JP2017031214A - 医薬組成物およびその局所使用 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、非炎症性の状態を治療する改善された方法、およびそれに使用される組成物を提供することである。
【解決手段】本発明者らは、驚くべきことに、脂肪細胞からの分泌物を含む脂肪組織由来細胞からの分泌物が、多様な非炎症性の状態を改善するため、毛、羊毛および毛皮の成長を刺激するため、ならびにざ瘡の治療または予防のために有効であることを明らかにした。
【選択図】なし

Description

本発明は、脂肪組織由来分泌物、例えばウシ科動物脂肪組織から誘導される脂肪組織由来分泌物を含む組成物の調製方法、および局所使用の医薬組成物の調製における係る組成物の使用に関する。本発明は、また、非炎症性状態の局所治療、例えば、皮膚の状態を治療するためおよび局所適用により対象の毛の成長を刺激するための、脂肪組織由来分泌物およびその医薬組成物の使用に関する。本発明は、また、ざ瘡の局所治療のための脂肪組織由来分泌物およびその医薬組成物の使用に関する。
脂肪組織は、大型の脂質充填脂肪細胞の細胞個体群と、多様な結合線維に関連する細胞ならびに毛細管および大血管に関連する細胞を含む非脂肪細胞の個体群とを含有する。非脂肪細胞個体群は、また、多様な浸潤性免疫細胞、および神経系に関連する細胞プロセスを含む。非脂肪細胞個体群は、また、脂肪由来成体幹細胞の個体群を含むと考えられ、したがって、多様な治療用途において単離成体幹細胞の供給源として脂肪組織を使用することに関心がもたれてきた。
一般に、脂肪組織由来の推定的な成体幹細胞を得る方法は、脂肪由来非脂肪細胞から脂肪細胞が欠乏させることを伴い、このことは、脂肪組織をコラゲナーゼなどの酵素で消化し、次に消化試料を遠心分離して、遊離細胞を分離することを必要とする。遠心分離の際に、脂肪由来非脂肪細胞は脂肪細胞から分離してペレットを形成し、一方、脂質含有脂肪細胞が浮遊する。次に、非脂肪細胞を含有する画分を、組織幹細胞の供給源として使用する。
本発明者らは、対象における炎症性疾患の治療または炎症性疾患に関連する疼痛の緩和、ならびに軟骨または骨の疾患などの状態の疼痛の治療および緩和に使用される医薬組成物の調製のための、脂肪細胞を含む脂肪組織由来細胞懸濁液の使用を以前に記載している。これは、オーストラリア特許出願第2009201915号および国際公報第2010/020005号に記載されており、これらの内容は、相互参照として本明細書に組み込まれる。非炎症性の状態を治療する改善された方法、およびそれに使用される組成物が、依然として必要とされている。
尋常性ざ瘡および嚢胞性ざ瘡を含むざ瘡は、一般的な皮膚疾患である。一般的にざ瘡に罹患する皮膚の領域には、顔面、胸部の上側および背部が含まれる。ざ瘡は、最も一般的には青年期に生じ、多くの場合に成人まで続く。多様な治療がざ瘡のために利用可能であるが、ざ瘡瘢痕化および多くの場合に青年である罹患者に対する精神的な影響の可能性を考えると、代替的または改善された治療が望ましい。
豪州特許出願第2009201915号 国際公報第2010/020005号
本発明は、非炎症性の状態を治療する改善された方法、およびそれに使用される組成物を提供することを目的にする。
本発明者らは、驚くべきことに、脂肪細胞からの分泌物を含む脂肪組織由来細胞からの分泌物が、多様な非炎症性の状態を改善するため、毛、羊毛および毛皮の成長を刺激するため、ならびにざ瘡の治療または予防のために有効であることを明らかにした。分泌物が調製される脂肪組織由来細胞は、脂肪細胞を含んでも、含まなくてもよい。
本発明の第1態様では、対象の非炎症性疾患の局所治療のための医薬の製造における、脂肪組織由来分泌物を含む組成物の使用が提供される。
第2態様では、脂肪組織由来分泌物を薬学的に許容される媒体または希釈剤と一緒に含む医薬組成物を、対象に局所投与することを含む、対象の非炎症性疾患を治療する方法が提供される。
一実施形態において、非炎症性疾患は、前記対象における以下の状態(i)乾燥肌、(ii)皮膚の痒み(itchy skin)、(iii)虫刺され、(iv)日焼け、(v)皮膚のしわ、(vi)薄皮、(vii)皮膚のひび割れ(cracking)、(viii)昆虫刺傷、(ix)瘢痕化、(x)伸展裂創、(xi)日焼けによるしみ(sun spots)、(xii)加齢によるしみ(age spots)、(xiii)肝班、(xiv)眼の周りの腫れおよび/またはくま、(xv)足白癬、(xvi)いぼの一つ以上に関連し、前記治療は、前記状態の一つ以上を緩和する。
第3態様では、対象の毛、毛皮または羊毛の成長を刺激する局所使用のための医薬の製造における脂肪組織由来分泌物の使用が提供される。
第4態様では、脂肪組織由来分泌物を薬学的に許容される媒体または希釈剤と共に含む医薬組成物を、対象に局所投与することを含む、対象の毛、羊毛または毛皮の成長を刺激する方法が提供される。
一実施形態において、対象は、(i)手術関連の脱毛、(ii)化学療法関連の脱毛、(iii)放射線曝露関連の脱毛、(iv)脱毛症、(v)男性型脱毛症、(vi)女性型脱毛症の一つ以上を有する。
第5態様では、対象のざ瘡の局所治療または予防のための医薬の製造における、脂肪組織由来分泌物を含む組成物の使用が提供される。一実施形態において、医薬は、青年のざ瘡の治療または予防のためのものである。
第6態様では、脂肪組織由来分泌物を薬学的に許容される媒体または希釈剤と共に含む医薬組成物を、対象に局所投与することを含む、対象のざ瘡を治療または予防する方法が提供される。
一実施形態において、対象は青年である。一実施形態において、対象は臨床的に関連するざ瘡を有する。実施形態において、ざ瘡は嚢胞性ざ瘡である。実施形態において、対象は重篤なざ瘡を有する。実施形態において、対象は臨床的に関連するざ瘡を有する青年である。
本明細書に記載されている本発明の実施形態は、関連する場合には、本発明の全ての態様に当てはまる。
一実施形態において、局所投与のための医薬または医薬組成物は、クリーム剤、ローション剤、液剤または軟膏剤である。一実施形態において、医薬または医薬組成物は、ヒト用の医薬または医薬組成物である。一実施形態において、医薬または医薬組成物は、動物用の医薬または医薬組成物である。
一実施形態において、脂肪組織由来分泌物を含む組成物は、ウシ科動物由来のものである。一実施形態において、脂肪組織由来分泌物を含む組成物は、ブタ由来のものである。
一実施形態において、脂肪組織由来分泌物を含む組成物は、脂肪細胞を更に含む。一実施形態において、脂肪組織由来分泌物を含む組成物は、脂肪細胞を実質的に含まない。
一実施形態において、脂肪組織由来分泌物を含む組成物は、脂肪細胞を含む細胞懸濁液から調製される。一実施形態において、脂肪組織由来分泌物を含む組成物は、脂肪細胞を実質的に含まない細胞懸濁液から調製される。
一実施形態において、対象はヒトである。一実施形態において、対象は青年期のヒトである。一実施形態において、対象は非ヒト哺乳動物である。一実施形態において、非ヒト哺乳動物はイヌ科である。一実施形態において、非ヒト哺乳動物はネコ科である。一実施形態において、非ヒト哺乳動物はウマ科である。一実施形態において、非ヒト哺乳動物はヒツジ属のものである。
一実施形態において、脂肪組織由来分泌物は対象に対して自家性である。一実施形態において、脂肪組織由来分泌物は対象に対して同種性である。一実施形態において、脂肪組織由来分泌物は対象に対して異種性である。一実施形態において、脂肪組織由来分泌物は、ウシ科動物由来のものである。一実施形態において、脂肪組織由来分泌物は、ブタ由来のものである。
一実施形態において、脂肪組織由来分泌物または前記分泌物を含む細胞培養物は、凍結乾燥ならびに適切な液体および容積での再水和などにより、濃縮される。一実施形態において、再水和は、凍結乾燥前の元の容積の約5〜約20倍少ない容積において行われる。
一実施形態において、脂肪細胞が脂肪組織由来分泌物に添加される。
第7態様では、
(i)ウシ科動物脂肪組織の試料をタンパク質分解酵素溶液に曝露して、細胞懸濁液を生成する工程;
(ii)細胞の懸濁液を遠心分離して、細胞ペレット、脂肪細胞を含む浮遊細胞層の上側の遊離脂質層、ならびに、細胞ペレットおよび浮遊細胞層と比べて細胞が欠乏している、細胞ペレットと浮遊細胞層の間の中間層を形成する工程;
(iii)遊離脂質層および中間層を除去する工程;
(iv)任意選択により、脂肪細胞を含む浮遊細胞層の一部または実質的に全てを除去する工程;
(v)細胞ペレットを、脂肪細胞を含む浮遊細胞層が存在する場合、該浮遊細胞層と混合して、脂肪細胞を含んでも含まなくてもよい脂肪組織由来細胞懸濁液を形成する工程;
(vi)細胞懸濁液を適切な条件下で培養する工程;
(vii)細胞培養物の上澄みを採取して、ウシ科動物脂肪組織由来分泌物を含む組成物を形成する工程
を含む、ウシ科動物脂肪組織由来分泌物を調製する方法が提供される。
一実施形態において、タンパク質分解酵素溶液は、コラゲナーゼを約0.25%w/vの最終濃度で含む。一実施形態において、ウシ科動物脂肪組織の消化は不完全である。
一実施形態において、脂肪細胞を含む浮遊細胞層は保持される。一実施形態において、脂肪細胞を含む浮遊細胞層は部分的に除去される。一実施形態において、脂肪細胞を含む浮遊細胞層は除去される。
一実施形態において、細胞懸濁液を適切な条件下で培養する工程は、培養して接着性培養物を形成することを含む。一実施形態において、接着性細胞培養物は、コンフルエントな細胞培養物である。一実施形態において、細胞懸濁液を適切な条件下で培養する工程は、撹拌培養物で細胞を培養することを含む。一実施形態において、採取された上澄みは脂肪細胞を更に含む。一実施形態において、採取された上澄みは、脂肪細胞を実質的に含まない。一実施形態において、本方法は、前記採取上澄みから細胞を除去する工程を更に含む。
