以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、実施の形態の蒸気タービン10の子午断面を示す図である。図1に示すように、蒸気タービン10は、例えば、内部ケーシング20とその外側に設けられた外部ケーシング21とから構成される二重構造のケーシングを備えている。内部ケーシング20内には、タービンロータ23が貫設されている。このタービンロータ23は、ロータ軸受24によって回転可能に支持されている。
タービンロータ23には、例えば、ロータディスク25が形成され、このロータディスク25に、複数の動翼22が周方向に植設されている。複数の動翼22を周方向に備えた動翼翼列は、タービンロータ軸方向に複数段構成されている。
内部ケーシング20の内側には、ダイアフラム外輪26が設置され、このダイアフラム外輪26の内側には、ダイアフラム内輪27が設置されている。また、ダイアフラム外輪26とダイアフラム内輪27との間には、周方向に複数の静翼28が配置され、静翼翼列を構成している。
この静翼翼列は、タービンロータ軸方向に動翼翼列と交互に複数段備えられている。そして、静翼翼列と、その直下流側に位置する動翼翼列とで一つのタービン段落を構成している。なお、後に詳しく説明するが、ダイアフラム外輪26の下流側の一部は、図1に示すように、動翼22の外周に離間して下流方向に延設されている。
ダイアフラム外輪26とダイアフラム内輪27との間には、主蒸気が流れる環状の蒸気通路29が形成されている。タービンロータ23と内部ケーシング20との間、およびタービンロータ23と外部ケーシング21との間には、蒸気の外部への漏出を防止するために、シール部30が設けられている。なお、後に詳しく説明するが、動翼22の先端に設けられたシュラウド31とダイアフラム外輪26との間、およびタービンロータ23とダイアフラム内輪27との間にも、蒸気の漏出を防止するシール部40、41が設けられている。
また、蒸気タービン10には、主蒸気管33からの蒸気をノズルボックス34内へ導くスリーブ管32が設けられている。このスリーブ管32は、外部ケーシング21と内部ケーシング20とを貫通するように設けられている。ノズルボックス34は、内部ケーシング20とタービンロータ23との間に配置された環状の通路である。ノズルボックス34の出口部には、第1段の静翼28(第1段のノズル)を備える。ノズルボックス34へ供給された蒸気は、第1段の静翼28を通過して第1段の動翼22へ導かれる。
最終段のタービン段落の下流側には、各タービン段落において膨張仕事をした蒸気を排気するための排気通路35が設けられている。
なお、ここでは、高圧タービンを例示して説明するが、本実施の形態の構成は、例えば、超高圧タービン、中圧タービン、低圧タービンなどに適用することができる。本実施の形態の構成は、超高圧タービン、高圧タービン、中圧タービン、低圧タービンの少なくとも一つのタービン段落に設けられる。例えば、蒸気の圧力が高い、超高圧タービン、高圧タービンおよび中圧タービンにおいては、例えば、すべてのタービン段落を本実施の形態の構成にしてもよい。低圧タービンの場合には、例えば、蒸気の圧力が高い上流側のタービン段落に設けることが好ましい。
次に、動翼22の先端に設けられたシュラウド31とダイアフラム外輪26との間におけるシール部40、およびタービンロータ23とダイアフラム内輪27との間におけるシール部41の構成について詳しく説明する。
図2は、実施の形態の蒸気タービン10が作動していない状態における一つのタービン段落の子午断面の一部を模式的に示した図である。図3は、実施の形態の蒸気タービン10が作動している状態における一つのタービン段落の子午断面の一部を模式的に示した図である。なお、蒸気は、図3において矢印で示されるように、静翼28側から動翼22側へ(左側から右側へ)流れる。
実施の形態の蒸気タービン10は、図2に示すように、タービンロータ23と、タービンロータ23のロータディスク25に植設された動翼22とを含む回転構造体を備えている。また、蒸気タービン10は、静翼28と、この静翼28を外周側から支持するダイアフラム外輪26と、静翼28を内周側から支持するダイアフラム内輪27とを含む静止構造体とを備えている。
まず、動翼22の先端に設けられたシュラウド31とダイアフラム外輪26との間におけるシール部40について説明する。
