酸化ストレスは、細胞内の正常なレドックス状態の妨害により引き起こされる。過酸化物およびフリーラジカルなどの反応性酸素種の通常の生成と解毒作用との間の不均衡は、細胞の構造および機構に酸化的損傷をもたらす可能性がある。好気性生物内の、正常な条件下での反応性酸素種の最も重要な供給源は、おそらく、正常な酸化的呼吸中のミトコンドリアからの活性酸素の漏出である。このプロセスに関連する機能障害は、ミトコンドリア病、神経変性疾患、および老化による疾患の一因となることが疑われている。
ミトコンドリアは、真核細胞内の細胞器官であり、細胞の「発電所」と広く呼ばれている。これらの主要機能の1つは、酸化的リン酸化である。分子アデノシン三リン酸(ATP)は、細胞内でエネルギー「通貨」またはエネルギー担体として機能し、真核細胞は、これらのATPの大部分をミトコンドリアにより行われる生化学的プロセスから導き出す。これらの生化学的プロセスとして、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)から還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH+H+)を生成するクエン酸回路(トリカルボン酸回路、またはクレブス回路)、およびNADH+H+が酸化されてNAD+に戻る酸化的リン酸化が挙げられる。(クエン酸回路はまた、フラビンアデニンジヌクレオチド、またはFADをFADH2に還元し、FADH2もまた酸化的リン酸化に関与している。)
NADH+H+の酸化により放出された電子は、ミトコンドリアの呼吸鎖として公知の一連のタンパク質複合体(複合体I、複合体II、複合体III、および複合体IV)に運ばれて、ここを行き来する。これらの複合体は、ミトコンドリアの内膜に埋め込まれている。複合体IVは、鎖の終わりで電子を酸素に移動させ、これが還元されて水となる。これらの電子が複合体を横断する際に放出されたエネルギーが使用され、ミトコンドリアの内膜の全域でプロトン勾配を生じ、これが、内膜の全域で電気化学的電位を作り出す。別のタンパク質複合体である、複合体V(これは、複合体I、II、IIIおよびIVと直接的に関連しない)は、電気化学的勾配によって貯蔵されたエネルギーを使用してADPをATPに変換する。
生物中の細胞が一時的に酸素を奪われると、酸素が再度利用可能となるまで無気呼吸が利用されるか、さもなければ細胞は死滅する。解糖中に生成されたピルビン酸は、無気呼吸中に乳酸に変換される。乳酸の蓄積は、筋肉細胞に酸素を供給することができない激しい活動期間中の筋肉疲労の原因であると考えられている。酸素が再度利用可能となると、乳酸は、変換されてピルビン酸に戻り、酸化的リン酸化において使用される。
酸素中毒または毒性は、身体にダメージを与え、フリーラジカルならびに一酸化窒素、過酸化亜硝酸、およびトリオキシダンなどの他の構造の形成を増加させ得る高濃度の酸素により引き起こされる。通常、身体はこのような損傷に対して多くの防御系を有するが、遊離酸素の濃度が高くなると、これらの系は時間の経過と共に最終的に圧倒され、細胞膜の損傷率は、系がそれを制御または修復する許容量を超える。こうして細胞損傷および細胞死が生じる。
組織への酸素の輸送における定性的および/または定量的な破壊は、赤血球の機能におけるエネルギー破壊をもたらし、ヘモグロビン異常症(haemoglobinopathies)など様々な疾患の原因となる。ヘモグロビン異常症は、ヘモグロビン分子のグロビン鎖の1つの異常な構造をもたらす遺伝的欠陥の1種である。一般的なヘモグロビン異常症として、サラセミアおよび鎌状赤血球病が挙げられる。サラセミアは、遺伝性常染色体劣性の血液疾患である。サラセミアにおいて、遺伝的欠陥は、ヘモグロビンを構成するグロビン鎖の1つの合成速度の低下をもたらす。サラセミアは、合成されるグロビンが少なすぎるという定量的問題であるのに対し、鎌状赤血球病は、正しく機能しないグロビンの合成という定性的問題である。鎌状赤血球病は、異常な、硬い、鎌状の形状をとる赤血球を特徴とする血液障害である。鎌状化は細胞の柔軟性を低減させ、血管を介した赤血球の移動の制限をもたらし、下流の組織から酸素を奪う。
ミトコンドリアの機能不全は、様々な疾患状態の原因となる。いくつかのミトコンドリア病は、ミトコンドリアゲノムにおける突然変異または欠失による。細胞内の閾値割合のミトコンドリアが欠陥している場合、および組織内の閾値割合のこのような細胞が欠陥ミトコンドリアを有する場合、組織または臓器不全の症状が生じ得る。実際に、任意の組織に影響を与える可能性があり、異なる組織が関与する程度に応じて、多種多様の症状が存在し得る。ミトコンドリア病のいくつかの例は、フリードライヒ運動失調症(FRDA)、レーベル遺伝性視神経萎縮症(LHON)、ミトコンドリア脳筋症、ラクトアシドーシス、および脳卒中(MELAS)、赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌスてんかん(MERRF)症候群、リー病、および呼吸鎖障害である。大部分のミトコンドリア病は、神経変性疾患、脳卒中、失明、聴力機能障害、視力機能障害、糖尿病、および心不全を含む促進老化の兆しおよび症状が現れている小児を含む。
フリードライヒ運動失調症は、タンパク質フラタキシンのレベルが低減することによって引き起こされる常染色体劣性の神経変性および心臓変性障害である。この疾患は、随意運動協調性の進行性消失(運動失調)および心臓合併症を引き起こす。症状は通常、小児期に始まり、疾患は患者が年をとるにつれて次第に悪化し、患者は最終的には、運動障害により車椅子生活を強いられるようになる。
レーベル遺伝性視神経萎縮症(LHON)は、平均して間に27から34才の間で生じる失明を特徴とする疾患である。心臓の異常および神経系の合併症などの他の症状も生じ得る。
ミトコンドリア脳筋症、ラクトアシドーシス、および脳卒中(MELAS)は、それ自体乳児、小児、または若年成人において現れる可能性がある。嘔吐および発作を伴う脳卒中は、最も重篤な症状の1つである。虚血性脳卒中において生じるような血流の機能障害ではなく、脳の特定の範囲内のミトコンドリアの代謝性機能障害が細胞死および神経系の病変の原因であると推定されている。
赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌスてんかん(MERRF)症候群は、ミトコンドリア脳筋症と呼ばれる稀な筋障害の群の1つである。ミトコンドリア脳筋症は、遺伝物質の欠陥が、エネルギーを放出する細胞構造の一部(ミトコンドリア)から生じる障害である。これは、脳および筋肉の機能不全を(脳筋症)を引き起こす可能性がある。ミトコンドリアの欠陥ならびに「赤色ぼろ線維」(顕微鏡下で見た場合の組織の異常)が常に存在する。MERRF症候群の最も特徴的な症状は、手足または全身に影響を及ぼし得る、通常突発的で、短い、けいれん性痙縮である、ミオクローヌス性発作であり、発語困難(構語障害)、視神経萎縮、小人症、聴覚損失、認知症、および眼の不随意のけいれん(眼振)もまた生じ得る。
リー病は、中枢神経系の変性を特徴とする珍しい遺伝性の神経代謝障害であり、その症状は通常、3カ月から2才の間に始まり、急速に進行する。大部分の小児において、最初の兆しは、弱い吸引能力、ならびに首のすわりおよび運動技能の損失であってよい。これらの症状は、食欲不振、嘔吐、過敏性、連続的に泣くこと、および発作を伴うこともある。障害が進行するにつれて、症状はまた、全身性衰弱、筋緊張の欠如、および乳酸アシドーシスの発症(これは呼吸器および腎機能の機能障害につながる可能性がある)を含むこともある。心臓の問題が生じることもある。
コエンザイムQ10欠損症は、運動失調、発作または精神遅滞として現れ、腎不全につながる運動耐容能低下および尿中の再発性ミオグロビンを伴うミオパシー(Di Mauroら、(2005年)、Neuromusc. Disord.、15巻:311〜315頁)、小児期発生小脳運動失調および小脳萎縮(Masumeciら、(2001年)Neurology、56巻:849〜855頁およびLampertiら、(2003年)、60巻:1206号:1208頁);ならびにネフローゼを伴う小児脳筋症などの症候群を伴う、呼吸鎖障害である。CoQ10欠損症を有する患者の筋肉ホモジネートの生化学的測定は、呼吸鎖複合体IおよびII+IIIの活性が激しく低減していることを示したが、複合体IV(COX)は緩やかに低減していた(Gempelら、(2007年)Brain、130巻(8号):2037〜2044頁)。
複合体I欠損症またはNADHデヒドロゲナーゼNADH−CoQレダクターゼ欠損症は、以下の3つの主要な形態に分類される症状を伴う呼吸鎖障害である:(1)発育遅延、筋力低下、心疾患、先天性乳酸アシドーシス、および呼吸不全を特徴とする致命的な乳児性多系統障害、(2)運動耐容能低下または衰弱として現れる、小児期または成人期に開始するミオパシー、ならびに(3)ミトコンドリア脳筋症(MELASを含む)、これは、小児期にまたは成人期に始まる可能性があり、眼筋麻痺、発作、認知症、運動失調、聴覚損失、色素性網膜症、感覚性ニューロパシー、および制御できない運動を含めた、症状および兆しの可変的組合せからなる。
複合体II欠損症またはコハク酸デヒドロゲナーゼ欠損症は、脳筋症を含む症状、ならびに成長不良、発育遅延、低血圧症、嗜眠、呼吸不全、運動失調、ミオクローヌスおよび乳酸アシドーシスを含めた様々な徴候を伴う呼吸鎖障害である。
複合体III欠損症またはユビキノン−シトクロムCオキシドレダクターゼ欠損症は、以下の4つの主要な形態に分類される症状を伴う呼吸鎖障害である:(1)致命的な小児脳筋症、先天性乳酸アシドーシス、低血圧症、ジストロフィー性姿勢、発作、および昏睡、(2)遅発型(小児期から成人期)脳筋症:衰弱、小人症、運動失調、認知症、聴覚損失、感覚性ニューロパシー、色素性網膜症、および錐体路兆候の様々な組合せ、(3)ミオパシー、固定した衰弱へと進行する運動耐容能低下を伴ったもの、ならびに(4)乳児組織球様心筋症。
複合体IV欠損症またはシトクロムCオキシダーゼ欠損症は、以下の2つの主要な形態に分類される症状を伴う呼吸鎖障害である:(1)脳筋症、患者は通常、生後6〜12カ月は正常であり、次いで発育退行、運動失調、乳酸アシドーシス、視神経萎縮、眼筋麻痺、眼振、ジストニー、錐体路兆候、呼吸器の問題および常習的な発作を示す、ならびに(2)以下の2つの主要な変異形を有するミオパシー:(a)生後間もなく始まる可能性があり、低血圧症、衰弱、乳酸アシドーシス、赤色ぼろ線維、呼吸不全、および腎臓問題を伴う致命的な乳児性ミオパシー、ならびに(b)生後間もなく始まる可能性があり、低血圧症、衰弱、乳酸アシドーシス、赤色ぼろ線維、呼吸器の問題を伴うが、(小児が生存した場合)後で自然に改善する良性の乳児性ミオパシー。
複合体V欠損症またはATPシンターゼ欠損症は、緩徐進行性ミオパシーなどの症状を含む呼吸鎖障害である。
CPEOまたは慢性進行性外眼筋麻痺症候群は、視覚ミオパシー、網膜色素変性症、または中枢神経系の機能不全などの症状を含めた呼吸鎖障害である。
ケアーンズセイヤー症候群(KSS)は、(1)20才よりも若い人間における典型的な発症;(2)慢性進行性の、外眼筋麻痺;および(3)網膜の色素変性を含めた3つの特色を特徴とするミトコンドリア病である。加えて、KSSは、心臓の伝導障害、小脳の運動失調、および脳脊髄液(CSF)タンパク質レベルの上昇(例えば、>100mg/dL)を含み得る。KSSに伴う追加的特色として、ミオパシー、ジストニー、内分泌異常(例えば、糖尿病、成長遅延または小人症、および副甲状腺機能低下症)、両側性感音難聴、認知症、白内障、および近位尿細管性アシドーシスを挙げることができる。
母系遺伝性糖尿病および難聴(MIDD)は、母方から受け継いだ糖尿病および感覚神経的難聴を特徴とするミトコンドリア障害である。ほとんどの場合には、MIDDは、ロイシンに対してミトコンドリアのtRNAをコードしているミトコンドリア遺伝子MT−TL1における点突然変異により引き起こされ、稀なケースとして、グルタミン酸、およびリシンに対してそれぞれミトコンドリアのtRNAをコードしている、MT−TEおよびMT−TK遺伝子における点突然変異により引き起こされる。
遺伝性欠陥があるミトコンドリアを伴う先天性障害に加えて、後天性ミトコンドリア機能不全は、パーキンソン病、アルツハイマー病、およびハンチントン病のような、老化に伴う疾患、特に神経変性障害の原因となる。ミトコンドリアDNAにおける体細胞変異の発生率は、年齢と共に急激に上昇する。呼吸鎖活動の減弱は、高齢の人々において広く見られる。ミトコンドリア機能不全はまた、興奮毒性の、ニューロン損傷、例えば、脳血管発作、発作および虚血などに伴うものなどにも関わっている。
上記疾患のうちのいくつかは、呼吸鎖の複合体Iの欠陥により引き起こされていると考えられている。複合体Iから残りの呼吸鎖への電子の移動は、化合物補酵素Q(ユビキノンとしても公知)により媒介される。酸化型補酵素Q(CoQoxまたはユビキノン)は、複合体Iにより還元型補酵素Q(CoQredまたはユビキノール)に還元される。次いで還元型補酵素Qは、その電子を呼吸鎖の複合体IIIに移し、ここで、これはCoQox(ユビキノン)に再酸化される。次いで、CoQoxは、電子移動のさらなる反復に参加することができる。
これらのミトコンドリア病に罹患した患者に利用可能な処置は極めて少ない。最近、化合物イデベノンがフリードライヒ運動失調症の処置に対して提案されている。イデベノンの臨床効果は比較的緩やかであるが、ミトコンドリア病の合併症は非常に重い可能性があるので、有用性が少ない治療法であっても、疾患の未処理の経過よりは好ましい。ミトコンドリア障害を処置するために別の化合物、MitoQも提案されているが(米国特許第7,179,928号を参照されたい);MitoQに対する臨床結果は、まだ報告されていない。補酵素Q10(CoQ10)およびビタミンサプリメントの投与は、KSSの個々の症例において一時的に有益な作用しか示されていない。CoQ10の補給はまた、CoQ10欠損症の処置にも使用されているが、結果はまちまちである。
酸化ストレスは、運動ニューロン疾患、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、クロイツフェルトヤコブ病、マシャドジョセフ病、スピノ−小脳運動失調、多発性硬化症(MS)、パーキンソン病、アルツハイマー病、およびハンチントン病などの神経変性疾患に重要であると推測される。酸化ストレスは、特定の心血管疾患と関連があると考えられ、低酸素後の酸素再灌流障害に起因する虚血性カスケードでも役割を果たす。このカスケードには、脳卒中と心発作の両方が含まれる。
損傷蓄積論はまた、老化のフリーラジカル論としても公知であり、DNA、脂質およびタンパク質への損傷を引き起こし、長期にわたり蓄積する好気性代謝中に生成されるフリーラジカルのランダムな作用を誘い出す。フリーラジカルが老化プロセスにおいてある役割を果たすという概念は、Himan D、(1956年)、Aging −A theory based on free−radical and radiation chemistry J. Gerontol.、11巻、298〜300頁によって最初に紹介された。
老化のフリーラジカル論によると、老化プロセスは酸素代謝から開始する(Valkoら、(2004年)、Role of oxygen radicals in DNA damage and cancer incidence、Mol. Cell. Biochem.、266巻、37〜56頁)。理想的条件下であってもいくつかの電子は電子伝達鎖から「漏出する」。これらの漏出した電子は、酸素と相互作用して、スーパーオキシドラジカルを生成し、これによって、生理的条件下で、ミトコンドリア中約1〜3%の酸素分子がスーパーオキシドに変換される。スーパーオキシドラジカルによって損傷を受けるラジカル酸素の主要部位はミトコンドリアDNA(mtDNA)である(Cadenasら、(2000年)、Mitochondrial free radical generation, oxidative stress and aging、Free Radic. Res、28巻、601〜609頁)。細胞は、核DNA(nDNA)が受ける損傷の大半を修復するが、mtDNAの修復はあまり効率的ではないと考えられる。したがって、広範なmtDNA損傷が長期にわたり蓄積され、ミトコンドリアを活動停止させて、細胞死を引き起こし、生物を老化させる。
