異物代謝のネットワークモデルを使用して、物質に対する生物学的システムの応答を判定するために使用することができる計算的なシステムおよび方法が本明細書に記述される。有利にも、対応する第2のタイプの組織、すなわち鼻の組織などの、しかしこれらに限定されない代用組織から収集された曝露データを使用して、1つのタイプの組織、すなわち下気道の組織などの、しかしこれらに限定されない標的組織の様々な物質への曝露の影響を評価するためのシステムおよび方法を使用することができる。
生物学的システムの特定の態様の代表である計算的な因果関係ネットワークモデルが提供される。このモデルは、ノード(頂点としても知られる)およびエッジを含む数学的なグラフとして提示される場合がある。ノードは「バックボーンノード」と「測定可能なノード」とを含む。バックボーンノードは本明細書で使用される場合、特定の生物学的システムの機能的な機構の抽出である生物学的プロセス、またはこの生物学的プロセスにおける主要なアクター、特に生物学的システムの機能における対象となる特徴を可能にするアクターまたはプロセスを表す。一実施例では、バックボーンノードは化合物、DNA、RNA、タンパク質、ペプチド、抗体、細胞、組織、および器官の活性など、しかしこれらに限定されない、生物学的システム内の様々なエンティティの生物学的活性を表す。バックボーンノードに対応する活性の多くは測定されないが、測定可能なノードの活性から推論される。測定可能なノードは、バックボーンノードによって因果関係があることが知られている、1つ以上の生物学的エンティティの測定可能な活性レベルを表す。一実施例では、測定可能なノードは遺伝子表現レベルを表す。エッジのうちの幾つかによって表されるものとして、バックボーンノードの活性は、測定可能なノードの活性を刺激または阻害する場合がある。このモデルでは、エッジは、バックボーンノード間の因果関係だけでなく、バックボーンノードとそれらの対応する測定可能なノードの各々との間の因果関係を表す場合がある。
この測定可能なノードは、当業界で周知の方法、特に処理量が多い方法によって測定することができる様々な生物学的エンティティの生物学的活性を表す。測定可能なノードの生物学的活性は、生物学的活性評価基準と称される。一実施例では、生物学的活性評価基準は、一組の遺伝子の差動遺伝子表現レベルを含み、その活性は生物学的試料から測定される。差動遺伝子表現レベルは、処置データと対照データとの間の差異の代表である、一組のコントラストデータから得られる場合がある。処置データは、要因に対する試料内の一組の生物学的エンティティの応答に対応し、一方で対照データは、例えば要因の欠如のような、対照条件下での同一の生物学的エンティティの応答に対応する。
ネットワークモデル内のエッジは、バックボーンノードから測定可能なノードへの方向的な関係、または2つのバックボーンノードの間の方向的な関係を表す。測定可能なノードの変化の結果として、バックボーンノードの活性は刺激または阻害されると考えられる場合がある。これは、バックボーンノードを測定可能なノードに接続するエッジによって表される因果関係によって反映される。異物代謝ネットワークモデルでは、エッジは、バックボーンノード間の因果関係だけでなく、バックボーンノードと文献の中で報告されている場合がある、それらの対応する測定可能なノードの各々との間の因果関係を表す。例えば、エッジは「〜に結合する」関係、「〜は〜で表現される」関係、「〜は〜をプロファイリングする表現に基づいて同時制御される」関係、「阻害する」関係、「原稿の形で同時発生する」関係、または「構造的要素を共有する」関係を表す場合がある。一般的に、これらのタイプの関係は一対のノード間の関係を記述する。従って、グラフ内で関係間の関係を表すこと、または関係と別のタイプの生物学的エンティティとの間の関係を表すことが可能である。例えば、化学薬品を表す2つのノードの間の関係は反応を表す場合がある。この反応は、反応と反応を阻害する化学薬品との間の関係にあるノードであってもよい。ネットワークモデルを作り出す生物学的活性および関係(すなわち、ノードおよびエッジ)は、データベース内で相互に関係しているノードのウェブとして保存される場合がある。幾つかの実施形態では、ネットワークモデルは生物学的エンティティの異なる形態を接続する因果関係のないエッジを含む。
本開示では、異物代謝は生物学的システムの対象となる特徴である。従って、異物代謝ネットワークモデルの相互接続するバックボーンノードは、生物学的システム内の生体異物物質を代謝するように動作する生物学的機構またはその一部を集合的に表す。ネットワークモデルに従って測定可能なノードの生物学的活性評価基準から推論することができる活性値に、バックボーンノードのほとんどが各々関連付けられる。例えば、ネットワークは、アリール炭化水素受容体(AHR)の濃度を表すバックボーンノード、ならびにアリール炭化水素受容体の転写活性((AHR)のTA)を表すバックボーンノードを含む。一実施例では、AHRに対応するバックボーンノードは、バックボーンノードAHRと因果関係を有するとして表1にリスト表示される少なくとも17個の測定可能なノードと因果関係を有する。因果関係の各々の方向性も表1に提供される。AHRは、モデル(例えば、CYP1A1、CYP1B1など)内の幾つかの対象となる遺伝子の表現を制御し、またこれは生体異物物質によって活性化される転写因子である。別の実施例では、異物代謝ネットワークモデルは、表2に示すBELステートメントを含む、本質的にBELステートメントから成る、またはBELステートメントから成るデータによって表される計算的な因果関係ネットワークモデルである。一般的に、特定の生体異物への組織の曝露を含む、異物代謝において動作的である他の生物学的エンティティの生物学的活性を、他のバックボーンノードが表す場合がある。
一実施例では、本明細書に開示されるシステムおよび方法で使用することができる異物代謝ネットワークモデルが、図4の左パネルに示される。特に、図4の左パネルのグラフィックなイラストは、異物代謝を内在する機構の様々な態様を具現化する一組の生物学的活性を表す一組のバックボーンノードを含む。このバックボーンノードは、方向的な情報を運ぶ、因果関係のあるエッジによって接続される。このネットワークモデルは、異物代謝に関する所与の刺激によって生じる攪乱の中への洞察を得るために使用される場合がある。
本明細書に提供される異物代謝ネットワークモデルは、2つの情報源から得た情報から構築される。2つの情報源とは、生体異物物質に対応して関与する、関連する機構の記述を提供する文献情報源と、肺の細胞で遂行された実験から得た、公的に入手可能なトランスクリプトームのデータの計算的な解析の結果を含む、データセットに由来する情報源とである。発病していない、または健康なヒトもしくは齧歯類起源の肺の組織に対する生体異物物質への応答に関する生物学的活性を、ネットワークモデルが表すことを確認するために、ネットワークモデルを選択するための一組のルールが導入された。総合的な目標は、急性の非病理学的な応答を反映し、かつ細胞死/アポプトーシス、組織損傷、または炎症などの近接する生物学的プロセスを含まない、ネットワークモデルを生成することである。ヒトの組織の状況に由来する関係に重点が置かれるが、モデルを完成させるために、マウスおよびラットに由来する関連も使用される。文献中に肺関連組織または心血管関連組織での機構の動作に対する明示的な裏付けが識別されない場合でさえ、文献内の良好に確立された経路を表す標準的な機構が、ネットワークモデルに含まれる。不死化された細胞株からの組織状況を用いた因果関係の使用は、唯一利用可能なデータがこのタイプの実験系に由来する場合、ネットワークモデルでの重要な機構の構築のみに限定される。
本明細書に記述されるように、異物代謝ネットワークモデルは、必ずしも前向きの仮定(すなわち、バックボーンノードから測定可能なノードへ)に頼る必要はない。むしろ、制御するようにバックボーンノードが観察される遺伝子の表現に基づいて(すなわち、1つ以上の測定可能なノードにおいて)、モデルがバックボーンノードの活性を推論する場合がある。「前向きの論法」は、遺伝子発現がタンパク質活性の変化と相関することを仮定するが、「後向きの推論」または逆因果関係論法(RCR)は、上流エンティティの活性の結果として遺伝子発現の変化を考慮する。この論法技法を適用することによって、異物代謝ネットワークモデルが作り出され、ノードおよびノード間の因果関係での活性をシミュレーションする。従って、遺伝子の差動表現はバックボーンノードによって表される上流エンティティの有効化に対する実験的な証拠であり、RCRは観察された遺伝子表現レベルを上昇させる生物学的機構内への洞察を提供する。
一実施例では、差動遺伝子表現レベルなどの測定された数量の原因となる可能性がある、1つ以上の機構を識別するためにRCRを適用することによって、異物代謝ネットワークモデルが構築される場合がある。バックボーンノードに接続された測定可能なノードで観察される差動遺伝子表現レベルを上昇させるバックボーンノードの生物学的活性レベルを、RCRによって識別される機構が参照する場合がある。換言すると、RCRはバックボーンノードを幾つかの接続された測定可能なノードにリンクする機構を識別し、この測定可能なノードは、バックボーンノードが影響を与えるまたは制御する場合がある測定可能な数量の代表である。特に、上述の機構に関して仮説を公式化するための因果関係のネットワークを処理するために、RCRを使用することができる。一般的に、この一組の機構は、下流活性(下流遺伝子表現など)の上流レギュレーターを表し、その測定およびそれらの差異は、様々な実験的な条件下で関連性および正確性を評価する統計によってランク付けすることができ、また予測を作成するために使用することができる。例えば、上流ノードによって表される数多くのエンティティが増加する場合、因果増加関係によってリンクされる下流ノードは増加が推論され、因果減少関係によってリンクされる下流ノードは減少が推論される。
次いで、RCRは差動測定のデータセットに対して識別された機構を評価する。上流生物学的エンティティ(すなわち、バックボーンノード)を下流遺伝子表現レベル(すなわち、測定可能なノード)にリンクする機構の因果関係は、計算可能な因果関係ネットワークモデルの形態であり、ネットワーク採点方法に従ってネットワークの変化を定量化するために使用される場合がある。幾つかの実施形態では、RCR計算は、ネットワークモデルの生成に対して1つ以上の制約を適用する。制約の実施例としては経路長さ(すなわち、上流ノードと下流ノードとを接続するエッジの最大数)、および上流ノードを下流ノードに接続する可能性のある因果経路が挙げられるが、これらに限定されない。
因果関係ネットワークモデルを構築するためにRCRを使用することには、幾つかの利点がある。第1に、ネットワーク内のノードは、固定したトポロジーを有する因果関係のあるエッジで接続され、ネットワークモデルの生物学的意図を科学者またはユーザーが容易に理解できるようにし、ネットワーク上での推論および計算を総じて可能にする。第2に、しばしば接続が組織または病気の状況以外で代表される経路または接続性マップを構築するための他のアプローチと異なり、本明細書のネットワークモデルは適切な組織/細胞の状況および生物学的プロセスに従って作り出される。第3に、因果関係ネットワークモデルは、タンパク質、DNA変異体、コーディングおよび非コーディングRNA、および他のエンティティ、すなわち表現型、薬品、脂質、メチル化状態、または他の修飾(例えば、リン酸化反応)、ならびに臨床的および生理学的観察などを含む、幅広い範囲の生体分子での変化を捕捉する場合がある。例えば、ネットワークモデルは分子、細胞、および器官レベルから有機体全体までの知識の代表となる場合がある。第4に、ネットワークモデルは進化し、適切な境界の適用によって、特定の種および/または組織の状況を表すように容易に修正され、かつ追加的な知識が利用可能になるのに従い更新される場合がある。第5に、ネットワークモデルは透明であり、ネットワークモデル内のエッジ(原因と結果の関係)は、モデル化される生物学的プロセスのために、各々のネットワークを科学的文献に根付かせる、発行された学的知見によって、すべてサポートされる。
幾つかの実施形態では、生物学的エンティティ間の因果関係および相関関係を捕捉することによって技術的な所見を表す構造化言語で、異物代謝ネットワークモデルがエンコードされる。この言語は、定義されたオントロジー(例えば、HGNC、www.genenames.orgを参照)で表現される機能およびエンティティの定義によって作成される計算可能なステートメントの形成を可能にする。Biological Expression Language(商標)(BEL(商標))(www.openbel.org)は、本開示の実施で使用されるかかる言語の一例であり、生物学的エンティティ間の相互関係を記録するための構文である。BELステートメントは、離散的な科学的因果関係とこれらの関連する文脈上の情報とを表すセマンティックトリプル(主語、述語、目的語)である。
一実施例では、異物代謝ネットワークモデルは、バックボーンノード間の関係、ならびにバックボーンノードと測定可能なノードとの間の関係を記述する、一組のBELステートメントとして提供される場合がある。表1は、5つの一組の例示的なバックボーンノード(左列)および測定可能なノード(中列)に対応するためのそれらの下流接続を含む。表1に示すように、遺伝子は標準的な遺伝子記号に従ってリスト表示されており、その一部またはすべては、ヒト遺伝子解析機構遺伝子命名法委員会によって承認されている。関係値(右列)は、バックボーンノードと測定可能なノードとの間の関係が、因果増加関係(+1)か、または因果減少関係(−1)かのどちらであるかを示す。因果増加関係では、バックボーンノードにおける生物学的活性の量が増加すると、下流の測定可能なノードにおける生物学的活性の量は増加する。因果減少関係では、バックボーンノードにおける生物学的活性の量が増加すると、下流の測定可能なノードにおける生物学的活性の量は減少する。すべてのこれらのバックボーンノードと測定可能なノードとの間の関係は、BELでエンコードすることができる。
