JP2017006468A - 放射線撮像装置および微分方向推定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】微分干渉計の微分方向を推定し、被検体の情報をより精度良く取得する技術を提供する。【解決手段】放射線撮像装置は、被検体を透過した放射線により形成される干渉縞を取得する微分干渉計と、前記微分干渉計で得られる干渉縞を解析することにより、前記微分干渉計の微分方向を推定する演算装置と、を有する。微分方向推定方法は、演算装置が、被検体を透過した放射線により形成される干渉縞を微分干渉計から取得する工程と、前記演算装置が、前記微分干渉計で得られる干渉縞を解析することにより、前記微分干渉計の微分方向を推定する工程と、を有する。【選択図】図1
Description
本発明は、被検体の情報を取得する放射線撮像装置に関する。
微分干渉計は、光源から照射されたコヒーレントな光を分割し、一方の光に被検体による波面の歪曲を生成し、もう一方の光の波面をわずかにずらすことで周期的な強度分布(いわゆる干渉縞)を形成する干渉計である。この強度分布の変化から被検体による光の位相変化を取得することができる。尚、光の代わりにX線やガンマ線のような電磁波(放射線)を用いることも可能である。尚、周期的な強度分布とは、強度分布中の周期が一定である強度分布に限らない。例えば、強度分布の中央に近いほど周期が大きかったり、または小さかったりするように、周期が変化する強度分布であっても、明部と暗部とが配列した強度分布であれば周期的な強度分布であるとみなす。
強度分布の変化から被検体による光の位相変化に関する情報(つまり、被検体の位相情報)を取得する方法、すなわち位相回復法の1つとして、非特許文献1に記載されているような縞走査法が知られている。縞走査法は、複数の強度分布から位相変化量を取得する方法である。
微分干渉計の場合、強度分布の位相の変化量(本明細書では微分位相像と呼ぶ)は、被検体による光の位相変化量の微分値に比例する。よって、位相回復により得られた微分位相像を微分方向に積分し位相像を取得することで、被検体による光の位相変化量を求めることができる。微分位相像を積分して位相像を取得する方法として、いくつかの方法が提案されている。例えば、単純に微分位相像の微分位相値を順次積算することで位相像を取得することが可能である。この他に、非特許文献2に記載されているような周波数空間で積分する方法がある。
Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 45, No. 6A, pp. 5254−5262 (2006)
Optics Express, Vol. 15, No. 3A, pp. 1175−1181 (2007)
微分干渉計によって得られる強度分布を解析することで微分位相像を得ることができ、さらに、微分位相像をその微分方向に積分することで位相像が得られる。従来は、微分位相像の水平方向又は垂直方向が微分方向であるとみなし、水平方向又は垂直方向に積分することが一般的であった。しかし、微分干渉計の機械的な精度には限界があるため、厳密には、微分位相像の微分方向は水平方向又は垂直方向からずれている場合が多い。微分位相像を微分方向とは異なる方向に積分すると、アーチファクトが発生するなど、位相像の精度・信頼性が低下する。したがって、微分位相像の微分方向が正確に分かっていないと、被検体の正しい情報を得ることができない場合がある。そこで、本発明は、微分干渉計の微分方向を推定し、被検体の情報をより精度良く取得する技術を提供することを目的とする。
本発明の第一側面は、被検体を透過した放射線により形成される干渉縞を取得する微分干渉計と、前記微分干渉計で得られる干渉縞を解析することにより、前記微分干渉計の微分方向を推定する演算装置と、を有することを特徴とする放射線撮像装置を提供する。
本発明の第二側面は、演算装置が、被検体を透過した放射線により形成される干渉縞を微分干渉計から取得する工程と、前記演算装置が、前記微分干渉計で得られる干渉縞を解析することにより、前記微分干渉計の微分方向を推定する工程と、を有することを特徴とする微分方向推定方法を提供する。
本発明によって、微分干渉計の微分方向を推定し、被検体の情報をより精度良く取得することができる。
以下に、本発明の好ましい実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。各実施形態では、微分干渉計としてX線トールボット干渉計を用い、X線トールボット干渉計により得られる強度分布(干渉縞)を用いて被検体の特徴量を取得する形態について説明をする。ただし、本発明では、他の微分干渉計を用いることもできる。
本発明の実施形態に係る放射線撮像装置の模式的な構成を図6に示す。放射線撮像装置は、微分干渉計であるトールボット干渉計と、トールボット干渉計で得られたデータを解析して被検体170の情報を取得する演算装置160と、を有する。トールボット干渉計は、X線源110と、X線源110より射出されたX線により干渉縞を形成する回折格子120と、回折格子120を透過したX線の一部を遮蔽する遮蔽格子130と、検出器140と、縞走査を行うための制御装置150を有する。検出器140の出力データ(干渉縞の画像データ)は演算装置160に入力される。
演算装置160は、干渉計から得られたデータに基づいて、被検体170の各種画像(吸収像、微分位相像、振幅像など)の生成、微分方向の推定、位相像の生成、位相のアンラップ、その他の各種演算が可能なコンピュータである。演算装置160は、汎用的なパーソナルコンピュータに必要なプログラムをインストールすることで構成してもよいし、組み込み型のコンピュータで構成したり、ASICなどの回路で構成してもよい。
本実施形態では、回折格子120および遮蔽格子130として、2方向に周期をもつ2次元格子を用いる。回折格子120としてはX線の位相を変調させる位相型の回折格子(位相格子)を用いても良いし、X線の強度を変調させる振幅型(強度型)の回折格子を用いても良い。また、遮蔽格子130としてはX線を吸収することでX線を遮蔽する吸収型の遮蔽格子(吸収格子)が用いられることが多いが、X線を反射することでX線を遮蔽する反射型の遮蔽格子を用いても良い。検出器140として、2方向に画素が配列された2次元検出器を用いる。X線トールボット干渉計については、例えば非特許文献1に詳細が記述されている。X線トールボット干渉計から得られる干渉縞より微分位相像を計算する方法としては、縞走査法、フーリエ変換法などがあり、どのような方法を用いてもよい。
