本開示は一般には、新規で、強力かつ選択的なStat3阻害剤に関連する。構成的に活性化されたStat3は、非がん性起源の細胞と比較して、がん性細胞、ならびに、がん性細胞の実質的により速い増殖、浸襲性および速度において役割を果たすことが見出されている。いくつかの実施形態において、本発明の選択的Stat3阻害剤は、がん細胞の成長、増殖、生存、血管形成、遊走/侵入および/または免疫性を抑制することができる。Stat3の阻害を、Stat3の二量体化を阻害することによって達成することができる。
Stat3:Slat3タンパク質複合体が、相反するpTyr705SH2ドメイン相互作用を介して媒介される。Stat3を標的とするほとんどの薬物が、pTyr705を模倣するためにホスホリル基を含む。ホスファート官能基が、SH2ドメインを標的化するために必須であると見なされるが、ホスファート官能基は、不良な細胞浸透性および代謝性分解に悩まされるので、薬物発見のためには適していない。本明細書中に記載されるように、驚くべきことに、式I〜式IIIの化合物が、これまでに特定される最も攻撃的な脳がん細胞のいくつかに対するナノモル濃度の効力を有する非常に極力なStat3阻害剤であることが見出された。
構成的に活性なStat3がヒト腫瘍において広く見られることにより、ますますの重要性が、新規な抗がん薬物としての好適なStat3−阻害剤の発見に置かれている;しかしながら、多くのStat3阻害様式が報告されているにもかかわらず、Stat3の小分子阻害剤薬物はどれもが未だ臨床に達していない。Miklossyら、Therapeutic modulators of STAT signaling for human diseases、Nat Rev Drug Discov、12:611−629(2013)。本明細書中に記載されるように、式I〜式IIIの化合物、例えば、SH5−07およびSH4−54(これらはそれぞれ、Stat3の以前に報告された阻害剤であるBP−1−102のヒドロキサム酸誘導体および安息香酸誘導体である)は、2倍改善されたインビトロでのStat3阻害効力を示す。両方の薬剤が、優先的な抗腫瘍細胞応答をヒト神経膠腫腫瘍細胞に対してインビトロにおいて誘導することは注目すべきことである。本明細書中に記載されるように、これらの化合物はまた、乳がん細胞および膵臓細胞または前立腺がん細胞あるいはv−Src形質転換マウス線維芽細胞に対する抗腫瘍細胞応答を低いマイクロモル濃度において示す。さらに、SH5−07は、改善された標的選択性を呈示し、また、Src、Jak2、Shc、ERK1/2MAPKまたはAktのリン酸化に対する最小阻害影響を、これらの他のタンパク質の活性化を引き起こす機構に関与するSH2ドメインが存在するにもかかわらず、細胞内Stat3活性化を阻害する濃度(3μM〜10μM)において示した。
実質的な証拠により、異常なStat3活性ががん細胞の成長および生存を促進させ、また、腫瘍の血管形成および転移を誘導することが明らかにされる。Stat3活性化の阻害剤は抗腫瘍細胞影響を促進させ、だが、これらの多くは効力が低い。Turksonら、Novel peptidomimetic inhibitors of signal transducer and activator of transcription 3 dimerization and biological activity、Mol Cancer Ther、3:261−269(2004);Turksonら、Phosphotyrosyl peptides block Stat3−mediated DNA−binding activity,gene regulation and cell transformation、J.Biol.Chem.、276:45443−45455(2001);Garciaら、Constitutive activation of Stat3 by the Src and JAK tyrosine kinases participates in growth regulation of human breast carcinoma cells、Oncogene、20:2499−2513(2001);Catlett−Falconeら、Constitutive activation of Stat3 signaling confers resistance to apoptosis in human U266 myeloma cells、Immunity、10:105−115(1999);Moraら、Constitutive activation of Stat3 in human prostate tumors and cell lines:direct inhibition of Stat3 signaling induces apoptosis of prostate cancer cells、Cancer Res、62:6659−66(2002);Niuら、Constitutive Stat3 activity up−regulates VEGF expression and tumor angiogenesi、Oncogene、21:2000−2008(2002);Weiら、Stat3 activation regulates the expression of vascular endothelial growth factor and human pancreatic cancer angiogenesis and metastasis、Oncogene、22:319−29(2003);Xieら、Stat3 activation regulates the expression of matrix metalloproteinase−2 and tumor invasion and metastasis、Oncogene、23:3550−60(2004)を参照のこと。
本開示は、以前に報告されたStat3阻害剤のある特定の構造的に異なったアナログが予想外の強化された治療活性を有したという驚くべき発見に基づく。SH5−07は、インビトロでのより改善された効力を、BP−1−102および報告された小分子Stat3阻害剤の多くと比較して、構成的な活性なStat3を含んでいるヒト乳がん細胞および神経膠腫細胞の生存性、コロニー生存および遊走を抑制することにおいて示す。Stat3阻害剤としてのSH5−07の生物学的影響に対する機構的洞察が、Bcl−2、Bcl−xL、サイクリンD1、c−Mycおよびサバイビンを含めて、細胞の成長および生存を制御する、Stat3遺伝子によって調節される遺伝子の構成的発現が抑制されるという本明細書中に開示される証拠によってもたらされる。Songら、A low−molecular−weight compound discovered through virtual database screening inhibits Stat3 function in breast cancer cells、Proc Natl Acad Sci USA、102:4700−5(2005);Zhangら、Orally bioavailable small−molecule inhibitor of transcription factor Stat3 regresses human breast and lung cancer xenografts、Proc Natl Acad Sci USA、109:9623−8(2012);Catlett−Falconeら、Constitutive activation of Stat3 signaling confers resistance to apoptosis in human U266 myeloma cells、Immunity、10:105−115(1999);Gritskoら、Persistent activation of stat3 signaling induces survivin gene expression and confers resistance to apoptosis in human breast cancer cells、Clin Cancer Res、12:11−9(2006)。全体的には、本研究は、インビトロでのヒト乳がん細胞および神経膠腫細胞に対する抗腫瘍細胞影響を引き起こす悪性細胞における構成的に活性なStat3の阻害についての証拠を提供する。
定義
用語「アルキル」は、飽和した脂肪族基を包含し、これには、直鎖アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなど)、分岐鎖アルキル基(イソプロピル、tert−ブチル、イソブチルなど)、シクロアルキル(脂環式)基(シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル)、アルキル置換されたシクロアルキル基およびシクロアルキル置換されたアルキル基が含まれる。アルキルの用語はさらに、炭化水素骨格の1つまたは複数の炭素に取って代わる酸素原子、窒素原子、イオウ原子またはリン原子を含むアルキル基を包含する。用語「芳香族アルキル」は、1つまたは複数のアリール基により置換されるアルキル基を包含する。用語「低級アルキル」は、本明細書中で使用される場合、4個または4個未満の炭素を示す。
用語「アリール」は、芳香族性を有する基を包含し、これには、0個〜4個のヘテロ原子を含むことがある5員および6員の単環芳香族基、同様にまた、少なくとも1つの芳香族環を有する多環系が含まれる。アリール基の例には、ベンゼン、フェニル、ピロール、フラン、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジンなどが含まれる。その上、用語「アリール」は多環式アリール基を包含し、例えば、三環式、二環式のアリール基、例えば、ナフタレン、ベンゾオキサゾール、ベンゾジオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチオフェン、メチレンジオキシフェニル、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン(napthridine)、インドール、ベンゾフラン、プリン、ベンゾフラン、デアザプリンまたはインドリジンを包含する。ヘテロ原子を環構造に有するそれらのアリール基はまた、「アリール複素環」、「複素環」、「ヘテロアリール」または「ヘテロ芳香族」として示される場合がある。芳香族環は、上記で記載されるような置換基により、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシラート、アルキルカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アラルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、ホスファート、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、スルファート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリールあるいは芳香族成分またはヘテロ芳香族成分により1つまたは複数の環位置において置換されることが可能である。アリール基はまた、芳香族でない脂環式環または複素環式環との縮合、あるいは、芳香族でない脂環式環または複素環式環による架橋が可能であり、その結果、多環系(例えば、テトラリン、メチレンジオキシフェニル)を形成する。
用語「アルキレン」は二価の飽和した脂肪族基を示し、直鎖基および分岐鎖基の両方を包含する。
用語「アルケニレン」は、二重結合を有する二価の脂肪族基を示し、直鎖基および分岐鎖基の両方を包含する。
本明細書中で使用される場合、「対象」は、処置、観察または実験の対象物である動物を示す。「動物」には、冷血および温血の脊椎動物ならびに無脊椎動物が含まれ、例えば、魚類、甲殻類、爬虫類、および、特に哺乳動物などが含まれる。「哺乳動物」には、限定されないが、マウス;ラット;ウサギ;モルモット;イヌ;ネコ;ヒツジ;ヤギ;ウシ;ウマ;霊長類、例えば、サル、チンパンジー、無尾猿、ならびに、出生前、小児および成体のヒトが含まれる。
本明細書中で使用される場合、「防止する」または「保護する」は、全体的または部分的に防止すること、あるいは、改善すること、または抑制することを意味する。
本明細書中で使用される場合、用語「処置する」は、治療的処置と、予防的措置または防止的措置との両方、あるいは、治療的可能性を有することが疑われる作用因を投与することを示す。この用語は、防止的(例えば、予防的)処置および待機的処置を包含する。
用語「医薬有効量」は、本明細書中で使用される場合、活性な化合物または医薬作用因の量であって、処置されている疾患の症状の緩和または寛解を含む、探し求められている組織、系、動物またはヒトにおける生物学的応答または医学的応答を誘発するそのような量、ならびに/あるいは、有用性を有し、かつ、所望される治療終点をもたらすために十分である量を意味する。がんの場合、薬物の治療有効量は、がん細胞の数を減らすこと;腫瘍サイズを縮小させること;末梢器官へのがん細胞浸潤を阻害すること(すなわち、ある程度遅らせること、好ましくは停止させること);腫瘍転移を阻害すること(すなわち、ある程度遅らせること、好ましくは停止させること);腫瘍成長をある程度阻害すること;および/または、がんに伴う症状の1つまたは複数をある程度緩和することをもたらす場合がある。薬物は、成長を妨げること、および/または、存在するがん細胞を殺すことをもたらすことがあるという範囲で、当該薬物は細胞増殖抑制性および/または細胞毒性である場合がある。がん治療については、効力を、例えば、疾患進行に至る時間を評価すること、および/または、応答速度を求めることによって測定することができる。
用語「医薬的に許容され得る」は、本明細書中で使用される場合、当該物質または組成物が、配合物を構成する他の成分、および/または、配合物により処置されている哺乳動物と化学的および/または毒物学的に適合可能でなければならないことを意味する。
用語「がん」は、調節されない細胞成長および/または過剰増殖性活性によって典型的に特徴づけられる哺乳動物における病理学的状態を示すか、または記述する。「腫瘍」は1つまたは複数のがん性細胞を含む。がんの例には、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫および白血病またはリンパ系悪性腫瘍が含まれるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、がんは固形腫瘍である。そのようながんのより具体的な例には、乳がん、子宮頸がん、卵巣がん、膀胱がん、子宮内膜癌腫または子宮癌腫、前立腺がん、神経膠腫および他の脳がんまたは脊髄がん、扁平上皮がん(例えば、上皮性扁平上皮がん)、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん(「NSCLC」)、肺の腺がんおよび肺の扁平上皮癌腫を含む)、腹膜のがん、肝細胞がん、胃(gastricまたはstomach)のがん(胃腸がんを含む)、膵臓がん、神経膠芽細胞腫、肝臓がん、ヘパトーマ、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、唾液腺癌腫、腎臓がんまたは腎がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝癌腫、肛門癌腫、陰茎癌腫、同様にまた、頭頸部がんが含まれる。1つの実施形態において、処置は、固形腫瘍の処置を含む。1つの実施形態において、腫瘍は、肉腫、癌腫またはリンパ腫を含む。
いくつかの実施形態において、がんは、脳腫瘍、例えば、神経膠腫、髄芽細胞腫、脳髄膜腫(menangioma)など、膵臓がん、悪性黒色腫、多発性骨髄腫、リンパ腫(未分化大細胞型T細胞リンパ腫、セザリー症候群、EBV関連バーキットリンパ腫、HSV Saimiri依存性(T細胞)、皮膚T細胞リンパ腫を含む)、菌状息肉腫、白血病(HTLV−I依存性白血病、赤白血病、急性リンパ球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、巨核球性白血病および大顆粒リンパ球(LGL)白血病を含む)、甲状腺がん、脳がん、皮膚がん、肺がんおよび腎臓がんからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、がんは、腎細胞癌腫、膵臓腺がん、卵巣癌腫またはホジキンリンパ腫である場合がある。
「化学療法剤」は、作用機構にかかわらず、がんの処置において有用である化学化合物である。化学療法剤の様々なクラスには、アルキル化剤、代謝拮抗剤、紡糸体毒植物アルカロイド、細胞毒性(cytoxic)/抗腫瘍抗生物剤、トポイソメラーゼ阻害剤、抗体、光感受性物質およびキナーゼ阻害剤が含まれるが、これらに限定されない。化学療法剤には、「標的化治療」および従来型化学療法において使用される化合物が含まれる。化学療法剤の例には、下記のものが含まれる:トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標)、Genentech)、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標)、Genentech/OSI Pharm.)、ドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Sanofi−Aventis)、5−FU(フルオロウラシル、5−フルオロウラシル、CAS No.51−21−8)、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標)、Lilly)、PD−0325901(CAS No.391210−10−9、Pfizer)、シスプラチン(cis−ジアミン,ジクロロ白金(II)、CAS No.15663−27−1)、カルボプラチン(CAS No.41575−94−4)、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol−Myers Squibb Oncology、Princeton、N.J.)、ペメトレキセド(ALIMTA(登録商標)、Eli Lilly)、テモゾロミド(4−メチル−5−オキソ−2,3,4,6,8−ペンタアザビシクロ[4.3.0]ノナ−2,7,9−トリエン−9−カルボキサミド、CAS No.85622−93−1、TEMODAR(登録商標)、TEMODAL(登録商標)、Schering Plough)、タモキシフェン((Z)−2−[4−(1,2−ジフェニルブタ−1−エニル)フェノキシ]−N,N−ジメチルエタンアミン、NOLVADEX(登録商標)、ISTUBAL(登録商標)、VALODEX(登録商標))、ならびに、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標))、Akti−1/2、HPPDおよびラパマイシン。
