JP2017038230A - 収音マイクロホンシステム及びその収音装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】収音性能を改善し効率よく指向性合成を行うマルチチャンネル用の収音マイクロホンシステム及びその収音装置を提供する。【解決手段】本発明の収音マイクロホンシステムは、収音装置1及び収音信号処理装置10を備える。収音装置1は、収音空間を分割する仕切り空間Hnごとにその開口角以上の指向特性幅を持つ広指向性で高域用及び低域用の主マイクロホン素子MHn,MLnが設置される。収音信号処理装置10は、高域用の主マイクロホン素子MHnの出力について仕切り空間Hnで定まる遮断周波数に相当する所定の周波数以上の帯域を抽出するハイパスフィルタ201及び低域用の主マイクロホン素子MLnの出力について該所定の周波数以下の帯域を抽出するローパスフィルタ202と、抽出した各出力成分を合成し仕切り空間Hnごとの広帯域及び狭指向性の収音出力を生成する指向性合成フィルタ処理部30,40‐nとを有する。【選択図】図3

Description

本発明は、スーパーハイビジョン用の22.2ch音響システムなど、スピーカを3次元的に配置する音響システムにおける収音技術として、特に、マルチチャンネル用の収音マイクロホンシステム及びその収音装置に関する。
スピーカを3次元的に配置する音響システムでは、スピーカの方向に応じた音を収録する必要がある。このため、ライブで音を伝送する必要がある場合は、再生するスピーカに対応した数のマイクロホンを収音する音場内に設置する必要がある。また、ライブ伝送を行う必要がない場合は、収録する音源を分離して収録し、さらにそれらの収録した音源ごとに対しオフラインのミキシング処理で任意の場所に位置させて再生音を合成することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、再生するスピーカに対応した数のマイクロホンを設置する場合は、各スピーカから再生する音の分離を確保するため、空間内で互いに十分な距離を離して多数のマイクロホンを設置する必要がある。この場合、マイクロホンシステムが空間内の広い範囲に分布し、実時間性や機動性に問題が多く、マイクロホンの設置位置に制約の多い番組中継で用いることは極めて困難である。
このため、設置する場所が限られる場合には、空間内の1点に、再生するスピーカの方向に対応したマイクロホンを設置することが考えられる。この場合は、各方向に指向軸を向け、かつ指向性ビームの幅が隣接するチャンネルと重ならない個別のマイクロホンで収音する必要がある。このとき、22.2ch音響システムなど、チャンネル数が多いシステムではチャンネル間の見込み角が小さくなるため、極めて指向性の高いマイクロホンを使用することが必要になる。例えばショットガンマイクロホンのような狭指向性マイクロホンを用いる場合、周波数によって指向特性が大きく異なり、収録する音の周波数特性が乱れ、方向によって音質が変化するという問題が生じる。
そこで、特許文献1に開示されるような複数のマイクロホンを用いるマイクロホンアレイ方式を利用して、マイクロホンを球面上に配置するなど立体的に多数配置して信号処理を行い、指向性合成を行うことが考えられる。この場合、十分な指向性を得るためには波長と同等のオーダーの大きさのマイクロホンが必要となる一方、高い周波数までカバーする場合にはマイクロホン間隔を十分に小さくする必要がある。このため、マイクロホンアレイ方式で広い周波数帯域にわたり良好な指向性を得るためには、十分な大きさのアレイであり、かつマイクロホン素子間隔を小さくする必要があるため、結果的に非常に多数のマイクロホンを要する。
一方、音波が入射する開口を有すると共に遮音プレートによりそれぞれ分離されている複数の遮音空間を形成する遮音構造体と、この遮音構造体の遮音空間内にそれぞれ配置され、開口を経て入射する音を受音する複数のマイクロホンとを備える収音装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
即ち、特許文献2の技法では、収音空間内の1点(以下、「収音点」と称する)を中心に所定の収音方向を中心軸とする仕切り板で区切られた空間(以下、「仕切り空間」と称する)ごとにマイクロホン素子を設置する方式となっており、立体的な音場においても再生するスピーカの方向に対応したマイクロホン素子の設置個数で実現することが可能である。
この特許文献2に開示される技法では、遮音プレート(即ち、仕切り板)の効果により指向性収音を行うことが可能であるが、各マイクロホン素子の出力を用いて如何にして指向性合成を行えば全体域で狭指向特性を得ることができるかについて開示されていない。ただし、この点については、再生するスピーカの方向に対応した仕切り空間ごとに1つの主マイクロホン素子(広帯域及び広指向性のマイクロホン素子)を設置し、所定の周波数以上では仕切り板の効果により指向性収音を行うとともに、その所定の周波数以下では複数の主マイクロホン素子の出力を基に指向性合成を行い、全体域で狭指向特性を得る方式が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
特に、特許文献3に開示される収音マイクロホンシステムは、単に仕切り板を用いて収音するだけの方式と比較して、指向性合成のための低域側での指向特性を改善する効果がある。また、特許文献3には、この収音マイクロホンシステムを更に改善するため、仕切り空間ごとの主マイクロホン素子だけでは指向性の合成に十分な数とならない場合を考慮して、1つ以上の補助マイクロホン素子を設置する構成も開示されている。
特開2009−152949号公報 特許第5175239号明細書 特開2012−253754号公報
前述した特許文献3に開示される収音マイクロホンシステムであれば、再生するスピーカの方向に対応した仕切り空間ごとに1つの主マイクロホン素子(広帯域及び広指向性のマイクロホン素子)を設置し、収録する音の周波数特性や音質を安定化させ、全体域で狭指向特性を得ることができる。また、1つ以上の補助マイクロホン素子を加えて設置することで、その性能を向上させることができる。
したがって、特許文献3による収音マイクロホンシステムでは、再生するスピーカの方向に対応した仕切り空間ごとに1つの主マイクロホン素子(広帯域及び広指向性のマイクロホン素子)を設置することで、或る所定の周波数以上の帯域では仕切り板により指向性を確保し、所定の周波数以下の帯域で仕切り板による狭指向性効果と、指向性合成の信号処理とを組み合わせることにより、マルチチャンネルの再生音を収音する仕組みとなっている。
しかしながら、指向性合成を行う信号処理は、マイクロホン素子の出力間の差分をとる演算も含まれており、このため指向性合成の出力は増幅して出力するのが一般的である。このため、マイクロホン素子の本体が発生する内部雑音は当該差分をとってもレベルが増大してしまい、結果的に指向性合成を行う信号処理の出力は信号対雑音比(S/N比)が劣化するという問題がある。特に、狭指向性を得るための指向性合成を行う信号処理ではこの傾向が顕著である。
本発明の目的は、上述の問題に鑑みて、収音性能を改善し効率よく指向性合成を行うマルチチャンネル用の収音マイクロホンシステム及びその収音装置を提供することにある。
上記S/N比の劣化を避けて収音性能を改善し、効率よく指向性合成を行うため、本発明による一態様の収音マイクロホンシステム及びその収音装置では、前述した特許文献3に開示されるような広帯域及び広指向性のマイクロホン素子を主マイクロホン素子として用いるのではなく、狭帯域及び広指向性のマイクロホンを主マイクロホン素子として、仕切り板の大きさで定まる遮断周波数を境に、周波数帯域別に設置する構成とする。特に、当該遮断周波数以下の周波数帯域用の主マイクロホンに対しては、主マイクロホン素子本体の発生する雑音の極めて低いマイクロホン素子を用いるのが好適である。一般に主マイクロホン素子として利用可能なコンデンサマイクロホンの感度は、使用する上限周波数とトレードオフの関係にあり、或る特定の周波数を周波数特性の上限とするマイクロホン素子を用いれば、極めて感度が高く、相対的に雑音の低いマイクロホン素子を実現することができる。
