JP2016531551A - カスパーゼ阻害剤の存在下で真核細胞溶解物を用いた無細胞のタンパク質の合成方法及び装置、並びに該方法において合成されたタンパク質の収量及び/又は安定性を増加させるためのカスパーゼ阻害剤の使用 - Google Patents

カスパーゼ阻害剤の存在下で真核細胞溶解物を用いた無細胞のタンパク質の合成方法及び装置、並びに該方法において合成されたタンパク質の収量及び/又は安定性を増加させるためのカスパーゼ阻害剤の使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、カスパーゼ阻害剤の存在下で真核細胞溶解物を用いた無細胞のタンパク質の合成のための改善された方法、この方法を行うための装置、並びに真核細胞溶解物を用いたタンパク質の合成のための無細胞の方法において、タンパク質の収量を増加させるための、及び/又は合成されたタンパク質の安定性を増加させるためのカスパーゼ阻害剤の使用に関する。本発明の好ましい実施態様において、該方法は、透析膜によって分離された少なくとも2つのコンパートメントを備える装置において行われ、翻訳反応は、少なくとも1つの第一のコンパートメント、反応コンパートメントにおいて行われ、翻訳反応の間、i)反応物は、透析膜を通って、少なくとも1つのさらなるコンパートメント、給排コンパートメントから反応コンパートメントに拡散し、ii)反応副産物は、透析膜を通って、反応コンパートメントから給排コンパートメントに拡散する。本発明によれば、カスパーゼ阻害剤は好ましくは、反応コンパートメントに新鮮な阻害剤をさらに供給するために、給排コンパートメントにおいても存在し得るが、それは少なくとも反応コンパートメントに存在する。【選択図】なし

Description

本発明は、カスパーゼ阻害剤の存在下で真核細胞溶解物を用いた無細胞のタンパク質合成の改良された方法、並びにこの方法を実行するための装置及び真核細胞溶解物を用いたタンパク質合成のための無細胞の方法における合成されたタンパク質の収量を増加させるための、及び/又はその安定性を増加させるためのカスパーゼ阻害剤の使用に関する。
比較的最近、無細胞のタンパク質合成が、インビボでのタンパク質の発現に代わる効率的な方法として確立されてきた(非特許文献1)。ここで、細胞の内容物は、迅速で、信頼性が高く、コスト的に有用な方法で特定の標的タンパク質を製造するために使用される。得られた細胞抽出物は、細胞溶解物とも称されるが、タンパク質の無細胞合成のために必要とされる本質的な成分:リボソーム、翻訳因子および酵素を含む。今日では、選択された組換えタンパク質は、真核細胞溶解物だけでなく、原核生物溶解物でも機能的に活性な形態で製造され得る。真核細胞溶解物:小麦胚芽溶解物、網状赤血球溶解物、昆虫細胞溶解物並びにHeLa及びHeLaハイブリドーマ細胞由来の細胞抽出物に基づく以下の翻訳系が、現在ますます使用されている。
大腸菌に基づく原核生物インビトロ翻訳系と比較して、大部分の真核生物の翻訳系を用いて達成されたタンパク質収量は、比較的低い(非特許文献1)。この点の例外は、非常に効率的な小麦胚芽溶解物の発現系である。タンパク質及び反応形式に応じて、反応容量のミリリットルあたり数百マクログラムのタンパク質が達成される(非特許文献2)。しかしながら、この細胞抽出物は、タンパク質をの合成に、例えば、グリコシル化などの翻訳後の修飾を伴うため、適切ではない。
昆虫細胞溶解物及び網状赤血球溶解物に基づく真核生物の翻訳系は、大腸菌では合??成することのできない、翻訳後の修飾を伴う複雑な構造化された真核生物のタンパク質合成を可能にする。しかし、網状赤血球溶解物は、他の種のミクロソーム膜を有するこの目的のため濃縮される必要がある(異種の翻訳系)。これに対して、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)由来の細胞溶解物は、含まれている細胞溶解物及び膜小胞が同種の細胞ラインから得られるため、同種の翻訳系として使用され得る。適切な細胞分解方法によって、真核細胞溶解物が得られ得、それは、重要な細胞分画の成分、特に小胞体を含む。細胞から排出され、細胞膜に組み込まれている全てのタンパク質は、糖残基を運び又はそれらの分子構造を安定化させるジスルフィド架橋を有し、細胞分画を通って移動する。ミクロソームまたは膜小胞と称されるERの構造を含む細胞溶解物は、現在、機能的に活性な形態でこのようなタンパク質の候補を製造するために用いられ得る。このように、小胞と溶解物の細胞質ゾルタンパク質との間の非互換性が阻止され、その結果、比較的高いタンパク質収量(バッチモードで昆虫細胞溶解物中、最大20μg/ml)、溶解物のミクロソームへの標的タンパク質の効率的な輸送がもたらされる。
無細胞タンパク質合成反応は、実験的にさまざまな方法で実現され得る。最も単純な反応ルートは、ワンポット合成(またはバッチ反応)における標的タンパク質の合成である。バッチベースの系はそれゆえ、標的タンパク質の単純かつ迅速な合成に適している。一方で、しかしながら、それらは、短い実行時間及び比較的低いタンパク質収量によって特徴づけられる。
一般的に、バッチベースの無細胞翻訳反応は、1−1.5時間後に合成された標的タンパク質の最大値に達する。これ以上のインキュベーション時間では、タンパク質収量増加につながらないが、標的タンパク質の濃度の低下を引き起こす可能性が高く、それはおそらくは、例えば、細胞抽出物中に存在するプロテアーゼによる、といった、標的タンパク質のタンパク質分解性の分解に起因する。しかし、翻訳溶液中で完全な形態で合成された標的タンパク質をより長いインキュベーション時間(>2時間)で保存することは、特定の場合において、有利であろう。
高いタンパク質収量を得るために無細胞タンパク質合成反応の実行時間を延長する一つの可能性は、透析システムの使用である(連続的交換無細胞系、CECF、非特許文献3)。これにおいては、ATP及びGTPといったエネルギーに富む物質が、膜を介した拡散によって、反応コンパートメント、翻訳の部位に移行する。同時に、反応は、遊離リン酸塩およびADPといった阻害物質により減弱される。
反応コンパートメントにおける無細胞反応の連続的な供給は、合成の実行時間を延長し、バッチ系と比較して有意にタンパク質収量増加をもたらす。もっぱら大腸菌由来の原核細胞溶解物との、又は小麦胚芽溶解物との組み合わせでの使用となるが、このタイプの透析システムは、すでに市販されている。
非連続的なバッチ系に比して収量は増加するが、真核生物の透析システムに対応するタンパク質収量は、大腸菌ベースの系に比して依然として比較的低い。
