JP2016513969A - Egfr阻害剤に対する応答の予測 - Google Patents
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Abstract
がんがEGFR阻害剤に応答するかどうかを予測する方法が提供される。【選択図】図1
Description
本願発明は、一般的に、EGFR阻害剤に対する応答性に関連する遺伝的バリエーションに関する。
セリン/スレオニンキナーゼLKB1は、家族性がん症候群であるポイツ・ジェガース症候群における遺伝子変異として初めて検出された(Hemminki et al., 1998, Nature, 391: 184-187)。その後、LKB1における体細胞変異は、非小細胞性肺がん(NSCLC)の最大30%を含む様々な散発性がんにおいて見出された(Sanchez-Cespedes, 2007, Oncogene, 26: 7825-7832)。腫瘍サプレッサーとしてのTLKB1の分子機能は未だ知られていない。
同様に、上皮増殖因子受容体(EGFR)における変異は、肺を含む多種のがんに関連している(Pastorino et al., 1993, J. Cell. Biochem. Suppl., 17F: 237-248)。エルロチニブ(Tarceva(登録商標)、2004年に認可)、ゲフィチニブ(Iressa(登録商標)、2003年)、パニツムマブ(Vectibix(登録商標)、2006年)、及びセツキシマブ(Erbitux(登録商標)、2004年)を含む、EGFRを標的とする多くの医薬品は、様々な型のがんを処置するために、開発され、臨床で成功裏に使用されてきた。しかしながら、これらの処置に対し、頻繁に二次耐性が生じる(Wei et al., 2011, Anticancer Drugs, 22: 963-970; Brugger and Thomas, 2012, Lung Cancer, 77: 2-8)。EGFRの活性化変異(EGFR−Mut+)は、EGFR標的治療に対する応答性を予測するものと考えられるが、十分ではない。更に、EGFR変異がない場合のEGFR標的治療に対する応答性が観察されている(Piperdi and Perez-Soler, 2012, Drugs, 72 Suppl. 1: 11-19)。これらの結果は、EGFR標的治療に対する患者の応答性のより良い予測の必要性を示唆している。
EGFR活性化変異及びLKB1機能喪失変異は、共に、肺及び他の型のがんにおいて頻繁に観察されるものの、相互排他的であること、すなわち、変異が患者群内にランダムに含まれる場合に比較し、一方の変異が存在する場合には、統計学的に、もう一方の変異が発生する見込みが低いことが、様々なグループにより報告されている(Reungwetwattana et al., 2012, Clin. Lung Cancer, 13: 252-266; Chitale et al., 2008, Oncogene,28: 2773-2783; Koivunen et al., 2008, Br. J. Cancer, 455: 245-252; Ding et al., 2008, Nature, 455: 1069-1075)。これは、それらが、同じ分子経路に関与している可能性、及び、一方の又はもう一方の変異がこの経路の制御を解除し、腫瘍進行を促進するのに十分であることを示唆している。
いくつかの実施態様において、がんが、EGFR阻害剤に応答するかどうかを予測するための方法が提供される。いくつかの実施態様において、方法は、がんが、LKB1変異を含むかどうかを決定することを含み、LKB1変異の存在が、がんがEGFR阻害剤に応答することを示す。
いくつかの実施態様において、EGFR阻害剤が有効であると見込まれるがん患者を検出する方法が提供される。いくつかの実施態様において、方法は、患者のがんがLKB1変異を含むかどうかを決定することを含み、LKB1変異の存在が、がん患者にEGFR阻害剤が有効であると見込まれることを示す。
いくつかの実施態様において、がん患者のための治療を選択する方法が提供される。いくつかの実施態様において、方法は、(a)患者のがんがLKB1変異を含むかどうかを決定すること、及び(b)患者のがんがLKB1変異を含む場合、治療のためにEGFR阻害剤を選択すること、を含む。
いくつかの実施態様において、哺乳動物においてがんを処置する方法が提供される。いくつかの実施態様において、方法は、(a)がんがLKB1変異を含むかどうかを決定すること、及び(b)がんがLKB1変異を含む場合、EGFR阻害剤の治療上有効量を哺乳動物に投与すること、を含む。
いくつかの実施態様において、哺乳動物において、LKB1変異を含むがんを処置する方法が提供される。いくつかの実施態様において、方法は、がんを有する哺乳動物にEGFR阻害剤の治療上有効量を投与することを含む。いくつかの実施態様において、EGFR阻害剤の投与前に、がんがLKB1変異を含むことが決定される。
ここに記載される何れの実施態様においても、がんは固形腫瘍であってもよい。ここに記載される何れの実施態様においても、がんは、大細胞癌、カルチノイドがん、神経内分泌原発がん、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、結腸直腸がん、子宮頸がん、メラノーマ、皮膚がん、平滑筋腫、胃がん、グリオブラストーマ、卵巣がん、小細胞肺がん(SCLC)、非小細胞肺がん(NSCLC)、膵臓がん、食道がん、胃がん、及び甲状腺がんから選択されてもよい。ここに記載される何れの実施態様においても、がんは、肺がん、膵臓がん、結腸直腸がん、及び頭頸部がんから選択されてもよい。ここに記載される何れの実施態様においても、がんは、表2における組織から選択される組織であってもよい。
いくつかの実施態様において、LKB変異はLKB1ポリヌクレオチドのバリエーションを含む。いくつかの実施態様において、LKB1ポリヌクレオチドにおけるバリエーションは、LKB1ポリヌクレオチドのコード配列に存在する。いくつかの実施態様において、LKB1ポリヌクレオチドにおけるバリエーションは、挿入、欠失、逆位、及び置換から選択される少なくとも1つのバリエーションを含む。いくつかの実施態様において、LKB1ポリヌクレオチドにおけるバリエーションは、LKB1コード配列におけるフレームシフトをもたらす。いくつかの実施態様において、LKB1ポリヌクレオチドにおけるバリエーションは、(a)有意に減少した又は欠如したLKB1タンパク質レベル、及び/又は(b)有意に減少した活性を有するLKB1タンパク質の発現をもたらす、表1から選択されるヌクレオチドの位置におけるヌクレオチドのバリエーションである。いくつかの実施態様において、LKB1ポリヌクレオチドにおけるバリエーションは、表1から選択されるヌクレオチドの変化である。
いくつかの実施態様において、LKB1ポリヌクレオチドにおけるバリエーションは、LKB1ポリペプチドにおけるバリエーションをもたらす。いくつかの実施態様において、LKB1ポリペプチドにおけるバリエーションは、挿入、置換、欠失、及び短鎖化から選択される。いくつかの実施態様において、LKB1ポリペプチドにおける少なくとも1つのバリエーションは、(a)有意に減少した又は欠如したLKB1タンパク質レベル、及び/又は(b)有意に減少した活性を有するLKB1タンパク質の発現をもたらす、表1から選択されるアミノ酸の位置におけるアミノ酸のバリエーションである。いくつかの実施態様において、LKB1ポリペプチドにおける少なくとも1つのバリエーションは、表1から選択されるアミノ酸の変化である。
ここに記載される何れの実施態様においても、哺乳動物はヒトであってもよい。
ここに記載される何れの実施態様においても、EGFR阻害剤は、EGFRに結合する抗体であってもよい。いくつかの実施態様において、EGFR阻害剤は、セツキエイマブ、パニツムマブ、D11f、及びGA201から選択される。
ここに記載される何れの実施態様においても、EGFR阻害剤は低分子であってもよい。いくつかの実施態様において、EGFR阻害剤は、エルロチニブ、又はゲフィニチブから選択される。
これらの、そして更なる実施態様は、以下に記載される。
定義
本明細書を解釈する目的のために、以下の定義が適用され、適切な場合はいつでも、単数で使用される用語はその複数形も含み、またその逆も同じである。以下に記載される任意の定義が、参照により本明細書に組み込まれる任意の文書と競合する場合には、以下に記載される定義が優先される。
本明細書を解釈する目的のために、以下の定義が適用され、適切な場合はいつでも、単数で使用される用語はその複数形も含み、またその逆も同じである。以下に記載される任意の定義が、参照により本明細書に組み込まれる任意の文書と競合する場合には、以下に記載される定義が優先される。
定義されない限り、本明細書に使用される全ての技術用語、記述、及びその他の科学用語は、本願発明の関連分野の当業者により一般的に理解される意味を有するものとする。いくつかの場合において、一般的に理解される意味を有する用語は、明確性のために及び/又は参考のために定義され、そして、本明細書におけるそのような定義の包含は、その分野において通常理解されるものと大きく違うことを表すものとは必ずしも解釈されない。本明細書に記載又は参照される技術及び手順は、通常よく理解されており、当業者による従来的方法を使用して一般的に用いられている。言及されない限り、一般的に入手可能なキット及び試薬の使用に関連する手順は、適宜、製造業者が定義したプロトコル及び/又はパラメータに従って通常実施される。
本願組成物及び方法が記載される前に、本願発明は、特定の方法、プロトコル、細胞株、動物種又は属、コンストラクト、及び試薬に限定されず、これらはもちろん異なってもよいことが理解されるべきである。本明細書において使用される用語は、特定の実施態様を記載する目的のためだけに使用されるものであり、添付の特許請求の範囲により限定され得る本願発明の範囲に限定することを目的としていないことが、また理解されるべきである。
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「及び」、及び「前記(the)」は、文脈が明らかに定めない限り複数形を含むことを留意しなければならない。
本明細書及び特許請求の範囲を通して、語「含む(comprise)」、又は「含む(comprises)」又は「含む(comprising)」のようなバリエーションは、記述された完全体又は完全体の群の包含を意味し、他の如何なる完全体又は完全体の群の除外を意味しないと理解され得る。
用語「ポリヌクレオチド」は、通常、単数形又は複数形で使用されるとき、RNA又はDNA又は修飾されたRNA又はDNAであってもよい、何れのポリヌクレオチド又はポリデオキシリボヌクレオチドも指す。よって、例えば、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、制限なく、一本鎖及び二本鎖DNA、一本鎖及び二本鎖領域を含むDNA、一本鎖及び二本鎖RNA、及び一本鎖及び二本鎖領域を含むRNA、一本鎖であってもよいDNA及びRNAを含むポリヌクレオチドを含むハイブリッド分子を含み、又は、より典型的に、二本鎖を含み、又は一本鎖及び二本鎖領域を含む。加えて、本願明細書に使用される用語「ポリヌクレオチド」は、RNA又はDNA、又はRNA及びDNAの両方を含む三本鎖領域を指す。そのような領域における鎖は、同じ分子からのものであっても、異なる分子からのものであってもよい。領域は、1以上の全ての分子を含んでもよく、より典型的には、いくつかの分子の一つだけの領域に関与していてもよい。三重らせん領域の分子の一つは、しばしば、オリゴヌクレオチドである。用語「ポリヌクレオチド」は特に、cDNAを含む。その用語は、1以上の修飾された塩基を含む、DNA(cNAを含む)及びRNAを含む。よって、安定性又は他の理由のために修飾された骨格を持つDNA又はRNAは、本明細書で意図されるように、「ポリヌクレオチド」である。更に、イノシンのような通常の塩基、又はトリチウム化した塩基のような修飾された塩基を含むDNA又はRNAは、本明細書で定義される用語「ポリヌクレオチド」に含まれる。通常、用語「ポリヌクレオチド」は、単純及び複雑な細胞を含むウイルス及び細胞の特徴を示す、DNA及びRNAの化学的構造だけでなく、DNA及びRNA非修飾ポリヌクレオチドの、化学的に、酵素学的に、及び/又は代謝的に修飾された構造の全てを包含する。
用語「オリゴヌクレオチド」は、これらに限定されないが、一本鎖デオキシリボヌクレオチド、一本鎖又は二本鎖リボヌクレオチド、RNA:DNAハイブリッド、及び二本鎖DNAを含む、比較的短いポリヌクレオチドを指す。一本鎖DNAプローブオリゴヌクレオチドのようなオリゴヌクレオチドは、しばしば、化学的方法、例えば、市販の自動オリゴヌクレオチド合成装置を使用して合成される。しかしながら、オリゴヌクレオチドは、インビトロの組換えDNAによる技術、及び細胞及び生物におけるDNAの発現、を含む他の様々な方法により、作成することができる。
用語「プライマー」は、核酸にハイブリダイズでき、かつ、通常遊離3’基を提供することにより相補的核酸のポリメライゼーションを可能にする、一本鎖ポリヌクレオチドを指す。
「HER受容体」は、HER受容体ファミリーに属する受容体タンパク質チロシンキナーゼであって、EGFR(ErbB1、HER1)、HER2(ErbB2)、HER3(ErbB3)、及びHER4(ErbB4)受容体を含む。HER受容体は、HERリガンドに結合してもよい、及び/又は、リン酸化され得る様々なチロシン残基を内包する、疎水性膜貫通ドメイン、保存された細胞内チロシンキナーゼドメイン、カルボキシ末端シグナリングドメインといった、もう一つのHER受容体分子と二量体化してもよい、細胞外ドメインを通常含む。HER受容体は、天然に存在する(「天然配列」)HER受容体又はその変異体であってもよい。好ましくは、HER受容体は、天然配列のヒトHER受容体である。
「HER経路」は、HER受容体ファミリーにより仲介されるシグナリングネットワークを指す。
