本発明の実施態様は、薬物送達のための各種の高分子−炭化水素共役体の文脈においてここに記述される。この技術分野の当業者は、以下の本発明の詳細な説明は、単なる説明的なものに過ぎず、如何なる制限を意図するものではないと認識するだろう。本発明の他の実施態様は、この開示から利益を受ける当業者にとって自明である。本発明の詳細な実施形態は、あくまでも参考として使用される。
明瞭にするために、本明細書には全ての実施形態の定常的な特徴が記載されているわけではない。そのような実際の実施形態の開発において、多数の実施態様−具体的な詳細が、開発者の特定の目標を達成し、これらの具体的な目標は異なることにするためになされなければならないことが理解されるであろう。このような実施形態は複雑かもしないが、それはまだエンジニアリングの日常作業になる。
米国特許公開2012/202,979及び2012/202,890は、参照として組み込まれ、当該公報は、特定の高分子−炭水化物−脂質(PCL)共役体を用いた貧水溶性剤の水性製剤を教示する。これらの特許では、高分子−炭水化物−脂質共役体をどのように製造するか、及び単に共役体を水性溶液に添加することによるその応用について記述した。PCLは、リポソーム又はマイクロエマルションを形成することなく、疎水性薬剤を可溶化するのに有用であることが示されている。
米国特許公開2012/202,979及び2012/202,890で開示された先の発明と異なり、本発明では、高分子−炭水化物共役体中にステロイド酸又は脂肪酸を除く親油性部分を含み、同時に、これらの共役体は、骨格及び3又は4つの付加官能基:1又は2つの脂肪親和性ビタミン類若しくはステロール類、1又は2つ親水性高分子、水溶性ビタミンにより置換されていてもよい1又は2つの炭水化物:を有する基本構造を維持している。一つの化合物中でこれらの官能基の全てを組み合わせることにより、多くの活性成分の製剤の改良を実現することができる。これらの化合物のファミリーの一般構造を図1又は3次元の化学構造1に示す。式中、「B」は骨格(backbone)であり、「P」は高分子(polymer)であり、「H」は親油性ビタミン若しくはステロール又はそれらの類似体であり、「S」は炭水化物である。この新規な共役体は、水系溶液中で貧水溶性剤の溶解性増強剤として機能し、その結果、これらの活性成分の真の水溶液又は非常に安定な乳化懸濁液を形成する。場合によっては、炭水化物は、アルドン酸、糖酸としても分類されるアスコルビン酸等の水溶性ビタミンにより置換されていてもよい。
別の態様において、本発明は、骨格及び3又は付加官能基であって、4つの担体を伴う:1又は2つの脂肪親和性ビタミン類若しくはステロール類、1又は2つ親水性高分子、水溶性ビタミンにより置換されていてもよい1又は2つの炭水化物:を有する化合物を含む。一つの化合物中でこれらの3つの官能基のうちの1つを全て重複させることにより、多くの貧水溶性又は貧浸透性の活性成分の製剤の更なる増強を実現することができる。これらの化合物のファミリーの一般構造も図1に示す。式中、「B」は骨格(backbone)であり、「P」は高分子(polymer)であり、「H」は親油性ビタミン若しくはステロール又はそれらの類似体であり、「S」は炭水化物であり、「D」は3つの担体又は水溶性ビタミンの重複である。
米国特許公開2012/202,979及び2012/202,890で開示された、我々の先の発明との他の相違として、本発明は、脂肪酸により誘導される潜在的な溶血活性を有意に減少させるために、ステロール又はステロール様化合物を含む[Mimura, T. "Fatty acids and sterols of the tunicate, Salpa thompsoni, from the Antarctic Ocean: chemical composition and hemolytic activity". Chemical & pharmaceutical bulletin, 34 (1986) 4562]。ステロールと脂肪酸との組み合わせもまた、脂肪酸単独の溶血作用を減少させることから、必要な場合、第4の担体基として、脂肪酸を含んでもよい。ステロールと異なり、水溶性ステロイド酸(胆汁酸など)も溶血性貧血を誘発する可能性がある[Ilani, A. "The pH dependence of the hemolytic potency of bile salts". Biochimica et biophysica acta, 1027 (1990) 199]。この特殊な理由のため、本発明では、第1の親油性担体として、ステロイド酸又は脂肪酸は選択されないだろう。2つの親油性担体がある場合、そのうちの1つはコレステロール、非溶血性ステロール、又は「脂溶性」ビタミンとすることができる。
本発明の一つの面は、本発明は、ポリエチレングリコールソルビット、ポリオキシエチレン化ヒマシ油(Cremophor)及びグリセロール中でのカプリル酸/カプリン酸のモノ/ジグリセリド(Capmul(登録商標))、ポリグリコール化グリセリド(Labrafac(登録商標))、PEG−6グリセリルモノオレアート又はPEG−6グリセリルリノレート(Labrafil(登録商標))、PEG−8グリセリルカプリレート/カプレート(Labrasol(登録商標))を含む商業的に利用可能なPEG−脂質と比較して、潜在的な溶血活性を有意に減少させるため、ステロール又はステロール類化合物を含む親油性成分において脂肪酸及びステロイド酸非含有である。これらの脂肪酸系脂質−高分子は、水溶性剤の貧水溶性を向上させる一方、より高い脂質−薬物比により溶血性が誘導される。[G.D. Noudeh, P. Khazaeli and P. Rahmani. “Study of the Effects of Polyethylene Glycol Sorbitan Esters Surfactants Group on Biological Membranes.” International Journal of Pharmacology, 4 (2008) 27-33; A.O. Nornooa, D.W. Osborneb, D.S.L. Chow “Cremophor-free intravenous microemulsions for paclitaxel: I: Formulation, cytotoxicity and hemolysis.” International Journal of Pharmaceutics. 349 (2008) 108-116].
米国特許公開2012/202,979及び2012/202,890で開示された、我々の先の発明と更に異なり、本発明は、共役体構造中の剛性成分であり、共役体の脂肪酸尾部が有する同じ移動の自由度を有しないステロール又はトコフェロール担体を含む。担体と隣接する、即ち、高分子は、例えばステロール分子と隣接する高分子鎖の長さ全体に渡って、部分的のその移動の自由度が制限されてもよい。しかしながら、ステロール又はトコフェロール成分は、二層の均一な疎水形態中に空間を形成する一定の効果を有することから、隣接する領域の下の高分子鎖の部分では、移動の自由度が増加する。この環状構造部分から離れた担体基のための空間障害は無視される。
米国特許公開2012/202,979及び2012/202,890で開示された、我々の先の発明と異なり、本発明は、ステロール又はより親油性の「脂溶性」ビタミン担体を含む。表1に示すように(LogP及びLogDは、Marvin Sketchのコンピュータプログラム(ChemAxon Kft, Budapest, Hungary)に基づいて計算した。)、同じ中心骨格、高分子、炭水化物、並びに中心骨格と親油性基との間の連結基に基づいて、油/水相分配(LogP)又は分配係数(LogD)は、先の発明で用いたステロイド酸又は脂肪酸と本発明で利用されるステロール又は「脂溶性」ビタミンとの間で大きく異なる。正の値はより脂溶性であり、負の値はより水溶性である。従って、水溶性及び親油性は単に、炭化水素担体基の固有の性質に基づき、これはPEG−炭水化物−ステロール共役体とPEG−炭水化物−ステロイド酸共役体との間又はステロールとステロイド酸との間の大きな相違を示す。ステロイド酸とステロールとの更なる化学的な相違は、ステロールが1つのヒドロキシ基を有するのみであり、ステロイド酸はカルボキシル基及び複数のヒドロキシ基を含み、より水溶性及び溶血性である。脂肪酸とステロールとのLogP値の相違は小さいが、化学構造及び溶血感受性において両者は異なる分子である。
表1に示すように、ステロールの油/水相分配(LogP)係数は、同じ共役体構造のステロイド酸と著しく異なり、また、LogPは、ポリエチレングリコール鎖をより長くすることにより変化させることができる。しかしながら、ステロイド酸系の共役体のLogP値と合わせるためには、ステロール系共役体において、大きなPEG鎖が必要である。例えば、約107サブユニットのPEG鎖を有するPEG−炭水化物−コレステロールのLogPは−4.79と計算されるのに対し、その約10倍短い、僅か11サブユニットのPEG鎖を有するPEG−炭水化物−コール酸では、−4.98のLogPが得られる。この結果は、ステロールとステロイド酸との化学的及び物理的性質の著しい相違を示している。
本発明の1つの面において、ステロール等の環状親油性基を高分子−炭水化物共役体中に組み入れることにより、疎水性相互作用を有意に増加させることができる。ステロール−高分子共役体中への親油性分子の封入が改善されたこれらの疎水性のため、水溶性は増強される既に記述された脂肪酸−炭水化物−高分子共役体と異なり、本発明では親油性溶質とより強い疎水性相互作用を有するステロール様環状構造担体が存在する。ステロイド酸では、その水酸基からの大きな干渉作用の結果、同様の疎水性相互作用を実現することはできない。一般式1に示したように、コレステロール等のステロールは、中心骨格と結合した後、如何なる遊離の水酸基も有しない。
本発明の1つの面は、親油性担体と疎水性溶質との間の疎水性相互作用のために、遊離の水酸基による潜在的な妨害を減少させるべく、共役体のために利用可能な一つの水酸基を有するステロール又はステロール様分子を含む。
水状−水系の環境下で、高分子−炭水化物の内部は主として非極性であり、炭化水素の溶解性を決定する場合の原理は、「似たもの同士はよく溶ける。」ということである。大多数の貧水溶性化合物は、少なくとも1つのフェニル基等の環状構造を含み;従って、共役体の疎水性ステロール又はトコフェロール頭部と親油性溶質とはお互いに凝集し、「似たもの同士はよく溶ける。」高分子−炭水化物の外側は、主として極性の水分子と相互作用をすることができる極性基であることから、親油性気質が組み込まれた高分子−炭水化物は水可溶性である。
新規な高分子−炭水化物共役体において、極性基が結合された2つの部位及び非極性基を伴う他の部位を有する中心骨格は、優れた溶解性増強剤である。これらは安定な溶液、エマルション、又は水と親油性剤との混合物の形成を助けるだろう。これらの高分子共役体は、液体−液体界面でのエネルギーを吸収することにより、疎水性分子と水との間の界面張力を減少させる。
本発明の1つの面において、ステロール若しくはトコフェロール又は二重結合を有するそれらの類似体は、高分子−炭水化物共役体の好ましい成分である。2つの分子が集合すると、電荷の変化により、分子の一端が僅かに陰性となり、他方が僅かに陽性となるような状況を形成することができる。これは、2つの分子間の引力を更に増加させるだろう。化学的性質を考慮すれば、環状構造と鎖状化合物とは大きく異なる。二重結合を伴う環状構造は、液体又は溶液相中で分子をまとめる分子間力の増加を伴う「分子ハンドル」として考えることができる。環状化合物と鎖状化合物との間の分子間力の相違は、特定の分子の分極性に基づいている。
疎水性相互作用は、液体の水の分子間におけるより高度の動的水素結合の、疎水性溶質による破壊から生成するエントロピー効果として定義される。[T.P. Silverstein, "The Real Reason Why Oil and Water Don't Mix". Journal of Chemical Education. 75(1998) 116-346]。水性媒体中に疎水性溶質が混合された場合、水分子は疎水性溶質と反応しないことから、疎水性溶質の空間を形成するために、水分子間の水素結合が破壊される。このような疎水性効果は、水と非極性溶媒との間の非極性分子の分配係数を測定することにより定量化することができる。分配係数は、エンタルピー(ΔH)及びエントロピー(ΔS)成分を含む移動の自由エネルギーに変換することができる。このような疎水性効果は、非極性溶質の溶媒和殻における水分子の移動性の減少のために、室温でのエントロピー駆動であることが分かっている。新たな水素結合が部分的に、完全に、又は全体的に形成され、疎水性溶質の加入により破壊された水素結合を埋め合わせることから、系のエンタルピー(ΔH)の変化はゼロでも負でも正でもよい。しかしながら、エントロピー(ΔS)の変化が非常に大きいことから、疎水性分子と水との混合の自発性を決定する上で、エンタルピーの変化は些末なことである。ギブス自由エネルギー式、ΔG=ΔH−TΔSによれば、小さい未知のΔHと大きな負のΔSにより、ΔGは正に引っ繰り返るだろう。正のΔGは、疎水性分子と水分子との混合は自発的ではなく、相分離又は凝集を生じることを示す。
