JP2017009522A - 表面欠陥検出方法、表面欠陥検出装置、及び鋼材の製造方法 - Google Patents

表面欠陥検出方法、表面欠陥検出装置、及び鋼材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】スケールや無害模様と表面欠陥とを精度よく弁別可能な表面欠陥検出方法及び表面欠陥検出装置を提供すること。【解決手段】本発明に係る表面欠陥検出方法は、鋼材の表面欠陥を光学的に検出する表面欠陥検出方法であって、2つ以上の弁別可能な光源を利用して同一の検査対象部位に異なる方向から照明光を照射する照射ステップと、各照明光の反射光による画像を取得し、取得した画像間で差分処理を行うことによって検査対象部位における表面欠陥を検出する検出ステップと、を含み、前記鋼材の少なくともエッジ部に対応する前記画像の解像度を0.3mm/pixel以下とすることを特徴とする。【選択図】図23

Description

本発明は、鋼材の表面欠陥を光学的に検出する表面欠陥検出方法及び表面欠陥検出装置と、この表面欠陥検出方法を利用して鋼材の表面欠陥を検出し、検出結果に基づいて鋼材を製造する鋼材の製造方法に関する。
近年、鉄鋼製品の製造工程では、大量不適合防止による歩留まり向上の観点から、熱間又は冷間で鋼材の表面欠陥を検出することが求められている。ここで述べる鋼材とは、継目無鋼管、溶接鋼管、熱延鋼板、冷延鋼板、厚板等の鋼板や形鋼をはじめとする鉄鋼製品、及びこれら鉄鋼製品が製造される過程で生成されるスラブ等の半製品のことを意味する。このため、鋼材の表面欠陥を検出する方法として、継目無鋼管の製造工程におけるビレットに光を照射して反射光を受光し、反射光の光量によって表面欠陥の有無を判別する方法が提案されている(特許文献1参照)。また、熱間鋼材から放射される自発光と相互に影響を及ぼさず、互いに影響を及ぼしあうことのない複数の波長域の可視光を、熱間鋼材表面の法線に対し互いに対称な斜め方向から照射し、合成反射光による像及び個々の反射光による像を熱間鋼材表面の法線方向で得て、これらの像の組み合わせから熱間鋼材の表面欠陥を検出する方法も提案されている(特許文献2参照)。
特開平11−37949号公報 特開昭59−52735号公報
特許文献1記載の方法によれば、無害模様やスケールの反射率が地鉄部分の反射率とは異なることから、健全な無害模様やスケールを表面欠陥と誤検出してしまう可能性がある。このため、特許文献1記載の方法では、ビレットの形状が直線状であることを利用してビレットとスケールとを弁別している。しかしながら、鋼材の表面欠陥は直線状だけでなく円形状等の様々な形状を有している。このため、特許文献1記載の方法を鋼材の表面欠陥の検出処理に適用することは難しい。一方、特許文献2記載の方法では、欠陥、スケール、無害模様等の種類が膨大にあることから、単純に像を組み合わせるだけではスケールや無害模様と表面欠陥とを弁別することは困難である。また、膨大な像の組み合わせに対応した検出ロジックを構築することは現実的には困難である。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、スケールや無害模様と表面欠陥とを精度よく弁別可能な表面欠陥検出方法及び表面欠陥検出装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、スケールや無害模様と表面欠陥とを精度よく弁別し、弁別結果に基づいて鋼材を製造可能な鋼材の製造方法を提供することにある。
本発明に係る表面欠陥検出方法は、鋼材の表面欠陥を光学的に検出する表面欠陥検出方法であって、2つ以上の弁別可能な光源を利用して同一の検査対象部位に異なる方向から照明光を照射する照射ステップと、各照明光の反射光による画像を取得し、取得した画像間で差分処理を行うことによって前記検査対象部位における表面欠陥を検出する検出ステップと、を含み、前記鋼材の少なくともエッジ部に対応する前記画像の解像度を0.3mm/pixel以下とすることを特徴とする。
本発明に係る表面欠陥検出方法は、上記発明において、前記照射ステップは、2つ以上のフラッシュ光源を互いの発光タイミングが重ならないよう繰り返し発光させることによって照明光を照射するステップを含むことを特徴とする。
本発明に係る表面欠陥検出方法は、上記発明において、前記照射ステップは、2つ以上の互いに波長領域が重ならない光源の照明光を同時に照射するステップを含み、前記検出ステップは、混ざり合った各照明光の反射光を照明光の波長と同じ波長を有する光を透過するフィルターを用いて分離することによって各照明光の反射光による画像を取得するステップを含むことを特徴とする。
本発明に係る表面欠陥検出方法は、上記発明において、前記検出ステップは、ハーフミラー、ビームスプリッター、及びプリズムのうちのいずれかを用いて、各照明光の反射光による画像を取得する複数の撮像装置の光軸が同軸となるように調整するステップを含むことを特徴とする。
本発明に係る表面欠陥検出方法は、上記発明において、前記検出ステップは、取得した画像間で差分処理を行うことによって得られた画像の明部及び暗部を抽出し、抽出された明部及び暗部の位置関係と前記照明光の照射方向とから凹凸性の表面欠陥の有無を判定する第1判定ステップを含むことを特徴とする。
本発明に係る表面欠陥検出方法は、上記発明において、前記第1判定ステップは、前記明部及び前記暗部の画像に対して膨張処理を施し、膨張処理された明部及び暗部の画像の重なり部分を抽出することによって明部及び暗部の位置関係を算出するステップを含むことを特徴とする。
本発明に係る表面欠陥検出方法は、上記発明において、前記第1判定ステップは、前記明部及び前記暗部の画像に対して二値化処理及びラベリング処理を施し、ラベリング処理された画像の重心位置を比較することによって明部及び暗部の位置関係を算出するステップを含むことを特徴とする。