ここで、X線トールボット干渉計によって取得される微分位相像と微分方向について述べる。X線トールボット干渉計では、取得される微分位相像の微分方向は回折格子120の周期方向と一致する。また、回折格子120によって形成される干渉縞の周期方向も、回折格子120の周期方向と一致する。従って、取得される微分位相像の微分方向は干渉縞の周期方向と一致する。一方、X線の可干渉長が数μmから十数μm程度の場合、回折格子120の周期も数μmから十数μm程度となり、干渉縞の周期も同程度になる。X線用の検出器140の画素サイズは一般的に数十μm程度であり、干渉縞を直接観察することは困難である場合がある。その場合、干渉縞と遮蔽格子130によってモアレ縞を形成する。モアレ縞は回折格子120で形成される干渉縞に比べて周期が十分に長いため、一般的な分解能の検出器140で検出(解像)することができる。なお、検出器140が回折格子120によって形成される干渉縞を直接解像可能である場合には、遮蔽格子130は不要である。
一般にモアレ縞の周期方向は干渉縞の周期方向と一致しない。そのため、モアレ縞から干渉縞の周期方向、ひいては微分位相像の微分方向を決定することは必ずしも容易ではない。モアレ縞の周期方向から微分位相像の周期方向を計算するには、回折格子120の周期方向と遮蔽格子130の周期方向の相対角度を何らかの手段で知ることができればよいが、コストまたは時間の観点から容易ではない場合がある。また、回折格子120の周期方向と検出器140の画素の配列方向との相対角度が何らかの方法で分かれば、微分位相像の微分方向が分かるが、これも容易ではない。回折格子120の周期方向と検出器140の配列方向とが一致するよう干渉計を設置できればよいが、機械的な精度には限界がある。また仮に、回折格子120と検出器140が高精度にアライメントされていたとしても、振動や衝撃、あるいは経年劣化によってアライメントがずれてしまう可能性もある。
上記を鑑みて、以下の実施形態ではX線トールボット干渉計で取得できる、吸収像、微分位相像、振幅像の少なくとも一つより、微分干渉計の微分方向を推定する方法を提案する。微分干渉計の出力結果から微分方向を推定し、その推定微分方向を各種の演算処理に利用することで、被検体の情報をより精度良く得ることができる。推定微分方向を利用する演算処理としては、例えば、微分位相像を推定微分方向と平行な方向に積分し位相像を生成する処理、微分位相像における推定微分方向の位相飛びを修正するアンラップ処理などがある。また、このようにして得られた位相像や修正微分位相像をさらに加工する演算処理も、推定微分方向を利用する演算処理に含まれる。例えば、位相像又は修正微分位相像から被検体の位置・サイズ・形状・構造などの特徴量を抽出する処理、位相像又は修正微分位相像に対しフィルタ・変換・合成などを施す処理などを例示できる。
前述のように、微分干渉計から取得される情報としては、「回折格子120によって形成される干渉縞」の強度分布そのものの場合と、「モアレ縞」の強度分布の場合とがある。以後の説明において両者を特に区別する必要のない文脈では、単に「干渉縞」又は「干渉像」の用語を用いる。
〔第1実施形態〕
本実施形態では、微分位相像を用いて特徴的な評価値を計算することで微分方向を推定する方法について説明する。
本実施形態では、微分位相像を用いて特徴的な評価値を計算することで微分方向を推定する方法について説明する。
微分方向推定方法の説明に先立ち、必要な変数などの定義をここでする。2次元検出器140の画素配列方向をxD軸およびyD軸とし、各画素の座標を(xD,yD)と表記する。また、2次元回折格子120の周期方向をxg軸およびyg軸とし、回折格子120上の座標を(xg,yg)と表記する。前述した被検体170による干渉縞の位相変化量を可視化したものを微分位相像と呼び、2次元回折格子120によって得られる2方向の微分位相像をそれぞれφxおよびφyと表す。これら微分位相像φx,φyをその微分方向に積分すると位相像Φが得られる。微分位相像φx,φyの微分方向は、微分干渉計の物理的なパラメータに依存して決まり、具体的には2次元回折格子120の周期方向xg,ygに一致する。
ただし、iは虚数単位であり、(kxg,kyg)は(xg,yg)に対応する波数空間での座標である。また、F[A]はAのフーリエ変換、F−1[A]はAの逆フーリエ変換を表す。式(2)から分かるように、正しい位相像を得るためには、微分方向である回折格子120の周期方向(xg方向およびyg方向)が正確に分かっている必要がある。
次に、微分位相像を用いて特徴的な評価値を計算することで微分方向を推定する方法について説明する。被検体170が測定視野内に含まれている場合、微分位相像は原理的に、正しい微分方向に微分位相値を積算すると総和がゼロになるという性質を持つ。本実施形態では、この総和を用いて、微分方向を推定する。評価関数を式(3)で定義する。
ここで、x1方向とy2方向が2つの微分方向であり、y1方向はx1方向に垂直な方向、x2方向はy2方向に垂直な方向であり、
x1=xDcos(θ1)−yDsin(θ1)、
y1=xDsin(θ1)+yDcos(θ1)、
x2=xDcos(θ2)−yDsin(θ2)、
y2=xDsin(θ2)+yDcos(θ2)
とする。つまり、θ1はx1方向とxD方向のなす角度であり、θ2はy2方向とyD方向のなす角度である。
x1=xDcos(θ1)−yDsin(θ1)、
y1=xDsin(θ1)+yDcos(θ1)、
x2=xDcos(θ2)−yDsin(θ2)、
y2=xDsin(θ2)+yDcos(θ2)
とする。つまり、θ1はx1方向とxD方向のなす角度であり、θ2はy2方向とyD方向のなす角度である。
θ1の評価関数はx1方向がxg方向に平行となるとき最小となり、θ2の評価関数はy2方向がyg方向に平行となるときに最小となる。よって、各評価関数が最小となるθ1およびθ2を求めることで、正しい微分方向x1,y2を推定することができる。そして、式(2)に従って、方向x1,y2について微分位相像を積分することで、高精度の位相像を得ることができる。
