JP2016520462A - タイヤ用トレッドを成型加硫する切断手段を備えた成型要素及び成型要素を用いてタイヤ用トレッドを成型する方法 - Google Patents

Abstract

タイヤ用トレッドを成型加硫するモールドの成型要素であって、このトレッドは、タイヤが転動しているときに路面に接触するようになったタイヤ用トレッド表面を有し、この成型要素（１）は、タイヤ用トレッド表面の一部を成型するようになった成型面（３）及びタイヤ用トレッドにサイプ又は溝を成型するようになった長さＬ及び高さＨのブレード（５）を有し、ブレードは、延長方向Ｘで見てブレードの長さＬの方向に沿って延びる丸形端部を有する。成型要素は、タイヤのグリーンフォーム（１０）に既に被着され且つブレードから或る特定の距離を置いたところでブレード（５）の各側に位置決めされた被覆層（１２）を切断することができる２つの切断手段（７）を有し、各切断手段（７）は、延長方向に延びる切れ刃（８）を含み、切れ刃は、延長方向Ｘに垂直な断面図で見て鋭角αをなし且つ被覆層（１２）を切断することができ、切れ刃と成型面（３）との間の距離Ｄは、ブレード（５）の高さＨよりも小さいことを特徴とする成型要素。

Description

本発明は、タイヤ用のトレッドを成型加硫するモールド（金型）の分野に関する。特に、本発明は、追加の被覆層により部分的に又は全体的に覆われるトレッド溝を成型するために用いられるモールドに関する。

トレッドが種々のゴムコンパウンドから成るタイヤを設計することが慣例である。国際公開第０３／０８９２５７号パンフレットは、かかるトレッドを開示している。具体的に言えば、国際公開第０３／０８９２５７号パンフレットは、壁が被覆層で覆われた溝を有するトレッドを開示している。この被覆層の構成材料は、トレッドの構成材料であるゴムコンパウンド（ゴム組成物）とは異なっている。この材料は、特に、ゴムコンパウンドのウェットグリップよりも非常に良好なウェットグリップを有する。これにより、濡れた路面上でのコーナリング性能の非常に著しい改善が可能である。

このトレッドを製造する一手法は、特に、国際公開第２００６／０６９９１２号パンフレットに開示されている。この製造方法によれば、第１ステップでは、注入ノズルを用いて生タイヤ中に１つ又は２つ以上のインサートの形態で注入されるべき被覆層を構成するようになった材料を用意する。第２ステップでは、次に１つ又は複数のインサートを加硫モールドのリブによって造形し、インサートがこれらリブによって成型された溝の壁の全て又は一部を覆うようにする。

この製造方法は、特に高精度の成型物を得ることが関心事である限り、その問題点をかかえている。具体的に説明すると、インサートは、その造形の際、インサートを厚みの小さい層に変換するためにリブから相当大きな剪断力を受ける。この剪断力により、インサート内に亀裂が生じる場合があり、それによりこのインサートの構成材料の動きを制御することが困難になる。したがって、このようにして形成された被覆層の形状及び厚さは、幾分出たとこ勝負の様相を呈する場合がある。この場合、追加の層によってタイヤの製造に与えられる利点が損なわれる。

加うるに、この製造方法では、インサートをリブに整列させることが必要である。これにより、トレッドの製造が複雑になる。

したがって、タイヤ用トレッドの溝の壁への被覆層の取り付け具合を向上させる必要がある。

定義

「タイヤ」は、内圧を受けるにせよそうでないにせよいずれにせよあらゆる形式の弾性タイヤを意味している。

「生タイヤ」又はタイヤの「グリーンフォーム」は、補強材の有無を問わずストリップ又はシートの形態で存在する複数の半完成ゴム製品を重ね合わせたものを意味している。生タイヤは、タイヤを得るためにモールド内で加硫されるようになっている。

タイヤの「トレッド」は、側面及び２つの主要な表面によって境界付けられた或る量のゴム材料を意味しており、２つの主要表面のうちの一方は、タイヤが走行しているときに路面に接触するようになっている。

「トレッド表面」（「踏み面」ともいう）は、タイヤが走行しているときに路面に接触しているようになったタイヤ用トレッド上の箇所により形成される表面を意味している。

「モールド」は、互いに近づけられたときにトロイダル状の成型空間を画定する別々の成型要素の集まりを意味している。

モールドの「成型要素」は、モールドの一部を意味している。成型要素は、例えば、モールドセグメントである。

成型要素の「成型面」は、タイヤ用トレッドの表面の成型を意図したモールド表面を意味している。

成型要素の「ブレード」は、成型面から突き出た突出部を意味している。ブレードのカテゴリでは、幅２ｍｍ未満のサイプ用ブレードと幅２ｍｍ以上のリブとは区別される。サイプ用ブレードは、タイヤ用トレッド中にサイプを成型するようになっており、サイプは、タイヤが路面と接触する接触パッチ内に入ったときに少なくとも部分的に閉じる切れ込みを意味している。リブは、トレッド内に溝を成型するようになっており、溝は、タイヤが路面と接触する接触パッチ内に入ったときに閉じることはない切れ込みを意味している。