本発明に係る表面欠陥検出装置は、鋼材の表面欠陥を光学的に検出する表面欠陥検出装置であって、2つ以上の弁別可能な光源を利用して同一の検査対象部位に異なる方向から照明光を照射する照射手段と、各照明光の反射光による画像を取得し、取得した画像間で差分処理を行うことによって前記検査対象部位における表面欠陥を検出する検出手段と、を備え、前記鋼材の少なくともエッジ部に対応する前記画像の解像度を0.3mm/pixel以下とすることを特徴とする。
本発明に係る鋼材の製造方法は、本発明に係る表面欠陥検出方法を利用して鋼材の表面欠陥を検出し、検出結果に基づいて鋼材を製造するステップを含むことを特徴とする。
本発明に係る表面欠陥検出方法及び表面欠陥検出装置によれば、スケールや無害模様と表面欠陥とを精度よく弁別することができる。また、本発明に係る鋼材の製造方法によれば、スケールや無害模様と表面欠陥とを精度よく弁別し、弁別結果に基づいて鋼材を製造することができる。
図1は、本発明の第1の実施形態である表面欠陥検出装置の構成を示す模式図である。 図2は、図1に示すエリアセンサの変形例の構成を示す模式図である。 図3は、図1に示す光源とエリアセンサとの駆動タイミングを示すタイミングチャートである。 図4は、表面欠陥とスケール及び無害模様とを撮影した2つの2次元画像及びその差分画像の一例を示す図である。 図5は、照明光の入射角と健全部(地鉄部分)の反射率との関係を調査する実験に用いた装置の構成を示す模式図である。 図6は、レーザーの入射角とパワーメーターの受光量との関係を示す図である。 図7は、本発明の第2の実施態様である表面欠陥検出処理を説明するための模式図である。 図8は、本発明の第3の実施態様である表面欠陥検出処理を説明するための模式図である。 図9は、実施例で利用した装置の構成を示す模式図である。 図10は、実施例の表面欠陥検出処理結果を示す図である。 図11は、スケールが発生した部分に対する表面欠陥検出処理結果を示す図である。 図12は、本発明の第1の実施形態である表面欠陥検出装置の変形例の構成を示す模式図である。 図13は、本発明の第1の実施形態である表面欠陥検出装置の他の変形例の構成を示す模式図である。 図14は、検査対象部位の表面形状が凹形状及び凸形状である場合における一方から光を照射した時の陰影を示す図である。 図15は、凹形状の表面欠陥の差分画像の一例を示す図である。 図16は、膨張処理を利用した明部及び暗部の位置関係算出方法の流れを示すフローチャートである。 図17は、差分画像及び明暗パターンの一次元プロファイルの一例を示す図である。 図18は、フィルターの二次元画像及び一次元プロファイルの一例を示す図である。 図19は、図18に示すフィルターを用いたフィルター処理が施された差分画像及び一次元プロファイルの一例を示す図である。 図20は、光源の配置位置の変形例を示す模式図である。 図21は、図20に示す光源の配置位置によって得られる明暗パターンを示す模式図である。 図22は、実施例の表面欠陥検出処理結果を示す図である。 図23は、厚鋼板のエッジ部を示す図である。 図24は、画像の解像度の変化に伴う耳ヒビ及び耳ワレの検出状況の変化を示す図である。 図25は、画像の解像度の変化に伴い耳ヒビ及び耳ワレの検出状況が変化する理由を説明するための図である。
以下、図面を参照して、本発明の第1から第3の実施形態である表面欠陥検出装置の構成及びその動作について説明する。
(第1の実施形態)
始めに、図1から図13を参照して、本発明の第1の実施形態である表面欠陥検出装置の構成及びその動作について説明する。
〔表面欠陥検出装置の構成〕
図1は、本発明の第1の実施形態である表面欠陥検出装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、本発明の第1の実施形態である表面欠陥検出装置1は、図示矢印方向に搬送される円筒形状の鋼管Pの表面欠陥を検出する装置であり、光源2a,2b、ファンクションジェネレータ3、エリアセンサ4a,4b、画像処理装置5、及びモニター6を主な構成要素として備えている。
光源2a,2bは、ファンクションジェネレータ3からのトリガー信号に従って鋼管Pの表面上の同一の検査対象部位に弁別可能な照明光Lを照射する。光源2a,2bは、検査対象部位に対して対称に配置されることが望ましい。従って、光源2a,2bは、鋼管P表面の法線ベクトルに対して同一の角度だけずらし、照明光Lの照射方向ベクトルと鋼管P表面の法線ベクトルとが同一平面状となるように配置されている。ここで述べる入射角の同一性とは、異なる方向の光源を弁別したときに光学条件をできるだけ等しくし、スケールや無害模様を含む健全部の信号を差分処理によって大きく低減することを目的とする。また、健全部の信号は対象の表面性状に大きく依存し、同一性を一概に一定角度で保証することは困難である。従って、25〜55°の範囲内であれば、多少角度が異なっていても健全部の信号を差分処理によって低減できている限り同一角と表現する。なお、本実施形態では、光源の数を2つとしたが、弁別可能であれば光源の数を3つ以上にしてもよい。ここで述べる弁別可能な光源とは、対象から得られる反射光についてそれぞれの光源別に反射光量を求めることが可能となる光源を示す。
エリアセンサ4a,4bは、ファンクションジェネレータ3からのトリガー信号に従って光源2a,2bから照射された照明光Lの反射光による2次元画像を撮影する。エリアセンサ4a,4bは、撮影した2次元画像のデータを画像処理装置5に入力する。エリアセンサ4a,4bは、それぞれの撮像視野を確保した状態で可能な限り検査対象部位の法線ベクトル上に設置することが望ましい。
なお、位置合わせの問題を解決するため、エリアセンサ4a,4bをできる限り近づけ、それぞれの光軸をできる限り互いに平行にすることが望ましい。また、図2に示すように、ハーフミラー10、ビームスプリッター、及びプリズムのうちのいずれかを用いてエリアセンサ4a,4bの光軸が同軸になるように調整してもよい。これにより、後述する差分画像を精度よく取得することができる。
