JP2017007233A - 平版印刷版原版、その製造方法、及びそれを用いる印刷方法 - Google Patents

平版印刷版原版、その製造方法、及びそれを用いる印刷方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 印刷時に湿し水の量を少なくした場合においてもエッジ汚れが防止され、しかも、平版印刷版原版の支持体裏面への転写が防止され、また、合紙との接着が防止された平版印刷版原版、その製造方法、及びそれを用いた印刷方法を提供すること。
【解決手段】 支持体上にエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物を含む画像記録層を有する平版印刷版原版であって、上記平版印刷版原版の端部から内側に5mmまでの領域であって、上記支持体と上記画像記録層との間に水溶性化合物を含有し、上記領域における上記水溶性化合物の単位面積当たりの含有量が、上記領域以外における水溶性化合物の単位面積あたりの含有量よりも多く、且つ、上記領域におけるエチレン性不飽和結合の反応率が3%以上である平版印刷版原版。
【選択図】 なし

Description

本発明は、平版印刷版原版、その製造方法、及びそれを用いる印刷方法に関する。
現在、平版印刷版の作製においては、CTP(コンピュータ・トゥ・プレート)技術による画像露光が行われている。即ち、画像露光はレーザーやレーザーダイオードを用いて、リスフィルムを介することなく、直接平版印刷版原版に走査露光などにより行われる。これに伴って、平版印刷版原版に関わる課題は、CTP技術に対応した画像形成特性、印刷特性、物理特性などの改良へと変化している。
更に、地球環境への関心の高まりから、平版印刷版原版に関わるもう一つの課題として、現像処理などの湿式処理に伴う廃液に関する環境問題がクローズアップされている。これに伴い、現像処理の簡易化又は無処理化が指向されている。簡易な現像処理の一つとして、「機上現像」と呼ばれる方法が提案されている。即ち、平版印刷版原版を露光後、従来の現像処理は行わず、そのまま印刷機に装着し、画像記録層の不要部分の除去を通常の印刷工程の初期段階で行う方法である。
平版印刷版を用いて印刷する場合、通常の枚葉印刷機のように印刷版のサイズよりも小さい紙への印刷においては、印刷版の端部は紙面外の位置にあるので端部が印刷品質に影響することはない。しかし、新聞印刷のような輪転機を用いて幅広のロール状の紙に連続して印刷する場合には、印刷版の端部はロール紙面内にあるため、端部に付着したインキが紙に転写されて線状の汚れ(以下、エッジ汚れとも云う)を発生させ、印刷物の商品価値を著しく損ねることになる。
機上現像型平版印刷版原版におけるエッジ汚れを防止する方法として、新聞印刷用の機上現像型平版印刷版原版の端部から1cm以内の領域を有機溶剤及び親水性樹脂を含有する液やアニオン性又は非イオン性界面活性剤を含有する処理液で処理することが提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。
特開2011−177983号公報 特開2014−104631号公報
しかし、特許文献1に記載の技術よると、印刷時に湿し水の量を少なくした場合に、エッジ汚れが十分に解消されないことが判明した。これは、印刷時の水幅が狭いことを意味する。水幅とは、印刷適性を保持するために必要な湿し水量の上限から下限までの幅を意味し、安定した印刷を行うためには、水幅が広いことが強く求められている。
また、上記特許文献に記載の技術よると、処理済みの平版印刷版原版を別の平版印刷版原版と重ね合わせて保管した場合、処理液成分が別の平版印刷版原版の支持体裏面に転写することがあり、この転写物が平版印刷版原版の露光から印刷までの一連の製版工程において搬送経路に再転写し、セッターやパンチベンダーなどの装置内の汚染につながることが判明した。
更に、処理済みの平版印刷版原版を合紙に挟んで重ね合わせて保管した場合、処理液成分がこれに接する合紙に接着する場合があり、その結果、平版印刷版原版の露光工程において、セッター内で合紙を平版印刷版原版から剥離できないなどの問題が発生することが判明した。
本発明の目的は、印刷時に湿し水の量を少なくした場合においてもエッジ汚れが防止され、しかも、平版印刷版原版の支持体裏面への転写が防止され、また、合紙との接着が防止された平版印刷版原版、その製造方法、及びそれを用いた印刷方法を提供することである。
(1)支持体上にエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物を含む画像記録層を有する平版印刷版原版であって、上記平版印刷版原版の端部から内側に5mmまでの領域であって、上記支持体と上記画像記録層との間に水溶性化合物を含有し、上記領域における上記水溶性化合物の単位面積当たりの含有量が、上記領域以外における水溶性化合物の単位面積あたりの含有量よりも多く、且つ、上記領域におけるエチレン性不飽和結合の反応率が3%以上である平版印刷版原版。
(2)支持体上にエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物を含む画像記録層を有する平版印刷版原版であって、上記平版印刷版原版の端部から内側に5mmまでの領域であって、上記支持体と上記画像記録層との間に水溶性化合物及び熱重合開始剤を含有し、上記領域における上記水溶性化合物の単位面積当たりの含有量が、上記領域以外における水溶性化合物の単位面積あたりの含有量よりも多く、且つ、上記熱重合開始剤の含有量が、上記領域以外の領域における熱重合開始剤の含有量よりも0.1mg/m以上多い平版印刷版原版。
(3)上記熱重合開始剤が、ジアゾ化合物、過酸化物及びオニウム塩化合物から選ばれる少なくとも1種である(2)に記載の平版印刷版原版。
(4)上記端部から内側に5mmまでの領域に含まれる水溶性化合物の単位面積当たりの含有量が、上記領域以外に含まれる水溶性化合物の単位面積あたりの含有量よりも 50mg/m以上多い(1)〜(3)のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
(5)上記水溶性化合物が、親水性化合物である(1)〜(4)のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
(6)上記親水性化合物が、支持体吸着性基を有する化合物である(5)に記載の平版印刷版原版。
(7)上記支持体吸着性基を有する化合物が、リン酸化合物又はホスホン酸化合物である(6)に記載の平版印刷版原版。
(8)上記リン酸化合物又はホスホン酸化合物が、高分子化合物である(7)に記載の平版印刷版原版。
(9)上記平版印刷版原版の端面が、ダレ量Xが35〜150μm、ダレ幅Yが70〜300μmのダレ形状を有する(1)〜(8)のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
(10)上記画像記録層が、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物及びバインダーポリマーを含有する(1)〜(9)のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
(11)上記画像記録層が、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物及び微粒子形状の高分子化合物を含有する(1)〜(9)のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
(12)支持体上にエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物を含む画像記録層を有する平版印刷版原版であって、上記平版印刷版原版の端部から内側に5mmまでの領域であって、上記支持体と上記画像記録層との間に水溶性化合物を含有し、上記領域における上記水溶性化合物の単位面積当たりの含有量が、上記領域以外における水溶性化合物の単位面積あたりの含有量よりも多く、且つ、上記領域におけるエチレン性不飽和結合の反応率が3%以上である平版印刷版原版の製造方法であって、
上記画像記録層を形成する画像記録層形成工程a、
上記水溶性化合物と熱重合開始剤を含む塗布液を、工程aで形成される上記画像記録層の一部の領域と重なるように塗布する塗布工程b、および、
上記塗布液を塗布した領域が、裁断後の平版印刷版原版の端部から内側に5mmまでの範囲にあるように裁断する裁断工程cを、
上記支持体上に、工程b、工程aの順に行い、その後工程cを行う平版印刷版原版の製造方法。
(13)上記工程aにおいて、版面の到達温度が35℃以上となるように乾燥を行う(12)に記載の平版印刷版原版の製造方法。
(14)上記工程aの前に、下塗り層を形成する下塗り層形成工程dを行う、(12)又は(13)に記載の平版印刷版原版の製造方法。
(15)上記工程aの後、工程cの前に、保護層を形成する保護層形成工程eを行う(12)〜(14)のいずれか1項に記載の平版印刷版原版の製造方法。
(16)(12)〜(15)のいずれか1項に記載の製造方法により得られた平版印刷版原版。
(17)(1)〜(11)及び(16)のいずれか1項に記載の平版印刷版原版を画像露光し、印刷インキ及び湿し水を供給して印刷機上で画像記録層の未露光部を除去し、印刷を行う方法。
(18)上記平版印刷版原版の幅よりも広い印刷用紙を用いて印刷する(17)に記載の印刷方法。
本発明によれば、印刷時に湿し水の量を少なくした場合においてもエッジ汚れが防止され、しかも、平版印刷版原版の支持体裏面への転写が防止され、また、合紙との接着が防止された平版印刷版原版、その製造方法、及びそれを用いた印刷方法を提供することができる。
裁断された平版印刷版原版の端部の断面形状を示す模式図である。 スリッター装置の裁断部の1例を示す概念図である。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る平版印刷版原版は、支持体上にエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物を含む画像記録層を有する平版印刷版原版であって、上記平版印刷版原版の端部から内側に5mmまでの領域であって、上記支持体と上記画像記録層との間に水溶性化合物を含有し、上記領域における上記水溶性化合物の単位面積当たりの含有量が、上記領域以外における水溶性化合物の単位面積あたりの含有量よりも多く、且つ、上記領域におけるエチレン性不飽和結合の反応率が3%以上である平版印刷版原版である。
即ち、本発明に係る平版印刷版原版においては、上記平版印刷版原版の端部から内側に5mmまでの領域であって、上記支持体と上記画像記録層との間に、上記領域以外の領域に比べて、単位面積当たり多量の水溶性化合物を含有し、しかも、上記領域におけるエチレン性不飽和結合の反応率が3%以上であることが特徴である。
従来の平版印刷版原版において、その構成層、例えば、下塗り層(中間層とも云う)、画像記録層(画像形成層とも云う)、保護層(オーバーコート層とも云う)に水溶性化合物を含有させることは知られているが、いずれの場合も、当該化合物は平版印刷版原版の支持体表面に平行な面内においてほぼ均一に存在している。即ち、平版印刷版原版の中央部分と端部分において、当該化合物の含有量は実質的に差がない。
これに対して、本発明に係る平版印刷版原版においては、平版印刷版原版の端部から内側に5mmまでの領域であって、支持体と画像記録層との間にのみ上記水溶性化合物を含有する塗布液を塗布するなどの手段により、端部領域における水溶性化合物の含有量が、端部領域以外の領域に比べて意図的に多くなっていることが特徴である。このことにより、優れたエッジ汚れ防止性が得られると考えられる。
上記水溶性化合物含有量の差は、好ましくは50mg/m以上、より好ましくは50〜3000mg/m、更に好ましくは50〜2000mg/m、特に好ましくは100〜1000mg/mである。
ここで、平版印刷版原版の端部とは、平版印刷版原版の製造過程において、シート状に裁断される工程などにより形成される縁の部分を意味する。シート状平版印刷版原版は上下左右4つの端部を有する。本発明に係る水溶性化合物の高い含有量を有する端部の数は、エッジ汚れ防止の観点から、印刷用紙の大きさとの関連で1〜4である。例えば、新聞印刷の場合には、通常、印刷用紙面内となる平版印刷版原版の対向する2辺が端部に該当する。
また、端部から内側に5mmまでの画像記録層側版面の領域には、画像記録層のみならず、支持体の画像記録層側に設けられる全ての層が含まれる。従って、端部から内側に5mmまでの画像記録層側版面の領域における水溶性化合物の単位面積当たりの含有量とは、平版印刷版原版の画像記録層側における端部から平版印刷版原版の内側方向に5mmまでの領域において単位面積当たり存在する水溶性化合物の総含有量を意味する。同様に、上記領域以外の領域における水溶性化合物の単位面積当たりの含有量は、当該領域において単位面積当たり存在する水溶性化合物の総含有量を意味する。
以下、本発明に係る平版印刷版原版において、端部から内側に5mmまでの領域を端部領域ともいう。また、端部領域以外の領域をその他の領域ともいう。
端部領域及びその他の領域おける単位面積当たりの水溶性化合物の含有量は、以下のようにして定めることができる。
平版印刷版原版の端部領域及びその他の領域に該当する試料を準備し、各試料について支持体上の全塗布膜を水、有機溶剤又はこれらの混合物などの溶媒を用いて支持体から脱膜し、脱膜溶液中に含まれる当該水溶性化合物を高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を用いた測定方法で分離、定量し、単位面積(m)当たりに換算することにより端部領域及びその他の領域の単位面積当たりの当該水溶性化合物の含有量を決定することができる。
また、本発明に係る平版印刷版原版は、上記領域におけるエチレン性不飽和結合の反応率が3%以上であることも特徴である。即ち、平版印刷版原版の端部領域においては、その他の領域に比べて、エチレン性不飽和結合の反応に起因する硬化が進行している。このことにより、平版印刷版原版の支持体裏面への転写が防止され、また、合紙との接着が防止されると考えられる。
上記領域におけるエチレン性不飽和結合の反応率は、好ましくは3〜15%、より好ましくは3〜10%、更に好ましくは3〜5%である。この範囲において、エッジ汚れ防止と、処理成分に起因する平版印刷版原版裏面への転写防止及び合紙との接着防止を効果的に達成することができる。
端部領域におけるエチレン性不飽和結合の反応率は、以下のようにして定めることができる。
平版印刷版原版の端部領域およびその他の領域に該当する試料を準備し、各試料について支持体上の全塗布膜に含まれるエチレン性不飽和結合基を赤外分光高度計で検出する。各試料から検出されるエチレン性不飽和結合基に由来するピークの面積値を用いて、下記式によりエチレン性不飽和結合の反応率を算出する。
エチレン性不飽和結合の反応率=