一実施形態において、本方法は、細胞培養物を凍結乾燥することを更に含む。一実施形態において、本方法は、ウシ科動物脂肪組織由来分泌物を凍結乾燥することを更に含む。一実施形態において、凍結乾燥材料は、適切な液体において適切な容積で再水和される。一実施形態において、再水和は、凍結乾燥前の元の容積の約5〜約20倍少ない容積において行われる。
第8態様では、(i)対象の非炎症性状態の治療、または(ii)対象の毛、羊毛もしくは毛皮の成長の刺激、または(iii)対象のざ瘡の治療もしくは予防における局所使用のための医薬の製造における、ウシ科動物脂肪組織由来分泌物を含む組成物の使用が提供される。
一実施形態において、ウシ科動物脂肪組織由来分泌物を含む組成物は、第7態様の方法に従って調製される。
第9態様では、ウシ科動物脂肪組織由来分泌物を薬学的に許容される媒体または希釈剤と共に含む医薬組成物が提供される。
一実施形態において、医薬組成物または医薬は、ローション剤、クリーム剤、液剤または軟膏剤の形態などの局所投与用に処方される。一実施形態において、医薬組成物または医薬は、ヒト対象への使用に適している。一実施形態において、医薬組成物または医薬は、非ヒト対象への使用に適している。
一実施形態において、ウシ科動物脂肪組織由来分泌物を含む組成物は、脂肪細胞を更に含む。一実施形態において、ウシ科動物脂肪組織由来分泌物を含む組成物は、脂肪細胞を実質的に含まない。
以上に記載された発明の概要は、限定的なものではなく、本発明の他の特徴および利点は、以下の発明を実施するための形態および特許請求の範囲によって明らかとなる。
本発明の好ましい形態を、添付の図面を参照して以下に説明する。
剃毛後7、12および22日目に撮影した一匹のイヌの剃毛部分における毛の再成長である。左側のパネル(「治療済」)は、ウシ科動物脂肪組織由来分泌物を1日2回局所投与した剃毛部分における毛の再成長を示し、一方、右側パネル(「対照」)は、治療を受けなかった剃毛部分における毛の再成長を示す。 ウシ科動物脂肪組織由来分泌物を含む組成物をざ瘡の治療のために局所投与された7人のヒトの試験結果を示す。(A)は、個別の試験対象の結果を示し、(B)は、7人の1日毎の平均した結果を示す。
略語
利便性のために、本明細書に使用される以下の略語を下記に提示する。
DMEM ダルベッコー修飾イーグル培地
RPMI ロズウェルパーク記念研究所の培地
SVC 間質血管細胞
定義
本発明の文脈において、「脂肪組織由来分泌物」を含む組成物への言及は、脂肪組織の細胞から放出された一つ以上の因子を含む組成物を意味すると理解される。分泌物を含む組成物の調製に使用される材料は、脂肪細胞を含んでも、脂肪細胞を実質的に含まなくてもよい。
用語「薬学的に許容される媒体または希釈剤」は、本明細書で使用されるとき、ヒト対象への局所投与に適している媒体または希釈剤のみならず、非ヒト哺乳類対象への局所投与に適している媒体または希釈剤も包含されることが意図される。特定の実施形態において、媒体または希釈剤は、非ヒト哺乳類対象への投与に適している。特定の実施形態において、媒体または希釈剤は、ヒト対象への投与に適している。
用語「治療する」(treating)、「治療」(treatment)、「療法」(therapy)などは、本明細書の文脈において、非炎症性疾患または皮膚の状態またはざ瘡の症状および/または基本的な原因を緩和することを意味する。簡潔には、これらは本明細書において集合的に「状態」または「疾患」と様々に呼ばれることがある。特定の実施形態において、治療は、疾患もしくは疾患の症状の進行を減速、遅延もしくは停止させるか、または少なくとも一時的に疾患の進行を逆転させる。したがって、本発明の文脈において、語「治療」または「治療する」などのその派生語には、治療用途に関連して使用されるとき、治療の全ての局面、例えば、治療される状態に関連する疼痛の緩和、治療される状態の重篤度の緩和、治療される状態の一つ以上の症状の改善、治療される対象の全体的な健康状態の改善など(例えば、ざ瘡の治療および皮膚の外観の改善)が含まれる。語「治療」またはその派生語の使用は、「治療される」対象が前述の利益の一つ以上のいずれかを経験できることを意味すると理解される。
本明細書の全体にわたって、「一つ」(“a”または“one”)の要素への言及は、特に文脈から決定されない限り、複数を除外しない。
用語「治療有効量」には、本明細書で使用されるとき、その意味の範囲内において所望の治療効果を提供するために本発明において使用される化合物または組成物の非毒性であるが十分な量が含まれる。必要とされる正確な量は、治療される種、対象の年齢および一般的な状態、共存症、治療される状態の重篤度、投与される特定の作用物質、および投与様式などの要因に応じて対象毎に変わる。したがって、いずれの場合においても、適切な「有効量」は、日常的な方法のみを使用して当業者によって決定することができる。
本明細書の文脈において、用語「含んでいる」(comprising)は、含まれる(including)を意味するが、必ずしも含まれるのみを意味するものではない。更に、「含む」(comprise)および「含む」(comprises)などの語「含んでいる」の変形は、対応して多様な意味を有する。したがって、用語「含んでいる」およびその変形は、追加の整数または特徴が、例えば、整数Aを含んでいるまたは整数AおよびBを含んでいると記載されている組成物、方法などに、任意選択により存在しうるように、排他的な意味ではなく包括的な意味で使用される。
本明細書の文脈において、用語「約」は、当業者が所定の値と関係付ける通常の許容差を示すと理解される。
本明細書の文脈において、範囲がパラメーターに記述されている場合、パラメーターは、範囲の記述された終点を含む記述範囲内の全ての値を含むことが理解される。例えば、「5〜10」の範囲は、5、6、7、8、9および10の値、ならびに記述範囲内の任意の部分範囲を含むこと、例えば、6〜10、7〜10、6〜9、7〜9などの部分範囲を含むこと、記述された範囲の文脈において妥当である整数、例えば5.5、6.5、7.5、5.5〜8.5および6.5〜9などの任意の値および範囲を含むことが理解される。
本明細書の文脈において、用語「複数」は、1を超える任意の数を意味する。
治療または療法における本発明の方法および組成物の使用への本明細書における言及は、ヒトおよび動物用途などの非ヒト用途に適用可能であることが理解されることに留意するべきである。したがって、特に指定のない限り、患者、対象または個体への言及は、ヒト、または社会的、経済的もしくは研究的に重要な任意の種の個体などの非ヒトを意味し、非ヒトには、ヒツジ属、ウシ科、ウマ科、ブタ、ネコ科、イヌ科、霊長類、齧歯類の分類の構成構成メンバー、特にヒツジ、ウシ、ウマおよびイヌなどのこれらの分類の構成メンバーで家畜化されたものが含まれるが、これらに限定されないことが理解される。
許容される範囲において、本明細書に引用される全ての参考文献は、その全体が参照として組み込まれる。
(好ましい実施形態の詳細な説明)
以下、本発明を、例示の目的のみで含まれる以下の例を参照して、より詳細に説明する。
驚くべきことに、本発明者らは、脂肪細胞を含んでも含まなくてもよい脂肪組織由来細胞からの分泌物が、多様な非炎症性の状態を改善するため、毛、羊毛および毛皮の成長を刺激するため、ならびにざ瘡の緩和のために有効であることを明らかにした。非炎症性疾患を治療するため、毛、毛皮および羊毛の成長を刺激するため、およびざ瘡の治療または予防のための、脂肪組織由来分泌物を含む局所組成物およびそれらの組成物の使用が、本明細書に記載される。
したがって、本発明の一態様では、対象の非炎症性疾患を治療する方法であって、脂肪組織由来分泌物を薬学的に許容される媒体または希釈剤と一緒に含む医薬組成物を対象に局所投与することを含む方法が提供される。
用語「炎症性」は、疾患への言及において使用されるとき、不適当なもしくは通常の方法では解決しない炎症により引き起こされる、係る炎症からもたらされる、または係る炎症を引き起こす病理学的過程を意味する。炎症性疾患は、全身性でありうる、または特定の組織もしくは臓器に局在しうる。本発明において治療が考慮される非炎症性状態は、不適当な炎症または通常の方法で解決しない炎症の結果として生じるものではない状態である。
非炎症性疾患の治療には、そのような疾患の症状または発現の一つ以上の緩和が含まれる。例えば、本発明の方法には皮膚の状態の治療が含まれる。特定の実施形態において、本発明は、炎症性疾患の発現ではない皮膚の状態を治療する方法を提供する。本発明の治療に考慮される特定の状態は、状態が日焼けである場合など、ある程度は炎症として発現しうるが、そのような状態は、一般に炎症性疾患と分類されず、したがって、本発明の目的の非炎症性状態または非炎症性状態の発現である。
本発明における治療に考慮される特別の状態には、(i)乾燥肌、(ii)皮膚の痒み、(iii)虫刺され、(iv)日焼け、(v)皮膚のしわ、(vi)薄皮、(vii)皮膚のひび割れ、(viii)ざ瘡、(ix)瘢痕化、(x)伸展裂創、(xi)日焼けによるしみ、(xii)加齢によるしみ、(xiii)肝班、(xiv)眼の周りの腫れおよび/またはくま、(xv)足白癬、(xvi)いぼが含まれ、前記治療は、前記状態の一つ以上を緩和する。
脂肪組織由来分泌物およびその医薬組成物の更に驚くべき効果は、個体に投与されると毛の成長を刺激することである。したがって本発明の更なる態様では、対象の毛、羊毛または毛皮の成長を刺激する方法であって、脂肪組織由来分泌物を薬学的に許容される媒体または希釈剤と一緒に含む組成物を対象に局所投与することを含む方法が提供される。
