JP2017014991A - 密閉型圧縮機 - Google Patents

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Abstract

【課題】小型で振動を低減可能な密閉型圧縮機を提供する。
【解決手段】圧縮要素20と、圧縮要素20を駆動する電動要素30と、圧縮要素20および電動要素30を収容する密閉容器3と、を備える密閉型圧縮機100において、圧縮要素20は、シリンダ21と、シリンダ21内においてピストン22を往復動させることで冷媒を圧縮するクランクシャフト23と、クランクシャフト23を軸支するフレーム24と、を備え、フレーム24の上側にシリンダ21が配置され、フレーム24の下側に電動要素30が配置され、フレーム24は、コイルバネ9,9を介して密閉容器3に支持され、コイルバネ9は、シリンダ21の外周側に位置している。
【選択図】図1

Description

本発明は、密閉型圧縮機に関する。
密閉型圧縮機では、例えば、フレームの上部に圧縮機要素が、フレームの下部に電動機要素が設けられ、密閉容器内においてフレームが弾性支持されている(特許文献1参照)。
特開昭62−147065号公報
しかしながら、特許文献1に記載のものでは、単にフレームで支持する構成が記載されているだけであり、密閉型圧縮機の小型化が検討されておらず、しかも運転時の振動対策も十分ではなかった。
本発明は、前記従来の問題を解決するものであり、小型で振動を低減可能な密閉型圧縮機を提供することを目的とする。
本発明は、圧縮要素と、前記圧縮要素を駆動する電動要素と、前記圧縮要素および前記電動要素を収容する密閉容器と、を備える密閉型圧縮機において、前記圧縮要素は、シリンダと、前記シリンダ内においてピストンを往復動させることで冷媒を圧縮するクランクシャフトと、前記クランクシャフトを軸支するフレームと、を備え、前記フレームの鉛直方向の一側に前記シリンダが配置され、前記フレームの鉛直方向の他側に前記電動要素が配置され、前記フレームは、弾性部材を介して前記密閉容器に支持され、前記弾性支持部材は、前記シリンダの外周側に位置していることを特徴とする。
本発明によれば、小型で振動を低減可能な密閉型圧縮機を提供できる。
本実施形態の密閉型圧縮機を示す縦断面図である。 本実施形態の密閉型圧縮機を示す横断面図である。 密閉型圧縮機の作用効果を説明する模式図であり、(a)は本実施形態、(b)は比較例である。 本実施形態の密閉型圧縮機を搭載した冷蔵庫の概略断面図を示し、(a)は密閉型圧縮機を冷蔵庫の下部に配置した構成、(b)は密閉型圧縮機を冷蔵庫の上部に配置した構成である。 軸受内損失と(軸受長/軸径)との関係を示すグラフである。 振動と(ロータ半径/(ピストンの高さ中心−ロータの高さ中心))との関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態に係る密閉型圧縮機100について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態の密閉型圧縮機を示す縦断面図である。
図1に示すように、密閉型圧縮機100は、圧縮要素20および電動要素30を密閉容器3内に配置して構成されたいわゆるレシプロ圧縮機である。圧縮要素20および電動要素30は、密閉容器3内において複数のコイルバネ9(弾性部材)を介して弾性的に支持されている。密閉容器3は、略上半分の外郭を構成する上ケース3mと略下半分の外郭を構成する下ケース3nとが溶接などで接合され、内部に圧縮要素20および電動要素30を収容する空間を有している。
圧縮要素20は、シリンダ21と、このシリンダ21内においてピストン22を往復動させることで冷媒を圧縮するクランクシャフト23と、このクランクシャフト23を軸支するラジアル軸受25と、を備えている。ラジアル軸受25(軸受)は、シリンダ21およびフレーム24と一体に形成されている。クランクシャフト23は、スラスト軸受26を介してフレーム24に回転自在に支持されている。