本発明の別の面では、高分子−炭水化物−ステロール共役体の親水性−親油性相互作用が十分に平衡を保っている[Griffin WC. "Calculation of HLB Values of Non-Ionic Surfactants," Journal of the Society of Cosmetic Chemists. 5 (1954) 259]。例えば、自発的に半透明マイクロエマルションを形成するための、共役体中の多くを占める高分子部分によって、親水性−親油性のバランス値は12以上を維持している。分散相の濃度を著しく超える何倍も高い界面活性剤又は脂質高分子と共界面活性剤及び/若しくは共溶媒との混合により形成されたマイクロエマルション、又は特殊な装置が必要な機械的に調製された半透明マイクロエマルションと異なり、本発明の高分子−炭水化物−ステロール/脂肪親和性ビタミン共役体は、一般に共溶媒なしで、単一の高分子−炭水化物−ステロール、高分子−炭水化物−トコフェロール、又は高分子−炭水化物−レチノール及び必要な外部高エネルギーにより、自発的に透明溶液又はナノエマルションを形成することができる[Mason TG, Wilking JN, Meleson K, Chang CB, Graves SM. "Nanoemulsions: formation, structure, and physical properties", Journal of Physics: Condensed Matter,18 (2006) R635-R666]。
界面活性剤又は他の脂質ポリマーにより引き起こされる多くの望ましくない副作用及び相対的に高濃度の界面活性剤の存在は、多くの応用に対して不利であるか、あるいはかかる応用を妨げることになるが、本発明の1つの態様では、最小量の高分子−炭水化物共役体により、安定した水溶液又はエマルションを形成することができることから、これは既存の界面活性剤又は他の脂質ポリマーよりも優れていることを示す。更に、マイクロエマルション又は機械的に形成されたナノエマルションの安定性は、希釈、加熱又はpH変更によりしばしば容易に損なわれる。
本発明を実施する際、種々の親水性高分子を用いることが可能であるが、効果についての長い歴史及び一般的に安全と認識されている(GRAS)信望のため、ポリエチレングリコール(PEG)が好ましい。PEGを組み入れた、新規な高分子−炭水化物−ステロール共役体の一般式1は以下の通りである。
一般式1において「backbone」(骨格)は、第1担体、第2担体、及び第3担体の共役のための少なくとも3つの利用可能な結合位置又は部位を含む化合物から選択することができ、利用可能な結合位置又は部位はそれぞれ、消費できるアミノ基、ヒドロキシ基、又はカルボキシル基を含む。前記「backbone」は、グリセロール又はグリセロール様類似体、ポリアミン、ジアミン、トリアミン、テトラアミン、アミノジオール、アミノトリオール、アミノアルコール、及び3つの利用可能な結合位置又は部位を有するアミノ酸、トリオール、テオラオール、エリスリトール、三酸、四酸、四酢酸、グルコヘプトン酸、及び酒石酸からなる群から選択することができ、エチレンジアミン(1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン(プロパン−1,3−ジアミン)、4−アミノ−3−ヒドロキシ酪酸、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−4−アミノ酪酸、l−β−ホモセリン、l−トレオニン、N−β−アミノエチル−グリシン、プトレシン(ブタン−1,4−ジアミン)、カダベリン(ペンタン−1,5−ジアミン)、ヘキサメチレンジアミン(ヘキサン−1,6−ジアミン)、1,2−ジアミノプロパン、ジフェニルエチレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、ジエチレントリアミン、ビス(3−アミノプロピル)アミン、トリエチレンテトラアミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、スペルミン、スペルミジン、ノルスペルミジン、ビス(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン、1,2−ビス(3−アミノプロピルアミノ)エタン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、ジアミノベンジジン、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、メソ−エリスリトール、トリアザシクロノナン、テトラアザシクロドデカン、スレイトール、ジチオスレイトール、トリメチルシクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸、トリメチルビス(ヘキサメチレン)トリアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、アルギニン、オキシリルジアミノプロパン酸、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、3−ブロモ−1,2−プロパンジオール、3−クロロ−1,2−プロパンジオール、3−フルオロ−1,2−プロパンジオール、DL−グリセリン酸、ジアミノプロパン酸、グルコヘプトン酸、及び1,2,4−ブタントリオール、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−酪酸、1,3−ジアミノ−2−プロパノール及び2−(3−アミノプロピルアミノ)エタノール、及び3−((3−アミノプロピル)アミノ)プロパノール;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、リジン、オルニチン、セリン及びトレオニン、ベンジルトリオール又はアミノヒドロキシ安息香酸又はベンゼントリオール、ジヒドロキシ安息香酸、ジアミノ安息香酸、ジアミノフェノール、ジアミノ安息香酸、アミノヒドロキシ安息香酸、アミノサリチル酸、ヒドロキシアントラニル酸、ヒドロキシイソフタル酸、アミノイソフタル酸、4−(ヒドロキシメチル)シクロペンタン−1,3−ジオール、デオキシフコノジリマイシン、デオキシノジリマイシン、プロスタグランジン、ヒドロキシメチルピペリジノール、ジヒドロキシ(ヒドロキシメチル)アミノシクロペンタン、ジアミノフェノール、ベンゼンテトラカルボン酸、ベンゼントリカルボン酸、アミノベンゼンジオール、ジヒドロキシ安息香酸、アミノヒドロキシ安息香酸、トリヒドロキシアニリン、ベンゼントリオール、ジメトキシベンゼンジアミン、トリヒドロキシフェノール、(ジアミノフェノキシ)ベンゼンジアミン、並びにアミノブロモフェノールを含むが、これらに限られない。「炭水化物」には、単糖、二糖、オリゴ糖、アミノ糖、又は糖酸が含まれる。「H」には親油性化合物又はそのジエステルであり、ステロール若しくはステロール様類似体、又は脂溶性ビタミンが含まれるが、これらに限定されない。「X1」、「X2」及び「X3」は、同一の又は異なる、担体基と中心骨格との間の炭素−窒素結合、エステル、エーテル又はアミドの連結体である。各連結体は、単なる酸素、窒素、又は担体基と中心骨格との間にエステル、エーテル若しくはアミドを形成するための他の単一原子でもよい。選択的に、各連結体は、表1及び表2から選択される連結体の単一連結体又は繰り返し連結体でもよい。いくつかの場合、連結体は、共役体の合成に用いる骨格又は機能性基の一部あるいはこれと共に共同して拡張されてもよい。
共役体の典型的なカップリング反応は、N−アルキル化若しくはO−アルキル化を含むアルキル化、エーテル化、エステル化、及びアミド化の化学プロセスの連続又は1以上の組み合わせを含む。一般構造は、それらが機能的に同等とすることができるように、構造体の全てのラセマー(racemer)及び構造異性体を含むことを意味する。PEG鎖は、5〜45のサブユニットからなるものが好ましく、及び実質的に単分散のものが好ましい。「R」はPEG鎖上の末端基であり、種々の化学基から選択することができる。末端基として通常、ヒドロキシ基又はメトキシ基が選択される。「R」は分子量が約650以下のものが好ましい。新たな残基と中心骨格上の利用可能な位置とを直接結合させることにより多くの化合物を組み立てるのに、商業的に利用可能なPEG−脂質モノエステルを用いてもよい。
本発明の1つの態様では、薬物、ペプチド又は生物分子は中心骨格として選択されないだろう。生物活性剤を修飾したプロドラッグと異なり、本発明の主な応用の一つは、薬物送達であり、従って、それ自体が送達媒体である共役体は、化学的に安定であり、好ましくは生体に対して毒性が低いか無毒性である。
PEG鎖の末端基は、各種の化学残基の中から選択することができる。該残基は、分子量が650以下のものが好ましい。該残基には、−NH2、−COOH、−OCH2CH3、−OCH2CH2OH、−COCH=CH2、−OCH2CH2NH2、−OSO2CH3、−OCH2C6H6、−OCH2COCH2CH2COONC4H4O2、−CH2CH2=CH2、C10H16N2O3S、及び−OC6H6が含まれる。前記末端基は、治療剤又は標的化剤の脂質媒体集合物の表面への連結を促進する官能基でもよい。このような連結のために、アミノ酸、アミノアルキルエステル、ビオチン、マレイミド、ジグリシジルエーテル、マレイミドプロピオ酸エステル、メチルカルバメート、トシルヒドラゾン塩、アジド、プロパルギル−アミン、プロパルギルアルコール、スクシンイミジル(NHS)エステル(例えば、プロパルギルNHSエステル、NHS−ビオチン、スルホ−NHS−LC−ビオチン、又はNHSカーボネート)、ヒドラジド、スクシンイミジルエステル、スクシンイミジルタートレート(succinimidyl tartrate)、スクシンイミジルスクシネート、及びトルエンスルホン酸塩が有用である。連結された治療剤及び標的化剤は、Fabフラグメント及び細胞表面結合剤等を含んでもよい。更に、末端基は、葉酸、トランスフェリン、及びモノクローナル抗体、細胞受容体のリガンド又は特異的な結合部位を提供するためにリポソーム表面に結合させることができる特異的ペプチド配列等の分子のような機能性細胞標的リガンドを含んでもよい。末端基は、中性でもよく、あるいは、デカノールアミン、オクタデシロールアミン、オクタノールアミン、ブタノールアミン、ドデカノールアミン、ヘキサノールアミン、テトラデカノールアミン、ヘキサデカノールアミン、オレイルアミン、デカノールトリメチルアンモニウム、オクタデシロールトリメチルアンモニウム、オクタノールトリメチルアンモニウム、ブタノールトリメチルアンモニウム、ドデカノールトリメチルアンモニウム、ヘキサノールトリメチルアンモニウム、トトラデカノールトリメチルアンモニウム、ヘキサデカノールトリメチルアンモニウム、若しくはオレイルトリメチルアンモニウム等の陰性若しくは陽性の荷電を有する頭部基を含んでもよい。他の有用なR基には、脂肪酸、アルコキシ残基等のアルキル基、アミノ酸、並びに単糖、二糖、三糖及び1、2、3、4又はそれ以上の単糖単位をそれぞれ含むオリゴ糖を含む糖類が含まれる。更に、抗体フラグメント等の標的残基及びビタミンもR基として用いることができる。R基の分子量は好ましくは約650以下であり、多数の応用の観点から、標的部位におけるタンパク質との結合及び相互作用を増加させるために、容易に分極する基が好ましい。しかしながら、良好なイオン平衡性のR基は、局所投与ゲル並びに口腔及び喉を標的とする経口溶液等の特定の投与モードに用いるのに有利である。
本発明は、配合に基づくPEG−炭水化物−脂質基の最適化及び改善のために選択する連結化学基を含む。脂質部位、PEG、又は炭水化物と骨格との間の適切な連結体の選択は、以下に記述する幾つかの理由のために重要である。
薬物又は外因性の物質は、正常な人体において必要ではない。理想的には、そのような薬物は完全に活性部位に到達し、疾病を治療し、治療効果を達成後に人体から離れなければならない。しかしながら、薬物の開発者はしばしば、開発中の薬物の70〜90%で水溶性又は浸透性の問題を有し(Thayer, AM. Chemical & Engineering News. 88 (2010) 13 - 18)、そのため、薬物が活性部位に到達して治療効果を奏することができないか、あるいは非常に遅く、また、体内に長時間留まることにより副作用を起こすという苦境に直面する。本発明の目的の1つは、薬物が治療の目的を達成することを助けるために、独特の連結体を伴う高分子−炭水化物−脂質を開発することである。