組成物は、個体への局所投与用に処方される。特定の実施形態において、対象はヒトである。個体において毛成長の刺激を提供する組成物の能力は有益であり、ここで対象は、(i)手術関連の脱毛、(ii)化学療法関連の脱毛、(iii)放射線曝露関連の脱毛、(iv)脱毛症、(v)男性型脱毛症、(vi)女性型脱毛症の一つ以上を有する。
特定の実施形態において、組成物が投与される対象は、羊毛または毛皮の生産の目的で保有される非ヒト動物である。例えば、対象は、羊毛の生産のために保有されるヒツジ属の動物、特にヒツジでありうる。特定の実施形態において、非ヒト哺乳動物は、イヌ科、ネコ科、ウシ科またはウマ科などの愛玩用動物、または品評会用の動物、または繁殖用動物である。
ざ瘡
本発明者は、脂肪組織由来分泌物およびその医薬組成物がざ瘡の治療に有効であることを明らかにした。ざ瘡は、典型的には、死んだ皮膚細胞および/または皮脂の蓄積によって生じうる、皮膚の小胞、孔または皮脂腺の封鎖の結果として生じる。これは、自然発生共生細菌プロピオニバクテリウムアクネス(Propionibacterium acnes)または表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)などによる、封鎖小胞、孔または腺における細菌コロニー形成によって悪化しうる。
ざ瘡は、顔面、胸部の上側および背部などの皮脂小胞または腺が密集している皮膚の領域に典型的に罹患する。より重篤なざ瘡の場合では、ざ瘡嚢胞は、汗が臀部、鼠径部および腋窩領域などにある毛嚢および発汗管に集まる皮膚の領域に生じうる。ざ瘡は、非炎症性の形態で発現しうるが、重篤なざ瘡は、炎症性成分を有することもある。本発明において治療または予防が考慮されるざ瘡は、炎症性成分を有しうることが理解される。本発明において治療または予防が考慮されるざ瘡は、非炎症性でありうることも理解される。
ざ瘡は、最も一般的には青年期に生じ、多くの場合に成人まで続く。青年期では、ざ瘡の発生は、思春期に男性および女性においてレベルが増加するテストステロンなどのアンドロゲンの増加に関連しうる。
ざ瘡の身体的発現は多様であり、外観および長期的影響の両者の重篤度は変動しうる。中程度のざ瘡には、例えば、落屑状の赤い皮膚、黒色面皰および白色面皰(面皰とも呼ばれる)、丘疹(ピンヘッドとも呼ばれる)、より重篤な場合では、膿疱または小膿疱、小結節および嚢胞が含まれうる。大きな小結節は、結節嚢胞性ざ瘡または嚢胞性ざ瘡と呼ばれる。嚢胞性ざ瘡は、典型的には尋常性ざ瘡よりも深い皮膚に罹患する。ざ瘡の存在による個体に対する身体的不快感および潜在的な精神的影響の他に、ざ瘡は、皮膚の身体的瘢痕化などにより個体に対して長期の影響を有しうる。
本発明は、全ての形態のざ瘡の治療または予防を考慮する。特定の実施形態において、方法は、臨床的に関連するざ瘡を対象とする。本明細書で使用されるとき、臨床的に関連するざ瘡は、瘢痕化などによる身体的または感情的のいずれかによって、臨床的介入が推奨される程度で個体に有害な影響を与える可能性を有するざ瘡である。臨床的介入は、熟練の医師によっても、よらなくてもよい。典型的には、介入は、中程度から重篤のざ瘡を有する対象において、または一つ以上の大きな小結節もしくは嚢胞を有する対象において、または広範囲のざ瘡を有する対象において、または中程度から重篤のざ瘡の個人歴もしくは家族歴を有する対象において推奨される。
本明細書に記載されている脂肪組織由来分泌物およびその医薬組成物の使用によって、ざ瘡を有する個体は、皮膚の罹患領域の炎症の低減、治癒の加速および瘢痕化の低減を含む状態の改善を経験することができる。本明細書において示されているように、本発明の組成物の連続使用は、個体におけるざ瘡の再発を防止することができる、または再発したざ瘡の重篤度を低減することができる。
脂肪組織
脂肪組織は、ヒト脂肪組織または哺乳類動物の脂肪組織でありうる。ヒトまたは動物は、生体または死体でありうるが、好ましくは、脂肪組織内に未だ脂肪細胞が生存していることが条件である。脂肪組織は、成熟した動物または若い動物から取り出されたものでありうる。特定の実施形態において、動物は、イヌ科もしくはイエネコなどの愛玩動物、または労働用の動物である。他の特定の実施形態において、哺乳動物は、ウマ科(ウマ、ロバ(donkey)、ロバ(ass)を含む)、ウシ科(ウシおよびスイギュウを含む)、ヒツジ属、ヤギ属、ブタおよびラクダ科(ラクダ、ラマ、アルパカなどを含む)などの農場用動物、繁殖用動物または競走用動物である。他の実施形態において、動物は、齧歯類などの研究用動物である。他の実施形態において、動物は、ネコ科構成メンバー、イヌ科構成メンバー、齧歯目構成メンバー、またはクジラ目、奇蹄目、偶蹄目、管歯目、イワダヌキ目、カイギュウ目もしくは長鼻目のうちの一つの構成メンバーなどの動物園の動物である。好ましい実施形態において、脂肪組織は、ウシ科の動物またはブタのものである。
脂肪組織は、脂肪組織由来分泌物を含む医薬組成物が投与される対象と同じ個体由来のものであってもよく、脂肪組織、したがって脂肪組織由来分泌物は、自家性である。脂肪組織は、脂肪組織由来分泌物を含む医薬組成物が投与される対象と同じ種の異なる個体由来のものであってもよく、脂肪組織、したがって脂肪組織由来分泌物は、同種性である。特定の実施形態において、脂肪組織は、脂肪組織由来分泌物を含む医薬組成物が投与される対象と異なる種の個体由来のものであってもよく、脂肪組織、したがって脂肪組織由来分泌物は、異種性である。脂肪組織は、単一供給源から由来しうる、または単一種の一つを超える個体などの一つを超える供給源から、もしくは複数種から由来しうる。
脂肪組織は、利用可能である身体内の任意の供給源に由来しうる。例えば皮下脂肪は、尾の基部からの切除またはキーホール手術技術の使用などによる表面上の創傷のみで容易に利用可能である。皮下脂肪組織は、脂肪吸引技術を使用して収集することができる。例えば脂肪組織は、雄または雌の哺乳動物を無性化する場合、生殖組織から除去することができる。脂肪組織を、殺処分したばかりの動物から除去することができる。脂肪組織は、「白色」脂肪組織および/または「褐色」脂肪組織を含むことができる。特定の実施形態において、脂肪組織は、白色脂肪組織のみを含む。
脂肪組織を組織培養培地または緩衝等張液ですすいで、接着赤血球を除去することができる。脂肪組織をベタジンなどの殺菌薬ですすぐこともでき、脂肪組織由来細胞懸濁液を生成する前に、調整してまたは大まかに処理して、大血管または結合組織要素を除去することができる。
脂肪組織由来細胞懸濁液
脂肪組織由来細胞分泌物、したがってそのような分泌物を含む組成物は、好ましくは、最初に脂肪組織由来細胞懸濁液を得ること、または調製することによって調製される。細胞懸濁液は、脂肪細胞を含んでも、脂肪細胞を実質的に含まなくてもよい。脂肪組織由来分泌物を調製する目的の細胞懸濁液は、細胞懸濁液が、遠心分離した後の脂肪細胞画分の除去などで出発材料と比較して脂肪細胞の有意な欠乏を有する場合、脂肪細胞を実質的に含まないことが本明細書において理解される。脂肪細胞を実質的に含まないことは、細胞懸濁液と関連して使用されるとき、脂肪細胞の完全な不在を含むこと、また、材料における脂肪細胞の最小限の保持が生じる状況を含むことが理解される。
用語「脂肪組織由来細胞懸濁液」は、本明細書で使用されるとき、脂肪組織からの単離細胞または脂肪組織の小さな凝集体もしくは片、あるいは単離細胞、脂肪組織の小さな凝集体および片の二つ以上の混合物を包含する。
細胞懸濁液は、当技術分野において容易に利用可能である技術を使用して脂肪組織を機械的に解離することにより得ることができる。脂肪組織の機械的解離に適した任意の方法は、例えば、脂肪組織をブレードもしくははさみで切り刻むこと、または脂肪組織を、組織が単離細胞および/もしくは脂肪組織の小片に分解するのに十分な孔径のスクリーンもしくはメッシュを介して押し込むことを使用することができる。適切な技術の組み合わせを使用することができる。脂肪組織の小さな凝集体は、解離脂肪由来細胞が、例えば培地中に放置されることによって大きな集合体に再結合するときに形成されうる。脂肪組織の小片または集合体は、最大直径が10ミリメートル未満、最大直径が5ミリメートル未満、最大直径が1ミリメートル未満、最大直径が500μm未満または最大直径が250μm未満でありうる。特定の実施形態において、機械的解離技術は、一つ以上のタンパク質分解酵素を使用することなく使用される。これらの実施形態において用いられる技術を使用して、脂肪組織由来細胞懸濁液を素早く生成することができる。
脂肪組織由来細胞懸濁液をメッシュまたはスクリーンで濾過して、メッシュまたはスクリーンの孔径よりも大きな細胞凝集体または組織片を除去することができる。
特定の実施形態において、タンパク質分解酵素は、脂肪組織が脂肪組織由来細胞懸濁液に解離することを促進するために使用される。そのような使用に適した酵素は当技術分野において良く知られており、トリプシンおよびコラゲナーゼが含まれるが、これらに限定されない。タンパク質分解酵素を、脂肪組織由来細胞懸濁液の使用前に、特にこれらの酵素が細胞懸濁液の所望の使用と適合しないことがある場合に除去または不活性化することができる。特定の実施形態では、脂肪組織の機械的解離の技術と組み合わせたタンパク質分解酵素が、脂肪組織由来細胞懸濁液の生成に使用される。
特定の実施形態において、細胞懸濁液を培地に懸濁することができる。培地を、脂肪組織の分離の前、間または後に脂肪組織に加えることができる。培地は、組織培養培地などの、適切な培養条件下で脂肪組織細胞の生存を少なくとも24時間維持することができる培地でありうる。培地は、脂肪組織細胞の生存を少なくとも1時間維持することができるリン酸またはHEPES緩衝食塩水などの等張緩衝溶液でありうる。培地は、血清無含有培地でありうる。培地は、細胞懸濁液における脂肪組織細胞の生存を支持または延長する血清または血清成分を含むことができる。血清または血清成分は、自家血清または血清成分でありうる。血清または血清成分は、単一の個体からのもしくは複数の個体から共同して出された同種の血清または血清成分でありうる。
