JP2016513078A - 一段階または多段階のトリ型結核菌亜種副結核症サブユニット・ワクチン - Google Patents
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Abstract
本発明により、マイコバクテリウム種(例えばトリ型結核菌亜種副結核症)によってヒトまたは動物で起こる潜在性感染または活動性感染に対する予防ワクチンまたは治療ワクチンで使用するための1つ以上の免疫原性ポリペプチドが提供される。さらに、マイコバクテリウム種(例えばトリ型結核菌亜種副結核症)感染の予防または治療のために投与することを目的として、前記1つ以上の免疫原性ポリペプチドを含む一段階または多段階のワクチンが提供される。それに加え、マイコバクテリウム種(例えばトリ型結核菌亜種副結核症)感染の予防または治療を目的として、前記1つ以上の免疫原性ポリペプチドを含んでいて、前記多段階ワクチンを生体内で発現させることのできる核酸ワクチンが提供される。
Description
本発明は、ヒトまたは動物でマイコバクテリウム種(例えばトリ型結核菌亜種副結核症)によって起こる潜在感染または活性感染に対する予防ワクチンまたは治療ワクチンで使用するための1つ以上の抗原性ポリペプチドを開示している。本発明はさらに、前記1つ以上の抗原性ポリペプチドを含んでいて、マイコバクテリウム種感染の予防または治療のために予防用または治療用として投与することのできる一段階または多段階のワクチンを開示している。
結核菌は、世界中の家畜の集団に致死的な感染を引き起こすことができ、主な感染は、ウシ型結核菌とトリ型結核菌亜種副結核症(MAP)によって起こる。MAPは、ヨーネ病または副結核症の原因である。この病気は、経口経路または胎内感染を通じて幼い子牛に感染する慢性の進行性腸疾患(41)であり、感染が広がっていく長い無症候期間を特徴とする。MAPは、回腸、回腸弁、関係するリンパ節における深刻な免疫異常と慢性炎症が原因で、最終的には体力の消耗、体重減少を引き起こし、感染してから数ヶ月または数年で死に至る可能性がある(4、40)。その帰結として、ミルクの収量減少、早すぎる間引き、食肉価値の低下が原因で、大きな経済的損失が農場レベルで発生する(26)。環境と乳製品の中にMAPが存在すること(8)についてと、MAPとヒトのクローン病の関係(25)についての別の懸念も大きくなっている。たいていの動物は生後の数日のうちに曝露/感染を受けるため、感染前にワクチンを接種できないことがしばしばある。
MAPとヒトのクローン病(CD)が関連していることを示すいくつかの知見が存在している。ウシ起源のMAPは、細菌培養と遺伝子プローブによってCD患者で見いだされた(42、43、44)。MAPに対して効果を持つ抗マイコバクテリウム薬剤療法を利用してCD患者における大きな寛解が誘導されている(45)。MAPに反応するT細胞がCD患者で見いだされており、これは、CDで見られる炎症におけるマイコバクテリウムの役割を示唆している(46)。多くの研究により、細菌分子を認識して免疫反応を促進するタンパク質であるNOD2の遺伝子における突然変異が同定され、それら突然変異がCDの進行(感受性の増加)と結び付けられている(47、48、49)。これらの知見によれば、クローン病はMAP感染によって起こる可能性があり、MAP感染は、低温殺菌されていないミルク、低温殺菌されたミルク、畜産品をヒトが摂取することを通じて起こる可能性がある。さらに、これらの研究に基づくと、クローン病の治癒は、MAPに対するワクチン接種をおそらくは抗マイコバクテリウム抗生物質と組み合わせることによって可能になる可能性がある。
副結核症に対して現在利用できるワクチン(生の減弱MAP、または熱殺菌MAP)は、細菌の排出を減らすが、伝播を阻止したり、殺菌免疫を誘導したりすることはできない(14、29)。さらに、これらワクチンは、TB皮膚試験での偽陽性反応因子となるほか、副結核症診断試験で抗体応答を起こす。新たなMAPワクチンは、サブユニット(15、17)、DNA(34)、発現ライブラリ免疫化(12)、突然変異MAP株(6)を含むものであり、部分的な保護しか与えないことが示された。多数の仮想的組み換えMAPタンパク質が、可能性のあるワクチン候補として、家畜で試験されてきた。試験されたものには、熱ショック・タンパク質70(Hsp70)、MAP抗原85(Ag85)複合体のメンバー、スーパーオキシド・ディスムターゼ(SOD)が含まれる。MPLアジュバントに入れたMAP Ag85複合体タンパク質とSODを用いたワクチン接種により、子牛でいくらかの保護が誘導されたが、ワクチン接種群と非ワクチン接種群の間で有意な差は観察されなかった(15)一方で、DDAアジュバントに入れた同じ抗原は、ヤギ・モデルにおいて、事前曝露ワクチン接種の後にMAP負荷の大きな低下を誘導した(50)。また、Hsp70/DDAワクチンの接種は、ワクチンを接種していない動物と比べて、組織コロニー化に影響を与えることなく糞へのMAP排出を減らすことがわかっている(32、33)。たいていの子牛は新生児のときに感染しており、マイコバクテリウム感染に対するワクチンは不完全であることが予想されるため、ワクチンの効果が最適となるよう、曝露後ワクチンとして効果があり、ワクチン接種が他の制御指標に干渉しないことが要求されている。したがって、ワクチンを接種した集団内で感染した動物を診断すること(DIVAの考え方)により、副結核症をはるかに効率的に制御することが可能になろう(51)。これまでに報告されているどの生ワクチン、殺菌ワクチン、減弱ワクチン、サブユニット・ワクチンも、反芻動物への曝露後ワクチン接種の後に効果があることは示されておらず、現行の抗体に基づく副結核症の監視とTBに関する皮膚試験に合致することも示されていない。そのため、ヒトと動物(特にヒトと反芻動物)における副結核症感染の予防と治療のためのより効果的なワクチンが必要とされている。それと同時に、これらワクチンが、TB皮膚試験で偽陽性反応因子にならないことや、副結核症の血清学的監視に干渉しないことも重要である。
本発明により、ワクチンとして使用するための第1の免疫原性ポリペプチド、またはその免疫原性ペプチド断片が提供される。このポリペプチドは、配列ID番号2または14のアミノ酸配列を含むか、配列ID番号2または14と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでいて、そのポリペプチドの投与、またはそのペプチド断片の投与により、ヒトまたは動物において保護免疫が提供される。
さらに別の一実施態様では、ワクチンとして使用するための第1の免疫原性ポリペプチド、またはその免疫原性ペプチド断片は、少なくとも1つの追加の免疫原性ポリペプチド、またはその免疫原性ペプチド断片と組み合わされる。それぞれの追加ポリペプチドは、配列ID番号4、6、8、10、またはその免疫原性断片からなるグループから選択した明確に異なるアミノ酸配列、または配列ID番号4、6、8、10のうちの1つ、またはその免疫原性断片と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する。それに加え、これらポリペプチドのうちの少なくとも2つを融合ポリペプチドの中に含めることができる。第1の免疫原性ポリペプチド、またはそのペプチド断片を、前記少なくとも1つの追加の免疫原性ポリペプチド、またはその免疫原性ペプチド断片と組み合わせて投与すると、個別のポリペプチドとして投与するときや、それら個別のポリペプチドの1つ以上を含む融合ポリペプチドとして投与するときと比べて、ヒトまたは動物でさらに増大した保護免疫が提供される。
本発明により、トリ型結核菌亜種副結核症感染を予防または治療するためのワクチンも提供される。このワクチンは、
a.第1の免疫原性ポリペプチド;または
b.配列ID番号4、6、8、10からなるグループから選択した配列と80%〜100%のアミノ酸配列同一性を有する明確に異なるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの追加免疫原性ポリペプチドと組み合わせた(a)の第1の免疫原性ポリペプチド;または
c.(b)の免疫原性ポリペプチドであって、そのポリペプチドの少なくとも2つが融合ポリペプチドに含まれているもの;または
d.(a)または(b)の免疫原性ポリペプチドの1つ以上の免疫原性ペプチド断片;または
e.(a)、(b)、(c)いずれかの免疫原性ポリペプチドをコードするか、(d)によるその免疫原性ペプチド断片をコードしている1つ以上の核酸分子を含んでいて、
このワクチンの投与によりヒトまたは動物で保護免疫が提供される。
a.第1の免疫原性ポリペプチド;または
b.配列ID番号4、6、8、10からなるグループから選択した配列と80%〜100%のアミノ酸配列同一性を有する明確に異なるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの追加免疫原性ポリペプチドと組み合わせた(a)の第1の免疫原性ポリペプチド;または
c.(b)の免疫原性ポリペプチドであって、そのポリペプチドの少なくとも2つが融合ポリペプチドに含まれているもの;または
d.(a)または(b)の免疫原性ポリペプチドの1つ以上の免疫原性ペプチド断片;または
e.(a)、(b)、(c)いずれかの免疫原性ポリペプチドをコードするか、(d)によるその免疫原性ペプチド断片をコードしている1つ以上の核酸分子を含んでいて、
このワクチンの投与によりヒトまたは動物で保護免疫が提供される。
さらに別の一実施態様では、ワクチンは、配列ID番号12と14のそれぞれと80%〜100%のアミノ酸配列同一性を有する2つのポリペプチドを含んでいる。あるいはワクチンは、配列ID番号18と80%〜100%のアミノ酸配列同一性を有する単一の融合ポリペプチドを含んでいる。
このワクチンは、ヒトまたは動物におけるマイコバクテリウム感染、特に、トリ型結核菌亜種副結核症感染、ウシ型結核菌感染、ヒト型結核菌感染、トリ型結核菌感染、らい菌感染から選択した感染の予防または治療に適している。あるいはこのワクチンは、ヒトのクローン病の予防または治療に適している。動物は、哺乳動物(例えばブタ、反芻動物、ウマ、ネコ、イヌ、霊長類、齧歯類)、魚類、爬虫類、鳥類から選択することができる。
このワクチンは、医薬として許容可能な基剤、アジュバント、免疫調節剤をさらに含んでいてもよく、これらは、臭化ジメチルオクタデシルアンモニウム(DDA)、臭化ジメチルオクタデセニルアンモニウム(DODAC)、シトシン:リン酸:グアニン(CpG)オリゴデオキシヌクレオチド、Quil A、ポリイノシン酸:ポリシチジル酸(ポリ(I:C))、水酸化アルミニウム、水中油エマルジョン、油中水エマルジョン(例えばモンタニド、フロイントの不完全アジュバント)、IFN-γ、IL-2、IL-12、モノホスホリル脂質A(MPL)、トレハロースジミコール酸(TDM)、トレハロースジベヘン酸(TDB)、モノミコリルグリセロール(MMG)、ムラミルジペプチド(MDP)、マイコバクテリウム脂質抽出液、ナノ粒子、ISCOMから選択することができる。基剤として、DDA+TDBというアジュバントが可能である。
ワクチンが、免疫原性ポリペプチド(a)、(b)、(c)、(d)のいずれか、またはその免疫原性ペプチド断片をコードしている1つ以上の核酸分子を含んでいる場合には、裸のDNAまたはRNAを生理食塩水または緩衝生理食塩水で注入することによって、またはDNAプラスミドを注入することによって、または粒子にカップルさせた直鎖状の遺伝子発現DNA断片を注入することによって、または遺伝子銃で接種することによって、またはウイルス・ベクターか細菌ベクターで送達することによって、哺乳動物に投与することができる。
さらに、前記1つ以上の核酸分子は、自己複製非病原性組み換え担体のゲノムに組み込むことができ、その担体は、その1つ以上の核酸分子によってコードされている前記免疫原性ポリペプチドを生体内で発現させることができる。担体として、細菌担体またはウイルス担体が可能である。
一実施態様では、ワクチンは、配列ID番号1、3、5、7、9、11から選択した核酸配列を含む1つ以上の核酸分子を含んでいる。
本発明のワクチンは、非経口で注入することによって哺乳動物に投与することができる。