化学療法剤のより多くの例には、下記のものが含まれる:オキサリプラチン(ELOXATIN(登録商標)、Sanofi)、ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標)、Millennium Pharm.)、スーテント(sutent)(SUNITINIB(登録商標)、SU11248、Pfizer)、レトロゾール(FEMARA(登録商標)、Novartis)、イマチニブメシラート(GLEEVEC(登録商標)、Novartis)、XL−518(Mek阻害剤、Exelixis、WO2007/044515)、ARRY−886(Mek阻害剤、AZD6244、Array BioPharma、Astra Zeneca)、SF−1126(PI3K阻害剤、Semafore Pharmaceuticals)、BEZ−235(PI3K阻害剤、Novartis)、XL−147(PI3K阻害剤、Exelixis)、PTK787/ZK222584(Novartis)、フルベストラント(FASLODEX(登録商標)、AstraZeneca)、ロイコボリン(フォリン酸)、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標)、Wyeth)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016、Glaxo Smith Kline)、ロナファルニブ(SARASAR(商標)、SCH66336、Schering Plough)、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標)、BAY43−9006、Bayer Labs)、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標)、AstraZeneca)、イリノテカン(CAMPTOSAR(登録商標)、CPT−11、Pfizer)、チピファルニブ(tipifarnib)(ZARNESTRA(商標)、Johnson&Johnson)、ABRAXANE(商標)(Cremophor非含有)、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子配合物(American Pharmaceutical Partners、Schaumberg,II)、バンデタニブ(rINN、ZD6474、ZACTIMA(登録商標)、AstraZeneca)、クロラムブシル(chloranmbucil)、AG1478、AG1571(SU5271;Sugen)、テムシロリムス(TORISEL(登録商標)、Wyeth)、パゾパニブ(GlaxoSmithKline)、カンフォスファミド(canfosfamide)(TELCYTA(登録商標)、Telik)、チオテパおよびシクロホスファミド(cyclosphosphamide)(CYTOXAN(登録商標)、NEOSAR(登録商標));アルキルスルホナート、例えば、ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファンなど;アジリジン系、例えば、ベンゾドパ(benzodopa)、カルボコン、メツレデパ(meturedopa)およびウレドパ(uredopa)など;エチレンイミン系およびメチルアメラミン系(methylamelamines)(アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびトリメチロメラミンを含む);アセトゲニン類(とりわけ、ブラタシン(bullatacin)およびブラタシノン(bullatacinone));カンプトテシン(合成アナログのトポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン(callystatin);CC−1065(その合成アナログのアドゼレシン、カルゼレシン(carzelesin)およびビゼレシンを含む);クリプトフィシン類(特にクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成アナログのKW−2189およびCB1−TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコジクチン(sarcodictyin);スポンギスタチン(spongistatin);ナイトロジェンマスタード系、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、クロロホスファミド(chlorophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア系、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチンおよびラニムヌスチン(ranimnustine)など;抗生物剤、例えば、エンジイン系抗生物剤(例えば、カリケアミシン、カリケアミシンガンマ1I、カリケアミシンオメガI1(Angew Chem.Intl.Ed.Engl.(1994) 33:183−186);ジネミシン(dynemicin)、ジネミシンA;ビスホスホナート系、例えば、クロドロン酸塩など;エスペラミシン類;同様にまた、ネオカルチノスタチンクロモフォアおよび関連色素タンパク質エンジイン系抗生物性クロモフォア)、アクラシノマイシン(aclacinomysin)類、アクチノマシン、オートラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン類、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カミノマイシン(caminomycin)、カルジノフィリン、クロモマイシン類(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、ネモルビシン(nemorubicin)、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン類(例えば、マイトマイシンCなど)、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン類、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗物質、例えば、メトトレキサートおよび5−フルオロウラシル(5−FU)など;葉酸アナログ、例えば、デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなど;プリンアナログ、例えば、フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニンなど;ピリミジンアナログ、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなど;アンドロゲン類、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなど;抗副腎剤(anti−adrenal)、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなど;葉酸補充剤、例えば、フロリン酸(frolinic acid)など;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル(bestrabucil);ビスアントレン(bisantrene);エダトラキサート(edatraxate);デホファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジクオン;エルホルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium);エポチロン類;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);メイタンシノイド(例えば、メイタンシンなど)およびアンサミトシン(ansamitocin)類;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメト(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン(losoxantrone);ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products、Eugene、Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン(rhizoxin);シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2”−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン類(とりわけ、T−2毒素、ベラクリン(verracurin)A、ロリジンAおよびアンギジン(anguidine));ウレタン(urethan);ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオテパ;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金アナログ、例えば、シスプラチンおよびカルボプラチンなど;ビンブラスチン;エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;カペシタビン(XELODA(登録商標)、Roche);イバンドロナート;CPT−11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド、例えば、レチノイン酸など;ならびに上記のいずれかの医薬的に許容され得る塩、酸および誘導体。
「化学療法剤」の定義に同様に含まれるものが下記のものである:(i)腫瘍に対するホルモン作用を調節または阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えば、抗エストロゲン剤および選択的エストロゲン受容体調節剤(SERM)、これらには、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)、クエン酸タモキシフェンを含む);ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストン(onapristone)およびFARESTON(登録商標)(クエン酸トレミフェン)が含まれる;(ii)副腎におけるエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば、4(5)−イミダゾール類、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)(酢酸メゲストロール)、AROMASIN(登録商標)(エキセメスタン;Pfizer)、ホルメスタン(formestanie);ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)(ボロゾール)、FEMARA(登録商標)(レトロゾール;Novartis)およびARIMIDEX(登録商標)(アナストロゾール;AstraZeneca);(iii)抗アンドロゲン剤、例えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリドおよびゴセレリンなど;同様にまた、トロキサシタビン(1,3−ジオキソランヌクレオシドシトシンアナログ);(iv)プロテインキナーゼ阻害剤、例えば、MEK阻害剤(WO2007/044515)など;(v)脂質キナーゼ阻害剤;(vi)アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、異常な細胞増殖に関係するシグナル伝達経路における遺伝子(例えば、PKC−アルファ、RafおよびH−Rasなど)の発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチド、例えば、オブリメルセン(GENASENSE(登録商標)、Genta Inc.)など;(vii)リボザイム、例えば、VEGF発現阻害剤(例えば、ANGIOZYME(登録商標))およびHER2発現阻害剤など;(viii)ワクチン、例えば、遺伝子治療ワクチンなど、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)、LEUVECTIN(登録商標)およびVAXID(登録商標);PROLEUKIN(登録商標)rIL−2;トポイソメラーゼ1阻害剤、例えば、LURTOTECAN(登録商標)など;ABARELIX(登録商標)rmRH;(ix)抗血管新生剤、例えば、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)、Genentech)など;ならびに、上記のいずれかの医薬的に許容され得る塩、酸および誘導体。
「化学療法剤」の定義に同様に含まれるものが下記の治療抗体である:例えば、アレムツズマブ(Campath)、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)、Genentech);セツキシマブ(ERBITUX(登録商標)、Imclone);パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標)、Amgen)、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標)、Genentech/Biogen Idec)、ペルツズマブ(OMNITARG(商標)、2C4、Genentech)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標)、Genentech)、トシツモマブ(Bexxar、Corixia)、および、抗体薬物コンジュゲートのゲムツズマブオゾガミシン(MYLOTARG(登録商標)、Wyeth)。
化学療法剤としての治療可能性を本発明のガンマ−グルタミル阻害剤との組合せで有するヒト化モノクローナル抗体には、下記のものが含まれる:アレムツズマブ、アポリズマブ、アセリズマブ(aselizumab)、アトリズマブ(atlizumab)、バピネウズマブ、ベバシズマブ、ビバツズマブメルタンシン(bivatuzumab mertansine)、カンツズマブメルタンシン、セデリズマブ(cedelizumab)、セルトリズマブペゴール、シドフシツズマブ(cidfusituzumab)、シドツズマブ(cidtuzumab)、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、エプラツズマブ、エルリズマブ(erlizumab)、フェルビズマブ(felvizumab)、フォントリズマズ、ゲムツズマブオゾガミシン、イノツズマブ(inotuzumab)オゾガミシン、イピリムマブ、ラベツズマブ、リンツズマブ、マツズマブ、メポリズマブ、モタビズマブ、モトビズマブ(motovizumab)、ナタリズマブ、ニモツズマブ(nimotuzumab)、ノロビズマブ(nolovizumab)、ヌマビズマブ(numavizumab)、オクレリズマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パスコリズマブ(pascolizumab)、ペクフシツズマブ(pecfusituzumab)、ペクツズマブ(pectuzumab)、ペルツズマブ、ペキセリズマブ(pexelizumab)、ラリビズマブ(ralivizumab)、ラニビズマブ、レスリビズマブ、レシビズマブ(resyvizumab)、ロベリズマブ(rovelizumab)、ルピリズマブ(ruplizumab)、シブロツズマブ(sibrotuzumab)、シプリズマブ、ソンツズマブ(sontuzumab)、タカツズマブテトラキセタン(tacatuzumab tetraxetan)、タドシズマブ(tadocizumab)、タリズマブ、テフィバズマブ(tefibazumab)、トシリズマブ、トロリズマブ(toralizumab)、トラスツズマブ、ツコツズマブセルモロイキン(tucotuzumab celmoleukin)、ツクシツズマブ(tucusituzumab)、ウマビズマブ(umavizumab)、ウルトキサズマブおよびビシリズマブ(visilizumab)。
「代謝産物」は、指定された化合物またはその塩の体内での代謝から生じる生成物である。化合物の様々な代謝産物が、この技術分野において知られている日常的な技術を使用して特定される場合があり、また、それらの活性が、様々な試験を使用して、例えば、本明細書中に記載される試験などを使用して求められる場合がある。そのような生成物は、例えば、投与された化合物の酸化、還元、加水分解、アミド化、脱アミノ化、エステル化、脱エステル化および酵素的切断などから生じる場合がある。したがって、本発明は、本発明の化合物を、その代謝生成物をもたらすために十分な期間にわたって哺乳動物と接触させることを含むプロセスによって産生される化合物を含めて、本発明の化合物の代謝産物を包含する。
用語「添付文書」は、治療用製造物の商用包装物において通例的に含まれる説明書で、そのような治療用製造物の使用に関する適応症、用法、投薬量、投与、禁忌および/または警告に関する情報を含有する説明書を示すために使用される。
表現「医薬的に許容され得る塩」は、本明細書中で使用される場合、本発明の化合物の医薬的に許容され得る有機塩または無機塩を示す。例示的な塩には、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩(gentisinate)、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカラート、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩「メシラート」、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩およびパモ酸塩(すなわち、1,1’−メチレン−ビス(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸塩))の各塩が含まれるが、これらに限定されない。医薬的に許容され得る塩は、別の分子(例えば、酢酸塩イオン、コハク酸塩イオンまたは他の対イオンなど)の包含を伴う場合がある。対イオンは、親化合物における電荷を安定化するどのような有機成分または無機成分であってもよい。その上、医薬的に許容され得る塩は1つを超える荷電原子をその構造において有する場合がある。多数の荷電原子が医薬的に許容され得る塩の一部である場合、医薬的に許容され得る塩は多数の対イオンを有することができる。したがって、医薬的に許容され得る塩は1つまたは複数の荷電原子ならびに/あるいは1つまたは複数の対イオンを有することができる。
本発明の化合物が塩基であるならば、その所望される医薬的に許容され得る塩が、どのような方法であれ、この技術分野において利用可能である好適な方法によって、例えば、フリー塩基の処理を、無機酸を用いて、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、リン酸など)を用いて、または、有機酸を用いて、例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、ピラノシジル酸(pyranosidyl acid)(例えば、グルクロン酸またはガラクツロン酸など)、アルファヒドロキシ酸(例えば、クエン酸または酒石酸など)、アミノ酸(例えば、アスパラギン酸またはグルタミン酸など)、芳香族酸(例えば、安息香酸またはケイ皮酸など)、スルホン酸(例えば、p−トルエンスルホン酸またはエタンスルホン酸など)など用いて行うことによって調製される場合がある。
本発明の化合物が酸であるならば、その所望される医薬的に許容され得る塩が、どのような方法であれ、好適な方法によって、例えば、フリー酸の処理を、無機塩基または有機塩基を用いて、例えば、アミン(一級、二級または三級)、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物などを用いて行うことによって調製される場合がある。好適な塩の例示的な例には、アミノ酸(例えば、グリシンおよびアルギニンなど)、アンモニア、第一級アミン、第二級アミンおよび第三級アミン、ならびに、環状アミン(例えば、ピペリジン、モルホリンおよびピペラジンなど)に由来する有機塩、また、ナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウムおよびリチウムに由来する無機塩が含まれるが、これらに限定されない。
