JP2017019973A - フォトクロミック組成物 - Google Patents

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Abstract

【目的】優れたフォトクロミック性に加えて、成形性にも優れたフォトクロミック硬化体を形成することが可能なフォトクロミック組成物を提供する。
【解決手段】(A)側鎖に重合性官能基が導入されているグラフトポリマーと、(B)重合性モノマーと、(C)フォトクロミック化合物とを含んでいることを特徴とするフォトクロミック組成物を提供する。(A)重合性官能基が導入されているグラフトポリマー及び(B)重合性モノマーの合計100質量部当り、(C)フォトクロミック化合物を0.0001〜20質量部の量で含んでいることが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、新規なフォトクロミック組成物に関する。詳しくは発色濃度等のフォトクロミック物性に優れたフォトクロミック組成物に関する。
クロメン化合物、フルギド化合物、スピロオキサジン化合物等に代表されるフォトクロミック化合物は、太陽光あるいは水銀灯の光のような紫外線を含む光を照射すると速やかに色が変わり、光の照射をやめて暗所におくと元の色に戻るという特性(フォトクロミック性)を有しており、この特性を活かして、種々の用途、特に光学材料の用途に使用されている。
例えば、フォトクロミック化合物の使用によりフォトクロミック性が付与されているフォトクロミック眼鏡レンズは、太陽光のような紫外線を含む光が照射される屋外では速やかに着色してサングラスとして機能し、そのような光の照射がない屋内においては退色して透明な通常の眼鏡として機能するものであり、近年その需要は増大している。
光学材料にフォトクロミック性を付与するためには、一般に、フォトクロミック化合物はプラスチック材料と併用されるが、具体的には、次のような手段が知られている。
(a)重合性モノマーにフォトクロミック化合物を溶解させ、それを重合させることにより、直接、レンズ等の光学材料を成形する方法。
この方法は、練り込み法と呼ばれている。
(b)レンズ等のプラスチック成形品の表面に、フォトクロミック化合物が分散された樹脂層を、コーティング或いは注型重合により設ける方法。
この方法は、積層法と呼ばれている。
(c)2枚の光学シートを、フォトクロミック化合物が分散された接着材樹脂により形成された接着層により接合すること。
この方法は、バインダー法と呼ばれている。
ところで、フォトクロミック性が付与された光学物品などの光学材料については、さらに、次のような特性が求められている。
(I)紫外線を照射する前の可視光領域での着色度(初期着色)が低いこと。
(II)紫外線を照射した時の着色度(発色濃度)が高いこと。
(III)紫外線の照射を止めてから元の状態に戻るまでの速度(退色速度)が速いこと。
(IV)発色〜退色の可逆作用の繰り返し耐久性がよいこと。
(V)保存安定性が高いこと。
(VI)各種の形状に成形し易いこと。
(VII)機械的強度が低下することなく、フォトクロミック性が付与されること。
従って、前述した(a)〜(c)の手段でフォトクロミック性を有する光学材料などを製造するに際しても、上記のような要求が満足されるように、種々の提案がなされているが、発色濃度や退色速度などに関して、さらに優れたフォトクロミック性を発現させることが求められているのが現状である。
例えば、前述した練り込み法は、ガラスモールドを使用して安価で大量にフォトクロミックプラスチックレンズを生産できるという利点を有しているおり、現在、フォトクロミックプラスチックレンズの多くは、この方法により生産されている。
しかしながら、練り込み法ではレンズ基材に強度が要求されるため、フォトクロミック化合物が分散されているマトリックス樹脂の機械的強度を高める必要がある。このため、優れたフォトクロミック性を発現させることが困難となっている。即ち、マトリックス樹脂中に存在するフォトクロミック化合物の分子の自由度が低くなるため、フォトクロミック可逆反応が損なわれてしまうのである。
例えば、このような練り込み法に関して、特許文献1には、イソシアネートモノマーとチオールモノマーを含むモノマー組成物にフォトクロミック化合物を添加する手法が記載されている。また、特許文献2には、特定の(メタ)アクリル重合性モノマーとフォトクロミック化合物とを含むフォトクロミック硬化性組成物が示されている。
しかるに、これらの組成物を重合硬化せしめて成形されたフォトクロミックレンズは、機械的強度は高いものの、フォトクロミック性、特に退色速度の点で不満足である。
一方、積層法やバインダー法では、前述した練り込み法に比して、フォトクロミック性が各種基材表面に形成されている薄い層で発現するため、練り込み法と同等の発色濃度を発現させるためには、フォトクロミック化合物を高濃度で溶解する必要がある。その場合、フォトクロミック化合物の種類によっては、溶解性が不十分であったり、保存中に析出してしまう等の問題があった。また、フォトクロミック性を発現する層が薄いため、フォトクロミック化合物の耐久性が劣っている場合もあった。
例えば、特許文献3には、プラスチックレンズ上にフォトクロミック硬化性組成物をスピンコートなどにより塗布し、光硬化させてフォトクロミックコーティング層を形成する方法が開示されている(この積層法は、コーティング法とも呼ばれる)。
また、特許文献4には、エラストマーガスケット、粘着テープまたはスペーサーなどの部材を用いて、プラスチックレンズとガラスモールドとの間に隙間を確保し、この隙間にフォトクロミック硬化性組成物を流し込み、重合硬化させるフォトクロミック層の形成方法(以下、2段重合法ともいう)が示されている。
さらに、特許文献5には、フォトクロミック化合物を含有するポリウレタン樹脂接着層により透明なカーボネートシートを接合した積層シートを製造する方法が開示されている(バインダー法)。
しかるに、特許文献3〜5の何れの方法においても、フォトクロミック化合物が配合されている薄い層によりフォトクロミック性を発現させるため、溶解性が低いフォトクロミック化合物を用いた場合には、発色濃度が低くなる傾向があり、さらに、フォトクロミック化合物の耐久性が劣っている場合もあった。
このように、現在の公知の技術では、発色濃度や退色速度の何れかが不満足となる傾向にある。
WO2012/176439号 WO2009/075388号 WO2011/125956号 WO2003/011967号 WO2013/099640号
従って、本発明の目的は、発色濃度や退色速度の何れにも優れたフォトクロミック性を付与することが可能なフォトクロミック組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、フォトクロミック性に加えて、成形性にも優れたフォトクロミック硬化体を形成することが可能なフォトクロミック組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、フォトクロミック化合物を側鎖に重合性官能基が導入されているグラフトポリマー及び重合性モノマーとを組み合わせることにより、かかる課題を解決することに成功した。
即ち、本発明によれば、(A)側鎖に重合性官能基が導入されているグラフトポリマーと、(B)重合性モノマーと、(C)フォトクロミック化合物とを含んでいることを特徴とするフォトクロミック組成物が提供される。
尚、本発明において、上記の(A)側鎖に重合性官能基が導入されているグラフトポリマーとは、あるポリマー(以下、主鎖または幹ポリマーともいう。)に異なる種類のポリマーが側鎖(以下、枝ポリマーともいう。)として結合しており、かつポリマーの側鎖に重合性官能基を含むものを言う。
本発明のフォトクロミック組成物は、次の態様を好適に採り得る。
(1)(A)側鎖に重合性官能基が導入されているグラフトポリマー及び(B)重合性モノマーの合計100質量部当り、前記(A)側鎖に重合性官能基が導入されているグラフトポリマーを1〜50質量部含有すること。
(2)(A)重合性官能基が導入されているグラフトポリマー及び(B)重合性モノマーの合計100質量部当り、(C)フォトクロミック化合物を0.0001〜20質量部の量で含んでいること。
(3)さらに、重合硬化促進剤(D)を含んでいること。
本発明によれば、また、(A)側鎖に重合性官能基が導入されているグラフトポリマーと、(B)重合性モノマーと、(C)フォトクロミック化合物、とを含んでいるフォトクロミック組成物を硬化して得られるフォトクロミック硬化体が提供される。
本発明のフォトクロミック組成物を用いることにより、後述する実施例でも示されているように、発色性及び退色速度の何れも向上したフォトクロミック性を発現することができる。
上記のようなフォトクロミック性の発現は、フォトクロミック化合物と共に側鎖に重合性官能基が導入されているグラフトポリマーを使用していることによるものであるが、この理由について、本発明者等は次のように考えている。
即ち、側鎖に重合性官能基が導入されているグラフトポリマーが有している側鎖が架橋することにより、柔軟性の高い側鎖近傍に存在するフォトクロミック化合物の可逆的な構造変化を、より速やかに生じさせるようになるものと信じられる。
従って、このフォトクロミック組成物に重合性モノマー等を配合し、これを重合硬化して硬化体を形成したときにおいても、上記の主鎖と、重合した側鎖末端部分との間にある、複数の柔軟な(変形しやすい)側鎖により、フォトクロミック化合物の可逆的な構造変化を邪魔しないだけの空間が形成され、退色速度や発色濃度の向上がもたらされることとなる。
このことから理解されるように、本発明のフォトクロミック組成物では、例えば練り込み法によってフォトクロミックレンズを成形する場合においては、フォトクロミック性(発色濃度及び退色速度)を損なうことなく、機械的強度の向上を図ることができる。また、積層法やバインダー法によってフォトクロミック性を示す層を形成した場合においても、十分な発色濃度を確保することができる。
本発明のフォトクロミック組成物は、(A)側鎖に重合性官能基が導入されているグラフトポリマーと、(B)重合性モノマーと、(C)フォトクロミック化合物とを含んでいることが特徴である。以下、本発明のフォトクロミック組成物を構成する各成分について説明する。
<(A)側鎖に重合性官能基が導入されているグラフトポリマー>
本発明のフォトクロミック組成物は(A)側鎖に重合性官能基が導入されているグラフトポリマー(以下、「重合性官能基含有グラフトポリマー」とも称する)を含んでいることが特徴である。グラフトポリマーの側鎖に重合性官能基を導入することにより、他のグラフトポリマーの側鎖や重合性モノマーとの結合形成等により、本発明のフォトクロミック組成物を硬化して得られる硬化体中に適度な空間をより確実に形成される。この空間により、フォトクロミック化合物分子の可逆反応を許容し得る間隙を確実に確保することができ、優れたフォトクロミック性を発現させることができる。また、このような側鎖に架橋構造を形成し、これにより形成されるフォトクロミック硬化体の機械的強度を向上させることができる。
一般にグラフトポリマーとは、主鎖に主鎖とは異なる種類のポリマーが側鎖として結合した構造のものをいう。言い換えると、グラフトポリマーは、主鎖および主鎖から分岐した側鎖から形成されている構造を有しており、先に述べたように、側鎖の存在によりフォトクロミック化合物の可逆反応を許容し得る空間が確保され、高い発色濃度や速い退色速度を得ることができる。
2つのポリマーが異なる性質、特性を持つことで単一ポリマーにはない機能を与えることができるという特徴がある。このグラフトポリマーは、主鎖の構成が単一モノマーからなるか、あるいは複数のモノマーであり、複数のモノマーからなる場合にはランダムグラフトポリマー、ブロックグラフトポリマー、グラジエントグラフトポリマーなど、複数種のモノマーの配列に規則性が合ってもなくとも良い。
ここで上記重合性官能基含有グラフトポリマーの分子量は、特に制限されるものではないが、大きすぎると、他の成分例えば適宜配合される(C)重合性モノマーとの相溶性が悪くなる傾向があり、小さすぎると、フォトクロミック性が低下する傾向がある。このような観点から、重合性官能基含有グラフトポリマーの重量平均分子量Mwは、1000〜300,000、特に5,000〜200,000の範囲にあることが好適である。
また、本発明においては、重合性官能基含有グラフトポリマーによって主鎖と側鎖、あるいは側鎖同士の間に適度な空間を形成することができ、フォトクロミック化合物分子の可逆反応を許容し得る間隙を確保することができ、優れたフォトクロミック性を発現させることができる。これにより、本発明のフォトクロミック組成物を用いて形成されるフォトクロミック硬化体のフォトクロ物性を向上させることができる。
本発明の重合性官能基含有グラフトポリマーの配合量は、フォトクロミック特性の観点から(A)重合性官能基含有グラフトポリマー及び後述する(B)重合性モノマーの合計100質量部当り1〜50質量部の範囲が好ましく、さらに高い発色濃度と成形性が良好であることから4〜30質量部の範囲が好ましい。
<主鎖(幹ポリマー)>
かかる重合性官能基含有グラフトポリマーにおいて、主鎖としては種々のものを用いることが出来るが、単独重合ポリマーまたは共重合ポリマー等を用いることが出来る。
