(マウスの概略説明)
図1は、本発明の実施形態に係る足操作式マウス1を示す外観斜視図である。
マウス1は、手で操作するマウスと同様に、ポインティングディバイスの一種であり、コンピュータ(不図示。以下の説明では、便宜上、表示装置を含むものを指す用語とする。)に有線又は無線で接続され、コンピュータの画面上のカーソルを移動させたり、カーソルにより指された画面上のスイッチを押したりすることなどに利用される。ただし、マウス1は、足での操作に好適な構成とされている。
図1等においては、便宜的に、マウス1に固定された直交座標系xyzを示している。マウス1は、例えば、x軸方向の正側を使用者から見た右側とし、y軸方向の正側を使用者から見た前方とし、z軸方向の正側を鉛直方向(重力の方向)の上方として、床面等の載置面101(図3)上に載置されて使用される。なお、後述するように、本実施形態のマウス1は、若干の傾斜がある載置面101上に載置することも可能である。従って、例えば、z軸方向は鉛直方向とは限らず、鉛直方向に傾斜した方向であってもよい。以下では、マウス1が使用されるときの、鉛直方向及び使用者から見た前後左右方向を基準に、上下、前後、左右又は表裏等の用語を用いることがある。
マウス1は、例えば、その上面に使用者の足の裏を当接させるようにして片足を乗せて使用されることが想定されている。上記の前後左右の説明から理解されるように、y軸方向正側が爪先側であり、y軸方向負側が踵側である。なお、マウス1は、例えば、使用者が座って使用することが想定されていてもよいし、及び/又は、使用者が立って使用することが想定されていてもよい。別の観点では、例えば、マウス1は、座っている使用者の脚の荷重(例えば膝から先の部分の荷重又は大腿を含む脚全体の荷重)を支持可能な強度とされていてもよいし、及び/又は、立っている使用者の足に加えられる荷重(例えば体重程度の荷重)を支持可能な強度とされていてもよい。
また、マウス1は、例えば、足の裏の一部又は全部が乗せられることが想定されて、その大きさが設定されている。例えば、マウス1の前後方向の長さ(y軸方向)は、20cm〜30cmであり、マウス1の幅(x軸方向)は、10cm〜20cmであり、マウス1の高さ(z軸方向)は、2cm〜5cmである。足の裏の一部を乗せることが想定されている場合、マウス1は、少なくとも指の付け根から先(土踏まずよりも先)が乗せることができる大きさであることが好ましい。
なお、想定される使用者の足の大きさ等は、例えば、成人の平均的なものが想定されてもよいし、所定の年齢の子供の平均的なものが想定されてもよい。
マウス1は、例えば、当該マウス1の構造の基礎となる基部3と、基部3に配置された第1スイッチ機構5A〜第3スイッチ機構5C(以下、これらを区別せずに、単に「スイッチ機構5」ということがある。)と、同じく基部3に配置されたホイール機構7とを有している。マウス1は、これらの構成を備えることによって、例えば、手で操作するマウスとして最も普及している、2つの押しボタン及び1つのホイールを有するマウスと同様乃至は類似した操作を可能としている。
具体的には、マウス1(基部3)を載置面上にて載置面に沿って移動させると、手で操作するマウスを机面に沿って移動させたときと同様の操作結果が得られる。例えば、マウス1を移動させると、その移動方向及び移動量に応じた移動方向及び移動量で画面上のカーソルを移動させることができる。なお、マウス1の移動量に対するカーソルの移動量の比は適宜に設定されてよい。
第1スイッチ機構5Aを押圧操作すると、手で操作するマウスの左ボタンを押圧操作したときと同様の操作結果が得られる。例えば、いわゆるクリックによって、カーソルで示された項目の選択を決定したり、いわゆるドラッグによって、カーソルで示された対象物を移動させたりすることができる。
第2スイッチ機構5Bを押圧操作すると、手で操作するマウスの右ボタンを押圧操作したときと同様の操作結果が得られる。例えば、クリックによって、いわゆるコンテキストメニューを表示させることができる。
第3スイッチ機構5Cを押圧操作すると、手で操作するマウスのホイールを押圧操作したときと同様の操作結果が得られる。例えば、クリック後又はプレスした状態で、マウス1を上下に動かすことによってコンテンツをスクロールさせることができる。
ホイール機構7を回転操作すると、手で操作するマウスのホイールを回転操作したときと同様の操作結果が得られる。例えば、回転量に応じた移動量でコンテンツをスクロールさせることができる。なお、ホイールの回転量に対するスクロール量の比は適宜に設定されてよい。