更なる実施形態において、細胞懸濁液は培地に懸濁されないが、代わりに細胞は、組織の解離の際に形成される液体に懸濁される。
特定の実施形態において、脂肪組織由来細胞懸濁液の調製は、遠心分離工程を含む。培地などの液体に懸濁されている単離細胞または脂肪組織の小さい凝集体もしくは片の遠心分離は、およそ500gで10分間、または、脂肪由来非脂肪細胞を含む細胞ペレットを生成するのに十分な時間および十分なg力であり、その上には培地の層があり、その上に浮遊しているものは、脂肪細胞を含む層であり、最上部に浮遊しているものは、破裂した脂肪細胞から誘導された脂質の層である。
遠心分離した後、特定の実施形態において、脂肪細胞の分泌物を含む培地層を収集することができ、これは、脂肪組織由来分泌物の一つの組成物または供給源を代表するものである。この実施形態において、分泌物を含む収集された培地または組成物は、脂肪細胞を含んでも、含まなくてもよい。
他の特定の実施形態において、遠心分離した後、脂質層および培地層を廃棄し、保持された細胞を混合すると、脂肪細胞および脂肪由来非脂肪細胞を含む脂肪組織由来細胞懸濁液が残る。
他の特定の実施形態において、遠心分離した後、脂質層、培地層、および脂肪細胞を含む浮遊層を廃棄し、それによって主に脂肪由来非脂肪細胞が保持される。
特定の実施形態において、多重遠心分離工程を、例えば追加の細胞分離工程を提供するために使用することができる。
他の実施形態において、脂肪組織由来細胞懸濁液の調製は、遠心分離工程を含まない。
脂肪組織由来細胞懸濁液は、新鮮なものを単離することができ、すなわち、提供者から脂肪組織を取り出したおよそ6時間以内に受容者に投与される脂肪組織由来分泌物の調製に、これを利用することができる。これらの実施形態において、脂肪組織由来分泌物の調製は、典型的には本明細書に記載される細胞の培養工程を含まない。あるいは、脂肪組織由来細胞懸濁液を、典型的には培地に懸濁されている場合、脂肪組織由来分泌物の調製に利用される前に6時間を超えて保存することができる。
脂肪組織由来分泌物の調製に利用される脂肪組織由来細胞懸濁液は、脂肪細胞を含んでも、含まなくてもよい。特定の実施形態において、脂肪細胞は、生存している脂肪細胞を含む。特定の実施形態において、脂肪細胞は、細胞質に検出可能な量の脂質を保持し、脂質によりもたらされる密度の差に基づいて脂肪由来非脂肪細胞から分離することができる。脂質は、位相差顕微鏡法を含む光学顕微鏡法技術を使用して、またはオイルレッドOなどの親油性色素による試料細胞の染色により検出可能でありうる。細胞質に脂質を保持する脂肪細胞は、他の脂肪由来細胞よりも脆いと考えられ、したがって、生存している脂肪細胞が必要な場合、大きな割合の脂肪細胞を損傷する、または生存できなくする組織解離技術は回避されるべきである。例えば、脂肪組織の超音波解離、または脂肪細胞が激しく振とうされる技術は、多数の生存脂肪細胞を含有する細胞懸濁液を提供する可能性がない。脂肪細胞の生存可能性は、LIVE/DEAD細胞生存可能性アッセイ(Life Technologies)などの容易に利用可能な技術を使用して容易に決定することができる。
特定の実施形態において、脂肪組織由来細胞懸濁液は、脂肪由来非脂肪細胞をそれほど含まない。これらの実施形態において、脂肪組織由来細胞懸濁液は、ペレット化脂肪由来非脂肪細胞が除かれる、本明細書に記載されている遠心分離工程を含む方法により都合良く調製することができる。
特定の実施形態において、脂肪組織由来細胞懸濁液は、脂肪細胞および脂肪由来非脂肪細胞の両方を含む。これらの実施形態において、脂肪組織由来細胞懸濁液は、脂肪細胞層およびペレット化脂肪由来非脂肪細胞の両方が収集される、本明細書に記載されている遠心分離工程を含む方法により都合良く調製することができる。あるいは、これらの実施形態において、脂肪組織由来細胞懸濁液は、遠心分離工程なしで、本明細書に記載されているように脂肪組織を分離して調製することができる。
ウシ科動物脂肪組織由来細胞懸濁液
本発明者らは、驚くべきことに、ウシ科動物供給源から、特にウシ科動物の尾基部組織からの脂肪組織由来細胞懸濁液の調製は、ヒト、イヌ科、ウマ科、マウスおよびラットなどの他の多数の脂肪組織供給源に適した標準的な方法に対して抵抗性があることを見出した。したがって、本発明の適用は、ウシ科動物脂肪由来細胞分泌物を利用する限り、最適には、ウシ科動物脂肪組織由来細胞懸濁液を調製する方法であって、
- ウシ科動物脂肪組織の試料をタンパク質分解酵素溶液に曝露して、細胞懸濁液を生成する工程;
- 細胞の懸濁液を遠心分離して、細胞ペレット、脂肪細胞を含む浮遊細胞層の上側の遊離脂質層、ならびに、細胞ペレットおよび浮遊細胞層と比べて細胞が欠乏している、細胞ペレットと浮遊細胞層の間の中間層を形成する工程;
- 遊離脂質層および中間層を除去する工程;
- 任意選択により、脂肪細胞を含む浮遊細胞層の一部または実質的に全てを除去する工程;
- 細胞ペレットを、浮遊細胞層が存在する場合、該浮遊細胞層と混合して、脂肪細胞を含んでも含まなくてもよい脂肪組織由来細胞懸濁液を形成する工程
を含む方法も用いる。
本明細書に記載されているように、脂肪細胞層は、浮遊細胞層とも呼ばれ、処理の際に除去しても、しなくてもよい。したがって、本発明の方法および組成物には、多様な実施形態において、脂肪細胞が実質的に欠乏している細胞懸濁液をもたらす脂肪細胞層の任意の除去;脂肪細胞を含む細胞懸濁液をもたらす脂肪細胞層の任意の保持;脂肪細胞層の任意の部分的除去が含まれる。
特定の実施形態において、方法は、本明細書の他の部分、特に表題「脂肪組織由来細胞懸濁液」の前記セクションに記載されているように、脂肪組織由来細胞懸濁液の調製に追加の工程を含むことができる。これらの追加の工程には、例えば、組織の機械的分離、および培地または緩衝液を介した懸濁などが含まれる。
典型的には脂肪組織由来分泌物を含むので、除去された中間層は保持されうる。
特定の実施形態において、タンパク質分解酵素溶液は、コラゲナーゼを含む。
特定の実施形態において、コラゲナーゼは、約0.25%w/v以上の最終濃度で使用される。特定の実施形態において、ウシ科動物脂肪組織をタンパク質分解酵素に曝露することは、脂肪組織の不完全な消化をもたらす、例えば有意な量の無傷の脂肪組織の存在をもたらす条件下で実施される。典型的には、例えば、消化の開始前と同じ大きさの数片の脂肪組織が存在しうる。方法の実施形態において、約20%〜約80%の範囲の脂肪組織が消化されないことがある。
特定の実施形態において、細胞を、例えば過剰遊離脂質を除去するために、多重遠心分離工程または洗浄工程に付すことができる。
以下のセクションに更に記載されるように、例えば、ウシ科、ブタ、イヌ科、ネコ科、ヒトなどの本明細書に記述されている任意の種由来のものでありうる脂肪組織由来細胞懸濁液またはそのアリコートを、脂肪組織由来細胞の分泌物を含む組成物の調製に使用することができる。
脂肪組織由来分泌物を含む組成物
脂肪組織由来細胞の分泌物を含む組成物は、脂肪細胞を含んでも、含まなくてもよい脂肪組織由来細胞懸濁液から適切な方法により調製することができる。本明細書において示されているように、脂肪組織由来細胞懸濁液の調製の際に形成される液体成分は、典型的には脂肪組織由来分泌物を含み、これは、そのような分泌物を含む組成物の一実施形態を代表している。この形態では、脂肪組織由来分泌物を含む組成物を、脂肪組織由来材料の遠心分離後の細胞ペレットと浮遊細胞層の間の中間液層の収集などにより、細胞懸濁液の調製の任意の適切な段階で収集することができる。この実施形態において、分泌物を含む収集された材料は、脂肪細胞を含んでも、含まなくてもよい。
典型的には、組成物は、培地を脂肪組織由来細胞懸濁液に曝露することにより生成される。脂肪組織由来細胞懸濁液への培地の曝露は、基層への細胞結合を可能にする条件を必要としない。これらの実施形態において、脂肪組織由来分泌物を含む組成物は、培地を脂肪組織由来細胞懸濁液に少なくとも6時間、少なくとも8時間、少なくとも10時間または少なくとも12時間などの任意の適切な時間にわたって曝露し、続いて遠心分離または濾過により培地から細胞懸濁液、またはその逆を除去することによって生成することができる。細胞懸濁液および培地の相互の除去は、細胞の完全または不完全な除去をもたらしうる。したがって、脂肪組織由来分泌物を含む培地は、細胞懸濁液から除去された後、脂肪細胞を含んでも、含まなくてもよい。特定の実施形態において、組成物は、培地を脂肪組織由来細胞懸濁液に12時間以下、18時間以下または24時間以下曝露することにより生成される。組成物は、細胞死または脂肪組織細胞の分解後の細胞から放出された細胞由来分子を含みうる。組成物は、脂肪組織由来細胞懸濁液の細胞の分泌物を含む。脂肪組織由来細胞懸濁液への培地の曝露は、4℃〜50℃の温度、より典型的には10℃〜40℃の温度、最も典型的には20℃〜37℃の温度のものでありうる。
典型的な脂肪組織由来細胞懸濁液では、5gの脂肪組織が分離され、10%の自家血清を含有する50mlのDMEMに懸濁される。脂肪組織由来細胞懸濁液は、典型的には脂肪組織供給材料の1グラム毎に100,000〜1,000,000個の非脂肪細胞を含む。脂肪組織供給材料1グラムあたりの脂肪細胞の数は、典型的には100,000〜5,000,000個である。