本発明により、請求項4〜11のワクチンを調製する方法も提供される。この方法は、(a)の免疫原性ポリペプチドを合成するか、(b)の少なくとも1つの追加免疫原性ポリペプチドと組み合わせた(a)の免疫原性ポリペプチドを合成するか、(a)または(b)の免疫原性ポリペプチドの免疫原性ペプチド断片を合成し;水性媒体に前記ポリペプチドまたはそのペプチド断片を溶解または分散させ;場合によっては医薬として許容可能なアジュバントを添加するステップを含んでいる。
マイコバクテリウム感染、特にトリ型結核菌亜種副結核症感染は、人生の早期年齢段階で一般に起こるが、この疾患の古典的臨床例は、明らかな臨床兆候を示さない成体の動物であり、潜伏性排出者と認識されることがしばしばある(37)。例えばマイコバクテリウム感染(例えば副結核症)は病状の進行が遅く、初期の急性活性相の後に、長期にわたって持続する可能性のある潜伏相が続くと記述するのが最もよい。この潜伏相の間、MAPはマクロファージの内部に隠れているため、免疫系が検出することはできない。
本発明は、副結核症感染の特定の相において発現するトリ型結核菌亜種副結核症(MAP)抗原を含む1つ以上の免疫原性ポリペプチド、またはその免疫原性ペプチド断片を選択することにあり、それをヒトと動物のためのワクチンで利用すると、免疫系を刺激して免疫応答を生じさせることができるため、組織中のマイコバクテリウム(例えばMAP)の数が減り、マイコバクテリウム(例えばMAP)疾患の再活性化が阻止される、すなわち保護免疫につながる。このワクチンがマイコバクテリウム感染に対する保護免疫を提供する動物には、哺乳動物(例えばブタ、反芻動物、畜類、ウマ、ネコ、イヌ、霊長類、齧歯類)、魚類、爬虫類、鳥類が含まれる。本発明のワクチンは、ワクチン接種に用いられる既存のMAPワクチンとは異なり、驚くべきことに、未感染の患者(ヒトと動物)と感染した患者(ヒトと動物)の両方で、マイコバクテリウム(例えばMAP)感染に対する効果的な保護免疫を提供すると同時に、マイコバクテリウム(例えばMAP)感染の皮膚試験スクリーニング(TB皮膚試験)または血清学的監視には干渉しない。本発明はさらに、ヒトのクローン病治療用ワクチンで使用するための前記ポリペプチドまたはそのペプチド断片を提供することにもある。
ヒトと動物でマイコバクテリウム(例えばMAP)感染を予防・治療するための、MAP3694cに基づくワクチン
したがって本発明により、予防用または治療用のワクチンとして使用するため、保護免疫を提供することのできる免疫原性ポリペプチド、またはその免疫原性ペプチド断片が提供される。このポリペプチドは、配列ID番号2(または14)を持つアミノ酸配列またはその免疫原性ペプチドを含むか、配列ID番号2(または14)と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列またはその免疫原性ペプチドを含んでいる。このポリペプチドは、FadE5タンパク質またはMAP3694cタンパク質として知られており、感染の後期段階にMAPによって発現される潜伏タンパク質(LATP)のメンバーである。FadE5は、培地の中での増殖と比べると、感染中にMAPの中で上方調節される。これは、感染中のMAPの腸環境への代謝適応として、MAPが感染中にコレステロールを炭素源として利用していることを示している(52)。
MAPに感染したがMAP3694cワクチンを受けなかった動物は、MAP3694cに対する免疫応答をほとんど示さない。これは、自然なMAP感染の間はMAP3694cが免疫系から隠されていることを示している(実施例3と図2のワクチン接種のない対照の子牛と、図7のワクチン接種のない対照のヤギを参照のこと)。MAP3694cをワクチンにして哺乳動物(例えば畜類やヤギ)に投与すると、それが免疫原性を示し、ワクチンを接種された動物で顕著に上昇するIFN-γ応答を誘導する(実施例4と図7のFadE5ワクチンを接種されたヤギ;実施例3と図2の早期FET11と後期FET11をワクチン接種された子牛を参照のこと)。さらに、MAP3694cを含むワクチンを受けた動物は、感染時にMAPが最も滞在しやすいことが知られている組織におけるMAP負荷が顕著に減少する(実施例4と図8のFadE5ワクチンを接種されたヤギ;実施例3と図3の早期FET11と後期FET11をワクチン接種された子牛とワクチン接種がない対照の子牛を参照のこと)。驚くべきことに、MAP3694cを用いたワクチンは、MAP感染が確立してから長時間経った後に与えても効果的な免疫応答を誘導し、しかもこの免疫応答は、ワクチン接種後の少なくとも8〜12ヶ月にわたって有効性が継続する。したがってMAP3694cを含むワクチンは、すでに臨床的に副結核症を患っているウシの曝露後ワクチン治療に有用である。有用でなかったとすれば、疾患の再活性化の間に最初に曝露された鍵となる抗原性LATPタンパク質を検出できないというのが少なくとも部分的な理由となって、MAP感染に対して免疫応答できなかったと考えられる。
ヒトと動物におけるマイコバクテリウム感染(例えばMAP)を予防・治療するための一段階または多段階のサブユニット・ワクチン
さらに別の一実施態様では、本発明により、1〜4つの追加免疫原性ポリペプチドと組み合わされて保護免疫を提供するMAP3694c免疫原性ポリペプチド、またはその免疫原性ペプチド断片が提供され、ここではその組み合わせが、ワクチンによって与えられる保護免疫をさらに増大させる。それぞれの追加ポリペプチドは、配列ID番号4、6、8、10からなるグループから選択したアミノ酸配列、または保護免疫を与えるその免疫原性ペプチド断片を有するか、配列ID番号4、6、8、10から選択した配列とアミノ酸配列が少なくとも80%一致するアミノ酸配列、またはその免疫原性ペプチド断片を有する。配列ID番号4を持つ免疫原性ポリペプチドは、MAP1507タンパク質として知られている。配列ID番号6を持つ免疫原性ポリペプチドは、MAP1508タンパク質として知られている。配列ID番号8を持つ免疫原性ポリペプチドは、MAP3783タンパク質として知られている。配列ID番号10を持つ免疫原性ポリペプチドは、MAP3784タンパク質として知られている。MAP1507、MAP1508、MAP3783、MAP3784はすべて、感染または再感染の早期段階にMAPが発現する早期分泌性抗原性標的(ESAT)タンパク質のメンバーである。
本発明による免疫原性ポリペプチドは、単独のMAP3694cであるか、MAP1507、MAP1508、MAP3783、MAP3784のうちの1つ以上と組み合わせたMAP3694cであり、それぞれのポリペプチドは、それぞれ配列ID番号2、4、6、8、10と好ましい最少の割合で一致したアミノ酸配列を持つアミノ酸配列を含んでいる。アミノ酸配列が一致する好ましい割合は、少なくとも80%(例えば少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%)である。ペプチドにおける1個以上のアミノ酸残基の置換、挿入、付加、欠失の数は限定されていることが好ましい。すなわち、配列ID番号2、4、6、8、10のうちの1つを持つ対応する免疫原性ポリペプチドと比べて、1個以下、または2個以下、または3個以下、または4個以下、または5個以下、または6個以下、または7個以下、または8個以下、または9個以下、または10個以下の置換、1個以下、または2個以下、または3個以下、または4個以下、または5個以下、または6個以下、または7個以下、または8個以下、または9個以下、または10個以下の挿入、1個以下、または2個以下、または3個以下、または4個以下、または5個以下、または6個以下、または7個以下、または8個以下、または9個以下、または10個以下の付加、1個以下、または2個以下、または3個以下、または4個以下、または5個以下、または6個以下、または7個以下、または8個以下、または9個以下、または10個以下の欠失である。この明細書で用いる“配列一致率”という用語は、長さが実質的に等しい2つのアミノ酸配列の間、または長さが実質的に等しい2つの核酸配列の間の相同性の程度の定量的指標を示す。比較する2つの配列は、ギャップを挿入して、またはタンパク質配列の端部で切断して、最もよくフィットするように並べなければならない。配列一致率は、((Nref-Ndif)×100)/(Nref)として計算できる。ただし、Ndifは、並べたときに2つの配列に存在する一致しない残基の合計数であり、Nrefは、一方の配列に存在する残基の数である。したがってDNA配列AGTCAGTCは、配列AATCAATCと配列一致率が75%である(Ndif=2、Nref=8)。ギャップは、特定の残基と一致していないと見なされる。すなわちDNA配列AGTGTCは、DNA配列AGTCAGTCと配列一致率が75%である(Ndif=2、Nref=8)。あるいは配列一致率は、BLASTプログラム(例えばBLASTPプログラム(Pearson W.R.とD.J. Lipman(1988年))(www.ncbi.nlm.nih.gov/cgi-bin/BLAST))によって計算することもできる。本発明の一実施態様では、アラインメントは、http://www2.ebi.ac.uk/clustalw/で入手できる配列アラインメント法ClustalWを用いて実施され、デフォルト・パラメータは、Thompson J.ら(1994年)が記載しているようにする。
免疫原性ポリペプチドMAP3694c、MAP1507、MAP1508、MAP3783、MAP3784のどれか1つの免疫原性ペプチド断片は、本発明のワクチンとして使用したときにトリ型結核菌亜種副結核症タンパク質に対する免疫応答を誘起できる断片であるため、保護免疫が提供される。あるポリペプチドをワクチン接種の目的で使用するとき、そのポリペプチド全体を用いる必要はない。なぜなら、そのポリペプチドの免疫原性ペプチド断片は、そのままで、または本発明の追加免疫原性ポリペプチドと製剤化したとき、MAPタンパク質に対する免疫応答と保護免疫を誘導できるからである。
現在、免疫原性断片(抗原決定基)を容易に同定する多彩な技術を利用できる。Geysenらによって記述されている方法(特許出願WO 84/03564、特許出願WO 86/06487、アメリカ合衆国特許第4,833,092号、Proc. Natl. Acad. Sci.、第81巻:3998〜4002ページ(1984年)、J. Imm. Meth.、第102巻、259〜274ページ(1987年))、いわゆるPEPSCAN法は実施が容易であり、タンパク質の免疫学的に重要な領域であるエピトープの検出に関して迅速でよく確立されている方法である。この(経験的な)方法は、B細胞とT細胞のエピトープの検出に特に適している。また、任意のタンパク質をコードしている遺伝子の配列が与えられると、コンピュータ・アルゴリズムは、その配列および/または構造が既知のエピトープと一致していることに基づき、特定のタンパク質断片が免疫学的に重要なエピトープであると指摘することができる。これら領域の決定は、HoppとWoods(Proc. Natl. Acad. Sci.、第78巻:3824〜3828ページ(1981年))による親水性基準と、ChouとFasman(Advances in Enzymology、第47巻:45〜148ページ(1987年)とアメリカ合衆国特許第4,554,101号)による二次構造の特徴の組み合わせに基づく。T細胞エピトープも、Berzofskyの両親媒性基準(Science、第235巻:1059〜1062ページ(1987年)とアメリカ合衆国特許出願NTIS US 07/005,885)の助けを借りてコンピュータで配列から同様に予測することができる。充実した全体像が、一般原理に関してはShan Lu:Tibtech,第9巻:238〜242ページ(1991年)に、マラリアのエピトープに関してはGood他:Science、第235巻:1059〜1062ページ(1987年)に、概説に関してはLu:Vaccine、第10巻:3〜7ページ(1992年)に、HIVエピトープに関してはBerzofsky:The FASEB Journal、第5巻:2412〜2418ページ(1991年)に見いだされる。
