JP2017000088A - 植物保護能力を有する微生物 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた植物保護能力を有しており、且つ実用化において利用価値の高い新規な微生物の提供、及び当該微生物を利用した効果的な植物の保護技術の提供。【解決手段】特定な配列からなる塩基配列と95%以上の同一性を有する塩基配列からなる核酸を含む微生物、及び、当該微生物を含む生物農薬、及び当該微生物を利用した植物の保護方法。シュードモナス属の細菌であり、phl遺伝子クラスター及びhcn遺伝子クラスターを有し、plt遺伝子クラスター及びprn遺伝子クラスターを有せず、rzx類縁体遺伝子クラスターを更に有する微生物。ピシウム属菌及びフザリウム属菌に関連する植物病に対する植物保護剤である生物農薬。【選択図】なし

Description

本発明は、植物保護能力を有する新規微生物に関する。より具体的には、本発明は、特定の塩基配列からなる核酸を含む微生物、当該微生物を含む生物農薬、及び当該微生物を利用した植物の保護方法に関する。
植物を病害から保護する効果を有する細菌はバイオコントロール細菌と呼ばれており、それらの中には微生物農薬として既に有効利用されている系統がある。微生物農薬による植物の病害防除技術は、化学農薬による防除技術(いわゆる、ケミカルコントロール)と比べて環境への負荷が低いことなど多くの利点を有している。その一方で、生物機能を利用するが故に、化学農薬と比較して効果が持続的に発揮されないことや農薬としての取り扱いが難しいことなど、生物素材ならではの問題点も多く、使用する微生物の生態や表現型に理解を深めつつ、更なる改良を加えることが望まれている。
Pseudomonas(シュードモナス)属細菌は環境中に広く生息するグラム陰性細菌であり、そのうちのPseudomonas fluorescensに属する細菌には微生物農薬として利用されている系統がいくつか含まれている。そのような細菌が用いられた微生物農薬としては、セル苗元気(多木化学、特許文献1)、ベジキーパー(登録商標)水和剤(セントラル硝子)等が挙げられる。P. fluorescensの一部は近年ではP. protegensと称されており、Pf−5株やCHA0株等の優れた効果を有する種類も存在している。しかしながら、前述したように効果の不安定性が指摘されることなどから、化学農薬の代替利用が期待されてはいるものの、実際のところは農業現場における普及は進んでいないのが現状である。
特許第4079209号
本発明は、上記の問題点等に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、優れた植物保護能力を有しており、且つ実用化において利用価値の高い新規な微生物を提供することにある。また、本発明が解決しようとする課題は、当該微生物を利用した効果的な植物の保護技術を提供することにある。
課題を解決しようとする手段
本発明者はこれまで、バイオコントロール細菌の一つであるPseudomonas protegens CHA0株(旧学名Pseudomonas fluorescens CHA0株)をモデルとして、植物保護能力に関与する因子を明らかにしてきた。かかる知見を利用して、本発明者は、日本国内の植物根圏から分離したおよそ2800株のPseudomonas属細菌をスクリーニングし、既知の抗菌性物質合成遺伝子の特定の組み合わせから、これまでには報告されていない極めて効果の高い新規微生物を単離することに成功した。この新規に得られた微生物を利用して、本発明者は、本発明を完成するに至った。
本発明は、好ましくは以下に記載するような態様により行われるが、これに限定されるものではない。
[態様1]配列番号1又は2で表される塩基配列と95%以上の同一性を有する塩基配列からなる核酸を含む、微生物。
[態様2]シュードモナス(Pseudomonas)属細菌である、態様1の微生物。
[態様3]phl遺伝子クラスター及びhcn遺伝子クラスターを有する、態様1又は2の微生物。
[態様4]plt遺伝子クラスター及びprn遺伝子クラスターを有さない、態様1〜3のいずれか1の微生物。
[態様5]rzx類縁体遺伝子クラスターをさらに有する、態様1〜4のいずれか1の微生物。
[態様6]シュードモナス(Pseudomonas)sp. Os17株(受領番号NITE AP−02053)又はシュードモナス(Pseudomonas)sp. St29株(受領番号NITE AP−02054)である、態様1の微生物。
[態様7]態様1〜6のいずれか1の微生物を含む、生物農薬。
[態様8]植物保護剤である、態様7の生物農薬。
[態様9]ピシウム(Pythium)属菌又はフザリウム(Fusarium)属菌に関連する植物病に対する植物保護剤である、態様8の生物農薬。
[態様10]態様1〜6のいずれか1の微生物を植物に接触させる工程を含む、植物の保護方法。
本発明によって、極めて優れた植物保護能力を有する微生物を提供することができる。また、その優れた植物保護能力を利用して、従前の微生物農薬と同等、或いはそれよりも優れた微生物農薬を提供することができる。さらに、本発明の微生物を利用することによって、効果的な植物の保護方法を提供することもできる。
本発明の微生物は、日本国内の植物根圏から得られたことから、日本国内での実用化が可能である。そのため、本発明の微生物を用いた生物農薬及び植物の保護方法も、日本国内での利用が十分に可能である。