外因性物質は、続く代謝過程により生体から排除される。最も普遍的なこの過程には、チトクロムP450酵素を含まれる。該酵素は全ての生物体において発見されたタンパク質スーパーファミリーである。ヒトでは、他の哺乳類と同様に、この酵素系は主に肝臓で発見されるが、他の全ての器官及び組織にも存在している。これらの酵素は以下の反応を触媒する:芳香環の水酸化;脂肪族化合物の水酸化;N−、O−及びS−脱アルキル化;N−水酸化;N−酸化;スルホキシド化及び脱アミノ化。本発明の特に重要な点は、新たな脂質から形成された小胞及び新たな脂質それ自体が受けると予見される分解過程である。メトキシ基及びメチルアミノ基は脱メチル化を受けると予測される。アミンはN−酸化又は脱アミノ化を受けると予測される。硫黄結合はS−酸化を受けると予測される。エステル及びアミドは加水分解を受けると予測される。器官又は組織が異なれば、これらの種々の反応を行う能力が異なることから、本発明の更なる目的は、最適化された分解性能を有する連結体を提供することである。
同様に、体内における微小環境の相違は、異なる分解プロセスに有利である。例えば、酸性の胃液はチオール結合の分解に有利である。従って、本発明の別の目的は、種々の生理学的微小環境に適用する薬物送達配合を設計するため及び治療剤の生物適合性を改善するための新規な分子を提供することである。
3つの連結された成分、即ちPEG、炭水化物及び脂肪親和性成分のうち、炭水化物及び捨てロール又は脂溶性ビタミンはヒトにより消化できるのに対し、PEGは消化できない。3つの成分間の連結の破壊により、全てのクリアランスを増加させることができる。従って、本発明は、脂質担体及び薬物送達のための脂質のクリアランス速度を最適化するための種々の生分解性連結体の使用を目的とする。
高分子と結合した場合、分子の如何なる固有の性質は不活性の状態となるだろう。従って、本発明の目的は、特に、共役体中の一部のみでは相対的に毒性を有する場合に、中心骨格と担体基との間の結合を安定化させるための、低い生分解性の連結体を提供することである。
本発明の1つの面は、N−アルキル化若しくはO−アルキル化を含むアルキル化、エーテル化、エステル化、及びアミド化の化学プロセスの連続又は1以上の組み合わせによる共役体のカップリング反応を含む。実際的及び経済的理由から、低コストでいつでも可能な単一の反応からそれらの共役体を得ることが好ましい。
脂質の保持力は、薬物の配合及び体液中での希釈又は循環における薬物の凝集を防ぐ点で重要であろう。本発明は、高分子−炭水化物共役体中により疎水性の担体基を含めることにより、保持力を増強する手段を提供する。更に、共役体の保持力の増強に伴い、典型的には純粋な溶液製剤を形成する投与製剤中で、相対的に低濃度の高分子共役体の無菌ろ過が可能であることから、非経口製剤のための防腐剤の使用を排除することができる。
本発明の共役体中の糖残基は、高分子鎖又は親油性担体よりも大きい表面極性を有する。例えば、これらのPEG−炭水化物共役体は、ナノ懸濁液又はナノ粒子の適用のために、薬物、特に、いくつかの両親媒性薬物又はその他の化合物のより優れた分散性を与える。このことは、媒体の親油性二重層中に区画するための薬物又はその他の化合物のより優れた平衡を与える。
経口投与製剤のために、「Capmul」(登録商標)、「Centrophase」(登録商標)、「Cremophor」(登録商標)、「Labrafac」(登録商標)、「Labrafil」(登録商標)、「Labrasol」(登録商標)、及び「Myverol」(登録商標)等の既存のPEG−脂質を用いる場合、製造プロセス及びコストのために追加の問題をもたらすかもしれない矯味剤を用いてもよい。PEG−炭水化物共役体は通常、他のタイプのPEG−脂質共役体よりも苦味があり、必要により矯味剤により除去することができる。
本発明のPEG−炭水化物共役体は、注射可能な凍結タンパク質及びペプチドの安定化に一般に用いられる糖フリーの注射製剤に調製することができる。注射可能に調製されたPEG−炭水化物共役体は、高温又は高湿度の条件でさえ非常に安定である。医薬製剤における糖の使用の削減又は除去は、糖尿病患者において特に有益である。
本発明の共役体中の高分子鎖は、単分散PEGが好ましい。このような単分散PEG鎖を合成するための材料及び方法は、米国特許出願12/802,197で開示されており、当該開示は、その全体が参照として組み込まれる。好ましくは、特定の共役体中の30%以上のPEG鎖が同じ分子量を有する。より好ましくは、50%以上が同じ分子量を有する。最も好ましくは、80%以上が同じ分子量を有する。
一般に、本発明には、1つのPEG鎖を伴う中心骨格、1つの炭水化物基、及び前記骨格と結合した1つの親油性基を含むPEG−炭水化物−ステロール/(あるいは親油性ビタミン)共役体を合成する方法並びに組成物が含まれる。前記共役は、N−アルキル化若しくはO−アルキル化を含むアルキル化、エーテル化、エステル化、及びアミド化の化学プロセスで進行する。選択された連結体は、前記骨格と前記PEG鎖又は炭水化物との間にエステル、エーテル又はアミド結合を形成するために用いることができる。前記骨格はグリセロール、3つの利用可能な結合位置を有するグリセロール連結体、ジアミン、トリアミン、テトラアミン若しくはポリアミン、ジアミノアルコール、又は3つの利用可能な結合位置を有するアミノ酸を有し、前記親油性担体基は、コレステロール、1つのヒドロキシル基を含むコレステロール類似体、トコフェロール、トコトリエノール、コレカルシフェロール、又はレチノール、レチナール及びレチノイン酸を含む。
本発明の変種には、少なくとも3つの利用可能な結合位置を有する中心骨格として、種々の化合物が含まれる。ジアミン、アミノアルコール、又はアミノ酸等の、2つの利用可能な結合位置を有する分子について、3つの結合位置を有するように化学的方法を通じて拡張してもよい。
高分子−炭水化物−脂質共役体の合成の間、同時に位置異性体が得られてもよく、そのような異性体は機能的に等価であろう。しかしながら、異性体の選択は、医薬への適用のための媒体として使用するのと同様に、親油性分子の細胞内輸送のような送達プロセスの多様性と密接な関係を有していてもよい。例えば、異性体は溶解及び貯蔵の間の化合物の安定化能が異なってもよい。
高分子−炭水化物共役体を調製するために、種々の中心骨格を使用することができるが、ステロール、トコフェロール又はコレカルシフェロールは、の可能性はとても大きい程度の上で「似ているものは同様に溶解する」という役目を果たす能力が大きく増加しているであろうことから、本発明の実施においては、線状又は環状の骨格を組み入れることが非常に有効であることを示している。一般構造1中、「backbone」は、グリセロール若しくはグリセロール様類似体、ポリアミン(ジ、トリ、テトラ、若しくはペンタアミン)、3つの利用可能な結合部位を有するアミノ酸、トリオール、並びにグルココヘプトン酸及び酒石酸等のトリ酸から選択することができる。親油性成分は、これらに限定されないが、コレステロール、スティグマステロール、エルゴステロール、ホパノイド、フィトステロール、シトステロール、カンペステロール、ブラシカステロール、アベナステロール、アドステロール、及びスタノール(飽和ステロイドアルコール又は水素化ステロール)、レチノイド、レチナール、レチノイン酸、トレチノイン、カロテノイド、β−カロテン、α−トコフェロール、トコトリエノール、コレカルシフェロール、エルゴカルシフェロール、アスタキサンチン、アウロキサンチン(auroxanthin)、カプサンチン、カプソルビン、クリサンテマキサンチン(chrysanthemaxanhin)、クリプトキサンチン、フコキサンチン、ルテイン、ネオキサンチン、ルビキサンチン、ビオラキサンチン、ゼアキサンチン(zeaxanthin)を含む群から選択することができる。炭水化物は単糖、二糖、オリゴ糖、アミノ糖又は糖酸を含む糖である。X1、X2及びX3は、同一の又は異なる、担体基と中心骨格との間の炭素−窒素、エステル、エーテル又はアミドの連結体である。各連結体は単なる酸素又は他の単一原子でもよい。選択的に、各連結体は、アミノ酸又は線状の炭素鎖を有する分子の単一連結体又は繰り返し連結体でもよい。いくつかの場合、連結体は、共役体の合成に用いる骨格又は機能性基の一部あるいはこれと共に共同して拡張されてもよい。図には示していないが、本発明は、骨格の中心位置に炭水化物が存在する化合物も含む。しかしながら、化学合成のルート化のために、骨格の中心に代えて末端に炭水化物を有するものが実際的である。本願に示す一般構造は、それらが機能的に同等とすることができるように、構造体の全てのラセマー(racemer)及び構造異性体を含むことを意味する。PEG鎖は、5〜45のサブユニットからなるものが好ましく、及び実質的に単分散のものが好ましい。「R」はPEG鎖上の末端基であり、種々の化学基から選択することができる。「R」は分子量が約650以下のものが好ましい。
好適なアミノ酸リンカーは、プロリン、グリシン、アラニン、リジン、システイン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、ヒスチジン、トリプトファン、チロシン、セレノシステイン、及びアルギニンであり、更に好適なのは、プロリン、グリシン、アラニン、リジン、システイン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニンであり、、最も好適なのはプロリン、グリシン及びアラニンである。
本発明の面における一般構造1中、Xは、担体と中心骨格との間でN−アルキル化、O−アルキル化、エステル、又はアミド結合を形成するための連結体に加えて、1以上の炭素原子を含んでいてもよい。適切であればいつでも、ペプチドを形成するような多数の連結体を避けるために、容易且つ低コストの結合方法を選択しなければならず、該連結体は好ましくは、骨格が容易に担体基と結合するための志向されていることが好ましい。
本発明は 種々の薬物残基を欠いた中心骨格を用いてもよい。骨格は、アルキル化、エステル化、エーテル化又はアミド化を通じた炭水化物、脂質又はPEG付着物のために、少なくとも3つの利用可能な又は2つの拡張可能な部位を有することが好ましい。骨格として用いられる適切な分子としては、これらに限られないが、エタンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ペンタンジアミン、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン(プロパン−1,3−ジアミン)、プトレシン(ブタン−1,4−ジアミン)、カダベリン(ペンタン−1,5−ジアミン)、ヘキサメチレンジアミン(ヘキサン−1,6−ジアミン)、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、ジフェニルエチレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、3−ブロモ−1,2−プロパンジオール、3−クロロ−1,2−プロパンジオール、3−フルオロ−1,2−プロパンジオール、DL−グリセリン酸、ジアミノプロパン酸、酒石酸、グルコヘプトン酸、及び1,2,4−ブタントリオール、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−酪酸、1,3−ジアミノ−2−プロパノール及び2−(3−アミノプロピルアミノ)エタノール、3−((3−アミノプロピル)アミノ)プロパノール、ジエチレントリアミン、スペルミジン、トリエチレンテトラミン、スペルミン、ノルスペルミジン、ビス(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン及びビス(ヘキサメチレン)トリアミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、オルニチン、セリン及びトレオニン、ベンジルトリオール又はアミノヒドロキシ安息香酸又はフェノール様類似体、カルボキシル基又はアミノ基を有するフェニルジオール、及びヒドロキシ基又はカルボキシル基を有するジアミン、ジアミノ安息香酸、アミノヒドロキシ安息香酸、アミノサリチル酸、ヒドロキシアントラニル酸、ヒドロキシイソフタル酸、アミノイソフタル酸からなる群が含まれる。適切な中心骨格は、例えば、4−(ヒドロキシメチル)シクロペンタン−1,3−ジオール、デオキシノフコノジリマイシン、デオキシノジリマイシン、プロスタグランジン、ヒドロキシメチルピペリジノール、ジヒドロキシ(ヒドロキシメチル)アミノシクロペンタン、ジアミノフェノール、ピロメリット酸、トリメリット酸、アミノベンゼンジオール、ジヒドロキシ安息香酸、アミノヒドロキシ安息香酸、トリヒドロキシアニリン、ベンゼントリオール、ジメトキシベンゼンジアミン、トリヒドロキシフェノール、(ジアミノフェノキシ)ベンゼンジアミン、又はアミノブロモフェノールから選択することができる。
本発明において、高分子−炭水化物共役体のための適切な炭水化物は、表2に示すような単糖、二糖又はオリゴ糖を含む。該共役体を得るために、表2に示す炭水化物に加え、これらに限られないが、糖アルコール、糖酸(カルボキシル基を有する糖)、アスコルビン酸、ステビオールグリコシド(レバウディオシドA)、スクラロース、ラクチトール、マルチトール、イソマルト、マルトトリオール、マルトテトライトール、モグロシド、グリチルリチン、イヌリン、グルコヘプトン酸及びオスラジンを含む類似体又は誘導体もまた適切である。