画像処理装置5は、エリアセンサ4a,4bから入力された2つの2次元画像間で後述する差分処理を行うことによって検査対象部位における表面欠陥を検出する装置である。画像処理装置5は、エリアセンサ4a,4bから入力された2次元画像や表面欠陥の検出結果に関する情報をモニター6に出力する。
このような構成を有する表面欠陥検出装置1は、以下に示す表面欠陥検出処理を実行することによって、検査対象部位におけるスケールや無害模様と表面欠陥とを弁別する。ここで述べる表面欠陥とは凹凸性の欠陥とする。また、スケールや無害模様とは、厚さ数〜数十μm程度の地鉄部分とは光学特性の異なる表面皮膜や表面性状を有する部分のことを意味し、表面欠陥検出処理においてノイズ要因となる部分である。以下、本発明の第1から第3の実施態様である表面欠陥検出処理について説明する。
〔第1の実施態様〕
始めに、図3から図6を参照して、本発明の第1の実施態様である表面欠陥検出処理について説明する。
図3は、光源2a,2bとエリアセンサ4a,4bとの駆動タイミングを示すタイミングチャートである。図中、dは光源2a,2bの発光時間、Tはエリアセンサ4a,4bによる2次元画像の撮影周期を表す。本発明の第1の実施態様である表面欠陥検出処理では、光源2a,2bをフラッシュ光源として、フラッシュ光源を互いの発光タイミングが重ならないように繰り返し発光させることによって光源2a,2bを弁別する。
すなわち、図3に示すように、本実施態様では、始めに、ファンクションジェネレータ3が光源2a及びエリアセンサ4aにトリガー信号を送信し、光源2aが照明光Lを照射し、時間d以内にエリアセンサ4aが2次元画像の撮影を完了する。そして、エリアセンサ4aによる2次元画像の撮影完了後にファンクションジェネレータ3が光源2bとエリアセンサ4bとにトリガー信号を送信し、同様に2次元画像を撮影する。本実施態様によれば、時間差dで光量低下を発生することなく各光源から照射された照明光Lに対する個々の反射光による2次元画像を撮影することができる。
なお、鋼管Pの搬送速度が速い場合には、フラッシュ光源は発光時間dが短いものであることが望ましい。これは、発光時間dが短ければ短いほど、エリアセンサ4a,4bによって得られる2つの2次元画像間のシャッター遅延が小さくなり、シャッター遅延による2次元画像の位置ずれを小さくできるためである。また、個々の反射光による2次元画像の差分画像を用いて表面欠陥を検出することを目的とした時、フラッシュ光源の発光時間dは以下の数式(1)に示す条件を満足する必要がある。
検出目標の表面欠陥の大きさを例えば20mmとすると、経験上、表面欠陥を検出するためには最小5角画素の信号が必要になるので、4mm/画素の分解能があればよい。また、この場合、許容される照明光Lの照射タイミングによる位置ずれは、経験上、0.2画素以内とする必要があるので、鋼管Pの搬送速度が1、3、5m/sである場合、光源2a,2bの発光時間はそれぞれ、800、270、160μsec以下でなくてはならない。なお、鋼管Pの搬送速度や搬送方向が一定である場合には、この位置ずれは2次元画像の撮影後に補正できる。
本実施態様では、画像処理装置5は、エリアセンサ4a,4bから入力された2次元画像に対して予め導出しておいたカメラパラメータを用いてキャリブレーション、シェーディング補正やノイズ除去等の画像処理を施した後、2次元画像間で差分処理を行うことによって検査対象部位における表面欠陥を検出する。
具体的には、光源2aから照明光Lを照射した時の2次元画像Iaを構成する各画素の輝度値をIa(x,y)(但し、画素数X×Yとし、x座標を1≦x≦X、y座標を1≦y≦Yとする)、光源2bから照明光Lを照射した時の2次元画像Ibを構成する各画素の輝度値をIb(x,y)とした時、その差分画像I_diffの各画素の輝度値I_diff(x,y)は以下に示す数式(2)で表される。
ここで、表面欠陥と欠陥でないスケール及び無害模様を撮像した2次元画像Ia、Ib及びその差分画像I_diffの例をそれぞれ図4(a),(b),(c)に示す。図4(a),(b),(c)に示すように、健全部では、スケールや無害模様に関わらず法線ベクトルと光源2aの成す角と法線ベクトルと光源2bの成す角とが等しいため、輝度値Ia(x,y)=輝度値Ib(x,y)、すなわち輝度値I_diff(x,y)=0となる。しかしながら、表面欠陥部分では、表面が凹凸形状を有するため、法線ベクトルと光源2aの成す角と法線ベクトルと光源2bの成す角とが等しくない箇所が必ず存在し、輝度値Ia(x,y)≠輝度値Ib(x,y)、すなわち輝度値I_diff(x,y)≠0となる。
従って、差分器11によって2つの2次元画像の差分画像を生成することによって欠陥でないスケールや無害模様が除去され、表面欠陥のみを検出することができる。そして、このようにして表面欠陥のみを検出し、様々な特徴量により表面欠陥が有害かどうか最終的な評価を行い、モニター6に評価結果を表示する。
なお、2つの2次元画像間に位置ずれがあり、差分画像に影響を与える場合には、2次元ローパスフィルタをかけ、2次元画像間の位置ずれの影響を軽減させることが望ましい。この場合、2次元ローパスフィルタをHとすると、差分画像の輝度値I’_diff(x,y)は以下に示す数式(3)で表される。
また、光源2a,2bは同一のものを用いて、各光源はなるべく均一な平行光となるように照射し、検査対象部位は平面に近い方がよい。しかしながら、表面が多少均一でない場合や鋼管Pのようななだらかな曲面に対する適用においても、一般的なシェーディング補正により表面欠陥を検出することができる。