フレーム24は、略水平方向に延びるベース24aを有し、シリンダ21がベース24aの上部に位置している。また、フレーム24の略中央部には、鉛直方向下方に(下ケース3nの底面に向けて)延びる円筒形状のラジアル軸受25が形成されている。また、フレーム24は、シリンダ21の一部を構成している。
シリンダ21は、クランクシャフト23の中心軸Oよりも径方向の外側の偏った位置に形成されている。また、シリンダ21の軸方向の外周側の端部にはヘッドカバー27が取り付けられ、反対側の端部にはピストン22が挿入されている。このように、シリンダ21とヘッドカバー27とピストン22とによって、圧縮室(シリンダ室)Q1が構成されている。なお、シリンダ21とヘッドカバー27との間には、冷媒を吸気する際に開く吸気弁、圧縮した冷媒を吐出する際に開く吐出弁を備えた弁開閉機構が設けられている。
ラジアル軸受25は、クランクシャフト23が軸支されるすべり軸受によって構成されている。また、ラジアル軸受25は、フレーム24に形成された貫通孔24bによって構成されている。スラスト軸受26は、ベース24aの上面の貫通孔24bの周囲に円形溝状に形成された凹部24cに配置されている。
コネクティングロッド22aの大径側の端部22bは、後記するクランクピン23aと連結され、コネクティングロッド22aの小径側の端部22cは、ピン22dを介してピストン22と連結されている。
クランクシャフト23の上端部には、クランクピン23aが形成され、クランクピン23aがクランクシャフト23の回転中心軸Oから偏心した位置に形成されている。また、クランクシャフト23の下端部は、下ケース3nの近傍に位置している。クランクピン23aが回転中心軸Oに対して偏心回転することで、ピストン22がシリンダ21内を往復運動するようになっている。
また、クランクシャフト23は、貫通孔24bの上方において、回転中心軸Oに対して直交する方向(水平方向)に延びるフランジ部23bを有している。なお、本実施形態では、フランジ部23bが、バランスウエイトと兼用する構造となっている。バランスウエイトは、圧縮要素20が駆動したときの振動を低減する機能を有している。これにより、圧縮要素20の高さ寸法を低減でき、密閉型圧縮機100の小型化に寄与できる。
また、クランクシャフト23には、軸方向の下端から上方に向けて凹形状の中繰り穴23cが形成され、クランクシャフト23内に中空部を有するように構成されている。また、クランクシャフト23には、中繰り穴23cの上端からフランジ部23bの上面に貫通する上部連通孔23dが形成されている。
また、クランクシャフト23の外周面には、らせん溝23eがフランジ部23bの近傍まで形成されている。らせん溝23eの上端部は、クランクピン23aに形成された凹形状のピン部中繰り穴23fと、ピン部連通孔23gを介して連通している。
クランクシャフト23の中空部には、固定軸部材28が挿入されている。固定軸部材28は、図示しない固定具によって、クランクシャフト23の回転時においても回転しないように固定されている。固定軸部材28の外周面には、固定軸らせん溝28aが形成されている。この固定軸らせん溝28aの壁面と中繰り穴23cの壁面とでらせん状の潤滑油通路が形成され、クランクシャフト23の回転による壁面移動に伴い、潤滑油が粘性の効果で壁面に引きずられて固定軸らせん溝28a内を上昇するようになっている。
中繰り穴23cを上昇した潤滑油は、上部連通孔23dを通ってフランジ部23b上に吹き出して、スラスト軸受26を潤滑する。また、クランクシャフト23のらせん溝23eを上昇した潤滑油は、クランクシャフト23とラジアル軸受25との間を潤滑するとともに、ピン部連通孔23gを通って、クランクピン23aのピン部中繰り穴23fに向けて流れ込み、コネクティングロッド22aの周辺を潤滑する。なお、スラスト軸受26などを潤滑した潤滑油は、孔24s(図2参照)を介して、密閉容器3の底に戻るように構成されている。