[(その他の領域に該当する試料のピーク面積)−(端部領域に該当する試料のピーク面積)]/(その他の領域に該当する試料のピーク面積)×100
また、本発明に係る平版印刷版原版は、支持体上にエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物を含む画像記録層を有する平版印刷版原版であって、上記平版印刷版原版の端部から内側に5mmまでの領域であって、上記支持体と上記画像記録層との間に水溶性化合物及び熱重合開始剤を含有し、上記領域における上記水溶性化合物の単位面積当たりの含有量が、上記領域以外における水溶性化合物の単位面積あたりの含有量よりも多く、且つ、上記熱重合開始剤の含有量が、 上記領域以外の領域における熱重合開始剤の含有量よりも0.1mg/m以上多い平版印刷版原版も包含する。
即ち、この態様による平版印刷版原版においては、上記平版印刷版原版の端部から内側に5mmまでの領域であって、上記支持体と上記画像記録層との間に、上記領域以外の領域に比べて、単位面積当たり多量の水溶性化合物と0.1mg/m以上多い熱重合開始剤とを含有することが特徴である。
上記平版印刷版原版は、上記水溶性化合物及び熱重合開始剤を含有する領域を有することにより、エッジ汚れ防止と、処理成分に起因する平版印刷版原版裏面への転写防止及び合紙との接着防止を達成することができる。
端部領域及びその他の領域おける熱重合開始剤の含有量は、以下のようにして定めることができる。
平版印刷版原版の端部領域およびその他の領域に該当する試料を準備し、各試料について支持体上の全塗布膜を水、有機溶剤又はこれらの混合物などの溶媒を用いて支持体から脱膜し、脱膜溶液中に含まれる当該熱重合開始剤を高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を用いた測定方法で分離、定量し、1m当たりに換算することにより端部領域およびその他の領域の1m当たりの当該熱重合開始剤の含有量を決定することができる。
[水溶性化合物]
本発明に係る平版印刷版原版の端部領域に含有される水溶性化合物は、20℃における水に対する溶解度が0.1g/L以上の水溶性化合物である。平版印刷版原版の端部領域に水溶性化合物を含有させることにより、機上現像型平版印刷版原版の場合には、湿し水の浸透性が向上し、機上現像が促進されることにより、エッジ汚れが防止されると考えられる。
本発明に係る水溶性化合物の20℃における水に対する溶解度は、1g/L以上が好ましく、10g/L以上がより好ましい。
本発明に係る水溶性化合物としては、ポリオール、ベタイン、有機スルホン酸塩、有機硫酸塩、有機カルボン酸もしくはその塩又はアミノ酸が好ましく例示される。
<ポリオール>
本発明に係る水溶性化合物として用いられるポリオールは、脂肪族ポリオール化合物、脂環族ポリオール化合物、窒素含有複素環式ポリオール化合物を含む。
ポリオールの分子中におけるヒドロキシ基の数は2〜6が適当であり、3〜6が好ましい。
脂肪族ポリオール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、cis−2−ブテン−1,4−ジオール、trans−2−ブテン−1,4−ジオール、ジ−1,2−プロピレングリコール、ジ−1,3−プロピレングリコール、トリ−1,3−プロピレングリコール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、多価カルボン酸と多価アルコールから得られるヒドロキシポリエステル類、多価アルコールとアルキレンオキシドとの縮合物であるヒドロキシポリアルキレンエーテルなどが挙げられる。
脂環族ポリオール化合物としては、シクロヘキサンジメタノール、イノシトールなどが挙げられる。
窒素含有複素環式ポリオール化合物としては、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンなどが挙げられる。
ポリオールの中で、脂肪族ポリオール化合物及び窒素含有複素環式ポリオール化合物が好ましく、脂肪族ポリオール化合物が特に好ましい。
<ベタイン>
本発明に係る水溶性化合物として用いられるベタインとしては、窒素原子に結合する炭化水素基の炭素原子数が1〜5であるベタイン化合物が好ましい。具体的には、トリメチルアンモニウムアセタート(トリメチルグリシン)、ジメチルプロピルアンモニウムアセタート、3−ヒドロキシ−4−トリメチルアンモニオブチラート、4−(1−ピリジニオ)ブチラート、1−ヒドロキシエチル−1−イミダゾリオアセタート、トリメチルアンモニウムメタンスルホナート、ジメチルプロピルアンモニウムメタンスルホナート、3−トリメチルアンモニオ−1−プロパンスルホナート、3−(1−ピリジニオ)−1−プロパンスルホナートなどが挙げられる。
<有機スルホン酸塩>
本発明に係る水溶性化合物として用いられる有機スルホン酸塩は、有機スルファミン酸塩を含み、炭素原子数1〜7の化合物が好ましく、炭素原子数1〜5の化合物がより好ましい。塩はアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩又はリチウム塩)が好ましい。有機スルホン酸塩の具体例としては、メタンスルホン酸ナトリウム、n−ブチルスルホン酸ナトリウム、イソブチルスルホン酸ナトリウム、sec−ブチルスルホン酸ナトリウム、tert−ブチルスルホン酸ナトリウム、n−ペンチルスルホン酸ナトリウム、1、2−ジメチルプロピルスルホン酸ナトリウム、1−エチルプロピルスルホン酸ナトリウム、n−ヘキシルスルホン酸ナトリウム、2−エチルブチルスルホン酸ナトリウム、シクロヘキシルスルホン酸ナトリウム、n−ヘプチルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、2−メチルアリルスルホン酸ナトリウム、n−ブチルスルファミン酸ナトリウム、イソブチルスルファミン酸ナトリウム、tert−ブチルスルファミン酸ナトリウム、n−ペンチルスルファミン酸ナトリウム、1、2−ジメチルプロピルスルファミン酸ナトリウム、1−エチルプロピルスルファミン酸ナトリウム、n−ヘキシルスルファミン酸ナトリウム、2−エチルブチルスルファミン酸ナトリウム、シクロヘキシルスル ファミン酸ナトリウムなどが挙げられる。上記具体例におけるナトリウム塩は、カリウム塩、リチウム塩でもよい。
<有機硫酸塩>
本発明に係る水溶性化合物として用いられる有機硫酸塩は、炭素原子数1〜7の化合物が好ましく、炭素原子数1〜5の化合物がより好ましい。有機硫酸塩はポリエチレンオキシドのアルキル、アルケニル、アルキニル又は複素環モノエーテルの硫酸塩を含む。エチレンオキシド単位は1〜4であるのが好ましい。塩は、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩又はリチウム塩)が好ましい。有機硫酸塩の具体例としては、エチル硫酸ナトリウム、2−メトキシエチル硫酸ナトリウム、2-メトキシエトキシエチル硫酸ナトリウム、2-ビニルオキシエトキシエチル硫酸ナトリウム、2-エチニルオキシエチル硫酸ナトリウム、1−ピペリジルエトキシエチル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
<有機カルボン酸もしくはその塩>
本発明に係る水溶性化合物として用いられる有機カルボン酸もしくはその塩は、炭素原子数1〜6の化合物が好ましく、炭素原子数1〜4の化合物がより好ましい。但し、炭素原子数には、カルボキシ基の炭素原子は含まれない。有機カルボン酸塩は、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩又はリチウム塩)が好ましい。アルカリ金属塩の中で、ナトリウム塩又はカリウム塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。有機カルボン酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸等の脂肪族モノカルボン酸;クロトン酸等の不飽和脂肪族モノカルボン酸;シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸等の脂肪族ジカルボン酸;グリコール酸、乳酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等のオキシカルボン酸;エチレンテトラカルボン酸等の多価カルボン酸が挙げられる。有機カルボン酸の中で、モノカルボン酸、ジカルボン酸、オキシカルボン酸が好ましく、ジカルボン酸、オキシカルボン酸がよりに好ましい。
有機カルボン酸塩としては、上記カルボン酸のアルカリ金属塩が好ましい。より好ましくは、モノカルボン酸、ジカルボン酸、オキシカルボン酸のアルカリ金属塩であり、特に好ましくは、ジカルボン酸、オキシカルボン酸のアルカリ金属塩である。
有機カルボン酸塩の具体例としては、蟻酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、クロトン酸ナトリウム、シュウ酸二ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、アジピン酸二ナトリウム、マレイン酸二ナトリウム、グリコール酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、リンゴ酸二ナトリウム、酒石酸二ナトリウム、酒石酸カリウムナトリウム、クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウムなどが挙げられる。
<アミノ酸>
本発明に係る水溶性化合物として用いられるアミノ酸は、同一分子内にカルボキシル基とアミノ基とを有する所謂アミノ酸、アミノ酸に炭化水素基を導入したN−置換体を含む。
アミノ酸の具体例としては、グリシン、アラニン、β−アラニン、バリン、ロイシン、ノルロイシン、トレオニン、メチオニン、システイン、γ−アミノ酪酸、アスパラギン、ヒドロキシリジン、アルギニン、ヒスチジンなどが挙げられる。
アミノ酸のN−置換体に導入しうる炭化水素基は、炭素数3以下の炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基が挙げられる。アミノ酸に炭化水素基を導入したN−置換体の具体例としては、サルコシン、N,N−ジメチルグリシンなどが挙げられる。
上記水溶性化合物のなかでは、ポリオール、有機硫酸塩、有機スルホン酸塩、ベタインが好ましい。
上記水溶性化合物は、親水性化合物であることが好ましい。親水性化合物は、後述するダレ形状形成時に発生しうるクラックを親水化することにより、そこに印刷インキが溜まることにより生じる汚れを防止する効果を有する。
親水性化合物は、支持体吸着性基を有することが好ましい。支持体吸着性基は、平版印刷版原版の支持体表面に吸着可能な吸着性基であり、好ましい例としては、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基、−PO基、−OPO基、−CONHSO−基、−SONHSO−基、−COCHCOCH基が挙げられる。この中で、−PO基及び−OPO基が特に好ましい。以下に、−PO基及び−OPO基を有する化合物である、リン酸化合物及びホスホン酸化合物について詳しく記載する。
(リン酸化合物)
リン酸化合物は、リン酸、その塩、そのエステルなどを含む。例えば、リン酸、メタリン酸、第一リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムなどが挙げられる。中でも、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムが好ましく用いられる。
リン酸化合物としては、高分子化合物が好ましく、リン酸モノエステル基を有する高分子化合物がより好ましい。塗布性に優れた水溶性化合物含有塗布液が得られる。
リン酸エステル基を有する高分子化合物としては、分子内にリン酸エステル基を有する単量体の1種以上からなる重合体又は、リン酸エステル基を含む1種以上の単量体及びリン酸エステル基を含まない1種以上の単量体との共重合体、リン酸エステル基を有さない高分子にポリマー反応によりリン酸エステル基を導入した高分子などが挙げられる。
リン酸エステル基を有する単量体としては、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2−メタクリロイルオキシポリオキシエチレングリコール)アシッドホスフェート、モノ(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシプロピレングリコールメタクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシ−3−ヒドロキシプロピルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシ−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアシッドホスフェート、アリルアルコールアシッドホスフェートなどが挙げられる。上記単量体の中でも、エッジ汚れ防止を助成する観点から、モノ(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェートが好ましく用いられる。代表的な市販品としては、ライトエステルP-1M(共栄化学(株)製)、ホスマーPE(ユニケミカル(株)製)が挙げられる。
上記共重合体におけるリン酸エステル基を有さない単量体としては、親水性基を有する単量体が好ましい。親水性基としては、例えば、ヒドロキシ基、アルキレンオキシド構造、アミノ基、アンモニウム基、アミド基が挙げられ、中でも、ヒドロキシ基、アルキレンオキシド構造、アミド基が好ましく、炭素数2又は3のアルキレンオキシド単位を1〜20個有するアルキレンオキシド構造がより好ましく、エチレンオキシド単位を2〜10個有するポリエチレンオキシド構造が更に好ましい。例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、ポリ(オキシエチレン)メタクリレート、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリルアミド等が挙げられる。
リン酸エステル基を有する高分子化合物において、リン酸エステル基を有する繰り返し単位の割合は、好ましくは1〜100モル%、より好ましくは5〜100モル%、更に好ましくは10〜100モル%である。
リン酸エステル基を有する高分子化合物の重量平均分子量は、5,000〜1,000,000が好ましく、7,000〜700,000がより好ましく、10,000〜500,000が特に好ましい。
(ホスホン酸化合物)
