JP2016211889A - 蛍光プローブ - Google Patents

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Abstract

【課題】生体に対する安全性が高く、しかもバイオイメージングに必要とされる程度に十分な輝度を示すことができる蛍光プローブを提供する。【解決手段】粒子の短径(a)に対する長径(b)の比の値(b/a)として定義されるアスペクト比の平均値が1.0〜5.0であり、結晶性を有する酸化グラフェン微粒子に、標的指向性リガンドを共有結合を介して結合させて、蛍光プローブとする。【選択図】なし

Description

本発明は、蛍光プローブに関する。
現在、バイオイメージングを行う上で、生体の特定部位を蛍光材料で標識し、可視化することで生体現象を観察するという手法が主に行われている。
ここで、蛍光材料としては有機色素を用いるのが一般的である(特許文献1)。しかしながら、有機色素の耐光性は低い。このため、観察初期は十分な蛍光強度での観察が可能であるものの、励起光照射を数分間行うと有機色素は著しく光劣化して蛍光強度が大幅に低下してゆき、十分な観察ができないという課題があった。
このような有機色素の課題を解決すべく、蛍光材料に量子ドットを用いるという検討がなされている(特許文献2)。量子ドットは無機の半導体からなるナノ粒子であるため、耐光性が強いという利点がある。また、長時間励起光を照射しても蛍光強度が低下しないという利点もあることから、経時の動態観察にも利用可能である。しかしながら、実使用に値する高い量子収率を示す量子ドットはCdやInといった有害元素を含んでおり、観察しようとする生体に対する毒性の影響や廃棄時の環境負荷の大きさが課題となっている。また、無機半導体からなる量子ドットにはブリンキングという原因不明の明滅現象があり、この現象が生じると一時的に蛍光発光が消失する。このため、特に一分子イメージング観察を行おうとした際に課題となっていた。
また、他の生体標識用の蛍光材料としては、GFPのような蛍光タンパク質がある(特許文献3)。蛍光タンパク質は天然の生体内にも存在が確認されているように毒性がなく、ブリンキング等の問題もない蛍光材料として、多くのバイオイメージングで利用されている。しかしながら、蛍光タンパク質は有機色素と同様に耐光性が低く、励起光照射を数分間行うと蛍光強度が大幅に低下してしまうという問題がある。さらに、蛍光タンパク質は他のタンパク質と同様に温度環境やpHに敏感で、適正領域を外れるとタンパク質の変性を引き起こし、蛍光発光しなくなるという問題もある。
一方、上記の問題を克服する材料として、近年、炭素ドットが注目されている。「炭素ドット」は「グラフェン量子ドット」とも称され、グラファイトやグラフェンが酸化された基本骨格を有するディスク状または球状の化合物であり、量子ドットと同様に粒径が大きくなるほど長波長側での蛍光発光を示す。炭素ドットは有機物からなるが、有機色素と比べて耐光性が大幅に高く、さらにCdSe等の半導体量子ドットのような有毒元素も含んでいない。このため、生体に対する毒性が低く、バイオイメージング用の蛍光プローブとして有用な材料であるとされている(特許文献4)。
特開2014−43417号公報 特開2009−190976号公報 特表2009−512853号公報 特開2014−5216号公報
しかしながら、本発明者の検討によれば、特許文献4の方法で作製した蛍光プローブは、依然として細胞に対する毒性があり、しかもバイオイメージングに必要とされる程度に十分な輝度を確保することができないという問題があることが判明した。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、生体に対する安全性が高く、しかもバイオイメージングに必要とされる程度に十分な輝度を示すことができる蛍光プローブを提供することを目的とする。