本実施形態における、微分位相像の取得から被検体情報の取得までの工程を図1を参照して説明する。図1に示す各工程は、演算装置160が実行する処理である。
第1工程では、演算装置160は、検出器140から得た干渉縞に基づいて、被検体170の微分位相像φxとφyを取得する。第2工程では、演算装置160は、微分位相像に対し、微分方向を探索する角度範囲、すなわち式(3)におけるθ1,θ2の範囲を設定する。この時点では微分方向が不明なため、微分方向として想定される角度が含まれ得るように、ある程度の余裕をとって角度範囲を設定するとよい。光学系などの先見情報から微分方向が概ね想定できる場合は、θ1,θ2を探索する角度範囲を狭く設定することで計算時間を短くすることができる。第3工程では、演算装置160が、設定した角度範囲でθ1,θ2の値を所定の刻みで変えながら、式(3)の評価関数を計算する。第4工程では、演算装置160が、評価関数が最小値を取るθ1,θ2を求めることで、微分方向x1,y2を決定する。第5工程では、演算装置160が、微分位相像φx,φyと推定した微分方向x1,y2に基づき、被検体170の情報を取得する。例えば、微分位相像φx,φyを微分方向x1,y2について積分して位相像Φを計算したり、位相像Φから各種情報を取得する。あるいは、微分位相像φxのx1方向の位相飛びや、微分位相像φyのy2方向の位相飛びをアンラップし、より信頼性の高い微分位相像φx,φyを得てもよい。ただし、ここで説明した工程の順番は絶対的なものではなく、例えば、第2工程を行った後に、第1工程を行っても良い。
(実施例1)
第1実施形態の方法をコンピュータシミュレーションにより実施した例について説明する。本実施例では球状の被検体170を用い、回折格子120の周期方向xgが検出器140の画素配列方向xDに対し反時計回りに15度傾いていると仮定した。第1工程で取得される微分位相像φxを図7に示したように設定した。参考のため、微分方向xgを実線の矢印180で示す。第2工程で評価関数を計算するθ1の範囲を、10度から20度とした。第3工程で得られた各θ1における評価関数の値(評価値fx)を図8に示す。
θ1=15度のときに評価値fxが最小となることがわかる。第4工程では、θ1=15度の方向x1を微分方向に決定した。第5工程では、式(2)を用いて、微分方向x1について微分位相像を積分した。積分して得られた位相像を図9に示す。また、xD軸200に沿ったラインプロファイル、すなわちΦ(xD、yD=0)、を図10に○印で示す。参考のために、入力値(真値)を実線で示す。また、従来例として、θ1=0度の方向(図7の点線190で示した方向)を微分方向として積分した場合に得られる位相像のラインプロファイルを図10に×印で示す。図10より、本実施例の方法で推定された微分方向を利用して生成された位相像は入力値とほぼ重なるのに対して、従来例(微分位相像を水平方向に積分することで得られた位相像)は入力値に比べ小さくなっていることが分かる。すなわち、本実施例の方法により、従来に比べて、高精度の位相像が得られることが確認できた。
第1実施形態の方法をコンピュータシミュレーションにより実施した例について説明する。本実施例では球状の被検体170を用い、回折格子120の周期方向xgが検出器140の画素配列方向xDに対し反時計回りに15度傾いていると仮定した。第1工程で取得される微分位相像φxを図7に示したように設定した。参考のため、微分方向xgを実線の矢印180で示す。第2工程で評価関数を計算するθ1の範囲を、10度から20度とした。第3工程で得られた各θ1における評価関数の値(評価値fx)を図8に示す。
θ1=15度のときに評価値fxが最小となることがわかる。第4工程では、θ1=15度の方向x1を微分方向に決定した。第5工程では、式(2)を用いて、微分方向x1について微分位相像を積分した。積分して得られた位相像を図9に示す。また、xD軸200に沿ったラインプロファイル、すなわちΦ(xD、yD=0)、を図10に○印で示す。参考のために、入力値(真値)を実線で示す。また、従来例として、θ1=0度の方向(図7の点線190で示した方向)を微分方向として積分した場合に得られる位相像のラインプロファイルを図10に×印で示す。図10より、本実施例の方法で推定された微分方向を利用して生成された位相像は入力値とほぼ重なるのに対して、従来例(微分位相像を水平方向に積分することで得られた位相像)は入力値に比べ小さくなっていることが分かる。すなわち、本実施例の方法により、従来に比べて、高精度の位相像が得られることが確認できた。
ここでは、第2工程で設定した全てのθ1に対して第3工程で評価値fxを計算したが、例えば、ある角度で計算した評価値の大小に応じて、次に計算する角度を決定することで計算量を減らしても良い。また、第4工程では評価値が最小となるθ1を求めたが、評価関数fx(θ1)を凸関数で近似し、近似式が最小値をとるθ1を微分方向としてもよい。さらに、本実施例では、一方向の微分位相像φxのみについて説明したが、別の方向の微分位相像φyについても同じような方法で微分方向を推定することができる。二方向の微分位相像からそれぞれ微分方向を推定し、二つの微分方向を利用して位相像の生成、位相のアンラップ、その他の演算処理を行うことで、より高精度な被検体情報が得られると期待できる。
〔第2実施形態〕
本実施形態では、微分位相像の空間周波数スペクトルの特徴的な評価値を計算することで微分方向を推定する方法について説明する。本実施形態における推定方法は、微分位相像の空間周波数スペクトルにおいて、原点を通り且つ微分方向に垂直な直線上の成分は原理的にはゼロになるという特性を利用する。これは次のように説明される。まず、微分位相像と位相像の関係は波数空間で、式(4)のように表すことができる。
ただし、(kxg,kyg)は、(xg,yg)に対応する波数空間での座標である。
本実施形態では、微分位相像の空間周波数スペクトルの特徴的な評価値を計算することで微分方向を推定する方法について説明する。本実施形態における推定方法は、微分位相像の空間周波数スペクトルにおいて、原点を通り且つ微分方向に垂直な直線上の成分は原理的にはゼロになるという特性を利用する。これは次のように説明される。まず、微分位相像と位相像の関係は波数空間で、式(4)のように表すことができる。