シール部40は、図2に示すように、シール部40aおよびシール部40bを備える。シール部40aは、シュラウド31の上流側の端面31bと、この端面31bに対向するダイアフラム外輪26の内周面26bとの間の隙間から、タービンロータ軸方向に垂直な方向に蒸気が流入することを抑制する。なお、ダイアフラム外輪26の内周面26bは、タービンロータ軸方向に垂直な面である。
シール部40bは、動翼22の先端に設けられたシュラウド31の外周面31aと、ダイアフラム外輪26の内周面26aとの間のタービンロータ軸方向に沿う環状の隙間からの蒸気の漏出を防止する。なお、ダイアフラム外輪26の内周面26aは、タービンロータ軸方向に沿う面である。
まず、シール部40aについて説明する。
図2に示すように、シュラウド31の上流側の端面31bには、タービンロータ軸方向の上流側に向かって突出するシール部材110が設けられている。このシール部材110は、例えば、シュラウド31の周方向に亘って連続して形成され、円環状の形状をなしている。シール部材110は、シュラウド31の端面31bに一体的に構成されもよいし、溶接肉盛りなどにより形成されてもよい。なお、シール部材110は、例えば、周方向に亘って一つ設けられる。また、シール部材110は、第2のシール部材として機能する。
シール部材110は、所定の厚さM1を有する板状の部材で構成される。厚さM1は、例えば、後述するシール部40bのシール部材80の厚さM3よりも薄い。厚さM1は、例えば、後述するシール部40bの板状部材90の厚さM4と同じでもよい。シール部材110は、例えば、図2に示すように、先端部において、先端に行くに伴ってその厚さを徐々に減少されるフィン形状としてもよい。
シール部材110の先端は、例えば、図2に示すように、半径方向外側が下半径方向内側よりも突出した傾斜面を有している。このように傾斜面を備えることで、蒸気および異物の流入を抑制するとともに、シール部材110の先端が、後述する快削材層130に接触したときでも、接触抵抗を低減することができる。シール部材110は、例えば、シュラウド31を構成する材料と同じ材料や高合金鋼などで構成される。
一方、ダイアフラム外輪26の内周面であって、静翼28と動翼22との間で半径方向外側に広がる段部を形成する内周面26bの半径方向内側には、シール部材120が設けられている。
シール部材120は、シュラウド31や動翼22に接触しないように、タービンロータ軸方向の下流側に向かって突出する。シール部材120は、シュラウド31との接触を避けるために、例えば、内周面26bの、シュラウド31よりも半径方向内側となる位置に設けられている。また、シール部材120の先端は、例えば、図2に示す蒸気タービン10が作動していない状態において、シュラウド31の端面31bよりも上流側に位置することが好ましい。
シール部材120は、所定の厚さM2を有する板状の部材で構成される。厚さM2は、例えば、シール部材110の厚さM1と同程度である。シール部材120は、例えば、図2に示すように、先端部において、先端に行くに伴ってその厚さを徐々に減少されるフィン形状としてもよい。
シール部材120の先端は、例えば、図2に示すように、半径方向外側が下半径方向内側よりも突出した傾斜面を有している。このように傾斜面を備えることで、蒸気および異物の流入を抑制するとともに、シュラウド31もしくは動翼22への接触時の損傷を低減できる。シール部材120は、例えば、CrMoV鋼などの低合金鋼で構成される。
シール部材120は、例えば、内周面26bに周方向に亘って形成された溝部121にシール部材120の一部を嵌合し、溝部121の開口部をかしめることで固定される。かしめは、例えば、半径方向内側および半径方向外側の少なくとも一方側から行われる。なお、シール部材120の固定を強固とするため、かしめは、例えば、半径方向内側および半径方向外側の双方から行われることが好ましい。また、かしめ部は、周方向に亘って、例えば、均等に複数個所に形成される。
また、シール部材120が設けられた位置よりも半径方向外側で、かつシール部材110に対向する内周面26bには、周方向に亘って、快削材層130が設けられている。この快削材層130は、例えば、内周面26bに周方向に亘って形成された溝部131内に設けられている。快削材層130の下流側の表面は、図2に示した断面において、例えば、内周面26bと同一平面上にある。なお、快削材層130は、第2の快削材層として機能する。