Carlson,E.D.et al.,Biotechnology Advances,2012,30(5):pp.1185−1194 Madin,K.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2000.97(2):pp.559−64 Spirin,A.et al.,Science,1988,242(4882):pp.1162−4
この背景に反して、本発明の目的は、安定的かつ機能的に活性な形態において複雑な真核生物および原核生物のタンパク質、特に膜タンパク質または無細胞翻訳系における比較的大量の翻訳後修飾を伴うタンパク質の合成を可能にする方法を提供することである。
この課題は、真核細胞溶解物が用いられ、翻訳反応がカスパーゼ阻害剤の存在下で行われる、請求項1による無細胞のタンパク質の合成のための方法、請求項13および15によるカスパーゼ阻害剤の使用、並びに請求項17による本発明の方法を行うための装置による本発明によって解決される。
図1は、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)(Sf21)からの細胞抽出物に基づく無細胞真核生物の翻訳系におけるサイトゾルタンパク質SII−eYFPの合成に対する、カスパーゼ阻害剤Z−VAD−FMK(ベンジルオキシカルボニル−Val−Ala−Asp−[O−メチル]−フルオロメチルケトン)の影響を示す図である。図1Aは、14C−ロイシンの取り込みにより確立されたSII−eYFPのタンパク質収量を示した図である。 図1Bは、14C−ロイシンで標識されたSII−eYFPを表すオートラジオグラフである。タンパク質は、約29kDaの見かけの分子量を示す。 図1Cは、無細胞で合成されたタンパク質SII−eYFPの蛍光強度の解析の図である。 図1Dは、図1Cで得られた蛍光強度を示した図である。TM=総翻訳混合物、SN=遠心分離後の上清液、VF=小胞画分、V=小胞。 図2は、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)(Sf21)昆虫細胞からの細胞抽出物に基づく無細胞真核生物の翻訳系における膜タンパク質の発現に対する、カスパーゼ阻害剤(CI)Z−VAD−FMKの影響を示す図である。図2Aは、バッチおよび透析システムにおいて得られたタンパク質収量を示す図である。 図2Bは、バッチシステム(B)および透析システム(D)において合成されたタンパク質を示すオートラジオグラフである。Control=DNA鋳型の添加無しでの翻訳混合物。 図3は、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)(Sf21)昆虫細胞からの細胞抽出物に基づく無細胞真核生物の翻訳系における異なるモデルタンパク質の発現に対する、還元剤ジチオスレイトール(DTT)の影響を示す図である。バッチシステムおよび透析システムにおいて合成されたタンパク質を示すオートラジオグラフである。Control=DNA鋳型の添加無しでの翻訳混合物。 図4は、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)(Sf21)昆虫細胞からの細胞抽出物に基づく無細胞真核生物の翻訳系におけるI型膜貫通型タンパク質Mel−Hb−EGF−eYFPの発現を示す図である。図4Aは、カスパーゼ阻害剤Z−VAD−FMKの添加を伴う、DTTの非存在下(−)および存在下(+)でのバッチ(左)および透析システム(右)におけるMel−Hb−EGF−eYFPの合成を示す図である。 図4Bは、バッチシステム(左)および透析システム(右)における48時間にわたる翻訳混合物(TM)および小胞画分(VF)での14C−ロイシン取り込みにより確立されたMel−Hb−EGF−eYFPのタンパク質収量を示すグラフ図である。 図4Cは、14C−ロイシンで標識されたMel−Hb−EGF−eYFPを表すオートラジオグラフの図である。タンパク質は、約51kDaの見かけの分子量を示す。Control=DNA鋳型の添加無しでの翻訳混合物。 図5は、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)(Sf21)昆虫細胞からの細胞抽出物に基づく無細胞真核生物の翻訳系における蛍光タンパク質SII−eYFPに対する、非可逆的なカスパーゼ阻害剤(Z−VAD−FMK、Ac−VAD−CMK、Ac−DEVD−CMK、 Q−VD−OPh)および可逆的なカスパーゼ阻害剤(Ac−AAVALLPAVLLALLAPDEVD−CHO)の影響を示す図である。Ac−VAD−CMK=アセチル−Val−Ala−Asp−クロロメチルケトン、Ac−DEVD−CMK=アセチル−Asp−Glu−Val−Asp−クロロメチルケトン、Q−VD−OPh=N−(2−キノリル)−Val−Asp−(2,6−ジフルオロフェノキシ)−メチルケトン、Ac−AAVALLPAVLLALLAPDEVD−CHO=アセチル−Ala−Ala−Val−Ala−Leu−Leu−Pro−Ala−Val−Leu−Leu−Ala−Leu−Leu−Ala−Pro−Asp−Glu−Val−Asp−アルデヒド。図5Aは、バッチ様式および透析様式におけるすべてのサンプルの相対的な蛍光強度を示す図である。 図5Bは、バッチ様式および透析様式におけるSII−eYFPの相対的な蛍光強度の評価を示す図である。サンプルの蛍光強度は、正規化され、カスパーゼ阻害剤の添加無しでの透析混合物の蛍光強度は、100%を示す。 図6は、バッチ様式でのSf21昆虫細胞溶解物に基づく無細胞真核生物の翻訳系における新たに合成された膜タンパク質Mel−hEGFR−eYFPの安定性に対する、カスパーゼ阻害剤Z−VAD−FMKの影響を示す図である。 図7は、バッチ様式でのSf21昆虫細胞溶解物に基づく無細胞真核生物の翻訳系における新たに合成された膜タンパク質Mel−hEGFR−eYFPの安定性に対する、異なるカスパーゼ阻害剤(Z−VAD−FMK、Ac−DEVD−CMK、Q−VD−OPh、Z−WEHD−FMK、Z−VDVAD−FMK、Z−DEVD−FMK、Z−YVAD−FMK)の影響を示す図である。 図8は、カスパーゼ阻害剤Z−VAD−FMKの存在下での昆虫細胞溶解物のミクロソームへの膜タンパク質Mel−hEGFR−eYFPの合成を示す図である。 図8は、カスパーゼ阻害剤Z−VAD−FMKの存在下での昆虫細胞溶解物のミクロソームへの膜タンパク質Mel−hEGFR−eYFPの合成を示す図である。
本発明の主な態様は、核酸鋳型及び真核細胞溶解物を用いたインビトロでの翻訳反応を含む無細胞タンパク質合成のための方法に関し、翻訳反応はカスパーゼ阻害剤の存在下で行われることを特徴とする。