「丸形端部を備えたブレード」は、ブレードの端部がドーム状であることを意味している。

ブレードの「高さ」は、モールドの成型面とブレードの端との間の距離を意味している。

「鋭角」は、９０°以下の角度を意味している。

国際公開第０３／０８９２５７号パンフレット 国際公開第２００６／０６９９１２号パンフレット

本発明は、タイヤ用のトレッドを成型加硫するモールドの成型要素に関する。このトレッドは、タイヤが転動しているときに路面に接触するようになったトレッド表面を有する。成型要素は、タイヤ用トレッド表面の一部を成型するようになった成型面及びタイヤ用トレッドにサイプ又は溝を成型するようになった長さＬ及び高さＨのブレードを有する。ブレードは、延長方向Ｘで見てブレードの長さＬの方向に沿って延びる丸形端部を有する。成型要素は、タイヤのグリーンフォームに既に被着され且つブレードから或る特定の距離を置いたところでブレードの各側に位置決めされた被覆層を切断することができる２つの切断手段を有する。各切断手段は、延長方向に延びる切れ刃を含み、この切れ刃は、延長方向Ｘに垂直な断面図で見て鋭角αをなし且つ被覆層を切断することができ、この切断手段と成型面との間の距離Ｄは、ブレードの高さＨよりも小さい。

切断手段は、生タイヤを覆う被覆層を切断することができる。ブレードそれ自体は、トレッド中に溝を成型し、それと同時に、このようにして成型された溝中に被覆層の一部を案内する。

本発明は、被覆層を切断し、この層の幾つかの部分を生タイヤに対する成型要素の同一運動中、生タイヤの深さ内に位置決めすることを提案する。確かに、ブレードは、被覆層が切断手段よりも前にブレードに接触したときに被覆層にひずみを加えることができる。かくして、ブレードによって被覆層にひずみを加えることによって、切断層によって行われる切断作業が楽になる。

実施形態の変形形態では、切れ刃の角度は、６０°以下である。

かくして、切断手段の切断性能が向上する。

実施形態の好ましい形態では、切れ刃の角度は、３５°以下である。

かくして、切断手段の切断性能が更に向上する。

実施形態の別の好ましい形態では、切れ刃の角度は、２０°以下である。

かくして、切断手段の切断性能を更により向上する。

本発明のもう１つの要旨は、タイヤ用トレッドを製造する方法にある。タイヤ用トレッドは、複数の隆起要素を有し、各隆起要素は、タイヤが転動しているときに路面に接触するようになった接触面及び接触面に連結された側面を有する。この製造方法は、タイヤのグリーンフォームを調製するステップと、生タイヤの外面の全て又は一部上に被覆層を布設するステップと、生タイヤをモールド内に布設するステップと、モールドがブレードを備えた状態でブレードを用いて隆起要素の側面を成型するステップと、タイヤを得るために生タイヤを加硫するステップとを含む。この製造方法は、ブレードによって被覆層にひずみを加えるステップと、モールドの一部をなす切断手段を用いて被覆層を切断するステップと、ブレードが被覆層の切断部分を生タイヤ中に押し込んで隆起要素の側面が切断部分によって部分的に又は全体的に覆われるようにするステップとを更に含む。

実施形態の変形形態では、被覆層は、伸張可能であり、この被覆層の伸張係数は、１０％乃至８０％である。

モールドに関し、ブレードとそれぞれ各々の切断手段との間の距離は、このブレードの高さＨよりも小さいのが良い。この場合、ブレードによって成型される隆起要素の側面は、被覆層によって部分的に覆われる。伸張可能な被覆層を用いることによって、被覆層にブレードによってひずみを加えるステップの実施中、この被覆層を拡大することが可能である。かくして、隆起要素の側面は、被覆層によって一層覆われ又は全体が覆われる。その結果、タイヤの性能が向上する。

実施形態の変形形態では、被覆層は、エラストマー材料及び織布（織り繊維）又は不織布（不織繊維）の集成体から成り、これら繊維にエラストマー材料を含浸させている。

繊維を被覆層中に用いることによって、この層の機械的健全性が高められ、それにより切断が容易になる。さらに、被覆層中における繊維の集成体の存在により、これら繊維の固有の剛性のために、被覆層が切断されているときに被覆層の伸張性を制限することができ、それにより生タイヤへの適用が容易である。最後に、繊維にエラストマー材料を含浸させることにより、優れた密着力を備えた全体が提供される。かくして、被覆層は、これが切断されて生タイヤに被着されているときに一要素として挙動する。高温圧延、プレス内での成型又は圧力下での射出成形によって繊維に含浸させるのが良い。