また、照明光Lの入射角に関しては、健全部の反射光に鏡面反射成分が入らず、且つ、十分な光量を確保できる範囲にすることが望ましい。本発明の発明者らは、照明光Lの入射角と健全部(地鉄部分)の反射率との関係を調査する実験を行った。実験に用いた装置の構成を図5に示す。図5に示すように、本実験では、パワーメーター12を鋳片サンプル14の真上の位置に固定し、レーザー13の入射角θを0°から90°まで変化させた時のパワーメーター12の受光量を計測した。実験結果を図6に示す。図6に示すように、入射角θが0°から20°の範囲内では、鏡面反射成分が含まれているためにパワーメーター12の受光量は大きいが、入射角θが60°以上になるとパワーメーター12の受光量は大きく低下する。従って、照明光Lの入射角は検査対象部位の法線ベクトルに対して25°から55°の範囲内にすることが望ましい。
検査対象部位の深さ方向の分解能は、欠陥の傾斜角及びエリアセンサ4a,4bの分解能に依存する。ここで、欠陥の傾斜角とは、「欠陥部の法線ベクトル」を「検査対象部位の健全部表面の法線ベクトルと光源方向ベクトルとが成す平面」に正射影し、正射影されたベクトルと健全部表面の法線ベクトルとの成す角を取ったものである。検査対象部位の表面性状にも依存するが、例えば入射角45°で入射光を照射したとき、欠陥の傾斜角が光源方向に対して約10°以上であれば、差分処理によって欠陥信号を検出できることが確認されている。従って、1画素の分解能を0.5mmと仮定すると、理論上0.5×tan10°=0.09mm程度の深さ方向の分解能を持つことになる。
〔第2の実施態様〕
次に、図7を参照して、本発明の第2の実施態様である表面欠陥検出処理について説明する。
本発明の第2の実施態様である表面欠陥検出処理では、光源2a,2bを互いに波長領域が重ならない光源とすることによって光源2a,2bを弁別する。具体的には、図7に示すように、光源2a,2bに波長領域が重ならない2種類の波長選択フィルター20a,20bを設置し、照明光Lの波長領域を選択する。また、同一の波長選択特性を有する波長選択フィルター21a,21bをエリアセンサ4a,4bに設置する。
このような構成によれば、光源2aからの照明光Lの反射光は波長選択フィルター20a,21aによってエリアセンサ4aのみで受光され、光源2bからの照明光Lの反射光は波長選択フィルター20b,21bによってエリアセンサ4bのみで受光される。従って、エリアセンサ4a,4bの撮影タイミングを一致させることにより、位置ずれなく光源2a,2bからの照明光Lの反射光による2次元画像を撮影することができる。2次元画像を撮影した後の処理は第1の実施態様と同様である。
なお、検査対象部位の移動速度が大きい場合には、検査対象部位の移動による位置ずれを防止するために光源2a,2bをフラッシュ光源とし、光源2a,2bの照射タイミングを変化させずに2次元画像の撮影時間を短縮させてもよい。また、波長選択フィルター20aを青色透過フィルター、波長選択フィルター20bを緑色透過フィルターとし、1台のカラーカメラを用いて2次元画像を撮影することにより、青チャンネルには光源2aからの照明光Lの反射光のみが受光され、緑チャンネルには光源2bからの照明光Lの反射光のみが受光されるといったように構成してもよい。
〔第3の実施態様〕
次に、図8を参照して、本発明の第3の実施態様である表面欠陥検出処理について説明する。
本発明の第3の実施態様である表面欠陥検出処理では、光源2a,2bを互いに直交する直線偏光特性を有する光源とすることによって光源2a,2bを弁別する。具体的には、図8に示すように、光源2a,2bに直線偏光板30a,30bをα°及び(α+90)°(αは任意の角度)で設置し、それぞれ互いに直交する偏光成分の光のみ透過させる。ここで、直線偏光板とは、入射光に対して一定方向の直線偏光成分のみ透過させるフィルターのことを意味する。また、直線偏光板30a,30bと同一の直線偏光特性を有する直線偏光板31a,31bをα°及び(α+90)°でエリアセンサ4a,4bに設置する。
このような構成によれば、光源2aからの照明光Lの反射光はエリアセンサ4aのみで受光され、光源2bからの照明光Lの反射光はエリアセンサ4bのみで受光される。従って、エリアセンサ4a,4bの撮影タイミングを一致させることにより、位置ずれなく各光源からの照明光の反射光による2次元画像を撮影することができる。
なお、検査対象部位の移動速度が大きい場合には、光源2a,2bをフラッシュ光源とし、光源2a,2bの照射タイミングを変化させずに2次元画像の撮影時間を短縮させてもよい。以下、位置合わせ及び2次元画像撮影後の処理は第1及び第2の実施態様と同様である。
[実施例]
本実施例では、図9に示すように、光源2a,2bとしてフラッシュ光源を用い、光源2a,2bの発光タイミングを変化させる方法を用いて鋼管Pの表面欠陥を検出した。エリアセンサ4a,4bは並列させて2次元画像を撮影し、画像処理により位置合わせを行った。図10に表面欠陥の検出結果を示す。図10(a)が光源2aから照明光Lを照射した時の2次元画像、図10(b)が光源2bから照明光Lを照射した時の2次元画像、図10(c)が図10(a)に示す2次元画像と図10(b)に示す2次元画像との差分画像である。図10(a)〜(c)に示す画像のS/N比は順に3.5、3.5、6.0であり、単に一方向から照明光Lを照射した場合よりも差分画像のSN比が向上した。
図11は、スケールが発生した鋼管部分に対する表面欠陥検出処理結果を示す図である。図11(a)が光源2aから照明光Lを照射した時の2次元画像、図11(b)が光源2bから照明光Lを照射した時の2次元画像、図11(c)が図11(a)に示す2次元画像と図11(b)に示す2次元画像との差分画像である。図11(a),(b)に示す2次元画像全体に広がっている黒斑点がノイズとなるスケールである。スケールの形状は平らであるので、差分画像を取得することによってスケールの画像は除去された。また、差分画像では、単に一方向から照明光Lを照射した場合と比較して、ノイズとなるスケールの信号が1/4程度に低減された。