用語「培地」は、本明細書で使用されるとき、脂肪組織由来細胞懸濁液中の少なくとも幾つかの細胞の生存を少なくとも1時間支持する組成物を包含することが意図される。培地は、任意選択により血清を補充したDMEM、RPMIまたは最小必須培地などの組織培養培地でありうる。培地は、培地が対象への投与に適しているのであれば、リン酸緩衝食塩水またはハンクス緩衝生理食塩水などの緩衝等張溶液でありうる。培地は、脂肪組織の解離の際に形成される液体でありうる。培地には、任意選択により、インスリン、プロゲステロンおよびセレン、または血清もしくは血清成分などの、細胞の生存または結合および細胞分化を促進する因子が補充されうる。特定の実施形態において、培地は、インビボ使用に許容される医薬組成物に適していなければならない。そのような培地は、ヒトまたは動物に有害でありうる発熱物質または他の不純物を実質的に含まない。薬学的に許容される培地は、市販されている。語句「薬学的に許容される」は、動物またはヒトに投与されたとき有害、アレルギーまたは他の不都合な反応を生じない分子実体および組成物を意味する。
脂肪組織由来分泌物を含む組成物の調製は、脂肪組織由来細胞懸濁液の溶解工程を含むことができる。細胞分泌物を含む溶解産物は、任意の適切な方法により調製することができる。例示的な実施形態において、脂肪組織由来細胞懸濁液を、上記に記載された培地に曝露することができる。次に、懸濁液の細胞を、機械的破壊(例えば、激しい振とう、もしくは撹拌)、超音波破壊、凍結解凍、凍結乾燥または脂肪細胞溶解などの細胞溶解を誘発することができる一つ以上の作用物質の添加などによる任意の適切な手段によって溶解することができる。そのような溶解剤は、当技術分野において知られており、尿素、ドデシル硫酸ナトリウムおよびTriton×100が含まれる。溶解工程の後、調製物を遠心分離または濾過して、細胞片の除去を補助することができ、あるいはまた、調製物はそのような清澄工程なしで使用することができ、そのような場合、脂肪組織由来分泌物を含む組成物は、細胞片を含むこともある。幾つかの場合では、細胞溶解産物を、細胞溶解産物の沈殿によって溶解剤から除去することができる。溶解工程が不完全な細胞溶解をもたらす場合、脂肪組織由来分泌物を含む組成物は、脂肪細胞などの脂肪由来細胞を含むこともある。
特定の実施形態において、脂肪組織由来分泌物の調製は、細胞懸濁液を適切な条件下で培養することを含む。細胞懸濁液の培養方法は、当技術分野において知られており、例えば、細胞を培養してコンフルエントな接着細胞培養物などの接着細胞培養物を形成すること、および撹拌培養物で細胞を培養することを含む。細胞培養の間または後の任意の適切な時点で、上澄みを、コンフルエントな接着細胞培養物でありうる接着細胞培養物などから採取し、任意選択により前記上澄みから細胞を除去して、脂肪組織由来分泌物を含む組成物を形成する。そのように培養された細胞懸濁液は、脂肪細胞を含んでも、脂肪細胞を実質的に含まなくてもよい。脂肪組織由来分泌物を含む組成物を残すための上澄みからの細胞の除去は、完全な除去であっても、または部分的な除去であってもよい。後者の場合、脂肪組織由来分泌物を含む組成物は、そのために脂肪細胞を含むこともある。
細胞の培養を開始する前に、脂肪組織由来細胞懸濁液を、所望の容積のDMEM、RPMIまたは最小必須培地などの適切な緩衝液に再懸濁することができる。細胞懸濁液またはそのアリコートを、滅菌組織培養フラスコに加え、適切な条件下で、典型的には接着細胞がコンフルエントに達するまでインキュベートすることができる。細胞培養物は、好ましくは滅菌血清の存在下にある。培養物中の血清の濃度は、例えば約10%v/vまたは約15%v/vまたは約20%v/vなどの約1%v/v〜約30%v/vの範囲の、脂肪組織由来細胞の培養を補助する任意の適切な濃度でありうる。血清は、市販のウシ胎児血清などの脂肪組織由来細胞の培養に適した任意の血清、または当技術分野において既知の方法などにより内部で調製された血清でありうる。好ましくは、血清は、脂肪組織が得られた同じ個体から調製された自家性または同種性である。典型的には、細胞は、5%のCO2により37℃で培養される。
培養の際に、脂肪組織由来細胞は、抗炎症性分子、炎症促進性分子、増殖因子および他の細胞シグナル伝達分子を含むサイトカインを培地に分泌する。これにより、培養物の上澄みは脂肪組織由来分泌物を含む。
特定の実施形態において、培養物を凍結および凍結乾燥して、細胞および分泌物を含む凍結乾燥調製物をもたらすことができる。凍結乾燥調製物の再水和は、大部分の細胞を溶解し、追加のサイトカインの放出をもたらす。再水和は、典型的には元の容積より約5〜約20倍少ない流体の容積、より典型的には10倍の濃度の組成物をもたらす、脂肪組織由来細胞の元の容積より約10倍少ない流体の容積などの、脂肪組織由来細胞の元の容積よりも少ない流体の容積を使用して実施される。次に組成物を濾過して、細胞片を除去し、濃縮サイトカインを含有する組成物をもたらす。このことは、大量の濃縮分泌物を生産する好ましい方法を提供する。
他の特定の実施形態において、上澄みを任意の適切な時点で培養物から採取することができるが、典型的には、接着細胞培養物では、細胞が約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日後などのコンフルエンスに達したときに採取される。細胞、細胞片および任意の残留脂肪組織を、濾過などにより上澄みから除去することができる。実施形態において、濾過は、20ミクロンのメッシュを介したものでありうる。望ましい場合は、多重工程の濾過を、減少メッシュサイズの二つ以上のフィルターなどを介して行うことができる。得られた脂肪組織由来分泌物の調製物は、典型的には、0.22ミクロンのフィルターなどを介して濾過滅菌される。滅菌された組成物を直ぐに使用することができる、または使用もしくは保存のために等分することができる。典型的には、保存する場合、組成物は-20℃で凍結保存される。組成物は、脂肪組織由来細胞の分泌物を含有する。
脂肪組織由来分泌物を含む組成物は、脂肪細胞を含むこともある。存在する場合、脂肪細胞は、分泌物の調製に使用された元の脂肪組織に残っていたものでありうる、または分泌物を含む組成物に添加されたものでありうる。
本発明の医薬組成物および他の組成物
本発明の態様において、脂肪組織細胞の分泌物を含有する脂肪組織由来組成物は、局所使用の医薬組成物の調製に使用される。一つの態様によると、本発明は、対象の非炎症性疾患の治療における局所使用の医薬組成物の調製のために、脂肪組織由来分泌物を含む組成物を提供する。別の態様において、本発明は、対象の毛、羊毛または毛皮の成長の刺激における局所使用の医薬組成物の調製のために、脂肪組織由来分泌物を含む組成物を提供する。別の態様において、本発明は、ざ瘡または一つ以上のその症状の治療または予防における局所使用の医薬組成物の調製のために、脂肪組織由来分泌物を含む組成物を提供する。典型的には、医薬組成物は、一つ以上の薬学的に許容される媒体、希釈剤、賦形剤または佐剤も含む。更なる態様によると、本発明は、脂肪組織由来分泌物を、薬学的に許容される媒体、希釈剤、賦形剤または佐剤と一緒に含む医薬組成物を提供する。特定の実施形態において、脂肪組織由来分泌物を含む組成物は、脂肪細胞を更に含む。
特定の実施形態において、脂肪組織は、個別の対象から取られ、医薬組成物は、同じ個体に局所投与され、したがって、脂肪組織由来分泌物は純粋に自家調製物である。
特定の実施形態において、脂肪組織は、一つ以上の個別の対象から取られ、医薬組成物は、同じ種の異なる対象に局所投与され、したがって脂肪組織由来分泌物は、同種細胞懸濁液である。特定の実施形態において、脂肪組織は、脂肪組織由来分泌物の受容者であることが意図されるものと異なる種の個体から取られる。例えば、ウシ科動物またはブタ組織から調製された分泌物を含む組成物は、ヒトなどの異なる種の個体に局所投与されることが意図されうる。脂肪組織由来分泌物を含む組成物が、供給材料として同じ種の異なる個体に使用される、または供給材料として異なる種の個体に使用される実施形態において、組成物は、典型的には、組成物に対する宿主(受容者)免疫応答または移植片対宿主病の可能性を最小限にするため、免疫系の細胞を欠いていることがある。
特定の実施形態において、医薬組成物は、同じ個体から取られた異なる調製物または異なる個体から取られた異なる調製物などの、一つを超える脂肪組織供給源から調製される。共同して出すことは、共同培養工程などにおいて複数の脂肪組織由来細胞懸濁液を組み合わせることを含むことができ、または、共同して出すことは、別個の培養もしくは曝露工程で得ることができる、脂肪組織由来分泌物の複数の組成物を組み合わせることを含むことができる。
医薬組成物は、典型的には皮膚への直接的または間接的な接触によって、対象に局所投与される。本明細書において使用される局所投与は、経皮送達を含むことも理解される。典型的には、経皮送達系は、組成物に対する皮膚の透過性を増加する一つ以上の作用物質で処方された医薬組成物を含む。
例えば、皮膚の状態を治療するため、または毛の成長を刺激するため、またはざ瘡を治療もしくは予防するための局所投与用の医薬組成物は、皮膚表面の残留性を増加するため、セトマクロゴールクリーム剤またはソルボレンクリーム剤などの水性クリーム剤またはローション剤に処方されうる。本明細書に記載されているように、本発明者らは、本発明の組成物が、毛、毛皮または羊毛の成長の刺激に有効であることを明らかにした。したがって、局所使用の本発明の組成物には、シャンプー、コンディショナー、ヘアゲルなどのヘアケアに日常的に使用されている製品が含まれる。
医薬組成物が角膜に投与される場合、医薬組成物は、角膜投与に許容される油性軟膏剤で処方されうる、または角膜表面の残留時間を増加する角膜に許容される人工涙液と混合されうる。