加齢に伴ういくつかの疾患は、がん、真性糖尿病、高血圧、アテローム性動脈硬化症、虚血/再灌流障害、関節リウマチ、神経変性障害、例えば、認知症、アルツハイマー病およびパーキンソン病などである。生理学的低下としての老化プロセスから生じる疾患には、筋力、心肺機能、視力および聴力の低減、ならびに皮膚のしわおよび毛髪の白髪化が含まれる。
本発明は、酸化ストレスに関係した疾患、発育遅延および症状、例えば、ミトコンドリア障害、エネルギー処理低下障害、神経変性疾患および老化による疾患を処置または抑制するのに有用な化合物、ならびに酸化ストレス障害を処置もしくは抑制するために、または1種もしくは複数の(例えば1種、2種、3種またはそれ超の)エネルギーバイオマーカーをモジュレート、正常化、または強化するために、このような化合物を使用する方法を包含する。
本明細書で使用されている略語は、特に明記しない限り、化学的および生物学的な技術の範囲内でのこれらの従来の意味を有する。
値またはパラメーターに付く「約」への言及は、本明細書では、値またはパラメーターそれ自体を対象とする変化形を含む(および記載している)。例えば、「約X」に言及している記載は、「X」の記載を含む。
「a」または「an」という用語は、本明細書で使用される場合、他に文脈により明らかに指示されていない限り、1つまたは複数を意味する。
「対象」、「個体」、または「患者」とは、個々の生物、好ましくは脊椎動物、より好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。
本明細書で考察された化合物および方法を用いて障害を「処置する」とは、障害または障害の1種もしくは複数の症状のいずれかを減少させるまたは排除するために、あるいは障害または障害の1種もしくは複数の症状の進行を遅らせるために、または障害または障害の1種もしくは複数の症状の重症度を減少させるために、本明細書で考察された化合物の1種または複数を、追加の治療剤と共にまたは追加の治療剤なしで投与することと定義される。本明細書で考察された化合物および方法を用いた障害の「抑制」とは、障害の臨床徴候を抑制するために、または障害の有害症状である徴候を抑制するために、本明細書で考察された化合物の1種または複数を、追加の治療剤と共にまたは追加の治療剤なしで投与することと定義される。処置と抑制との区別は、処置は、障害の有害症状が対象に現れた後に起こるのに対して、抑制は、障害の有害症状が対象に現れる前に起こることにある。抑制は、部分的、実質的に全部、または全部であってよい。障害のいくつかは遺伝性であるため、遺伝子スクリーニングは、障害のリスクが高い患者を特定するために使用することができる。よって、本発明の化合物および方法は、任意の有害症状の出現を抑制するために、障害の臨床症状を発症するリスクが高い無症候性の患者に投与することができる。
本明細書で考察された化合物の「治療的使用」とは、上で定義されたように、障害を処置または抑制するために、本明細書で考察された化合物の1種または複数を使用することと定義される。化合物の「有効量」とは、1種または複数のエネルギーバイオマーカーをモジュレート、正常化、または強化する(モジュレーション、正常化、および強化は以下に定義される)のに十分な化合物の量である。化合物の「治療有効量」とは、対象に投与した場合、障害または障害の1種もしくは複数の症状のいずれかを減少させるまたは排除する、あるいは障害または障害の1種もしくは複数の症状の進行を遅らせる、あるいは障害または障害の1種もしくは複数の症状の重症度を減少させる、あるいは障害の臨床徴候を抑制する、あるいは障害の有害症状である徴候を抑制するのに十分である化合物の量である。治療有効量は、1回または複数回の投与で付与することができる。化合物の「有効量」は、治療有効量、および対象における1種または複数のエネルギーバイオマーカーをモジュレート、正常化、または強化するのに有効な量の両方を包含する。
エネルギーバイオマーカーの「モジュレーション」、またはエネルギーバイオマーカーを「モジュレートする」とは、エネルギーバイオマーカーのレベルを所望の値に向けて変化させる、またはエネルギーバイオマーカーのレベルを所望の方向(例えば、増加または低減)に変化させることを意味する。モジュレーションは、これらに限定されないが、以下に定義されている正常化および強化することを含むことができる。
エネルギーバイオマーカーの「正常化」、またはエネルギーバイオマーカーを「正常化する」とは、エネルギーバイオマーカーのレベルを、病的値から正常値に変化させることと定義され、この場合、エネルギーバイオマーカーの正常値は、1)健常な人間または対象におけるエネルギーバイオマーカーのレベル、または2)人間または対象において1種または複数の望ましくない症状を軽減するエネルギーバイオマーカーのレベルとすることができる。すなわち、疾患状態において抑制されているエネルギーバイオマーカーを正常化するとは、正常(健常)値に向けて、または望ましくない症状を軽減する値に向けてエネルギーバイオマーカーのレベルを増加させることを意味し、疾患状態において上昇しているエネルギーバイオマーカーを正常化するとは、正常(健常)値に向けてまたは望ましくない症状を軽減する値に向けて、エネルギーバイオマーカーのレベルを低減することを意味する。
エネルギーバイオマーカーの「強化」、またはエネルギーバイオマーカーを「強化する」とは、有利なまたは所望の作用を達成するために、1種または複数のエネルギーバイオマーカーのレベルを、正常値、または強化前の値のいずれかの値から意図的に変化させることを意味する。例えば、有意なエネルギー需要が対象に課された状況では、その対象におけるATPのレベルを、その対象におけるATPの正常なレベルより上のレベルに増加させることが望ましいこともある。エネルギーバイオマーカーを正常化しても、対象にとって最適な転帰を達成できないこともあるという意味で、疾患または病態、例えば、ミトコンドリア障害に罹患した対象において強化が有利な作用となることもでき、このような場合には、1種または複数のエネルギーバイオマーカーの強化が有利となり得る。例えば、ATPの正常レベルより高いレベル、または乳酸(ラクテート)の正常レベルより低いレベルがこのような対象にとって有利となる可能性がある。
エネルギーバイオマーカー補酵素Qをモジュレート、正常化、または強化するとは、対象となる種において優勢である補酵素Qの変異体(複数可)をモジュレート、正常化、または強化することを意味する。例えば、ヒトにおいて優勢である補酵素Qの変異体は補酵素Q10である。種または対象が、有意な量で存在する(すなわち、モジュレート、正常化、または強化した場合、種または対象に対して有利な作用を生じることができる量で存在する)補酵素Qの複数の変異体を持つ場合、補酵素Qをモジュレート、正常化、または強化することは、種または対象内に存在する補酵素Qの任意のまたはすべての変異体をモジュレート、正常化または強化することを指すことができる。
本明細書に記載されている化合物は、中性(非塩)化合物として生じるおよび使用することができる一方で、本記載は、本明細書に記載されている化合物のすべての塩、および化合物のこのような塩を使用する方法を包含することを意図する。一実施形態では、化合物の塩は、薬学的に許容される塩を含む。薬学的に許容される塩とは、ヒトおよび/または動物に薬物または調合薬として投与することができ、投与された時点で、遊離化合物(中性化合物または非塩化合物)の生物活性の少なくともいくらかを保持するような塩である。塩基性化合物の所望の塩は、当業者に公知の方法により、化合物を酸で処理することによって調製することができる。無機酸の例として、これらに限定されないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、およびリン酸が挙げられる。有機酸の例として、これらに限定されないが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイヒ酸、マンデル酸、スルホン酸、およびサリチル酸が挙げられる。アミノ酸との塩基性化合物の塩、例えば、アスパラギン酸塩およびグルタミン酸塩などもまた、調製することができる。酸性化合物の所望の塩は、当業者に公知の方法により、化合物を塩基で処理することによって調製することができる。酸性化合物の無機塩の例として、これらに限定されないが、アルカリ金属およびアルカリ土類塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、およびカルシウム塩;アンモニウム塩;ならびにアルミニウム塩が挙げられる。酸性化合物の有機酸塩の例として、これらに限定されないが、プロカイン、ジベンジルアミン、N−エチルピペリジン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、およびトリエチルアミン塩が挙げられる。リシン塩などのアミノ酸との酸性化合物の塩もまた調製することができる。
本発明はまた、化学的に可能である場合、ジアステレオマーおよびエナンチオマーを含めた化合物のすべての立体異性体を含む。本発明はまた、任意の比での可能な立体異性体の混合物も含み、これらには、これに限定されないが、ラセミ混合物が含まれる。立体配置が構造の中に明示的に示されていない限り、この構造は、図示されている化合物のすべての可能な立体異性体を包含することを意図する。分子の部分(複数可)に対しては立体配置が明示的に示されているが、分子の別の部分(複数可)に対しては示されていない場合、この構造は、立体配置が明示的に示されていない部分(複数可)に対するすべての可能な立体異性体を包含することを意図する。
化合物は、プロドラッグ形態で投与することができる。プロドラッグとは、化合物の誘導体であり、それ自体は比較的に不活性であるが、これらが使用される対象内に導入された時点で、酵素的変換などの、インビボにおける化学的または生物学的過程により活性化合物に変換する。適切なプロドラッグ製剤として、これらに限定されないが、本発明の化合物のペプチドコンジュゲートおよび本発明の化合物のエステルが挙げられる。適切なプロドラッグについてのさらなる考察は、H. Bundgaard、Design of Prodrugs、New York:Elsevier、1985年;R. Silverman、The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action、Boston:Elsevier、2004年;R.L. Juliano(編)、Biological Approaches to the Controlled Delivery of Drugs (Annals of the New York Academy of Sciences、v.507)、New York:New York Academy of Sciences, 1987;およびE.B. Roche(編)、Design of Biopharmaceutical Properties Through Prodrugs and Analogs (Symposium sponsored by Medicinal Chemistry Section、APhA Academy of Pharmaceutical Sciences、November 1976 national meeting、Orlando、Florida)、Washington:The Academy、1977年において提供されている。
本明細書中の化合物の記載はまた、本明細書中のすべての化合物のすべてのアイソトポローグ、例えば、部分的に重水素化したまたは過重水素化した類似体も含む。
化合物の代謝物もまた本発明により包含される。
「(C1〜C4)アルキル」は、1〜4個の炭素原子の飽和した、直鎖状の、分枝の、または環式の炭化水素、またはこれらの任意の組合せを包含することを意図する。「(C1〜C4)アルキル」の非限定的例として、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、シクロブチル、シクロプロピル−メチル、およびメチル−シクロプロピルが挙げられる。(C1〜C4)アルキル基における分子の残りの部分との結合点は、(C1〜C4)アルキル基上の任意の化学的に可能な場所であることができる。
「(C1〜C12)アルキル」は、1〜12個の炭素原子の飽和した、直鎖状の、分枝の、または環式の炭化水素、またはこれらの任意の組合せを包含することを意図する。「(C1〜C12)アルキル」の非限定的例として、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、シクロブチル、シクロプロピル−メチル、メチル−シクロプロピル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、およびドデシルが挙げられる。(C1〜C12)アルキル基における分子の残りの部分との結合点は、(C1〜C12)アルキル基上の任意の化学的に可能な場所であることができる。
「(C2〜C12)−アルケニル」は、2〜12個の炭素原子を有する、不飽和の直鎖状の、分枝の、もしくは環式基、またはこれらの任意の組合せを包含することを意図する。すべての二重結合は、独立して、(E)または(Z)のいずれかの配置、およびこれらの任意の混合物であってよい。アルケニル基の例として、これらに限定されないが、−CH2−CH=CH−CH3;および−CH2−CH2−シクロヘキセニルが挙げられ,エチル基は、任意の利用可能な炭素原子価でシクロヘキセニル部分に結合することができる。
「(C2〜C12)−アルキニル」は、少なくとも1つの三重結合を含有する、2〜12個の炭素原子を有する、不飽和の直鎖状の、分枝の、もしくは環式基、またはこれらの任意の組合せを包含することを意図する。
「ハロゲン」または「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードを意味する。
「(C1〜C4)ハロアルキル」は、少なくとも1つのハロゲン置換基を有する任意のC1〜C4アルキル置換基を包含することを意図する。ハロゲンは、C1〜C4アルキル基上の任意の原子価を介して結合することができる。C1〜C4ハロアルキルのいくつかの例は、−CF3、−CCl3、−CHF2、−CHCl2、−CHBr2,−CH2F、−CH2Cl、または−CF2CF3である。
「(C1〜C12)ハロアルキル」は、少なくとも1つのハロゲン置換基を有する任意のC1〜C12アルキル置換基を包含することを意図し、ハロゲンは、C1〜C12アルキル基上の任意の原子価を介して結合することができる。C1〜C12ハロアルキルの一部の例は、−CF3、−CCl3、−CHF2、−CHCl2、−CHBr2,−CH2F、−CH2Cl、または−CF2CF3である。
「アリール」という用語は、単環(例えば、フェニル)または複数の縮合した(融合した)環(例えば、ナフチル)を有する、6〜10個の炭素原子の芳香族環式炭化水素基を包含することを意図する。
「呼吸鎖障害」とは、ミトコンドリアの呼吸鎖に含有されるタンパク質または他の構成要素の欠陥または障害に起因する、ミトコンドリア、細胞、組織、または個体による酸素の利用の低減をもたらす障害を意味する。「ミトコンドリアの呼吸鎖に含有されているタンパク質または他の構成要素」とは、ミトコンドリアの複合体I、II、III、IV、および/またはVを含む(これらに限定されないが、タンパク質、テトラピロール、およびシトクロムを含む)構成要素を意味する。「呼吸鎖タンパク質」とは、これらの複合体のタンパク質構成要素を指し、「呼吸鎖タンパク質障害」とは、ミトコンドリアの呼吸鎖に含有されるタンパク質の欠陥または障害に起因する、ミトコンドリア、細胞、組織、または個体による酸素の利用の低減をもたらす障害を意味する。
「パーキンソン病」、(「パーキンソニズム」および「パーキンソン病症候群」とも呼ばれている)(「PD」)という用語は、パーキンソン病ばかりでなく、薬物誘発性パーキンソニズムおよび脳炎後パーキンソニズムも含むことを意図する。パーキンソン病は振戦麻痺または振盪麻痺としても公知である。パーキンソン病は、振戦、筋硬直および姿勢反射の損失を特徴とする。疾患は通常、10〜20年が経過する間にゆっくりと進行し、その後症状が不能状態を引き起こす。パーキンソン病の作用を模倣することから、動物のメタンフェタミンまたはMPTPでの処置を使用して、パーキンソン病のためのモデルを作り出している。これらの動物モデルを使用して、パーキンソン病のための様々な治療法の有効性を評価してきた。
