ECGは心電図(Electro Cardio-Graphy)の略語として一般に用いられており,皮膚表面に配置される電極によって所定期間にわたって計測される心臓の電気的活動である。以下において,用語ECGは,皮下的に配置された電極による心臓の電気的活動の検出にも用いられる。
胸,腕および足の別々の箇所において皮膚表面上に電極を配置することによってECGを計測することが知られている。このタイプの計測は昔から知られており,一時的なECG計測値を取得するため,または入院中の監視のために用いられている。
目的によっては,より長期間にわたって,たとえば数ヶ月または数年にわたって,連続的に人のECG信号をモニタすることが必要とされる。たとえば研究目的の場合であり,後日の分析および他のパラメータとの相関のためにECG信号をログすることが有益となる可能性があるからである。
このような目的において,皮膚電極およびその信頼性に依存して皮膚に充分に接触し続けることは難しい。また,テープまたはパッチによって電極を長期にわたって固定すると,皮膚の刺激をもたらすことがある。電極の取り外しまたは交換が,正確なポジショニングに関してなんらかの不確実性をもたらすこともある。
埋込装置においてECG信号を計測するシステムが米国特許公開公報US2007/0179388A1から知られており,そこにはECGを皮下的に計測し,これをループメモリに記録する装置が記載されている。トリガされることで上記装置は短期のECG記録を永久に保存することができる。
米国特許公報US8241221B2は,皮下埋込用ECGモニタおよびストローク検出用設定を開示する。このモニタは,アラームを生じさせる目的のために,たとえばベッド脇に配置される外部ユニットと無線接続することができる。
米国特許公開公報US2011/0224520A1は,埋込部が外部ユニットへの無線アクセスを有する皮下ECGモニタを開示し,プロパティを示すパラメータまたは推定結果を保存することができる。医師に対して個々の患者の値や状態を示すために,インターネットを通して上記モニタにアクセスすることができる。
埋込電極を備えるECGモニタでは,ECG信号をサンプリングし,上記信号を非埋込部に送信するまたは埋込部内で上記信号を処理するための電子回路も埋め込まれる。埋込部には電源が必要とされ,信頼性のある無線接続も必要とされる。
既知の皮下的に埋込可能なECGモニタにおける課題の一つは,電源が従来の電池(a traditional battery)であることである。これはスペースを占め,埋込部の大型化をもたらし,埋め込まれる電池が標準電池に比べて任意の化合物の漏れに関してはるかに安全でなければならず,高価である。埋込電池はまた,電池交換に関するトラブルに対して高い信頼性を持たなければならない。
さらに,既知の埋込可能ECGモニタに記載されている無線リンクはデータの連続伝送に適さないことがあり,それは,アラームのような短い通知の伝送のために,または数分といった短期間のデータを伝送するために設計されるものの,ECG信号の瞬間像を取得するのに過大な電力を消費するためである。従来技術の他の課題はECG信号の長期保存ができないことである。
上記課題は,皮下的に埋め込まれるように構成された電極部を備え,かつ上記電極部が埋め込まれる人物によって持ち運ばれる外側部を備えるECGモニタを提供するこの発明によって解決される。上記電極部は使用中にECG信号を検出する少なくとも2つの電極エリアを備え,上記電極部は使用時に無線リンクを通じて上記外側部に接続される。上記無線リンクは上記検出されたECG信号を表すデータを上記外側部に伝送するように構成され,かつ上記外側部から上記電極部に電力を伝送するように構成されている。
このECGモニタの主要な利点は,上記埋込可能電極部内に電池を必要としないか,あるいはおよそ20分の動作のための容量を持つほんの小さな充電可能電池を持つことで動作可能であることである。20分の容量は上記人物が入浴する,または外側部内の電池を充電するのに十分である。この場合,この20分のデータに十分な,上記埋込可能電極部内のより小さいメモリ容量も好ましい。
ECGモニタの一実施態様では,上記無線リンクは,上記電極部内の内部コイルと上記外側部内の外部コイルの間の誘導結合に基づく。これは,データの伝送および上記電極部内の電子回路用電力の伝送の両方に効率的な無線システムを提供する。