ホスホン酸化合物は、ホスホン酸、その塩、そのエステルなどを含む。例えば、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、イソプロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸、オクチルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、2−ヒドロキシエチルホスホン酸及びこれらのナトリウム塩又はカリウム塩、メチルホスホン酸メチル、エチルホスホン酸メチル、2−ヒドロキシエチルホスホン酸メチルなどのアルキルホスホン酸モノアルキルエステル及びこれらのナトリウム塩又はカリウム塩、メチレンジホスホン酸、エチレンジホスホン酸等のアルキレンジホスホン酸及びこれらのナトリウム塩又はカリウム塩、ポリビニルホスホン酸が挙げられる。
ホスホン酸化合物としては高分子化合物が好ましい。塗布性に優れた水溶性化合物含有塗布液が得られる。
ホスホン酸化合物として好ましい高分子化合物としては、ポリビニルホスホン酸、分子内にホスホン酸基又はホスホン酸モノエステル基を有する1種以上の単量体からなる重合体、ホスホン酸基又はホスホン酸モノエステル基を有する1種以上の単量体及びホスホン酸基又はホスホン酸モノエステル基を含まない1種以上の単量体との共重合体等が挙げられる。
ホスホン酸基を有する単量体としては、ビニルホスホン酸、エチルホスホン酸モノビニルエステル、アクリロイルアミノメチルホスホン酸、3−メタクリロイルオキシプロピルホスホン酸などが挙げられる。
上記高分子化合物としては、ホスホン酸エステル基を有する単量体の単独重合体、共重合体のどちらも用いられる。共重合体としては、例えば、ホスホン酸エステル基を有する単量体と上記アニオン性基を有する単量体との共重合体や、リン酸エステル基を有する単量体とリン酸エステル基とアニオン性基のどちらも含まない単量体との共重合体が使用できる。
上記共重合体におけるホスホン酸エステル基を有さない単量体としては、親水性基を有する単量体が好ましい。親水性基としては、例えば、ヒドロキシ基、アルキレンオキシド構造、アミノ基、アンモニウム基、アミド基が挙げられ、中でも、ヒドロキシ基、アルキレンオキシド構造、アミド基が好ましく、炭素数2又は3のアルキレンオキシド単位を1〜20個有するアルキレンオキシド構造がより好ましく、エチレンオキシド単位を2〜10個有するポリエチレンオキシド構造が更に好ましい。例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、ポリ(オキシエチレン)メタクリレート、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリルアミドなどが挙げられる。
ホスホン酸エステル基を有する高分子化合物において、ホスホン酸エステル基を有する繰り返し単位の割合は、1〜100モル%、より好ましくは3〜100モル%、更に好ましくは5〜100モル%である。
ホスホン酸エステル基を有する高分子化合物の重量平均分子量は、5,000〜1,000,000が好ましく、7,000〜700,000がより好ましく、10,000〜500,000が特に好ましい。
本発明に係る水溶性化合物は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
本発明に係る水溶性化合物は、本発明に係る平版印刷版原版の端部から内側に5mmまでの領域であって、支持体と画像記録層との間(以下、単に、特定位置とも云う)に含有させることができる。支持体と画像記録層との間に下塗り層が存在する場合には、水溶性化合物は、支持体と下塗り層の間、下塗り層と画像記録層の間のいずれの位置に存在していてもよい。水溶性化合物は、下塗り層と画像記録層の間に存在することが好ましい。水溶性化合物を平版印刷版原版の特定位置に存在させるには、水溶性化合物を含有する塗布液を平版印刷版原版の特定位置に適用することにより行うことができる。具体的な方法については、平版印刷版原版の製造方法として後述する。
本発明に係る平版印刷版原版の特定位置には、水溶性化合物と共に熱重合開始剤を含有させることが好ましい。熱重合開始剤は、平版印刷版原版の製造過程において、エチレン性不飽和基の熱重合を促進し、エチレン性不飽和結合の反応率の向上に寄与する。
本発明に用いられる熱重合開始剤は、エチレン性不飽和基の熱重合を促進し、エチレン性不飽和結合の反応率の向上に寄与する熱重合開始剤であれば、特に限定されない。熱重合開始剤としては、ジアゾ化合物、過酸化物及びオニウム塩化合物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。熱重合開始剤は、10時間半減期温度が35℃〜100℃であることが好ましく、35℃〜80℃であることがより好ましい。
熱重合開始剤は2種以上を併用することもできる。
ジアゾ化合物としては、具体的には、
2,2'-Azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane]dihydrochloride、2,2'-Azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane]disulfate dihydrate、2,2'-Azobis(2-methylpropionamidine)dihydrochloride、2,2'-Azobis(2-methylpropionamidine)dihydrochloride、2,2'-Azobis[N-(2-carboxyethyl)-2-methylpropionamidine]hydrate、2,2'-Azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane]、2,2'-Azobis(1-imino-1-pyrrolidino-2-methylpropane)dihydrochloride、2,2'-Azobis[2-methyl-N-(2-hydroxyethyl)propionamide]
などが挙げられる。
過酸化物としては、具体的には、3−ヒドロキシー1,1−ジメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α―クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ 2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシー2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシネオデカノエート、t−アミルパーオキシピバレートなどが挙げられる。
オニウム塩化合物としては、下記式(4)、式(5)及び式(6)で表されるスルホニウム塩、ヨードニウム塩及びアジニウム塩が好ましい。
Figure 2017007233
式(4)〜(6)中、Ar、Ar、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に式(7)に示す基を表す。R21、R22、R23、R24及びR25はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。また、R21及びR22、R22及びR23はそれぞれ互いに結合して縮環構造を形成してもよい。R26は、アルキル基又はアリール基を表す。Zはアニオンを表す。
式(7)中、R27は、アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を表し、複数のR27は同一であっても異なっていてもよい。mは0〜5の整数を表す。
式(4)中、Ar、Ar及びArは、下記式(10)で表される基であることが好ましい。式(5)中のAr及びArは、下記式(11)で表される基であることが好ましい。
Figure 2017007233
式(10)及び式(11)中、R30はハロゲン原子を表し、複数のR30は同一であっても異なっていてもよい。R31はアルキル基又はアルコキシ基を表し、複数のR31は同一であっても異なっていてもよい。m及びm’はそれぞれ0〜5の整数を表す。
21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR31で表されるアルキル基は、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基が特に好ましい。
具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、及び2−ノルボルニル基が挙げられる。
アルキル基の中で、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t−ブチル基が特に好ましい。
21、R22、R23、R24、R25、R27及びR31がアルコキシ基を示す場合、これはアルキル基−O−で表され、このアルキル基の好ましい態様は、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR31がアルキル基を示す場合における好ましい態様と同様である。
21、R22、R23、R24、R25及びR26が示すアリール基は、炭素数6〜30のアリール基が好ましく、炭素数6〜20のアリール基がより好ましく、炭素数6〜12のアリール基が特に好ましい。
具体的には、例えば、フェニル基、ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−フルオレニル基、ターフェニル基、o−、m−、及びp−トリル基、キシリル基、o−、m−、及びp−クメニル基、メシチル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオレニル基、p−クロロフェニル基、p−ブロモフェニル基、p−フルオロフェニル基、o−クロロフェニル基、o−ブロモフェニル基、o−フルオロフェニル基、p−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、p−ジメチルアミノフェニル基、p−メチルチオフェニル基、m−メチルチオフェニル基、p−フェニルチオフェニル基、2,3−ジフルオロフェニル基、2,3−クロロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,5−ジフルオロフェニル基、2,5−ジクロロフェニル基、2,6−ジフルオロフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基、2,4,6−トリクロロフェニル基、3,4,5−トリフルオロフェニル基、3,4,5−トリクロロフェニル基等が挙げられる。
アリール基の中で、フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−ジメチルアミノフェニル基が特に好ましい。
で表されるアニオンは、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン及びスルホン酸イオンが好ましく、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン及びアリールスルホン酸イオンがより好ましく、ヘキサフルオロホスフェートイオンが特に好ましい。
以下に、オニウム塩化合物の好ましい具体例を挙げる。
式(4)で表される化合物(スルホニウム塩)の例としては、トリフェニルスルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリフェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4−クロロフェニル)フェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4−クロロフェニル)−4−メチルフェニルスルホニウム=テトラフルオロボラート、トリス(4−クロロフェニル)スルホニウム=3,5−ビス(メトキシカルボニル)ベンゼンスルホナート、トリス(4−クロロフェニル)スルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリス(2,4−ジクロロフェニル)スルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、ビス(2,4−ジクロロフェニル)フェニルスルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、ビス(2,4−ジクロロフェニル)4−メトキシフェニルスルホニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
式(5)で表される化合物(ヨードニウム塩)の例としては、ジフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−メトキシフェニル−4−(2−メチルプロピル)フェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−クロロフェニル−4−フェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−(2−メチルプロピル)フェニル−p−トリルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−ヘキシルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−ヘキシルオキシフェニル−2,4−ジエトキシフェニルヨードニウム=テトラフルオロボラート、4−オクチルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=1−ペルフルオロブタンスルホナート、4−オクチルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
式(6)で表される化合物(アジニウム塩)の例としては、1−シクロヘキシルメチルオキシピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−シクロヘキシルオキシ−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−メトキシピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−メトキシ−4−t−ブチルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−メトキシ−4−メトキシピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−エトキシ−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−クロロ−1−シクロヘキシルメチルオキシピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−エトキシ−4−シアノピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、3,4−ジクロロ−1−(2−エチルヘキシルオキシ)ピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−ベンジルオキシ−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−フェネチルオキシ−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=p−トルエンスルホナート、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=ペルフルオロブタンスルホナート、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=ブロミド、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=テトラフルオロボラートが挙げられる。