「フリードライヒ運動失調症」という用語は、他の関連する運動失調を包含することを意図し、また時には、遺伝性運動失調、家族性運動失調、またはフリードライヒ消耗とも呼ばれる。
「運動失調」という用語は、小脳などの、運動を協調させる神経系の部分の機能不全を意味する非特異的臨床徴候である。運動失調を有する人々は、運動および平衡を制御する神経系の部分が影響を受けるので、協調運動に問題がある。運動失調は、指、手、腕、脚、胴、話し方、および眼球運動に影響を及ぼし得る。運動失調という単語は、多くの場合、中枢神経系における感染症、傷害、他の疾患、または変性的変化を伴う可能性がある協調運動の失調の症状について記載するために使用することができる。運動失調はまた、遺伝性運動失調および散発性運動失調と呼ばれる神経系の特定の変性疾患の群を意味するように使用される。運動失調はまた多くの場合聴力機能障害を伴う。
3種類の運動失調、すなわち、小脳性運動失調(前庭−小脳の機能不全、脊髄−小脳の機能不全、および大脳−小脳の機能不全を含む);感覚性運動失調;および前庭性運動失調が存在する。脊髄−小脳の運動失調または多系統萎縮症として分類できる疾患の例として、遺伝性オリーブ橋小脳萎縮症、遺伝性小脳皮質萎縮症、フリードライヒ運動失調症、マシャドジョセフ病、ラムゼーハント症候群、遺伝性歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、遺伝性痙性対麻痺、シャイ−ドレーガー症候群、皮質性小脳萎縮症、線条体黒質変性症、マリネスコ−シェーグレン症候群、アルコール性皮質性小脳萎縮症、悪性腫瘍に伴う腫瘍随伴性小脳萎縮症、有毒物質により引き起こされる有毒性小脳萎縮症、トコフェロール輸送タンパク質(aTTP)の突然変異に起因するビタミンE欠損症または脂質吸収障害、例えば、無βリポタンパク質血症、内分泌性妨害を伴う小脳萎縮症などがある。
運動失調症状の例として、運動性運動失調、躯幹運動失調、四肢運動失調など、自律神経障害、例えば、起立性低血圧、排尿障害、発汗低下、睡眠時無呼吸、起立性失神など、下肢の硬直、眼性眼振、動眼神経障害、錐体路機能不全、錐体外路症状(姿勢調整機能不全、筋硬直、アキネジア、振戦)、嚥下障害、舌萎縮、脊髄後索症状、筋萎縮、筋力低下、深部反射亢進、感覚障害、脊柱側弯症、後側弯症、足変形、構語障害、認知症、躁状態、リハビリテーションに対するモチベーションの低減などがある。
本発明の化合物および方法を用いた処置または抑制に適している疾患
様々な障害/疾患、例えば、ミトコンドリア障害、エネルギー処理低下障害、神経変性疾患および老化による疾患などは細胞内の正常な電子流に影響を及ぼす酸化ストレスにより引き起こされるまたは悪化すると考えられており、本発明の化合物および方法を使用して処置または抑制することができる。
酸化ストレス障害の非限定的例として、例えば、ミトコンドリア障害(遺伝性ミトコンドリア病を含む)、例えば、アルパース病、バース症候群、β酸化欠陥、カルニチン−アシル−カルニチン欠損症、カルニチン欠損症、クレアチン欠損症症候群、コエンザイムQ10欠損症、複合体I欠損症、複合体II欠損症、複合体III欠損症、複合体IV欠損症、複合体V欠損症、COX欠損症、慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO)、CPT I欠損症、CPT II欠損症、フリードライヒ運動失調症(FA)、グルタル酸尿症II型、ケアーンズセイヤー症候群(KSS)、乳酸アシドーシス、長鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ欠損症(LCAD)、LCHAD、リー病またはリー症候群、リー様症候群、レーベル遺伝性視神経萎縮症(LHON、レーベル疾患、レーベル視神経萎縮(LOA)、またはレーベル視神経症(LON)とも呼ばれる)、致命的な乳児性心筋症(LIC)、ルフト病、多種アシルCoAデヒドロゲナーゼ欠損症(MAD)、中鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ欠損症(MCAD)、ミトコンドリア脳筋症、ラクトアシドーシス、脳卒中症候群(MELAS)、赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌスてんかん(MERRF)、ミトコンドリア劣性運動失調症候群(MIRAS)、ミトコンドリア細胞症、ミトコンドリアDNA欠失、ミトコンドリア脳症、ミトコンドリアミオパシー、ミトコンドリア神経胃腸性障害および脳症(MNGIE)、ニューロパシー、運動失調、および網膜色素変性症(NARP)、ピアソン症候群、ピルビン酸カルボキシラーゼ欠損症、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ欠損症、POLG突然変異、呼吸鎖障害、短鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ欠損症(SCAD)、SCHAD、超長鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ欠損症(VLCAD);ミオパシー、例えば、心筋症および脳筋症など;神経変性疾患、例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、および筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルーゲーリック病としても公知)など;運動ニューロン疾患;神経疾患、例えば、てんかんなど;老化に伴う疾患、特にCoQ10が処置のために提案されている疾患、例えば、黄斑変性、糖尿病、メタボリックシンドローム、およびがん(例えば脳がん)など;遺伝性疾患、例えば、ハンチントン病(これは神経疾患でもある);気分障害、例えば、統合失調症および双極性障害など;広汎性発達障害、例えば、自閉症性障害、アスペルガー症候群、小児期崩壊性障害(CDD)、レット症候群、および特定不能の広汎性発達障害(PDD−NOS);脳血管発作、例えば、脳卒中など;視力機能障害、例えば、眼の神経変性疾患により引き起こされるもの、例えば、視神経症、レーバー遺伝性視神経萎縮症、優性遺伝性若年性視神経萎縮症、有毒薬剤により引き起こされる視神経症、緑内障、加齢黄斑変性(「乾燥型」または非浸出性の黄斑変性と「湿潤型」または浸出性の黄斑変性の両方)、シュタルガルト黄斑ジストロフィー、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑症、未熟児網膜症、または虚血再灌流関連の網膜損傷;エネルギー機能障害により引き起こされる障害(酸素の剥脱、毒作用または毒性、および酸素輸送における定性的または定量的破壊に起因する疾患を含む)例えば、ヘモグロビン異常症(haemoglobionopathies)、例えばサラセミアまたは鎌状赤血球性貧血など;ミトコンドリア機能不全が関与している他の疾患、例えば、興奮毒性、ニューロン損傷、例えば、発作、脳卒中および虚血に関連するものなど;ならびに尿細管性アシドーシスを含めた他の障害;注意欠陥/多動性障害(ADHD);聴力または平衡機能障害をもたらす神経変性障害;優性視神経萎縮症(DOA);母系遺伝性糖尿病および難聴(MIDD);慢性疲労;造影剤誘発性腎障害;造影剤誘発性網膜症損傷;無βリポタンパク質血症;網膜色素変性症;ウォフラム病;トゥレット症候群;コバラミンC型欠陥;メチルマロン酸尿症;グリア芽細胞腫;ダウン症候群;急性尿細管壊死;筋ジストロフィー;白質ジストロフィー;進行性核上性麻痺;脊髄性筋萎縮症;聴覚損失(例えばノイズ誘発性聴覚損失);外傷性脳傷害;若年性ハンチントン病;多発性硬化症;NGLY1;多系統萎縮症;副腎白質ジストロフィー;および副腎脊髄神経障害。が挙げられる。ある特定の特異的な疾患または障害は、2種以上のカテゴリーに入り得ることを理解されたい;例えば、ハンチントン病は遺伝性疾患および神経疾患である。さらに、ある特定の酸化ストレス疾患および障害もミトコンドリア異常とみなすことができる。
本発明の化合物および方法を用いた処置に適しているいくつかの障害に関しては、障害の主要な原因は、呼吸鎖の欠陥あるいはミトコンドリア、細胞、または組織(複数可)内でのエネルギーの正常な利用を妨げる別の欠陥によるものである。このカテゴリーに入る障害の非限定的例として、遺伝性ミトコンドリア病、例えば、赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌスてんかん(MERRF)、ミトコンドリア脳筋症、ラクトアシドーシス、および脳卒中(MELAS)、レーベル遺伝性視神経萎縮症(LHON、レーベル疾患、レーベル視神経萎縮(LOA)、またはレーベル視神経症(LON)ともと呼ばれる)、リー病またはリー症候群、ケアーンズセイヤー症候群(KSS)、およびフリードライヒ運動失調症(FA)が挙げられる。本発明の化合物および方法を用いた処置に適しているいくつかの障害に関して、障害の主要な原因は、呼吸鎖欠陥あるいはミトコンドリア、細胞、または組織(複数可)内でのエネルギーの正常な利用を妨げる他の欠陥によるものではない;このカテゴリーに入る障害の非限定的例として、脳卒中、がん、および糖尿病が挙げられる。しかし、これら後者の障害は、特にエネルギー機能障害により悪化し、この状態を回復させるために、本発明の化合物を用いた処置が特に適している。このような障害に関連のある例として、障害の主要な原因が、脳への血液供給の障害によるものである、虚血性脳卒中および出血性の脳卒中が挙げられる。血栓症または塞栓症により引き起こされる虚血性状態の発症、または血管の断裂により引き起こされる出血性状態の発症は、呼吸鎖の欠陥またはエネルギーの正常な利用を妨げる別の代謝性欠陥によって主に引き起こされるわけではないが、酸化ストレスは、低酸素後の酸素再灌流障害に起因する虚血性カスケードにある役割を果たしている(このカスケードは心発作および脳卒中において生じる)。したがって、本発明の化合物および方法を用いた処置は、疾患、障害または状態の作用を緩和することになる。1種もしくは複数のエネルギーバイオマーカーをモジュレートする、1種もしくは複数のエネルギーバイオマーカーを正常化する、または1種もしくは複数のエネルギーバイオマーカーを強化することは、治療手段および予防手段の両方としてこのような障害に有利となることができる。例えば、動脈瘤の非緊急修復を受ける予定である患者に対して、修復が成功する前に動脈瘤が断裂してしまうことがないように、術前期間の前および術前期間中にエネルギーバイオマーカーを強化することで、この患者の予後を改善することができる。
「酸化ストレス障害」または「酸化ストレス疾患」という用語は、酸化ストレスにより引き起こされる疾患と、酸化ストレスによる悪化する疾患の両方を包含する。「酸化ストレス障害」または「酸化ストレス疾患」という用語は、疾患の主要な原因が、呼吸鎖の欠陥あるいはミトコンドリア、細胞、または組織(複数可)内でのエネルギーの正常な利用を妨げる別の欠陥によるものである疾患および障害と、また、疾患の主要な原因が、呼吸鎖の欠陥あるいはミトコンドリア、細胞、または組織(複数可)内でのエネルギーの正常な利用を妨げる別の欠陥によるものではない疾患および障害の両方を包含する。前者の一連の疾患は、「1次的酸化ストレス障害」と呼ぶことができ、後者は「2次的酸化ストレス障害」と呼ぶことができる「酸化ストレスにより引き起こされる疾患」と「酸化ストレスにより悪化する疾患」の区別は絶対的ではなく、疾患は、酸化ストレスにより引き起こされる疾患と酸化ストレスにより悪化する疾患の両方であってよいことに注目するべきである。「1次的酸化ストレス障害」と「2次的酸化ストレス障害」との間の境界はさらに明確であるが、ただし、疾患または障害の1次的原因は1つしかなく、1次的原因は公知であるものとする。
酸化ストレスにより引き起こされる疾患と酸化ストレスにより悪化する疾患の間のいくぶん流動的な境界を踏まえれば、ミトコンドリア病または障害およびエネルギー処理低下疾患および障害は、酸化ストレスにより引き起こされる疾患のカテゴリーに入る傾向にあるのに対して、神経変性障害および老化による疾患は、酸化ストレスにより悪化する疾患のカテゴリーに入る傾向にある。ミトコンドリア病または障害およびエネルギー処理低下疾患および障害は、一般的に1次的酸化ストレス障害であるのに対して、神経変性障害および老化による疾患は1次的または2次的酸化ストレス障害となり得る。
ミトコンドリア機能不全および治療の有効性の臨床的評価
いくつかの容易に測定可能な臨床的マーカーを使用して、酸化ストレス障害を有する患者の代謝性状態を査定する。これらのマーカーは、マーカーのレベルが病的な値から健常値に移動するので、付与された治療の有効性の指標としても使用することができる。これらの臨床的マーカーとして、これらに限定されないが、エネルギーバイオマーカー、例えば、全血、血漿、脳脊髄液、または脳室液のいずれかの中の乳酸(ラクテート)レベルなど;全血、血漿、脳脊髄液、または脳室液のいずれかの中のピルビン酸(ピルベート)レベル;全血、血漿、脳脊髄液、または脳室液のいずれかの中の乳酸/ピルビン酸比;全血、血漿、リンパ球、脳脊髄液、または脳室液のいずれかの中の総、還元型もしくは酸化型グルタチオンレベル、または還元型/酸化型グルタチオン比;全血、血漿、リンパ球、脳脊髄液、または脳室液のいずれかの中の総、還元型もしくは酸化型システインレベル、または還元型/酸化型システイン比;クレアチンリン酸レベル、NADH(NADH+H+)またはNADPH(NADPH+H+)レベル;NADまたはNADPレベル;ATPレベル;嫌気性閾値;還元型補酵素Q(CoQred)レベル;酸化型補酵素Q(CoQox)レベル;総補酵素Q(CoQtot)レベル;酸化型シトクロムCレベル;還元型シトクロムCレベル;酸化型シトクロムC/還元型シトクロムC比;アセトアセテート塩レベル、βヒドロキシ酪酸レベル、アセトアセテート塩/βヒドロキシ酪酸比、8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(8−OHdG)レベル;反応性酸素種のレベル;および酸素消費(VO2)レベル、二酸化炭素排出量(VCO2)レベル、および呼吸器の指数(VCO2/VO2)が挙げられる。これらの臨床的マーカーのいくつかは、運動生理機能学の実験室で規定通りに測定され、対象の代謝状態の評価が得られるのが便利である。本発明の一実施形態では、酸化ストレス障害、例えば、フリードライヒ運動失調症、レーベル遺伝性視神経萎縮症、MELAS、KSSまたはCoQ10欠損症などに罹患した患者における1種または複数のエネルギーバイオマーカーのレベルは、健常な対象の平均レベルの2の標準偏差内で改善される。本発明の別の実施形態では、酸化ストレス障害、例えば、フリードライヒ運動失調症、レーベル遺伝性視神経萎縮症、MELAS、KSSまたはCoQ10欠損症などに罹患した患者のこれらのエネルギーバイオマーカーの1種または複数のレベルは、健常な対象の平均レベルの1の標準偏差内で改善される。運動耐容能低下もまた付与される治療の有効性の指標として使用することができ、この場合、運動耐容能の改善(すなわち、運動耐容能低下の低減)は、付与される治療の有効性を示す。