本発明の高分子−炭水化物共役体は、幅広い用途に使用することができる。薬物及び化粧剤の製剤及び送達については既に記述した通りである。それに加えて、本発明の高分子−炭水化物共役体は、水溶性の脂質が有利な他の環境、例えば、工業及び食品加工に用いることができる。
PEG鎖上の末端基は、広く種々の化学基から選択することができる。該化学基として、分子量が650以下のものが好ましい。該化学基は、−NH2、−COOH、−OCH2CH3、−OCH2CH2OH、−COCH=CH2、−OCH2CH2NH2、−OSO2CH3、−OCH2C6H6、−OCH2COCH2CH2COONC4H4O2、−CH2CH2=CH2、C10H16N2O3S、及び−OC6H6を含む。前記末端基は、治療剤又はターゲティング剤とマイクロ小胞凝集体の表面との連結を促進する官能基でもよい。このような連結のために、アミノ酸、アミノアルキルエステル、ビオチン、マレイミド、ジグリシジルエーテル、マレイミドプロピオネート、メチルカルバメート、トシルヒドラゾン塩、アジド、プロパルギルアミン、プロパルギルアルコール、コハク酸イミド(NHS)エステル(例えば、プロパルギルNHSエステル、NHS−ビオチン、スルホ−NHS−LC−ビオチン、又はNHSカーボネート)、ヒドラジド、スクシンイミドエステル、スクシンイミジル酒石酸、スクシンイミジルスクシネート、及びトルエンスルホン酸塩が有用である。連結された治療剤又はターゲティング剤は、Fab断片、細胞表面結合剤等を含んでもよい。更に、前記末端基は、葉酸、トランスフェリン、及びモノクローナル抗体等の分子のような機能性細胞標的リガンドを含んでもよく、特異的な結合部位を提供するために、細胞受容体又は特異的ペプチド配列のためのリガンドを、リポソーム表面に付着させることができる。前記末端基は、デカノールアミン、オクタデシルアミン、オクタノールアミン、ブタノールアミン、ドデカノールアミン、ヘキサノールアミン、テトラデカノールアミン、ヘキサデカノールアミン、オレイルアミン、デカノールトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、オクタノールトリメチルアンモニウム、ブタノールトリメチルアンモニウム、ドデカノールトリメチルアンモニウム、ヘキサノールトリメチルアンモニウム、ドデカノールトリメチルアンモニウム、ヘキサノールトリメチルアンモニウム、テトラデカノールトリメチルアンモニウム、ヘキサデカノールトリメチルアンモニウム、及びオレイルトリメチルアンモニウム等の、中性の又は正若しくは負に荷電した頭部基でもよい。他に有用なR基には、アルコキシ残基等のアルキル基、アミノ酸、並びに単糖、アスコルビン酸、グルコン酸、グルカル酸、グルクロン酸、ガラクツロン酸、二糖、三糖、並びに1、2、3及び4並びにそれ以上の単糖単位をそれぞれ含むオリゴ糖を含む糖類が含まれる。更に、抗体フラグメント及びビタミン等の標的残基もまた、R基として用いられる。通常、R基は水に対する溶解度が高い。標的部位におけるタンパク質との結合及び相互作用を増加させるために、R基の分子量は好ましくは約650以下であり、多数の応用のために、R基は容易に極性を与えるものが好ましい。しかしながら、良好なイオンバランスのR基は、口腔及び咽頭を標的とする局所ゲル又は経口溶液等の特定の適用の方法のために用いるのに有利である。
本発明の別の態様には、以下の一般構造有する3つの担体とPEG−炭水化物との共役体が含まれる。
式中、「backbone」は、これらに限定されないが、ジエチレントリアミン、ビス(3−アミノプロピル)アミン、ビス(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン、トリエチレンテトラアミン、1,2−ビス(3−アミノプロピルアミノ)エタン、スペルミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、スペルミジン、ノルスペルミジン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、ジアミノベンジジン、トリアザシクロノナン、テトラアザシクロドデカン、スレイトール、メソ−エリスリトール、ジチオスレイトール、トリメチルシクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、トリメチルビス(ヘキサ−メチレン)トリアミン、アルギニン、3又は4つの利用可能な結合位置又は部位を有するオキシリルジアミノプロパン酸、トリオール、三酸、グルコヘプトン酸、及び酒石酸の群から選択される、グリセロール若しくはグリセロール様類似体、線状アミン(ジ、トリ、テトラアミン)、又は3つの利用可能な結合部位を有するアミノ酸である;式中、「H」(H1及びH2は同じ又は異なる親油性基でもよい。)は、これらに限定されないが、コレステロール、スティグマステロール、エルゴステロール、ホパノイド、フィトステロール、シトステロール、カンペステロール、ブラシカステロール、アベナステロール、アドステロール、及びスタノール(飽和ステロイドアルコール又は水素化ステロール)、レチノイド、レチナール、レチノイン酸、トレチノイン、カロテノイド、β−カロテン、トコフェロール、トコトリエノール、コレカルシフェロール、エルゴカルシフェロール、アスタキサンチン、アウロキサンチン(auroxanthin)、カプサンチン、カプソルビン、クリサンテマキサンチン(chrysanthemaxanhin)、クリプトキサンチン、フコキサンチン、ルテイン、ネオキサンチン、ルビキサンチン、ビオラキサンチン、ゼアキサンチン(zeaxanthin)を含む親油性成分若しくはそのジエステルの群から選択される、ステロール、脂溶性ビタミン、又は類似体である;「Sugar」は単糖、アスコルビン酸、グルコン酸、グルカル酸、グルクロン酸、ガラクツロン酸、二糖、及びオリゴ糖を含む炭水化物である;式中、3つの置換可能な基が、エーテル化、エステル化若しくはアミド化、又は類似の置換反応を通じて共有的に「Backbone」と結合している。上記の一般構造は、それらが機能的に同等とすることができるように、構造体の全てのラセマー(racemer)及び構造異性体を含むことを意味する。式中、PEG鎖(PEG1、PEG2及びPEG3は同じ又は異なる高分子でもよい。)は、約5〜45のサブユニットからなるものとすることができる。更に、約4〜25のサブユニットからなるPEG鎖が好ましい。式中、「R」(又はRi)はPEG鎖上の末端基であり、種々の化学基から選択することができる。「R」は分子量が約650以下のものが好ましい。PEG−炭水化物−ステロール共役体は、例えば、水溶液中の水溶性の向上の観点から、リポソームよりも応用の上で有益である。一般構造中で担体基は存在していないが、カップリング反応に先立って、担体基又は中心骨格の改変が必要であってもよく、これらの化学的改変は必要に応じて、担体基と中心骨格との間のアルキル化、エーテル化、エステル化、又はアミド化の化学プロセスとすることができる。理想的には、選択された担体又は中心骨格は、改変なしで直接カップリング反応に用いてもよい。式中、「X」(X1、X2、及びX3は、同一の又は異なる連結体でもよい。)は、表2若しくは表3、又はオキシ、アミノ酸、アミノ、スクシニルアミノ、アセトアミド、アミノペンタンアミド、アミノアセチル、チオプロパノイル、N−(メルカプトメチル)プロピオンアミド、メルカプトプロピルチオプロパノイル、(1,2−ジヒドロキシ−3−メルカプト−プロピルチオ)プロパノイル、スクシニル、アセチル、オキソペンタノイル、カルバモイル、アミノアルキル、グルタルアミド、アミノエタンチオール、メルカプトプロパノール、(ヒドロキシプロピルチオ)プロパノイル、3−((2−プロピオンアミドエチル)ジスルファニル)プロパノイル、(((アセトアミドエチル)ジスルファニル)プロパノイルオキシ)グルタルアミド、アミノエタンチオエート、及び2−ヒドロキシ酢酸プロパン酸無水物からなる群か選択される1以上の連結体である。
別の態様において本発明は、以下の一般構造8で表される化合物からなる分子を含む。
式中、「Backbone」(骨格)は、グリセロール若しくはグリセロール様類似体、線状アミン(ジ、トリ、若しくはテトラアミン)、又は3つの利用可能な結合部位を有するアミノ酸から選択され、これらに限定されないが、グリセロール又はグリセロール様類似体、ポリアミン、トリアミン、テトラアミン、アミノジオール、アミノトリオール、アミノアルコール、及び3つの利用可能な結合位置又は部位を有するアミノ酸、トリオール、テオラオール、エリスリトール、三酸、四酸、四酢酸、グルコヘプトン酸、及び酒石酸を含む分子群から選択され、また、これらに限定されないが、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ペンタジアミン、ヘキサジアミン、ジエチレントリアミン、エチレンジアミン、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン(プロパン−1,3−ジアミン)、4−アミノ−3−ヒドロキシ酪酸、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、4−アミノ−2−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−4−アミノ酪酸、l−β−ホモセリン、l−トレオニン、N−β−アミノエチルグリシン、プトレシン(ブタン−1,4−ジアミン)、カダベリン(ペンタン−1,5−ジアミン)、ヘキサメチレンジアミン(ヘキサン−1,6−ジアミン)、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、ジフェニルエチレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、ジエチレントリアミン、ビス(3−アミノプロピル)アミン、トリエチレンテトラアミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、スペルミン、スペルミジン、ノルスペルミジン、ビス(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン、1,2−ビス(3−アミノプロピルアミノ)エタン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、アミノアルコール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、ジアミノベンジジン、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、メソ−エリスリトール、トリアザシクロノナン、テトラアザシクロドデカン、スレイトール、ジチオスレイトール、トリメチルシクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸、トリメチルビス(ヘキサメチレン)トリアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、アルギニン、オキシリルジアミノプロパン酸、3−ブロモ−1,2−プロパンジオール、3−クロロ−1,2−プロパンジオール、3−フルオロ−1,2−プロパンジオール、DL−グリセリン酸、ジアミノプロパン酸、グルコヘプトン酸、及び1,2,4−ブタントリオール、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、1,3−ジアミノ−2−プロパノール及び2−(3−アミノプロピルアミノ)エタノール、及び3−((3−アミノプロピル)アミノ)プロパノール;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、リジン、オルニチン、セリン及びトレオニン、ベンジルトリオール又はアミノヒドロキシ安息香酸又はベンゼントリオール、ジヒドロキシ安息香酸、ジアミノ安息香酸、ジアミノフェノール、ジアミノ安息香酸、アミノヒドロキシ安息香酸、アミノサリチル酸、ヒドロキシアントラニル酸、ヒドロキシイソフタル酸、アミノイソフタル酸、4−(ヒドロキシメチル)シクロペンタン−1,3−ジオール、デオキシフコノジリマイシン、デオキシノジリマイシン、プロスタグランジン、ヒドロキシメチルピペリジノール、ジヒドロキシ(ヒドロキシメチル)アミノシクロペンタン、ジアミノフェノール、ベンゼンテトラカルボン酸、ベンゼントリカルボン酸、アミノベンゼンジオール、ジヒドロキシ安息香酸、アミノヒドロキシ安息香酸、トリヒドロキシアニリン、ベンゼントリオール、ジメトキシベンゼンジアミン、トリヒドロキシフェノール、(ジアミノフェノキシ)ベンゼンジアミン、並びにアミノブロモフェノールを含む群から選択される。