[平版印刷版原版]
本発明に係る平版印刷版原版は、支持体上に画像記録層を有する。平版印刷版原版は、必要により、支持体と画像記録層との間に下塗り層、画像記録層の上に保護層を有してもよい。
〔画像記録層〕
平版印刷版原版の画像記録層は、その非画像部が、印刷機上で酸性〜アルカリ性の湿し水及び印刷インキの少なくとも1方により除去される画像記録層である。
本発明の1つの態様によれば、画像記録層は、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物及びバインダーポリマーを含有する画像記録層(以下、画像記録層Aともいう)である。
本発明のもう1つの態様によれば、画像記録層は、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物及び微粒子形状の高分子化合物を含有する画像記録層(以下、画像記録層Bともいう)である。
(画像記録層A)
画像記録層Aは、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物及びバインダーポリマーを含有する。以下、画像記録層Aの構成成分について説明する。
<赤外線吸収剤>
赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能と赤外線により励起して後述の重合開始剤に電子移動及び/又はエネルギー移動する機能を有する。本発明において使用される赤外線吸収剤は、波長760〜1200nmに吸収極大を有する染料又は顔料が好ましく、染料がより好ましい。
染料としては、特開2014−104631号公報の段落番号〔0082〕〜〔0088〕に記載のものを使用でき、この内容は本願明細書に組み込まれる。
顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
顔料の粒径は0.01〜1μmが好ましく、0.01〜0.5μmがより好ましい。顔料を分散するには、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)などに記載されている。
赤外線吸収剤は1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
赤外線吸収剤の含有量は、画像記録層の全固形分100質量部に対し、好ましくは0.05〜30質量部、より好ましくは0.1〜20質量部、特に好ましくは0.2〜10質量部である。
<重合開始剤>
重合開始剤は、重合性化合物の重合を開始、促進する化合物である。重合開始剤としては、公知の熱重合開始剤、結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などを使用することができる。具体的には、特開2014−104631号公報の段落番号〔0092〕〜〔0102〕に記載のラジカル重合開始剤を使用でき、この内容は本願明細書に組み込まれる。
重合開始剤の中で、好ましい化合物として、オニウム塩、なかでもヨードニウム塩及びスルホニウム塩が挙げられる。それぞれの塩の中で好ましい具体的化合物は、特開2014−104631号公報の段落番号〔0104〕〜〔0106〕に記載の化合物と同じであり、この内容は本願明細書に組み込まれる。
重合開始剤の含有量は、画像記録層の全固形分に対して0.1〜50質量%が好ましく、0.5〜30質量%がより好ましく、0.8〜20質量%が特に好ましい。この範囲でより良好な感度と印刷時の非画像部のより良好な汚れ難さが得られる。
<重合性化合物>
重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物などの化学的形態を有する。具体的には、特開2014−104631号公報の段落番号〔0109〕〜〔0113〕に記載の重合性化合物を使用でき、この内容は本願明細書に組み込まれる。
上記の中でも、機上現像性に関与する親水性と耐刷性に関与する重合能のバランスに優れる点から、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ビス(アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどのイソシアヌル酸エチレンオキシド変性アクリレート類が特に好ましい。
重合性化合物の構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な平版印刷版原版の性能設計にあわせて任意に設定できる。重合性化合物は、画像記録層の全固形分に対して、好ましくは5〜75質量%、更に好ましくは10〜70質量%、特に好ましくは15〜60質量%の範囲で使用される。
<バインダーポリマー>
バインダーポリマーは、主として画像記録層の膜強度を向上させる目的で用いられる。バインダーポリマーは、従来公知のものを使用でき、皮膜性を有するポリマーが好ましい。なかでも、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂などが好ましい。
好適なバインダーポリマーとしては、特開2008−195018号公報に記載のような、画像部の皮膜強度を向上するための架橋性官能基を主鎖又は側鎖、好ましくは側鎖に有しているものが挙げられる。架橋性基によってポリマー分子間に架橋が形成され、硬化が促進する。
架橋性官能基としては、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基、スチリル基などのエチレン性不飽和基やエポキシ基等が好ましく、架橋性官能基は高分子反応や共重合によってポリマーに導入することができる。例えば、カルボキシ基を側鎖に有するアクリルポリマーやポリウレタンとグリシジルメタクリレートとの反応、あるいはエポキシ基を有するポリマーとメタクリル酸などのエチレン性不飽和基含有カルボン酸との反応を利用できる。
バインダーポリマー中の架橋性基の含有量は、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは0.25〜7.0mmol、特に好ましくは0.5〜5.5mmolである。
また、バインダーポリマーは親水性基を有することが好ましい。親水性基は画像記録層に機上現像性を付与するのに寄与する。特に、架橋性基と親水性基を共存させることにより、耐刷性と機上現像性の両立が可能になる。
親水性基としては、たとえば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルキレンオキシド構造、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、スルホ基、リン酸基等などがあり、なかでも、炭素数2または3のアルキレンオキシド単位を1〜9個有するアルキレンオキシド構造が好ましい。バインダーポリマーに親水性基を付与するには、例えば、親水性基を有するモノマーを共重合することにより行うことできる。
バインダーポリマーには、着肉性を制御するため、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基などの親油性の基を導入することもできる。例えば、メタクリル酸アルキルエステなどの親油性基含有モノマーを共重合することにより行うことできる。
バインダーポリマーは、質量平均分子量(Mw)が2000以上であることが好ましく、5000以上であることがより好ましく、1万〜30万であることが更に好ましい。
バインダーポリマーの含有量は、画像記録層の全固形分に対して、3〜90質量%が適当であり、5〜80質量%が好ましく、10〜70質量%がより好ましい。
バインダーポリマーの好ましい例として、ポリオキシアルキレン鎖を側鎖に有する高分子化合物が挙げられる。ポリオキシアルキレン鎖を側鎖に有する高分子化合物(以下、特定高分子化合物ともいう)を画像記録層に含有することにより、湿し水の浸透性が促進され、機上現像性が向上する。
特定高分子化合物の主鎖を構成する樹脂としては、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノボラック型フェノール系樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴムが挙げられ、特にアクリル樹脂が好ましい。
特定高分子化合物は、パーフルオロアルキル基を実質的に含まないものである。「パーフルオロアルキル基を実質的に含まない」とは、高分子化合物中のパーフルオロアルキル基として存在するフッ素原子の質量比が0.5質量%より少ないものであり、含まないものが好ましい。フッ素原子の質量比は元素分析法により測定される。
また、「パーフルオロアルキル基」とは、アルキル基の全ての水素原子がフッ素原子で置換され基である。
ポリオキシアルキレン鎖におけるアルキレンオキサイド(オキシアルキレン)としては炭素原子数が2〜6のアルキレンオキサイドが好ましく、エチレンオキサイド(オキシエチレン)又はプロピレンオキサイド(オキシプロピレン)がより好ましく、エチレンオキサイドが更に好ましい。
ポリオキシアルキレン鎖、すなわち、ポリ(アルキレンオキサイド)部位におけるアルキレンオキサイドの繰返し数は2〜50が好ましく、4〜25がより好ましい。
アルキレンオキサイドの繰り返し数が2以上であれば湿し水の浸透性が十分向上し、また、繰り返し数が50以下であれば摩耗による耐刷性が低下することがなく、好ましい。
ポリ(アルキレンオキサイド)部位については、特開2014−104631号公報の段落番号〔0060〕〜〔0062〕に記載の構造が好ましく、この内容は本願明細書に組み込まれる。
特定高分子化合物は、画像部の皮膜強度を向上するために、架橋性を有していてもよい。架橋性を有する特定高分子化合物については、特開2014−104631号公報の段落番号〔0063〕〜〔0072〕に記載されており、この内容は本願明細書に組み込まれる。
特定高分子化合物を構成する全繰り返し単位に対する、ポリ(アルキレンオキサイド)部位を有する繰り返し単位の比率は、特に限定されないが、好ましくは0.5〜80モル%、より好ましくは0.5〜50モル%である。特定高分子化合物の具体例は、特開2014−104631号公報の段落番号〔0075〕〜〔0076〕に記載のものが挙げられ、この内容は本願明細書に組み込まれる。
特定高分子化合物は必要に応じて、特開2008−195018号公報に記載のポリアクリル酸、ポリビニルアルコールなどの親水性高分子化合物を併用することができる。また、親油的な高分子化合物と親水的な高分子化合物を併用することもできる。
特定高分子化合物の画像記録層中での形態は、画像記録層成分のつなぎの機能を果たすバインダーとして存在する以外に、微粒子の形状で存在してもよい。微粒子形状で存在する場合には、平均粒径は10〜1000nmの範囲であり、好ましくは20〜300nmの範囲であり、特に好ましくは30〜120nmの範囲である。
特定高分子化合物の含有量は、画像記録層の全固形分に対して、好ましくは3〜90質量%、より好ましくは5〜80質量%である。3〜90質量%の範囲で、湿し水の浸透性と画像形成性をより確実に両立させることができる。
バインダーポリマーの他の好ましい例として、6官能以上10官能以下の多官能チオールを核として、この核に対しスルフィド結合により結合したポリマー鎖を有し、当該ポリマー鎖が重合性基を有する高分子化合物(以下、星型高分子化合物ともいう)が挙げられる。星型高分子化合物としては、例えば、特開2012−148555号公報に記載の化合物を好ましく用いることができる。
星型高分子化合物は、特開2008−195018号公報に記載のような画像部の皮膜強度を向上するためのエチレン性不飽和結合等の重合性基を、主鎖又は側鎖、好ましくは側鎖に有しているものが挙げられる。重合性基によってポリマー分子間に架橋が形成され、硬化が促進する。
重合性基としては、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基、スチリル基などのエチレン性不飽和基やエポキシ基等が好ましく、(メタ)アクリル基、ビニル基、スチリル基が重合反応性の観点でより好ましく、(メタ)アクリル基が特に好ましい。これらの基は高分子反応や共重合によってポリマーに導入することができる。例えば、カルボキシ基を側鎖に有するポリマーとグリシジルメタクリレートとの反応、あるいはエポキシ基を有するポリマーとメタクリル酸などのエチレン性不飽和基含有カルボン酸との反応を利用できる。これらの基は併用してもよい。
星型高分子化合物中の架橋性基の含有量は、星型高分子化合物1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは0.25〜7.0mmol、最も好ましくは0.5〜5.5mmolである。
また、星型高分子化合物は、更に親水性基を有することが好ましい。親水性基は画像記録層に機上現像性を付与するのに寄与する。特に、重合性基と親水性基を共存させることにより、耐刷性と機上現像性の両立が可能になる。
親水性基としては、−SO、−OH、−CONR(Mは水素、金属イオン、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、を表し、R、Rは各々独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基を表す。RとRは結合して環を形成してもよい。)、−N(R〜Rは、各々独立して炭素数1〜8のアルキル基を表し、Xはカウンターアニオンを表す)、下記一般式(1)で表される基及び一般式(2)で表される基が挙げられる。
Figure 2017007233
上式中、n及びmは、それぞれ独立に、1〜100の整数を表し、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基を表す。
ここで、星型高分子化合物が、ポリオキシアルキレン鎖(例えば、上記一般式(1)又は(2)で表される基)を側差に有している星型高分子化合物である場合、このような星型高分子化合物は、上記ポリオキシアルキレン鎖を側鎖に有する高分子化合物でもある。
