以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、同一の機能を有する部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、本明細書においては、前後左右、上下の方向は図中に示す方向であるとして説明する。
図1は、本発明の実施例に係る電動工具1の縦断面図である。ここでは電動工具1の一例として、モータ5の回転軸6と直交方向に回転するスピンドル24を設け、スピンドル24に接続される作業機器が円形の砥石30であるディスクグラインダを示している。電動工具1のハウジング(外枠又は筐体)は、動力伝達機構を収容するギヤケース21と、モータ5を収容するモータハウジング2と、モータハウジング2の後方に取り付けられ電気機器類を収容するリヤカバー3の3つの主要部品により構成される。ハウジングの形成の仕方は任意であり、本実施例のように前後方向に3つに分割された部分により構成しても良いし、その他の分割形状で形成しても良い。モータハウジング2は樹脂の一体構成であって、前方側に開口を有する略円筒形に構成される。モータハウジング2はモータ5のステータ9の外径よりも僅かに大きい外径を有し、モータハウジング2の外面側は作業者が片手で把持する部分(把持部)を構成する。モータハウジング2の後方には、筒状のリヤカバー3が取り付けられる。
モータ5はモータハウジング2の中心軸方向(前後方向)に沿うように回転軸6が配置され、演算部がロータ7の回転位置を、ホールICを用いた回転位置検出素子69にて検出し、複数のスイッチング素子Q1〜Q6(後述する図2参照)で構成されるインバータ回路80を制御することにより、モータ5の所定のコイル13に順次駆動電力を供給することにより回転磁界を形成してロータを回転させる。モータ5は3相ブラシレスDCモータであり、ステータ9の内周側空間内にてロータが回転するもので、いわゆるインナーロータタイプである。ステータ9は、プレス加工によって製造された薄い鉄板を軸方向に多数枚積層した積層構造で製造される。ステータ9の内周側には6つのティースが形成され、各ティースの軸方向前後方向には、樹脂製のインシュレータ11、12が装着され、インシュレータ11、12間にティースを挟んだ形で銅線が巻かれてコイル13が形成される。本実施例では、コイル13をU、V、W相の3相を有するスター結線とすることが好ましく、コイル13へ駆動電力を供給するためのU、V、W相用の3本のリード線(図示せず)が回路基板60に接続される。ステータ9の内周側では、回転軸6にロータ7が固定される。ロータ7はプレス加工にて製造した円環状の薄い鉄板を軸方向に多数枚積層したロータ7に、軸方向と平行して形成され、その断面形状が長方形のスロット部分にN極およびS極を有する平板状の永久磁石8が挿入される。ロータ7の前後端部には金属材料から成るバランサ6a、6bが設けられており、バランサ6a、6bを削り加工することにより、ロータ7の回転バランスを調整できるようにしている。
回転軸6は、モータハウジング2に保持される後方側の軸受(第一の軸受)14aと、ギヤケース21とモータハウジング2との接続部付近で保持される前方側の軸受(第二の軸受)14bとにより回転可能に支持される。回転軸6の軸方向に見て軸受14bとモータ5の間には冷却ファン15が設けられる。冷却ファン15は例えばプラスチック製の遠心ファンであって、モータ5が回転すると回転軸6と連動して回転することにより、ハウジングの内部において複数の矢印で示す方向に、モータ5や制御回路等を冷却するための風の流れ(冷却風)を発生させる。冷却風は、回路基板60の後端付近においてリヤカバー3の側面に設けられた風窓3cから吸引され、回路基板60を収容するケース40の周囲を後方から前方側に流れて、モータハウジング2の軸受ホルダ部20に設けられた開口20a(図2)を通過して、モータ5の収容空間内に流入する。モータ5の収容空間に流入した冷却風は、ステータ9の外周側とモータハウジング2との隙間やステータ9とロータ7との隙間を通って冷却ファン15によって吸引され、ファンカバー16の貫通穴を通ってギヤケース21の貫通穴21bから、又は貫通穴21cから前方に排出される。本実施例では、モータ5の回転軸6の軸線上に見て、後方(風上側)から前方にかけて、回路基板60、センサ磁石18、軸受14a、モータ5、冷却ファン15、及び、軸受14bが軸方向に直列(一直線上)に配置される。そして、外気の吸入口となる風窓3aは、回路基板60の周囲であって発熱の大きい素子、特にダイオードブリッジ71やスイッチング素子Q1〜Q6(後述する図2参照)よりも後方側に配置される。このように、本実施例ではモータ5の回転軸6の軸線方向にみて、ハウジングの後方側から前方側の全外周面にほぼ接するようにして冷却風が流れるものである。