表2は、一組の相互接続したバックボーンノードを表す64個のBELステートメントのリストを含む。特に、表2の左列はソースノードを示し、表2の右列は標的ノードを示し、中列は対応するソースノードと標的ノードとの間の関係を示す。表2の中列にリスト表示されている関係に対する記号は、BELコミュニティによって認知されている記号(BELウェブサイト(http://wiki.openbel.org/display/BLD/BEL+Relationships)上にリスト表示されている)に対応する。例えば、記号は因果関係または対応する記号ノードと標的ノードとの間の関係を表す。特に、記号「−>」は増加する因果関係を示し、記号「=>」は直接的に増加する因果関係を示し、記号「−|」は減少する因果関係を示し、記号「=|」は直接的に減少する因果関係を表す。さらに、記号「−sub−>」は標的ノードがソースノードのサブセットまたは一部分であることを示し、記号「−cat−>」は標的ノードがソースノードの触媒活性を表すことを示し、記号「−e−>」は標的ノードがソースノードの転写活性を表すことを示す。これらの記号の意味は、表2に続く凡例にも概要が示されている。
表2のBELステートメントによって記述される異物代謝モデルは、本開示によって提供される方法での使用のためには適切であるが、当業者はRCRおよび関連する文献またはデータセットに基づいて追加的なバックボーンノードを含むことによってモデルを補足することができると考えられる。従って、本明細書に開示される方法は、表2のBELステートメントを含む、本質的に表2のBELステートメントから成る、または表2のBELステートメントから成る、一組のBELステートメントによって記述することができる異物代謝ネットワークモデルを含む。様々な実施では、最も重要なバックボーンノードを接続する、表2のBELステートメントの実質的な数のみが必要とされる。バックボーンノードの各々のネットワークモデルに対する相対的な重要性は、各々のバックボーンノードの個々のスコアによって見積もることができる。例えば図6Bを見ると、バックボーンノードの個々のスコアは、−0.02〜0.16の範囲の異なるシェーディングによって示されている。以下に詳細に記述されるように、バックボーンノードに対するスコアの値は要因によって生じた組織の撹乱を示し、ネットワーク撹乱振幅スコア(NPAスコア)、インジェヌイティパスウェイアナリシス(IPA)によって提供されるスコア、または遺伝子セット濃縮分析(GSEA)によって提供されるスコアである場合がある。
表2に示すバックボーンノード(ソースノードおよび標的ノード)の各々に対するモデルでは、バックボーンノードの活性を推論するために使用することができる対応する一組の測定可能なノード(複数可)がある。当業者は、RCRおよび関連する文献またはデータセットに基づいて、バックボーンノードに対応する測定可能なノードを容易に識別することができる。表1に示すように、5つのバックボーンノードの各々の活性を推論するために、1つ以上の測定可能なノードが使用されてもよい。しかしながら、様々な実施形態では、バックボーンノードに接続されたとしてリスト表示されているすべての測定可能なノードの生物学的活性の測定は、必ずしもバックボーンノードの生物学的活性値を推論する必要はない。接続された測定可能なノードのサブセットからの測定は、バックボーンノードの活性を適切に推論するために十分である。代替的に、追加的な遺伝子を識別するために文献データベースを検索することによって、当業者は測定可能なノードの組を補足する場合があり、その表現は異物代謝の状況において表2にリスト表示される1つ以上のバックボーンノードと因果関係がある。
インビトロおよびインビボ測定を含む、組織から遺伝子表現レベル測定を得る様々な方法が使用されてもよい。図5〜図8と関連して、組織培養から測定を得るための例示的な方法および対応するデータが、「巻きたばこの煙への曝露に対する例示的相関関係研究」と題するセクションに示されかつ記述される。しかしながら、本明細書に記述される実施例は例示の目的のみであり、一般的に、本開示の範囲を逸脱することなく、本明細書に記述されるシステムおよび方法を他の方法を使用して得たデータに適用するために使用されてもよいことを当業者は理解するであろう。
本開示の状況における生物学的システムは、有機体または機能的な部分を含む有機体の部分であり、この有機体は本明細書では被験体と称される。一般的に、被験体に由来する標的生物組織または代用生物組織が本開示の方法で使用または研究される。被験体は一般的にヒトを含む哺乳類である。被験体は人間母集団の中の個々の人間とすることができる。「哺乳類」という用語は本明細書で使用される場合、ヒト、人間以外の霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ブタ、および齧歯類を含むがこれらに限定されない。有利にも、ヒトの病気のモデルを提供するために使用することができる被験体として、ヒト以外の哺乳類を使用することができる。ヒト以外の被験体は、遺伝子改変していない動物、または遺伝子改変動物(例えば、遺伝形質転換動物、または1つ以上の遺伝子突然変異(複数可)もしくは発現抑制した遺伝子(複数可)を有する動物)とすることができる。被験体はオスまたはメスとすることができる。動作の目的に応じて、被験体は対象となる要因に曝露されたものとすることができる。被験体は、所望により研究前の時間を含む、長期間にわたって要因に曝露されたものとすることができる。被験体は、ある期間にわたり要因に曝露されたが、もはや要因と接触していないものとすることができる。被験体は病気を有していることを診断または識別されたものとすることができる。被験体は病気または不良な健康状態の治療を既に受けたまたは受けているものとすることができる。被験体は特定の健康状態または病気に対する1つ以上の症状または危険因子を呈するものとすることもできる。被験体は病気にかかりやすい素因を持っており、症候性または無症候性のいずれかであってもよいものとすることができる。特定の実施では、問題の病気または健康状態は要因への曝露または長期間にわたる要因の使用と関連付けられる。
動作の状況に応じて、異なるレベルにおいて生物学的システムを定義することができ、生物学的システムは、集団内の個々の有機体、有機体一般、器官、組織、細胞タイプ、細胞小器官、細胞成分、または特定の個々の細胞(複数可)の機能に関連する。各々の生物学的システムは、1つ以上の生物学的機構または経路を含み、その動作はシステムの機能的な特徴として明らかである。ヒトの健康状態の定義された特徴を再現し、かつ対象となる要因への曝露が好適な動物システムは、好ましい生物学的システムである。病気の病因学または病理学に関与する細胞タイプおよび組織を反映する細胞および器官型システムも、好ましい生物学的システムである。本明細書に記述されるシステムおよび方法での使用が考えられる生物学的システムは、機能的な特徴(生物学的機能、生理学的機能、または細胞の機能)、細胞小器官、細胞タイプ、組織タイプ、器官、発育段階、またはこれらの組み合わせによって定義することができるが、これらに限定されない。生物学的システムの実施例としては、肺系(例えば、肺の炎症)、外皮系、骨格系、筋肉系、神経系(中枢神経および末梢神経)、内分泌系、心血管系、免疫系、循環器系、呼吸器系、泌尿器系、腎臓系、消化器系、大腸系、肝臓系、および生殖系が挙げられるが、これらに限定されない。生物学的システムの他の実施例としては、上皮細胞、神経細胞、血液細胞、結合組織細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、脂肪細胞、卵子細胞、精子細胞、幹細胞、肺細胞、脳細胞、心臓細胞、喉頭細胞、咽頭細胞、食道細胞、胃細胞、腎臓細胞、肝臓細胞、乳腺細胞、前立腺細胞、膵腺房細胞、島細胞、睾丸細胞、膀胱細胞、頸部細胞、子宮細胞、結腸細胞、および直腸細胞内の様々な細胞の機能が挙げられるが、これらに限定されない。一部の細胞は、細胞株の細胞、インビトロで培養された細胞、または適切な培養条件下でインビトロで無期限に維持された細胞であってもよい。細胞の機能の例としては、細胞増殖(例えば、細胞分裂)、細胞変性、細胞再生、細胞老化、細胞核による細胞活性の制御、細胞間シグナリング、細胞分化、細胞脱分化、細胞ストレス応答、異物代謝、自食作用、ネクロプトーシス、細胞分泌、細胞遊走、食作用、細胞修復、アポプトーシス、および発達プログラミングが挙げられるが、これらに限定されない。生物学的システムとして考慮することができる細胞成分の例としては、細胞質、細胞骨格、細胞膜、リボソーム、ミトコンドリア、細胞核、小胞体(ER)、ゴルジ装置、リソソーム、DNA(例えば、DNA損傷またはDNA修復)、RNA、タンパク質、ペプチド、および抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
「試料」は本明細書で使用される場合、被験体または実験系(例えば、細胞、組織、器官、または動物全体)から分離されたあらゆる物体を指す。試料としては、単一の細胞もしくは複数の細胞、細胞の断片、組織生検、切断した組織、組織抽出物、組織、組織培養抽出物、組織培養基、呼気ガス、全血、血小板、血清、血漿、赤血球、白血球、リンパ球、好中球、マクロファージ、B細胞もしくはそのサブセット、T細胞もしくはそのサブセット、造血細胞のサブセット、内皮細胞、滑液、リンパ液、腹水、間質液、骨髄、脳脊髄液、胸膜滲出液、腫瘍浸潤液、唾液、粘液、痰、精液、汗、尿、または任意の他の体液を挙げることができるが、これらに限定されない。試料は、静脈穿刺、排泄、生検、針吸引、洗浄、擦過、外科的切除、または当業界で周知の他の手段を含むがこれらに限定されない手段によって被験体から得ることができる。
試料は、一組の遺伝子の差動遺伝子表現レベルを含む生物学的活性評価基準を得るために使用される。差動遺伝子表現レベルは、処置データと対照データとの間の差異の代表である、一組のコントラストデータから得られる場合がある。処置データは要因に対する試料の応答に対応する一方で、対照データは例えば要因の欠如などの、対照条件下で同一の試料の応答に対応する。
異物代謝は、生物学的システムが生物学的システムに対して異物である物質に曝露されたときの初期応答の1つである。従って、異物代謝のあらゆる増加は生体異物物質に対する曝露を示す場合がある。異物代謝の変化は、曝露された生物学的システム、病気、ましてやガンにおける有害事象の発生をさらに示す場合がある。本明細書に記述される計算的なシステムおよび方法は、要因によって攪乱されたときの生物学的システム内の変化の程度を客観的および定量的に評価する。特に変化の程度は「スコア」によって表すことができ、スコアは生物学的システムにおける変化の程度の定量的な評価基準を提供する値または一組の値である。
一態様では、異物代謝の変化を反映するスコアを、生物学的システムの生体異物物質への曝露を検出するために使用することができる。別の態様では、生物学的システムの生体異物物質への曝露によって生じた全体的な生物学的影響を推定するために、異物代謝の変化を反映するスコアを使用することができる。様々な実施形態では、数ある中でも、工業製品(安全性評価または安全性比較のための)、栄養補助食品を含む治療用の化合物(効能または健康上の利益の判定のため)、および環境的活性物質(長期の曝露のリスクおよび有害事象と病気の徴候の関係の予測のため)への曝露によって生じた生物学的システムの変化を評価および比較するために、スコアを使用することができる。スコアは、患者が薬物に反応するかどうか、または薬物の使用に起因するいずれかの不良な反応の程度を予想するためにも使用される場合がある。生物学的システムに対する異なる要因の相対的な影響を比較するために、異なる要因に対して得たスコアを使用することができる。
試料または試料分類内の協調発現を評価するために、個々の遺伝子ではなく既定の遺伝子の集合(または遺伝子の組)を使用する分析の様々な管理された方法は、当業界で周知であり、また適用される場合がある。スコアの計算は、要因によって生物学的システムが攪乱された管理された実験または臨床試験から得た一組の遺伝子発現データを入力データとして使用する。異物代謝ネットワークモデルは、既定の一組の遺伝子に対応する一組の測定可能なノードを含み、その発現レベルが測定され、かつデータが収集される。要因に曝露された細胞から収集されたこの既定の一組における遺伝子の発現レベルは、本明細書では処置データと称される。要因に曝露されていない、または異なる条件下で曝露された細胞から収集された同一の遺伝子の遺伝子発現レベルは、対照データと称される。各々の測定可能なノードに対する処置データと対照データとの間の差異は、その測定可能なノードに対する活性評価基準である。幾つかの実施では、活性評価基準はフォールド変化(fold-change)に関して表現され、フォールド変化は対照データと処置データとの間、または異なる処置条件を表す2組のデータ間の変化の程度を記述する数値である。各々のノードに対する活性評価基準は、処置データと対照データとの間の差異の対数を含む場合がある。
幾つかの実施形態では、本発明のシステムおよび方法によって生成されたスコアは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際特許公開第WO2013/034300号、PCT出願第PCT/EP2013/062979号、および同第PCT/EP2012/061035号の各々に記述されるネットワーク撹乱振幅(NPA)スコアである。測定可能なノードの活性評価基準とエッジを介して接続されるバックボーンノードの活性評価基準との間の差異を表す差異ステートメントを使用して、測定可能なノードにおける生物学的活性の測定値をバックボーンノードの活性値へと変換することによって、NPAスコアが計算される場合がある。幾つかの実施では、以下の差異ステートメントが使用される場合がある。