このような主鎖部分を形成するポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース系樹脂(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、ポリアクリロニトリル、ポリオキサゾリン、カゼイン、ゼラチン、でんぷん、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリ―ε―カプロラクトン、ポリα−アセチル−γ−ブチロラクトン)、ポリ塩化ビニル、スチレン系樹脂(ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂など)、アクリル系樹脂(ポリ(メタ)アクリル酸、ポリメチル(メタ)アクリレ−ト、ポリシアノ(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合樹脂など)、ポリカーボネート、ポリウレタン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアニリン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリアミド(ナイロンなど)、ポリイミド、ポリジエン(ポリイソプレン、ポリブタジエンなど)、ポリシロキサン系樹脂(ポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリフェニルビニルシロキサンなど)、ポリカーボネート樹脂(ポリエチレンカーボネート、ポリ炭酸プロピレンなど)、ポリスルホン、ポリイミン、ポリ無水酢酸、ポリ尿素、ポリスルフィド、ポリフォスファゼン、ポリケトンポリフェニレン、ポリハロオレフィン等を挙げることができる。これらのポリマーは、適宜ランダム共重合体、或いはブロック共重合体であってもよく、また変性されたものであってもよい。またこれらのポリマーは、重合性及び/または非重合性の置換基を有していてもよい。
本発明において、鎖状部分を形成するポリマーとして好適なものは、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリシロキサン系樹脂であり、アクリル系樹脂が最も好適である。
<側鎖(枝ポリマー)>
本発明の上記重合性官能基含有グラフトポリマーにおいて、側鎖部分を形成するポリマーとしては、前記主鎖部分を形成するポリマーとして挙げたものを用いることが出来る。その中でも側鎖を形成するポリマーとして好適なものは、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリシロキサン系樹脂であり、これらの中でも、末端に水酸基を有することから、側鎖に重合性官能基を導入しやすいため、ポリエステル系樹脂が最も好適である。ポリエステル系樹脂のなかでも、特に発色濃度と退色速度に優れたフォトクロミック物性を示すことから特にポリカプロラクトンが最も好ましい。
上記の側鎖としては、炭素数が3〜20の範囲にある有機鎖の繰り返しにより形成されていることが好適であり、このような側鎖の平均重量分子量は300〜10,000、好ましくは350〜8,000の範囲にある。即ち、側鎖が小さ過ぎると、フォトクロミック化合物分子の可逆反応を許容し得る間隙を確保するという機能が不十分となり、側鎖が大き過ぎると、後述するフォトクロミック化合物をグラフトポリマーに均一に混合することが困難となり、結局、グラフトポリマーによって確保される空間を十分に活用することが困難となる傾向にある。
上記のような側鎖は、主鎖が有する官能基を起点にモノマーを重合するか、あるいは主鎖形成に用いるマクロモノマーを利用することによって導入することが出来る。グラフトポリマー1分子あたり導入することが可能な側鎖の数としては、主鎖が有する官能基を起点にモノマーを重合する場合にはポリマー(主鎖)に存在する側鎖形成可能な反応性の官能基(以下、側鎖導入官能基ともいう。)の数であり、マクロモノマーを利用する場合にはマクロモノマーの導入数となる。本発明においては、前述した側鎖の機能を十分に発揮させるためには、主鎖が有する単位モノマーユニット(繰り返し単位)の総数を100とした時に、0.01〜100の単位モノマーユニットが、側鎖を有することが好ましい。
<重合性官能基>
本発明において、上記グラフトポリマーの側鎖に重合性官能基を導入することにより、他のグラフトポリマーの側鎖や重合性モノマーとの結合形成等に伴い、適度な空間をより確実に形成することができ、フォトクロミック化合物分子の可逆反応を許容し得る間隙を確実に確保することができ、優れたフォトクロミック性を発現させることができる。また、このような側鎖に架橋構造を形成し、これにより形成されるフォトクロミック硬化体の機械的強度を向上させることができる。
本発明における上記重合性官能基含有グラフトポリマーに導入されている重合性官能基の導入位置としては、側鎖のポリマー末端、鎖中のいずれも限定されないが、側鎖のポリマー末端の官能基を利用して導入されるものが合成上容易である。その際の重合性官能基導入のための官能基としては、下記重合性官能基の導入に適した基を適宜用いればよい。
この重合性官能基としては、(メタ)アクリル基、ビニル基及びアリル基のようなラジカル重合性基が代表的であるが、(B)重合性モノマーの種類に応じて、エポキシ基、水酸基、チオール基、アミノ基(−NH)、エピスルフィド基、チエタニル基、イソシアネート基、又はチオイソシアネート基も、重合性官能基として機能する。
例えば、エポキシ基、エピスルフィド基、チエタニル基は、(B)重合性モノマーが有するアミノ基、イソシアネート基と反応する。
水酸基やチオール基は、(B)重合性モノマーが有するイソシアネート基やチオイソシアネート基と反応して、ウレタン結合、チオウレタン結合が生成する。
イソシアネート基やチオイソシアネート基は、(B)重合性モノマーが有する水酸基、チオール基、又はアミノ基と反応することとなる。
本発明における上記重合性官能基含有グラフトポリマーに導入されている重合性官能基の中でも、特に練り込み法において優れたフォトクロミック性の改善効果を示すことから、ウレタン結合、チオウレタン結合を形成しうる水酸基やチオール基が好ましい。
<(A)重合性官能基含有グラフトポリマーの製造方法>
本発明における(A)重合性官能基含有グラフトポリマーは、公知の方法にて製造することができる。グラフトポリマーの合成は、一般には(1)マクロモノマーを単独重合或いはコモノマーと共重合する方法、(2)主鎖の重合開始点から別のポリマー鎖(側鎖)を増やす方法、(3)重合性官能基を有する主鎖と、末端に重合性官能基を有するポリマーやリビングポリマー等の枝ポリマーを反応させる方法等が知られており、上記本発明の重合性官能基含有グラフトポリマーは上記のいずれかの方法により製造することが出来る。
(1)マクロモノマーを単独重合或いはコモノマーと共重合する方法
ここでマクロモノマーとは、狭義では片末端に重合性基を含む高分子量モノマーのことであるが、広義には両末端重合性のテレケリックマクロモノマー、さらに多くの重合性基を含む多官能性マクロモノマーをも含む。該マクロモノマーをラジカル重合等により単独重合、或いはコモノマー(低分子量モノマー)とを共重合させることにより、グラフトポリマーを得ることが出来る。
(2)主鎖の重合開始点から別のポリマー鎖(側鎖)を増やす方法
主鎖に反応性の官能基(以下、側鎖導入官能基ともいう。)を有するポリマーを用いる。側鎖導入官能基を有するモノマーを、この側鎖導入官能基が重合を開始しない条件でまず重合を行いポリマー(主鎖)を得る。続いて、得られた主鎖にある側鎖導入官能基を元に重合を行い側鎖を形成されることによって、グラフトポリマーを得ることが出来る。
ここで側鎖導入官能基としては、アルコキシシリル基、炭素−臭素結合、チオエステル基等を挙げることが出来る。側鎖導入における重合方法としては特に限定はされないが、長さの揃ったポリマーを高密度で導入しやすいことから、リビングラジカル重合が好ましい。
(3)重合性官能基を有する主鎖と、末端に重合性官能基を有するポリマーを反応させる方法
主鎖ポリマーに枝ポリマーを反応させる方法として、重合性官能基を有する幹ポリマーと、末端に重合性官能基を有するポリマーやリビングポリマー等の枝ポリマーを反応させる方法を用いることも出来る。この方法としては、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)を用いた動的共有結合法、クリックケミストリー法等を用いた方法を適用することが出来る。
また上記重合性官能基含有グラフトポリマーを製造する際の重合方法としては、ラジカル重合、カチオン重合、化学重合等による化学的方法、あるは放射線などを用いる物理的方法等公知の方法を採用することが出来る。
<(B)重合性モノマー>
本発明のフォトクロミック組成物には、フォトクロミック組成物の粘度上昇を抑え、且つ(A)重合性官能基含有グラフトポリマーによるフォトクロミック性向上効果をより効果的に発揮させるために(B)重合性モノマーを配合する。このような重合性モノマーとしては、(B1)ラジカル重合性モノマー、(B2)エポキシ系重合性モノマー、(B3)ウレタン結合やウレア結合等を形成しうるウレタンもしくはウレア系重合性モノマー、及び(B4)その他の重合性モノマーを挙げることができ、特に、(A)重合性官能基含有グラフトポリマーの側鎖に導入されている重合性基と反応し得る重合性モノマーが好適に使用される。
上記のとおり、光学材料にフォトクロミック性を付与する方法として、練り込み法、積層法、及びバインダー法があるが、熱重合法、光重合法のいずれも適用しやすい練り込み法では(B1)ラジカル重合性モノマー、及び(B3)ウレタンもしくはウレア系重合性モノマーであり、光重合法が適用しやすい積層法では(B1)ラジカル重合性モノマーであり、熱重合法が適用しやすいバインダー法では(B3)ウレタンもしくはウレア系重合性モノマーを用いることが好ましい。
<(B1)ラジカル重合性モノマー>
(B1)ラジカル重合性モノマーは、特に上記(A)重合性官能基含有グラフトポリマーの側鎖にラジカル重合性の官能基が導入されている場合に、好適に使用されるものであり、大きく分けて、(メタ)アクリル系重合性モノマー、ビニル基を有するビニル系重合性モノマー、アリル基を有するアリル系重合性モノマー、シルセスキオキサン系重合性モノマーに分類される。以下に、その具体例を示す。
(メタ)アクリル系重合性モノマー;
(メタ)アクリレ−ト系重合性モノマーは、ラジカル重合により硬化する。これらの化合物は、レンズ硬度の調整にも用いることができる。その具体例としては、以下のものを例示することができる。
(メタ)アクリレ−ト化合物;エチレングリコールジアクリレ−ト、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチレングリコールビスグリシジルアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、2,2−ビス(4−アクロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アクロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、ビスフェノールFジアクリレート、ビスフェノールF ジメタクリレート、1,1−ビス(4−アクロキシエトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−メタクロキシエトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−アクロキシジエトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−メタクロキシジエトキシフェニル)メタン、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレ−ト、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、メチルチオアクリレートメチルチオメタクリレート、フェニルチオアクリレート、ベンジルチオメタクリレート、キシリレンジチオールジアクリレート、キシリレンジチオールジメタクリレート、メルカプトエチルスルフィドジアクリレート、メルカプトエチルスルフィドジメタクリレート、2官能ウレタンアクリレート、2官能ウレタンメタクリレート。
ビニル系重合性モノマー;
ビニル基を有するビニル系重合性モノマーとしては、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、エチルビニルエーテル、スチレン、ビニルシクロヘキサン、ブタジエン、1,4−ペンタジエン、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン、1,2−ジビニルベンゼン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルプロパンジシロキサン、ジエチレングリコールジビニルエーテル、アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジビニルスルホキシド、ジビニルペルスルフィド、ジメチルジビニルシラン、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、メチルトリビニルシラン、スチレン、クロロスチレン、メチルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ジビニルベンゼン、3,9−ジビニルスピロビ(m−ジオキサン)、α−メチルスチレンおよびα−メチルスチレンダイマー等を挙げることができる。