本発明は、ここで、例示のみを目的として、以下の実施例を参照してより詳細に説明する。実施例は、本発明を説明するのに適うものであることが意図され、本明細書の全体にわたる記述の開示の一般性を制限するものとして解釈されるべきではない。
(実施例1)脂肪細胞と脂肪由来非脂肪細胞の混合物の調製
10gの脂肪組織試料を、成長したイヌの鼠径部から切除して収集した。脂肪組織を食塩水ですすぎ、次にはさみを使用して細かく切り刻み、20mlのダルベッコー修飾イーグル培地(DMEM, Sigma)と混合した。コラゲナーゼ(Sigma)を加えて、0.05%w/vの最終濃度を得、試料を37℃で90分間インキュベートした。インキュベーションの際に、試料を15分毎に手作業により緩やかに反転した。
コラゲナーゼ処理の後、試料をステンレス鋼メッシュ(孔径300μm)で無菌濾過し、50mlの遠心分離管に移し、500gで15分間遠心分離した。
四つの別々の層が遠心分離試料内に見え、表面に遊離脂質の小さな(2mm厚の)層、その下に白色で10mm厚の脂肪細胞層、次に主にDMEMから構成される明澄で大きな液体層、次に脂肪由来非脂肪細胞のペレットがあった。小さな脂質層をパスツールピペットで注意深く除去した。次に新たなパスツールピペットを脂肪細胞に注意深く挿入し、明澄なDMEMを、浮遊脂肪細胞またはペレット化細胞を乱すことなく除去した。このことは、浮遊脂肪細胞およびペレット化細胞のみを含有する試料をもたらした。浮遊脂肪細胞およびペレット化細胞を、パスツールピペットで穏やかに混合し、15mlの遠心分離管に移した。
次に細胞をDMEMで洗浄して、コラゲナーゼを除去した。DMEMを加えて14mlの最終容積にして、試料を500gで10分間遠心分離した。このことは、浮遊脂肪細胞、DMEM、およびペレット化脂肪由来非脂肪細胞の三つの別個の層をもたらした。DMEMを、脂肪細胞またはペレット化細胞を乱さないように配慮しながら、脂肪細胞へのパスツールピペットの挿入により注意深く除去した。
浮遊細胞およびペレット化細胞を4mlのDMEMに穏やかに再懸濁し、パスツールピペットで混合した。
(実施例2)脂肪組織由来細胞懸濁液からの細胞無含有抽出物の調製
10gのイヌ科動物脂肪組織試料を、はさみの使用により細かく切り刻み、次に5mlのDMEMと混合した。イヌ科動物自家血清を滅菌濾過し、1mlの量を、刻んだ組織の混合物に加えた。
組織混合物を撹拌することなく37℃で一晩インキュベートした。次に試料を1500gで15分間遠心分離し、脂肪細胞および組織の浮遊層と脂肪組織由来非脂肪細胞のペレットとの間の液体を、注意深く採取した。細胞無含有抽出物は、脂肪組織の分泌物を含む。
(実施例3)脂肪組織由来細胞懸濁液からの細胞無含有抽出物の代替的調製
10gの脂肪組織試料を、ウマの尾基部から切除して収集した。脂肪組織を食塩水ですすぎ、次にはさみを使用して、およそ5mmの直径の片に大まかに切り刻み、20mlのダルベッコー修飾イーグル培地(DMEM, Sigma)と混合した。コラゲナーゼ(Sigma)を加えて、0.05%[w/v]の最終濃度を生じ、試料を37℃で30分間インキュベートした。30分の終了時に、脂肪組織は部分的に消化され、部分的に消化された脂肪粒子、遊離間質血管細胞(SVC)および遊離脂肪細胞の混合物から構成された。
次に試料を500gで15分間遠心分離することにより洗浄して、コラゲナーゼを除去した。四つの別々の層が遠心分離試料内に見え、表面に遊離脂質の小さな(2mm厚の)層、その下に白色で20mm厚の脂肪組織および脂肪細胞の層、次にDMEM/コラゲナーゼの明澄で大きな層、次に脂肪組織由来非脂肪細胞のペレットがあった。小さな脂質層をパスツールピペットで注意深く除去した。次に新たなパスツールピペットを脂肪細胞に注意深く挿入し、明澄なDMEMを、浮遊脂肪組織、脂肪細胞またはペレット化細胞を乱すことなく除去した。このことは、少量のDMEMに懸濁された脂肪組織と脂肪細胞の浮遊片、およびペレット化細胞のみを含有する試料をもたらした。脂肪組織と脂肪細胞の片およびペレット化細胞を、パスツールピペットで穏やかに混合し、15mlの遠心分離管に移した。
次に脂肪組織と細胞の片を、以下のようにDMEMで洗浄してコラゲナーゼを除去した。DMEMを加えて14mlの最終容積にして、試料を500gで10分間遠心分離した。このことは、脂肪組織と脂肪細胞の浮遊片、DMEM、およびペレット化脂肪組織由来非脂肪細胞の三つの別個の層をもたらした。DMEMを、脂肪組織や脂肪細胞の片、またはペレット化細胞を乱さないように配慮しながら、脂肪細胞へのパスツールピペットの挿入により注意深く除去した。
組織培養物
浮遊細胞およびペレット化細胞を10mlのDMEMに穏やかに再懸濁し、300mlの組織培養フラスコに移した。30mlの量のDMEMおよび10mlの自家滅菌血清を加え、次にフラスコを5%CO2により37℃でインキュベートした。フラスコを顕微鏡法により毎日検査した。細胞は3〜6日間で結合し、線維芽細胞のような外観になった。
細胞無含有細胞分泌物の採取
6日後、上澄みを採取し、懸濁されている脂肪組織および細胞を20ミクロンメッシュの濾過により除去した。溶液を0.22ミクロンフィルターで滅菌濾過し、次に10mlのバイアルに無菌分配し、-20℃で凍結保存した。
(実施例4)接着細胞が欠乏している、脂肪細胞および脂肪由来非脂肪細胞の混合物の生成
4mlの量の脂肪細胞および脂肪由来非脂肪細胞を実施例1に記載されたとおりに調製した。イヌ科動物自家血清を滅菌濾過し、1mlの量を細胞混合物に加えた。
細胞混合物を、組織培養フラスコにおいて撹拌することなく37℃で一晩インキュベートした。試料を、倒立顕微鏡の使用により検査し、フラスコの表面に接着している細胞の層を観察した。非結合細胞および浮遊脂肪細胞も観察した。脂肪細胞および脂肪由来非脂肪細胞を含む非接着細胞を、注意深く傾けて出し、収集した。これらの細胞は、脂肪組織由来分泌物を含む組成物の生成に適している。
(実施例5)脂肪細胞の懸濁液の調製
10gの脂肪組織試料を、イヌの鼠径部から切除して収集した。脂肪組織を食塩水ですすぎ、次にはさみを使用して細かく切り刻み、20mlのダルベッコー修飾イーグル培地(DMEM, Sigma)と混合した。コラゲナーゼ(Sigma)を加えて、0.05%v/vの最終濃度にして、試料を37℃で90分間インキュベートした。試料を15分毎に手作業により緩やかに反転した。
次に試料をステンレス鋼メッシュ(孔径300μm)で無菌濾過し、50mlの遠心分離管に移し、500gで15分間遠心分離した。
四つの別々の層が遠心分離試料内に見え、表面に遊離脂質の小さな(2mm厚の)層、その下に白色で10mm厚の脂肪細胞層、次にDMEMの明澄で大きな層、次に脂肪由来非脂肪細胞のペレットがあった。小さな脂質層をパスツールピペットで注意深く除去した。次に新たなパスツールピペットを脂肪細胞に注意深く挿入し、明澄なDMEMおよびペレット化細胞を除去した。このことは、浮遊脂肪細胞のみを含有する試料をもたらした。脂肪細胞をパスツールピペットで穏やかに混合し、15mlの遠心分離管に移した。
次に脂肪細胞を、以下のようにDMEMで洗浄して、コラゲナーゼを除去した。DMEMを加えて14mlの最終容積にして、試料を500gで10分間遠心分離した。DMEMを、脂肪細胞へのパスツールピペットの挿入により注意深く除去した。
脂肪細胞を含む浮遊細胞を、4mlのDMEMに穏やかに再懸濁した。各工程において、脂肪組織または脂肪細胞に曝露されるDMEMは、脂肪組織由来細胞分泌物を含む。
(実施例6)ウシ科動物脂肪組織由来細胞懸濁液の調製
ヒト、イヌ科動物、イエネコ、ユキヒョウ、ウマ科動物、ラットおよびマウスの脂肪組織は、通常の濃度(0.02%または0.05%)のコラゲナーゼで全て消化された。上記に記載されたものなどの脂肪組織由来細胞を調製する標準的な方法(切り刻み、およびコラゲナーゼ消化)の使用は、ウシ科動物組織に適用されたとき、成功しなかった。本発明者は、最初に0.02%v/vのコラゲナーゼによる消化を試み、これは、ヒト、イヌ科動物およびウマ科動物の脂肪組織において成功裏に使用できる濃度である。これは成功しなかった。消化時間を増加し、消化混合物の振とうを導入した。このことは、刻まれた組織が一つの円形固体塊を形成するという結果をもたらした。コラゲナーゼ濃度を0.1%に増加し、依然として組織は消化されなかった。驚くべきことに、0.25%v/vのコラゲナーゼの濃度が使用され、混合物が2時間消化されるまでは、組織は消化されなかった。
ウシ科動物脂肪組織は、容易な利用可能性、人畜共通感染症の欠如(特にオーストラリアにおいて)、およびウシ科動物製品の使用に対する公共の許容性によって、魅力的な分泌物供給源である。同様な理由によって、本発明者は、ブタ脂肪組織も本発明の方法に使用される魅力的な供給源であると考える。
(実施例7)ウシ科動物脂肪組織の分泌物の生成
脂肪組織の調製
10gの脂肪組織試料を、2歳の雄牛の尾基部から切除して収集した。脂肪組織を食塩水ですすぎ、次にはさみを使用して細かく切り刻み、20mlのダルベッコー修飾イーグル培地(DMEM, Sigma)と混合した。コラゲナーゼ(Sigma)を加えて、0.25%[w/v]の最終濃度を生じ、試料を37℃で120分間インキュベートした。
次に試料を500gで15分間遠心分離した。四つの別々の層が遠心分離試料内に見え、表面に遊離脂質の小さな(2mm厚の)層、その下に白色で20mm厚の脂肪組織および脂肪細胞の層、次にDMEMの明澄で大きな層、次に脂肪組織由来非脂肪細胞のペレットがあった。小さな脂質層をパスツールピペットで注意深く除去した。次に新たなパスツールピペットを脂肪細胞に注意深く挿入し、明澄なDMEMを、浮遊脂肪組織、脂肪細胞またはペレット化細胞を乱すことなく除去した。このことは、少量のDMEMに懸濁された脂肪組織と脂肪細胞の浮遊片、およびペレット化細胞のみを含有する試料をもたらした。脂肪組織と脂肪細胞の片およびペレット化細胞を、パスツールピペットで穏やかに混合し、15mlの遠心分離管に移した。