「溶媒和物」は、1つまたは複数の溶媒分子と本発明の化合物との会合物または複合体を示す。溶媒和物を形成する溶媒の例には、水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル、酢酸およびエタノールアミンが含まれるが、これらに限定されない。
式Iの化合物の投与
本発明の式Iの化合物は、どのような経路であれ、処置されるための状態に対して適切である経路によって投与される場合がある。好適な経路には、経口、非経口(皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、皮内、クモ膜下腔内および硬膜外を含む)、腹腔内(IP)、経皮、直腸、鼻腔、局所的(口内および舌下を含む)、膣、肺内および鼻腔内が含まれる。局所的処置のために、化合物が、腫瘍を阻害剤により灌流するか、または他の場合には腫瘍を阻害剤と接触させることを含めて、腫瘍内投与によって投与される場合がある。好ましい経路が、例えば、レシピエントの状態により変わる場合があることが理解されるであろう。化合物が経口投与される場合、化合物は、医薬的に許容され得るキャリアまたは賦形剤を伴うピル剤、カプセル剤、錠剤などとして配合される場合がある。化合物が非経口投与される場合、化合物は、下記で詳しく記載されるように、医薬的に許容され得る非経口用ビヒクルを伴って、かつ、単位投薬量の注射可能な形態で配合される場合がある。
ヒト患者を処置するための用量が、式Iの化合物の約1mg〜約1000mgの範囲である場合がある。用量は、式I〜式IIIの化合物の約1mg、2mg、2.5mg、4mg、5mg、7.5mg、10mg、12.5mg、15mg、17,5mg、20mg、25mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、75mg、80mg、90mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1000mg、または、どのような用量であれ、そのような用量のいずれか2つの間に及ぶ用量である場合がある。
所定の用量が、特定の化合物の吸収、分布、代謝および排出を含めて薬物動態学的性質および薬力学的性質に依存して、1日あたり1回(QID)、1日あたり2回(BID)またはより頻繁に投与される場合がある。加えて、毒性要因が投薬量および投与レジメンに影響を与える場合がある。経口投与されるときの典型的な用量、ピル剤、カプセル剤または錠剤が、指定された期間にわたって毎日またはより少ない頻度で摂取される場合がある。このレジメンが何回かの治療サイクルにわたって繰り返される場合がある。
式Iの化合物による処置の方法
本発明の式Iの化合物は、がん(これに限定されない)を含めて様々な過剰増殖性の疾患、状態および/または障害を処置するために有用である。したがって、本発明の1つの局面は、Stat3を阻害することによって処置または防止することができる疾患または状態を処置する、または防止する方法を包含する。1つの実施形態において、本発明の方法は、当該方法を必要とする対象に、治療有効量の式Iの化合物またはその医薬的に許容され得る塩を投与することを含む。1つの実施形態において、ヒト患者が、式Iの化合物および医薬的に許容され得るキャリア、補助剤またはビヒクルにより処置され、ただし、この場合、式Iの前記化合物が、がんを処置するための、および/または、Stat3活性を検出可能に阻害するための量で存在する。
本発明の方法に従って処置することができるがんには、神経膠腫、神経膠芽細胞腫、神経芽細胞腫、乳房、卵巣、子宮頸部、前立腺、精巣、泌尿生殖路、食道、喉頭、胃、皮膚、ケラトアカントーマ、肺、類表皮癌腫、大細胞癌腫、非小細胞肺癌腫(NSCLC)、小細胞癌腫、肺腺がん、骨、結腸、腺腫、膵臓、腺がん、甲状腺、濾胞状癌腫、未分化癌腫、乳頭状癌腫、セミノーマ、黒色腫、肉腫、膀胱癌腫、肝臓癌腫および胆汁通路、腎臓癌腫、骨髄系障害、リンパ系障害、ヘアリー細胞、口腔および咽頭(口部)、口唇、舌、口、咽頭、小腸、結腸直腸、大腸、直腸、脳および中枢神経系、ホジキンおよび白血病が含まれるが、これらに限定されない。
式Iの化合物は、哺乳動物の細胞、生物または関連する病理学的状態(例えば、過剰増殖性疾患および/またはがんなど)の、インビトロ、インシトゥーおよびインビボでの診断または処置において有用である場合がある。
式Iの化合物は、血液脳関門を横断する輸送を必要とする脳および中枢神経系の状態を処置するために有用である場合がある。ある特定の式Iの化合物は、脳への送達のための好都合な浸透特性を有する。式Iの化合物により効果的に処置されることがある脳の障害には、転移性および原発性の脳腫瘍、例えば、神経膠芽細胞腫および黒色腫などが含まれる。
式Iの化合物は、眼への限局化された送達によって眼のがんを処置するために有用である場合がある。ある特定の式Iの化合物は、眼への送達および眼内への取り込みのための好都合な浸透特性を有する。ある特定の式Iの化合物は、湿性AMDをラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標)、Genentech,Inc.)およびベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)、Genentech,Inc.)との組合せで処置するための効力および長期に及ぶ応答持続期間を高める場合がある。
本発明の別の局面により、本明細書中に記載される疾患または状態を、そのような疾患または状態に罹患する対象(例えば、ヒト)において処置する際に使用されるための本発明の化合物が提供される。また、本明細書中に記載される疾患または状態を、そのような障害に罹患する温血動物において、例えば、哺乳動物などにおいて、例えば、ヒトにおいて処置するための医薬品の調製における本発明の化合物の使用も提供される。
医薬配合物/組成物および使用
式Iの化合物を、ヒトを含む哺乳動物の治療的処置(予防的処置を含む)のために使用するために、式Iの化合物は通常、医薬組成物として標準的な製薬慣例に従って配合される。本発明のこの局面によれば、本発明の化合物を医薬的に許容され得る希釈剤またはキャリアと連携して含む医薬組成物が提供される。
典型的な配合物が、式Iの化合物と、キャリア、希釈剤または賦形剤とを混合することによって調製される。様々な好適なキャリア、希釈剤および賦形剤が当業者には広く知られており、これらには、炭水化物、ワックス、水溶性ポリマーおよび/または水膨潤性ポリマー、親水性物質または疎水性物質、ゼラチン、オイル、溶媒ならびに水などの物質が含まれる。使用される特定のキャリア、希釈剤または賦形剤は、本発明の化合物が適用される手段および目的に依存するであろう。様々な溶媒が一般には、哺乳動物に投与されるために安全であるとして当業者によって認識される(GRAS)溶媒に基づいて選択される。一般に、安全な溶媒は、水において可溶性または混和性である非毒性の水性溶媒(例えば、水など)および他の非毒性溶媒である。好適な水性溶媒には、水、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400、PEG300)など、および、それらの混合物が含まれる。配合物はまた、薬物(すなわち、本発明の化合物またはその医薬組成物)の的確な提示を提供するための、または、医薬製造物(すなわち、医薬品)の製造を助けるための1つまたは複数の緩衝剤、安定化剤、界面活性剤、湿潤化剤、滑剤、乳化剤、懸濁化剤、保存剤、酸化防止剤、不透明化剤、流動促進剤、加工助剤、着色剤、甘味剤、芳香剤、香味矯臭剤および他の知られている添加物を含む場合がある。
配合物は、従来の溶解手順および混合手順を使用して調製される場合がある。例えば、原体薬物物質(すなわち、本発明の化合物または式Iの化合物の安定化された形態(例えば、シクロデキストリン誘導体または他の知られている複合体形成剤との複合体))が、上記で記載される賦形剤の1つまたは複数の存在下、好適な溶媒に溶解される。本発明の化合物は典型的には、薬物の容易に制御可能な投薬を提供するための、また、処方されたレジメンに関する患者の遵守を可能にするための医薬用投薬形態物に配合される。
適用されるための医薬組成物(または配合物)は、薬物を投与するために使用される方法に依存する様々な様式で包装される場合がある。一般に、配布用物品は、医薬配合物が適切な形態で入れられる容器を含む。様々な好適な容器が当業者には広く知られており、これらには、ビン(プラスチック製およびガラス製)、小袋、アンプル、ビニール袋および金属シリンダーなどのものが含まれる。容器はまた、包装物の内容物への軽率な接触を防止するための不正開封防止組み立てを含む場合がある。加えて、容器には、容器の内容物を記載するラベルが貼付される。ラベルはまた、適切な警告を含む場合がある。
本発明の化合物の医薬配合物が投与の様々な経路および形式のために調製される場合がある。例えば、所望される程度の純度を有する式Iの化合物が必要に応じて、凍結乾燥配合物、粉砕粉末または水溶液の形態で、医薬的に許容され得る希釈剤、キャリア、賦形剤または安定剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences(1980)、第16版、Osol,A.編)と混合される場合がある。配合が、周囲温度で、適切なpHで、かつ、所望される程度の純度で、生理学的に許容され得るキャリアと、すなわち、用いられる投薬量および濃度においてレシピエントに対して非毒性であるキャリアと混合することによって行われる場合がある。配合物のpHは、主に化合物の特定の使用および濃度に依存し、しかし、約3〜約8の範囲である場合がある。pH5での酢酸緩衝液における配合が、好ましい実施形態である。
本明細書中における使用のための本発明の化合物は好ましくは無菌である。特に、インビボ投与のために使用されるための配合物は無菌でなければならない。そのような無菌化が、無菌のろ過膜に通すろ過によって容易に達成される。
化合物は通常、固体の組成物、すなわち、凍結乾燥された配合物として、または、水溶液(例えば、生理的食塩水における水溶液)として貯蔵することができる。
式Iの化合物を含む本発明の医薬組成物は、良好な医療慣行と一致する様式で、すなわち、良好な医療慣行と一致する量、濃度、スケジュール、経過、ビヒクルおよび投与経路で配合され、服用され、投与されるであろう。この関連で考慮されるための要因には、処置される特定の障害、処置される特定の哺乳動物、個体患者の臨床的状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュールの決定、および、医療行為実施者には知られている他の要因が含まれる。本明細書中に提供される化合物および塩形態物に加えて、本発明は、非経口用および経口用の送達形態物および配合物のための錠剤、カプセル剤、溶液および懸濁物を含めて、医薬的に許容され得るキャリアと、治療有効量の本明細書中に提供されるStat3阻害剤の1つまたは複数とを含む医薬組成物を包含する。Stat3阻害剤の医薬組成物は塩および水和物を含むことができる。
がんを処置するためのヒトおよび動物の治療において、例えば、本明細書中に記されるがんならびに他の関連する障害、疾患および状態を処置することにおいて、本明細書中に記載され、また提供される様々な化合物およびそれらの結晶形態物、それらの医薬的に許容され得る塩、ならびに、どちらかの実体の医薬的に許容され得る溶媒和物は単独で投与することができ、しかし、一般には、意図された投与経路および標準的な製薬慣行に関して選択される医薬用キャリアとの混合で投与されることになる。好ましくは、それらは、医薬的に許容され得る賦形剤(例えば、デンプンまたはラクトースなど)を含有する錠剤の形態で、あるいは、単独で、または賦形剤との混合でのどちらかでのカプセルまたはオブール(ovule)で、あるいは、矯味矯臭剤または着色剤を含有するエリキシル剤、溶液または懸濁物の形態で経口投与される。それらはまた、非経口的に、例えば、静脈内、筋肉内または皮下に注射することができる。非経口投与のために、それらは、他の物質、例えば、溶液を血液と等張性にするための十分な塩または単糖を含有する場合がある無菌の水溶液の形態で最も良く使用される。口内投与または舌下投与のために、それらは、従来の様式で配合され得る錠剤または口内錠の形態で投与される場合がある。
一般的な提案として、1回の服用あたり非経口投与される式Iの化合物の最初の医薬有効量は、約0.01mg/kg〜10mg/kg、0.01mg/kg〜1.0mg/kg、あるいは、1.0mg/kg〜10.0mg/kg、または、10.0mg/kg〜100.0mg/kgの範囲であろう。1回の服用あたり非経口投与される式Iの化合物の量はまた、1日あたり約0.05mg/kg患者体重〜5mg/kg患者体重である場合があり、だが、使用される化合物の典型的な最初の範囲は0.05mg/kg/日〜10mg/kg/日である。典型的な用量が、化合物の1日あたり1回、2回または4回での約1mg〜約30.0mgである場合がある。いくつかの実施形態において、用量は、約0.05mg/kg、0.06mg/kg、0.07mg/kg、0.08mg/kg、0.09mg/kg、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1.0mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、2.0mg/kg、2.1mg/kg、2.2mg/kg、2.3mg/kg、2.4mg/kg、2.5mg/kg、2.6mg/kg、2.7mg/kg、2.9mg/kg、3.0mg/kg、3.1mg/kg、3.2mg/kg、3.3mg/kg、3.4mg/kg、3.5mg/kg、3.6mg/kg、3.7mg/kg、3.8mg/kg、3.9mg/kgまたは約4.0mg/kg、あるいは、どのような範囲であれ、これらの示された用量のいずれか2つの間における範囲である場合がある。いくつかの実施形態において、用量は、.08mg/kg〜約0.5mg/kg、約.08mg/kg〜約.24mg/kg、または、約.24mg/kg〜約.5mg/kgであろう。別の局面において、上記有効用量のSTAT−3阻害剤が1つまたは複数の用量で与えられる。例えば、治療的は、例えば、それぞれの用量について.08mg/kg、.24mg/kgまたは.5mg/kgである場合がある。
許容され得る希釈剤、キャリア、賦形剤および安定剤は、用いられる投薬量および濃度においてレシピエントに対して非毒性であり、これらには、生理的食塩水および/または緩衝剤(例えば、リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸など);酸化防止剤(アスコルビン酸およびメチオニンを含む);保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム塩化物;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコールまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルパラベンまたはプロピルパラベンなど;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなど;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドンなど;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリシンなど;単糖、二糖および他の炭水化物(グルコース、マンノースまたはデキストリンを含む);キレート化剤、例えば、EDTAなど;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなど;塩形成対イオン、例えば、ナトリウムなど;金属複合体(例えば、Zn−タンパク質複合体など);ならびに/あるいは非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)またはポリエチレングリコール(PEG)などが含まれる。活性な医薬成分はまた、例えば、コアセルベーション技術によって、または界面重合によって調製されるマイクロカプセルにおいて、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースマイクロカプセルまたはゼラチン−マイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリラート)マイクロカプセルにおいて、コロイド薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミン微小球体、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)において、あるいは、マクロエマルションにおいて封入される場合がある。そのような技術が、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、Osol,A.編(1980)に開示される。
式Iの化合物の持続放出調製物が調製される場合がある。持続放出調製物の好適な例には、式Iの化合物を含有する固体の疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが含まれ、ただし、この場合、そのようなマトリックスは形状化品(例えば、フィルムまたはマイクロカプセル)の形態である。持続放出マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリラート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸およびガンマ−エチル−L−グルタマートのコポリマー、非分解性のエチレン−酢酸ビニル、分解性の乳酸−グリコール酸コポリマー(例えば、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドから構成される注射可能な微小球体)など)およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が含まれる。
配合物には、本明細書中に詳述される投与経路のために好適である配合物が含まれる。配合物は好都合には単位投薬形態物で提示される場合があり、製薬の技術分野では広く知られている方法のいずれかによって調製される場合がある。様々な技術および配合物が一般には、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co.、Easton、Pa.)において見出される。そのような方法は、有効成分を、1つまたは複数の補助的成分を構成するキャリアと連携させる工程を含む。一般に、配合物は、有効成分を液体キャリアまたは微細に分割された固体キャリアまたは両者と均一かつ均質に連携させ、その後、必要ならば、製造物を形状化することによって調製される。
経口投与のために好適である式I〜式IIIの化合物の配合物が、所定量の式I〜式IIIの化合物をそれぞれが含有する個別の単位物(例えば、ピル、カプセル、サシェ(cachet)または錠剤など)として調製される場合がある。
圧縮錠剤が、易流動性形態(例えば、粉末または顆粒など)での有効成分を、必要な場合にはバインダー、滑剤、不活性な希釈剤、保存剤、表面活性剤または分散化剤と混合されて、好適な装置において圧縮することによって調製される。湿製錠剤が、不活性な液体希釈剤により湿らされる粉末化された有効成分の混合物を好適な装置において成形することによって製造される場合がある。これらの錠剤は、必要に応じて被覆または刻み目が施される場合があり、また、必要に応じて、有効成分のゆっくりした放出または制御された放出を提供するように配合される。