式中、「H」は、親油性化合物又はそのジエステルからなる群から選択され、該親油性化合物又はそのジエステルには、これらに限られないが、コレステロール、スティグマステロール、エルゴステロール、ホパノイド、フィトステロール、シトステロール、カンペステロール、ブラシカステロール、アベナステロール、アドステロール、及びスタノール(飽和ステロイドアルコール又は水素化ステロール)、レチノイド、レチノイン酸、トレチノイン、カロテノイド、β−カロチン、α−トコフェロール、トコトリエノール、コレカルシフェロール、エルゴカルシフェロール、アスタキサンチン、アウロキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、クリサンテマキサンチン、クリプトキサンチン、フコキサンチン、ルテイン、ネオキサンチン、ルビキサンチン、ビオラキサンチン、ゼアキサンチンが含まれる。「Sugar」は炭水化物であり、単糖、二糖、オリゴ糖、アミノ糖や糖酸が含まれ、該糖酸には、これらに限定されないが、アスコルビン酸、グルコン酸、グルカル酸、グルクロン酸、ガラクツロン酸が含まれる。式中、3つの置換可能な基が、エーテル化、エステル化若しくはアミド化、又は類似の置換反応を通じて共有的に「Backbone」と結合している。上記の一般構造は、それらが機能的に同等とすることができるように、構造体の全てのラセマー(racemer)及び構造異性体を含むことを意味する。式中、「bPEG」は2以上のPEG鎖を有する分岐PEGであり、各PEG鎖は、約5〜45のサブユニットからなるものとすることができる。例えば、分岐PEGは、2つのメトキシPEGが中心核と結合した、「Y字型PEG」と呼ばれるものを含む。2分岐PEGはより一般的であるが、3分岐及び4分岐PEGもまた、商業的に入手可能である。式中、「Ri」は、各PEG鎖の末端基であり、同一でも異なるものでもよく、広く種々の化学残基から選択することができる。「Ri」は約650以下の分子量を有するものが好ましい。このPEG−炭水化物は、例えば、水溶液中における貧水溶性薬剤の溶解性促進の観点から、リポソームよりも応用面で有益である。
別の態様において本発明は、以下の一般構造で表される、4つの担体基を有するPEG−炭水化物共役体を含む。
式中、「H」(H1及びH2は同じ又は異なる親油性担体とすることができる。)は、ステロール若しくは「脂溶性」、又は親油性化合物若しくはそのエステルからなる群から選択されるそれらの類似体であり、前記親油性化合物若しくはそのエステルは、コレステロール、スティグマステロール、エルゴステロール、ホパノイド、フィトステロール、シトステロール、カンペステロール、ブラシカステロール、アベナステロール、アドステロール、及びスタノール(飽和ステロイドアルコール又は水素化ステロール)、レチノイド、レチナール、レチノイン酸、トレチノイン、カロチノイド、β−カロチン、トコフェロール、トコトリエノール、コレカルシフェロール、エルゴカルシフェロール、アスタキサンチン、アウロキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、クリサンテマキサンチン、クリプトキサンチン、フコキサンチン、ルテイン、ルビキサンチン、ビオラキサンチン、ゼアキサンチンを含むが、これらに限定されない;H1及びH2がステロール又は脂溶性ビタミン以外である場合、2つのうちの1つ(4番目の担体)は、脂肪酸、飽和若しくは不飽和lipidor、多価不飽和脂肪酸、又はファルネソール、ソラネソール及びドデカプレノール等の天然多価不飽和アルコールを含む多価不飽和脂肪アルコールから選択することができるが、しかしながら、脂肪酸は第1の親油性担体としてのステロールの存在下、第2の親油性担体としてのみ選択され、その潜在的な溶血特性のために、第1の親油性担体として利用されることが避けてもよい;式中、「Backbone」はジアミン、トリアミン、テトラアミン、ポリアミン又は4つの利用可能な結合部位を有する化合物から選択される;式中、第4の担体はジエステルから選択され、該ジエステルは、ステロール−アシルグリセロール又はジステロールグリセロールを含むが、これらに限定されない;「Sugar」は炭水化物であり、単糖類、アスコルビン酸、グルコン酸、グルカル酸、グルクロン酸、ガラクツロン酸、二糖類、オリゴ糖類、アミノ糖、及び糖酸が含まれる;式中、3つの置換可能な基が、エーテル化、エステル化若しくはアミド化、又は類似の置換反応を通じて共有的に「Backbone」と結合している。上記の一般構造は、それらが機能的に同等とすることができるように、構造体の全てのラセマー(racemer)及び構造異性体を含むことを意味する。式中、PEG鎖(PEG1、PEG2及びPEG3鎖の長さは同じでも異なってもよい。)は、5〜45のサブユニットからなるものとすることができる。式中、「R」(R1及びR2は同じでも異なってもよい。)はPEG鎖上の末端基であり、種々の化学基から選択することができる。「R」は分子量が約650以下のものが好ましい。PEG−炭水化物共役体は、例えば、水溶液中の水溶性の向上の観点から、リポソームよりも応用の上で有益である。
3つの担体を有する共役体と同様に、新規な共役体の合成は、各PEG−炭水化物共役体中で、ただ一つの連結体となるように制御されてよい。しかしながら、場合によっては、以下の一般式の単一分子中で、同じ連結体の多コピー又は異なる連結基の組み合わせが有用であり、式中、X1及びX2は、1以上の連結基又はオキシ、アミノ、スクシニルアミノ、アセトアミド、アミノペンタンアミド、アミノアセチル、チオプロパノイル、アクリロイル、N−(メルカプトメチル)プロピオンアミド、メルカプトプロピルチオプロパノイル、(1,2−ジヒドロキシ−3−メルカプト−プロピルチオ)プロパノイル、スクシニル、アセチル、オキソペンタノイル、カルバモイル、アミノアルキル、グルタルアミド、アミノエタンチオール、メルカプトプロパノール、(ヒドロキシプロピルチオ)プロパノイル、3−((2−プロピオンアミドエチル)ジスルファニル)プロパノイル、(((アセトアミドエチル)ジスルファニル)プロパノイルオキシ)グルタルアミド、アミノエタンチオエート、及び2−ヒドロキシ酢酸プロパン酸無水物の群である、同じ又は異なる連結基である。「R」(R1及びR2は同じでも異なってもよい。)は、分子量が約650以下のものが好ましい。H1及びH2は同じでもよく、異なってもよい。第2の「H」は、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸及び多価不飽和脂肪酸、並びにファルネソール、ソラネソール及びドデカプレノール等の天然多価不飽和アルコールを含む多価不飽和脂肪アルコールからなる群から選択することができる。しかしながら、最初の又は主要な親油性担体として脂肪酸は選択できないかもしれない。「Sugar」は、好ましくは、表2より、アルドース、ケトース、ピラノース、フラノース、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、ツラノース、セロビオース、ラフィノース、メレチトース、マルトトリオース、アカルボース、スタキオース、及び糖酸からなる群から選択することができる。PEG鎖は6〜45のサブユニットからなるものとすることができる。より好ましくは、PEG鎖は8〜25のサブユニットからなるものとすることができる。更に好ましくは、PEG鎖は12〜25のサブユニットからなるものとすることができる。
別の態様において本発明は、以下の一般構造15で表される化合物を含む分子を含む。
式中、「H1」及び「H2」は、同一の又は異なる、親油性化合物の群から選択され、該親油性化合物は、これらに限定されないが、コレステロール、スティグマステロール、エルゴステロール、ホパノイド、フィトステロール、シトステロール、カンペステロール、ブラシカステロール、アベナステロール、アドステロール、及びスタノール(飽和ステロイドアルコール又は水素化ステロール)、レチナール、レチノイド、レチノイン酸、トレチノイン、カロテノイド、β−カロテン、トコフェロール、トコトリエノール、コレカルシフェロール、エルゴカルシフェロール、アスタキサンチン、アウロキサンチン(auroxanthin)、カプサンチン、カプソルビン、クリサンテマキサンチン(chrysanthemaxanhin)、クリプトキサンチン、フコキサンチン、ルテイン、ネオキサンチン、ルビキサンチン、ビオラキサンチン、ゼアキサンチン(zeaxanthin)を含む。「H1」及び「H2」が異なる場合、第4の担体基は脂肪酸、多価不飽和若しくは環状化合物又はそれらのジエステルから選ばれる炭化水素でもよく、脂肪酸、多不飽和若しくは環状化合物又はそれらのジエステルは、これらに限られないが、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、又はファルネソール、ソラネソール及びドデカプレノール(dodecaprenol)等の天然の多価不飽和アルコール類を含む多価不飽和脂肪族アルコールを含む。また、式中、「Backbone」は、ポリアミン又は4個の利用可能な結合部位を有する化合物から選択される。「sugar」は単糖、二糖、オリゴ糖、アミノ糖、又は糖酸を含み、糖酸は、これらに限られないが、アスコルビン酸、グルコン酸、グルクロン酸、及びガラクツロン酸を含む。式中、4個の置換基は、エーテル化、エステル化若しくはアミド化又は類似の置換反応を通じて、前記「Backbone」と共有的に結合されている。上記一般構造は、機能的に等価である全ての光学異性体又は構造異性体を含む。式中、「bPEG」は、2以上のPEG鎖を有する分岐PEGであり、各PEG鎖は約5〜45のサブユニットからなるものでもよい。式中、「R」は末端基であり、種々の化学基から選択することができる。「R」は分子量が約650以下のものが好ましい。PEG−炭水化物共役体は、例えば、水溶液中の水溶性の向上の観点から、リポソームよりも応用の上で有益である。
本発明の一態様では、担体及び中心骨格との間のアルキル化、エーテル化、エステル化又はアミド化カップリング反応は、一般構造16でまとめたように、共役体中の特定の中心骨格及び担体基に依存する連結基上を用いてまたはなしで達成することができる
式中、「H」はステロイド酸又は脂肪酸がない親油性担体である。「H」はコレステロール、1つのヒドロキシル基を含むステロール、トコフェロール、コレカルシフェロール又はレチノールを含む群から選択することができる。「Sugar」は糖類(サッカライド)を含む炭水化物である;「PEG」はポリエチレングリコールの重合体であり、「D」は第2級ステロール、脂溶性ビタミン炭水化物、PEG、炭水化物、又は脂肪酸である。「Backbone」は、グリセロール、3つの利用可能な結合位置を有するグリセロール連結体、ジアミン、トリアミン、テトラアミン、ジアミノアルコール、アミノアルコール、アミノジオール、アミノトリオール、3つの利用可能な結合位置を有するアミノ酸、及び少なくとも3つの利用可能な結合部位又は結合位置を有するポリアミンを含み、薬物残基がない分子である。
本発明の更なる面では、炭水化物−高分子の第3及び第4の担体は、一般構造17に示すように、連結された共役を通じて形成されてもよい。
式中、Dは第2級ステロール、脂肪親和性ビタミン炭水化物、PEG、炭水化物、又は脂肪酸であり;Lは、これらに限られないが、グリセロール若しくは3つの利用可能な結合部位を有するグリセロール類似体、ジアミン、トリアミン、テトラアミン、又は3つの利用可能な結合部位を有するジアミノアルコール、アミノアルコール、アミノジオール、アミノトリオール若しくはアミノ酸からなる群から選択される連結基である。化学構造1に示すN−ビス−モノメトキシ−PEG−エーテル−セリノール−N−コレステロール−N’−ラクトビオニル−プロパンジアミンでは、連結体が3−アミノ−1,2−プロパンジオール(セリノール)であり、「D」が第2級mPEGである。
本発明の別の面は、物質の送達方法を含み、該方法は、化合物の配合に基づくPEG−炭水化物共役体の調製を含み、ここで、該配合は、アミノ、スクシニルアミノ、アセトアミド、アミノペンタンアミド、アミノアセチル、アクリロイル、チオプロパノイル、N−(メルカプトメチル)プロピオンアミド、メルカプトプロピルチオプロパノイル、(1,2−ジヒドロキシ−3−メルカプトプロピルチオ)−プロパノイル、スクシニル、アセチル、オキソペンタノイル、カルバモイル、アミノアルキル、グルタルアミド、アミノエタンチオール、メルカプトプロパノール、(ヒドロキシプロピルチオ)プロパノイル、3−((2−プロピオンアミドエチル)ジスルファニル)プロパノイル、(((アセトアミドエチル)ジスルファニル)プロパノイルオキシ)グルタルアミド、アミノエタンチオエート、及び2−ヒドロキシ酢酸プロパン酸無水物からなる群から選択されるアミノ酸連結体及び可能な二次連結体を含み;及び放出剤を提供し、ここで該放出剤は、連結体の分解を引き起こす。前記放出剤は酸、光、低酸素又は触媒でもよい。
1つの面として、本発明は、アミノ酸連結(アルキル化又はアミド化処理)を介した中心骨格と3つの担体基のいずれかとの連結方法である。担体基中のヒドロキシ基は、ジスクシイミジルカーボネート(DSC)、メシレート、トシレート又は強塩基との反応(エステル化又はエーテル化)により活性化されてもよい。