上記の他、GUIの、いわゆるソフトウェアキーボードとの組み合わせによって、マウス1に対する操作によって、(物理)キーボードに対する操作と同様の操作(広義にはこれも手で操作するマウスと同様の操作)を実現することもできる。
マウス1は、上記の構成に加え、マウス1を載置面上で移動させる操作を容易化するとともに、マウス1の意図しない移動のおそれを低減するために、複数(本実施形態では4つ)のキャスター9を有している。キャスター9は、基部3を支持し、載置面を走行可能である。
(マウスの各部の構成)
基部3、スイッチ機構5、ホイール機構7及びキャスター9等の具体的な構成は、例えば、以下のとおりである。
(基部の構成)
図2は、マウス1の裏側を示す外観斜視図である。図3は、マウス1を示す側面図である。図4は、マウス1の一部を取り外してマウス1を示す、図1と同じ向きの斜視図である。なお、各図では、図示の便宜上、電子部品や配線等を省略している。
基部3は、例えば、ベース11と、ベース11の上方に露出するペダル13(図1、図3及び図4)と、ベース11の下方に露出するマウス本体15(図2及び図3)とを有している。そして、マウス1は、ペダル13が踏み込まれて移動されたときはその移動を検出し、ペダル13が踏み込まれずに移動されたときはその移動を検出しないように構成されている。具体的には、以下のとおりである。
ベース11は、基部3の中でもマウス1の構造の基礎となる部分である。ベース11は、例えば、適宜な平面形状(本実施形態では概略矩形)の板状部材によって構成されている。本実施形態では、ベース11の広さは、マウス1全体の広さと同等である。ベース11の材料は、樹脂、金属又は木材など、適宜な材料とされてよい。
ペダル13は、例えば、適宜な平面形状(本実施形態では概略矩形)の板状部材によって構成されている。ペダル13の広さは、例えば、足の裏の一部(例えば指の根元又は根元から先)又は全部で踏み込みやすい広さとされている。ペダル13の材料は、樹脂、金属又は木材など、適宜な材料とされてよい。
ペダル13は、ベース11に対して上下方向に所定の範囲内で移動可能に、かつ上方の駆動限に自動復帰可能にベース11に取り付けられている。具体的には、例えば、以下のとおりである。
ペダル13及びベース11には、ペダル13側から複数のボルト17が挿通され、その先端にはナット19(図2及び図3)が螺合されている。ボルト17のボルト頭とナット19との距離は、ペダル13及びベース11の、ボルト17のボルト頭とナット19とに挟まれる部分の厚さよりも大きい。この大きさの差の範囲内で、ペダル13はベース11に対して上下に移動可能となっている。
また、ペダル13とベース11との間には、圧縮されたスプリング21(図3)が介在している。スプリング21は、例えば、ボルト17が挿通されたコイル式のものである。スプリング21の復元力により、ペダル13は、ベース11から浮いた、上方の駆動限に自動復帰可能である。
ペダル13の上方の駆動限の位置は、例えば、ナット19がベース11に当接するとともにペダル13がボルト17のボルト頭に当接する位置である。当該位置は、ナット19のボルト17に対する位置を調整することによって調整可能である。
ペダル13の下方の駆動限の位置は、例えば、後述する不図示の配線等をペダル13とベース11とで挟み込まないように、ペダル13がベース11から少し浮いた位置とされる。例えば、ボルト17が挿通され、ベース11とペダル13との間に介在するスペーサ(符号省略)が設けられる。このスペーサの長さ(z軸方向)は、ボルト17のボルト頭とナット19との距離と、ペダル13及びベース11の、これらに挟まれる部分の厚さとの差よりも小さい。なお、ペダル13の下方の駆動限においてペダル13をベース11から浮かせる必要がないのであれば、下方の駆動限は、ペダル13がベース11に当接する位置であってもよい。
ボルト17、ナット19及びスプリング21の数及び配置は適宜に設定されてよい。例えば、ボルト17等は、矩形のペダル13の4隅に設けられている。ボルト17及びナット19の挿通方向は逆であってもよい。
マウス本体15は、例えば、手で操作するマウスの下側部分を切り取ったような部品である。なお、マウス本体15は、実際に、手で操作するマウスの下側部分を取り外したり、切り取ったりして作製されてもよい。
マウス本体15は、ケース23と、ケース23に配置された種々の電子部品(基本的に不図示)とを有している。ケース23は、例えば、上方が開放された箱状(板状に近くてもよい)である。その内部(上面)には、例えば、基部3の移動を検出するためのセンサ25(図2)、コンピュータと通信を行うための通信部27(図2)、これらを接続する不図示の回路基板等が配置されている。