用語「ErbB1」、「HER1」、「上皮増殖因子」、「EGFR」は、本明細書では区別せずに用いられ、例えば、Carpenter et al. Ann. Rev. Biochem. 56:881-914 (1987)に記載されるように、EGFRvIIIのような変異体だけでなく、天然に存在するその変異体の形態(例えば、Ullrich et al, Nature (1984) 309:418425 及びHumphrey et al. PNAS (USA) 87:4207-4211 (1990)に記載のEGFR欠失変異体)を含む、「EGFR」を指す。EGFRの変異体は、例えば、Lynch et al. (New England Journal of Medicine 2004, 350:2129)、Paez et al. (Science 2004, 304:1497)、及び Pao et al. (PNAS 2004, 101:13306)に記載される、欠失、置換、挿入による変異体も含む。
本明細書において、「EGFR細胞外ドメイン」又は「EGFR ECD」は、細胞膜に固定されている又は循環している、断片を含む細胞の外に存在するEGFRのドメインを指す。いくつかの実施態様において、EGFRの細胞外ドメインは、4つのドメインを含んでもよい。境界はおおよそのものであるが、「ドメインI」(アミノ酸残基の約1〜158)、「ドメインII」(アミノ酸残基159〜336)、「ドメインIII」(アミノ酸残基337〜470)及び「ドメインIV」(アミノ酸残基471〜645)であり、約1〜3アミノ酸は変化してもよい。
「リン酸化」は、1以上のリン酸基が、EGFR受容体のようなタンパク質、又はその基質に対し付加されることを指す。
用語「セリン/スレオニンキナーゼ11、「STK11」「肝臓キナーゼB1」、及び「LKB1」は、区別せずに用いられ、別途指示がない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)のような任意の脊椎動物由来の、任意の天然LKB1タンパク質、コード配列、又は遺伝子を指す。その用語は、天然のプロセシングによりもたらされる任意のLKB1の形態だけでなく、「全長」の、未加工のLKB1を包含する。その用語はまた、天然に存在するNRGの変異体、例えば、スプライス変異体又は対立遺伝子変異体を包含する。例示的なヒトLKB1タンパク質の配列は、Swiss−Prot Accession No.Q15831.1に示される。例示的なヒトLKB1コード配列の配列は、GenBank Accession No.NM_000455.4に示される。遺伝子の配置、配列、イントロン/エクソンの境界を含む、例示的な遺伝的情報は、NCBI Gene ID6794に示される。非限定的な例示的LKB1コード配列は、配列番号1で示される。非限定的な例示的LKB1アミノ酸配列は、配列番号2で示される。
用語「LKB1ポリヌクレオチド」又は「LKB1をコードする核酸」は、別途指示がない限り、遺伝子、又はLKB1をコードするコード配列(例えば、mRNA又はcDNAコード配列)を指す。
用語「ヌクレオチドのバリエーション」は、参照配列(例えば、野生型配列)と比較したヌクレオチド配列の変化(例えば、一塩基変異多型(SNP)のような、1以上のヌクレオチドの挿入、欠失、逆位、又は置換)を指す。その用語は、別途指示がない限り、ヌクレオチド配列の相補鎖における対応する変化も包含する。ヌクレオチドのバリエーションは、体細胞変異又は生殖細胞の多型であってもよい。
用語「アミノ酸のバリエーション」は、参照配列と比較したアミノ酸配列の変化(例えば、配列内部における欠失、又はN又はC末端の短鎖化のような、1以上のアミノ酸の、挿入、置換、又は欠失)を指す。
用語「バリエーション」は、ヌクレオチドのバリエーション又はアミノ酸のバリエーションの何れかを指す。用語「バリエーション」及び「変異」は、区別なく用いられてもよい。
用語「表1から選択されるヌクレオチドの位置におけるヌクレオチドのバリエーション」及びその文法上の変化形は、LKB1ポリヌクレオチド配列に存在する、表1に列挙される任意のヌクレオチドの位置におけるヌクレオチドのバリエーションを指し、任意のヌクレオチドの位置は、表1のカラム1に列挙されるアミノ酸の位置及び表1のカラム2に列挙される特異なヌクレオチドの変化に対応する任意のヌクレオチドの位置を含むが、これに限定されない。例えば、また、説明のために、表1の第3データ列のカラム1を参照すると、LKB1ポリペプチドのアミノ酸37位に対応する、3つのヌクレオチドの任意の位置におけるヌクレオチドのバリエーションは、それらの3つのヌクレオチドの位置の一つにおける任意の変化を包含し、任意の変化は、すなわち、カラム2に示される109C>T置換のような特異的なヌクレオチドの変化を含むが、これに限定されない。その用語は、別途指示がない限り、ヌクレオチド配列の相補鎖における対応する変化も包含する。
用語「表1から選択されるヌクレオチドの変化」及びその文法上の変化形は、表1のカラム2に列挙される任意の特異的なヌクレオチドの変化を指す。説明のために、表1から選択されるヌクレオチドの変化の例は、表1の第3データ列の第2カラムに示される109C>T置換である。
用語「表1から選択されるアミノ酸の位置におけるアミノ酸のバリエーション」及びその文法上の変化形は、LKB1アミノ酸配列に存在する、表1のカラム1に列挙される任意のアミノ酸における、アミノ酸のバリエーションを指し、表1のカラム3に列挙される特異的なアミノ酸の変化を含むが、これに限定されない。例えば、また、説明のために、表1の第4データ列のカラム1を参照すると、LKB1のアミノ酸281位におけるアミノ酸のバリエーションは、そのアミノ酸の位置における任意の変化を包含し、任意の変化は、すなわち、カラム3の第4データ列に示されるP281L置換のような特異的なアミノ酸の変化を含むが、これに限定されない。
用語「表1から選択されるアミノ酸の変化」及び文法上の変化形は、表1のカラム3に列挙される任意の特異的なアミノ酸の変化を指す。説明のために、表1から選択されるアミノ酸の変化の例は、表1のカラム3の第4データ列に示されるP281L置換である。
用語「LKB1変異」は、本明細書において、(a)LKB1タンパク質レベルの有意な減少又は欠如、及び/又は、(b)有意に減少した活性を有するLKB1タンパク質の発現をもたらす、LKB1遺伝子に存在する1以上のバリエーションを指す。用語「LKB1変異」は、LKB1遺伝子全体の欠失をもたらすヌクレオチドの欠失を含むが、これに限定されない。本明細書において、「変異LKB1遺伝子」は、LKB1変異を含むLKB1遺伝子を指す。LKB1タンパク質のレベルは、例えば腫瘍細胞のようなある細胞に存在するLKB1のレベルが、例えばその腫瘍細胞と同じ組織型の正常細胞のような、同じ細胞型に存在する野生型LKB1タンパク質レベルよりも、50%またはそれより低い場合、「有意に減少した、又は、欠如した」と考えられる。LKB1タンパク質は、例えばEP1633883 B1に記載されるリン酸化アッセイにより決定されるように、LKB1のキナーゼ活性が、野生型LKB1タンパク質のキナーゼ活性に対し<50%、<40%、<30%、<20%又は<10%である場合、「有意に減少した活性」を有すると考えられる。
「LKB1変異を含む」がん又は腫瘍は、そのがん又は腫瘍の少なくとも一部がLKB1変異を含む、がんまたは腫瘍を指す。
本明細書において、「腫瘍試料」は、患者の腫瘍に由来する試料、又は患者の腫瘍から得た腫瘍細胞を含む試料である。本明細書において、腫瘍試料は、ホルマリン固定試料、パラフィン包埋試料、又は凍結された腫瘍試料のような、保存された腫瘍試料だけでなく、腫瘍生検、循環性腫瘍細胞、循環性血漿タンパク質、腹水、又は、腫瘍由来又は腫瘍様特性を示す初代培養細胞又は細胞株を含むが、これらに限定されない。
「固定された」腫瘍試料は、固定剤を使用して組織学的に保存された腫瘍試料である。
「ホルマリン固定された」腫瘍試料は、ホルムアルデヒドを固定剤として使用して保存された腫瘍試料である。
「包埋された」腫瘍試料は、フィルム、及びパラフィン、ワックス、セロイジン、又は樹脂のような通常固い物質に囲まれた腫瘍試料である。包埋は、顕微鏡実験、又は組織マイクロアレイ(TMAs)の実施のために、薄片を切ることを可能にする。
「パラフィン包埋された」腫瘍試料は、石油由来の固形炭化水素の精製混合物により囲まれた腫瘍試料である。
本明細書において、「凍結された」腫瘍試料は、凍結している又は凍結されてきた、腫瘍試料である。
本明細書において、「凍結された」腫瘍試料は、凍結している又は凍結されてきた、腫瘍試料である。
用語「アレイ」又は「マイクロアレイ」は、ハイブリダイズ可能なアレイの要素、好ましくは、ポリヌクレオチドプローブ(例えば、オリゴヌクレオチド)、の基質における秩序だった配置を指す。基質は、スライドガラスのような固体基板、又はニトロセルロース膜のような半固体基板であってもよい。
用語「増幅」は、参照核酸配列又はその相補鎖の1以上のコピーの作成工程を指す。増幅は、直線的、又は指数関数的(例えば、PCR)であってもいい。「コピー」は、鋳型配列に対し相補的又は同一の完全配列を必ずしも意味しない。例えば、コピーは、デオキシイノシンのようなヌクレオチドアナログ、意図された配列の改変(例えば、鋳型に対しハイブリダイズするが、完全に相補的ではない配列を含むプライマーを介して導入された改変)、及び/又は増幅の間に生じた配列エラーを含んでもよい。
本明細書において、「ポリメラーゼ連鎖反応」又は「PCR」という技術は、通常、1987年7月発行の米国特許第4,683,195号に記載されるように、核酸配列、RNA、及び/又はDNAの特異的な微量な断片が増幅される手順を指す。通常、興味のある領域の終点、又はそれを超えた領域からの配列情報は、オリゴヌクレオチドプライマーの設計に使用することができ、これらのプライマーは、増幅される鋳型鎖の反対の鎖に同一又は類似する。2つのプライマーの5’末端ヌクレオチドは、増幅物の終点と一致してもよい。PCRは、特異的なRNA配列、全ゲノムDNAからの特異的なDNA配列、及び全細胞RNA、バクテリオファージ、又はプラスミド配列等から転写されたcRNAを増幅するために使用し得る。Mullis et al., Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol., 51: 263 (1987); Erlich編., PCR Technology, (Stockton Press, NY, 1989)を通常参照のこと。本明細書において、PCRは、核酸試験試料を増幅するための核酸ポリメラーゼ反応法の、唯一ではないが一つの例であると考えられ、周知の核酸(DNA又はRNA)のプライマーとしての使用、及び、核酸の特異的な断片を増幅又は作成するために、又は、特定の核酸に対し相補的な核酸の断片を増幅又は作成するために、核酸ポリメラーゼを使用することを含む。
「定量リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応」又は「qRT−PCR」は、PCR産物の量が、PCR反応の各工程において測定される、PCRの形態を指す。本技術は、Cronin et al., Am. J. Pathol. 164(1):35-42 (2004) 及び Ma et al., Cancer Cell 5:607-616 (2004)を含む様々な出版物に記載されている。
用語「アレル特異的オリゴヌクレオチド」は、ヌクレオチドのバリエーション(通常、置換)を含む標的核酸の領域にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを指す。「アレル特異的ハイブリダイゼーション」は、アレル特異的オリゴヌクレオチドがその標的核酸にハイブリダイズした場合、そのアレル特異的オリゴヌクレオチドにおけるヌクレオチドが特異的にそのヌクレオチドのバリエーションと塩基対を形成することを意味する。特定のヌクレオチドのバリエーションに関連してアレル特異的ハイブリダイゼーションが可能なアレル特異的オリゴヌクレオチドは、そのバリエーション「に対し特異的」であるといえる。
用語「アレル特異的プライマー」は、プライマーである、アレル特異的オリゴヌクレオチドを指す。
用語「プライマーエクステンションアッセイ」は、ヌクレオチドが、核酸に添加され、より長い核酸、又は、直接的又は間接的に検出される「伸長産物」をもたらすアッセイを指す。
用語「アレル特異的ヌクレオチドインコーポレーションアッセイ」は、プライマーが、(a)ヌクレオチドのバリエーションの3’領域において標的核酸にハイブリダイズし、かつ(b)ポリメラーゼにより伸長し、それにより、ヌクレオチドのバリエーションに相補的なヌクレオチドが伸長産物に組み込まれる、プライマーエクステンションアッセイを指す。
用語「アレル特異的プライマーエクステンションアッセイ」は、アレル特異的プライマーが標的核酸にハイブリダイズし、伸長する、プライマーエクステンションアッセイを指す。
用語「アレル特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションアッセイ」は、(a)アレル特異的オリゴヌクレオチドが標的核酸にハイブリダイズし、かつ、(b)ハイブリダイゼーションが直接的又は間接的に検出される、アッセイを指す。
用語「5’ヌクレアーゼアッセイ」は、標的核酸に対するアレル特異的オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションにより、ハイブリダイズしたプローブが核酸分解切断され、検出可能なシグナルをもたらすアッセイを指す。
用語「分子ビーコンを使用したアッセイ(assay employing molecular beacons)」は、標的核酸に対するアレル特異的オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションが、遊離オリゴヌクレオチドにより放出される検出可能なシグナルよりも高いレベルの検出可能なシグナルをもたらす、アッセイを指す。
用語「オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ」は、アレル特異的オリゴヌクレオチド及び第二のオリゴヌクレオチドが、標的核酸に互いに隣接してハイブリダイズし、(介在ヌクレオチドを介して、直接的又は間接的に)共にライゲーションされ、かつ、ライゲーション産物は、直接的又は間接的に検出される、アッセイを指す。
用語「標的配列」、「標的核酸」、又は「標的核酸配列」は、通常、ヌクレオチドのバリエーションの存在が疑われる又は周知である、目的のポリヌクレオチド配列を指し、増幅により作成される標的核酸のコピーも含まれる。