アミノ酸からのPEG−炭水化物共役体の合成例を以下の反応スキーム1に示す。この反応スキームは、中心骨格がセリンである反応スキーム2に示すような3つの利用可能な結合位置を有する多数の炭水化物群及びアミノ酸を有する担体基に適用できる。
クロロギ酸コレステロールは、水酸基を有するアミノ酸(AA)と直接反応させてエステル結合を有する共役体を生成するために、商業的に利用可能である。ステロール−AA中のアミノ酸のカルボキシル基は、mPEGの末端水酸基と反応することができ、次いで、第1級アミン上の保護基を除去し、活性化された炭水化物と反応させることにより、PEG−炭水化物−ステロール共役体を形成し、ここで、該ステロールはコレステロールでもよい。この反応スキームは、多数の親油性化合物又はPEG鎖を伴う担体基に適切である。本願に示す一般構造は、それらが機能的に同等とすることができるように、構造体の全てのラセマー(racemer)及び構造異性体を含むことを意味する。
グリセロール又はグリセロール類似体の中心骨格からのPEG−炭水化物−ステロール共役体の合成例を以下の反応スキーム2に示す。該反応スキームは、種々の親油性化合物又はPEG鎖と担体基に適している。
直鎖上多価アミン中心骨格からPEG−糖−ステロール共役体の合成例を、以下の反応スキーム3に示す。
類似する他の商業的に入手可能な糖誘導体は、高分子−糖送達媒体の合成又は自己調製に適宜使用してもよい(Jian Guo and Xin-Shan Ye, “Protecting Groups in Carbohydrate Chemistry: Influence on Stereoselectivity of Glycosylations.” Molecules. 15 (2010) 7235-7265)。共役体のための糖担体として、カスタムメイドの三糖類のアリル誘導体(市販品も利用できる。)を使用することは、糖類又は全ての種類の親油性化合物、PEG鎖又は骨格と共に糖担体として適切である。
別の局面において、本発明には、共役のために利用可能な3つの部位を有する3つの担体基及び中心骨格並びに担体基の1つと中心骨格との間の1以上の連結基(単数又は複数)を含むPEG−炭水化物共役体が含まれる。このようなPEG−炭水化物共役体は、一般構造1〜15により表され、式中、Xは、アミノ、スクシニルアミノ、アセトアミド、アミノペンタンアミド、アミノアセチル、アクリロイル、チオプロパノイル、N−(メルカプトメチル)プロピオンアミド、メルカプトプロピルチオ)−プロパノイル、(1,2−ジヒドロキシ−3−メルカプト−プロピル−チオ)プロパノイル、スクシニル、アセチル、オキソペンタノイル、カルバモイル、アミノアルキル、グルタルアミド、アミノエタンチオール、メルカプトプロパノール、(ヒドロキシプロピルチオ)プロパノイル、3−((2−プロピオンアミドエチル)ジスルファニル)プロパノイル、(((アセトアミドエチル)ジスルファニル)プロパノイルオキシ)グルタルアミド、アミノ−エタンチオエート、及び2−ヒドロキシ酢酸プロパン酸無水物からなる群から選択される連結基を含んでいてもよい。表3は、PEG−炭水化物−ステロール共役体のあるサンプルを示し、化学名が変化する場合には、示されている構造が支配することを意味する。
表2において、担体と中心骨格との間のカップリング反応の種類は、共役に先立つ担体又は中心骨格の化学修飾と同様に、N−アルキル化又はO−アルキル化を含むアルキル化、エステル化、エーテル化、及びアミド化である。例えば、モノメトキシルポリエチレングリコールを塩化アクリロイルで修飾し、次いで中心骨格と反応させてもよく、従って、2種の反応を含んでいてもよい;エステル化及びN−アルキル化を以下に示す(反応スキーム4):
本発明の実施態様は、溶解性の向上及び活性成分の送達の増強のための高分子−炭水化物共役体又は高分子−炭水化物−脂質共役体を含む医薬組成物の調製との関連で、ここに記述される。通常、薬物が異なれば、最適な配合が異なるが、医薬製剤の調製のための好ましい組成物はおおよそ、ここに一般的に記述されている。
IV溶液のために、薬物の好適な濃度は0.1%〜30%である。より好ましくは0.5〜10%である。最も好ましくは0.5〜5%である。5%に0.5です。注射用の最終薬物溶液中のPEG−糖共役体(PC)と薬物との好適な比(PC/薬物)は1〜30w/v(質量/体積)である。より好ましくは1(薬物)〜25(PC)である。最も好ましくは1〜10である。
薬剤を静脈内投与するために、狭分散性PEG鎖を有するPEG−炭水化物共役体が好ましい。単分散PEG鎖は、個々のオリゴマーからの全オリゴマー純度が80%である1以上の単一のPEGオリゴマーを含有してもよい。例えば、単分散PEG鎖は、40%のPEG−12及び40%のPEG−15を含んでもよい。単量体PEG鎖は、少数のオリゴマーを含むことが好ましい。オリゴマーの数は好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10、最も好ましくは1〜5である。
経口溶液について、好ましい薬物濃度は1〜40%であり、より好ましくは2.5〜30%であり、最も好ましくは5〜30%である。好ましいPEG−炭水化物共役体と薬物との比(PC/薬物)は0.5〜25(重量/重量)であり、好ましくは1(薬物)〜20(PC)であり、最も好ましくは1〜10である。
眼科用製剤について、好ましい薬物濃度は0.01〜5%であり、より好ましくは0.05〜2%であり、最も好ましくは0.1〜2%である。好ましいPEG−炭水化物共役体と薬物との比(PC/薬物)は1〜30(重量/重量)であり、好ましくは3(薬物)〜20(PC)である。
局所用溶液について、好ましい薬物濃度は0.05〜5%であり、より好ましくは0.1〜5%であり、最も好ましくは0.1〜2%である。好ましいPEG−炭水化物共役体と薬物との比(PC/薬物)は1〜30(重量/重量)であり、好ましくは3(薬物)〜15(PC)であり、最も好ましくは3〜10である。
経口カプセルについて、カプセル中の好ましい薬物量は2mg〜500mgであり、より好ましくは2mg〜200mgであり、最も好ましくは2mg〜100mgである。好ましいPEG−炭水化物共役体と薬物との比(PC/薬物)は1〜50(重量/重量)であり、好ましくは1(薬物)〜15(PC)であり、最も好ましくは1〜5である。
局所投与製剤について、好ましい薬物濃度は0.05〜5%であり、より好ましくは0.5〜2%であり、最も好ましくは1〜2%である。好ましいPEG−炭水化物共役体と薬物との比(PC/薬物)は1〜30(重量/重量)であり、好ましくは1(薬物)〜20(PC)であり、最も好ましくは3〜10である。
化学薬品及び試薬:N,N’−ジシクロヘキシル尿素、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、アスコルビン酸、ラクトビオン酸、コレカルシフェロール、コレステリルクロロホルメート、コレステロール、グルクロン酸、ポリエチレングリコール(PEG)、レチノイン酸、α−トコフェロール、及び他の化学薬品は、シグマ−アルドリッチ社(セントルイス、ミズーリ州、アメリカ)又はアルファ エイサー社(Alfa Aesar)(ワードヒル、マサチューセッツ州、アメリカ)から入手した。活性化PEG又はビオチン化PEGは、クオンタ バイオデザイン社(Quanta Biodesign)(パウエル、オハイオ、アメリカ)又はサーモフィッシャーサイエンティフィック社(Thermo Fisher Scientific)(ロックフォード、イスラエル)から入手した。
実施例1:tert−ブチルカルバメート(Boc)で保護されたアミノ基の調製
触媒不存在且つ室温下での収率及び有効性が高い合成方法は既に報告されており(Chankeshwara, SV and Chakraborti, AK. Org. Lett., (2006); 8, 3259)、これを僅かに改変して用いた。アミノ安息香酸エステルを含有する出発化合物のメタノール溶液に、ジ−t−ブチルジカーボネート(モル比1:1)で加えた。得られた混合物を室温で一晩撹拌した。反応終了後、溶媒を真空下で除去し、残渣を酢酸エチルに溶解し、飽和塩化アンモニウム水溶液で一旦洗浄し、次いで硫酸ナトリウムで乾燥させ、所望の生成物(>90%)を得るために濃縮した。この反応の例を反応スキーム5に示す。式中、Rは中心骨格の主構造である。この方法によれば、副生成物(例えば、イソシアネート、尿素、N,N−ジ−t−Boc)なしで、化学選択的にN−t−BOCが得られる。
実施例2:Bocで保護されたアミノ基の脱保護
t−ブチルカルバメート又はt−ブチルエステルの脱保護に効果的な試薬には、リン酸及びトリフルオロ酢酸が含まれる。該試薬は非常に便利で高い収率が得られる(Li, B. Berliner, M. etc, J. Org. Chem., 2006; 71, 9045)。Boc−カーバメートのCH2Cl2溶液(10%粗生成物)に、等量のトリフルオロ酢酸を加えた。得られた溶液を室温で一晩撹拌した後、溶媒を留去し、残渣をCH2Cl2に再溶解し、次いで飽和NaHCO3で洗浄し、MgSO4で乾燥させた。溶媒を留去した後、そのまま精製することなく次の工程に用いた。
実施例3:N−Boc−コレステリルセリネートの調製
窒素雰囲気下で定期的に撹拌しながら、N−Boc−セリン(0.03mol)をクロロホルム100mlに溶解させた。コレステリルクロロホルメート(0.03mol)をクロロホルム100mlに溶解させ、これをN−tert−ブチルオキシカルボニルセリンの不均一系混合物に添加し、続いて無水ピリジン10mlを加えた。室温で30分間一定の撹拌を続けて反応させると、混合物は均一系となり、混合物中のコレステリルクロロホルメートが検出できなくなった段階で反応は完了した。溶媒の大部分を真空下で除去し、粗生成物は更に精製することなく次の工程で用いた。反応生成物(収率70〜80%)を化学構造2に示す。
実施例4:N−Boc−コレステリルモノメトキシルドデカエチレングリコールエーテルセリネートの調製
モノメトキシルドデカエチレングリコールエーテル(0.01mol)を50mlの無水CH2Cl2に溶解させ、0.01molのジシクロヘキシルカルボジイミド及びコレステリルセリネートを加えた。得られた混合物を0℃で2時間撹拌し、室温まで温め、更に撹拌を48時間継続した。反応終了後、珪藻土(セライト;Celite)を通して、白色の沈殿物をろ過した。残渣を少量のCH2Cl2ですすぎ、次いで飽和塩化アンモニウムで2回洗浄し、MgSO4で乾燥させた。溶媒を蒸発させ、以下に示す化学構造3の淡黄色油状物を得た。粗生成物の純度(>70%)は、1H−NMR、UPLC−MS、及びESI−MSにより決定した。
実施例5:コレステリルセリニルモノメトキシルドデカエチレングリコールラクトビオネートの調製
アミノ基上の保護基であるt−ブチルカルボニル基は、実施例2に記載した方法に基づいて除去した。実施例4で得られたN−Boc−コレステリルモノメトキシルドデカエチレングリコールエーテル(0.01mol)をN−メチル−2−ピロリジノン50mlに溶解させ、ラクトビオノラクトン(0.01mol)を加えた。得られた混合物を50〜60℃で撹拌し、反応終了後、室温まで冷却した。沈殿物の単離収率を最大にするために、反応混合物にイソプロパノール(IPA)及びメチルtert−ブチルエーテル(MTBE)を滴下した。粗生成物を50/50(v/v)のIPA/MTBEでよく洗浄し、真空下、30〜40℃で乾燥させた。最終生成物(化学構造4)の純度(>90%)は、1H−NMR及びUPLC−MSにより決定した。
実施例6:ラクトビオニルジエチレントリアミンの調製
乾燥(モレキュラーシーブ)N−メチル−2−ピロリジノン50mlにジエチレントリアミン(0.01mol)を溶解し、ラクトビオノラクトン(0.005mol)を加えた。得られた混合物を50〜60℃で6時間撹拌し、反応終了後、室温まで冷却した。沈殿物の単離収率を最大にするために、反応混合物にイソプロパノール(IPA)及びメチルtert−ブチルエーテル(MTBE)を滴下した。沈殿物を50/50(v/v)のIPA/MTBEでよく洗浄し、真空下、30〜40℃で乾燥させ、粗生成物を更に精製することなく次の工程で使用した。
実施例7:ラクトビオニルコレステリルジエチレントリアミン−mPEGの調製
実施例6で得られたラクトビオニルジエチレントリアミン(0.01mol)を出発物質として、これを20〜30℃でジメチルホルムアミド(DMF)20mlに溶解した。僅かに過剰な活性オレイン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(0.011mol)を20mlのテトラヒドロフラン溶液に溶解し、次いでラクトビオニルジエチレントリアミンと混合し、更に塩基としてトリエチルアミン(TEA、3%v/v)を加えて室温で2時間撹拌した。収率を確認するために定期的に分析を行い、精製することなく次の工程に移行した。活性化mPEG24−NHS(0.01mol)をDMFに溶解し、次いで上記反応物と混合し、室温で一晩撹拌した。反応終了後、溶媒を真空下で除去し、次いで粗生成物にアセトン50mlを加えてろ過し、アセトン30mlで3回洗浄した。湿生成物(60〜70%)を更に精製することなく次の工程で使用した。沈殿物の単離収率を最大にするために、反応溶液にイソプロパノール(IPA)及びメチルtert−ブチルエーテル(MTBE)を滴下した。粗生成物を50/50(v/v)のIPA/MTBEでよく洗浄し、真空下、30〜40℃で乾燥させた。最終生成物(化学構造5)の純度(>95%)は、1H−NMR及びUPLC−MSにより決定した。