上記のように、マウス本体15は、手で操作するマウスの下側部分を切り取ったような部品であり、センサ25及び通信部27等の電子部品も手で操作するマウスに内蔵されているものと同様でよい。
センサ25は、光学式のものであってもよいし、ボール式のものであってもよい。本実施形態では、光学式のものを例示しており、ケース23の下面には、光を通過させるための孔23h(図2)が形成されている。
通信部27は、無線で通信を行うものであってもよいし、有線で通信を行うものであってもよい。本実施形態では、無線のものを例示しており、マウス本体15からコンピュータへ延びる配線は設けられていない。
マウス本体15は、上記の他、特に図示しないが、スイッチ機構5及びホイール機構7からの信号を通信部27に入力する電子回路を有している。この電子回路は、手で操作するマウスにおける、当該手で操作するマウスの右ボタン、左ボタン及びホイールの操作による信号を通信部27に入力する回路と同様でよい。
マウス本体15は、ペダル13に固定されている。従って、ペダル13を踏み込み、ペダル13がベース11に対して下方の駆動限へ移動すると、マウス本体15は載置面に近づき、踏み込みを解除してペダル13が上方の駆動限に復帰すると、マウス本体15は載置面から遠ざかる。
一方、光学式のセンサ25は、載置面との距離が所定距離以内であれば、載置面に沿う方向の移動を検出し、載置面との距離が所定距離を超えると、載置面に沿う方向の移動を検出できない、又は検出しない(検出可能であっても検出結果を示す信号を出力しない)ように構成されている。
そして、マウス1は、マウス本体15が上方の駆動限に位置するときは、センサ25と載置面との距離が上記の所定距離を超え、マウス1が下方の駆動限に位置するときは、センサ25と載置面との距離が所定距離以内となるように、各種の部材の位置乃至は寸法が設定されている。
これにより、ペダル13が踏み込まれてマウス1が移動したときは、その移動は、カーソルを移動させるためなどの操作として有効になり、逆に、ペダル13が踏み込まれずにマウス1が移動したときは、その移動は、カーソルを移動させるためなどの操作としては無効となる。このような動作により、例えば、マウス1に意図せずに足が当たってマウス1が移動してもカーソルが移動するおそれが低減される。また、例えば、カーソルを任意の位置に移動させた後、ペダル13の踏み込みを解除してスイッチ機構5を操作することによって、カーソルで任意の位置を確実に指定した状態で選択決定などの操作を行うことができる。
なお、センサ25がボール式のものである場合においては、ペダル13を踏み込んだときには、マウス本体15のケース23から露出するボールが載置面に当接し、踏み込みを解除したときには、ボールが載置面から浮くように、各種の部材の位置乃至は寸法が設定されればよい。
ペダル13とマウス本体15との固定は適宜になされてよいが、例えば、以下のとおりである。ベース11には、開口11h(図2)が形成されている。ペダル13には上方からボルト29(図1)が挿通される。マウス本体15のケース23には下方からボルト31(図2及び図3)が挿通される。そして、ボルト29及びボルト31は、開口11hに配置されたスペーサ33(図2及び図3)の雌ねじ部に螺合され、互いに固定される。これらのボルト29、ボルト31及びスペーサ33の組み合わせは適宜な数及び配置で設けられてよいが、本実施形態では3箇所に設けられている。
開口11hは、例えば、平面視においてマウス本体15(ケース23)が収まる形状及び面積とされている。従って、例えば、ベース11に妨げられることなく、ケース23とペダル13との間に電子部品等を配置できる。すなわち、電子部品等の配置スペースが容易に確保される。図3に示すように、本実施形態では、ケース23は、ベース11よりも下方に位置しているが、ケース23の少なくとも一部が開口11hに収まり、マウス1の低背化が図られてもよい。
なお、ペダル13は、開口11hに落ち込まないように、例えば、開口11hよりも広い面積とされている。ペダル13をベース11に取り付けるための、上述したボルト17、ナット19及びスプリング21は、開口11hの外側に設けられている。
基部3は、上記の他、例えば、マウス本体15に電力を供給するためのバッテリ(不図示)を保持するバッテリボックス35(図2)を有している。バッテリボックス35と、マウス本体15(の回路基板)とは、例えば、導線を絶縁体で被膜したリード線(不図示)によって接続されている。