免疫応答中に認識される重要なT細胞エピトープを直接同定するには、MHCクラスIIエピトープを検出するための重複オリゴペプチド(合成によって作られ、ポリペプチドに由来する例えば長さが20個のアミノ酸残基を持つことが好ましい)を利用することが可能である。これらのペプチドは、生物学的アッセイ(例えばこの明細書に記載したようなIFN-γアッセイ)で調べることができ、そのうちのいくつかのペプチドは、ペプチド中にT細胞エピトープが存在することの証拠として陽性応答をすることになろう(そして、そのことによって免疫原性になる)。MHCクラスIエピトープを検出するには、結合するペプチドを予測し(Stryhn他、1996年、Eur. J. Immunol.第26巻、1911〜1918ページ)、その後に合成によってこれらペプチドを製造し、関係する生物学的アッセイ(例えばこの明細書に記載したようなIFN-γアッセイ)でそれらペプチドを調べることが可能である。免疫原性断片は、通常、6個、より一般には7〜8個のアミノ酸、好ましくは9個以上(例えば9個、10個、12個、15個、それどころか20個以上)のアミノ酸という最小長を有する。
MAP3694c免疫原性ポリペプチドまたはその免疫原性ペプチド断片と、MAP1507、MAP1508、MAP3783、MAP3784から選択した1〜4つの追加免疫原性ポリペプチドまたはその免疫原性ペプチド断片の組み合わせは、多段階サブユニット・ワクチンを提供する。なぜなら対応するMAPタンパク質は、MAP感染の少なくとも2つの異なる相で発現するからである。この多段階サブユニット・ワクチンは、新たに感染した畜類と自然に慢性感染した畜類の両方で長期にわたる優れた予防効果と治療効果を提供する。
MAP3694cポリペプチドと、MAP1507、MAP1508、MAP3783、MAP3784ポリペプチドすべてのアミノ酸配列を含むポリペプチドの両方を含むワクチン(例えばFET11ワクチン)を用いたワクチン接種の治療効果を、この明細書では、実験的にMAPを感染させた後の子牛の治療によって証明する(実施例3参照)。生後4ヶ月の時点で多段階サブユニット・ワクチンを接種した曝露後の子牛は、MAPに感染してから8〜12ヶ月経過した時点でワクチンを接種されていない動物と比べ、腸のMAPコロニー化が平均で1.1 log10減少した。さらに、生後3週間の時点でワクチンを接種した子牛と比べると、より年齢の大きいこれら子牛は、よりロバストな免疫応答を展開し、感染がより早い年齢で起こったときでさえ、組織におけるMAP負荷をよりよく制御することができた。注目すべきなのは、FET11ワクチンを接種したより年齢の大きい子牛が、市販の全細胞熱不活化ワクチンや早期FET11ワクチンを接種した子牛と比べ、腸組織におけるMAP感染をはるかによく制御できたことである。
早期ワクチンを接種した動物と後期ワクチンを接種した動物の両方で、FET11に存在する5種類の成分ワクチン・ポリペプチド配列に関して明確に異なる免疫学的プロファイルが観察された(実施例3.3)。特に、MAP1507と、MAP1508と、潜伏タンパク質であるMAP3694cが、免疫原性が大きいことが見いだされた。ワクチンによって成分ワクチン・タンパク質に対して誘導される細胞媒介免疫CMI応答において、顕著な差が、後期FET11ワクチン群と対照群の間で実験的チャレンジの後の長期間にわたって観察された。ワクチンによって誘導されるこのIFN-γ応答は抗原特異的であった。そのことは、対照の子牛がチャレンジの後に抗原特異的免疫応答を示さなかったという事実によって示される。後期FET11ワクチン群では、免疫原性と、ワクチンによって誘導される免疫応答の持続性が、MAP1507、MAP1508、MAP3694cにおいて極めて明らかであった。ワクチンを接種した子牛では、FET11ワクチンに存在するMAP3694c、MAP1507、MAP1508、MAP3783、MAP3784ポリペプチドのプールに対して応答した全IFN-γ産生と、ワクチン接種後の腸組織における細菌負荷の低下の間にも強い相関が存在していた。これは、Th1型の免疫応答(主にIFN-γ)が、MAPを含むマイコバクテリウム感染に対する免疫にとって重要であるという既存の証拠(9、36)と整合している。驚くべきことに、市販の全細胞熱不活化ワクチンを接種した子牛と、ワクチンを接種していない子牛は、ポリペプチドMAP3784とMAP3694cに対してまったく(CMI)応答しなかった。したがって多段階サブユニット・ワクチンに組み込まれたそれらポリペプチドは、特に市販の全細胞熱不活化ワクチンと比べると、明らかに、このワクチンの改善された効率に関して極めて重要な役割を担っている。
一段階または多段階のサブユニット・ワクチンは、TB試験に干渉しない
副結核症に対して既存のワクチンを接種することに関して知られている1つの問題は、それらワクチンが、皮膚試験による結核症の診断に干渉することである。重要なことは、(FET11ワクチンを例とする)一段階または多段階のサブユニット・ワクチンが、ウシ結核症に関する皮内ツベルクリン試験において偽陽性応答因子を顕著には誘導しなかったことである(実施例3.6参照)。したがって、偽陽性反応を生じさせた市販の全細胞熱不活化ワクチンよりも明らかに優れている。そのためこのワクチンは、比較皮膚試験を利用するときに結核症に関する正式の診断試験に干渉しないであろうという推測を引き出すことができる。本発明の一段階または多段階のサブユニット・ワクチンで用いるのに適したアジュバントとして、CAF01、CAF09、モンタニドが挙げられる。なぜならこれらアジュバントに入れたFET11ワクチンの接種は、TB試験に干渉しないからである(実施例5)。
一段階または多段階のサブユニット・ワクチンは、抗体に基づくマイコバクテリウム(例えば副結核症)試験に干渉しない
マイコバクテリウム感染(例えば副結核症)に対して既存のワクチンを接種することに関して知られている1つの問題は、それらのワクチンが、副結核症のための抗体に基づく試験に干渉することである。そのため、試験して選別する方式の撲滅計画でそれらワクチンを使用しても意味がない。重要なことだが、一段階または多段階のサブユニット・ワクチン(例えばFET11ワクチン)は、デンマークの“副結核症作戦”という撲滅計画で利用されているID Screen(登録商標)副結核症間接ELISAにおいて血清変換をまったく起こさなかった(実施例3.7参照)。したがって多段階ワクチンは、ワクチン接種後に100%血清陽性の動物を誘導した市販の全細胞熱不活化ワクチンよりも明らかに優れている。そのため、このワクチンは、抗体に基づく監視プログラムに干渉しないであろうゆえ、Luら(51)が記載している改善されたワクチンを用いた撲滅キャンペーンが可能になるという推測を引き出すことができる。同様に、多数のアジュバント(その中にはCAF01、CAF09、モンタニドが含まれる)を一段階または多段階のサブユニット・ワクチンで用いても、副結核症のための抗体に基づく試験に干渉することはない(実施例5参照)。
多段階サブユニット・ワクチンのサブユニットを含む融合ポリペプチド
さらに別の一実施態様によれば、サブユニット・ワクチンは、MAP3694c免疫原性ポリペプチドまたはその免疫原性断片と、MAP1507、MAP1508、MAP3783、MAP3784の中から選択した少なくとも1つの追加ポリペプチド(またはその免疫原性ペプチド断片)を含んでいて、これらポリペプチドの少なくとも2つは、単一の融合ポリペプチドの中に含まれている。例えばこの融合ポリペプチドは、ポリペプチドMAP1508とMAP1507(またはその免疫原性ペプチド断片)を含むとともに、場合によってはMAP3694cも含むことができると有利である。あるいはワクチンは、FET11によって例示されるように、第1のポリペプチドとしてのMAP3694c免疫原性ポリペプチド(配列ID番号2または14)(またはその免疫原性ペプチド断片)を、MAP1507、MAP1508、MAP3783、MAP3784のアミノ酸配列を含む配列ID番号12(またはその免疫原性ペプチド断片)を持つ融合ポリペプチドと組み合わせて含むことができる(実施例1参照)。別の一例として、融合ポリペプチドは、MAP3694c、MAP1507、MAP1508、MAP3783、MAP3784ポリペプチドを、配列ID番号18を持つ単一のコンストラクト(FET13)の中に含むことができる。
一実施態様では、融合ポリペプチドのアミノ酸配列は、多段階サブユニット・ワクチンの2つ以上のサブユニットを含んでいて、配列ID番号12または18との好ましいアミノ酸配列一致率が、少なくとも80%(例えば少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%)である。
この文脈では、“融合ポリペプチド”という用語は、長さと配列が任意の介在アミノ酸スペーサあり、またはなしの状態で、ランダムな順番で互いに融合された2つ以上の免疫原性ポリペプチド(またはその免疫原性ペプチド断片)を含んでいると理解される。任意の2つの成分免疫原性ポリペプチド(または免疫原性断片)の間に介在アミノ酸スペーサ配列が含まれていると、融合タンパク質の組み換え発現を増大させること、および/または各成分タンパク質のその自然な形態へのフォールディングを促進することに役立つ。選択された候補を融合タンパク質として送達することには、ワクチン中の成分免疫原性ポリペプチドのそれぞれに対する免疫原性応答を増大させるという利点があると考えられる。
多段階サブユニット・ワクチンの融合ポリペプチド内のアミノ酸スペーサ
アミノ酸スペーサは、可撓性のあるアミノ酸列であること、および/または本発明による成分免疫原性ポリペプチドの本来の特性に影響を与えないことが好ましい。そのようなアミノ酸スペーサは、アミノ酸の長さが50個未満であることが好ましく、45個未満であることがさらに好ましく、40個未満であることがより一層好ましく、35個未満であることがより一層好ましく、30個未満であることがより一層好ましく、25個未満であることがより一層好ましく、20個未満であることがより一層好ましく、15個未満であることがより一層好ましく、10個未満であることがより一層好ましい。その代わりに、またはそれに加えて、アミノ酸スペーサは、アミノ酸の長さが、1個以上のアミノ酸、および/または2個以上のアミノ酸、および/または3個以上のアミノ酸、および/または4個以上のアミノ酸、および/または5個以上のアミノ酸、および/または6個以上のアミノ酸、および/または7個以上のアミノ酸、および/または8個以上のアミノ酸である。したがって本発明のアミノ酸スペーサは、例えば、アミノ酸の長さを2〜50個のアミノ酸、2〜30個のアミノ酸、3〜25個のアミノ酸、4〜16個のアミノ酸、4〜12個のアミノ酸の範囲にすること、またはペプチド・リンカーに関して上に開示したアミノ酸の長さの他の任意の組み合わせにすることができる。特に好ましいのは、アミノ酸の長さが1〜8個(例えば4個または8個)のペプチド・リンカーである。
アミノ酸配列に関し、本発明のアミノ酸スペーサは、グリシン(G)が豊富なペプチド・リンカー、すなわちグリシンの含有率が50%超(例えば少なくとも60〜80%、例えば約75%)のアミノ酸配列(その一例はGGSGGGSG)であることが好ましい。別のアミノ酸スペーサは、トロンビンで開裂可能な9量体GLVPRGSTGであること、またはアミノ酸配列SACYCELSを持つことが可能である。アミノ酸スペーサは、隣接している成分免疫原性ポリペプチドとペプチド結合によって連結されて、連続したペプチド結合アミノ酸配列を形成する。FET11ワクチンとFET13ワクチンの融合ポリペプチドは、上記のタイプのアミノ酸スペーサを含んでいる。
MAPのための一段階または多段階のサブユニット・ワクチンの調製
一般に、本発明の免疫原性ポリペプチド(ここでは融合ポリペプチドを含む)と、そのようなポリペプチドをコードしているDNA配列は、多彩な手続きのうちの任意の1つを利用して調製することができる。
本発明のポリペプチドは、そのポリペプチドをコードしているDNA配列を用いて組み換えによって作製することができる。そのDNA配列は発現ベクターに挿入されていて、適切な宿主の中で発現されることになる。宿主細胞の例は大腸菌である。ポリペプチドは、アミノ酸約100個よりも少ないもの、一般にはアミノ酸50個よりも少ないものを合成によって製造することもでき、当業者によく知られた技術(例えば、成長しているアミノ酸鎖にアミノ酸が順番に付加されていく商業的利用が可能な固相技術)を利用して生成させることができる。