用語「検出」は、直接的又は間接的な検出を含む、検出の如何なる意味も含む。
用語「診断」は、本明細書において、分子又は病理学的状態、疾患、又は健康状態(condition)の同定又は分類を指すために用いられる。例えば、「診断」は、例えば肺がんのような特定の型のがんの同定を指してもよい。「診断」は、例えば、組織学的な(例えば、非小細胞肺癌)、分子的特徴による、(例えば、特定の遺伝子又はたんぱく質における、ヌクレオチド及び/又はアミノ酸のバリエーションにより特徴づけられる肺がん)、又はその両方による、特定のがんの分類を指してもよい。
用語「予測」は、本明細書において、好ましい又は好ましくないに関わらず、患者が薬又は薬の組み合わせに応答することの見込みを指すために用いられる。いくつかの実施態様において、予測はそれらの応答の程度に関連する。別の態様において、予測は、例えば、特定の治療剤を使用した処置、及び/又は原発腫瘍の外科的除去、及び/又はがんの再発のない特定の期間の化学療法処置といった、処置の後に患者が生存するかどうか及び/又はその可能性に関連する。本発明の予測方法は、任意の患者に対し最も適した処置方法を選択することによる、処置の決定を行うために臨床的に用いられ得る。本発明の予測方法は、例えば、提供された治療剤又は組み合わせの投与、外科的処置、化学療法等を含む、提供された治療レジメンのような処置レジメンに患者が好ましく応答する見込みがあるかどうか、又は、治療レジメンの後の患者の長期生存が見込まれるかどうかの予測において有効なツールである。
本明細書において、「腫瘍」は、悪性又は良性に関わらず、全ての腫瘍性細胞成長及び増殖、及び、前がん状態及びがんの細胞及び組織を指す。用語「がん」、「がんの(cancerous)」、「細胞増殖性疾患」、「増殖性疾患」、及び「腫瘍」は、本明細書において、互いに排他的ではない。
用語「がん」及び「がんの(cancerous)」は、未制御の細胞成長及び増殖によって典型的に特徴付けられる、哺乳動物における生理学的状態を、指す又は説明する。がんの例は、癌、リンパ腫(例えば、ホジキン、及び、非ホジキンリンパ腫)、芽細胞腫、肉腫、及び白血病を含むが、これらに限定されない。がんの更なる特定の例は、扁平上皮細胞がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺のアデノカルシノーマ、肺の扁平上皮癌、腹膜のがん、肝細胞がん、腎細胞癌、消化管がん、胃がん、食道がん、脾臓がん、グリオーマ、子宮頸がん、卵巣がん、肝がん(liver cancer)、膀胱がん、肝がん(hepatoma)、乳がん、結腸がん、直腸がん、肺がん、子宮内膜又は子宮がん、唾液腺癌、腎臓がん、肝がん(liver cancer)、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝癌(hepatic carcinoma)、メラノーマ、白血病及びその他のリンパ増殖異常症、及び、様々な型の頭頸部がんを含む。
用語「肺腫瘍」及び「肺がん」は、任意の肺の腫瘍を指し、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌を含むが、これらに限定されず、後者は、アデノカルシノーマ、扁平上皮癌、及び、大細胞癌を含むがこれらに限定されない。
用語「新生物」又は「腫瘍性細胞」は、対応する正常な組織又は細胞よりもより速く増殖し、かつ成長を引き起こす刺激の除去後にも成長し続ける、異常な組織又は細胞を指す。
「肺腫瘍細胞」又は「肺がん細胞」は、インビボ又はインビトロに関わらず肺腫瘍からの細胞を指し、原発性肺腫瘍又は転移性肺腫瘍に由来する細胞、及びそれらの細胞に由来する細胞株を包含する。
本明細書において、「処置(treatment)」(及び「処置する(treat)」又は「処置すること(treating)」などその文法上の変形)は、処置されている個体又は細胞の自然経過を変えようと試みる臨床的介入を指し、予防のために、又は臨床病理の過程においての何れかで実行され得る。処置の望ましい効果は、疾患の発症又は再発を予防すること、症状の緩和、疾患の直接的又は間接的な任意の病理学的影響の低減、転移の予防、疾患の進行速度を遅らせること、病状の改善又は緩和、及び寛解又は予後の改善を含む。
「個体」、「対象」、又は「患者」は、脊椎動物である。特定の実施態様において、脊椎動物は哺乳動物である。哺乳動物は、家畜(例えば、ウシ)、競技用動物、愛玩動物(例えば、ネコ、イヌ、及び馬)、霊長類(ヒト及び非ヒト霊長類を含む)、及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)を含む。特定の実施態様において、哺乳動物はヒトである。
「有効量」は、所望の治療的又は予防的結果を達成するために必要な用量及び期間での、有効な量を指す。
用語「治療上有効量」は、患者におけるがんを処置するために有効な薬の量を指す。有効量の薬は、がん細胞の数を減少させ、腫瘍のサイズを減少させ、周辺器官へのがん細胞の浸潤を阻害し(すなわち、ある程度減速させ、及び、好ましくは停止させる)、腫瘍の転移を阻害し(すなわち、ある程度減速させ、及び、好ましくは停止させる)、腫瘍成長をある程度阻害し、及び/又は1以上のがんに関連する症状をある程度緩和してもよい。その薬物が、既存のがん細胞の増殖を防止かつ/又はこれを死滅させることができる程度に、それは、細胞分裂抑制性及び/又は細胞傷害性であってもよい。有効量は、無増悪生存率(例えば、固形がんの治療効果判定のためのガイドライン(RECIST)により評価される)を拡大し、客観的奏効率(部分寛解(PR)、又は完全寛解(CR)を含む)をもたらし、生存率(全生存率及び無増悪生存率を含む)を改善し、及び/又は1以上の、がんの症状(すなわち、FOSIに関連する)を改善してもよい。最も好ましくは、治療上有効量の薬は無増悪生存率(PFS)及び/又は全生存率(OS)を改善するのに有効である。
本明細書において、「固定」又は「フラット」用量の治療剤は、患者の体重(WT)又は体表面積(BSA)を考慮せずに、ヒト患者に対し投与される用量を指す。そのため、固定又はフラット用量は、mg/kg用量、又はmg/m2用量ではなく、治療剤の絶対量で提供される。
本明細書において、「負荷」用量は、一般に、患者に対して投与される治療剤の初回用量を含み、1以上の維持用量が続く。一般に、単独の負荷用量が投与されるが、複数の負荷用量も本明細書において考慮される。通常、治療剤の所望の定常状態濃度を、維持用量による場合よりも、より早期に実現することができるように、負荷用量の投与量は維持用量の投与量を上回る、及び/又は、負荷用量は維持用量よりも頻繁に投与される。
本明細書において、「維持」用量は、処置期間に渡って患者に投与される治療剤の、1以上の用量を指す。通常、維持用量は、おおよそ毎週、おおよそ2週間毎、おおよそ3週間毎、又はおおよそ4週間毎といった処置間隔で投与される。
「医薬」は、GEFR阻害剤のような、がんを処置するために有効な薬である。
「標的集合(target audience)」は、特に、特定の使用、処置、又は適用のために、マーケティング又は広告によって、個々の患者、患者群、新聞、医学文献、及び雑誌の読者、テレビ又はインターネットの閲覧者、ラジオ又はインターネットのリスナー、医者、製薬会社等といった、特定の医薬が推進又は推進される予定の人々の集団、又は機関である。
「添付文書」という用語は、治療製品の市販包装に通例含まれる説明書を指すのに使用され、このような治療製品の使用に関する、指示、使用法、用量、投与、禁忌、その包装製品に組み合わされるその他の治療製品、及び/又は治療製品の使用に関する注意事項についての情報を含む。
本明細書において、用語「長期」生存は、治療処置の後、少なくとも1年、5年、8年、又は10年の生存を指す。
特定の治療剤に対する「増加した耐性(increased resistance)」という用語は、発明に従って使用された場合、その薬剤の標準用量又は標準処置プロトコルに対する、低下した応答を意味する。
特定の治療剤又は治療オプションに対する「低下した感受性(decreased sensitivity)」という用語は、発明に従って使用された場合、薬剤の標準用量又は標準処置プロトコルに対する低下した応答を意味し、低下した応答は、薬剤の用量又は処置の強度を増加させることによって、補償され得る。
「応答」は、患者に対する利益を示す任意の評価項目を使用して評価でき、評価項目は、(1)減速、又は完全な成長停止を含む、ある程度の腫瘍成長の阻害、(2)腫瘍細胞数の減少、(3)腫瘍サイズの減少、(4)隣接する周辺器官及び/又は組織への腫瘍細胞の浸潤の阻害(すなわち、減少、減速、又は完全な停止)、(5)転移の阻害(すなわち、減少、減速、又は完全な停止)、(6)腫瘍の後退又は拒絶を必ずではないが、もたらすかもしれない、抗腫瘍免疫応答の増進、(7)腫瘍に関連する1以上の症状のある程度の緩和、(8)処置後の生存期間の増加、及び/又は(9)処置後のある時点での死亡率の減少、を含むが、これらに限定されない。
用語「アンタゴニスト」は、広義で使用され、EGFRのようなポリペプチドの生物活性を、部分的又は完全に、阻害又は中和する、又は、ポリペプチドをコードする核酸の転写又は翻訳を、部分的又は完全に、阻害する、如何なる分子も含む。例示的なアンタゴニスト分子は、アンタゴニスト抗体、ポリペプチド断片、オリゴペプチド、有機分子(低分子を含む)、及びアンチセンス核酸を含むが、これらに限定されない。
本明細書において、用語「細胞傷害性薬剤」は、細胞の機能を阻害又は阻止し及び/又は細胞死又は破壊を生ずる物質を指す。その用語は、限定されないが、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212及びLuの放射性同位体)、化学療法剤(例えば、メトトレキセート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン又は他の挿入剤)、核酸分解酵素等の酵素及びその断片、抗生物質、低分子毒素等の毒素、又は細菌、真菌、植物又は動物由来の酵素活性毒素(それらの断片及び/又はその変異体を含む)、及び以下に開示される様々な抗腫瘍剤又は抗がん剤を包含することを意図する。他の細胞傷害性薬剤は以下に説明される。「殺腫瘍」薬剤は、腫瘍細胞の破壊を生じさせる。
ここで、「抗腫瘍剤」は、がんを処置するために使用される薬を指す。抗腫瘍剤の非限定的な例は、化学療法剤、HER阻害剤、HER二量体化阻害剤、HER抗体、腫瘍関連抗原に対する抗体、抗ホルモン化合物、サイトカイン、EGFR標的薬、抗血管新生剤、チロシンキナーゼ阻害剤、成長阻害剤及び抗体、細胞傷害性薬剤、癌胎児タンパク質 CA 125に結合する抗体、HER2ワクチン、Raf又はras阻害剤、リポソーマルドキソルビシン、トポテカン、タキサン、二重チロシンキナーゼ阻害剤、TLK286、EMD−7200、ペルツズマブ、トラスツズマブ、エルロチニブ、及びベバシズマブを含む。
「承認された抗腫瘍剤」は、食品医薬品局(FDA)又は外国でのその同等機関等の規制当局により販売許可を受けた、がんの処置のために使用される薬である。
「HER阻害剤」は、HER活性化又は機能を妨げる薬剤である。HER阻害剤の例は、HER抗体(例えば、EGFR、HER2、HER3、又はHER4抗体)、EGFR標的薬、低分子HERアンタゴニスト、HERチロシンキナーゼ阻害剤、ラパチニブ/GW572016等のHER2及びEGFR二重キナーゼ阻害剤、アンチセンス分子(例えば、WO2004/87207を参照)、及び/又はMAPK又はAkt等の下流のシグナリング分子に結合、又はその機能を妨げる薬剤を含む。いくつかの実施態様において、HER阻害剤は、HER受容体に結合する抗体である。いくつかの実施態様において、HER阻害剤は、HER3阻害剤である。いくつかの実施態様において、阻害剤は、多重特異性HER阻害剤であって、例えば、HER3及びEGFR、HER3及びHER2、又はHER3及びHER4の両方を阻害するようなHER阻害剤である。そのような実施態様において、二重特異性HER阻害剤は、抗体である。いくつかの実施態様において、HER阻害剤は、HER3及びEGFRの両方に特異的な二重特異性抗体である。そのような阻害剤の例は、US2010/0255010に記載される(引用により、本明細書に組み込まれる)多重特異性抗体であり、抗EGFR/HER3抗体「DL11f」を含むがこれに限定されない。