錠剤、トローチ錠、口内錠、水性懸濁物または油性懸濁物、分散性の粉末剤または顆粒剤、エマルション、硬質カプセルまたは軟質カプセル(例えば、ゼラチンカプセル)、シロップ剤あるいはエリキシル剤が、経口使用のために調製される場合がある。経口使用のために意図される式Iの化合物の配合物が、医薬組成物を製造するためにこの技術分野で知られているいずれかの方法に従って調製される場合があり、そのような組成物は、口当たりがいい調製物を提供するために、甘味剤、香味矯臭剤、着色剤および保存剤を含む1つまたは複数の薬剤を含有する場合がある。有効成分を錠剤の製造のために好適である非毒性の医薬的に許容され得る賦形剤との混合で含有する錠剤が受け入れられ得る。これらの賦形剤は、例えば、不活性な希釈剤、例えば、炭酸カルシウムまたは炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムなど;造粒剤および崩壊剤、例えば、トウモロコシデンプンまたはアルギン酸など;結合剤、例えば、デンプン、ゼラチンまたはアラビアゴムなど;および滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクなどである場合がある。錠剤は被覆されていなくてもよく、または、胃腸管における崩壊および吸着を遅らせ、それにより、持続した作用をより長期間にわたって提供するためのマイクロカプセル化を含めて様々な知られている技術によって被覆される場合がある。例えば、時間遅延材料、例えば、単独での、またはワックスを伴うグリセリルモノステアラートまたはグリセリルジステアラートなどが用いられる場合がある。
眼または他の外部組織(例えば、口および皮膚)を処置するために、配合物が、有効成分を、例えば、0.075%〜20%(w/w)の量で含有する局所用の軟膏またはクリームとして適用される場合がある。軟膏で配合されるとき、有効成分が、パラフィン系軟膏基剤または水混和性軟膏基剤のどちらかとともに用いられる場合がある。代替において、有効成分が、水中油型のクリーム基剤とのクリームで配合される場合がある。
所望されるならば、クリーム基剤の水相は、多価アルコール、すなわち、2つまたはそれを超えるヒドロキシル基を有するアルコール、例えば、プロピレングリコール、ブタン1,3−ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロールおよびポリエチレングリコール(PEG400を含む)ならびにそれらの混合物を含む場合がある。局所用配合物は望ましくは、皮膚または他の患部領域を介する有効成分の吸収または浸透を高める化合物を含む場合がある。そのような皮膚浸透強化剤の例には、ジメチルスルホキシドおよび関連アナログが含まれる。
本発明のエマルションの油相が、知られている成分から、知られている様式で構成される場合がある。油相が単に乳化剤を含む場合があるが、油相は望ましくは、少なくとも1つの乳化剤の、脂肪またはオイルとの混合物、あるいは、脂肪およびオイルの両方との混合物を含む場合がある。好ましくは、親水性の乳化剤が、安定剤として作用する親油性の乳化剤と一緒に含まれる。オイルおよび脂肪の両方を含むこともまた好ましい。まとめると、安定剤を伴う、または伴わない乳化剤は、いわゆる乳化性ワックスを構成し、オイルおよび脂肪を一緒に伴うワックスは、クリーム配合物の油性分散相を形成するいわゆる乳化性軟膏基剤を構成する。本発明の配合物における使用のために好適である乳化剤および乳化安定剤には、Tween(登録商標)60、Span(登録商標)80、セトステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ミリスチルアルコール、グリセリルモノステアラートおよびラウリル硫酸ナトリウムが含まれる。
式I〜式IIIの化合物の水性懸濁物は、活性な物質を水性懸濁物の製造のために好適な賦形剤との混合で含有する。そのような賦形剤には、懸濁化剤、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、クロスカルメロース、ポビドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムおよびアラビアゴムなど、ならびに、分散化剤または湿潤化剤、例えば、天然に存在するホスファチド(例えば、レシチン)、アルキレンオキシドの脂肪酸との縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンステアラート)、エチレンオキシドの長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドの、脂肪酸およびヘキシトール無水物に由来する部分エステルとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート)などが含まれる。水性懸濁物はまた、1つまたは複数の保存剤(例えば、p−パラヒドロキシ安息香酸エチルまたはp−パラヒドロキシ安息香酸n−プロピルなど)、1つまたは複数の着色剤、1つまたは複数の香味矯臭剤、および、1つまたは複数の甘味剤(例えば、スクロースまたはサッカリンなど)を含有する場合がある。
式I〜式IIIの化合物の医薬組成物は、無菌の注射可能な調製物の形態(例えば、無菌の注射可能な水性懸濁物または油性懸濁物など)である場合がある。この懸濁物は、上記で述べられているそのような好適な分散化剤または湿潤化剤および懸濁化剤を使用して、知られている技術に従って配合される場合がある。無菌の注射可能な調製物はまた、非経口的に許容され得る非毒性の希釈剤または溶媒における無菌の注射可能な溶液または懸濁物である場合があり、例えば、凍結乾燥粉末として調製される1,3−ブタンジオールにおける溶液などである場合がある。用いられることがある許容され得るビヒクルおよび溶媒には、水、リンゲル液および等張性塩化ナトリウム溶液が含まれる。加えて、無菌の固定油が、溶媒または懸濁用媒体として従来から用いられる場合がある。この目的のために、無刺激性の固定油はどれも用いられる場合があり、これには、合成されたモノグリセリドまたはジグリセリドが含まれる。加えて、脂肪酸(例えば、オレイン酸など)が同様に、注射物の調製において使用される場合がある。
単一の投薬形態物を製造するためにキャリア材料と組み合わされることがある有効成分の量は、処置される宿主および特定の投与様式に依存して変化するであろう。例えば、ヒトへの経口投与のために意図される時間放出配合物は、およそ1mg〜1000mgの活性物質を、総組成物の約5%〜約95%(重量:重量)にまで変化することがある適切かつ好都合な量のキャリア物質と配合されて含有する場合がある。医薬組成物は、投与のための容易に測定可能な量を提供するために調製することができる。例えば、静脈内注入のために意図される水溶液は、約30mL/hrの速度での好適な体積の注入が生じることが可能であるために1ミリリットルの溶液あたり約10μg〜10,000μgの有効成分を含有する場合がある。
非経口投与のために好適である配合物には、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、および、配合物を意図されたレシピエントの血液と等張性にする溶質を含有する場合がある水性および非水性の無菌の注射溶液、ならびに、懸濁化剤および増粘剤を含む場合がある水性および非水性の無菌の懸濁物が含まれる。
眼に対する局所投与のために好適である配合物にはまた、有効成分が好適なキャリア(とりわけ、有効成分のための水性溶媒)に溶解または懸濁される点眼薬が含まれる。有効成分が好ましくは、約0.5%w/w〜20%w/wの濃度で、約0.5%w/w〜10%w/wの濃度で、または、約1.5%w/wの濃度でそのような配合物に存在する。
口における局所投与のために好適である配合物には、有効成分を風味付けされた基剤において、通常の場合にはスクロースおよびアラビアゴムまたはトラガカントにおいて含む口内錠;有効成分を不活性な基剤において、例えば、ゼラチンおよびグリセリン、または、スクロースおよびアラビアゴムなどにおいて含む香錠;ならびに、有効成分を好適な液体キャリアにおいて含む口腔洗浄剤が含まれる。
直腸投与のための配合物が、例えば、カカオバターまたはサリチル酸系化合物を含む好適なキャリアを伴う坐薬として提示される場合がある。
肺内投与または鼻腔投与のために好適である配合物は、粒子サイズが、例えば、0.1ミクロン〜500ミクロンの範囲にあり(0.5ミクロン、1ミクロン、30ミクロン、35ミクロンなどの増分ミクロンでの0.1ミクロンと500ミクロンとの間における粒子サイズを含む)、配合物は、肺胞嚢に到達するように鼻腔経路を介した迅速な吸入によって、または、口を介した吸入によって投与される。好適な配合物には、有効成分の水性または油性の溶液が含まれる。エアロゾル投与または乾燥粉末投与のために好適である配合物が従来の方法に従って調製される場合があり、そのような配合物は他の治療剤とともに、例えば、下記で記載されるような障害の処置または予防において従来から使用される化合物などとともに送達される場合がある。
膣投与のために好適である配合物が、有効成分に加えて、適切であることがこの技術分野では知られているようなキャリアを含有する膣座薬、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォームまたは噴霧配合物として提示される場合がある。
配合物は、単位用量容器または複数回用量容器において、例えば、密封されたアンプルおよびバイアルにおいて包装される場合があり、使用直前に注射用の無菌の液体キャリア(例えば、水など)の添加のみを必要とする冷凍乾燥(凍結乾燥)された状態で貯蔵される場合がある。即時注射用の溶液および懸濁物が、前記で記載される種類の無菌の粉末剤、顆粒剤および錠剤から調製される。好ましい単位投薬配合物が、有効成分の本明細書中上記で示されるような一日用量または単位的な一日亜用量あるいはそれらの適切な分割を含有するものである。
本発明はさらに、上記で定義されるような少なくとも1つの有効成分をそのための獣医学用キャリアと一緒に含む獣医学用組成物を提供する。獣医学用キャリアは、組成物を投与するという目的のために有用である物質であり、他の場合には獣医学の技術分野において不活性または許容可能であり、有効成分との適合性を有する固体、液体または気体状の物質である場合がある。これらの獣医学用組成物は、非経口によって、経口によって、または、どのような経路であれ、他の所望される経路によって投与される場合がある。
併用療法
式Iの化合物は、本明細書中に記載される疾患または障害を処置するために、例えば、過剰増殖性障害(例えば、がん)などを処置するために、単独または他の治療剤との組合せで用いられる場合がある。ある特定の実施形態において、式Iの化合物が、医薬用の併用配合物において、または、併用療法としての服用レジメンにおいて、抗過剰増殖特性を有する第2の化合物、または、過剰増殖性障害(例えば、がん)を処置するために有用である第2の化合物と組み合わされる。医薬用併用配合物または服用レジメンの第2の化合物は好ましくは、互いに悪影響を及ぼさないように式Iの化合物に対する相補的な活性を有する。そのような化合物が好適には、意図される目的のために効果的である量で組合せにおいて存在する。1つの実施形態において、本発明の組成物は、式Iの化合物を、例えば、本明細書中に記載されるような化学療法剤との組合せで含む。
併用療法が同時レジメンまたは逐次レジメンとして施される場合がある。逐次的に施されるときには、組合せが2回またはそれを超える投与で施される場合がある。組み合わされた投与には、共投与、別個の配合物または単一の医薬配合物を使用すること、および、いずれかの順での連続投与が含まれ、ただし、この場合、好ましくは、両方(またはすべて)の活性な薬剤が同時にそれらの生物学的活性を及ぼす期間が存在する。
上記の共投与された薬剤のいずれについてもその好適な投薬量は、現在使用される投薬量であり、また、新しく特定された薬剤および他の化学療法剤または化学療法処置の組み合わされた作用(相乗作用)のために少なくされる場合がある。
併用療法は「相乗作用」をもたらし、かつ、「相乗的」であると判明することがある。すなわち、有効成分が一緒に使用されるときに達成される効果が、化合物を別々に使用することから生じる効果の和よりも大きい。有効成分が、(1)共配合されて、投与されるか、または、組み合わされた単位投薬配合物で同時に送達されるときに、あるいは、(2)別個の配合物として交互によって、または並行して送達されるときに、あるいは、(3)何らかの他のジメンによってであるときに、相乗効果が得られる場合がある。交互療法で送達されるときには、化合物が、例えば、別個のシリンジでの異なる注射によって、別個のピルまたはカプセルによって、あるいは、別個の注入によって逐次的に投与さまたは送達されるときに、相乗効果が得られる場合がある。一般に、交互療法の期間中において、それぞれの有効成分の効果的な投薬量が逐次的に、すなわち、連続して投与され、これに対して、併用療法では、2つまたはそれを超える有効成分の効果的な投薬量が一緒に投与される。
抗がん治療の1つの特定の実施形態において、式Iの化合物あるいはその立体異性体、幾何異性体、互変異性体、溶媒和物、代謝産物または医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグが、他の化学療法剤、ホルモン剤または抗体薬剤(例えば、本明細書中に記載されるものなど)と組み合わされる場合があり、同様にまた、外科治療および放射線療法と組み合わされる場合がある。したがって、本発明による併用療法は、少なくとも1つの式Iの化合物あるいはその立体異性体、幾何異性体、互変異性体、溶媒和物、代謝産物または医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグを投与すること、および、少なくとも1つの他のがん処置方法を使用することを含む。式Iの化合物および他の医薬活性な化学療法剤の量ならびに投与の相対的時期が、所望される組み合わされた治療効果を達成するために選択されるであろう。
式Iの化合物の代謝産物
本発明の範囲にはまた、本明細書中に記載される式Iのインビボ代謝生成物が含まれる。そのような生成物は、例えば、投与された化合物の縮合、酸化、還元、加水分解、アミド化、脱アミノ化、エステル化、脱エステル化および酵素的切断などから生じる場合がある。したがって、本発明は、本発明の化合物を、その代謝生成物をもたらすために十分な期間にわたって哺乳動物と接触させることを含むプロセスによって産生される化合物を含めて、式Iの化合物の代謝産物を包含する。
代謝産物生成物が典型的には、本発明の化合物の放射能標識された(例えば、14Cまたは3H)同位体を調製すること、それを検出可能な用量(例えば、約0.5mg/kgを超える用量)で動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、サルなど)に、またはヒトに投与すること、代謝が生じるための十分な時間(典型的には約30秒〜30時間)を許すこと、および、その転換生成物を尿、血液または他の生物学的サンプルから単離することによって特定される。これらの生成物は、標識されるので容易に単離される(他の生成物が、代謝産物中に残存するエピトープと結合することができる抗体の使用によって単離される)。代謝産物の構造が、従来の様式で、例えば、MS分析、LC/MS分析またはNMR分析によって決定される。一般には、代謝産物の分析が、当業者には広く知られている従来の薬物代謝研究と同じ方法で行われる。これらの代謝産物生成物は、他の場合においてインビボで見出されない限り、本発明の化合物の治療的服用のための診断アッセイにおいて有用である場合がある。
製造品/キット
本発明の別の実施形態において、上記で記載される疾患および障害の処置のために有用である材料を含有する製造品または「キット」が提供される。キットは、式Iの化合物を含む容器を含む。キットはさらに、ラベルまたは添付文書を容器上に、または容器に付随して含む場合がある。用語「添付文書」は、治療用製造物の商用包装物において通例的に含まれる説明書で、そのような治療用製造物の使用に関する適応症、用法、投薬量、投与、禁忌および/または警告に関する情報を含有する説明書を示すために使用される。好適な容器には、例えば、ビン、バイアル、シリンジ、ブリスターパックなどが含まれる。容器は様々な材料(例えば、ガラスまたはプラスチックなど)から形成される場合がある。容器は、状態を処置するために効果的である式Iの化合物またはその配合物を収容する場合があり、また、無菌アクセスポートを有する場合がある(例えば、容器は、皮下注射針によって突き通すことができる栓を有する静脈内溶液バッグまたはバイアルである場合がある)。組成物における少なくとも1つの活性な薬剤が式Iの化合物である。ラベルまたは添付文書により、組成物が、選ばれた状態(例えば、がん)を処置するために使用されることが示される。加えて、ラベルまたは添付文書により、処置されるための患者が、障害(例えば、過剰増殖性障害など)を有する患者であることが示される場合がある。1つの実施形態において、ラベルまたは添付文書は、式Iの化合物を含む組成物が、異常な細胞成長から生じる障害を処置するために使用され得ることを示す。ラベルまたは添付文書はまた、組成物が、他の障害を処置するために使用され得ることを示す場合がある。代替において、または加えて、製造品はさらに、医薬的に許容され得る緩衝剤(例えば、注射用静菌水(BWFI)、リン酸塩緩衝化生理的食塩水、リンゲル液およびデキストロース溶液など)を含む第2の容器を含む場合がある。製造品はさらに、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、ニードルおよびシリンジを含めて、商業的観点および使用者観点から望ましい他の材料を含む場合がある。
キットはさらに、式Iの化合物、および、存在するならば、第2の医薬配合物の投与のための説明書を含む場合がある。例えば、キットが、式Iの化合物を含む第1の組成物と、第2の医薬配合物とを含むならば、キットはさらに、第1および第2の医薬組成物を、それを必要とする患者に同時に、逐次的に、または別々に投与するための説明書を含む場合がある。
別の実施形態において、キットは、式I〜式IIIの化合物の固体の経口形態物(例えば、錠剤またはカプセルなど)を送達するために好適である。そのようなキットは好ましくは、多数の単位投薬物を含む。そのようなキットは、前記多数の投薬物がそれらの意図された使用の順序で置かれているカードを含むことができる。そのようなキットの一例が「ブリスターパック」である。ブリスターパックは包装業界では広く知られており、医薬用の単位投薬形態物を包装するために広範囲に使用される。所望されるならば、記憶補助物が、例えば、数字、文字または他の印の形態で、あるいは、カレンダー挿入物により提供されることが可能であり、これにより、投薬物が投与され得る処置スケジュールにおける日が指定される。
1つの実施形態によれば、キットは、(a)式I〜式IIIの化合物が含有される第1の容器と、必要に応じて、(b)第2の医学配合物が含有される第2の容器とを含む場合があり、ただし、この場合、第2の医学配合物は、抗過剰増殖活性を有する第2の化合物を含む。代替において、または加えて、キットはさらに、医薬的に許容され得る緩衝剤(例えば、注射用静菌水(BWFI)、リン酸塩緩衝化生理的食塩水、リンゲル液およびデキストロース溶液など)を含む第3の容器を含む場合がある。キットはさらに、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、ニードルおよびシリンジを含めて、商業的観点および使用者観点から望ましい他の材料を含む場合がある。
ある特定の他の実施形態において、キットが式Iの組成物および第2の治療剤を含む場合、キットは、別個の組成物を含有するための容器(例えば、分割されたビンまたは分割されたホイルポケットなど)を含む場合があり、しかしながら、別個の組成物はまた、シリンジ(分割されない容器)に含有される場合がある。典型的には、キットは、別個の成分を投与するための説明書を含む。キット形態は、別個の成分が好ましくは、異なる投薬形態物(例えば、経口および非経口)で投与され、また、異なる投薬間隔で投与されるときに、あるいは、組合せの個々の成分の力価決定が処方医によって望まれるときには特に好都合である。