このポリペプチドは、追加の融合パートナーを用いて作製することもでき、この方法によって本発明のポリペプチドの優れた性質を実現することができる。例えば、組み換えで作製されたときにポリペプチドの輸出を容易にする融合パートナーや、ポリペプチドの精製を容易にする融合パートナーがある。発現および/または精製を容易にするには、融合パートナーとして、例えば細菌の繊毛タンパク質(例えば繊毛成分ピリンとpapA);プロテインA;ZZ-ペプチド(ZZ-融合体は、スウェーデン国のPharmacia社によって市販されている);マルトース結合タンパク質;グルタチオンS-トランスフェラーゼ;(-ガラクトシダーゼ;またはポリ-ヒスチジン)が可能である。興味深い融合ポリペプチドは本発明のポリペプチドであり、それが脂質化されることで、免疫原性ポリペプチドが適切なやり方で免疫系に提示される。この効果は、例えば、WO 96/40718 Aに例えば記載されているボレリア・ブルグドルフェリのOspAポリペプチドに基づくワクチン、または緑膿菌のOprIリポタンパク質に基づくワクチン(Cote-Sierra J、1998年)から知られている。別の可能性は、既知のシグナル配列とN末端システインをN末端で免疫原性ポリペプチドに融合させることである。適切な産生宿主の中で産生させるとき、このような融合により、N末端システインの位置で免疫原性ポリペプチドの脂質化が起こる。
マイコバクテリウム疾患(例えば副結核症)のための一段階または多段階のサブユニット・ワクチンの製剤化
さらに別の一実施態様では、本発明により、マイコバクテリウム疾患(例えば副結核症)、を治療するため、MAP3694c免疫原性ポリペプチド(またはその免疫原性ペプチド断片)と、MAP1507、MAP1508、MAP3783、MAP3784の中から選択した少なくとも1つの追加ポリペプチド(またはその免疫原性ペプチド断片)を含む予防用または治療用ワクチンが提供される。このようなワクチン組成物の最適な性能を保証するため、このワクチンは、免疫学的にも医薬としても許容可能な基剤、賦形剤、アジュバントを含んでいることが好ましい。
適切な基剤は、上記ポリペプチドが疎水性非共有相互作用によって結合するポリマー(プラスチック(例えばポリスチレン)など)、上記ポリペプチドが共有結合するポリマー(プラスチック(例えば多糖)など)、ポリペプチド(例えば、ウシ血清アルブミン、オボアルブミン、スカシガイのヘモシアニン)からなるグループから選択される。適切な賦形剤は、希釈剤と懸濁剤からなるグループから選択される。アジュバントは、臭化ジメチルオクタデシルアンモニウム(DDA)、臭化ジメチルオクタデセニルアンモニウム(DODAC)、シトシン:リン酸:グアニン(CpG)オリゴデオキシヌクレオチド、Quil A、ポリイノシン酸:ポリシチジル酸(ポリ(I:C))、水酸化アルミニウム、水中油エマルジョン、油中水エマルジョン(例えばモンタニド、フロイントの不完全アジュバント)、IFN-γ、IL-2、IL-12、モノホスホリル脂質A(MPL)、トレハロースジミコール酸(TDM)、トレハロースジベヘン酸(TDB)、モノミコリルグリセロール(MMG)、ムラミルジペプチド(MDP)、マイコバクテリウム脂質抽出液、ナノ粒子、ISCOMからなるグループから選択されることが好ましい。基剤として、DDA+TDBというアジュバントが可能である。
ワクチンのためのアジュバント効果を実現する別の方法として、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム(alum)、糖の合成ポリマー(Carbopol)、熱処理によるワクチン内のタンパク質の凝集、アルブミンに対する(Fab)抗体をペプシン処理したものを用いた再活性化による凝集、細菌細胞または原生生物細胞(例えばC.パルブム)との混合物、グラム陰性菌のエンドトキシンまたはリポポリ多糖成分との混合物、モノオレイン酸マンニド(Aracel A)などの生理学的に許容可能な油賦形剤の中のエマルジョン(w/oエマルジョンとw/o/wエマルジョンが含まれる)などの利用がある。ブロック置換体として用いられるペルフルオロカーボンの20%溶液とのエマルジョン(Fluosol-DA)も利用できる。他の可能性として、免疫調節物質であるTDBアゴニスト、TDMアゴニスト、MPLアゴニスト、TLR4アゴニストや、合成IFN-γ誘導因子であるポリI:Cなどと上記のアジュバントの組み合わせの利用がある。
活性成分としてポリペプチドを含むワクチンの調製は一般に従来技術でよく理解されており、例えばアメリカ合衆国特許第4,608,251号、第4,601,903号、第4,599,231号、第4,599,230号に例示されている(これら特許はすべて、参考としてこの明細書に組み込まれている)。
マイコバクテリウム疾患(例えば副結核症)のための一段階または多段階のサブユニット・ワクチンに関する免疫化プロトコルと用量
ワクチンは、投与製剤に合ったやり方で、しかも予防効果または治療効果と免疫原性が生じるような頻度と量で投与される。マイコバクテリウム疾患(例えば副結核症)のための一段階または多段階のサブユニット・ワクチンは、感染前ワクチンとして投与できるが、感染した患者(例えば畜類)には感染後ワクチンとして与えることになろう。その場合にもマイコバクテリウム(例えばMAP)の再活性化に対して優れた保護が得られる(実施例3と4を参照のこと)。一実施態様によれば、標準的な免疫化プロトコルには、生後0〜12ヶ月、2〜10ヶ月、3〜8ヶ月のいずれかの時点で、好ましくは4〜6ヶ月の時点で最初のワクチン接種をし、それから1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、5週間後、6週間後、7週間後、8週間後のいずれかに、好ましくは4週間後に単一のブースター・ワクチンを投与することが含まれる。この基本的な2回投与のワクチン接種に対する毎年のブースター・ワクチン接種のフォロー・アップも、このワクチンにとって非常に有益である可能性がある。動物またはヒトが基本的な2回投与のワクチン接種を幼年(子牛)時に受けない場合には、ワクチン計画をその後の任意の年齢で開始することができる。
投与量は、治療する被験対象の年齢と体重に依存し、考慮事項には、例えば、免疫応答を生じさせるその個人の免疫系の能力や、望む保護の程度が含まれる。適切な用量の範囲は、ワクチン接種1回ごとに一段階または多段階のサブユニット・ワクチンの数百マイクログラム程度のポリペプチドであり、好ましい範囲は、約0.1μg〜1000μg(例えば約1μg〜300μg)の範囲、特に約4μg〜100μgの範囲である。
マイコバクテリウム疾患(例えば副結核症)のための一段階または多段階のサブユニット・ワクチンの投与
ワクチンを投与するための任意の従来法を適用することができ、その中には、活性成分を含む固体形態(例えばピル、座薬、カプセル)、または生理学的に許容可能な分散液(例えばスプレー、粉末、液体)での経口投与、鼻腔投与、粘膜投与や、非経口での注射(例えば皮下注射、腹腔内注射、筋肉内注射)による投与、経皮的適用が含まれる。経口または鼻腔を通じた送達によって粘膜免疫を誘導するワクチン製剤も適している。その例は、粘膜免疫応答の増大を助けてIgAの産生を誘導するコレラ毒素(CT)またはそのBユニットを含む製剤である。他の細菌種からの改変された毒素で、毒性は低下しているが免疫刺激能力は保持しているもの(例えば、グラム陰性菌からの改変された易熱性毒素や、ブドウ球菌のエンテロトキシン)も、同様の効果を生じさせるのに使用できるため、粘膜投与のためのワクチン製剤に特に適している。
別の投与法に適した追加の製剤として、座薬と、経口製剤(いくつかの場合)が挙げられる。座薬に関しては、伝統的な結合剤および基剤として、例えば、ポリアルカレングリコールまたはトリグリセリドが挙げられ、そのような座薬は、活性成分を0.5%〜10%、好ましくは1〜2%の範囲で含む混合物から形成することができる。経口製剤には、通常使用されている賦形剤(例えば医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウムなど)が含まれる。これら組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、ピル、カプセル、持続放出製剤、粉末の形態を取っており、活性成分を10〜95%、好ましくは25〜70%含むことが好ましい。
本発明は、ヒトまたは動物をマイコバクテリウム疾患(例えば副結核症)に対して免疫化する方法にも関係しており、この方法は、被験対象(ヒトまたは動物)に、この明細書に記載した本発明の一段階または多段階のサブユニット・ワクチンまたはワクチン組成物を投与する操作を含んでいる。
本発明は、本発明の免疫原性組成物を製造する方法にも関する。この方法は、マイコバクテリウム疾患(例えば副結核症)を治療するため、この明細書に記載したMAP3694c免疫原性ポリペプチド(またはその免疫原性ペプチド断片)だけ、またはMAP1507、MAP1508、MAP3783、MAP3784から選択した少なくとも1つの追加ポリペプチド(またはその免疫原性ペプチド断片)との組み合わせを含む治療用ワクチンを調製、または合成、または単離し;そのポリペプチドまたはペプチド断片をワクチン用媒体に溶解または分散させ;場合によっては基剤、および/または賦形剤、および/またはアジュバント物質を添加する操作を含んでいる。
一段階または多段階のサブユニット・ワクチンの免疫原性ポリペプチドをコードしている核酸配列
一実施態様によれば、本発明により、免疫原性ポリペプチドMAP3694c、MAP1507、MAP1508、MAP3783、MAP3784のそれぞれ、またはその融合体をコードしている核酸配列が提供される。これら核酸配列は、これら免疫原性ポリペプチドを生体内で発現させるためのDNA/RNAワクチンの調製に使用することができる。
配列ID番号1または13を持つ核酸分子はMAP3694cをコードしており;配列ID番号3を持つ核酸分子はMAP1507をコードしており;配列ID番号5を持つ核酸分子はMAP1508をコードしており;配列ID番号7を持つ核酸分子はMAP3783をコードしており;配列ID番号9を持つ核酸分子はMAP3784をコードしており;配列ID番号11を持つ核酸分子は、配列ID番号12を持つFET11ワクチンの融合タンパク質をコードしていて、アミノ酸スペーサによって分離された成分タンパク質成分としてMAP1507、MAP1508、MAP3783、MAP3784を含んでおり;配列ID番号17を持つ核酸分子は、配列ID番号18を持つFET13ワクチンの融合タンパク質をコードしていて、アミノ酸スペーサによって分離された成分タンパク質成分としてMAP3694c、MAP1507、MAP1508、MAP3783、MAP3784を含んでいる。
ヒトまたは動物の生体内で一段階または多段階のサブユニット・ワクチンを発現させるためのDNA/RNAワクチン
本発明は、核酸断片を含むワクチンにも関する。このワクチンは、このワクチンを投与されたヒトまたは動物の生体内でこのワクチンの免疫原性ポリペプチドを発現させる。発現するポリペプチドの量は、ヒトまたは動物でのマイコバクテリウム疾患(例えば副結核症)に対する保護または治療に有効である。
