以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
図1に、第一実施形態に係る締結装置1を示す。締結装置1は、軸方向に延びる軸部5と、軸部5の軸方向奥側に配置される挟持部10と、軸部5の軸方向手前側に配置される第一回動部15と、手前側に配置されて第一回動部15と相対回動する第二回動部20と、第二回動部20よりも挟持部10側に配置されて軸力を伝達する伝力部25と、伝力部25と挟持部10の間で軸方向に挟持される奥側係合部60と、を有する。なお、本第一実施形態では、これらの部品又は部材は金属で構成される場合を例示するが、金属以外の部材で構成しても良く、異素材を組み合わせて構成しても良い。
第一回動部15は、特に図示しない締緩工具と係合して、回動力を受ける。締緩工具との係合手法は、様々に存在するが、例えば、スパナと係合するためには、第一回動部15の外形を六角形や凸型と凹型を含めた多角形等の多面形にすれば良く、六角レンチ等の締緩工具と係合するためには、第一回動部15の端面に六角穴や六角レンチ等の締緩工具に対応した形状の穴を形成すればよい。
第二回動部20は、特に図示しない締緩工具と係合して、回動力を受ける。締緩工具との係合手法は、様々に存在するが、例えば、スパナと係合するためには、第二回動部20の外形を六角形にすれば良い。
第一回動部15と第二回動部20は、互いに相対回転すると共に、軸方向に係合する。本実施形態では、第二回動部20の手前側端面22と、第一回動部15の奥向き座部16が軸方向に係合する。
第一回動部15は、ここでは軸部5の手前側端部に一体的に設けられる。従って、第一回動部15と軸部5は供回りする。
軸部5は、円柱状の部材(必ずしも円柱状である必要はなく、柱状を成す物であればよい。)であり、挟持部10や螺合部30、第一回動部15等に作用する軸力を伝達する。なお、本実施形態では、軸部5は、挟持部10と自身に形成される螺合部30(詳細は後述)間で軸力を伝達する。軸部5は、被締結部材Hの厚さより長く設定される。
挟持部10は、軸部5の奥側端部に一体的かつ同軸状に設けられる。
挟持部10は、軸部5の直径よりも大きな外形を有する部材、即ち、軸部5に対して半径方向外側に突出する部材となる。具体的に本実施形態では、挟持部10の外形は、円柱や円筒形又は円錐形となっている。
挟持部10は、軸部5に対して半径方向外側に突出することで、手前側に対向する受部11が形成される。ここでは、受部11が円錐状のテーパ面となっているが、軸方向に直角となる平面であっても良い。
軸部5と挟持部10の間に螺合部30が形成される。具体的に螺合部30は、挟持部10の内周に形成される雌ねじ部31と、軸部5の少なくとも奥側の外周に形成されて雌ねじ部31と螺合する雄ねじ部32と、を備えて構成される。従って、挟持部10は筒状の雌ねじ体となり、軸部5が雄ねじ体となる。
第二回動部20は、奥側(奥側係合部60側)に対向する奥向き座部21を有する。この奥向き座部21は、伝力部25の手前側端面27と軸方向に係合すると共に、被締結部材Hの手前側面と当接する。なお、奥向き座部21は、特に図示しないワッシャと当接し、このワッシャを介して伝力部25や被締結部材Hと軸方向に係合するようにしても良い。
挟持部10と伝力部25の間には、挟持部10と伝力部25を供回りさせると共に、この挟持部10と伝力部25を軸方向に相対移動させる連動機構90が構成される。連動機構90は、挟持部10に設けられて、奥側係合部60の内側に軸方向に延びる連動スリーブ92と、伝力部25に設けられて連動スリーブ92を収容するスリーブ収容孔94を有する。図1(E)に示すように、連動スリーブ92の外周面及びスリーブ収容孔94の内周面には、軸方向に延びて互いに周方向に係合する溝又は列状突起が、周方向に一系列以上好ましくは複数形成される。従って、連動スリーブ92とスリーブ収容孔94は、軸方向に摺動自在であると共に、周方向に係合する。なお、ここでは特に図示しないが、奥側係合部60にスリーブ収容孔94を形成し、伝力部25に連動スリーブ92を形成することも可能である。
第二回動部20は、伝力部25と一体化されることで、一緒に回動する。従って、第二回動部20を回動させると、伝力部25及び連動機構90を介して、挟持部10が供回りする。
第一及び第二回動部15、20が相対回転すると、螺合部30によって、その相対回転が、挟持部10と伝力部25の軸方向の相対移動に変換される。
伝力部25は、ここでは略円筒状のスリーブ部材であり、内部に軸部5が挿入される。伝力部25の長さは、被締結部材Hの厚みと同等又はそれ以上に設定され、かつ、軸部5よりも短く設定される。伝力部25は、第二回動部20と奥側係合部60の間に配置されて、所謂つっかえ棒のように軸力を伝達する。ここでは第二回動部20と伝力部25が一体の場合を例示しているが、両者が別体となっていても良い。
伝力部25の最大外径、挟持部10の最大外径、拡径前の奥側係合部60の最大外径は、一致又は近似するように設定される。これらの全てを、被締結部材Hの孔HPに、手前側から挿入する必要があるからである。