アリル系重合性モノマー;
アリル基を有するアリル系重合性モノマーとしては、以下のものを例示することができる。
アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレ−ト、ジアリルテレフタレ−ト、ジアリルイソフタレ−ト、ジアリルカ−ボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量550)、メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量350)、メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量1500)、ポリエチレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量450)、メトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量750)、ブトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量1600)、メタクリロイルオキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量560)、フェノキシポリエチレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量600)、メタクリロイルオキシポリエチレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量430)、アクリロイルオキシポリエチレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量420)、ビニロキシポリエチレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量560)、スチリロキシポリエチレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量650)、メトキシポリエチレンチオグリコールアリルチオエーテル(特に平均分子量730)。
尚、アリル系重合性モノマーは、連鎖移動剤として作用することで、フォトクロミック組成物のフォトクロミック性(発色濃度、退色速度)を向上させることが可能である。
シルセスキオキサン重合性モノマー;
シルセスキオキサン重合性モノマーは、ケージ状、ハシゴ状、ランダムといった種々の分子構造を取るものであり、(メタ)アクリル基等のラジカル重合性基を有している。
このようなシルセスキオキサン重合性モノマーの例としては、下記式(1)で示されるものが挙げられる。
Figure 2017019973
{式中、nは、重合度であり、3〜100の整数であり、複数個あるR1は、互いに同一もしくは異なっていてもよく、ラジカル重合性基、ラジカル重合性基を含む有機基、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、水酸基及び/またはチオール基を含む有機基であり、少なくとも1つのR1は、ラジカル重合性基、又はラジカル重合性基を含む有機基である。}
ここで、R1で示されるラジカル重合性基、又はラジカル重合性基を含む有機基としては、(メタ)アクリル基;(メタ)アクリロイルオキシプロピル基、(3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)ジメチルシロキシ基等の(メタ)アクリル基を有する有機基;アリル基;アリルプロピル基、アリルプロピルジメチルシロキシ基等のアリル基を有する有機基;ビニル基;ビニルプロピル基、ビニルジメチルシロキシ基等のビニル基を有する有機基等が挙げられる。
また、本発明においては、上記で挙げた(C1)〜(C4)以外の他のラジカル重合性モノマーも使用することができる。
このような他のラジカル重合性モノマーとして、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
<(B2)エポキシ系重合性モノマー>
この重合性モノマーは、重合性基として、分子内にエポキシ基を有するものであり開環重合により硬化する。特に、前記(A)重合性官能基含有グラフトポリマーの側鎖に、重合性官能基として、水酸基、アミノ基、イソシアネート基が導入されている場合に、特に好適である。このようなエポキシ系重合性モノマーは、大きく分けて、脂肪族エポキシ化合物、脂環族エポキシ化合物及び芳香族エポキシ化合物に分類され、その具体例としては、以下のものを例示することができる。
脂肪族エポキシ化合物;エチレンオキシド、2−エチルオキシラン、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、2,2’−メチレンビスオキシラン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ノナプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレ−トのジグリシジルエーテル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレ−トのトリグリシジルエーテル
脂環族エポキシ化合物;イソホロンジオールジグリシジルエーテル、ビス−2,2−ヒドロキシシクロヘキシルプロパンジグリシジルエーテル
芳香族エポキシ化合物;レゾールシンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、オールトフタル酸ジグリシジルエステル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル
また、上記以外にも、エポキシ基と共に、分子内に硫黄原子を有するエポキシ系化合物も使用することができる。このような含硫黄原子エポキシ系化合物は、特に屈折率向上に寄与するものであり、鎖状脂肪族系及び環状脂肪族系のものがあり、その具体例は、次のとおりである。
鎖状脂肪族系含硫黄原子エポキシ系化合物;ビス(2,3−エポキシプロピル)スルフィド、ビス(2,3−エポキシプロピル)ジスルフィド、ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)エタン、1,2−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)プロパン、1,3−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)プロパン、1,3−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)−2−メチルプロパン、1,4−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)ブタン、1,4−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)−2−メチルブタン、1,3−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)ブタン、1,5−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)ペンタン、1,5−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)−2−メチルペンタン、1,5−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)−3−チアペンタン、1,6−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)ヘキサン、1,6−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)−2−メチルヘキサン、3,8−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)−3,6−ジチアオクタン、1,2,3−トリス(2,3−エポキシプロピルチオ)プロパン、2,2−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)−1,3−ビス(2,3−エポキシプロピルチオメチル)プロパン、2,2−ビス(2,3−エポキシプロピルチオメチル)−1−(2,3−エポキシプロピルチオ)ブタン
環状脂肪族系含硫黄原子エポキシ系化合物;1,3−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)シクロヘキサン、1,4−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)シクロヘキサン、1,3−ビス(2,3−エポキシプロピルチオメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(2,3−エポキシプロピルチオメチル)シクロヘキサン、2,5−ビス(2,3−エポキシプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス[<2−(2,3−エポキシプロピルチオ)エチル>チオメチル]−1,4−ジチアン、2,5−ビス(2,3−エポキシプロピルチオメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン
<(B3)ウレタンもしくはウレア系重合性モノマー>
この重合性モノマーは、重合の繰り返し単位がウレタン結合やウレア結合により連鎖するものであり、特に(A)側鎖に重合性官能基が導入されているグラフトポリマーの側鎖に重合性官能基として、エポキシ基、エピスルフィド基、チエタニル基、水酸基、チオール基、アミノ基、イソシアネート基又はチオイソシアネート基が導入されている場合に効果的である。
例えば、ウレタン結合は、ポリオールとポリイソシアネートの反応で形成されるものであり、このウレタン結合の中には、ポリオールとポリイソチアシアネートとの反応、或いはポリチオールとポリイソ(チオ)イソシアネートとの反応で形成されるチオウレタン結
また、ウレア結合は、ポリアミンとポリイソシアネートとの反応で形成されるものであり、このウレア結合の中には、ポリアミンとポリイソチオシアネートとの反応で形成されるチオウレア結合も含まれる。
上記の説明から理解されるように、本発明において、ウレタンもしくはウレア系重合性モノマーとしては、ポリ(チ)オール化合物、ポリイソ(チオ)シアネート化合物、ポリアミン化合物、エポキシ化合物、カルボン酸化合物の中から、上記のウレタン結合(チオウレタン結合)或いはウレア結合(チオウレア結合)が形成されるように、複数種の化合物が選択して使用される。
また、前述した重合性官能基含有グラフトポリマーの側鎖に、重合性基として、水酸基、チオール基、アミノ基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、カルボン酸基などが導入されている場合には、かかるウレタンもしくはウレア系重合性モノマーが形成する重合鎖中に側鎖が組み込まれるため好適である。
このようなウレタンもしくはウレア系重合性モノマーの1種として使用される化合物としては、具体的には、以下のものが使用される。
ポリ(チ)オール化合物;
ポリ(チ)オール化合物を用いた場合には、ポリイソ(チオ)シアネート化合物とポリ(チ)オール化合物との反応により、(チオ)ウレタン結合を有する網目状構造の剛直な硬化体を形成させることができ、機械強度に優れたフォトクロミック硬化体を得ることができるため好ましい。該ポリ(チ)オール化合物の内、ポリオール化合物としては、例えば、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−ヒドロキシ化合物、1分子中に2個以上のOH基を含有するポリエステル(ポリエステルポリオール)、1分子中に2個以上のOH基を含有するポリエーテル(以下ポリエーテルポリオールという)、1分子中に2個以上のOH基を含有するポリカ−ボネート(ポリカ−ボネートポリオール)、1分子中に2個以上のOH基を含有するポリカプロラクトン(ポリカプロラクトンポリオール)、1分子中に2個以上のOH基を含有するアクリル系重合体(ポリアクリルポリオール)が代表的である。
ポリ(チ)オール化合物具体的に例示すると次のとおりである。
ポリエチレンポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカ−ボネートポリオール、トリメチロ−ルプロパン、ペンタエリスリト−ル、トリメチロ−ルプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリト−ルテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリト−ルヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコ−ルビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ブタンジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,6−ヘキサンジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン、2,2−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ブタンジチオール、1,4−ビス(メルカプトプロピルチオメチル)ベンゼン、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、1,1,1,1−テトラキス(メルカプトメチル)メタン、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2−テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、2−メルカプトメタノ−ル、トリス−{(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル}−イソシアヌレ−ト
ポリイソ(チオ)シアネート化合物;
ポリイソ(チオ)シアネート化合物は、1分子中にイソシアネート基及び/又はイソチオシアネート基を2個以上有する化合物である。
上記ポリイソ(チオ)シアネート化合物の内、ポリイソシアネート化合物としては、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネート、芳香族イソシアネート、含イオウ脂肪族イソシアネート、脂肪族スルフィド系イソシアネート、芳香族スルフィド系イソシアネート、脂肪族スルホン系イソシアネート、芳香族スルホン系イソシアネート、スルホン酸エステル系イソシアネート、芳香族スルホン酸アミド系イソシアネート、含イオウ複素環イソシアネート等が挙げられる。
またポリイソチオシアネート化合物としては、脂肪族イソチオシアネート、脂環族イソチオシアネート、芳香族イソチオシアネート、含複素環イソチオシアネート、含イオウ脂肪族イソチオシアネート、含イオウ芳香族イソチオシアネート、含イオウ複素環イソチオシアネート等が挙げられる。これら、ポリイソ(チオ)シアネート化合物の具体例としては、以下の化合物を例示することができる。
ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、2,5−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン、2,6−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン、1,2−ビス(2−イソシアナ−トエチルチオ)エタン、キシレンジイソシアネート(o−,m−,p−)、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、および、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート
また、上記ポリイソ(チオ)シアネート化合物としては、イソシアネート基及び/又はイソチオシアネート基の1個以上がブロック剤で保護されたポリブロックイソ(チオ)シアネート化合物を用いてもよい。なお上記ポリブロックイソ(チオ)シアネート化合物とは、イソ(チオ)シアネート基(−NCO、及び−NCS)が熱脱離可能な保護基によりブロックされた化合物のことである。
ポリイソ(チオ)シアネート化合物のブロック剤としては、公知のものを選択して利用可能であるが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2−N,N−ジメチルアミノエタノール、2−エトキシエタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、フェノール、o−ニトロフェノール、p−クロロフェノール、o−クレゾール等のフェノール類、ε−カプロラクタム等のラクタム類、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム等のオキシム類、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチルピラゾール等のピラゾール類、ドデカンチオール、ベンゼンチオール等のチオール類、マロン酸ジメチル、アセト酢酸エステル、マロン酸ジニトリル、アセチルアセトン、メチレンジスルホン、ジベンゾイルメタン、ジピバロイルメタン、アセトンジカルボン酸ジエステル等の活性メチレン系化合物類が挙げられる。
ポリアミン化合物;
ポリアミン化合物は、一分子中にアミノ基(−NH)を2つ以上有している化合物であり、ポリイソシアネートとの反応でウレア結合形成される、ポリイソチオシアネートとの反応でチオウレア結合を形成する。これらのモノマーは硬度調整の為に添加されてもよい。その具体例としては、以下の化合物を挙げることができる。
エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、メタキシレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、プトレシン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノ−ル、ジエチレントリアミン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、メラミン、1,3,5−ベンゼントリアミン
エポキシ化合物;
エポキシ化合物は、重合性基として、分子内にエポキシ基を有するものであり、開環重合により硬化する。これらの化合物は、屈折率の調整やレンズ硬度の調整の為に添加されてもよい。このようなエポキシ系化合物は、大きく分けて、脂肪族エポキシ化合物、脂環族エポキシ化合物及び芳香族エポキシ化合物に分類され、その具体例としては、以下のものを例示することができる。
脂肪族エポキシ化合物;エチレンオキシド、2−エチルオキシラン、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、2,2’−メチレンビスオキシラン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ノナプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレ−トのジグリシジルエーテル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレ−トのトリグリシジルエーテル
脂環族エポキシ化合物;イソホロンジオールジグリシジルエーテル、ビス−2,2−ヒドロキシシクロヘキシルプロパンジグリシジルエーテル
芳香族エポキシ化合物;レゾールシンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、オールトフタル酸ジグリシジルエステル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル
また、上記以外にも、エポキシ基と共に、分子内に硫黄原子を有するエポキシ系化合物も使用することができる。このような含硫黄原子エポキシ系化合物は、特に屈折率向上に寄与するものであり、鎖状脂肪族系及び環状脂肪族系のものがあり、その具体例は、次のとおりである。
鎖状脂肪族系含硫黄原子エポキシ系化合物;ビス(2,3−エポキシプロピル)スルフィド、ビス(2,3−エポキシプロピル)ジスルフィド、ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)エタン、1,2−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)プロパン、1,3−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)プロパン、1,3−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)−2−メチルプロパン、1,4−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)ブタン、1,4−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)−2−メチルブタン、1,3−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)ブタン、1,5−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)ペンタン、1,5−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)−2−メチルペンタン、1,5−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)−3−チアペンタン、1,6−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)ヘキサン、1,6−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)−2−メチルヘキサン、3,8−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)−3,6−ジチアオクタン、1,2,3−トリス(2,3−エポキシプロピルチオ)プロパン、2,2−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)−1,3−ビス(2,3−エポキシプロピルチオメチル)プロパン、2,2−ビス(2,3−エポキシプロピルチオメチル)−1−(2,3−エポキシプロピルチオ)ブタン
環状脂肪族系含硫黄原子エポキシ系化合物;1,3−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)シクロヘキサン、1,4−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)シクロヘキサン、1,3−ビス(2,3−エポキシプロピルチオメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(2,3−エポキシプロピルチオメチル)シクロヘキサン、2,5−ビス(2,3−エポキシプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス[<2−(2,3−エポキシプロピルチオ)エチル>チオメチル]−1,4−ジチアン、2,5−ビス(2,3−エポキシプロピルチオメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン
カルボン酸化合物;
カルボン酸化合物は、分子中にCOOH基を有している化合物であり、ポリイソシアネートとの反応でウレタン結合形成される、ポリイソチオシアネートとの反応でチオウレタン結合を形成する。これらのモノマーは硬度調整の為に添加されてもよい。その具体例としては、以下の化合物やそれらの酸無水物を挙げることができる。
脂肪族ポリカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、無水マレイン酸、セバシン酸、ダイマー酸、芳香族ポリカルボン酸;オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸
上述した(B3)ウレタンもしくはウレア系重合性モノマーは、それぞれ、重合によりウレタン結合やウレア結合を形成するように組み合わせて使用される。
<(B4)その他の重合性モノマー>
本発明においては、上述した重合性モノマー(B1)〜(B3)以外に、他の重合性モノマーを配合することもできる。他の重合性モノマーとしては、屈折率の向上を目的として、エピスルフィド系重合性モノマーやチエタニル系重合性モノマーを使用することができ、またフォトクロミック性の向上を目的として、単官能重合性モノマー、複合型重合性モノマーを使用することもできる。
エピスルフィド系重合性モノマー;
この重合性モノマーは、1分子内に2個以上のエピスルフィド基を有している化合物であり、開環重合により硬化する。特に、上記(A)重合性官能基含有グラフトポリマーの側鎖に、重合性官能基としてSH基が導入されている場合に好適である。具体的には、以下の化合物を例示することができる。