いくつかの代謝バイオマーカーがCoQ10の有効性を評価するためにすでに使用されており、これらの代謝バイオマーカーを、本発明の方法における使用のためのエネルギーバイオマーカーとしてモニターすることができる。グルコースの嫌気性代謝産物である乳酸は、好気性環境においてピルビン酸への還元により、または酸化的代謝により除去されるが、これは、機能性ミトコンドリアの呼吸鎖に依存する。呼吸鎖の機能不全は、循環からの、乳酸およびピルビン酸の不十分な排除をもたらす可能性があり、乳酸/ピルビン酸比の上昇がミトコンドリア細胞症において観察される(Scriver CR、The metabolic and molecular bases of inherited disease、第7版、New York:McGraw−Hill、Health Professions Division、1995年;およびMunnichら、J. Inherit. Metab. Dis.、15巻(4号):448〜55頁(1992年)を参照されたい)。したがって、血液の乳酸/ピルビン酸比(Chariotら、Arch. Pathol. Lab. Med.、118巻(7号):695〜7頁(1994年))は、ミトコンドリア細胞症(Scriver CR、The metabolic and molecular bases of inherited disease、第7版、New York:McGraw−Hill、Health Professions Division、1995年;およびMunnichら、J. Inherit. Metab. Dis.、15巻(4号):448〜55頁(1992年)を再度参照されたい)および有毒性ミトコンドリアミオパシー(Chariotら、Arthritis Rheum.、37巻(4号):583〜6頁(1994年))の検出のための非侵襲性試験として広く使用されている。肝臓ミトコンドリアのレドックス状態の変化は、動脈のケトン体の比(アセトアセテート塩/3−ヒドロキシ酪酸塩:AKBR)を測定することによって調査することができる(Uedaら、J. Cardiol.、29巻(2号):95〜102頁(1997年))。8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(8−OHdG)の尿中排出は、多くの場合、臨床的環境と職場環境の両方におけるROS誘発性DNA損傷の修復程度を査定するためのバイオマーカーとして使用されてきた(Erholaら、FEBS Lett. 409巻(2号):287〜91頁(1997年);Hondaら、Leuk. Res.、24巻(6号):461〜8頁(2000年);Pilgerら、Free Radic. Res.、35巻(3号):273〜80頁(2001年);Kimら、Environ Health Perspect、112巻(6号):666〜71頁(2004年))。
磁気共鳴分光法(MRS)は、プロトンMRS(1H−MRS)を使用して脳脊髄液(CSF)および皮質白色物質乳酸の上昇を実証することにより、ミトコンドリア細胞症の診断において有用である(Kaufmannら、Neurology、62巻(8号):1297〜302頁(2004年))、リンMRS(31P−MRS)は、低レベルの皮質性クレアチンリン酸(PCr)(Matthewsら、Ann. Neurol.、29巻(4号):435〜8頁(1991年))、および骨格筋における運動後のPCr回復速度の遅延(Matthewsら、Ann. Neurol.、29巻(4号):435〜8頁(1991年);Barbiroliら、J. Neurol.、242巻(7号):472〜7頁(1995年);Fabriziら、J. Neurol. Sci.、137巻(1号):20〜7頁(1996年))を実証するために使用されてきた。直接的生化学的測定によって、ミトコンドリア細胞症の患者において、低い骨格筋PCrもまた確認されている。
運動負荷試験は、ミトコンドリアミオパシーにおける評価およびスクリーニングツールとして特に有益である。ミトコンドリアミオパシーの顕著な特徴の1つは、最大全身酸素消費量(VO2最大量)の減少である(Taivassaloら、Brain、126巻(Pt2):413〜23頁(2003年))。VO2最大量が心拍出量(Qc)と末梢の酸素抽出量(動脈−静脈の総酸素含有量)の差によって求められると仮定すると、いくつかのミトコンドリア細胞症は、送達が変わる可能性のある心機能に影響を及ぼす。しかし、大部分のミトコンドリアミオパシーは、末梢の酸素抽出量(A−VO2差)の特徴的欠乏および酸素送達の増強(過剰循環)を示す(Taivassaloら、Brain、126巻(Pt2):413〜23頁(2003年))。これは、直接的なAVバランスの測定を用いて(Taivassaloら、Ann. Neurol.、51巻(1号):38〜44頁(2002年))および近赤外分光法により非侵襲的に(Lynchら、Muscle Nerve、25巻(5号):664〜73頁(2002年);van Beekveltら、Ann. Neurol.、46巻(4号):667〜70頁(1999年))、静脈血の運動誘発性脱酸素化の欠如により実証することができる。
これらのエネルギーバイオマーカーのいくつかは、以下の通りさらに詳細に考察される。特定のエネルギーバイオマーカーが本明細書で考察され、列挙されているが、本発明は、これらの列挙されたエネルギーバイオマーカーのみのモジュレーション、正常化または強化に限定されないことを強調したい。
乳酸(ラクテート)レベル:ミトコンドリア機能不全では通常、ピルビン酸レベルが増加し、解糖のための能力を維持するためにピルビン酸が乳酸に変換されるため、異常なレベルの乳酸が生じる。還元されたニコチンアミドアデニンジヌクレオチドが呼吸鎖により効率的に処理されないことから、ミトコンドリア機能不全によって異常なレベルのNADH+H+、NADPH+H+、NAD、またはNADPも生じ得る。乳酸レベルは、適切な体液、例えば、全血、血漿、または脳脊髄液などの試料を採取することによって測定することができる。乳酸レベルは、磁気共鳴を使用して、実質的にあらゆる容量の所望の実体、例えば、脳などにおいて測定することができる。
MELAS患者における、磁気共鳴を使用した脳の乳酸アシドーシスの測定は、Kaufmannら、Neurology、62巻(8号):1297頁(2004年)において記載されている。脳の側脳室内の乳酸レベルの値が、MELASをもたらす2つの突然変異体、A3243GおよびA8344Gに対して提示されている。全血、血漿、および脳脊髄液乳酸レベルは、市販の装置、例えば、YSI 2300 STAT Plus Glucose & Lactate Analyzer(YSI Life Sciences、Ohio)により測定することができる。
NAD、NADP、NADHおよびNADPHレベル:NAD、NADP、NADH(NADH+H+)またはNADPH(NADPH+H+)の測定は、様々な蛍光性、酵素的、または電気化学的技法、例えば、US2005/0067303に記載されている電気化学的アッセイにより測定することができる。
GSH、GSSG、Cys、およびCySSレベル:簡単に説明すると、GSH、GSSG、Cys、およびCySSの血漿レベルは、インビボでのEh値を計算するために使用される。Jonesら(2009年、Free Radical Biology & Medicine、47巻(10号)1329〜1338頁)の手順を使用して試料を収集し、ブロモビマンを使用して、遊離チオールをアルキル化し、HPLCおよび電気化学的質量分析計またはMSMSのいずれかを使用して、分子を分離、検出、および定量化する。2012年9月7日に出願した米国仮特許出願第61/698,431号、および代理人整理番号526303005501で2013年3月15日に出願した米国仮特許出願においてさらに詳細に記載されているように、ヒト血漿中に存在する最も一般的なモノチオールおよびジスルフィド(シスチン、システイン、還元型グルタチオン(GSH)および酸化型グルタチオン(GSSG))を分析するために、および内部標準(IS)としてバソフェナントロリンジスルホン酸を使用して、異なる実験パラメーターに対する方法が開発された。検出器電位1475mVで、DCモードで電気化学的検出器を使用して、0.6ml/分の速度で、ポンプで送り込まれる移動相として0.2%TFA:アセトニトリルを使用して、35℃での、C18 RP カラム(250mm×4.6mm、3ミクロン)上でのすべてのターゲット分析物およびISの完全な分離を達成した。
酸素消費量(vO2またはVO2)、二酸化炭素排出量(vCO2またはVCO2)、および呼吸商(VCO2/VO2):vO2は通常、安静時(安静時vO2)または最大運動強度(vO2最大量)のいずれかで測定される。最適には、両方の値を測定する。しかし、重篤な障害をもつ患者については、vO2最大量の測定は非現実的であり得る。両方の形態のvO2の測定は、様々な販売元、例えばKorr Medical Technologies、Inc.(Salt Lake City、Utah)からの標準装置を使用して容易に達成される。VCO2もまた、容易に測定することができ、同一条件下でのVCO2とVO2の比(VCO2/VO2、安静時または最大運動強度のいずれか)により、呼吸商(RQ)が得られる。
酸化型シトクロムC、還元型シトクロムC、および酸化型シトクロムCと還元型シトクロムCの比:シトクロムCパラメーター、例えば、酸化型シトクロムCレベル(CytCox)、還元型シトクロムCレベル(CytCred)、および酸化型シトクロムC/還元型シトクロムCの比(CytCox)/(CytCred)は、インビボで近赤外分光法により測定することができる。例えば、Rolfe、P.、「In vivo near−infrared spectroscopy」、Annu. Rev. Biomed. Eng.、2巻:715〜54頁(2000年)およびStrangmanら、「Non−invasive neuroimaging using near−infrared light」、Biol. Psychiatry、52巻:679〜93頁(2002年)を参照されたい。
運動耐容能/運動耐容能低下:運動耐容能低下は、「呼吸困難または疲労の症状による、大きな骨格筋の動的運動に関与している活動を実施する能力の減少」と定義される(Pinaら、Circulation、107巻:1210頁(2003年))。運動耐容能低下は、多くの場合、筋肉組織の分解、およびそれに続く尿中への筋肉ミオグロビンの排出により、ミオグロビン尿症を伴う。消耗するまでトレッドミルを歩行または走行するのに費やした時間、消耗するまでエクササイズバイク(固定された自転車)に費やした時間など、運動耐容能低下の様々な尺度を使用することができる。本発明の化合物または方法を用いた処置は、運動耐容能の約10%またはそれ超の改善(例えば、消耗までの時間の約10%またはそれ超、例えば、10分間〜11分間の増加)、運動耐容能の約20%またはそれ超の改善、運動耐容能の約30%またはそれ超の改善、運動耐容能の約40%またはそれ超の改善、運動耐容能の約50%またはそれ超の改善、運動耐容能の約75%またはそれ超の改善、または運動耐容能の約100%またはそれ超の改善をもたらすことができる。運動耐容能は、厳密に言うと、本発明の目的のためのエネルギーバイオマーカーではないが、エネルギーバイオマーカーのモジュレーション、正常化、または強化には、運動耐容能のモジュレーション、正常化、または強化が含まれる。
同様に、ピルビン酸(ピルベート)レベルの正常値および異常値、乳酸/ピルビン酸比、ATPレベル、嫌気性閾値、還元型補酵素Q(CoQred)レベル、酸化型補酵素Q(CoQox)レベル、総補酵素Q(CoQtot)レベル、酸化型シトクロムCレベル、還元型シトクロムCレベル、酸化型シトクロムC/還元型シトクロムC比、GSHおよびシステインの還元型、酸化型、総レベルおよび比、アセトアセテート塩レベル、βヒドロキシ酪酸レベル、アセトアセテート塩/βヒドロキシ酪酸比、8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(8−OHdG)レベル、および反応性酸素種のレベルに対する試験は当技術分野で公知であり、本発明の化合物および方法の有効性を評価するために使用することができる。(本発明の目的のため、エネルギーバイオマーカーのモジュレーション、正常化、または強化は、嫌気性閾値のモジュレーション、正常化、または強化を含む。)
以下の表1は、様々な機能不全が生化学およびエネルギーバイオマーカーに対して生じる可能性がある作用を例示している。表1はまた、所与の機能不全に通常伴う物理的作用(例えば、疾患症状または機能不全の他の作用)も示している。他の箇所で列挙されたエネルギーバイオマーカーに加えて、表の中で列挙されたエネルギーバイオマーカーのいずれもまた、本発明の化合物および方法により、モジュレート、強化、または正常化することができることに注目されたい。RQ=呼吸商;BMR=基礎代謝率;HR(CO)=心拍数(心拍出量);T=体温(好ましくは核心温として測定);AT=嫌気性閾値、pH=血液pH(静脈および/または動脈)。
本発明の方法に従い、酸化ストレス障害に罹った対象を処置することにより、対象における症状の減少または軽減を誘発する、例えば、障害のさらなる進行を停止させることができる。
酸化ストレス障害の部分的または完全な抑制により、対象がさもなければ経験することになる症状のうちの1種または複数の重症度を和らげることができる。例えば、MELASの部分的な抑制は、罹患した脳卒中様症状または発作発症の回数の減少をもたらすことができる。
本明細書に記載されているエネルギーバイオマーカーの任意の1つまたは任意の組合せは、処置または抑制的治療の有効性を測るための便利に測定可能な基準を提供する。加えて、他のエネルギーバイオマーカーが当業者に公知であり、処置または抑制的治療の有効性を評価するためにモニターすることができる。
エネルギーバイオマーカーのモジュレーションのための化合物の使用
酸化ストレス疾患の処置または抑制の状態を査定するために、エネルギーバイオマーカーをモニタリングすることに加えて、本発明の化合物は、1種または複数のエネルギーバイオマーカーをモジュレートするために、対象または患者に使用することができる。エネルギーバイオマーカーのモジュレーションは、対象内でエネルギーバイオマーカーを正常化するために、または対象内でエネルギーバイオマーカーを強化するために行うことができる。
1種または複数のエネルギーバイオマーカーの正常化とは、1種もしくは複数のエネルギーバイオマーカーのレベルが正常レベル(すなわち、健常な対象におけるレベル)から病的な差異を示している対象において、1種もしくは複数のこのようなエネルギーバイオマーカーのレベルを、正常またはほぼ正常なレベルに修復すること、または対象内の病的症状を軽減するために1種もしくは複数のエネルギーバイオマーカーのレベルを変化させることのいずれかであると定義される。エネルギーバイオマーカーの性質に応じて、このようなレベルは、正常値の上または下のいずれかの測定値を示すことができる。例えば、病的乳酸レベルは通常、正常な(すなわち、健常な)人間の乳酸レベルよりも高く、このレベルを低減させることが望ましいこともある。病的ATPレベルは通常、正常な(すなわち、健常な)人間のATPレベルより低く、ATPレベルを増加させることが望ましいこともある。したがって、エネルギーバイオマーカーの正常化は、エネルギーバイオマーカーのレベルを、対象の正常値の少なくとも約2の標準偏差の範囲内に、より好ましくは対象の正常値の少なくとも約1の標準偏差の範囲内に、正常値の少なくとも約2分の1の標準偏差の範囲内に、または正常値の少なくとも約4分の1の標準偏差の範囲内に修復することを含み得る。
1種または複数のエネルギーバイオマーカーのレベルの強化は、対象の1種もしくは複数のエネルギーバイオマーカーの現存のレベルを、対象にとって有利なまたは所望の作用を提供するレベルに変化させることと定義される。例えば、激しい作業または長期の激しい肉体的活動、例えば、登山などを行っている人間であれば、ATPレベルの増加または乳酸レベルの低減は有利となり得る。上に記載のように、エネルギーバイオマーカーの正常化は、酸化ストレス疾患を有する対象にとって最適の状態を達成することはできないこともあり、このような対象は、エネルギーバイオマーカーの強化が有利となり得る。1種または複数のエネルギーバイオマーカーのレベルの強化が有利となり得る対象の例として、これらに限定されないが、激しいまたは長期の肉体的活動を行っている対象、慢性のエネルギー問題を持つ対象、または慢性的な呼吸器の問題を持つ対象が挙げられる。このような対象として、これらに限定されないが、妊婦、特に分娩時の妊婦;新生児、特に早産児;極限環境、例えば、高温環境(日常的に華氏約85〜86度または摂氏約30度を上回る温度に、1日約4時間またはそれ超)、低温環境(日常的に、華氏約32度または摂氏約0度未満の温度に、1日約4時間またはそれ超)、または酸素含有量が平均より低い環境、二酸化炭素含有量が平均より高い環境、または大気汚染のレベルが平均より高い環境に曝露される対象(航空機旅行客、客室乗務員、高い高度にいる対象、大気質が平均より低い都市で生活する対象、大気質が低下した密閉環境で働く対象);肺疾患を有するまたは肺気量が平均より低い対象、例えば、結核患者、肺がん患者、肺気腫患者、および嚢胞性線維症患者など;手術または病気から回復しつつある対象;エネルギー低下を経験しつつある高齢の対象を含めた高齢の対象;慢性疲労症候群を含めた、慢性疲労に罹患した対象;急性外傷を受けた対象;ショック状態の対象;急性の酸素投与を必要とする対象;慢性の酸素投与を必要とする対象;またはエネルギーバイオマーカーの強化が有利となり得る、急性的、慢性的、もしくは現時点でエネルギーを必要とする他の対象が挙げられる。