本発明者は、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を行った。そしてその過程で、アスペクト比が小さく(球状に近く)、かつ結晶性を有する酸化グラフェン微粒子をいわゆる「炭素ドット蛍光体」として用いて蛍光プローブを構成することを試みた。その結果、驚くべきことに、上記のような構成とすることで、細胞に対する毒性がきわめて小さい一方で十分な発光輝度を示す蛍光プローブが提供されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の一形態によれば、粒子の短径(a)に対する長径(b)の比の値(b/a)として定義されるアスペクト比の平均値が1.0〜5.0であり、結晶性を有する酸化グラフェン微粒子と、前記酸化グラフェン微粒子に共有結合を介して結合した標的指向性リガンドとを有する、蛍光プローブが提供される。
本発明によれば、生体に対する安全性が高く、しかもバイオイメージングに必要とされる程度に十分な輝度を示すことができる蛍光プローブを提供することができる。
本発明の一形態によれば、粒子の短径(a)に対する長径(b)の比の値(b/a)として定義されるアスペクト比の平均値が1.0〜5.0であり、結晶性を有する酸化グラフェン微粒子と、前記酸化グラフェン微粒子に共有結合を介して結合した標的指向性リガンドとを有する、蛍光プローブが提供される。
以下、本発明を実施するための具体的な形態について、詳細に説明する。
まず、「蛍光プローブ」とは、蛍光体と標的指向性リガンドとの複合体である。そして、蛍光体部分は励起光(紫外線や可視光、赤外線)照射によって励起された後、蛍光を発光する。一方、標的指向性リガンド部分は自身の有する指向性に従って、例えば細胞内を移動する。これにより、標的指向性リガンドに親和性の高い部分を可視化することが可能となる。
<酸化グラフェン微粒子>
本発明に係る蛍光プローブは、蛍光体部分として酸化グラフェン微粒子を用いる点に特徴の1つがある。この酸化グラフェン微粒子はいわゆる「量子ドット」のうち、主に炭素から構成される「炭素ドット(グラフェン量子ドット)」とも称されるものである。
「酸化グラフェン微粒子」は、炭素原子がsp結合で結合して同一平面内に並んだ炭素原子を含む、酸化黒鉛の微粒子であり、後述するように、アスペクト比が1.0〜5.0であって、結晶性を有するものである。
なお、厳密には単層構造の酸化黒鉛を酸化グラフェンと定義すべきであるが、本発明においてはアスペクト比の小さい微粒子の形状の酸化グラフェン(酸化グラフェン微粒子)をいわゆる炭素ドットとして用いることから、単層ではなく多層構造の酸化グラフェンが用いられることになる。ここで、一般に知られている酸化黒鉛の層間距離0.83nmから換算すると、例えば10層からなる積層構造の酸化グラフェン微粒子の積層方向のサイズは約7〜8nm程度となる。このような積層構造の酸化グラフェン微粒子もまた、本発明に包含されるのである。
また、本発明に係る蛍光プローブに用いられる「酸化グラフェン」の概念には、組成変化・構造変化を生じさせる処理(例えば還元処理、化学修飾(酸化グラフェンに含有するカルボン酸などの官能基を利用して有機物を化学的に結合させる)など)を行った酸化グラフェンも含めるものとする。この「組成変化・構造変化を生じさせる処理」は、後述する標的指向性リガンドとの複合化の前または後に行われうる。酸化グラフェンをリガンドと複合化する前の処理としては、例えば、酸化グラフェン含有溶液に加熱処理を行う、光照射を行う、還元剤を添加して加熱処理を行うことなどが可能である。また、リガンドと複合化した後に行う処理としては、加熱処理、還元雰囲気にさらす処理、光照射などが可能である。
酸化グラフェン微粒子は水酸基やカルボン酸基などの酸素含有基を有するものであってもよく、元素分析による酸素含有量は、例えば、5〜50質量%の範囲であることができる。ただし、かような範囲に限定されることはない。なお、酸素含有量はXPS(X線光電子分光法)やSEM(走査電子顕微鏡)・TEM(透過型電子顕微鏡)と組み合わせたエネルギー分散型X線分析により評価することが可能である。