本明細書において、用語「EGFR阻害剤」は、EGFRに結合又は直接的に作用し、かつ、そのシグナリング活性を阻止又は減少させる化合物を指し、別名で「EGFRアンタゴニスト」とも呼ばれる。そのような薬剤の例は、GEFRに結合する抗体又は低分子を含む。EGFRに結合する抗体の例は、MAb579(ATCC CRL HB 8506)、MAb455(ATCC CRL HB8507)、MAb 225(ATCC CRL 8508)、MAb528(ATCC CRL 8509)(米国特許第4,943,533号、Mendelsohn et al.を参照)、及び、キメラ化225(C225又はセツキシマブ、ERBITUX(登録商標)及び再形状化(reshaped)ヒト225(H225)(WO96/40210、ImcloneSystems Inc.を参照)等の変異体;IMC−11F8、完全ヒト、EGFR標的抗体(Imclone);タイプII変異体EGFRに結合する抗体(米国特許第5,212,290);米国特許第5,891,996号に記載されるEGFRに結合するヒト化及びキメラ抗体;及びABX−EGF又はパニツムマブ等の、EGFRに結合するヒト抗体(WO98/50433、Abgenix/Amgenを参照);EMD 55900(Stragliotto et al., Eur. J. Cancer 32A:636-640 (1996));EMD7200(マツズマブ)EGF及びTGF−alphaの両方とEGFR結合について競合する、ヒト化EGFR抗体(EMD/Merck);ヒトEGFR抗体、HuMax−EGFR(GenMab);E1.1,E2.4,E2.5,E6.2,E6.4,E2.11,E6.3及びE7.6.3として周知であり、米国特許第6,235,883号に記載される完全ヒト抗体;MDX−447(Medarex Inc);mAb806又はヒト化mAb806(Johns et al., J. Biol. Chem. 279(29):30375-30384 (2004));及びGA201を含むがこれに限定されない、ヒト化ICR62抗体(Gerdes et al. Clin. Cancer Res. 19(5):1126-1138 (2013)、及び米国特許第7,722,867及びWO2006/082515に記載の抗体を含み、引用により本明細書に組み込まれる。抗EGFR抗体は、細胞傷害性薬剤とコンジュゲートし、イムノコンジュゲートを形成していてもよい(例えば、EP659,439A2,Merck Patent GmbHを参照)。EGFRアンタゴニストは、米国特許第:5,616,582、5,457,105、5,475,001、5,654,307、5,679,683、6,084,095、6,265,410、6,455,534、6,521,620、6,596,726、6,713,484、5,770,599、6,140,332、5,866,572、6,399,602、6,344,459、6,602,863、6,391,874、6,344,455、5,760,041、6,002,008、及び5,747,498号、及び、以下のPCT広報:WO98/14451、WO98/50038、WO99/09016、及びWO99/24037に記載の化合物等の、低分子を含む。特定の低分子EGFRアンタゴニストは、OSI−774(CP−358774,エルロチニブ、TARCEVA(登録商標)Genentech/OSI Pharmaceuticals);PD183805(CI1033,2−プロペンアミド,N−[4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−7−[3−(4−モルホリニル)プロポキシ]−6−キナゾリニル]−,ジヒドロクロリド,Pfizer Inc.);ZD1839,ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標)4−(3’−クロロ−4’−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−(3−モルホリノプロポキシ)キナゾリン,AstraZeneca);ZM105180((6−アミノ−4−(3−メチルフェニル−アミノ)−キナゾリン,Zeneca);BIBX−1382(N8−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)−N2−(1−メチル−ピペリジン−4−イル)−ピリミド[5,4−d]ピリミジン−2,8−ジアミン,Boehringer Ingelheim);PKI−166((R)−4−[4−[(1−フェニルエチル)アミノ]−1H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−6−イル]−フェノール);(R)−6−(4−ヒドロキシフェニル)−4−[(1−フェニルエチル)アミノ]−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン);CL−387785(N−[4−[(3−ブロモフェニル)アミノ]−6−キナゾリニル]−2−ブチンアミド);EKB−569(N−[4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリニル]−4−(ジメチルアミノ)−2−ブテンアミド)(Wyeth);AG1478(Pfizer);AG1571(SU5271;Pfizer);ラパチニブ(TYKERB(登録商標),GSK572016又はN−[3−クロロ−4−[(3フルオロフェニル)メトキシ]フェニル]6[5[[[2メチルスルホニル)エチル]アミノ]メチル]−2−フラニル]−4−キナゾリンアミン;Glaxo−SmithKline)等の二重EGFR/HER2チロシンキナーゼ阻害剤を含む。
いくつかの実施態様において、「EGFR阻害剤」は、例えば、HER2、HER3又はHER4のような1以上の追加のHERファミリーメンバーを阻害する、上記のような多重特異性HER阻害剤を含む。そのような実施態様において、EGFR阻害剤は、EGFR及びHERファミリーの他の1以上のメンバーに結合する二重特異性HER阻害剤である。そのような実施態様において、二重特異性HER阻害剤は、抗体である。そのような実施態様において、二重特異性抗体は、HER3及びEGFRの両方に特異的である。EGFR阻害剤の例は、US2010/0255010(引用により、本明細書に明示的組み込まれる)に記載の多重特異性抗体を含み、抗EGFR/HER3抗体「DL11f」を含むが、これに限定されない。
「チロシンキナーゼ阻害剤」は、HER受容体のようなチロシンキナーゼのチロシンキナーゼ活性を阻害する分子である。そのような阻害剤の例は、先の段落に記載のEGFR標的薬;Takedaから入手可能なTAK165のような低分子HER2チロシンキナーゼ阻害剤;ErbB2受容体チロシンキナーゼの経口選択的阻害剤である、CP−724,714(Pfizer及びOSI);EGFRに選択的に結合するが、HER2過剰発現細胞及びEGFR過剰発現細胞の両方を阻害する、EKB−569のような二重HER阻害剤(Wyethから入手可能);経口HER2及びEGFRチロシンキナーゼ阻害剤であるラパチニブ(GSK572016;Glaxo−SmithKlineから入手可能);カネルチニブ(CI−1033;Pharmacia)のような全HER阻害剤;ISIS Pharmaceuticalsから入手可能な、Raf−1シグナリングを阻害するアンチセンス薬剤ISIS−5132のようなRaf−1阻害剤;メシル酸イマチニブのような非HER標的TK阻害剤(Glaxo SmithKlineから入手可能なGLEEVEC);スニチニブ(SUTENT(登録商標)、Pfizerから入手可能)のような多重標的チロシンキナーゼ阻害剤;バタラニブ(PTK787/ZK222584、Novartis/Schering AGから入手可能)のようなVEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤;MAPK細胞外調節キナーゼI阻害剤CI−1040(Pharmaciaから入手可能);PD153035,4−(3−クロロアニリノ)キナゾリンのようなキナゾリン;ピリドピリミジネス;ピリミドピリミジネス;CGP59326、GP60261及びCGP62706のようなピロロピリミジネス;ピラゾロピリミジネス,4−(フェニルアミノ)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジネス;クルクミン(ジフェルロイル メタン,4,5−ビス(4−フルオロアニリノ)フタルイミド);ニトロチオフェン部分を含むチルホスチネス;PD−0183805(Warner−Lamber);アンチセンス分子(例えば、HERをコードする核酸に結合する分子);キノキサリネス(米国特許第5,804,396号);トリホスチンス(米国特許第5,804,396号);ZD6474(Astra Zeneca);PTK−787(Novartis/Schering AG);CI−1033(Pfizer)のような全HER阻害剤(pan−HER inhibitors);Affinitac(ISIS3521;Isis/Lilly);メシル酸イマチニブ(GLEEVEC);PKI166(Novartis);GW2016(Glaxo SmithKline);CI−1033(Pfizer);EKB−569(Wyeth);Semaxinib(Pfizer);ZD6474(AstraZeneca);PTK−787(Novartis/Schering AG);INC−1C11(Imclone);又は以下の任意の特許公報に記載される阻害剤を含む:米国特許第5,804,396号;WO1999/09016(American Cyanamid);WO1998/43960(American Cyanamid);WO1997/38983(Warner Lambert);WO1999/06378(Warner Lambert);WO1999/06396(Warner Lambert);WO1996/30347(Pfizer,Inc);WO1996/33978(Zeneca);WO1996/3397(Zeneca);及びWO1996/33980(Zeneca)。
用語「抗体」及び「免疫グロブリン」は、区別なく、広義に用いられ、モノクローナル抗体(例えば、全長又はインタクトなモノクローナル抗体)、ポリクローナル抗体、一価抗体、多価抗体、多重特異性抗体(例えば、所望の生物学的活性を示す二重特異性抗体)を含み、また、特定の抗体断片を含んでもよい(本明細書においてより詳細に示される)。抗体は、キメラ、ヒト、ヒト化、及び/又はアフィニティ成熟された抗体であってもよい。
「低分子」又は「有機低分子」は、本明細書において、約500ダルトン未満の分子量を有する有機分子と定義される。
本明細書において「標識」は、検出可能な化合物又は組成物を指す。標識は、それ自身によって(例えば、放射性同位体標識又は蛍光標識)検出可能であってもよく、又は、酵素標識の場合、検出可能産物となる基質化合物又は組成物の化学的変更に触媒作用をもたらしてもよい。検出可能な標識として機能する放射性核種は、例えば、I−131、I−123、I−125、Y−90、Re−188、Re−186、At−211、Cu−67、Bi−212及びPd−109を含む。
核酸、ポリペプチド、又は抗体のような「単離された」生物学的分子は、自然環境の少なくとも1つの成分から、同定及び単離及び/又は回収されたものである。
ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェンシー(厳しさ、Stringency)」は、当業者によって容易に決定され得、そして、プローブの長さ、洗浄温度、及び塩濃度に依存して実証的に算定できるものである。通常、より長いプローブは適切なアニーリングのためにより高い温度を必要とし、より短いプローブは低い温度を必要とする。ハイブリダイゼーションは、相補鎖がその溶解温度より低い環境に存在する場合、通常、変性したDNAの再アニールのための能力に依存する。プローブとハイブリダイズする配列との間の所望の相同性が高ければ高いほど、使用する温度は高い。結果として、より高い温度によって反応条件はより厳しいものとなり、一方、より低い温度によって反応条件はより緩くなる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーのさらなる詳細、及び、説明は、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience Publishers, (1995)を参照のこと。
本明細書において定義される「ストリンジェントな条件」又は「高ストリンジェンシーの条件」は、次のように同定され得る:(1)例えば、50℃、0.015M塩化ナトリウム/0.0015M クエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウムといった、低いイオン強度及び高温を洗浄のために使用すること;(2)ハイブリダイゼーションの間、0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%ポリビニルピロリドン/42℃で、750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを含むpH6.5の50mMリン酸ナトリウム緩衝液、を含む50%(v/v)ホルムアミドを例とする、ホルムアミドのような変性剤を使用すること;又は(3)50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M 塩化ナトリウム、0.075Mクエン酸トリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハルト溶液、超音波処理したサケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、及び10%デキストランスルファートを含む42℃の溶液で一晩ハイブリダイゼーションし、0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)において10分間42℃で洗浄し、その後、EDTAを含む0.1×SSCで10分間、55℃で高ストレンジェンシー洗浄すること。
「ややストリンジェントな条件(Moderately stringent conditions)」は、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, New York: Cold Spring Harbor Press, 1989に記載されるように定義され得、そして、上記よりも厳しくない(less stringent)洗浄液及びハイブリダイゼーション条件(例えば、温度、イオン強度、SDSの%)の使用を含む。ややストリンジェントな条件の例は、20%ホルムアミド、5×SSC(150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%デキストランスルファート、及び20mg/ml変性せん断サーモン精子DNAを含む溶液中での37℃での一晩のインキュベーション、及び、その後の1×SSC中での約37〜50℃でのフィルターの洗浄である。当業者は、プローブの長さ等の因子に適合するように、必要に応じ、温度、イオン強度、等をどのように調節するか理解し得る。
EGFR阻害剤に対する腫瘍応答性に関連するLKB1における核酸及びアミノ酸のバリエーションが、本明細書に記載される。これらのバリエーションは、EGFR阻害剤に対する応答性のバイオマーカーを提供する。
バリエーション
原発腫瘍及び培養腫瘍細胞における、LKB1遺伝子における周知のバリエーションは、例えば、Somatic Mutations In Cancer (COSMIC, cancer.sanger.ac.uk/ cancergenome/projects/cosmic/)のカタログに記載される。表1は、原発腫瘍及び培養腫瘍細胞において同定されるCOSMICデータベースにおけるLKB1バリエーションのリストを示す。表1のバリエーションは、発生順にリストされ、LKB1タンパク質のアミノ酸位置により示されている。表の第1カラムは、LKB1タンパク質におけるバリエーションのアミノ酸位置をリストし、第2カラムは、バリエーションによって生じるLKB1コーディング配列の変化をリストしている。第3カラムは、バリエーションによって生じるLKB1アミノ酸配列の変化をリストしている。第4カラムは、各バリエーションに割り当てられる変異IDをリストしている。第5カラムは、変異を有する特有の試料の数をリストしている。最終カラムは、バリエーションの型をリストしている。