免疫原性ポリペプチドは、非病原性微生物(例えばウシ型結核菌BCG、サルモネラ、シュードモナス)またはウイルス(例えばワクシニア・ウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、アルファウイルス)によって発現させることができる。その微生物が融合ポリペプチドを発現させて分泌することが可能になるようなやり方で、上に規定した1つ以上の免疫原性ポリペプチドまたはペプチド断片をコードしているDNA配列の1個以上のコピーをその微生物のゲノムに組み込む。別の可能性は、その1つ以上の免疫原性ポリペプチドまたはペプチド断片をコードしているDNAまたはRNAを減弱したウイルス(例えばワクシニア・ウイルスまたはアデノウイルス)の中に統合することである(Rolph他、1997年)。組み換えワクシニア・ウイルスは、感染した宿主細胞の細胞質または核の中に入ることができるため、興味の対象である免疫原性ポリペプチドまたはペプチド断片が免疫応答を誘導することができる。そのことにより、マイコバクテリウム疾患(例えば副結核症)に対する保護の誘導が予見される。DNAワクチンを投与する最も一般的な2通りの方法は、生理食塩水を用いた裸のDNAまたはRNAの注入と、遺伝子銃によるDNA/RNAの接種(固体の金ビーズの表面を覆うDNA/RNAをヘリウム圧で投与する)だが、DNA/RNAをウイルス・ベクターまたは細菌ベクターによって送達することもできる。DNAを含む生理食塩水の筋肉内注射は、Th1 IgG2a応答を優先的に生じさせるのに対し、遺伝子銃送達は、Th2 IgG1応答をより多く開始させる傾向がある。筋肉内注射されたプラスミドは、細胞外デオキシリボヌクレアーゼによって分解される危険に曝されているが、誘導される応答は、遺伝子銃法によって誘導される応答よりも長期にわたることがしばしばある。DNAを遺伝子銃で表皮まで送達することによるワクチン接種は、免疫化の最も効果的な方法であることが証明されている。それはおそらく、皮膚が、液性免疫応答と細胞障害性細胞免疫応答の両方を誘導するのに必要なタイプの細胞を、専用の抗原提示細胞(APC)を含めてすべて含んでいるからである(ランゲルハンス細胞と樹状細胞)。致死用量のインフルエンザ・ウイルスからの完全な保護は、マウスにおいて1μgという少ないDNAで得られた。標準的なDNAワクチン用ベクターは、真核細胞の中での発現が最適になるように操作した細菌プラスミドにクローニングした興味の対象である遺伝子を含んでいる。このベクターの構造上の重要な特徴には、細菌内での産生を可能にする複製起点と、細菌培地の中でプラスミドの選択を可能にする細菌抗生物質耐性遺伝子と、哺乳動物の細胞内で最適な発現をさせるための強力な構成的プロモータ(サイトメガロウイルス(CMV)またはサル・ウイルスに由来するプロモータが遺伝子の発現を最大にする)と、mRNA転写産物を安定化させるためのポリアデニル化シグナルをコードしている配列(例えば、ウシ成長ホルモン(BHG)またはサル・ウイルスのポリアデニル化シグナル配列)と、抗原遺伝子を挿入するための多数のクローニング部位が含まれる。イントロンA配列は、遺伝子の発現を顕著に改善する。多くの細菌DNAワクチン用ベクターは、宿主で強力な自然免疫応答を誘導するメチル化されていないシチジンリン酸-グアノシン(CpG)ジヌクレオチド・モチーフを含んでいる。近年は、DNAワクチン・コンストラクトに対する免疫応答を増大させる方法とDNAワクチン・コンストラクトをカスタマイズする方法がいくつか存在している(第2世代のDNAワクチン)。例えば、2つの遺伝子を同時に発現させるのに二シストロン性ベクターまたは多遺伝子発現プラスミドが使用されている。遺伝子発現を所定の組織に限定する特別なプロモータが開発されるとともに、免疫応答を増大させるためのサイトカイン/抗原融合遺伝子が構成されている。さらに、遺伝子は、宿主での最適な遺伝子発現のためにコドンを最適化することができる。ナイーブなリーダー配列を、翻訳効率を増加させる最適化されたリーダーで置き換えることができる。
DNAワクチンの投与は、裸のDNAまたはRNAを含む生理食塩水または緩衝生理食塩水の注入によって、またはDNAプラスミドの注入によって、または粒子に結合したDNA断片を発現する直線状遺伝子の注入によって、または遺伝子銃による接種によって、または細菌ベクターかウイルス・ベクター(例えばアデノウイルス、改変されたワクシニア・ウイルス・アンカラ(MVA)、ワクシニア、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アルファウイルス、BCGなど)を用いた送達によって可能である。
ワクチンの効率をモニタする方法
定量リアルタイムPCR(qPCR)により、マイコバクテリウム(例えばMAP)感染を定量するための迅速かつ感度のよい方法が提供される。この方法は、ゆっくりした成長、長い世代時間、マイコバクテリウム(例えばMAP)が凝集体を形成する傾向が原因である検出の問題を克服している。IS900エレメントは、MAP特異的遺伝子であると考えられている挿入配列である(10)。MAPゲノム中にIS900遺伝子のコピーが15〜20個存在しているため、IS900 qPCRは、MAPを検出するための非常に高感度で特異的な方法である。qPCRは、組織内のマイコバクテリウム(例えばMAP)負荷、疾患の発生、ワクチンと薬剤の効果をモニタするのにも使用できる(7、30)。配列ID番号15と16を持つ新しいPCTプライマを用い、MAPを検出するためのqPCR法が提供される。それらPCTプライマは、IS900様配列を回避していて、より大きなPCR効率を保証する比較的近いTmを共有している。スパイクされた組織サンプルの標準曲線が高効率であること(表1)から明らかなように、このqPCRアッセイは、最適な反応条件を示した。qPCRアッセイで得られたCq値をGenEx(登録商標)ソフトウエアで分析した。GenExは、データの逐次的分析(例えば効率補正、較正、規格化、相対的定量など)を含む直感的ソフトウエアであり、ΔΔCq法とは明確に異なる利点を提供する。標準曲線法による相対的CFUの計算結果を用い、GenEx分析からの結果を補足した。この計算は、両方のアプローチの有用性を目立たせる。
実施例1
トリ型結核菌亜種副結核症抗原のクローニングと発現
トリ型結核菌亜種副結核症抗原のクローニングと発現
クローニング手続き:単一のMAP抗原または多数のMAP抗原をコードしている以下のDNA分子、すなわち、MAP1507、MAP1508、MAP3783、MAP3784という4種類のMAPポリペプチドを含む4-MAP融合ポリペプチド(配列ID番号12)をコードしているDNA分子(配列ID番号11)と;単一のMAPポリペプチドMAP3694c(配列ID番号14)をコードしているDNA分子(配列ID番号13)と;MAP3694c、MAP1507、MAP1508、MAP3783、MAP3784という5種類のMAPポリペプチドを含む5-MAP融合ポリペプチド(配列ID番号18)をコードしているDNA分子(配列ID番号17)をクローニングして発現させた。これらDNA分子は合成によって作られ、大腸菌での発現が最適化されたコドンを有する(DNA 2.0社、1140オブライエン・ドライヴ、スイートA、メンロ・パーク、カリフォルニア州 94025、アメリカ合衆国が供給)。発現したポリペプチドの精製を容易にするため、6×ヒスチジン・タグをコードしているヌクレオチド配列を各DNA分子の(そのポリペプチドのN末端をコードしている)5’末端に含めた。合成の後、DNA分子のそれぞれを、大腸菌の中で効率的な転写と翻訳がなされるようにするためT7プロモータとリボソーム結合部位とT7ターミネータを有する発現ベクターpJexpress 411(DNA2.0社、アメリカ合衆国)に挿入し、組み換え発現ベクターとして、pJ411-融合4-MAP、pJ411-融合5-MAP、pJ411-MAP3694cをそれぞれ得た。同じベクターの中でヒト型結核菌抗原に対するCFP10(NCBI参照記号:NP_218391.1)をクローンングした。
タンパク質の発現と精製の手続き:同じプロトコルに従って両方のタンパク質を発現させて精製した。ベクターpJ411-融合4-MAP、pJ411-融合5-MAP、pJ411-MAP3694cを用いて大腸菌BL21-AI(Invitrogen社)細胞のアリコートを形質転換し、細胞培養密度がOD600=
約0.5に達したときに0.2%アラビノースを増殖培地に添加することにより、コードされた組み換えポリペプチドの発現を誘導した。37℃でさらに3〜4時間増殖させた後、細菌を回収し、細菌タンパク質抽出試薬(B-PER:Pierce;Thermo Fisher Scientific社、3747 N メリディアン・ロード、ロックフォード、イリノイ州 61101、アメリカ合衆国)を用いて溶解させた。組み換え発現させた両方のポリペプチドは封入体を形成した。それを20mMのトリス-HCl(pH 8.0)、100mMのNaCl、1mMのEDTA、0.1%のデオキシコール酸の中で3回洗浄し、次いで8Mの尿素、100mMのNa2PO4、10mMのトリス-HCl(pH 8.0)(緩衝液A)に溶かした後、金属アフィニティ・カラム(Clontech Laboratories社:1290テッラ・ベッラ・アヴェニュー、マウンテン・ヴュー、カリフォルニア州 94043、アメリカ合衆国)に適用して、N末端にヒスチジンのタグが付いたポリペプチドを選択的に結合させた。結合したポリペプチドを、カラムの2倍の体積の緩衝液(10mMのトリス-HCl(pH 8.0)、60%イソプロパノールと、50mMのNaH2PO4(pH 8.0)を交互に用いる)で5回洗浄した後、200mMのイミダゾールを補足した緩衝液Aに溶離させた。すべての分画を回収し、クーマシー染色を利用してSDS-PAGEによって分析した後、発現したポリペプチドが豊富な分画の純度を調べた。重要な分画をプールし、3Mの尿素、10mMのトリス-HCl(pH 8.5)に対して透析し、アニオン交換カラム(Pharmacia社)に適用し、カラムの5倍の体積の10mMのトリス-HCl(pH 8.5)で洗浄し、カラムの40倍の体積の0から1Mまでの線形NaCl勾配を用いて溶離させた。純度に基づいて分画をプールし、20mMのグリシン(pH 9.2)に対して透析した。最後に、組み換え発現させた2種類のポリペプチドの全タンパク質濃度(NanoOrange(登録商標)タンパク質定量キット、Life Technologies社、デンマーク国)と純度を求めた。同じプロトコルに従ってCFP10を発現させて精製した。
約0.5に達したときに0.2%アラビノースを増殖培地に添加することにより、コードされた組み換えポリペプチドの発現を誘導した。37℃でさらに3〜4時間増殖させた後、細菌を回収し、細菌タンパク質抽出試薬(B-PER:Pierce;Thermo Fisher Scientific社、3747 N メリディアン・ロード、ロックフォード、イリノイ州 61101、アメリカ合衆国)を用いて溶解させた。組み換え発現させた両方のポリペプチドは封入体を形成した。それを20mMのトリス-HCl(pH 8.0)、100mMのNaCl、1mMのEDTA、0.1%のデオキシコール酸の中で3回洗浄し、次いで8Mの尿素、100mMのNa2PO4、10mMのトリス-HCl(pH 8.0)(緩衝液A)に溶かした後、金属アフィニティ・カラム(Clontech Laboratories社:1290テッラ・ベッラ・アヴェニュー、マウンテン・ヴュー、カリフォルニア州 94043、アメリカ合衆国)に適用して、N末端にヒスチジンのタグが付いたポリペプチドを選択的に結合させた。結合したポリペプチドを、カラムの2倍の体積の緩衝液(10mMのトリス-HCl(pH 8.0)、60%イソプロパノールと、50mMのNaH2PO4(pH 8.0)を交互に用いる)で5回洗浄した後、200mMのイミダゾールを補足した緩衝液Aに溶離させた。すべての分画を回収し、クーマシー染色を利用してSDS-PAGEによって分析した後、発現したポリペプチドが豊富な分画の純度を調べた。重要な分画をプールし、3Mの尿素、10mMのトリス-HCl(pH 8.5)に対して透析し、アニオン交換カラム(Pharmacia社)に適用し、カラムの5倍の体積の10mMのトリス-HCl(pH 8.5)で洗浄し、カラムの40倍の体積の0から1Mまでの線形NaCl勾配を用いて溶離させた。純度に基づいて分画をプールし、20mMのグリシン(pH 9.2)に対して透析した。最後に、組み換え発現させた2種類のポリペプチドの全タンパク質濃度(NanoOrange(登録商標)タンパク質定量キット、Life Technologies社、デンマーク国)と純度を求めた。同じプロトコルに従ってCFP10を発現させて精製した。
実施例2
動物組織でトリ型結核菌亜種副結核症(MAP)を定量する方法
動物組織でトリ型結核菌亜種副結核症(MAP)を定量する方法
動物に由来する組織サンプル中のMAP細胞の数の間接的定量指標を提供するため、IS900定量リアルタイムPCRアッセイを開発した。このアッセイは、MAP特異的PCRプライマとリアルタイムPCRを利用して組織サンプルのDNA抽出液の中に存在するMAP由来のDNAを特異的に検出/定量することに基づいている。その詳細は以下に示す。MAPをトリ型結核菌複合体の他のメンバーから識別できるは、IS900の14〜18個のコピーがそのゲノムの保存された遺伝子座に挿入されているからである。
2.1 動物組織からのDNA抽出