図1は、P. protegens Cab57株とPseudomonas sp. Os17株及びSt29株のBacillus subtilisに対する抗菌性試験の結果を示す図である。Os17株及びSt29株において見られる円は、B. subtilisの生育に対する阻止円を示す。 図2は、P. protegens Cab57株とPseudomonas sp. Os17株及びSt29株のFusarium oxysporumに対する抗菌性試験の結果を示す図である。 図3は、Pseudomonas sp. Os17株及びSt29株、並びにPseudomonas fluorescensグループに属する細菌の全ゲノム配列に基づく系統樹を示す図である。 図4は、Pseudomonas sp. Os17株及びSt29株、並びにPseudomonas protegens Cab57株の間のタンパク質コード配列(CDS)の比較を示す図である。各数値は、CDSの数を示す。 図5は、ゲノム間の比較のために行ったドットプロットの結果を示す図である。AはOs17株とSt29株との比較結果を示し、BはOs17株とP. protegens Cab57株との比較結果を示す。直線部分は2つのゲノム間の類似領域を示し、直線が存在しない部分はゲノムが相違していることを示す。ゲノムの相違が見られた箇所は垂直方向の矢印で示され、ゲノムの反転が見られた箇所は水平方向の矢印で示されている。 図6は、Os17株の野生株(WT)とrzxB欠損変異株(ΔrzxB)とのPythium ultimum及びFusarium oxysporumに対する抗菌性試験の結果を示す図である。AはP. ultimumに対する抗菌作用の結果を示し、BはF. oxysporumに対する抗菌作用の結果を示す。
以下に、本発明について詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本明細書で特段に定義されない限り、本発明に関連して用いられる科学用語及び技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものである。
(1)本発明の微生物
本発明は、新規な微生物を提供するものであり、本発明の微生物は、配列番号1又は2で表される塩基配列と95%以上の同一性を有する塩基配列からなる核酸を含むことを特徴とする。
本明細書において核酸とは、ヌクレオチドがリン酸エステル結合で連結した高分子を意味し、ポリヌクレオチド及びオリゴヌクレオチドの用語と互換可能に使用される。核酸の構造は、1本鎖及び2本鎖のいずれであってもよく、好ましくは2本鎖である。核酸には、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)及びこれらの混成物(例えば、DNA−RNAのハイブリッド2本鎖、DNA及びRNAが1本鎖に連結されたキメラ核酸)が含まれる。本発明における核酸は、好ましくはデオキシリボ核酸(DNA)である。核酸の構成単位には、主としてアデニン(A)、グアニン(G)等のプリン塩基及びチミン(T)、シトシン(C)、ウラシル(U)等のピリミジン塩基が含まれ、これらの修飾物も含まれる。
本発明における核酸は、配列番号1又は2で表される塩基配列と95%以上の同一性を有する塩基配列を含むことを特徴とし、その配列同一性は、好ましくは96%以上、97%以上、98%以上、又は99%以上である。本発明における核酸は、好ましくは配列番号1で表される塩基配列と95%以上(好ましくは96%以上、97%以上、98%以上、又は99%以上)の同一性を有する塩基配列を含む。なお、配列番号1で表される塩基配列と配列番号2で表される塩基配列との間の同一性は98.81%(98.5%以上)である。
本明細書において塩基配列の同一性とは、対象とする2つの核酸間の塩基配列の同一性をいい、当該技術分野において公知の数学的アルゴリズムを用いて作成された塩基配列の最適なアラインメントにおいて一致する塩基の割合(%)によって表される。塩基配列の同一性は、視覚的検査及び数学的計算により決定することができる。また、コンピュータープログラムを用いて同一性を決定することもできる。配列比較コンピュータープログラムとしては、当業者に周知のホモロジー検索プログラム(例えば、BLAST、FASTA)や配列整列プログラム(例えば、ClustalW))、あるいは遺伝情報処理ソフトウェア(例えば、GENETYX(登録商標))などを用いることができる。本明細書における塩基配列の同一性は、具体的には、JSpieciesのウェブサイト(http://imedea.uib-csic.es/jspecies/)で公開されている解析プログラム(BLASTソフトウェアに基づいたJSpieciesプログラム(Richter, M., and Rossello-Mora, R. 2009. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 106:19126-19131.))を用いて、デフォルトの設定条件で求めることができる。
本発明の微生物には、細菌、真菌(酵母、糸状菌等)等のあらゆる微生物が含まれる。本発明の微生物は、好ましくは細菌であり、より好ましくはシュードモナス(Pseudomonas)属細菌である。シュードモナス属細菌としては、シュードモナス フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス プロテゲンス(Pseudomonas protegens)、シュードモナス シリンゲ(Pseudomonas syringae)、シュードモナス クロロラフィス(Pseudomonas chlororaphis)、シュードモナス シンキサンタ(Pseudomonas synxantha)、又はシュードモナス ブラシカセアルム(Pseudomonas brassicacearum)等が挙げられる。本発明の微生物は、既存の種類に属さない新種のシュードモナス属細菌であってもよい。
