JP2017002340A - Dlc膜コーティング装置及びdlc膜コーティング装置を用いて被覆対象物を被覆する方法 - Google Patents

Dlc膜コーティング装置及びdlc膜コーティング装置を用いて被覆対象物を被覆する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】プラズマ発生の安定性を向上させ、かつ膜堆積に伴う装置の保守作業を低減するDLC膜コーティング装置を提供する。
【解決手段】プラズマ励起用ガスと炭化水素ガスの混合ガスが導入されると共に被対象物が配置されるチャンバー2と、チャンバー2内に被対象物を中心に同軸的に配置された複数の炭素棒電極3及びチャンバー2内に配置された複数のアース電極4からなる電極アセンブリ10と、炭素棒電極3に負の直流電圧を印加するためのパルス電源装置6bと、炭素棒電極3とアース電極4が存在する空間に磁界を印加するための電磁石13とを有することを特徴とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、被覆対象物にDLC(Diamond Like Carbon)膜を被覆するDLC膜コーティング装置及びDLC膜コーティング装置を用いて被覆対象物を被覆する方法に関する。
DLC膜は、高硬度、高耐摩耗、低摩擦などの特性を有し、種々の材料の対象物の表面にコーティングされ利用されている。コーティング法としては、CVD法(Chemical Vapor Deposition)とPVD法(Physical Vapor Deposition)に大別される。
CVD法は、CHやCなどの炭化水素ガスをプラズマなどで分解し、拡散により被覆対象物(基板)に堆積させるものであり、成膜速度が高いという特徴を有する。形成されるDLC膜は水素を含有するため硬度はやや低いが、比較的平滑な表面が得られる。
PVD法は、固体の炭素(ターゲット)にプラズマイオンなどを照射して炭素原子を飛散させ、被覆対象物(基板)に堆積させるスパッタリング法であり、CVD法と比べると膜の密着性が優れているという特徴を有する。形成されるDLC膜が炭素のみであるため、CVD法による膜よりは硬度が高い。(非特許文献1参照。)
特許文献1には、真空チャンバー内にPVDユニットとCVDユニットを備え、PVD膜とCVD膜を交互に積層する例が開示されている。また特許文献2には、下層膜をPVDで形成し、上層膜をCVDで形成することが開示されており、段落[0040]に、下層膜のPVDプロセスにおいて、プラズマ励起用のArガスに加えて、膜質の調整のために若干のCHガスを混入させることが開示されている。
被覆対象物が高分子材料である場合、特許文献3に、下地層としてSiO2膜をスパッタリングで形成し、その上にDLC膜をプラズマCVDで形成する例が開示されている。また特許文献4に、高分子材料表面をプラズマ照射した後に、DLC膜をCVDで形成する例が開示されている。
一方、図8に示すように、発明者等は、ステンレスワイヤ基板35上に、CVD法とPVD法を併用した方法によってDLC膜を形成する方法を提案している(非特許文献2参照)。動作ガスとして、ArとCHの混合ガスを用い、スパッタリングのターゲットである炭素棒を電極として用い、CVDプロセスとPVDプロセスを同時並行で作用させて、両者の特徴を兼ね備えたDLCの単一層を形成するものである。炭素棒電極33は、チャンバー32内の、負の直流バイアスを印加したステンレスワイヤ基板35の周囲に4個配置され、電極に平行な磁場の作用で、四重極マグネトロンプラズマを生成する。
特開2004−190082号公報 特開2009−167512号公報 特開1999−245327号公報 特開2007−097844号公報
J.Plasma Fusion Res. Vol87, No8(2011)548-555 松山聖他、応用物理学会九州支部第60回学術講演会予稿集、1Fa-3、p.171(2013)