使用される真核細胞溶解物は特に制限されず、核酸鋳型のインビトロでの翻訳に要する成分のすべてを含む細胞溶解物を主に含む。特に好ましいのは、翻訳後修飾を伴う複雑なタンパク質の合成をも可能にする細胞溶解物である。
より具体的な実施形態において、使用される真核細胞溶解物は、小麦胚芽溶解物、昆虫細胞溶解物、特にSf21細胞溶解物、網状赤血球溶解物、ケラチノサイト溶解物、CHO細胞、HeLa細胞、ハイブリドーマ細胞又は培養されたリンパ腫細胞由来の細胞抽出物からなる群より選択される。
これらの細胞溶解物は、それらの天然の形態で、または特定の成分を追加または除去することによって変性されて使用され得る。
一つの細胞株から主に得られた細胞溶解物が、例えば無膜小胞(例えば、網状赤血球溶解物)を含む場合、これらは、翻訳後修飾を伴うタンパク質の合成をも可能にするために、他のソース、例えば他の細胞株の溶解物から加えられ得る。さらに、溶解液中の膜小胞の存在は、天然の脂質−タンパク質−マトリックスにおける膜タンパク質の組み込みのための前提条件であり、それは、その正しい折りたたみおよび構造を保証する。
反対に、特定のタンパク質の合成に対して、元来膜小胞を含まない、又は例えば遠心分離工程によって小胞を含まなくなった細胞溶解物を用いることは、有利であり得る。この「小胞枯渇」細胞溶解物は、特定のタンパク質に対して、収量の増加をもたらし得る(実施例1を参照、図1)。
「小胞枯渇」細胞溶解物はまた、翻訳活性を有し、翻訳後修飾無しでタンパク質の無細胞合成のために用いられ得る。
使用される細胞溶解物の成分はこのように、細胞株の細胞(同種の翻訳系)または異なる細胞株(異種の翻訳系)に由来し得る。1または2以上の成分が合成的に製造された人工的な細胞溶解物の使用もまた、原則として可能である。
真核細胞溶解物およびカスパーゼ阻害剤とは別に、本発明による方法を行うための反応混合物は、少なくとも1つの核酸鋳型、ポリメラーゼ、アミノ酸及びATP、GTPなどといった高エネルギー物質を含む。原則として、インビトロ翻訳系として知られているすべての反応混合物および成分は、(カスパーゼ阻害剤の添加後に)使用され得る。反応混合物は場合によっては、特定の標的タンパク質の合成または安定性を促進させる添加剤をさらに含み得、それは例えば、DTTまたは他の還元剤、特に還元および酸化グルタチオンの混合物である。
記載された実施例と以下の試験データによって示されるように、特に連続的な透析システムを使用した、無細胞の真核生物の翻訳系へのカスパーゼ阻害剤の添加は、タンパク質収量の驚くべき増加を可能とし、翻訳後修飾を伴う複雑なタンパク質に対しても示されている。
無細胞のタンパク質合成反応の合成パフォーマンスに対するカスパーゼ阻害剤のこの影響の生化学的なメカニズムは、現在のところまだ不明である。細胞破壊の間、細胞は大きなストレスを受けており、場合によっては、それはアポトーシス過程を誘導する。アポトーシスは、「プログラム細胞死」とも呼ばれ、それは、タンパク質分解活性を有する種類の酵素、「カスパーゼ」によって実質的に制御される。カスパーゼ阻害剤によるカスパーゼの阻害は、溶解物中の特定の翻訳因子の寿命を延長すると予想され、それは、次に、細胞抽出物の全体の合成量に正の効果をもたらし得る。
真核細胞溶解物を用いた無細胞タンパク質合成系におけるカスパーゼ阻害剤の存在のさらなる利点は、特に、これらのタンパク質が翻訳混合物においてより長いままでいる(例えば>1.5時間)条件下において、合成されたタンパク質の安定性への正の影響にある。これは、例えば、1又は2以上の標的タンパク質の無細胞合成が同じミクロソーム混合物において複数の連続的な合成で起こる反応にとって重要である。このタイプの反応経路は、「多数または反復的な合成」として知られ、ミクロソーム小胞の管腔または膜における新たに合成された標的タンパク質の濃縮に役立つ。
原則として、カスパーゼの不可逆的または可逆的な阻害剤、特に現在知られているカスパーゼタイプ1−14の一つは、カスパーゼ阻害剤として適切である。カスパーゼ阻害剤は、例えば、以下の文献に記載されている:Callus,B.A.and D.L.Vaux,Caspase inhibitors:viral,cellular and chemical.Cell Death Differ,2006.14(1):pp.73−78;Ekert,P.G.,Silke,J.,Vaux,D.L.,Caspase inhibitors.Cell Death Differ,1999,6:pp.1081−1086。
本発明による方法の特定の実施形態は、カスパーゼ阻害剤は、カスパーゼ、特にカスパーゼタイプ1−14の1又は2以上の基質として機能するアミノ酸またはペプチド配列、およびカスパーゼ、特にカスパーゼタイプ1−14の1又は2以上に不可逆的にまたは可逆的に結合する官能基を含むアミノ酸誘導体またはペプチド誘導体であるということにより特徴付けられ、カスパーゼ阻害剤は、本明細書において、競合的な阻害剤である。
より具体的には、本方法は、カスパーゼ阻害剤は、アミノ酸のアスパラギン酸またはアミノ酸のアスパラギン酸を含むペプチド配列を含むということにより特徴付けられる。カスパーゼ切断ペプチドは、アスパラギン酸(D)のC末端に結合する。したがって、アミノ酸のアスパラギン酸は、市販のペプチドベースのカスパーゼ阻害剤に含まれる。
さらにより具体的には、アミノ酸またはペプチド配列は、アスパラギン酸、バリン−アラニン−アスパラギン酸(VAD)、アスパラギン酸−グルタミン酸−バリン−アスパラギン酸(DEVD;配列番号1)およびチロシン−バリン−アラニン−アスパラギン酸(YVAD;配列番号2)からなる群より選択される。配列VADを有する阻害剤は、一般的なカスパーゼ阻害剤であるため、好ましい。
しかし、他のペプチド、例えば、Ac−DEVD−CMK(カスパーゼ3、6、7、8、10を阻害する)、Z−WEHD−FMK(配列番号3;カスパーゼ1)、Z−AEVD−FMK(配列番号4;カスパーゼ10)、Z−LEED−FMK(配列番号5;カスパーゼ13)、Z−VDVAD−FMK(配列番号6;カスパーゼ2)、Z−DEVD−FMK(カスパーゼ3)、Z−YVAD−FMK(カスパーゼ4)、Z−VEID−FMK(配列番号7;カスパーゼ6)、Z−IETD−FMK(配列番号8;カスパーゼ8)、Z−LEHD−FMK(配列番号9;カスパーゼ9)も使用可能である。
官能基は、原則、カスパーゼの活性中心に可逆的または不可逆的に結合し、その活性を阻害するいかなる基であってもよい。種々のこのような基は、他の酵素に対して知られており、本技術分野の当業者は、所定の阻害実験を行わずともこれらの基の適切な典型例を容易に認識することができる。