快削材層130の半径方向の幅は、例えば、製造公差や熱伸び量などを考慮して設定される。すなわち、熱伸び量などが生じたときでも、快削材層130の半径方向の幅は、シール部材110の先端が快削材層130に対向するように設定される。
なお、図2に示す蒸気タービン10が作動していない状態において、快削材層130の下流側の表面と、シール部材110の先端との間には、接触しない程度の隙間が設けられている。
快削材層130は、例えば、被削性(削りやすさ)に優れた快削材であるアブレイダブル材で構成される。アブレイダブル材は、特に限定されるものではなく、一般に使用されている公知のものを使用することができる。アブレイダブル材として、例えば、固体潤滑剤BN(ベントナイト)を含む、被削性に優れた材料を使用することができる。例えば、アブレイダブル材として、NiCrAl合金およびBNからなる組成物、NiCrFeAl合金およびBNからなる組成物などが挙げられる。また、アブレイダブル材として、例えば、リン青銅や洋白などの軟質金属を適用してもよい。
快削材層130は、上記した材料を溝部131内に、例えば、溶射することなどで形成される。また、快削材層130は、例えば、溝部131に半円環状の板状の切削材を嵌め込むことで構成されてもよい。この場合、例えば、溝部131の開口の一部をかしめることで切削材が固定される。
次に、シール部40bについて説明する。
図2に示すように、シュラウド31の外周面31aには、半径方向外側に突出するシール部材80が設けられている。このシール部材80は、例えば、シュラウド31の周方向に亘って連続して形成され、円環状の形状をなしている。シール部材80は、シュラウド31の外周面31aに一体的に構成されてもよいし、溶接肉盛りなどにより形成されてもよい。シール部材80は、第1のシール部材として機能する。
なお、ここでは、隣り合うシール部材80の半径方向外側への突出長さが異なる、いわゆるHigh−Lowタイプの構造を示しているが、これに限られるものではない。例えば、隣り合うシール部材80の半径方向外側への突出長さを同じとしてもよい。
シール部材80は、所定の厚さM3を有する板状の部材で構成される。シール部材80は、例えば、図2に示すように、先端部において、先端に行くに伴ってその厚さを徐々に減少されるフィン形状としてもよい。シール部材80の先端は、例えば、図2に示すように、上流側が下流側よりも突出した傾斜面を有している。このように傾斜面を備えることで、蒸気の流入を抑制するとともに、シール部材80の先端が、後述する快削材層100や板状部材90に接触したときでも、接触抵抗を低減することができる。シール部材80は、例えば、シュラウド31を構成する材料と同じ材料や高合金鋼などで構成される。
ここでは、タービンロータ軸方向に、4段のシール部材80を備えた一例を示しているが、シール部材80は、タービンロータ軸方向に、少なくとも1段設けられていればよい。
一方、動翼22の外周に延設され、シール部材80に対向するダイアフラム外輪26の内周面26aには、シール部材80の先端に接触しないように、半径方向内側(タービンロータ23側)に突出する板状部材90が設けられている。この板状部材90は、例えば、ダイアフラム外輪26の周方向に亘って連続して形成され、円環状の形状をなしている。
なお、ダイアフラム外輪26の、動翼22の外周に延設される部分は、延設部として機能する。この延設部は、図2に示すように、静翼28と動翼22との間で半径方向外側に広がる段部(内周面26b)からタービンロータ軸方向の下流側へ延びている。具体的には、延設部は、段部の半径方向外側の端部から下流側へ延びている。
板状部材90の半径方向内側への突出長さは、シール部材80の突出長さに対応して設定される。シール部材80が、例えば、High−Lowタイプの構造の場合には、図2に示すように、ダイアフラム外輪26の内周面26aは、凹凸に形成される。そして、板状部材90とシール部材80とを対向して配置したとき(タービンロータ軸方向の位置を一致させて配置したとき)に双方の先端が接触しないように、それぞれの突出長さは、設定されている。具体的は、蒸気タービン10を運転していない状態で、板状部材90とシール部材80とを対向させたときに、双方の先端の隙間が、例えば、製造公差や熱伸び量などを考慮して、0.5mm〜2.0mm程度となるように設定される。