酸化グラフェンは、黒鉛由来のグラフェン構造を残した部分とアモルファス構造部分とを有するものであってもよい。アモルファス構造部分の存在によりグラフェンとは異なる機能を発現させることも可能である。なお、アモルファス構造部分の存在はラマンスペクトルで確認することができ、酸化グラフェンのラマンスペクトルにおけるピークの高さの比などから判断することができる。
従来、特許文献4に記載されているように「炭素ドット」を蛍光プローブの蛍光体部分として用いる技術は知られていたが、上述したように生体に対する安全性や、発光輝度(感度)の点で改善の余地が存在していた。
本発明に係る蛍光プローブにおいて、酸化グラフェン微粒子は、上記特許文献4に記載された炭素ドット蛍光プローブにおける蛍光体部分の構成と比較して、以下の2つの点で異なる構成を有するものである:
(i)粒子の短径(a)に対する長径(b)の比の値(b/a)として定義されるアスペクト比の平均値が1.0〜5.0と小さい値に制御されている;
(ii)結晶性を有している。
まず、上記(i)について説明すると、上記特許文献4に記載されている炭素ドットは「単層又は多層のグラフェンナノシート」からなるものであることから、アスペクト比はきわめて大きい値となる(通常は10以上)。これに対し、本発明に係る酸化グラフェン微粒子のアスペクト比は1.0〜5.0であり、好ましくは1.0〜1.5である。また、酸化グラフェン微粒子の短径(a)および長径(b)のそれぞれの値について特に制限はないが、蛍光体として十分な発光輝度を示すという観点から、長径(b)は好ましくは0.5〜30.0nmであり、より好ましくは2.0〜10.0nmである。一方、上記アスペクト比を満たしやすいという観点から、短径は好ましくは0.4〜25.0nmであり、より好ましくは1.0〜10.0nmである。さらに、粒子の長径(b)の値の変動係数(標準偏差/長径(b))の値は、好ましくは30%以下であり、より好ましくは25%以下であり、さらに好ましくは20%以下である。このように、長径(b)の値の変動係数が小さいと、酸化グラフェン微粒子の粒度ばらつきが小さく、蛍光スペクトルのピークがよりシャープなものとなる(ピークの半値幅が小さくなる)。そうすると、蛍光ピーク波長の異なる複数の蛍光プローブを用いて複数の標的を異なる色で発光させる多色蛍光イメージングを行う場合に、蛍光スペクトルの重なりによるノイズの発生が抑制され、評価システムのSN比をよりいっそう向上させることが可能となる。なお、酸化グラフェン微粒子の短径(a)および長径(b)並びにアスペクト比(b/a)の測定(算出)方法は、後述する実施例の欄に記載されている。
次いで、上記(ii)について説明すると、本発明に係る酸化グラフェン微粒子は、特許文献4に記載されている炭素ドット(結晶性を有していない)とは異なり、結晶性を有している。ここで、酸化グラフェン微粒子が「結晶性を有している」とは、後述する実施例の欄に記載されているように、透過型電子顕微鏡を用いて蛍光プローブの分散液中に存在する炭素ドット粒子の画像観察を行った場合に、結晶性の高さを示す平行な斜線状の格子間隔(0.2〜0.4nm)が観察されることを意味する。
本発明に係る蛍光プローブによれば、蛍光体として用いられる酸化グラフェン微粒子が上記(i)および(ii)の特徴を有していることで、特許文献4に記載の蛍光プローブとは異なり、生体(細胞)に対する毒性がきわめて小さく、しかもバイオイメージングに必要とされる程度に十分な輝度を示すことができる。本発明に係る構成とすることでかような効果が奏されるメカニズムは完全には明らかではないが、上記(ii)のように酸化グラフェン微粒子が結晶性であると、格子欠陥に由来する非輻射の再結合が抑制され、量子収率が向上するものと考えられる。また、上記(i)のように酸化グラフェン微粒子の形状が球状に近いものであると、染色時の炭素ドット分散液の濃度をより低濃度にすることができることも判明している。これは、細胞に対してどの角度から接触してもエンドサイトーシスが起こりやすいために、細胞への導入効率がより高くなったためと考えられる。さらに、上記(i)のように酸化グラフェン微粒子の形状が球状に近いものであると、炭素ドットがディスク形状である場合などに起こる、鋭利なエッジ部での細胞組織裂傷が抑制されることで、生体(細胞)に対する毒性の低減が図られているものと考えられる。