電動要素30は、フレーム24の下側(ベース24aの下方)に配置され、ロータ31およびステータ32を含んで構成されている。
ロータ31は、電磁鋼板を積層したロータコアを備えて構成され、クランクシャフト23の下部に圧入などによって固定されている。また、ロータ31は、半径Rが厚み(軸方向の高さ)T1よりも大きい扁平形状である。また、ロータ31の厚み(軸方向の高さ)T1は、ラジアル軸受25の長さ(軸受長)Lの略半分程度に設定されている。
ステータ32は、ロータ31の外周に配置され、円筒状のステータコアとこのステータコアの内周に形成された複数のスロットとからなる鉄心32aと、鉄心32aに絶縁体(図示せず)を介して巻回されたコイル32bとを備えて構成されている。また、鉄心32aは、図1の縦断面視において、径方向の長さL1が厚み(軸方向の高さ)T2よりも長い扁平形状である。コイル32bも、図1の縦断面視において、径方向の長さが厚み(軸方向の高さ)よりも長い経扁平形状である。また、鉄心32aの厚み(軸方向の高さ)T2は、ロータ31の厚み(軸方向の高さ)T1と同程度になるように構成されている。このように、ロータ31を扁平にした場合、ステータ32の径も広げて扁平形状にすることで、ロータ31を回転させるためのトルクをかせぐことができる。
このようにして圧縮要素20および電動要素30が設けられたフレーム24は、密閉容器3内において複数のコイルバネ9,9を介して弾性支持されている。また、圧縮要素20および電動要素30は、運転時に振動したときに、密閉容器3の内壁面に接触しないように、所定のクリアランスCLが予め設定された状態で設計されている。
コイルバネ9は、圧縮要素20の一部を構成するシリンダ21の側(圧縮機室側Q2、図1の左側)と、シリンダ21の側とは反対側(反圧縮機室側Q3、図1の右側)に設けられている。なお、本実施形態では、コイルバネ9が、圧縮室側Q2と反圧縮機室側Q3のそれぞれにおいて、図1の紙面に直交する方向の手前側と奥側に計4本設けられている(図2参照)。なお、すべてのコイルバネ9は、いずれも同一の形状およびばね特性を有している。このように、コイルバネ9を単一種類にすることで、コイルバネ9が異種混在する場合の配置ミスを防止できる。ただし、コイルバネ9の本数は、4本に限定されるものではなく、3本であってもよく、5本以上であってもよい。
また、フレーム24は、シリンダ21よりも外周側(径方向外側)に延びる延出部24dを有している。この延出部24dは、ステータ32よりも外周側に延びている。また、延出部24dの下面には、コイルバネ9の上部に嵌合して保持する突起部24eが形成されている。
また、フレーム24は、延出部24dとは反対側においても、延出部24dと同程度に延びる延出部24fを有している。この延出部24fも、ステータ32よりも外周側に延びている。また、延出部24fの下面には、コイルバネ9の上部に嵌合して保持する突起部24gが形成されている。
密閉容器3の底面には、ステータ32の外周側において、密閉容器3内に突出するように盛り上がる段差部3aが形成されている。この段差部3aは、下ケース3nの底面の一部と側面の一部とが合わさって凹み形状となることで構成されている。また、段差部3aは、コイルバネ9の位置と対応する位置に設けられている。また、段差部3aの上端には、コイルバネ9の下部が嵌合して保持する突起部3bが形成されている。突起部3bは、ロータ31の下面31aよりも上方に位置している。なお、潤滑油の油面40は、潤滑油がロータ31と浸からないように、ロータ31の下面31aよりも下側に位置するように構成されている。
図2は、本実施形態の密閉型圧縮機を示す横断面図である。なお、図2では、密閉型圧縮機100内の冷媒の流れについて説明する。