本発明における核酸には、好ましくはphl遺伝子クラスター及びhcn遺伝子クラスターが含まれる。phl遺伝子クラスターは、2,4−ジアセチルフロログルシノール(2,4−Diacetylphloroglucinol(DAPG))の生合成遺伝子phlを含む遺伝子クラスターである。また、hcn遺伝子クラスターは、シアン化水素(hydrogen cyanide(HCN))の生合成遺伝子hcnを含む遺伝子クラスターである。当該核酸はまた、aprA遺伝子クラスターを含むこともできる。aprA遺伝子クラスターは、プロテアーゼAprAの生合成遺伝子aprAを含む遺伝子クラスターである。phl遺伝子クラスター、hcn遺伝子クラスター及びaprA遺伝子クラスターは、例えば、配列番号1で表される塩基配列と配列番号2で表される塩基配列とに照らし合わせると下記の通り示される。
また、本発明における核酸には、plt遺伝子クラスター及びprn遺伝子クラスターが含まれないことが好ましい。plt遺伝子クラスターは、ピオルテオリン(pyoluteorin)の生合成遺伝子pltを含む遺伝子クラスターである。また、prn遺伝子クラスターは、ピロールニトリン(pyrrolnitrin)の生合成遺伝子prnを含む遺伝子クラスターである。
また、本発明における核酸には、好ましくはrzx類縁体遺伝子クラスターがさらに含まれる。rzx類縁体遺伝子クラスターは、リゾキシン(rhizoxin)類縁体の生合成遺伝子rzxを含む遺伝子クラスターである。rzx類縁体遺伝子クラスターは、例えば、配列番号1で表される塩基配列に照らし合わせると下記の通り示される。
本発明の微生物は、上述の通り、好ましくはシュードモナス属細菌であり、より好ましくは、新規に単離されたシュードモナス(Pseudomonas)sp. Os17株又はシュードモナス(Pseudomonas)sp. St29株であり、最も好ましくはPseudomonas sp. Os17株である。Pseudomonas sp. Os17株及びPseudomonas sp. St29株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(National Institute of Technology and Evaluation(NITE)) バイオテクノロジーセンター 特許微生物寄託センター(NPMD) 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8において、それぞれ受領番号NITE AP−02053及び受領番号NITE AP−02054として寄託されている(受領日:2015年5月20日)。なお、配列番号1で表される塩基配列はPseudomonas sp. Os17株の全ゲノム配列に相当し、配列番号2で表される塩基配列はPseudomonas sp. St29株の全ゲノム配列に相当する。
本発明の微生物は、液体培地又は固体培地(寒天培地)を用いて培養することができる。かかる液体培地又は固体培地は、本発明の微生物が増殖可能なものであれば特に限定されず、当業者に周知の培地材料を用いて作製することができる。そのような培地材料としては、例えば、ペプトン類(カゼインペプトン、獣肉ペプトン、心筋ペプトン、ゼラチンペプトン、大豆ペプトン等)、エキス類(肉エキス、酵母エキス等)、無機物(塩化ナトリウム、塩化カリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム等)、ビタミン類等が挙げられる。本発明の微生物の培地は、微生物の種類等に応じて適宜含有量を調整して自体公知の方法により作製することができる。また、本発明の微生物の培地には、既に調製済みの市販の液体培地又は固体培地を用いることもできる。本発明の微生物の培養に関する条件(温度、湿度、時間等)も当業者の周知技術に基づいて適宜設定することができる。
本発明の微生物の培地の具体例としては、液体培地としてLB培地、NYB培地等が挙げられ、固体培地としてLB寒天培地、NA培地等が挙げられる。また、本発明の微生物は、通常10〜40℃の範囲、好ましくは25〜30℃の範囲で培養することができ、その培養時間は、通常12時間〜2週間、好ましくは1〜2日間である。
(2)生物農薬
本発明はまた、上記(1)で説明した本発明の微生物を含む生物農薬を提供することができる。本明細書において生物農薬とは、生物を利用することにより得られる農薬を意味する。本発明の生物農薬は、本発明の微生物を利用することから微生物農薬と称することもできる。
本発明の生物農薬は、本発明の微生物の植物保護作用を利用することから、植物保護剤として有用である。本明細書において植物保護とは、病原微生物、害虫及び雑草等の有害生物からの植物の保護を意味する。そのため、前記の植物保護剤は、有害生物からの植物の保護剤、又は有害生物の防除剤と換言することもできる。なお、本発明における植物保護能力については、抗菌性のみならず、植物(例えば、根圏、茎、葉等)への定着性や細菌の運動性等も含めた上でその効果の程度が決定される。そのため、たとえ抗菌性が著しく高いとしても、必ずしも植物保護能力も高くなるとは限らない。
本発明で対象とされる有害生物は、好ましくは病原微生物であり、より好ましくは糸状菌である。そのような糸状菌としては、例えば、ピシウム(Pythium)属菌(ピシウム ウルティマム(Pythium ultimum)、ピシウム アファニデルマタム(Pythium aphanidermatum)、ピシウム メガラカンタム(Pythium megalacanthum)等)、フザリウム(Fusarium)属菌(フザリウム オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、フザリウム グラミネアラム(Fusarium graminearum)、フザリウム ソラニ(Fusarium solani)等)、リゾクトニア(Rhizoctonia)属菌、ティエラビオプシス(Thielaviopsis)属菌等が挙げられる。本発明では、特に限定されないが、ピシウム属菌又はフザリウム属菌を対象とすることが好ましく、上記の植物保護剤は、ピシウム属菌又はフザリウム属菌に関連する植物病に対する植物保護剤とすることができる。なお、ピシウム属菌の中ではP. ultimumを対象とすることが好ましく、フザリウム属菌の中ではF. oxysporumを対象とすることが好ましい。