[変形例1]
図12は、本発明の第1の実施形態である表面欠陥検出装置の変形例の構成を示す模式図である。図12に示すように、本変形例は、1つの光源2aから照射した照明光を複数のミラー40a,40b,40c,40dにより分割し、最終的に2方向から鋼管P1の検査対象部位に照明光を照射する。この場合、照明光の各光路に波長選択フィルター20a,20bや直線偏光板30a,30bを設置することにより、第2及び第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、本変形例は照明光を2方向から照射するものであるが、3方向以上から照明光を照射する場合も同様である。
[変形例2]
図13は、本発明の第1の実施形態である表面欠陥検出装置の他の変形例の構成を示す模式図である。図13に示すように、本変形例は、図7に示す表面欠陥検出装置において、波長選択フィルター20a,20bによって光源の波長を限定するのではなく、パルスレーザー51a,51bと拡散板50a,50bとを用いて光源の波長を限定するものである。本変形例では、互いに波長領域が異なる2つのパルスレーザー51a,51bからのレーザー光を検査対象部位の左右方向から照射して光源を弁別する。このとき、パルスレーザー51a,51bから照射されたレーザー光を検査対象部位全域に照射するためにレーザー光の光路に拡散板50a,50bを挿入する。なお、本変形例は2方向から照明光を照射するものであるが、3方向以上から照明光を照射する場合も同様である。
[変形例3]
本変形例は、図7に示す表面欠陥検出装置において、エリアセンサ4a,4bに設置する波長選択フィルター21a,21bの代わりにダイクロックミラーを用いるものである。ダイクロックミラーとは、特定の波長成分の光を反射し、その他の波長成分の光を透過するミラーのことである。ダイクロックミラーを用いることによって波長選択フィルターが不要となる。なお、本変形例は2方向から照明光を照射するものであるが、3方向以上から照明光を照射する場合も同様である。
(第2の実施形態)
次に、図14から図22を参照して、本発明の第2の実施形態である表面欠陥検出装置の構成及びその動作について説明する。なお、本実施形態の表面欠陥検出装置の構成は上記第1の実施形態の表面欠陥検出装置の構成と同じであるので、以下ではその構成の説明を省略し、表面欠陥検出装置の動作についてのみ説明する。
本発明の第2の実施形態である表面欠陥検出装置1は、以下に示す表面欠陥検出処理を実行することによって、検査対象部位におけるスケールや無害模様と凹凸性の表面欠陥とを弁別する。なお、スケールや無害模様とは、厚さ数〜数十μm程度の地鉄部分とは光学特性の異なる表面皮膜や表面性状を有する部分のことを意味し、表面欠陥検出処理においてノイズ要因となる部分である。
〔表面欠陥検出処理〕
本発明の一実施形態である表面欠陥検出処理では、画像処理装置5が、エリアセンサ4a,4bから入力された2つの2次元画像に対して予め導出しておいたカメラパラメータを用いてキャリブレーション、シェーディング補正、及びノイズ除去等の画像処理を施した後、2次元画像間で差分処理を行うことによって差分画像を生成し、生成された差分画像から検査対象部位における凹凸性の表面欠陥を検出する。
具体的には、光源2aから照明光Lを照射した時に得られた2次元画像Iaを構成する各画素の輝度値をIa(x,y)(但し、画素数X×Yとし、x座標を1≦x≦X、y座標を1≦y≦Yとする)、光源2bから照明光Lを照射した時に得られた2次元画像Ibを構成する各画素の輝度値をIb(x,y)とした時、差分処理によって得られる差分画像I_diffの各画素の輝度値I_diff(x,y)は既に述べた数式(1)で表される。
ここで、図4に示したように、健全部では、スケールや無害模様の有無に関わらず表面の法線ベクトルと光源2aの成す角と表面の法線ベクトルと光源2bの成す角とが等しいため、輝度値Ia(x,y)=輝度値Ib(x,y)、すなわち輝度値I_diff(x,y)=0となる。しかしながら、凹凸性の表面欠陥部分では、表面が凹凸形状を有するため、表面の法線ベクトルと光源2aの成す角と表面の法線ベクトルと光源2bの成す角とが等しくない箇所が必ず存在し、輝度値Ia(x,y)≠輝度値Ib(x,y)、すなわち輝度値I_diff(x,y)≠0となる。従って、差分器11によって2つの2次元画像の差分画像I_diffを生成することによって表面欠陥でない健全なスケールや無害模様の画像を除去することができる。
次に、差分画像I_diffから凹凸性の表面欠陥を検出するロジックについて説明する。図14(a),(b)はそれぞれ、検査対象部位の表面形状が凹形状及び凸形状である場合における一方の光源から検査対象部位に照明光を照射した時の陰影を示す図である。図14(a)に示すように、検査対象部位の表面形状が凹形状である場合、光源の手前側が単位面積当たりの照射光の光量低下によって暗くなり、光源の奥側が正反射方向に近づくため明るくなる。これに対して、図14(b)に示すように、検査対象部位の表面形状が凸形状である場合には、光源の手前側が正反射方向に近づくため明るくなり、光源の奥側が凸形状の影となり暗くなる。
すなわち、検査対象部位の表面形状が凹形状である場合と凸形状である場合とで照明光の反射光の明暗パターンが異なる。従って、反射光の明暗パターンを認識することによって凹凸性の表面欠陥の有無を検出することができる。そこで、以下では、反射光の明暗パターンを認識することによって凹凸性の表面欠陥を検出する方法について述べる。なお、以下では、凹凸性の表面欠陥のうち、凹形状の表面欠陥を検出するものとするが、凸形状の表面欠陥も同様のロジックで検出することができる。また、以下で述べる明部とは、差分画像I_diffにおいて輝度が所定閾値以上である画素に対して連結処理を行うことによって得られる所定値以上の面積を持つブロブを意味する。また、以下で述べる暗部とは、差分画像I_diffにおいて輝度が所定閾値以下である画素に対して連結処理を行うことによって得られるある所定値以上の面積を持つブロブを指す。ブロブとはラベリングされた画素の集合を意味する。