これら親水性基の中でも、−CONR、一般式(1)で表される基及び一般式(2)で表される基が好ましく、−CONR及び一般式(1)で表される基がより好ましく、一般式(1)で表される基が特に好ましい。更に一般式(1)で表される基の中でも、nは1〜10がより好ましく、1〜4が特に好ましい。また、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、水素原子又はメチル基が特に好ましい。これら親水性基は2種以上を併用してもよい。
また、星型高分子化合物は、カルボン酸基、リン酸基、ホスホン酸基を実質的に持たないことが好ましい。具体的には0.1mmol/gより少ないことが好ましく、0.05mmol/gより少ないことがより好ましく、0.03mmol/g以下であることが特に好ましい。これらの酸基が0.1mmol/gより少ないと現像性がより向上する。
また、星型高分子化合物には、着肉性を制御するため、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基などの親油性の基を導入できる。具体的には、メタクリル酸アルキルエステなどの親油性基含有モノマーを共重合すればよい。
星型高分子化合物の具体例としては、特開2014−104631号公報の段落番号〔0153〕〜〔0157〕に記載されている化合物が挙げられ、この内容は本願明細書に組み込まれる。
星型高分子化合物は、上記の多官能チオール化合物の存在下で、ポリマー鎖を構成する上記モノマーをラジカル重合するなど、公知の方法によって合成することができる。
星型高分子化合物の質量平均分子量(Mw)は、5000以上50万以下が好ましく、1万以上25万以下がより好ましく、2万以上15万以下が特に好ましい。この範囲において、機上現像性と耐刷性がより良好になる。
星型高分子化合物は、1種類を単独で使用してもよいし2種類以上を混合して使用してもよい。また、通常の直鎖型バインダーポリマーと併用してもよい。
星型高分子化合物の含有率は、画像記録層の全固形分に対し、5〜95質量%が好ましく、10〜90質量%以下がより好ましく、15〜85質量%以下が特に好ましい。
特に、湿し水の浸透性が促進され、機上現像性が向上することから、特開2012−148555号公報に記載の星型高分子化合物が好ましい。
<その他の成分>
画像記録層Aには、必要に応じて、以下に記載するその他の成分を含有させることができる。
(1)低分子親水性化合物
画像記録層は、耐刷性を低下させることなく機上現像性を向上させるために、低分子親水性化合物を含有してもよい。
低分子親水性化合物としては、例えば、水溶性有機化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類及びそのエーテル又はエステル誘導体類、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のポリオール類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等の有機アミン類及びその塩、アルキルスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸類及びその塩、アルキルスルファミン酸等の有機スルファミン酸類及びその塩、アルキル硫酸、アルキルエーテル硫酸等の有機硫酸類及びその塩、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸類及びその塩、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸類等の有機カルボン酸類及びその塩、ベタイン類、等が挙げられる。
これらの中でも、ポリオール類、有機硫酸塩類、有機スルホン酸塩類、ベタイン類の群から選ばれる少なくとも一つを含有させることが好ましい。
有機スルホン酸塩の具体的な化合物としては、特開2007−276454号公報の段落番号[0026]〜[0031]、特開2009−154525号公報の段落番号[0020]〜[0047]に記載の化合物などが挙げられる。塩は、カリウム塩、リチウム塩でもよい。
有機硫酸塩としては、特開2007−276454号公報の段落番号[0034]〜[0038]に記載の化合物が挙げられる。
ベタイン類としては、窒素原子への炭化水素置換基の炭素原子数が1〜5である化合物が好ましく、具体例としては、トリメチルアンモニウムアセタート、ジメチルプロピルアンモニウムアセタート、3−ヒドロキシ−4−トリメチルアンモニオブチラート、4−(1−ピリジニオ)ブチラート、1−ヒドロキシエチル−1−イミダゾリオアセタート、トリメチルアンモニウムメタンスルホナート、ジメチルプロピルアンモニウムメタンスルホナート、3−トリメチルアンモニオ−1−プロパンスルホナート、3−(1−ピリジニオ)−1−プロパンスルホナートなどが挙げられる。
低分子親水性化合物は、疎水性部分の構造が小さいため、湿し水が画像記録層露光部(画像部)へ浸透して画像部の疎水性や皮膜強度を低下させることがなく、画像記録層のインキ受容性や耐刷性を良好に維持できる。
低分子親水性化合物の添加量は、画像記録層全固形分量の0.5〜20質量%が好ましい。1〜15質量%がより好ましく、2〜10質量%が更に好ましい。この範囲で良好な機上現像性と耐刷性が得られる。
化合物は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
(2)感脂化剤
画像記録層には、着肉性を向上させるために、ホスホニウム化合物、含窒素低分子化合物、アンモニウム基含有ポリマーなどの感脂化剤を用いることができる。特に、保護層に無機質層状化合物を含有させる場合には、これらの化合物は、無機質層状化合物の表面被覆剤として機能し、無機質層状化合物による印刷途中の着肉性低下を防止する作用を有する。
ホスホニウム化合物、含窒素低分子化合物、アンモニウム基含有ポリマーは、特開2014−104631号公報の段落番号〔0184〕〜〔0190〕に具体的に記載されており、この内容は本願明細書に組み込まれる。
感脂化剤の含有量は、画像記録層の全固形分に対して0.01〜30.0質量%が好ましく、0.1〜15.0質量%がより好ましく、1〜10質量%が更に好ましい。
(3)その他
画像記録層は、その他の成分として、更に、界面活性剤、着色剤、焼き出し剤、重合禁止剤、高級脂肪酸誘導体、可塑剤、無機微粒子、無機質層状化合物、共増感剤、連鎖移動剤などを含有することができる。具体的には、特開2008−284817号公報の段落番号[0114]〜[0159]、特開2006−091479号公報の段落番号[0023]〜[0027]、米国特許公開2008/0311520号明細書の段落番号[0060]に記載の化合物及び添加量を好ましく用いることができる。
<画像記録層Aの形成>
画像記録層Aは、例えば、特開2008−195018号公報の段落番号[0142]〜[0143]に記載のように、必要な上記各成分を公知の溶剤に分散又は溶解して塗布液を調製し、この塗布液を支持体上に直接又は下塗り層を介して、バーコーター塗布など公知の方法で塗布し、乾燥することで形成される。塗布、乾燥後に得られる支持体上の画像記録層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、通常0.3〜3.0g/mが好ましい。この範囲で、良好な感度と画像記録層の良好な皮膜特性が得られる。
(画像記録層B)
画像記録層Bは、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物及び微粒子形状の高分子化合物を含有する。以下、画像記録層Bの構成成分について説明する。
画像記録層Bにおける赤外線吸収剤、重合開始剤及び重合性化合物に関しては、画像記録層Aにおいて記載した赤外線吸収剤、重合開始剤及び重合性化合物を同様に用いることができる。
<微粒子形状の高分子化合物>
微粒子形状の高分子化合物は、重合性基を有するポリマー微粒子、疎水性化合物を内包しているマイクロカプセル、及びミクロゲル(架橋ポリマー微粒子)から選ばれることが好ましい。なかでも、重合性基を有するポリマー微粒子及びミクロゲルが好ましい。特に好ましい実施形態では、微粒子形状の高分子化合物は少なくとも1つのエチレン性不飽和重合性基を含む。このような微粒子形状の高分子化合物の存在により、露光部の耐刷性及び未露光部の機上現像性を高める効果が得られる。
マイクロカプセルとしては、例えば、特開2001−277740号公報、特開2001−277742号公報に記載のごとく、画像記録層の構成成分の少なくとも一部をマイクロカプセルに内包させたものである。画像記録層の構成成分は、マイクロカプセル外にも含有させることもできる。マイクロカプセルを含有する画像記録層は、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包し、親水性の構成成分をマイクロカプセル外に含有する構成が好ましい態様である。
ミクロゲル(架橋ポリマー微粒子)は、その表面又は内部の少なくとも一方に、画像記録層の構成成分の一部を含有することができる。特に、ラジカル重合性基をその表面に有する反応性ミクロゲルは、画像形成感度や耐刷性の観点から好ましい。
画像記録層の構成成分をマイクロカプセル化又はミクロゲル化するには、公知の方法が適用できる。
微粒子形状の高分子化合物の平均粒径は、0.01〜3.0μmが好ましく、0.03〜2.0μmがより好ましく、0.10〜1.0μmが更に好ましい。この範囲で良好な解像度と経時安定性が得られる。微粒子形状の高分子化合物の平均粒径は動的光散乱法により測定することができる。例えば、測定装置としては、FPAR−1000(大塚電子(株)製)などが用いられる。
微粒子形状の高分子化合物の含有量は、画像記録層全固形分の5〜90質量%が好ましい。
<その他の成分>
画像記録層Bには、必要に応じて、上記画像記録層Aにおいて記載したその他の成分を含有させることができる。
<画像記録層Bの形成>
画像記録層Bの形成に関しては、上記画像記録層Aの形成の記載を適用することができる。
以下に、平版印刷版原版の他の構成要素について記載する。
〔下塗り層〕
平版印刷版原版は、画像記録層と支持体との間に、必要により、下塗り層を設けることができる。下塗り層は、露光部においては支持体と画像記録層との密着を強化し、未露光部においては画像記録層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、耐刷性を損なわず機上現像性を向上させるのに寄与する。また、赤外線レーザー露光の場合は、下塗り層が断熱層として機能することにより、露光により発生した熱が支持体に拡散して感度が低下するのを防ぐ作用を有する。
下塗り層に用いる化合物としては、具体的には、特開平10−282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2−304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物が挙げられる。好ましいものとして、特開2005−125749号公報及び特開2006−188038号公報に記載のごとき、支持体表面に吸着可能な吸着性基、親水性基、及び架橋性基を有する高分子化合物が挙げられる。このような高分子化合物としては、吸着性基を有するモノマー、親水性基を有するモノマー、及び架橋性基を有するモノマーの共重合体であることが好ましい。より具体的には、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基、−PO、−OPO、−CONHSO−、−SONHSO−、−COCHCOCHなどの吸着性基を有するモノマーと、スルホ基などの親水性基を有するモノマーと、更にメタクリル基、アリル基などの重合性の架橋性基を有するモノマーとの共重合体が挙げられる。高分子化合物は、高分子化合物の極性置換基と、対荷電を有する置換基及びエチレン性不飽和結合を有する化合物との塩形成で導入された架橋性基を有してもよい。また、上記以外のモノマー、好ましくは親水性モノマーが更に共重合されていてもよい。
下塗り層用高分子化合物中の不飽和二重結合の含有量は、高分子化合物1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは2.0〜5.5mmolである。
下塗り層用高分子化合物は、質量平均分子量が5000以上であるのが好ましく、1万〜30万であるのがより好ましい。
下塗り層は、上記下塗り層用化合物の他に、経時における汚れ防止のため、キレート剤、第2級又は第3級アミン、重合禁止剤、アミノ基又は重合禁止能を有する官能基とアルミニウム支持体表面と相互作用する基とを有する化合物など(例えば、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、2,3,5,6−テトラヒドロキシ−p−キノン、クロラニル、スルホフタル酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸など)を含有することができる。
下塗り層は、公知の方法で塗布される。下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1〜100mg/mが好ましく、1〜30mg/mがより好ましい。
〔支持体〕
平版印刷版原版の支持体としては、公知の支持体が用いられる。なかでも、公知の方法で粗面化処理され、陽極酸化処理されたアルミニウム板が好ましい。
アルミニウム板には、必要に応じて、特開2001−253181号公報や特開2001−322365号公報に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理や封孔処理、及び米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号及び同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケートあるいは米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号及び同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸などによる表面親水化処理を適宜選択して行うことができる。
支持体は、中心線平均粗さが0.10〜1.2μmであることが好ましい。
支持体には必要に応じて、裏面に、特開平5−45885号公報に記載されている有機高分子化合物、特開平6−35174号公報に記載されているケイ素のアルコキシ化合物を含むバックコート層を設けることができる。
〔保護層〕
平版印刷版原版は、画像記録層の上に、必要により、保護層を設けることができる。保護層は酸素遮断によって画像形成阻害反応を抑制する機能の他、画像記録層における傷の発生防止、及び高照度レーザー露光時のアブレーション防止の機能を有する。
このような機能を有する保護層については、特開2014−104631号公報の段落番号〔0202〕〜〔0204〕に記載のものを使用でき、この内容は本願明細書に組み込まれる。