また、本発明による一態様の収音マイクロホンシステム及びその収音装置において、当該遮断周波数以下の周波数帯域の音波を受音する補助マイクロホン素子を用いる構成とすることができる。この場合、補助マイクロホン素子は、当該遮断周波数を有効感度帯域の上限とするきわめて低雑音のコンデンサマイクロホンとするのが好適である。
また、本発明による別態様の収音マイクロホンシステム及びその収音装置として、仕切り板を用いることなく、狭帯域及び狭指向性の主マイクロホン素子を特定の周波数を境に、周波数帯域別に複数設ける構成とする。また、本発明による第2態様の収音マイクロホンシステム及びその収音装置においても、当該特定の周波数以下の周波数帯域の音波を受音する補助マイクロホン素子を用いる構成とすることができる。この場合、仕切り板を利用する第1態様と比較して、その仕切り空間に対応する仕切り角で、不感域を極力低減するよう補う程度に主マイクロホン素子の個数を増大させることになるが、当該特定の周波数の設定が主マイクロホン素子の性能で一意に決定されるため、その設定が容易となり、かつ周波数帯域別に複数設ける構成とすることで、上記S/N比の劣化を避けて収音性能を改善し、効率よく指向性合成を行うことが可能となる。
即ち、本発明による第1態様の収音マイクロホンシステムは、マルチチャンネル用の収音マイクロホンシステムであって、収音空間内の収音点を中心に所定の収音方向を中心軸とする仕切り板で区切られた仕切り空間によって収音空間が分割され、仕切り空間ごとに当該仕切り空間の開口角以上の指向特性幅を持つ広指向性で高域用及び低域用の主マイクロホン素子が設置された収音装置と、各主マイクロホン素子の出力について収音方向を検出して合成する収音信号処理装置とを備え、前記収音信号処理装置は、各主マイクロホン素子の出力について当該仕切り空間で定まる遮断周波数に相当する所定の周波数で帯域抽出を行い、当該所定の周波数以上の帯域の各高域用の主マイクロホン素子の出力成分をそれぞれの所定の収音方向の出力成分として抽出するハイパスフィルタと、当該所定の周波数以下の帯域の各低域用の主マイクロホン素子の出力成分を抽出するローパスフィルタと、前記ローパスフィルタで抽出される各出力成分から前記所定の収音方向ごとの出力成分を検出し、前記ハイパスフィルタで抽出した対応する高域用の主マイクロホン素子の出力成分と合成して、仕切り空間ごとの広帯域及び狭指向性の収音出力を生成する指向性合成フィルタ処理部と、を有することを特徴とする。
更に、本発明による第2態様の収音マイクロホンシステムは、マルチチャンネル用の収音マイクロホンシステムであって、収音空間内の収音点を中心に所定の収音方向を中心軸とする仕切り板で区切られた仕切り空間によって収音空間が分割され、仕切り空間ごとに当該仕切り空間の開口角以上の指向特性幅を持つ広指向性で高域用及び低域用の主マイクロホン素子が設置され、さらに、1つ以上の補助マイクロホン素子が設置された収音装置と、前記主マイクロホン素子及び前記補助マイクロホン素子の各々の出力について収音方向を検出して合成する収音信号処理装置を備え、前記収音信号処理装置は、各主マイクロホン素子の出力について当該仕切り空間で定まる遮断周波数に相当する所定の周波数で帯域抽出を行い、当該所定の周波数以上の帯域の高域用の主マイクロホン素子の出力成分をそれぞれの所定の収音方向の出力成分として抽出するハイパスフィルタと、当該所定の周波数以下の帯域の低域用の主マイクロホン素子及び補助マイクロホン素子の出力成分をそれぞれ抽出するローパスフィルタと、前記ローパスフィルタで抽出される各出力成分から前記所定の収音方向ごとの出力成分を検出し、前記ハイパスフィルタで抽出した対応する高域用の主マイクロホン素子の出力成分と合成して、仕切り空間ごとの広帯域及び狭指向性の収音出力を生成する指向性合成フィルタ処理部と、を有することを特徴とする。
また、本発明による第1又は第2態様の収音マイクロホンシステムにおいて、前記仕切り空間は、マルチチャンネルのチャンネル数分で、当該収音空間が分割されていることを特徴とする。
更に、本発明による第3態様の収音マイクロホンシステムは、マルチチャンネル用の収音マイクロホンシステムであって、収音空間内の収音点を中心に所定の収音方向を中心軸とする仕切り角によって収音空間が分割され、仕切り角ごとに所定の収音方向を主軸に持ち当該仕切り角以内の指向特性幅を持つ狭指向性の高域用の主マイクロホン素子及び所定の収音方向を主軸に持つ狭指向性の低域用の主マイクロホン素子がそれぞれ複数設置された収音装置と、各主マイクロホン素子の出力について収音方向を検出して合成する収音信号処理装置とを備え、前記収音信号処理装置は、各主マイクロホン素子の出力について所定の周波数で帯域抽出を行い、当該所定の周波数以上の帯域の各高域用の主マイクロホン素子の出力成分をそれぞれの所定の収音方向の出力成分として抽出するハイパスフィルタと、当該所定の周波数以下の帯域の各低域用の主マイクロホン素子の出力成分を抽出するローパスフィルタと、前記ローパスフィルタで抽出される各出力成分から前記所定の収音方向ごとの出力成分を検出し、前記ハイパスフィルタで抽出した対応する高域用の主マイクロホン素子の出力成分と合成して、仕切り角ごとの広帯域及び狭指向性の収音出力を生成する指向性合成フィルタ処理部と、を有することを特徴とする。
更に、本発明による第4態様の収音マイクロホンシステムは、マルチチャンネル用の収音マイクロホンシステムであって、収音空間内の収音点を中心に所定の収音方向を中心軸とする仕切り角によって収音空間が分割され、仕切り角ごとに所定の収音方向を主軸に持ち当該仕切り角以内の指向特性幅を持つ狭指向性の高域用の主マイクロホン素子及び所定の収音方向を主軸に持つ狭指向性の低域用の主マイクロホン素子がそれぞれ複数設置され、さらに、1つ以上の補助マイクロホン素子が設置された収音装置と、前記主マイクロホン素子及び前記補助マイクロホン素子の各々の出力について収音方向を検出して合成する収音信号処理装置を備え、前記収音信号処理装置は、各主マイクロホン素子の出力について所定の周波数で帯域抽出を行い、当該所定の周波数以上の帯域の高域用の主マイクロホン素子の出力成分をそれぞれの所定の収音方向の出力成分として抽出するハイパスフィルタと、当該所定の周波数以下の帯域の低域用の主マイクロホン素子及び補助マイクロホン素子の出力成分をそれぞれ抽出するローパスフィルタと、前記ローパスフィルタで抽出される各出力成分から前記所定の収音方向ごとの出力成分を検出し、前記ハイパスフィルタで抽出した対応する高域用の主マイクロホン素子の出力成分と合成して、仕切り角ごとの広帯域及び狭指向性の収音出力を生成する指向性合成フィルタ処理部と、を有することを特徴とする。
更に、本発明による第1態様の収音装置は、マルチチャンネル用の収音装置であって、収音空間内の収音点を中心に所定の収音方向を中心軸とする仕切り板で区切られた仕切り空間によって収音空間が分割され、仕切り空間ごとに当該仕切り空間の開口角以上の指向特性幅を持つ広指向性で高域用及び低域用の主マイクロホン素子が設置されていることを特徴とする。
更に、本発明による第2態様の収音装置は、マルチチャンネル用の収音装置であって、収音空間内の収音点を中心に所定の収音方向を中心軸とする仕切り板で区切られた仕切り空間によって収音空間が分割され、仕切り空間ごとに当該仕切り空間の開口角以上の指向特性幅を持つ広指向性で高域用及び低域用の主マイクロホン素子が設置され、さらに、1つ以上の補助マイクロホン素子が設置されていることを特徴とする。