奥側係合部60は、環状の部材であって、軸方向手前側に対向する手前向き座部64と、軸方向奥側に対向して挟持部10の受部11と当接する奥側係合面66を有する。
奥側係合部60は、挟持部10が伝力部25に向かって軸方向に接近することにより、手前向き座部64が半径方向外側に移動し、この手前向き座部64が挟持部10及び伝力部25よりも半径方向外側に突出する。従って、図1(C)に示すように、奥側係合部60を平面から全体視すると、拡径することになる。
結果、締結装置1は、挟持部10の手前向き座部64と、第二回動部20の奥向き座部21を利用して、被締結部材Hと締結することが可能になる。なお、手前向き座部64と奥向き座部21が被締結部材Hに直接的に接触して締結する場合を例示しているが、本発明は、ワッシャ等が介在して間接的に締結する場合も含む。
奥側係合部60について更に詳細に説明する。
奥側係合面66は、軸直角方向に対して傾斜するテーパ面となる。従って、同じくテーパ面となる受部11と奥側係合面66が軸方向に押圧されることで、この軸力が半径方向外側に向かう拡張力に変換される。
手前向き座部64は、伝力部25における軸方向奥側の奥側端面26に当接する。手前向き座部64は、奥側端面26に対して摺動しながら、半径方向外側に移動する。
以上の結果、受部11に対して奥側係合面66が半径方向外側に摺動すると、それに連動して手前向き座部64が奥側端面26に対して半径方向外側に摺動する。奥側係合面66と手前向き座部64の双方が半径方向外側に移動すると、挟持部10及び伝力部25よりも半径方向外側に突出する。奥側係合部60は、拡径時に傾斜することがないので、軸方向寸法を変化させずに半径方向外側に平行移動できることになる。
図1(A)に示すように、奥側係合部60は、周方向に複数(ここでは三個)配置されて、各々が手前向き座部64と奥側係合面66を有する奥側係合片62と、手前向き座部64が半径方向外側へ移動する際の移動限界を画定する突出規制部70を有する。
奥側係合片62は、平面視すると、部分円弧形状となる部材であり、周方向に複数配置されることで、連環部72の場所を除き、概ね円筒形状となる。
突出規制部70は、複数の奥側係合片62を周方向に連環させる連環部72となる。連環部72は、変形容易な部材となっており、連環方向の寸法、即ち周方向の寸法(距離)が可変となる。また、連環部72は、その周方向寸法に上限が設定されており、上限に達すると、それ以上に距離が広がらない構造となっている。
具体的に連環部72は、図1(A)の奥側係合部60が縮径状態では、半径方向に往復するように屈曲することで、周方向に折り畳まれた薄肉部材となっている。また、連環部72は、奥側係合部60の外周側近傍を互いに接続し、半径方向内側に向かって屈曲している。従って、この連環部72を、図1(C)に示すように、その上限に達するまで周方向に弾性又は塑性変形させると、周方向に隣接する奥側係合片62の距離が広がり、奥側係合片62が、軸方向を維持しながら半径方向外側に平行移動する。連環部72が伸びきると、奥側係合片62の移動が停止する。
図1(D)に示すように、第一及び第二回動部15、20を相対回転させて、被締結部材Hを締結すると、その反力が、奥側係合片62の手前向き座部64を経由して、挟持部10の受部11に伝わる。結果、奥側係合片62のそれぞれが、更に、半径方向外側に移動しようとするが、連環部72の張力によってそれ以上の移動が規制され、反力を受け止めることが可能となっている。
なお、本実施形態では、平面視で薄肉となる連環部72を半径方向に屈曲させる場合を例示したが、半径方向視で薄肉となる連環部を軸方向に屈曲させて、周方向に折り畳むこともできる。
本実施形態の締結装置1によれば、図1(A)及び(B)の縮径状態において、第一回動部15と第二回動部20を相対回転させると、第一回動部15と共に軸部5が回動し、第二回動部20と共に挟持部10が回動する。結果、図1(C)及び(D)に示すように、軸部5と挟持部10の間の螺合部30によって、挟持部10が手前側に移動して、奥側係合部60を拡径させることができる。従って、締結後においても、軸部5が手前側に突出することが無いので、邪魔にならない。
更に従来の(奥側係合部に相当する)バルブスリーブのように、奥側係合部60を軸方向に座屈させる必要がないため、奥側係合片62を半径方向且つ軸方向に肉厚にすることができる。また、奥側係合片62の手前向き座部64を、そのまま半径方向外側に移動させて、手前向き座部64で被締結部材Hの反力を受けることができるので、剛性が高められて締結力を増大させることが可能となる。
特に本実施形態の奥側係合部60では、拡径時に変形する連環部72を専用配置することで、奥側係合片62側を弾性又は塑性変形させることないので、より一層、肉厚設計が可能となる。連環部72は容易に変形できるので、作業者の締結時の負担が軽減される。
また、連環部72を、変形後に復帰可能な弾性部材とすれば、締結後において、挟持部10と伝力部55を離反させることにより縮径状態に復帰することが可能となり、締結装置1を被締結体Hから容易に取り出すことができる。