図2に示すように、冷蔵庫の冷却器66(図4参照)から戻って、密閉容器3を貫通して接続された吸入パイプ3eから導入された冷媒は、吸入サイレンサ41の吸入口(不図示)から吸入された後、ヘッドカバー27などを介して圧縮室Q1(図1参照)に導入される。また、圧縮室Q1においてピストン22によって圧縮された冷媒は、吐出室空間(不図示)を通って、フレーム24に形成された吐出サイレンサ42a,42bおよびパイプ3fを通って、吐出パイプ3gから冷却器66(図4参照)に送られる。
図3は、密閉型圧縮機の作用効果を説明する模式図であり、(a)は本実施形態、(b)は比較例である。
図3(b)に示す比較例では、フレーム124の上下に圧縮要素120と電動要素130が配置され、電動要素130がコイルバネ90,90を介して密閉容器90内に弾性支持されている。この場合、内部機構部(圧縮要素120および電動要素130)の重心がコイルバネ90,90の上端よりも上方に位置するため、運転時に両矢印方向に振動したときに、振れ角bが大きくなる。これに対して、図3(a)に示す実施形態では、フレーム24の上部に圧縮要素20、下部に電動要素30が配置され、フレーム24がコイルバネ9,9を介して密閉容器3内に弾性支持されている。この場合、運転時の圧縮要素20と電動要素30がそれぞれ両矢印方向に振動するが、フレーム24の高さ位置(コイルバネ9,9の上端と同程度の位置)に重心が位置するため、振れ角a(<b)が小さくなる。
このように、密閉型圧縮機100では、フレーム24の上側に圧縮要素20、フレーム24の下側に電動要素30を配置して、フレーム24が弾性支持されることで、内部機構部の振動を低減することが可能になる。さらに、コイルバネ9の位置を、シリンダ21の外周側に配置することで、内部機構部の振動をさらに効果的に抑えることができる。
また、実施形態では、比較例に比べて振動を低減して振れ角aを小さくできることで、内部機構部(圧縮要素20および電動要素30)と密閉容器3との間のクリアランスCL(図1参照)を短くできる。その結果、密閉容器3を小さくでき、密閉型圧縮機100の小型化を図ることが可能になる。
また、各段差部3aの下部には、密閉容器3を弾性支持するゴム座10が設けられている(図1参照)。このゴム座10は、密閉容器3の下ケース3nに固定されたプレート11に支持されている。また、ゴム座10は、鉛直方向(上下方向)においてコイルバネ9と重なる位置に配置されている。
このように段差部3aを形成して、段差部3aにコイルバネ9を配置することにより、コイルバネ9を潤滑油に浸からない高さに設置することが可能になるので、コイルバネ9が潤滑油内で振動する際に生じていた騒音を防止でき、密閉型圧縮機100の静穏化を図ることが可能になる。また、ゴム座10を段差部3aの下部に配置することで、ゴム座10が密閉容器3の下ケース3nから下方に大きく出っ張るのを防止できるので、密閉型圧縮機100の高さが高くなるのを抑制でき、密閉型圧縮機100の小型化を図ることが可能になる。
ところで、圧縮機室側Q2にはシリンダ21やピストン22などの重量物が配置されているため、反圧縮機室側Q3(圧縮機室側とは反対側)に比べて重量が重くなり、コイルバネ9に作用する荷重が大きくなる。この場合、コイルバネ9の種類を同じにし、かつ、双方のコイルバネ9の下端が当接する面の高さを同じにすると、圧縮機室側Q2の沈み込み量(縮み量)が多くなり、運転前の初期状態において内部機構部(20,30)が傾いた状態になる。また、密閉容器3と内部機構部との間には、運転時の振動(傾き)を考慮してクリアランス(余裕度)が設けられている。しかし、当接する面の高さを同じにすると、密閉容器3内に内部機構部が衝突する虞があるため、クリアランスを大きく確保する必要性が生じ、圧縮機が大型化する。