ただし、(kxg,kyg)は、(xg,yg)に対応する波数空間での座標である。
式(4)より、kxg=0で、F[φx(xg,yg)]=0、また、kyg=0で、F[φy(xg,yg)]=0であることが分かる。このことを利用すると、微分位相像の空間周波数スペクトルにおいて、例えば、原点を通る直線上の空間周波数成分の絶対値の和が最小となるような角度を見つければ、微分方向を推定することができる。すなわち、次式で定義する評価関数が最小となるようなθ1およびθ2を見つければよい。
ただし、|A|はAの絶対値であり、(kx1,ky1)および(kx2,ky2)は
、(x1,y1)および(x2,y2)に対応する波数空間での座標である。また、Gは、微分方向を決定するために評価する領域内(例えば、原点を通り、微分方向に対し垂直な方向に細長く延びる帯状ないし矩形状の領域内)の空間周波数成分を抽出するフィルター関数である。
、(x1,y1)および(x2,y2)に対応する波数空間での座標である。また、Gは、微分方向を決定するために評価する領域内(例えば、原点を通り、微分方向に対し垂直な方向に細長く延びる帯状ないし矩形状の領域内)の空間周波数成分を抽出するフィルター関数である。
本実施形態における、微分位相像の空間周波数スペクトルの取得から被検体情報の取得までの工程を図2を参照して説明する。図2に示す各工程は、演算装置160が実行する処理である。
第1工程では、演算装置160は、検出器140から得た干渉縞に基づいて、微分位相像の空間周波数スペクトルを取得する。このとき、微分位相像をフーリエ変換することで空間周波数スペクトルを取得してもよいし、干渉縞から直接(つまり微分位相像を生成することなく)空間周波数スペクトルを取得してもよい。第2工程では、演算装置160は、空間周波数スペクトルに対し、微分方向を探索する角度範囲、すなわち式(5)におけるθ1,θ2の範囲を設定する。第3工程では、演算装置160が、評価領域を抽出するフィルター関数を設定する。フィルターの形状は、帯状ないし矩形状に限らず、微分方向に対し垂直な方向の成分を抽出可能であればいかなる形状でもよい。第4工程では、演算装置160が、設定した角度範囲でθ1,θ2の値を所定の刻みで変えながら、式(5)の評価関数を計算する。第5工程では、演算装置160が、評価関数が最小値をとるθ1,θ2を求めることで、微分方向x1,y2を決定する。第6工程では、演算装置160が、推定した微分方向x1,y2を利用して、位相像などの被検体情報を取得する。
(実施例2)
第2実施形態の方法をコンピュータシミュレーションにより実施した例について説明する。実施例1と同様に、球状の被検体170を用い、回折格子120の周期方向xgが検出器140の画素配列方向xDに対し反時計回りに15度傾いていると仮定した。第1工程で取得される微分位相像の空間周波数スペクトルF[φx(xD、yD)]を図11のように設定した。本実施例では、微分位相像をフーリエ変換することで、空間周波数スペクトルを取得した。第2工程で評価関数を計算するθ1の範囲を10度から20度と設定した。第3工程では、図12に示す帯状(直線形状)のフィルター201を用いた。このフィルター201はθ1+90度の傾きをもつように設定される。フィルター201を空間周波数スペクトルに掛けることで、図12の白色で示される評価領域内の空間周波数成分が抽出される。第4工程として、式(5)で示した評価関数fxの値を各θ1について計算した。計算した評価値fxを図13に示す。θ1=15度のときに評価値fxが最小となることがわかる。第5工程では、θ1=15度の方向を微分方向x1に決定した。第6工程で、式(2)を用いて、微分方向x1について微分位相像を積分した。得られる位相像は実施例1で取得した位相像と同一であり、図9に示されている。本実施例の推定方法によっても、実施例1と同様、微分位相像の微分方向を精度良く推定でき、従来に比べて高精度の被検体情報を得ることができる。なお、ここでは、一方向の微分位相像φxのみについて説明したが、別の方向の微分位相像φyについても微分方向y1を推定してもよい。
第2実施形態の方法をコンピュータシミュレーションにより実施した例について説明する。実施例1と同様に、球状の被検体170を用い、回折格子120の周期方向xgが検出器140の画素配列方向xDに対し反時計回りに15度傾いていると仮定した。第1工程で取得される微分位相像の空間周波数スペクトルF[φx(xD、yD)]を図11のように設定した。本実施例では、微分位相像をフーリエ変換することで、空間周波数スペクトルを取得した。第2工程で評価関数を計算するθ1の範囲を10度から20度と設定した。第3工程では、図12に示す帯状(直線形状)のフィルター201を用いた。このフィルター201はθ1+90度の傾きをもつように設定される。フィルター201を空間周波数スペクトルに掛けることで、図12の白色で示される評価領域内の空間周波数成分が抽出される。第4工程として、式(5)で示した評価関数fxの値を各θ1について計算した。計算した評価値fxを図13に示す。θ1=15度のときに評価値fxが最小となることがわかる。第5工程では、θ1=15度の方向を微分方向x1に決定した。第6工程で、式(2)を用いて、微分方向x1について微分位相像を積分した。得られる位相像は実施例1で取得した位相像と同一であり、図9に示されている。本実施例の推定方法によっても、実施例1と同様、微分位相像の微分方向を精度良く推定でき、従来に比べて高精度の被検体情報を得ることができる。なお、ここでは、一方向の微分位相像φxのみについて説明したが、別の方向の微分位相像φyについても微分方向y1を推定してもよい。
〔第3実施形態〕
本実施形態では、微分吸収像と微分位相像とから求まる特徴的な評価値を計算することで微分方向を推定する方法について説明する。本実施形態における微分方向の推定方法は、被検体の組成及び密度が均一の場合(例えば被検体が単一の材料で構成されている場合)、X線トールボット干渉計で得られる吸収像と位相像の強度が比例関係にあることを利用する。また、被検体の組成及び密度が厳密に均一でなくても、吸収像と位相像の強度が比例関係にあると仮定できる場合は本手法は有効である。