阻害剤の官能基は、活性のそのメカニズムを定義する。官能基のメチルケトン(例えば、フルオロメチルケトン(FMK)、クロロメチルケトン(CMK)、アシルメチルケトンおよび(ホスフィニルオキシ)−(メチルケトン))に結合されたペプチドは、不可逆的な阻害剤として機能する(例えば、Z−VAD−FMK、Ac−VAD−CMK、Ac−DEVD−CMK)。アルデヒド(またはニトリルおよびケトン)に結合されたペプチドは、可逆的な阻害剤(例えば、Ac−AAVALLPAVLLALLAPDEVD−CHO(配列番号10))またはアミノ酸のアスパラギン酸もしくはDEVDまたはVADの配列を有する他の可逆的な阻害剤として機能する。
本発明の特定の実施形態では、カスパーゼ阻害剤は、官能基のフルオロメチルケトン(FMK)、クロロメチル(CMK)またはジフルオロフェノキシ−メチルケトンを含み、それはカスパーゼタイプ1−14のすべてに不可逆的に結合する。
本発明の別の特定の実施形態において、カスパーゼ阻害剤は、少なくとも一つのアルデヒド基に結合され、カスパーゼを可逆的に阻害するペプチドである(例えば、Ac−AAVALLPAVLLALLAPDEVD−CHO)。ペプチドは、好ましくは、上記の配列の一つを有している。
カスパーゼ阻害剤の濃度は、使用される細胞溶解物のタイプ及び使用される阻害剤のタイプ及び作用様式に応じて大きく変化し得る。しかし、最適な濃度は、日常的な実験を通して本技術分野の当業者により容易に決定され得る。
典型的には、カスパーゼ阻害剤は、反応混合物において、20μMから100μM、好ましくは25μMから50μM、例えば約30μMの濃度で存在する。
特に好ましい実施形態において、本発明による方法は、それ自体公知の透析システムにおいて連続的に実施される。
典型的には、該方法は、透析膜によって分離された少なくとも2つのコンパートメントを含む装置において行われ、それにおいて、翻訳反応は少なくとも1つの第一のコンパートメント、反応コンパートメントにおいて行われ、翻訳反応の間、i)反応物は、透析膜を介して、少なくとも1つのさらなるコンパートメント、給排コンパートメントから反応コンパートメントに拡散し、ii)反応副産物は、透析膜を介して、反応コンパートメントから給排コンパートメントに拡散する。
カスパーゼ阻害剤は、さらなる新鮮な阻害剤を反応コンパートメントに供給するために給排コンパートメントにも存在するが、本明細書おいて、少なくとも反応コンパートメントに存在する。
反応混合物中のカスパーゼ阻害剤の存在は、反応に対する実質的により長い実行時間を可能にし(例えば、48時間までまたはさらに長い時間)、それによってタンパク質収量の顕著な増加がもたらされる。
このタイプの連続的な工程に伴い、本発明によるカスパーゼ阻害剤の使用において、翻訳後修飾を伴う複雑なタンパク質に対するものも含めて、反応媒体中、少なくとも30μg/ml、好ましくは少なくとも100μg/mlまたは150μg/mlの最大タンパク質収量が達成され得る。
したがって、本発明の密接に関連した態様は、真核生物の細胞溶解物を使用したタンパク質合成のための無細胞連続的工程におけるタンパク質収量を増加させるためのカスパーゼ阻害剤の使用に関する。
このカスパーゼ阻害剤は、上記で定義されるように、好ましくは、阻害剤である。
より具体的には、この使用は、反応媒体のμg/mlで測定される最大タンパク質収量が、カスパーゼ阻害剤の非存在下におけるアナログ系に比して、少なくとも2倍、具体的には少なくとも5倍又は10倍増加することによって特徴付けられる。ここで、翻訳後修飾を伴う複雑なタンパク質であっても、反応媒体中、少なくとも30μg/ml、好ましくは少なくとも100μg/mlまたは150μg/mlのタンパク質収量が達成される。
本発明のさらなる関連した態様は、特に、これらのタンパク質が翻訳混合物において比較的長時間(例えば>1.5時間)存在する条件下で、真核細胞溶解物を使用して、タンパク質合成のための無細胞法での合成されたタンパク質の安定性を増加させるカスパーゼ阻害剤の使用に関する。
好ましくは、このカスパーゼ阻害剤は、上記で定義されるように、阻害剤であり、上記で定義されるように、特に好ましくは不可逆的な阻害剤である。
特定の実施形態において、この使用は、タンパク質合成のための無細胞法が少なくとも以下の工程を含むことを特徴とする。
a)標的タンパク質をコードする核酸鋳型、膜小胞を含む細胞溶解物およびカスパーゼ阻害剤を含む反応媒体中でのインビトロでの翻訳反応によって標的タンパク質を合成する工程、
b)媒体から、合成された標的タンパク質を含む膜小胞を分離する工程、
c)分離された膜小胞を、標的タンパク質をコードする核酸鋳型、膜小胞を含まない細胞溶解物及びカスパーゼ阻害剤を含む第二の反応媒体に移し、第二の反応媒体においてカスパーゼ阻害剤の存在下でインビトロ翻訳反応を行い、第二の反応媒体から、増加した量の合成された標的タンパク質を含む膜小胞を分離する工程。
工程c)は、1回または複数回反復され得る。
本発明のさらなる態様は、無細胞のタンパク質合成のための本発明による方法を実施するための装置に関する。
典型的に、無細胞のタンパク質合成を行うための本発明による装置は、
インビトロ翻訳反応が行われ、少なくとも1つの真核細胞溶解物、ポリメラーゼ、核酸鋳型、アミノ酸およびATP、GPT等といった高エネルギー物質を含む反応混合物を含む少なくとも1つの反応コンパートメント;
前記反応コンパートメントから半透過性透析膜によって分離され、アミノ酸、高エネルギー物質及び反応副産物を含む少なくとも1つの給排コンパートメント;
の少なくとも2つの異なる分離したコンパートメントを含み、反応コンパートメント、好ましくは給排コンパートメントもまた、上記のようなカスパーゼ阻害剤を含むことを特徴とする。
本発明による方法で合成されたタンパク質は、原核生物または真核生物のいずれかのタンパク質であり得る。特に好ましくは、それらは、膜タンパク質または翻訳後修飾を伴う複雑なタンパク質である。このような修飾は、例えば、ジスルフィド架橋、グリコシル化、脂質修飾および他の公知の修飾であり得る。
真核細胞溶解物を使用しカスパーゼ阻害剤を加えた本明細書に記載の翻訳系は、組換えタンパク質発現の分野において顕著な利点を示す。製造されたタンパク質の調製用途及び分析用途のいずれにおいても、顕著に簡便に行われ、収量増加によってより有用性が高く、改善された安定性が得られる。これは、タンパク質の構造を解明するための膜タンパク質の発現の領域において、特に興味深いものである。
本発明は、以下の実施例によってさらに説明される。実施例は、決して本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
(実施例1)
ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)からの真核細胞溶解物を使用した、無細胞翻訳系における細胞質タンパク質の発現へのカスパーゼ阻害剤の影響
はじめに、最大達成可能タンパク質収量へのカスパーゼ阻害剤の影響を、細胞質タンパク質SII−eYFPの発現に基づき調べた。このモデルタンパク質は、アフィニティタグ(Strep−Tag、SII−Tag)でN末端に結合され、ベクターpIX3.0(キアゲン)に存在する強化黄色蛍光タンパク質(eYFP)である。
モデルタンパク質の発現を、48時間にわたって、バッチシステムおよび透析システム(50μlの反応チャンバー;1000μlの供給チャンバー;膜のカットオフ=10kDa)において分析した。翻訳混合物をバッチシステムおよび透析システムにおいて、各々、昆虫細胞小胞(V)有り(+)及び無し(−)、並びにカスパーゼ阻害剤(CI)有り(+)及び無し(−)で、各々インキュベートした(27℃、600rpm)。高温TCA沈殿及びシンチレーション測定による新たに合成された標的タンパク質の量を決定ことができるように、タンパク質合成を放射性標識されたアミノ酸14C−ロイシンの存在下で実施した。
翻訳反応は、特定の時点で中断し(0時間、2時間、4時間、24時間および48時間)、以下のように分析した:5μlの混合物を、各ケースで高温TCA又は氷冷アセトンにおいて沈殿させた。さらに5μlを、25μlのPBSに再懸濁させた。残ったサンプルを、上清液(SN)および小胞画分(VF)に、遠心分離工程によって、分離した。これらの画分の5μlの分量を、各々、25μlのPBSで希釈した。
TCA沈殿後、サンプルを、真空駆動ろ過システムにより、遊離の放射性アミノ酸から分離し、シンチレーション測定を行った。乾燥させた後、アセトン中で沈殿したタンパク質を、還元サンプル緩衝液中に回収し、電気泳動で分離した。
PBS中に再懸濁させたサンプルを、蛍光強度のためのphosphorimager system(Typhoon TRIO+ imager、GEヘルスケア社)において調べた。この目的のために、25μlのサンプルをIbidiスライドの各孔にピペットで移して測定し、サンプルの励起は488nmで行い、発光は526nmで測定された。
図1に示された結果は、カスパーゼ阻害剤の添加無しでは、バッチシステムと比較して、透析システムでは、タンパク質量の中程度の増加(約50%)が達成された(48時間後のバッチシステム、−V、−CI=17.5μg/ml;48時間後の透析システム、−V、−CI=27.1μg/ml)。これに対して、翻訳混合物へのカスパーゼ阻害剤の添加は、標的タンパク質の17.3μg/ml(48時間後のバッチシステム、−V、+CI)から90.8μg/mlに達成された、非常に大きく増加した(約400%)最大タンパク質収量をもたらした(図1A)。サンプルの蛍光の記録は、同じような傾向を示した。カスパーゼ阻害剤の存在下で透析システムにおいて合成された翻訳混合物から検出された蛍光シグナルは、他のサンプルと異なっていた(図1C)。これらのサンプルの濃度測定において、透析システム+CI(48時間後、−V)と比較して、透析システム−CI(48時間後、−V)において発現されたサンプルでは、3.7倍以上の強度の蛍光がみられた(図1D)。
(実施例2)
ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)から真核細胞の抽出物を使用した、無細胞翻訳系における膜タンパク質の発現に対するカスパーゼ阻害剤の影響
ここでは、真核生物の翻訳系における異なる膜タンパク質の発現に対するカスパーゼ阻害剤の影響を、より詳しく検証した。この目的のため、3つの異なるモデルタンパク質を選択した:エンドセリンB受容体(ETB)は、7つの膜貫通領域を有するGタンパク質共役受容体であり、それはベクターpIX3.0(キアゲン社)にクローンされている。さらに、N末端がメリチンシグナル配列に結合され、C末端がeYFPに結合され、ベクターpIX3.0に存在するI型膜貫通タンパク質のヘパリン結合EGF様成長因子(HB−EGF)を発現に用いた。加えて、7つの膜貫通領域を有し、ベクターpMA(ジーンアート社)に存在する膜タンパク質バクテリオロドプシンの発現を調べた。
3つのタンパク質を、48時間、14C−ロイシンの存在下で、カスパーゼ阻害剤(CI)の添加無し(−)および有り(+)で、バッチおよび透析システムにおいて各々発現させ(27℃、600rpm、Eppendorf Thermomixer Comfort)、実施例1と同様に分析した。シンチレーション測定により達成されたタンパク質収量の決定は、最大達成可能タンパク質収量に対するカスパーゼ阻害剤の明確な影響を示した。3つの膜タンパク質(ETB、49.3kDa;Hb−EGF、51kDa;バクテリオロドプシン、26.9kDa)の各々の発現は、カスパーゼ阻害剤の添加によって、透析システムにおいて約100%増加し得た(透析バッチ+CIおよび−CIの比較)。
(実施例3)
真核細胞抽出物を使用し、カスパーゼ阻害剤を添加した、最大達成可能タンパク質収量に対する還元剤ジチオスレイトール(DTT)の影響
細胞抽出物および翻訳バッファーにDTTといった還元剤を添加することは、従来、保存可能期間を延長するのに役立っていた。しかしながら、ジスルフィド架橋を有するタンパク質の無細胞発現に対する調査は、還元剤が標的タンパク質においてジスルフィド架橋の形成を阻害し得ることを明らかにした(Katzen,F.,G.Chang and W.Kudlicki,Trends Biotechnol.,2005,23(3):pp.150−156)。ジスルフィド架橋が多くのタンパク質において、タンパク質に安定性を与えタンパク質の折り畳みに重要な貢献をする、重要な翻訳後修飾を代表するため、種々の実験が所定の酸化還元電位を用いた翻訳系を開発するために行われてきた。この目的のために、ほとんどの場合、溶解物または翻訳バッファーへの還元剤の添加が省略されている。
ここに記載された無細胞翻訳系は、複雑な真核生物のタンパク質が合成され得るプラットフォームを提供するように意図されている。したがって、本発明の方法がジスルフィド架橋を有するタンパク質の合成に有利に用いられ得るかを決定し、最適化の可能性を明らかにすることは、特に関心のあることであった。
この目的のために、還元剤DTTの、異なるモデルタンパク質を有するバッチおよび透析システムの合成パフォーマンスに対する影響を調べた。