動物組織のサンプルをホモジェネートにし、25mgのアリコートを計量して試験管に入れ、シェイカー・インキュベータ上で400μlの組織溶解緩衝液(ATL:Qiagen社、ヴァレンシア、カリフォルニア州 91355、アメリカ合衆国)の中で37℃にて一晩インキュベートした。ホモジェネートになった材料を毎回正確な量で使用できるようにするため、組織ホモジェネートの重量を測定するときに特に注意を払った。次に、200μlの0.1mmジルコニア/シリカ・ビーズ(BioSpec Products社、アメリカ合衆国)を用い、インキュベータしたホモジェネートを最高速度で1分間にわたってビーズ破砕して細胞の溶解を完了させた後、5000×gで30秒間遠心分離した。ビーズ破砕の後、Qiagen社のDNeasy Blood and Tissueキットとプロトコルを用いてホモジェネートからDNAを抽出した。上清のサンプル(200μl)を新しい試験管に移してそこに20μlのプロテアーゼ-Kを添加し、それら試験管を56℃にて10分間インキュベートした。次に試験管をQiagen社のスピン・カラムで遠心分離し、上記キットのプロトコルに従って洗浄した。最終ステップでは、200μlの溶離緩衝液を用いてDNAを溶離させ、使用するまで-20℃で保管した。
2.2 MAP由来のDNAに関するqPCRアッセイ
IS900のMAP特異的部位に選択的に結合するプライマは、プライマ3(http://frodo.wi.mit.edu/cgi-bin/primer3/primer3www.cgi)(31)を用いて設計したものであり、以下の配列を有する:
qPCR IS900 順:5’-GGCAAGACCGACGCCAAAGA-3’[配列ID番号15]
qPCR IS900 逆:5’-GGGTCCGATCAGCCACCAGA-3’ [配列ID番号16]。
qPCR反応を、ヌクレアーゼを含まない水の中に、DNA鋳型が2.5μlと、2×QuantiTect SYBR Green PCR Master Mix(Qiagen社、前掲)が12.5μlと、10μMの順プライマおよび逆プライマのそれぞれが0.125μl含まれた25μlの体積の中で実施した。定量PCR(qPCR)をRoter Gene Q PCRシステム(Qiagen社、前掲)で実施した。PCRサイクルは、初期変性を95℃で15分間実施することから開始し、それに続けて95℃で30秒間と68℃で60秒間の増幅を45サイクル実施した。PCR増幅の後、融解曲線のデータを回収して分析した。
qPCR IS900 順:5’-GGCAAGACCGACGCCAAAGA-3’[配列ID番号15]
qPCR IS900 逆:5’-GGGTCCGATCAGCCACCAGA-3’ [配列ID番号16]。
qPCR反応を、ヌクレアーゼを含まない水の中に、DNA鋳型が2.5μlと、2×QuantiTect SYBR Green PCR Master Mix(Qiagen社、前掲)が12.5μlと、10μMの順プライマおよび逆プライマのそれぞれが0.125μl含まれた25μlの体積の中で実施した。定量PCR(qPCR)をRoter Gene Q PCRシステム(Qiagen社、前掲)で実施した。PCRサイクルは、初期変性を95℃で15分間実施することから開始し、それに続けて95℃で30秒間と68℃で60秒間の増幅を45サイクル実施した。PCR増幅の後、融解曲線のデータを回収して分析した。
2.3 qPCRアッセイの性能:組織サンプル中のMAPを定量するためのダイナミック・レンジと特異性
(常にqPCR MAP陰性であることがわかった動物から、回腸弁から250cm近位の距離に位置する空腸を入手し、その空腸から採取した組織サンプルから調製した)組織DNAのサンプルを、MAP培養物からのDNA(1mlのMAP Ejlskovにつき1×109個のCFU)ととともにスパイクすることにより、標準曲線を作成した。1×109個の細菌の10倍段階希釈液に2μlの細菌培養物DNAが含まれたものを用いて組織DNAサンプルをスパイクした。
qPCRアッセイの鍵となる性能の特徴を表1にまとめてある。スパイクされた組織の標準曲線に関するR2値は0.99超であり、PCR効率は0.97であった。スパイクされた組織の検出限界は、組織1gにつき1.2×102個のMAPであった。検出限界は、標準曲線の3通りのサンプルの1つ以上で正の定量サイクル(Cq)値を与える濃度として定義した。ダイナミック・レンジの下限は、3通りのサンプルの値の平均値に基づいており、qPCRアッセイの定量限界を規定する。ダイナミック・レンジは、組織1gにつき4対数単位、すなわち1.2×109〜1.2×105個のCFUであった(図3aも参照のこと)。
実施例3
多段階サブユニット・ワクチンと市販の全細胞MAPワクチンの比較
多段階サブユニット・ワクチンと市販の全細胞MAPワクチンの比較
この研究では、MAPから保護する効果的な免疫応答を提供する上で、本発明の多段階サブユニット・ワクチン(FET11)が、市販のワクチンまたはワクチン接種なしと比較して有効であることを明らかにする。ワクチンは、MAPに感染した子牛で試験した。
3.1 ワクチンFET11の調製と、ワクチン接種のプロトコル
動物:デンマーク副結核症監視計画によって真の罹患率がゼロまたはそれに近い酪農場から4ヶ月の期間をかけて雄のジャージー種の子牛を取得した(21)。平均で生後14日の子牛を合計で28頭獲得した。子牛は、研究所の敷地に位置していて共同畜舎と藁の寝床がある適切な生物学的閉じ込め施設(BSL-2)に収容して飼育した。
MAPの培養:子牛の感染に使用したMAPの株は、臨床的に罹患しているウシの糞から2007年に単離されたデンマーク臨床単離体Ejiskov 2007であった。この株を、ローウェンシュタイン-イェンセン培地(Becton Dickinson社、1 ベクトン・ドライヴ、フランクリン・レイクス、ニュージャージー州 07417、アメリカ合衆国)斜面培養基の上で成長させ、10%オレイン酸-アルブミン-デキストロース複合体(Difco;Becton Dickinson社、前掲)と0.05%トゥイーン80(Sigma-Aldrich社、3050スプルース・ストリート、セントルイス、ミズーリ州 63103、アメリカ合衆国)と2%Mycobactin J(Allied Monitor社、201ゴールデン・インダストリアル・ドライヴ、ファイェット、ミズーリ州 65248、アメリカ合衆国)を補足したMiddlebrook 7H9培地(Becton Dickinson社、前掲)の上で37℃にて増殖させた。半対数相の培養物(OD600nm)を遠心分離し、ペレット化湿潤重量法を利用して計数したところ、1mgのペレット化湿潤重量につき約1×107個のコロニー形成単位(CFU)と推定された(11)。血液寒天プレートの中で汚染制御を実施すること(37℃、72時間)によって細胞を有効な純度にし、ツィール-ニールセン染色し、IS900 PCRを実施し、その後凍結させて、1×109個のCFUと15%グリセリンを含む1mlの接種原アリコートにした。接種の2日前に1mlの接種原アリコートを水浴(37℃)の中で解凍した後、あらかじめ温めてある培地(補足物を含む20mlのMB7H9)に添加し、シェイカー上で37℃にて48時間インキュベートすることで、個々の子牛のためのMAP感染接種原を得た。
MAPの実験的感染:MAPの感染は、あらかじめ温めた(38℃)1リットルの市販の代用乳(DLG社、デンマーク国)の中に入れた20mlのMAP感染接種原を子牛に個別に供給することによって実施し、各子牛を取得した後(すなわち生後2週間の時点で開始)の最初の週のうちにさらに2回MAP感染手続きを繰り返した(すなわち0日目と2日目と7日目)。Middlebrook 7H10寒天(Becton Dickinson社、前掲)上で段階希釈プレートを数えることによって各MAP感染接種原(48時間、20mlの培養物)に含まれるMAP細菌を計数した。CFUの遡及的定量の結果は、3回のMAP感染の後にすべての子牛が2×1010個の生きたMAP細菌を受け取ったことを示していた。この研究で使用したすべての子牛に、上記のプロトコルに従ってMAPを接種した。
ワクチン組成物:多段階ワクチンFET11は、組み換え発現させた4種類のMAPポリペプチド(MAP1507、MAP1508、MAP3783、MAP3784)の融合ポリペプチドと、組み換え発現させたMAP潜伏関連ポリペプチド(MAP3694c)を含んでおり、CAF01アジュバントを用いて製剤化された。CAF01は、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDA)とトレハロースジベヘン酸(TDB)を1回分の用量ごとに2500μg/500μgのwt/wt比で組み合わせた構成のカチオン性リポソームである。融合ポリペプチドと単独のポリペプチドは、実施例1に記載したようにして作製して精製した後、注射前に室温で1時間放置してアジュバントCAF01に吸着させた(2)。
Silirum(登録商標)は、高精製鉱物油(CZ Veterinaria社、P.O.ボックス16 - 36400ポリーニョ、スペイン国)からなるアジュバントと組み合わせた2.5mgの熱不活化MAP株316F培養物を含む市販のMAPワクチンである。
ワクチン接種群と手続き:最初の4頭の子牛をランダムに、早期FET11群、後期FET11群、Silirum(登録商標)群、ワクチン対照群からなる4つのワクチン接種群にそれぞれ割り当てた。子牛は生後4ヶ月を過ぎており、誕生日に応じて同じグループ化シークエンスに従った。早期FET11群の子牛には、FET11ワクチンを生後3週と7週の時点の2回接種し、後期FET11群の子牛には、FET11ワクチンを生後16週と20週の時点の2回接種した。Silirum(登録商標)群の子牛には、1mlのSilirum(登録商標)ワクチン(CZ Veterinaria社、P.O.ボックス16 - 36400ポリーニョ、スペイン国)を製造者の指示に従って生後16週の時点で接種した。子牛には、前肩リンパ節よりも約7cm前方の右中首領域に皮下経路でワクチンを接種した。FET11をワクチン接種された子牛は、CAF01を用いて1:1の割合で混合した100μgの融合ポリペプチドと100μgのMAP3694cを合計で2mlの体積受け取った。対照群の子牛はワクチンをまったく受けなかった。
3.2 FET11ワクチンと市販の全細胞MAPワクチンの接種の臨床評価
感染した子牛の間で副結核症を示すいかなる臨床的兆候も観察されなかった。FET11ワクチンを皮下接種した後に子牛で副作用が観察された。しかしSilirum(登録商標)ワクチンを皮下接種すると、約2〜2.5cmの結節が一時的に生じ、約3週間後に治まった。
3.3 FET11ワクチンを用いた免疫化により抗原特異的IFN-γ応答のレベル上昇が誘導される
図2に示してあるように、生後44週(n=8)または52週(n=20)までの複数の時点で各群の子牛から採取した全血でワクチン抗原特異的IFN-γ応答を測定することにより、アジュバントとしてCAF01を用いたFET11ワクチンの免疫原性と寿命を調べた。一般に、対照(ワクチン接種なし)の子牛は、ワクチン・タンパク質に対して抗原特異的応答を示さなかったが、例外的に2頭の子牛が、MAP感染の5種間後にMAP3694cとMAP3784に対して弱く応答した。
早期FET11ワクチンを接種した子牛におけるIFN-γのレベルは、タンパク質MAP1507に応答して、2回目のワクチンを接種してから1週間後にピークに達した後、研究期間中を通じて低いレベルに留まった。それと比較して後期FET11の子牛は、最初のワクチン接種の後にIFN-γのレベルがただちに上昇し、それよりも常に高い状態が長期にわたって継続したが、48週の頃に低下した。Silirum(登録商標)ワクチンを接種した子牛は、ワクチン接種後のMAP1507特異的IFN-γの産生が常に早期FET11群と後期FET11群の間のレベルであった。
早期FET11ワクチンを接種した子牛でのIFN-γのレベルは、MAP1508に応答して、2回目のワクチンを接種してから3週間後に低下し、その後も低レベルに留まった。それに対して後期FET11ワクチン群とSilirum(登録商標)ワクチン群の両方で、IFN-γのレベルはワクチン接種後にピークに達した。しかしSilirum(登録商標)群よりも後期FET11ワクチン群で高かったIFN-γのレベルは、38週〜48週の間に低下した後、再び上昇した。