本実施形態では、微分吸収像と微分位相像とから求まる特徴的な評価値を計算することで微分方向を推定する方法について説明する。本実施形態における微分方向の推定方法は、被検体の組成及び密度が均一の場合(例えば被検体が単一の材料で構成されている場合)、X線トールボット干渉計で得られる吸収像と位相像の強度が比例関係にあることを利用する。また、被検体の組成及び密度が厳密に均一でなくても、吸収像と位相像の強度が比例関係にあると仮定できる場合は本手法は有効である。
上記の条件を満たす被検体の場合、得られた吸収像より微分吸収像を計算し、微分吸収像と微分位相像との相関を計算すると、吸収像の微分方向が正しいとき(つまり、微分位相像の微分方向と同じ方向に吸収像を微分したとき)に、相関が最も高くなる。例えば、次式で示す評価関数が最小となるθ1およびθ2を見つければよい。
ただし、Tは吸収像、αは定数である。この評価関数は、微分吸収像の定数(α)倍と微分位相像との差を示す。
ただし、Tは吸収像、αは定数である。この評価関数は、微分吸収像の定数(α)倍と微分位相像との差を示す。
本実施形態における、微分位相像および吸収像の取得から被検体情報の取得までの工程を図3を参照して説明する。図3に示す各工程は、演算装置160が実行する処理である。
第1工程では、演算装置160は、検出器140から得た干渉縞に基づいて、吸収像と微分位相像を取得する。第2工程では、演算装置160は、吸収像に対し、微分方向を探索する角度範囲、すなわち式(6)におけるθ1,θ2の範囲を設定する。第3工程では、演算装置160が、設定した角度範囲でθ1,θ2の値を所定の刻みで変えながら、各θ1,θ2について微分吸収像を取得し、評価関数を計算する。第4工程では、演算装置160が、評価関数が最小値をとるθ1,θ2を求めることで、微分方向x1,y2を決定する。第5工程では、演算装置160が、推定した微分方向x1,y2を利用して、位相像などの被検体情報を取得する。
(実施例3)
第3実施形態の方法をコンピュータシミュレーションにより実施した例について説明する。実施例1と同様に、球状の被検体170を用い、回折格子120の周期方向xgが検出器140の画素配列方向xDに対し反時計回りに15度傾いていると仮定した。第1工程において取得される微分位相像は実施例1と同一とし、また、吸収像は図14に示したものを設定した。第2工程で評価関数を計算するθ1の範囲を10度から20度と設定した。第3工程として、第2工程で設定した各θ1に対して微分吸収像を計算し、微分吸収像と第1工程で取得した微分位相像との差分を式(6)に基づいて計算した。計算した評価値fxを図15に示す。θ1=15度のときに評価値fxが最小となることがわかる。第4工程では、θ1=15度の方向を微分方向x1とした。第5工程で、式(2)を用いて、微分方向x1について微分位相像を積分した。得られる位相像は実施例1で取得した位相像と同一であり、図9に示されている。本実施例の推定方法によっても、実施例1と同様、微分位相像の微分方向を精度良く推定でき、従来に比べて高精度の被検体情報を得ることができる。なお、ここでは、一方向の微分位相像φxのみについて説明したが、別の方向の微分位相像φyについても微分方向y1を推定してもよい。
第3実施形態の方法をコンピュータシミュレーションにより実施した例について説明する。実施例1と同様に、球状の被検体170を用い、回折格子120の周期方向xgが検出器140の画素配列方向xDに対し反時計回りに15度傾いていると仮定した。第1工程において取得される微分位相像は実施例1と同一とし、また、吸収像は図14に示したものを設定した。第2工程で評価関数を計算するθ1の範囲を10度から20度と設定した。第3工程として、第2工程で設定した各θ1に対して微分吸収像を計算し、微分吸収像と第1工程で取得した微分位相像との差分を式(6)に基づいて計算した。計算した評価値fxを図15に示す。θ1=15度のときに評価値fxが最小となることがわかる。第4工程では、θ1=15度の方向を微分方向x1とした。第5工程で、式(2)を用いて、微分方向x1について微分位相像を積分した。得られる位相像は実施例1で取得した位相像と同一であり、図9に示されている。本実施例の推定方法によっても、実施例1と同様、微分位相像の微分方向を精度良く推定でき、従来に比べて高精度の被検体情報を得ることができる。なお、ここでは、一方向の微分位相像φxのみについて説明したが、別の方向の微分位相像φyについても微分方向y1を推定してもよい。
また、第3実施形態では微分吸収像と微分位相像との相関を評価したが、吸収像と位相像との相関を評価してもよい。すなわち、第2工程において微分位相像に対し角度範囲を設定し、第3工程において各θ1の方向に微分位相像を積分することによって、複数の位相像を取得し、第4工程において位相像と吸収像との相関が最も高くなる方向を微分方向に決定する。この方法によっても第3実施形態と同様の推定結果を得ることができる。
〔第4実施形態〕
本実施形態では、微分位相像の特徴的な評価値を計算することで微分方向を推定する方法について説明する。本実施形態における推定方法は、光軸方向に垂直な断面が円形である被検体の微分位相像において、その断面(円)の中心を通り微分方向に平行な軸に関し線対称となるように配置した二つの領域の間で微分位相値の総和が原理的に等しくなることを利用する。光軸方向に垂直な断面が円形である被検体としては、球、回転楕円体、円柱、円錐などがある。これらの中でも球形のファントムを被検体として用いるとよい。微分干渉計へ被検体を設置する際に、光軸に対する姿勢(傾き)を気にしなくてよいため、設置が容易だからである。
本実施形態では、微分位相像の特徴的な評価値を計算することで微分方向を推定する方法について説明する。本実施形態における推定方法は、光軸方向に垂直な断面が円形である被検体の微分位相像において、その断面(円)の中心を通り微分方向に平行な軸に関し線対称となるように配置した二つの領域の間で微分位相値の総和が原理的に等しくなることを利用する。光軸方向に垂直な断面が円形である被検体としては、球、回転楕円体、円柱、円錐などがある。これらの中でも球形のファントムを被検体として用いるとよい。微分干渉計へ被検体を設置する際に、光軸に対する姿勢(傾き)を気にしなくてよいため、設置が容易だからである。