上記実施形態の奥側係合部60は、奥側係合片62と突出規制部70(連環部72)を一体的に形成する場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば図2に示すように、別部材を組み合わせることも可能である。この場合、奥側係合片62は、焼き入れ等によって表面硬度の高められた金属材を用い、連環部72は、通常の金属材あるいは弾性変形容易な金属材を用いても良い。勿論、金属以外の樹脂材を組み合わせても良い。
上記実施形態の奥側係合部60は、奥側係合片62が三個配置される場合を例示したが、その数は特に限定されず、例えば図3に示すように、四個又はそれ以上に配置しても良い。二個であっても良い。また、上記実施形態の奥側係合部60の連環部72は、奥側係合部60の外周側近傍を互いに接続する場合を例示したが、図3に示すように、連環部72が奥側係合部60の内周側近傍を互いに接続し、半径方向外側に向かって屈曲させておくことも好ましい。このようにすると、連環部72の伸長による奥側係合片62の半径方向外側への移動距離を大きくすることができる。
上記実施形態の奥側係合部60は、連環部72が存在する場所に、奥側係合片62の手前向き座部64及び奥側係合面66が存在しないように構成する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図4に示すように、奥側係合片62において、手前向き座部64及び/又は奥側係合面66の近傍を、周方向に拡張させることもできる。即ち、連環部72と、手前向き座部64及び/又は奥側係合面66とが、軸方向に重なり合うように配置しても良い。このようにすると、手前向き座部64及び/又は奥側係合面66の面積を大きくすることが可能となる。
上記実施形態の締結装置1は、図1(C)及び(D)の拡径状態において、受部11及び奥側係合面66のテーパ面によって、被締結部材Hの反力を受け止める構造を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図5に示すように、受部11を、内周側のテーパ面となる第一受部11aと、第一受部11aの外周側に配置されて軸直角方向に広がる平面となる第二受部11bとを備える二段構造にする。また、奥側係合面66を、外周側のテーパ面となる第一奥側係合面66aと、第一奥側係合面66aの内周側に配置されて軸直角方向に広がる平面となる第二奥側係合面66bとを備える二段構造にする。このようにすると、図5(A)の縮径時には、第一受部11aと、第一奥側係合面66aが当接し、テーパ構造によって軸力を拡張力に変換して奥側係合部60を拡径させる。拡径終了時は、図5(B)に示すように、第一受部11aと、第一奥側係合面66aの当接が解除され、第二受部11bと第二奥側係合面66bが当接して、奥側係合片62の半径方向外側への移動を完了させる。従って、第二受部11bと第二奥側係合面66bは、本発明でいう突出規制部70の一部と定義することも可能となる。
また、第二受部11bと第二奥側係合面66bは、被締結部材Hからの軸方向反力を、垂直となる平面で受けとめることができる。同時に、拡径状態において、連環部72に作用する張力を低減又は開放することができるので、連環部72の疲労を抑制できる。なお、ここでは受部11及び奥側係合面66を二段構造にする場合を例示したが、例えば、奥側端面26と手前向き座部64をテーパ構造にする場合は、これを二段構造にすることも可能である。
更に図6に示すように、受部11及び奥側係合面66において、拡径動作完了時(拡径状態時)に互いに半径方向に係合する段部11c、66cを形成することができる。同様に、奥側端面26と手前向き座部64において、拡径動作完了時に互いに半径方向に係合する段部26c、64cを形成することができる。これらの段部により、奥側係合片62の半径方向外側への移動を規制することができるので、これらの段部も、本発明でいう突出規制部70の一部と定義することができる。
本実施形態では、手前向き座部64と奥側端面26を、軸直角方向と平行となる平面で構成しているが、本発明はこれに限定されない。例えば図7に示すように、手前向き座部64と奥側端面26をテーパ面として、軸方向の押圧力を、手前向き座部64を半径方向外側へ移動させる拡張力に変換させることも好ましい。
本実施形態では、図1(C)及び(D)の拡径状態において、手前向き座部64と奥側端面26の一部が互いに当接する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図8(B)に示すように、拡径状態において、手前向き座部64と奥側端面26の当接が解除されるようにし、伝力部25の奥側端面26を、奥側係合部60の内周側に進入させることも好ましい。このようにすると、伝力部25が奥側係合部60内に進入可能な距離Tだけ、奥側係合部60と第二回動部20による締結量(締付量)を増大できるので、被締結部材Hの厚み変化に柔軟に対応することが可能となる。