上述の構成の四重極マグネトロンプラズマ装置においては、アース電位であるチャンバー壁と炭素電極との距離が、ステンレスワイヤ(基板)と炭素電極の距離より遠いために、炭素電極の電界強度の円周方向分布は、内向き電界が強く、外向き電界が弱いという不均一性があり、マグネトロン放電の電子軌道半径の空間的不均一を招き,放電が不安定となるという問題があった。
また、電気絶縁性のDLC膜がチャンバー内壁に堆積してアース電位に流れる電子電流が減少し、放電が不安定ないしは消滅するという問題を回避するために、定期的にチャンバー内を清掃する保守作業を行う必要があった。
さらに、被覆対象物(基板)が電気絶縁性の材質の場合には,プラズマ生成のための電極として使用できないため、独立したプラズマ生成部が必要であった。
本発明は、上述の点に鑑み、プラズマ発生の安定性を向上させ、かつ膜堆積に伴う装置の保守作業を低減することを目的とした。
本発明に係るDLC膜コーティング装置は、動作ガスとして、プラズマ励起用ガスと炭化水素の混合ガスを用い、スパッタリングのターゲットである炭素棒を電極として用い、CVDプロセスとPVDプロセスを同時並行で作用させてDLC膜を形成するコーティング装置において、プラズマ励起用ガスと炭化水素ガスの混合ガスが導入されると共に被対象物が配置されるチャンバーと、チャンバー内に被対象物を中心に同軸的に配置された複数の炭素棒電極と、チャンバー内にあって炭素棒電極の外側に配置された複数のアース電極と、炭素棒電極に負の直流電圧を印加するための電源と、炭素棒電極とアース電極が存在する空間に磁界を印加するための磁界発生手段とを有する構成とした。
本発明のDLC膜コーティング装置では、陰極である炭素棒電極の近くに、陽極であるアース電極を配置できるため、放電の安定性を飛躍的に向上させることができる。
また、被覆対象物と炭素棒電極及びアース電極を一体とした組み立て体として、チャンバー内への設置、取り外しが可能となるため、アース電極への膜堆積が生じたとしても、それの除去を、いわゆる外段取りでできるため、チャンバー全掃のような保守作業でライン稼働を停止させる必要がない。
さらに、放電が炭素棒電極とアース電極間で可能であるため、被覆対象物が電気絶縁性の材料であっても適用が可能となる。
第1実施の形態に係るDLC膜コーティング装置100の一部断面とする概略構成図である。 Aは、電極アセンブリ10の概略構成図であり、Bは、そのX1−X1断面図である。 DLC膜コーティング装置100の動作説明図である。 DLC膜コーティング装置100を用いて被覆されたシリコーンチューブ5のDLC膜51のSEM断面写真である。 Aは、DLC膜コーティング装置100を用いて被覆されたシリコーンチューブ5の伸長前におけるDLC膜51の光学顕微鏡写真図であり、Bは、DLC膜コーティング装置100を用いて被覆されたシリコーンチューブ5の伸長後におけるDLC膜51の光学顕微鏡写真図である。 AからDは、ガス混合比を変化させたときの、シリコーンチューブ5のラマンスペクトル図である。 Aは、第2実施の形態に係るDLC膜コーティング装置200の電極アセンブリ20の概略構成図であり、Bは、そのX2−X2断面図である。 Aは、従来例の電極アセンブリ30の概略構成図であり、Bは、そのX3−X3断面図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
[第1実施の形態]
図1から図6に、本発明に係るDLC膜コーティング装置の第1実施の形態を示す。第1実施の形態に係る被覆対象物として、図2に示すような電気絶縁性材料のシリコーンチューブ5等にDLC膜コーティングをする装置である。
図1に示すように、第1実施の形態に係るDLC膜コーティング装置100は、動作ガスとしてプラズマ励起用ガスと炭化水素ガスの混合ガスが導入されると共にシリコーンチューブ5が配置されるチャンバー2と、炭素棒電極3及び複数のアース電極4を有する電極アセンブリ10と、炭素棒電極3に負の直流電圧を印加するためのDC電源6aと、炭素棒電極3とアース電極4が存在する空間に磁界を印加するための電磁石13(磁界発生手段)とを有する。