本実施形態では、閾値処理を行うことによって明部と暗部とを抽出することにより明暗パターンを認識する。具体的には、本実施形態の表面欠陥検出装置1では、光源2a,2bは検査対象部位の法線ベクトルに対して左右対称に配置されているため、表面の凹凸形状に起因する反射光の明暗パターンは左右方向に発生する。明暗の左右は差分処理の順番によって逆となるため、ここでは右が明・左が暗である場合を凹形状、右が暗・左が明である場合を凸形状とする。従って、凹形状の表面欠陥の差分画像I_diffは図15に示すようになる。そこで、明部と暗部の画像をそれぞれ輝度閾値The,−Theによって二値化すると、明部及び暗部の二値化画像I_blight,I_darkはそれぞれ以下に示す数式(4)のように表される。
そして、このようにして明部及び暗部の画像を二値化し、必要に応じて連結・孤立点除去を行った後、明部及び暗部の位置関係を算出することによって凹凸性の表面欠陥の有無を検出する。なお、明部及び暗部の位置関係の算出方法には様々な方法があり、以下では代表的な3つの算出方法を述べるが、その他の算出方法であっても明部と暗部の位置関係が算出できればよい。
第1の位置関係算出方法は、明部及び暗部に対して特定方向の膨張収縮処理を施すことによって明部及び暗部の位置関係を算出する方法である。本算出方法のフローチャートを図16に示す。本実施形態では、凹形状の表面欠陥を検出するため、右が明、左が暗である明暗のパターンを認識する場合について説明する。右が明、左が暗ということは明部の左側には必ず暗部があり、暗部の右側には必ず明部があるということである。そこで、本算出方法では、始めに、画像処理装置5が、暗部に対して右方向に膨張処理を施し、明部に対しては左方向に膨張処理を施す(ステップS1a,S1b)。ここで、膨張処理が施された明部及び暗部の画像をそれぞれI_blight_extend、I_dark_extendとし、膨張する長さをWとすると膨張処理は以下に示す数式(5)のように表される。但し、二次元画像の左上を原点として下方向をy軸方向正、右方向をx軸方向正とする。
なお、本実施形態では、明部と暗部とを同じ長さWだけ膨張させているが、膨張する長さWは必ずしも同じである必要は無く、極端に述べれば明部及び暗部の一方のみに対して膨張処理を施してもよい。また、膨張する長さWは検出したい表面欠陥の大きさにも依存する。
次に、画像処理装置5は、以下に示す数式(6)のように膨張処理が施された明部及び暗部の画像I_blight_extend、I_dark_extendに対してand処理を行うことにより、膨張処理が施された明部及び暗部の画像I_blight_extend、I_dark_extendの重なり部分を欠陥候補部画像I_defectとして抽出する(ステップS2a,S2b)。
次に、画像処理装置5は、得られた各欠陥候補部画像I_defectに対して、必要に応じて連結・孤立点除去処理を行った後、ラベリング処理を行うことによって、欠陥候補ブロブI_defect_blobを生成する(ステップS3)。そして、画像処理装置5は、各欠陥候補ブロブI_defect_blobの特徴量を抽出し、抽出結果に基づいて各欠陥候補ブロブI_defect_blobが凹形状の表面欠陥であるか否かを判別する(ステップS4a,S4b)。なお、欠陥候補ブロブI_defect_blobの特徴量を調査するためには、明部及び暗部の情報が必要となるため、欠陥候補ブロブI_defect_blobから明部と暗部を復元する。
具体的には、欠陥候補部の右側には必ず明部が存在し、左側には必ず暗部が存在するため、画像処理装置5は、欠陥候補ブロブI_defect_blobの重心を起点として暗部二値化画像I_darkを左側に探索し、最初に見つかったブロブを暗部欠陥候補ブロブI_dark_blobとする。同様に、画像処理装置5は、欠陥候補ブロブI_defect_blobの重心を起点として明部二値化画像I_blightを右側に探索し、最初に見つかったブロブを明部欠陥候補ブロブI_blight_blobとする。そして、画像処理装置5は、こうして復元された明部欠陥候補ブロブI_blight_blob及び暗部欠陥候補ブロブI_dark_blobから特徴量を抽出し、抽出された特徴量に基づいて各欠陥候補ブロブI_defect_blobが凹形状の表面欠陥であるか否かを判別する。具体的な特徴量は欠陥により異なるため、ここでは述べず後述する実施例で一例を挙げる。
第2の位置関係算出方法では、上述の閾値処理を行い、必要に応じて連結・孤立点除去処理を行った後、明部及び暗部を抽出してラベリングを実施し、明部及び暗部の位置関係を認識することにより凹形状の表面欠陥を検出する。具体的には、始めに、画像処理装置5は、ラベリングにより明部及び暗部を個別に認識し、明部及び暗部の重心情報を得る。次に、画像処理装置5は、明部及び暗部の重心情報から各明部の右側の所定範囲内に暗部の重心が存在するか否かを判定する。そして、暗部の重心が存在する場合、画像処理装置5は、対となる明部と暗部との組み合わせを明暗パターンとして認識し、明暗パターンの特徴量解析を行うことによって、凹形状の表面欠陥であるか否かを判別する。なお、ここでは重心情報を用いて明暗パターンを認識したが、明部及び暗部の位置が把握できる情報(例えば上端位置や下端位置等)であれば、明暗パターンの認識に用いる情報は必ずしも重心情報でなくてよい。