ピシウム属菌に関連する植物病としては、例えば、イチゴ果実腐敗病、インゲンマメ苗立枯病、オーチャードグラス根腐病、オオムギ黄枯病、オクラ苗立枯病、カトレア苗黒腐病、カンラン苗黒腐病、キクピシウム立枯病、キャベツピシウム腐敗病、サツマイモ白腐病、ショウガ根茎腐敗病、スイートピー立枯病、ストック苗腐病、ダイコン腐敗病、タイサイ類ピシウム腐敗病、ダイズ苗立枯病、チューリップ根腐病、テンサイ苗立枯病、デンドロビウム類苗黒腐病、トウモロコシピシウム苗立枯病、トロロアオイ立枯病、ハクサイピシウム腐敗病、ブロッコリーピシウム腐敗病、ベゴニア根腐病、ホウレンソウ立枯病、ラッカセイ立枯病、キュウリ苗立枯病、前記以外の各種農産物の苗立枯病等が挙げられるが、これらに限定されない。
フザリウム属菌に関連する植物病としては、例えば、アカエゾマツ苗立枯病、アカエゾマツ床替苗根腐病、アカクローバ萎凋病、アカシア類苗立枯病、アサガオつる割病、アズキ萎凋病、アズキ立枯病、アスター萎凋病、アスナロ苗立枯病、アスパラガス立枯病、アマ立枯病、アルファルファ萎凋病、イチゴ萎黄病、イリス類尻腐病、インゲンマメ萎凋病、ウド萎黄病、ウメ根腐衰弱病、ウルシ苗立枯病、エンドウ萎凋病、オカヒジキ萎凋病、オクラ立枯病、カーネーション萎凋病、カシ類苗立枯病、カブ萎黄病、カラマツ球果褐変病、カラマツ苗立枯病、カラマツ床替苗根腐病、カリフラワー萎黄病、カンキツフザリウム立枯病*、カンバ類苗立枯病、カンラン腐敗病、キク葉枯病、キク萎凋病、キサラギナ萎黄病、キャベツ萎黄病、キュウリつる割病、キョウナ萎凋病、キリ苗立枯病、ギンネム苗立枯病、グアバ苗立枯病、グラジオラス乾腐病、クリ根腐病、クリムソンクローバ萎凋病、クロッカス乾腐病、ケナフ萎凋病、ケヤキ苗立枯病、ゴボウ萎凋病、ゴマ萎凋病、コマツナ萎黄病、コリアンダー株枯病、コンニャク乾腐病、ササゲ萎凋病、サツマイモつる割病、サトイモ萎凋病、サボテン腐敗病、シクラメン萎凋病、ジャガイモ萎凋病、ジャガイモ乾腐病、シュンギク萎凋病、ショウガ立枯病、ジョチュウギク立枯病、シロウリつる割病、スイートピー株枯病、スイカつる割病、スイセン乾腐病、スギ苗立枯病、スギ床替苗根腐病、ストック萎凋病、セルリー萎黄病、ソラマメ立枯病、ダイコン萎黄病、タイサイ類萎黄病、ダイズ赤かび病、ダイズ立枯病、ダグラスモミ苗立枯病、タマネギ乾腐病、チューリップ球根腐敗病、チョロギ立枯病、デルフィニウム茎腐萎凋病、デンドロビウム類腐敗病、トウガラシ萎凋病、トウガンつる割病、トウモロコシフザリウム茎腐病、トドマツ苗立枯病、トドマツ床替苗根腐病、トマト萎凋病、トマト根腐萎凋病、トマト黒すじ実腐病、トルコギキョウ立枯病、ナス半枯病、ナツシロギク萎凋病、ナラ類苗立枯病、ニガウリつる割病、ニセアカシア苗立枯病、ニラ乾腐病、ニンジン萎凋病、ニンジン黒しみ病、ニンニク乾腐病、ネギ萎凋病、ネギ根腐萎凋病、ネムノキ萎凋病、ハス腐敗病、ハスノハカズラ萎凋病、ハゼノキ苗立枯病、パセリー萎凋病、バナナパナマ病、バニラ立枯病、パパイア立枯病、ハボタン萎黄病、ヒノキ苗立枯病、ヒノキ床替苗根腐病、フェニックス類立枯病、ブナ苗立枯病、フリージア球根腐敗病、ヘチマつる割病、ベニバナ萎凋病、ベニバナインゲン萎凋病、ホウレンソウ萎凋病、ポプラ類苗立枯病、マーガレット萎凋病、マクワウリつる割病、マツ類苗立枯病、マツ類床替苗根腐病、ミツバ株枯病、ミブヨモギ立枯病、ミヤコワスレ萎黄病、メボウキ萎凋病、メロン褐色腐敗病、メロンつる割病、モモ赤かび病、モルッカネム苗立枯病、ヤマジノギク萎凋病、ヤマノイモ褐色腐敗病、ユーカリ類苗立枯病、ユウガオつる割病、ユリ類乾腐病、ラッキョウ乾腐病、ルピナス立枯病、ルリトウワタ萎凋病、レタス根腐病レッドトップフザリウム病、ワタ立枯病等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の生物農薬が保護する植物は、特に限定されないが、農産物であることが好ましい。そのような農産物の種類としては、例えば、野菜、穀物、果物、花、及び豆類等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。また、その具体例としては、ウリ類(キュウリ、スイカ、カボチャ、ズッキーニ、ヒョウタン、ヘチマ、トウガン、テッポウウリ、ユウガオ、ツルレイシ(ニガウリ、ゴーヤ)、メロン等)、イモ類(ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ、ナガイモ、ヤマノイモ等)、根菜類(カブ、ダイコン、ハツカダイコン、ワサビ、ホースラディッシュ、ゴボウ、チョロギ、ショウガ、ニンジン、ラッキョウ、レンコン、ユリ根等)、葉菜類(カラシナ、キャベツ、クレソン、ケール(ハゴロモカンラン)、コマツナ、サイシン、サンチュ、山東菜、シュンギク、シロナ、セリ、セロリ、タアサイ、ダイコンナ(スズシロ)、タカナ、チンゲンサイ、ニラ、菜の花、野沢菜、白菜、パセリ、ハルナ、フダンソウ(スイスチャード)、ホウレンソウ、ミズナ、ミブナ、ミツバ、メキャベツ、ルッコラ、レタス(チシャ)、はなっこりー、ワサビナ等)、果菜類(ナス、ペピーノ、トマト(ミニトマト、フルーツトマト等)、タマリロ、タカノツメ、トウガラシ、シシトウガラシ、ハバネロ、ピーマン(パプリカ、カラーピーマンを含む)、カボチャ、ズッキーニ、キュウリ、ツノニガウリ(キワノ)、シロウリ、ツルレイシ(ゴーヤ、ニガウリ)、トウガン、ヘチマ、ユウガオ、オクラ等)、穀物類(トウモロコシ等)、マメ類(アズキ、インゲンマメ、エンドウ、枝豆(エダマメ)、ササゲ、シカクマメ、ソラマメ、ダイズ、ナタマメ、ラッカセイ、レンズマメ、ゴマ等)、菌茸類(エノキタケ、エリンギ、キクラゲ、キヌガサタケ、シイタケ、シメジ、シロキクラゲ、タモギタケ、チチタケ、ナメコ、ナラタケ、ハタケシメジ、ヒラタケ、ブナシメジ、ブナピー、ポルチーニ、ホンシメジ、マイタケ、マッシュルーム、マツタケ、ヤマブシタケ等)等が挙げられる。