式中、f(x)は、活性値(第2の組のノード内のノードxに対する)、または評価基準(第1の組のノード内のノードxに対する)を意味し、
は、生物学的エンティティを表すノードxを生物学的エンティティを表すノードyに接続する、異物代謝ネットワークモデル内のエッジの方向値を意味し、
は、エンティティxおよびyを表すノードを接続するエッジと関連付けられた重みを意味する。差異目的に従って最適化を遂行することによって、バックボーンノードの活性値を生成することができる。差異目的は、差異ステートメントが最大化される、最小化される、または標的の値にできるだけ近づくように特定する場合がある。最適化のために、最も滑らかな関数(ネットワークモデル内の因果関係があるエッジの符号を説明する)は、測定に対応するバックボーンノードに境界条件を課することによって由来する可能性がある。この差異目的は、以下の計算的な最適化問題として書かれる場合がある。
式中、βは測定可能なノードの各々に対する活性評価基準を表す。差異目的に対処するために、異物代謝ネットワークモデルは、例えば重み付けした、または重み付けしていない隣接行列を介して計算的に特徴付けられる。一実施例では、差異目的が上記の式8に従って公式化されると仮定して、異物代謝ネットワークモデルは、以下の式に従って定義される符号付きのラプラシアン行列を使用して特徴付けられる。
この特徴化を仮定すると、式8の差異目的は、以下のように代表される。
幾つかの実施では、NPAスコアは以下の式に従って計算される場合がある。
式中、
は測定可能なノード(すなわち、処置データおよび対照データが受信されるもの)を意味し、
は生物学的エンティティxに対して生成される活性値を意味し、
は生物学的エンティティを表すノードxを生物学的エンティティを表すノードyに接続する計算的なネットワークモデル内のエッジの方向値を意味する。バックボーンノードに関連付けられる活性値のベクトルがf2を意味する場合、NPAスコアは、以下の二次形式を介して計算される場合がある。
式中、
であり、式中、diag(out)はバックボーンノードにおいて各々のノードが出て行く角度を有する対角行列を意味し、diag(in)はバックボーンノードにおいて各々のノードが入ってくる角度を有する対角行列を意味し、Aは、それらのバックボーンノードのみに限定され、かつ以下に従って定義される異物代謝ネットワークモデルの隣接行列を意味する。
Aが重み付けした隣接行列である場合、Aの要素
は重み因子
によって乗算される。特定の実施では、二次形式として表現することができる異物代謝ネットワークモデルに内在する記号付きの方向付けられたグラフ上で、NPAスコアは(セミ)ソボレフ型ノルムとして計算される。
図6Bおよび図6Cは、以下に詳細に記述されるが、簡潔に述べると、図6Bはインビボの気管支(左)および鼻(右)のデータを使用する異物代謝ネットワークモデルにおけるバックボーンノードの活性値のグラフィックなイラストであり、図6Cは異物代謝ネットワークモデルに対する対応するNPAスコアのバープロットを示す。図6Bでは、バックボーンノードの異なるシェーディングは、異物代謝に関する生物学的機構を実証するNPA採点技法に由来するバックボーンノードの定量化を反映する。負値はバックボーンノード活性の下方制御を示し、正値はバックボーンノード活性の上方制御を示す。以下に詳細に説明するように、図6Cに示すNPAスコアは統計的に有意であり、異物代謝ネットワークモデル内で代表されるインビボの鼻の試料および気管支の試料の両方が有意に生物学的機構を実証することを示唆する。
別の実施例では、図4の右パネルの挿入図は、2つの例示的なバックボーンノードと接続された測定可能なノードとの間の因果関係のグラフィックなイラストを示す。バックボーンノード(楕円)の活性は、機能的な層を構成するネットワークモデルの機能的な態様を特徴付け、また測定可能なノード(円)の遺伝子発現レベルは、測定可能なノードに対応する遺伝子の転写の活性によって特徴付けられるネットワークモデル内にノードの第2の層(転写層)を構成する。所与の遺伝子(測定可能なノード)の発現は、1つ以上のバックボーンノード(矢じりは因果増加関係を示し、ダッシュ記号は因果減少関係を示す)によって調節される場合がある。前向きの論法では、測定された遺伝子発現レベルは、それらの関連付けられたタンパク質またはタンパク質機能の直接的な代わりであると仮定される。対称的に、転写層(測定可能なノード)において遺伝子発現レベルに基づいて機能的な層(バックボーンノード)によって表される生物学的プロセスを、後向きの論法のアプローチが採点する。このようにして、バックボーンノードの定量化は、異物代謝に関する生物学的機構を反映する。
幾つかの実施形態では、NPAスコアと関連して信頼区間が計算される。信頼区間は実験的な誤差(例えば、実験群内の試料間の生物学的多様性)を説明する場合がある。さらに、異物代謝ネットワークモデルに記述される機構に対して得られるNPAスコアの特異性を定量化するために、コンパニオン統計が計算される場合がある。特に、測定可能なノードにおける測定の二次関数によってNPAスコアが表されると、NPAスコアの統計的分散は測定の分散から計算される場合がある。次いで、信頼区間を導出するために中心極限定理が使用される場合がある。
幾つかの実施形態では、2つの並べ替え検定の一方または両方が実施される。第1の並べ替え検定は、ネットワーク内の測定可能なノードの測定された値への位置の重要性を評価する。この場合、測定可能なノードの遺伝子ラベルは入れ替えられ、NPAスコアは各々の入れ替えに対して再計算され、並べ替えP値は導出される(値が<0.05であるとき、図4で*Oによって示される)。従って第1の並べ替え検定は、得られたNPAスコアが異物代謝ネットワークモデル内で内在する証拠(すなわち、測定可能なノードの遺伝子発現レベル)に特定のものかどうかを評価する。第2の並べ替え検定は、ネットワーク撹乱の振幅に対して機能的な層(バックボーンノード)ネットワークが有意に貢献しているかどうかを評価する(値が<0.05のとき、図内でK*によって示される)。2つの並べ替え検定からのP値が両方とも低く(典型的には<0.05)、かつ信頼区間が0より大きいときに撹乱が有意である場合、ネットワークが明確に攪乱されたと考えられる場合がある。小さいP値(例えば0.5%未満、1%未満、5%未満、または任意の他の端数)は、提案されたNPAスコアが統計的に有意であることを示す。本明細書に開示されるようにNPAスコアを計算する方法は、それぞれの統計を提供するように、これらの並べ替え検定の一方または両方を含む場合がある。
幾つかの実施形態では、例えばIngenuity(登録商標)Pathway分析(IPA)スコアを生成するための別の採点方法を適用してもよい。IPAスコアは本明細書で使用される場合、異物代謝ネットワークモデルの一組の測定(これはFocus Genesと称されるユーザー定義された一組の遺伝子であってもよい)への適合を表す。IPAスコアは統計的なp値から導出され、Focus Genesが偶然によりネットワーク内で一緒になる見込みを示す。第1に異物代謝ネットワークモデルを生成することによってIPAスコアを判定するために、Ingenuity(登録商標)Knowledge Base(IKB)が使用される場合がある。各々の因果関係接続および異物代謝ネットワークモデル内の各々のノードがパブリケーションから抽出された証拠によってサポートされるように、IKBは一組のパブリケーションから判定された結果の集合を含む。
IPAスコアを計算するための方法が当業界で周知であり、IPAスコアを計算するためのソフトウェアパッケージが市販されている(Ingenuity Systems(米国レッドウッドシティ))。IPAプロセスを使用するネットワークの生成は、Focus Genesをそれらの相互接続性に関してソーティングすること含む場合がある。一実施例では、高度に相互接続したFocus Genesは、接続されている数がより少ない他のFocus Genesの前に処理される場合がある。次いで、Focus Genesからより小さいネットワーク部分が構築される場合があり、小さいネットワーク部分にわたって接続を提供する「リンカー」遺伝子を使用して小さいネットワーク部分が統合される。特に、リンカー遺伝子は、ほとんどのエッジを複数の小さいネットワーク部分内に有するものであってもよい。次いで、まだ小さいネットワーク部分(すなわち、例えば35個未満(または任意の他の好適な数)の遺伝子を有するもの)に対して、Focus Genesに追加的な生物学的状況を提供するために、小さいネットワーク部分の周辺に他の遺伝子が提供される場合がある。最後に、フィッシャーの直接確率検定などの有意性検定を使用して、超幾何学的なp値からpスコアが計算される場合がある。特に、p値は超幾何学的な分布の右側合計に対応する場合があり、pスコアは
のように計算される場合がある。
幾つかの実施形態では、遺伝子セットのレベルにおいてマイクロアレイデータを評価する遺伝子セット濃縮分析(GSEA)と称される当該技術分野で周知の別の技法によってスコアを生成することができる [Subramanian A,Tamayo P,Mootha VK,Mukherjee S,Ebert BL,Gillette MA,Paulovich A,Pomeroy SL,Golub TR,Lander ES,Mesirov JP:Gene set enrichment analysis:A knowledge−based approach for interpreting genome−wide expression profiles.Proc.Natl.Acad.Sci.2005,102(43):15545−50.]。GSEAでは、遺伝子発現レベルとクラス判別との間の相関関係に基づいて、遺伝子がランク付けされる。この分析は、(i)選ばれた表現型に対するそれらの相関関係に基づいてデータセット内のすべての遺伝子をランク付けし、(ii)遺伝子セットのすべての要素のランク位置を識別し、(iii)観察されたランキングと無作為なランク分布を仮定して予想されるものとの間の差異を表すエンリッチメントスコア(ES)を計算することによって遂行される。表現型にわたって各々の遺伝子セットに対してESを確立した後、GSEAは試料ラベルを反復的に無作為化し、無作為なクラスにわたってエンリッチメントについて再試験する。クラスラベルの無作為化を繰り返し遂行することによって、真のクラスにわたる各々の遺伝子セットに対するESを無作為なクラスからのES分布と比較することができる。反復的な無作為のクラスの並べ替え性能が有意により優れている遺伝子組は有意であると考えられる。スコアは、ランク付けされたリストの最上位または最下位において遺伝子セットが大きな比率を占める程度を反映する場合があり、重み付けしたコルモゴロフ−スミルノフに類似した統計に対応する場合がある。
幾つかの実施形態では、強度スコアとして既知のスコアを生成するために当業界で周知の別の方法を使用してもよく、この強度スコアは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,417,661号に記述されるようなものである。一実施例では、一組の測定可能なノードに対して調節された対数フォールド変化または差動発現レベルとして重み付けした平均値として、強度スコアが測定された。特に、強度スコアは2つの重み付けした合計間の差異に対応する振幅値としてもよい。一方の合計は、増加(例えば、特定のバックボーンノードについて因果増加(または減少)関係を有するもの)が予想される測定可能なノードの差動発現レベルのlog2の合計であり、もう一方の合計は、減少(例えば、特定のバックボーンノードについて因果減少(または増加)関係を有するもの)が予想される測定可能なノードの差動発現レベルのlog2の合計である。このようにして、対数フォールド変化は、これらのノードを増加が予想されるもの、および減少が予想されるものとして異なるように見なすことによって「調節される」。各々のノードに対する変化を正規化した値として、差を測定可能なノードの数で割って強度スコアを得てもよい。測定可能なノードに適用された重みは同じ(例えば、1つの重みの値が1)であっても、または異なっていてもよい。幾つかの実施形態では、参照ノードにおける活性レベルを予想するために強度スコアが使用される。例えば、強度スコアが正のとき参照ノードは増加と予想される場合があり、一方で負の強度スコアに対しては参照ノードは減少と予想される場合がある。
本明細書に記述される計算的なシステムおよび方法は、一対の生物組織の間のスコアの相関関係も識別する。特に、一方の生物組織は「標的生物組織」と称され、もう一方の生物組織は「代用生物組織」と称される場合がある。場合によっては、ユーザーにとって試料を標的生物組織から入手するのは困難である。しかしながら、ユーザーは、代用生物組織の試料のデータまたは測定を有する場合があり、これは標的生物組織の仮説に基づいた測定と相関している場合があり、これはユーザーにとってアクセスがより容易である。幾つもの理由により、標的生物組織を得るうえでの困難が生じる場合がある。例えば、所望の標的生物組織からのデータの収集は、組織からインビボでデータを記録する必要がある場合があるが、これは非常に侵襲性の高い技法であり、容認されない、または実験的には可能でない場合がある。しかしながら、ユーザーが組織の器官型培養にアクセスを有する場合、より困難の少ない条件下でインビトロデータを得られる場合があり、インビトロデータがより経済的な解決策を提示する場合がある。器官型培養の使用は、製品試験、毒性試験、薬物開発研究における生きた動物の使用を低減する場合がある。別の実施例では、気管支または肺の組織へのアクセスは鼻の組織へのアクセスより困難である場合があり、また鼻の組織は標的の気管支または肺の組織に対する代用生物組織として機能する場合がある。