球形の被検体を用いた例について、図16A、図16Bを用いて具体的に説明する。図16Aはx方向の微分位相像を示す。微分位相像上に設定した実線枠内(以下、領域Uと呼ぶ)の微分位相値の平均または総和と、点線枠内(以下、領域Dと呼ぶ)の微分位相値の平均または総和は、図中に示したθ1が微分方向に対応する角度のとき、等しくなる。図16Bに示すy方向の微分位相像についても同様のことが成り立つ。図16Bに示した実線枠内(以下、領域Lと呼ぶ)の微分位相値の平均または総和と、点線枠内(以下、領域Rと呼ぶ)の微分位相値の平均または総和は、図中に示したθ2が微分方向に対応する角度のとき、等しくなる。すなわち微分方向を推定するには、次式で示す評価関数が最小となるθ1およびθ2を見つければよい。式(7)は、二つの領域内の微分位相値の総和の差の絶対値を評価値とする評価関数である。
ただし、ΣAは領域A内の総和を取ることを意味する。
ただし、ΣAは領域A内の総和を取ることを意味する。
本実施形態における、微分位相像の取得から被検体情報の取得までの工程を図4を参照して説明する。図4に示す各工程は、演算装置160が実行する処理である。
第1工程では、演算装置160は、検出器140から得た干渉縞に基づいて、微分位相像を取得する。第2工程では、演算装置160は、微分位相像に対し、微分方向を探索する角度範囲、すなわち式(7)におけるθ1,θ2の範囲を設定する。第3工程では、演算装置160は、評価値を計算する二つの領域を設定する。具体的には、演算装置160は、x方向の微分位相像において、被検体の中心を通り、且つ、xD軸200に対し角度θ1をなす直線を対称軸202に設定し、その対称軸202に関して線対称となるように二つの領域U,Dを設定する(図16A参照)。また、演算装置160は、y方向の微分位相像において、被検体の中心を通り、且つ、yD軸203に対し角度θ2をなす直線を対称軸204に設定し、その対称軸204に関して線対称となるように二つの領域L,Rを設定する(図16B参照)。図16A、図16Bでは、矩形の領域を例示したが、領域の形状およびサイズは任意である。二つの領域が線対称であり且つ被検体の少なくとも一部を含んでいればよい。第4工程では、演算装置160が、設定した角度範囲でθ1,θ2の値を所定の刻みで変えながら、式(7)の評価関数を計算する。第5工程では、演算装置160が、評価関数が最小値をとるθ1,θ2を求めることで、微分方向x1,y2を決定する。第6工程では、演算装置160が、推定した微分方向x1,y2を利用して、位相像などの被検体情報を取得する。
(実施例4)
第4実施形態の方法をコンピュータシミュレーションにより実施した例について説明する。実施例1と同様に、球状の被検体170を用い、回折格子120の周期方向xgが検出器140の画素配列方向xDに対し反時計回りに15度傾いていると仮定した。第1工程において取得される微分位相像は実施例1と同一とした。第2工程で評価関数を計算するθ1の範囲を10度から20度と設定した。第3工程において、x方向の微分位相像に対し、図16Aに示した2つの領域U,Dを設定した。第4工程として、第2工程で設定した各θ1に対して式(7)に基づいて評価値fxを計算した。得られた評価値fxを図17に示す。θ1=15度のときに評価値fxが最小となることがわかる。第5工程では、θ1=15度の方向を微分方向x1とした。第6工程で、式(2)を用いて、微分方向x1について微分位相像を積分した。得られる位相像は実施例1で取得した位相像と同一であり、図9に示されている。本実施例の推定方法によっても、実施例1と同様、微分位相像の微分方向を精度良く推定でき、従来に比べて高精度の被検体情報を得ることができる。なお、ここでは、一方向の微分位相像φxのみについて説明したが、別の方向の微分位相像φyについても微分方向y1を推定してもよい。
第4実施形態の方法をコンピュータシミュレーションにより実施した例について説明する。実施例1と同様に、球状の被検体170を用い、回折格子120の周期方向xgが検出器140の画素配列方向xDに対し反時計回りに15度傾いていると仮定した。第1工程において取得される微分位相像は実施例1と同一とした。第2工程で評価関数を計算するθ1の範囲を10度から20度と設定した。第3工程において、x方向の微分位相像に対し、図16Aに示した2つの領域U,Dを設定した。第4工程として、第2工程で設定した各θ1に対して式(7)に基づいて評価値fxを計算した。得られた評価値fxを図17に示す。θ1=15度のときに評価値fxが最小となることがわかる。第5工程では、θ1=15度の方向を微分方向x1とした。第6工程で、式(2)を用いて、微分方向x1について微分位相像を積分した。得られる位相像は実施例1で取得した位相像と同一であり、図9に示されている。本実施例の推定方法によっても、実施例1と同様、微分位相像の微分方向を精度良く推定でき、従来に比べて高精度の被検体情報を得ることができる。なお、ここでは、一方向の微分位相像φxのみについて説明したが、別の方向の微分位相像φyについても微分方向y1を推定してもよい。
なお、第4実施形態では、微分方向と平行に対称軸を設定したが、微分方向と垂直に対称軸を設定してもよい。すなわち、図16Aのx方向の微分位相像に対し、図16Bの領域L,Rのような評価領域を設定するのである。この場合、二つの領域内の微分位相値の総和または平均値の和が最小となる角度を微分方向と推定することができる。
〔第5実施形態〕
本実施形態では、振幅像の特徴的な評価値を計算することで微分方向を推定する方法について説明する。ここで、振幅像とは散乱像と吸収像の積をいう。本実施形態における推定方法は、振幅像において、被検体の中心を通り且つ微分方向に垂直な直線上の振幅値が最小になることを利用する。
本実施形態では、振幅像の特徴的な評価値を計算することで微分方向を推定する方法について説明する。ここで、振幅像とは散乱像と吸収像の積をいう。本実施形態における推定方法は、振幅像において、被検体の中心を通り且つ微分方向に垂直な直線上の振幅値が最小になることを利用する。
球形の被検体を用いた例について、図18を用いて具体的に説明する。図中において被検体の中心210を通る直線上の振幅値の平均値を考えると、直線211が微分方向212と垂直な時に平均値が最も小さくなることが分かる。従って第2実施形態で波数空間に掛けたフィルター関数(図12の符号201)と同様な形状のフィルターを振幅像に掛け、得られた振幅値の総和もしくは平均値を評価することで、微分方向を推定することができる。すなわち以下で表わす評価関数が最小となるθ1およびθ2を見つければよい。