本発明の生物農薬は、好適には種子や幼苗等の生育初期の段階の植物に適用される。また、本発明の生物農薬は、植物の根、葉、茎、枝、幹又は種子等のいずれの部位にも適用可能であるが、好ましくは根(根圏)又は種子に適用される。
本発明の生物農薬は、賦形剤、増粘剤、結合剤、安定化剤、防腐剤、pH調整剤、着色剤、着香剤等の添加剤を用いて組成物(農薬組成物)とすることができる。各種の添加剤は、生物農薬の技術分野において公知の材料を用いることができ、その配合量は、当業者の周知技術に基づいて適宜調整することができる。また、本発明の生物農薬の形態は、液体、固体、ゲル、ペースト等のいずれの形態であってもよく、使用状況等に応じて適宜設定することができる。
本発明の生物農薬における微生物の含有量は、例えば、製剤100g当たり10〜1020CFU、好ましくは10〜1012CFUであるが、植物保護作用が得られる限り特に限定されない。当該含有量は、微生物の種類、微生物の性質(耐乾燥性など)、適用する植物の種類、製剤の形態等に応じて適宜設定することができる。本発明の生物農薬には、本発明の微生物をそのまま添加すればよく、その添加方法は特に限定されない。例えば、上述した方法で本発明の微生物を培養し、液体培地であれば遠心分離等で回収し、固体培地であれば形成コロニーを白金耳等で回収して、本発明の生物農薬に添加することができる。或いは、液体中に保存していた状態から自体公知の方法で凍結乾燥処理を行い、本発明の微生物を固体物として本発明の生物農薬に添加することができる。
(3)植物の保護方法
本発明はまた、上記(1)で説明した本発明の微生物を利用した植物の保護方法を提供することができる。本発明の植物の保護方法は、本発明の微生物又は生物農薬を植物に接触させる工程を含むことを特徴とする。
本発明の微生物を植物に接触させる態様は、最終的に本発明の微生物と植物とが接触する限り、如何なる態様も取り得る。その一つの態様は、本発明の微生物を含む液体を目的の植物に接触させることである。当該液体は、目的の植物に対して全体的に散布してもよいし、部分的に塗布を行ってもよい。このとき、例えば粘性が高い液体を利用すれば、植物への定着性が高まり、それにより植物の保護効果が高くなり得る。特に、種子へのコーティング剤として当該液体を利用すれば、種子の植え始めから長時間にわたって植物保護効果を得ることができる。また、本発明の微生物を含む液体は、植物を栽培する土を介して目的の植物に接触させることもできる。例えば、植物が土中にある状態で、その土の上から本発明の微生物を含む液体をかけて、土中にしみ込んだ当該液体を目的の植物に接触させることができる。或いは、本発明の微生物を含む液体と植物を栽培する土とをあらかじめ混合して、その混合物となる土を植物の栽培に用いて本発明の微生物を当該植物に接触させることができる。前述したコーティング剤、及び本発明の微生物を含む液体と植物を栽培する土との混合物は、いずれも本発明の生物農薬として利用可能である。
本発明の微生物を植物に接触させる別の一態様は、本発明の微生物又はこれを含む組成物を固体物として利用して、かかる固体物を目的の植物に接触させることである。例えば、当該固体物は粉体であり、これを噴霧して植物に接触させることができる。粉体は、本発明の微生物を含む液体を自体公知の方法により凍結乾燥処理するなどして作製することができる。
本発明の微生物の使用量、接触時間、接触温度等のあらゆる条件は、保護対象とする植物の種類や使用状況等に応じて任意に設定することができ、本発明の微生物の植物保護能力が発揮できる限り特に限定されない。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の技術的範囲を限定するためのものではない。当業者は本明細書の記載に基づいて容易に本発明に修飾及び変更を加えることができ、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)新規Pseudomonas属細菌の国内分離株からの探索
P. protegensは普遍的に生息すると言われながら、アジアにおける単離報告例がこれまでになかった。そこで本研究では、P. protegens近縁種の日本国内分離株からの探索を試みた。
まず、日本国内の圃場から単離されたPseudomonas属細菌を2800株準備し、DAPG(2,4-diacetylphloroglucinol)を生産する細菌を調べた。その方法は、DAPG合成遺伝子であるphlDの特異的プライマーPhl2a(5'-GAGGACGTCGAAGACCACCA-3'(配列番号3)及びPhl2b(5'-ACCGCAGCATCGTGTATGAG-3'(配列番号4))を用いてPCRを行った。phlD陽性単離株はdNBYG培地(Duffy and Defago 1999)上で培養し、DAPGの産生はTLC(Keel et al. 1992)により評価した。その結果、上記2800株の中から48株がスクリーニングされた。