ギヤケース21は、例えばアルミニウム等の金属の一体成形により構成され、1組の傘歯車機構(22、23)を収容すると共に、出力軸となるスピンドル24を回転可能に保持する。スピンドル24は、モータ5の回転軸6の軸線方向(ここでは前後方向)とは略直交方向(ここでは上下方向)に延びるように配置され、回転軸6の前端部分には第1の傘歯車22が設けられ、第1の傘歯車22はスピンドル24の上側端部に取り付けられた第2の傘歯車23に噛合する。第2の傘歯車23は直径が大きく、第1の傘歯車22に比べて歯車数が多いので、これらの動力伝達手段は減速機構として作用する。スピンドル24の上端側はメタル25によって回転可能にギヤケース21に軸支され、中央付近にはボールベアリングによる軸受26によって軸支される。軸受26はスピンドルカバー27を介してギヤケース21に固定される。
スピンドル24の先端には取付ベース28が設けられ、ワッシャナット31によって砥石30等の先端工具が装着される。砥石30は、例えば直径100mmのレジノイドフレキシブルトイシ、フレキシブルトイシ、レジノイドトイシ、サンディングディスク等であり、用いる砥粒の種類の選択により金属、合成樹脂、大理石、コンクリートなどの表面研磨、曲面研磨が可能である。砥石30の後方側の径方向外側及び上側はホイールガード32にて覆われる。尚、電動工具1に装着される先端工具としては、砥石30だけに限られず、ベベルワイヤブラシ、不織布ブラシ、ダイヤモンドホイール等のその他の工具を取り付けるようにしても良い。
モータ5の回転軸6の後端には、回転方向に磁極が異なる磁性体であるセンサ磁石18が取り付けられる。センサ磁石18はロータ7の回転位置の検出のために取り付けられる薄い円柱形の永久磁石であって、周方向に90度ずつ隔ててNSNSと4極が順に形成される。センサ磁石18の後ろ側であってケース40の内側部分には、回転軸6と垂直方向に配置される略半円形のセンサ基板68が設けられ、センサ基板68にはセンサ磁石18の位置を検出する回転位置検出素子69が設けられる。回転位置検出素子69は、回転するセンサ磁石18の磁界の変化を検出することにより、ロータ7の回転位置を検出するものであり、回転方向に所定角度毎、ここでは60°毎に3つ設けられる。
略円筒形に形成されるリヤカバー3の内部には、モータ5の回転制御を行う演算部(制御部)と、モータ5を駆動させるためのインバータ回路80と、外部から図示しない電源コードにて供給される交流を直流に変換するための電源回路70が収容される。本実施例では、これらの回路は共通する回路基板60に搭載しているが、これらを分割した回路基板に搭載するようにしても良い。回路基板60は電動工具1の長手方向中心軸(モータ5の回転軸6と同軸)に対して平行になるように配置される。ここでは、基板の表及び裏面が、前後及び左右方向に延びるように配置される。回路基板60は、一面が開口部となっている容器状のケース40の内部に配置され、液体状の樹脂を硬化させる硬化性樹脂によって全体が固められる。ここでは電動工具1の砥石30が下になる時(図1の向きの時)に、ケース40の開口部が下側を向くように配置され、インバータ回路80に含まれる複数のスイッチング素子Q1〜Q6が、回路基板60から下側に延びるように配置される。
インバータ回路80は、コイル13に大駆動電流を通電する必要があるため、スイッチング素子Q1〜Q6として、例えばFET(電界効果トランジスタ)やIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)のような大容量の出力トランジスタが用いられる。これらスイッチング素子Q1〜Q6は発熱が大きいので冷却効果を向上させるための放熱構造が考慮され、本実施例ではスイッチング素子Q1〜Q6の放熱板に冷却用の金属板が更に取り付けられる。放熱板と金属板は、吸入口となる風窓3aよりも風下側(モータ側)に配置されるので、矢印で示す冷却風に直接晒されることになる。スイッチング素子Q1〜Q6の後方側には電源回路70が設けられる。本実施例の電源回路70は、外部から供給される商用電源(交流)を直流に変換する整流回路(ダイオードブッリッジ71)を含んで構成される。整流回路は配線の効率性から、リヤカバー3の後端面から外部に伸びるように配線される電源コード3bに近いようにケース40の後方側であって、スイッチング素子Q1〜Q6よりも後方側(モータ5から遠い反モータ側)に搭載される。