原発腫瘍及び培養腫瘍細胞における、LKB1遺伝子における周知のバリエーションは、例えば、Somatic Mutations In Cancer (COSMIC, cancer.sanger.ac.uk/ cancergenome/projects/cosmic/)のカタログに記載される。表1は、原発腫瘍及び培養腫瘍細胞において同定されるCOSMICデータベースにおけるLKB1バリエーションのリストを示す。表1のバリエーションは、発生順にリストされ、LKB1タンパク質のアミノ酸位置により示されている。表の第1カラムは、LKB1タンパク質におけるバリエーションのアミノ酸位置をリストし、第2カラムは、バリエーションによって生じるLKB1コーディング配列の変化をリストしている。第3カラムは、バリエーションによって生じるLKB1アミノ酸配列の変化をリストしている。第4カラムは、各バリエーションに割り当てられる変異IDをリストしている。第5カラムは、変異を有する特有の試料の数をリストしている。最終カラムは、バリエーションの型をリストしている。
LKB1アミノ酸は、翻訳されたcDNA配列におけるその位置に応じて番号付けされている。ヌクレオチド置換が停止コドン(すなわち、ナンセンス変異)をもたらす場合、対応するアミノ酸変化が「*」で示される(例えば、アミノ酸変化「Q37*」を示す、第3データ列の37位のバリエーションを参照)。ヌクレオチドの導入又は欠失がフレームシフトをもたらす場合、対応するアミノ酸変化は「fs*」、及び、停止コドン前のフレームシフトのアミノ酸の数を示す番号で示される(例えば、28位の「p.P281fs*6」を参照)。コード配列の欠失部分は、欠失の最初のヌクレオチド、下線(_)、及び欠失の最後のヌクレオチドによって示され、そして、「del」という語の後に欠失したヌクレオチドの数が記載される(例えば、データ列10の「c.465_597del133」を参照)。スプライシング接合箇所は、「+」(スプライシングのドナー)及び「−」(スプライシングの受け入れ側)で示され、「+」又は「−」の後に続く番号は、GT(ドナー部位、例えば、Gが+1及びTが+2)又はAG(受け入れ側部位、例えばGが−1、Aが−2)に対応する位置を示す。いくつかの例において、スプライシング箇所の変異を含むLKB1遺伝子は、LKB1タンパク質を発現しなくてもよい(「p.?」で示される)。
表2は、COSMICデータベースにおいて同定示されたLKB1変異における、非限定的な腫瘍のリストを示す。第1カラムは、腫瘍が由来する第1次組織を示す。第2カラムは、LKB1変異体を有する特有の型の試料の数を示す。第3カラムは、その特有の型の試料の総数を示す。第4カラムは、LKB1変異を有すると同定された型の腫瘍のパーセンテージを示す。
バリエーションは、本明細書において表2に示される腫瘍型において同定されたが、他の種類のがんは、それらのがんにこれらのいずれかのバリエーションが存在するかどうかを決定するために通常使用される方法でスクリーニングされてもよい。本発明の方法は、バリエーションが表1にリストされているかどうかに関わらず、LKB1にバリエーションを含む如何なるがんに対しても適用可能である。
上記任意の方法によれば、ヌクレオチドのバリエーションは、体細胞変異又は生殖細胞系の多型であってもよい。
組成物
いくつかの実施態様において、アレル特異的オリゴヌクレオチドは、ヌクレオチドのバリエーション(例えば、置換)を含むLKB1ポリヌクレオチドのある領域にハイブリダイズするように提供される。いくつかの実施態様において、ヌクレオチドのバリエーションは、表1から選択されるヌクレオチドの位置におけるものである。いくつかの実施態様において、ヌクレオチドのバリエーションは、表1から選択されるヌクレオチドの変化である。アレル特異的オリゴヌクレオチドは、LKB1ポリヌクレオチドの領域にハイブリダイズするとき、ヌクレオチドのバリエーションと対になるヌクレオチドを含む。いくつかの実施態様において、アレル特異的オリゴヌクレオチドの相補鎖が提供される。いくつかの実施態様において、マイクロアレイは、1以上のアレル特異的オリゴヌクレオチド及び/又はその相補鎖を含む。いくつかの実施態様において、アレル特異的オリゴヌクレオチド又はその相補鎖は、アレル特異的プライマーである。
いくつかの実施態様において、アレル特異的オリゴヌクレオチドは、ヌクレオチドのバリエーション(例えば、置換)を含むLKB1ポリヌクレオチドのある領域にハイブリダイズするように提供される。いくつかの実施態様において、ヌクレオチドのバリエーションは、表1から選択されるヌクレオチドの位置におけるものである。いくつかの実施態様において、ヌクレオチドのバリエーションは、表1から選択されるヌクレオチドの変化である。アレル特異的オリゴヌクレオチドは、LKB1ポリヌクレオチドの領域にハイブリダイズするとき、ヌクレオチドのバリエーションと対になるヌクレオチドを含む。いくつかの実施態様において、アレル特異的オリゴヌクレオチドの相補鎖が提供される。いくつかの実施態様において、マイクロアレイは、1以上のアレル特異的オリゴヌクレオチド及び/又はその相補鎖を含む。いくつかの実施態様において、アレル特異的オリゴヌクレオチド又はその相補鎖は、アレル特異的プライマーである。
アレル特異的オリゴヌクレオチドは、そのアレル特異的オリゴヌクレオチドに一致する対照オリゴヌクレオチドとの結合に使用できるが、ヌクレオチドのバリエーションと特異的に対になるヌクレオチドが、野生型LKB1ポリヌクレオチド内の対応するヌクレオチドと特異的に対になるヌクレオチドで置換される場合を除く。そのようなオリゴヌクレオチドは、KB1オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション条件下において、ヌクレオチドのバリエーションを含むLKB1ポリヌクレオチドと、対応する野生型ヌクレオチドを含むLKB1ポリヌクレオチドとを識別可能な、競合結合アッセイに使用されてもよい。例えば、オリゴヌクレオチドの長さ及び組成に基づいた、通常の方法を使用し、当業者は、(a)アレル特異的オリゴヌクレオチドが選択的にLKB1ポリヌクレオチドに結合し、(b)対照オリゴヌクレオチドがヌクレオチドのバリエーションを含むLKB1ポリヌクレオチドに対応する野生型LKB1ポリヌクレオチドに結合する、適切なハイブリダイゼーション条件に想到することができる。例示的条件は、その後に、55℃又は室温での2×SSPE及び0.1%SDSでの洗浄が続く、例えば、55℃での5×標準生理食塩水リン酸EDTA(SSPE)及び0.5%NaDodSO4(SDS)のような、高ストリンジェンシーな条件を含む。
いくつかの実施態様において、本明細書において提供された単離されたポリヌクレオチドは、例えば、放射性同位体、蛍光剤、又は、発色性剤(chromogenic agent)で、検出可能なように標識されている。別の実施態様において、単離されたポリヌクレオチドはプライマーである。別の実施態様において、単離されたポリヌクレオチドは、例えば、アレル特異的オリゴヌクレオチドのような、オリゴヌクレオチドである。別の実施態様において、オリゴヌクレオチドは、例えば、7〜60ヌクレオチド長、9〜45ヌクレオチド長、15〜30ヌクレオチド長、又は18〜25ヌクレオチド長であってもよい。別の実施態様において、オリゴヌクレオチドは、例えば、PNA、モルホリノ−ホスホルアミデート、LNA、又は2’−アルコキシアルコキシであってもよい。本明細書において提供されるオリゴヌクレオチドは、例えば、ヌクレオチドのバリエーションの検出のためのハイブリダイゼーションプローブとして有効である。
別の態様において、結合剤は、野生型LKB1に比較し、アミノ酸バリエーションを含むLKB1に選択的に結合する条件で提供される。いくつかの実施態様において、アミノ酸のバリエーションは、少なくとも図2から選択されるアミノ酸位置でのバリエーションである。いくつかの実施態様において、アミノ酸のバリエーションは、図2から選択されるアミノ酸の変化である。いくつかの実施態様において、結合剤は抗体である。
いくつかの実施態様において、診断キットが提供される。いくつかの実施態様において、キットは前述のポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施態様において、キットは、酵素を更に含む。いくつかの実施態様において、酵素は、ヌクレアーゼ、リガーゼ、及びポリメラーゼから選択される少なくとも一つの酵素である。いくつかの実施態様において、キットは、前述の結合剤のいずれかを含む。
治療及び診断方法
LKB1における体細胞変異は、例えば、非小細胞肺がん及び表2に示されるがんを含む、多くの散発性がんにおいて発見されている。本願発明者らは、不活性化LKB1遺伝子を含む肺及び膵臓組織が、EGFの存在下で、野生型組織よりも実質的に、より成長を示すことを発見した。更に、不活性化LKB1遺伝子を含む組織におけるEGF誘導成長は、EGFR阻害剤により効果的に阻害される。
LKB1における体細胞変異は、例えば、非小細胞肺がん及び表2に示されるがんを含む、多くの散発性がんにおいて発見されている。本願発明者らは、不活性化LKB1遺伝子を含む肺及び膵臓組織が、EGFの存在下で、野生型組織よりも実質的に、より成長を示すことを発見した。更に、不活性化LKB1遺伝子を含む組織におけるEGF誘導成長は、EGFR阻害剤により効果的に阻害される。
従って、いくつかの実施態様において、EGFR阻害剤に対するがんの応答性を予測するための方法が提供され、その方法は、がんにおけるLKB1変異の存在を決定することを含み、がんにおけるLKB1変異の存在は、EGFR阻害剤を用いた治療に対しがんが応答することを示す。いくつかの実施態様において、EGFR阻害剤が有効であると見込まれるがん患者を同定する方法が提供され、当該方法は、患者のがんがLKB1変異を含むかどうかを決定することを含み、LKB1変異の存在は、そのがん患者にEGFR阻害剤が有効であると見込まれることを示す。いくつかの実施態様において、がん患者のための治療を選択する方法が提供され、当該方法は、(a)患者のがんがLKB1変異を含むかどうかを決定すること;及び(b)患者のがんがLKB1変異を含む場合、EGFR阻害剤をその治療のために選択すること、を含む。
いくつかの実施態様において、LKB1変異は、LKB1ポリヌクレオチドにおけるバリエーションを含む。例示的なバリエーションは、挿入、欠失、逆位、及び置換を含むがこれらに限定されず、LKB1コード配列において又は遺伝子の非翻訳領域において生じてもよい。いくつかの実施態様において、LKB1ポリヌクレオチドにおけるバリエーションは、表1から選択されるヌクレオチドにおけるヌクレオチドのバリエーションである。いくつかの実施態様において、LKB1ポリヌクレオチドにおけるバリエーションは、表1から選択されるヌクレオチドの変化である。いくつかの実施態様において、LKB1変異は、LKB1遺伝子の欠失である。
LKB1ポリヌクレオチドにおけるバリエーションは、LKB1ポリヌクレオチドにおけるバリエーションをもたらしてもよい。そのようなバリエーションは、置換、欠失、及び、短鎖化を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施態様において、LKB1ポリヌクレオチドにおけるバリエーションは、表1から選択されるアミノ酸の位置におけるバリエーションである。いくつかの実施態様において、LKB1ポリペプチドにおけるバリエーションは、表1から選択されるアミノ酸の変化である。
いくつかの実施態様において、がんは、大細胞癌、カルチノイド腫瘍、神経内分泌系原発性腫瘍、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、結腸直腸がん、子宮頸がん、メラノーマ、皮膚がん、平滑筋腫、胃がん、グリオブラストーマ、卵巣がん、小細胞肺がん(SCLC)、非小細胞肺がん(NSCLC)、膵臓がん、食道がん、胃がん、甲状腺がんから選択される。いくつかの実施態様において、がんは、表2にリストされるがんから選択される。いくつかの実施態様において、がんは、肺がん、膵臓がん、結腸直腸がん、及び頭頸部がんから選択される。
がん(すなわち、がんから取得した試料、又は、例えば生検により又は循環がん細胞として、任意の手段によってがんから単離された細胞)においてLKB1変異の存在を決定する方法は、当該技術分野で周知である。例えば、リアルタイムPCRを使用した、LKB1遺伝子における特異的変異の検出のためのアッセイが周知である(Qiagen、Valencia、CAから入手可能)。
核酸は、例えば、ゲノムDNA、ゲノムDNAから転写されたRNA、又はRNAから生成されたcDNAであってもよい。核酸は、例えば哺乳動物のような脊椎動物に由来してもよい。核酸は、直接的にその供給源から取得される場合、又は核酸のコピーがその供給源に見いだされる場合、特定の供給源に「に由来する」とされる。
核酸及びアミノ酸配列におけるバリエーションは、当業者に周知の特定の方法によって検出されてもよい。そのような方法は、DNAシークエンシング;アレル特異的ヌクレオチドインコーポレーションアッセイ及びアレル特異的プライマーエクステンションアッセイ(例えば、アレル特異的PCR、アレル特異的ライゲーション連鎖反応(LCR)、及びギャップ−LCR(gap−LCR)を含む、プライマーエクステンションアッセイ;アレル特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ);切断から保護する薬剤が核酸二本鎖におけるミスマッチ塩基を検出するのに用いられる、切断保護アッセイ(cleavage protection assays);MutSタンパク質結合のアッセイ;変異体及び野生型核酸分子を比較する、電気泳動アッセイ;変性−グラジエントゲル電気泳動(DGGE、例えば、Myers et al. (1985) Nature 313:495に記載される);ミスマッチ塩基対におけるRNase切断アッセイ;ヘテロ二本鎖DNAの化学的又は酵素的切断アッセイ;質量分析(例えば、MALDI−TOF);ジセネッティックビットアナリシス(genetic bit analysis (GBA));5’ヌクレアーゼアッセイ(例えば、TaqMan(登録商標));及び分子ビーコンを使用したアッセイを含むが、これらに限定されない。これらの方法のいくつかは、以下で更に詳細に議論される。
