JP2017014467A - ナノ粒子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明に用いられる両親媒性ブロックポリマーは、親水性ブロック鎖と疎水性ブロック鎖とを有する。親水性ブロック鎖のモノマー単位としては、アルキレンオキシドやサルコシン等が挙げられる。疎水性ブロック鎖のモノマー単位としては、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシイソ酪酸等のヒドロキシ酸や、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、メチオニン、チロシン、トリプトファン、グルタミン酸メチル、グルタミン酸ベンジル、アスパラギン酸メチル、アスパラギン酸エチル、アスパラギン酸ベンジル等の疎水性アミノ酸あるいはアミノ酸誘導体が挙げられる。
親水性ブロック鎖は、サルコシン単位(N−メチルグリシン単位)を含む。サルコシンは、水溶性が高い。また、ポリサルコシンはN置換アミドを有することからシス−トランス異性化が可能であり、かつ、α炭素まわりの立体障害が少ないことから、高い柔軟性を有する。そのため、ポリサルコシン鎖を構成単位として用いることにより、高い親水性と柔軟性とを併せ持つ親水性ブロック鎖が形成される。
疎水性ブロックは、乳酸単位を含む。ポリ乳酸は、優れた生体適合性および安定性を有する。また、ポリ乳酸は、優れた生分解性を有することから、代謝が早く、生体内においてがん組織以外への集積性が低い。そのため、ポリ乳酸を構成ブロックとした両親媒性ポリマーから得られる分子集合体は、生体、特に人体への応用において有用である。また、ポリ乳酸は、低沸点溶媒への溶解性が高いため、分子集合体のナノ粒子を製造するためのポリマー溶液に、ハロゲン化炭化水素等の低沸点の有機溶媒を使用可能である。
両親媒性ポリマーは、親水性ブロック鎖と疎水性ブロック鎖とを結合させたものである。親水性ブロック鎖と疎水性ブロック鎖とは、リンカーを介して結合していてもよい。リンカーとしては、疎水性ブロック鎖の構成単位である乳酸モノマー(乳酸やラクチド)またはポリ乳酸鎖と結合可能な官能基(例えば、水酸基、アミノ基等)と、親水性ブロックの構成単位であるサルコシンモノマー(例えばサルコシンやN−カルボキシサルコシン無水物)またはポリサルコシンと結合可能な官能基(例えばアミノ基)とを有するものが好ましく用いられる。リンカーを適宜に選択することにより、親水性ブロック鎖や疎水性ブロック鎖の分枝構造を制御することができる。
本発明においては、両親媒性ブロックポリマーを含むポリマー溶液と、水系液体とを接触させることにより、分子集合体のナノ粒子が形成される。ポリマー溶液は、有機溶媒中に両親媒性ブロックポリマーを含む。
ポリマー溶液は、上記の両親媒性ブロックポリマーを有機溶媒中に溶解させることにより調製できる。有機溶媒としては、両親媒性ブロックポリマーを溶解可能であり、かつ水系液体よりも低沸点のものが用いられる。水系液体の沸点は100℃前後であるため、有機溶媒の沸点は100℃未満が好ましい。有機溶媒の沸点は、より好ましくは90℃以下、さらに好ましくは80℃以下である。
ポリマー溶液は、上記両親媒性ブロックポリマーおよび有機溶媒以外の物質を含有していてもよい。例えば、溶液中に疎水性ポリマーを含有させることにより、分子集合体形成時の疎水コアの形成促進や、ナノ粒子の粒子径を調整することができる。また、溶液中に、薬剤等の付加化合物を含めることにより、これらを分子集合体中に取り込むこともできる。
水系液体は、水または水溶液である。水溶液としては、注射用蒸留水、生理食塩水、緩衝液等、生化学的、薬学的に許容し得る水溶液が好ましく用いられる。水系液体に、シグナル剤、リガンド、薬剤等の付加化合物を含めることにより、これらの付加化合物を、分子集合体内または分子集合体の表面に含むナノ粒子を得ることもできる。
両親媒性ブロックポリマーを含むポリマー溶液と水系液体と接触させることにより、両親媒性ポリマーが自己組織化して、分子集合体のナノ粒子が形成される。この際、水系液体の温度を、ポリマー溶液の有機溶媒の沸点よりも高温とすることにより、混合系から有機溶媒を留去しながら粒子化が行われる。
水系液体中に回収された分子集合体のナノ粒子は、適宜の後処理に供してもよい。後処理としては、フィルタ処理や凍結乾燥等が挙げられる。また、クロマトグラフィー等による精製処理が行われてもよい。
本発明の方法により得られるナノ粒子は、従来法により得られるナノ粒子と同様の特性を有する。ナノ粒子の粒子径は、例えば10〜200nmである。生体内への分子イメージングやDDS等に用いられる分子集合体は、粒子径が15nm〜150nmであることが好ましく、20nm〜100nmであることがより好ましい。ここで「粒子径」とは、粒子分布で最も出現頻度の高い粒子径、すなわち中心粒子径をいう。分子集合体の粒子径は、動的光散乱(Dynamic Light Scattering:DLS)法により測定できる。前述のように、分子集合体の粒子径は、両親媒性ブロックポリマーの鎖長や、疎水性ポリマーの有無およびその含有量等により調整できる。
WO2009/148121号に記載の方法を参照して、サルコシン無水物およびアミノ化ポリL−乳酸をモノマー成分として、グリコール酸、O−(ベンゾトリアゾル−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HATU)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を用いて、サルコシン単位78個からなる親水性ブロックとL−乳酸単位30個からなる疎水性ブロックとを有する直鎖状の両親媒性ブロックポリマー(PSar78−PLLA30)を合成した。