実施例8:ラクトビオニルトリエチレンテトラアミンの調製
乾燥(モレキュラーシーブ)N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)50mlにトリエチレンテトラアミン(0.01mol)を溶解し、ラクトビオン酸(0.01mol)を加えた。得られた混合物を50〜60℃で6時間撹拌し、反応終了後、室温まで冷却した。沈殿物の単離収率を最大にするために、反応混合物にイソプロパノール(IPA)及びメチルtert−ブチルエーテル(MTBE)を滴下した。沈殿物を50/50(v/v)のIPA/MTBEでよく洗浄し、真空下、30〜40℃で乾燥させ、粗生成物を更に精製することなく次の工程で使用した。
実施例9:ラクトビオニルコレステリルトリエチレンテトラアミンの調製
0.01molの実施例8で得られたラクトビオニルトリエチレンテトラアミン(0.012mmol)を無水N−メチル−2−ピロリジノン50mlに溶解し、コレステリルクロロホルメート(0.01mol)を加えた。得られた混合物を45〜50℃で一晩撹拌し、室温に冷却した。沈殿物の単離収率を最大にするために、反応溶液にイソプロパノール(IPA)及びメチルtert−ブチルエーテル(MTBE)を滴下した。粗生成物を50/50(v/v)のIPA/MTBEでよく洗浄し、真空下、30〜40℃で乾燥させた。反応生成物の純度(>80%)は、1H−NMR及びUPLC−MSにより決定した。
実施例10:ラクトビオニルレチノイルトリエチレンテトラアミン−mPEGの調製
実施例9で得られたラクトビオニルコレステリルトリエチレンテトラアミン(0.01mol)を出発物質として、これを20〜30℃でジメチルホルムアミド(DMF)20mlに溶解し、僅かに過剰な活性化mPEG24−NHS(0.021mol DMF10ml溶液)を加え、室温で一晩撹拌した。反応終了時に300mlのアセトンを加え、溶媒を真空下で除去した。次いで粗生成物をアセトンで洗浄し、ろ過した。湿生成物(60〜65%)を更にワックスで凍結乾燥し、化学構造6に示すようなワックス状生成物を得た。
実施例11:コレステリルエチレングリコールエーテルの調製
機械的撹拌機及び加熱マントルを備えた丸底フラスコで、コレステリルトシレート(0.1mol)のテトラヒドロフラン溶液(100ml)及びエチレングリコール(1mol)を混合した。反応混合物を窒素保護下、12時間還流下で撹拌し、溶媒を真空下で除去し、残渣を塩化メチレン200mlに再溶解し、水(200ml)で3回洗浄した。塩化メチレン中の粗生成物を真空中で乾燥させ、固形物を得た(>90%)。
実施例12:コレステリルエチレングリコール酢酸の調製
実施例11で得られたコレステリルエチレングリコールエーテル(0.02mol)のテトラヒドロフラン溶液(100ml)を、メカニカルスターラー及び加熱マントルを備えた丸底フラスコに入れた。溶液に窒素(50〜100psi)を注入した。裸の金属ナトリウム(0.05g)を室温下でゆっくり添加した。添加終了後、6時間撹拌を継続しながら反応混合物を徐々に60℃まで加熱し、クロロ酢酸ナトリウム(0.03mol)及びヨウ化ナトリウム(0.005mol)を反応フラスコに加え、反応混合物を55〜60℃で一晩撹拌し続けた。水酸化ナトリウム溶液(100ml 5%w/v)で反応を終了させ、減圧下でテトラヒドロフランを除去することにより濃縮し、ジクロロメタン(50ml)で抽出した。水層をの塩酸(36%)でpH3〜4まで酸性化した。水槽をジクロロメタン(25ml)で2回抽出した。有機層を合わせ、硫酸ナトリウムで1時間乾燥させた。塩をろ紙により除去し、溶媒を真空中で除去して油状物を得た(45〜73%)。
実施例13:ラクトビオニルジアミンプロパンの調製
乾燥(モレキュラーシーブ)N−メチル−2−ピロリジノン50mlに1,3−ジアミンプロパン(0.01mol)を溶解し、ラクトビオノラクトン(0.005mol)を加えた。得られた混合物を50〜60℃で6時間撹拌し、反応終了後、室温まで冷却した。沈殿物の単離収率を最大にするために、反応混合物にイソプロパノール(IPA)及びメチルtert−ブチルエーテル(MTBE)を滴下した。沈殿物を50/50(v/v)のIPA/MTBEでよく洗浄し、真空下、30〜40℃で乾燥させ、粗生成物を更に精製することなく次の工程で使用した。
実施例14:ラクトビオニルジアミンプロパニル−mPEGの調製
実施例14で得られたラクトビオニルジアミンプロパン(0.01mol)を出発物質として、これを20〜30℃でジメチルホルムアミド(DMF)20mlに溶解した。活性化mPEG24−NHS(0.01mol)をDMFに溶解し、次いで上記反応物と混合し、室温で一晩撹拌した。反応終了後、溶媒を真空下で除去し、次いで粗生成物にアセトン50mlを加えてろ過し、アセトン30mlで3回洗浄した。湿生成物(60〜70%)を更に精製することなく次の工程で使用した。
実施例15:ラクトビオニルコレステリルジアミンプロピル−mPEGの調製
0.01molの実施例14で得られたラクトビオニルジアミンプロパニル−mPEG(0.01mmol)を無水N−メチル−2−ピロリジノン50mlに溶解した。これを、実施例13で得られたコレステリルエチレングリコール酢酸(0.01mol)のテトラヒドロフラン溶液(50ml)及び僅かに過剰な活性N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(0.011mol)のテトラヒドロフラン溶液(50ml)と混合し、更に塩基としてトリエチルアミン(TEA、3%v/v)を加えて室温で2時間撹拌した。収率を確認するために定期的に分析を行った。得られた混合物を45〜50℃で一晩撹拌し、室温に冷却した。沈殿物の単離収率を最大にするために、反応溶液にイソプロパノール(IPA)及びメチルtert−ブチルエーテル(MTBE)を滴下した。粗生成物を50/50(v/v)のIPA/MTBEでよく洗浄し、真空下、30〜40℃で乾燥させた。最終生成物(化学構造7)の純度(>93%)は、1H−NMR及びUPLC−MSにより決定した。
実施例16:Nε−tert−ブチルオキシカルボニル(Boc)−リジン−コレステロールの調製
Nε−tert−ブチルオキシカルボニル(Boc)−リジンの塩化メチレン溶液(150ml)を、メカニカルスターラーを備えた丸底フラスコに入れた。トリエチルアミン(0.4mol)をフラスコに加え、反応混合物を一定の撹拌下、氷浴中で0〜10℃に冷却した。コレステリルクロライド(0.18mol)の塩化メチレン溶液(100ml)を滴下した。コレステリルクロライドの添加が完了した後、反応混合物について一定の撹拌を2時間継続した。Nε−tert−ブチルオキシカルボニル(Boc)−Nα−コレステロール−リジンの粗生成物(収率;〜60%)を得るために溶液を濃縮し、この溶液を直接、次の工程で使用した。
実施例17:Nε−Boc−リジン−コレステロール−mPEGの調製
等量のモノメトキシPEGを、Nε−Boc−Nα−コレステロール−リジン(実施例21から)のTHF/DCM(1/1,v/v)溶液(200ml)と混合し、等量のDCCを触媒として加え、室温で1晩、一定の撹拌下で反応を開始した。反応の完了はTLC又はHPLCによってモニターした。反応終了後、固体をろ別し、溶液を減圧下で濃縮した。50%以上の収率を得るために、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;ヘキサン/酢酸エチル)によって精製し、この溶液を直接、次の工程で使用した。
実施例 18:Nε−リジン−Nα−コレステロール−mPEGの調製
トリフルオロ酢酸(10当量)を、Nε−Boc−リジン−コレステロール−mPEG中間体(実施例22から)のDCM溶液に添加し、2時間撹拌した。混合物について、知注意深く重炭酸ナトリウム溶液を加えて反応を停止させ、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、塩を除去した後で濃縮することにより、定量的に中間体であるNε−リジン−コレステロール−mPEGを得て、これを直接、次の工程で使用した。
実施例 19:Nε−ラクトビオニル−Nα−コレステロール−mPEG−リジネートの調製
トルエン中で水を除去することにより、ラクトビオン酸をエステル中間体に変換し、等モル量のNε−リジン−Nα−コレステロール−mPEGと室温下、メタノール中で混合して反応させることにより、Nε−ラクトビオニル−Nα−コレステロール−mPEG−リジネート(一般構造8)を得た。反応混合物をシリカゲル層上に積載して空気乾燥させた。フリットろ過漏斗中でカラム体積が約1Lのシリカゲルカラムを調製した。予備乾燥させた反応混合物をカラムの頂部に載置し、該カラムをアセトン/ヘキサン混合溶液、アセトン/イソプロパノール(1/5)混合溶液200mL、及び100%アセトン溶液500mLで溶出させた。化合物を含む溶離液を真空下で濃縮することにより、Nε−tert−ブチルオキシカルボニル(Boc)−Nα−コレステロールリジンを得た(収率;〜80%)。
実施例1〜24と同様の合成方法は、他のPEG−炭水化物−脂質共役体の合成に利用することができる。更に、選択された分子は、前記第3又は第4の利用可能な結合位置又は部位を与えるために、化学的に伸長され及び修飾されていてもよく、適切な分子は、これらに限られないが、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、エタノールアミン、アミノプロパノール、アミノブタノール、アミノペンタノール、及びアミノヘキサノールからなるアミノアルコール及びジアミンを含むことを示している。表3は、これらのPEG−炭水化物共役体のいくつかを表8に示す。
本発明の別の面において、高分子鎖は、ポリメチレングリコール若しくはポリプロピレングリコール、又はメチレングリコール、エチレングリコール及びプロピレングリコールの繰り返し単位の混合物等の他の高分子に置き換えられてもよい。本発明の高分子−脂質共役体を形成するのに有用な親水性高分子には、ポリエチレングリコール(PEG)及びポリアルケンオキシドポリマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリ(アリルアミン)、ポリ(1−グリセロールメタクリレート)、ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート/メタクリル酸)/ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(アクリルアミド/アクリル酸)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ブタジエン/マレイン酸)、ポリ(エチルアクリレート/アクリル酸)、ポリ(エチレンオキシド−b−プロピレンオキシド)、ポリ(エチレン/アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(マレイン酸)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N−ビニルピロリドン/酢酸ビニル)、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(スチレンスルホン酸/マレイン酸)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルホスホン酸)、ポリ(ビニルアミン)、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリアニリン、ポリエチレンイミン、プルラン、ポリメタクリルアミドが含まれる。上記で列挙されたものに基づく共重合体及びブロック共重合体もまた、用いることができる。フリーの高分子は室温で水溶性且つ非毒性であると共に、哺乳動物において明らかな免疫反応を誘発しない。狭い分子量分布を有する親水性高分子が好ましい。PEGは既に製薬業において受け入れらていることから、親水性高分子として好ましい。
実施例20:注射製剤