本発明は、本明細書中に提供されるStat3阻害剤を含有する1つまたは複数の投薬形態物を含有する包装材を含む製造品を包含し、ただし、この場合、包装材は、投薬形態物が、本明細書中に記載されるか、または本明細書中で参照される疾患、障害および/または状態のいずれかを有する対象、そのような疾患、障害および/または状態のいずれかを有することが疑われる対象、あるいは、そのような疾患、障害および/または状態のいずれかに対する素因を有する対象のために使用され得ることを示すラベルを有する。そのような投薬形態物には、例えば、非経口送達用および経口送達用の形態物および配合物のための錠剤、カプセル剤、溶液および懸濁物が含まれる。
本発明のさらに別の局面が、(a)単位投薬形態物における少なくとも1つのStat3阻害剤あるいはその塩または結晶ならびに医薬的に許容され得るキャリア、賦形剤および/または添加物と、(b)この単位形態物を含有するための手段とを含むキットである。本発明は、本明細書中に記載される疾患/状態を有効成分との組合せにより処置することに関連する局面を有するので、本発明はまた、別個の医薬組成物をキット形態において組み合わせることにも関連する。キットは、本明細書中に記載されるようなStat3阻害剤あるいはその塩または結晶を単独で、または、本明細書中に記載されるような第2の化合物と一緒でのどちらかで含む医薬組成物を含有する場合がある。
本発明の別の具体的な実施形態において、一日用量を1つずつ、それらの意図された使用の順序で分配するために設計されるディスペンサーが提供される。好ましくは、ディスペンサーには、記憶補助物が備わり、その結果、レジメンに関する遵守をさらに容易にするようにされる。そのような記憶補助物の一例が、分配された一日用量の数を示す機械的カウンターである。そのような記憶補助物の別の一例が、液晶読み取り表示装置につながれる電池式のマイクロチップメモリ、あるいは、例えば、前回の一日用量が摂取された日時を読み出す、かつ/または、次回の用量が摂取されることなる日時を思い出させる音響式の注意喚起シグナルである。
上記反応スキームは、本発明のStat3阻害剤(これには、Stat3阻害剤塩が含まれる場合がある)を調製するための例示的な反応スキームの概要を示す。
有機酸には、脂肪族カルボン酸および芳香族カルボン酸の両方が含まれ、例えば、当業者には知られている脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族トリカルボン酸、芳香族モノカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族トリカルボン酸および他の有機酸が含まれる。
脂肪族カルボン酸は飽和または不飽和である場合がある。好適な脂肪族カルボン酸には、2個〜約10個の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸が含まれる。
脂肪族モノカルボン酸には、飽和脂肪族モノカルボン酸および不飽和脂肪族モノカルボン酸が含まれる。飽和モノカルボン酸の例には、酢酸、プロピオン(propronic)酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸およびカプリン(caprynic)酸が含まれる。不飽和脂肪族モノカルボン酸の例には、アクリル酸、プロピオル酸、メタクリル酸、クロトン酸およびイソクロトン酸が含まれる。
脂肪族ジカルボン酸には、飽和脂肪族ジカルボン酸および不飽和脂肪族ジカルボン酸が含まれる。飽和脂肪族ジカルボン酸の例には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸およびセバシン酸が含まれる。不飽和脂肪族ジカルボン酸の例には、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸およびイタコン酸などが含まれる。
ある特定の局面において、結晶性のStat3阻害剤およびその塩が記載される。これらには、結晶性のStat3阻害剤マレアート、Stat3阻害剤フマラートおよびStat3阻害剤スクシナートが含まれる。種々のStat3阻害剤結晶物には、幾何学的構造、単位格子構造および構造的座標を含むものが含まれる。
高純度のStat3阻害剤塩、それらの調製方法、および、Stat3阻害剤塩を含む投薬形態物もまた記載される。
医薬組成物は、例えば、経口投与または非経口投与のために好適である1つまたは複数の医薬的に許容され得る賦形剤、キャリアおよび/または添加物を含む場合がある。
記載されたプロセスによって形成される生成物は実質的に純粋であり、すなわち、どのような他の化合物であっても実質的に含んでいない。好ましくは、生成物は10%未満の不純物を含有し、より好ましくは約5%未満の不純物を含有し、一層より好ましくは約1%未満の不純物を含有する。そのように形成される生成物はまた、好ましくは実質的に純粋であり、すなわち、10%未満の不純物を含有し、より好ましくは約5%未満の不純物を含有し、さらにより好ましくは約1%未満の不純物を含有する。本発明はまた、Stat3阻害剤ジスクシナートの実質的に純粋な無水結晶形態を包含する。用語「実質的に純粋な」は、Stat3阻害剤ジスクシナートの関連する無水結晶性形態のサンプルが、90%を超える1つだけの多型形態を含有し、より好ましくは95%を超える1つだけの多型形態を含有し、さらにより好ましくは99%を超える1つだけの多型形態を含有することを意味する。
用量
いくつかの実施形態において、本明細書中の化合物ならびにそれらの医薬的に許容され得る塩および溶媒和物の治療有効量は、式Iの化合物の約1mg〜約1000mgである場合がある。用量は、式I〜式IIIの化合物の約1mg、2mg、2.5mg、4mg、5mg、7.5mg、10mg、12.5mg、15mg、17,5mg、20mg、25mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、75mg、80mg、90mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1000mg、または、どのような用量であれ、そのような用量のいずれか2つの間に及ぶ用量である場合がある。
いくつかの実施形態において、典型的な用量が、化合物の1日あたり1回、2回または4回での約1mg〜約30.0mgである場合がある。いくつかの実施形態において、用量は、約0.05mg/kg、0.06mg/kg、0.07mg/kg、0.08mg/kg、0.09mg/kg、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1.0mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、2.0mg/kg、2.1mg/kg、2.2mg/kg、2.3mg/kg、2.4mg/kg、2.5mg/kg、2.6mg/kg、2.7mg/kg、2.9mg/kg、3.0mg/kg、3.1mg/kg、3.2mg/kg、3.3mg/kg、3.4mg/kg、3.5mg/kg、3.6mg/kg、3.7mg/kg、3.8mg/kg、3.9mg/kg、4.0mg/kg、5.0mg/kg、6.0mg/kg、7.0mg/kg、8.0mg/kg、9.0mg/kg、10.0mg/kg、11.0mg/kg、12.0mg/kg、13.0mg/kg、14.0mg/kg、15.0mg/kg、16.0mg/kg、17.0mg/kg、18.0mg/kg、19.0mg/kg、20.0mg/kg、22.5mg/kg、25.0mg/kg、27.5mg/kg、30.0mg/kg、32.5mg/kg、35.0mg/kg、37.5mg/kgまたは約40.0mg/kg、あるいは、どのような範囲であれ、これらの示された用量のいずれか2つの間における範囲である場合がある。いくつかの実施形態において、用量は、.08mg/kg〜約0.5mg/kg、約.08mg/kg〜約.24mg/kg、または、約.24mg/kg〜約.5mg/kgであろう。別の局面において、上記有効用量のSTAT−3阻害剤が1つまたは複数の用量で与えられる。例えば、治療的は、例えば、それぞれの用量について.08mg/kg、.24mg/kgまたは.5mg/kgである場合がある。
本明細書中における化合物ならびにそれらの医薬的に許容され得る塩および溶媒和物の一日用量レベルが、(単回用量または分割用量で)1日あたり約1mg〜1日あたり約5g、または1日あたり約50gまでである場合がある。他の治療有効用量範囲には、例えば、1日あたり約5mg〜約25mg、約5mg〜約15mg、約4mg〜約35mg、約35mg〜約50mg、約50mg〜約100mg、約100mg〜約200mg、約200mg〜約500mg、または、約500mg〜約1000mgが含まれる。
本明細書中に記載される化合物ならびにそれらの医薬的に許容され得る塩および溶媒和物はまた、本明細書中に記載される用量の1/10、1/50、1/100、1/200、1/300、1/400、1/500およびそれどころか1/1000の程度での用量において効果的であろう。
本発明のいくつかの実施形態において、治療有効量は、約0.01mg/L〜約20mg/Lの、約0.01mg/L〜約15mg/Lの、約0.1mg/L〜10mg/Lの、約0.5mg/L〜約9mg/Lの、約1mg/L〜約8mg/Lの、約2mg/L〜約7mg/Lの、または、約3mg/L〜約6mg/Lの、本明細書中に提供される化合物ならびにそれらの医薬的に許容され得る塩および溶媒和の血漿中濃度を引き起こすために効果的な量である。
本明細書中に記載される用量が単回用量または多回用量で投与される場合がある。例えば、様々な用量が、1日あたり1回、2回、3回、4回またはより多くの回数で、あるいは、1週間あたり1回、2回、3回、4回、5回または6回で投与される場合がある。
医師は、個々の患者のために最も好適であろう実際の投薬量を決定するであろうし、実際の投薬量は、特定の患者の年齢、体重および応答により変化するであろう。上記投薬量は平均的な場合の例示である;当然のことではあるが、より大きい投薬量範囲またはより少ない投薬量範囲が用いられて当然である個々の事例が存在する可能性があり、そのような投薬量範囲も本発明の範囲の範囲内である。
一般に、ヒトにおいては、本発明の化合物のIP投与が、好ましい経路である。典型的なヒトのためのがん処置における好ましい経口服用レジメンが、要求されるときには1日あたり約1mg〜約1000mgの化合物である。防止的用量はそれよりも少なく、典型的には1日あたり約0.3mg〜100mg〜約1mg〜50mgである。
獣医学的使用のために、本明細書中に提供される化合物、またはその獣医学的に許容され得る塩、またはいずれかの実体の獣医学的に許容され得る溶媒和物が、好適に許容され得る配合物として投与される。
したがって、本発明は、Stat3阻害剤を含む医薬組成物を提供する(Stat3阻害剤(これには、Stat3阻害剤塩が含まれる場合がある)を調製するための例示的な反応スキームの概要)。
本明細書中に提供される化合物、またはその医薬的に許容され得る塩、またはいずれかの実体の医薬的に許容され得る溶媒和物を、医薬的に許容され得る希釈剤またはキャリアと一緒に。
本発明はさらに、本明細書中に提供されるStat3阻害剤、またはその獣医学的に許容され得る塩、またはいずれかの実体の獣医学的に許容され得る溶媒和物を獣医学的に許容され得る希釈剤またはキャリアと一緒に含む獣医学用配合物を提供する。
本発明はまた、ヒト医薬品として使用されるための本明細書中に提供されるStat3阻害剤、またはその医薬的に許容され得る塩、またはいずれかの実体の医薬的に許容され得る溶媒和物、または前記のいずれかを含有する医薬組成物を提供する。
加えて、本発明は、動物医薬品として使用されるための本明細書中に提供されるStat3阻害剤化合物、またはその獣医学的に許容され得る塩、またはいずれかの実体の獣医学的に許容され得る溶媒和物、または前記のいずれかを含有する獣医学用組成物を提供する。
さらに別の局面において、本発明は、Stat3阻害剤が適応される医学的状態の治癒的処置または予防的処置のためのヒト医薬品を製造するための、本明細書中に提供されるStat3阻害剤、またはその医薬的に許容され得る塩、またはいずれかの実体の医薬的に許容され得る溶媒和物の使用を提供する。
本発明はまた、Stat3阻害剤が適応される医学的状態の治癒的処置または予防的処置のための動物医薬品を製造するための、本明細書中に提供されるStat3阻害剤化合物、またはその獣医学的に許容され得る塩、またはいずれかの実体の獣医学的に許容され得る溶媒和物の使用を提供する。
その上、本発明は、過剰増殖性疾患(例えば、がんなど)(これに限定されない)を含めて様々な疾患、障害および状態を全体的または部分的に処置および/または防止するための方法のための、本明細書中に提供される化合物および組成物の使用を包含する。
本発明はまた、医薬的に許容され得るキャリアと、治療有効量の本明細書中に提供されるようなStat3阻害剤とを含む医薬組成物(これには、錠剤およびカプセル剤ならびに他の経口送達用の形態物および配合物が含まれる)を包含する。
本発明は、治療有効量の本明細書中に提供されるStat3阻害剤を医薬品の製造において使用するための方法を包含する。そのような医薬品には、例えば、非経口送達用および経口送達用の形態物および配合物のための錠剤、カプセル剤、溶液および懸濁物が含まれる。そのような医薬品には、本明細書中に開示されるような、対象を処置するための医薬品が含まれる。
本発明の化合物、特にStat3阻害剤塩および水和物、例えば、開示された結晶形態でのStat3阻害剤塩および水和物もまた、別の抗がん剤とともに調製される場合がある。
本明細書中に提供されるようなそのようなStat3阻害剤、塩および/または溶媒和物についての様々な用量が、例えば、対象においてがんを阻害するために、腫瘍進行を遅らせるために、および/または、対象における多剤耐性を低下させるために、治療有効量で投与されることが想定される。
本発明は、本明細書中に提供されるStat3阻害剤を、グルタチオン輸送を対象の身体において低下させるために効果的な量で含む配合物を包含する。そのような配合物には、例えば、非経口送達用および経口送達用の形態物および配合物のための錠剤、カプセル剤、溶液および懸濁物が含まれる。
Stat3阻害剤の投与方法
本発明は、本発明のStat3阻害剤が、抗腫瘍活性を有する強力かつ選択的なStat3阻害剤であるという驚くべき、しかも予想外の発見に基づく。加えて、本発明の様々な局面が、本発明の強力かつ選択的なStat3阻害剤は、例えば、がん細胞の転移を抑制し、かつ/または防止するためにがんを処置することができるという驚くべき発見に基づく。
本開示の目的のために、下記の定義は全体として、技術的用語を定義するために、また、保護が請求項において求められる事柄の構成の範囲を定義するために使用されるものとする。
本開示は、1つまたは複数の有効用量のStat3阻害剤を、所望される治療効果を達成するために所定の継続期間にわたって対象に投与することによる処置方法を提供する。対象は好ましくは、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌなどの動物(これらに限定されない)を含めて、哺乳動物であり、最も好ましくはヒトである。
様々な送達システムが知られており、これらを、Stat3阻害剤を本発明の方法(例えば、リポソームにおけるカプセル化、マイクロ粒子またはマイクロカプセル)に従って投与するために使用することができる。導入方法には、局所的経路、皮下経路、皮内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、静脈内経路、皮下経路、鼻腔内経路、硬膜外経路および経口経路が含まれるが、これらに限定されない。ある特定のがんを処置するために、局所的送達、皮下送達、皮内送達および全身的送達が特に有効である可能性がある。
Stat3阻害剤は、どのような経路であれ、好都合な経路によって投与することができ、例えば、注入またはボーラス注射によって、上皮内層または粘膜皮膚内層(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜および腸粘膜など)を介した吸収によって投与することができ、また、他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与される場合がある。投与は全身的または局所的であることが可能である。加えて、Stat3阻害剤を含む医薬組成物を、脳室内注射およびクモ膜下腔内注射を含めて、どのような経路であれ、好適な経路によって中枢神経系に導入することが望ましい場合がある;脳室内注射が、例えば、リザーバー(例えば、Ommayaリザーバーなど)に取り付けられる脳室内カテーテルによって容易にされる場合がある。肺投与もまた、例えば、吸入器またはネブライザーの使用、および、エアロゾル化剤を用いた配合によって用いることができる。Stat3阻害剤を含む医薬組成物を、処置を必要とする領域に対して局所的に投与することが望ましい場合がある;このことが、例えば、限定としてではなく、局所的適用によって、注射によって、カテーテルの手段によって、座薬の手段によって、または、インプラント(ただし、前記インプラントは、膜(例えば、silastic(商標)膜など)または繊維を含めて、多孔性材料、非多孔性材料またはゼラチン様材料のものである)の手段によって達成される場合がある。
Stat3阻害剤を投与するそれでもなお他の様式では、制御放出シスステムでの送達が伴う。ある特定の実施形態において、ポンプが使用される場合がある(Langer、上掲;Sefton、CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.、14:201(1987);Buchwaldら、Surgery、88:507(1980);Saudekら、N.Engl.J.Med.、321:574(1989)を参照のこと)。加えて、ポリマー状材料を使用することができ(Medical Applications of Controlled Release、LangerおよびWise(編)、CRC Pres、Boca Raton、Fla.(1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance、SmolenおよびBall(編)、Wiley、N.Y.(1984);RangerおよびPeppas、J.Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.、23:61(1983)を参照のこと;また、Levyら、Science、228:190(1985);Duringら、Ann.Neurol.、25:351(1989);Howardら、J.Neurosurg.、71:105(1989)も参照のこと)、または、制御放出システムを治療標的の近傍に、すなわち、脳に置くことができ、したがって、これは、全身用量のほんの一部を必要とするだけである(例えば、Goodson、Medical Applications of Controlled Release、上掲、第2巻、pp.115−138(1984)を参照のこと)。他の制御放出システムが、Langer(Science、249:1527−1533(1990))による総説において議論される。
STAT−3阻害剤を含む組成物の形態および投薬量