ECGモニタの一実施態様では,上記外側部が,上記電極部内の上記コイルと上記外側部内の上記コイルの間の位置決め(配置)(the alignment)に関する通知を提供するインジケータを備えている。これは,電力伝送が効率的であること,およびすべてのデータが何らのデータ損失を伴うことなく伝送されることを確実にする(ensures)。
ECGモニタの一実施態様では,上記外側部が,上記電極部が埋め込まれたときに上記電極部の上記コイルが配置される箇所における皮膚表面の位置に上記外側部を保持する手段を備えている。この手段は以下でさらに説明され,外側部の簡単な位置決めのために準備されることになる。
ECGモニタの一実施態様では,上記検出されたECG信号を表すデータは,上記外側部に連続的にログされる。このデータはアナログのECG信号のデジタル表現とすることができる。連続的なログは,モニタされる人物についての完全なECGデータ履歴を確実にする。
ECGモニタの一実施態様では,上記埋込可能電極部がエネルギーの化学的蓄積のための電池(a battery for chemical storage of energy)を備えていない。これはスペース,コストおよび安全性の利点を持つ。
ECGモニタの一実施態様では,上記外側装置が,遠隔機器(a remote device),たとえばスマート・フォンに無線接続するように構成され,かつ上記遠隔機器にデータを伝送するように構成されるリンクを備えている。これは,追加のデータ・ロギング容量,モニタへの適切なインターフェース,およびインターネットへのアクセスを容易にする。
ECGモニタの一実施態様では,上記電極部が,上記無線リンク用電子回路を備えるハウジングを備え,上記ハウジングがECGモニタリングのための電極エリアを備える細長いケーブル部に接続されている。これに代えてまたは加えて,電極エリアを上記埋込可能電極部のハウジングの外側上に(on the external side)配置することもできる。
ECGモニタの一実施態様では,上記外側部へのECGデータの伝送および上記外側部から上記埋込可能電極部への電力の伝送が同時に実行される。これは,上記埋込可能電極部内のメモリ空間および蓄電能力の必要性を低減または削減する。
ECGモニタの一実施態様では,上記ECGデータおよび電力の同時伝送は,負荷変調電力伝送(a load modulated power transfer)の適用によって実行される。これは,非常に信頼性が高くかつ効率的であることが判明している。
さらなる観点において,上記発明は連続的にECGデータを計測しかつログする方法に関するものとすることができ,上記方法は,ECGモニタの外側部を,皮下的に埋め込まれた電極部の位置の反対側の皮膚の外側に配置し,上記埋込電極部を作動し,上記外側部から上記電極部に電力を伝送し,上記電極部によってECGデータを計測しかつ上記外側部にECGデータを伝送し,上記外側部においてECGデータをログするものである。
この方法は,必ずしも上記電極部を埋め込む工程を含まない。この方法は上記電極部の埋込後に実行することができる。
この方法の一実施態様では,上記ECGデータは,少なくとも一月の期間,各24時間のうちの少なくとも90%の時間,ログされる(logged for at least 90 percent of time per each 24 hour period, for a period of at least one month)。これは,毎日毎日の完全なECGモニタリングに近いものを確保する。好ましくは,ECGデータは,各24時間のうちの少なくとも95%の時間,ログされる。これに代わる実施態様では,数ヶ月,たとえば少なくとも6ヶ月または少なくとも12ヶ月の各月のたとえば2−5日の期間,各24時間のうちの少なくとも90%の時間,ログされる。
以下,図面を参照してこの発明の実施例をさらに詳細に説明する。
図1は,電極部1および外側部(外付け部)(an external part)2を有するECGモニタを示している。埋込可能な電極部1がどのようにしてモニタされる人物の体の胸の領域に配置されるかが示されている。上記電極部1は皮下的に埋め込まれるように構成されている。図1には,2つないしそれ以上の電極エリアを備える一本のケーブル3またはワイヤが示されている。上記電極部1は別の方向に伸びる電極エリアを備える複数のケーブル(cables)を有してもよい。上記電極部1が複数の(一本よりも多い)ケーブル3を備える場合には,ECG信号を計測するためには,一または複数のケーブル上に一つの電極エリアを備えれば十分であり得る。電極エリアは上記電極部のハウジングに統合することもできる。図1では外側部2が破線で示されている。上記外側部は上記電極部1と通信する。