次に、これら48株について、他のバイオコントロール因子をコードする遺伝子の有無をさらにPCRにて確認した。当該遺伝子は、prn、plt、hcnとし、PCRに用いたプライマーは下表の通りとした。なお、PRND1及びPRND2はSouza, J. T., and Raaijmakers, J. M. 2003. FEMS Microbiol. Ecol. 43:21-34.、PltBf及びPltBrはMavrodi, O. V., McSpadden Gardener, B. B., Mavrodi, D. V., Bonsall, R. F., Weller, D. M., and Thomashow, L. S. 2001. Phytopathology 91:35-43.、PM2及びPM7-26RはSvercel, M., Duffy, B., and Defago, G. 2007. J. Microbiol. Methods 70:209-213.をそれぞれ参照することができる。
その結果、全ての因子がポジティブとなったものは5菌株であり、全因子のうちprn及びpltのみがネガティブとなったものは7菌株(イネ由来5菌株、ジャガイモ由来1菌株、ヨモギ由来1菌株)であった。過去の研究では全ての因子がポジティブとなった菌株を既に入手しており(Cab57株)、これについては全ゲノム解析を実施している。スクリーニングすべき菌株は、本来的には全因子がポジティブである菌株が好ましいように考えられるが、新規なバイオコントロール因子を備えているのではないかという可能性を考えて、prn及びpltのみがネガティブとなった7菌株に着目した。これらについて16S rRNAの塩基配列を調べたところイネ由来の5菌株は全て同じ配列を示したため、この中から1菌株を単離してOs17株とした。また、イネ由来の5菌株の16S rRNAの塩基配列と1塩基しか異ならず、加えて重要性の高い農作物であるという観点からジャガイモ由来の1菌株を選択し、これをSt29株とした。
(2)新規単離菌株の抗菌性及び植物保護能力
(2)−1.抗菌性試験
新たに単離されたOs17株及びSt29株の抗菌作用を調べるため、Bacillus subtilis及び植物病原菌であるFusarium oxysporumに対する抗菌性試験を行った。
B. subtilisについては、B. subtilis M168株を使用した。各Pseudomonas属細菌(Os17株、St29株、及びP. protegens Cab57株)をGCM(glycerol-casamino acid medium)寒天培地(培地組成は下記の通り)にスポットした後、B. subtilisを培地表面に重層させ、阻止円の大きさで評価した。その結果、Os17株及びSt29株はいずれもP. protegens Cab57株よりも大きな阻止円を形成し、B. subtilisに対して高い抗菌作用を有することが示された(図1)。
植物病原菌については、F. oxysporum MAFF103054(農業生物資源ジーンバンク(http://www.gene.affrc.go.jp/index_j.php)を使用した。Os17株とP. protegens Cab57株との比較、及びSt29株とP. protegens Cab57株との比較を行うよう各Pseudomonas属細菌をOD600=1.5に調整し、その20μLをPDA(potato dextrose agar)培地(培地組成は下記の通り)に画線し、F. oxysporumを培地中央に接種し、培養後のF. oxysporumの菌体位置で抗菌性を評価した。その結果、F. oxysporumの菌体はOs17株よりもP. protegens Cab57株に近づいており、また、St29株よりもP. protegens Cab57株に近づいていた(図2)。これらの結果から、Os17株及びSt29株はいずれもP. protegens Cab57株よりもF. oxysporumに対する抗菌性が高いことが示された。
(2)−2.植物保護能力検定試験
オートクレーブして滅菌水を吸水させたアワを、滅菌シャーレ1枚につき約14gずつ分けて入れ、ピシウム菌(Pythium ultimum、農業生物資源ジーンバンク(http://www.gene.affrc.go.jp/index_j.php)のMAFF番号、MAFF425494)を植菌して、27℃、暗黒下で1週間培養した。滅菌水をしみ込ませた滅菌濾紙の上に、表面滅菌したキュウリの種子(品種:新ときわ地這)を並べ、26℃、24時間、暗黒下に置いて発芽、発根させた。検定に供するPseudomonas属細菌のシングルコロニーをNYB培地(25g/L Nutrient broth (Oxoid)、5g/L Yeast extract (Oxoid))に植菌し、振とう培養した(30℃、180 rpm、24時間)。Pseudomonas属細菌の培養液を遠心にかけて集菌し、滅菌水に懸濁した。OD600=0.1になるよう、50mL容のファルコンチューブにて滅菌水で調整した。バーミキュライト((株)白元)に水を加えてなじませた。無処理用のバーミキュライトを取り分けておき、残りのバーミキュライトについて、1Lにつきピシウム菌感染アワを7gの割合で加え、よく撹拌した。バーミキュライトを、100mL容のフラスコに30mLずつ入れた。キュウリの種を3粒ずつ、発根したもののみバーミキュライトの上にまき、その種子の上にPseudomonas属細菌の調整済み水溶液を3mLずつ滴下した。上から無処理のバーミキュライトを5mLずつかぶせ、シリコン栓をして、明期16時間、暗期8時間、25℃にて1週間栽培した。栽培後、キュウリの生残数を数え、地上部と根に分けて重さを測定した。