本例において、チャンバー2の形状は、円筒状とするが、断面多角形状等としてもよい。チャンバー2内は、密閉された状態になされ、高真空とするために、ロータリーポンプ14及びターボ分子ポンプ15に接続される。チャンバー2内には、プラズマ励起用ガスと炭化水素ガスの混合ガスが導入される。
本例のチャンバー2は、プラズマ励起用ガスとして、アルゴン(Ar)ガスが導入される。そのため、Arガス供給源11が、Arガスの流量を制御するマスフローコントローラ11a及び導入口11bを介してチャンバー2に接続され、同様に、炭化水素ガスのガス供給源12が、炭化水素ガスの流量を制御するマスフローコントローラ12a及び導入口12bを介してチャンバー2に接続される。本例において、炭化水素として、CH又はC等が使用される。ガス比として、例えば、Arガス:炭化水素ガス=50:50が選択されるが、これに限られない。
図2に示すように、電極アセンブリ10は、チャンバー2内に、陰極となる線状の炭素棒電極3と、陽極となる線状のアース電極4とを有する。チャンバー2内には、被覆対象物としてのシリコーンチューブ5が配置される。炭素棒電極3は、シリコーンチューブ5を中心に同軸的に複数配置され、本実施の形態では、図2のAのX1−X1断面図である図2のBに示すように、シリコーンチューブ5を等角間隔で取り囲むよう4本配置される。より詳しくは、チャンバー2内にチャンバー2の軸方向に沿って延在する4本の炭素棒電極3が、シリコーンチューブ5を中心にしてシリコーンチューブ5の中心に挿通されるバイアス印加用のガイドワイヤ5aから等しい距離d2に配置され、隣接する炭素棒電極3間の距離d3も等しく配置される。すなわち、図2のBにおいて、炭素棒電極3は、チャンバー2内でシリコーンチューブ5を中心とした正方形の各頂点に配置される。本実施の形態では、炭素棒電極3に負のDC電圧を印加するDC電源6aが接続され、炭素棒電極3が負の電位となる。DC電源6aの陽極側は接地される。
アース電極4は、炭素棒電極3に対して均一な電界を形成するため、炭素棒電極3の外側に配置される。アース電極4は、1本の炭素棒電極3に対して等距離の位置に1本以上配置されることが好ましい。本実施の形態におけるアース電極4は、1本の炭素棒電極3に対して、3本のアース電極4が等しい距離d1となるように配置される。アース電極4は8本配置され、隣接するアース電極4は、それぞれ等しい距離d4となるように配置される。炭素棒電極3とアース電極4との距離d1及びガイドワイヤ5aとアース電極4との距離d2は、電圧差に応じた電界が等しくなるように配置される。すなわち、アース電極4は、炭素棒電極3に対してシリコーンチューブ5と反対側で炭素棒電極3を囲むようにして、正方形の頂点及び隣接する頂点の中心に配置される。本実施の形態では、アース電極4が8本配置されることにより、マグネトロンプラズマが、各炭素棒電極3を中心とした円周方向に均一に生成される。
シリコーンチューブ5並びに炭素棒電極3及びアース電極4を一体とした組み立て体として構成することで、チャンバー2内への設置及びチャンバー2からの取り外しを可能とした。これにより、アース電極4への膜堆積が生じたとしても、チャンバー2を全掃する等でライン稼働を停止させる必要がなく、その膜を除去できるようになる。
なお、本実施の形態において、炭素棒電極3は4本とし、アース電極4は8本とした例を示したが、これに限られない。炭素棒電極3は、複数配置され、その外側にアース電極4が、1本の炭素棒電極3に対して等距離の位置に1本以上配置されればよい。均一なDLC膜を形成するために、炭素棒電極3は、4本以上配置されることが好ましい。
炭素棒電極3とアース電極4が存在する空間、すなわち、チャンバー2内の空間に、炭素棒電極3とアース電極4の軸方向に沿った磁界Bを印加するための磁界発生手段として、電磁石13が配置される。電磁石13は、円筒ソレノイド電磁石等で構成することができる。電磁石13の構成は種々考えられ、本例では、チャンバー2の外周側に同軸的に円筒ソレノイド電磁石を巻いて構成されている。ソレノイドコイルに直流電流を印加し、電極に平行な磁場を形成する。図2のBでは、磁界Bは紙面に垂直に表面から裏面に向かって発生させている。磁場の形成は、電磁石ではなく永久磁石で行ってもよい。