糖タンパク質のエリスロポエチン(N末端がメリチンのシグナル配列に結合されている;Mel−EPO;20.9kDa、非グリコシル化)ならびにETB(49.3kDa)、ルシフェラーゼ(60.6kDa)、Mel−Hb−EGF−eYFP(51kDa)およびバクテリオロドプシン(26.9kDa)の合成を、48時間、27℃、600rpmで、14C−ロイシンの存在下で、翻訳バッファーにおいて、DTTの添加無し(−)および有り(+)で、カスパーゼ阻害剤(Z−VAD−FMK)を添加して、バッチ(B)および透析システム(D)で行った。
図3は、バッチシステムおよび透析システムで合成されたタンパク質のオートラジオグラフを示す。コントロール=DNA鋳型の添加無しでの翻訳混合物。
DTTの非存在下では、サイトゾルタンパク質(ルシフェラーゼ、SII−eYFP;両方とも発現ベクターpIX3.0(キアゲン社)に存在する)および膜タンパク質(ETB、Mel−Hb−EGF−eYFP、バクテリオロドプシン)を含む、異なるモデルタンパク質の発現に負の影響を与えないことは明らかである。
グリコシル化タンパク質のエリスロポエチン(N末端がメリチンシグナル配列に結合されている;Mel−EPO)の場合、しかし、標的タンパク質の完全なグリコシル化がDTTの存在下のみで達成されたことが見出された。
(実施例4)
真核細胞抽出物を使用し、カスパーゼ阻害剤を添加した、I型膜貫通型タンパク質Mel−Hb−EGF−eYFPの発現の検証
タンパク質合成反応にカスパーゼ阻害剤を添加すると、平均で約100%、透析システムにおいて膜タンパク質の最大達成可能収量を増加させることは、上記のデータから明らかである。膜タンパク質Mel−Hb−EGF−eYFPに対して、20.5μg/ml(透析48時間、−CI)から47.6μg/ml(透析48時間、+CI)の総タンパク量の増加が達成された(=130%)。バッチシステムの透析システムとの比較において、12.1μg/ml(透析48時間、+CI)から47.6μg/ml(透析48時間、+CI)の総タンパク量の増加が達成された(=300%)(図2)。
ここでは、その意図は、総タンパク量の増加がまた、小胞の脂質層に移行され組み入れられた膜タンパク質量の増加に関連するかどうかを調査することである。この目的のため、Mel−Hb−EGF−eYFPの翻訳混合物を、遠心分離工程によって、上清液(SN)および小胞画分(VF)に分離した。これらのサンプル(5μl)を、新たに合成されたタンパク質の量を決定するために使用し、蛍光特性に関して調べた(図4)。
図4A:Mel−Hb−EGF−eYFPの合成を、48時間、27℃、600rpmで、カスパーゼ阻害剤(Z−VAD−FMK)を添加して、DTTの添加無し(−)および有り(+)で、バッチ(左)および透析システム(右)で行った。合成後、混合物を、上清液(SN)および小胞画分(VF)に、遠心工程によって分離した。サンプルの蛍光強度の分析のために、画分(5μl)を25μlのPBS中に各々希釈し、この混合物の25μlをIbidiスライドの各孔にピペットで移して測定した。サンプルの励起は、phosphorimager(Typhoon TRIO+ imager、GEヘルスケア社)を用いて488nmで行い、発光は526nmで測定された。
図4Bは、バッチシステム(左)および透析システムにおいて分析された、48時間にわたる、翻訳混合物(TM)および小胞画分(VF)における、14C−ロイシンの取り込みにより確立された、Mel−Hb−EGF−eYFPのタンパク質収量のグラフ表示を示す。
図4Cは、14C−ロイシンで標識されたMel−Hb−EGF−eYFPを表すオートラジオグラフを示す。タンパク質は、約51kDaの分子量を有する。
これらのデータは、カスパーゼ阻害剤を含み、DTTを使用しない透析システムの使用は、溶解物の小胞画分中のMel−Hb−EGF−eYFPの割合の大幅な増加を引き起こすことを示す(バッチ 48時間−DTT+CI=6.5μg/ml;透析 48時間−DTT+CI=31.4μg/ml)。さらに、透析システムにおける小胞画分のサンプルの時間依存的な解析は、24時間以上にわたって、タンパク質の量の継続的な増加を示し、一方、バッチシステムにおいて、最大値に2時間後に到達した(図4B、4C)。
(実施例5)
ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)(Sf21)の昆虫細胞からの細胞抽出物を基礎とする真核生物翻訳系における合成パフォーマンスに対する不可逆的および可逆的カスパーゼ阻害剤の影響
蛍光タンパク質SII−eYFPの例を使用して、異なる不可逆的カスパーゼ阻害剤(ZVAD−FMK、Ac−VAD−CMK、Ac−DEVD−CMK、Q−VD−OPh)および可逆的カスパーゼ阻害剤(Ac−AAVALLPAVLLALLAPDEVD−CHO)の合成に対する影響を、真核生物の透析の翻訳系において調べた。
SII−eYFPの翻訳は、異なる不可逆的および可逆的カスパーゼ阻害剤の存在下で、バッチおよび透析の方式において、600rpm、27°Cで、48時間にわたって、DNA鋳型piX3.0−SII−eYFPを用いておこなわれた。すべて阻害剤は、30μMの濃度で使用された。翻訳完了後、異なる混合物を、蛍光強度のためのphosphorimager system(Typhoon TRIO+ imager、GEヘルスケア社)において調べた。この目的のため、5μlの各々の翻訳混合物を、25μlのPBSに再懸濁させた。続いて、このサンプルの25μlをIbidiスライドの各孔にピペットで移して測定し、サンプルの励起は、488nmで行い、発光は526nmで測定された。
図5に示される結果は、すべての試験された不可逆的なカスパーゼ阻害剤は、阻害剤無しのコントロールの透析混合物に比して、122%の最大値まで(Ac−DEVD−CMK)、少なくとも77%(Q−VD−OPh)、合成収率を増加させることができたことを示す。試験された可逆的なカスパーゼ阻害剤Ac−AAVALLPAVLLALLAPDEVD−CHOは、阻害剤無しの透析溶液に比して53%、蛍光を発するタンパク質の収量の増加を引き起こした。
記述されたデータに基づいて、原理的に、不可逆的および可逆的阻害剤の両方を伴うと、合成収率の増加が真核生物の透析システムで可能であると結論づけられる。
(実施例6)
真核生物の翻訳系における新たに合成された膜タンパク質の安定性に対するカスパーゼ阻害剤Z−VAD−FMKの影響
ここに、無細胞で合成されたタンパク質の安定性に対するカスパーゼ阻害剤の正の影響が、内因性のチロシンキナーゼ活性を有し、ヒトのタンパク質であり、高分子量の膜貫通タンパク質である(上皮成長因子受容体)、EGF受容体の発現に基づき示される。EGF受容体をコードする配列を、メリチンシグナル配列(Mel)でN末端に結合させ、黄色蛍光タンパク質(eYFP)でC末端に結合させ、ベクターpIX3.0(キアゲン社)にクローニングした。モデルタンパク質は、Mel−hEGFR−eYFP(=163kDa)として以下に示される。メリチンシグナル配列は、膜タンパク質の真核細胞抽出物のミクロソームへの移行およびミクロソームの膜への実質的な取り込みを可能にする。Mel−hEGFR−eYFPは、9個の潜在的なN−グリコシル化部位を有し、それゆえ、標的タンパク質の移行に起因して、標的タンパク質のN−グリコシル化もまた無細胞系において可能となる。