図2は,右側の埋込み可能電極部1と皮膚表面の左側に配置された外側部2との間の断面図を,人の皮膚バリア30とともに示している。上記外側部が上記埋込部の反対側の皮膚表面にどのように固定されるかについては示されていない。この固定または取付けは,様々なやり方で行うことができる。その一つは,体の周りに延びることができるベルトまたはストラップに上記外側部を取り付け,弾性によって上記外側部を正しい位置に保持する。別のやり方は,上記電極部1と上記外側部2の両方に,上記外側部を所定の位置に保持するのに十分に強力な永久磁石を設けることである。別のやり方として,パッチ,プラスターまたはテープを適用して上記外側部を取り付けることができる。
図3は,埋込可能な電極部1および外側部2を備えるECGモニタリング・システムの一例を示している。上記埋込可能電極部1は,長期間のECGモニタリングを必要とする人物のたとえば胸の領域に皮下的に配置されるのに適するものであり,絶縁体5によって分離された複数のアクティブ電極エリア6を有する皮下ケーブル3を備えている。上記ケーブル3は電子回路7に接続されている。上記ケーブル3は少なくとも2つの電極エリア6を有している。これらの電極エリアを単純に電極と呼ぶこともある。上記電子回路は,好ましくはA/D変換器10,データ・パケット・コントローラ12,通信コントローラ11,および電圧レギュレータ13を備えている。上記電極エリアを備えるケーブルは,電極ワイヤを通じて上記A/D変換器の入力端子に接続されている。上記通信またはデータ・パケット・コントローラ12は,存在する場合に内部コイル15に接続され,上記電圧レギュレータ13は,存在する場合にセラミック・キャパシタ14に接続される。上述したように,他の実施態様では,2つまたはそれ以上のケーブル3が設けられ,それぞれが一または複数の電極エリアを備えている。
上記ECGモニタリング・システムの上記外側部2は,好ましくは外部コイル21に接続可能なコントローラ20,上記コントローラに電源供給する電池22,および好ましくは計測されるECG信号を表すデータを保存するデータ・ストレージ26を備えている。上記外側部は,その後の発作の事象のときに,音響信号たとえばアラームを出力するスピーカ25を備えることができる。
使用時において,上記ECGモニタリング・システムの上記外側部は,ECG信号のモニタリングが望まれる人物の胸の領域であってかつ皮下的に埋込可能な電極部1の近傍に配置される。上記埋込可能部1は,図1に示すように,多くの場合,人の胸の皮膚の直下に埋め込まれ,信頼性のある電気的ECG信号を電極エリアによって検出することができるように位置決めされる。この目的のために,上記外側部はインジケータ27を備えており,上記外側部が第1および第2の通信コイル間の十分な通信を達成することができるように配置されていないまたは位置決めされていない場合に,何らかの指示を与える。
上記電極エリア6は,電気的電圧電位の変動としてのECG信号をピックアップし,変動する電気的電圧を上記A/D変換器10の入力端子に与える。上記A/D変換器10は上記電極エリア6からの上記変動する電気的電圧をデジタル信号に変換し,上記デジタル信号を上記データ・パケット・コントローラ11にもたらすことができる。上記データ・パケット・コントローラ11は,好ましくは,上記電極エリアからの上記電気信号を表すデジタル信号を,所定の通信プロトコルにしたがってデータ・パケットのストリームに編成し,得られたデータ・パケットのストリームを上記通信コントローラ12に与える。
上記通信コントローラ12は,典型的には2つの動作を実行するように構成される。上記通信コントローラの第1の動作は,好ましくは,上記内部コイル15によって上記外側部2の外部コイル21からのエネルギーを受信することによって,上記電子回路が電磁的に励磁される(energized)ことができるようにすることである。上記内部コイル15において受信された上記電磁的エネルギーは,上記通信コントローラ12によって上記電圧レギュレータ13に転送して,電圧チャージとして上記セラミック・キャパシタ14に一時的に保存することができる。