ビス(1,2−エピチオエチル)スルフィド、ビス(1,2−エピチオエチル)ジスルフィド、ビス(2,3−エピチオプロピル)スルフィド、ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)メタン、ビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(2,3−エピチオプロピルジチオ)メタン、ビス(2,3−エピチオプロピルジチオ)エタン、ビス(6,7−エピチオ−3,4−ジチアヘプチル)スルフィド、ビス(6,7−エピチオ−3,4−ジチアヘプチル)ジスルフィド、1,4−ジチアン−2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルジチオメチル)、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルジチオメチル)ベンゼン、1,6−ビス(2,3−エピチオプロピルジチオメチル)−2−(2,3−エピチオプロピルジチオエチルチオ)−4−チアヘキサン、1,2,3−トリス(2,3−エピチオプロピルジチオ)プロパン、1,1,1,1−テトラキス(2,3−エピチオプロピルジチオメチル)メタン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルジチオ)−2−チアプロパン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルジチオ)−2,3−ジチアブタン、1,1,1−トリス(2,3−エピチオプロピルジチオ)メタン、1,1,1−トリス(2,3−エピチオプロピルジチオメチルチオ)メタン、1,1,2,2−テトラキス(2,3−エピチオプロピルジチオ)エタン、1,1,2,2−テトラキス(2,3−エピチオプロピルジチオメチルチオ)エタン、1,1,3,3−テトラキス(2,3−エピチオプロピルジチオ)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(2,3−エピチオプロピルジチオメチルチオ)プロパン、2−[1,1−ビス(2,3−エピチオプロピルジチオ)メチル]−1,3−ジチエタン、2−[1,1−ビス(2,3−エピチオプロピルジチオメチルチオ)メチル]−1,3−ジチエタン
チエタニル系重合性モノマー;
この重合性モノマーは、上記(A)重合性官能基含有グラフトポリマーの側鎖に重合性官能基としてSH基が導入されている場合に効果的であり、1分子内に2個以上のチエタニル基を有するチエタン化合物であり、開環重合により硬化する。これらの化合物は、高屈折率化する為に添加されてもよい。このようなチエタニル系化合物の一部は、複数のチエタニル基と共にエピスルフィド基を有するものであり、これは、上記のエピスルフィド系化合物の項に挙げられている。その他のチエタニル系化合物には、分子内に金属原子を有している含金属チエタン化合物と、金属を含んでいない非金属系チエタン化合物とがある。ここで、含金属チエタン化合物には、分子内に、金属原子として、Sn原子、Si原子、Ge原子、Pb原子等の14族の元素;Zr原子、Ti原子等の4族の元素;Al原子等の13族の元素;またはZn原子等の12族の元素;などを含んでいるものである。このようなチエタニル系化合物の具体例としては、以下のものを例示することができる。
含金属チエタン化合物;アルキルチオ(チエタニルチオ)スズ;メチルチオトリス(チエタニルチオ)スズ、エチルチオトリス(チエタニルチオ)スズ、プロピルチオトリス(チエタニルチオ)スズ、イソプロピルチオトリス(チエタニルチオ)スズ
ビス(アルキルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズ;ビス(メチルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズ、ビス(エチルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズ、ビス(プロピルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズ、ビス(イソプロピルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズ
アルキルチオ(アルキルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズ;エチルチオ(メチルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズ、メチルチオ(プロピルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズ、イソプロピルチオ(メチルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズ、エチルチオ(プロピルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズ、エチルチオ(イソプロピルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズ、イソプロピルチオ(プロピルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズ
非金属系チエタン化合物;ビス(3−チエタニル)ジスルフィド、ビス(3−チエタニル)スルフィド、ビス(3−チエタニル)トリスルフィド、ビス(3−チエタニル)テトラスルフィド、1,4−ビス(3−チエタニル)−1,3,4−トリチアブタン、1,5−ビス(3−チエタニル)−1,2,4,5−テトラチアペンタン、1,6−ビス(3−チエタニル)−1,3,4,6−テトラチアヘキサン、1,6−ビス(3−チエタニル)−1,3,5,6−テトラチアヘキサン、1,7−ビス(3−チエタニル)−1,2,4,5,7−ペンタチアヘプタン、1,7−ビス(3−チエタニルチオ)−1,2,4,6,7−ペンタチアヘプタン、1,1−ビス(3−チエタニルチオ)メタン、1,2−ビス(3−チエタニルチオ)エタン、1,2,3−トリス(3−チエタニルチオ)プロパン、
単官能重合性モノマー;
このモノマーは、1分子中に1つの水酸基、又はチオール基を有する化合物(以下、モノ(チ)オール化合物とも言う。)であり、前記ポリ(チ)オール化合物に加えて、さらにこのモノマーを用い、フォトクロミック組成物を硬化させると、ポリイソ(チオ)シアネート化合物とポリ(チ)オール化合物との反応により、(チオ)ウレタン結合を有する網目状構造の剛直な硬化体が得られたところに、片末端フリ−な構造を有するモノ(チ)オール化合物が網目状構造に取り込まれるため、モノ(チ)オール化合物の周辺にフレキシブルな空間が形成される。従ってこの空間近傍に存在するフォトクロミック化合物の可逆的な構造変化を、より速やかに生じさせるようになるためフォトクロミック特性(発色濃度、退色速度)に優れたフォトクロミック硬化体を製造することが可能である。
さらに、モノ(チ)オール化合物は、水酸基、またはチオール基を1個しか有さない為、水素結合がポリ(チ)オール化合物よりも少なく、その結果、フォトクロミック組成物の粘度を減少させることが可能であり、注型の際のハンドリング性能を向上させることが出来る。本発明のフォトクロミック組成物に用いる上記モノ(チ)オール化合物の具体例としては、以下の化合物を例示することができる。
1分子中に1個の水酸基化合物;ポリエチレングリコールモノオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオレエート、ポリエチレングリコールモノラウラート、ポリエチレングリコールモノステアラート、ポリエチレングリコールモノ−4−オクチルフェニルエーテル、直鎖状のポリオキシエチレンアルキルエーテル(ポリエチレングリコ−ルモノメチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル)、炭素数5〜30の直鎖状、または枝分かれ状を有する飽和アルキルアルコ−ル
1分子中に1個のチオール化合物;3−メトキシブチルチオグリコレート、2−エチルヘキシルチオグリコレート、2−メルカプトエチルオクタン酸エステル、3−メルカプトプロピオン酸−3−メトキシブチル、3−メルカプトプロピオン酸エチル、3−メルカプトプロピオン酸−2−オクチル、n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート、メチル−3−メルカプトプロピオネート、トリデシル−3−メルカプトプロピオネート、ステアリル−3−メルカプトプロピオネート、炭素数5〜30の直鎖状、または枝分かれ状構造を有する飽和アルキルチオール
上記モノ(チ)オール化合物の好ましい例としては、ポリエチレングリコールモノオレイルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウラ−ト、ポリエチレングリコールモノステアラート、1−ドデカンチオール、ステアリル−3−メルカプトプロピオネート、n−オクチル−3−メルカプトプロピオネートであることが好ましい。
複合型重合性モノマー;
この重合性モノマーは、分子中に異なるタイプの複数種の重合性基を有するものであり、このような重合性モノマーの使用により、各種の物性調整を図ることができる。
このような複合型重合性モノマーの例として、以下の化合物を挙げることができる。
ラジカル重合/エポキシ型重合性モノマー;グリシジルメタクリレート、グリシジルオキシメチルメタクリレート、ポリエチレングリコールグリシジルメタクリレート
ラジカル重合/OH型重合性モノマー;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル
ラジカル重合/イソシアネート型重合性モノマー;2−イソシアナトエチルメタクリレート、2−イソシアナトエチルアクリレート
本発明においては、(A)重合性官能基含有グラフトポリマーによるフォトクロミック性向上効果を最大限に発揮させるためには、(A)重合性官能基含有グラフトポリマーの側鎖に導入される重合性官能基を水酸基及び/またはチオール基とし、(B)重合性モノマーとして、(B3)ウレタンもしくはウレア系重合性モノマーを、ウレタン結合、チオウレタン結合、ウレア結合或いはチオウレア結合特にウレタン結合またはチオウレタン結合)が形成されるように組み合わせで使用することが最も好ましい。
<(C)フォトクロミック化合物>
フォトクロミック性を示すフォトクロミック化合物としては、それ自体公知のものを使用することができ、これらは、1種単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。
このようなフォトクロミック化合物として代表的なものは、フルギド化合物、クロメン化合物及びスピロオキサジン化合物であり、例えば、特開平2−28154号公報、特開昭62−288830号公報、WO94/22850号パンフレット、WO96/14596号パンフレット等、多くの文献に開示されている。
本発明においては、公知のフォトクロミック化合物の中でも、発色濃度、初期着色性、耐久性、退色速度などのフォトクロミック性の観点から、インデノ〔2,1−f〕ナフト〔1,2−b〕ピラン骨格を有するクロメン化合物を用いることがより好ましく、特に分子量が540以上のクロメン化合物が、発色濃度及び退色速度に特に優れるため好適に使用される。
以下に示すクロメン化合物は、本発明において特に好適に使用されるクロメン化合物の例である。
Figure 2017019973
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Figure 2017019973
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<フォトクロミック組成物の好適組成>
上述した(A)重合性官能基含有グラフトポリマー及び(C)フォトクロミック化合物を必須成分とする本発明のフォトクロミック組成物では、通常、グラフトポリマー(A)100質量部当り、0.0001〜20質量部の量でフォトクロミック化合物(B)が使用され、さらに、その好適使用量は、フォトクロミック性の発現方式によっても異なる。
例えば、練り込み法によってフォトクロミック性を発現させる場合には、0.001〜2質量部の量で使用するのが好ましく、積層法によってフォトクロミック性を発現させる時には、0.01〜10質量部の量で使用するのが好適である。
また、バインダー法によってフォトクロミック性を発現させる場合には、0.5〜20質量部の量で使用するのが好ましい。
<(D)重合硬化促進剤、(E)内部離型剤>
本発明においては、(A)、(B)、及び(C)の各成分の他に、成型性の向上、硬化体の硬度調整等を目的として、(D)重合硬化促進剤、(E)内部離型剤をさらに含んでよい。これらについて説明する。
(D)重合硬化促進剤;
本発明のフォトクロミック組成物においては、上記(A)重合性官能基含有グラフトポリマーの側鎖に導入された重合性官能基や(B)重合性モノマーの種類に応じて、その重合硬化を速やかに促進させるために各種の重合硬化促進剤を使用することができる。
例えば、水酸基、及びチオール基とイソシアネート基、及びイソチオシアネート基との反応に用いる場合には、ウレタン或いはウレア用反応触媒や縮合剤が重合硬化促進剤として使用される。
エピスルフィド系化合物、チエタニル系、エポキシ系化合物が使用された場合は、エポキシ硬化剤やエポキシ基を開環重合させるためのカチオン重合触媒が重合硬化促進剤として使用される。
(メタ)アクリル基、ビニル基を含むラジカル重合性モノマーが含まれている場合は、ラジカル重合開始剤が重合硬化促進剤として使用される。
<ウレタン或いはウレア用反応触媒>
この反応触媒は、ポリイソ(チア)シアネートと、ポリオール又はポリチオールとの反応によるポリ(チオ)ウレタン結合生成において用いられる。これらの重合触媒は3級アミン類およびこれらに対応する無機または有機塩類、ホスフィン類、4級アンモニウム塩類、4級ホスホニウム塩類、ルイス酸類、または有機スルホン酸を挙げることが出来る。この具体例としては、以下のものを例示することができる。また、選択する上述の化合物の種類により、触媒活性が高すぎる場合は、3級アミンとルイス酸を混合して用いることにより触媒活性を抑えることが可能である。