更に、本発明による第3態様の収音装置は、マルチチャンネル用の収音装置であって、収音空間内の収音点を中心に所定の収音方向を中心軸とする仕切り角によって収音空間が分割され、仕切り角ごとに所定の収音方向を主軸に持ち当該仕切り角以内の指向特性幅を持つ狭指向性の高域用の主マイクロホン素子及び所定の収音方向を主軸に持つ狭指向性の低域用の主マイクロホン素子がそれぞれ複数設置されていることを特徴とする。
更に、本発明による第4態様の収音装置は、マルチチャンネル用の収音装置であって、収音空間内の収音点を中心に所定の収音方向を中心軸とする仕切り角によって収音空間が分割され、仕切り角ごとに所定の収音方向を主軸に持ち当該仕切り角以内の指向特性幅を持つ狭指向性の高域用の主マイクロホン素子及び所定の収音方向を主軸に持つ狭指向性の低域用の主マイクロホン素子がそれぞれ複数設置され、さらに、1つ以上の補助マイクロホン素子が設置されていることを特徴とする。
本発明によれば、収音性能を改善し、効率よく指向性合成を行うマルチチャンネル用の収音マイクロホンシステム及びその収音装置を提供することができ、特に、スピーカを3次元的に配置する音響システムにおいて、指向性合成による信号処理によるS/N比の劣化を伴わずに、広い周波数帯域でほぼ一定の空間分割した指向性を得ることが可能となる。
22.2チャンネル音響空間の概要を示す図である。 本発明による第1実施形態の収音マイクロホンシステムにおける仕切り空間を設けた主マイクロホン素子による収音装置の構成例を示す図である。 本発明による第1実施形態の収音マイクロホンシステムにおける収音信号処理装置のブロック図である。 本発明による第1実施形態の収音マイクロホンシステムにおける、16チャンネルの再生信号を収音する収音信号処理装置の演算処理ブロック図である。 本発明による第1実施形態の収音マイクロホンシステムにおける、半径r=20cmの仕切り板で16分割された仕切り空間で主マイクロホン素子の出力を実測した周波数別の指向特性を示す図である。 本発明による第1実施形態の収音マイクロホンシステムにおける、半径r=20cmの仕切り板で16分割された仕切り空間で主マイクロホン素子の出力を実測した周波数別の指向係数を示す図である。 本発明による第2実施形態の収音マイクロホンシステムにおける仕切り空間を設けた主マイクロホン素子と補助マイクロホン素子による収音装置の構成例を示す図である。 本発明による第2実施形態の収音マイクロホンシステムにおける収音信号処理装置のブロック図である。 本発明による第2実施形態の収音マイクロホンシステムにおける、16チャンネルの再生信号を収音する収音信号処理装置の演算処理ブロック図である。 広帯域コンデンサマイクロホンの周波数対感度特性と、高域用コンデンサマイクロホン及び低域用コンデンサマイクロホンの周波数対感度特性とを概念的に示して比較する図である。 (a), (b)は、それぞれ本発明による第3実施形態の収音マイクロホンシステムにおける主マイクロホン素子と補助マイクロホン素子による収音装置の構成例と、その主マイクロホン素子の狭指向性を表わす指向特性の例を概念的に示す図である。
以下、本発明による各実施形態の収音マイクロホンシステムについて順に説明する。まず、第1実施形態の収音マイクロホンシステムについて説明する。
〔第1実施形態〕
まず、本実施形態の収音マイクロホンシステムの収音空間として、22.2チャンネル音響再生空間に応用した例について説明する。図1は、22.2チャンネル音響空間の概要を示す図である。22.2チャンネル音響再生空間は、水平面内の中間層における8チャンネル(FL, FC, FR, SiR, BR, BC, BL, SiL)のスピーカを基本としており、中間層のチャンネルと同じ水平面内の配置で上層に8チャンネル(TpL, TpC, TpR, TpSiR, TpBR, TpBC, TpBL, TpSiL)のスピーカを設置し、さらに上層中央では、1チャンネルのTpCチャンネルのスピーカを設置している。この他に中間層として画面内定位補強用にFLc,FRc、下層として画面下部定位補強用にBtFL, BtFC, BtFRの3チャンネルのスピーカ、さらに低域再生(Low Frequency Effectとも称される)用にLFE1, LFE2の2チャンネルのスピーカを保有している。
本実施形態では、図1に示すスピーカ配置のうち、ベースとなるのは水平面内と上層部の8チャンネルであることに着目し、水平面内8チャンネルと上層8チャンネルの音を収音することを想定して、上層8チャンネルをCH1,CH2,・・・CH8とし、下層8チャンネルをCH9,CH10,・・・,CH16として、説明する。
一般に、22.2チャンネル音響再生空間のように、マルチチャンネル音響再生システムでは、原音場のある1点(図1に示す収音点A)に到来する各方向の音を、再生音場の対応する方向のスピーカから再生することを意図することが多い。このため、再生音場の各スピーカの方向を主軸とする指向性マイクロホンを原音場に設置し、かつ各マイクロホンの指向性がお互いに重複しないような狭指向性で収音することが望ましいが、前述したように、ショットガンマイクロホンのような狭指向性マイクロホンを多数設置するのは有効ではない。
(収音装置)
そこで、本実施形態では、収音空間内の収音点を中心に各チャンネルの収音方向を中心軸とする仕切り板で区切られた仕切り空間Hnによって収音空間が分割され、仕切り空間Hnごとに当該仕切り空間Hnの開口角以上の指向特性幅(指向性ビームの幅)を持つ広指向性で、狭帯域の主マイクロホン素子が帯域別に設置された収音装置1を利用する。例えば、図2に示す収音装置1では、半径rの扇状の仕切り板100‐1,100‐2,100‐3で、各チャンネル方向の各チャンネルの収音方向を中心軸とする仕切り空間H1,H2,・・・,H16を設け、各仕切り空間Hnには、高域用の狭帯域及び広指向性の主マイクロホン素子MHnと、低域用の狭帯域及び広指向性の主マイクロホン素子MLnが設けられる(nは、1〜16のチャンネル番号に相当する)。例えば仕切り空間H2には、高域用の狭帯域及び広指向性の主マイクロホン素子MH2と、低域用の狭帯域及び広指向性の主マイクロホン素子ML2が設けられる。尚、本実施形態では、仕切り板としてアクリル製のものを採用し、表面に反射音防止材を貼付したものを使用したが、後述する遮断周波数を規定できるものであれば如何なる材料を用いてもよい。以下の説明では、各仕切り空間H1,H2,・・・,H16には、それぞれ高域用の主マイクロホン素子MH1,MH2,・・・,MH16、及び低域用の主マイクロホン素子ML1,ML2,・・・,ML16が設けられているものとする。即ち、仕切り空間Hnは、マルチチャンネルのチャンネル数分で、当該収音空間が分割されている。各仕切り空間の開口方向は、想定する再生システムのスピーカ配置に対応した方向を向いているものとする。
また、高域用の主マイクロホン素子MHnは、その有効感度領域を可聴範囲(20Hz〜20KHz)のうち仕切り空間Hnによって定まる遮断周波数fc(例えば4kHz)以上の帯域内とした高域用コンデンサマイクロホンとするのが好適であり、同様に、低域用の主マイクロホン素子MHnは、その有効感度領域を可聴範囲(20Hz〜20KHz)のうち当該遮断周波数fc(例えば4kHz)以下の帯域内とした低域用コンデンサマイクロホンとするのが好適である。
本実施形態の収音マイクロホンシステムは、収音装置1と、この収音装置1による仕切り空間H1,H2,・・・,H16ごとに設置された高域用の主マイクロホン素子MH1,MH2,・・・,MH16、及び低域用の主マイクロホン素子ML1,ML2,・・・,ML16からの出力を入力し、各マイクロホン素子の出力について収音方向を検出して合成することにより、仕切り空間H1,H2,・・・,H16ごとの広帯域及び狭指向性の収音出力を生成する収音信号処理装置10とを備えている。
(収音信号処理装置)