本明細書中で使用されるように、がん処置については、注射のために好適である凍結乾燥配合物および液体配合物が特に有効である。本発明の実施形態において使用されるためのStat3阻害剤の好適な投薬形態物は、本来的に非毒性かつ非治療的である生理学的/医薬的に許容され得るキャリアを包含する。そのようなキャリアの例には、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミンなど)、緩衝剤物質(例えば、リン酸塩など)、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の不完全グリセリド混合物、水、塩または電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二カリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩など)、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、P6N(Neumedicines、Pasadena、Ca.)およびPEGが含まれる。Stat3阻害剤の局所用形態物またはゲル型形態物のためのキャリアには、多糖(例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロースまたはメチルセルロースなど)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリラート、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、PEGおよびウッドワックス(wood wax)アルコールが含まれる。すべての投与のために、従来のデポー形態物が好適に使用される。そのような形態物には、例えば、マイクロカプセル、ナノカプセル、リポソーム、プラスター、吸入形態物、鼻腔スプレー物、舌下錠剤および持続放出調製物が含まれる。
持続放出調製物の好適な例には、ポリペプチドを含有する固体の疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが含まれ、ただし、この場合、そのようなマトリックスは形状化品(例えば、フィルムまたはマイクロカプセル)の形態である。持続放出マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、Langerら(上掲)およびLanger(上掲)によって記載されるようなポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリラート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸および.ガンマ.−エチル−L−グルタマートのコポリマー(Sidmanら、上掲)、非分解性のエチレン−酢酸ビニル(Langerら、上掲)、分解性の乳酸−グリコール酸コポリマー(例えば、Lupron Depot(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドから構成される注射可能な微小球体))およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が含まれる。ポリマー(例えば、エチレン−酢酸ビニルおよび乳酸−グリコール酸など)は分子の放出を100日超にわたって可能にするが、ある特定のヒドロゲルはタンパク質をより短い期間にわたって放出する。カプセル封入されたStat3阻害剤が長期間にわたって体内に留まるとき、カプセル封入されたStat3阻害剤は、37℃で水分にさらされる結果として変性または凝集し、その結果、生物学的活性の喪失および免疫原性における起こり得る変化が生じる場合がある。様々な合理的戦略を、関与する機構に依存して、安定化のために考案することができる。例えば、凝集機構が、チオ−ジスルフィド交換を介した分子間のS−S結合形成であると認められるならば、安定化が、スルフヒドリル残基を修飾すること、酸性溶液から凍結乾燥すること、水分含有量を制御すること、適切な添加物を使用すること、および、特定のポリマーマトリックス組成を開発することによって達成される場合がある。
数日間またはそれよりも長い期間にわたる投与の場合には、状態に依存して、処置が、疾患症状の所望される抑制が生じるまで持続される。しかしながら、他の投薬レジメンが有用である場合がある。この治療の進行が従来の技術およびアッセイによって容易にモニターされる。
Stat3阻害剤を含む治療配合物が、Stat3阻害剤(これは、所望される程度の純度を有する)を凍結乾燥ケークまたは水溶液の形態で、必要に応じた生理学的に許容され得るキャリア、賦形剤または安定剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、Osol,A.編(1980))と混合することによって貯蔵のために調製される。許容され得るキャリア、賦形剤または安定剤は、用いられ投薬量および濃度においてレシピエントに対して非毒性であり、これらには、緩衝剤、例えば、リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸など;酸化防止剤(アスコルビン酸を含む);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなど;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドンなど;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリシンなど;単糖、二糖および他の炭水化物(グルコース、マンノースまたはデキストリンを含む);キレート化剤、例えば、EDTAなど;糖アルコール、例えば、マンニトールまたはソルビトールなど;塩形成対イオン、例えば、ナトリウムなど;ならびに/あるいは非イオン性界面活性剤、例えば、Tween(登録商標)、Pluronics(商標)またはポリエチレングリコール(PEG)などが含まれる。
用語「緩衝剤」は、本明細書中で使用される場合、医薬調製物のpHを安定化させる医薬的に許容され得る賦形剤を意味する。好適な緩衝剤がこの技術分野では広く知られており、また、文献において見出され得る。医薬的に許容され得る緩衝剤には、ヒスチジン緩衝剤、クエン酸緩衝剤、コハク酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、アルギニン緩衝剤またはそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。上記緩衝剤は一般には、約1mM〜約100mMの量で、約5mM〜約50mMの量で、また、約10mM〜20mMの量で使用される。緩衝化された溶液のpHは、少なくとも4.0、少なくとも4.5、少なくとも5.0、少なくとも5.5または少なくとも6.0であることが可能である。緩衝化された溶液のpHは、7.5未満、7.0未満または6.5未満であることが可能である。緩衝化された溶液のpHは、この技術分野において知られている酸または塩基(例えば、塩酸、酢酸、リン酸、硫酸およびクエン酸、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム)を用いて約4.0〜約7.5、約5.5〜約7.5、約5.0〜約6.5、および、約5.5〜約6.5であることが可能である。pHを記載するときに本明細書中で使用される場合、「約」はプラス0.2pH単位またはマイナス0.2pH単位を意味する。
本明細書中で使用される場合、用語「界面活性剤」には、タンパク質配合物を撹拌および剪断のような機械的応力から保護するために使用される医薬的に許容され得る賦形剤が含まれ得る。医薬的に許容され得る界面活性剤の例には、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(Tween)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(Brij)、アルキルフェノールポリオキシエチレンエーテル(Triton−X)、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー(Poloxamer、Pluronic)およびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)が含まれる。好適な界面活性剤には、ポリオキシエチレンソルビタン−脂肪酸エステルが含まれ、例えば、ポリソルベート20(これはTween20(登録商標)の商標で販売される)およびポリソルベート80(これはTween80(登録商標)の商標で販売される)などが含まれる。好適なポリエチレン−ポリプロピレンコポリマーが、Pluronic(登録商標)F68またはPoloxamer188(登録商標)の名称で販売されるものである。好適なポリオキシエチレンアルキルエーテルが、商標Brij(登録商標)で販売されるものである。好適なアルキルフェノールポリオキシエチレンエーテルが、商標Triton−Xで販売されるものである。ポリソルベート20(Tween20(登録商標))およびポリソルベート80(Tween80(登録商標))が使用されるとき、それらは一般には、約0.001%〜約1%の濃度範囲で、約0.005%〜約0.2%の濃度範囲で、また、約0.01%〜約0.1%w/v(重量/体積)の濃度範囲で使用される。
本明細書中で使用される場合、用語「安定剤」には、活性な医薬成分および/または配合物を、製造期間中、貯蔵期間中および適用期間中の化学的および/または物理的な分解から保護する医薬的に許容され得る賦形剤が含まれ得る。タンパク質医薬品の化学的分解経路および物理的分解経路が、Clelandら、Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.、70(4):307−77(1993);Wang、Int.J.Pharm.、7S5(2):129−88(1999);Wang、Int.J.Pharm.、203(1−2):1−60(2000);およびChiら、Pharm.Res.、20(9):1325−36(2003)によって総説される。安定剤には、下記で定義されるような糖、アミノ酸、ポリオール、シクロデキストリン(例えば、ヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリン、スルホブチルエチル−ベータ−シクロデキストリン、ベータ−シクロデキストリン)、ポリエチレングリコール(例えば、PEG3000、PEG3350、PEG4000、PEG6000)、アルブミン、ヒト血清アルブミン(HSA)、ウシ血清アルブミン(BSA)、塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム)、キレーター(例えば、EDTA)が含まれるが、これらに限定されない。本明細書中上記で述べられるように、安定剤は、約10mM〜約500mMの量で、約10mM〜約300mMの量で、または、約100mM〜約300mMの量で配合物に存在させることができる。いくつかの実施形態において、例示的なSTAT−3阻害剤を、当該STAT−3阻害剤が安定である適切な医薬配合物に溶解することができる。
Stat3阻害剤はまた、例えば、コアセルベーション技術によって、または界面重合によって調製されるマイクロカプセル(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースマイクロカプセルまたはゼラチン−マイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリラート)マイクロカプセル)において、コロイド薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミン微小球体、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)において、あるいは、マクロエマルションにおいて封入される場合がある。そのような技術が、Remington’s Pharmaceutical Sciences(上掲)に開示される。
インビボ投与のために使用されるためのStat3阻害剤は無菌でなければならない。このことが、無菌のろ過膜に通すろ過を凍結乾燥および再構成の前または後で行うことによって容易に達成される。Stat3阻害剤は通常、凍結乾燥された形態で、または溶液で貯蔵されるであろう。治療用のStat3阻害剤組成物は一般には、無菌アクセスポートを有する容器に入れられ、例えば、皮下注射針によって突き通すことができる栓を有する静脈内溶液バッグまたはバイアルに入れられる。
局所適用されるとき、Stat3阻害剤は好適には、他の成分(例えば、キャリアおよび/または補助剤など)と組み合わされる。そのような他の成分の性質に関しては何ら制限はなく、ただし、それらはそれらの意図された投与のために生理学的に許容可能かつ有効でなければならず、また、組成物の有効成分の活性を損なう可能性がない。好適なビヒクルの例には、精製されたコラーゲンを伴って、または伴うことなく、軟膏、クリーム、ゲルまたは懸濁物が含まれる。組成物はまた、好ましくは液体形態または半液体形態で、経皮パッチ、絆創膏および包帯に含浸される場合がある。
ゲル配合物を得るために、液体組成物に配合されるStat3阻害剤は、局所適用されるための適正な粘度のゲルを形成するための有効量の水溶性の多糖または合成ポリマー(例えば、PEGなど)と混合される場合がある。使用されることがある多糖には、例えば、セルロース誘導体、例えば、エーテル化されたセルロース誘導体(アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースおよびアルキルヒドロキシアルキルセルロース、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースなどを含む);デンプンおよび分画化デンプン;寒天;アルギン酸およびアルギン酸塩;アラビアゴム;プルラン;アガロース;カラギーナン;デキストラン;デキストリン;フルクタン;イヌリン;マンナン;キシラン;アラビナン;キトサン;グリコーゲン;グルカン;ならびに合成バイオポリマー;同様にまた、ガム、例えば、キサンタンガムなど;グアーガム;ローカストビーンガム;アラビアゴム;トラガカントガム;およびカラヤゴム;ならびにそれらの誘導体および混合物が含まれる。本明細書中における好ましいゲル化剤は、生物学的系に対して不活性であり、非毒性であり、調製が簡便であり、かつ、粘性が低すぎることがなく、または大きすぎることがなく、また、内部に保持されるStat3阻害剤分子を脱安定化することがないものである。
好ましくは、多糖は、エーテル化されたセルロース誘導体であり、より好ましくは、十分に定義され、精製され、米国薬局方に収載されるセルロース誘導体であり、例えば、メチルセルロース、ならびに、ヒドロキシアルキルセルロース誘導体、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどである。本明細書中で最も好ましいものがメチルセルロースである。
ゲル化のために有用であるポリエチレングリコールは典型的には、適正な粘度を得るための低分子量PEGと高分子量PEGとの混合物である。例えば、分子量が400〜600のPEGと、分子量が1500のPEGとの混合物が、ペーストを得るための適正な比率で混合されるとき、この目的のために効果的であると思われる。
用語「水溶性(の)」は、多糖およびPEGに対して適用される場合、コロイド状の溶液および分散物を包含することが意味される。一般に、セルロース誘導体の溶解性がエーテル基の置換の程度によって決定され、本明細書中において有用である安定化誘導体は、誘導体を水溶性にするために、セルロース鎖におけるアンヒドログルコース単位あたり十分な量のそのようなエーテル基を有しなければならない。アンヒドログルコース単位あたり少なくとも0.35個のエーテル基のエーテル置換の程度が一般には十分である。加えて、セルロース誘導体はアルカリ金属塩(例えば、Li塩、Na塩、K塩またはCs塩)の形態である場合がある。
メチルセルロースがゲルにおいて用いられるならば、好ましくは、メチルセルロースはゲルの約2%〜5%を含み、より好ましくはゲルの約3%を含み、Stat3阻害剤が、溶解性の限界に基づいて、1mlのゲルあたり約5mg〜100mgの量で、または、(PBSまたはH2O(H20)における)0.5%のDMSOにおいて0.5mMまででの量で存在する。
治療的に用いられるためのStat3阻害剤の有効量は、例えば、治療対象物、投与経路および患者の状態に依存するであろう。したがって、治療専門家が、最適な治療効果を得るために要求されるように投薬量を力価決定し、投与経路を変更することが必要となるであろう。典型的には、臨床医は、Stat3阻害剤を、所望の効果を達成する投薬量に達するまで投与するであろう。ある特定の実施形態において、適切な服用が、罹患領域の表面積あたり投与されるStat3阻害剤の量に基づいて決定され得る。
「処置施与時の近く」は、Stat3阻害剤を、処置を施す前および/または処置を施した後のどちらかで、どのような期間であれ、妥当な期間において、例えば、約1ヶ月、約3週間、約2週間、約1週間、数日、約120時間、約96時間、約72時間、約48時間、約24時間、約20時間、数時間、約1時間または数分などにおいて投与することを示す。処置施与時の近くはまた、処置およびStat3阻害剤の同時またはほぼ同時のどちらかでの投与、すなわち、数分以内〜1日以内での投与を示す場合がある。
「化学療法」は、医療技術分野において現在知られている、または開発されることになる天然薬剤または合成薬剤を含むどのような治療法であっても示す。化学療法の例には、現在利用可能である数多くのがん薬物が含まれる。しかしながら、化学療法にはまた、どのような薬物であれ、疾患状態を処置するために意図される薬物(天然物または合成物)が含まれる。本発明のある特定の実施形態において、化学療法は、疾患状態を処置するために意図されるいくつかの最先端薬物を投与することを含む場合がある。例には、頭部の局所的に進行した扁平上皮癌腫の患者のための、ドセタキセル、シスプラチンおよび5−フルオロウラシルとの併用化学療法(Tsukuda,M.ら、Int J Clin Oncol、2004、June;9(3):161−6)、ならびに、不応性および再発した緩慢性リンパ腫におけるフルダラビンおよびベンダムスチンとの併用化学療法(Konigsmann Mら、Leuk Lymphoma、2004;45(9):1821−1827)が含まれる。
本明細書中で使用される場合、治療的または偶発的なイオン化放射線の例示的な供給源には、例えば、アルファ源、ベータ源、ガンマ源、x線源および中性子源が含まれ得る。
「放射線療法」は、どのような形態の放射線でも、疾患状態を処置するために使用されるどのような治療法であっても示す。放射線療法のための放射線を生じさせる装置は、現在利用可能なそのような装置、または、将来において利用可能となるそのような装置のどちらでもある。
「化学的防護または放射線防護」は、疾患状態を標的とするために意図される処置の関連した造血毒性からの保護、または、疾患状態を標的とするために意図される処置の関連した造血毒性における明らかな低下を示す。
「固形腫瘍」は一般には、血液、骨髄またはリンパ系とは異なる身体組織のがんの存在を示す。
本発明が次に、下記の様々な実施例を参照することにより記載される。これらの実施例は例示目的だけのために提供されており、本発明はこれらの実施例に限定されるのではなく、むしろ、本明細書中に提供される教示の結果として明白であるすべての変化を包含する。
下記の実施例は、式1〜式IIIの強力かつ選択的なSTAT−3阻害剤が、がんおよび他の増殖性疾患を処置するための効力を有することを明らかにする。本開示の様々な局面および実施形態が、ある特定のSTAT−3阻害剤配合物が対象に投与されたとき、該STAT−3阻害剤配合物は、驚くべきかつ予想外の有用性および効力を有するという予想外の発見から生じている。
本発明の治療効果的なSTAT−3阻害剤は、上記で概略される合成スキームに従って調製することができる。しかしながら、本発明はその方法に限定されない。組成物もまた、構造的に関連した化合物について文献に記載されるように調製される場合がある。
実施例1:SH5−07およびSH4−54によるStat3のDNA結合活性の選択的阻害。
経口により生物学的に利用可能なStat3阻害剤として使用されるためのSH5−07およびSH4−54のインビトロおよびインビボにおける特徴づけが、ヒト乳がんおよび非小細胞肺がんのマウス異種移植片の成長を阻害する能力を含めて、本明細書により記載される。