本第一実施形態の締結装置1において、図9及び図10に示すように、伝力部25の長さが、被締結部材Hの孔HPの内部で縮むことができる収縮構造を採用することが好ましい。収縮構造として、例えば、奥側に位置する筒状の第一伝力片28Aと、手前側に位置する筒状の第二伝力片28Bを備えるようにし、この第一伝力片28Aと第二伝力片28Bを、軸方向に摺動させつつ、周方向に係合させる。この際、第一伝力片28Aの外径に対して、第二伝力片28Bの内径を大きく設定し、第一伝力片28Aの外側に第二伝力片28Bが進入して、伝力部25の全長を収縮させる。図9(C)に示すように、第一伝力片28Aの外周と第二伝力片28Bの内周の間に、軸方向に延びて互いに周方向に係合する溝又は列状突起を、周方向に複数形成することで、第二回動部20の回動を、挟持部10まで伝達できるようにする。
せん断部(シャーワッシャ)29は、第一伝力片28Aの外周に固定されており、伝力部25が最も長い状態において、第二伝力片28Bの奥側端部がせん断部29に当接する。図9(B)に示すように、挟持部10を手前側に移動させて奥側係合部60を拡径させた後、更に、伝力部25を軸方向に縮めるように外力が付与されると、図10に示すように、せん断部29がせん断されて、第一伝力片28Aの外側に第二伝力片28Bが進入して、伝力部25の全長が短くなる。特に本事例では、第一伝力片28Aと第二伝力片28Bが、共に、被締結部材Hの孔HPよりも小さい外径に設定され、双方共に孔HP内に挿入される。また、せん断部29の外径も、孔HPより小さく設定され(又は伝力部25の最大外径以下に設定され)、伝力部25の軸方向の中央近傍に配置されることで、締結時に孔HP内に位置するようになっている。
せん断部29がせん断する際の軸力は、奥側係合部60が拡径する際に必要とする軸力よりも大きく設定される。即ち、奥側係合部60を拡径させるまでは、伝力部25が軸方向に縮まないようにして、挟持部10のみが軸方向に摺動するようにし、それより大きい軸力(即ち、締結時の軸力)が作用すると、せん断部29が積極的に破断して、伝力部25が縮む。
このようにすると、第一伝力片28Aと第二伝力片28Bが摺動する距離(収縮距離)Mを、伝力部25の全長の四分の一以上、好ましくは三分の一以上にすることが可能となる。結果、単一の締結装置1において、被締結部材Hの厚さ変動に柔軟に対応することができる。具体的には、締結装置1の軸方向の全長Lに対して、被締結部材の厚みEの変動許容量Exを、0.2L以上にすることができ、好ましくは0.3L以上、より望ましくは0.4L以上とすることができる。また、この際の厚みEが選択し得る最大値は、0.7L以上、より望ましくは0.8L以上とすることができる。言い換えると、締結装置1の全長をコンパクトに構成しつつも、被締結部材Hの厚さ変動に柔軟に対応できることになる。
次に、図11を参照して、第二実施形態に係る締結装置1について説明する。なお、第一実施形態で示した締結装置の部品、部材等と機能が共通するものについては、第二実施形態において名称及び/又は符号等を一致させることで、説明や図示を適宜省略し、異なる点を主に説明する。
図11(A)に示すように、本締結装置1は、第二回動部20、伝力部25、奥側係合部60及び挟持部10が、軸方向に一体的に構成される。従って、第二回動部20に外部から付与される回動力を、挟持部10まで伝達させることができる。なお、第二回動部20、伝力部25、奥側係合部60及び挟持部10は、例えば、樹脂素材を射出成型することによって構成することも可能であり、また、金属材料を切削したり、プレス成型したりすることで構成することも可能であり、金属やその他の粉末材料を成型することで構成することも可能である。
奥側係合部60は、軸部5の外周面に接近し、半径方向外側に向かって容易に座屈可能な変形スリーブである。この変形スリーブの半径方向の肉厚は、挟持部10及び/又は伝力部25の肉厚よりも薄い。従って、図11(A)の左半分に示すように、第一回動部15と第二回動部20を相対回転させて、挟持部10と伝力部25を接近させると、奥側係合部60が座屈して半径方向外側に向かって変形し、手前向き座部64を有する所謂ワッシャとなる。
なお、本実施形態の奥側係合部60は、挟持部10と伝力部25の間に一体的に構成されることで、挟持部10と伝力部25を供回りさせると共に、挟持部25と伝力部25を軸方向に相対移動させる連動機構を兼ねることになる。
奥側係合部60は、軸方向中央に位置する中央座屈領域68Cと、伝力部25との境界に位置する手前側座屈領域68Aと、挟持部30との境界に位置する奥側座屈領域68Bをやわらかい材料、薄肉の材料、又は脆弱な材料とし、座屈完了後に手前向き座部64を形成する部位、即ち、中央座屈領域68Cの軸方向両外側の非座屈領域67A、67Bを硬い材料、厚肉の材料又は高剛性の材料とすることが好ましい。変形を容易にしつつも、変形後の強度又は剛性を高めることができるからである。