3級アミン類;トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリエチルアミン、ヘキサメチレンテトラミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、N,N,N′,N′−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン、4,4′−トリメチレンビス(1−メチルピペリジン)、1,8−ジアザビシクロ−(5,4,0)−7−ウンデセン
ホスフィン類;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィ、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリベンジルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン
4級アンモニウム塩類;テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド
4級ホスホニウム塩類;テトラメチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイド
ルイス酸;トリフェニルアルミ、ジメチルスズジクロライド、ジメチルスズビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジブチルスズジクロライド、ジブチルチンジラウレート、ジブチルスズマレエ−ト、ジブチルスズマレエートポリマー、ジブチルスズジリシノレート、ジブチルスズビス(ドデシルメルカプチド)、ジブチルスズビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジオクチルスズジクロライド、ジオクチルスズマレエート、ジオクチルスズマレエートポリマー、ジオクチルスズビス(ブチルマレエート)
各種金属塩;オレイン酸銅、アセチルアセトン酸銅、アセチルアセトン酸鉄、ナフテン酸鉄、乳酸鉄、クエン酸鉄、グルコン酸鉄、オクタン酸カリウム、チタン酸2−エチルヘキシル
有機スルホン酸;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸
<縮合剤>
縮合剤としての具体例は、以下のものを例示することができる。
無機酸;塩化水素、臭化水素、硫酸やリン酸等
有機酸;p−トルエンスルホン酸、カンファ−スルホン酸等
酸性イオン交換樹脂;アンバ−ライト、アンバ−リスト等
カルボジイミド;ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノピロリル)−カルボジイミド
<エポキシ硬化剤>
エポキシ硬化剤としての具体例は、以下のものを例示することができる。
アミン化合物及びその塩;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7−トリメチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノ−ル、2−(ジメチルアミノメチル)フェノ−ル
4級アンモニウム塩;テトラメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド
有機ホスフィン化合物;テトラ−n−ブチルホスホニウムベンゾトリアゾレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート
金属カルボン酸塩;クロム(III)トリカルボキシレ−ト、オクチル酸スズ
アセチルアセトンキレ−ト化合物;クロムアセチルアセトナ−ト
<カチオン重合触媒>
カチオン重合触媒としての具体例は、以下のものを例示することができる。
ルイス酸系触媒;BF・アミン錯体、PF、BF、AsF、SbF
熱硬化性カチオン重合触媒;ホスホニウム塩や4級アンモニウム塩、スルホニウム塩、ベンジルアンモニウム塩、ベンジルピリジニウム塩、ベンジルスルホニウム塩、ヒドラジニウム塩、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、アミンイミド
紫外硬化性カチオン重合触媒;ジアリールヨードニウムヘキサフロオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモン酸ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム
<ラジカル重合開始剤>
重合開始剤には、光重合開始剤及び熱重合開始剤がある。
光重合開始剤の具体例は以下のとおりである。
アセトフェノン系化合物;1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン
α−ジカルボニル系化合物;1,2−ジフェニルエタンジオン、メチルフェニルグリコキシレート
アシルフォスフィンオキシド系化合物;2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2,6−ジクロルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド
尚、光重合開始剤を用いる場合には、3級アミン等の公知の重合硬化促進助剤を併用することもできる。
熱重合開始剤の具体例は以下のとおりである。
ジアシルパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド
アセチルパーオキサイドパーオキシエステル;t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、t−ブチルパーオキシネオデカネート、クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート
パーカーボネート;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート
アゾ化合物;アゾビスイソブチロニトリル
上述した各種の(D)重合硬化促進剤は、それぞれ、1種単独でも、2種以上を併用することもできるが、その使用量は、所謂触媒量でよく、例えば、上記(A)重合性官能基含有グラフトポリマー、及び(B)重合性モノマーの合計100質量部に対して、0.001〜10質量部、特に0.01〜5質量部の範囲で十分である。
<(E)内部離型剤>
本発明において用いられる内部離型剤の例としては、離型性の効果があり樹脂の透明性などの物性を損なわないものであればいずれでも使用可能であるが、好ましくは界面活性剤が使用される。その中でも、リン酸エステル系界面活性剤が好ましい。ここでいう内部離型剤は、前述の各種触媒のうち離型効果を示すものをも含み、例えば4級アンモニウム塩類および4級ホスホニウム塩類をも含むことがある。これら内部離型剤は、モノマーとの組合せ、重合条件、経済性、取り扱いの容易さより適宜選ばれる。リン酸エステルの内部離型剤の具体例は、以下のとおりである。
アルキルアシッドホスフェート;リン酸モノ−n−ブチル、リン酸モノ−2−エチルヘキシル、リン酸モノ−n−オクチル、リン酸モノ−n−ブチル、ビス(2−エチルヘキシル)ホスフェ−ト、リン酸ジ(2−エチルヘキシル)、リン酸ジ−n−オクチル、リン酸ジ−n−ブチル、ブチルアシッドホスフェート(モノ−、ジ−混合物)、エチルアシッドホスフェート(モノ−、ジ−混合物)、ブトキシエチルアシッドホスフェート(モノ−、ジ−混合物)、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート(モノ−、ジ−混合物)、イソトリデンアシッドホスフェート(モノ−、ジ−混合物)、テトラコシルアシッドホスフェート(モノ−、ジ−混合物)、ステアリルアシッドホスフェイト(モノ−、ジ−混合物)
その他のリン酸エステル;オレイルアシッドホスフェート(モノ−、ジ−混合物)、ジブチルピロホスフェート、エチレングリコールアシッドホスフェート(モノ−、ジ−混合物)、ブトキシエチルアシッドホスフェート(モノ−、ジ−混合物)等が例示できる。
上述した各種の(E)内部離型剤は、それぞれ、1種単独でも、2種以上を併用することもできるが、その使用量は少量でよく、例えば(A)、及び(B)の合計100質量部に対して0.001質量部〜20質量部の量で用いることが出来る。
<その他の配合成分>
本発明のフォトクロミック組成物には、本発明の効果を損なわない範囲でそれ自体公知の各種配合剤、例えば、紫外線吸収剤、帯電防止剤、赤外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料等の各種安定剤、添加剤、溶剤、レベリング剤、さらには、t−ドデシルメルカプタン等のチオール類を重合調整剤として、必要に応じて配合することができる。
中でも、紫外線安定剤を使用するとフォトクロミック化合物の耐久性を向上させることができるために好適である。このような紫外線安定剤としては、ヒンダ−ドアミン光安定剤、ヒンダードフェノール酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが知られている。特に好適な紫外線安定剤は、以下の通りである。
ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケ−ト、旭電化工業(株)製アデカスタブLA−52、LA−57、LA−62、LA−63、LA−67、LA−77、LA−82、LA−87、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチル−フェノール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、チバ・スペシャリティ−・ケミカルズ社製のIRGANOX1010、1035、1075、1098、1135、1141、1222、1330、1425、1520、259、3114、3790、5057、565
このような紫外線安定剤の使用量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されるものではないが、通常、(A)、及び(B)の合計100質量部に対して、0.001質量部〜10質量部、特に0.01質量部〜1質量部の範囲である。特にヒンダ−ドアミン光安定剤を用いる場合、フォトクロミック化合物の種類によって耐久性の向上効果に差がある結果、調整された発色色調の色ズレが生じないようにするため、(C)フォトクロミック化合物1モル当り、0.5〜30モル、より好ましくは1〜20モル、さらに好ましくは2〜15モルの量とするのがよい。
また、帯電防止性剤としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩、4級アンモニウム塩、界面活性剤(非イオン界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤)、及びイオン性液体(常温で液体として存在し、陽イオン及び陰イオンの対で存在する塩)等が挙げられる。具体例としては以下の通りである。
アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩;アルカリ金属(リチウム、ナトリウム及びカリウム等)又はアルカリ土類金属(マグネシウム及びカルシウム等)と、有機酸[炭素数1〜7のモノ又はジカルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸及びコハク酸等)、炭素数1〜7のスルホン酸(メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸等)及びチオシアン酸]との塩、及び前記有機酸と無機酸[ハロゲン化水素酸(塩酸及び臭化水素酸等)、過塩素酸、硫酸、硝酸及びリン酸等)]の塩等
4級アンモニウム塩;アミジニウム(1−エチル−3−メチルイミダゾリウム等)又はグアニジウム(2−ジメチルアミノ−1,3,4−トリメチルイミダゾリニウム等)と、前記有機酸又は無機酸との塩等
界面活性剤;しょ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルグリコシド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸塩(石けん)、α−スルホ脂肪酸メチルエステル塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、(モノ)アルキルリン酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、Nメチルビスヒドロキエチルアミン脂、肪酸エステル・塩酸塩、アルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等
イオン性液体;1,3−エチルメチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルホンイミド、1,3−エチルメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチルピリジニウムビストリフルオロメタンスルホンイミド、1−エチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1−エチルピリジニウムヘキサフルオロフォスフェート、1−メチルピラゾリウムビストリフルオロメタンスルホンイミド等