回路基板60にはさらに、モータ5の回転制御を行う演算部が搭載される。演算部は、マイクロコンピュータ100(以下、「マイコン100」と称する)を含んで構成されるものであって、インバータ回路80を駆動することによりモータ5の起動及び停止と回転速度の制御を行う。ケース40により画定される空間内(容器内)には、回路基板60に加えてさらに、回転位置検出素子69を搭載するセンサ基板68が設けられる。また、ケース40の容器部分の外側であって後方側には速度調整基板65が搭載され、変速ダイヤル17により調整される可変抵抗66が設けられる。センサ基板68はモータ5の回転軸6の軸線方向と直交するように配置され、速度調整基板65は回転軸6の軸線方向と平行になるように配置される。
図2は図1の底面図であって、モータハウジング2にリヤカバー3を取付ける前の状態を示す。ケース40の内部に収容される回路基板60の形状は、ケース40の内形とほぼ同等の外側輪郭をもって形成される。図では示していないが、回路基板60は液体から硬化して固まる樹脂にて浸漬される。回路基板60に搭載されるのは、主に、整流回路と平滑回路を含む電源回路70と、6個のスイッチング素子Q1〜Q6を含むインバータ回路80と、インバータ回路80を制御するものであってマイコン100を含む演算部と、演算部用の定電圧の直流を生成する定電圧電源回路90である。回路基板60の入力側には、電動工具1の外部から電源コード3bが接続され、商用交流が電源回路70に入力される。電源コード3bは電源コード保持部43によって固定される。回路基板60の出力側は、端子84a〜84cであって、モータ5のコイル13に接続される3本の図示しないリード線(V相、U相、W相)がそれぞれ半田付けされる。
回路基板60においては、入力及び出力点に近いという配線上の利点と、冷却風の流れに沿う点から、電源回路70が回路基板60の後方側に配置され、インバータ回路80が回路基板の前方側に配置される。回路基板60は、単層又は多層のプリント基板であって、ここでは多層のガラスコンポジット基板が用いられる。電源回路70は、整流回路(ダイオードブリッジ71)と平滑回路75を含んで構成され、チョークコイル73と、バリスタ74と、を有し、平滑回路75は電解コンデンサ76と、後述する抵抗78を有している。
インバータ回路80は3個のスイッチング素子Q1〜Q3、Q4〜Q6がそれぞれ軸方向に一列に並ぶように配置される。スイッチング素子Q1〜Q6は、3本の金属端子が略直方体のセラミック等のパッケージの下側から延びるものであって、パッケージの背面側には金属製の放熱板が埋め込まれる。この放熱板は面状であって面の広がり方向が、回路基板60の長手方向(図2では前後方向)と水平かつ直交方向となるようにスイッチング素子Q1〜Q6が配置される。また、パッケージ背面の放熱板には、放熱用の金属板82がさらに設けられる。通常、IGBTのコレクタ端子や、FETのドレイン端子はパッケージ背面側の放熱板と導通されているので、回路構成上、コレクタ端子又はドレイン端子が共通接続の場合には、複数のスイッチング素子Q1〜Q3に共通の金属板82、83a〜83cが設けられる。他方、インバータ回路80の残りの3個のスイッチング素子Q4〜Q6は一列に並ぶように配置され、かつ、スイッチング素子Q1〜Q3と平行になるように配置される。スイッチング素子Q4〜Q6のパッケージ背面の放熱板には、放熱用の金属板が設けられるが、これらのコレクタ端子又はドレイン端子は共通接続ではないため、互いに独立した金属板83a〜83cが設けられる。この金属板83a〜83cの面は、回路基板60の長手方向(前後方向、回転軸6の軸線方向)と水平かつ直交方向となるように配置される。このように配置したため、金属板83a〜83cのスイッチグ素子と反対側の面が冷却風の流れる方向(図1中の矢印参照)と平行に向くために、放熱効果を高めることができる。