上記合成例で得られたブロックポリマーをジクロロメタンに溶解して、20mg/mLのポリマー溶液を得た。バイアル中で50〜60℃に加熱した蒸留水2mLを撹拌しながら、ポリマー溶液1mLを、少量ずつ滴下した(滴下時間10分)。滴下終了後、5分間バイアル中の蒸留水の温度を50〜60℃に保持し、ジクロロメタンを揮発させた。その後、室温まで放冷して、ナノ粒子の分散液(10mg/mL)を得た。
蒸留水へのポリマー溶液の滴下量を5mL、滴下時間を50分に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、ナノ粒子の分散液(50mg/mL)を得た。
バイアル中の蒸留水を加熱せず、室温(25℃)で蒸留水2mLを撹拌しながら、ポリマー溶液5mLを少量ずつ滴下した(滴下時間50分)。ポリマー溶液の滴下終了後、50分間撹拌を継続し、さらに1時間静置したところ、有機層(下層)と水層(上層)の2層に分離していた。
上記合成例で得られたブロックポリマーをクロロホルムに溶解して、20mg/mLのポリマー溶液を得た。このポリマー溶液を用い、バイアル中の蒸留水の加熱温度を70〜80℃に変更したこと以外は、上記実施例2と同様の操作を行い、ナノ粒子の分散液(50mg/mL)を得た。
参考例1では、WO2009/148121号に記載のフィルム法により、両親媒性ブロックポリマーの粒子化を行った。
上記合成例で得られたブロックポリマーをクロロホルムに溶解して、10mg/mLのポリマー溶液を得た。このポリマー溶液をガラス製の試験管に入れ、エバポレーターを用いて溶媒を減圧留去することにより、試験管の壁面にポリマーフィルムを形成させた。さらに、室温で終夜真空乾燥を行った後、試験管内に蒸留水2mLを加えて、温度85℃で20分間加熱処理を行い、室温まで放冷して、ナノ粒子の分散液(10mg/mL)を得た。
上記各実施例および参考例で得られたナノ粒子の分散液を、1mg/mLとなるように蒸留水で希釈し、Malvern社製 Zetasizer Nano Sを用いて、動的光散乱(DLS)法により、ナノ粒子の粒子径および多分散性指数(Polydispersity Index; PdI)を測定した。なお、比較例1については、分離した水相(上層)を蒸留水で50倍に希釈して、同様の測定を行ったが、明確に粒子と判断できる成分は検出されなかった。各実施例および参考例の粒子径の測定結果を表1に示す。
Claims (12)
- 両親媒性ブロックポリマーの分子集合体を含むナノ粒子を製造する方法であって、
両親媒性ブロックポリマーおよび有機溶媒を含むポリマー溶液と、水系液体とを接触させるステップを有し、
前記両親媒性ブロックポリマーは、親水性ブロック鎖と疎水性ブロック鎖とを有し、
前記有機溶媒の沸点は前記水系液体の沸点よりも低く、
前記ポリマー溶液と前記水系液体との接触時において、前記水系液体の温度が前記有機溶媒の沸点よりも高いことを特徴とする、ナノ粒子の製造方法。 - 撹拌下の前記水系液体に、前記ポリマー溶液が添加されることにより、前記ポリマー溶液と前記水系液体とを接触させることを特徴とする、請求項1に記載のナノ粒子の製造方法。
- 前記ポリマー溶液と前記水系液体との接触が、減圧下で行われる、請求項1または2に記載のナノ粒子の製造方法。
- 前記ポリマー溶液と前記水系液体とを接触後、前記水系液体が、前記有機溶媒の沸点よりも高温に維持されることにより、前記有機溶媒の除去が行われる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のナノ粒子の製造方法。
- 前記有機溶媒が非水溶性である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のナノ粒子の製造方法。
- 前記両親媒性ブロックポリマーは、前記親水性ブロック鎖がサルコシン単位を有し、前記疎水性ブロック鎖が乳酸単位を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のナノ粒子の製造方法。
- 前記親水性ブロックに含まれるサルコシン単位の数が2〜300である、請求項6に記載のナノ粒子の製造方法。
- 前記疎水性ブロックに含まれる乳酸単位の数が5〜400である、請求項6または7に記載のナノ粒子の製造方法。
- 前記ポリマー溶液は、疎水性ポリマーをさらに含有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のナノ粒子の製造方法。
- 前記水系液体および前記ポリマー溶液の少なくともいずれか一方が、シグナル剤、リガンドおよび薬剤からなる群から選択される1以上の付加化合物を含有し、
前記ナノ粒子が、前記両親媒性ブロックポリマーと前記付加化合物とを含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のナノ粒子の製造方法。
子の製造方法。 - ナノ粒子の粒子径が10〜200nmである、請求項1〜10のいずれか1項に記載のナノ粒子の製造方法。
- ナノ粒子の粒子径の多分散性指数が0.3以下である、請求項1〜11のいずれか1項に記載のナノ粒子の製造方法。
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WO2012176885A1 (ja) * | 2011-06-23 | 2012-12-27 | 株式会社 島津製作所 | 分岐型両親媒性ブロックポリマー、それを用いた分子集合体及び薬剤搬送システム |
WO2014200007A1 (ja) * | 2013-06-12 | 2014-12-18 | 株式会社 島津製作所 | 両親媒性ブロックポリマーを用いた分子集合体、及びそれを用いた物質搬送用キャリア |
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