板状部材90は、例えば、内周面26aに周方向に亘って形成された溝部26cに板状部材90の一部を嵌合し、溝部26cの開口部をかしめることで固定される。かしめは、例えば、上流側(図2では板状部材90の左側)および下流側(図2では板状部材90の右側)の少なくとも一方側から行われる。なお、板状部材90の固定を強固とするため、かしめは、例えば、上流側および下流側の双方から行われることが好ましい。また、かしめ部は、周方向に亘って、例えば均等に複数個所に形成される。
板状部材90は、シール部材80の厚さM3よりも薄い、厚さM4を有する板状の部材で構成される。板状部材90は、例えば、CrMoV鋼などの低合金鋼で構成される。板状部材90は、シール部材80を構成する材料よりも硬度の低いものが好ましい。なお、板状部材90の厚さM4は、シール部材80の厚さM3よりも薄いため、板状部材90を構成する材料として、シール部材80を構成する材料と同程度の硬度を有するものを使用することもできる。
ここで、蒸気タービン10が作動していない状態においては、図2に示すように、板状部材90の先端のタービンロータ軸方向の位置は、シール部材80の先端のタービンロータ軸方向の位置とずれている。板状部材90の先端のタービンロータ軸方向の位置は、例えば、図2に示すように、対応するシール部材80の先端のタービンロータ軸方向の位置よりも下流側にずれている。
このずれ幅は、蒸気タービン10を作動させた状態における、シュラウド31とダイアフラム外輪26のタービンロータ23の軸方向の熱伸び量などに基づいて設定される。すなわち、このずれ幅は、蒸気タービン10が作動している状態において、図3に示すように、板状部材90の先端のタービンロータ軸方向の位置と、シール部材80の先端のタービンロータ軸方向とが一致するように設定される。
ここでは、板状部材90は、シール部材80の個数に対応させて、タービンロータ軸方向に、4段設けられているが、これに限られるものではない。例えば、図2に示された板状部材90において、最も上流側に位置する板状部材90のみで構成されてもよい。さらに、例えば、図2に示された板状部材90において、最も上流側および最も下流側に位置する板状部材90のみで構成されてもよい。すなわち、板状部材90として、少なくとも、最も上流側に位置する板状部材90を備えていればよい。
板状部材90が突出するダイアフラム外輪26の内周面26aから、板状部材90の先端に至る部分には、アブレイダブル材で形成される快削材層100が設けられている。この快削材層100は、前述した快削材層130と同様の材料で構成される。快削材層100は、板状部材90を固定後、上記した材料をダイアフラム外輪26の内周面26aに、例えば、溶射することなどで形成される。なお、快削材層100は、第1の快削材層として機能する。
上記したシール部40の構成は、上記した構成に限られるものではない。シール部40aにおいて、シール部材110よりも半径方向内側にシール部材120を備えた一例を示したが、シール部材120を備えない構成であってもよい。また、シール部材110、120は、例えば、板状部材90と同様の部材で構成されてもよい。この場合、シール部材110、120の厚さM1、M2は、例えば、板状部材90の厚さM4と同じとしてもよい。
また、シール部40bは、例えば、板状部材90を備えなくてもよい。シール部40bの構成は、ダイアフラム外輪26の内周面26aとシュラウド31の外周面31aとの間の隙間に構成される一般的なシール構成であってもよい。
ここで、タービンロータ23と、このタービンロータ23の外周に離間して配設されたダイアフラム内輪27との間に形成されるシール部41においても、前述したシール部40のシール部40bと同様の構成を備えてもよい。そこで、次に、シール部41について説明する。
図2に示すように、タービンロータ23の外周面23aには、半径方向外側に突出するシール部材50が設けられている。このシール部材50は、例えば、タービンロータ23の周方向に亘って連続して形成され、円環状の形状をなしている。シール部材50は、タービンロータ23の外周面23aに一体的に構成されもよいし、溶接肉盛りなどにより形成されてもよい。