なお、本発明に係る蛍光プローブの蛍光体を構成する酸化グラフェン微粒子自体は、従来公知の手法により製造することが可能である。例えば、孔内のサイズが制御されたメソポーラスシリカを鋳型として用い、原料炭素化合物を300℃以上の温度で焼結させるという手法により、上記酸化グラフェン微粒子を得ることができる。この際、原料炭素化合物の焼結によって製造される酸化グラフェン微粒子の長径(b)の値は、メソポーラスシリカの有する(制御された)細孔のサイズに依存して変化する。そして、鋳型として用いられるメソポーラスシリカは、その(平均)細孔径が10nm未満であるか10nm以上であるかによって、異なる手法により製造されうる。すなわち、(平均)細孔径が10nm未満のメソポーラスシリカを製造しようとする場合には、例えば特開2015−003860号公報に記載の方法のように、比較的低分子量の界面活性剤の存在下でテトラエトキシシラン等のシリカ源を重縮合させる方法で製造することができる。一方、(平均)細孔径が10nm以上のメソポーラスシリカを製造しようとする場合には、例えば特開2013−230955号公報に記載の方法のように、比較的高分子量の重合体の存在下でテトラエトキシシラン等のシリカ源を重縮合させる方法で製造することができる。
原料炭素化合物について特に制限はなく、上述したメソポーラスシリカの細孔の内部に導入されることができ、かつ、後述する大気下での焼結工程において炭化して酸化グラフェン微粒子を提供することができる化合物であれば任意の有機化合物が原料炭素化合物として用いられうる。原料炭素化合物としては、例えば、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、メリト酸等のカルボン酸;グルコース、フルクトース、マンノース等の単糖類;グリコーゲン、デキストリン、セルロース等の多糖類;リジン、ロイシン、メチオニン等のアミノ酸;アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂等の樹脂などが挙げられる。なかでも、酸化グラフェンを構成する酸素源を適度に含んでいるという観点から、原料炭素化合物としてはカルボン酸が好ましく、クエン酸が特に好ましい。
原料炭素化合物をメソポーラスシリカの細孔中に導入する手法について特に限定はない。例えば、液状の原料炭素化合物を用いる場合には、当該原料炭素化合物中にメソポーラスシリカを浸漬して、当該原料炭素化合物をメソポーラスシリカの細孔内部にまで十分に浸入させればよい。また、固体状の原料炭素化合物を用いる場合には、当該原料炭素化合物を水等の溶媒に溶解させた溶液にメソポーラスシリカを浸漬して、当該原料炭素化合物をメソポーラスシリカの細孔内部にまで十分に侵入させればよい。さらに、気体状の原料炭素化合物を用いる場合には、当該原料炭素化合物の蒸気雰囲気中にメソポーラスシリカを置くことによって、当該原料炭素化合物をメソポーラスシリカの細孔内部にまで浸入させることが可能である。ここで、固体状の原料炭素化合物を水溶液の形態で用いることが好ましい。かような構成を採用し、用いる水溶液の濃度を調節することによって、得られる酸化グラフェン微粒子の粒度分布を制御することが可能である。具体的には、原料炭素化合物の水溶液の濃度をより小さい(薄い)ものとすることによって、得られる酸化グラフェン微粒子の粒度分布をよりシャープな(変動係数の小さい)ものとすることが可能である。この際、上記水溶液中の蛍光プローブの濃度について特に制限はないが、好ましくは0.1〜30.0質量%であり、より好ましくは1.0〜15.0質量%である。