シリコーンチューブ5は、チャンバー2内の炭素棒電極3に対してチャンバー2の中心側に配置される。本例では、線状のシリコーンチューブ5が、チャンバー2内の中心、すなわち、正方形に配置された炭素棒電極3の中心位置に軸方向に移送されるように配置される。
シリコーンチューブ5は、供給リールからチャンバー2内に移送され、さらにチャンバー2から出て巻き取りリールに巻き取られてもよい。すなわち、シリコーンチューブ5は、チャンバー2内を通り、支持部材に気密的に挿通されて軸方向に連続的又は間欠的に移送されるように配置される。
シリコーンチューブ5には、バイアス印加用のガイドワイヤ5aが挿通される。本実施の形態では、ガイドワイヤ5aを挿通させたシリコーンチューブ5を被覆対象物とするが、電気伝導性を有する基板を被覆対象物としてもよい。ガイドワイヤ5aには、繰り返し負の電位のパルスバイアスを印加するパルス電源装置6bが接続され、接地される。このパルス電源装置6bは、図示しないが、一例としてパルス変調器と直流電源とから構成することができる。本例では、ガイドワイヤ5aに印加する負の電位のパルスバイアスは、最大値を0V、最小値を−100V、デューティ比を50とするが、これに限られない。本例では、ガイドワイヤ5a側が負の電位となり、アース電極4が接地電位となる。
負のパルスバイアスを印加したことにより、パルスバイアスでは電圧0Vの期間にプラスイオンで中和が起こる。そのため、被覆対象物に直流の負電位を印加すると正電荷蓄積によるチャージアップが起こるという、従来発生していた問題を解消することができる。
次に、DLC膜コーティング装置100の動作を説明する。チャンバー2内を図1に示したロータリーポンプ14及びターボ分子ポンプ15で高真空に保ちつつ、Arガスと炭化水素ガスの混合ガスが導入される。チャンバー2内の気圧を一定の低気圧に維持する。図2に示すパルス電源装置6bを介してガイドワイヤ5aに負のパルス電圧が印加される。チャンバー2は接地する。炭素棒電極3に負のDC電圧が印加される。アース電極4が接地側となってガイドワイヤ5aに負のパルス電圧が印加される。この状態で、電磁石13を介して、チャンバー2内に軸方向の磁界Bを発生させる。すると、図3に示すように、電界E×磁界Bドリフトにおける電子eの軌道が炭素棒電極3の周りに拘束され、炭素棒電極3に対して均一な電界が形成される。炭素棒電極3を取り囲むように全周均一なマグネトロンプラズマが発生する。このときのマグネトロンプラズマは、直流放電プラズマとなる。チャンバー2内にArガスと炭化水素ガスが導入されるため、プラズマの電子がカーボン系ラジカルを常時作り、プラズマCVDが直流的に常に行われる。それに加え、直流プラズマは常に点いていてPVDプロセスも常時行われる。シリコーンチューブ5に到達した炭素スパッタ粒子と炭素ラジカルが,Arや炭素イオンのパルス的な衝撃を受けてDLC化する。
一般に、絶縁性の樹脂チューブ等の基板に100eV程度のエネルギーをもつイオンを衝突させてDLC膜を形成させるが、絶縁性基板に直流ではバイアス電圧はかからない。これに対し、本実施の形態では、シリコーンチューブ5の内側に金属のガイドワイヤ5aを入れて、例えば1kHz、50%のデューティ比で繰り返しパルスバイアスを印加した。このため、瞬間的にイオンを打ち込むことができるようになり、密着性の高いDLC被膜を形成することができる。
従来技術では、被対象物となる基板が導電性であったため、基板そのものを電極として使用していた。一方、基板が電気絶縁性のシリコーンカテーテルでは、プラズマ生成に基板を電極として使用できず、独立したプラズマ生成部が必要であった。そのため、本実施の形態では、炭素棒電極3にマイナスの直流電圧を印加し、近くに陽極となる複数のアース電極を用いた。これにより、電気絶縁性の被対象物に対しても安定したマルチ円筒直流マグネトロン放電プラズマを生成することができるようになった。