回路基板60には更に演算部であるマイコン100や、後述する定電圧電源回路90、スイッチバー4aと連動して動作するスイッチ64が搭載される。これらは回路基板60上の任意のスペースに搭載することができる。本実施例ではマイコン100は、スイッチ64の後方に搭載される。回路基板60の前方側には、3つの回転位置検出素子69(図1参照)を搭載するセンサ基板68が、回路基板60と直交するように配置される。
ケース40の後方側には可変抵抗66を搭載する速度調整基板65が設けられる。スイッチ基板65はケース40の容器状の部分から後方に突出する部分に設けられ、可変抵抗66の回転軸にはリヤカバー3から一部が露出する変速ダイヤル17が設けられる。回路基板60と55は、リード線63によって配線される。
ケース40は開口面40aを有する容器状であって、内部空間に液体を入れても漏れないように形成されるが、電動工具1に配置した際には開口面40aの法線方向が下側を向くように倒立した状態で配置される。換言すれば、ケース40は下に開口するように配置される。これは、冷却風と共に内部に水滴や塵埃が流入した際に、ケース40の内部にたまることを抑制するためである。このように容器状のケース40が倒立した状態で電動工具1内に配置したことで、スイッチング素子Q1〜Q6等を樹脂で完全に覆わないで、半分程度だけ覆うようにしても耐久性を高めることが可能となった。特に、スイッチング素子Q1〜Q6の間にたまった鉄粉等が、電動工具1を図1の方向に置く際に、その衝撃によってゴミや水滴がリヤカバー3の内部の下面に落ちやすくなる。
ケース40の前方側の端部には、モータハウジング2にネジ42c、42dにて固定するためのネジ穴42a、42bが形成される。モータハウジング2の軸受ホルダ20は、軸受14a(図1参照)の外輪部分を保持する円筒部分から外側に向けて図示しない複数の支柱が形成され、支柱以外の場所では開口20aとなっているので、ケース40が収容される空間からモータ5側が収容される空間へ冷却風が流れる構造となっている。リヤカバー3は、モータハウジング2に固定されたケース40の後端にねじ42eによってねじ止めされることでモータハウジング2に対して固定される構造となっている。これによってモータハウジング2とリヤカバー3との連結部には固定のための部品を配置する必要がないため、作業者が把持しやすい形状とすることができる。
また、回路基板60には定電圧電源回路90で用いられる電解コンデンサ94が搭載される。
次に図6を用いてモータ5の駆動制御系の回路構成を説明する。電源回路70にはダイオードブリッジ72等によって構成される整流回路71が含まれる。電源回路70の出力側であって、インバータ回路80との間には平滑回路75が接続される。インバータ回路80は6つのスイッチング素子Q1〜Q6を含んで構成され、演算部(マイコン100)から供給されるゲート信号H1〜H6によってスイッチング動作が制御される。インバータ回路80の出力は、モータ5のコイル13のU相、V相、W相に接続される。電源回路70の出力側には定電圧電源回路90が接続される。ここでは、電源回路70、平滑回路75、インバータ回路80、定電圧電源回路90、演算部(マイコン100)の回路を同一の回路基板60上にまとめて搭載した。
電源回路70は、ダイオードブリッジ71によって主に構成される整流回路を含み、整流回路の入力側が例えば商用交流電源35に接続され、出力側が平滑回路75に接続される。通常電源回路と称する場合には、整流回路と平滑回路の双方を有するものを指す場合があるが、整流回路は、入力される交流を全波整流し、平滑回路75へ出力する。平滑回路75は、整流回路とインバータ回路80との間に配置され、整流回路によって整流された電流の中に含まれている脈流を、直流に近い状態に平滑化してインバータ回路80へ出力する。平滑回路75は、電解コンデンサ76と放電用の抵抗78を含んで構成される。電動工具1がディスクグラインダの場合は、他の電動工具(例えばインパクトドライバ等)に比較して大きな出力が必要となることから、商用交流電源35から平滑回路75に入力される電圧値も高くなっている。従って、平滑回路75に設けられる電解コンデンサ76は静電容量が大きいものが要求される。
インバータ回路80は、3相ブリッジ形式に接続された6個のスイッチング素子Q1〜Q6を含んで構成される。モータ5のステータ9の内側では、永久磁石8を有するロータ7が回転する。ロータ7の回転軸6には位置検出用のセンサ磁石18が接続され、センサ磁石18の位置をホールIC等の回転位置検出素子69にて検出することにより演算部(マイコン100)はモータ5の回転位置を検出する。