上述したようにメソポーラスシリカの細孔中に原料炭素化合物を導入した後、メソポーラスシリカの表面に存在する過剰な原料炭素化合物を除去することが好ましい。この際、エタノール、メタノール等の低級脂肪族アルコールを用いてメソポーラスシリカを洗浄することが好ましい。これにより、メソポーラスシリカの表面に存在する過剰な原料炭素化合物が確実に除去されうる。洗浄処理の具体的な形態について特に制限はなく、所望の量の原料炭素化合物がメソポーラスシリカの表面に残存するように、洗浄条件が適宜設定されうる。
続いて、メソポーラスシリカの細孔内部に導入された原料炭素化合物を焼結させる。これにより、原料炭素化合物は炭化して、酸化グラフェンが生成する。
原料炭素化合物を焼結させるための具体的な手法やその条件について特に制限はない。本工程の目的である「原料炭素化合物の焼結(炭化)」が達成されうる限り、任意の手法・加熱条件が採用されうる。なお、焼結(炭化)のための加熱条件としては、300℃以上の温度が好ましく、より好ましくは350〜800℃である。ここで、焼結(炭化)のための加熱の際には、通常、室温から所定の加熱温度まで昇温させた後、当該所定の加熱温度を保持するが、昇温の際の昇温速度を調節することによって、得られる酸化グラフェン微粒子のアスペクト比を制御することが可能である。具体的には、昇温の際の昇温速度を大きく(速く)すると、アスペクト比はより大きな値をとるようになり、球形から外れる方向に作用する。また、焼結(炭化)のための加熱時間は、好ましくは0.5〜20時間であり、より好ましくは2〜5時間である。なお、焼結(炭化)のための加熱の際の雰囲気は、大気下雰囲気が基本であるが、原料炭素化合物を気化させた雰囲気や、原料炭素化合物に酸素原子が含まれる場合は不活性ガス雰囲気(アルゴン、窒素など)でもよい。
以上の工程により、酸化グラフェンが生成する。そして、得られた酸化グラフェンは、鋳型として用いたメソポーラスシリカの有していた細孔の形状・サイズに対応する形状・サイズを有するものである。上述した加熱(焼結・炭化)の処理が終了した後、超音波処理を施すことなどによって、メソポーラスシリカの細孔内部に生成した酸化グラフェンの微粒子を取り出すことができる。
上述した製造方法をまとめると、本発明の他の形態によれば、孔内のサイズが制御されたメソポーラスシリカを鋳型として用い、原料炭素化合物を300℃以上の温度で焼結させて、結晶性を有する酸化グラフェン微粒子を得る工程と、前記酸化グラフェン微粒子に標的指向性リガンドを共有結合を介して結合させて蛍光プローブを得る工程とを含む、蛍光プローブの製造方法もまた、提供される。
<標的指向性リガンド>
本発明に係る蛍光プローブは、従来公知の蛍光プローブと同様に、蛍光プローブとして機能するために必要な標的指向性リガンドを有しており、これが上述した酸化グラフェン微粒子に共有結合を介して結合している。
本発明において、「標的指向性リガンド」とは、標的指向性分子から酸化グラフェン微粒子との共有結合(例えば、ペプチド(アミド)結合(−CO−NH−))の形成に用いられる基(例えば、カルボキシ基(もしくは活性エステル基)またはアミノ基)を除いた部分(化学結合後に残る標的指向性分子の残基)を意味する。そして、「標的指向性分子」とは、特定の組織または細胞に対するターゲッティング機能を有する分子を意味する。この標的指向性分子は、酸化グラフェン微粒子との間で共有結合(例えば、ペプチド(アミド)結合(−CO−NH−))を形成するために、末端に反応性基(例えば、カルボキシ基(−COOH)(もしくは活性エステル基(−COOR))および/またはアミノ基(−NH))を有していることが好ましい。
標的指向性分子の種類は特に限定されず、目的に応じて最適なものを選択することができる。標的指向性分子としては、具体的には、以下のようなものがある。本発明に係る蛍光プローブにおいて、酸化グラフェン微粒子には、以下のいずれか1種の標的指向性分子が結合していてもよく、2種以上が結合していてもよい。
(1)標的が癌等の疾患組織あるいは細胞において特異的に発現する種々のマーカータンパク質またはペプチドである場合、標的指向性分子としては、これらに対する抗体(例えば、HER2抗体、がん特異的抗体、血管内皮細胞特異的抗体、組織特異的抗体、リン酸化タンパク抗体など)またはその親和性物質、葉酸、トランスフェリン、トランスフェリン結合型ペプチドなどがある。