従来の電極配置では、ターゲットを兼ねる炭素棒等の棒状陰極の電界強度の円周方向分布が、内向き電界が強く、且つ、チャンバー壁が、陽極となるアース電極のために放電距離が遠くて外向き電界が弱いという不均一性があった。この電界の空間的不均一は、マグネトロン放電の電子軌道半径の空間的不均一を招き、放電の不安定を引き起こしていた。しかし本実施の形態において、陽極となるアース電極4を陰極となる炭素棒電極3の近くに配置することにより、放電を飛躍的に安定化させることを実現した。
DLCは鉄との濡れ性が低く、界面に炭化物層ができにくいため、一般的な鉄系材料には直接コーティングできないという問題があった。例えば、プラズマCVDだけでは中性のラジカル(CH3など)が拡散輸送されて基板表面に到達するのみであり、均一な膜を被膜できなかったが、本実施の形態では、PVD法とCVD法のハイブリッドプロセスを採用することによって、シリコーンチューブ5及びガイドワイヤ5aへの被膜の均一性を向上し、かつ密着力を向上させることができるようになった。
パルスバイアスによって電圧が周期的にオン・オフされることにより、放電時のガイドワイヤ5aの温度上昇を制御することができる。そのため、熱による影響が無視できないシリコーンチューブ5やガイドワイヤ5a等の被覆対象物であっても機械的特性を損なうことなく処理できる。
パルスバイアスでパルス電圧のデューティ比、放電電圧の高低、処理時間、使用周波数等を制御することにより、パルス発生中の被覆対象物の温度を目的に合った温度に制御し、あるいは抑制することができる。
[実験例]
次に、図4から図6を参照してDLC膜コーティング装置100を用いた実験例を示す。
本例では、内径約1.0mm、外径約2.0mm、長さ270mmのシリコーンチューブ5を使用する。シリコーンチューブを挿通するガイドワイヤ5aは約0.85mm、長さ300mmを有する金属ワイヤを使用する。本例の炭素棒電極3は、直径約5mmの線状のものを使用する。
まず、炭素棒電極3の同軸方向に磁界Bを印加することで、ガイドワイヤ5aの周りに同軸円筒DLC膜コーティングを実施する。動作ガスにはArガスを用い、炭化水素ガスにはCを用いて、ガス圧は10Paとした。Arガス及び炭化水素ガスの流量をそれぞれ25sccmとした。パルス電源装置6bからのパルス電圧は、−100Vとし、直流電源からの放電電圧は、400Vとした。磁束密度(B)は250ガウスとした。印加時間(t)は60分とした。本例では、放電電圧を400Vとするが、これに限られない。放電電圧は、プラズマ密度を高くして皮膜の成膜速度を上げるために、300V以上とすることが好ましい。
図4のSEM像に示すように、シリコーンチューブ5には、3.3μmのDLC膜(成膜部)51が形成された。印加時間(t)=60分で3.3μmの成膜部51が形成されたため、成膜速度は、55nm/minを実現した。
図5のAに示すように、シリコーンチューブ5に網目状のDLC膜の成膜部51が形成されたことが観察された。そこで発明者らは、シリコーンチューブ5のような柔らかい基板に対しても剥離しない膜ができたと仮定し、伸張試験を行った。まず、上述したようにDLC膜を成膜したシリコーンチューブ5を、20mmに切断し、10mm伸張させて全長30mmとした。その後、シリコーンチューブ5を元の長さに戻し、光学顕微鏡でその表面を再度観察した。図5のBに示すように、伸張試験後、DLC膜の剥離は確認されなかった。これにより、DLC膜コーティング装置100により、シリコーンチューブ5に対して柔軟性のあるフレキシブルなDLC膜を成膜することができたといえる。