したがって、1種または複数のエネルギーバイオマーカーのレベルの増加が対象に有利である場合、1種または複数のエネルギーバイオマーカーの強化は、それぞれのエネルギーバイオマーカー(複数可)のレベルを、正常値よりも少なくとも約4分の1の標準偏差だけ上に、正常値よりも少なくとも約2分の1の標準偏差だけ上に、正常値よりも少なくとも約1の標準偏差だけ上に、または正常値よりも少なくとも約2の標準偏差だけ上に増加させることを含むことができる。代わりに、1種または複数のエネルギーバイオマーカーのレベルは、強化以前のそれぞれの1種もしくは複数のエネルギーバイオマーカーの対象のレベルよりも少なくとも約10%上に、強化以前のそれぞれの1種もしくは複数のエネルギーバイオマーカーの対象のレベルよりも少なくとも約20%上に、強化以前のそれぞれの1種もしくは複数のエネルギーバイオマーカーの対象のレベルよりも少なくとも約30%上に、強化以前のそれぞれの1種もしくは複数のエネルギーバイオマーカーの対象のレベルよりも少なくとも約40%上に、強化以前のそれぞれの1種もしくは複数のエネルギーバイオマーカーの対象のレベルよりも少なくとも約50%上に、強化以前のそれぞれの1種もしくは複数のエネルギーバイオマーカーの対象のレベルよりも少なくとも約75%上に、または強化以前のそれぞれの1種もしくは複数のエネルギーバイオマーカーの対象のレベルよりも約少なくとも100%上に増加させることができる。
1種または複数のエネルギーバイオマーカーを強化するために、1種または複数のエネルギーバイオマーカーのレベルの低減が所望される場合、1種もしくは複数のエネルギーバイオマーカーのレベルは、対象における正常値の少なくとも約4分の1の標準偏差の量だけ低減させる、対象における正常値の少なくとも約2分の1の標準偏差だけ低減させる、対象における正常値の少なくとも約1の標準偏差だけ低減させる、または対象における正常値の少なくとも約2の標準偏差だけ低減させることができる。代わりに、1種または複数のエネルギーバイオマーカーのレベルは、強化以前のそれぞれの1種または複数のエネルギーバイオマーカーの対象のレベルよりも少なくとも約10%、強化以前のそれぞれの1種または複数のエネルギーバイオマーカーの対象のレベルよりも少なくとも約20%、強化以前のそれぞれの1種または複数のエネルギーバイオマーカーの対象のレベルよりも少なくとも約30%、強化以前のそれぞれの1種または複数のエネルギーバイオマーカーの対象のレベルよりも少なくとも約40%、強化以前のそれぞれの1種または複数のエネルギーバイオマーカーの対象のレベルよりも少なくとも約50%、強化以前のそれぞれの1種または複数のエネルギーバイオマーカーの対象のレベルよりも少なくとも約75%、または強化以前のそれぞれの1種または複数のエネルギーバイオマーカーの対象のレベルよりも少なくとも約90%低減させることができる。
研究用途、実験系、およびアッセイにおける化合物の使用
本発明の化合物はまた研究用途に使用することもできる。本発明の化合物は、実験系における1種または複数のエネルギーバイオマーカーをモジュレートするためのインビトロの、インビボで、またはエクスビボ実験で使用することができる。このような実験系は、細胞試料、組織試料、細胞成分または細胞成分の混合物、部分的器官、全器官、または生物体であることができる。式Iの化合物のいずれか1つまたは複数を、実験系または研究用途に使用することができる。このような研究用途は、これらに限定されないが、アッセイ試薬としての使用、生化学的経路の解明、または本発明の1種もしくは複数の化合物の存在下/不在下での実験系の代謝状態についての他の薬剤の作用の評価を含むことができる。
加えて、本発明の化合物は、生化学的試験またはアッセイに使用することができる。このような試験として、本発明の1種もしくは複数の化合物を、対象由来の組織または細胞試料と共にインキュベートすることによって、前記1種もしくは複数の化合物の投与に対する対象の潜在的応答(または対象の特定のサブセットの応答)を評価する、または本発明のどの化合物が特定の対象もしくは対象のサブセットにおいて最適作用を生じるかを決定することを挙げることができる。1つのこのような試験またはアッセイは、以下を含む:1)対象から細胞試料または組織試料を得ること(対象内の1種または複数のエネルギーバイオマーカーのモジュレーションをアッセイすることができる);2)1種もしくは複数の本発明の化合物を、細胞試料または組織試料に投与すること;および3)1種または複数の化合物の投与後、1種または複数の化合物の投与前のエネルギーバイオマーカーの状態と比較して、1種または複数のエネルギーバイオマーカーのモジュレーションの量を求めること。別のこのような試験またはアッセイは、以下を含む:1)対象から細胞試料または組織試料を得ること(対象内の1種または複数のエネルギーバイオマーカーのモジュレーションをアッセイすることができる);2)少なくとも2種の本発明の化合物を細胞試料または組織試料に投与すること;3)少なくとも2種の化合物の投与後、少なくとも2種の化合物の投与以前のエネルギーバイオマーカーの状態と比較して、1種または複数のエネルギーバイオマーカーのモジュレーションの量を求めること、および4)ステップ3で求めたモジュレーションの量に基づいて、処置、抑制、またはモジュレーションに使用するための化合物(複数可)を選択すること。
医薬製剤
本明細書に記載されている化合物は、添加物、例えば、薬学的に許容される添加剤、薬学的に許容される担体、および薬学的に許容されるビヒクルなどを用いて、製剤化により医薬組成物として製剤化することができる。適切な薬学的に許容される添加剤、担体およびビヒクルとして、加工剤およびドラッグデリバリー改質剤および強化剤、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、単糖、二糖、デンプン、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストロース、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ポリビニルピロリジノン、低融点ワックス、イオン交換樹脂など、ならびにこれらのいずれか2種またはそれ超の組合せが挙げられる。他の適切な薬学的に許容される添加剤は、本明細書に参照により組み込まれる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、Mack Pub. Co.、New Jersey、(1991年)および「Remington: The Science and Practice of Pharmacy」、Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia、第20版、(2003年)および第21版(2005年)に記載されている。
医薬組成物は、単位用量製剤を含むことができ、ここで、単位用量とは、治療もしくは抑制作用を有するのに十分な用量であるか、またはエネルギーバイオマーカーをモジュレート、正常化、もしくは強化するのに有効な量である。単位用量は、単回投薬として治療的もしくは抑制作用を有するのに十分であっても、またはエネルギーバイオマーカーをモジュレート、正常化、もしくは強化するのに有効な量であってもよい。代わりに、単位用量は、障害の処置または抑制の過程において定期的に投与する用量、またはエネルギーバイオマーカーをモジュレート、正常化、もしくは強化するために投与する用量であってよい。
本発明の化合物を含有する医薬組成物は、例えば、液剤、懸濁剤、または乳剤を含めて、意図する投与方法に対して適切な任意の形態であってよい。液体担体は通常、液剤、懸濁剤、および乳剤を調製する上で使用される。本発明の実施における使用に対して想定される液体担体として、例えば、水、生理食塩水、薬学的に許容される有機溶媒(複数可)、薬学的に許容される油または脂肪など、ならびにこれらの2種またはそれ超の混合物が挙げられる。液体担体は、他の適切な薬学的に許容される添加物、例えば、可溶化剤、乳化剤、栄養物、緩衝剤、保存剤、懸濁剤、粘稠化剤、粘性調節剤、安定剤などを含有し得る。適切な有機溶媒として、例えば、一価アルコール、例えば、エタノールなど、および多価アルコール、例えば、グリコールなどが挙げられる。適切な油として、例えば、ダイズ油、ヤシ油、オリーブ油、ベニバナ油、綿実油などが挙げられる。非経口投与に対しては、担体はまた、油性エステル、例えば、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピルなどであることもできる。本発明の組成物はまた微小粒子、マイクロカプセル、リポソーム封入物などの形態、およびこれらの任意の2種またはそれ超の組合せの形態であってよい。
時間放出または制御放出デリバリーシステム、例えば、拡散制御されたマトリクスシステムまたは浸食可能なシステム、例えば:Lee、「Diffusion−Controlled Matrix Systems」、155〜198頁ならびにRonおよびLanger、「Erodible Systems」、199〜224頁、「Treatise on Controlled Drug Delivery」、A. Kydonieus編、Marcel Dekker, Inc.、New York、1992年に記載されているようなものなどを使用することができる。マトリクスは、例えば、自然にインサイツおよびインビボで、例えば、加水分解または酵素的切断、例えば、タンパク質分解酵素により分解することができる生分解性物質であってよい。デリバリーシステムは、例えば、自然発生のまたは合成のポリマーまたはコポリマー、例えば、ヒドロゲルの形態であってよい。切断可能な結合を有する例示的ポリマーとして、ポリエステル、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、多糖、ポリ(ホスホエステル)、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ(イミド炭酸塩)およびポリ(ホスファゼン)が挙げられる。
本発明の化合物は、経腸、経口、非経口、舌下、吸入により(例えば、ミストまたはスプレーとして)、直腸、または局所的に、所望する場合、従来の非毒性の薬学的に許容される担体、アジュバント、およびビヒクルを含有する単位製剤で投与することができる。例えば、適切な投与モードとして、経口、皮下、経皮、経粘膜、イオン導入、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内(例えば鼻粘膜を介して)、硬膜下、直腸、消化器など、および特定のまたは病気に冒されている器官または組織に直接的に投与することが挙げられる。中枢神経系への送達のため、脊髄および硬膜外投与、または脳室への投与を使用することができる。局所的投与はまた、経皮的投与、例えば、経皮的パッチまたはイオントホレーシス装置などの使用を含むこともできる。非経口という用語は、本明細書で使用する場合、皮下注射、静脈内注射、筋肉注射、胸骨内注射、または点滴技法が挙げられる。化合物は、所望の投与経路に対して適切な薬学的に許容される担体、アジュバント、およびビヒクルと混合される。経口投与が好ましい投与経路であり、経口投与に対して適切な製剤が好ましい製剤である。使用のために本明細書に記載されている化合物は、固形、液体形態、エアゾール剤形態、または錠剤、丸剤、散剤混合物、カプセル剤、顆粒、注射用、クリーム剤、液剤、坐剤、浣腸剤、腸内洗浄、乳剤、分散剤、食品プレミックスの形態、および他の適切な形態で投与することができる。化合物はまた、リポソーム製剤の形で投与することができる。化合物はまたプロドラッグとして投与することができ、このプロドラッグは、処置した対象内で治療的に有効である形態への変換が行われる。追加の投与方法は当技術分野で公知である。
本発明の一部の実施形態では、特に、本明細書で列挙された経路を含むばかりでなく、経口、胃、消化器、または腸内投与のために使用される実施形態も含めて、製剤が注射または他の非経口投与のために使用されるような実施形態では、本発明の方法において使用される製剤および調製物は無菌である。無菌の医薬製剤は、当業者には公知の医薬等級の殺菌規格に従い混合または製造される(米国薬局方797章、1072章、および1211章;カリフォルニア州企業職業法4127.7;16、カリフォルニア州法1751、21連邦規則集211)。
注射用調製物、例えば、無菌の注射用の水性または油性懸濁剤を、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用して公知の技術により製剤化することができる。無菌の注射用調製物はまた、例えば、プロピレングリコール中の液剤として、非毒性の非経口的に許容される賦形剤または溶媒中の無菌注射液剤または懸濁剤であってよい。許容されるビヒクルおよび溶媒の中でも、利用することができるのは、水、リンガー液、および等張性塩化ナトリウム溶液である。加えて、無菌の、不揮発性油が溶媒または懸濁化媒体として慣例的に利用されている。この目的のために、合成モノ−またはジグリセリドを含めた任意の無菌性の不揮発性油を利用してもよい。加えて、オレイン酸などの脂肪酸は、注射用調製物中での使用が見出されている。
経口投与のための固体剤形として、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、および顆粒を挙げることができる。このような固体剤形において、活性化合物は、少なくとも1種の不活性賦形剤、例えば、スクロース、ラクトース、またはデンプンなどと混和することができる。このような剤形はまた、不活性賦形剤以外の追加の物質、例えば、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤を含んでもよい。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、剤形はまた緩衝剤も含み得る。錠剤および丸剤は、腸溶コーティングを用いて追加的に調製することができる。
経口投与のための液体剤形は、当技術分野で一般的に使用されている不活性賦形剤、例えば、水などを含有する、薬学的に許容される乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、およびエリキシル剤を含むことができる。このような組成物はまた、アジュバント、例えば、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、シクロデキストリン、および甘味剤、香味剤、ならびに芳香剤を含み得る。
本発明の化合物はまた、リポソームの形態で投与することができる。当技術分野で公知の通り、リポソームは一般的にリン脂質または他の脂質物質由来のものである。リポソームは、水性媒体中に分散した一重膜または多重膜の水和した液晶により形成される。リポソームを形成することが可能な、任意の無毒性の、生理学的に許容されるおよび代謝可能な脂質を使用することができる。リポソーム形態での本発明の組成物は、本発明の化合物に加えて、安定剤、保存剤、添加剤などを含有することができる。好ましい脂質は、天然と合成の両方の、リン脂質およびホスファチジルコリン(レシチン)である。リポソームを形成する方法は、当技術分野で公知である。例えば、Prescott編、Methods in Cell Biology、XIV巻、Academic Press、New York、N.W.、33頁以下参照、(1976年)を参照されたい。
本発明はまた、酸化ストレス障害を処置または抑制するのに有用な物質を含有する製造品およびキットを提供する。本発明はまた、式Iの化合物のいずれか1種または複数を含むキットを提供する。一部の実施形態では、本発明のキットは、上に記載されている容器を含む。