結果は下記の通りであり、Os17株は、キュウリの生存率、地上部の生体重、根の生体重の全てにおいて高い値を示し、優れた植物保護能力を有することが明らかとなった。また、St29株の結果も同様に高い数値であり、十分に高い植物保護能力を有することが示された。
(3)ゲノム解析
新たに単離されたOs17株及びSt29株の機能性及び特性を調べるため、各菌株について全ゲノムの塩基配列決定を行った。配列決定に供するため、Os17株及びSt29株からのゲノムDNAの抽出を、キアゲンGenomic DNA buffer set and genomic-tipを用いて行った。これを用い、解析用の8 kb paired end ライブラリを作製し、Roche GS FLX Titanium による次世代シークエンシング解析を行った。シークエンシング解析後、アセンブル解析を実施し、アセンブル結果の最適化を行うことにより、ギャップ無しの単一コンティグ化、および環状化に成功した。
Os17株及びSt29株のゲノムデータは下記の通りであり、これまでに入手していたCab57株と合わせて下表に示す。
また、Os17株及びSt29株に、P. protegensの各種菌株(Cab57、CHA0、Pf-5)、P. fluorescens Pf0-1株、P. fluorescens SBW25株、及びP. fluorescens A506株を加えてゲノムの比較を行った。具体的には、Os17株を基準としてJSpeciesプログラム(Richter and Rossello-Mora 2009)を利用してその他の菌株との配列同一性を調べた。その結果は下記の通りであり、Os17株とSt29株とは極めて近似した全ゲノム配列を有しており、いずれの菌株もその他の従来のPseudomonas属細菌とは異なることがわかった。
さらに本研究では、Os17株及びSt29株とその他のP. fluorescensグループに属する菌株との関係を調べるために、REALPHY(Reference sequence Alignment based Phylogeny builder)(Bertels et al. 2014)を利用して全ゲノム配列に基づく系統樹を作成した(図3)。その結果、Os17株及びSt29株は単系統群を形成し、全ゲノム配列として最も近いものはP. protegensであることがわかった。
(4)Os17株、St29株及びCab57株のゲノム比較
本研究では、Os17株、St29株及びCab57株の3菌株に関して、BLASTpを利用して(カットオフ値:60%)タンパク質コード配列(CDS)の比較解析を行った(図4)。Os17株に特異的な256個のCDS、及びSt29株に特異的な347個のCDSの中に植物保護能力の差の原因となる遺伝子が含まれるものと考えられる。また、Os17株及びSt29株に特異的な519個のCDSの中に、これらの種特有の植物保護能力の高い遺伝子が含まれると考えられる。
3菌株間のCDSの比較解析からは、2つの遺伝子クラスター(hcn及びphl)がOs17株及びSt29株に存在しており、一方で他の2つの遺伝子クラスター(plt及びprn)はこれらの菌株には存在していないことが示された。この結果は、スクリーニングに際して調べた内容と一致していた。その他の遺伝子クラスターとしては、aprA遺伝子クラスターがOs17株及びSt29株において存在していた。またOs17株では、Gac/Rsmシグナル伝達経路に関連する遺伝子が存在しており、100%の同一性でSt29株にも当該遺伝子のホモログが保存されていることがわかった。
上記3菌株についてはさらに、LASTZプログラム(Release 1.02.00)を用いてゲノム配列のアラインメントデータを作成し、R Dotplotのファイルフォーマット(version 3.0.1)を用いて当該データからドットプロットを行って菌株間のゲノム配列の比較解析を行った。その結果、Os17株とSt29株との比較からは、主にrzx類縁体遺伝子クラスター(約79kb)及びプロファージの領域の有無について相違していることがわかり、また、Os17株とCab57株との比較から、rzx類縁体遺伝子クラスターの有無について相違していると同時に、両者のゲノム配列の間では2カ所で大きく反転していることがわかった(図5)。これらの結果とゲノム配列の解析とから、Os17株にはrzx類縁体遺伝子クラスターが特異的に存在していることが判明した。
(5)rzx類縁体遺伝子クラスターの評価
上記の結果からOs17株におけるrzx類縁体遺伝子クラスターの重要性を調べるために、Os17株のrzxB欠損変異株を作製し、野生株との抗菌作用の比較を行った。rzxB欠損変異株は次の通り作製した。下記のプライマーRzxBUF/RzxBUR及びRzxBDF/RzxBDRを用いて、rzxB遺伝子の6790位〜7580位の790bpの領域及び9400位〜10180位の780bpの領域をそれぞれPCRにより増幅した。なおPCRにおいては、高正確性DNAポリメラーゼKOD Plus(東洋紡)を用い、テンプレートとしてOs17株のゲノムDNAを使用した。
増幅させた上記2つの領域をアニールさせて、プライマーRzxBUF/RzxBDRを用いておよそ1.6kbのフラグメントとしてPCR増幅を行った。この増幅させた約1.6kbのフラグメントをpCR-Blunt II-TOPO(Invitrogen)内にクローニングした。インサート領域については、シークエンシング並びにBamHI及びHindIIIでの切り出しにより確認した。シークエンシングを行った後、前記フラグメントをpME3087のBamHI及びHindIII開裂部分にサブクローニングしてpME3087rzxBを作製した。このプラスミドを、E. coli HB101/pME497との三親接合によりE. coli DH5αからOs17株(Pseudomonas sp. Os17)に移動させた。テトラサイクリン感受性細胞の濃縮後に2回目の乗換えを通じてベクターの切除を行い、rzxB欠損変異株を得た。