なお、基部3のうち、ベース11、ペダル13及びケース23等は、センサ25、通信部27、スイッチ機構5及びホイール機構7等を設けるための基体4を構成している。
(スイッチ機構の構成)
スイッチ機構5は、例えば、スイッチ37(図3及び図4)と、スイッチ37を操作するための操作部材39(図1及び図2)と、操作部材39を支持するプランジャ41とを有している。操作部材39及びプランジャ41は、スイッチ37の操作を足による操作に適合させるためのものである。
スイッチ37は、例えば、いわゆるタクティルプッシュ式のスイッチによって構成されている。従って、例えば、スイッチ37は、押圧するとオンされ、押圧を解除するとオフされる、いわゆるモーメンタリスイッチである。また、例えば、スイッチ37は、オンされたときに、いわゆるクリック感を生じさせる。スイッチ37の具体的な構成は、可動接点が皿ばねによって構成されたものなど、公知のものと同様とされてよい。
スイッチ37は、押圧方向を下方として基部3(基体4)に取り付けられている。具体的には、例えば、ベース11の前方(y方向正側)の端部上面には、当該上面に積層的にスイッチ基板43(図1、図3及び図4)が設けられ、スイッチ37は、そのスイッチ基板43の上面に、押圧される面を上方に向けて実装されている。
スイッチ基板43は、例えば、導線を絶縁膜で被覆した不図示のリード線によってマウス本体15の電子部品と接続されている。従って、スイッチ37がオンされて通電されると、その通電による信号は、スイッチ基板43を介してマウス本体15に出力され、ひいては、マウス本体15の通信部27を介してコンピュータに出力される。
スイッチ基板43は、例えば、リジッド式のプリント配線基板であり、ボルトやスペーサ(符号省略)によって、ベース11の上面から浮いた位置にてベース11に固定されている。これにより、例えば、スイッチ基板43にピンを挿通して実装される形式のスイッチの利用が可能になる。ただし、スイッチ基板43は、ベース11に直に重ねられてもよいし、この場合、フレキシブル基板によって構成されてもよい。
スイッチ基板43とマウス本体15とを接続する不図示のリード線は、例えば、ベース11の開口11hに通されて、ベース11の表側から裏側へ至る。なお、上述のように、ペダル13の下方の駆動限はベース11から浮いた位置とされており、ペダル13が踏み込まれても、リード線は、ペダル13とベース11とに挟み込まれない。
複数(本実施形態では3つ)のスイッチ37は、例えば、左右方向に1列に配列されている。複数のスイッチ37は、互いに同一の構成であってもよいし、互いに異なる構成であってもよく、コスト削減の観点からは前者が好ましい。
操作部材39は、例えば、平面視においてスイッチ37よりも広い面積を有する概略板状部分を要部とする部材である。その材料は、金属、樹脂又は木材など、適宜なものとされてよい。操作部材39は、回転軸45(図1及び図3)回りに回転可能に取り付けられている。回転軸45は、例えば、スイッチ37(スイッチ基板43)よりも前方に位置し、載置面に平行に左右方向に延びている。そして、操作部材39は、スイッチ37を上から覆っている。従って、操作部材39を回転軸45回りに揺動させることによって、スイッチ37のオン・オフが可能である。
複数(本実施形態では3つ)の操作部材39は、左右方向(換言すれば押圧方向に交差(例えば直交)する方向)に1列に配列されて、隣り合うもの同士が互いに隣接している。すなわち、隣り合う操作部材39の間には、使用者が操作部材39を操作する際に使用者の足が触れるような他の部材は介在していない。また、複数の操作部材39は、例えば、同一の回転軸45に対して、互いに独立に回転可能に取り付けられている。ただし、操作部材39毎に回転軸が設けられてもよい。
複数(本実施形態では3つ)の操作部材39は、互いに同一の構成であってもよいし、互いに異なる構成であってもよい。図1では、第1スイッチ機構5A及び第2スイッチ機構5Bの操作部材39が互いに同一の構成であり、第3スイッチ機構5Cの操作部材39が、他のスイッチ機構5の操作部材39と幅のみ異なる(他よりも狭い)場合を例示している。なお、第3スイッチ機構5Cの操作部材39は、他のスイッチ機構5の操作部材39よりも上方に突出しているが、これは、後述するように、操作部材39の構成の相違によるものではない。
プランジャ41は、スプリング63(後述する図6参照)の復元力によって伸長する軸状の部品である。そして、プランジャ41は、操作部材39に覆われる位置にて伸長方向を上下方向にして配置され、ベース11に対して操作部材39を上方へ付勢する。従って、操作部材39を介してスイッチ37を操作するとき、操作部材39は、スイッチ37の自動復帰のための力だけでなく、プランジャ41からも力を受ける。