そこで、本実施形態では、圧縮機室側Q2(シリンダ21側、図1の左側)のコイルバネ9の下端が当接する当接面3cの高さh1は、反圧縮機室側Q3(図1の右側)のコイルバネ9の下端が当接する当接面3dの高さh2よりも高くなるように構成したものである。なお、前記したように、すべてのコイルバネ9は、同一(形状および特性)の種類のもので構成されている。当接面3cの高さh1と当接面3dの高さh2の差分は、コイルバネ9で支持したときに、運転前の初期状態において内部機構部が水平状態となる値に設定される。
このように、密閉型圧縮機100では、当接面3cの高さh1を当接面3dの高さh2よりも高くしておくことにより、運転前の初期状態において、内部機構部を水平な状態で支持することが可能になるので、運転時の内部機構部の傾きを小さく抑えることができる。その結果、密閉容器3と内部機構部との間におけるクリアランスCL(図1参照)を小さく設定することが可能になり、密閉型圧縮機100の小型化を実現することが可能になる。
なお、前記した説明では、当接面3cの高さと当接面3dの高さとが異なる場合を例に挙げて説明したが、当接面3c,3dを同じ高さにして、フレーム24の延出部24d,24fの下面の高さについて、圧縮機室側Q2の延出部24dの高さ位置が反圧縮機室側Q3の延出部24fの高さ位置より高くなるようにしてもよい。
図4は、本実施形態の密閉型圧縮機を搭載した冷蔵庫の概略断面図を示し、(a)は密閉型圧縮機を下部に配置した構成、(b)は密閉型圧縮機を上部に配置した構成である。
図4(a)に示すように、冷蔵庫60Aは、冷蔵庫本体61を複数の収納室62,63,64,65に分けて構成されている。例えば、収納室62は冷蔵室、収納室63は上段冷凍室、収納室64は下段冷凍室、収納室65は野菜室である。なお、各収納室62,63,64,65の位置関係は図4(a)の限りではない。密閉型圧縮機100は、収納室65の引出し65aの奥側下部(冷蔵庫本体61の背面側の最下端)の機械室に配置されている。密閉型圧縮機100から吐出された冷媒は、冷蔵庫60A内に設けられた凝縮器(不図示)、減圧機構(不図示)を通り、冷却器66で冷蔵庫内の熱を吸収して、再び密閉型圧縮機100内へと戻される。
ところで、従来のように背の高い密閉型圧縮機を適用すると、機械室の容積を大きくする必要があるため、収納室65に収納される引出し65aの容量が小さくなる(浅い引出しになる)。そこで、本実施形態の密閉型圧縮機100を適用した冷蔵庫60Aを採用することで、機械室の容積を小さくすることができ、機械室の天井面の高さ位置を低くできるので、収納室65の奥側の庫内容量を拡大することが可能になる。
また、図4(b)に示すように、冷蔵庫60Bは、密閉型圧縮機100が収納室62の奥側上部(冷蔵庫本体61の背面側最上端)の機械室に配置されている。
ところで、従来のように背の高い密閉型圧縮機を適用すると、密閉型圧縮機が発生する振動が大きいので、冷蔵庫本体に伝達される振動も大きくなる。そこで、本実施形態の密閉型圧縮機100を適用した冷蔵庫60Bを採用することで、前記した構造によって振動を低減できるので、冷蔵庫本体61に伝わる振動を抑制することが可能になる。また、小型の密閉型圧縮機100を適用することで、収納室62の庫内容量を拡大することも可能になる。
図5は、[軸受内損失]と[軸受長/軸径]との関係を示すグラフである。なお、「軸受内損失」は、圧縮機を同一運転で運転し、圧縮機の入力(消費電力)の比較を行うことで得られる。ここでの同一運転条件とは、圧縮機の吸込み及び吐出流体の圧力、温度、圧縮機の回転速度や周囲温度等をいう。圧縮機の入力は、「冷媒を圧縮する際に必要となる理論的な動力」と、「熱流体損失」(冷媒の過熱やポンプの漏れに起因する損失)と、「モータ損失」(電力を回転力に変換する際の損失)と、「機械損失」(摺動部(軸受等)の摩擦力)とを加算することで得られる。軸受仕様のみを変更し、同一運転条件で得られた実験結果により、入力の小さいものが、より優れていると判断することができる。また、必要により、冷力も加味したCOP(冷力/入力)を用いて比較してもよい。また、「軸受長L」は、クランクシャフト23の周面(側面)を支持するラジアル軸受25の軸方向の長さであり(図1参照)、「軸径D」は、クランクシャフト23の直径である(図1参照)。