演算部(マイコン100)は、モータ5のオン・オフ及び回転速度制御を行うための制御手段であって、マイクロコンピュータ(マイコン)である。演算部(マイコン100)は回路基板60に搭載され、スイッチ64の操作に伴い入力される起動信号と、変速ダイヤル17によって設定された速度信号に基づき、モータ5の回転速度を制御し、コイルU、V、Wへの通電時間と駆動電圧を制御する。演算部100は、インバータ回路80の6個のスイッチング素子Q1〜Q6の各ゲートに接続され、各スイッチング素子Q1〜Q6をオン・オフするための駆動信号H1〜H6を供給する。
インバータ回路80の6個のスイッチング素子Q1〜Q6の各ドレイン又は各ソースは、スター接続されたコイル13のU相、V相、W相に接続される。スイッチング素子Ql〜Q3のドレイン端子が電源回路70の正極側に共通に接続されているので、これらには共通の放熱用の金属板82を設けることができる。一方、スイッチング素子Q4〜Q6のドレイン端子はモータのV相、U相、W相の端子にそれぞれ接続されるため、スイッチング素子Q4〜Q6用の放熱用の金属板83a〜83cは個別に設けられる。
スイッチング素子Q1〜Q6は、演算部100から入力される駆動信号H1〜H6に基づきスイッチング動作を行い、商用交流電源35から電源回路70及び平滑回路75を介して供給された直流電圧を、3相(U相、V相、W相)電圧Vu、Vv、Vwとして、モータ5に供給する。モータ5に供給される電流の大きさは、平滑回路75とインバータ回路80との間に接続された電流検出抵抗102の両端の電圧値を検出することにより演算部(マイコン100)によって検出される。演算部(マイコン100)には、モータ5の設定回転に応じた所定の電流閾値が予め設定されており、検出した電流値が閾値を超えると、モータ5の駆動を停止すべく、インバータ回路80のスイッチング動作を停止させる。これにより、過電流がモータ5に流れることによる焼損等の発生が抑制される。
定電圧電源回路90は、整流回路71の出力側に直接接続され、演算部100への低電圧の直流を供給するための電源回路である。定電圧電源回路90は、ダイオード96、平滑用の電解コンデンサ94、IPD回路91、コンデンサ93及びレギュレータ92を含んで構成される。定電圧電源回路90は、電源回路70からの出力に基づいて、演算部(マイコン100)等へ安定化した基準電圧を供給するための回路である。定電圧電源回路90の各部は、回路基板60に搭載される。
次に図3を用いてケース40の形状を説明する。ケース40は非導電材料であって、例えばプラスチック等の合成樹脂の一体成形で製造される。図3は開口面40aが上方向になるように示した斜視図である。ケース40は回路基板60を電動工具1のハウジングに固定するために用いられる取り付け基台の役割を果たすもので、容器状に形成されるケース40は前面41a、後面41b、側面41c、41dと底面41eを有し、残りの一面が開口面40aとなっている。側面41c、41dと底面41eの接合部は、直角に形成されるのでは無く、リヤカバー3の円筒形の内壁形状に沿った形状とされ、ここでは斜めに形成されるさらなる面にて接続した。前面41aの外側部分には円筒形の筒部42が形成される。筒部42は内部にセンサ磁石18を収容させるための窪み部分であって、センサ磁石18から見て前面41aを隔てたケース40の内部側にセンサ基板68が配置されることになる。円筒形の筒部42には径方向に突出する突出部分が形成され、そこにそれぞれネジ穴42a、42bが形成される。ケース40の内部であって側面41cには、回路基板60を支持すると共に位置合わせをするための段差部45a、45bが形成される。尚、図3にて見えない側面41dの内壁部分にも、同様にして回路基板60の位置合わせをするための段差部が形成される。ケース40の後面41bの外側には、電源コード保持部43とスイッチ基板保持部44が形成される。
次に、モータハウジング2とモータ5との関係について図4を用いて説明する。
図4に示すように、ステータ9の外周形状は、線対象な形状をし、薄い鉄板同士をかしめるために円周形状から突出する突出部であるかしめ部9aを4つ有し、それぞれのかしめ部9aの円周方向前後には互いに直交する一対の平面部9bを有した形状をしている。平面部9bはそれぞれ回転軸6の軸線方向(前後方向)と直交する方向に延びるように形成されている。換言すれば、1つのかしめ部9aは、上下方向に延びる平面部9bとは左右方向に延びる平面部9bを有している。