早期FET11ワクチンを接種した子牛では、MAP3783に応答して、IFN-γのレベルが16週以降に低下したのに対し、Silirum(登録商標)に対するIFN-γ応答は、26週以降に弱くなった。後期FET11ワクチンを接種した子牛は、すべての時点でMAP3783に対する応答が弱かった。
MAP3784に対するIFN-γの産生は、早期FET11ワクチンを接種した子牛で2回目のワクチンを接種してから7週間後に最も多かったが、その後低下した。後期FET11ワクチンとSilirum(登録商標)ワクチンを接種した子牛は、このタンパク質に対する応答が少なかった。しかしSilirum(登録商標)ワクチンを接種した子牛は、Silirum(登録商標)ワクチンの接種前にこのタンパク質にただちに応答した。
早期FET11ワクチン群と後期FET11ワクチン群の子牛だけがMAP3694cに応答して両方の群で似たような応答であり、応答はワクチン接種時に始まり、ほぼ46週の時点で低下した。非MAP TB特異的タンパク質CFP10に関しては、すべてのワクチン群と対照群でMAP感染の20週間後に応答が生じるのが見いだされたが、応答は非常に少なかった。
異なるワクチン群でのMAPワクチン抗原特異的IFN-γ産生を一元配置ANOVAによって比較した後、ダンの多重比較検定を実施した。FET11ワクチンの有意性のレベルに関しては、後期FET11ワクチン群が対照群と比べて有意に応答したのは、MAP1507(p<0.001)、MAP1508(p<0.05)、MAP3694c(p<0.05)に対してであった。しかし早期FET11ワクチン群は、対照群と比べてMAP3694cに対してだけ有意な応答を示した(p<0.001)。MAP3694c が誘導するIFN-γのレベルに関し、早期FET11ワクチン群(p<0.001)と後期FET11ワクチン群(p<0.05)の両方ともSilirum(登録商標)群とは有意な差を示した。それとは逆に、Silirum(登録商標)ワクチンは、どのワクチン・タンパク質に対する応答についても対照群とは有意な差を示さなかった。
3.4 FET11ワクチンの接種はMAPの組織コロニー化を低下させる
生後44週(n=8)または52週(n=20)の終わりに、研究中の子牛を安楽死させ、剖検した。各子牛からの6種類の組織サンプルを回収し、IS900 qPCRのための処理をした。組織サンプルは、回盲弁、回腸(0cm、-25 cm、-50 cm;近位方向で回盲弁の位置からの距離)、空腸(-150 cm、-250 cm)であった。これら組織サンプル(長さ8cm)を無菌PBSで洗浄した。無菌対物ガラスで上皮、粘膜下組織、粘膜固有層を漿膜から剥ぎ取った。剥ぎ取った組織は、回転子/固定子タイプの組織ホモジェナイザ(BioSpec Products社(280ノース・ヴァージニア・アヴェニュー、バートルズヴィル、オクラホマ州 74003 アメリカ合衆国)のTissue-Tearer)の中で混合することによってホモジェネートにした。各子牛の腸からの6種類のサンプルをDNA抽出のために処理し、qPCRを利用してMAPの相対的定量化を実施した(実施例2参照)。これら6種類のサンプルを選択したのは、実験的MAP接種研究に基づくとこれらのサンプルが感染を保持する傾向がより大きいからである。明らかに、44週と52週で殺した子牛の間では、MAPの相対量(RQ)の間に有意な違いは観察されなかった。したがって両方の時点からのデータを必要に応じてまとめ合わせて分析した。
選択した6種類の組織それぞれにおいて、後期FET11ワクチンを接種した子牛では、対照群よりも小さなMAPの平均相対濃度が観察された。
Silirum(登録商標)ワクチンと早期FET11ワクチンを接種した子牛は、6つの組織すべてで同等な相対的MAP組織負荷を示し、両方の群からの2頭の子牛は、非常に大きな相対的MAP数であった。4つの回腸組織と2つの空腸組織をまとめた後、分析から、同様の図式が明らかになった。後期FET11ワクチンを接種した子牛は、対照群と比べてMAP負荷が平均で1.1 log10低下した(p<0.01)(図3bと図3c)。Rotor Geneによる標準曲線分析から生成したCFUの分析からも、後期FET11群では対照群と比べてMAP CFUが平均で1.1 log10低下することが明らかになった(p<0.05)。
3.5 ヨーニン精製タンパク質誘導体特異的IFN-γ産生は、組織中のMAP負荷と相関している
ヨーニン精製タンパク質誘導体(PPDj)は、異なるMAP株から調製したMAP抗原の粗不定抽出物である。すべての子牛が、MAP感染の後に徐々に増加するPPDj特異的IFN-γ産生を示した(図4a)。特徴的なことに、早期FET11ワクチン群では、これらの応答が2回目のワクチン接種後に低下したが、8週間後に再び上昇した。研究の後期段階では、早期FET11ワクチンを接種した子牛は、Silirum(登録商標)群または対照群よりもPPDj特異的応答が少なかった。後期FET11ワクチンを接種した子牛は、ワクチン接種後のPPDj特異的応答が常により少なかった。比較により、Silirum(登録商標)群と対照群の子牛は、研究の後期段階に向かってPPDjに対するIFN-γ応答が増加する傾向を示すことがわかった(図4b)。
ワクチン・タンパク質またはPPDjに対する対数変換したIFN-γ応答と相対MAP濃度(log10RQ)を、非パラメトリック・スピアマン相関によって相関させた。GraphPad Prismソフトウエアvs. 5.02(GraphPad Software社、ラ・ジョラ、カリフォルニア州)を用いて統計的分析を実施した。P<0.05を統計的に有意であると見なした。対数変換したPPDj平均IFN-γ応答とMAPの相対量(log10RQ)の間の正の線形相関が、感染後48週(p<0.05)と52週(p<0.01)の時点で見いだされた。これらの結果は、研究の24週、32週、40週の時点で、MAPの相対量(log10RQ)と、ワクチン・タンパク質に対する対数変換した平均IFN-γ応答の間に逆統計的相関が見いだされたという観察結果(p<0.05)によって補足される。PPDjに対するIFN-γ応答も、研究の24週(p<0.001)、32週(p<0.05)、40週(p<0.05)の時点で標準曲線を通じて計算したMAP CFUと相関していた。ワクチン群に関しては、32週の時点での後期FET11ワクチン群においてだけ、プールしたワクチン・タンパク質に対するIFN-γ応答と組織内のMAP負荷の間に有意な相関が存在していた(p<0.05)。22週、24週、32週の時点で、ワクチン・タンパク質MAP1508、MAP1507に対するIFN-γ応答と、低下した細菌負荷の間に相関が存在していた(p<0.05)。したがって、PPDj応答は、実験的MAP感染において感染状態を追跡する優れた指標となるため、ワクチンを接種した動物における感染の代理として機能することができる。
3.6 ツベルクリン皮膚試験
44週(n=8)または52週(n=20)の終わりに屠殺する前に、研究中のすべての子牛に比較皮内ツベルクリン試験を実施した(図5)。公式の指針によると、1回だけの皮内比較頸部ツベルクリン試験(SICCT)を考慮すべきである。ウシPPDに対する陽性反応が鳥類部位での反応よりも4mm超大きいときには陽性であり、ウシPPDに対する陽性反応が鳥類での応答よりも1〜4mmの範囲だけ大きいときには結論できず、ウシPPDに対する陰性反応が存在するか、ウシPPDに対する陽性反応または非決定的反応が、鳥類部位での陽性反応または非決定的反応以下であるときには陰性である。
FET11ワクチンを接種したすべての子牛はPPDbに対する応答が少なく、SICCTにおいて陰性であった。しかしSilirum(登録商標)群では、4頭の子牛がPPDbに強い陽性皮膚反応を示し、1頭は、陽性SICCT反応であった。その1頭を試験したところ、ウシ結核症に関して(偽)陽性であった。
3.7 抗体に基づくアッセイ
研究中のすべての子牛から血清サンプルを取得し、ID Screen(登録商標)副結核症関節ELISAで反応性を分析した(図6)。この方法は、デンマークの“副結核症作戦”という撲滅計画で用いられている。この抗体ELISAでは、陽性比(S/P値)が70超のサンプルが陽性、60〜70の範囲のS/P値は疑いあり、60未満のS/P値は陰性である。ELISAでは、FET11ワクチンの接種に応答した反応性が観察されず、2つのFET11群からのすべてのS/P値が、研究の最初の30週間の任意の時点で13未満であった。逆に、Silirum(登録商標)ワクチンを接種したすべての子牛は、ワクチンを接種してから2週間後と6週間後(20週と24週)の時点でS/P値が112〜164になった。ワクチンを接種しない対照の子牛は、MAP感染に応答して、生後32週の時点では7頭の子牛のうちの4頭で、生後40週以降の時点では7頭の子牛のうちの5頭で血清陽性サンプル(S/P値の範囲が108〜188)になった。Silirum(登録商標)ワクチンを接種した子牛では、ワクチンによって血清変換が誘導されるため、これらの子牛では抗体ELISAを利用してMAP感染の進行を評価することができない。FET11ワクチンを接種した2つの群の子牛では、14頭の子牛のうちで合計4頭だけが、抗体ELISAにおいて40週以降の時点で血清陽性であった。これは、ワクチンを接種しない対照よりも多い数の子牛でMAPの進行が遅延していることを示している。これらの結果は、現在のたいていの撲滅キャンペーンで利用されている抗体に基づくMAPの監視を多段階ワクチン接種と合わせて継続すると、MAPの発生率を低下させるとともに進行を遅らせることができることを示している。これは、Silirum(登録商標)や、MAPに対する既存の他のワクチンを用いたのでは不可能である。
実施例4
ヤギのFadE5免疫化
ヤギのFadE5免疫化
この研究では、さまざまな形態の一段階MAPワクチンと多段階MAPワクチンの免疫原性と保護効果を明らかにする。免疫化は、MAPを接種したヤギで実施した。
4.1 FadE5ワクチンの調製と、ワクチン接種のプロトコル
動物:生後1〜3週間の子ヤギを、副結核症の履歴がないヤギ酪農場から取得し、ランダムに実験群に割り当てた。子ヤギは、研究所の敷地に位置していて共同畜舎と藁の寝床がある適切な生物学的閉じ込め施設(BSL-2)に収容して飼育した。
MAPの培養と接種:子牛に関して上に記載した(3.1)ようにして調製したEjlskov 2007 MAP株をヤギに接種するとともに、20mlのMAP培養物に暖かい代用乳を混合したものを到着後4日目、7日目、11日目の3回、個別に投与した。用量は、子牛と比べて1:5に減らし、推定合計用量は、4×109個の生きたMAP細菌である。
ワクチン組成物:3つの異なる形態のMAPワクチンをCAF09アジュバントとともに製剤化して試験した。CAF09は、DDAとMMGとポリI:Cを1回分の用量ごとにwt/wt比で2500μg/500μg/500μgにして組み合わせたカチオン性リポソームである。ワクチン抗原を適切に希釈し、CAF09と1:1で混合して1回分の用量を合計2mlにした後、室温で1時間放置してアジュバントCAF09に吸着させてから注射した。FadE5ワクチンは、組み換え発現させたMAP潜伏関連ポリペプチド(MAP3694c)を100μg含んでいた。FET11ワクチンは、40μgのMAP1507、MAP1508、MAP3783、MAP3784融合ポリペプチドと、60μgのMAP3694cを含んでいた。FET13ワクチンは、100μgのMAP1507、MAP1508、MAP3783、MAP3784融合ポリペプチドだけを含んでいた。すべてのポリペプチドは、実施例1に記載したように作製して精製した。
ワクチン接種群と手続き:ヤギをランダムに、FadE5群(n=4)、FET11群(n=5)、FET13群(n=5)、ワクチン対照群(n=5)にそれぞれ割り当てた。ヤギにはMAPを接種してから14週間後と18週間後の2回、免疫化した。ヤギには、前肩リンパ節よりも約5cm前方の右中首領域に皮下経路でワクチンを接種した。対照のヤギはどのワクチンも受けなかった。
4.2 FadE5、FET11、FET13を用いた免疫化によってFadE5特異的IFN-γ応答のレベル上昇が誘導される