機器と接触する全ての製品は、洗浄及び消毒することができる。混合プロペラを備える容器に、予め溶解させたPEG−炭水化物共役体(最終容積の約1/4)を加えた。固形状薬物を少量の希釈用酸又は塩基に予め溶解させ(液状薬物の場合、この工程は除かれる。)、次いで容器に加えて一定の撹拌を行った。溶液の外観が均質になるまで撹拌を継続した。予め溶解させた医薬添加物を容器に加えて十分に撹拌した。十分に均質な溶液となるまで撹拌を継続した。窒素重層の維持を補助するための、予備混合のためのステンレス鋼カバー並びに少なくとも2つのジャケットが付属し、加圧可能であると共に、撹拌及び窒素重層を可能にするステンレス鋼タンクが必要である。製品中の溶存酸素量を減少させるために、撹拌及び窒素重層された容器中の混合物を1時間保持した。容器インペラーの撹拌速度は45〜50RPMであり、混合容器に圧力を供給する圧縮空気の圧力は10〜13psigである。製品の発泡を防止するために、必要に応じて撹拌速度を調整することができる。pH測定のために、無菌操作により、5mlのサンプルを採取した。必要であれば、製品のpHを6.0〜8.0に調節するために、10%水酸化ナトリウム又は6N塩酸を用いた。窒素雰囲気下で製品を滅菌濾過し、次いで、洗浄及び滅菌された5mlタイプIガラスバイアル中に充填し、更に、滅菌された13mm医薬グレードゴム栓で各バイアルを封止し、次いで、消毒された13mm医薬グレートフリップオフアルミシートを圧着した。必要であれば、最終オートクレーブ工程を行うことができる。配合サンプルを表4に記述する。
PEG−炭水化物共役体は、約10〜45サブユニットからなるPEG鎖を有する本発明で記述されるPEG−炭水化物共役体のいずれかでよい。水酸化ナトリウムは、精製水により10%w/w溶液に調製して用いられる。目的とするpHは4.0〜7.5の範囲である。必要であれば、pHを調節するためにNaOHが用いられる。薬物は、モダフィニル、ニフェジピン、エソメプラゾール、ラパマイシン、殺菌剤、抗ガン剤若しくは麻酔薬、又は他の活性薬剤を使用することができる。
実施例21:注射用ドセタキセル溶液の調製
静脈送達に適したドセタキセル溶液は、以下の方法により調製される。撹拌容器を含む容器に、CDL−mPEG17(表8参照)の4%(w/v)生理食塩水溶液を加え、また、1.5%(w/v)のドセタキセルをエタノール(全体積の1%、v/v)に前溶解させ、これを容器に加えて室温で継続的に撹拌した。溶液が視覚的に均一になるまで撹拌を継続した。十分な撹拌と共に、同体積の生理食塩水を容器に加えた。更に30分間又は均一な溶液になるまで撹拌を続けた。配合例を表5に示す。
PEG−炭水化物共役体は、約10〜45のサブユニットからなるPEG鎖を有する本発明で記述されている如何なるPEG−炭水化物共役体でもよい。精製水中の10%w/w溶液を調製するために、水酸化ナトリウムが用いられる。目標pHは4.0から7.5の範囲である。必要であれば、pHを調節するために希NaOH又は希HClを用いることができる。
実施例22:ドセタキセル製剤の薬物動態プロフィール
本研究では、4週齢で25〜32gの雄マウス(B6D2F1)3匹のグループを用いた。薬物動態(PK)は、ドセタキセル製剤の静脈大量瞬時投与後、5、15及び45分並びに1、2、3、6、12及び24時間に典型的に得られたヘパリン添加マウス血漿サンプルにより実行された。該サンプルはHPLC−MS法により分析された。薬物レベルを決定するために、最初にサンプルの前処理により血漿から薬物を分離した。サンプル中のタンパク質を除去するために、アセトニトリルが用いられた。次いで、全ての潜在的な妨害物質から薬物を分離するために、均一濃度HPLC−MS法が用いられた。薬物レベルは複数反応モニタリング(MRM)モードによるMS検出によって測定した。PKデータは、WinNonlinプログラム(ver.6.3,Pharsight)を用いた非コンパートメントモデル分析により解析した。
図2は、マウスにおけるドセタキセル製剤、即ち、(a)生理食塩水中で2.5%ポリソルベート80及び1.5%エタノールからなる市販製品中にドセタキセルを0.74mg/mLの濃度で含む製剤、(b)生理食塩水中で2%CDL−mPEG17及び1%エタノールからなる配合中にドセタキセルを0.74mg/mLの濃度で含む製剤の薬物動態プロフィールを示す。薬剤は静脈注射により投与され、投与濃度は10mg/kgであった。非コンパートメントモデル計算から、市販のドセタキセル溶液(a)の薬物時間曲線(AUC)は1707.5ng・min/mLであり、半減期は9.8時間であり、一方、ドセタキセルのCDL−mPEG17溶液(b)では、AUCが1739.4ng・min/mLであり、半減期は14.3時間であった。
PEG−脂質は、約10〜45のサブユニットからなるPEG鎖を有する本発明で記述されている如何なるPEG−炭水化物共役体でもよい。精製水中の10%w/w溶液を調製するために、水酸化ナトリウムが用いられる。目標pHは4.0から7.5の範囲である。必要であれば、pHを調節するために希NaOH又は希HClを用いることができる。
実施例23:PEG−糖共役体の溶解性
PEG−糖共役体の水溶性は、LogP計算によって推定することができる。全体的な親水性−親油性バランスは、担体グループのそれぞれに依存する。共役体のサンプルを表6に示す。糖担体として三糖類を伴う場合は溶解度が増加するが、生産コストもより高くなり、単糖類の担体を伴う場合は共役体の溶解度がより低くなる。従って、二糖類は、水溶性向上剤としてのバランスがよく、スケールアップ製造及び経済的な考慮において最も適している。
反応スキーム1〜3及び実施例1〜19に示すように、単糖類及び二糖類には、これらに限定されないが、スクロース、ラクツロース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース、コージビオース、ニゲロース、イソマルトース、トレハロース、ソホロース、ラミナリビオース、ゲンチオビオース、ツラノース、マルツロース、パラチノース、ゲンチオビウロース、マンノビオース、メリビオース、ルチノース、ルチヌロース、及びキシロビオースが含まれる。三糖類には、これらに限定されないが、イソマルトトリオース、ニゲロトリオース、マルトトリオース、メレジトース、マルトトリウロース、ラフィノース、及びケストースが含まれ、これらの単糖類、二糖類及び三糖類は、高分子−糖共役体を製造するのに全て適している。実施例23に示すように、単糖類は水溶性の増強作用が弱く、生産コストがかなり高いことから、ラクトビオン酸等の二糖類及び三糖類は化学開発戦略及び医薬製剤において臨床的に安定であり、適切な物理的/化学的性質が得られる合理的な合成経路の発展に最も適切である。
実施例24;プロポフォールの溶解性試験
異なるPEG−脂質生理食塩水系溶液の調製のために、プロポフォール1%(v/v)を用いた。溶解性試験の参照として、プロポフォールを可溶化するのに必要な脂質の最小濃度を表7に挙げる。トコフェリルプロパンジアミンラクトビオネート−mPEG11はプロポフォールを溶解させるためのモル濃度が最も低いことを示す一方、コレステリルプロパンジアミングルコネート−mPEG11ではより高い脂質濃度が必要であり、また、ステアリルプロパンジアミンラクトビオネート−mPEG11では、脂質濃度とは関係なくエマルションが形成される。
本発明の別の態様は、水不溶性物質、即ち、水に対する溶解度が低く、一般に、標的とする活性部位への効果的な送達のために薬学的に許容される担体を含む配合が必要な医薬化合物を可溶化するための方法を含む。このような送達は、静脈内、経口、局所、皮下、舌下、又は任意の他の薬物送達を含めることができる。本発明はまた、このような送達のための組成物をも含む。この方法及び組成物の両者は、本発明のPEG−炭水化物共役体を用いた水不溶性物質の送達並びに上述の方法及び材料に関する。
実施例25;ボリコナゾールの溶解性試験
異なるPEG−脂質生理食塩水系溶液の調製のために、ボリコナゾール1%(v/v)を用いた。溶解性試験の参照として、ボリコナゾールを可溶化するのに必要な脂質の最小濃度を表8に挙げる。ボリコナゾールを溶解させるための薬物濃度に対する高分子の比が最も低いのは、N,N,N−コレステロール−ラクトビオニル−mPEG(12)−プロパンジアミンである一方、N,N,N−オレオイル−ラクトビオニル−mPEG(12)−プロパンジアミンは、同じボリコナゾール濃度のサンプル溶液を調製するのにより高い濃度が必要であった。これは主に、コレステロールの疎水性相互作用が、オレイン酸の場合よりも相対的に強いことによる。本実施例は更に、脂肪酸との共役体は、より負のLogP値を有するにもかかわらず、疎水性化合物を溶解させるための親油性担体として、ステロール(環構造を有する)と脂肪酸(鎖状化合物)との間に有意な差異があり、従って、HLB値の僅かな差が、親油性化合物の可溶化に大きな影響を与えることができることを示した。
本発明の別の態様は、水不溶性物質、即ち、水に対する溶解度が低く、一般に、標的とする活性部位への効果的な送達のために薬学的に許容される担体を含む配合が必要な医薬化合物を可溶化するための方法を含む。このような送達は、静脈内、経口、局所、皮下、舌下、又は任意の他の薬物送達を含めることができる。本発明はまた、このような送達のための組成物をも含む。この方法及び組成物の両者は、本発明のPEG−炭水化物共役体を用いた水不溶性物質の送達並びに上述の方法及び材料に関する。
リン脂質等の天然に存在する脂質と異なり、本発明の共役体は、臨界ミセル濃度(CMC)を有しない。界面活性剤の濃度がCMC以上であり、及び系の温度が臨界ミセル温度以上である場合のみミセルが形成される。本発明の高分子−炭水化物−ステロール共役体は、任意の濃度で自発的に凝集状態を形成してもよい。
本発明は、薬物又は分子の送達のための、安全且つ生体適合性の担体として使用することができる、少なくとも1つの炭水化物残基を含む新規な高分子−炭水化物共役体を開示する。溶液又はマイクロ懸濁液を形成するために、治療、診断又は化粧剤は、これらの高分子−炭水化物共役体中に溶解又はカプセル化されてもよい。
一般に、本発明は、高分子(PEG)鎖を有するグリセロール骨格、多アミン若しくはアミノ酸、糖(炭水化物)、及び前記骨格と結合されたステロール若しくは脂溶性ビタミン又はそれらの類似体を含む高分子−炭水化物共役体の製造方法及び組成物を含む。骨格とPEG鎖、炭水化物又は親油性基との間に、アミノ酸を含むスペーサー又は連結基が含まれてもよい。更に、PEG鎖の末端は、荷電又は極性基であってもよい。
本発明の化合物は、ゲムシタビン又は白金系薬物等の活性成分を含む医薬製剤に効果的であり、これにより、薬物治療に関連する副作用及び毒性を低減することができる。
本発明において、PEG−炭水化物共役体の浸透特性が強化されることにより、種々の薬物のインビボでの標的化送達、毒性の低減、及び経口生物学的利用能を向上させることができる。
溶解した活性成分と本発明の共役体とを含む溶液において、プロポフォール、シスプラチン、ドセタキセル、ボリコナゾール、及びアルファキサロンを含むが、これらに限定されない多くの活性薬物を組み入れることができる。
本発明の特徴又は実施態様は、本願の出願時点において、できる限り広く化学化合物又は式により表される化合物の製造方法に属すると信じられている。
他の本発明の特徴又は実施態様は、本願の出願時において、前記治療剤が麻酔剤又は中枢神経系(CNS)薬剤であり、PEG−炭水化物と薬物との重量比は約1と約20との間である、できる限り広く化学化合物又は化合物の製造方法が属することを示している。
更に他の本発明の特徴又は実施態様は、本願の出願時において、できる限り広く化合物の送達方法、高分子−炭水化物共役体の調製を含む方法が属することを示しており、ここで、化学化合物は、アミノアルコール、ジアミン、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、エタノールアミン、アミノプロパノール、アミノブタノール、アミノペンタノール、及びアミノ−1−ヘキサノールからなる群から選択される2つの接触可能な結合位置又は部位を有する骨格から合成されてもよく、前記中心骨格は、一般構造17に示すような類似のカップリング方法ための、前記第3又は第4の利用可能な結合位置又は部位をを与えるために、化学的に延長され、修飾されてもよい。
更に本発明の特徴又は実施態様は、本願の出願時において、前記治療剤は抗真菌剤、免疫抑制剤、抗腫瘍剤、又は麻酔剤であり、PEG−炭水化物と薬物との重量比は約1と約30との間である、できる限り広く化学化合物又は化合物の製造方法が属することを示している。
実施態様の異なる要素又は面は、本発明が先の特許公開公報であるUS2012/202979及びUS2012/202890と物理的及び化学的に異ならしめるためのものである;本発明では、水溶性ステロイド酸が排除された単独のヒドロキシ基を含むステロールが組み入れられる。表1、15及び16に示すように、このような親油性を増大させる構造は、先行発明において挙げられておらず、利用されていない。例えば、PEG−炭水化物−コレステロール共役体及びPEG−炭水化物−リポ−ビタミン共役体は、初めて公開された。
本発明のいくつかの好ましい実施形態の例を説明してきたが、当業者であれば、本発明の概念から離れることなく、他の及び更なる変更及び改変が可能であることを認識するであろう。そして、このような変更及び改変の全ては、本発明の範囲に属するものと理解されるべきである。