本発明のもう１つの要旨は、タイヤ用トレッドを加硫成型するモールドであって、このモールドが上述の成型要素を複数有することを特徴とするモールドにある。

本発明の他の特徴及び他の利点は、添付の図面を参照して非限定的な例として与えられる以下の説明から明らかになろう。

本発明の成型要素を模式的に示す断面図である。 本発明のタイヤ用トレッドを製造する方法の互いに異なるステップを示す図である。 被覆層にブレードによってひずみを加える図２の製造方法のステップを示す図である。 被覆層を切断手段によって切断する図２の製造方法のステップを示す図である。 ブレードが被覆層の切断部分を生タイヤ中に押し込むようにする図２の製造法のステップを示す図である。 被覆層によって部分的に覆われた隆起要素を備えたタイヤ用トレッドを模式的に示す断面図である。

以下の説明において、同一又は実質的に同一の要素は、同一の符号で示される。

図１は、本発明の製造方法を実施するための成型要素１を示している。

具体的に説明すると、成型要素１は、タイヤのトレッド表面の一部を成型するようになった成型面３を有する。成型要素１は、ブレード５を更に有し、これらブレード５のうちの１つだけが本発明を理解しやすくするために図示されている。ブレードは、この場合、タイヤ用トレッド中に溝を成型するようになったリブ５である。トレッドの「溝」は、このトレッドに設けられていて、幅、即ちこの溝の２つの側壁を隔てる距離が２ｍｍを超える切れ込みを意味している。リブ５は、高さ方向に延び、そしてこの成型面３から高さＨのところまで突き出ている。リブ５は又、延長方向Ｘで見て長さ方向に延びている。モールド内では、この方向は、モールドの周囲を辿る周方向であるのが良い。変形例として、延長方向は、モールドの周方向に垂直な横方向である。別の変形形態は、この延長方向は、モールドの周方向及び横方向とゼロではない角度をなす斜めの方向である。

図１の成型要素１は、リブ５の各側に配置された２つの切断手段７を更に有する。これら切断手段は、リブ５の延長方向Ｘに平行な方向で見て長さ方向に延びている。「平行な方向」は、切断手段の延長方向がリブの延長方向Ｘと−５°乃至＋５°の角度をなすことを意味している。

各切断手段７は、延長方向Ｘに延びる切れ刃８を含む。この切れ刃は、延長方向Ｘに垂直な断面図で見て鋭角αをなしている。この切れ刃と成型面３との間の距離Ｄは、リブ５の高さＨよりも小さい。切れ刃は、図１の平面で見て、９０°以下の角度αをなしている（２つの切断手段７のうちの一方の端部の拡大図である図１と関連した拡大図を参照されたい）。好ましい実施形態では、角度αは、６０°以下である。別の実施形態では、角度αは、３５°以下である。別の実施形態では、角度αは、２０°以下である。

図２は、本発明のタイヤ用トレッドの製造方法の互いに異なるステップを示している。この製造方法は、
‐タイヤのグリーンフォーム（１０）を調製するステップ（９）と、
‐生タイヤの外面の全て又は一部上に被覆層（１２）を布設するステップ（１１）と、
‐生タイヤをモールド内に布設するステップ（１３）と、
‐モールドがブレード（５）を備えた状態でブレード（５）を用いて隆起要素の側面を成型するステップ（１５）と、
‐タイヤを得るために生タイヤを加硫するステップ（１７）と、を含む。
この製造方法は、次のステップ、即ち、
‐ブレード（５）によって被覆層にひずみを加えるステップ（１９）と、
‐モールドの一部をなす切断手段（７）を用いて被覆層を切断するステップ（２１）と、
‐ブレード（５）が被覆層（１２）の切断部分を生タイヤ中に押し込んで隆起要素（２５）の側面が切断部分によって部分的に又は全体的に覆われるようにするステップ（２３）と、を更に含む。

図３乃至図６は、製造方法を実施するための種々のステップを詳細に示している。

図３は、被覆層にブレード５によってひずみを加えるステップを開示している。このステップでは、成型要素１と生タイヤ１０は、互いに近づく。この運動は、例えば、モールド内のメンブレン（図示せず）によって開始される。或る量の加圧蒸気の作用下で、このメンブレンは、膨潤し、そして生タイヤを成型要素１の方へ押す。このステップでは、被覆層１２にブレード５によってひずみが加えられる。この層１２は、伸張可能であり、その伸張係数は、１０％乃至８０％である。好ましい実施形態では、被覆層１２は、エラストマー材料及び織布（織り繊維又は繊維織物）又は不織布（不織繊維）の集成体から成る。これら織布又は不織布にはこのエラストマー材料を含浸させている。

