遠心力によって磁石21に生じる応力Fs3は複数の補強部材22に分散される。したがって、磁石21(すなわち第1磁石部21a,第2磁石部21bおよび第3磁石部21c)の損傷を従来よりも抑制できる。
(5)複数の補強部材22は第1補強部22aと第2補強部22bとを含み、第1補強部22aの径を半径Rcとし、第2補強部22bの径を半径Rdとするとき、これらの径の比率であるRd/RcはR32≦Rr3≦R36やR33≦Rr3≦R35のような所定範囲内になるように設定する構成とした(図21を参照)。この構成によれば、磁石21に生じる応力Fs3を目的応力値(すなわち応力値F32や応力値F33)に抑えられる。したがって、磁石21の損傷をより確実に抑制できる。
〔実施形態5〕
実施形態5は図22,図23を参照しながら説明する。なお図示および説明を簡単にするため、特に明示しない限り、実施形態1〜4で用いた要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。よって、実施形態1〜4と相違する点を主に説明する。
図22,図23に示すロータ20Cは、ロータ20の一例である。このロータ20Cは、インサート成形によって一体成形され、ロータ20Bの変形例である。ロータ20Cは、図19に示すロータ20Bに対し、さらに第3補強部22cを有する点が相違する。第3補強部22cは、第2補強部22bと同様に、補強部材22の一例である。
第3補強部22cは、ロータ20Cの一体成形に先立って、シャフト15に接触して配置する。例えば、予め成形された第3補強部22cの中空部にシャフト15を通したり、シャフト15の外周面に第3補強部22cを巻き付けたりする。インサート成形は、例えば成形型に第1補強部22aおよび第2補強部22bと、第3補強部22cを配置したシャフト15とを装填した後、溶融させた磁石21を注入して固化させる。インサート成形されたロータ20Cは、結果として第3補強部22cがシャフト15と磁石21(特に第3磁石部21c)との間に配置された構造となる。第3補強部22cは、インサート成形時に磁石21が浸透するので、シャフト15と磁石21との結合力が高まる。
図示を省略するが、図14に示すロータ20Aに対し、さらに第3補強部22cを有する構成としてもよい。言い換えると、図22,図23に示すロータ20Cから第2補強部22bを無くす構成のロータである。この構成でも、第3補強部22cはインサート成形時に磁石21が浸透するので、シャフト15と磁石21との結合力が高まる。
上述した実施形態5によれば、実施形態3,4と同様の作用効果を得ることができるとともに、次の作用効果を得ることができる。
(6)補強部材22に含まれる第3補強部22cは、さらにシャフト15と磁石21との間に配置される構成とした(図22,図23を参照)。この構成によれば、補強部材22を介してシャフト15と磁石21(特に第3磁石部21c)との結合力を高めることができる。したがって、磁石21がシャフト15から剥離し難くなるので、ロータ20Cの回転数を従来よりも高めることができる。
〔他の実施形態〕
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。
例えば、上記の実施形態1、2では、一対の軸受13,13は、両方共に全体が第1及び第2コイルエンド36,37の内径側に収容されているが、ハウジング10の構造上の制約などがある場合には、図12に示す変形例1や図13に示す変形例2のようにしてもよい。即ち、変形例1,2では、一対の軸受13,13のうち、一方の軸受13だけが第1又は第2コイルエンド36,37の内径側に収容されるようにしている。
さらに、変形例1,2では、一方の軸受13の全体が第1又は第2コイルエンド36,37の内径側に収容されているが、一方の軸受13の少なくとも一部が第1又は第2コイルエンド36,37の内径側に収容されるようにしてもよい。上記のようにすれば、一対の軸受13,13の離間距離を短くすることができるので、ロータ20の高速回転時の軸振れを抑制することができる。
また、上記の実施形態1,2では、ステータ巻線35,35Aを構成する基本となるセグメントとして、U字形状の導体セグメント40が採用されていたが、これに代えて、例えば図7に示すようなI字形状の導体セグメント40Aを採用してもよい。この導体セグメント40Aは、長手方向中央部にスロット収容部45を有し、長手方向両端に他の導体セグメント40Aと接合される接合部46を有する。
この導体セグメント40Aは、スロット収容部45がステータコア31のスロット33に挿入された状態で、ステータコア31の軸方向両端面からそれぞれ外部に延出した開放端部の接合部46が他の導体セグメント40Aの接合部46と接合される。よって、ステータ巻線35,35Aの第1及び第2コイルエンド36,37は、ステータコア31の軸方向両端面からそれぞれ外部に延出した導体セグメント40Aの開放端部及び接合部46の集合体により構成される。
磁石21に内在される補強部材22は、実施形態3では第1補強部22aを含み(図14,図16を参照)、実施形態4では第1補強部22a,第2補強部22bを含み(図19,図20を参照)、実施形態5では第1補強部22a,第2補強部22b,第3補強部22cを含む構成とした(図22,図23を参照)。この形態に代えて、四以上の補強部を含む構成としてもよい。例えば図23において、第1補強部22aと第2補強部22bとの間や、第2補強部22bと第3補強部22cとの間などに、径が相異なる一以上の補強部を配置する。補強部の数が増えるにつれて、遠心力によって磁石21に生じる応力が分散されるので、磁石21の損傷をさらに抑制できる。一方、ロータ20の径を変えない場合には、補強部の数が増えるにつれて、磁石21の容量が減少するので全体の磁力が低下する。したがって、損傷抑制と磁力低下とを考慮して、補強部の数を設定するとよい。その他については、実施形態1〜5と同様の作用効果が得られる。
上述した実施形態3〜5では、磁石21を周方向に複数分割(一例として8分割)して全てを着磁する構成とした(図15を参照)。この形態に代えて、磁石21を周方向に複数分割し、着磁する着磁部位と、着磁しない非着磁部位とを含む構成としてもよい。非着磁部位に流れる磁束によってリラクタンストルクが発生し、トルク性能の向上に寄与する。その他については、実施形態3〜5と同様の作用効果が得られる。
上述した実施形態3,4では、ロータ20(20A〜20C)の径や、補強部材22(第1補強部22a,第2補強部22b)の径として半径を適用する構成とした(図16,図20を参照)。この形態に代えて、直径を適用する構成としてもよい。径比率Rr2,Rr3にすれば同値になるので、実施形態3,4と同様の作用効果が得られる。
上述した実施形態1〜5では、インナーロータ型の回転電機1に適用する構成とした(図1を参照)。この形態に代えて、アウターロータ型の回転電機に適用する構成としてもよい。ステータ30とロータ20の配置が相違するに過ぎず、外側と内側を読み替えればよいので、実施形態3〜5と同様の作用効果が得られる。