標的生物組織の試料と代用生物組織の試料との間の相関関係は、以前に遂行された相関関係実験から判定される場合がある。相関関係実験の特定の実施例が、図5〜図8、ならびに表3および表4に関連して詳細に記述される。例えば、標的生物組織と代用生物組織との実際の試料が以前に得られている場合があり、要因に曝露された試料(すなわち、処置データ)からと、要因に曝露されていない試料(すなわち、対照データ)からとの遺伝子発現レベルが測定されている場合がある。測定可能なノードの活性評価基準を測定に由来する値に設定する場合がある、計算的な因果関係ネットワークモデルに、この測定が入力データとして提供される場合がある。次いで、バックボーンノードのうちの少なくとも幾つかに対する生物学的活性値が、試料の各々に対して得られる場合がある。特に、バックボーンノードに対する生物学的活性値の第1の組が実際の標的生物学的試料に対して得られ、バックボーンノードに対する生物学的活性値の第2の組が実際の代用生物学的試料に対して得られた。相関関係は、対応するバックボーンノードに対する生物学的活性値の第1の組と生物学的活性値の第2の組との間の相関関係を識別することによって判定される場合がある。例えば、標的生物学的試料および代用生物学的試料の様々な組み合わせに対するピアソン相関係数およびスピアマン相関係数が表3および表4に示されるが、本明細書に記述されるシステムおよび方法に従って標的生物学的試料と代用生物学的試料との間の相関関係を表すために、任意の他の好適なタイプの相関係数が使用されてもよいことを、当業者は理解するであろう。別の実施例では、生物学的試料に対する撹乱の量を代表するスコアは、生物学的活性値に基づいて評価される場合があり、また標的生物組織の試料に対するスコアは、代用生物組織の試料に対するスコアと相関している場合がある。
いずれの場合でも、相関関係実験が以前に遂行され、かつ出版されている場合があり、これによってユーザーは相関関係に気付き、および得るのがより困難または単に非経済的である場合がある標的生物組織の代用品として代用生物組織を使用するために、相関関係を活用する。従って、相関関係を識別すると、ユーザーは代用生物組織の試料から記録されたデータをバックボーンノードの活性値を提供する計算的な因果関係ネットワークモデルに提供する。次いで、この相関関係を使用して、提供された代用生物組織に対する活性値が、仮説に基づいた標的生物組織に対する結果となる活性値と類似または相関していることを、ユーザーは推論する場合がある。同様に、代用生物組織の試料に対するネットワークモデルの撹乱を代表するスコアは、標的生物組織の試料に対するネットワークモデルの仮説に基づいた撹乱と類似または相関していると推論される場合がある。ユーザーに対して代用生物組織と標的生物組織との間の相関関係を識別するやり方を提供することによって、代用生物組織の試料と比べて標的生物組織の試料を得るのが実験的により困難または高価である場合、本明細書に記述されるシステムおよび方法は特に有用になる。ユーザーは既に代用生物組織の試料からのデータまたは測定を有している場合があり、またはかかるデータに都合の良いアクセスを有している場合がある。代用生物組織と標的生物組織との間の相関関係を利用することによって、標的生物組織からの仮説に基づいた測定の値を推論するために、ユーザーは代用生物組織からの測定を使用する場合がある。
要因は、単一の物質、またはすべての成分が識別されていない、または特徴付けられていない混合物を含む、物質の混合物とすることができる。要因またはその成分の化学的特性および物理的特性は、完全には特徴付けられていない場合がある。要因をその構造、その成分、または特定の条件下でその要因が製造される製造源によって定義することができる。要因の実施例は生体異物であり、これは生物学的システム内に存在しないまたは生物学的システムに由来しない分子またはエンティティであり、かつ生物学的システムに接触した後それらから生産された任意の中間物質または代謝物質である。要因は炭水化物、タンパク質、脂質、核酸、アルカロイド、ビタミン、金属、重金属、ミネラル、酸素、イオン、酵素、ホルモン、神経伝達物質、無機化学化合物、有機化学化合物、環境要因、微生物、粒子、環境条件、環境力、または物理的な力であり得る。要因の非限定的な実施例としては、栄養素、代謝廃棄物、毒物、麻薬、毒素、治療用の化合物、刺激物、弛緩薬、天然製品、工業製品、皮膚科学品、化粧品、食品、病原体(プリオン、ウイルス、細菌、菌類、原虫)、寸法がマイクロメートル範囲以下の粒子またはエンティティ、上述のものの副製品、および上述のものの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。物理的な要因の非限定的な実施例としては、放射線、電磁波(太陽光を含む)、温度の増加または減少、せん断力、流体圧力、放電(複数可)、またはこれらの連続、もしくは外傷が挙げられる。生物学的システムのどの部分(複数可)が曝露されたかに応じて、および曝露条件に応じて、要因が試料に変化を生じる場合がある。要因の非限定的な実施例としては、発がん物質、刺激物、環境汚染物質、薬物、薬物候補、ニコチン置換療法のために使用されるあらゆる製品、または消費者製品中の内容物、食品、飲料製品、または栄養補助食品を含む場合がある。
様々な実施形態では、標的または代用生物組織の試料に接触するために使用される要因は、被験体によって吸入される場合がある浮遊性の汚染物質であってもよい。この場合、要因としては、以下の非限定的な実施例が含まれる場合がある。すなわち、たばこの煙、巻きたばこの煙(CS)、ニコチンを含むエアロゾル、たばこを加熱することによって発生するエアロゾル、たばこを燃焼せずに加熱することによって発生するエアロゾル、前述のものの任意の1つ以上の分離された成分、一酸化炭素、煤煙、任意の炭化水素燃料の燃焼によって生じた排気、ガソリンの排気、ディーゼルの排気、コークス炉の排出物、様々なサイズ範囲の浮遊性の粒子状物質、重金属(カドミウム、クロム、鉛、マンガン、水銀、ニッケル)、アンチモン、もしくはヒ素を含む浮遊性の化合物、ガラス、岩石、もしくはスラグ繊維(または他の鉱物由来の繊維)を製造もしくは処理する設備からの平均直径が1マイクロメートル以下の鉱物繊維排出物、2つ以上のベンゼン環を有しかつ100℃以上の沸点を有する有機化合物などの多環式有機物質、アセトアルデヒド、アセトアミド、アセトニトリル、アセトフェノン、2−アセチルアミノフルオレン、アクロレン、アクリルアミド、アクリル酸、アクリロニトリル、塩化アリル、4−アミノビフェニル、アニリン、o−アニシジン、アスベスト、ベンゼン(ガソリンからのベンゼンを含む)、ベンジジン、ベンゾトリクロリド、塩化ベンジル、ビフェニル、ビス(2−エチルへキシル)フタレート(dehp)、ビス(クロロメチル)エーテル、ブロモホルム、1,3−ブタジエン、カルシウムシアナミド、カプロラクタム、キャプタン、カルバリル、二硫化炭素、四塩化炭素、硫化カルボニル、カテコール、クロランベン、クロルデン、塩素、クロル酢酸、2−クロロアセトフェノン、クロロベンゼン、クロロベンジレート、クロロホルム、クロロメチルメチルエーテル、クロロプレン、クレゾール/クレゾール酸(単量体および混合物)、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、クメン、ジクロロジフェニルジクロロエチレン、ジアゾメタン、ジベンゾフラン、1,2−ジブロモ−3−クロロプロパン、ジブチルフタレート、1,4−ジクロロベンゼン(p)、3,3−ジクロロベンジジン、ジクロロエチルエーテル(ビス(2−クロロエチル)エーテル)、1,3−ジクロロプロパン、ジクロルボス、ジエタノールアミン、n,n−ジメチルアニリン、硫酸ジエチル、3,3−ジメトキシベンジジン、ジメチルアミノアゾベンゼン、3,3’−ジメチルベンジジン、ジメチル塩化カルバモイル、ジメチルホルムアミド、1,1−ジメチルヒドラジン、フタル酸ジメチル、硫酸ジメチル、4,6−ジニトロ−o−クレゾール、および塩類、2,4−ジニトロフェノール、2,4−ジニトロトルエン、1,4−ジオキサン(1,4−ジエチレンオキシド)、1,2−ジフェニルヒドラジン、エピクロルヒドリン(l−クロロ−2,3−エポキシプロパン)、1,2−エポキシブタン、アクリル酸エチル、エチルベンゼン、エチルカルバメート(ウレタン)、エチル塩化エチル(クロロエタン)、二臭化エチレン(ジブロモエタン)、エチレン二塩化エチレン(1,2−ジクロロエタン)、エチレングリコール、エチレンイミン(アジリジン)、酸化エチレン、エチレンチオ尿素、2塩化エチリデン(1,1−ジクロロエタン)、ホルムアルデヒド、ヘプタクロル、ヘキサクロロベンゼン、ヘキサクロロブタジエン、ヘキサクロロシクロペンタジエン、ヘキサクロロエタン、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、ヘキサメチルヘキサメチルリン酸アミド、ヘキサン、ヒドラジン、塩酸、フッ化水素(フッ化水素酸)、硫化水素(変性を参照)、ハイドロキノン、イソホロン、リンデン(すべての異性体)、無水マイレン酸、メタノール、メトキシクロル、臭化メチル(ブロモメタン)、塩化メチル(クロロメタン)、メチルクロロホルム(1,1,1−トリクロロエタン)、メチルエチルケトン(2−ブタノン)(変性を参照)、メチルヒドラジン、ヨウ化メチル(ヨードメタン)、メチルイソブチルケトン(ヘキソン)、メチルイソシアネート、メタクリル酸メチル、メチル3級ブチルエーテル、4,4−メチレンビス(2−クロロアニリン)、塩化メチレン(ジクロロメタン)、メチレンジフェニルジイソシアネート(mdi)、4,4’−メチレンジアニリン、ナフタレン、ニトロベンゼン、4−ニトロビフェニル、酸化窒素、4−ニトロフェノール、2−ニトロプロパン、n−ニトロソ−n−メチル尿素、n−ニトロソジメチルアミン、n−ニトロソモルホリン、オゾン、パラチオン、ペンタクロロニトロベンゼン(クイントベンゼン)、ペンタクロルフェノール、フェノール、p−フェニレンジアミン、ホスゲン、ホスフィン、リン、無水フタル酸、ポリ塩化ビフェニル(アロクロール)、1,3−プロパンスルトン、β−プロピオラクトン、プロピオンアルデヒド、プロポスキル(ベイゴン)、2塩化プロピレン(1,2−ジクロロプロパン)、酸化プロピレン、1,2−プロピレンイミン(2−メチルアジリジン)、キノリン、キノン、スチレン、酸化スチレン、2酸化イオウ、2,3,7,8−テトラクロロジベンゾ−p−ダイオキシン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン(ペルクロロエチレン)、四塩化チタン、トルエン、2,4−トルエンジアミン、2,4−トルエンジイソシアネート、o−トルイジン、トキサフェン(塩素化カンフェン)、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4,6−トリクロロフェノール、トリエチルアミン、トリフルラリン、2,2,4−トリメチルペンタン、酢酸ビニル、臭化ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン(1,1−ジクロロエチレン)、キシレン(異性体および混合物)、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、または任意の他の哺乳類の呼吸器系に接触する場合がある異物が挙げられる。
要因または複合刺激の曝露投与計画は、毎日の設定における曝露の範囲および周囲の状況を反映するべきである。一組の標準的場曝露投与計画を、良好に定義された実験系のために系統的に適用するように設計することができる。早期イベントおよび遅延イベントの両方を捕捉するために、および代表投与範囲を確実に包含するために、時間および投与に従属するデータを収集するように各々のアッセイを設計することができる。さらに、要因を組織に曝露するプロセスは、曝露が有機体に生じることになるプロセスと同一であってもよく、または異なっていてもよい。例えば、組織を浮遊性の要因に曝露するためには、要因を組織上に噴霧する、組織および要因を閉鎖空間内に保管する、または溶液中もしくは懸濁を介するなどの代替的な形態の要因に組織を接触させる、などの幾つかの技法が使用される場合がある。しかしながら、対処する用途のために適切であり、本明細書で設計するシステムおよび方法が他の好適な用途に採用されてもよく、またかかる他の追加および修正がその範囲を逸脱しない場合、本明細書に記述されるシステムおよび方法が適合および修正される場合があることは当業者によって理解されるであろう。
有機体の呼吸気管内の組織に対する傷害または損傷の量を定量的および定性的に評価するのが望ましい。一実施例では、CSへの曝露の後、肺組織だけでなく、鼻の組織および気道に沿った組織で組織傷害の領域が生じる。この場合、代用生物組織として上気道からの組織(鼻の組織または頬の組織など)を使用し、標的生物組織として下気道からの組織(肺組織など)を使用するのが望ましい場合がある。上気道からの組織は、下気道からの組織よりも得るのがより容易またはより安価である場合があるので、これは望ましい場合がある。この場合、下気道からの標的生物組織のネットワーク攪乱またはバックボーン活性値を評価するために、上気道からの代用生物組織が代用品として使用される。