図４は、ブレード５が被覆層１２の一部１４を生タイヤ中に押し込むステップを示しており、この被覆層１２は、切断手段７によって切断される。

図５は、リブ５をその高さ全体にわたって生タイヤ中に押し込む中間成型ステップを示している。かくして、被覆層の全体は、それ自体生タイヤ中に位置した状態になる。このステップをいったん実施すると、次に、生タイヤを加硫し、即ち、生タイヤの構成材料であるゴム材料を可塑性状態から弾性状態に変換することが可能である。この加硫ステップは又、被覆層の内部構造を改変することができる。

図６は、図３乃至図５に示されている生タイヤを成型加硫する種々のステップの結果を示している。このようにして得られるトレッドの一部は、ゴムをリブ５周りに成型することによって得られた溝１６及びゴムを２つの切断手段７の周りに成型することによって得られた２つのサイプ１８を有する。ここで注目されるように、溝の壁の全て、即ち、側壁及び側壁と接して位置する底壁の全てが被覆層の切断部分１４によって覆われる。

本発明は、図示すると共に説明した実施例には限定されず、本発明の範囲から逸脱することなく、かかる実施例の種々の改造が可能である。

Claims (8)

1. タイヤ用トレッドを成型加硫するモールドの成型要素であって、前記タイヤ用トレッドは、前記タイヤが転動しているときに路面に接触するようになったタイヤ用トレッド表面を有し、前記成型要素（１）は、前記タイヤ用トレッド表面の一部を成型するようになった成型面（３）及び前記タイヤ用トレッドにサイプ又は溝を成型するようになった長さＬ及び高さＨのブレード（５）を有し、前記ブレードは、延長方向Ｘで見て前記ブレードの前記長さＬの方向に沿って延びる丸形端部を有する、成型要素において、前記成型要素は、前記タイヤのグリーンフォーム（１０）に既に被着され且つ前記ブレードから或る特定の距離を置いたところで前記ブレード（５）の各側に位置決めされた被覆層（１２）を切断することができる２つの切断手段（７）を有し、各切断手段（７）は、前記延長方向に延びる切れ刃（８）を含み、前記切れ刃は、前記延長方向Ｘに垂直な断面図で見て鋭角αをなし且つ前記被覆層（１２）を切断することができ、前記切れ刃と前記成型面（３）との間の距離Ｄは、前記ブレード（５）の前記高さＨよりも小さい、成型要素。
2. 前記切れ刃（８）の前記角度αは、６０°以下である、請求項１記載の成型要素。
3. 前記切れ刃（８）の前記角度αは、３５°以下である、請求項１又は２記載の成型要素。
4. 前記切れ刃（８）の前記角度αは、２０°以下である、請求項１乃至３の何れか１項に記載の成型要素。
5. タイヤ用トレッドを製造する方法であって、前記タイヤ用トレッドは、複数の隆起要素（２５）を有し、各隆起要素は、前記タイヤが転動しているときに路面に接触するようになった接触面及び前記接触面に連結された側面を有し、前記製造方法は、
   ‐前記タイヤのグリーンフォーム（１０）を調製するステップ（９）と、
   ‐前記グリーンフォームの外面の全て又は一部上に被覆層（１２）を布設するステップ（１１）と、
   ‐前記グリーンフォームをモールド内に布設するステップ（１３）と、
   ‐前記モールドがブレード（５）を備えた状態で前記ブレード（５）を用いて隆起要素の側面を成型するステップ（１５）と、
   ‐前記タイヤを得るために前記グリーンフォームを加硫するステップ（１７）と、を含む、製造方法において、前記製造方法は、次のステップ、即ち、
   ‐前記ブレード（５）によって前記被覆層にひずみを加えるステップ（１９）と、
   ‐前記モールドの一部をなす切断手段（７）を用いて前記被覆層を切断するステップ（２１）と、
   ‐前記ブレード（５）が前記被覆層（１２）の切断部分を前記グリーンフォーム中に押し込んで前記隆起要素（２５）の前記側面が前記切断部分によって部分的に又は全体的に覆われるようにするステップ（２３）と、を更に含む、製造方法。
6. 前記被覆層（１２）は、伸張可能であり、前記被覆層（１２）の伸張係数は、１０％乃至８０％である、請求項５記載の製造方法。
7. 前記被覆層（１２）は、エラストマー材料及び織布又は不織布の集成体から成り、前記織布又は不織布に前記エラストマー材料を含浸させている、請求項５又は６記載の製造方法。
8. タイヤ用のトレッドを成型加硫するモールドであって、前記モールドは、請求項１乃至４の何れか１項に記載の成型要素（１）を複数有する、モールド。

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