第3の位置関係算出方法では、上述の閾値処理を行わず、フィルターを用いて明暗パターンを認識することによって、凹形状の表面欠陥を検出する。具体的には、図1に示す表面欠陥検出装置1では、光源2a,2bが検査対象部位の法線に対して左右対称に配置されているため、表面の凹凸に起因する明暗パターンは左右方向に発生する。図17(a),(b)はそれぞれ、差分画像の一例及び図17(a)に示す線分L4における明暗パターンの一次元プロファイルを示す図である。
図17(a),(b)に示すように、凹形状の表面欠陥では右が明、左が暗であるため、明暗パターンの一次元プロファイルは右側が山形、左側が谷形の特徴的な一次元プロファイルになる。そこで、本実施形態では、右側が山形、左側が谷形となるようなフィルターHを予め作成し、以下の数式(7)に示すように差分画像I_diffにフィルターHをかけることにより、高周波数のノイズが低減され、明暗パターンのみが強調された二次元画像I_contを生成する。
図18(a),(b)はそれぞれ予め作成したフィルターHの二次元画像及びその左右方向の一次元プロファイルの一例を示す図である。図19(a),(b)はそれぞれ、図18(a),(b)に示すフィルターHを用いたフィルター処理が施された差分画像及びその左右方向の一次元プロファイルを示す図である。図19(a),(b)に示すように、高周波数のノイズが低減され、明暗パターンのみが強調された二次元画像が得られることがわかる。
なお、必要に応じて、幅方向にレンジが異なるフィルターを数種類用意しておくことにより、多くの表面欠陥サイズに対応できるようにしてもよい。画像処理装置5は、このようにして明暗パターンが強調された二次元画像に対して、必要に応じて連結・孤立点除去処理を施した後、閾値処理を行うことによって欠陥候補部画像I_defectを抽出する。そして、画像処理装置5は、抽出された欠陥候補部画像I_defectに対して第1の位置関係算出方法と同様の処理を施すことによって、凹形状の表面欠陥を検出する。
以上の説明から明らかなように、本発明の一実施形態である表面欠陥検出処理は、2つの弁別可能な光源2a,2bを利用して同一の検査対象部位に異なる方向から略同一の入射角度で照明光Lを照射し、各照明光Lの反射光による画像を取得し、取得した画像間で差分処理を行うことによって得られた画像の明部及び暗部を抽出し、抽出された明部及び暗部の位置関係と照明光Lの照射方向とから凹凸性の表面欠陥の有無を判定するので、スケールや無害模様と凹凸性の表面欠陥とを精度よく弁別することができる。
なお、本実施形態では、光源を左右対称に設置したために左右の明暗パターンを認識したが、光源の設置位置が左右ではなく、上下対称又は対称でなかったとしても同様の処理によって凹凸性の表面欠陥を検出することができる。具体的には、光源が上下対称に配置されている場合には、明暗パターンが左右方向から上下方向に変わるだけであるので、明暗パターンを90度回転させれば同様の処理によって凹凸性の表面欠陥を検出することができる。
また、図20に示すように照明光の照射方向が90度異なるように光源2a,2bを設置した場合には、表面欠陥が凹形状であれば光源の手前側が暗く奥側が明るくなり、表面欠陥が凸形状であれば光源の手前側が明るく、奥側が暗くなる。具体的には、表面欠陥が凹形状である場合、光源2aからの照明光によって得られる二次元画像は図21(a)に示すようになり、光源2bからの照明光によって得られる二次元画像は図21(b)に示すようになる。このため、差分画像は図21(c)に示すような左下から右上にかけてコントラストがある明暗パターンとなる。従って、明暗パターンを45度回転させれば、左右方向の明暗パターンと同様の方法によって凹形状の表面欠陥を検出することができる。さらに、3つ以上の光源を用いることによって、それぞれ複数パターンの差分画像を得ることができるので、表面欠陥の検出精度をより向上させることができる。
また、本実施形態では検査対象部位の法線に対して対称となる方向から照明光を照射した場合について凹凸性の表面欠陥を検出したが、照明光の照射方向は必ずしも対称である必要はない。また、本実施形態の表面欠陥検出処理は熱間、冷間に関わらず鋼材の製造ライン全般に適用することができる。
[実施例]
本実施例では、ピット疵が形成されている検査対象部位とピット疵が形成されていない健全な検査対象部位に対して上記第1の位置関係算出方法を用いた表面欠陥検出処理を適用した。本実施例では、特徴量として、明部及び暗部の輝度比、面積比、及び円形度を算出した。円形度とは、明部及び暗部の面積をその周の長さの二乗で割って正規化した値であり、明部及び暗部の形状が円形状に近いか否かを判定する際に用いられる。同一起因の表面欠陥であれば、左右の信号で輝度や面積が著しく異なるということは考えにくく、輝度比や面積比を用いて左右のバランスを評価することによって表面欠陥の検出精度が向上する。また、陰影を評価するため明部及び暗部が円形状になることはほとんどなく、円形状に近いものは別起因であると判断できるために、特徴量に円形度を組み入れた。また、明部及び暗部の面積を算出し、面積が所定値以上である表面欠陥のみを検出できるようにした。検出結果を図22に示す。図22に示すように、本実施例によれば、ピット疵とピット疵が形成されていない健全部とを精度よく弁別できることが確認された。
〔画像の解像度〕
最後に、本発明の発明者らは、画像の解像度について検討した。具体的には、エリアセンサ4a,4bにより取得する画像の解像度を変化させて厚鋼板における0.2mm以上の非開口性疵の検出状況を実験的に調査した所、表1に示すように、0.2mm以上の非開口性疵を100%検出するためには0.3mm/pixel以下の解像度が画像に必要であることが知見された。また、この時、0.3mm/pixel以下の解像度が必要な対応する厚鋼板の領域は、エッジ部のみであり、エッジ部以外の領域では画像の解像度が1.0mm/pixelでも十分であることが知見された。さらに、表2に示すように、エッジ部に発生する耳ヒビや耳ワレを検出するためには0.3mm/pixel以下の解像度が画像に必要であるが、耳ヒビや耳ワレ以外の非開口性疵を検出するためには1.0mm/pixel程度の解像度で十分であることが知見された。ここで、耳ヒビとは、厚鋼板の幅方向端部に形成されるひびのことを意味し、耳ワレとは、厚鋼板の幅方向端部に形成される割れのことを意味する。図23は、厚鋼板のエッジ部を示す図である。図23に示すように、耳ヒビや耳ワレは経験的に厚鋼板の幅方向端部から200mmの範囲内に発生する。そこで、本明細書中では、厚鋼板の幅方向端部から200mmの範囲内をエッジ部と定義する。