標的核酸におけるバリエーションの検出は、当該技術分野で周知の技術を用いた、分子クローニング及び標的核酸のシークエンシングによって達成される。一方、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のような増幅技術は、標的核酸配列を、腫瘍組織から取得したゲノムDNA試料から直接的に増幅するために使用し得る。続いて、増幅された配列の核酸配列が決定され、変異体はその配列から同定される。増幅技術は、当該技術分野で周知であり、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応はSaiki et al., Science 239:487, 1988;米国特許第4,683,203号及び第4,683,195号に記載されている。
当該技術分野で周知のリガーゼ連鎖反応も、標的核酸配列を増幅するために使用され得る(例えば、Wu et al., Genomics 4:560-569 (1989)を参照)。更に、アレル特異的PCRとして周知の技術も、バリエーション(例えば、置換)を検出するために使用され得る。例えば、Ruano and Kidd (1989) Nucleic Acids Research 17:8392;McClay et al. (2002) Analytical Biochem. 301:200-206を参照のこと。本技術の特定の実施態様において、プライマーの3’末端ヌクレオチドが標的核酸における特定のバリエーションに相補的(すなわち、特異的に塩基対となることが可能)をである場合、アレル特異的プライマーが使用される。特定のバリエーションが存在しない場合、増幅産物は観察されない。対立遺伝子特異的増幅変異検出系(Amplification Refractory Mutation System (ARMS))も、バリエーション(例えば、置換)を検出するために使用され得る。ARMSは、例えば、欧州特許公報第0332435号、及びNewton et al., Nucleic Acids Research, 17:7, 1989に記載されている。
バリエーション(例えば、置換)を検出するために有効な他の方法は、(1)一塩基エクステンションアッセイのようなアレル特異的ヌクレオチドインコーポレーションアッセイ(例えば、 Chen et al. (2000) Genome Res. 10:549-557; Fan et al. (2000) Genome Res. 10:853-860; Pastinen et al. (1997) Genome Res. 7:606-614; 及びYe et al. (2001) Hum. Mut. 17:305-316)を参照);(2)アレル特異的PCRを含む、アレル特異的プライマーエクステンションアッセイ(例えば、Ye et al. (2001) Hum. Mut. 17:305-316; 及びShen et al. Genetic Engineering News, vol. 23, Mar. 15, 2003);(3)5’ヌクレアーゼアッセイ(例えば、De La Vega et al. (2002) BioTechniques 32:S48-S54(TaqMan(登録商標)アッセイを記載);Ranade et al. (2001) Genome Res. 11:1262-1268;及びShi (2001) Clin. Chem. 47:164-172を参照);(4)分子ビーコンを使用したアッセイ(例えば、Tyagi et al. (1998) Nature Biotech. 16:49-53; 及びMhlanga et al. (2001) Methods 25:463-71を参照);及び(5)オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(例えば、Grossman et al. (1994) Nuc. Acids Res. 22:4527-4534; 米国特許出願第2003/0119004 A1号;PCT国際出願広報WO 01/92579 A2;及び米国特許公報第6,027,889号を参照)を含むが、これらに限定されない。
バリエーションは、ミスマッチ検出法(mismatch detection methods)によって検出されてもよい。ミスマッチは、100%相補的ではない、ハイブリダイズした核酸及び二本鎖である。総合的な相補性の欠如は、欠失、挿入、逆位、又は置換によるものであってもよい。ミスマッチ検出法の一例は、例えば、Faham et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA 102:14717-14722 (2005)及びFaham et al., Hum. Mol. Genet. 10 :1657-1664(2001)に記載される、ミスマッチ修復法(Mismatch Repair Detection (MRD))である。ミスマッチ切断技術の別の例は、Winter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:7575, 1985、及びMyers et al., Science 230:1242, 1985に詳細に記載される、RNaseプロテクション法(RNase protection method)である。例えば、発明の方法は、ヒト野生型標的核酸に相補的な標識されたリボプローブの使用に関連してもよい。リボプローブ及び組織資料に由来する標的核酸は、共にアニール(ハイブリダイズ)され、続いて、二本鎖RNA構造において複数のミスマッチを検出することのできる、酵素RNaseAを用いて消化される。ミスマッチがRNaseAによって検出される場合、そのミスマッチ箇所で切断される。次に、アニールされたRNA試料は、電気泳動ゲルマトリックスにおいて分離される。ミスマッチが検出され、RNaseAで切断されている場合、リボプローブ及びそのmRNA又はDNAによって、完全長二本鎖RNAよりも小さいRNA産物が認められる。リボプローブは、標的核酸の完全長である必要はなく、標的核酸の一部分でもよく、バリエーションを有すると疑われる位置を包含するように提供される。
同様に、例えば、酵素的又は化学的切断を介して、DNAプローブはミスマッチを検出するために使用され得る(例えば、Cotton et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:4397, 1988; 及び Shenk et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 72:989, 1975を参照)。一方、マッチした二本鎖に対して、ミスマッチした二本鎖の電気泳動における移動が変化することによって、ミスマッチが検出され得る(例えば、Cariello, Human Genetics, 42:726, 1988参照)。リボプローブ又はDNAプローブの何れかによって、バリエーションを含むことが疑われる標的核酸が、ハイブリダイゼーションの前に、増幅されてもよい。標的核酸における変化は、特に変化が欠失及び挿入のような全体的な再構成の場合、サザンハイブリダイゼーションによっても検出され得る。
標的核酸又は周辺のマーカー遺伝子のための制限酵素断片長多型(RFLP)プローブは、例えば、挿入又は欠失のようなバリエーションを検出するために使用され得る。挿入及び欠失は、標的核酸のクローニング、シークエンシング、及び増幅によっても検出され得る。一本鎖高次構造多型(SSCP)分析も、アレルの塩基変化変異体を検出するために使用され得る(例えば、Orita et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:2766-2770, 1989, and Genomics, 5:874-879, 1989参照)。
本発明は、本発明を実施する方法のために適した様々な組成物も提供する。例えば、本発明は、方法に使用するアレイを提供する。いくつかの実施態様において、本発明のアレイは、変異体を検出するために有効な個々の核酸分子又は核酸分子の集合を含む。例えば、本発明のアレイは、離散的に配置された一連の個々のアレル特異的オリゴヌクレオチド、又はアレル特異的オリゴヌクレオチドの集合を含んでもよい。スライドガラスのような固体基板に核酸を付着させるための様々な技術が当該技術分野で周知である。一つの方法は、合成された核酸分子に対し、アミン基、アミン基の誘導体、又は正電荷を持つ別の基のような、固体基盤に対して付着可能反応な部分を含む、修飾された塩基又はアナログを組みこむための方法である。合成産物は、次に、アルデヒド又は他の反応基によりコートされたスライドグラスのような、固体基盤と接触せしめられる。アルデヒド又は他の反応基は、増幅産物の反応部分と共有結合を形成し、産物はスライドグラスに共有結合的に付着する。アミノプロピルシラン表面化学(amino propryl silican surface chemistry)を使用した方法等の他の方法も、当該技術分野で周知である。
上記任意の方法に従い、当業者に周知の特定の方法を用いて取得した適切な生物学的試料を使用して、がんにおけるLKB1変異の存在は決定され得る。生物学的試料は、脊椎動物、特に、哺乳動物から取得されてもよい。組織生検は、腫瘍組織の代表的な一片を取得するためにしばしば使用される。一方、腫瘍細胞は、目的の腫瘍細胞を含むことが知られる、又は、含むと考えられる組織又は体液の形で、間接的に取得され得る。例えば、肺がん病変の試料は、切除、気管支鏡検査法、細針吸引、気管支ブラッシングによって、又は、唾液、胸膜液又は血液から、取得してもよい。標的核酸(又はコードされるポリペプチド)におけるバリエーションは、腫瘍試料から、又は尿、唾液、血清のような他の身体試料から検出されてもよい。がん細胞は、腫瘍からはがれおち、そのような身体試料に現れる。そのような身体試料のスクリーニングによって、がんのような疾患のための早期簡易診断が達成され得る。更に、治療の進行が、標的核酸(又はコードされるポリペプチド)におけるバリエーションについて、そのような身体試料を試験することによって、より簡易にモニターされ得る。更に、腫瘍細胞のための試料調製物を濃縮するための方法は、当該技術分野で周知である。例えば、試料は、パラフィン又はクリオスタット(cryostat)切片から単離されてもよい。がん細胞は、また、フローサイトメトリー又はレーザーキャプチャーマイクロダイセクションによって正常な細胞から分離されてもよい。
いくつかの実施態様において、EGFR阻害剤の治療上有効量を哺乳動物に投与することを含む、LKB1変異を含むがんを有する哺乳動物を処置する方法が提供される。
いくつかの実施態様において、(a)がんがLKB1変異を含むかどうかを決定すること;及び (b)がんがLKB1変異を含む場合、EGFR阻害剤の治療上有効量を投与する工程、を含む、哺乳動物においてがんを処置する方法が提供される。
いくつかの実施態様において、EGFR阻害剤の治療上有効量をがんを有する哺乳動物に投与することを含む、LKB1変異を含むがんを処置する方法であって、EGFR阻害剤の投与前にがんがLKB1変異を有することが決定されている方法が提供される。
本発明の別の実施態様は、EGFR阻害剤の治療上有効量を哺乳動物に投与することを含む、LKB1遺伝子に変異を有する型のがんを有する哺乳動物を処置ための方法を提供する。
前述の任意の実施形態において、哺乳動物はヒトであってもよい。
いくつかの実施態様において、EGFR阻害剤は、EGFRに結合する抗体である。いくつかの実施態様において、EGFR阻害剤は、EGFRに結合する低分子である。いくつかの実施態様において、EGFR阻害剤は、エルロチニブ、セツキシマブ、パニツムマブ、ラパチニブ、DL11f、及びGA201から選択される。
EGFR阻害剤は、例えば、ボーラスとして又はある期間にわたる連続的注入による、静脈内投与、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内(intracerobrospinal)、皮下、関節内、滑膜内、髄腔内、口腔内、局所又は吸入経路による投与などの、周知の方法に従って、哺乳動物(ヒト患者のような)に投与される。抗体の静脈内投与が好ましい。
がんの予防又は処置のための、EGFR阻害剤の用量は、上記で定義されるように、処置されるがんの型、がんの重症度及び経過、抗体が予防又は処置目的で投与されるかどうか、以前の治療、患者の病歴及び薬に対する応答、及び医師の裁量に依存する。
いくつかの実施態様において、阻害剤の固定用量が投与される。固定用量は、患者に対して、単回、又は一連の処置にわたって適切に投与されてもよい。固定用量が投与される場合、用量は、好ましくは、約20mgから約2000mgの範囲の阻害剤である。例えば、固定用量は、約420mg、約525mg、約840mg、又は約1050mgの阻害剤である。
一連の用量が投与される場合、例えば、おおよそ毎週、おおよそ2週間毎、おおよそ3週間毎、又は、おおよそ4週間毎であってもよいが、好ましくはおおよそ3週間毎である。固定用量は、例えば、疾患の進行、不都合な事象、又は医師により決定されたその他の場合が生じるまで、続けて投与されてもよい。例えば、固定用量は、約2、3、又は4回から、約17回以上まで投与されてもよい。
いくつかの実施態様において、抗体の、1以上の負荷用量が投与され、その後、抗体の、1以上の維持用量が投与される。別の実施態様において、同用量が複数回、患者に対して投与される。
単独の抗腫瘍剤としてEGFR阻害剤が投与されてもよいが、患者は、阻害剤の組合せによって、及び、1以上の化学療法剤によって任意で処置されてもよい。