次に、ガス混合比を変化させたときの、シリコーンチューブ5のDLC膜のラマン散乱分光における膜評価を行った。上述した成膜条件とガス混合比以外の条件は同じくして、シリコーンチューブ5に、DLC膜を成膜した。混合ガス合計流量は、50sccmとした。 図6のAからCは、ガス混合比(Ar/C)を、それぞれ4、1、1/4と変化させたときのラマンスペクトル図である。図6のDは、ガス混合比(Ar/C)を0としたときのラマンスペクトル図であり、参考データである。図6に示すように、ガス混合比を上記の範囲で変化させてもラマンスペクトルの形は、ほぼ同形である。何れも若干のDピークが観察され、参考データと比べるとグラファイト化が進んでいるものの、DLC膜としては十分な特性といえる。従って、ガス混合比(Ar/C)として、4〜1/4は、適切な混合比であるといえる。
[第2実施の形態]
続いて、図7を参照して、本発明に係る第2実施の形態としてのDLC膜コーティング装置200の説明をする。DLC膜コーティング装置200は、被覆する対象物50として、電気伝導性を有する金属等にDLC膜コーティングをする。DLC膜コーティング装置200は、第1実施の形態で説明したDLC膜コーティング装置100に対して、電極アセンブリ20内の配置は同じくして、炭素棒電極3及び対象物50に接続する各電源や電圧条件を変更したものである。本実施の形態において、第1実施の形態で説明したのと同じ部材には、同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
DLC膜コーティング装置200は、動作ガスを導入する筒状のチャンバー2が配置される。チャンバー2内には、第1実施の形態と同じく、プラズマ励起用ガスとしてArガスが使用され、Arガスと炭化水素ガスの混合ガスが導入される。
電極アセンブリ20は、チャンバー2内に、4本の炭素棒電極3と、陽極となるアース電極4とを有し、対象物50が配置される。図7のAのX2−X2断面図である図7のBに示すように、炭素棒電極3及びアース電極4は、対象物50を中心として、第1実施の形態の炭素棒電極3及びアース電極4と同じ配置となされる。本実施の形態では、マグネトロンプラズマの生成に必要な円周方向に均一な電界を形成するために、アース電極4が8本配置されるが、炭素棒電極3及びアース電極4の数は、これに限られない。炭素棒電極3は、複数配置され、アース電極4は、1本の炭素棒電極3に対して等距離の位置に1本以上配置されることが好ましい。
チャンバー2内の空間に、炭素棒電極3とアース電極4の軸方向に沿った磁界Bを印加するための、電磁石13が配置される。図7のBにおいて、磁界Bは紙面に垂直に表面から裏面に向かって発生させる。
本例では、線状の対象物50が、チャンバー2内の中心に軸方向に移送されるように配置される。対象物50は、供給リールからチャンバー2内に移送され、さらにチャンバー2から出て巻き取りリールに巻き取られてもよい。すなわち、対象物50は、チャンバー2内を通り、支持部材を気密的に挿通して軸方向に連続的又は間欠的に移送されるように配置される。
図7のAに示すように、対象物50には、バイアス電圧を印加するバイアス電源6dの陰極側が接続され、陽極側は接地される。本実施の形態では、図7のBに示すように、炭素棒電極3には、放電電圧用電源6cが接続され、4つの炭素棒電極3のうち、対角に位置する炭素棒電極3を等電位とする放電電圧を印加する。なお、図中のK1、K2は保護抵抗、Tはトランスを表す。アース電極4は、接地電位となる。
次に、DLC膜コーティング装置200の動作を説明する。第1実施の形態で示し、図1に示したロータリーポンプ14及びターボ分子ポンプ15でチャンバー2内を高真空に保ちつつ、Arガスと炭化水素ガスの混合ガスが導入される。チャンバー2内の気圧を一定の低気圧に維持する。バイアス電源6dを介して対象物50に負の電圧が印加される。チャンバー2は接地する。交流の放電電圧用電源6cを介して4つの炭素棒電極3のうち、対角に位置する炭素棒電極3を等電位とするように、放電電圧が印加される。アース電極4は接地する。この状態で、電磁石13を介して、チャンバー2内に軸方向の磁界Bを発生させる。すると、陰極となされた対角に位置する2つの炭素棒電極3の周りに、図3に示した炭素棒電極3と同様に、電界E×磁界Bドリフトにおける電子eの軌道が拘束され、均一な電界が形成される。この2つの炭素棒電極3を取り囲むように、全周均一なマグネトロンプラズマが発生する。チャンバー2内にArガスと炭化水素ガスが導入されるため、プラズマの電子がカーボン系ラジカルを作り、プラズマCVDが直流的に行われる。それに加え、直流プラズマによりPVDプロセスも行われる。対象物50に到達した炭素スパッタ粒子と炭素ラジカルが,Arや炭素イオンのパルス的な衝撃を受けて、均一なDLC膜が形成される。