他の態様では、このキットは、例えば、ミトコンドリア障害を有する個体を処置すること、または個体内のミトコンドリア障害を抑制することを含めた、本明細書に記載されている方法のいずれかのために使用することができる。
担体材料と組み合わせて単回の剤形を生成することができる活性成分の量は、活性成分が投与される宿主および特定の投与モードに応じて異なることになる。しかし、任意の特定の患者に対する特定の用量レベルは、利用する特定の化合物の活性、年齢、体重、身体の領域、ボディマス指数(BMI)、全般的な健康状態、性別、食生活、投与の回数、投与経路、排せつ速度、合剤、ならびに治療を受ける特定の疾患の種類、進行度、および重症度を含めた様々な要素に依存することになることを理解されたい。選ばれた薬学的単位用量は通常、血液、組織、器官、または身体の他のターゲット領域の中で薬物の定義された最終濃度を得られるよう製造され、投与される。与えられた状況に対する治療有効量または有効量は、慣例的試験で容易に求めることができ、普通の臨床医のスキルおよび判断の範囲内である。
使用することができる用量の例は、約0.1mg/kg〜約300mg/kg体重以内の、または約1.0mg/kg〜約100mg/kg体重以内の、または約1.0mg/kg〜約50mg/kg体重以内の、または約1.0mg/kg〜約30mg/kg体重以内の、または約1.0mg/kg〜約10mg/kg体重以内の、または約10mg/kg〜約100mg/kg体重以内の、または約50mg/kg〜約150mg/kg体重以内の、または約100mg/kg〜約200mg/kg体重以内の、または約150mg/kg〜約250mg/kg体重以内の、または約200mg/kg〜約300mg/kg体重以内の、または約250mg/kg〜約300mg/kg体重以内の用量範囲の治療有効量または有効量である。本発明の化合物は、単回の一日量が投与されてもよいし、または総一日量が毎日2、3または4回の分割された用量で投与されてもよい。
本発明の化合物は、唯一活性のある医薬品として投与することができるが、これらの化合物はまた、障害の処置または抑制において使用される1種または複数の他の薬剤と組み合わせて使用することもできる。本発明の化合物と組み合わせることで、ミトコンドリア病の処置または抑制に対して有用な代表的薬剤として、これらに限定されないが、補酵素Q、ビタミンE、イデベノン、MitoQ、ビタミン、NAC、および抗酸化剤化合物が挙げられる。
追加の活性物質を本発明の化合物と組み合わせて使用する場合、追加の活性物質は、Physicians’ Desk Reference (PDR)、53版、(1999年)に示されている治療量、または当業者には公知であるような治療的に有用な量で一般的に利用することができる。
本発明の化合物および他の治療活性剤は、推奨される最大臨床用量で、またはより低い用量で投与することができる。本発明の組成物中の活性化合物の用量レベルは、投与経路、疾患の重症度および患者の応答に応じて、所望の治療反応を得るように変動させることができる。他の治療剤と組み合わせて投与する場合、治療剤は、同時にまたは異なる時間に与えられる別個の組成物として製剤化することもできるし、または治療剤を単一の組成物として与えることもできる。
本発明は、以下の非限定的な実施例によりさらに理解されることになる。
本発明の化合物の調製
本発明の化合物は、以下の一般的な方法および手順を使用して、容易に入手できる出発物質から調製することができる。典型的または好ましい処理条件(すなわち、反応温度、時間、反応物質のモル比、溶媒、圧力など)が与えられている場合、他に述べられていない限り、他の処理条件も使用することができることを理解されたい。最適反応条件は、使用する特定の反応物質または溶媒によって異なり得るが、このような条件は、慣例的最適化手順により当業者によって決定することができる。
合成反応パラメーター
「溶媒」、「不活性有機溶媒」または「不活性溶媒」という用語は、これらと共に記載されている反応条件下で不活性である溶媒を意味する。本発明の化合物の合成に利用されている溶媒として、例えば、メタノール(「MeOH」)、アセトン、水、アセトニトリル、1,4−ジオキサン、ジメチルホルムアミド(「DMF」)、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン(「THF」)、クロロホルム、塩化メチレン(またはジクロロメタン、(「DCM」))、ジエチルエーテル、ピリジンなど、およびこれらの混合物が挙げられる。反対の意味であると特定されていない限り、本発明の反応に使用される溶媒は、不活性有機溶媒である。
「q.s.(適量)」という用語は、規定の機能を達成するのに十分な量を添加すること、例えば、溶液を所望の容量(すなわち、100%)にすることを意味する。
本明細書中の化合物は、一般的に周知の合成法の適切な組合せにより合成される。本明細書中の化合物を合成するのに有用な技法は、本明細書に記載されている教示を考慮すれば、当業者にとって容易に明らかでもあり、容易に利用できる。以下の考察は、本明細書中の化合物の構築に使用するために利用可能な多様な方法のいくつかを例示するために提供されている。しかし、この考察は、本明細書中の化合物を調製するのに有用である反応または反応順序の範囲を定義することを意図していない。
一般式:
の化合物の合成の非限定的な具体例は、次の通りである。
本発明の化合物の合成の別の非限定的な具体例は、次の通りである。
本発明の他の化合物の合成方法は、上記具体例、および以下の実施例を考慮して、当業者には、明白となる。
(実施例A)
7−(トリフルオロメチル)−3H−フェノチアジン−3−オンおよび1,4−ジメチル−3H−フェノチアジン−3−オンの合成
7−(トリフルオロメチル)−3H−フェノチアジン−3−オンおよび1,4−ジメチル−3H−フェノチアジン−3−オンは、上で示した反応スキームに従って合成した。
(実施例1)
フリードライヒ運動失調症患者由来のヒト表皮線維芽細胞における本発明の化合物のスクリーニング
最初のスクリーニングを実施して、レドックス障害の回復に対して有効な化合物を同定した。試験試料、4種の対照化合物(イデベノン、デシルユビキノン、トロロックスおよびαトコフェロール)、および溶媒対照を、Jauslinら、Hum. Mol. Genet.、11巻(24号):3055頁(2002年)、Jauslinら、FASEBJ.、17巻:1972〜4頁(2003年)、および国際特許出願WO2004/003565に記載されているように、L−ブチオニン−(S,R)−スルホキシミン(BSO)の添加によりストレスをかけられたFRDA線維芽細胞を救済するこれらの能力について試験した。フリードライヒ運動失調症患者由来のヒト表皮線維芽細胞は、L−ブチオニン−(S,R)−スルホキシミン(BSO)(グルタチオン(GSH)合成酵素の特定の阻害剤)による、GSHの新規合成の阻害に過敏であることが示されている(Jauslinら、Hum. Mol. Genet.、11巻(24号):3055頁(2002年))。この特定のBSO媒介性細胞死は、抗酸化剤経路に関与する抗酸化剤または分子、例えばαトコフェロール、セレン、または小分子グルタチオンペルオキシダーゼ模倣剤などの投与により阻止することができる。しかし、抗酸化剤はこれらの効力、すなわち、これらが、BSOによってストレスをかけられたFRDA線維芽細胞を救済できる濃度が異なる。
MEM(アミノ酸およびビタミンを豊富に含む媒体、カタログ番号1−31F24−I)およびEarle’s Balanced Saltを有するが、フェノールレッドを有さない媒体199(M199、カタログ番号1−21F22−I)をBioconceptから購入した。Fetal Calf SerumをPAA Laboratoriesから得た。塩基性線維芽細胞成長因子および上皮成長因子をPeproTechから購入した。ペニシリン−ストレプトマイシン−グルタミンミックス、L−ブチオニン(S,R)−スルホキシミン、(+)−αトコフェロール、デシルユビキノン、およびウシ膵臓由来のインスリンをSigmaから購入した。トロロックス(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸)をFlukaから入手した。イデベノンをChemo Ibericaから入手した。Calcein AMをAnaspecから購入した。125mlのM199 EBS、50mlのFetal Calf Serum、100U/mlのペニシリン、100マイクログラム/mlのストレプトマイシン、2mMのグルタミン、10マイクログラム/mlのインスリン、10ng/mlのEGF、および10ng/mlのbFGFを合わせることによって、細胞培養物培地を作製した。MEM EBSを添加して、容量を500mlまでにした。444mgのBSOを200mlの培地(Invitrogen、Carlsbad、Ca.)に溶解することによって、10mMのBSO溶液を調製し、これに続いて濾過殺菌した。実験の過程において、この溶液を+4℃で保存した。細胞をCoriell Cell Repositories(Camden、NJ;貯蔵番号GM04078)から得て、10cmの組織培養物プレート内で増殖させた。3日ごとに、これらを1:3比で分割した。
試験試料は、1.5mlガラスバイアル内に供給された。化合物をDMSO、エタノールまたはPBSで希釈すると、5mM保存液が生じた。溶解させてから、これらを−20℃で保存した。対照の抗酸化剤(イデベノン、デシルユビキノン、αトコフェロールおよびトロロックス)をDMSOに溶解した。
以下のプロトコルに従い試験試料をスクリーニングした:
FRDA線維芽細胞を含む培養物は、およそ500,000個の細胞が液体窒素に保存されている1mlバイアルから始まった。3日おきに1:3の比で分割することによって、細胞を10cm細胞培養物シャーレ内に広げ、9個のプレートが使用可能となるまでこれを続けた。コンフルエントになったら、線維芽細胞を収集した。54マイクロタイタープレート(96ウェル−MTP)に対して、全部で1430万個の細胞(8継代)を480ml培地内に再懸濁させ、これは、3,000細胞/ウェルを有する100マイクロリットルの培地に相当した。残りの細胞は、増殖のため、10cm細胞培養物プレート(500,000細胞/プレート)に分配した。プレートを、湿度95%および5%CO2の雰囲気で、37℃で終夜インキュベートすることによって、細胞の培養物プレートへの結合を可能にした。
10%DMSO(242.5マイクロリットル)をマイクロタイタープレートのウェルに添加した。試験化合物は未凍結であり、7.5マイクロリットルの5mM保存液を、242.5マイクロリットルの10%DMSOを含有するウェルに溶解すると、150マイクロモルのマスター溶液が生じた。マスター溶液からの段階希釈を作製した。1つの希釈ステップ間の期間はできるだけ短くした(全般的に30秒未満)。次いで、MTPへの結合の少なくとも4時間後、細胞を様々な化合物の希釈物で処置した。
プレートを細胞培養物インキュベーター内に終夜保存した。翌日、10マイクロリットルの10mMのBSO溶液をウェルに添加すると、1mMの最終BSO濃度になった。48時間後、位相差顕微鏡下で3つのプレートを検査して、陰性対照(ウェルE1〜H1)における細胞は明らかに死んでいたことを検証した。すべてのプレートから培地を廃棄し、ペーパータオルの上でさかさまにしたプレートを軽くたたくことによって、残りの液体を除去した。カルシウムおよびマグネシウムを含有する100μLのPBSでプレートを2回洗浄した。
次いで、1.2マイクロモルのCalcein AMを含有する100マイクロリットルのPBS+Ca+Mgを各ウェルに添加した。プレートを37Cで30分間インキュベートした。その後、蛍光(それぞれ、485nmおよび525nmの励起/発光波長)をGemini蛍光リーダーで読み取った。データをMicrosoft Excel(EXCELは、表計算プログラムに対するMicrosoft社の登録商標)に取り込み、ExcelFitを使用して、各化合物に対するEC50濃度を計算した。
化合物を3回試験した。すなわち、実験を3回実施し、細胞の継代番号は毎回繰返す毎に1つ増加した。
溶媒(DMSO、エタノール、PBS)は、BSO処置していない細胞の生存率に有害な影響も与えなければ、BSO処置した線維芽細胞に対しても有利な影響も与えることはなく、試験した最も高い濃度(1%)においても影響はなかった。自家蛍光を示した化合物はなかった。BSO処置していない線維芽細胞の生存率を100%に設定し、この値に対してBSO処理および化合物処理した細胞の生存率を計算した。
以下の表は、4種の対照化合物に対するEC50を要約している。
次の表に、本発明のある特定の化合物のEC50を要約する。化合物2(以下の表における番号の通り)は、Sigmaから購入した。
(実施例2)
ハンチントン病患者由来の線維芽細胞における本発明の化合物のスクリーニング
実施例1に記載されているものと同様のスクリーニングを使用して、ただし、FRDA細胞を、Coriell Cell Repositories(Camden、NJ;貯蔵番号GM04281)から得たハンチントン病細胞に置換して、本発明の化合物を試験した。ハンチントン病患者由来のヒト皮膚の線維芽細胞を酸化ストレスから救済するこれらの能力について化合物を試験した。
(実施例3)
レーベル遺伝性視神経萎縮症患者由来の線維芽細胞における本発明の化合物スクリーニング
実施例1に記載されているものと同様のスクリーニングを使用して、ただし、FRDA細胞をCoriell Cell Repositories(Camden、NJ;貯蔵番号GM03858)から得たレーベル遺伝性視神経萎縮症(LHON)細胞に置き換えて、本発明の化合物を試験した。LHON患者由来のヒト表皮線維芽細胞を酸化ストレスから救済するその能力について化合物を試験した。
(実施例4)
パーキンソン病患者由来の線維芽細胞における本発明の化合物のスクリーニング
実施例1に記載されているものと同様のスクリーニングを使用して、ただし、FRDA細胞をCoriell Cell Repositories(Camden、NJ;貯蔵番号AG20439)から得たパーキンソン病(PD)細胞と置き換えて、本発明の化合物を試験した。パーキンソン病患者由来のヒト表皮の線維芽細胞を酸化ストレスから救済するその能力について化合物を試験した。
(実施例5)
CoQ10不足の患者由来の線維芽細胞における本発明の化合物のスクリーニング
実施例1に記載されているものと同様のスクリーニングを使用して、ただし、FRDA細胞を、CoQ2突然変異体を持つCoQ10不足の患者から得た細胞と置き換えて、本発明の化合物を試験した。CoQ10不足の患者由来のヒト表皮線維芽細胞を酸化ストレスから救済するこれらの能力について化合物を試験した。
(実施例6)
患者からの線維芽細胞における本発明の化合物のスクリーニング
実施例1に記載されているものと同様のスクリーニングを使用して、ただし、FRDA細胞を、本明細書に記載されている酸化ストレス障害(例えばMERRF、MELAS、リー病、KSS、アルツハイマー病、ALS、広汎性発達障害(例えば、自閉症、レット症候群)、脳卒中)を有する患者から得た細胞と置き換えて、本発明の化合物を試験した。これらの患者由来のヒト表皮線維芽細胞を酸化ストレスから救済するこれらの能力について、化合物を試験した。
(実施例7)
本発明の化合物の投与
本発明の化合物は、薬学的に許容される担体中に300mgの化合物を含有するカプセル剤で提示される。カプセル剤は、1日1回、好ましくは朝食または昼食中に経口的に服用する。極めて幼い小児の場合、カプセル剤を破壊し、その内容物を食品と混合する。
引用を特定することによって本明細書で言及されたすべての公開、特許、特許出願および公開特許出願の開示が、ここに、これらの全体において本明細書に参照により組み込まれる。
前述の発明は、理解しやすいように、例示および実施例として、一部詳細に記載されているが、特定の些細な変更および修正が実施されることは当業者に明らかである。したがって、記載および実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
本発明の非限定的な実施形態として以下が挙げられる:
1.式(I)の化合物:
[式中、
R
1およびR
2は、独立して、−H、−C
1〜C
4アルキル、−O−C
1〜C
4アルキル、および−C
1〜C
4ハロアルキルからなる群から選択され、R