これらを金属材料で構成する場合は、例えば、央座屈領域68C、手前側座屈領域68A、奥側座屈領域68Bの少なくとも一部(場合によっては全部)を金属生材とし、非座屈領域67A、67Bの少なくとも一部(場合によっては全部)を焼き入れ鋼とすることもできる。
なお、図11(A)では、奥側係合部60が軸部5の外周面に接近する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図11(B)に示すように、挟持部10と伝力部25によって座屈可能な範囲内で、軸部5から半径方向に隙間を空けた位置に奥側係合部60を配置しても良い。
また本実施形態では、伝力部25の軸方向長さが一定の場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、伝力部25の長さが、被締結部材Hの孔HPの内部又は外部で伸縮自在となる収縮構造を採用することが好ましい。例えば図12(A)に示すように、伝力部25を所謂ジャバラ状に構成し、軸方向に伸縮させることが好ましい。この伝力部25の伸縮時荷重は、奥側係合部60の軸方向の座屈荷重よりも大きく設定される。このようにすると、奥側係合部60の座屈完了後において、更に強い力で挟持部10と伝力部25側に接近させると、伝力部25が収縮して、被締結部材Hと軸方向に係合することが可能となる。
他の例として図12(B)に示すように、伝力部25を、筒部材に対して半径方向外側から内側に向かう側面視V字形状の第一スリット226Aと、第一スリット226Aと180度の位相差となる第二スリット226Bを、軸方向に交互に形成することも好ましい。このようにすると、伝力部25を側面視した場合に、第一及び第二スリット226A、226Bによって軸方向に隙間を有する所謂ギザギザ状(ジグザグ状)となるので、この隙間の分だけ、軸方向に収縮することが可能となる。
このスリットの位相や数は特に限定されるものではなく、図12(C)に示すように、筒部材に対して半径方向外側から内側に向かう側面視V字形状の第一スリット226Aと、第一スリット226Aと180度の位相差となる第二スリット226Bと、第一及び第二スリット226A、226Bと、90度の位相差となる第三スリット226Cと、第三スリット226Cと180度の位相差となる第四スリット226Dを形成しても良い。第一及び第二スリット226A、226Bは互いに軸方向に同じ位置とし、第三及び第四スリット226C、226Dは、互いに軸方向に同じ位置であるが、第一及び第二スリット226A、226Bに対して軸方向にずれた位置に配置する。このようにしても、軸方向に形成される隙間の分だけ、軸方向に収縮することが可能となる。
更に、スリットの形状は特に限定されるものではない。図12(B)の応用となる図13(A)に示す伝力部25は、軸直角方向に平行となって軸方向の隙間を形成する平行形状の第一及び第二スリット226A、226Bを有する。図12(C)の応用となる図13(B)に示す伝力部25と、平行形状の第一乃至第四スリット226A、226B、226C、226Dを有する。これらにおいても、伝力部25内において軸方向に形成される隙間の分だけ、軸方向に収縮することが可能となる。
また更に、スリットの奥行(深さ)は特に限定されない。例えば、図13(A)の応用となる図14に示す伝力部25のように、第一及び第二スリット226A、226Bの最奥部(再奥面)が、スリットの開口側と反対位相(180度位相差)側に回り込むようにして、最奥部が半径方向に延びる形状としても良い。このようにすると、伝力部25の剛性が低下し、軸方向に柔軟に収縮できる。
更に図13(B)の応用となる図15に示す伝力部25のように、筒状部材に対して微細な軸方向隙間となる平行形状の第一乃至第四スリット226A、226B、226C、226Dを形成してから(図15(A)参照)、これを軸方向に塑性変形するように伸長させて(図15(B)参照)、第一乃至第四スリット226A、226B、226C、226Dを軸方向に拡張し、結果として側面視V字形状のスリットとすることも可能である。
以上、上記第一実施形態では、伝力部25の素材自体は軸方向に伸縮しない場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図16に示すように、伝力部25が、軸部5の外周面に接近する円筒状の薄肉部25Aを備えるようにしても良い。これにより、伝力部25と、被締結部材Hの孔HPの間に余裕隙間Sを確保することができるので、余裕隙間S内で薄肉部25Aが径方向に変形して、軸方向寸法を縮めることが可能となる。結果、奥側係合部60と第二回動部20による締結量を確保できるので、被締結部材Hの厚み変化に柔軟に対応することが可能となる。ここでは、薄肉部25Aを円筒形状としたが、軸方向に延びる複数の棒状部材を周方向に配置した籠状としても良い。