モータハウジング2の内周側には、ステータ9のかしめ部9aを受けると共に、平面部9bと当接する一対のリブ2aが4つ、計8つのリブ2aが設けられている。これらのリブ2a及びかしめ部9aは、モータ5の回転軸6の方向に延在し、少なくともステータ7の範囲に渡って延びた形状をしている。
詳細に説明すると、一対のリブ2aはそれぞれが直交するように且つかしめ部9aに向かって突設されると共に、1つのかしめ部9aの円周方向前後(図4における時計回り側と反時計回り側)に設けられた平面部9bと面接触することで、かしめ部9aの位置決めを行う。この時、それぞれのリブ2aは、接触する平面部9bが伸びる方向と直交する方向に突設される。このような構造とすることで、モータ5は上下左右から複数のリブ2aによって保持されることにより、モータハウジング2に対して強固な固定が可能となる。さらに、回転軸6の軸線方向に対して直交する面でリブ2aと平面部9bを接触させているので、ステータ9が回転軸6の回転方向に回転しようとしたときには、リブ2aにかかる負荷が分散して、リブ2aの破損が抑制される。詳細には、回転方向に対して接触面が30度程度傾斜するようにしているので、リブ2aにかかる回転方向の負荷が相殺され、リブ2aの破損を抑制できる。
モータハウジング2内にステータ9が挿入される際に、平面部9bがリブ2aに対して圧入される関係となっており、モータハウジング2内でリブ2aによってステータ9は回転が規制されると共に、芯出しがなされる。
モータハウジング2は、周方向において段差部などを持つ構造をしているが、リブ2aを設けられる外周部は他部よりも厚く形成され、2.3mmの肉厚を有する。一方、リブ2aは、これよりも薄い1.5mmの肉厚に形成されており、リブ2aの厚さをモータハウジング2の外周部よりも薄い構成とすることで、リブ2aを設けることによりモータハウジング2の外周部にひけが発生することを抑制するようにしている。
一対のリブ2aと他の一対のリブ2aとの間には、ステータ9外周とモータハウジング2との間に隙間が生じるように、リブ2aによってステータ9を支持する構造をしており、この隙間を冷却風が通過するようにしており、冷却風が流れる流路を確保している。なお、1つの隙間内に後述するスイッチバー4aが配置される構成をしている。
また、一対のリブ2a間においても、かしめ部9a外周とモータハウジング2との間に隙間が生じるようにしており、かしめ部9a外周がモータハウジング2に当接して芯出しに影響が生じないようにしていると共に、冷却風の流路の確保にも役立っている。
本実施形態のような、ディスクグラインダは、作業者はモータハウジング2を把持しながら作業を行うものであり、握り易さの観点からモータハウジング2の径が小さいことが望まれる。上述したような構成とすることにより、モータハウジング2内でステータ9の回転規制を行う新たな部品を追加するなどして、モータハウジング2の径を大きくすることなく、また、冷却風が流れを阻害することなく、コンパクトで冷却性能の良いモータ支持構造を実現している。
また、リブ2aは図4に示すように、回転軸6の放射方向に対して交差するよう延びた形状をし、リブ2aの先端でステータ7を支持する構造をしているため、ステータ7に生じる回転トルクをリブ2aが受ける際に、リブ2aの根本角部に応力が集中することを抑え、リブ2aの突出方向に力を分散して受けることができるため、強固な支持構造を実現することができる。
また、かしめ部9aを対角線上に4つ設け、合計8つのリブ2aにより、1つあたりのリブ2aにかかる回転方向の荷重を分散して、リブ2aを細くすることを可能として、前述のように、モータハウジング2の外周部よりも薄くして、モータハウジング2外周にひけが生じてしまうことを抑制している。
また、冷却風は前述のように、ステータ9の外周側とモータハウジング2との間の隙間以外にも、ステータ9とロータ7との間の隙間を通って冷却ファン15によって吸引される。ステータ9とロータ7との間の隙間は、径方向で0.5mm程度であり、ディスクグラインダの作業中にこの間にも鉄粉が侵入することがあり得る。この間に侵入した鉄粉はステータ7内の永久磁石8の磁力によって、ステータ7に付着してしまう恐れがある。本実施形態のディスクグラインダは、変速ダイヤル17を最小速度に設定した際のブラシレスモータ5の回転数を約9,000rpmとして、最大速度に設定した際の回転数を32,700rpm、ステータ9とロータ7との間の隙間を通る冷却風の風速を20m/secを上回る約26m/secとなるように設定している。