ところで、圧縮機を小型化することは、特に製品(例えば、冷蔵庫)組み込み時のメリットが大きいが、高さの低い圧縮機を開発する場合において、以下の課題があった。
圧縮機の高さを抑制するためには、軸受長さ(軸受長)を従来に比べて短縮する必要がある。しかしながら、軸受長と、軸径(クランクシャフト23の直径)と、の間では、最適とされる比率が存在している。一般的な軸受において、軸受長/軸径(以下、αとする)が、2.0以上の場合、軸受の設計としての潤滑が良好となることが知られている。これは、図5の破線で示すように、軸が軸受内で平行に保たれる平行軸受が前提での理論となっている。一方、レシプロ圧縮機などの軸受では、クランクピンが偏心回転して運転状態により軸の傾きが生じることから、図5の実線で示すように、α<2.5の場合において、αが増加するにつれて軸受内の損失が減少し、α≧2.5において、αが増加したとしても軸受内の損失が低い値に保たれる。このことから、α<2.5の範囲で前記した課題が生じることが実験的にも確認されている。ちなみに、図5の実線において、α<2.0の場合は、軸受と軸の固体同士が接触する「金属接触」の領域であり、α≧2.5の場合は、潤滑膜(油膜)を挟んで軸受と軸の固体同士が接触する「流体潤滑」の領域であり、2.0≦α<2.5の場合は、潤滑膜の厚みが十分ではなく、軸受と軸が部分的に固体接触する「境界潤滑」の領域である。
このような課題が生じる技術的な原因としては、軸受と軸の隙間は、経済的に実現可能な加工公差の範囲もあり、軸受長が短くなったとしても、極端に狭めることができず、軸受の設計上、現実的ではない。一方で、軸受長が短くなることで、同じ隙間を有しているとすると、軸が傾く角度が増加することから、結果として圧縮機の軸(クランクシャフト)の傾きが大きくなり、軸受内の損失が増加するとともに、軸受での摩擦係数が大きくなり、軸の円滑な回転を阻害し、振動が増加する傾向が確認されている。
そこで、軸受の短縮化に伴い、軸が傾く範囲が増加することにより生じる問題であるので、軸の傾きを抑制することができれば課題を解決することができる。このため、本実施形態では、ロータ31の外径(2R)を、従来よりも大きくすることで、独楽(こま)に代表されるようなジャイロ効果を得て課題を解決するものである。
図6は、[振動]と[ロータ半径/(ピストンの高さ中心−ロータの高さ中心)]との関係を示すグラフである。なお、「振動」は、圧縮機を同一運転で運転し、圧縮機の振動の比較を行うことで得られる。ここでの同一運転条件とは、圧縮機の吸込み及び吐出流体の圧力、温度、圧縮機の回転速度や周囲温度等をいう。一般には、圧縮機を冷凍サイクルに接続して運転する。また、組み込み対象製品である冷蔵庫や、製品での仕様を模擬した冷凍装置に接続して(いわゆる冷媒運転にて)検証してもよい。簡便な方法として、吸込みと吐出を大気開放した状態(いわゆる空気運転)で運転して検証してもよい。振動の測定は、運転中の圧縮機の外郭や取り付け脚近傍、あるいは製品との接続パイプ近傍、圧縮機を搭載する部品等、圧縮機の振動の影響がある部位に、振動測定手段を設置して測定できる。また、圧縮機のケース内の圧縮機構部に振動測定手段を設けて測定する方法でもよい。また、振動測定の評価方法については、ばねの伸縮に伴ういわゆる上下方向の振動に加え、前後左右方向に相当する圧縮機構部が傾く方向での振動で評価してもよく、さらにそれらを組み合わせた2次元乃至3次元の振動を合成したもので評価してもよい。