なお、図16(B)のように、薄肉部25Aを、被締結部材Hの孔HP側に接近させても良く、また、図16(C)のように、薄肉部25Aの一方の端部は被締結部材Hの孔HPに接近し、他方の端部は軸部5の外周面に接近するようにして、傾斜筒形状とすることもできる。第二回動部の図示を省略するが、図17(A)に示すように、薄肉部25Aの両端部は被締結部材Hの孔HPに接近し、中央側は軸部5の外周面に接近する湾曲した筒形状とすることもできる。図17(B)に示すように、また、薄肉部25Aの両端部は軸部5の外周面に接近し、中央側は被締結部材Hの孔HPに接近する湾曲した筒形状とすることもできる。図17(C)に示すように、薄肉部25Aの両端部から中央に向かって一定の範囲は被締結部材Hの孔HPに接近し、これらの除く中央側を軸部5の外周面に接近する湾曲形状とすることもできる。
更に図17(D)に示すように、薄肉部25Aを、断面が非正円となる筒状構造としても良い。例えば、断面形状を、星型形状、多角形状、周方向に連続する鋸刃状、ギザギザ状、ジグザグ状、波状とすることができる。この際、薄肉部25Aの途中に開口25Dを形成することで、軸方向に座屈又は変形容易な脆弱領域25Eを形成することができる。
また図17(E)に示すように、伝力部25を、リング状の部材を波形状に構成したウェーブリング片を軸方向に多段に積層するか、あるいは、線材をスパイラル状に巻きながら波形状に積層することによって構成される、所謂ウェーブばねとすることもできる。このようにすると、軸方向に弾性変形することで、伸縮することが可能である。なお、ウェーブばねではなく、所謂コイルスプリングを用いてもよい。
なお、上記図16及び図17のいずれにおいても、奥側係合部60が変形又は変位する際に必要とする軸力では、伝力部25が軸方向に縮まないようにし、それより大きい軸力(即ち、締結時の軸力)が作用すると、積極的に縮むようにする。
また、第一実施形態では、奥側係合部60が、半径方向外側に平行移動するように変位する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図18に示すように、奥側係合部60を変形スリーブとし、半径方向外側に向かって容易に座屈させることで、変形後の変形スリーブの側面を手前向き座部64としても良い。
また第一実施形態では、奥側係合部60が、半径方向外側に平行移動するように変位する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図18に示すように、奥側係合部60を変形スリーブとし、半径方向外側に向かって容易に座屈させることで、変形後の変形スリーブの側面を手前向き座部64としても良い。
なお、ここでは変形スリーブが一つの場合を例示したが、別体又は一体状で軸方向に複数の変形スリーブを配置して、各変形スリーブを座屈させて多段ワッシャにすることも可能である。
更に、第一実施形態では、挟持部10の受部11、及び、奥側係合部60の奥側係合面66をテーパ面として、このテーパ面を利用して奥側係合部60を半径方向外側に移動させる場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。
例えば図19及び図20に示すように、奥側係合部60が、手前側に配置される第一奥側係合片660、及び、奥側に配置される第二奥側係合片680を備えるようにしても良い。
図23に示すように、第一奥側係合片660及び第二奥側係合片680は、共通形状となっており、それぞれ、軸方向に延びる貫通孔661、681を有し、この貫通孔661、681は、軸方向から視ると、半径方向に広がる長穴形状となっている。なお、図23においては、第一奥側係合片660は軸方向及び直径方向に反転した姿勢となっている。
第一奥側係合片660及び第二奥側係合片680は、貫通孔661、681に軸部5が貫通された状態で、長円穴の分だけ半径方向にスライド自在となっている。また、第一奥側係合片660及び第二奥側係合片680は、互いに当接(対向)する当接面663、683を有しており、この当接面663、683が、貫通孔661、681の長穴方向に傾斜している。
図19に戻って、第一奥側係合片660及び第二奥側係合片680は、共通形状であるものの、互いに軸方向に反転状態かつ直径方向に反転する状態、即ち、当接面663、683が対向するような点対称状態で配置される。結果、奥側係合部60の奥側係合面66と手前向き座部64が軸直角方向に平行となり、当接面663、683が傾斜する。
従って、図21及び図22に示すように、挟持部10と伝力部25を接近させることにより、その挟持力を当接面663、683に作用させると、第一奥側係合片660が直径方向の一方へ移動し、第二奥側係合片680が直径方向の他方へ移動する。即ち、第一奥側係合片660及び第二奥側係合片680が、互いに直径方向に離反する。結果、第一奥側係合片660及び第二奥側係合片680にそれぞれ形成される手前向き座部64が、半径方向外側へ移動して、伝力部25よりも突出する。このように、奥側係合部60を複数部材で構成し、内部にテーパ面を配置することで、これらの複数部材を半径方向外側に離反させることも好ましい。なお、ここでは奥側係合部60の内周に連動機構が配置されているが、図示は省略している。