図6は、14C−ロイシンの存在下でのSf21の昆虫細胞溶解物に基づくバッチベースの真核生物翻訳系におけるMel−hEGFR−eYFPの無細胞発現を示す。翻訳反応を、カスパーゼ阻害剤(Z−VAD−FMK、プロメガ社、30μM)およびプロテアーゼ阻害剤混合物(「完全プロテアーゼ阻害剤カクテル」、ロシュ社)の非存在下および存在下で行い、各々、液体窒素中で翻訳反応の凍結によって示されたインキュベーション時間(1.5時間、5時間および24時間)で停止させた。新たに合成された標的タンパク質の分析を、SDS−PAGEおよびオートラジオグラフィーを用いて行った。SDS−PAGEの実行のために、5μLの翻訳混合物を氷冷アセトン中に沈殿させた。乾燥後、タンパク質のペレットを還元サンプルバッファー中に回収し、10%SDS−PAGEで分離した。無細胞で合成され14C−ロイシンで標識されたタンパク質の可視化を、phosphorimager system(Typhoon TRIO+ imager、GEヘルスケア社)を用いて行った。
オートラジオグラフは、1.5時間のインキュベーション時間後の標的タンパク質の2つの別個のバンドを示す。標的タンパク質の配列における多数の潜在的なN−グリコシル化部位に起因して、より大きい分子量を有するバンドは、1または2以上の付加されたグリコシル化を有するタンパク質であると考えられる。したがって、低分子量を有するタンパク質のバンドは、糖基を有しない標的タンパク質に対応するであろう。カスパーゼ阻害剤の添加無しでは、5時間のインキュベーション時間後のMel−hEGFR−eYFPに対して、オートラジオグラフにおける標的タンパク質のバンドの強度が減弱するのが見られ得、低分子分解生成物が可視化される。それに対して、カスパーゼ阻害剤の存在下で合成されたタンパク質は、タンパク質分解のサインの減弱を示す。24時間のインキュベーション時間後でさえも、膜タンパク質のMel−hEGFR−eYFPは、オートラジオグラフにおいて完全な形で検出可能である。そのため、カスパーゼ阻害剤の特定の効果は、市販のプロテアーゼ阻害剤混合物(コンプリートプロテアーゼ阻害剤カクテル、ロシュ社)がカスパーゼ阻害剤の効果の安定化を達成できなかった点において、明らかにされている。
(実施例7)
真核生物翻訳系における新たに合成された膜タンパク質の安定性に対する異なる種類のカスパーゼ阻害剤の正の影響
以下の実験において、異なる官能基(メチルケトン、フルオロメチルケトン、FMKまたはクロロメチルケトン、CMK)およびペプチド基を有する異なるカスパーゼ阻害剤(Z−VAD−FMK、プロメガ社;Ac−DEVD−CMK、サンタクルーズバイオテクノロジー社;Q−VD−OPh、Z−WEHD−FMK、Z−VDVAD−FMK、Z−DEVD−FMK、Z−YVAD−FMK、R&Dシステムズ社;すべて30μM)の、14C−ロイシンの存在下、バッチの様式での、Sf21昆虫細胞溶解物に基づく無細胞の真核生物翻訳系における標的タンパク質Mel−hEGFR−eYFPの合成に対する影響を調べた。合成は、図7において与えられるインキュベーション時間で停止された(1.5時間、24時間)。
得られた結果は、使用されたすべての阻害剤が、長いインキュベーション時間(24時間)後でさえも、翻訳溶液における標的タンパク質の安定性を保証することを示す(図7)。
(実施例8)
ミクロソーム小胞における標的タンパク質の複数の合成を伴うカスパーゼ阻害剤Z−VAD−FMKの使用
昆虫細胞の小胞の管腔または膜における特定の標的タンパク質の濃度を増加させるための適切な方法は、複数の合成を行うことにある。この手順は、翻訳混合物中で新たに合成された標的タンパク質の滞留時間の延長をもたらす。成功した変換のために、それゆえ、翻訳混合物における比較的長いインキュベーション時間(>1.5時間)の後でさえも標的タンパク質の安定性を保証することが絶対に必要である。この目的のために、カスパーゼ阻害剤Z−VAD−FMKを翻訳反応に添加した。標的タンパク質の複数の合成を次のように行った:標準条件(27℃、1.5時間)下でインキュベートした翻訳混合物のミクロソームを、16,000gでの遠心分離工程によりペレット化し、ミクロソームを含まない翻訳活性のある細胞溶解物に再懸濁させて、カスパーゼ阻害剤Z−VAD−FMKの存在下で、27°Cで、1.5時間、再びインキュベートした。本実験では、合成を4回繰り返した。各々の合成工程の後、翻訳混合物、上清および小胞画分における放射性標識されたタンパク質の収量を測定した。加えて、5μlの翻訳混合物をアセトン中で沈殿させ、その後に電気泳動的に分離した。関連するオートラジオグラフ(図8A)は、翻訳混合物および翻訳混合物の小胞画分におけるMel−hEGFR−eYFPのタンパク質のバンドを示す。翻訳反応にカスパーゼ阻害剤を添加することで、合計6時間以上の標的タンパク質の合成が可能となった。
得られたデータは、標的タンパク質の収量が、合成工程1から4に、各々、110%(翻訳混合物中の総タンパク質)および180%(小胞画分)増加したことを示す。

Claims (23)

  1. 核酸鋳型及び真核細胞溶解物を用いたインビトロ翻訳反応を含む、無細胞のタンパク質の合成方法であって、
    前記翻訳反応は、カスパーゼ阻害剤の存在下で行われる、
    ことを特徴とする方法。
  2. 前記カスパーゼ阻害剤は、カスパーゼ、特に1又は2以上のカスパーゼタイプ1−14に対する基質として機能するアミノ酸又はペプチド配列と、カスパーゼ、特に1又は2以上のカスパーゼタイプ1−14に不可逆的又は可逆的に結合する官能基と、含むアミノ酸誘導体又はペプチド誘導体である、
    ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記カスパーゼ阻害剤は、アミノ酸のアスパラギン酸塩を含む、アミノ酸のアスパラギン酸塩又はペプチド配列を含む、
    ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
  4. 前記アミノ酸又はペプチド配列は、アスパラギン酸塩、バリン−アラニン−アスパラギン酸塩(VAD)、アスパラギン酸−グルタミン酸−バリン−アスパラギン酸塩(DEVD;配列番号1)およびチロシン−バリン−アラニン−アスパラギン酸塩(YVAD;配列番号2)からなる群より選択される、
    ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
  5. 前記カスパーゼ阻害剤は、官能基として、メチルケトン基、例えば、カスパーゼタイプ1−14のすべてに不可逆的に結合するフルオロメチルケトン(FMK)又はクロロメチルケトン(CMK)を含む、
    ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記カスパーゼ阻害剤は、少なくとも1つのアルデヒド基に結合したペプチドを表す、
    ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記カスパーゼ阻害剤は、反応混合物において、20μMから100μM、好ましくは25μMから50μMの濃度で存在する、
    ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記真核細胞溶解物は、コムギ胚芽溶解物と、昆虫細胞溶解物、特に、Sf2l細胞溶解物と、網状赤血球溶解物と、ケラチノサイト溶解物と、CHO細胞、HeLa細胞、ハイブリドーマ細胞又は培養リンパ腫細胞からの細胞抽出物と、を含む群から選択される、
    ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記細胞溶解物は、膜小胞を含む、
    ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記膜小胞は、前記細胞溶解物として、同じ細胞株に由来する、
    ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
  11. 透析膜により分離された少なくとも2つのコンパートメントを備える装置において行われ、
    前記翻訳反応は、少なくとも1つの第一のコンパートメント、反応コンパートメントにおいて行われ、前記翻訳反応の間、i)反応物は、前記透析膜を通って、少なくとも1つのさらなるコンパートメント、給排コンパートメントから、反応コンパートメントに拡散し、ii)反応生成物は、前記透析膜を通って、反応コンパートメントから給排コンパートメントに拡散する、
    ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 最大タンパク質収量は、少なくとも30μg/mL、好ましくは少なくとも50μg/mL、100μg/mL又は150μg/mLである、
    ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の方法。
  13. 真核細胞溶解物を用いたタンパク質の合成のための無細胞の一連のプロセスにおけるタンパク質収量を増加させるためのカスパーゼ阻害剤の使用。
  14. 反応培地のμg/mLで測定された最大タンパク質収量は、少なくとも2倍、特に少なくとも5または10倍増加する、
    ことを特徴とする請求項13に記載の使用。
  15. 真核細胞溶解物を用いたタンパク質の合成のための無細胞の方法における合成されたタンパク質の安定性を増加させるカスパーゼ阻害剤の使用。
  16. タンパク質合成のための無細胞の方法は、少なくとも下記の工程:
    a)標的タンパク質をコードする核酸鋳型、膜小胞及びカスパーゼ阻害剤を含有する細胞溶解物を含む反応媒体においてインビトロ翻訳反応によって標的タンパク質を合成する工程、
    b)媒体から合成された標的タンパク質を含む膜小胞を分離する工程、
    c)標的タンパク質をコードする核酸鋳型、膜小胞及びカスパーゼ阻害剤を含有しない細胞溶解物を含む第二の反応媒体に、分離された膜小胞を移し、第二の反応媒体においてカスパーゼ阻害剤の存在下、インビトロ翻訳を行い、第二の反応媒体から、増加した量の合成された標的タンパク質を含む膜小胞を分離する工程であって、1回又は複数回繰り返され得る工程、
    を含む、
    ことを特徴とする請求項15に記載の使用。
  17. インビトロ翻訳反応が行われ、少なくとも1つの真核細胞溶解物と、ポリメラーゼと、核酸鋳型と、アミノ酸と、ATP、GPT等といった高エネルギー物質と、を含む反応混合物を含む少なくとも1つの反応コンパートメント;及び
    前記反応コンパートメントから半透過性透析膜によって分離され、アミノ酸、高エネルギー物質及び反応副産物を含む少なくとも1つの給排コンパートメント、
    の少なくとも2つの異なる分離したコンパートメントを含み、
    少なくとも前記反応コンパートメントはまた、カスパーゼ阻害剤を含む、
    ことを特徴とする無細胞のタンパク質合成を行うための装置。
  18. 前記カスパーゼ阻害剤は、カスパーゼ、特に1又は2以上のカスパーゼタイプ1−14に対する基質として機能するアミノ酸又はペプチド配列と、カスパーゼ、特に1又は2以上のカスパーゼタイプ1−14に不可逆的又は可逆的に結合する官能基と、を含むアミノ酸誘導体又はペプチド誘導体である、
    ことを特徴とする請求項13乃至16のいずれか1項に記載の使用又は請求項17に記載の装置。
  19. 前記カスパーゼ阻害剤は、アミノ酸のアスパラギン酸塩を含む、アミノ酸のアスパラギン酸塩又はペプチド配列を含む、
    ことを特徴とする請求項18に記載の使用又は装置。
  20. 前記アミノ酸又はペプチド配列は、アスパラギン酸塩、バリン−アラニン−アスパラギン酸塩(VAD)、アスパラギン酸−グルタミン酸−バリン−アスパラギン酸塩(DEVD)およびチロシン−バリン−アラニン−アスパラギン酸塩(YVAD)からなる群より選択される、
    ことを特徴とする請求項19に記載の使用又は装置。
  21. 前記カスパーゼ阻害剤は、官能基として、メチルケトン基、例えば、カスパーゼタイプ1−14のすべてに不可逆的に結合するフルオロメチルケトン(FMK)又はクロロメチルケトン(CMK)を含む、
    ことを特徴とする請求項18乃至20のいずれか1項に記載の使用又は装置。
  22. 前記カスパーゼ阻害剤は、少なくとも1つのアルデヒド基に結合したペプチドを表す、
    ことを特徴とする請求項18乃至20のいずれか1項に記載の使用又は装置。
  23. 前記カスパーゼ阻害剤は、反応混合物において、20μMから100μM、好ましくは25μMから50μM、特に好ましくは約30μMの濃度で存在する、
    ことを特徴とする請求項18乃至22のいずれか1項に記載の使用又は装置。
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