核磁気共鳴(NMR)構造分析は様々な薬剤のStat3との相互作用の生物物理学的研究を裏付けており、また、より注目すべきことに、SH4−54がSH2ドメインおよびDNA結合ドメインの両方の内部において3つの部位でStat3と相互作用することを明らかにしており、このことから、以前には不明であったStat3タンパク質における別の結合部位が示唆される。異常に活性なStat3を含んでいるモデルのヒト神経膠腫細胞株(U251MGおよびU373MG)、乳がん細胞株(MDA−MB−231)、非小細胞肺がん細胞株(A549)および前立腺がん細胞株(DU145)において、SH5−07またはSH−4−54は、構成的なStat3リン酸化、DNA結合活性または転写活性を時間依存的様式で1μM〜10μMの低い濃度において阻害した。
対照的に、両方の薬剤は、Stat1またはStat5のDNA結合活性に対する影響、あるいは、pSrc、pJanusキナーゼ(JAK)2、pShc、pAktおよびpERK1/2MAPK(細胞外シグナル制御キナーゼ/マイトジェン活性化プロテインキナーゼ)のレベルに対する影響、あるいは、Stat3非依存性の転写事象に対する影響をほとんど有していなかったか、または全く有していなかった。さらに、SH5−07またはSH−4−54は細胞の生存性および成長を選択的に阻害し、また、細胞周期の停止およびアポトーシスを誘導し、また、異常なStat3活性を含んでいるヒト乳がん細胞および神経膠腫細胞のインビトロでの遊走を阻害した。SH5−07またはSH4−54によるヒト神経膠腫細胞または乳がん細胞の処理は、Bcl−2、Bcl−xL、サイクリンD1、c−Mycおよびサバイビンを含めて、既知のStat3調節される遺伝子の発現をダウンレギュレーションした。SH5−07の経口胃管投与はヒト神経膠腫異種移植片の成長を阻害する。本明細書中に記載される研究により、SH5−07およびSH4−54が、抗腫瘍細胞効果をインビトロにおいて誘導し、抗腫瘍効果をインビボにおいて誘導する強力かつ選択的なStat3阻害剤として特定される。
SH5−07およびSH4−54によるStat3のDNA結合活性の選択的阻害。
v−Src形質転換されたマウス線維芽細胞(NIH3T3/v−Src)から調製される活性化Stat3を含有する核抽出物を、増大する濃度のSH5−07またはSH4−54と室温で30分間プレインキュベーションし、その後、Stat3およびStat1に結合する放射能標識された高親和性sis誘導性エレメント(hSIE)プローブとインキュベーションし、電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)分析に供した(これらはいつも行われる通りであった)。Siddiqueeら、Selective chemical probe inhibitor of Stat3,identified through structure−based virtual screening,induces antitumor activity、Proc Natl Acad Sci USA、104:7391−7396(2007);Siddiqueeら、An Oxazole−Based Small−Molecule Stat3 Inhibitor Modulates Stat3 Stability and Processing and Induces Antitumor Cell Effects、ACS Chem.Biol.、2:787−798(2007);Zhangら、Orally bioavailable small−molecule inhibitor of transcription factor Stat3 regresses human breast and lung cancer xenografts、Proc Natl Acad Sci USA、109:9623−8(2012年6月12日)を参照のこと。
細胞および試薬。
正常なマウス線維芽細胞(NIH3T3)、および、v−Srcによって形質転換された対応体(NIH3T3/v−Src)、または、ヒト上皮増殖因子(EGF)受容体を過剰発現する対応体(NIH3T3/hEGFR)、ならびに、ヒト乳がん細胞(MDA−MB−231)および膵臓がん細胞(Panc−1)はすべてが以前に報告されている。Turksonら、Phosphotyrosyl peptides block Stat3−mediated DNA−binding activity,gene regulation and cell transformation、J.Biol.Chem.、276:45443−45455(2001);Johnsonら、Overexpressed pp60c−src can induce focus formation without complete transformation of NIH 3T3 cells、Mol.Cell.Biol.、5:1073−1083(1985);Yuら、Enhanced DNA−binding activity of a Stat3−related protein in cells transformed by the Src oncoprotein、Science、269:81−83(1995);Garciaら、Constitutive activation of Stat3 by the Src and JAK tyrosine kinases participates in growth regulation of human breast carcinoma cells、Oncogene、20:2499−2513(2001)を参照のこと。Stat3依存性のルシフェラーゼレポーターpLucTKS3、および、c−fosプロモーターの血清応答エレメント(SRE)によって駆動されるStat3非依存性の対応体(pLucSRE)は以前に報告されている(15、33)。細胞を、10%の熱不活化ウシ胎児血清を含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)において成長させた。Stat3、pY705Stat3、Src、pY416Src、Erk1/2およびpErk1/2に対する抗体が、Cell Signaling Technology(Danvers、MA)から得られる。
核抽出物の調製、ゲルシフトアッセイおよびデンシトメトリー分析。
核抽出物の調製および電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)を以前に記載されたように行った。Yuら、1995;Turksonら、Stat3 activation by Src induces specific gene regulation and is required for cell transformation、Mol.Cell.Biol.、18:2545−2552(1998)。使用される32P標識されたオリゴヌクレオチドプローブは、Stat1およびStat3と結合するhSIE(c−fos遺伝子(m67変化体)に由来する高親和性sis誘導性エレメント、5’−AGCTTCATTTCCCGTAAATCCCTA)と、Stat1およびStat5が結合するためのMGFe(ウシカゼイン遺伝子プロモーターに由来する乳腺因子エレメント、5’−AGATTTCTAGGAATTCAA)とであった。Wagnerら、The SIF binding element confers sis/PDGF inducibility onto the c−fos promoter、EMBO J.、9:4477−4484(1990);Gouilleuxら、Prolactin and interleukin−2 receptors in T lymphocytes signal through a MGF−STAT5−like transcription factor、Endocrinology、136:5700−5708(1995)。示される場合を除き、核抽出物を化合物と室温で30分間プレインキュベーションし、その後、放射能標識されたプローブと30℃で30分間インキュベーションし、その後、EMSA分析に供した。DNA結合活性に対応するバンドを、ImageQuantを使用して化合物のそれぞれの濃度について走査し、定量化し、化合物の濃度に対してコントロール(ビヒクル)のパーセントとしてプロットし、このプロットからIC50値を得た(これらは以前に報告された通りであった)。Turksonら、A novel platinum compound inhibits constitutive Stat3 signaling and induces cell cycle arrest and apoptosis of malignant cells、J Biol Chem、280:32979−32988(2005)。
これらの研究の結果から、Stat3のDNA結合活性がSH5−07およびSH4−54の両方によって用量依存的様式で阻害されたことが示され(図1Bの(i)および(ii))、平均IC50値がそれぞれ、3.9±0.6μMおよび4.4±0.3μMであり、このことは、BP−1−102の値(6.8μMのIC50)で割って1.5倍〜2倍の改善を表している。Zhangら(2012)。対照的に、両方の化合物は、EGF刺激されたNIH3T3/hEGFR(ヒト上皮増殖因子受容体(EGFR)を過剰発現するマウス線維芽細胞)から調製される活性化されたStat1およびStat5を含有する核抽出物と、乳腺因子エレメント(MGFe)プローブとを使用するEMSA分析による類似するDNA結アッセイ(これは以前に行われた通りであった)において、Stat1:Stat1またはStat5:Stat5のDNA結合活性に対する最小限の影響を示した(図1C)。Siddiqueeら、Selective chemical probe inhibitor of Stat3,identified through structure−based virtual screening,induces antitumor activity、Proc Natl Acad Sci USA、104:7391−7396(2007)。したがって、これらの結果はさらに、本発明の化合物がSTAT−3の強力かつ選択的な阻害剤であることを明らかにする。
表面プラズモン共鳴(SPR)分析もまた、Stat3に対するSTAT−3阻害剤の影響をさらに調べるために行った。結果は、SH4−54がStat3に結合し、親和性(KD)が2.4であったことを示した(図4A)。核磁気共鳴(NMR)アプローチを、Stat3に対するSH4−54の結合を確認するためにさらに使用した。DMSO中の200μMのSH4−54の1D 1H NMRスペクトルは、有効濃度が沈殿のためにそれぞれの場合において20μMであることを示唆する(補足図S1)。イソロイシン(Ile)残基の1Hおよび13Cの化学シフトに基づく、Stat3の遊離状態およびSH4−54との結合状態の比較により、Ile634およびIle597、ならびに、Ile368、Ile386、Ile439でのStat3のSH2ドメインおよびDNA結合ドメインにおける変化の証拠が示される(図4B)。
実施例2:構成的Stat3活性化の阻害。
Stat3が、ヒト乳がん細胞、神経膠腫細胞、前立腺がん細胞および膵臓がん細胞を含めて様々な悪性細胞において構成的に活性化される。Yue&Turkson、Targeting STAT3 in cancer:how successful are we?、Expert Opin Investig Drugs、18:45−56(2009);Turkson、STAT proteins as novel targets for cancer drug discovery、Expert Opin Ther Targets、8:409−422(2004)。核抽出物調製物のEMSA分析により、ヒト神経膠腫細胞(U251MGおよびU373MG)、乳がん細胞(MDA−MB−231)、非小細胞肺がん細胞(A549)、前立腺がん細胞(DU145)および膵臓がん細胞(Panc−1)、または、v−Src形質転換されたマウス形質転換線維芽細胞(NIH3T3/v−Src)のSH5−07またはSH4−54による処理はStat3のDNA結合活性を用量依存的様式(図2A)および時間依存的様式(図2B)で阻害することが示される。構成的Stat3活性の阻害の証拠が1μMの濃度において見られ(図2A)、また、1時間もの早い処理において見られる(図2B)。並行して、全細胞溶解物のSDS−PAGE/ウエスタンブロッティング分析では、U251MG細胞、U373MG細胞およびMDA−MB−231細胞の類似する処理はpY705Stat3を時間依存的および用量依存的な様式で有意に阻害したことが示された(図2Cおよび図2D)。揺り戻しが、Stat3のDNA結合活性(図2B)およびpY705Stat3(図2D)におけるいくつかの場合において6時間およびそれ以降で認められた。この観測結果の背後にある機構は現時点では不明であり、部分的には化合物の低下した細胞内レベルに起因するかもしれない。しかしながら、免疫ブロッティング研究では、9時間にまで達する持続した阻害が、5μMのSH5−07により1回処理され、5時間で再投薬されたU251MG細胞において示された(図2E)。
ルシフェラーゼレポーター研究を、Stat3転写活性に対するSH5−07の影響をさらに評価するために行った。この場合、正常なマウスNIH3T3線維芽細胞を、Stat3依存性ルシフェラーゼレポーター(pLucTKS3)と、v−Srcをコードするベクターとにより一過性に共トランスフェクションした。Turksonら、Novel peptidomimetic inhibitors of signal transducer and activator of transcription 3 dimerization and biological activity、Mol Cancer Ther、3:261−269(2004);Turksonら、Phosphotyrosyl peptides block Stat3−mediated DNA−binding activity,gene regulation and cell transformation、J.Biol.Chem.、276:45443−45455(2001);Turksonら、Stat3 activation by Src induces specific gene regulation and is required for cell transformation、Mol.Cell.Biol.、18:2545−2552(1998);Turksonら(1999)、Requirement for Ras/Rac1−Mediated p38 and c−Jun N−Terminal Kinase Signaling in Stat3 Transcriptional Activity Induced by the Src Oncoprotein、Mol.Cell.Biol.、19:7519−7528(1999)。Stat3特異的ルシフェラーゼレポーターpLucTKS3のv−Srcによる誘導(図2F(i)、レーン2対レーン1)が、3μMまたは5μMのSH5−07による処理によって有意(p<0.01)に阻害された(図2F(i)、レーン3およびレーン4対レーン2)。対照的に、Stat3非依存性ルシフェラーゼレポーターpLucSREおよびv−Srcにより一過性に共トランスフェクションされた正常なNIH3T3線維芽細胞の類似した処理は、pLucSREの誘導に対する弱化影響が全くなかった(図2F(ii))。Turksonら、Novel peptidomimetic inhibitors of signal transducer and activator of transcription 3 dimerization and biological activity、Mol Cancer Ther、3:261−269(2004);Turksonら、Stat3 activation by Src induces specific gene regulation and is required for cell transformation、Mol.Cell.Biol.、18:2545−2552(1998);Turksonら、Requirement for Ras/Rac1−Mediated p38 and c−Jun N−Terminal Kinase Signaling in Stat3 Transcriptional Activity Induced by the Src Oncoprotein、Mol.Cell.Biol.、19:7519−7528(1999);Turksonら、Phosphotyrosyl peptides block Stat3−mediated DNA−binding activity,gene regulation and cell transformation、J.Biol.Chem.、276:45443−45455(2001)。そのうえ、免疫ブロッティング研究では、Stat3活性化を阻害する濃度におけるSH5−07によるU251MG細胞およびMDA−MB−231細胞の処理は、pY1068EGFR、pY416Src、pJak2、pShc、pErk1/2およびpS473Aktまたはそれらの発現レベルに対する影響がほとんどなかったことが示された(図2G)。したがって、SH5−07はStat3の構成的活性化を選択的に阻害する。
実施例3:増殖因子受容体によるSTAT3会合の破壊。
SH5−07およびSH4−54がStat3リン酸化を阻害することを明らかにするために、EGF受容体とStat3との間における相互作用を、共免疫沈殿(co−IP)分析および免疫ブロッティング分析を行うことによって詳しく調べた。全細胞溶解物からの免疫沈殿およびSDS/PAGE・ウエスタンブロッティング分析を以前に記載されたように行った。Turksonら、Stat3 activation by Src induces specific gene regulation and is required for cell transformation、Mol.Cell.Biol、18:2545−2552(1998);Zhangら、Activation of Stat3 in v−Src Transformed Fibroblasts Requires Cooperation of Jak1 Kinase Activity、J.Biol.Chem.、275:24935−24944(2000)。使用される一次抗体が、抗Stat3、抗pY705Stat3、抗pY416Src、抗Src、抗pErk1/2、抗Erk1/2、抗EGFR、抗pEGFR、pJAK2抗、抗c−Myc、抗Bcl−xL、抗Bcl−2、抗サバイビンおよび抗β−アクチン(Cell Signaling、Danvers)、ならびに、抗VEGF(Santa Cruz Biotech、Santa Cruz)であった。
EGF受容体を過剰発現する休止マウス線維芽細胞(NIH3T3/EGFR)において、EGFによる刺激はEGF受容体とStat3との間におけるco−IPを促進させ(図3A、レーン3〜レーン7対レーン2、pY705Stat3)、しかし、このco−IPは、5分間〜24時間にわたるSH5−07による細胞の前処理によって抑制された(図3A、レーン7対レーン3)。SH5−07の影響に対する能力をさらに特徴づけるために、pY705Stat3のレベルを同じ条件のもとでプローブ探査した。これにより、EGF受容体の誘導(図3B、レーン2対レーン1、pY1068EGFR)はStat3のリン酸化を引き起こしたことが示され(図3B、レーン2対レーン1、pY705Stat3)、しかし、Stat3のリン酸化は、細胞がSH5−07により24時間にわたって前処理されたときには阻害された(図3B、レーン6対レーン2、pY705Stat3)。まとめると、これらのデータは、SH5−07がStat3のEGF受容体との相互作用を阻止し、それにより、Stat3のEGF/EGFR誘導されたデノボでのチロシンリン酸化を阻害することを示した。