図3に、本実施形態の収音マイクロホンシステムにおける収音信号処理装置10のブロック図を示している。収音信号処理装置10は、各高域用の主マイクロホン素子MHn及び各低域用の主マイクロホン素子MLn(本例では、高域用の主マイクロホン素子MH1,MH2,・・・,MH16及び低域用の主マイクロホン素子ML1,ML2,・・・,ML16)の出力について当該仕切り空間Hn(本例では、H1,H2,・・・,H16)で定まる遮断周波数に相当する所定の周波数で帯域抽出を行うnチャンネル分(本例では16チャンネル分)のフィルタ部20‐nが設けられ、各フィルタ部20‐nは、各主マイクロホン素子MHnの出力成分から当該所定の周波数以上の帯域を抽出するハイパスフィルタ(HPF)201と、各低域用の主マイクロホン素子Mnの出力成分から当該所定の周波数以下の帯域を抽出するローパスフィルタ(LPF)202を有している。
さらに、収音信号処理装置10は、方向検出部30と、合成部40‐nとを有している。方向検出部30は、ローパスフィルタ202で抽出される各低域用の主マイクロホン素子MLnの出力を入力して所定の収音方向ごとの出力成分を検出する。合成部40‐nは、方向検出部30から出力される各ローパスフィルタ202で抽出される所定の収音方向ごとの出力成分と、ハイパスフィルタ201で抽出した各高域用の主マイクロホン素子MHnの出力成分と合成して、仕切り空間Hnごとの広帯域及び狭指向性の収音出力を各チャンネルの音響信号として生成して出力する。後述するように、方向検出部30と合成部40‐nは、指向性合成フィルタ処理部として機能する。
図4は、16チャンネルの再生信号を収音する収音信号処理装置10の演算処理ブロック図である。ここで、仕切り空間の遮断周波数に対応する周波数fcは、仕切り板を設けて形成した仕切り空間ごとに実測して求めることができる。半径r=30cmの仕切り板で16分割された仕切り空間で主マイクロホン素子の出力を実測した周波数別の指向特性及び指向係数(=主軸方向のエネルギー/全方向のエネルギーの平均値)を、それぞれ図5及び図6に示している。例えば、図6に示すように、仕切り空間における指向係数(=主軸方向のエネルギー/全方向のエネルギーの平均値)の周波数特性を実測により求めることができ、つまり、仕切り板で区切られた空間の遮断周波数以上の高い周波数では所定の指向性が得られる反面、遮断周波数より低い周波数では指向性が劣化することを確認できる。図6の実測した例では、fc=4kHz以上の周波数でなければ指向性を判別することができないことが分かり、例えば、fc=4kHzとして設定することができる。仕切り板で構成される仕切り空間が、全方向で同じ空間形状となるように形成した場合には、各仕切り空間で求めた遮断周波数はほぼ一定となるため、対応する周波数を平均することにより、各チャンネルに対して同一構成のハイパスフィルタ201とローパスフィルタ202とすることができる。図4では、各チャンネルの高域用の主マイクロホン素子MHnを入力とするハイパスフィルタ201の出力成分SH,SH,・・・,SH16と、低域用の主マイクロホン素子MLnを入力とするローパスフィルタ202の出力成分SL,SL,・・・,SL16により収音空間に対して空間分離して受音した高域及び低域の帯域成分を抽出する例が示されている。
つまり、仕切り空間で収音することにより、周波数fcよりも高い帯域の成分SH,SH,・・・,SH16は、仕切り板で区切られた空間の効果により、仕切り板で区切られた空間の開口に相当する空間に含まれる方向の音に対して感度が高く、それ以外の方向の音に対する感度が低くなることから、仕切り板で区切られた空間の開口で定まる指向性を有するようになる(図5参照)。
そこで、本実施形態では、周波数fcよりも高い帯域の成分SH,SH,・・・,SH16については、高域用の主マイクロホン素子MHnの出力を入力とするハイパスフィルタの出力をそのままCH1,CH2,・・・,CH16用の高域成分として用いる。一方、周波数fcよりも低い帯域の成分SL,SL,・・・,SL16については、低域用の主マイクロホン素子MLnの出力を入力とするローパスフィルタの出力を用いるが、仕切り板で区切られた空間の効果が小さく、仕切り板で区切られた空間のみの効果では指向性が現れない。そこで、CH1の出力としてSL,SL,・・・,SL16のすべての低域用の主マイクロホン素子MLnの出力成分を利用して指向性合成フィルタ処理を行う。
指向性合成フィルタ処理には、様々な技法があるが、1例として、Farinaによる方法(A. Farina et al, ‘A Spherical Microphone Array for Synthesizing Virtual Directive Microphones in Live Broadcasting and in Post Production’, AES 40th International Conference, 2010)を用いて説明する。チャンネルCHi(i=1,2,・・・,16)の所望の指向特性を、離散的な方向R(j=1,2,・・・,N)の音源からの伝達関数Dij(j=1,2,・・・,N)の集合によって表す。一方、この離散的な方向R(=1,2,・・・,n)の音源からの音は、各仕切り板で区切られた空間の主マイクロホン素子Mk(k=1,2,・・・,16)における伝達関数Cjkを介して到達することになり、各主マイクロホン素子は所望チャンネルの出力ごとに、伝達関数Hik(i=1,2,・・・,16、k=1,2,・・・,16)を有する指向性合成フィルタ処理を行うことができる。したがって、チャンネルCHiの出力は、すべての主マイクロホン素子の出力にフィルタ処理を施したものの合算として得られる。このとき、方向Rの音源によるCHiの出力Sijは、式(1)のように表される。
これがすべてのi及びjに対して所望の伝達関数Dijと等しくなるよう、フィルタHikを設計すればよい。すなわち、すべてのi及びjに対して式(2)が満たされればよい。
ここで、Dijは16×N通りの組み合わせがある一方、Hikは16×16通りが存在する(図4に例示する、方向検出部30の一部として機能する伝達関数演算部30‐11,30‐12,30‐21,30‐22,30‐161,30‐162, 30‐216, 30‐1616参照)。十分な方向分解能を得るためには、一般にNは16以上であることが望ましいことから、未知数Hikを求める問題は条件が未知数よりも多い状態となるため、最小二乗法によりHikを定めればよい。
求まったHikは、所望の指向特性を実現するためのフィルタとなる。よって、CHiの出力Tは、各主マイクロホン素子Mkの出力をUとするとき、式(3)で得られる。
ここで、Uは低域用マイクロホンの出力であることから、式(3)の左辺Tが低域成分用の信号SLC(i=1,2,・・・,16)として得られる(図4に例示する、方向検出部30の一部として機能する加算部30‐d1,30‐d2,・・・, 30‐d16の出力を参照)。
最後に、上記によって求められた高域成分用の信号SH(i=1,2,・・・,16)と低域成分用の信号SLC(i=1,2,・・・,16)を合算して、全帯域の信号を得ることができる(図3及び図4に例示する合成部40‐nの出力を参照)。
このように、本実施形態の収音マイクロホンシステムでは、所望方向の指向性の実現に「仕切り板」を用いて空間分離するようにし、仕切り板で区切られた空間内にそれぞれ帯域別に設けられた狭帯域及び広指向性の主マイクロホン素子の出力に対して所定の周波数で帯域制限を行い、当該所定の周波数以上の帯域については、主マイクロホン素子の出力成分をそのまま所望方向の成分とし、当該所定の周波数未満の帯域では所望方向以外の主マイクロホン素子の出力成分を用いて合成するようにした。このため、広帯域及び狭指向性でマルチチャンネルの再生音が高精度で収音可能となる。さらに、低域用の主マイクロホン素子MLnを用いて帯域制限することにより雑音を軽減し、指向性合成処理による雑音の増加を低く抑えることが可能となる。