また、「ロータ半径R」は、ロータ31の半径であり(図1参照)、「ピストンの高さ中心H1」は、ピストン22の高さの二分の一の高さ位置であり(図1参照)、「ロータの高さ中心H2」は、ロータ31の高さの二分の一の高さ位置である(図1参照)。また、以下では、ロータ半径R/(ピストンの高さ中心H1−ロータの高さ中心H2)=R/Sをβとする。
図6に示すように、α<2.5の場合とα≧2.5の場合とに分けることができる。α≧2.5の場合、図6の「▲」で示す従来仕様の圧縮機では、β(=R/S)を0.5〜1.2まで変化させた場合でも、振動値に大きな変化が見られなかった。これは、軸受長L(図1参照)が十分に長いことから、軸の傾きが生じ難く、ロータ31の径の違いの影響が小さいものであると考えられる。
一方、α<2.5の場合、図6の「●」で示す圧縮機では、軸受長が短くなったため、β=0.5のときに従来仕様の圧縮機よりも振動値が悪化している。また、βの値を0.5から1.2まで変化させると、ジャイロ効果が増加し、振動値が漸減することが分かる。また、β≧0.9では、従来の圧縮機に対して有意差を持って振動値を低減できることが確認された。
よって、本実施形態では、高さを抑制した(扁平な)圧縮機を実現する上で、不可避となる軸受長Lの抑制により生じ得る軸受の傾きを抑制して、低損失で、かつ信頼性の高い軸受を持つ圧縮機を実現できる。
ところで、レシプロ圧縮機の軸は、条件により、やや傾いて摺動することが一般的である。このため、軸受と軸とが接触しないように、軸受長Lを確保する必要があり、小型化が困難であった。そこで、密閉型圧縮機100では、β(=R/S)≧0.9とすることで、扁平形状のロータ31によるジャイロ効果により、圧縮機運転中の軸(クランクシャフト23)の傾きを抑制することができ、軸受(ラジアル軸受25)と軸(クランクシャフト23)の角度を従来よりも平行に近づける効果を得ることができる。
また、密閉型圧縮機100では、α(=L/D)<2.5として、軸受(ラジアル軸受25)の長さ(軸受長L)を大幅に短縮した場合において、従来の形状の(軸方向に長い)ロータを組み合わせると振動が増加するが、β≧0.9とすることで、振動が抑制され、より小型化が可能になる。
3 密閉容器
3a 段差部
9 コイルバネ(弾性部材)
10 ゴム座
20 圧縮要素
21 シリンダ
22 ピストン
23 クランクシャフト
24 フレーム
24a ベース
24b 貫通孔
24c 凹部
24d 延出部
25 ラジアル軸受(軸受)
26 スラスト軸受
30 電動要素
31 ロータ
32 ステータ
100 密閉型圧縮機

Claims (3)

  1. 圧縮要素と、前記圧縮要素を駆動する電動要素と、前記圧縮要素および前記電動要素を収容する密閉容器と、を備える密閉型圧縮機において、
    前記圧縮要素は、シリンダと、前記シリンダ内においてピストンを往復動させることで冷媒を圧縮するクランクシャフトと、前記クランクシャフトを軸支するフレームと、を備え、
    前記フレームの上側に前記シリンダが配置され、前記フレームの下側に前記電動要素が配置され、
    前記フレームは、弾性部材を介して前記密閉容器に支持され、
    前記弾性部材は、前記シリンダの外周側に位置していることを特徴とする密閉型圧縮機。
  2. 前記密閉容器の底面には、盛り上がり形状の段差部が形成され、
    前記段差部の下部に、前記密閉容器を弾性支持するゴム座が配置され、
    前記ゴム座は、鉛直方向において前記弾性部材と重なる位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の密閉型圧縮機。
  3. 前記シリンダの側に位置する前記弾性部材の高さと、前記シリンダの側とは反対側に位置する前記弾性部材の高さと、が異なることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の密閉型圧縮機。
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