なお、ここでは、隣り合うシール部材50の半径方向外側への突出長さが異なる、いわゆるHigh−Lowタイプの構造を示しているが、これに限られるものではない。例えば、隣り合うシール部材50の半径方向外側への突出長さを同じとしてもよい。
シール部材50は、所定の厚さM5を有する板状の部材で構成される。シール部材50は、例えば、図2に示すように、先端部において、先端に行くに伴ってその厚さを徐々に減少されるフィン形状としてもよい。シール部材50の先端は、例えば、図2に示すように、上流側が下流側よりも突出した傾斜面を有している。このように傾斜面を備えることで、蒸気の流入を抑制するとともに、シール部材50の先端が、後述する快削材層70や板状部材60に接触したときでも、接触抵抗を低減することができる。シール部材50は、例えば、タービンロータ23を構成する材料と同じ材料や高合金鋼などで構成される。
ここでは、タービンロータ軸方向に、4段のシール部材50を備えた一例を示しているが、シール部材50は、タービンロータ軸方向に、少なくとも1段設けられていればよい。
一方、シール部材50に対向するダイアフラム内輪27の内周面27aには、シール部材50の先端に接触しないように、半径方向内側(タービンロータ23側)に突出する板状部材60が設けられている。この板状部材60は、例えば、ダイアフラム内輪27の周方向に亘って連続して形成され、円環状の形状をなしている。
板状部材60の半径方向内側への突出長さは、シール部材50の突出長さに対応して設定される。シール部材50が、例えば、High−Lowタイプの構造の場合には、図2に示すように、ダイアフラム内輪27の内周面27aは、凹凸に形成される。そして、板状部材60とシール部材50とを対向して配置したとき(タービンロータ軸方向の位置を一致させて配置したとき)に、双方の先端が接触しないようにそれぞれの突出長さは、設定されている。具体的は、蒸気タービン10を運転していない状態で、板状部材60とシール部材50とを対向させたときに、双方の先端の隙間が、例えば、製造公差や熱伸び量などを考慮して、0.5mm〜2.0mm程度となるように設定される。
板状部材60は、前述した板状部材90と同様の方法で、ダイアフラム内輪27の内周面27aに固定される。
板状部材60は、例えば、シール部材50の厚さM5よりも薄い、厚さM6を有する板状の部材で構成される。板状部材60は、例えば、SUS304などのステンレス鋼などで構成される。板状部材60は、シール部材50を構成する材料よりも硬度の低いものが好ましい。なお、板状部材60の厚さM6は、シール部材50の厚さM5よりも薄いため、板状部材60を構成する材料として、シール部材50を構成する材料と同程度の硬度を有するものを使用することもできる。
ここで、蒸気タービン10が作動していない状態においては、図2に示すように、板状部材60の先端のタービンロータ軸方向の位置は、シール部材50の先端のタービンロータ軸方向の位置とずれている。板状部材60の先端のタービンロータ軸方向の位置は、例えば、図2に示すように、対応するシール部材50の先端のタービンロータ軸方向の位置よりも下流側にずれている。
このずれ幅は、蒸気タービン10を作動させた状態における、タービンロータ23とダイアフラム内輪27のタービンロータ23の軸方向の熱伸び量などに基づいて設定される。すなわち、このずれ幅は、蒸気タービン10が作動している状態において、図3に示すように、板状部材60の先端のタービンロータ軸方向の位置と、シール部材50の先端のタービンロータ軸方向とが一致するように設定される。ここで、図3に示す状態は、蒸気タービン10が作動され、熱的に安定した状態、例えば、定格運転時における状態である。
ここでは、板状部材60は、シール部材50の個数に対応させて、タービンロータ23の軸方向に、4段設けられているが、これに限られるものではない。例えば、図2に示された板状部材60において、最も上流側に位置する板状部材60のみで構成されてもよい。さらに、例えば、図2に示された板状部材60において、最も上流側および最も下流側に位置する板状部材60のみで構成されてもよい。すなわち、板状部材60として、少なくとも、最も上流側に位置する板状部材60を備えていればよい。
板状部材60が突出するダイアフラム内輪27の内周面27aから、板状部材60の先端に至る部分には、アブレイダブル材で形成される快削材層70が設けられている。この快削材層70は、前述した快削材層100と同様の材料および同様の方法で構成される。