一実施例では、代用生物組織は組織からの(例えば、呼吸気管からの)インビトロの器官型の組織培養であり、標的生物組織の試料は同一の組織から記録されたインビボデータを含む。一実施例として、組織は気管支の組織または鼻の組織であってもよく、インビトロデータとインビボデータとの間の相関関係は、一方または両方の組織に対して観察される場合がある。ユーザーが、標的生物組織に対する代用品として代用生物組織を使用できるようにすることによって、生物組織の試料からのインビトロデータは、インビボデータに対して代用される場合があり、有利にも、生きた動物試験が低減される場合がある。 生物組織の試料源としては、喫煙者、たばこ製品の使用者、一度も喫煙したことがない者、喫煙をやめた喫煙者、呼吸器の病気を有する人間の患者、人間の慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者、およびCOPDなどの人間の呼吸器の病気の動物モデルが挙げられるが、これらに限定されない。
別の実施例では、第1の生物組織と第2の生物組織との間の相関関係が観察され、第2の生物組織と第3の生物組織との間の相関関係も観察される。この場合、第1の生物組織は第3の生物組織と相関している。一実施例では、第1の生物組織はインビトロデータであり、第2の生物組織はインビボデータであり、第1の生物組織および第2の生物組織は同一の領域(例えば、鼻の組織)から記録される。第3の生物組織はインビトロデータまたはインビボデータから得た別の領域(例えば、肺組織)であってもよい。この場合、3つの生物組織すべては、相関している場合があり、代用生物組織および標的生物組織として3つの生物組織からの任意の生物組織の対が使用されてもよい。
図1は、本明細書に開示するシステムおよび方法を実施するために使用される場合がある、コンピュータネットワークおよびデータベース構造の実施例を示す。図1は、図示的な実施形態に従って異物代謝ネットワークモデルの撹乱の評価を遂行するための、コンピュータ化されたシステム100のブロック図である。システム100は、サーバー104と、ユーザー装置108と、ネットワークモデルデータベース106と、コンピュータネットワーク102を通して接続された相関関係データベース107と、を備える。サーバー104はプロセッサ105を含み、ユーザー装置108はプロセッサ110およびユーザーインターフェース112を含む。「プロセッサ」または「コンピューティング装置」という用語は本明細書で使用される場合、本明細書に記述されるコンピュータ化された技法のうちの1つ以上を実施するためのハードウェア、ファームウェア、およびソフトウェアを有して構成された、1つ以上のコンピュータ、マイクロプロセッサ、ロジック装置、サーバー、または他の装置を指す。プロセッサおよび処理装置は、入力、出力、および現在処理しているデータを保存するための1つ以上のメモリ装置も含む場合がある。本明細書に記述されるプロセッサおよびサーバーのうちのいずれかを実装するために使用されてもよい、例示的なコンピューティング装置300は、図3を参照して以下に詳細にされる。「ユーザーインターフェース」は本明細書で使用される場合、1つ以上の入力装置(例えば、キーパッド、タッチスクリーン、トラックボール、音声認識システムなど)、および/または1つ以上の出力装置(例えば、ビジュアルディスプレー、スピーカー、触覚ディスプレー、印刷装置など)の任意の好適な組み合わせを含むがこれに限定されない。「ユーザー装置」は本明細書で使用される場合、本明細書に記述されるコンピュータ化されたアクションまたは技法のうちの1つ以上を実施するためのハードウェア、ファームウェア、およびソフトウェアで構成された装置の1つ以上の装置の任意の好適な組み合わせを含むが、これに限定されない。ユーザー装置の例としては、パーソナルコンピュータ、ノートパソコン、およびモバイル端末(例えば、スマートフォン、タブレットコンピュータなど)が挙げられるが、これに限定されない。図1では図面を複雑にするのを避けるために、1つのサーバー、1つのユーザー装置、および2つのデータベースのみが示されるが、システム100は複数のサーバー、および任意の数のデータベース、またはユーザー装置をサポートする場合があることを当業者は理解するであろう。
ネットワークモデルデータベース106は、ネットワークモデルを代表するデータおよびネットワークモデルの要素を含むデータベースである。例えば、ネットワークモデルが生物学的システムのモデルである場合、ネットワークモデルの代表は、1つ以上のBELのステートメントの形態である場合がある。BELステートメントは、ネットワークの2つのノード(例えば、主語と述語)間の関係の表示を提供する場合がある。ネットワークモデルデータベース106は、バックボーンノードおよび測定可能なノードを分離して保存する場合がある。例えば、ネットワークモデルデータベース106は、データベースの1つの部分内に一組のバックボーンノードを保存する場合があり、データベースの別の部分内に測定可能なノードが保存される場合がある。ノード間のエッジは、一組のバックボーンノード、一組の測定可能なノードとともにデータベース内に保存される場合があり、または2つのノードを接続するための一組のポインターとして別個に保存される場合がある。さらに、2つのノード間の因果関係が因果増加関係であるかまたは因果減少関係であるかを示す+1または−1などの方向的な値と、エッジが関連付けられる場合がある。
相関関係データベース107は、2つの組織間の相関関係を代表するデータを含むデータベースである。例えば、要因への曝露に対応して、標的組織の予想される攪乱と代用組織の攪乱との間の相関関係に、この相関関係が対応する場合がある。特に、標的組織は、呼吸気管の1つの部分(すなわち、例えば肺組織または気管支の組織)などの1つの区域から収集されたインビボデータであってもよく、代用組織は、呼吸気管の別の区域または別の部分(すなわち、例えば鼻の組織または頬の組織)から収集されたインビボデータであってもよい。別の実施例では、標的組織は、1つの区域から収集された器官型のインビトロデータであってもよく、代用組織は、別の区域から収集された器官型のインビトロデータであってもよい。さらに別の実施例では、標的組織は1つの区域から収集されたインビボデータであってもよく、代用組織は同一の区域から収集された器官型のインビトロデータであってもよい。これらの実施例のうちのいずれかでは、相関関係データベース107は、2つのデータセットの予想される撹乱または応答が相関することが予想される表示を保存する。追加的に、相関関係データベース107は、一組の線形回帰パラメータ、相関関係スコア、またはこれらの両方などの他のパラメータを各々の相関関係に対してさらに保存する場合がある。特に一組の線形回帰パラメータは、2つのデータセットがどのように相関しているかを示し、y切片と線形回帰の傾きとを含む場合がある。相関関係スコアは相関関係の強度を示す場合があり、例えば相関係数を表す場合もある。
図1のシステム100の構成要素は、幾つものやり方のうちのいずれかで配設、分散、および組み合せされてもよい。例えば、システム100の構成要素をネットワーク102を介して接続された複数の処理装置および保存装置を通して分散するコンピュータ化されたシステムが使用されてもよい。かかる実施形態は、共通のネットワークリソースへのアクセスを共有するワイヤレスおよび有線通信システムを含む複数の通信システムを通した分散されたコンピューティングのために適切である場合がある。幾つかの実施形態では、システム100は、インターネットまたは他の通信システムを介して接続された異なる処理サービスおよび保存サービスによって構成要素の1つ以上が提供される、クラウドコンピューティング環境内に実装される。サーバー104は、例えばクラウドコンピューティング環境内でインスタンス化された1つ以上の仮想サーバーであってもよい。幾つかの実施形態では、サーバー104は、1つの構成要素内へとネットワークモデルデータベース106と組み合わされ、その例が図2と関係して記述される。特に図2は、本明細書に記述される機能のうちのいずれかを遂行する、サーバー204のブロック図である。サーバー204は、すべてバスを通して接続された、プロセッサ205と、相関関係データベース222と、処置データおよび対照データデータベース228と、ネットワークモデルデータベース206と、活性評価基準計算回路224と、活性値計算回路226と、を含む。
図3は本明細書に記述されるプロセスを遂行するための、図1のシステム100の構成要素のいずれかなどのコンピューティング装置のブロック図である。ユーザー装置108と、ネットワークモデルデータベース106と、相関関係データベース107と、を含むシステム100の構成要素の各々、またはサーバー104は、1つ以上のコンピューティング装置300上で実施される場合がある。特定の態様では、1つのコンピューティング装置300の中に複数の上記の構成要素およびデータベースが含まれる場合がある。特定の実施形態では、構成要素およびデータベースは幾つかのコンピューティング装置300にわたって実装される場合がある。
コンピューティング装置300は、少なくとも1つの通信インターフェースユニットと、入力/出力コントローラー310と、システムメモリと、1つ以上のデータ保存装置と、を備える。システムメモリは、少なくとも1つのランダムアクセスメモリ(RAM302)と、少なくとも1つの読み取り専用メモリ(ROM304)とを含む。これらのすべての要素は、コンピューティング装置300の動作を容易にするために中央処理装置(CPU306)と通信する。コンピューティング装置300は、数多くの異なるやり方で構成される場合がある。例えば、コンピューティング装置300は、従来のスタンドアローンコンピュータであってもよく、または代替的に、コンピューティング装置300の機能が複数のコンピュータシステムおよびアーキテクチャにわたって分散していてもよい。コンピューティング装置300は、モデリング動作、スコアリング動作、および集計動作のうちの幾つかまたはすべてを遂行するように構成されていてもよい。図3では、コンピューティング装置300は、ネットワークまたはローカルネットワークを介して、他のサーバーまたはシステムにリンクされる。
コンピューティング装置300は、分散したアーキテクチャで、構成される場合があり、データベースおよびプロセッサは、別個のユニットまたは場所に収容される。幾つかのかかるユニットは、主要な処理機能を遂行し、ユニットは最低でも、一般的なコントローラーまたはプロセッサ、およびシステムメモリを含む。かかる態様では、これらのユニットの各々は、通信インターフェースユニット308を介して、他のサーバー、クライアントまたはユーザーのコンピュータ、および他の関連した装置との主要通信リンクとして作用する通信ハブまたは通信ポート(図示せず)に取り付けられる。通信ハブまたは通信ポートは、それ自体最低限の処理能力を有してもよく、主に通信ルーターとして作用する。様々な通信プロトコルが、システムの一部であってもよい。通信プロトコルとしては、Ethernet(登録商標)、SAP、SAS(商標)、ATP、BLUETOOTH(登録商標)、GSM(登録商標)、およびTCP/IPが挙げられるが、これに限定されない。
CPU306は、1つ以上の従来のマイクロプロセッサなどのプロセッサ、およびCPU306からの作業負荷を除去するための数値計算コプロセッサなどの1つ以上の補助コプロセッサ、を備える。CPU306は、通信インターフェースユニット308および入力/出力コントローラー310と通信し、CPU306は、これを通して他のサーバー、ユーザー端子、またはユーザー装置など、他の装置と通信する。通信インターフェースユニット308および入力/出力コントローラー310は、例えば他のプロセッサ、サーバー、またはクライアント端子などとの同時通信のために複数の通信チャネルを含む場合がある。相互に通信する装置は、継続的に相互に送信する必要はない。それどころか、かかる装置は必要に応じて相互に送信することのみが必要であり、実際にはほとんどの時間でデータの交換をやめてもよく、および装置間の通信リンクを確立するために、幾つかのステップを遂行する必要がある場合がある。
CPU306は、データ保存装置とも通信する。データ保存装置は、磁気、光学、または半導体メモリの適切な組み合わせを含んでもよく、例えばRAM302、ROM304、フラッシュドライブ、コンパクトディスクなどの光学ディスク、またはハードディスクもしくはハードドライブを含んでもよい。CPU306およびデータ保存装置はそれぞれ、例えば単一のコンピュータ内、もしくは他のコンピューティング装置内に完全に位置していてもよく、またはUSBポート、シリアルポートケーブル、同軸ケーブル、Ethernet(登録商標)タイプのケーブル、電話線、無線周波数トランシーバー、または他の類似の無線もしくは有線媒体、あるいはこれらの組み合わせなどの通信媒体によって相互に接続されていてもよい。例えば、CPU306は、通信インターフェース308を介してデータ保存装置に接続されていてもよい。CPU306は、1つ以上の特定の処理機能を遂行するように構成されていてもよい。
データ保存装置は、例えば(i)コンピューティング装置300のための動作システム312、(ii)本明細書に記述されるシステムおよび方法に従って、および特にCPU306について詳細に記述されるプロセスに従って、CPU306を導くように適合された、1つ以上のアプリケーション314(例えば、コンピュータプログラムコード、またはコンピュータプログラム製品)、または(iii)プログラムによって要求される情報を保存するように利用される場合がある、情報を保存するように適合されたデータベース(複数可)316、を保存してもよい。幾つかの態様では、データベース(複数可)は、実験データおよび発行された文献モデルを保存するデータベースを含む。