ただし、mxおよびmyはx方向およびy方向の振幅像である。また、gは実空間上のフィルター関数である。
ただし、mxおよびmyはx方向およびy方向の振幅像である。また、gは実空間上のフィルター関数である。
本実施形態における、振幅像の取得から被検体情報の取得までの工程を図5を参照して説明する。図5に示す各工程は、演算装置160が実行する処理である。
第1工程では、演算装置160は、検出器140から得た干渉縞に基づいて、振幅像を取得する。本実施形態では、干渉縞から被検体170の散乱像と吸収像を生成し、それらを画素毎に乗算することで振幅像を得る。第2工程では、演算装置160は、微分方向を探索する角度範囲、すなわち式(8)におけるθ1,θ2の範囲を設定する。第3工程で
は、演算装置160が、振幅像の評価領域を抽出するフィルター関数を設定する。フィルターの形状は、振幅像における被検体の中心を通り、微分方向に対し垂直な方向に細長く延びる形状(例えば、帯状、矩形状など)であるとよい。第4工程では、演算装置160が、設定した角度範囲でθ1,θ2の値を所定の刻みで変えながら、式(8)の評価関数を計算する。第5工程では、演算装置160が、評価関数が最小値をとるθ1,θ2を求めることで、微分方向x1,y2を決定する。第6工程では、演算装置160が、推定した微分方向x1,y2を利用して、位相像などの被検体情報を取得する。
は、演算装置160が、振幅像の評価領域を抽出するフィルター関数を設定する。フィルターの形状は、振幅像における被検体の中心を通り、微分方向に対し垂直な方向に細長く延びる形状(例えば、帯状、矩形状など)であるとよい。第4工程では、演算装置160が、設定した角度範囲でθ1,θ2の値を所定の刻みで変えながら、式(8)の評価関数を計算する。第5工程では、演算装置160が、評価関数が最小値をとるθ1,θ2を求めることで、微分方向x1,y2を決定する。第6工程では、演算装置160が、推定した微分方向x1,y2を利用して、位相像などの被検体情報を取得する。
(実施例5)
第5実施形態の方法をコンピュータシミュレーションにより実施した例について説明する。実施例1と同様に、球状の被検体170を用い、回折格子120の周期方向xgが検出器140の画素配列方向xDに対し反時計回りに15度傾いていると仮定した。第1工程で取得される振幅像を図18のように設定した。第2工程で評価関数を計算するθ1の範囲を10度から20度と設定した。第3工程では、図19に示した帯状(直線形状)のフィルターを用いた。このフィルターはθ1+90度の傾きをもつように設定される。フィルターを振幅像に掛けることで、図19の白色で示される評価領域内の振幅値が抽出される。第4工程として、式(8)で示した評価関数fxの値を各θ1について計算した。計算した評価値fxを図20に示す。θ1=15度のときに評価値fxが最小となることがわかる。第5工程では、θ1=15度の方向を微分方向x1とした。第6工程で、式(2)を用いて、微分方向x1について微分位相像を積分した。得られる位相像は実施例1で取得した位相像と同一であり、図9に示されている。本実施例の推定方法によっても、実施例1と同様、微分位相像の微分方向を精度良く推定でき、従来に比べて高精度の被検体情報を得ることができる。なお、ここでは、一方向の微分位相像φxのみについて説明したが、別の方向の微分位相像φyについても微分方向y1を推定してもよい。
第5実施形態の方法をコンピュータシミュレーションにより実施した例について説明する。実施例1と同様に、球状の被検体170を用い、回折格子120の周期方向xgが検出器140の画素配列方向xDに対し反時計回りに15度傾いていると仮定した。第1工程で取得される振幅像を図18のように設定した。第2工程で評価関数を計算するθ1の範囲を10度から20度と設定した。第3工程では、図19に示した帯状(直線形状)のフィルターを用いた。このフィルターはθ1+90度の傾きをもつように設定される。フィルターを振幅像に掛けることで、図19の白色で示される評価領域内の振幅値が抽出される。第4工程として、式(8)で示した評価関数fxの値を各θ1について計算した。計算した評価値fxを図20に示す。θ1=15度のときに評価値fxが最小となることがわかる。第5工程では、θ1=15度の方向を微分方向x1とした。第6工程で、式(2)を用いて、微分方向x1について微分位相像を積分した。得られる位相像は実施例1で取得した位相像と同一であり、図9に示されている。本実施例の推定方法によっても、実施例1と同様、微分位相像の微分方向を精度良く推定でき、従来に比べて高精度の被検体情報を得ることができる。なお、ここでは、一方向の微分位相像φxのみについて説明したが、別の方向の微分位相像φyについても微分方向y1を推定してもよい。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。例えば、上記実施形態ではX線を用いたが、ガンマ線など他の放射線を用いることもできる。また、第2実施形態では微分位相像の空間周波数スペクトルを用いて微分方向を推定したが、振幅像の空間周波数スペクトルを用いても推定が可能である。また、第5実施形態では振幅像を用いて微分方向を推定したが、微分位相像を用いても推定が可能である。また、上記実施形態では、格子として2次元の格子を用いた微分干渉計について説明をしたが、1次元の格子を用いた微分干渉計にも上記実施形態を適用することができる。1次元格子を用いる場合は微分方向が1つであるため、各実施形態に2方向分記載した評価関数のうち1つの評価関数を用いれば、微分方向を推定することができる。