また、使用者が操作部材39を押圧していない場合、例えば、図3に示すように、操作部材39は、プランジャ41によってスイッチ37から浮いた位置に保持される。従って、プランジャ41は、操作部材39を介してスイッチ37をオンするために必要な力を規定するだけでなく、操作部材39を介してスイッチ37をオンするために必要なストロークも規定する。
プランジャ41の位置は、例えば、スイッチ37に対して回転軸45とは逆側である。この場合、梃の原理により、操作部材39の操作に対して、プランジャ41の付勢力に対して相対的に大きな反力を生じることができる。
複数(本実施形態では3つ)のプランジャ41の構成(寸法含む)は、同一であってもよいし、異なっていてもよく、前者であれば、コスト削減に有利である。
既に言及したように、3つの操作部材39のうち中央の操作部材39(第3スイッチ機構5Cの操作部材39)は、その上面が他の操作部材39の上面よりも上方に位置して(押圧方向とは反対側に突出して)段差が構成されている。これにより、足で操作部材39に触れた感触に基づいて、いずれの操作部材39に触れているかを判断することができる。ここで、本実施形態では、この高さの相違は、プランジャ41の取り付け位置の上下方向の相違によって実現されている。なお、プランジャ41の取り付け方法については後述する。
(ホイール機構の構成)
ホイール機構7は、例えば、載置面を転がるホイール47と、ホイール47の回転を検出する回転センサ49(図2)とを有している。
ホイール47は、例えば、円盤状の部材であり、左右方向に延びる回転軸(符号省略)回りに回転可能に、ベース11の下面の後方端部に設けられている。図3に示すように、ホイール47は、マウス1が4つのキャスター9に支持されている状態においては、載置面101から浮いている。従って、例えば、使用者がベース11の後方に荷重を加え、後方の2つのキャスター9を支点としてベース11の後端部を押し下げると、前方の2つのキャスター9が浮くとともにホイール47は載置面101に当接する。この状態で、マウス1を前後方向に移動させることによって、ホイール47を回転させることができる。
回転センサ49は、例えば、手で操作するマウスにおいてホイールの回転を検出するために設けられているセンサ(ロータリーエンコーダ)と同様のものでよい。回転センサ49は、例えば、導線を絶縁膜で被覆した不図示のリード線によってマウス本体15の電子部品と接続されている。そして、回転センサ49の検出信号は、マウス本体15に出力され、ひいては、マウス本体15の通信部27を介してコンピュータに出力される。
(キャスターの構成)
キャスター9は、例えば、ベース11の下面の4隅に設けられている。4つのキャスター9の構成は、例えば、互いに同一である。本実施形態では、足により荷重が加えられていない状態のマウス1を載置面上で支持する部材は、キャスター9以外には設けられていない。従って、製造誤差によって4つのキャスター9が同一平面内に位置していなかったり、載置面101が完全な平面でなかったりしても、少なくとも3つのキャスター9は載置面101に当接する。
図5(a)は、キャスター9を模式的に示す断面図である。
キャスター9は、球形のボール51と、ボール51を回転可能に保持する保持部53とを有している。ボール51は、一部が保持部53から露出しており、当該一部が下方に向くように、保持部53がベース11に取り付けられる。そして、ボール51が載置面を転がることによって、マウス1は、任意の方向に走行する。
ボール51及び保持部53の材料は、金属、樹脂又は木材など、適宜なものとされてよい。保持部53は、例えば、ボール51(厳密にはその一部)を収容する凹部55rを有する受け部材55と、ボール51の一部を露出させつつボール51を凹部55r内に留めるキャップ57とを有している。ただし、保持部53は、一体的な一の部材から構成されていてもよいし、3以上の部材から構成されていてもよい。受け部材55とキャップ57との固定は、締結、係合及び/又は接着等の適宜な方法によりなされてよい。
受け部材55の凹部55rは、下方へ面する凹面55sからなる。凹面55sは、例えば、概略、球面の一部(例えば概ね半球面)からなる。ただし、球面の一部でなくてもよい。また、凹面55sは、水抜きなどの目的で孔が設けられるなど、完全な面でなくてもよい。ただし、以下の説明では、説明を簡単にするために、特に断りがない限り、凹面55sは理想的に球面であるものとする(ボール51も同様)。キャップ57は、ボール51を露出させる、ボール51が通過不可能な開口57pを有している。開口57pの形状は、例えば、概略、ボール51の半径よりも小さい半径の円形である。