なお、シール部41の構成は、上記した構成に限られるものではない。シール部41は、例えば、板状部材60を備えなくてもよい。また、シール部41の構成は、ダイアフラム内輪27の内周面27aとタービンロータ23の外周面23aとの間の隙間に構成される一般的なシール構成であってもよい。
ここで、蒸気タービン10における上記したシール部40、41の作用について説明する。
図4は、実施の形態の蒸気タービン10が作動している状態において、シール部41の快削材層70の一部が侵食されたタービン段落の子午断面の一部を模式的に示した図である。なお、図4には、蒸気の流れを矢印で示している。
まず、上流側に位置するシール部41の作用について説明する。
図3に示した運転状態が維持され、シール部41の快削材層70の上流側が侵食されると図4に示す状態となる。すなわち、最上流側に位置する板状部材60の上流側の快削材層70の表面の一部が侵食されている。このような侵食を受けても、図4に示すように、最上流側に位置する板状部材60が存在するため、それよりも下流側の快削材層70が侵食されるのを防止することができる。
また、蒸気タービン10が作動している状態において、板状部材60の先端とシール部材50の先端とが対向するため(それぞれの先端のタービンロータ軸方向の位置が一致するため)、快削材層70が侵食されても、蒸気の漏出を的確に抑制することができる。
次に、シール部40の作用について説明する。
環状の蒸気通路29を流れる主蒸気は、旋回流となる。この主蒸気が異物を含む場合、異物は旋回流による遠心力によって外周側に導かれる。しかしながら、外周側に位置するシール部40は、半径方向外側に向かう流れの流入を抑制するシール部40aを備える。そのため、旋回しながら半径方向外側に向かって流れる蒸気、およびこの蒸気に含まれる異物のシール部40への流入が抑制される。
また、シール部40bによって、シール部40への蒸気などの流入がより抑制される。なお、シール部40においては、上記したようにシール部40aを備えるため、例えば、異物による快削材層100の侵食は抑制される。なお、万が一、最上流側に位置する板状部材90の上流側の快削材層100の表面の一部が侵食されても、板状部材90を備えることで、シール部41の作用と同様の作用が得られる。すなわち、最上流側に位置する板状部材90の上流側の快削材層100よりも下流側の快削材層100の侵食を抑制できる。
また、熱伸びなどによってシール部材110の先端と、ダイアフラム外輪26の内周面26bとが接触するときでも、内周面26bに快削材層130を備えているため、構成部材の損傷が防止され、シール構造が維持される。
上記したように、実施の形態の蒸気タービン10によれば、半径方向外側に向かう流れの流入を抑制するシール部40aを備えることで、異物のシール部40への流入を抑制することができる。これによって、蒸気の漏出を抑制しつつ、異物による快削材層100の侵食を抑制することができる。
ここで、上記した実施の形態では、静止構造体に、板状部材60、90および快削材層70、100を備え、回転構造体に、シール部材50、80を備えた一例を示しているが、この構成に限られるものではない。例えば、静止構造体に、シール部材50、80を備え、回転構造体に、板状部材60、90および快削材層70、100を備える構成としてもよい。
すなわち、動翼22と、ダイアフラム外輪26との間に形成されるシール部40においては、動翼22の先端に設けられたシュラウド31の外周面31aに、板状部材90および快削材層100を備え、動翼22の外周に延設されたダイアフラム外輪26の内周面26aに、シール部材80を備えてもよい。また、タービンロータ23と、ダイアフラム内輪27との間に形成されるシール部41においては、タービンロータ23の外周面23aに、板状部材60および快削材層70を備え、ダイアフラム内輪27の内周面27aに、シール部材50を備えてもよい。
このような構成としても、上記した実施の形態における作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
以上説明した実施形態によれば、シール部において、快削材層の耐侵食性を向上するとともに、蒸気の漏出を抑制することが可能となる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。