次に、本発明の発明者らは、厚鋼板のエッジ部においてのみ画像に0.3mm/pixel以下の解像度が必要である理由について検討した。図24は、画像の解像度の変化に伴う耳ヒビ及び耳ワレの検出状況の変化を示す図である。図25は、画像の解像度の変化に伴い耳ヒビ及び耳ワレの検出状況が変化する理由を説明するための図である。図24に示すように、本発明に係る表面欠陥検出処理では、画像中の明部及び暗部の輝度が20以上である時に表面欠陥を検出できるが、この条件は画像の解像度が0.3mm/pixel以下である時に満足される。このことから、本発明の発明者らは、図25(a)に示すように、エッジ部における画像の解像度が0.3mm/pixelより大きい場合は、明部及び暗部が同じ画素(ピクセル)内に存在するために耳ヒビ及び耳ワレを検出できないと考えた。そして、本発明の発明者らは、図25(b)に示すように、エッジ部における画像の解像度が0.3mm/pixel以下である場合には、明部及び暗部が互いに別の画素内に存在するために耳ヒビ及び耳ワレを検出できると考えた。
以上のことから、本発明に係る表面欠陥検出処理により表面欠陥を検出する際には、鋼材の少なくともエッジ部に対応する画像の解像度を0.3mm/pixel以下にすることが望ましい。
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。例えば、本発明に係る表面欠陥検出方法を利用して鋼材の表面欠陥を検出し、検出結果に基づいて鋼材を製造するようにしてもよい。このように、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例、及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
1 表面欠陥検出装置
2a,2b 光源
3 ファンクションジェネレータ
4a,4b エリアセンサ
5 画像処理装置
6 モニター
L 照明光
P 鋼管

Claims (9)

  1. 鋼材の表面欠陥を光学的に検出する表面欠陥検出方法であって、
    2つ以上の弁別可能な光源を利用して同一の検査対象部位に異なる方向から照明光を照射する照射ステップと、
    各照明光の反射光による画像を取得し、取得した画像間で差分処理を行うことによって前記検査対象部位における表面欠陥を検出する検出ステップと、を含み、
    前記鋼材の少なくともエッジ部に対応する前記画像の解像度を0.3mm/pixel以下とすることを特徴とする表面欠陥検出方法。
  2. 前記照射ステップは、2つ以上のフラッシュ光源を互いの発光タイミングが重ならないよう繰り返し発光させることによって照明光を照射するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の表面欠陥検出方法。
  3. 前記照射ステップは、2つ以上の互いに波長領域が重ならない光源の照明光を同時に照射するステップを含み、前記検出ステップは、混ざり合った各照明光の反射光を照明光の波長と同じ波長を有する光を透過するフィルターを用いて分離することによって各照明光の反射光による画像を取得するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の表面欠陥検出方法。
  4. 前記検出ステップは、ハーフミラー、ビームスプリッター、及びプリズムのうちのいずれかを用いて、各照明光の反射光による画像を取得する複数の撮像装置の光軸が同軸となるように調整するステップを含むことを特徴とする請求項1から3のうち、いずれか1項に記載の表面欠陥検出方法。
  5. 前記検出ステップは、取得した画像間で差分処理を行うことによって得られた画像の明部及び暗部を抽出し、抽出された明部及び暗部の位置関係と前記照明光の照射方向とから凹凸性の表面欠陥の有無を判定する第1判定ステップを含むことを特徴とする請求項1から4のうち、いずれか1項に記載の表面欠陥検出方法。
  6. 前記第1判定ステップは、前記明部及び前記暗部の画像に対して膨張処理を施し、膨張処理された明部及び暗部の画像の重なり部分を抽出することによって明部及び暗部の位置関係を算出するステップを含むことを特徴とする請求項5に記載の表面欠陥検出方法。
  7. 前記第1判定ステップは、前記明部及び前記暗部の画像に対して二値化処理及びラベリング処理を施し、ラベリング処理された画像の重心位置を比較することによって明部及び暗部の位置関係を算出するステップを含むことを特徴とする請求項5に記載の表面欠陥検出方法。
  8. 鋼材の表面欠陥を光学的に検出する表面欠陥検出装置であって、
    2つ以上の弁別可能な光源を利用して同一の検査対象部位に異なる方向から照明光を照射する照射手段と、
    各照明光の反射光による画像を取得し、取得した画像間で差分処理を行うことによって前記検査対象部位における表面欠陥を検出する検出手段と、を備え、
    前記鋼材の少なくともエッジ部に対応する前記画像の解像度を0.3mm/pixel以下とすることを特徴とする表面欠陥検出装置。
  9. 請求項1から7のうち、いずれか1項に記載の表面欠陥検出方法を利用して鋼材の表面欠陥を検出し、検出結果に基づいて鋼材を製造するステップを含むことを特徴とする鋼材の製造方法。
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