上記(2)−1と同様の抗菌性試験を実施した。得られたrzxB欠損変異株及び野生株のOs17株をOD600=1.5に調整し、その20μLをプレート培地の端の近くに画線した。抗菌性を評価する植物病原菌として、Pythium ultimum MAFF425494及びFusarium oxysporum MAFF103054を用いた。また、プレート培地は、P. ultimumに対する試験用としてDavis-gly培地とpotato dextrose agar(PDA)培地との1:1混合物を用い、F. oxysporumに対する試験用としてDavis-gly培地を用いた。その結果、P. ultimum及びF. oxysporumの菌体はいずれもrzxB欠損変異株の方に近づいており、rzxB欠損変異株は野生株に対して抗菌作用が低いことがわかった(図6)。この結果から、rzx類縁体遺伝子クラスターの存在が抗菌性を高めるために重要であることが示唆された。
さらにrzx類縁体遺伝子クラスターの重要性の調査を追求するために、rzxB欠損変異株及び野生株のOs17株について上記(2)−2と同様の植物保護能力検定試験を実施した。また、本試験では同時に根圏定着能を調べるためのコロニーカウントも行った。コロニーカウントのため、Pseudomonas属細菌にテトラサイクリン耐性プラスミドpME6031を導入した。コロニーカウントの方法は次の通りである。重さを量った後の根を、0.9% NaClを15mL入れた50mL容のファルコンチューブに入れ、30秒間ボルテックスし、振とう培養器で30分間振とうした。この溶液の1000倍(10-3)、10000倍(10-4)、100000倍(10-5)希釈液を作製し、各希釈液から100μLずつ、NATc100プレート(40g/L Blood agar base (Oxoid)、5g/L Yeast extract (Oxoid)、100mg/L テトラサイクリン)に播種した。室温、暗黒下にて2日間培養した後、Pseudomonas属細菌のコロニーを数えた。
結果は下記の通りであり、Os17株の野生株は根へのコロニー形成がrzxB欠損変異株と同程度でありながらも、野生株の方が、キュウリの生存率、地上部の生体重、根の生体重のいずれにおいてもrzxB欠損変異株よりも高い値を示した。この結果から、上記の抗菌性試験での確認と同様に、rzx類縁体遺伝子クラスターの存在が抗菌性を高めるために重要であることが示唆された。
本発明により提供される技術は、植物として農産物を効果的に有害生物から保護できる観点から農業分野において有用である。本発明により提供される微生物は、農薬分野、特に生物農薬の分野において利用することができる。
本発明の微生物は、上述の通り、好ましくはシュードモナス属細菌であり、より好ましくは、新規に単離されたシュードモナス(Pseudomonas)sp. Os17株又はシュードモナス(Pseudomonas)sp. St29株であり、最も好ましくはPseudomonas sp. Os17株である。Pseudomonas sp. Os17株及びPseudomonas sp. St29株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(National Institute of Technology and Evaluation(NITE)) バイオテクノロジーセンター 特許微生物寄託センター(NPMD) 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8において、それぞれ受領番号NITE P−02053及び受領番号NITE P−02054として寄託されている(受託日:2015年6月30日)。なお、配列番号1で表される塩基配列はPseudomonas sp. Os17株の全ゲノム配列に相当し、配列番号2で表される塩基配列はPseudomonas sp. St29株の全ゲノム配列に相当する。

Claims (10)

  1. 配列番号1又は2で表される塩基配列と95%以上の同一性を有する塩基配列からなる核酸を含む、微生物。
  2. シュードモナス(Pseudomonas)属細菌である、請求項1に記載の微生物。
  3. phl遺伝子クラスター及びhcn遺伝子クラスターを有する、請求項1又は2に記載の微生物。
  4. plt遺伝子クラスター及びprn遺伝子クラスターを有さない、請求項1〜3のいずれか1項に記載の微生物。
  5. rzx類縁体遺伝子クラスターをさらに有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の微生物。
  6. シュードモナス(Pseudomonas)sp. Os17株(受領番号NITE AP−02053)又はシュードモナス(Pseudomonas)sp. St29株(受領番号NITE AP−02054)である、請求項1に記載の微生物。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の微生物を含む、生物農薬。
  8. 植物保護剤である、請求項7に記載の生物農薬。
  9. ピシウム(Pythium)属菌又はフザリウム(Fusarium)属菌に関連する植物病に対する植物保護剤である、請求項8に記載の生物農薬。
  10. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の微生物を植物に接触させる工程を含む、植物の保護方法。
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