オペレーティングシステム312およびアプリケーション314は、例えば圧縮された、未コンパイルの、および暗号化されたフォーマットで保存される場合があり、かつコンピュータプログラムコードを含む場合がある。プログラムの命令は、データ保存装置ではなくコンピュータ可読媒体から(例えばROM304から、またはRAM302から)プロセッサの主メモリ内へと読み込まれる場合がある。プログラム内の命令のシーケンスの実行は、本明細書に記述されるプロセスのステップをCPU306に遂行させるが、本開示のプロセスの実施のために、ソフトウェア命令の代わりに、またはソフトウェア命令と組み合わせて有線回路が使用されてもよい。従って、記述されるシステムおよび方法は、ハードウェアとソフトウェアとのいかなる特定の組み合わせにも限定されない。
好適なコンピュータプログラムコードは、本明細書に記述されるように、1つ以上の機能を遂行するために提供される場合がある。プログラムは、オペレーティングシステム312、データベース管理システム、および入力/出力コントローラー310を介してプロセッサがコンピュータ周辺装置(例えば、ビデオディスプレー、キーボード、コンピュータマウスなど)とインターフェースすることができるようにする「装置ドライバー」などのプログラム要素も含む場合がある 。
「コンピュータ可読媒体」という用語は本明細書で使用される場合、実行のために、コンピューティング装置300のプロセッサ(または本明細書に記述される装置の任意の他のプロセッサ)に命令を提供する、またはその提供に関与する任意の非一時的媒体を指す。かかる媒体は、不揮発性媒体、および揮発性媒体を含むが、これに限定されない数多くの形態をとる場合がある。不揮発性媒体としては例えば、光学、磁気、もしくは光磁気ディスク、またはフラッシュメモリなどの集積回路メモリが挙げられる。揮発性媒体としては、典型的には主メモリを構成する、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)が挙げられる。コンピュータ可読媒体の一般的な形態としては、例えばフロッピー(登録商標)ディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気ディスク、磁気テープ、任意の他の磁気媒体、CD−ROM、DVD、任意の他の光学媒体、パンチカード、紙テープ、任意の他の孔パターン付きの物理的媒体、RAM、PROM、EPROM、もしくはEEPROM(電気的消去可プログラマブル読み取り専用メモリ)、FLASH−EEPROM、任意の他のメモリチップまたはカートリッジ、あるいはコンピュータが読み取ることができる場合がある任意の他の非一時的媒体が挙げられる。
実行のために、1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスを、CPU306(または、本明細書に記述される、装置の任意の他のプロセッサ)に搬送するために、様々な形態のコンピュータ可読媒体が関与する場合がある。例えば、命令は当初、リモートのコンピュータ(図示せず)の磁気ディスク上に置かれる場合がある。リモートのコンピュータは、命令をそのダイナミックメモリ内にロードし、Ethernet(登録商標)接続、ケーブルライン、またはモデムを使用する電話線を通してさえも、その命令を送る場合がある。コンピューティング装置300に対してローカルの通信装置(例えば、サーバー)は、それぞれの通信ライン上のデータを受け取り、かつプロセッサのためにデータをシステムバス上に位置付ける場合がある。システムバスはデータを主メモリに搬送し、プロセッサは、そこから命令を取得し、かつ実行する。主メモリによって受け取られた命令は、任意選択により、プロセッサによって実行の前または後のいずれかに、メモリ内に保存される場合がある。加えて、命令は通信ポートを介して、電気的信号、電気磁気的信号、または光学的信号として受け取られる場合があり、これはワイヤレス通信または様々なタイプの情報を搬送するデータストリームの例示的な形態である。
図9は、異物代謝ネットワークモデルの撹乱を評価するための方法900のフローチャートを示す。特に方法900は、要因への曝露に対応する標的生物組織の攪乱を定量化する。方法900は、異物代謝の計算的な因果関係ネットワークモデルを代表するデータを保存する工程(902)と、処置データと対照データとの間の差異に対応する一組のコントラストデータを受信し、この処置データは要因への曝露の代用生物組織試料の応答の代表である工程(904)と、少なくとも幾つかの測定可能なノードの生物学的活性評価基準および計算的な因果関係ネットワークモデルに基づいて少なくとも幾つかのバックボーンノードに対する活性値を判定する工程(906)と、を含む。方法900は、代用生物組織の試料の要因への曝露に対応した撹乱を表すスコアを計算する工程(908)と、要因に対応する標的生物組織の撹乱と要因に対応する代用生物組織の撹乱との間の相関関係を識別する工程(910)と、要因に対応する標的生物組織の撹乱を示すスコアを提供する工程(912)と、をさらに含む。
902において、異物代謝の計算的な因果関係ネットワークモデルを代表するデータは、ネットワークモデルデータベース106などのデータベース内に保存される。特に、計算的な因果関係ネットワークモデルは、生物学的活性を代表する一組の測定可能なノードおよび生物学的活性を代表する一組のバックボーンノードを含む。バックボーンノードの生物学的活性のうちの少なくとも幾つかは、異物代謝に関係する。さらに、計算的な因果関係ネットワークモデルは、一組のエッジも含み、各々のエッジは、ノード間の因果関係の代表である。一組のバックボーンノード、測定可能なノード、およびエッジは、表1、表2、またはこれらのサブセットに示すものを含む場合がある。特に、バックボーンノードのうちの少なくとも1つは、AHRまたはAHRの転写活性に対応する。本明細書に記述されるように、計算的な因果関係ネットワークモデルは、RCRを使用して構築されてもよい。
904において、処置データと対照データとの間の差異に対応する一組のコントラストデータが受け取られる。処置データは、要因への曝露に対する代用生物組織の試料の応答の代表であり、対照データは、要因への非曝露に対する代用生物組織の試料の応答、または対照条件の代表である。一組のコントラストデータは、一組の測定可能なノード内のノードのうちの少なくとも幾つかに対する生物学的活性評価基準を含む。例えば、(測定可能なノードの)遺伝子発現レベルにおける処置データと対照データとの間の差異に生物学的活性評価基準が対応する場合があり、従って要因への曝露に対応する一組の測定可能なノードにおける活性レベルの変化を表す。
906において、測定可能なノードのうちの少なくとも幾つかおよび計算的な因果関係ネットワークモデルの生物学的活性評価基準に基づいて、バックボーンノードの少なくとも幾つかに対して活性値が判定される。本明細書に記述されるように、測定可能なノードの生物学的活性評価基準、およびネットワークモデル内の測定可能なノードとバックボーンノードとの間の接続から、バックボーンノードの活性値が推論される。
908において、要因への曝露に対応する代用生物組織の試料の攪乱を示すスコアが計算される。上述されるように、NPAスコア、IPAスコア、GSEAスコア、強度スコア、これらの組み合わせ、または要因に対応するネットワークモデルの攪乱を評価するための任意の他の好適なスコアなどのように、スコアが全体的な撹乱評価に対応する場合がある。特に、スコアは単一のバックボーンノード活性値に対応する場合があり、またはスコアは複数のバックボーンノードの活性値に基づいて計算される場合がある。一実施例では、測定可能なノードのうちの少なくとも幾つかに対する生物学的活性評価基準の二次関数として、スコアが計算される場合がある。
910において、要因に対応する標的生物組織の撹乱と要因に対応する代用生物組織の撹乱との間の相関関係が識別される。異物代謝の計算的な因果関係ネットワークモデルを、要因に対応する標的生物組織の撹乱および要因に対応する代用生物組織の撹乱の両方に適用可能であることを判定することが、相関関係を識別することに含まれる。特に、標的生物組織と代用生物組織との間にかかる相関関係が存在するかどうかを識別するために、相関関係データベース107などの相関関係データベースが証明される場合がある。かかる相関関係が存在する場合、相関関係のパラメータ(例えば、線形回帰パラメータまたは相関関係の強度など)が、さらに判定される場合がある。一実施例では、スコアは相関関係に基づいて修正される。例えば、スコアは、1つ以上の線形回帰パラメータに基づいて修正されたスコアを生成するように修正される場合がある。特に、線形回帰パラメータが傾きおよびy切片またはx切片を含むとき、y切片またはx切片によってスコアをオフセットする、または傾きによってスコアをスケーリングする、またはこれらの両方を行うために、線形回帰パラメータが使用される場合がある。一般的に、予想される標的生物組織の撹乱の代表である修正されたスコアを得るために、スコアの修正が任意の好適な様式で遂行されてもよい。
912において、要因に対応する標的生物組織の撹乱を示すためのスコアが提供される。特に、標的生物組織と代用生物組織との間の相関関係が識別されるとき、(代用生物組織について評価された)スコアが標的生物組織の撹乱の表示として提供される場合がある。幾つかの実施形態では、識別された相関関係のパラメータに基づいてスコアが修正される場合(例えば、線形回帰パラメータから判定された値によってスケーリングまたはオフセットされる、など)があり、修正されたスコアが提供される場合がある。
一実施例では、標的生物組織の撹乱は、標的生物組織からサンプリングされたインビボデータから観察されることが予想される生物学的活性評価基準の代表である。代用生物組織の撹乱は、代用生物組織からサンプリングされたインビボデータまたは器官型のインビトロデータから観察される生物学的活性評価基準の代表であり、標的生物組織は代用生物組織とは異なる。
別の実施例では、標的生物組織の撹乱は、標的生物組織からサンプリングされた器官型のインビトロデータから観察されることが予想される生物学的活性評価基準の代表である。この場合、代用生物学的試料の撹乱は、代用生物組織からサンプリングされる器官型のインビトロデータから観察される生物学的活性評価基準の代表である。
一実施例では、標的生物組織、代用生物組織、またはその両方は、肺の組織、鼻の組織、気管支の組織、頬の組織、上気道、下気道、および上皮細胞から成る群から選択される。一実施例では、要因は、巻きたばこの煙、一酸化炭素、煤煙、ディーゼル排気粒子、粒子状物質、および大気汚染から成る群から選択される。要因が薬物である場合、代用生物組織を要因に曝露するために、要因を器官型培養上にインビトロで噴霧してもよい。
一実施例では、計算的な因果関係ネットワークモデルは、哺乳類の呼吸系での異物代謝のものであり、標的生物組織および代用生物組織は、哺乳類組織からサンプリングされる。哺乳類の異物代謝は呼吸系の一部であってもよい。さらに、計算的な因果関係ネットワークモデルはヒトの異物代謝の代表であってもよく、標的生物組織および代用生物組織はヒトの組織からサンプリングされる。
インビトロおよびインビボ測定を含む、組織から遺伝子表現レベル測定を得る様々な方法が使用されてもよい。組織培養から測定を得るための方法が本明細書に記述され、図5〜図8に関連して、これに対するデータが示されかつ記述される。
幾つかの実施形態では、表現レベルの測定(例えば、測定可能なノードの活性評価基準など)は器官型の組織培養から行われる。一実施例では、図7A〜図7Dおよび図8A〜図8Dに示すデータに対する器官型の組織培養から測定を得た。特に、ヒトの一次気道線維芽細胞と共培養されたヒトの一次呼吸器の上皮細胞に基づく、MucilAir(商標)−ヒト線維芽細胞−気管支およびMucilAir(商標)−ヒト線維芽細胞−鼻の全厚組織モデルをEpithelix Sarl(スイス、ジュネーブ)から購入し、製造業者の実施要綱に従って維持した。MucilAir(商標)モデルは、使用する準備ができている分化したヒトの上皮の3Dモデルである[Huang S,Wiszniewski L,Constant S:The use of in vitro 3D cell models in drug development for respiratory diseases.Tech December 2011.]。器官型の組織培養は、線維芽細胞を使用して再構成された健康な非喫煙白人の提供者から分離されたヒトの一次上皮細胞である。線維芽細胞の共培養は、3D培養において上皮細胞の成長および分化に貢献することが示されている。[Parrinello S,Coppe J−P,Krtolica A,Campisi J:Stromal−epithelial interactions in aging and cancer: senescent fibroblasts alter epithelial cell differentiation.Journal of cell science 2005,118(3):485−496.]。気管支の上皮細胞は一人の提供者から得られ、鼻の上皮細胞は別の提供者から得られた。品質管理評価が両方のモデルに対して遂行された(データは示していない)。細胞培養インサート(24ウェル形式)中の0.7mL媒体内の空気液体界面において、組織モデルを培養した。器官型のモデルを、空気液体界面において新鮮な媒体を2日ごとに追加しながら37℃で14日間維持した。