第2の動作はデータの伝送であり,上記通信コントローラが,上記電極エリア6からの電気的ECG信号を表すデータ・パケットを,上記データ・パケット・コントローラ11から取得し,それを上記内部コイル15において,上記外側部2の上記外部コイル21によって受信されかつ検出されるのに適する電磁エネルギーのバーストに変換する。
上記通信コントローラ12の2つの動作が経時的に実行されると,上記セラミック・キャパシタ14内に保存された電気的エネルギーが,上記埋込可能電極部1における上記電子回路用電源として用いられて,データが伝送される間に使用される。
上記ECG信号を表すデータを,上記外側部2内のデータ・ストレージ26またはデータ・ロガー内に連続的に保存することができる。上記ECGデータは,好ましくは時間情報とともにログされ,他のタイプのセンサから取得される他のパラメータ,またはモニタされる人物からの入力も任意選択的にログすることができる。複数対の電極エリアからのECG信号が取得された場合には,これらは同じ時間情報とともにログされる。上記外側部2が遠隔機器と通信する場合には,記憶のためにデータをこの機器に伝送することもできる。上記遠隔機器はモバイルフォンまたは何らかのタイプのポータブル・コンピュータとすることができる。
上記システムを,所定事象のために上記ECG信号を連続的に解析するように設定することもできる。上記ECG信号の解析の結果に基づいて,たとえば上記ECG信号の解析から所定の病状が存在するとみなされるときに,上記コントローラ20によってアラームを鳴らすように上記スピーカ25を作動させるように決定を行うことができる。このアラームによってユーザに対して病状が注意喚起され,ユーザは病状を緩和する適切な措置をとることができ,病状に応じて,たとえば処方薬を摂取したり,医療関係者に対して即時のアドバイスや助けを求めるために相談したりすることができる。
上記ECGモニタリング・システムからのアラームまたは何らかの他の通知を遠隔ユニット(a remote unit)に送信することもできる。上記遠隔ユニットは,病院または救急センターにアラームを転送することができる。また,アラームを上記外側部から病院または救急センターに直接に送信できるようにしてもよい。
図4は,上記埋込可能電極部1の一例を示すもので,埋込みに適するハウジング内に密閉される前に視認されるものを示している。このハウジングは身体からの水分(湿気)に対して埋込部を保護するものでなければならない。上記ハウジングはまた生物適合性のもので,かつ埋込部から流出する何らかの有害な化合物から人体を保護するものでなければならない。
上記埋込可能電極部1は,少なくとも2つの電極エリア6を有するケーブル部3を備えている。上記埋込可能部1は埋込時に異なる方向に伸びる複数のケーブル3を備えることもできる。上記埋込可能部1はさらに内部コイル15を備えている。これは典型的には上記埋込部1の残りの部分のサイズに比べて比較的大きく作られ,上記外側部2内の外部コイル21への良好な結合を達成することが助長される。
上記インジケータ27は,上記2つのコイル15,21の間の結合率(the coupling coefficient)が,あらかじめ選択される電力伝送の効率を助長しかつ信頼性のあるデータの伝送を得るために十分には高くない場合に,たとえばモニタされる人物に対して情報を渡す目的を有している。上記インジケータ27は,音響アラーム,点滅光といった視覚的アラーム,または上記人物の携帯電話またはコンピュータのような別の機器に信号を送信する形態を有するものとすることができる。
図5は図4の埋込可能電極部を側面から示している。図4に示す構成要素と同じものを示すが,上記埋込部の平坦性も示している。平坦であることに加えて,上記埋込部または上記埋込可能電極部の電極エリア6を有する少なくとも上記ケーブル3は,柔軟性も有している。ワイヤまたはケーブル状部分3に配置される電極エリアを有することによって,電子回路用ハウジング上に直接に配置される電極エリア6を有する場合に比べて,電極エリア6間により長い距離を確保することができる。