<フォトクロミック組成物の製造方法>
本発明のフォトクロミック組成物は、一般的には、(A)重合性官能基含有グラフトポリマー、(B)重合性モノマー、(C)フォトクロミック化合物に加えて、(D)重合硬化促進剤を配合されていることが好ましく、例えば、各成分を溶融混練してフォトクロミック組成物を調製し、これを重合硬化させることによりフォトクロミック硬化体を作製し、この硬化体によりフォトクロミック性を発現させることが望ましい。
また構成成分の溶解性向上や膜厚調整のため、本発明のフォトクロミック組成物を、有機溶媒に分散ないし溶解させて塗布液を調製し、この塗布液を透明な光学シートや光学フィルムに塗布し、乾燥することにより、フォトクロミックコーティング層を形成し、これにより、フォトクロミック性を発現させることができる。用いる有機溶媒は、用途に応じて適宜選択すればよいが、溶解性の点からメチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジオキサン、テトラヒドロピラン等のエーテル類等を用いることが好ましい。
上記のフォトクロミック組成物は、フォトクロミック硬化体を作製するために重合硬化を行なう。重合硬化は、熱、または必要に応じて、紫外線、α線、β線、γ線等の活性エネルギー線の照射、熱、あるいは両者の併用等により、ラジカル重合、開環重合、アニオン重合或いは縮重合を行うことにより、行われる。即ち、(B)重合性モノマーや(D)重合硬化促進剤の種類及び形成されるフォトクロミック硬化体の形態に応じて、適宜の重合手段を採用すればよい。
本発明のフォトクロミック組成物を熱重合させるに際しては、特に温度が得られるフォトクロミック硬化体の性状に影響を与える。この温度条件は、熱重合開始剤の種類と量や重合性モノマーの種類によって影響を受けるので一概に限定はできないが、一般的に比較的低温で重合を開始し、ゆっくりと温度を上げていく方法が好適である。重合時間も温度と同様に各種の要因によって異なるので、予めこれらの条件に応じた最適の時間を決定するのが好適であるが、一般には、2〜48時間で重合が完結するように条件を選ぶのが好ましい。フォトクロミック積層シートを得る場合には、重合性官能基同士の反応が進行する温度で重合し、その際、目的とする分子量になるように最適な温度と時間を決定することが好ましい。
また、本発明のフォトクロミック組成物を光重合させる際には、重合条件のうち、特にUV強度は得られるフォトクロミック硬化体の性状に影響を与える。この照度条件は、光重合開始剤の種類と量や重合性モノマーの種類によって影響を受けるので一概に限定はできないが、一般的に365nmの波長で50〜500mW/cmのUV光を0.5〜5分の時間で光照射するように条件を選ぶのが好ましい。
上述した重合硬化を利用しての練り込み法によりフォトクロミック性を発現させる場合には、エストラマーガスケット又はスペーサーで保持されているガラスモールド間に、上記のフォトクロミック組成物を注入し、重合性モノマーや重合硬化促進剤の種類に応じて、空気炉中での加熱や紫外線等の活性エネルギー線照射によっての注型重合によって、レンズ等の光学材料の形態に成形されたフォトクロミック硬化体を得ることができる。かかる方法によれば、直接、フォトクロミック性が付与された眼鏡レンズ等が得られる。
積層法によりフォトクロミック性を発現させる場合には、フォトクロミック組成物を適宜有機溶剤に溶解させて塗布液を調製し、スピンコートやディッピング等により、レンズ基材等の光学基材の表面に塗布液を塗布し、乾燥して有機溶剤を除去し、次いで、窒素などの不活性ガス中でのUV照射や加熱等により重合硬化を行うことにより、光学基材の表面にフォトクロミック硬化体からなるフォトクロミック層が形成される(コーティング法)。
また、レンズ基材等の光学基板を所定の空隙が形成されるようにガラスモールドに対面して配置し、この空隙にフォトクロミック組成物を注入し、この状態で、UV照射や加熱等により重合硬化を行うインナーモールドによる注型重合によっても、光学基材の表面にフォトクロミック硬化体からなるフォトクロミック層を形成することができる(注型重合法)。
上記のような積層法(コーティング法及び注型重合法)によりフォトクロミック層を光学基材の表面に形成する場合には、予め光学基材の表面に、アルカリ溶液、酸溶液などによる化学的処理、コロナ放電、プラズマ放電、研磨などによる物理的処理を行っておくことにより、フォトクロミック層と光学基材との密着性を高めることもできる。勿論、光学基材の表面に透明な接着樹脂層を設けておくことも可能である。
さらに、バインダー法によりフォトクロミック性を発現する場合には、フォトクロミック組成物を用いてのシート成形によりフォトクロミックシートを作製し、これを2枚の透明なシート(光学シート)で挟んで、前述した重合硬化を行うことにより、フォトクロミック層を接着層とするフォトクロミック積層体が得られる。
この場合、フォトクロミックシートの作成には、フォトクロミック組成物を有機溶剤に溶解させた塗布液を用いてのコーティングという手段も採用することができる。
このようにして作製されたフォトクロミック積層体は、例えば、これを金型内に装着され、この後、レンズなどの光学基材用熱可塑性樹脂(例えばポリカーボネートを射出成形することにより、フォトクロミック性が付与された所定形状のレンズ等の光学基材が得られる。また、このフォトクロミック積層体は、接着剤などにより、光学基材の表面に接着することもでき、これにより、フォトクロミックレンズを得ることもできる。
上述した本発明のフォトクロミック組成物は、発色濃度や退色速度等に優れたフォトクロミック性を発現させることができ、しかも、機械的強度等の特性を低減させることもなく、フォトクロミック性が付与された光学基材、例えばフォトクロミックレンズの作成に有効に利用される。
また、本発明のフォトクロミック組成物により形成されるフォトクロミック層やフォトクロミック硬化体は、その用途に応じて、分散染料などの染料を用いる染色、シランカップリング剤やケイ素、ジルコニウム、アンチモン、アルミニウム、スズ、タングステン等のゾルを主成分とするハードコート剤を用いてのハードコート膜の作成、SiO、TiO、ZrO等の金属酸化物の蒸着による薄膜形成、有機高分子を塗布しての薄膜による反射防止処理、帯電防止処理等の後加工を施すことも可能である。
次に、実施例及び比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、上記の各成分及びフォトクロミック特性の評価方法等は、以下のとおりである。
(A)重合性官能基含有グラフトポリマー
A−1:重合性官能基としてOH基を有する、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)−ポリカプロラクトン(PCL)−OHマクロモノマー(数平均分子量910)とメチルメタクリレート(MMA)との共重合体であり、側鎖に重合性官能基としてOH基を有するグラフトポリマーである(重量平均分子量90,000)。
A−2:重合性官能基としてOH基を有するHEMA−PCL−OHマクロモノマー(数平均分子量1,800)とMMAとの共重合体であり、側鎖に重合性官能基としてOH基を有するグラフトポリマーである(重量平均分子量135,000)。
A−3:グラフトポリマーA−1の重合性官能基(OH基)を修飾しアクリル基を導入したグラフトポリマーである(重量平均分子量93,000)。
A−4:グラフトポリマーA−2の重合性官能基(OH基)を修飾しアクリル基を導入したグラフトポリマーである(重量平均分子量138,000)。
(B)重合性モノマー
(メタ)アクリル系重合性モノマー
TMPT:トリメチロールプロパントリメタクリレート
D−TMPT:ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート
3PG:トリプロピレングリコールジメタクリレート
BPE100:2,2−ビス[4−(メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]プロパン(エチレグリコール鎖の平均鎖長が2.6、平均分子量が478)
A400:ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレングリコール鎖の平均鎖長が9、平均分子量が508)
BPE500:2,2−ビス[4−(メタクリロイルオキシポリエトキシ)フェニル]プロパン(エチレグリコール鎖の平均鎖長が10、平均分子量が804)
A−BPE:2,2−ビス(4−アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロバン(エチレンオキシ基の平均繰返し数が10、平均分子量が776)
M90G:メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(新中村化学工業(株)製「M90G」)
14G:ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレングリコール鎖の平均鎖長が14、平均分子量が736)
EB4858:ダイセルユーシービー社製2官能ウレタンメタクリレート(アクリル当量が227)
M−1:ポリカーボネートジオールジアクリレート
ビニル系重合牲モノマー
αMS:α−メチルスチレン
MSD:α−メチルスチレンダイマー
アリル系重合牲モノマー
MPEAE:メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル(平均分子量550)
ポリ(チ)オール化合物
PL1:旭化成ケミカルズ株式会社製デュラノール(ポリカーボネートジオール、数平均分子量500)
TMMP:トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)
PEMP:ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)
ポリイソシアネート化合物
XDI:m−キシレンジイソシアネート
IPDI:イソホロンジイソシアネート
ポリアミン化合物
IPDA:イソホロンジアミン
単官能重合性モノマー
PELE:ポリオキシエチレンラウリルエーテル(n≒23)
複合型重合性モノマー
GMA:グリシジルメタアクリレート
(C)フォトクロミック化合物;
PC1:
Figure 2017019973
(D)重合硬化促進剤
熱重合開始剤;
パーブチルND:t−ブチルパーオキシネオデカネート(商品名:パーブチルND、日本油脂(株)製)
パーオクタO:1,1,3,3−テトラメチルブチル パーオキシ−2−エチルヘキサネート(商品名:パーオクタO、日本油脂(株)製)
光重合開始剤;
PI:フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシド(商品名:Irgacure819、BASF社製)
ウレタン或いはウレア用反応触媒>;
DBTD:ジブチルチンジラウレート
その他の配合成分;
溶媒;
THFテトラヒドロフラン
DMF:ジメチルスルホキシド
IPA:イソプロピルアルコール
安定剤;
HALS:ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(分子量508)
HP:エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、Irganox245)
レベリング剤;
L1:東レ・ダウコーニング株式会社製 商品名;L7001
重合性官能基を含有しないグラフトポリマー;
F−1: 側鎖の重合性官能基(OH基)をイソプロピル基でキャッピングしたグラフトポリマー
<(A)重合性官能基含有グラフトポリマーの調製方法>
(1−1)重合性官能基としてOH基を有するHEMA−PCL−OHマクロモノマー(数平均分子量910)とメチルメタクリレート(MMA)との共重合体であり、側鎖に重合性官能基としてOH基を有する重量平均分子量90,000のグラフトポリマー(A−1)
まずは、以下の要領でHEMA−PCL−OHマクロモノマー(数平均分子量:Mw=910)を調製した。
蒸留したHEMA1.30g(10mmol)のトルエン100ml溶液をトリエチルアルミ1.14(10mmol)の90mlトルエン溶液に窒素雰囲気化、攪拌しながら徐々に滴下を行った。室温で30分、続いて40℃にて30分激しく攪拌を行い、エタン発生が終わってから室温で1時間さらに攪拌を行い、系中でジエチルアルミニウムアルコキシド体を得た。
続いて上記ジエチルアルミニウムアルコキシド体を含む溶液に、ε−カプロラクトン8.0g(70mmol)をトルエン100mlに溶かした溶液を25℃にて加え3時間反応させた。溶液の10倍量の2N塩酸にあけアルコキシド体を分解した。残存したアルミ成分を0.1Mエチレンジアミン四酢酸水溶液で繰り返し抽出し、ポリマー成分を水で中性になるまで洗浄を行った。トルエンを2/3量留去した後、沈殿化を行い、続いて真空乾燥を行うことで、HEMA−PCL−OHマクロモノマー8.2gを得た。GPC分析より数平均分子量(Mn)は910であり、側鎖の平均的ε−カプロラクトンユニット数はマクロモノマー1分子あたり6.7個であることが判った。