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態の収音マイクロホンシステムについて説明する。第1実施形態の収音マイクロホンシステムのように仕切り空間ごとの主マイクロホン素子だけでは指向性の合成に十分な数とならない場合を考慮し更に改善する方式として、第2実施形態の収音マイクロホンシステムでは、複数の補助マイクロホン素子を設置する収音装置1を用いる方式とした。尚、第1実施形態と同様な構成要素には、同一の参照番号を付して説明する。
(収音装置)
本実施形態の収音装置1においても、第1実施形態と同様に、収音空間内の収音点を中心に各チャンネルの収音方向を中心軸とする仕切り板で区切られた仕切り空間Hnによって収音空間が分割され、仕切り空間Hnごとに当該仕切り空間Hnの開口角以上の指向特性幅(指向性ビームの幅)を持つ広指向性で、狭帯域の主マイクロホン素子が帯域別に設置されている。例えば、図7に示す収音装置1では、半径rの扇状の仕切り板100‐1,100‐2,100‐3で、各チャンネル方向の各チャンネルの収音方向を中心軸とする仕切り空間H1,H2,・・・,H16を設け、各仕切り空間Hnには、高域用の狭帯域及び広指向性の主マイクロホン素子MHnと、低域用の狭帯域及び広指向性の主マイクロホン素子MLnが設けられる(nは、1〜16のチャンネル番号に相当する)。例えば仕切り空間H2には、高域用の狭帯域及び広指向性の主マイクロホン素子MH2と、低域用の狭帯域及び広指向性の主マイクロホン素子ML2が設けられる。そして、第1実施形態と同様に、本実施形態でも、仕切り板としてアクリル製のものを採用し、表面に反射音防止材を貼付したものを使用することができるが、前述した遮断周波数fcを規定できるものであれば如何なる材料を用いてもよい。以下の説明では、各仕切り空間H1,H2,・・・,H16には、それぞれ高域用の主マイクロホン素子MH1,MH2,・・・,MH16、及び低域用の主マイクロホン素子ML1,ML2,・・・,ML16が設けられているものとする。即ち、仕切り空間Hnは、マルチチャンネルのチャンネル数分で、当該収音空間が分割されている。各仕切り空間の開口方向は、想定する再生システムのスピーカ配置に対応した方向を向いているものとする。ただし、図7に示すように、第2実施形態の収音マイクロホンシステムにおける収音装置1では、さらに、主マイクロホン素子MHn,MLnとは別の場所に複数の補助マイクロホン素子Pm(以下に説明する例では、補助マイクロホン素子P1,P2,・・・P20)が設置されている。
補助マイクロホン素子Pmの仕切り板上への設置位置に関しては、収音空間の環境によって適宜調整する。例えば、16チャンネル分の仕切り空間H1,H2,・・・,H16が設けられている場合、図7に示すように、収音空間における水平面内の中間層に位置するそれぞれの仕切り板について、フロント中央側(FC側)に3個、フロント左右側(FL,FR側)に2個ずつ、バック中央側(BC側)に3個、バック左右側(BL,BR側)に2個ずつ、右サイド側(SiR側)に3個、左サイド側(SiL側)に3個、等間隔に配置することで、20個の補助マイクロホン素子Pmを設置することができる。尚、仕切り空間を形成するすべての仕切り板上に1つ以上の補助マイクロホン素子Pmを設置するように構成してもよいし、一部の仕切り板上にのみ1つ以上の補助マイクロホン素子Pmを設置するように構成してもよい。また、このような補助マイクロホン素子Pmの設置は仕切り板上でなくともよい。また、図7に示す例では、仕切り板の収音方向の開口側端部にて、補助マイクロホン素子Pmを設置する例を示しているが、これは、補助マイクロホン素子Pmによって各仕切り空間における分離性能を高めるようにするためである。したがって、補助マイクロホン素子Pmによって各仕切り空間における分離機能を保持する限り、必ずしも仕切り板の収音方向の開口側端部に設ける必要はなく、仕切り板上の任意の位置に設置穴を設けて補助マイクロホン素子Pmを設置するように構成することもできる。以上の理由から、収音空間の環境によって適宜調整するのが容易となるように、補助マイクロホン素子Pmの周波数特性は、狭帯域(4KHz以下がほぼフラット)とするのが好適である。また、補助マイクロホン素子Pmの指向特性に関して、当該仕切り空間Hnの開口角以上の指向特性幅の広指向性のコンデンサマイクロホンを用いる場合には、当該仕切り空間Hn毎の設置数を少なくすることができるが、当該分離性能を細かく調整するためには、当該仕切り空間Hnの開口角以下の指向特性幅の狭指向性のコンデンサマイクロホンを用いて、当該仕切り空間Hn毎の設置数を複数とすればよい。
本実施形態の収音マイクロホンシステムは、図7に示す収音装置1と、この収音装置1による仕切り空間H1,H2,・・・,H16ごとに設置された高域用の主マイクロホン素子MH1,MH2,・・・,MH16からの出力及び低域用の主マイクロホン素子ML1,ML2,・・・,ML16からの出力、及び、各仕切り空間を形成するための複数の仕切り板のうちの1つ以上の仕切り板上に設置された1つ以上の補助マイクロホン素子P1,P2,・・・,P20からの出力を入力し、高域用及び低域用の主マイクロホン素子MH1,MH2,・・・,MH16,ML1,ML2,・・・,ML16及び補助マイクロホン素子P1,P2,・・・,P20の各出力について収音方向を検出して合成することにより、仕切り空間H1,H2,・・・,H16ごとの広帯域及び狭指向性の収音出力を生成する収音信号処理装置10とを備えている。
(収音信号処理装置)
図8に、本実施形態の収音マイクロホンシステムにおける収音信号処理装置10のブロック図を示している。収音信号処理装置10は、各高域用の主マイクロホン素子MHn(本例では、主マイクロホン素子MH1,MH2,・・・,MH16及び低域用の主マイクロホン素子ML1,ML2,・・・,ML16)の出力について当該仕切り空間Hn(本例では、H1,H2,・・・,H16)で定まる遮断周波数に相当する所定の周波数で帯域抽出を行うnチャンネル分(本例では16チャンネル分)のフィルタ部20‐nと、補助マイクロホン素子Pmの出力について当該仕切り空間Hnで定まる遮断周波数に相当する所定の周波数で帯域制限を行うmチャンネル分(本例では20チャンネル分)のフィルタ部21‐mとが設けられている。各フィルタ部20‐n(即ち、第1フィルタ部〜第nフィルタ部)は、各主マイクロホン素子MHnの出力成分から当該所定の周波数以上の帯域の主マイクロホン素子Mnの出力成分をそれぞれの所定の収音方向の出力成分として抽出するハイパスフィルタ(HPF)201と、各低域用の主マイクロホン素子Mnの出力成分から当該所定の周波数以下の帯域の主マイクロホン素子Mnの出力成分を抽出するローパスフィルタ(LPF)202とを有している。また、各フィルタ部21‐m(即ち、第n+1フィルタ部〜第n+mフィルタ部)は、当該所定の周波数以下の帯域の補助マイクロホン素子Pmの出力成分を抽出するローパスフィルタ(LPF)203を有している。
さらに、収音信号処理装置10は、方向検出部30と、合成部40‐nとを有している。方向検出部30は、ローパスフィルタ202,203で抽出される低域用の主マイクロホン素子MLnの出力成分及び補助マイクロホン素子Pmの出力成分を入力して所定の収音方向ごとの出力成分を検出する。合成部40‐nは、方向検出部30から出力される各ローパスフィルタ202,203で抽出される所定の収音方向ごとの出力成分と、ハイパスフィルタ201で抽出した各高域用の主マイクロホン素子MHnの出力成分と合成して、仕切り空間Hnごとの広帯域及び狭指向性の収音出力を各チャンネルの音響信号として生成して出力する。第1実施形態と同様に、方向検出部30と合成部40‐nは、指向性合成フィルタ処理部として機能する。