保護層は、公知の方法で塗布される。保護層の塗布量は、乾燥後の塗布量で、0.01〜10g/mが好ましく、0.02〜3g/mがより好ましく、0.02〜1g/mが特に好ましい。
[平版印刷版原版の製造方法]
上述のとおり、本発明に係る平版印刷版原版は、特定位置に水溶性化合物を含有する構成を有することが特徴である。この様な構成を有する平版印刷版原版が得られる限り、平版印刷版原版の製造方法は特に限定されるものではない。以下に、本発明に係る平版印刷版原版の製造方法を例示する。
水溶性化合物を平版印刷版原版の特定位置に導入するには、平版印刷版原版の製造過程において、上記水溶性化合物を含有する塗布液を平版印刷版原版の特定位置に適用することにより行うことができる。水溶性化合物を含有する塗布液を平版印刷版原版の特定位置に適用する時期は、平版印刷版原版の製造過程において、画像記録層の塗布以前であればよい。平版印刷版原版の裁断は、平版印刷版原版の製造過程において、水溶性化合物を含有する塗布液を平版印刷版原版の特定位置に適用した後、平版印刷版原版の端部領域が形成されるように行うことができる。ここで、端部領域に対応する位置とは、裁断後の平版印刷版原版において、端部から内側に5mmまでの画像記録層側版面の領域を形成し得る位置を意味する。従って、端部領域に対応する位置は、平版印刷版原版の製造過程においては、平版印刷版原版の端付近の位置であっても、平版印刷版原版の中央付近の位置であってもよい。後者の場合、水溶性化合物塗布領域に従って端部領域が形成されるように裁断することにより、端部領域を有する2枚の平版印刷版原版が得られる。
平版印刷版原版の製造方法としては、例えば、以下の方法が好ましく例示される。
支持体上に、画像記録層を有する平版印刷版原版においては、
上記画像記録層を形成する画像記録層形成工程a、
上記水溶性化合物を含有する塗布液を、工程aで形成される上記画像記録層の一部の領域と重なるように塗布する塗布工程b、及び、
上記塗布液を塗布した領域が、裁断後の平版印刷版原版の端部から内側に5mmまでの画像記録層側版面の範囲にあるように裁断する裁断工程cを、
上記支持体上に、工程b、工程aの順で行い、その後工程cを行う平版印刷版原版の製造方法が挙げられる。
支持体上に、下塗り層及び画像記録層をこの順に有する平版印刷版原版においては、
上記画像記録層を形成する画像記録層形成工程a、
上記水溶性化合物を含有する塗布液を、工程aで形成される上記画像記録層の一部の領域と重なるように塗布する塗布工程b、
上記塗布液を塗布した領域が、裁断後の平版印刷版原版の端部から内側に5mmまでの画像記録層側版面の範囲にあるように裁断する裁断工程c、及び
上記下塗り層を形成する下塗り層形成工程dを、
上記支持体上に、工程b、工程d、工程aの順で行うか、工程d、工程b、工程aの順で行い、その後工程cを行う平版印刷版原版の製造方法が挙げられる。
支持体上に、下塗り層、画像記録層及び保護層をこの順に有する平版印刷版原版においては、
上記画像記録層を形成する画像記録層形成工程a、
上記水溶性化合物を含有する塗布液を、工程aで形成される上記画像記録層の一部の領域と重なるように塗布する塗布工程b、
上記塗布液を塗布した領域が、裁断後の平版印刷版原版の端部から内側に5mmまでの画像記録層側版面の範囲にあるように裁断する裁断工程c、
上記下塗り層を形成する下塗り層形成工程d、及び、
上記保護層を形成する保護層形成工程eを、
上記支持体上に、工程b、工程d、工程a、工程eの順で行うか、工程d、工程b、工程a、工程eの順で行い、その後工程cを行う平版印刷版原版の製造方法が挙げられる。
上記構成層を形成する工程は、少なくとも、構成層を塗布する工程を含む。構成層を塗布した後、塗布層を乾燥する工程は、構成層を形成する工程には必ずしも必要ではない。例えば、支持体上に下塗り層を塗布した後、乾燥することなく、水溶性化合物を含有する塗布液を塗布することができる。この場合、水溶性化合物は下塗り層の上だけでなく、下塗り層中にも存在すると考えられる。
〔水溶性化合物含有塗布液〕
水溶性化合物含有塗布液は、先に記載した水溶性化合物を含有する塗布液である。水溶性化合物含有塗布液は、主として水からなる媒体中に水溶性化合物が溶解した水溶液の形態を有する。
水溶性化合物含有塗布液は、また、水溶性樹脂を含有することが好ましい。水溶性樹脂は、上記親水性化合物と同様に、後述するダレ形状形成時に発生しうるクラックを親水化することにより、そこに印刷インキが溜まることにより生じる汚れを防止する効果を有する。水溶性樹脂としては、支持体吸着性基を有さない水溶性樹脂であり、多糖類として分類される水溶性樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミドおよびその共重合体、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
多糖類としては、澱粉誘導体(例えば、デキストリン、酵素分解デキストリン、ヒドロキシプロピル化澱粉、カルボキシメチル化澱粉、リン酸エステル化澱粉、ポリオキシアルキレングラフト化澱粉、サイクロデキストリン)、セルロース類(例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルプロピルセルロース)、カラギーナン、アルギン酸、グァーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、アラビアガム、大豆多糖類等が挙げられる。
水溶性樹脂の中で、デキストリン、ポリオキシアルキレングラフト化澱粉等の澱粉誘導体、アラビアガム、カルボキシメチルセルロース、大豆多糖類等が好ましく用いられる。
水溶性樹脂は2種以上組み合わせても用いてもよい。水溶性樹脂の含有量は、水溶性化合物含有塗布液の全質量に基づいて、好ましくは0.5〜30質量%、より好ましくは1〜10質量%である。この範囲で、上記水溶性樹脂の効果が良好に達成される。
水溶性化合物含有塗布液は、上記熱重合開始剤を含有することも好ましい。水溶性化合物含有塗布液における熱重合開始剤の含有量は、水溶性化合物含有塗布液の全質量に基づいて、0.01〜3.0質量%が好ましく、0.01〜0.3質量%がより好ましく、0.01〜0.05質量%が特に好ましい。
水溶性化合物含有塗布液は、更に、界面活性剤、有機溶剤、可塑剤、その他の添加剤を含有していてもよい。
(界面活性剤)
水溶性化合物含有塗布液に用いられる界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤が好ましい。界面活性剤は、水溶性化合物含有塗布液の塗布性の調整に寄与する。
アニオン性界面活性剤としては、特開2014−104631号公報の段落番号〔0022〕にアニオン型界面活性剤として記載されている化合物が挙げられ、この内容は本願明細書に組み込まれる。
アニオン性界面活性剤の中で、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステル塩類及びアルキルナフタレンスルホン酸塩類が好ましく用いられる。
具体的には、下記一般式(I−A)又は一般式(I−B)で表されるアニオン性界面活性剤を好ましく挙げることができる。
Figure 2017007233
一般式(I−A)中、Rは直鎖または分岐鎖の炭素原子数1〜20のアルキル基を表し、pは0、1または2を表し、Arは炭素原子数6から10のアリール基を表し、qは、1、2または3を表し、M は、Na、K、LiまたはNH を表す。pが2の場合、複数存在するRは互いに同じでも異なっていてもよい。
一般式(I−B)中、Rは直鎖または分岐鎖の炭素原子数1〜20のアルキル基を表し、mは0、1または2を表し、Arは炭素原子数6〜10のアリール基を表し、Yは単結合または炭素原子数1〜10のアルキレン基を表し、Rは直鎖または分岐鎖の炭素原子数1〜5のアルキレン基を表し、nは1〜100の整数を表し、M は、Na、K、LiまたはNH を表す。mが2の場合、複数存在するRは互いに同じでも異なっていてもよく、nが2以上の場合、複数存在するRは互いに同じでも異なっていてもよい。
一般式(I−A)及び一般式(I−B)中、R及びRの好ましい例としては、CH、C、CまたはCが挙げられる。Rの好ましい例としては、それぞれ−CH−、−CHCH−、−CHCHCH−、−CHCH(CH)−が挙げられ、より好ましい例としては−CHCH−が挙げられる。p及びmは0または1であることが好ましく、pは0であることが特に好ましい。Yは単結合であることが好ましい。nは1〜20の整数であることが好ましい。
一般式(I−A)又は一般式(I−B)で表されるアニオン性界面活性剤の具体例を以下に示す。
Figure 2017007233
非イオン性界面活性剤としては、特開2014−104631号公報の段落番号〔0031〕に非イオン型界面活性剤として記載されている化合物が挙げられ、この内容は本願明細書に組み込まれる。
非イオン性界面活性剤の中で、ポリオキシエチレンアリールエーテル類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体類等が好ましく用いられる。
具体的には、下記一般式(II−A)で表される非イオン性界面活性剤を好ましく挙げることができる。
Figure 2017007233
一般式(II−A)中、Rは水素原子または炭素原子数1〜20のアルキル基を表し、sは0、1または2を表し、Arは炭素原子数6〜10のアリール基を表し、t及びuはそれぞれ0〜100の整数を表し、t及びuの双方が0であることはない。sが2の場合、複数存在するRは互いに同じでも異なっていてもよい。
一般式(II−A)で表される化合物は、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンメチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、ポリオキシエチレンメチルナフチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルナフチルエーテル、ホリオキシエチレンノニルナフチルエーテル等を包含する。
一般式(II−A)で表される化合物において、ポリオキシエチレン鎖の繰り返し単位数(t)は、好ましくは2〜50、より好ましくは4〜30であり、ポリオキシプロピレン鎖の繰り返し単位数(u)は、好ましくは0〜10、より好ましくは0〜5である。ポリオキシエチレン部とポリオキシプロピレン部はランダムでもブロックとして存在してもよい。
一般式(II−A)で表される非イオン性界面活性剤の具体例を示す。下記例示化合物「Y−5」におけるオキシエチレン繰り返し単位及びオキシプロピレン繰り返し単位は、ランダム結合、ブロック連結のいずれの態様もとりうる。
Figure 2017007233
Figure 2017007233
界面活性剤は2種以上併用することもできる。例えば、互いに異なる2種以上のアニオン性界面活性剤の併用、互いに異なる2種以上の非イオン性界面活性剤の併用、アニオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤の併用が挙げられる。
水溶性化合物含有塗布液における界面活性剤の含有量は、塗布液の全質量に基づいて、0.01〜20質量%が好ましく、0.1〜15質量%がより好ましい。
(有機溶剤)
有機溶剤は、水溶性樹脂の溶解度調整、画像記録層の膨潤を促進する目的で含有させることができる。有機溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アミド系溶剤、炭化水素系溶剤等が挙げられる。有機溶剤の中で、アルコール系溶剤及び炭化水素系溶剤が好ましく用いられる。
アルコール系溶剤としては、メチルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、ジアセトンアルコール、1−メトキシ−2−プロパノール、フルフリルアルコール、2−オクタノール、2−エチルヘキサノール、ノナノール、n−デカノール、ウンデカノール、n−ドデカノール、トリメチルノニルアルコール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、エチレングリコールモノイソアミルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル等が挙げられる。
好ましくは、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、フルフリルアルコールである。
炭化水素系溶剤としては、石油留分の芳香族又は脂肪族化合物(ミネラルスピリット)、スクワラン等が挙げられる。
有機溶剤は2種以上組み合わせても用いてもよい。有機溶剤の含有量は、水溶性化合物含有塗布液含有塗布液の全質量に基づいて、好ましく0.5〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%である。この範囲で、上記有機溶剤の効果が、良好に達成される。
(可塑剤)
可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ジノニルフタレート、ジデシルフタレート、ジラウリルフタレート、ブチルベンジルフタレートなどのフタル酸ジエステル類、ジオクチルアジペート、ブチルグリコールアジペート、ジオクチルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ(2−エチルヘキシル)セバケート、ジオクチルセバケートなどの脂肪族二塩基酸エステル類、エポキシ化大豆油などのエポキシ化トリグリセリド類、トリクレジルフォスフェート、トリオクチルフォスフェート、トリスクロルエチルフォスフェートなどの燐酸エステル類、安息香酸ベンジルなどの安息香酸エステル類などの凝固点が15℃以下の可塑剤が含まれる。
可塑剤は2種以上組み合わせても用いてもよい。可塑剤の含有量は水溶性化合物含有塗布液の全質量に基づいて、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%である。
(その他の添加剤)
水溶性化合物含有塗布液は、上記の他に、硝酸塩、硫酸塩などの無機塩、防腐剤、消泡剤等を含有してもよい。
無機塩としては、硝酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸ニッケル等が挙げられる。
防腐剤としては、フェノール又はその誘導体、ホルマリン、イミダゾール誘導体、デヒドロ酢酸ナトリウム、4−イソチアゾリン−3−オン誘導体、ベンゾイソチアゾリン−3−オン、ベンズトリアゾール誘導体、アミジングアニジン誘導体、四級アンモニウム塩類、ピリジン、キノリン、グアニジン等の誘導体、ダイアジン、トリアゾール誘導体、オキサゾール、オキサジン誘導体、ニトロブロモアルコール系の2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3ジオール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−エタノール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−プロパノール等が挙げられる。