モータ5の回転数を最小回転数とした際には、ステータ9とロータ7との間の隙間に侵入した鉄粉が、ステータ7に付着し続けてしまうものであるが、上述の風速を得る構成とすることにより、少なくとも最大速度に設定した際に、ロータ7に付着した鉄粉を冷却風と共に吹き飛ばすと共に、モータ5回転中にロータ7に鉄粉が付着し難いようにしている。
次に、ブラシレスモータ5を構成するロータ7の前後に設けられるバランサ6a,6bのうち、軸受ホルダ部20側のバランサ6aの形状について、図5を用いて説明する。
前述したように、バランサ6a,6bは金属材料から成り、ロータ7の回転バランスを調整できるように設けられており、バランサ6a,6bは回転軸6及びロータ7と一体となって回転するよう構成されている。
バランサ6aと軸受14aとの間には、軸受14aと接するように、絶縁部材である樹脂などで形成されたシール部材10が回転軸6上に取付けられている。シール部材10は軸受14aに粉じんが侵入することを抑制するために設けられている。回転軸6の外周には、ロータ7が設けられる範囲から軸受14a手前側であってシール部材10の内側部分にかけて、絶縁材料である樹脂からなるモールド6dが全周に渡って形成されている。軸受14aと接する回転軸6の外周部分には、回転軸6の芯出しを精度よく行うと共に軸ブレを抑制する目的などからモールド6dが設けられていない。
バランサ6aは、金属部材からなり、ロータ7と電気的に導通するため、導電部材からなる軸受14aを介してモータ5に流れる電流がモータハウジング2に通電しないようにするためには、バランサ6aとバランサ6a・軸受14a間に位置するモールド6dの端面部との距離を確保する必要がある。
バランサ6aと軸受14aとの距離を大きく離間させた構成とすれば、上記通電を防ぐ距離を容易に確保することが可能であるが、この場合、グラインダ全体の寸法を大きくすることにつながると共に、バランサ6aとシール部材10間の距離が大きくなり、この間を通って軸受14aに粉じんが侵入しやすくなってしまう。
本実施形態では、バランサ6aが内周部分に凹部6cを持つ構成を採用したことで、回転軸6の軸方向におけるモールド6dの端面部とバランサ6aとの距離を確保しつつ、バランサ6aとシール部材10との間に粉じんが侵入し難くしている。
また、凹部6cの外周側面は、軸受14a側(後方)に向かうに従って径方向外側に向かうよう傾斜した形状をしている。これによって、モールド6dの後方側端部とバランサ6aとの空間距離を大きく保つことができる形状をしていると共に、バランサ6aの外周側面の面積を大きく確保して、ロータ7の回転バランスを取るために削り加工を行いやすい形状をしている。
なお、軸受14aへの粉じんの侵入をより抑えるために、シール部材10を設けた構造としたが、シール部材10を設けない構成であったとしても、バランサ6aに凹部6cを設けた構成とすることにより、軸受14aとバランサ6a外周端面との距離を小さくすることができるため、電流の漏電を抑えたコンパクトな構造でありながら、軸受14aへの粉じんの侵入しにくい構成を実現することができる。
次に、スイッチ操作部4とスイッチ64の構成及びスイッチ64の動作時の起動制御について説明する。
前述したように、回路基板60には、スイッチ64が搭載されている。このスイッチ64はマイクロスイッチであり、常に突出する方向に付勢されたプランジャ64aを有し、プランジャ64aが突出状態にある際にOFF信号をマイコン100に伝達し、プランジャ64aが非突出状態にある際にON信号をマイコン100に伝達する構成をしている。
スイッチ64はプランジャ64aに接触する板バネ64bを有する。
モータハウジング2には、モータハウジング2外周に露出し、作業者が操作可能で、回転軸6の軸方向に移動可能なスイッチ操作部4が設けられ、スイッチ操作部4はモータハウジング2内部において、回転軸6の軸方向に延びるスイッチバー4aと接続されており、スイッチ操作部4と共にスイッチバー4aが回転軸6の軸方向にスライド可能な構成をしている。
スイッチバー4aには、モータハウジング2とスイッチバー4aとの間に設けられたスプリング4cの付勢力が常に作用しており、スイッチバー4aには後方側にスイッチ64のプランジャ64aと板バネ64bを介して当接する当接部4bが設けられている。