なお、当接面(テーパ面)663、683に外力が作用しない状態において、振動や自重で第一奥側係合片660及び第二奥側係合片680が半径方向に移動することを防止する為に、これらの周囲にゴムリング等の巻回部材を配置したり、当接面(テーパ面)663、683を接着剤で仮固定したり、第一奥側係合片660及び第二奥側係合片680を磁力で吸引させたりすることも好ましい。ゴムリング等の規制部材を配置すると、第一回動部材15と第二回動部材20との相対回転の回転方向を、締め付けと逆方向とすることにより、第一奥側係合片660と第二奥側係合片680とを元の同軸位置に復帰させることが出来、従って、被締結部材Hに対して締結状体にあった締結装置1を被締結部材Hから取り外すことも可能となる。
また、図19乃至図23で示した上記変形例では、奥側係合部60が、挟持部10及び伝力部25に対して周方向に相対回転可能な状態で配置される場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。
例えば、図24及び図30に示すように、挟持部10における受部11に対して、貫通孔661、681の長円方向(軸部5の直径方向)に延びる受部用案内凹凸11xを形成し、第一奥側係合片660及び第二奥側係合片680の各奥側係合面66に対して、軸部5の直径方向に延びる係合片用案内凹凸664、684を形成し、受部用案内凹凸11xと係合片用案内凹凸664、684を直径方向に摺動自在、かつ、周方向に係合させることができる。このようにすると、受部11に対して、第一奥側係合片660及び第二奥側係合片680が周方向に係合するので、この奥側係合部60が、挟持部10に対して回動力を伝達できる。
また、第一奥側係合片660及び第二奥側係合片680の当接面663、683に対して、係合片用案内凹凸664、685と同方向に延びる内部案内凹凸663a、683aを形成し、互いの内部案内凹凸663a、683aを、直径方向に摺動自在、かつ、周方向に係合させることができる。このようにすると、第一奥側係合片660と第二奥側係合片680が、直径方向に摺動自在且つ周方向に係合するので、第一奥側係合片660と第二奥側係合片680の間で回動力を伝達できる。
更に第一奥側係合片660及び第二奥側係合片680の手前向き座部64に対して、座部用案内凹凸64xを形成し、また、伝力部25の奥側端面26に対して、直径方向に延びる伝力部用案内凹凸26xを形成し、座部用案内凹凸64xと伝力部用案内凹凸26xを直径方向に摺動自在、かつ、周方向に係合させることができる。このようにすると、伝力部25に対して、第一奥側係合片660及び第二奥側係合片680が周方向に係合するので、伝力部25が、奥側係合部60に対して回動力を伝達できる。上記構成により、図25に示すように、伝力部25の回動力を、奥側係合部60を介して挟持部10に伝達できるので、第一実施形態で示した連動機構90を兼ねる(省略する)ことができる。
図26及び図27に示すように、挟持部10と伝力部25を接近させてその挟持力を当接面663、683に作用させると、伝力部用案内凹凸26x、座部用案内凹凸64x、内部案内凹凸663a、683a、係合片用案内凹凸664、684、受部用案内凹凸11xによって直径方向に案内されながら、第一奥側係合片660及び第二奥側係合片680が、互いに直径方向に離反する。結果、第一奥側係合片660及び第二奥側係合片680にそれぞれ形成される手前向き座部64が、半径方向外側へ移動して、伝力部25よりも突出する。
なお、上記変形例では、二つの第一奥側係合片660及び第二奥側係合片680を、伝力部25と挟持部10に対して周方向に係合させながら、直径方向に離反させる場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、図1の第一実施形態で示した奥側係合部60の各奥側係合片62の手前向き座部64と奥側係合面66に対して、半径方向に延びる案内用凹凸を形成し、この案内用凹凸を、伝力部25と受部11に対して同方向に形成される案内用凹凸と係合させるようにしても良い。即ち、互いの当接面において案内凹凸を放射状に形成することで、奥側係合部60が、伝力部25の回動力を挟持部10に伝達できるようにしても良い。
また、この半径方向に摺動自在且つ周方向に係合する案内用凹凸の形状は、例えば断面鋸刃状、断面矩形状、互いに離反不能なアリ溝等、様々な態様を選択できる。
更に上記第一乃至第二実施形態では、主として、奥側係合部60が軸方向に一段の場合を例示したが、例えば図31に示すように、奥側係合部60が、軸方向に多段化された複数の奥側係合片690A、690B、690Cを備えるようにし、入れ子構造又はテレスコピック構造で軸方向に収縮しながら、各奥側係合片690A、690B、690Cを半径方向外側に拡張させることも好ましい。拡張完了状態において奥側係合片690A、690B、690Cを軸方向に係合させれば、最内周の奥側係合片690Cのみを、挟持部10及び伝力部25で挟み込むだけで、最外側に配置される奥側係合片690Aを軸方向に保持することができる。結果、最も外側に配置される奥側係合片690Aの半径方向の移動量を大きく設定することができる。