図7に示してあるように、CAF09をアジュバントとするFET11、FET13、FadE5の免疫原性を、生後32週間までの複数の時点でヤギから採取した全血で抗原特異的IFN-γ応答を測定することによって調べた。対照(ワクチン接種なし)のヤギは、ワクチン・タンパク質に対して抗原特異的応答を示さなかった(個々のサンプルのすべてが30pg/ml未満であった)。ワクチンを接種したヤギは免疫化に対して応答し、最初のワクチン接種の14日後に最初にサンプリングした時点でIFN-γのレベルが対照と比べて顕著に上昇していた。FadE5ポリペプチドが、投与したワクチン中の唯一のMAP抗原である(FadE5)か、合計で5種類の抗原を有する単一の融合ポリペプチドに含まれる(FET13)か、MAP1507、MAP1508、MAP3783、MAP3784融合ポリペプチドと組み合わせて投与されるかに関係なく、すべての群でFadE5に対する顕著な応答があった。これらの応答は、FET11ワクチンを接種した子牛で見られた応答と同等であるため、FadE5だけを用いた免疫化、または融合ポリペプチドに含まれたFadE5による免疫化は、適切なアジュバントに入れて投与されたときにIFN-γ応答を誘導できることを示している。
4.3 FadE5、FET11、FET13を用いた免疫化によりMAPの組織コロニー化が低下する
MAPを接種してから32週間後、ヤギを安楽死させて剖検した。それぞれのヤギから15種類の組織サンプルを回収し、IS900 qPCRのために処理した。組織サンプルは、回盲弁サンプル、回腸サンプル(0cm、-25 cm、-50 cm、-75 cm、-100 cm;近位方向で回盲弁の位置からの距離)、空腸サンプル(-150 cm、-250 cm、-300 cm)、大腸サンプル(+25 cm、+50 cm;尾の方向で回盲弁の位置からの距離)、4つのリンパ節(LN)サンプル(回盲弁LNの1つのサンプル、大腸LNの1つのサンプル、回盲弁の近位-100cm、-250cmに位置していて空腸に注ぐ腸間膜LNの2つのサンプル)である。これら組織サンプル(長さ8cm)を無菌PBSで洗浄した。無菌対物ガラスで上皮、粘膜下組織、粘膜固有層を漿膜から剥ぎ取り、5mlの無菌PBSに懸濁させた。剥ぎ取った組織は、回転子/固定子タイプの組織ホモジェナイザ(BioSpec Products社(280ノース・ヴァージニア・アヴェニュー、バートルズヴィル、オクラホマ州 74003 アメリカ合衆国)のTissue-Tearer)の中で混合することによってホモジェネートにした。各ヤギからのサンプルをDNA抽出のために処理し、qPCRを利用してMAPの相対的定量化を実施した(実施例2参照)。その結果を図8に示す。空腸と回腸の遠位部は、MAPが感染しやすい部位であると認識されているため、感染をより保持しやすい。FadE5で免疫化したヤギは、どの位置のサンプルでもMAPの数が常に少なかったのに対し、免疫化しなかった対照は、組織中のMAPの数が1つのサンプルまたはいくつかのサンプルではるかに多かった。これは、MAPを保持しやすい回腸と遠位空腸の部位において非常に明らかであり、FadE5だけを用いた免疫化が、MAPに対する保護免疫を誘導することを示している。FET11またはFET13というワクチン・コンストラクトの中に本発明のすべてのポリペプチドを用いたワクチンの接種により、FadE5だけの場合よりもMAPに対する優れた保護が提供され、サンプリングしたすべての位置で群平均値が低下する。
実施例5
異なるアジュバントの中でのFET11ワクチンの免疫原性
異なるアジュバントの中でのFET11ワクチンの免疫原性
この研究では、本発明の多段階サブユニット・ワクチン(FET11)のポリペプチドを、副結核症の血清学的監視やウシTBに関する皮膚試験との適合性を損なうことなく、さまざまなアジュバントに入れて投与できることを明らかにする。ワクチンは、感染していない子牛で試験した。
5.1 ワクチンの調製と、ワクチン接種のプロトコル
動物:平均で生後8週間の12頭の雄のジャージー種の子牛を、副結核症の管理と監視に関する活動計画がある酪農場から入手した。子牛は、研究所の敷地に位置していて共同畜舎と藁の寝床がある適切な生物学的閉じ込め施設(BSL-2)に収容して飼育した。
ワクチン組成物:多段階ワクチンFET11の融合ポリペプチドと単一のポリペプチドを実施例1に記載されているようにして作製して精製し、CAF01、CAF09、モンタニドISA61VGの各アジュバントの中で製剤化した。CAF01は実施例3.1に記載してある。CAF09は実施例4.1に記載してある。モンタニドISA61VGは、油中水エマルジョン(Seppic社、フランス国)である。ワクチンは、2mlの用量の中に、子牛1頭につき、20μgのMAP1507、MAP1508、MAP3783、MAP3784融合ポリペプチド+30μgのMAP3694cを含んでおり、アジュバントは、CAF01とCAF09に関しては1:1の比に、モンタニドISA61VGに関しては1:1.5の比にした。アジュバントCAF01とCAF09を抗原溶液と混合し、室温で1時間放置して吸収させた後に注射した。モンタニドは、i-コネクタを製造者の指示に従って用いて抗原溶液と混合した。
ワクチン接種群と手続き:子牛をランダムに、CAF01群、CAF09群、モンタニド群、ワクチン対照群からなる4つのワクチン接種群にそれぞれ割り当てた。子牛には、生後9週間の時点で前肩リンパ節よりも約7cm前方の右中首領域に皮下経路でワクチンを接種し、その4週間後に再度ワクチンを接種した。対照の子牛はワクチンを受けなかった。
5.2 CAF01、CAF09、モンタニドISA61VGの中でのワクチン製剤は、皮内比較頸部ツベルクリン試験に干渉しない
2回目のワクチンを接種してから4週間後、合計で12頭の子牛にSICCTを実施した。すべての子牛がSICCT試験で陰性であり、12頭のどの子牛でも、PPDbとPPDaを比内注射してから72時間後に皮膚の厚み(単位はmm)の増加は測定されなかった。したがって子牛は、PPDbに対する応答だけを評価したときも陰性であった。これらの結果は、本発明のポリペプチドが、どのアジュバントで製剤化するかに関係なく、ウシTBに関するSICCT試験で反応性を誘導しないことを示している。
5.3 CAF01、CAF09、モンタニドISA61VGに入れたワクチン製剤は、IDスクリーン副結核症ELISAによる副結核症の血清学的監視に干渉しない
2回目のワクチンを接種してから3.5週間後、合計で12頭の子牛にIDスクリーン副結核症ELISAを実施した(図9)。MAPに対するIgG抗体の血清レベルはS/P率(カットオフS/P%≧70%)で表わした。合計で12頭の子牛からのサンプルは、陰性であることがわかった(S/P%の範囲:-1.36〜17.76、平均値:2.33)。これらの結果は、本発明のポリペプチドが、どのアジュバントで製剤化するかに関係なく、抗体に基づく副結核症の監視に関する市販の試験で反応性を誘導しないことを示している。
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Claims (16)
- ワクチンとして使用するための、配列ID番号2のアミノ酸配列、若しくは配列ID番号2と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫原性ポリペプチド、またはその免疫原性ペプチド断片であって、当該ポリペプチドまたはそのペプチド断片の投与により、ヒトまたは動物における保護免疫が提供される、免疫原性ポリペプチドまたはその免疫原性ペプチド断片。
- 少なくとも1つの追加の免疫原性ポリペプチド、またはその免疫原性ペプチド断片と組み合わされていて、それぞれの追加ポリペプチドが、配列ID番号4、6、8、10からなるグループから選択した明確に異なるアミノ酸配列;又は配列ID番号4、6、8、10のうちの1つと少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の免疫原性ポリペプチドまたはその免疫原性ペプチド断片。
- 請求項2に記載の免疫原性ポリペプチドまたはその免疫原性ペプチド断片において、前記ポリペプチドまたはその免疫原性ペプチド断片の少なくとも2つが、1つの融合ポリペプチドの中に含まれる、免疫原性ポリペプチドまたはその免疫原性ペプチド断片。
- トリ型結核菌亜種副結核症感染を予防または治療するためのワクチンであって、このワクチンが、
a.配列ID番号2と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する請求項1の免疫原性ポリペプチド;または
b.配列ID番号4、6、8、10からなるグループから選択した配列と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する明確に異なるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの追加の免疫原性ポリペプチドと組み合わせた(a)の免疫原性ポリペプチド;または
c.(b)の免疫原性ポリペプチドであって、それらのポリペプチドの少なくとも2つが融合ポリペプチドに含まれているもの;または
d.(a)または(b)の免疫原性ポリペプチドの1つ以上の免疫原性ペプチド断片;または
e.(a)、(b)、(c)いずれかの免疫原性ポリペプチドをコードするか、(d)の免疫原性ペプチド断片をコードしている、1つ以上の核酸配列を含んでいて、
このワクチンの投与によりヒトまたは動物における保護免疫が提供されるワクチン。 - 配列ID番号14と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する第1のポリペプチドと、配列ID番号12と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する融合ポリペプチドを含む、請求項4に記載のワクチン。
- 配列ID番号18と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する融合ポリペプチドを含む、請求項4に記載のワクチン。
- 前記第1のポリペプチドが、配列ID番号2のアミノ酸配列またはその免疫原性ペプチド断片を含んでいて、前記少なくとも1つの追加の免疫原性ポリペプチドが、配列ID番号4、6、8、10からなるグループから選択した明確に異なるアミノ酸配列、またはその免疫原性ペプチド断片を持つ、請求項4〜6のいずれか1項に記載のワクチン。
- 哺乳動物でトリ型結核菌亜種副結核症感染を予防または治療するための、請求項4〜6のいずれか1項に記載のワクチン。
- ヒトでクローン病を予防または治療するための、請求項4〜6のいずれか1項に記載のワクチン。
- ブタ、反芻動物、ウマ、ネコ、イヌ、霊長類、齧歯類からなるグループから選択した哺乳動物において副結核症を予防または治療するための、請求項7に記載のワクチン。
- 医薬として許容可能な基剤および/またはアジュバントおよび/または免疫調節剤をさらに含む、請求項4〜9のいずれか1項に記載のワクチン。
- 裸のDNAまたはRNA若しくは粒子にカップルさせたDNAプラスミド又は直鎖状の遺伝子発現DNA断片を生理食塩水若しくは緩衝生理食塩水で注入することによって、または遺伝子銃で接種することによって、またはウイルス・ベクター若しくは細菌ベクターで送達することによって哺乳動物に投与するための、請求項4に記載のワクチン。
- 前記1つ以上の核酸分子が、自己複製非病原性組み換え担体のゲノムに組み込まれていて、その担体が、前記1つ以上の核酸分子によってコードされている前記免疫原性ポリペプチドを生体内で発現させることができる、請求項4に記載のワクチン。
- 前記1つ以上の核酸分子が、配列ID番号1、3、5、7、9、11、13、17からなるグループから選択した核酸配列を含む、請求項4、12、13のいずれか1項に記載のワクチン。
- 非経口で注入することによって投与するための、請求項4〜14のいずれか1項に記載のワクチン。
- 請求項4〜11のいずれか1項に記載のワクチンを調製する方法であって、
(a)の免疫原性ポリペプチド、又は
(b)の少なくとも1つの追加の免疫原性ポリペプチドと組み合わせた(a)の免疫原性ポリペプチド、又は
(a)若しくは(b)の免疫原性ポリペプチドの免疫原性ペプチド断片を合成する工程;
水性媒体に前記ポリペプチドまたはそのペプチド断片を溶解または分散させる工程;及び任意で医薬として許容可能なアジュバントを添加する工程;
を含む方法。
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