次に脂肪組織と細胞の片を、以下のようにDMEMで洗浄してコラゲナーゼを除去した。DMEMを加えて14mlの最終容積にして、試料を500gで10分間遠心分離した。このことは、脂肪組織と脂肪細胞の浮遊片、DMEM、およびペレット化脂肪組織由来非脂肪細胞の三つの別個の層をもたらした。DMEMを、脂肪組織や脂肪細胞の片、またはペレット化細胞を乱さないように配慮しながら、脂肪細胞へのパスツールピペットの挿入により注意深く除去した。
組織培養物
浮遊細胞およびペレット化細胞を10mlのDMEMに穏やかに再懸濁し、300mlの組織培養フラスコに移した。30mlの量のDMEMおよび10mlの自家滅菌血清を加え、次にフラスコを5%CO2により37℃でインキュベートした。フラスコを顕微鏡法により毎日検査した。細胞は3〜6日間で結合し、線維芽細胞のような外観になった。結合細胞は、5〜10日間でコンフルエントになった。
細胞分泌物を含む組成物の採取
細胞がフラスコの底部でコンフルエントになったら、上澄みを採取し、懸濁脂肪組織および細胞を20ミクロンメッシュの濾過により除去した。溶液を0.22ミクロンフィルターで滅菌濾過し、次に10mlのバイアルに無菌分配し、-20℃で凍結保存した。
(実施例8)ウシ科動物脂肪組織の濃縮分泌物の生成
ウシ科動物脂肪組織を、実施例7に記載されたように収集し、処理し、組織培養フラスコに入れた。
接着細胞がコンフルエントになったら、組織培養フラスコを凍結し、次にTelstar Lyobeta凍結乾燥機により2日間凍結乾燥した。得られた凍結乾燥ケーキを2.5mlの蒸留水で再水和した。次に濃縮試料を、PD10カラム(GE Lifesciences)に通して脱塩した。3.5mlの量がカラムから溶出した。この少量は、濃縮サイトカインミックスを含有した。
(実施例9)脂肪細胞が欠乏している、ウシ科動物脂肪由来細胞の分泌物の生成
脂肪組織の調製
10gの脂肪組織試料を、2歳の雄牛の尾基部から切除して収集した。脂肪組織を食塩水ですすぎ、次にはさみを使用して細かく切り刻み、20mlのダルベッコー修飾イーグル培地(DMEM, Sigma)と混合した。コラゲナーゼ(Sigma)を加えて、0.25%[w/v]の最終濃度を生じ、試料を37℃で180分間インキュベートした。
次に試料を500gで15分間遠心分離した。四つの別々の層が遠心分離試料内に見え、表面に遊離脂質の小さな(2mm厚の)層、その下に白色で20mm厚の脂肪組織および脂肪細胞の層、次にDMEMの明澄で大きな層、次に脂肪組織由来非脂肪細胞のペレットがあった。全ての液体および浮遊層を廃棄した。
次に細胞を、以下のようにDMEMで洗浄して、コラゲナーゼを除去した。DMEMを加えて14mlの最終容積にして、試料を500gで10分間遠心分離し、次にDMEMを叩いて落とした。
組織培養物
ペレット化細胞を10mlのDMEMに穏やかに再懸濁し、300mlの組織培養フラスコに移した。30mlの量のDMEMおよび10mlの自家滅菌血清を加え、次にフラスコを5%CO2により37℃でインキュベートした。フラスコを顕微鏡法により毎日検査した。細胞は3〜6日間で結合し、線維芽細胞のような外観になった。結合細胞は、5〜10日間でコンフルエントになった。
細胞分泌物を含む組成物の採取
細胞がフラスコの底部でコンフルエントになったら、上澄みを採取し、細胞を20ミクロンメッシュの濾過により除去した。溶液を0.22ミクロンフィルターで滅菌濾過し、次に10mlのバイアルに無菌分配し、-20℃で凍結保存した。
(実施例10)
本明細書の実施例1〜9は、とりわけ、懸濁液が脂肪細胞を含んでも、含まなくてもよい、脂肪組織由来細胞懸濁液の調製、および脂肪組織の分泌物を含む細胞無含有抽出物の調製(例えば実施例2)を記載する。これらの細胞懸濁液の調製の過程において、方法は、部分的または完全に消化されていても、いなくてもよい脂肪組織を、液体、典型的には実施例のDMEMに曝露することを含むことができる。その曝露の間、脂肪細胞を含む脂肪組織由来細胞は、因子を液体に分泌する。脂肪組織由来細胞懸濁液の調製の過程において、DMEMなどの液相を、脂肪組織由来分泌物を含む組成物として記載することができる。
実施例1〜9に記載された脂肪組織由来細胞懸濁液を、本明細書に記載された方法などにより、脂肪組織由来分泌物を含む組成物の調製に更に利用することができる。例えば、脂肪組織由来細胞懸濁液を適切な培地に曝露し、培地を収集することができる、または細胞懸濁液を溶解し、培地を収集することができる、または細胞懸濁液を適切な条件下で培養し、培地を収集することができる、または細胞懸濁液を培養し、凍結乾燥、続く適切な液体の所望の容積による再水和に付すことができる。脂肪組織由来分泌物を含む組成物の調製に脂肪組織由来細胞または細胞懸濁液を利用するこれらの方法の多様な例が、本明細書に記載されている。
(実施例10)イヌ科動物の毛成長の加速
イヌ科動物への脂肪組織由来分泌物の投与は、動物における毛再成長の加速をもたらした。血縁関係のある二匹のリッジバックは、肩に剃毛された部分を有した。一方のイヌは、左側の部分に1日2回局所適用された実施例7の記載のように生成されたウシ科動物分泌物を有し、一方、右側の部分は治療を受けなかった。他方のイヌは、剃毛された一つの部分を有し、治療を受けなかった。部分を定期的に撮影した。2週間経過すると、治療部分は、元の毛の75%が成長した(図1の左側パネル)。同じイヌの未治療部分は、およそ20%の再成長であった(図1の右側パネル)。未治療イヌの部分は、5%の再成長であった(図示せず)。
(実施例11)ヒトの皮膚の状態の治療
ウシ科動物脂肪組織の分泌物を、実施例7に記載されたとおりに調製した。分泌物を等量のAqueous Base Cream BPと混合し、プラスチックポットに分注し、使用するまで4℃で保存した。ポットのクリームを、一連の局所適用を試用してもらうために人々に提供した。以下の記載は、組成物が多様な患者により使用された方法、治療された状態、および結果を、患者が記載したとおりに例示している。
(i)患者1
クリームを試用する機会を頂き感謝する。クリームを2つの領域に適用した。
1.顔面の瘢痕-(2年間の瘢痕)
2.足底いぼ-(少なくとも5年間)
1.顔面の瘢痕
試用の開始:2010年11月
クリームを毎日瘢痕に直接適用した。
第一週目-顕著な改善なし。
第二週目-瘢痕は腫れが少なくなったように思われる。
第三週目-引き続き腫れが少なくなった/薄れていくように思われる。
第四週目-2011年1月まで-更なる改善なし。
2.足底のいぼ
試用の開始:2010年11月
クリームを毎晩足底のいぼに直接適用した。
最初の四週間-顕著な改善なし。
第四週目-いぼの外観に顕著な変化。
第四週目から1月11日まで-日々改善していった-いぼの完全な消滅をもたらした。
(ii)患者2
クリームを腕の手術痕に試した。瘢痕の半分に1日2回、およそ3週間適用し、治療しなかった半分と比較して、瘢痕の治癒に観察可能な差があった。
治療した瘢痕の半分は、未治療部分の深紅よりも薄い均一の色を示した。変化は、治療の数日後に認められた。
(iii)患者3
ウシ科動物分泌物クリームは、日焼けに対して迅速で肯定的な効果を有した。
日焼けは、顔面、前腕および脛において中程度(著しい皮膚の赤みおよび痛み)であった。クリームを、日光にあたった後(日光にあたったおよそ1.5時間および5時間後)に、顔面および前腕に毎晩2回適用した。クリームの2回目の適用は、就寝の直前であった。皮膚を水で洗浄したが、石鹸または非石鹸洗浄剤は使用しなかった。
いかなる種類のクリームも日焼けした脛の皮膚に適用しなかった。
腕および顔面の日焼けは、最初の適用の2時間後に痛みが著しく少なくなった。翌朝まで(2回の適用の後)、顔面および腕は、ほぼ痛みがなくなった。40℃のシャワーでも腕および顔面には痛みがほとんどなかったが、未治療の脛は、相当な痛みがあった。
クリームの3回目の適用を朝(日光にあたった16時間後)に顔面および腕に行った。痛みはなくなり、赤みは、極めて著しく低減した。未治療の脛では、皮膚は依然として赤色/ピンク色であり、痛みがあった。
(iv)患者4
これが、私のクリームの体験談である。
主な観察:妻と私の両方ともクリームを蚊に刺された跡に付け、約10分以内に痒みが消えた。同じ日にクリームを更に2回適用すると、刺された跡は1日で消滅した。私はこれを3回行い、妻は1回行った。他の未治療の蚊に刺された跡は、痒みが数日間残った。
(v)患者5
クリームを蚊に刺された跡に適用し、痒みは10分以内に消滅した。クリームの2回目の適用の後、刺された跡は治癒し、更なる痒みはなかった。同時に、他の蚊に刺された跡を1%Dermaid Creamで治療し、Dermaid Creamがウシ科動物分泌物クリームほど有効ではなかったことを観察した。
(vi)患者6
50歳の女性。クリームを顔に毎日適用した。4週間後、しわがあまり目立たなくなった。他の人は6週間後に私の外観についてコメントするようになりました。
(vii)患者7
ウシ科動物細胞分泌物クリームを足白癬の患者に与え、この患者は一定期間にわたって自身により適用した。治療に関する患者の報告は、以下のとおりである。
左足の小指の間の足白癬を治療するために、ウシ科動物細胞分泌物クリームを試用した。足白癬は、12か月間にわたって治癒することが極めて難しかった薄片状皮膚であった。最近はその状態を治療していなかった。クリームを罹患領域に約1週間にわたって毎晩すりつけた。クリームの適用を止めた約1週間後、薄片状皮膚があまり目立たなくなり、かゆくなくなったことに気が付いた。更に1週間後(更なるクリームの適用はなかった)、痒みおよび薄片状皮膚はなくなり、6か月間再発しなかった。