放電電圧用電源6cにより交流を印加したことにより、RFバイアスを印加したことになり、被覆対象物に直流の負電位を印加すると正電荷蓄積によるチャージアップが起こるという、従来発生していた問題を解消することができる。
本発明は、電気伝導性部材、医療用器具、特に、医療用カテーテルへの表面処理に適用できる。
2 チャンバー
3 炭素棒電極
4 アース電極
6a DC電源
6b パルス電源装置
6c 放電電圧用電源
6d バイアス電源
10、20 電極アセンブリ
11 ガス供給源
11a マスフローコントローラ
11b 導入口
12 ガス供給源
12a マスフローコントローラ
12b 導入口
13 電磁石
14 ロータリーポンプ
15 ターボ分子ポンプ
100、200 DLC膜コーティング装置

Claims (7)

  1. プラズマ励起用ガスと炭化水素ガスの混合ガスが導入されると共に被対象物が配置されるチャンバーと、
    前記チャンバー内に前記被対象物を中心に同軸的に配置された複数の炭素棒電極と、
    前記チャンバー内にあって前記炭素棒電極の外側に配置された複数のアース電極と、
    前記炭素棒電極に負の直流電圧を印加するための電源と、
    前記炭素棒電極と前記アース電極が存在する空間に磁界を印加するための磁界発生手段とを有するDLC膜コーティング装置。
  2. 前記被覆対象物が電気絶縁性材料であって、その内部に挿通させた金属ワイヤと、
    前記金属ワイヤに負の電位のパルスバイアスを印加する電源装置とを備える請求項1に記載のDLC膜コーティング装置。
  3. 前記金属ワイヤに印加する負の電位のパルスバイアスは、
    最大値が0Vであり、最小値がマイナス100Vであり、デューティ比が50である請求項2に記載のDLC膜コーティング装置。
  4. プラズマ励起用ガスと炭化水素ガスの混合ガスが導入されると共に被対象物が配置されるチャンバーと、
    前記チャンバー内に前記被対象物を中心に同軸的に配置された複数の炭素棒電極と、
    前記チャンバー内にあって前記炭素棒電極の外側に配置された複数のアース電極と、
    前記複数の炭素棒電極のうち、対角に位置する炭素棒電極を等電位とする放電電圧を印加するための電源と、
    前記炭素棒電極と前記アース電極が存在する空間に磁界を印加するための磁界発生手段とを有するDLC膜コーティング装置。
  5. 前記混合ガスが、Arと炭化水素の混合ガスであって、当該混合ガスのAr/炭化水素の比率が4〜1/4の範囲であることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のDLC膜コーティング装置。
  6. 前記炭素棒電極が等間隔で4本以上配置され、その外側に配置される前記アース電極が1本の炭素棒電極に対して、等距離の位置に1本以上配置される請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のDLC膜コーティング装置。
  7. 請求項1から6の何れか1項に記載のDLC膜コーティング装置を用いて前記被覆対象物を被覆する方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN110042348A (zh) * 2019-03-12 2019-07-23 深圳奥拦科技有限责任公司 等离子表面处理装置及方法
CN113474483A (zh) * 2019-02-07 2021-10-01 朗姆研究公司 能时间和/或空间上调制一或更多等离子体的衬底处理

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