上記で調製されたHEMA−PCL−OHマクロモノマー(数平均分子量:Mw=910)2.0g(2.2mmol)、メチルメタクレート(MMA)1.0g(10mmol)及びアゾビスイソブチロニトリル100mgをジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、60℃にて22時間反応させた。DMFを留去した後、高分子成分をテトラヒドロフラン(THF)に再溶解させ、ヘプタン中で再沈殿を行った。沈殿物をろ過後、減圧乾燥を行い目的のグラフトポリマー(A−1)を得た。
IR:1730cm−1(C=O伸縮)、
重量平均分子量Mw(GPC):90,000
H−NMR測定における得られたグラフトポリマーを構成するMMAとHEMA−PCL−OHマクロモノマーとのモル比は、H―NMRにおける特性ピークの比、即ちHEMA由来のα−ヒドロキシメチレン末端の水素(―OCHOH)とMMA由来のメチルエステル水素(−C(O)OCH)のシグナル強度比からより算出し、89:11であることが判った。
(1−2)重合性官能基としてOH基を有するHEMA−PCL−OHマクロモノマー(数平均分子量1,800)とMMAとの共重合体であり、側鎖に重合性官能基としてOH基を有する重量平均分子量135,000のグラフトポリマーの調製(A−2)。
まずは、以下の要領でHEMA−PCL−OHマクロモノマーを調製した(数平均分子量:Mn=1,800);
HEMAから得られたジエチルアルミニウムアルコキシド体を2.14g(理論量、10mmol相当)、ε−カプロラクトンを17.1g(150mmol)用いた以外は、上記(1−1)と同様な方法でHEMA−PCL−OHマクロモノマー17.4gを得た。得られたマクロモノマーの数平均分子量は1,800であり、平均的ε−カプロラクトンユニットはマクロモノマー1分子あたり14.6個であることが判った。
続いて、上記で調製されたHEMA−PCL−OHマクロモノマーの調製(数平均分子量:Mn=1,800)を2.0g(1.1mmol)、メチルメタクレート(MMA)1.0g(10mmol)用いた以外は、上記(1−1)と同様な方法でグラフトポリマー(A−2)を得た。H−NMR測定における得られたグラフトポリマーを構成するMMAとHEMA−PCL−OHマクロモノマーとのモル比は、90:10であることが判った。
IR:1731cm−1(C=O伸縮)
重量平均分子量Mw(GPC):135,000
(2−1)グラフトポリマーA−1の重合性官能基(OH基)を修飾しアクリル基を導入した重量平均分子量93,000であるグラフトポリマーの調製(A−3)
上記(1−1)で調製されたグラフトポリマー(A−1)5.0g(0.055mmol)のトルエン溶液100gに、ジブチルヒドロキシトルエン(重合禁止剤)0.01gを添加した後、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート0.45g(2.9mmol)を滴下した。40℃で12時間攪拌し、ポリカプロラクトン末端にアクリル基を導入したグラフトポリマーのトルエン溶液を得た。
このグラフトポリマーのトルエン溶液をヘキサン中に滴下し、回収し、乾燥することで、重合性官能基としてアクリル基が側鎖に導入されたグラフトポリマー(A−3)を得た。このグラフトポリマー(A−3)の物性は以下のとおりであった。
IR:1730cm−1(C=O伸縮)
重量平均分子量Mw(GPC):93,000
(2−2)グラフトポリマーA−2の重合性官能基(OH基)を修飾しアクリル基を導入した重量平均分子量138,000であるグラフトポリマー(A−4)の調製;
グラフトポリマー(A−2)を用いた以外、上記(2−1)と同様にして、グラフトポリマー(A−4)を調製した。このグラフトポリマー(A−4)の物性は以下のとおりであった。
IR:1730cm−1(C=O伸縮)
重量平均分子量Mw(GPC):138,000
<側鎖の重合性官能基をイソプロピル基でキャッピングしたグラフトポリマー(F−1)の調製>
ε−カプロタクトン、メタクリル酸等を用いて、European Polymer Journal 41巻、1187−1195ページ、2005年に記載の方法にて、側鎖の末端(OH基)がイソプロピル基でキャッピングされたポリカプロラクトン系マクロモノマーである、α−イソプロポキシ,ω−メタクリレート−ポリ(ε−カプロタクトン)(以下、Pr−PCLMAとも言う。)を得た。数平均分子量=1870(GPC)。側鎖の平均的ε−カプロラクトンユニット数はマクロモノマー1分子あたり15.6個であることが判った。
上記で調製されたPr−PCLMA(数平均分子量:Mw=1870)1.0g(1.1mmol)、メチルメタクレート(MMA)1.0g(10mmol)及びアゾビスイソブチロニトリル100mgをジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、60℃にて22時間反応させた。DMFを留去した後、高分子成分をテトラヒドロフラン(THF)に再溶解させ、ヘプタン中で再沈殿を行った。沈殿物をろ過後、減圧乾燥を行い目的のグラフトポリマー(F−1)を得た。このグラフトポリマー(F−1)の物性は以下のとおりであった。
IR:1731cm−1(C=O伸縮)
重量平均分子量Mw(GPC):135,000
グラフトポリマーの主鎖を構成するMMAとポリカプロラクトン系マクロモノマーとのモル比は、H―NMRにおける特性ピークの比、即ちポリエステル鎖由来のエステルメチレン水素(−C(O)OCH−)とMMA由来のメチルエステル水素(−C(O)OCH)のシグナル強度比からより算出し、91:9であることが判った。
<実施例1>
(A−3)10質量部、14G 0.5質量部、テトラヒドロフラン(THF)15質量部を、50℃で1時間撹拌溶解させた。次いで、PC1(フォトクロミック化合物)0.3質量部、PI(重合開始剤)0.03質量部、L1(レベリング剤)0.01質量部を加え、40℃で30分間撹拌混合し、フォトクロミック組成物を得た。
スピンコーター(1H−DX2、MIKASA製)を用いて、径80mm、厚2mmのガラス板の表面に、上記で得られたフォトクロミック組成物約2gを、回転数及び時間を調整し、最終的に得られるフォトクロミックコーティング膜の膜厚が40μmになるようにスピンコートした。
このようにフォトクロミック組成物が表面に塗布されているガラス板を、窒素ガス雰囲気中で出力200mW/cm2のメタルハライドランプを用いて、90秒間光を照射し、塗膜を硬化させた。その後さらに100℃で1時間加熱して、フォトクロミックコート層を有するフォトクロミック積層体を作製した。
得られたフォトクロミック積層体は、最大吸収波長580nm、発色濃度0.87、退色速度38秒のフォトクロミック特性を有していた。なお、これらのフォトクロミック性の評価は以下のようにして行った。
得られたフォトクロミック積層体(厚み約2mm)を試料とし、これに(株)浜松ホトニクス製のキセノンランプL−2480(300W)SHL−100をエアロマスフィルター(コーニング社製)を介して20±1℃、重合体(フォトクロミックコート層)表面でのビーム強度365nm=2.4mW/cm、245nm=24μW/cmで120秒間照射して発色させ、フォトクロミッ積層体のフォトクロミック特性を測定した。また、得られたフォトクロミック硬化体の成型性も良好であった。各フォトクロミック特性、及び成形性を以下の方法で評価し、表2に示した。
<最大吸収波長(λmax)>
(株)大塚電子工業製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディテクターMCPD1000)により求めた発色後の最大吸収波長である。最大吸収波長は発色時の色調に関係する。
<発色濃度{ε(120)−ε(0)}>
前記最大吸収波長における、120秒間光照射した後の吸光度{ε(120)}と光照射前の吸光度ε(0)との差。この値が高いほどフォトクロミック性が優れているといえる。また屋外で発色させたとき発色色調を目視により評価した。
<退色速度〔t1/2(sec.)〕>
120秒間光照射後、光の照射を止めたときに、試料の前記最大吸収波長における吸光度が{ε(120)−ε(0)}の1/2まで低下するのに要する時間。この時間が短いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
<成型性>
成型したフォトクロミック硬化体の光学歪みを目視にて観察した。以下の基準で評価した。
1:光学歪みがないもの
2:光学歪みがレンズの半分以下の一部分にみられるもの
3:光学歪みがレンズ全体にみられるもの
<実施例2、及び比較例1>
表1に示した組成のフォトクロミック組成物を用いた以外、実施例1と同様な方法でフォトクロミック積層体を作製し、評価を行なった。結果を表2に示した。
<実施例3>
表1に示したフォトクロミック組成物を、直径約80mmのガラス製シャーレ上に、最終的に得られるフォトクロミック膜の膜厚が40μmになるように注いだ。次いで、このガラス製シャーレを真空下で、フォトクロミック膜に気泡が発生しないようにしながらテトラヒドロフランを揮発させ、最終的には100℃で3時間熱硬化を行い、フォトクロミック膜を作製した。得られたフォトクロミック膜は、最大吸収波長580nm、発色濃度0.86、退色速度37秒のフォトクロミック特性を有していた。なお、これらの評価は実施例1と同様な方法で実施した。結果を表2に示した。
Figure 2017019973
Figure 2017019973
<実施例4〜10、比較例2〜4>
表3に示す各成分を混合して均一液(フォトクロミック組成物)を調製した。得られた均一液を十分に脱泡した後、離型処理を施したガラスモールドとエチレン−酢酸ビニル共重合体からなるガスケットで構成された鋳型よりなるモールド型に注入した。
ついで、30℃から95℃まで徐々に昇温しながら、15時間かけて硬化させた。重合終了後、フォトクロミック硬化体を鋳型のガラス型から取り外した。各フォトクロミック特性、及び成形性を表4に示した。なお、比較例2及び3の退色速度は、発色濃度が低すぎて測定不可能であった。
Figure 2017019973
Figure 2017019973
<実施例11〜14、比較例5〜7>
表5に示す各成分を十分に混合し、フォトクロミック組成物を調製した。得られた混合液(フォトクロミック組成物)をガラス板とエチレン−酢酸ビニル共重合体からなるガスケットで構成された鋳型の中に注入し、注型重合により重合性モノマーの実質的全量を重合した。
重合は空気炉を用い、30℃〜90℃まで18時間かけ徐々に昇温しながら加熱硬化した。重合終了後、フォトクロミック硬化体を鋳型のガラス型から取り外した。得られたフォトクロミック硬化体のフォトクロミック特性、及び成型性結果を表6に示した。
Figure 2017019973
Figure 2017019973
<実施例15、比較例8>
表7に示す各成分を十分に混合し、フォトクロミック組成物を調製した。次いで、上記のフォトクロミック組成物を用い、積層法によりフォトクロミック積層体を得た。重合方法を以下に示す。
まず、光学基材として中心厚が2mmで屈折率が1.60のチオウレタン系プラスチックレンズを用意した。なお、このチオウレタン系プラスチックレンズは、事前に10%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、50℃で5分間のアルカリエッチングを行い、その後十分に蒸留水で洗浄を実施した。
スピンコーター(1H−DX2、MIKASA製)を用いて、上記のプラスチックレンズの表面に、湿気硬化型プライマー(製品名;TR−SC−P、(株)トクヤマ製)を回転数70rpmで15秒、続いて1000rpmで10秒コートした。その後、上記で得られたフォトクロミック組成物 約2gを、回転数60rpmで40秒、続いて600rpmで10〜20秒かけて、フォトクロミックコーティング層の膜厚が40μmになるようにスピンコートした。
このようにコーティング剤が表面に塗布されているレンズを、窒素ガス雰囲気中で出力200mW/cmのメタルハライドランプを用いて、90秒間光を照射し、塗膜を硬化させた。その後さらに110℃で1時間加熱して、フォトクロミック層を有するフォトクロミック積層体を作製した。得られたフォトクロミック積層体のフォトクロミック特性、及び成型性の結果を表8に示した。
Figure 2017019973
Figure 2017019973

Claims (4)

  1. (A)側鎖に重合性官能基が導入されているグラフトポリマーと、
    (B)重合性モノマーと、
    (C)フォトクロミック化合物とを含有するフォトクロミック組成物。
  2. 前記(A)側鎖に重合性官能基が導入されているグラフトポリマー及び(B)重合性モノマーの合計100質量部当り、前記(A)重合性官能基を有するグラフトポリマーを1〜50質量部含有する請求項1記載のフォトクロミック組成物。
  3. 前記(A)側鎖に重合性官能基が導入されているグラフトポリマー及び(B)重合性モノマーの合計100質量部当り、(C)フォトクロミック化合物を0.0001〜20質量部の量で含んでいる請求項1に記載のフォトクロミック組成物。
  4. 請求項1〜3に記載のフォトクロミック組成物を硬化して得られるフォトクロミック硬化体。
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