図9は、第2実施形態における16チャンネルの再生信号を収音する収音信号処理装置10の演算処理ブロック図である。図9に示す例は、高域用の主マイクロホン素子MH1,MH2,・・・,MH16の各出力信号を入力とするハイパスフィルタ201の出力成分SH,SH,・・・,SH16と、低域用の主マイクロホン素子ML1,ML2,・・・,ML16の各出力信号を入力とするローパスフィルタ202の出力成分SL,SL,・・・,SH16と、補助マイクロホン素子P1,P2,・・・,P20の出力信号が、ローパスフィルタ203によって出力成分SL17,SL18,・・・,SL36として出力される例である。ここで、仕切り空間の遮断周波数に対応する周波数fcは、仕切り板を設けて形成した仕切り空間ごとに実測して求めることができる。第1実施形態と同様に、半径r=30cmの仕切り板で16分割された仕切り空間で主マイクロホン素子の出力を実測した周波数別の指向特性及び指向係数(=主軸方向のエネルギー/全方向のエネルギーの平均値)の周波数特性を実測により求めることができ、つまり、仕切り板で区切られた空間の遮断周波数以上の高い周波数では所定の指向性が得られる反面、遮断周波数より低い周波数では指向性が劣化することを確認できる。例えば、fc=4kHz以上の周波数でなければ指向性を判別することができないときに、仕切り空間の遮断周波数に対応する周波数fc=4kHzとして設定することができる。仕切り板で構成される仕切り空間が、全方向で同じ空間形状となるように形成した場合には、各仕切り空間で求めた遮断周波数はほぼ一定となるため、対応する周波数を平均することにより、各チャンネルに対して同一構成のハイパスフィルタ201、ローパスフィルタ202及びローパスフィルタ203とすることができる。
つまり、本実施形態においても、仕切り空間で収音することにより、周波数fcよりも高い帯域の成分SH,SH,・・・,SH16は、仕切り板で区切られた空間の効果により、仕切り板で区切られた空間の開口に相当する空間に含まれる方向の音に対して感度が高く、それ以外の方向の音に対する感度が低くなることから、仕切り板で区切られた空間の開口で定まる指向性を有するようになる。
さらに、本実施形態では、周波数fcよりも高い帯域の成分SH,SH,・・・,SH16については、そのままCH1,CH2,・・・,CH16用の高域成分として用いる。一方、周波数fcよりも低い帯域の成分SL,SL,・・・,SL16については、仕切り板で区切られた空間の効果が小さく、仕切り板で区切られた空間のみの効果では指向性が現れない。そこで、CH1の出力としてSL,SL,・・・,SL16のすべての低域用の主マイクロホン素子の出力成分に加え、SL17,SL18,・・・,SL36のすべての補助マイクロホン素子の出力成分を利用して指向性合成フィルタ処理を行う。
指向性合成フィルタ処理には、様々な技法があるが、第1実施形態のときと同様に、1例として、Farinaによる方法(A. Farina et al, ‘A Spherical Microphone Array for Synthesizing Virtual Directive Microphones in Live Broadcasting and in Post Production’, AES 40th International Conference, 2010)を用いて説明する。チャンネルCHi(i=1,2,・・・,16)の所望の指向特性を、離散的な方向R(j=1,2,・・・,N)の音源からの伝達関数Dij(j=1,2,・・・,N)の集合によって表す。一方、この離散的な方向R(=1,2,・・・,n)の音源からの音は、各仕切り板で区切られた空間の主マイクロホン素子及び補助マイクロホン素子からなるk個(k=1,2,・・・,36)のマイクロホン素子における伝達関数Cjkを介して到達することになり、k個のマイクロホン素子の各々は所望チャンネルの出力ごとに、伝達関数Hik(i=1,2,・・・,16、k=1,2,・・・,36)を有する指向性合成フィルタ処理を行うことができる。したがって、チャンネルCHiの出力は、すべての主マイクロホン素子及び補助マイクロホン素子の出力にフィルタ処理を施したものの合算として得られる。このとき、方向Rの音源によるCHiの出力Sijは、第1実施形態で説明したように、式(1)で表すことができる。
これがすべてのi及びjに対して所望の伝達関数Dijと等しくなるよう、フィルタHikを設計すればよい。すなわち、すべてのi及びjに対して式(2)が満たされればよい。
ここで、Dijは式(2)において16×N通りの組み合わせがある一方、Hikは16×36通りが存在する(図9に例示する、方向検出部30の一部として機能する伝達関数演算部30‐11,30‐12,30‐21,30‐22,30‐161,30‐162, 30‐216, 30‐1616, 30‐1617,・・・,30‐1636参照)。十分な方向分解能を得るためには、一般にNは多い数に設定した方が望ましいが、第1実施形態のような主マイクロホン素子のみでは劣決定問題となり、好ましい結果が得られない場合が考えられる。一方、この第2実施形態のように、補助マイクロホン素子Pmを用いることで、N通りとする数が主マイクロホン素子及び補助マイクロホン素子の数の合計を超えない限り、劣決定問題となることはない。尚、Nがさらに多い場合は、劣決定問題として、最小二乗法によりHikを定めればよい。
求まったHikは、所望の指向特性を実現するためのフィルタとなる。よって、CHiの出力Tは、各主マイクロホン素子Mkの出力をUとするとき、第1実施形態のときと同様に、式(3)で得られる。
即ち、Uは低域用マイクロホンの出力であることから、式(3)の左辺Tが低域成分用の信号SLC(i=1,2,・・・,16)として得られる(図9に例示する、方向検出部30の一部として機能する加算部30‐d1,30‐d2,・・・, 30‐d16の出力を参照)。
最後に、上記によって求められた高域成分用の信号SH(i=1,2,・・・,16)と低域成分用の信号SLC(i=1,2,・・・,16)を合算して、全帯域の信号を得ることができる(図8及び図9に例示する合成部40‐nの出力を参照)。
このように、本実施形態の収音マイクロホンシステムでは、所望方向の指向性の実現に「仕切り板」を用いて空間分離するようにし、仕切り板で区切られた空間内にそれぞれ帯域別に設けられた狭帯域及び広指向性の主マイクロホン素子の出力に対して所定の周波数で帯域制限を行い、当該所定の周波数以上の帯域については、主マイクロホン素子の出力成分をそのまま所望方向の成分とし、当該所定の周波数未満の帯域では所望方向以外の主マイクロホン素子及び補助マイクロホン素子の各出力成分を用いて合成するようにした。このため、広帯域及び狭指向性でマルチチャンネルの再生音が高精度で収音可能とするとともに、収音性能を改善し、効率よく指向性合成を行うことができる。特に、スピーカを3次元的に配置する音響システムにおいて、指向性合成による信号処理によるS/N比の劣化を伴わずに、広い周波数帯域でほぼ一定の空間分割した指向性を得ることが可能となる。
ここで、図10を参照して、収音装置1に関して、広帯域及び広指向性のマイクロホン素子を主マイクロホン素子として用いるのではなく、狭帯域及び広指向性のマイクロホン素子を主マイクロホン素子として、仕切り板の大きさで定まる遮断周波数を境に、周波数帯域別に設置することで、S/N比の劣化を避けて収音性能を改善し、効率よく指向性合成を行うことができる点について補足説明する。
図10は、広帯域コンデンサマイクロホンの周波数対感度特性と、高域用コンデンサマイクロホン及び低域用コンデンサマイクロホンの周波数対感度特性とを概念的に比較する図である。一般に主マイクロホン素子として利用するコンデンサマイクロホンの感度は、使用する上限周波数とトレードオフの関係にあり、或る特定の周波数を周波数特性の上限とするマイクロホン素子を用いれば、極めて感度が高く、相対的に雑音の低いマイクロホン素子を実現することができる。例えば、図10に示すように、一般的に、広帯域コンデンサマイクロホンの周波数対感度特性では、その広帯域が故に高域と低域とで差が生じ、このため感度ムラもある程度生じるが、高域用コンデンサマイクロホン及び低域用コンデンサマイクロホンの周波数対感度特性では、それぞれ有効感度帯域を狭めている。ここで、有効感度帯域とは、可聴範囲内の上限の感度値から3dB以内の感度ムラの範囲を云う。即ち、高域用コンデンサマイクロホン及び低域用コンデンサマイクロホンは、それぞれの有効感度帯域内で、よりフラットな感度とするのが容易であり、かつ広帯域コンデンサマイクロホンよりも相対的に感度も高めることができるため、帯域別の主マイクロホン素子とすることで、全帯域で相対的に雑音の低い収音装置1を実現することができる。