阻害剤及び/又は化学療法剤と組み合わされてもよい他の治療剤は、次の治療剤の任意の1以上を含む:HER二量体化阻害剤である、第2の異なるHER阻害剤(例えば、トラスツズマブのような成長阻害HER2抗体、又は、7C2、7F3又はそのヒト化変異体のような、HER2過剰発現細胞のアポトーシスを誘導するHER2抗体);EGFR、HER3、HER4のような異なる腫瘍関連抗原に対する抗体;抗ホルモン化合物、例えば、タモキシフェン、又はアロマターゼ阻害剤のような抗エストロゲン化合物;心保護剤(治療に関連する心筋機能不全を防止又は低減するための);サイトカイン;EGFR標的薬(例えば、TARCEVA(登録商標)、IRESSA(登録商標)、VECTIBIX(登録商標)、又はERBITUX(登録商標))抗血管新生剤(特に、AVASTIN(商標)としてGenentechが販売するベバシズマブ);チロシンキナーゼ阻害剤;COX阻害剤(例えば、COX−1又はCOX−2阻害剤);非ステロイド抗炎症薬、セレコクシブ(CELEBREX(登録商標));ファルネシル転移酵素阻害剤(例えば、チピファルニブ/ZARNESTRA(登録商標)R115777、Johnson and Johnsonから入手可能、又はロナファルニブSCH66336、Schering−Ploughから入手可能);オレゴボマブ(MoAbB43.13)のような、腫瘍胎児タンパク質CA125に結合する抗体;HER2ワクチン(例えば、PharmexiaのHER2自家ワクチン、又はDendreonのAPC8024タンパク質ワクチン、又はGSK/CorixaのHER2ペプチドワクチン);別のHER標的治療(例えば、トラスツズマブ、セツキシマブ、ABX−EGF、EMD7200、ゲフィチニブ、エルロチニブ、CP724714、CI1033、GW572016、IMC−11F8、TAK165等);Raf及び/又はras阻害剤(例えば、WO2003/86467参照);ドキソルビシンHClリポソーム注射剤(DOXIL(登録商標);トポテカンのようなトポイソメラーゼI阻害剤;タキサン;ラパチニブ/GW572016のようなHER2及びEGFR二重チロシンキナーゼ阻害剤;TLK286(TELCYTA(登録商標);EMD−7200;セロトニンアンタゴニスト、ステロイド、又はベンゾジアゼピンのような、局所的又は経口抗生物質を含む、吐き気を処置する医薬;皮膚発疹を予防又治療する医薬、又は標準的なにきび治療薬;下痢を処置又は予防する医薬;アセトアミノフェン、ジフェンヒドラミン、又はメペリジン等の解熱薬;造血成長因子。
上記の共投与される任意の薬剤の好適な用量は、現在使用されているものであり、薬剤及び阻害剤の複合作用(相乗効果)により減じられてもよい。
上記の治療レジメンに加え、患者は、がん細胞の外科的除去及び/又は放射線治療に供されてもよい。
阻害剤が抗体である場合、投与される抗体は、好ましくはネイキッド抗体(naked antibody)である。しかしながら、阻害剤は、細胞傷害性薬剤にコンジュゲートされていてもよい。好ましくは、コンジュゲートされた阻害剤及び/又はその結合対象である抗原は、細胞内部に移行され、それにより、コンジュゲートが結合するがん細胞の、コンジュゲートによる殺傷治療効果の増加がもたらされる。好ましい実施態様において、細胞傷害性薬剤は、がん細胞内の核酸を標的とする、又はがん細胞内の核酸と干渉する。そのような細胞傷害性薬剤の例は、メイタンシノイド、カリケアマイシ、リボヌクレアーゼ、及びDNAエンドヌクレアーゼを含む。
本出願は、遺伝子治療による阻害剤の投与を検討するものである。例えば、細胞内の抗体の作成のための遺伝子治療の使用に関する、1996年3月14日発行のWO96/07321を参照のこと。
患者の細胞に、インビボ及びエクスビボ(ex vivo)で、核酸(任意で、ベクターに含まれる)を導入する腫瘍な2つのアプローチがある。インビボにおける送達のために、核酸は、通常抗体が必要とされる部位で、患者に直接的に注射される。エクスビボにおける処置のために、患者の細胞は取り出され、核酸がそれらの単離細胞に導入され、改変細胞が患者に直接的又は間接的に投与され、又は例えば患者に埋め込まれた多孔性膜に封入される (例えば、米国特許第4,892,538号及び第5,283,187号参照)。生細胞に核酸を導入するための様々な技術がある。その技術は、核酸がインビトロで培養細胞に導入されるか、又は対象とするホストの細胞にインビボで導入されるかによって異なる。インビトロで哺乳類細胞に核酸を導入するための好適な技術は、リポソーム、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE−デキストラン、リン酸カルシウム沈殿法等の使用を含む。遺伝子のエクスビボ送達のために一般に使用されるベクターはレトロウイルスである。
現在のところ、好ましいインビボの核酸導入技術は、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、単純ヘルペスIウイルス、又はアデノ関連ウイルス)及び脂質ベースのシステム(遺伝子の脂質介在導入のために有効な脂質は、例えば、DOTMA、DOPE、及びDC−Choである)を含む。いくつかの状況において、例えば、細胞表面タンパク質又は標的細胞、標的細胞上の受容体に対するリガンド等に対する特異的な抗体のような、標的細胞を標的とする薬剤と共に、核酸ソースを提供することが望ましい。リポソームを使用する場合、エンドサイトーシスに関連する細胞表面の膜タンパク質に結合するタンパク質は、特定の細胞型に影響を及ぼすカプシドタンパク質又はその断片、サイクリングにおいて内部移行されるタンパク質に対する抗体、及び細胞内局在を標的とする又は細胞内半減期を延長するタンパク質の、標的化及び/又は取り込みのために使用されてもよい。受容体介在エンドサイトーシスの技術は、例えば、Wu et al., J. Biol. Chem. 262:4429-4432 (1987);及びWagner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:3410-3414 (1990)に記載されている。現在周知の遺伝子マーキング及び遺伝子治療のプロトコルは、Anderson et al., Science 256:808-813 (1992)を参照のこと。また、WO93/25673、及び、そこに引用される引用文献を参照のこと。
製品
いくつかの実施態様において、上記の疾患又は健康状態を処置するために有効な物質を含む製品が提供される。製品は、容器と容器上ないしは容器に付随するラベル又はパッケージ挿入物を含む。好適な容器は、例としてボトル、バイアル、シリンジ等を含む。容器はガラス又はプラスチック等の様々な物質から形成されうる。容器は、選択される疾患又は健康状態に有効な組成物を保持し、又は含み、そして、滅菌アクセスポート(例えば、皮下注射針で穿刺可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアル)を有していてもよい。組成物における少なくとも1つの活性薬剤はEGFR阻害剤である。
いくつかの実施態様において、上記の疾患又は健康状態を処置するために有効な物質を含む製品が提供される。製品は、容器と容器上ないしは容器に付随するラベル又はパッケージ挿入物を含む。好適な容器は、例としてボトル、バイアル、シリンジ等を含む。容器はガラス又はプラスチック等の様々な物質から形成されうる。容器は、選択される疾患又は健康状態に有効な組成物を保持し、又は含み、そして、滅菌アクセスポート(例えば、皮下注射針で穿刺可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアル)を有していてもよい。組成物における少なくとも1つの活性薬剤はEGFR阻害剤である。
製品は、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、及びデキストローズ溶液のような、薬学的に許容される希釈緩衝液を含む、第2の容器を更に含んでいてもよい。製品は、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業的及び使用者の観点から望ましい他の材料を更に含んでもよい。
本発明のキット及び製品は、例えば添付文書又はラベルの形態で、患者のがんがLKB1変異を有する場合、組成物ががんの処置に使用されることを示す情報も含む。添付文書又はラベルは、例えば、紙、又は、磁気記憶媒体(例えば、フロッピーディスク)又はCD−ROMのような、電子媒体のような、如何なる形態であってもよい。ラベル又は添付文書は、キット又は製品中の、薬学的組成物及び投与形態に関する他の情報を含んでもよい。
通常、そのような情報は、含まれる薬学的組成物及び投与形態の使用において、患者及び医師を、効果的に及び安全に、支援する。例えば、EGFR阻害剤に関する次の情報は添付文書で提供されてもよい:薬物動態、薬力学、臨床研究、有効性評価基準、指示及び使用法、禁忌、警告、注意事項、副作用、過量、適正量及び適正投与、供給方法、適正な保管条件、参照情報及び患者情報。
本発明の特定の実施形態において、製品は、薬学的に許容される担体中のEGFR阻害剤を含む薬学的組成物、及び、ラベルを含んで、共に包装されて、提供され、ラベルは、薬学的に許容される担体、及び、阻害剤又は薬学的組成物が、本明細書に記載されるように、患者のがんがLKB1遺伝子に変異を有する場合に、EGFR阻害剤に応答し得る型のがんを有する患者を処置のためのものであると示されることを記載している。
任意の実施形態において、本明細書における製品は、第2の医薬を含む容器を更に含んでもよく、EGFR阻害剤が第1の医薬であって、かつ、製品は、その添付文書上に、患者を有効量の第2の医薬で処置するための指示を更に含んでもよい。第2の医薬は、前述の何れのものであってもよい。
添付文書は、容器上又は容器に付随している。好適な容器は、例としてボトル、バイアル、シリンジ等を含む。容器はガラス又はプラスチック等の様々な物質から形成され得る。がんを処置するのに有効な組成物を保持する又は含む容器は、滅菌アクセスポート(容器は、例えば、容器は、皮下注射針で穿刺可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであってもよい)を有していてもよい。組成物における少なくとも1つの活性薬剤はEGFR阻害剤である。ラベル又は添付文書は、阻害剤及び提供される任意の他の医薬の、投与量及び投与間隔についての具体的な指針による処置にふさわしい対象におけるがんの治療のために、組成物が使用されることを示している。製品は、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、及び/又はデキストローズ溶液のような、薬学的に許容される希釈緩衝液を含む追加の容器を更に含んでもよい。キットは、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業的及び使用者の観点から望ましい他の材料を更に含むことができる。
本発明の更なる詳細は、以下の非限定的な実施例により説明される。本明細書中の全ての引用文献の開示は、参照により本明細書中に明示的に援用される。
材料及び方法
Lkb1 ベクター構築
C57BL/6 Stk11(LKB1)ローカスを標的とするためのコンストラクトは、組換え技術を用いて作成した。(Warming et al., 2005, Nucl. Acids Res. 33: e36)C57BL/6 BAC(RP23ライブラリー)からのLkb1を含むゲノム断片をpBlight−TKに回収した後、Met129をグリシンに変更し、ScaIサイトをSspIサイトに置き換えるために、エクソン3内の配列GTG−ATG−GAG−TAC−TGC−GTAをGTT−GGG−GAA−TAT−TGC−GTAで置き換えた。loxpに並んでいるネオマイシンカセットを、イントロン2に導入した。ベクターの最終産物は、DNAシークエンシングで確認し、直鎖化した。C57BL/6 C2胚性幹細胞は、標準的方法により標的化され、陽性クローンは、ネオマイシンカセットを除去するためにCreでトランスフェクトした。改変された胚性幹細胞は、胚盤胞に注射され、C57BL6メスとキメラの掛け合わせにより、生殖細胞系伝達が得られた。
Lkb1 ベクター構築
C57BL/6 Stk11(LKB1)ローカスを標的とするためのコンストラクトは、組換え技術を用いて作成した。(Warming et al., 2005, Nucl. Acids Res. 33: e36)C57BL/6 BAC(RP23ライブラリー)からのLkb1を含むゲノム断片をpBlight−TKに回収した後、Met129をグリシンに変更し、ScaIサイトをSspIサイトに置き換えるために、エクソン3内の配列GTG−ATG−GAG−TAC−TGC−GTAをGTT−GGG−GAA−TAT−TGC−GTAで置き換えた。loxpに並んでいるネオマイシンカセットを、イントロン2に導入した。ベクターの最終産物は、DNAシークエンシングで確認し、直鎖化した。C57BL/6 C2胚性幹細胞は、標準的方法により標的化され、陽性クローンは、ネオマイシンカセットを除去するためにCreでトランスフェクトした。改変された胚性幹細胞は、胚盤胞に注射され、C57BL6メスとキメラの掛け合わせにより、生殖細胞系伝達が得られた。
移植片培養
脾臓及び肺の各肺葉は、時限妊娠のセットアップから採取した肺から取得した。肺の移植片は、0.4μmポリエステル膜インサートを有する12mmのTranswell(登録商標)(Corning,Tewsbury,MA)において、10%ウシ胎仔血清、グルタミン、及びペニシリン−ストレプトマイシン含有DMA培養液で、気液界面で培養した。長期間培養のために(>3日)、培養液を毎日交換した。
脾臓及び肺の各肺葉は、時限妊娠のセットアップから採取した肺から取得した。肺の移植片は、0.4μmポリエステル膜インサートを有する12mmのTranswell(登録商標)(Corning,Tewsbury,MA)において、10%ウシ胎仔血清、グルタミン、及びペニシリン−ストレプトマイシン含有DMA培養液で、気液界面で培養した。長期間培養のために(>3日)、培養液を毎日交換した。
間充組織非含有培養のために、肺を単離し、コラゲナーゼ/ディスパーゼ(各1mg/ml)中で10〜15分間、室温でインキュベートした。上皮細胞を、機械的解剖により取り除き、Transwell(登録商標)プレートに移し、そして5−10μlのマトリゲル:DME(1:1)で覆った。マトリゲルが固化した後、400μlの培養液(DME/10%FCS/グルタミン/pen−strep+200ng/mlFGF7(Life Technologies,Carlsbad,CA)、FGF1(Life Technologies)、又はEGF(Life Technologies))をウェルの上と下に添加した。エルロチニブ(Tarceva(登録商標)、1μMの塩酸塩;OSI Pharmaceuticals)又はDMSOを、示す通り添加した。