次に、第一又は第二実施形態の締結装置の他の変形例について説明する。
図32(A)乃至(C)は、伝力部25又は奥側係合部60に適用可能な軸方向の収縮構造又は半径方向の拡張構造を示す。この収縮又は拡張構造は、トラス(三角形の骨格構造)を立体的に組み合わせた所謂PCCPシェル(Pseudo-Cylindrical Concave Polyhedral Shell)構造Pとなっており、三角形の頂点同士が交わる個所(頂点部)が半径方向外側に突出し、軸直角方向に延びる底辺同士が接する個所(底辺部)が、半径方向内側に凹む。三角形の斜辺同士が接する箇所(移行部)は、頂点部と底辺部を繋ぐ。この多面体により、疑似円筒を構成することができる。本PCCPシェル構造Pは、軸方向に収縮(変形)させることが可能であり、その際に、頂点部が半径方向外側に突出する。このPCCPシェル構造Pを、伝力部25又は奥側係合部60に適用しても良い。従って、三角形の面内は、強度が高く変形が困難な領域となり、三角形の各辺又は各頂点は、折り目によって容易に変形可能な領域を構成することが可能である。
図32(D)乃至(F)は、伝力部25又は奥側係合部60に適用可能な軸方向の収縮構造又は半径方向の拡張構造を示す。この収縮又は拡張構造は、台形を利用したトラス(骨格構造)を立体的に組み合わせた伸縮管構造Dとなっており、軸直角方向に延びる台形の短辺同士が交わる個所(短辺部)が半径方向外側に突出し、軸直角方向に延びる長辺同士が接する個所(長辺部)が、半径方向内側に凹む。斜辺同士が接する箇所(移行部)は、短辺部と長辺部を繋ぐ。この多面体により、疑似円筒を構成することができる。本伸縮管構造Dは、軸方向に収縮(変形)させることが可能であり、その際に、短辺部が半径方向外側に突出する。この伸縮管構造Dを、伝力部25又は奥側係合部60に適用しても良い。従って、台形の面内は、強度が高く変形が困難な領域(難変形領域)となり、台形の各辺又は各頂点は、折り目によって容易に変形可能な領域(易変形領域)を構成することが可能である。なお、台形の代わりに平行四辺形を用いることも可能である。参考として、図32(G)に、この種のPCCPシェル構造又は伸縮管構造を、軸方向に収縮させた状態を示す。なお、一般的に、伸縮管構造Dの方が、PCCPシェル構造Pよりも、軸方向に容易に変形可能である。
図32(H)は、伝力部15に、PCCSシェル構造Pと伸縮管構造Dの双方を適用した例である。この場合は、伸縮管構造Dの方が優先的に縮む。図32(I)は、伝力部25の一部に伸縮管構造Dを適用し、残部はストレートとなる断面多角形の筒とし、奥側係合部60に伸縮管構造Dを適用した例である。なお、伝力部25と奥側係合部60の境界に括れを形成している。図32(J)(K)は、共に、伝力部25に伸縮管構造Dを適用し、奥側係合部60にも伸縮管構造Dを適用した例であるが、図32(K)については、その境界に括れを形成している。
図32(L)は、第二回動部20、伝力部25、奥側係合部60、挟持部10を一体形成した例であり、伝力部25にPCCPシェル構造Pを適用し、奥側係合部60に伸縮管構造Dを適用している。
図33(A)は、第二回動部20、伝力部25、奥側係合部60、挟持部10を一体形成した例である。ここでは更に、奥側係合部60の軸方向中央部分の外周面に、周方向のスリットを形成して易変形領域620Aとし、更に、易変形領域620Aの軸方向両外側に、難変形領域を介して、括れ構造によって易変形領域620B、620Cを形成したものである。
図33(B)は、第二回動部20、伝力部25、奥側係合部60、挟持部10を一体形成した例である。ここでは更に、奥側係合部60において、軸方向中央側を半径方向外側湾曲させており、その軸方向中央部分の外周面に、周方向のスリットを形成して易変形領域620としている。
図33(C)及び(D)は、第二回動部20、伝力部25、奥側係合部60、挟持部10を一体形成した例である。ここでは更に、奥側係合部60において、軸方向中央側を半径方向外側に反るように湾曲させており、その突端に向かって肉厚が薄くなるようにしている。また、軸方向中央部分には、軸方向に延びる切欠きを周方向に複数形成することで、軸方向中央部分を易変形領域620としている。なお、伝力部25は、軸方向の途中に複数の開口25Dをマトリクス状に形成することで、軸方向に座屈又は変形容易な脆弱領域を形成している。
図33(E)は、 第二回動部20、伝力部25、奥側係合部60、挟持部10を一体形成した例である。ここでは更に、奥側係合部60において、軸方向中央側を半径方向外側に湾曲させており、その突端に向かって肉厚が薄くなるようにしている。この薄肉構造によって、軸方向中央部分を易変形領域620としている。
図33(F)は、奥側係合部60において、五個以上の奥側係合片62を周方向に配置し、その間に連環部72を配置した例である。
以上説明したように、本発明は多様な構成を採り得、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。