本実施形態のキャスター9の特徴は、例えば、ボール51が直接に受け部材55の凹面55sに当接していること(ボール51と凹面55sとの間にボール51よりも径が小さい多数のサポートボールが介在していないこと)、凹面55sの曲率がボール51の曲率よりも小さいこと、ボール51が凹面55sを転がり可能な遊びを有して保持部53に保持されていることにある。
なお、凹面55sの曲率は、凹面55sのうちボール51が当接し得る範囲における曲率を基準に考えるものとする。例えば、凹面55sの外周部は、ボール51の挙動に影響を及ぼさないのであれば、除外して考えてもよい。凹面55sに比較的小さい凹凸があったり、凹面55sの曲率が局部的に変化したりする場合は、ボール51が凹面55sを転がるに際してボール51に当接してボール51の挙動に実質的に影響を及ぼす部分を結ぶ仮想的な面の曲率を考えてよい。このようにしてもなお曲率が変化する場合は、凹面55sの曲率の最大値又は平均値がボール51の曲率よりも小さいか否かにより判断してよい。
また、ボール51の遊びは、例えば、平面視において凹部55rがボール51よりも広く形成されていること、及びボール51が凹部55rの最奥(凹面55sの中央)に当接している状態で開口57pがボール51から離れていることなどによって実現されている。一般的なボールキャスターでは、このような遊びはほとんどない。遊びの大きさは、例えば、載置面に沿う任意の方向における両側の合計で、2mm以上乃至は4mm以上、又はボール51の直径の10%以上乃至は20%以上である。
このようなキャスター9は、ボール51と保持部53との間にボール51よりも径が小さい多数のサポートボールが介在する市販のキャスターから、サポートボールを除いて作製されてよく、また、これと同様の構成を当初から設計してもよい。この場合、サポートボールの大きさに応じて、ボール51と凹面55sとの曲率の差、及び、ボール51の保持部53に対する遊びの大きさが規定される。
図5(b)及び図5(c)は、キャスター9の作用を説明するための、図5(a)を更に模式化した断面図である。
マウス1に荷重や移動のための力が加えられていない状態では、ボール51及び保持部53の位置関係は、図5(b)に示すようなものになる。すなわち、ボール51は、凹部55rの最奥部(凹面55sの中央、凹面55sの最も高い位置)に当接(理想的には点接触)し、保持部53を支持している。
この状態から、矢印y1で示す、載置面101に平行な力が保持部53に加えられるものとする。そうすると、ボール51は、矢印y2で示す、矢印y1と同一方向の摩擦力を保持部53から受け、また、矢印y3で示す、矢印y2と反対方向の摩擦力を載置面101から受ける。その結果、矢印y4で示すように、ボール51は凹面55s及び載置面101を転がる。
図5(b)及び図5(c)の比較から理解されるように、ボール51が凹面55s及び載置面101を転がることにより、保持部53は図5(b)の位置から矢印y1の方向へ移動していく。また、ボール51と凹面55sとの接点は、凹面55sに対してはその外周側(下方)へ移動していき、また、ボール51に対してはその下方へ移動していく。別の観点では、保持部53は、ボール51によって上方へ持ち上げられ、位置エネルギーが増加していく。
さらにボール51が転がると、図5(c)に示すように、ボール51と凹面55sとの接点における力(矢印y5)の方向と、当該接点におけるボール51の接線方向とは大きく傾斜し、若しくは直交し、ボール51は転がりを停止しようとする。又は、保持部53の内部の形状によっては、ボール51は、開口57pの縁部など、保持部53のうちの凹面55s以外の部位に当接し、転がりを停止しようとする。
図5(c)の状態から、例えば、矢印y1で示す力を解除すると、キャスター9は、保持部53の、増加していた位置エネルギーによって、図5(b)に示す状態に復帰する。これにより、例えば、図5(b)の状態のマウス1に、意図せずに足が当たるなどして矢印y1で示す力が加えられても、図5(b)の状態から図5(c)の状態へ遷移することによって、加えられた力をいわば逃がし、その後、元の位置へ復帰することができる。