3は、−H、−C
1〜C
12アルキル、−O−C
1〜C
12アルキル、および−C
1〜C
12ハロアルキルからなる群から選択されるか、または
R
1およびR
2は両方とも−CH
3であるか、もしくはR
1およびR
2は両方とも−OCH
3であり、R
3は、
(nは0、1、2、3、または4である)からなる群から選択され、
R
4、R
5、R
6、およびR
7は、独立して、−H、−OH、−C
1〜C
12アルキル、−C
2〜C
12アルケニル、−C
1〜C
12ハロアルキル、−O−C
1〜C
12アルキル、−O−C(O)−C
1〜C
12アルキル、−O−C
1〜C
12ハロアルキル、−C
6〜C
10アリール、−O−C
6〜C
10アリール、−C
1〜C
6アルキル−C
6〜C
10アリール、−O−C
1〜C
6アルキル−C
6〜C
10アリール、−N−(R
8)(R
9)、−C(O)−N(R
13)(R
14)、−C(O)−O−C
1〜C
12アルキル、−S(O)
2−C
1〜C
12アルキル、
からなる群から選択され、ただし、R
4、R
5、R
6、およびR
7の少なくとも2つは、独立して、−Hおよび−CH
3からなる群から選択され、
R
14は、ヒドロキシ、−O−C
1〜C
4、ヘテロシクリル、アリール、もしくはヘテロアリールで任意選択で置換されている−C
1〜C
12アルキルであるか、またはR
14は−C
1〜C
15アルキルであり、該アルキル基中の炭素の2個もしくはそれ超は酸素で置き換えられており、R
11は、NHまたはSである]またはその立体異性体、立体異性体の混合物、溶媒和物、水和物、もしくは薬学的に許容される塩、ただし、この化合物は、
でも、その立体異性体、立体異性体の混合物、溶媒和物、水和物、もしくは薬学的に許容される塩でもない。
2.R
4、R
5、R
6、およびR
7が、独立して、−H、−C
1〜C
12アルキル、−C
2〜C
12アルケニル、−C
1〜C
12ハロアルキル、−O−C
1〜C
12アルキル、−O−C
1〜C
12ハロアルキル、−C
6〜C
10アリール、−O−C
6〜C
10アリール、−C
1〜C
6アルキル−C
6〜C
10アリール、−O−C
1〜C
6アルキル−C
6〜C
10アリール、−N−(R
8)(R
9)、
からなる群から選択され、ただし、R
4、R
5、R
6、およびR
7の少なくとも2つが、独立して、−Hおよび−CH
3からなる群から選択される、実施形態1に記載の化合物。
3.R1、R2、およびR3の1つが−Hではない、実施形態1または2に記載の化合物。
4.R1、R2、およびR3の2つが−Hではない、実施形態1または2に記載の化合物。
5.R1、R2、およびR3が−Hではない、実施形態1または2に記載の化合物。
6.R1、R2、およびR3の1つが−CH3である、実施形態1または2に記載の化合物。
7.R1、R2、およびR3の2つが−CH3である、実施形態1または2に記載の化合物。
8.R1、R2、およびR3が−CH3である、実施形態1または2に記載の化合物。
9.R1、R2、およびR3の2つが−CH3であり、R1、R2、およびR3の1つが−Hである、実施形態1または2に記載の化合物。
10.R1およびR3が−CH3であり、R2が−Hである、実施形態1または2に記載の化合物。
11.R1およびR2が−CH3である、実施形態1または2に記載の化合物。
12.R1およびR2が−OCH3である、実施形態1または2に記載の化合物。
13.R1およびR2が−OCH3であり、R3が−CH3である、実施形態1または2に記載の化合物。
14.R1およびR2が−CH3であり、R3が−n−C1〜C12アルキルである、実施形態1または2に記載の化合物。
15.R1およびR2が−OCH3であり、R3が−n−C1〜C12アルキルである、実施形態1または2に記載の化合物。
16.R
1およびR
2が−CH
3であり、R
3が、
からなる群から選択される、実施形態1または2に記載の化合物。
17.R
1およびR
2が−CH
3であり、R
3が、
である、実施形態1または2に記載の化合物。
18.nが2である、実施形態17に記載の化合物。
19.R
1およびR
2が−CH
3であり、R
3が、
である、実施形態1または2に記載の化合物。
20.nが2である、実施形態19に記載の化合物。
21.R
1およびR
2が−CH
3であり、R
3が
である、実施形態1または2に記載の化合物。
22.nが1である、実施形態21に記載の化合物。
23.nが2である、実施形態21に記載の化合物。
24.R
1およびR
2が−OCH
3であり、R
3が
からなる群から選択される、実施形態1または2に記載の化合物。
25.R
1およびR
2が−OCH
3であり、R
3が、
である、実施形態1または2に記載の化合物。
26.nが2である、実施形態25に記載の化合物。
27.R
1およびR
2が−OCH
3であり、R
3が、
である、実施形態1または2に記載の化合物。
28.nが2である、実施形態27に記載の化合物。
29.R
1およびR
2が−OCH
3であり、R
3が、
である、実施形態1または2に記載の化合物。
30.nが1である、実施形態29に記載の化合物。
31.nが2である、実施形態29に記載の化合物。
32.R1およびR2が、独立して、−Hまたは−C1〜C4アルキルである、実施形態1または2に記載の化合物。
33.R1、R2、およびR3が−Hである、実施形態1または2に記載の化合物。
34.R4、R5、R6、およびR7の2つが−Hである、実施形態1から33のいずれか1つに記載の化合物。
35.R4、R5、R6、およびR7の3つが−Hである、実施形態1から33のいずれか1つに記載の化合物。
36.R4、R5、R6、およびR7が−Hである、実施形態1から33のいずれか1つに記載の化合物。
37.R
4、R
5、R
6、およびR
7の少なくとも1つが、独立して、−C
1〜C
12アルキル、−C
1〜C
12ハロアルキル、−O−C
1〜C
12アルキル、−O−C
1〜C
6アルキル−C
6〜C
10アリール、−N−(R
8)(R
9)、および
からなる群から選択される、実施形態1から33のいずれか1つに記載の化合物。
38.R
4、R
5、R
6、およびR
7の少なくとも1つが、独立して、−C
1〜C
6アルキル、−O−C
1〜C
6アルキル、−N−(R
8)(R
9)(式中、R
8およびR
9は、独立して、−Hまたは−C
1〜C
4アルキルである)、−CF
3、−O−ベンジル、および
(式中、mは1または2である)からなる群から選択される、実施形態1から33のいずれか1つに記載の化合物。
39.R4、R5、R6、およびR7の3つが−Hであり、その他が−N(CH3)2である、実施形態1から33のいずれか1つに記載の化合物。
40.R4、R5、R6、およびR7の3つが−Hであり、その他が−O−ベンジルである、実施形態1から33のいずれか1つに記載の化合物。
41.R4、R5、R6、およびR7の3つが−Hであり、その他が−O−CH3である、実施形態1から33のいずれか1つに記載の化合物。
42.R4、R5、R6、およびR7の3つが−Hであり、その他が−O−n−C2〜C5アルキルである、実施形態1から33のいずれか1つに記載の化合物。
43.R4、R5、R6、およびR7の3つが−Hであり、その他が−CF3である、実施形態1から33のいずれか1つに記載の化合物。
44.R
4、R
5、R
6、およびR
7の3つが−Hであり、その他が、
(式中、mは1または2である)である、実施形態1から33のいずれか1つに記載の化合物。
45.R4、R5、R6、およびR7の3つが−Hであり、その他が−CH3である、実施形態1から33のいずれか1つに記載の化合物。
46.R
4、R
5、R
6、およびR
7の少なくとも1つが、−OH、−O−C(O)−C
1〜C
12アルキル、−C(O)−N(R
13)(R
14)、−C(O)−O−C
1〜C
12アルキル、−S(O)
2−C
1〜C
12アルキル、および
からなる群から選択される、実施形態1から35のいずれか1つに記載の化合物。
47.R4、R5、R6、およびR7の少なくとも1つが−OHである、実施形態1から35のいずれか1つに記載の化合物。
48.R4、R5、R6、およびR7の1つが、−O−C(O)−C1〜C12アルキル、−C(O)−O−C1〜C12アルキル、または−S(O)2−C1〜C12アルキルである、実施形態1から35のいずれか1つに記載の化合物。
49.R4、R5、R6、およびR7の1つが−C(O)−N(R13)(R14)である、実施形態1から35のいずれか1つに記載の化合物。
50.R4、R5、R6、およびR7の少なくとも1つが−C1〜C12ハロアルキルである、実施形態1から35のいずれか1つに記載の化合物。
51.R4、R5、R6、およびR7の少なくとも1つが−C1〜C12アルキルである、実施形態1から35のいずれか1つに記載の化合物。
52. R
4、R
5、R
6、およびR
7の1つが
である、実施形態1〜35のいずれか1つの化合物。
53. 式:
[式中、R
12は、−C
1〜C
6アルキル、−O−C
1〜C
6アルキル、−N(CH
3)
2、−CF
3、−O−ベンジル、および
(式中、mは、1または2である)からなる群から選択される]を有するか、またはその立体異性体、立体異性体の混合物、溶媒和物、水和物、もしくは薬学的に許容される塩である、実施形態1の化合物。
54.式:
[式中、R
12は、−C
1〜C
6アルキル、−O−C
1〜C
6アルキル、−N(CH
3)
2、−CF
3、−O−ベンジル、および
(式中、mは、1または2である)からなる群から選択される]を有するか、またはその立体異性体、立体異性体の混合物、溶媒和物、水和物、もしくは薬学的に許容される塩である、実施形態1の化合物。
55.式:
[式中、R
12は、−C
1〜C
6アルキル、−O−C
1〜C
6アルキル、−N(CH
3)
2、−CF
3、−O−ベンジル、および
(式中、mは、1または2である)からなる群から選択される]を有するか、またはその立体異性体、立体異性体の混合物、溶媒和物、水和物、もしくは薬学的に許容される塩である、実施形態1の化合物。
56.式:
[式中、R
1およびR
2は、−CH
3であり、またはR
1およびR
2は、−OCH
3であり、R
3は、
(式中、nは、1または2である)であり、R
12は、R
4、R
5、R
6、またはR
7について定義された通りの基である]を有するか、またはその立体異性体、立体異性体の混合物、溶媒和物、水和物、もしくは薬学的に許容される塩である、実施形態1の化合物。
57. R11がSである、実施形態1〜56のいずれか1つの化合物。
58. R11がNHである、実施形態1〜56のいずれか1つの化合物。
59.
からなる群から選択されるか、またはこれらの立体異性体、立体異性体の混合物、溶媒和物、水和物、もしくは薬学的に許容される塩である、実施形態1の化合物。
60.
からなる群から選択されるか、またはこれらの立体異性体、立体異性体の混合物、溶媒和物、水和物、もしくは薬学的に許容される塩である、実施形態1の化合物。
61.
からなる群から選択されるか、またはこれらの立体異性体、立体異性体の混合物、溶媒和物、水和物、もしくは薬学的に許容される塩である、実施形態1の化合物。
62.
からなる群から選択されるか、またはこれらの立体異性体、立体異性体の混合物、溶媒和物、水和物、もしくは薬学的に許容される塩である、実施形態1の化合物。
63.
またはその立体異性体、立体異性体の混合物、溶媒和物、水和物、もしくは薬学的に許容される塩である、実施形態1の化合物。
64.実施例1〜6のいずれか1つに記載されているアッセイで測定した場合、約1マイクロモル未満のEC50を有する、実施形態1〜63のいずれか1つの化合物。
65.実施形態1〜64のいずれか1つに従う化合物と薬学的に許容される添加剤とを含む医薬製剤。
66.酸化ストレス障害を処置もしくは抑制する方法、1種もしくは複数のエネルギーバイオマーカーをモジュレートする方法、1種もしくは複数のエネルギーバイオマーカーを正常化する方法、または1種もしくは複数のエネルギーバイオマーカーを強化する方法であって、治療有効量または有効量の式(I)の化合物:
[式中、R
1およびR
2は、独立して、−H、−C
1〜C
4アルキル、−O−C
1〜C
4アルキル、および−C
1〜C
4ハロアルキルからなる群から選択され、R
3は、−H、−C
1〜C
12アルキル、−O−C
1〜C
12アルキル、および−C
1〜C
12ハロアルキルからなる群から選択され、またはR
1およびR
2は、両方とも−CH
3であり、もしくはR
1およびR
2は、両方とも−OCH
3であり、R
3は、
(nは、0、1、2、3、または4である)からなる群から選択され、R
4、R
5、R
6、およびR
7は、独立して、−H、−OH、−C
1〜C
12アルキル、−C
2〜C
12アルケニル、−C
1〜C
12ハロアルキル、−O−C
1〜C
12アルキル、−O−C(O)−C
1〜C
12アルキル、−O−C
1〜C
12ハロアルキル、−C
6〜C
10アリール、−O−C
6〜C
10アリール、−C
1〜C
6アルキル−C
6〜C
10アリール、−O−C
1〜C
6アルキル−C
6〜C
10アリール、−N−(R
8)(R
9)、−C(O)−N(R
13)(R
14)、−C(O)−O−C
1〜C
12アルキル、−S(O)
2−C
1〜C
12アルキル、
からなる群から選択され、ただし、R
4、R
5、R
6、およびR
7の少なくとも2つは、独立して、−Hおよび−CH
3からなる群から選択され、R
8およびR
9は、独立して、−Hまたは−C
1〜C
12アルキルであり、mは、0、1、2、または3であり、R
13は、−Hまたは−C
1〜C
4アルキルであり、R
14は、ヒドロキシ、−O−C
1〜C
4、ヘテロシクリル、アリール、もしくはヘテロアリールで場合によって置換されている−C
1〜C
12アルキルであり、またはR
14は、アルキル基中の炭素の2個またはそれ超が酸素で置き換えられている−C
1〜C
15アルキルであり、R
11は、SまたはNHである]またはその立体異性体、立体異性体の混合物、溶媒和物、水和物、もしくは薬学的に許容される塩を対象に投与するステップを含む方法。
67. R
4、R
5、R
6、およびR
7が、独立して、−H、−C
1〜C
12アルキル、−C
2〜C
12アルケニル、−C
1〜C
12ハロアルキル、−O−C
1〜C
12アルキル、−O−C
1〜C
12ハロアルキル、−C
6〜C
10アリール、−O−C
6〜C
10アリール、−C
1〜C
6アルキル−C
6〜C
10アリール、−O−C
1〜C
6アルキル−C
6〜C
10アリール、−N−(R
8)(R
9)、
からなる群から選択され、ただし、R
4、R
5、R
6、およびR
7の少なくとも2つは、独立して、−Hおよび−CH
3からなる群から選択される、実施形態66の方法。
68. R1、R2、およびR3の1つが−Hでない、実施形態67〜68のいずれか1つの方法。
69. R1、R2、およびR3の2つが−Hでない、実施形態67〜68のいずれか1つの方法。
70. R1、R2、およびR3が−Hでない、実施形態67〜68のいずれか1つの方法。
71. R1、R2、およびR3の1つが−CH3である、実施形態67〜68のいずれか1つの方法。
72. R1、R2、およびR3の2つが−CH3である、実施形態67〜68のいずれか1つの方法。
73. R1、R2、およびR3が−CH3である、実施形態67〜68のいずれか1つの方法。
74. R1、R2、およびR3の2つが−CH3であり、R1、R2、およびR3の1つが−Hである、実施形態67〜68のいずれか1つの方法。
75. R1およびR3が−CH3であり、R2が−Hである、実施形態67〜68のいずれか1つの方法。
76. R1およびR2が−CH3である、実施形態67〜68のいずれか1つの方法。
77. R1およびR2が−OCH3である、実施形態67〜68のいずれか1つの方法。
78. R1およびR2が−OCH3であり、R3が−CH3である、実施形態67〜68のいずれか1つの方法。
79. R1およびR2が−CH3であり、R3が−n−C1〜C12アルキルである、実施形態67〜68のいずれか1つの方法。
80. R1およびR2が−OCH3であり、R3が−n−C1〜C12アルキルである、実施形態67〜68のいずれか1つの方法。