図6はECGモニタの簡略化された回路図を示している。上記ECGモニタは,上記外側部2内に配置された読み取り回路(a reader circuit)400と,上記埋込可能電極部1内に配置されたデータ・キャリア回路401を備えている。上記外側部内の読み取り回路400は,信号発生器215,共振レジスタ214,共振キャパシタ213および外部コイル212を含む。上記共振レジスタ214,共振キャパシタ213および送信コイル212は一緒に共振回路を形成し,共振回路は上記外側部からの無線信号の選択送信周波数に対応する共振周波数に調整される。上記データ・キャリア401は,内部コイル201,共振キャパシタ202,整流器203,エネルギー保存キャパシタ204,上記データ・キャリア上のモニタリングおよびデータ処理手段の負荷を表すレジスタ205,変調キャパシタ206,ならびに接続点207および208を含む。
上記信号発生器215は上記外部コイル212に交流電流を生成する。上記外側コイルにおける上記電流は,上記内部コイル201に交流電流を誘導する交流磁場を生成する。上記交流磁場の周波数が動作周波数を表す。上記動作周波数の一例としては900kHzから1100kHzの範囲である。上記内部コイル内の電流は上記データ・キャリアを給電するために用いられる。
図6において,上記エネルギー保存キャパシタ204および上記変調キャパシタ206は直列接続によって配置されている。これにより,上記受信コイル201から見てあるインピーダンス(one impedance),したがって上記送信コイル212上に,ある特定の負荷が与えられる。
エネルギー保存キャパシタ204と変調キャパシタ206を並列設定に再配置すると,上記内部コイル201から見たインピーダンスが変更され,これによって上記外部コイル212上の負荷が変化する。
図7および図8は,単純に3つのスイッチ209,210,211を切り換えることによる,これら2つのキャパシタ204,206の並列設定(図7)と直列設定(図8)の間の切り換えのシンプルなやり方を示している。簡単化のために,図7および図8は保存キャパシタ204,変調キャパシタ206,スイッチ209,210,211,およびレジスタ205のみを示している。
図7の並列設定において,上記データ・キャリアは,上記データ・キャリアに誘導的にリンクされるリーダから見て低インピーダンスの共振回路を形成する。図8の直列設定において,上記データ・キャリアは高インピーダンスの共振回路を形成する。上記データ・キャリアから上記リーダに送信されるデータ・ストリームに合わせて経時的に2つの動作状態の間を切り換えることによって,上記リーダにおける適切な評価手順に基づいて,上記リーダ内で上記データ・ストリームを再構築することが可能になり,上記送信機コイル212上の変調負荷が上記埋込部内のデータ・キャリアから上記外側部内の上記リーダに送信されるデータを表すものになる。なお,この負荷変調は,負荷変調に用いられる構成要素においてごくわずかな消費電力だけで達成されるという利点がある。別の利点は,データの負荷変調送信が,上記外側部から内側部への電力の伝送と同時に実行されることである。このことは,上記埋込部および電極部における保存のため,および上記外側部へのデータ伝送の期間における使用のための追加電力(extra power)を伝送する必要がないことを意味する。
上記外部および内部コイル15,21は,効率のよい電力伝送を達成するために,皮膚バリアの各側において接近して位置決めされる(be closely aligned)。一方のコイルの中心軸は,好ましくは他方のコイルの中心軸を通じて連続し,または2つの中心軸が互いに近くに配置される。この接近配置は上記外側部が配置されるときに確保される。上記電極部は,外側部を配置するときに2つのコイルが整列しやすくなるように,埋込のときにそのように配置される。
十分な電力およびデータ伝送を得るために2つのコイル15,21の間の整列が不十分である場合,これを上記コントローラによって検出することができ,通知が与えられる。
上記誘導結合は広帯域内の周波数に基づくことができる。RFIDシステムにも適用される約125kHzの周波数とすることができる。より高い周波数を適用することもできる。0.5−2MHzの範囲の周波数とすることができる。約10MHzの範囲の周波数を適用することもできる。高周波数の利点はアンテナを小型化することができることにある。残念ながら高周波数は電力消費の増加も伴う。これらの傾向は誘導結合だけでなく従来の無線通信にもあてはまる。電力が伝送される誘導結合について,効率のよい電力伝送を得るためには上記コイルを互いの近接場内に配置しなければならない。実際にはこれはコイルをどの程度小さくできるかの制限を設定する。