消泡剤としては一般的なシリコン系の自己乳化タイプ、乳化タイプ、HLB5以下のノニオン性界面活性剤を使用することができる。
<水溶性化合物含有塗布液の調製>
水溶性化合物含有塗布液は、水溶性化合物などの成分、及び必要に応じて使用する添加剤を水(蒸留水、イオン交換水、脱塩水など)に添加して調製される。
水溶性化合物含有塗布液における水溶性化合物の含有量は、好ましくは0.05〜50質量%、より好ましくは、0.1〜30質量%、特に好ましくは、0.2〜10質量%である。
水溶性化合物含有塗布液の粘度は、25℃において、好ましくは0.5〜1000mPa・s、より好ましくは1〜100mPa・sである。粘度が上記範囲内であると、ビード破断が起きにくくなり、塗布開始時の塗り付けが良好となる点で好ましい。
水溶性化合物含有塗布液の表面張力は、25℃において、好ましくは25〜70mN/m、より好ましくは40〜65mN/mであることがより好ましい。表面張力が上記範囲内であると、塗布幅の制御がしやすく、ビード破断が起きにくくなる点で好ましい。
〔水溶性化合物含有塗布液の塗布〕
水溶性化合物含有塗布液は、上記のように、平版印刷版原版の製造過程において、端部領域に対応する位置に塗布される。塗布幅については、端部又は端部に相当する位置から5mmまでの領域が好ましく、3mmまでの領域がより好ましい。
水溶性化合物含有塗布液の塗布には、ダイコート法、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スライドコート法、インクジェット法、ディスペンサー法、スプレー法等の公知の方法を利用することができる。塗布液を特定の位置に塗布する観点からは、インクジェット法又はディスペンサー法が好ましい。
水溶性化合物含有塗布液の塗布量は、乾燥後の固形分として、0.05〜5.0g/m2が好ましく、0.1〜2.0g/m2がより好ましい。
水溶性化合物含有塗布液の塗布後、乾燥が行われる。乾燥は、水溶性化合物含有塗布液の塗布後に行ってもよいし、あるいは、引き続き平版印刷版原版の構成層(下塗り層又は画像記録層)形成用塗布液を塗布した後に行ってもよい。前者の場合、乾燥時間を勘案して、版面の到達温度が35〜120℃となるように行うことが好ましく、40〜80℃となるように行うことがより好ましい。後者の場合、乾燥時間を勘案して、版面の到達温度が35〜120℃となるように行うことが好ましく、80〜120℃となるように行うことがより好ましい。
ここで、版面の到達温度とは、前者の場合は、水溶性化合物含有塗布液の塗布部分の温度を意味し、後者の場合は、塗布された構成層の温度を意味する。
乾燥は、オーブンを用いる、乾燥風を吹き付けるなどにより行うことができる。
〔平版印刷版原版の裁断〕
平版印刷版原版は、上記のように、平版印刷版原版の製造過程において、裁断される。裁断は、公知の裁断方法を利用して行うことができる。好ましくは、特開平8−58257号公報、特開平9−211843号公報、特開平10−100556号公報、特開平11−52579号公報に記載の方法が使用できる。
平版印刷版原版は、その端部がダレ形状を有していることが好ましい。端部にダレ形状を有する平版印刷版原版は、本発明に係る水溶性化合物含有端部領域と相まってエッジ汚れ防止効果に優れる。
図1は、平版印刷版原版の断面形状を模式的に示す図である。
図1において、平版印刷版原版1はその端部にダレ2を有している。平版印刷版原版1の端面1cの上端(ダレ2と端面1cとの境界点)と、画像記録層面(保護層が形成されている場合には保護層面)1aの延長線との距離Xを「ダレ量」といい、平版印刷版原版1の画像記録層面1aがダレ始める点と端面1cの延長線上との距離Yを「ダレ幅」という。平版印刷版原版における端部のダレ量は35μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましい。ダレ量の上限は、端部表面状態の悪化による機上現像性の劣化を防止する観点から150μmが好ましい。機上現像性が劣化すると残存する感光層にインキが付着しエッジ汚れ発生の原因となる。ダレ量が35μmを下回ると、端部に付着したインキがブランケットに転写しやすくなりエッジ汚れ発生の原因となる場合がある。ダレ量の範囲が35〜150μmの場合、ダレ幅が小さいと、端部にクラックが入り、そこに印刷インキが溜まることにより汚れが発生する原因となる。このようなクラックの発生を減らすため、ダレ幅は70〜300μmの範囲が適当であり、80〜250μmの範囲が好ましい。なお、上記ダレ量とダレ幅の好ましい範囲は、平版印刷版原版1の支持体面1bのエッジ形状には関わらない。
通常、平版印刷版原版1の端部において、画像記録層と支持体との境界B、及び、支持体面1bも、画像記録層面1aと同様に、ダレが発生している。
上記ダレを有する端部の形成は、例えば、平版印刷版原版の裁断条件を調整することにより行うことができる。
具体的には、平版印刷版原版の裁断時に使用するスリッター装置における上側裁断刃と下側裁断刃の隙間、噛み込み量、刃先角度などの調整により行うことができる。
例えば、図2は、スリッター装置の裁断部を示す断面図である。スリッター装置には、上下一対の裁断刃10、20が左右に配置されている。裁断刃10、20は円板上の丸刃からなり、上側裁断刃10aおよび10bは回転軸11に、下側裁断刃20aおよび20bは回転軸21に、それぞれ同軸上に支持されている。上側裁断刃10aおよび10bと下側裁断刃20aおよび20bとは、相反する方向に回転される。平版印刷版原版30は、上側裁断刃10a、10bと下側裁断刃20a,20bとの間を通されて所定の幅に裁断される。スリッター装置の裁断部の上側裁断刃10aと下側裁断刃20aとの隙間および上側裁断刃10bと下側裁断刃20bとの隙間を調整することによりダレを有する端部を形成することができる。
本発明に係る平版印刷版原版の製版について以下に記載する。本発明に係る平版印刷版原版の製版の好ましい態様は、画像露光及び機上現像を含む。
[画像露光]
平版印刷版原版の画像露光は、通常の平版印刷版原版の画像露光操作に準じて行うことができる。
画像露光は、線画像、網点画像等を有する透明原画を通してレーザー露光するかデジタルデータによるレーザー光走査等で行われる。光源の波長は700〜1400nmが好ましく用いられる。700〜1400nmの光源としては、赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーが好適である。赤外線レーザーに関しては、出力は100mW以上であることが好ましく、1画素当たりの露光時間は20マイクロ秒以内であるのが好ましく、照射エネルギー量は10〜300mJ/cmであることが好ましい。露光時間を短縮するためマルチビームレーザーデバイスを用いることが好ましい。露光機構は、内面ドラム方式、外面ドラム方式、フラットベッド方式等の何れでもよい。画像露光は、プレートセッターなどを用いて常法により行うことができる。
[機上現像及び印刷]
平版印刷版原版の機上現像及び印刷は、常法により行うことができる。即ち、画像露光された平版印刷版原版に、印刷機上で、湿し水と印刷インキとを供給すると、画像記録層の露光部においては、露光により硬化した画像記録層が、親油性表面を有する印刷インキ受容部を形成する。一方、未露光部においては、供給された湿し水および/または印刷インキによって、未硬化の画像記録層が溶解または分散して除去され、その部分に親水性の表面が露出する。その結果、湿し水は露出した親水性の表面に付着し、印刷インキは露光領域の画像記録層に着肉して印刷が開始される。
ここで、最初に平版印刷版原版の表面に供給されるのは、湿し水でもよく印刷インキでもよいが、湿し水を浸透させ機上現像性を促進するために、最初に湿し水を供給するのが好ましい。
本発明に係る平版印刷版原版の製版においては、通常の現像液による処理に用いられる製版システムを用いることもできる。即ち、平版印刷版原版を露光機で画像露光する露光部、露光部により画像露光された平版印刷版原版の未露光部を自動現像機で除去する現像処理部、平版印刷版原版を印刷機に装着するためにパンチ・ベンダーで加工を行う加工部をこの順に有する製版システムが利用できる。
機上現像の場合には、現像処理部は必要がないので、現像処理部を除いたシステムで製版してもよいし、現像処理部を残したままで製版を行うこともできる。現像処理部を残したまま製版を行う場合には、現像処理部の現像部、水洗部、及びフィニッシャー部で使用される現像液、水、及びガム液を仕込まずに動作させることにより、現像処理部を露光部から加工部までの搬送装置として使用することができる。
また、現像処理部の挿入ローラー部と排版ローラー部を、ベルトコンベアーのような搬送する平版印刷版の感光層側の面が搬送経路中の如何なる部分とも接触せずに搬送できるような搬送装置で接続することにより、現像部、水洗部、フィニッシャー部をスキップすることにより、露光部から加工部までの搬送装置として使用することができる。
更には、特開2006−65169号公報に記載されているような現像部、水洗部、フィニッシャー部へ平版印刷版原版を搬送する経路とは別の搬送経路を有する現像処理部を使用することもできる。
本発明に係る平版印刷版原版は、エッジ汚れを生じず、平版印刷版原版を重ね合わせて保管した場合でも、支持体裏面への転写が防止され、また、平版印刷版原版と合紙を重ね合わせて保管した場合でも、合紙との接着が防止されるという優れた特性を有する。この特性は、機上現像型の平版印刷版原版において顕著である。特に、新聞印刷のように、平版印刷版原版の幅よりも広い印刷用紙を用いて印刷する場合に、本発明に係る平版印刷版原版はその優れた特性を発揮する。この場合、平版印刷版原版の幅は、印刷機の版胴に取り付けられた時の平版印刷版原版の横方向の長さに相当する。
従って、新聞印刷用に用いられる機上現像型平版印刷版原版として、本発明に係る平版印刷版原版は特にその優れた特性を発揮する。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、高分子化合物において、特別に規定したもの以外は、分子量は質量平均分子量(Mw)であり、繰り返し単位の比率はモル百分率である。
[実施例1〜6及び比較例1〜4]
〔平版印刷版原版の作製〕
<支持体の作製>
厚さ0.19mmのアルミニウム板を40g/lの水酸化ナトリウム水溶液中に60℃で8秒間浸漬することにより脱脂し、脱塩水により2秒間洗浄した。次に、アルミニウム板を、15秒間交流を用いて12g/lの塩酸及び38g/lの硫酸アルミニウム(18水和物)を含有する水溶液中で、33℃の温度及び130A/dmの電流密度で電気化学的粗面化処理を行った。脱塩水により2秒間洗浄した後、アルミニウム板を155g/lの硫酸水溶液により70℃で4秒間エッチングすることによりデスマット処理し、脱塩水により25℃で2秒間洗浄した。アルミニウム板を13秒間155g/lの硫酸水溶液中で、45℃の温度及び22A/dmの電流密度で陽極酸化処理し、脱塩水で2秒間洗浄した。更に、4g/lのポリビニルホスホン酸水溶液を用いて40℃で10秒間処理し、脱塩水により20℃で2秒間洗浄し、乾燥して支持体を作製した。支持体は、表面粗さRaが0.21μmで、陽極酸化皮膜量は4g/mであった。
<下塗り層の形成>
上記支持体上に、下記組成の下塗り層塗布液(1)を乾燥塗布量が20mg/mになるよう塗布して、下塗り層を形成した。
(下塗り層塗布液(1))
・下塗り層用化合物(1)(下記構造) 0.18g
・ヒドロキシエチルイミノ二酢酸 0.05g
・界面活性剤(エマレックス710、日本エマルジョン(株)製) 0.03g
・水 28.0g
Figure 2017007233
<水溶性化合物含有塗布液の調製>
下記表Aに記載した成分を純水に加えて撹拌し、水溶性化合物含有塗布液A〜Gを調製した。化合物名の右に記載した、括弧内の数字は当該成分の質量%濃度を表す。なお、水溶性化合物含有塗布液E及びFは、水溶性化合物を含有していない塗布液であり、水溶性化合物含有塗布液Gは、水溶性化合物を含有していない塗布液である。
Figure 2017007233
表Aに記載した水溶性化合物及び熱重合開始剤は下記のとおりである。
水溶性化合物1:
(式中、M、M及びMは、それぞれ水素原子又はナトリウム原子を表す。また、モノマー単位の右の数字は、当該モノマー単位の含有率(モル%)を表す。)
Figure 2017007233
熱重合開始剤1:
VA−046B(和光純薬工業(株)製)
Figure 2017007233
熱重合開始剤2:
ルペロックス844(アルケマ吉富(株)製)
Figure 2017007233
<水溶性化合物含有塗布液の塗布>
上記下塗り層の塗布後、乾燥させないままの状態で、ディスペンサー法に係る塗布装置である兵神装備(株)製2NL04を使用し、クリアランス0.3mm、送液量5ml/分で搬送速度を調整して、水溶性化合物含有塗布液を所定の固形分塗布量になるように塗布した。
塗布は、平版印刷版原版の搬送方向に平行な対向する2辺の両端部からそれぞれ3cmの位置において幅10mmの領域に行った。その後、80℃で30秒間乾燥させた。
水溶性化合物含有塗布液A〜D及びGを用いて塗布した上記領域にいては、熱重合開始剤の含有量は、上記領域以外の領域における熱重合開始剤の含有量よりも0.1mg/m以上多かった。
<画像記録層の形成>
上記下塗り層及び水溶性化合物含有塗布液塗布領域上に、下記組成の画像記録層塗布液(1)をバー塗布し、下記乾燥条件(A)−(C)のいずれかに従って乾燥を行い画像記録層を形成して平版印刷版原版を作製した。
乾燥条件(A):100℃で35秒間乾燥
乾燥条件(B):40℃で35秒間乾燥
乾燥条件(C):20℃で600秒間乾燥
(画像記録層塗布液(1))
・バインダーポリマー(1)(下記構造) 0.240g
・ミクロゲル(1)(下記) 1.900g
・赤外線吸収剤:シアニン色素(1)(下記構造) 0.015g
・重合開始剤(1)(下記構造) 0.100g
・重合性化合物:トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート 0.192g
(NKエステル A−9300、新中村化学(株)製)
・低分子親水性化合物 :トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート
0.062g
・低分子親水性化合物(1)(下記構造) 0.050g
・感脂化剤 ホスホニウム化合物(1)(下記構造) 0.055g
・感脂化剤 ベンジル−ジメチル−オクチルアンモニウム・PF塩 0.018g
・感脂化剤 アンモニウム基含有ポリマー(下記構造、還元粘度44ml/g)
0.035g
・フッ素系界面活性剤(1)(下記構造) 0.008g
・2−ブタノン 1.091g
・1−メトキシ−2−プロパノール 8.609g
Figure 2017007233
(ミクロゲル(1)の調製)