また、上記とは逆に、図5(c)の状態から、矢印y1で示す力が増加すると、ボール51は、保持部53(例えば凹面55s)に対して摺動しつつ、載置面101を転がる。具体的には、矢印y1で示す力が増加していくと、矢印y6で示す、ボール51が載置面101から受ける摩擦力(静止摩擦力)は増加していく。そして、矢印y6で示す力が、ボール51と保持部53との最大摩擦力(静止摩擦力の最大値)を超えると、ボール51は保持部53に対する摺動を開始し、ボール51は、保持部53から運動摩擦力を受けつつ回転する。この運動摩擦力が比較的小さいことによって、使用者は容易にマウス1を移動させることができる。
なお、以上の作用は、マウス1に足の荷重が加えられているとき、加えられていないときのいずれにおいても生じる。また、載置面101が傾斜していることによって矢印y1の力が加えられているときは、その傾斜が急でない限りは、図5(c)の停止した状態が保たれる。
(プランジャの構成)
図6は、スイッチ機構5の構成において説明したプランジャ41の詳細を説明するための模式的な断面図である。
プランジャ41は、例えば、筒状部材59と、筒状部材59に出し入れされる軸状部材61と、軸状部材61を付勢するスプリング63とを有している。
これらの材料は、金属又は樹脂等の適宜なものとされてよい。筒状部材59は、一端が閉塞され、他端には、筒の内径よりも径が小さい開口が形成されている。軸状部材61は、筒状部材59の開口から延び出る軸状部分と、筒状部材59の内部に収容され、筒状部材59の開口周囲に係合可能なフランジとを有している。スプリング63は、例えば、コイル式のものであり、圧縮された状態で、筒状部材59に収容され、軸状部材61のフランジ側部分を筒状部材59の開口側へ付勢している。
従って、軸状部材61は、スプリング63の復元力によって、フランジが筒状部材59の開口周囲に係合する位置まで筒状部材59から突出する。また、軸状部材61は、スプリング63の復元力に抗して押し込まれることによって、スプリング63が完全に圧縮されるまで、又は不図示のストッパに軸状部材61が当接するまで、筒状部材59に挿入される。
筒状部材59の外周面は、雄ねじ部59aとされている。そして、筒状部材59は、ベース11に挿通された状態で、ベース11の上面側に配置されたナット65と、ベース11の下面側に配置されたナット67とに螺合される。従って、プランジャ41は、その上下方向の位置を調整可能にベース11に取り付けられている。この位置調整によって、例えば、操作部材39のストローク調整が可能であり、また、隣接する複数の操作部材39同士で、上面の高さを互いに異ならせることもできる。なお、筒状部材59(雄ねじ部59a)、ナット65及び67は、プランジャ41の上下方向の位置を調整する調整機構69を構成している。
以上のとおり、本実施形態では、足操作式マウス1は、基体4と、所定の載置面101上にて基体4を支持するキャスター9と、基体4に配置され、載置面101に沿った基体4の移動を検出するセンサ25と、を有している。キャスター9は、載置面101上に接地されるボール51と、基体4に固定され、ボール51を回転可能に保持する保持部53と、を有している。保持部53は、ボール51よりも曲率が小さく、載置面101に面する凹面55sを有している。ボール51は、凹面55sに対する摺動によって回転可能に凹面55sに直接に当接しており、かつ凹面55sを転がり可能な遊びを有して保持部53に保持されている。
従って、図5(b)及び図5(c)を参照して説明したように、載置面101に沿う方向に比較的弱い力(図5(c)の状態におけるボール51と保持部53との最大摩擦力未満の力)がマウス1に加えられたときはマウス1の移動を規制し、それよりも強い力が加えられたときはマウス1の移動を許容できる。
そして、ボール51と保持部53との最大摩擦力を適宜に設定することによって、意図せずに足がマウス1に当たったり、若干の傾斜がある載置面101にマウス1が載置されたりしたときにはマウス1の移動を規制乃至は抑制できる。また、スイッチ機構5を押圧する際に、マウス1が移動してしまうことも抑制される。すなわち、ほとんど抵抗力が生じない通常のキャスター(ボール51と保持部53との間に複数の小さなサポートボールが介在するものなど)に比較して、利便性乃至は操作性が高い。
その一方で、意図してマウス1を移動させる(操作する)ときに生じる抵抗力を低く押さえ、操作性を向上させることができる。この操作性に影響を及ぼす摩擦力は、ボール51と保持部53との間のものであるから、極端に摩擦係数が低い床面を想定しない限りは、床面の材質等に関わらずに操作性を調整できる。従って、例えば、床面上で摺動するマウスに比較して、マウスパッド等を用いずに安定した操作性を提供できる。