本明細書に記述するように、呼吸器の器官型の組織培養モデルは、巻きたばこの煙(CS)に曝露される場合がある。特に、図7A〜図7Dおよび図8A〜図8Dに示すデータに対しては、細胞培養モデルを2〜3日の間培養内で成長した後、空気液体界面において、16%(体積比)のCS本流曝露(合計4本の巻き煙草、3R4F)に、各々の巻きたばこの間に60%加湿空気の1時間の休止を挟んで、組織(3倍で)をVitrocellシステム(ドイツ、ヴァルトキルヒ)中で曝露した。60%加湿空気曝露が対照曝露として使用された。曝露チャンバ内側の合計粒子状物質(TPM)が、各々のCS濃度に対して測定された(各々の巻きたばこ後に測定された平均TPM堆積は、2842.4ng/cm2±SEM=570.7、N=24)。参照の巻きたばこ3R4Fは、University of Kentucky(www.ca.uky.edu/refcig)から得たもので、カナダ保健省の投与計画[Health Canada.Determination of “Tar”,Nicoine and Carbon Monoxide in Mainstream Tobacco Smoke.http://www.hc−sc.gc.ca/hc−ps/tobac−tabac/legislation/reg/indust/method/_main−principal/nicotine−eng.php#a5から入手可能。1999.]に従って30ポートのカルーセルスモーキングマシーン(SM2000, Philip Morris, Int.)上で喫煙させた。曝露後、器官型のモデルを、新鮮な培養基を用いて直ちに培養した(曝露後0時間)。追加的に、さらに分析するための組織採取前は、曝露後の様々な期間(4、24、および48時間)で実施された。
曝露後0、4、24、および48時間における曝露された組織(n=3)を氷冷PBSで3回洗浄し、引き続いてQiazol溶解剤(miRNeasy Mini Kit、Qiagen)を使用して溶解し、−80℃で最長1週間凍結した。mRNAの抽出および精製のためにmiRNeasy Mini Kitが使用された。NanoDrop ND1000を使用して総RNA量が測定され、Agilent 2100 Bioanalyzerプロファイル(A RIN番号が8より大きい)を使用して定性的に確認した。mRNA分析のために、GeneChip HT 3′ IVT Express User Manual(Affymetrix)に従って総RNA(100ng)が処理された。マイクロアレイ交配のためにGenechip Human Genome U133 Plus 2 Arraysが使用された。
幾つかの実施形態では、マイクロアレイデータ処理が遂行された。特に、データ処理および採点方法は、R統計環境バージョン2.14[R Development Core Team:R:A Language and Environment for Statistical Computing; 2009.]を使用して実施した。RNA発現の生データはR統計環境内で利用可能なマイクロアレイ分析ツール(バージョン2.9)のBioconductorスイートのaffyおよびlimmaパッケージを使用して分析された [Gentleman R:Bioinformatics and computational biology solutions using R and Bioconductor.New York:Springer Science+Business Media; 2005; Gentleman RC,Carey VJ,Bates DM,Bolstad B,Dettling M,Dudoit S,Ellis B,Gautier L,Ge Y,Gentry J et al:Bioconductor: open software development for computational biology and bioinformatics.Genome Biol 2004,5(10):R80.]。堅牢マルチチップ平均(GCRMA)バックグラウンド修正およびクオンタイル正規化を使用してプローブセット発現値を生成した[Irizarry RA,Hobbs B,Collin F,Beazer−Barclay YD,Antonellis KJ,Scherf U,Speed TP:Exploration,normalization,and summaries of high density oligonucleotide array probe level data.Biostatistics 2003、4(2):249−264.]。各々のデータセットについて、マイクロアレイ上の各々のプローブセットに対して生のp値を生成する、対象となる(「処理済み」条件と「対照」条件との比較に関する)特定のコントラストについてのデータに対して全体的な線形モデルが適合され、これはBenjamini−Hochberg手順を使用してさらに調節された。実験設計からの遮蔽因子(曝露プレート)が、器官型の気管支の組織および鼻の組織に対してデータ処理のためのモデルで説明される。
非溶解P450−Gloアッセイ(CYP1A1 assay cat #:V8752;CYP1B1 assay cat # V8762;Promega)を使用して、ルミネッセンスに基づいてCS曝露後48時間における、ヒトの器官型の鼻および気管支のモデル上のCYP1A1およびCYP1B1の活性が測定された。製造業者の推奨に従って、アッセイが遂行された。簡潔に述べると、鼻の組織および気管支の組織の両方を、ルシフェリン−CEEなどの発光原CYP−Glo基体を用いて媒体内で3時間の間培養し(CYP1A1およびCYP1B1)、ルシフェリン検出剤を添加すると発光反応によって浮遊物中で定量化することができるルシフェリン産物を生産する。
第1の実施例では、ネットワーク撹乱振幅(NPA)法を使用して、現在喫煙者である健康な個人および喫煙したことがない健康な個人から得た、ヒトの鼻および気管支の上皮試料に対する4つのデータセット間の、異物代謝ネットワークモデル内のバックボーンノードの活性値の相関関係が観察された。図5は、GSE16008データセットと3つの他のデータセット(GSE7895データセット(左パネル)、GSE19667データセット(中央パネル)、およびGSE14633データセット(右パネル))との間のバックボーンノードの活性値の相関関係を示す。GSE16008データセットは、喫煙者および非喫煙者から得た鼻および気管支の上皮試料から測定された遺伝子発現データを含む。気管支の上皮細胞は気管支鏡検査法によって収集され、一方で鼻の上皮細胞は下鼻甲介のブラッシングによって収集された[Zhang X,Sebastiani P,Liu G,Schembri F,Zhang X,Dumas YM,Langer EM,Alekseyev Y,O’Connor GT,Brooks DR et al:Similarities and differences between smoking−related gene expression in nasal and bronchial epithelium.Physiological genomics 2010, 41(1):1−8.]。その他の3つのデータセット(GSE7895 [Beane J,Sebastiani P,Liu G,Brody JS,Lenburg ME,Spira A:Reversible and permanent effects of tobacco smoke exposure on airway epithelial gene expression.Genome Biol 2007, 8(9):R201.]、GSE19667 [Strulovici−Barel Y,Omberg L,O’Mahony M,Gordon C,Hollmann C,Tilley AE,Salit J,Mezey J,Harvey BG,Crystal RG:Threshold of biologic responses of the small airway epithelium to low levels of tobacco smoke.American journal of respiratory and critical care medicine 2010, 182(12):1524−1532.]、およびGSE14633 [Schembri F,Sridhar S,Perdomo C,Gustafson AM,Zhang X,Ergun A,Lu J, Liu G,Zhang X,Bowers J et al:MicroRNAs as modulators of smoking−induced gene expression changes in human airway epithelium.Proc Natl Acad Sci U S A 2009,106(7):2319−2324.])のそれぞれは、気管支鏡検査法によって喫煙者および非喫煙者から得た気管支上皮の試料から測定された遺伝子発現データを含む。
図5は、GSE16008データセットと他のデータセットの各々との間のNPAアプローチを使用した、異物代謝ネットワークモデル(図4に図示する)内のバックボーンノードの活性値(差動ネットワークバックボーン値とも称される)の相関関係を示す。特に、図5内の各々のデータ点は異物代謝ネットワークモデル中のバックボーンノードを表す。差動ネットワークバックボーン値の95%信頼区間は、2つの攪乱(軸)に対して示される。対角線状実線は、各々のパネルに対して最小二乗適合によって計算される線形回帰線を示す。すべての回帰モデルが有意(P<0.05)であり、図5に示す3つの挿入図は遺伝子発現のフォールド変化の相関関係を図示する。
第2の実施例では、鼻の上皮から収集されたインビボデータと気管支の上皮から収集されたインビボデータとの間の相関関係が観察された(GSE16008)。図6Aは、インビボの気管支のブラッシング上皮と鼻のブラッシング上皮との間でバックボーンノードの活性値(差動ネットワークバックボーン値)が良好に相関していることを示す。さらに、図6Aの挿入図は、AHRに対するバックボーンノードを遺伝子発現データから計算する方法を図示する。特に、図6Aの各々のデータ点は、異物代謝ネットワークモデル内のバックボーンノードを表す。対角線は最小二乗適合によって計算された線形回帰線であり、有意なp値<0.05を持つ。2つの攪乱(軸)に対して差動バックボーン値の95%信頼区間が示される。図6Aの挿入図は、バックボーンノードAHRの下の遺伝子の発現のイラストを示す。
図6Bは、インビボの気管支(左)および鼻(右)のデータを使用した異物代謝ネットワークモデル内のバックボーンノードの活性値(差動ネットワークバックボーン値)のグラフィックなイラストである。異物代謝に関する生物学的機構を実証するNPA採点技法から導出されたバックボーンノードの定量化を、異なるシェーディングが反映する。負値はバックボーンノード活性の下方制御を示し、正値はバックボーンノード活性の上方制御を示す。記号*は、有意なp値<0.05を示す。異物代謝ネットワークモデルの攪乱の性質はバックボーンノードの活性値に反映され、気管の上皮と鼻の上皮との間で類似している。例えば、気管支の試料および鼻の試料の両方で、巻きたばこの煙はアリール炭化水素受容体リプレッサー(AHRR)の有効化の減少と関連付けられる(図6B)。AHRRは、AHRの生体異物応答配列(XRE)との結合を阻害し、従ってをCYP1A1、CYP1A2、およびCYP1B1含むAHR依存遺伝子の転写を抑制することが知られている。[Stejskalova L,Vecerova L,Perez LM,Vrzal R,Dvorak Z,Nachtigal P,Pavek P:Aryl hydrocarbon receptor and aryl hydrocarbon nuclear translocator expression in human and rat placentas and transcription activity in human trophoblast cultures.Toxicological sciences : an official journal of the Society of Toxicology 2011,123(1):26−36.]。これらのCYPに対してバックボーン活性値の上方制御が一貫して観察された(図6B)。図6Bに示すように、より濃いシェーディングを有するバックボーンノードは、NPAスコアに最も貢献しているものである。例えば、図6Bで最も濃いバックボーンノードは、例えばAHRR、8−メチル−IQX、インジルビン、AHR、クルクミン、NFE2L2、oxof(CYP2E1)、およびcatof(NQO1)に対応する。
図6Cは、異物代謝ネットワークモデルについての気管支の試料(左)および鼻の試料(右)に対するNPAスコアのバープロットを示す。図6Cは、コンパニオン統計O*およびK*も示す。これらは両方とも有意性を示し、インビボの鼻の試料と気管支の試料とが両方とも異物代謝ネットワークモデルで代表される生物学的機構を有意に実証していることを示唆する。喫煙に対応する異物代謝ネットワークモデルの攪乱の統計的な有意性が示され、*は、インビボの気管支および鼻のデータセットから発生したネットワークレベル全体のNPAスコア(p値<0.05)の有意性を示す。これらの結果は、CSに曝露されると鼻の上皮と気管支の上皮とが類似の生体異物応答を引き出すことを示唆する。異物代謝ネットワークモデル内のバックボーンノードの活性値によって類似の生体異物応答が反映される。CS曝露に対する気管支の上皮の代用の試料として鼻の上皮が使用されてもよいことを、これらの結果は示唆する。さらに、これらの結果は、CSへの曝露が呼吸気管をライニングしている組織上に類似の応答または類似の影響をもたらす場合があるという見解もサポートする[Steiling K,Ryan J,Brody JS,Spira A:The field of tissue injury in the lung and airway.Cancer prevention research(Philadelphia,Pa) 2008,1(6):396−403.]。
さらに、バックボーンノード(すなわち、機能的な層)における相関関係とは異なり、測定可能なノード(すなわち、転写層)のレベルにおける相関関係は観察されなかった(図6D)。これは、これらの2つの層(すなわち、機能的な層と転写層)から成っている異物代謝ネットワークモデルを使用するNPA法の利用が、処理量が多いトランスクリプトームのデータセットの高分解能の比較を容易にする場合があることを示す。