油相成分として、下記構造の多官能イソシアナート(三井化学(株)製、75質量%酢酸エチル溶液)4.46g、トリメチロールプロパン(6モル)とキシレンジイソシアナート(18モル)を付加させ、これにメチル片末端ポリオキシエチレン(1モル、オキシエチレン単位の繰り返し数:90)を付加させた付加体(三井化学(株)製、50質量%酢酸エチル溶液)10g、重合開始剤V−60(和光純薬(株)製)0.02g、及びパイオニンA−41C(竹本油脂(株)製)0.1gを酢酸エチル7g及びメチルエチルケトン10gに溶解した。水相成分として蒸留水30gを準備した。油相成分及び水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12,000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を、蒸留水20gに添加し、室温で30分攪拌後、50℃で3時間攪拌した。得られたミクロゲル液の固形分濃度を、15質量%になるように蒸留水を用いて希釈し、ミクロゲル(1)を調製した。光散乱法により測定したミクロゲルの平均粒径は0.2μmであった。
Figure 2017007233
<保護層の形成>
画像形成層の上に、下記組成の保護層塗布液(1)をバー塗布した後、120℃で60秒間オーブン乾燥し、乾燥塗布量0.15g/mの保護層を形成して平版印刷版原版を作製した。
(保護層用塗布液(1))
・無機質層状化合物分散液(1)(下記) 1.5g
・ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製CKS50、 0.55g
スルホン酸変性、けん化度99モル%以上、重合度300)6質量%水溶液
・ポリビニルアルコール((株)クラレ製PVA−405、 0.03g
けん化度81.5モル%、重合度500)6質量%水溶液
・界面活性剤(日本エマルジョン(株)製エマレックス710)1質量%水溶液
0.86g
・イオン交換水 6.0g
(無機質層状化合物分散液(1)の調製)
イオン交換水193.6gに合成雲母(ソマシフME−100、コープケミカル(株)製)6.4gを添加し、ホモジナイザーを用いて平均粒径(レーザー散乱法)が3μmになるまで分散した。得られた分散粒子のアスペクト比は100以上であった。
<裁断> 平版印刷版原版を、図2に示すような回転刃を用いて、上側裁断刃と下側裁断刃の隙間、噛み込み量及び刃先角度を調整して、所望のダレ量及びダレ幅を有する端部の形状となるように裁断した。上記の裁断条件により、水溶性化合物含有塗布液の塗布領域の中央の位置を裁断位置とし、平版印刷版原版の2箇所を裁断した。下記の方法でダレ形状の測定を行ったところ、ダレ量は60μm、ダレ幅は150μmであった。
ダレ形状の測定は、東京精密(株)製の表面粗さ計(サーフコム)を用いて行った。表面粗さ計は型番480Aを使用し、触針は直径2μmのものを使用した。触針を平版印刷版原版端部の内側約1mmから端部に向かって、3mm/secのスピードで移動させ、形状の測定を行った。
〔エチレン性不飽和結合反応率の測定〕
エチレン性不飽和結合反応率は、平版印刷版原版の端部領域及びその他の領域に該当する試料について、フーリエ変換赤外分光光度計FT−720((株)堀場製作所製)を用いて、検出領域1380〜1440cm−1におけるエチレン性不飽和結合のピーク面積を測定し、先に記載した式に従って算出した。
〔水溶性化合物含有量の測定〕
対向する長辺2辺がエッジ処理された平版印刷版原版(400mm×1100mm)1枚から、エッジ処理した端部を1辺とする5mm×1100mmの長方形を切断し、サンプルAとした。一方、エッジ処理した端部を切断した残りの平版印刷版原版の端部から20cmの領域から5mm×1100mmの長方形を切断し、サンプルBとした。
サンプルA及びサンプルBを5mm×1cm角にさらに切断し、メチルエチルケトン(MEK)/プロピレングリコールモノメチルエーテル/メタノール/水の混合溶媒(3/6/1/1(質量比))(溶媒A)300mlに1時間浸漬、塗布膜成分を脱膜し、支持体を取除いて、脱膜溶液A及び脱膜溶液Bを得た。
脱膜溶液A及び脱膜溶液Bのそれぞれについて、脱膜溶液中に含まれる当該水溶性化合物を高速液体クロマトグラフィ(HPLC)で分離、定量し、単位面積(m)当たりの水溶性化合物含有量(mg/m)を計算により求めた。
水溶性化合物の一例であるベタインの高速液体クロマトグラフィによる含有量の定量は、以下の条件で行った。
装置名:(株)島津製作所製 汎用HPLC Prominenceシステム
カラム名:Shodex Asahipak NH2P−50 4E (4.6mmI.D.×250mm)
溶離液:HO/CHCN=25/75(容量比)
検出方法:示差屈折率(RI)
カラム温度:40℃ その他の水溶性化合物についても、カラムの種類、溶離液の種類および組成、検出方法などの条件を適宜変更することにより含有量の定量を行った。
〔平版印刷版原版の製版〕
上記のようにして作製した平版印刷版原版を赤外線半導体レーザー搭載の富士フイルム(株)製Luxel PLATESETTER T−6000IIIにて、外面ドラム回転数1000rpm、レーザー出力70%、解像度2,400dpiの条件で露光した。露光画像にはベタ画像及び50%網点チャートを含むようにした。
〔平版印刷版原版の評価〕
<エッジ汚れ防止性の評価>
画像露光後の平版印刷版原版を、東浜精機(株)製オフセット輪転印刷機に装着し、新聞用印刷インキとしてインクテック(株)製 ソイビーKKST−S(紅)、湿し水として東洋インキ(株)製東洋ALKYを用い、新聞用紙に100,000枚/時のスピード、標準水目盛りで1,000枚印刷した。その後、標準水目盛りから5%減の湿し水量で500枚印刷した。この500枚目の印刷物をサンプリングし、エッジ部の線状汚れの程度を目視で観察し、下記の基準で評価した。5〜3が許容水準である。結果を表Bに示す。
5:汚れは全く認められない。
4:5と3の中間レベル。
3:汚れがうっすらと認められる。
2:3と1の中間レベル。
1:汚れが認められる。
0:汚れがはっきりと認められる。
<平版印刷版原版裏面への転写防止性の評価>
作製した平版印刷版原版を、25℃50%RH下で1時間調湿した。調湿した平版印刷版原版を50枚重ね合わせ万力を用いて版面に対して20(kg/cm)の圧力をかけた状態で、25℃で1日間保管した。その後、平版印刷版原版の端部領域と接触していた平版印刷版の裏面を目視で観察し、裏面への転写の程度を下記基準で評価した。5〜3が許容水準である。結果を表Bに示す。
5:転写は全く認められない。
4:5と3の中間レベル
3:転写物がうっすらと認められる。
2:3と1の中間レベル
1:転写物が認められる。
0:転写物が連続する線としてはっきり認められる。
<平版印刷版原版と合紙の接着防止性の評価>
作製した平版印刷版原版と合紙を、25℃50%RH下で1時間調湿した。調湿した1枚の平版印刷版原版上に1枚の合紙を載せた状態を1セットとして、50セット重ね合わせ万力を用いて版面に対して20(kg/cm)の圧力をかけた状態で、25℃で1日間保管した。その後、平版印刷版原版の端部領域と接触していた合紙の剥離性を下記の基準で評価した。5〜3が許容水準である。結果を表Bに示す。
5:合紙と平版印刷版原版の端部領域との接着が全く認められず、合紙は容易に剥離できる。
4:合紙が平版印刷版原版の端部領域と少し接着するが、剥離すると合紙に転写物は認められない。
3:合紙が平版印刷版原版の端部領域と少し接着し、剥離すると合紙にうっすらと転写物が認められる。
2:合紙が平版印刷版原版の端部領域と接着し、剥離すると転写物が連続する線として認められる。
1:合紙が平版印刷版原版の端部領域と接着し、剥離すると転写物が連続する線としてはっきり認められる。
0:合紙が平版印刷版原版の端部領域と接着し、剥離することができない。
使用した合紙は、以下のようにして作製した。漂白クラフトパルプを叩解し、4質量%の濃度に希釈した紙料に、アルキルケテンダイマー(AKD)の中性サイズ剤を0.4質量%加え、炭酸カルシウムを5.0質量%加えた。この紙料に、でんぷんを主成分とする紙力剤を3.0質量%混合して抄紙し、ニップ数2回のソフトカレンダで樹脂ロールを用いて18kg/cmの線圧でニップしカレンダリングを行って合紙を作製した。合紙の坪量は48g/mであった。
下記表Bにおいて、「水溶性化合物含有量差」は、平版印刷版原版の端部から5mmまでの領域における単位面積当たりの水溶性化合物の含有量と上記領域以外の領域における単位面積当たりの水溶性化合物の含有量との差を意味する。なお、水溶性化合物含有量差は、下一桁を四捨五入した数値として記載している。
Figure 2017007233
上記表Bに示す結果から、端部領域に水溶性化合物を特異的に多く含み、且つ、端部領域におけるエチレン性不飽和結合の反応率が3%以上である本発明に係る平版印刷版原版、又は、端部領域に水溶性化合物を特異的に多く含むと共に、特定量の熱重合開始剤を含む本発明に係る平版印刷版原版は、標準水目盛りから5%減の湿し水量での印刷においてもエッジ汚れが発生せず、平版印刷版原版同士を直接重ね合わせて保存した場合でも、平版印刷版原版裏面への処理液の転写が防止され、また、平版印刷版原版と合紙を重ね合わせて保存した場合でも、平版印刷版原版と合紙との接着が防止され、合紙の剥離が良好に行われることがわかる。他方、比較例の平版印刷版原版は、エッジ汚れ防止性、転写防止性及び接着防止性の少なくともいずれかにおいて不十分である。
1 平版印刷版原版
1a 画像記録層面
1b 支持体面
1c 端面
2 ダレ
X ダレ量
Y ダレ幅
B 画像記録層と支持体との境界
10 裁断刃
10a 上側裁断刃
10b 上側裁断刃
11 回転軸
20 裁断刃
20a 下側裁断刃
20b 下側裁断刃
21 回転軸
30 平版印刷版原版

Claims (18)

  1. 支持体上にエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物を含む画像記録層を有する平版印刷版原版であって、前記平版印刷版原版の端部から内側に5mmまでの領域であって、前記支持体と前記画像記録層との間に水溶性化合物を含有し、前記領域における前記水溶性化合物の単位面積当たりの含有量が、前記領域以外における水溶性化合物の単位面積あたりの含有量よりも多く、且つ、前記領域におけるエチレン性不飽和結合の反応率が3%以上である平版印刷版原版。
  2. 支持体上にエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物を含む画像記録層を有する平版印刷版原版であって、前記平版印刷版原版の端部から内側に5mmまでの領域であって、前記支持体と前記画像記録層との間に水溶性化合物及び熱重合開始剤を含有し、前記領域における前記水溶性化合物の単位面積当たりの含有量が、前記領域以外における水溶性化合物の単位面積あたりの含有量よりも多く、且つ、前記熱重合開始剤の含有量が、 前記領域以外の領域における熱重合開始剤の含有量よりも0.1mg/m以上多い平版印刷版原版。
  3. 前記熱重合開始剤が、ジアゾ化合物、過酸化物及びオニウム塩化合物から選ばれる少なくとも1種である請求項2に記載の平版印刷版原版。
  4. 前記端部から内側に5mmまでの領域に含まれる水溶性化合物の単位面積当たりの含有量が、前記領域以外に含まれる水溶性化合物の単位面積あたりの含有量よりも50mg/m以上多い請求項1〜3のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
  5. 前記水溶性化合物が、親水性化合物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
  6. 前記親水性化合物が、支持体吸着性基を有する化合物である請求項5に記載の平版印刷版原版。
  7. 前記支持体吸着性基を有する化合物が、リン酸化合物又はホスホン酸化合物である請求項6に記載の平版印刷版原版。
  8. 前記リン酸化合物又はホスホン酸化合物が、高分子化合物である請求項7に記載の平版印刷版原版。
  9. 前記平版印刷版原版の端面が、ダレ量Xが35〜150μm、ダレ幅Yが70〜300μmのダレ形状を有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
  10. 前記画像記録層が、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物及びバインダーポリマーを含有する請求項1〜9のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
  11. 前記画像記録層が、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物及び微粒子形状の高分子化合物を含有する請求項1〜9のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
  12. 支持体上にエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物を含む画像記録層を有する平版印刷版原版であって、前記平版印刷版原版の端部から内側に5mmまでの領域であって、前記支持体と前記画像記録層との間に水溶性化合物を含有し、前記領域における前記水溶性化合物の単位面積当たりの含有量が、前記領域以外における水溶性化合物の単位面積あたりの含有量よりも多く、且つ、前記領域におけるエチレン性不飽和結合の反応率が3%以上である平版印刷版原版の製造方法であって、
    前記画像記録層を形成する画像記録層形成工程a、
    前記水溶性化合物と熱重合開始剤を含む塗布液を、工程aで形成される前記画像記録層の一部の領域と重なるように塗布する塗布工程b、および、
    前記塗布液を塗布した領域が、裁断後の平版印刷版原版の端部から内側に5mmまでの範囲にあるように裁断する裁断工程cを、
    前記支持体上に、工程b、工程aの順に行い、その後工程cを行う平版印刷版原版の製造方法。
  13. 前記工程aにおいて、版面の到達温度が35℃以上となるように乾燥を行う請求項12に記載の平版印刷版原版の製造方法。
  14. 前記工程aの前に、下塗り層を形成する下塗り層形成工程dを行う、請求項12又は13に記載の平版印刷版原版の製造方法。
  15. 前記工程aの後、工程cの前に、保護層を形成する保護層形成工程eを行う請求項12〜14のいずれか1項に記載の平版印刷版原版の製造方法。
  16. 請求項12〜15のいずれか1項に記載の製造方法により得られた平版印刷版原版。
  17. 請求項1〜11及び請求項16のいずれか1項に記載の平版印刷版原版を画像露光し、印刷インキ及び湿し水を供給して印刷機上で画像記録層の未露光部を除去し、印刷を行う方法。
  18. 前記平版印刷版原版の幅よりも広い印刷用紙を用いて印刷する請求項17に記載の印刷方法。
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