また、上述した第1及び第2実施形態の例では、1つの仕切り空間Hnに1つずつ、高域用及び低域用のマイクロホン素子を設ける例を説明したが、収音装置1の大型化が許容される限りにおいて、高域用及び低域用のマイクロホン素子を1つの仕切り空間Hnにそれぞれ複数設けて、S/N比を更に向上させることも可能である。
〔第3実施形態〕
次に、第3実施形態の収音マイクロホンシステムについて説明する。第3実施形態の収音マイクロホンシステムでは、仕切り板を用いることなく、複数の狭帯域及び狭指向性の主マイクロホン素子と複数の補助マイクロホン素子を設置する収音装置1aを用いる方式とした例である。尚、第1及び第2実施形態と同様な構成要素には、同一の参照番号を付して説明する。
(収音装置)
本実施形態の収音装置1aは、収音空間内の収音点を中心に各チャンネルの収音方向を中心軸とする予め区切られた仕切り角(各仕切り角は、例えば45°)によって収音空間が分割され、仕切り角ごとに当該仕切り角以内の指向特性幅(指向性ビームの幅)を持つ狭指向性で狭帯域の主マイクロホン素子が帯域別に設置されている。
例えば、図11(a)に示す収音装置1では、半径rの基台50上に、各チャンネル方向の各チャンネルの収音方向を中心軸とする指向範囲を仕切り角として定めて収音空間を分割し、各仕切り角Cn(nは、1〜16のチャンネル番号に相当)には、高域用の狭帯域及び狭指向性の主マイクロホン素子MHnと、低域用の狭帯域及び狭指向性の主マイクロホン素子MLnが複数設けられる(本例では、1つの仕切り角Cn内に4つずつ高域用及び低域用の主マイクロホン素子MHn,MLnが設けられている)。このように、本実施形態の収音装置1は、仕切り角ごとに所定の収音方向を主軸に持ち当該仕切り角以内の指向特性幅を持つ狭指向性の高域用の主マイクロホン素子MHn及び所定の収音方向を主軸に持つ狭指向性の低域用の主マイクロホン素子MLnがそれぞれ複数設置されている。そして、図11(a)に示すように、第3実施形態の収音マイクロホンシステムにおける収音装置1aでは、さらに、主マイクロホン素子MHn,MLnとは別の場所に複数の補助マイクロホン素子Pm(例えば、補助マイクロホン素子P1,P2,・・・,P8)が設置されている。補助マイクロホン素子Pmの設置数や設置位置は、第2実施形態と同様に、収音空間の環境によって適宜調整する。尚、第1実施形態のように補助マイクロホン素子Pmを設けない構成としてもよいが、前述した第2実施形態で説明したように、主マイクロホン素子だけでは指向性の合成に十分な数とならない場合を考慮し更に改善するには、補助マイクロホン素子Pmを設けるのが好適である。
前述した第1及び第2実施形態の例では、仕切り板によって形成される仕切り空間で定まる遮断周波数fcを基に「狭帯域及び広指向性」の主マイクロホン素子MHn,MLnを設けることで、収音空間の全体域で広帯域及び狭指向性でマルチチャンネルの再生音を高効率で収音するよう構成していた。
一方、本実施形態では、その好適例として、仕切り板を利用せず、仕切り角Cn(これは、第1及び第2実施形態の仕切り空間の開口角に対応する)を定め、仕切り角Cn以内の指向特性幅(指向性ビームの幅)を持つ図11(b)に例示するような狭指向性の狭帯域の高域用の主マイクロホン素子MHnと、図11(b)に例示する特性よりは広い指向性を有する低域用の主マイクロホン素子MLnを複数設けることで実現される。ここで、低域用の主マイクロホン素子MLnの指向特性を高域用の主マイクロホン素子MHnと同一にすることも可能であるが、所定の収音方向を主軸に持つ狭指向性を持つ限りにおいて、低域用の主マイクロホン素子MLnの指向特性は高域用と比して相対的により広い指向性であり、指向性合成が一般に必要となる。このとき、低域用の主マイクロホン素子MLnを別に設け、その帯域が狭いことを利用してマイクロホン素子としてS/N比が高いものを用いれば、指向性合成によりS/N比を改善することができる。本実施形態において、特定の周波数(これは、第1及び第2実施形態の遮断周波数fcに相当する)を境に区別して設けられる「狭帯域及び狭指向性」の主マイクロホン素子MHn,MLnの設置数は、各仕切り角Cn内で不感域を極力低減するよう複数設けるのが好適である。そして、「狭帯域及び狭指向性」の主マイクロホン素子MHn,MLnの設置位置は、各主マイクロホン素子の指向特性幅が当該設置する仕切り角Cn以内の分布になるよう設置する。したがって、或る仕切り角Cn内の主マイクロホン素子MHn,MLnの指向特性幅(指向性ビームの幅)が、隣接する仕切り角内の主マイクロホン素子MHn,MLnのものと重ならないように設定される。ただし、仕切り角Cn内の複数の主マイクロホン素子の指向特性幅は重複してもよく、その重複量に相当する分だけ各主マイクロホン素子の出力を相対比率で合成処理することでほぼ仕切り角Cn毎の各主マイクロホン素子の出力を抽出することができる。そして、本実施形態では、低域のS/N比の劣化も、複数の低域用の主マイクロホン素子MLnの設置により補うことができる。
(収音信号処理装置)
図11(a)に示すように構成した収音装置1aからの出力は、図8に示す第2実施形態の収音信号処理装置10を応用して実現することができる。例えば、仕切り角Cn毎の複数の主マイクロホン素子MHnの出力をそれぞれのフィルタ部20‐nを経て合成するよう合成部40‐nを構成するか、又はフィルタ部20‐nに入力する前に合成したものをフィルタ部20‐nに入力するよう構成すればよい。低域用の複数の主マイクロホン素子MLnの出力についても同様に、仕切り角Cn毎のフィルタ部20‐nと方向検出部30を経て合成するよう合成部40‐nを構成するか、又はフィルタ部20‐nに入力する前に合成したものをフィルタ部20‐nに入力するよう構成すればよい。そして、補助マイクロホン素子Pmの出力も、第2実施形態と同様にフィルタ部21‐mを経て方向検出部30に入力することで、主マイクロホン素子における指向性の合成処理を補助することができる。
このように、本実施形態の収音マイクロホンシステム及びその収音装置1aとして、仕切り板を用いることなく、狭帯域及び狭指向性の主マイクロホン素子を特定の周波数を境に、周波数帯域別に複数設ける構成とした場合、その仕切り角で不感域を極力低減するよう補う程度に主マイクロホン素子の個数を増大させることになるが複数設ける構成とすることで、上記S/N比の劣化を避けて収音性能を改善し、効率よく指向性合成を行うことが可能となる。
以上、特定の実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は前述の実施例に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、上述した実施形態の例では、主に、遮断周波数fcを1つとして仕切り空間Hnを定める例を説明したが、異なる遮断周波数を有する仕切り空間の組み合わせで、収音装置を構成してもよい。
本発明によれば、広帯域及び狭指向性でマルチチャンネルの再生音を高効率で収音することができるので、マルチチャンネルの再生音を収音する任意の用途に有用である。
1,1a 収音装置
10 収音信号処理装置
MHn 高域用の主マイクロホン素子
MLn 低域用の主マイクロホン素子
Pm 補助マイクロホン素子
Hn 仕切り空間
Cn 仕切り角
20‐n フィルタ部
21‐m フィルタ部
30 方向検出部
30‐11,30‐12,30‐21,30‐22 伝達関数演算部
30‐161,30‐162, 30‐216, 30‐1616 伝達関数演算部