第3の実施例では、CSへの曝露に対応してインビトロの器官型の気管支および鼻の上皮組織の異物代謝応答の間で、相関関係が観察された。インビボの条件を模倣する信頼性のあるインビトロシステムの開発は困難であり得る。最近、ヒトの細胞の器官型培養が開発され、正常な生物学的プロセスを理解するために利用されている[Karp PH、Moniger T、Weber SP、Nesselhauf TS、Launspach JL、Zabner J、Welsh MJ:An in vitro model of differentiated human airway epithelia.Methods Mol Biol 2002, 188:115−137.; Mathis C,Poussin C,Weisensee D,Gebel S,Hengstermann A,Sewer A,Belcastro V,Xiang Y,Ansari S,Wagner S:Human bronchial epithelial cells exposed in vitro to cigarette smoke at the air−liquid interface resemble bronchial epithelium from human smokers.American Journal of Physiology−Lung Cellular and Molecular Physiology 2013.; Maunders H,Patwardhan S,Phillips J,Clack A,Richter A:Human bronchial epithelial cell transcriptome: gene expression changes following acute exposure to whole cigarette smoke in vitro.Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 2007, 292(5):L1248−1256.; Pezzulo AA,Starner TD,Scheetz TE,Traver GL,Tilley AE,Harvey BG,Crystal RG,McCray PB,Jr.,Zabner J:The air−liquid interface and use of primary cell cultures are important to recapitulate the transcriptional profile of in vivo airway epithelia.Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 2011,300(1):L25−31.; Bosse Y,Postma DS,Sin DD,Lamontagne M,Couture C,Gaudreault N,Joubert P,Wong V,Elliott M,van den Berge M et al:Molecular Signature of Smoking in Human Lung Tissues.Cancer research 2012、72(15):3753−3763.]。本研究では、インビトロの器官型の気管支の上皮内で引き出されたネットワーク撹乱は、全CSに繰り返し曝露されたインビトロの器官型の鼻の上皮のものと比較された。細胞は最後の曝露後、直ちに(曝露後0時間)採取された。
図7Aは、インビトロの気管支ブラッシングの上皮と鼻ブラッシングの上皮との間のバックボーンノードの活性値が良好に相関していることを示す。図7A内の各々のデータ点は、ノードラベルで示されるように、異物代謝ネットワークモデル内のバックボーンノードを表す。対角線は最小二乗適合によって計算された線形回帰線であり、有意なp値<0.05を持つ。バックボーンノードの活性値の95%信頼区間が2つの攪乱(軸)に対して示される。図7Aの挿入図は、遺伝子発現のフォールド変化の間の相関関係(転写層における相関関係)を図示する。
喫煙に対応する異物代謝ネットワークモデルの攪乱の統計的な有意性を示す、NPAスコアのバープロットを示す。*は、材料および方法に記述されるように、インビトロの気管支および鼻のデータセットならびにこれらのコンパニオン統計O*およびK*から生成されたネットワークレベル全体のNPAスコアの有意性を示す(p値<0.05)。機能的な層におけるこの比較可能性は、インビボデータセットを使用して観察されたものと一致する。バープロット(図7A)は、コンパニオン統計に沿った異物代謝ネットワークモデルに対するNPAスコアを示す。これらの有意な統計は、データセットからのインビトロの鼻の試料と気管支の試料の両方が異物代謝ネットワークモデル内で代表される生物学的機構を有意に実証することを示唆する。
さらに、異物代謝ネットワークモデルを使用する分析が、市販のIPA(登録商標)のデータ分析および解釈ツールとどのように比較されるかを研究するために、インビトロの器官型の試料から発生された同一のデータセットをIPA(登録商標)にアップロードした。IPA(登録商標)のナレッジベースによると、異物代謝標準経路は、AHRシグナリングおよび異物代謝シグナリングから成る。図7Bは、データセットと2つのIPA(登録商標)の「異物代謝」の分類内の標準経路との間の有意な関連性を示す。y軸は、関連付けられた経路内のカットオフ基準に適合する遺伝子の数を、その特定の経路をメイクアップする遺伝子の総数で割って計算された比を表示する。バーが高いほど、より多くの遺伝子が経路に関連付けられる。代表経路は、器官型の気管支および鼻のモデルから生成される2つのデータセットの間に重ねられる。比(図7B)の比較可能性によって示される2つのシグナリング経路への類似の関連付けは、気管支の上皮と鼻の上皮との間で観察された。この観察は、ネットワークモデル(図7A)を使用するNPA分析と一致する。
追加的に、CSへの曝露から回復する細胞の能力を評価するために、様々な曝露後の時点の影響が試験された。曝露後の期間が長いほど、異物代謝ネットワークモデル内で観察される撹乱がより少なくなることになるという推論が立てられた。表3は図7Cに示すデータに対するピアソン相関係数およびスピアマン相関係数をリスト表示する。特に、曝露後4、24、および48時間において、バックボーンノードの活性値は、気管支の上皮と鼻の上皮との間で継続的に相関している(図7Cおよび表3)。にもかかわらず、曝露後の期間が増加するのに従い相関関係は減少している(図7Cおよび表3)。図7C内の各々のデータ点は、ノードラベルで示されるように、異物代謝ネットワークモデル内のバックボーンノードを表す。対角線は最小二乗適合によって計算された線形回帰線であり、有意なp値<0.05を持つ。2つの攪乱(軸)に対して差動バックボーン値の95%信頼区間が示される。図7Cの挿入図は、遺伝子発現のフォールド変化間の相関関係(転写層における相関関係)を図示する。
図7Dは、喫煙に対応する異物代謝ネットワークモデルの攪乱の統計的な有意性を示すNPAスコアのバープロットを示す。記号*は、インビトロの気管支および鼻のデータセットから生成されるNPAスコアの有意性、ならびにこれらのコンパニオン統計O*およびK*(p値<0.05)を示す。低減した応答は、IPA(登録商標)を使用する分析からも反映され、曝露後のより後の時点でデータセットと2つのIPA(登録商標)の標準経路との間の減少した関連が観察された(図7D)。IPA(登録商標)分析からの結果は、曝露後のより後の時点により低い生体異物応答を有するNPAスコアで観察されたもの(図7D)と一致した。
このデータは、気管支および鼻の両方で、曝露後の時間が短いほど異物代謝の攪乱がより多いことを示唆する。この観察は、スプラーグドーリーラットのCSに曝露された肺組織で、フェーズI異物代謝酵素(例えば、CYP1A1およびaldh3A1)の過渡誘導が観察された以前の研究と一致している[Gebel S,Gerstmayer B,Kuhl P,Borlak J,Meurrens K,Muller T:The kinetics of transcriptomic changes induced by cigarette smoke in rat lungs reveals a specific program of defense, inflammation, and circadian clock gene expression.Toxicological Sciences 2006,93(2):422−431.]。さらにこれは、曝露後より短い時間においてインビトロの器官型の気管支のモデルと鼻のモデルとの間の差動ネットワークバックボーン値のより良い相関関係が観察された理由に対する可能性のある説明を提供することができる(図7C)。
第4の実施例では、インビボの気管支のブラッシングデータとインビトロの器官型の気管支および鼻のデータとの間の相関関係が観察された。特に、CSへ曝露されるとインビトロの器官型のモデルが類似の生体異物応答を明らかにするかどうかが、インビボで観察された生体異物応答と比較して、試験された。これを行うために、インビボデータセットから生成されたバックボーンノードの活性値が、インビボからのものと良好に相関しているかどうかが判定された。バックボーンレベルにおける変化(すなわち、差動ネットワークバックボーン値)を定量化するNPAアプローチが、CS曝露への曝露により攪乱された潜在的な生物学的機構を示す場合がある。従って、インビトロモデルと比較して類似の生物学的応答がインビボで生じるかどうかをバックボーンノードの活性値間の相関関係から推論することができる。
図8Aおよび図8Bは、気管支の試料と鼻の試料とのそれぞれにおいて、インビボデータセットから生成されたものとインビトロモデルから生成されたものとの間のバックボーンノードにおける活性値の相関関係を示す。これらの観察は、インビボの気管支のデータセットでの生物学的変化がインビトロの器官型の気管支の上皮のモデル(EpiAirway(商標)システム、MatTeK Corporation)と類似していたという観察と一致している[Mathis C、Poussin C、Weisensee D、Gebel S、Hengstermann A、Sewer A、Belcastro V、Xiang y、Ansari S、Wagner S:Human bronchial epithelial cells exposed in vitro to cigarette smoke at the air−liquid interface resemble bronchial epithelium from human smokers.American Journal of Physiology−Lung Cellular and Molecular Physiology 2013.]。図8Aおよび図8Bに示すデータは、インビトロの器官型の鼻のモデルが、喫煙時またはCSへの曝露時のインビボの鼻のシステムで生じる機構を研究するうえで有用であることをさらに示唆する。さらに、鼻の上皮に対する相関関係(図8B)は、気管支の上皮にする相関関係(図8A)よりも弱い。これは、喫煙の影響が気管支の上皮と比較して鼻の上皮ではより顕著でないことを示した以前の研究と一致している[Zhang x、Sebastiani P、Liu G、Schembri F、Zhang x、Dumas YM、Langer EM、Alekseyev y、O’Connor GT、Brooks DR et al:Similarities and differences between smoking−related gene expression in nasal and bronchial epithelium.Physiological genomics 2010,41(1):1−8.]。
さらに、インビトロの器官型の鼻のモデルをより良好に評価するために、CYP1A1およびCYP1B1の酵素活性に対するCSへの曝露の影響が試験された。CSへの曝露が、鼻の上皮のモデルで測定されたCYP1A1とCY1B1の両方の活性を有意に増加し(図8C)、鼻のモデルの浮遊性の曝露に対する毒性評価のために利用するべき潜在性をサポートすることが見いだされた。追加的に曝露後のより後の時間においてインビトロ器官型のモデルから生成される生体異物応答は減少する(図8D)が、インビボデータセットから生成されるものと比較されるように、差動ネットワークバックボーン値は相関し続ける。表4は図8Dに示すデータに対してピアソン相関係数およびスピアマン相関係数をリスト表示する。特に、表4に示すデータは、生体異物応答が鼻の組織(図8B)よりも気管支の組織(図8A)でより良好に相関していることを示す。表4は、インビトロの器官型のモデルから生成された生体異物応答は、曝露後のより後の時間においては低減しているが、差動ネットワークバックボーン値はインビボのデータセットから生成されたものと比較して良好に相関し続けていることをさらに示す。
本明細書で参照した各々の参照は、そのそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本開示の実施形態が、特定の実施例を参照して特に示され、かつ記述されてきたが、その中で形態および詳細の様々な変更が、本開示の範囲を逸脱することなく、添付の特許請求の範囲によって定義されるように、なされる場合があることが当業者によって理解されるべきである。よって、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によって示され、従って特許請求の範囲の均等物の意味および範囲内に入るすべての変化が含まれることが意図される。