また、意図せずに足がマウス1に当たったような場合においては、マウス1は、ボール51と保持部53との間の遊びの大きさ内で移動し、その後、元の位置に復帰する。従って、ボール51と保持部53との間に遊びがないマウス又は載置面101を摺動するマウスに比較して、いわば力を逃がすことができ、ひいては、効果的に意図しない移動を抑制することができる。
また、本実施形態では、マウス1は、3以上のキャスター9を有している。
例えば、4つのキャスターのうち、1つのみが本実施形態のキャスター9で、他のキャスターが通常のもの(抵抗力がほとんど生じないもの)である場合、マウスの、本実施形態のキャスター9を中心とした回転移動が許容されてしまう。また、例えば、4つのキャスターのうち2つのみが本実施形態のキャスター9である場合も、マウスの重心位置によっては、本実施形態のキャスター9の1つが浮き上がり、同様の不都合が生じる。4つのキャスターのうち3つ以上が本実施形態のキャスター9であれば、そのような不都合が解消される。
また、本実施形態では、マウス1は、載置面101への方向を押圧方向として基体4に配置されたタクティルプッシュ式のスイッチ37と、押圧方向に交差する回転軸45回りの揺動によってスイッチ37を押圧可能な操作部材39と、操作部材39の、スイッチ37に対して回転軸45とは反対側の部分を、押圧方向とは反対側へ付勢して、操作部材39をスイッチ37から浮かせるプランジャ41と、を有している。
従って、足による操作が容易化される。すなわち、足による操作は、手による操作に比較して、小さいスイッチを押圧することが困難であり、また、力及びストロークの制御及び検知も困難である。しかし、操作部材39によってスイッチ37を擬似的に大きくし、プランジャ41によって反力及びストロークを大きくすることによって、足による操作が容易化される。反力及びストロークの調整は、プランジャ41を配置するだけで実現され、また、梃の原理によってスプリング63の復元力が好適に利用されることから、コスト削減も期待される。
また、本実施形態では、マウス1は、スイッチ37、操作部材39及びプランジャ41の組み合わせをそれぞれ有する2つのスイッチ機構5(例えば第1スイッチ機構5Aと第3スイッチ機構5C)を有している。この2つのスイッチ機構5は、互いに回転軸45の軸方向において隣接している。2つのスイッチ機構5の少なくとも一方(本実施形態では双方)は、プランジャ41の、基体4に対する押圧方向の位置を調整可能な調整機構69を有している。
従って、調整機構69を有するスイッチ機構5は、操作部材39の反力及びストロークを任意に調整可能であり、かつ隣接する操作部材39同士で上面の高さを適宜に異ならせ、足の触感で操作部材39を識別することができる。このような調整がプランジャ41の位置調整だけで実現され、コスト削減も期待される。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
足操作式マウスは、2つの押しボタン及び1つのホイールを有する、手で操作するマウスに相当するものに限定されない。例えば、1つの押しボタンのみを有するマウス、又は2つの押しボタンのみを有するマウスに対応するものであってもよいし、一般的な手で操作するマウスとは異なり、ボタン等を有さずにカーソルの移動のみに供されるものであってもよい。すなわち、スイッチ機構及びホイール機構は必須の要件ではない。
荷重をかけたときのみマウスの移動をマウスの操作として有効にする機構(実施形態では、ベース11に対してマウス本体15及びペダル13が昇降する機構)は設けられなくてもよい。すなわち、マウスが載置面に載置されている限り、常時、マウスの移動が検出されるようにしてもよい。また、同様の機能は、実施形態とは別の機構によって実現されてもよい。
スイッチ機構が設けられる場合において、スイッチを擬似的に大きくするための部材(実施形態では操作部材及びプランジャ)は設けられなくてもよい。すなわち、直接スイッチが操作されてもよい。また、同様の機能は、実施形態とは別の機構によって実現されてもよい。
互いに隣接する操作部材の上面の段差は、実施形態とは異なり、操作部材自体の形状の相違によって実現されてもよいし、プランジャの大きさの相違によって実現されてもよい。また、プランジャとは別の弾性機構(ばね機構含む)が設けられる態様において、当該弾性機構の大きさ乃至はストロークの相違によって前記の段差が実現されてもよい。弾性機構(プランジャ含む)が設けられず、操作されていない状態の操作部材がタクティルスイッチに支持される態様において、タクティルスイッチの大きさの相違によって前記の段差が実現されてもよい。スイッチ機構が設けられる土台の高さ自体の相違によって前記の段差が実現されてもよい。