30‐117,30‐217, 30‐1617 伝達関数演算部
30‐136,30‐236, 30‐1636 伝達関数演算部
30‐d1,30‐d2,・・・, 30‐d16 加算部
40‐n 合成部
100‐1,100‐2,100‐3 仕切り板
201 ハイパスフィルタ(HPF)
202 ローパスフィルタ(LPF)
203 ローパスフィルタ(LPF)

Claims (9)

  1. マルチチャンネル用の収音マイクロホンシステムであって、
    収音空間内の収音点を中心に所定の収音方向を中心軸とする仕切り板で区切られた仕切り空間によって収音空間が分割され、仕切り空間ごとに当該仕切り空間の開口角以上の指向特性幅を持つ広指向性で高域用及び低域用の主マイクロホン素子が設置された収音装置と、
    各主マイクロホン素子の出力について収音方向を検出して合成する収音信号処理装置とを備え、
    前記収音信号処理装置は、
    各主マイクロホン素子の出力について当該仕切り空間で定まる遮断周波数に相当する所定の周波数で帯域抽出を行い、当該所定の周波数以上の帯域の各高域用の主マイクロホン素子の出力成分をそれぞれの所定の収音方向の出力成分として抽出するハイパスフィルタと、
    当該所定の周波数以下の帯域の各低域用の主マイクロホン素子の出力成分を抽出するローパスフィルタと、
    前記ローパスフィルタで抽出される各出力成分から前記所定の収音方向ごとの出力成分を検出し、前記ハイパスフィルタで抽出した対応する高域用の主マイクロホン素子の出力成分と合成して、仕切り空間ごとの広帯域及び狭指向性の収音出力を生成する指向性合成フィルタ処理部と、
    を有することを特徴とする収音マイクロホンシステム。
  2. マルチチャンネル用の収音マイクロホンシステムであって、
    収音空間内の収音点を中心に所定の収音方向を中心軸とする仕切り板で区切られた仕切り空間によって収音空間が分割され、仕切り空間ごとに当該仕切り空間の開口角以上の指向特性幅を持つ広指向性で高域用及び低域用の主マイクロホン素子が設置され、さらに、1つ以上の補助マイクロホン素子が設置された収音装置と、
    前記主マイクロホン素子及び前記補助マイクロホン素子の各々の出力について収音方向を検出して合成する収音信号処理装置を備え、
    前記収音信号処理装置は、
    各主マイクロホン素子の出力について当該仕切り空間で定まる遮断周波数に相当する所定の周波数で帯域抽出を行い、当該所定の周波数以上の帯域の高域用の主マイクロホン素子の出力成分をそれぞれの所定の収音方向の出力成分として抽出するハイパスフィルタと、
    当該所定の周波数以下の帯域の低域用の主マイクロホン素子及び補助マイクロホン素子の出力成分をそれぞれ抽出するローパスフィルタと、
    前記ローパスフィルタで抽出される各出力成分から前記所定の収音方向ごとの出力成分を検出し、前記ハイパスフィルタで抽出した対応する高域用の主マイクロホン素子の出力成分と合成して、仕切り空間ごとの広帯域及び狭指向性の収音出力を生成する指向性合成フィルタ処理部と、
    を有することを特徴とする収音マイクロホンシステム。
  3. 前記仕切り空間は、マルチチャンネルのチャンネル数分で、当該収音空間が分割されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の収音マイクロホンシステム。
  4. マルチチャンネル用の収音マイクロホンシステムであって、
    収音空間内の収音点を中心に所定の収音方向を中心軸とする仕切り角によって収音空間が分割され、仕切り角ごとに所定の収音方向を主軸に持ち当該仕切り角以内の指向特性幅を持つ狭指向性の高域用の主マイクロホン素子及び所定の収音方向を主軸に持つ狭指向性の低域用の主マイクロホン素子がそれぞれ複数設置された収音装置と、
    各主マイクロホン素子の出力について収音方向を検出して合成する収音信号処理装置とを備え、
    前記収音信号処理装置は、
    各主マイクロホン素子の出力について所定の周波数で帯域抽出を行い、当該所定の周波数以上の帯域の各高域用の主マイクロホン素子の出力成分をそれぞれの所定の収音方向の出力成分として抽出するハイパスフィルタと、
    当該所定の周波数以下の帯域の各低域用の主マイクロホン素子の出力成分を抽出するローパスフィルタと、
    前記ローパスフィルタで抽出される各出力成分から前記所定の収音方向ごとの出力成分を検出し、前記ハイパスフィルタで抽出した対応する高域用の主マイクロホン素子の出力成分と合成して、仕切り角ごとの広帯域及び狭指向性の収音出力を生成する指向性合成フィルタ処理部と、
    を有することを特徴とする収音マイクロホンシステム。
  5. マルチチャンネル用の収音マイクロホンシステムであって、
    収音空間内の収音点を中心に所定の収音方向を中心軸とする仕切り角によって収音空間が分割され、仕切り角ごとに当該仕切り角以内の指向特性幅を持つ狭指向性の高域用の主マイクロホン素子及び狭指向性の低域用の主マイクロホン素子がそれぞれ複数設置され、さらに、1つ以上の補助マイクロホン素子が設置された収音装置と、
    前記主マイクロホン素子及び前記補助マイクロホン素子の各々の出力について収音方向を検出して合成する収音信号処理装置を備え、
    前記収音信号処理装置は、
    各主マイクロホン素子の出力について所定の周波数で帯域抽出を行い、当該所定の周波数以上の帯域の高域用の主マイクロホン素子の出力成分をそれぞれの所定の収音方向の出力成分として抽出するハイパスフィルタと、
    当該所定の周波数以下の帯域の低域用の主マイクロホン素子及び補助マイクロホン素子の出力成分をそれぞれ抽出するローパスフィルタと、
    前記ローパスフィルタで抽出される各出力成分から前記所定の収音方向ごとの出力成分を検出し、前記ハイパスフィルタで抽出した対応する高域用の主マイクロホン素子の出力成分と合成して、仕切り角ごとの広帯域及び狭指向性の収音出力を生成する指向性合成フィルタ処理部と、
    を有することを特徴とする収音マイクロホンシステム。
  6. マルチチャンネル用の収音装置であって、
    収音空間内の収音点を中心に所定の収音方向を中心軸とする仕切り板で区切られた仕切り空間によって収音空間が分割され、仕切り空間ごとに当該仕切り空間の開口角以上の指向特性幅を持つ広指向性で高域用及び低域用の主マイクロホン素子が設置されていることを特徴とする収音装置。
  7. マルチチャンネル用の収音装置であって、
    収音空間内の収音点を中心に所定の収音方向を中心軸とする仕切り板で区切られた仕切り空間によって収音空間が分割され、仕切り空間ごとに当該仕切り空間の開口角以上の指向特性幅を持つ広指向性で高域用及び低域用の主マイクロホン素子が設置され、さらに、1つ以上の補助マイクロホン素子が設置されていることを特徴とする収音装置。
  8. マルチチャンネル用の収音装置であって、
    収音空間内の収音点を中心に所定の収音方向を中心軸とする仕切り角によって収音空間が分割され、仕切り角ごとに所定の収音方向を主軸に持ち当該仕切り角以内の指向特性幅を持つ狭指向性の高域用の主マイクロホン素子及び所定の収音方向を主軸に持つ狭指向性の低域用の主マイクロホン素子がそれぞれ複数設置されていることを特徴とする収音装置。
  9. マルチチャンネル用の収音装置であって、
    収音空間内の収音点を中心に所定の収音方向を中心軸とする仕切り角によって収音空間が分割され、仕切り角ごとに所定の収音方向を主軸に持ち当該仕切り角以内の指向特性幅を持つ狭指向性の高域用の主マイクロホン素子及び所定の収音方向を主軸に持つ狭指向性の低域用の主マイクロホン素子がそれぞれ複数設置され、さらに、1つ以上の補助マイクロホン素子が設置されていることを特徴とする収音装置。
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