(viii)患者8
13歳の娘の日焼けに関し、彼女には胸および肩の周りに特に赤みのある日焼けがあった。皮膚が直ぐに剥がれ落ちるほど悪化していると思われた。ウシ科動物細胞分泌物クリームをその晩に適用した。朝には赤みは低減しており、その朝にクリームを再び適用した。24時間以内に赤みは目に見えて低減し、皮膚には目立った水疱または剥皮がなかった。クリームを更にもう1回適用したと思う。副作用はなかった。
実施例12:ざ瘡の治療
この実施例は、ざ瘡の治療におけるウシ科動物脂肪組織由来分泌物の効能を示す。
方法:
ウシ科動物脂肪組織由来分泌物(本明細書では以降「CellFree」ともいう)のバッチ(バッチ番号CFB-3A)を実施例7に詳述されたように生成した。このCellFreeを滅菌濾過し、次にBTFでT175組織培養フラスコにおいて凍結乾燥した。100mLのCFB-3Aを、2×T175に入れ、次に各フラスコを10mLの滅菌水で再構成した。次に10倍濃縮物を、下記のようにPD10カラムで濾過した。
1.アジ化ナトリウムをPD10の最上部から傾けて出す。
2.PD10の底部から端部を切り落とす。
3.PBS20mLをPD10の最上部に加え、中を通して排出させる。
4.濃縮CellFree2.5mLをPD10の最上部に加える。
5.全ての液体をPD10の最上部にあるフリットに通す。
6.PBS3.5mLを加え、収集管をPD10の先端に備え付けて、脱塩濃縮CellFreeを収集する。
脱塩濃縮CellFreeを合計で27mL収集し、54グラムのBP Aqueousクリーム(Kenkay Batch29AO1 exp 05/13)に加えた。
パッチ試験を実施した。6人のヒト志願者の全員には、腕に200ulのクリームを付け、その上にバンドエイドを貼った。これをおよそ8時間保持した。クリームによる有害作用は報告されなかった。
クリームを、薬局から購入した7×10グラムの小型透明プラスチックポットに分けた。
試験に関わった個人(本明細書において、ヒト志願者(HV)#1〜#7と呼ばれる)からインフォームドコンセントを得た後、TF-002ざ瘡試験フォームを各個人が記入し、7個のクリームポットを作り出し、各1個を試験において個人に提供した。
TF-002ざ瘡試験プロトコールに従って、個人に以下の指示を与えた。
これは、支給された試験記録フォームを毎日記入することが求められる21日間の試験であること。
1〜7日目にはクリームを適用しないこと。
8〜21日目には、クリームを1日2回適用する必要があること。
- 21日間の全体にわたって現在の皮膚治療習慣を続けること。
- 以下の1〜6のスコアを使用して、毎日1回皮膚を評価すること。
- ざ瘡クリームを試用している間の皮膚に関する他の観察を記録すること。考えられる考察のリストが以下に含まれている。
- 裏面の表を皮膚の評価に使用すること。
- スコアは、毎日ほぼ同じ時間に記録すること。
- このフォームの末尾に提供されている行を使用して、現在のスキンケア習慣を記入すること。例えば、清浄、処方薬剤、または薬局もしくはスーパーマーケットで得た治療剤。
1〜6のざ瘡スコア
1.きれいである。炎症性病変(赤色隆起、白色もしくは黄色「圧搾可能」おでき)または非炎症性病変(黒色面皰もしくは白色面皰)がないことを示す。
2.皮膚に幾つかの散在する黒色面皰および白色面皰、ならびにべとつき。
3.顔面の四分の一にわたる30〜40個の小さな赤色隆起、黒色面皰および白色面皰。
4.顔面の約半分に小さな赤色隆起、黒色面皰および表層性の白色または黄色「圧搾可能」おできを有する。
5.顔面の四分の三に多数の黒色面皰および白色または黄色「圧搾可能」おできを伴う。
6.顔面の大部分が大きな炎症性赤色隆起および/または黒色面皰、白色面皰、または白色もしくは黄色「圧搾可能」おできに罹患している。
考えられる考察
1.赤み
2.痒み
3.皮膚が硬くなる
4.皮膚が滑らかになる
5.皮膚が軟らかくなる
6.適用箇所がチクチクする感覚
7.変色
8.変化なし
結論
上記の表および図2にグラフで示されているように、ざ瘡試験の結果は、ウシ科動物脂肪組織由来分泌物を含む組成物を投与した後、個別の試験参加者のざ瘡に改善を示すことが明確である。
一実施形態において、非炎症性疾患は、前記対象における以下の状態(i)乾燥肌、(ii)皮膚の痒み(itchy skin)、(iii)虫刺され、(iv)日焼け、(v)皮膚のしわ、(vi)薄皮、(vii)皮膚のひび割れ(cracking)、(viii)昆虫刺傷、(ix)瘢痕化、(x)ストレッチマーク、(xi)日焼けによるしみ(sun spots)、(xii)加齢によるしみ(age spots)、(xiii)肝班、(xiv)眼の周りの腫れおよび/またはくま、(xv)足白癬、(xvi)いぼの一つ以上に関連し、前記治療は、前記状態の一つ以上を緩和する。
本発明における治療に考慮される特別の状態には、(i)乾燥肌、(ii)皮膚の痒み、(iii)虫刺され、(iv)日焼け、(v)皮膚のしわ、(vi)薄皮、(vii)皮膚のひび割れ、(viii)ざ瘡、(ix)瘢痕化、(x)ストレッチマーク、(xi)日焼けによるしみ、(xii)加齢によるしみ、(xiii)肝班、(xiv)眼の周りの腫れおよび/またはくま、(xv)足白癬、(xvi)いぼが含まれ、前記治療は、前記状態の一つ以上を緩和する。

Claims (22)

  1. 対象の非炎症性疾患の局所治療のための医薬の製造における、脂肪組織由来分泌物を含む組成物の使用。
  2. 対象の毛、毛皮または羊毛の成長を刺激する局所使用のための医薬の製造における脂肪組織由来分泌物の使用。
  3. 対象のざ瘡の局所治療または予防のための医薬の製造における、脂肪組織由来分泌物を含む組成物の使用。
  4. 脂肪組織由来分泌物がウシ科動物由来またはブタ由来のものである、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
  5. 脂肪組織由来分泌物を含む組成物が、脂肪細胞を更に含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
  6. 非炎症性疾患が、前記対象における以下の状態(i)乾燥肌、(ii)皮膚の痒み、(iii)虫刺され、(iv)日焼け、(v)皮膚のしわ、(vi)薄皮、(vii)皮膚のひび割れ、(viii)昆虫刺傷、(ix)瘢痕化、(x)伸展裂創、(xi)日焼けによるしみ、(xii)加齢によるしみ、(xiii)肝班、(xiv)眼の周りの腫れおよび/またはくま、(xv)足白癬、(xvi)いぼの一つ以上に関連し、前記治療が前記状態の一つ以上を緩和する、請求項1に記載の使用。
  7. 対象が、(i)手術関連の脱毛、(ii)化学療法関連の脱毛、(iii)放射線曝露関連の脱毛、(iv)脱毛症、(v)男性型脱毛症、(vi)女性型脱毛症の一つ以上を有する、請求項2に記載の使用。
  8. 対象が青年である、請求項3に記載の使用。
  9. 薬学的に許容される媒体または希釈剤と共に脂肪組織由来分泌物を含む医薬組成物を対象に局所投与することを含む、対象の非炎症性疾患を治療する方法。
  10. 薬学的に許容される媒体または希釈剤と共に脂肪組織由来分泌物を含む医薬組成物を対象に局所投与することを含む、対象の毛、羊毛または毛皮の成長を刺激する方法。
  11. 薬学的に許容される媒体または希釈剤と共に脂肪組織由来分泌物を含む医薬組成物を対象に局所投与することを含む、対象のざ瘡を治療または予防する方法。
  12. 対象が青年である、請求項11に記載の方法。
  13. 対象が、臨床的に関連するざ瘡を有する、請求項11に記載の方法。
  14. 脂肪組織由来分泌物がウシ科動物由来またはブタ由来のものである、請求項9から13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 脂肪組織由来分泌物を含む組成物が、脂肪細胞を更に含む、請求項9から14のいずれか一項に記載の方法。
  16. (i)ウシ科動物脂肪組織の試料をタンパク質分解酵素溶液に曝露して、細胞懸濁液を生成する工程;
    (ii)細胞の懸濁液を遠心分離して、細胞ペレット、脂肪細胞を含む浮遊細胞層の上側の遊離脂質層、ならびに、細胞ペレットおよび浮遊細胞層と比べて細胞が欠乏している、細胞ペレットと浮遊細胞層の間の中間層を形成する工程;
    (iii)遊離脂質層および中間層を除去する工程;
    (iv)任意選択により、脂肪細胞を含む浮遊細胞層の一部または実質的に全てを除去する工程;
    (v)細胞ペレットを、脂肪細胞を含む浮遊細胞層が存在する場合、該浮遊細胞層と混合して、脂肪細胞を含んでも含まなくてもよい脂肪組織由来細胞懸濁液を形成する工程;
    (vi)細胞懸濁液を適切な条件下で培養する工程;
    (vii)細胞培養物の上澄みを採取して、ウシ科動物脂肪組織由来分泌物を含む組成物を形成する工程
    を含む、ウシ科動物脂肪組織由来分泌物を調製する方法。
  17. タンパク質分解酵素溶液が、コラゲナーゼを約0.25%w/vの最終濃度で含む、請求項16に記載の方法。
  18. 細胞懸濁液の培養が、(i)接着細胞培養物を培養すること、または(ii)撹拌培養物を培養することを含む、請求項16に記載の方法。
  19. 採取された上澄みが脂肪細胞を含む、請求項16に記載の方法。
  20. 前記接着細胞培養物がコンフルエントな細胞培養物である、請求項18に記載の方法。
  21. 前記ウシ科動物脂肪組織由来分泌物を凍結乾燥することを更に含む、請求項16に記載の方法。
  22. 前記凍結乾燥した材料を再水和することを更に含む、請求項21に記載の方法。
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