ホールマウント免疫蛍光染色
肺の移植片を、4%パラホルムアルデヒドで固定し、2%BSA、0.1%サポニン、又は0.1%Triton−X100を含有するPBS中で透徹処理した。洗浄後、組織を抗E−カドヘリン(Santa Cruz)で染色した。組織片をマウントし、Leica SP5レーザー共焦点顕微鏡で画像化した。示した画像は、実質的に同条件及びセッテイングにおいて、培養し、染色し、画像化した、同腹仔の移植片を用いて行った、複数の独立した実験(n≧5)を代表するものである。
肺の移植片を、4%パラホルムアルデヒドで固定し、2%BSA、0.1%サポニン、又は0.1%Triton−X100を含有するPBS中で透徹処理した。洗浄後、組織を抗E−カドヘリン(Santa Cruz)で染色した。組織片をマウントし、Leica SP5レーザー共焦点顕微鏡で画像化した。示した画像は、実質的に同条件及びセッテイングにおいて、培養し、染色し、画像化した、同腹仔の移植片を用いて行った、複数の独立した実験(n≧5)を代表するものである。
ウエスタンブロット
組織を、PhosphoSafe(登録商標)抽出液(EMD Millipore)及び超音波処理により溶解した。組織及び細胞溶解液のタンパク質濃度は、BCAアッセイ(Pierce)によって決定した。NuPAG(登録商標)4〜12%Bis Tris gels(Invitrogen)を使用した電気泳動による分離の前に、βメルカプトエタノールを含むLDSサンプルバッファーを5分間95oCで熱した。タンパク質を、ニトロセルロース膜に一晩トランスファーし、膜を、0.1%Tween及び5%Blottoを含むトリス緩衝生理食塩水(TBS)でブロッキングし、0.1%Tween及び2%BSA含有TBSバッファー中の一次抗体と一晩インキュベートした。一次抗体(EGF受容体(D38B1)XP(登録商標)ウサギmAb、リン酸化−EGF受容体(Tyr845)(D63B4)ウサギmAb、リン酸化−EGF受容体(Tyr1173)(53A5)ウサギmAb、サイクリンD1(92G2)ウサギmAb、全て、Cell Signaling Technologyから入手可能;及び抗アクチン抗体)は、HRP−コンジュゲート二次抗体及びECL試薬(Pierce)を用いて検出した。示される実験は、複数の独立した実験(n?3)の代表である。
組織を、PhosphoSafe(登録商標)抽出液(EMD Millipore)及び超音波処理により溶解した。組織及び細胞溶解液のタンパク質濃度は、BCAアッセイ(Pierce)によって決定した。NuPAG(登録商標)4〜12%Bis Tris gels(Invitrogen)を使用した電気泳動による分離の前に、βメルカプトエタノールを含むLDSサンプルバッファーを5分間95oCで熱した。タンパク質を、ニトロセルロース膜に一晩トランスファーし、膜を、0.1%Tween及び5%Blottoを含むトリス緩衝生理食塩水(TBS)でブロッキングし、0.1%Tween及び2%BSA含有TBSバッファー中の一次抗体と一晩インキュベートした。一次抗体(EGF受容体(D38B1)XP(登録商標)ウサギmAb、リン酸化−EGF受容体(Tyr845)(D63B4)ウサギmAb、リン酸化−EGF受容体(Tyr1173)(53A5)ウサギmAb、サイクリンD1(92G2)ウサギmAb、全て、Cell Signaling Technologyから入手可能;及び抗アクチン抗体)は、HRP−コンジュゲート二次抗体及びECL試薬(Pierce)を用いて検出した。示される実験は、複数の独立した実験(n?3)の代表である。
結果
マウスのLKB1におけるホモ接合性の生殖細胞系の変異は、早期胚致死性である。 従って、細胞透過性の非加水分解性ATPアナログ(NMPP1)の添加によって特異的に阻害され得るアレルを設計するために、化学遺伝学的手法が、使用される(Bishop et al., 2000, Nature, 407: 393-401; Bishop at al., 2000, Ann. Rev. Biophys. Biomol. Struct. 29 557-606)。このアレル(Lkb1MG)を、他の箇所に記載された、遺伝子操作されたマウスの系統内因性のLKB1ローカスに「ノックイン」した(Lo et al., 2012, J. Cell. Biol.,199: 1117-1130)。Lkb1MG/MG胚及び野生型同腹仔の肺及び脾臓組織を摘出し、数日間インビトロで培養した。肺は、ホールマウント移植片として、及び、ほとんどの間充組織と他の組織が肺上皮から剥がれた「間充組織非含有」状態で、培養され、肺上皮はマトリゲルで培養した(Lu et al., 2005, J. Biol. Chem., 280: 4834-4841)。この間、これらの組織の成長因子に対する応答を評価した。
マウスのLKB1におけるホモ接合性の生殖細胞系の変異は、早期胚致死性である。 従って、細胞透過性の非加水分解性ATPアナログ(NMPP1)の添加によって特異的に阻害され得るアレルを設計するために、化学遺伝学的手法が、使用される(Bishop et al., 2000, Nature, 407: 393-401; Bishop at al., 2000, Ann. Rev. Biophys. Biomol. Struct. 29 557-606)。このアレル(Lkb1MG)を、他の箇所に記載された、遺伝子操作されたマウスの系統内因性のLKB1ローカスに「ノックイン」した(Lo et al., 2012, J. Cell. Biol.,199: 1117-1130)。Lkb1MG/MG胚及び野生型同腹仔の肺及び脾臓組織を摘出し、数日間インビトロで培養した。肺は、ホールマウント移植片として、及び、ほとんどの間充組織と他の組織が肺上皮から剥がれた「間充組織非含有」状態で、培養され、肺上皮はマトリゲルで培養した(Lu et al., 2005, J. Biol. Chem., 280: 4834-4841)。この間、これらの組織の成長因子に対する応答を評価した。
Lkb1wt/wt由来の間充組織非含有移植片に対する、NMPP1阻害剤存在下でのEGF(100ng/ml)の添加により、成長因子なしの場合と比較して、わずかな成長の上昇がもたらされた。これに対し、NMPP1存在下でのLkb1MG/MGに対するEGFの添加は、実質的な成長をもたらし(図1)、これは、間充組織非含有移植片におけるLKB1の阻害がEGFに対する応答を増加させることを示している。ホールマウント培養においても同様の結果が認められた(図2)。この場合、EGFの添加は、培養されたLkb1MG/MGの肺の腫瘍芽の実質的な増大をもたらし、そして、LKB1wt/wt肺のサイズのわずかな増大をもたらした。ホールマウント及び間充組織非含有培養の両方において、EGF誘導成長は、エルロチニブ(Tarceva(登録商標);1μM)の添加により阻害された。
これに対し、LKB1が阻害された場合に上皮組織は分枝が少ない構造を示したが、線維芽細胞成長因子(FGF)−1又はFGF−7の添加は、NMPP1の存在下非存在下に関わらず、LKB1wt/wt及びLKB1MG/MGの両方に由来する間充組織非含有肺培養物の着実な成長をもたらした。
応答におけるこの変化がEGFRの発現レベルの違いによるものかどうか評価するために、EGFRタンパク質レベルをウエスタンブロット法により測定した。EGFRレベルは、NMPP1の存在下又は非存在下で、LKB1wt/wt及びLKB1MG/MG肺の両方で同程度であった。更に、EGFの添加10分後のY1173、Y1068、及びY845におけるEGFRのリン酸化は変化しなかった(図3)。従って、EGFに対する培養物の応答性は、EGFRの発現の増加によるものではなかった。
EGFシグナリングの調節におけるLKB1の同様の役割が、脾臓において同定された。我々は、後期胚から得られた脾臓移植片におけるLkb1キナーゼ活性の阻害が、嚢胞形成を著しく促進したことを、すでに報告した(Lo et al., 2012, J. Cell. Biol., 199: 1117-1130)。この実験系では、EGF(100ng/ml)の添加が、Lkb1阻害により誘導される嚢胞の表現型の発達を促進した(図4)。しかし、EGFの存在下及び非存在下で発達する嚢胞は、形態学的に区別できず、そして、Lkb1阻害がない場合に、EGFはそれ自身により嚢胞を促進しない(図5)。加えて、エルロチニブ(Tarceva(登録商標);1μM)が、その嚢胞の表現型の発達を阻害するので、脾臓の嚢胞形成はEGFRシグナリングを必要とすると思われる(図6)。
LKB1活性が、肺及び脾臓の上皮細胞のEGFに対する応答性を変化させることを既に示した。EGFシグナリングは、いくつかのがんにおいて、重要な意味を持つ経路であることが知られているので、LKB1変異状態は本経路の、標的化治療、及び、特にEGFR標的化治療に対する、脆弱性又は耐性の評価に参考になるに違いない。上記実験により示されるように、がんにおけるLKB1変異がEGFに対するがんの応答性を増加させることが予測され、従って、本明細書に記載されるように、そのようながんがEGFR阻害剤に対してよく応答することが予測される。
前述の発明は、明確な理解のために、例示及び実施例によってある程度詳細に説明されてきたが、これらの説明や例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書に引用されるすべての特許及び科学文献の開示は、その内容全体が出典明示により援用される。
Claims (25)
- がんがEGFR阻害剤に応答するかどうかを予測するための方法であって、がんがLKB1変異を含むかどうかを決定することを含み、LKB1変異の存在が、がんがEGFR阻害剤に応答することを示す、方法。
- EGFR阻害剤が有効であると見込まれるがん患者を検出する方法であって、患者のがんがLKB1変異を含むかどうかを決定することを含み、LKB1変異の存在が、がん患者にEGFR阻害剤が有効であると見込まれることを示す、方法。
- がん患者のための治療を選択する方法であって、(a)患者のがんがLKB1変異を含むかどうかを決定すること、及び(b)患者のがんがLKB1変異を含む場合、治療のためにEGFR阻害剤を選択すること、を含む方法。
- 哺乳動物においてがんを処置する方法であって、(a)がんがLKB1変異を含むかどうかを決定すること、及び(b)がんがLKB1変異を含む場合、EGFR阻害剤の治療上有効量を哺乳動物に投与すること、を含む方法。
- 哺乳動物においてLKB1変異を含むがんを処置する方法であって、がんを有する哺乳動物にEGFR阻害剤の治療上有効量を投与することを含む、方法。
- EGFR阻害剤の投与前に、がんがLKB1変異を含むことが決定された、請求項4に記載の方法。
- がんが固形腫瘍である、請求項1〜6の何れか一項に記載の方法。
- がんが、大細胞癌、カルチノイドがん、神経内分泌原発がん、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、結腸直腸がん、子宮頸がん、メラノーマ、皮膚がん、平滑筋腫、胃がん、グリオブラストーマ、卵巣がん、小細胞肺がん(SCLC)、非小細胞肺がん(NSCLC)、膵臓がん、食道がん、胃がん、及び甲状腺がんから選択される、請求項7に記載の方法。
- がんが、肺がん、膵臓がん、結腸直腸がん、及び頭頸部がんから選択される、請求項7に記載の方法。
- がんが、表2における組織から選択される組織に存在する、請求項1〜6の何れか一項に記載の方法。
- LKB1変異がLKB1ポリヌクレオチドにおけるバリエーションを含む、請求項1〜10の何れか一項に記載の方法。
- LKB1ポリヌクレオチドにおけるバリエーションが、LKB1ポリヌクレオチドのコード配列に存在する、請求項11に記載の方法。
- LKB1ポリヌクレオチドにおけるバリエーションが、挿入、欠失、逆位、及び置換から選択される少なくとも1つのバリエーションを含む、請求項11又は12に記載の方法。
- LKB1ポリヌクレオチドにおけるバリエーションが、LKB1コード配列におけるフレームシフトをもたらす、請求項11〜13の何れか一項に記載の方法。
- LKB1ポリヌクレオチドにおけるバリエーションが、LKB1ポリペプチドにおけるバリエーションをもたらす、請求項11〜14の何れか一項に記載の方法。
- LKB1ポリペプチドにおけるバリエーションが、挿入、置換、欠失、及び短鎖化から選択される、請求項15に記載の方法。
- LKB1ポリペプチドにおける少なくとも1つのバリエーションが、(a)有意に減少した又は欠如したLKB1タンパク質レベル、及び/又は(b)有意に減少した活性を有するLKB1タンパク質の発現をもたらす、表1から選択されるアミノ酸の位置におけるアミノ酸のバリエーションである、請求項15又は16に記載の方法。
- LKB1ポリペプチドにおける少なくとも1つのバリエーションが、表1から選択されるアミノ酸の変化である、請求項17に記載の方法。
- LKB1ポリヌクレオチドにおけるバリエーションが、(a)有意に減少した又は欠如したLKB1タンパク質レベル、及び/又は(b)有意に減少した活性を有するLKB1タンパク質の発現をもたらす、表1から選択されるヌクレオチドの位置におけるヌクレオチドのバリエーションである、請求項11〜16の何れか一項に記載の方法。
- LKB1ポリヌクレオチドにおけるバリエーションが、表1から選択されるヌクレオチドの変化である、請求項19に記載の方法。
- 哺乳動物がヒトである、請求項1〜20の何れか一項に記載の方法。
- EGFR阻害剤が、EGFRに結合する抗体である、請求項1〜21の何れか一項に記載の方法。
- EGFR阻害剤がセツキシマブ、又はパニツムマブである、請求項1〜22の何れか一項に記載の方法。
- EGFR阻害剤が低分子である、請求項1〜21の何れか一項に記載の方法。
- EGFR阻害剤がエルロチニブ、又はゲフィニチブである、請求項1〜21の何れか一項に記載の方法。
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