スイッチ操作部4及びスイッチバー4aは、初期状態ではスプリング4cの付勢力により、図1及び図2のように後方側に位置する。このようにスイッチバー4aが後方側に位置する際には、当接部4bは板バネ64bと当接しない状態であり、プランジャ64aは突出状態で、スイッチ64はマイコン100にOFF信号を出力する。
図2に示す状態から作業者がスイッチ操作部4を操作し、スイッチ操作部4及びスイッチバー4aを前方側にスライドさせると当接部4bが板バネ64bを介してプランジャ64aに当接して、非突出位置に移動させる。これにより、スイッチ64はマイコン100にON信号を出力し、マイコン100はブラシレスモータ5を起動する。
なお、図2に示すように、モータハウジング2にはスイッチ操作部4と係合してスイッチ操作部4を前方側に移動させた状態を維持するための係合部2bが設けられている。すなわち、スイッチ操作部4を係合部2bに係合した状態とすることにより、モータ5の起動状態を維持する、いわゆるオンロック機構を設けた構成をしている。
マイコン100は、スイッチ64より信号を受信することによりモータ5の起動を制御するが、前述のオンロック機構を設けた構成をしているため、オンロック状態で停電が生じた後の停電復帰後やオンロック状態で電源コード3bが接続された際に、モータ5が起動しない0Vリリース制御を備えている。
具体的には、マイコン100は図7に示す起動制御を行う。
電源コード3bが接続される又は停電から復帰すると、S1に示すようにマイコン100が起動する。その後、マイコン100はスイッチ64からOFF信号を受信しているか否かを判断する。S2でOFF信号号を受信している場合には、S3でON信号を受信するか否かを判断し、ON信号を受信した場合には、S4に進みモータ5を起動する。
すなわち、マイコン100が起動した際に、スイッチ64からON信号を受信している場合には、S3には進まずにモータ5の起動を行わない。これにより、電源コード3b接続時又は停電からの復帰時に不意にモータ5が起動して、砥石30により被削材などを傷付けてしまうことを防ぐようにしている。
モータ5が起動した後は、S5でOFF信号を受信するまでモータ5への通電を維持し、ON信号を受信した場合に、S6でモータ5への通電を停止する。
本実施形態では、スイッチ64を直接回路基板60に搭載した構成をしているため、スイッチ64と回路基板60との電気接続を容易に行うことができ、組立て性を向上させることができる。回路基板60は分割構成にすることも可能であるが、制御部であるマイコン100及びインバータ回路80と同一の回路基板60に搭載することが、電気接続を考慮すると有効である。また、冷却を最も要する電源回路70を冷却風の上流側に配置する必要があることを考慮しても、スイッチ64をインバータ回路80と同一の回路基板60に搭載することが望ましい。
また、スイッチ64は、回路基板60のモータ5側に配置させることにより、インバータ回路80や電源回路70などのその他の電気部品が、スイッチバー4aのスイッチ64への当接を遮ることなく、スイッチバー4aとは異なる更なる部品を追加することなく、スイッチ64をON状態、OFF状態に変更することが可能となる。
また、プランジャ64aとスイッチバー4aの当接部4bとの間に板バネ64bを介在させた構成とすることにより、プランジャ64aの動作方向と当接部4bの動作方向が直交する関係であっても、当接部4bの動作によってスムーズにプランジャ64aが動作することを可能としている。なお、スイッチバー4aを設けず直接スイッチ操作部4がプランジャ64aと当接する構成としても良く、この場合であっても、スイッチ操作部4の動作方向とプランジャ64aの動作方向が直交している場合、板バネ64bを介在させることが望ましい。
また、本実施形態のようなディスクグラインダでは、ハウジング内部に鉄粉が侵入する恐れがあるが、スイッチ64をプランジャ64aの突出、非突出状態で出力信号が切り替わるマイクロスイッチで構成したことにより、スイッチ64付近に鉄粉が侵入したとしても鉄粉による誤動作の発生が抑えられる。
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上述の実施例においては電動工具1の例としてグラインダを用いて説明したが、グラインダだけに限られずその他の電動工具においても同様に適用でき、例えばセーバソーやマルチカッタ、ドライバやインパクトドライバなどにおいても同様に適用できる。