上記実施形態では、被検体のモアレ縞又は干渉縞から得られる情報を解析して微分方向を推定し、その推定微分方向を利用して被検体自体の微分位相像の積分やアンラップなどの演算処理を行っている。このように被検体を計測するたびに微分方向推定を行うことで、より正確な被検体情報の取得が可能となる。しかし、微分方向推定は必ずしも毎回実施しなくてもよい。回折格子120、遮蔽格子130、および、検出器140の相対位置・角度がずれたり、いずれかの部材が経年劣化しない限りは、微分方向は殆ど変化しないからである。したがって、装置の設置やメンテナンスなどのタイミング、あるいは、例えば一日に一回とか一月に一回などの頻度で、微分方向推定を実施する構成でも構わない。すなわち、放射線撮像装置のキャリブレーションの一つとして、微分方向の調整を行うのである。キャリブレーションで得られた微分方向の情報は、演算装置160の記憶部(メモリ)に格納しておき、被検体計測時には記憶部から読み込んだ微分方向を用いて微分位相像の積分やアンラップなどの演算処理を行えばよい。キャリブレーションの場合には、実際の被検体ではなく、形状や組成が既知のファントムを用いて微分方向の推定処理を行うとよい。ファントムの方が高精度なキャリブレーションが可能となるからである。
110:X線源、120:回折格子、130:遮蔽格子、140:検出器、150:制御装置、160:演算装置、170:被検体
Claims (15)
- 被検体を透過した放射線により形成される干渉縞を取得する微分干渉計と、
前記微分干渉計で得られる干渉縞を解析することにより、前記微分干渉計の微分方向を推定する演算装置と、
を有することを特徴とする放射線撮像装置。 - 前記微分干渉計は、前記干渉縞を形成するための回折格子を有しており、
前記微分方向は、前記回折格子の周期方向である
ことを特徴とする請求項1に記載の放射線撮像装置。 - 前記微分干渉計は、トールボット干渉計である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線撮像装置。 - 前記演算装置は、前記干渉縞に基づいて微分位相像を取得し、前記微分位相像を用いて前記微分方向を推定する
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の放射線撮像装置。 - 前記演算装置は、
前記微分位相像に対し設定された角度範囲に含まれる複数の方向について、各方向に沿った微分位相値の総和を計算し、
前記複数の方向のうち、微分位相値の総和が最小となる方向を前記微分方向に決定することを特徴とする請求項4に記載の放射線撮像装置。 - 前記演算装置は、
前記干渉縞に基づいて吸収像を取得し、
前記吸収像に対し設定された角度範囲に含まれる複数の方向について、各方向に前記吸収像を微分することによって、複数の微分吸収像を取得し、
前記複数の方向のうち、微分位相像と微分吸収像との相関が最も高くなる方向を前記微分方向に決定する
ことを特徴とする請求項4に記載の放射線撮像装置。 - 前記演算装置は、
前記干渉縞に基づいて吸収像を取得し、
前記微分位相像に対し設定された角度範囲に含まれる複数の方向について、各方向に前記微分位相像を積分することによって、複数の位相像を取得し、
前記複数の方向のうち、位相像と吸収像との相関が最も高くなる方向を前記微分方向に決定する
ことを特徴とする請求項4に記載の放射線撮像装置。 - 前記演算装置は、
前記微分位相像に対し設定された角度範囲に含まれる複数の方向について、前記被検体の中心を通り且つ各方向に平行な軸に関し線対称となるように二つの領域を配置し、それぞれの領域内の微分位相値の総和を計算し、
前記複数の方向のうち、微分位相値の総和が二つの領域のあいだで最も等しくなる方向を前記微分方向に決定する
ことを特徴とする請求項4に記載の放射線撮像装置。 - 前記演算装置は、前記干渉縞に基づいて微分位相像の空間周波数スペクトルを取得し、前記空間周波数スペクトルを用いて前記微分方向を推定する
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の放射線撮像装置。 - 前記演算装置は、
前記空間周波数スペクトルに対し設定された角度範囲に含まれる複数の方向について、原点を通り且つ各方向に垂直に延びる領域内の空間周波数成分の総和を計算し、
前記複数の方向のうち、空間周波数成分の総和が最小となる方向を前記微分方向に決定する
ことを特徴とする請求項9に記載の放射線撮像装置。 - 前記演算装置は、前記干渉縞に基づいて振幅像を取得し、前記振幅像を用いて前記微分方向を推定する
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の放射線撮像装置。 - 前記演算装置は、
前記振幅像に対し設定された角度範囲に含まれる複数の方向について、前記被検体の中心を通り且つ各方向に垂直に延びる領域内の振幅値の総和を計算し、
前記複数の方向のうち、振幅値の総和が最小となる方向を前記微分方向に決定する
ことを特徴とする請求項11に記載の放射線撮像装置。 - 前記微分方向を推定するために用いられる被検体が、球形のファントムである
ことを特徴とする請求項1〜12のうちいずれか1項に記載の放射線撮像装置。 - 前記演算装置は、推定した前記微分方向を利用する演算処理を行う
ことを特徴とする請求項1〜13のうちいずれか1項に記載の放射線撮像装置。 - 演算装置が、被検体を透過した放射線により形成される干渉縞を微分干渉計から取得する工程と、
前記演算装置が、前記微分干渉計で得られる干渉縞を解析することにより、前記微分干渉計の微分方向を推定する工程と、
を有することを特徴とする微分方向推定方法。
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JP2015126641A JP2017006468A (ja) | 2015-06-24 | 2015-06-24 | 放射線撮像装置および微分方向推定方法 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2019207860A1 (ja) * | 2018-04-24 | 2019-10-31 | 株式会社島津製作所 | 光イメージング装置および画像処理方法 |
JPWO2019087605A1 (ja) * | 2017-10-31 | 2020-04-02 | 株式会社島津製作所 | X線位相差撮像システム |
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-
2015
- 2015-06-24 JP JP2015126641A patent/JP2017006468A/ja active Pending
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