81. R
1およびR
2が−CH
3であり、R
3が、
からなる群から選択される、実施形態67〜68のいずれか1つの方法。
82. R
1およびR
2が−CH
3であり、R
3が
である、実施形態67〜68のいずれか1つの方法。
83. nが2である、実施形態82の方法。
84. R
1およびR
2が−CH
3であり、R
3が
である、実施形態67〜68のいずれか1つの方法。
85. nが2である、実施形態84の方法。
86. R
1およびR
2が−CH
3であり、R
3が
である、実施形態67〜68のいずれか1つの方法。
87. nが1である、実施形態86の方法。
88. nが2である、実施形態86の方法。
89. R
1およびR
2が−OCH
3であり、R
3が、
からなる群から選択される。実施形態67〜68のいずれか1つの方法。
90. R
1およびR
2が−OCH
3であり、R
3が
である、実施形態67〜68のいずれか1つの方法。
91. nが2である、実施形態90の方法。
92. R
1およびR
2が−OCH
3であり、R
3が
である、実施形態67〜68のいずれか1つの方法。
93. nが2である、実施形態92の方法。
94. R
1およびR
2が−OCH
3であり、R
3が
である、実施形態67〜68のいずれか1つの方法。
95. nが1である、実施形態94の方法。
96. nが2である、実施形態94の方法。
97. R1およびR2が、独立して、−Hまたは−C1〜C4アルキルである、実施形態67〜68のいずれか1つの方法。
98. R1、R2、およびR3が−Hである、実施形態67〜68のいずれか1つの方法。
99. R4、R5、R6、およびR7の2つが−Hである、実施形態67〜98のいずれか1つの方法。
100. R4、R5、R6、およびR7の3つが−Hである、実施形態67〜98のいずれか1つの方法。
101. R4、R5、R6、およびR7が−Hである、実施形態67〜98のいずれか1つの方法。
102. R
4、R
5、R
6、およびR
7の少なくとも1つが、独立して、−C
1〜C
12アルキル、−C
1〜C
12ハロアルキル、−O−C
1〜C
12アルキル、−O−C
1〜C
12アルキル−C
6〜C
10アリール、−N−(R
8)(R
9)、および
からなる群から選択される、実施形態67〜98のいずれか1つの方法。
103.R
4、R
5、R
6、およびR
7の少なくとも1つが、独立して、−C
1〜C
6アルキル、−O−C
1〜C
6アルキル、−N−(R
8)(R
9)(式中、R
8およびR
9は、独立して、−Hまたは−C
1〜C
4アルキルである)、−CF
3、−O−ベンジル、および
(式中、mは1または2である)からなる群から選択される、実施形態67から98のいずれか1つに記載の方法。
104.R4、R5、R6、およびR7の3つが−Hであり、その他が−N(CH3)2である、実施形態67から98のいずれか1つに記載の方法。
105.R4、R5、R6、およびR7の3つが−Hであり、その他が−O−ベンジルである、実施形態67から98のいずれか1つに記載の方法。
106.R4、R5、R6、およびR7の3つが−Hであり、その他が−O−CH3である、実施形態67から98のいずれか1つに記載の方法。
107.R4、R5、R6、およびR7の3つが−Hであり、その他が−O−n−C2〜C5アルキルである、実施形態67から98のいずれか1つに記載の方法。
108.R4、R5、R6、およびR7の3つが−Hであり、その他が−CF3である、実施形態67から98のいずれか1つに記載の方法。
109.R
4、R
5、R
6、およびR
7の3つが−Hであり、その他が、
(式中、mは1または2である)である、実施形態67から98のいずれか1つに記載の方法。
110.R4、R5、R6、およびR7の3つが−Hであり、その他が−CH3である、実施形態67から98のいずれか1つに記載の方法。
111.R
4、R
5、R
6、およびR
7の少なくとも1つが、−OH、−O−C(O)−C
1〜C
12アルキル、−C(O)−N(R
13)(R
14)、−C(O)−O−C
1〜C
12アルキル、−S(O)
2−C
1〜C
12アルキル、および
からなる群から選択される、実施形態67から100のいずれか1つに記載の方法。
112.R4、R5、R6、およびR7の少なくとも1つが−OHである、実施形態67から100のいずれか1つに記載の方法。
113.R4、R5、R6、およびR7の1つが、−O−C(O)−C1〜C12アルキル、−C(O)−O−C1〜C12アルキル、または−S(O)2−C1〜C12アルキルである、実施形態67から100のいずれか1つに記載の方法。
114.R4、R5、R6、およびR7の1つが−C(O)−N(R13)(R14)である、実施形態67から100のいずれか1つに記載の方法。
115.R4、R5、R6、およびR7の少なくとも1つが−C1〜C12ハロアルキルである、実施形態67から100のいずれか1つに記載の方法。
116.R4、R5、R6、およびR7の少なくとも1つが−C1〜C12アルキルである、実施形態67から100のいずれか1つに記載の方法。
117. R
4、R
5、R
6、およびR
7の1つが
である、実施形態67〜100のいずれか1つの方法。
118.化合物が、式:
[式中、R
12は、−C
1〜C
6アルキル、−O−C
1〜C
6アルキル、−N(CH
3)
2、−CF
3、−O−ベンジル、および
(式中、mは、1または2である)からなる群から選択される]を有するか、またはその立体異性体、立体異性体の混合物、溶媒和物、水和物、もしくは薬学的に許容される塩である、実施形態67の方法。
119.化合物が、式:
[式中、R
12は、−C
1〜C
6アルキル、−O−C
1〜C
6アルキル、−N(CH
3)
2、−CF
3、−O−ベンジル、および
(式中、mは、1または2である)からなる群から選択される]を有するか、またはその立体異性体、立体異性体の混合物、溶媒和物、水和物、もしくは薬学的に許容される塩である、実施形態67の方法。
120.化合物が、式:
[式中、R
12は、−C
1〜C
6アルキル、−O−C
1〜C
6アルキル、−N(CH
3)
2、−CF
3、−O−ベンジル、および
(式中、mは、1または2である)からなる群から選択される]を有するか、またはその立体異性体、立体異性体の混合物、溶媒和物、水和物、もしくは薬学的に許容される塩である、実施形態67の方法。
121.化合物が、式:
[式中、R
1およびR
2は、−CH
3であり、またはR
1およびR
2は、−OCH
3であり、
R
3は、
(式中、nは1または2である)であり、R
12は、R
4、R
5、R
6、またはR
7について定義された通りの基である]を有するか、またはその立体異性体、立体異性体の混合物、溶媒和物、水和物、もしくは薬学的に許容される塩である、実施形態67の方法。
122. R11がSである、実施形態67〜121のいずれか1つの方法。
123. R11がNHである、実施形態67〜121のいずれか1つの方法。
124.化合物が、
でも、その立体異性体、立体異性体の混合物、溶媒和物、水和物、もしくは薬学的に許容される塩でもない、実施形態67〜122のいずれか1つの方法。
125.化合物が、
からなる群から選択されるか、またはこれらの立体異性体、立体異性体の混合物、溶媒和物、水和物、もしくは薬学的に許容される塩である、実施形態67の方法。
126.化合物が、
からなる群から選択されるか、またはこれらの立体異性体、立体異性体の混合物、溶媒和物、水和物、もしくは薬学的に許容される塩である、実施形態67の方法。
127.化合物が、
からなる群から選択されるか、またはこれらの立体異性体、立体異性体の混合物、溶媒和物、水和物、もしくは薬学的に許容される塩である、実施形態67の方法。
128.化合物が、
からなる群から選択されるか、またはこれらの立体異性体、立体異性体の混合物、溶媒和物、水和物、もしくは薬学的に許容される塩である、実施形態67の方法。
129.化合物が、
またはその立体異性体、立体異性体の混合物、溶媒和物、水和物、もしくは薬学的に許容される塩である、実施形態67の方法。
130.化合物が、
またはその立体異性体、立体異性体の混合物、溶媒和物、水和物、もしくは薬学的に許容される塩である、実施形態67の方法。
131.化合物が、前記化合物と薬学的に許容される添加剤とを含む医薬製剤として投与される、実施形態67〜130のいずれか1つの方法。
132.ミトコンドリア障害;遺伝性ミトコンドリア病;アルパース病;バース症候群;β酸化欠陥;カルニチン−アシル−カルニチン欠損症;カルニチン欠損症;クレアチン欠損症症候群;コエンザイムQ10欠損症;複合体I欠損症;複合体II欠損症;複合体III欠損症;複合体IV欠損症;複合体V欠損症;COX欠損症;慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO);CPT I欠損症;CPT II欠損症;フリードライヒ運動失調症(FA);グルタル酸尿症II型;ケアーンズセイヤー症候群(KSS);乳酸アシドーシス;長鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ欠損症(LCAD);LCHAD;リー病;リー様症候群;レーベル遺伝性視神経萎縮症(LHON);致命的な乳児性心筋症(LIC);ルフト病;多種アシルCoAデヒドロゲナーゼ欠損症(MAD);中鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ欠損症(MCAD);ミトコンドリア脳筋症、ラクトアシドーシス、脳卒中症候群(MELAS);赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌスてんかん(MERRF);ミトコンドリア劣性運動失調症候群(MIRAS);ミトコンドリア細胞症、ミトコンドリアDNA欠失;ミトコンドリア脳症;ミトコンドリアミオパシー;ミトコンドリア神経胃腸性障害および脳症(MNGIE);ニューロパシー、運動失調、および網膜色素変性症(NARP);ピアソン症候群;ピルビン酸カルボキシラーゼ欠損症;ピルビン酸デヒドロゲナーゼ欠損症;POLG突然変異体;呼吸鎖障害;短鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ欠損症(SCAD);SCHAD;超長鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ欠損症(VLCAD);ミオパシー;心筋症;脳筋症;神経変性疾患;パーキンソン病;アルツハイマー病;筋萎縮性側索硬化症(ALS);運動ニューロン疾患;神経疾患;てんかん;老化に伴う疾患;黄斑変性;糖尿病;メタボリックシンドローム;がん;脳がん;遺伝性疾患;ハンチントン病;気分障害;統合失調症;双極性障害;広汎性発達障害;自閉症性障害;アスペルガー症候群;小児期崩壊性障害(CDD);レット症候群;特定不能の広汎性発達障害(PDD−NOS);脳血管発作;脳卒中;視力機能障害;視神経症;優性遺伝性若年性視神経萎縮症;有毒薬剤により引き起こされた視神経症;緑内障;シュタルガルト黄斑ジストロフィー;糖尿病性網膜症;糖尿病性黄斑症;未熟児網膜症;虚血再灌流関連の網膜損傷;酸素毒作用;ヘモグロビン異常症;サラセミア;鎌状赤血球性貧血;発作;虚血;尿細管性アシドーシス;注意欠陥/多動性障害(ADHD);聴力または平衡機能障害をもたらす神経変性障害;優性視神経萎縮症(DOA);母系遺伝性糖尿病および難聴(MIDD);慢性疲労;造影剤誘発性腎障害;造影剤誘発性網膜症損傷;無βリポタンパク質血症;網膜色素変性症;ウォフラム病;トゥレット症候群;コバラミンC型欠陥;メチルマロン酸尿症;グリア芽細胞腫;ダウン症候群;急性尿細管壊死;筋ジストロフィー;白質ジストロフィー;進行性核上性麻痺;脊髄性筋萎縮症;聴覚損失;ノイズ誘発性聴覚損失;外傷性脳傷害;若年性ハンチントン病;多発性硬化症;NGLY1;多系統萎縮症;副腎白質ジストロフィー;および副腎脊髄神経障害からなる群から選択される酸化ストレス障害を処置する、実施形態67から131のいずれか1つに記載の方法。
133.前記酸化ストレス障害がミトコンドリア障害である、実施形態132に記載の方法。
134.前記酸化ストレス障害が遺伝性ミトコンドリア病である、実施形態132に記載の方法。
135.前記酸化ストレス障害がフリードライヒ運動失調症(FA)である、実施形態132に記載の方法。
136.前記酸化ストレス障害がケアーンズセイヤー症候群(KSS)である、実施形態132に記載の方法。
137.前記酸化ストレス障害がリー病またはリー様症候群である、実施形態132に記載の方法。
138.前記酸化ストレス障害がレーベル遺伝性視神経萎縮症(LHON)である、実施形態132に記載の方法。
139.前記酸化ストレス障害がミトコンドリア脳筋症、ラクトアシドーシス、脳卒中症候群(MELAS)である、実施形態132に記載の方法。
140.前記酸化ストレス障害が赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌスてんかん(MERRF)である、実施形態132に記載の方法。
141.前記酸化ストレス障害がパーキンソン病である、実施形態132に記載の方法。
142.前記酸化ストレス障害がアルツハイマー病である、実施形態132に記載の方法。
143.前記酸化ストレス障害が筋萎縮性側索硬化症(ALS)である、実施形態132に記載の方法。
144.前記酸化ストレス障害がてんかんである、実施形態132に記載の方法。
145.前記酸化ストレス障害が黄斑変性である、実施形態132に記載の方法。
146.前記酸化ストレス障害が脳がんである、実施形態132に記載の方法。
147.前記酸化ストレス障害がハンチントン病である、実施形態132に記載の方法。
148.前記酸化ストレス障害が自閉症性障害である、実施形態132に記載の方法。
149.前記酸化ストレス障害がレット症候群である、実施形態132に記載の方法。
150.前記酸化ストレス障害が脳卒中である、実施形態132に記載の方法。
151.前記酸化ストレス障害が母系遺伝性糖尿病および難聴(MIDD)である、実施形態132に記載の方法。
152.前記酸化ストレス障害が慢性疲労である、実施形態132に記載の方法。
153.前記酸化ストレス障害が造影剤誘発性腎障害である、実施形態132に記載の方法。
154.前記酸化ストレス障害が造影剤誘発性網膜症損傷である、実施形態132に記載の方法。
155.前記酸化ストレス障害がコバラミンC型欠陥である、実施形態132に記載の方法。
156.1種もしくは複数のエネルギーバイオマーカーをモジュレートする方法、1種もしくは複数のエネルギーバイオマーカーを正常化する方法、または1種もしくは複数のエネルギーバイオマーカーを強化するための方法であって、前記1種または複数のエネルギーバイオマーカーが、全血、血漿、脳脊髄液、または脳室液のいずれかの中の乳酸(ラクテート)レベル;全血、血漿、脳脊髄液、または脳室液のいずれかの中のピルビン酸(ピルベート)レベル;全血、血漿、脳脊髄液、または脳室液のいずれかの中の乳酸/ピルビン酸比;全血、血漿、リンパ球、脳脊髄液、または脳室液のいずれかの中の総、還元型もしくは酸化型グルタチオンレベル、または還元型/酸化型グルタチオン比;全血、血漿、リンパ球、脳脊髄液、または脳室液のいずれかの中の総、還元型もしくは酸化型システインレベル、または還元型/酸化型システイン比;クレアチンリン酸レベル、NADH(NADH+H+)レベル;NADPH(NADPH+H+)レベル;NADレベル;NADPレベル;ATPレベル;還元型補酵素Q(CoQred)レベル;酸化型補酵素Q(CoQox)レベル;総補酵素Q(CoQtot)レベル;酸化型シトクロムCレベル;還元型シトクロムCレベル;酸化型シトクロムC/還元型シトクロムC比;アセトアセテート塩レベル、βヒドロキシ酪酸レベル、アセトアセテート塩/βヒドロキシ酪酸比、8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(8−OHdG)レベル;反応性酸素種のレベル;酸素消費量(VO2)レベル;二酸化炭素排出量(VCO2)レベル;呼吸商(VCO2/VO2);運動耐容能;および嫌気性閾値からなる群から選択される、実施形態67から131のいずれか1つに記載の方法。