実施例4:SH5−07およびSH4−54は、構成的に活性化されたStat3を含んでいる細胞の成長、生存性、生存および遊走を阻止する。
異常に活性なStat3はまた、悪性細胞の増殖および生存ならびに悪性形質転換を促進させる。Yuら、The STATS of Cancer−New molecular targets come of age、Nat.Rev.Cancer、4:97−105(2004);Yue&Turkson(2009);Zhangら(2012);Zhangら、A novel small−molecule disrupts Stat3 SH2 domain−phosphotyrosine interactions and Stat3−dependent tumor processes、Biochem Pharmacol、79:1398−409(2010)。悪性細胞をStat3阻害剤に対する感受性について生存性アッセイで試験した。
細胞生存性アッセイおよび細胞増殖アッセイを下記のように行った。96ウエルプレートで培養されている細胞を、SH5−07またはSH4−54を用いて、または用いることなく72時間処理し、CyQuant細胞増殖アッセイ(Invitrogen Corp/Life Technologies Corp、Carlsbad、CA)に供した。コロニー生存アッセイを以前に報告されたように行った。Zhangら(2012)。簡単に記載すると、MDA−MB−231細胞またはU251MG細胞を6cmのディッシュに単一細胞として播種し(500細胞/ウエル)、翌日にSH5−07により48時間にわたって1回処理し、大きいコロニーが視認されるまで成長させた。コロニーをクリスタルバイオレットにより4時間染色し、計数した。
増大する濃度のSH5−07またはSH4−54による処理は生存性の喪失を誘導し、U251MGおよびU87MGについてはIC50が1μM〜3μMであり(図5A)、神経膠腫のU373MG株およびSF295株、乳がん細胞MDA−MB−231、前立腺がんDU145細胞、ならびに、v−Src形質導入された線維芽細胞NIH3T3/v−SrcについてはIC50が3μM〜6.5μMであり(図5A)、膵臓がんPanc−1細胞についてはIC50が10.3μMであった(図5A)。対照的に、両方の薬剤は、異常なStat3活性を含んでいないMCF−7細胞、NIH3T3細胞およびStat3ヌルMEF(Stat3−/−MEF)細胞の生存性を弱く阻害し、IC50が8.8μM〜10.8μMであった(図5A)。これらのデータは、異常に活性なStat3を含んでいる悪性細胞はSH5−07およびSH4−54に対する定まらない感受性を有したことを示した。注目すべきことに、相関が、腫瘍細胞のStat3活性の状態と、腫瘍細胞における構成的に活性なStat3の阻害と、SH5−07またはSH4−54に対する悪性細胞の生存性の感受性との間において認められた(図2A〜図2Dおよび図5)。このことと一致して、位相差顕微鏡法を用いたトリパンブルー排除による生細胞計数では、SH5−07による処理は、異常に活性なStat3を含んでいるヒト神経膠腫細胞および乳がん細胞の成長を用量依存的様式で優先的に抑制したことが示された(図5B)。これらの研究は、以前に報告されたように行われる足場依存的細胞成長および足場非依存的細胞成長に対するSH5−07の影響を調べるために拡大された。Zhangら、A novel small−molecule disrupts Stat3 SH2 domain−phosphotyrosine interactions and Stat3−dependent tumor processes、Biochem Pharmacol、79:1398−409(2010)を参照のこと。培養された単一細胞を、非処理、または、薬剤による1回の処理に供し、大きいコロニーが視認されるまで成長させ、その後、コロニーを染色し、コロニー数を数えた。結果は、クローン原性アッセイにおけるMDA−MB−231細胞およびU251MG細胞のコロニー数の優先的な抑制を示し、この場合、その抑制は、MCF−7に対する影響と比較して、用量依存的様式で生じた(図5C)。
実施例5:SH5−07およびSH4−54は創傷治癒アッセイにおいてStat3依存的成長を阻止する。
Stat3は、重要な役割を細胞周期進行および細胞生存において果たしており、構成的に活性なStat3の阻害は細胞成長の停止およびアポトーシスを引き起こす。Zhangら(2012);Niuら、Roles of activated Src and Stat3 signaling in melanoma tumor cell growth、Oncogene、21:7001−7010(2002)。フローサイトメトリーによる細胞周期プロフィル分析を、悪性細胞に対する阻害剤の影響をさらに調べるために行った。異常に活性なStat3を含んでいる悪性細胞(MDA−MB−231およびU251MG)の5μM〜8μMでのSH5−07による処理は、G0期〜G1期における細胞の蓄積を24時間または48時間までに誘導し(図5D)、しかし、低下が、8μMの処理に対する応答において、G1期、S期およびG2/M期にある細胞集団において認められた(図5D(i))。さらには、アネキシンV染色およびフローサイトメトリー分析では、8μMのSH5−07による処理が有意なアポトーシスをMDA−MB−231細胞およびU251MG細胞の両方において誘導したことが示された(図5E)。これらのデータは、細胞周期の阻止およびアポトーシスが、SH5−07によって誘導される腫瘍細胞生存性の喪失の一因であったことを明らかにする。軟寒天コロニー形成アッセイでもまた、SH5−07による処理が、MDA−MB−231細胞およびU251MG細胞の足場依存性成長の用量依存的な抑制を誘導したことが示された(図5Fおよび補足図S2)。これらの知見は、SH5−07が、異常なStat3を含んでいる悪性細胞の成長を優先的に抑制することを示している。
SH5−07およびSH4−54がStat3依存的な腫瘍進行プロセスを阻止し得るかをさらに詳しく調べるために、創傷治癒研究を本明細書中に記載されるように行った。創傷を、6ウエルプレートにおける細胞の単層培養物においてピペットの先端を使用して作製した。細胞を、増大する濃度のSH5−07を用いて、または用いることなく処理し、剥脱領域内に12時間〜24時間にわたって遊走させた。細胞の遊走を、Axiovert200倒立型蛍光顕微鏡(Zeiss、Gottingen、ドイツ)を使用して10Xの倍率で可視化し、写真を、取り付けられたCanon Powershot A640デジタルカメラ(Canon USA、Lake Success、NY)を使用して撮影した。剥脱領域内に遊走した細胞を定量化した。
SH5−07またはSH4−54による22時間の処理は、剥脱領域内に遊走するMDA−MB−231細胞、U251MG細胞、U87MG細胞およびDU145細胞の数を、細胞生存性に対する最小限の影響を伴って抑制した(図5G)。このことから、本発明の化合物はがん細胞の遊走および転移を阻害することができることが裏付けられる。
実施例6:SH5−07は、c−Myc、Bcl−xL、Bcl−2、サイクリンD1およびサバイビンの発現を阻害する。
Stat3は、悪性表現型の維持において非常に重要である既知の標的遺伝子の発現を促進させる。Yue&Turkson(2009);Turkson、STAT proteins as novel targets for cancer drug discovery、Expert Opin Ther Targets、8:409−422(2004)。異常なStat3シグナル伝達に対するSH5−07の阻害影響を検証するために、既知のStat3下流側標的遺伝子の発現を明らかにした。構成的に活性なStat3を含んでいるヒト乳がん細胞株(MDA−MB−231)および神経膠腫細胞株(U251)において、さらなる研究(免疫ブロッティングを含む)および全細胞溶解物の分析により、SH5−07による処理は既知のStat3調節される遺伝子(例えば、Bcl−2、Bcl−xL、サイクリンD1、c−Mycおよびサバイビン)の誘導を抑制し、しかし、この場合、それらの誘導が24時間の処理に対する応答において有意に抑制されたことが示された(図6)。これらのデータは、SH5−07が、Stat3により調製される遺伝子の構成的な誘導を有意に抑え、それにより、異常に活性なStat3によって促進される成長および生存の調節不全を阻止することを明らかにする。
実施例7:効力および安全性の実証:SH5−07はマウスにおけるヒト乳腫瘍異種移植片および神経膠腫異種移植片の成長を抑制する。
ヒト乳房および神経膠腫の処理におけるSH5−07の効力で、マウス異種移植片モデルを使用した場合の効力を明らかにした。これらの研究では、SH5−07を投与することは、経口胃管法により3mg/kgの用量で毎日送達されたときには、異常なStat3活性を含んでいるヒト乳腫瘍(MDA−MB−231)のマウス皮下異種移植片の成長を阻害したことが示された(図7A)。
これらの研究を行うために、6週齢のメスの無胸腺ヌードマウスをHarlanから購入し、アメリカ実験動物管理認定協会(American Association for Accreditation of Laboratory Animal Care)によって承認される施設内動物施設で維持した。無胸腺ヌードマウスに、5×106個のヒト乳がんU251MG細胞を100LのPBSにおいて左わき腹に皮下注射した。直径が3mmの腫瘍が確立されたとき、動物を、すべての群における平均腫瘍サイズがほぼ同一であるように群に分け、その後、SH5−07を経口により3mg/kgで27日間にわたって毎日与え、動物を2日毎または3日毎にモニターし、腫瘍サイズをカリパスにより測定した。腫瘍体積を下記の式に従って計算した:V=0.52×a2×b、式中、aは表面的な最小直径であり、bは表面的な最大直径である。それぞれの処理群について、測定のそれぞれの組についての腫瘍体積をコントロール(非処理)群との比較で統計学的に分析した。統計学的分析−統計学的分析を、Prism GraphPad Software,Inc.(La Jolla、CA)を使用して平均値に対して行った。群間の違いの有意性を、p<0.05*、p<0.01**およびp<0.001***でペアードt検定によって求めた。
結果は、SH5−07を投与することにより、異常なStat3活性を含んでいるヒト乳腫瘍(MDA−MB−231)移植片の成長が阻害されたことを明らかにした(図7A)。体重における有意な変化または毒性の明白な兆候(例えば、食欲不振、低下した活動または嗜眠など)は研究期間中に何ら認められなかった。
実施例8:SH5−07投与後の細胞内レベルおよび組織レベルの決定ならびに薬物動態学。
SH5−07の細胞内レベルおよび組織レベルを1回の処理の後で調べた。培養中のU251細胞を5μMのSH5−07により1回処理し、その後1時間、6時間および24時間で、細胞抽出物を薬剤のレベルのためのLC−MS分析のために調製した。結果は、SH5−07の細胞内レベルが1時間において1,238±181nMであり、この細胞内レベルが6時間において27.6nMに劇的に低下し、24時間ではバックグラウンドレベルに低下したことを示した(表1)。このデータは、SHS5−07が、Stat3活性を阻害するために十分なレベルで経口により利用可能であることを示す。
そのうえ、SH5−07のインビボ薬物動態学的分析を、血清サンプルおよび脳組織サンプルを非処理マウスから、または、SH5−07の尾静脈注射の単回服用(3mg/kg)の10分後および60分後における処理マウスから集めることによって行った。結果(図7B)は、SH5−07の血清中の平均レベルが服用後10分において13.54nMであり、これが60分までに4.67nMに低下し、これに対して、脳組織における対応する平均レベルがそれぞれ、7.76fmole/mg組織および8.19fmole/mg組織であったことを示した。
実施例8:がんの処置。
神経膠腫、乳がんまたは膵臓がんを有する対象が、0.08mg/kg〜0.4mg/kgの間における用量でのSH5−07の静脈内投与または経口投与によって処置され、さらなる用量が必要に応じて投与される。対象の状態がモニターされ、腫瘍の収縮、または、腫瘍成長の進行の鈍化が観測される。結果から、本発明の例示的なStat3阻害剤の驚くべき効力が示されており、また、確認される。
本明細書中で参照または言及される特許、特許出願、刊行物、科学論文、書籍、ウエブサイト、ならびに他の文書および資料は、本発明が関連する技術分野における当業者の技能レベルを示すものである。それぞれのそのような参照された文書および資料が、それぞれが全体として参照によって個々に組み込まれていたかのような場合と同じ程度に、または示されていたかのような場合と同じ程度に、または全体として本明細書中に転載されていたかのような場合と同じ程度に参照によって本明細書により組み込まれる。加えて、本出願およびすべての優先権出願におけるすべての請求項が、当初請求項(これらに限定されない)を含めて、本発明の記載された説明に全体として本明細書により組み込まれ、また、本発明の記載された説明の一部を形成する。出願人らは、そのような特許、出願、刊行物、科学論文、ウエブサイト、電子的に入手可能な情報および他の参照された資料または文書に由来するすべての資料および情報を本明細書に物理的に組み込む権利を留保する。出願人らは、本文書(記載された説明のどのような部分であっても含む)および上記で参照される請求項(どのような当初請求項(これらに限定されない)であっても含む)のどのような部分にでも物理的に組み込む権利を留保する。
様々な発明が本明細書中に幅広く、かつ、包括的に記載されている。包括的開示に含まれるより狭い種概念および下位概念集団のそれぞれもまた、これらの発明の一部を形成する。このことは、それぞれの発明の包括的記載であって、発明に対するどのような請求項であっても含めて、どのような主題であっても類概念から除く、または、どのような主題であっても類概念から除くことを場合により可能にする但し書きまたは負の限定を、削除されたものまたは選択項目がこのように本明細書中に具体的に示され、または特定されたか否かにかかわりなく本明細書により包含するそれぞれの発明の包括的記載を包含し、すべてのそのような変形が発明の当初記載された説明の一部を形成する。加えて、ある発明の特徴または局面がマーカッシュ群によって記載される場合、当該発明はそれによって、マーカッシュ群のありとあらゆる、また、どのようなものであれ、個々の要素または要素の部分群によって記載されることが理解されなければならない。
発明が、様々なGGCIおよびGGCI塩の合成に関して記載されているにもかかわらず、開示において記載される経路、工程および中間体はCGIの合成に対して適用可能であることが認識されなければならない。
本明細書中に例示的に記載され、また主張される発明は、どのような要素および限定であれ、必須であるとして本明細書中に具体的に開示されない、または本明細書中に記載されない要素、限定の非存在下で好適に実施することができる。したがって、例えば、用語“comprising”(含む)、用語“including”(含む、包含する)、用語“containing”(含有する)および用語“for example”(例えば)などは、拡大可能に、かつ、非限定的に読み取られなければならない。用語“including”は、“including but not limited to”(含むが、[これらに]限定されない)を意味する。表現“for example”は、この表現の後に続く項目に限定されず、または、この表現の後に続く項目によって限定されない。「この技術分野において知られている」ことに対するすべての参照は、現在知られているか、または後で発見されるかにかかわらず、すべてのそのようなことならびに均等物および代替物を包含する。
本発明者らの発明を主張することにおいて、本発明者らは、いずれかの移行句をいずれかの他の移行句で置き換える権利を留保しており、発明は、そのような置き換えられた移行表現を包含すること、また、当該発明の当初記載された説明の一部を形成することが理解されなければならない。したがって、例えば、用語“comprising”は、移行句“consisting essentially of”(から本質的になる)または移行句“consisting of”(からなる)のどちらかにより置き換えられる場合がある。
本明細書中に例示的に記載される方法およびプロセスは、異なる工程順序で好適に実施される場合がある。本明細書中に例示的に記載される方法およびプロセスは、本明細書中または請求項において示される工程順序に必ずしも限定されない。
いかなる状況のもとであっても、本特許は、本明細書中に具体的に開示される具体的な例または実施形態または方法に限定されるように解釈され得ない。いかなる状況のもとであっても、本特許は、どのような表明であれ、特許商標庁のいかなる審査官あるいはいかなる他の公務員または職員によってであってもなされる表明によって限定されるように解釈され得ない。ただし、そのような表明が、本特許に至った出願に具体的に関連する応答書において出願人らによってその発行の前に、具体的に、また、限定または留保を伴うことなく、明示的に受け入れられた場合には、この限りではない。
本明細書中で用いられる用語および表現は、限定の用語としてではなく、記述の用語として使用されており、そのような用語および表現の使用またはそれらのどのような一部分の使用においても、現在知られているか、または後で開発されるどのような均等物であっても除外することは、そのような均等物が本明細書中に説明され、または示され、または記載されるか否かにかかわりなく、あるいは、そのような均等物が予測可能であると見なされるか否かにかかわりなく、全く意図されない。しかし、様々な改変が、特許請求される発明の範囲の範囲内であることが、そのような請求項が、いかなる理由のためであれ変更または補正を伴って、または伴うことなく発行されたか否かにかかわりなく認識される。したがって、本発明が、好ましい実施形態および場合に応じた特徴によって具体的に開示されてはいるが、開示されているそれらまたは本明細書中において具体化される発明の様々な改変および変化が当業者によって用いられ得ること、また、そのような改変および変化は、本明細書中において開示および特許請求される発明の範囲の範囲内であると見なされることが理解されなければならない。
本明細書中に記載される具体的な方法および組成物は、好ましい実施形態を代表するものであり、本発明の範囲を例示しており、本発明の範囲に対する限定として意図されない。他の目的、局面および実施形態が、本明細書を検討したとき、当業者には思いつくであろうし、これらは、請求項の範囲によって定義されるような発明の精神の範囲に包含される。様々な例が与えられる場合、その記載は、そのような例のみに限定されるのではなく、そのような例のみを包含するように解釈されなければならない。様々な置換および改変が、発明の範囲および精神から、また、発明の記載(本明細書中に例示的に示される置換および改変を含む)から逸脱することなく、本明細書中に開示される発明に対してなされ得ることが、当業者には容易に明らかであろうし、様々な改変および均等物が、本発明の概念を実行するために、その範囲から逸脱することなく使用され得ることが明らかである。当業者は、様々な変更が、発明の精神および範囲から逸脱することなく形態および細部において行われ得ることを認識するであろう。記載された実施形態はすべての点で、例示的であり、限定的でないと見なされるものとする。したがって、例えば、さらなる実施形態が発明の範囲の範囲内であり、かつ、下記の請求項の範囲の範囲内である。
本発明が、具体的な実施形態を参照して開示されているが、本発明の他の実施形態および変化が、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく当業者によって考案され得ることが明らかである。添付された請求項はすべてのそのような実施形態および均等的変化を包含する。