誘導結合に基づく1MHz無線接続のためのアンテナ・サイズの一例として,埋込電極部用コイル15を10−18mmの範囲の直径を持ち,かつ0.5−1.5mm,好ましくは約1mmの環状コイルの外周面を規定する平面に対して垂直な方向への高さを持つように作ることができる。上記コイルが1mmの高さを有する場合,上記埋込可能電極部の高さないし厚さは2−3mmとなる。胸部に皮下的に配置される埋込部についての約2−3mmの高さないし厚さは,ほとんどの人に受け入れ可能である。上記外側部の対応するコイル21は,4−10mmの外径を持ち,かつ4−8mm好ましくは約6mmの高さを持つことができる。このようなコイルのサイズは電力伝送のためのみならずECG信号伝送のためにも十分である。なお,上記コイルの直径をより大きくすることで上記外側部の位置合わせの負担を軽くしてもよい。
上記外側部は,いくつかの目的のために,モバイル・ユニット,たとえば電話,コンピュータまたはタブレットと通信することができる。目的の一つは上記ECGモニタとモニタされる人物の間のインターフェースを得ることである。このインターフェースを,ECGモニタの機能性をチェックするために,たとえば2つのコイル15,21の間の結合率が最適でない場合に上記外側部の配置を調整する必要性があるときに用いることができる。上記人物にはその後の上記外側部内の電池の交換または充電についても通知される。
上記ECGモニタが他のパラメータも記録され,かついくつかのパラメータが上記人物によって登録される長期間の監視に利用される場合,これを上記モバイル・ユニットを通じて行うことができる。上記人物の身体活動,食事,健康状態などを知らせることができる。関連するパラメータを,上記モバイル・ユニットそれ自体によってデータセットとともに登録しかつ保存することもできる。気温,関連する湿度,地理的な場所,身体活動のレベル(モバイル・ユニットの動きとして計測されるもの)などである。
モバイル・ユニットはユーザーフレンドリーなインターフェースを容易に作成することができるので,上記遠隔またはモバイル・ユニットをECGモニタのセットアップに用いることもできる。セットアップは,保存される信号のサンプリング・レート,たとえばモバイル・ユニットにデータを伝送する頻度,たとえばコイルの配置ミス,外側部の電池交換などのときに,アラームを提供する時期およびそのやり方を決定することを含む。上記埋込可能電極部は,一般には上記外側部が近接して配置されかつコイルが整列されたときに作動する。その後に外側部から電力が受信され,ECG信号の計測が開始され,これを上記外側部に送信する。
上記モバイル・ユニットの重要な機能は,モニタリング・データの保存ユニットとすることができることである。データは上記外側部から定期的な時間間隔で伝送することができる。上記モバイル・ユニットはデータをインターネット・サーバに定期的にアップロードすることもできる。インターネット・サーバにおける保存データの定期的なバックアップは,大規模な研究プロジェクトにおいてデータの潜在的な損失(the potential loss of data)を最小化することができる。患者監視に関する使用においては,データを病院のコンピュータ・ネットワークに送信することで,医師が患者のECG信号における長期的な変化を検出することもできる。
上記外側部と上記遠隔ユニットの間の通信は,好ましくは何らかの低電力無線リンク,たとえば,ブルートゥース・コア仕様バージョン4.0(the Bluetooth Core Specification version 4.0)などに記載の低電力ブルートゥースで実行される。上記人物がモニタされていることをあまり気にならないように,上記外側ユニットをできるだけ小さくすることが重要である。この目的のためには,比較的小さなバッテリーで十分であるように最小の消費電力を維持することが重要である。
モニタされる人物にとって,たとえば睡眠中に,上記外側部を取り外すことができるようにすることが役に立つことがある。これは,上記外側部用の取付け手段が皮膚上に及ぼすことがある何らかの影響を緩和することにもなる。この目的のために,睡眠中には上記外側部を別の外側部に置換してもよく,この別の外側部は,夜間にベッドの下またはシートの下に配置される非常に大きなコイルを備えている。この別の外側部は,より電力を使用するものであってもよく,ACメインのプラグに差し込むことができるものであってもよい。