(2)標的が糖鎖の場合、標的指向性分子としては、糖鎖と結合性を有するタンパク質(例えば、レクチン)などがある。
(3)その他の標的指向性分子としては、例えば、細胞膜親和性物質、ウイルス細胞認識部位、親油性トレーサー、複製機能のないウイルス粒子、細胞小器官親和性物質(例えば、DNA、ミトコンドリア、細胞骨格分子、ゴルジ体、リソソーム、エンドソーム、オートファゴソームなど)などがある。
本発明に係る蛍光プローブは、1種または2種以上の標的指向性リガンドを備えている。そのため、これを生体内に投与することによって、特定の疾患組織や細胞に蛍光プローブを蓄積させることができる。また、蛍光プローブを生体に投与した後、生体に光エネルギーを照射すると、蛍光プローブの蓄積部位を蛍光発光させることができる。そのため、疾患部位の位置を検出したり、蛍光強度によってその疾患程度を把握したりすることができる。
本発明に係る蛍光プローブは、種々の方法により製造することができる。蛍光プローブの製造方法としては、具体的には、以下のような方法がある。
第1の方法としては、アミン型官能基を備えた酸化グラフェン微粒子と、カルボキシ基(もしくは活性エステル基)を備えた標的指向性分子とを出発原料に用いて、アミン型官能基の全部または一部とカルボキシ基(もしくは活性エステル基)とを縮合反応させる方法が挙げられる。この場合、酸化グラフェン微粒子は、アミン型官能基以外の窒素含有官能基、カルボキシ基、活性エステル基(−COOR)などをさらに備えていてもよい。ここで、「活性エステル基」とは、カルボン酸から誘導される基のなかで高活性なものをいう。
第2の方法は、酸化グラフェン微粒子と、アミノ基(−NH)を備えた標的指向性分子とを出発原料に用いて、酸化グラフェン微粒子にカルボキシ基(−COOH)または活性エステル基(−COOR)を導入し、カルボキシ基(−COOH)または活性エステル基(−COOR)の全部または一部と、アミノ基(−NH)とを縮合反応させる方法が挙げられる。この場合、酸化グラフェン微粒子は、必ずしも標的指向性分子を修飾するためのアミン型官能基を備えている必要はないが、アミン型官能基、アミン型官能基以外の窒素含有官能基などをさらに備えていてもよい。
蛍光プローブ作製の最終工程について、上記「共有結合」がペプチド結合(アミド結合)である場合を例に挙げて説明すると、酸化グラフェン微粒子と標的指向性分子とを共有結合を介して結合させるには、−NHまたは−COOH(−COOR)を有する酸化グラフェン微粒子を製造し、これと標的指向性分子とを適当な溶媒中に溶解または分散させる。次いで、混合溶液を所定の温度で所定時間保持すると、酸化グラフェン微粒子の−NHまたは−COOH(−COOR)と標的指向性分子の−COOH(−COOR)または−NHとが縮合反応する。その結果、両者がペプチド結合(−CO−NH−)を介して結合する。この場合、縮合剤共存下で両者を反応させると、ペプチド結合の形成が容易化する。
縮合剤としては、(1)塩酸1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミドなどのカルボジイミド系縮合剤;(2)4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリン塩酸塩などのトリアジン系縮合剤;(3)アルミニウム系縮合剤、
(4)ホスニウム系縮合剤;(5)ジヒドロキノン系縮合剤;などがある。また、これらの反応において、N−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシ−7−アゾベンゾトリアゾールなどの脱水縮合添加剤を用いてもよい。
本発明に係る蛍光プローブが提供される際の形態について特に制限はない。ただし、通常は、水または緩衝液を分散媒とする分散液の形態で提供される。蛍光プローブが分散液の形態である場合、分散媒として用いられる緩衝液の種類についても特に制限はなく、リン酸緩衝液等の従来公知の緩衝液が好ましく用いられうる。
本発明に係る蛍光プローブを生体内に投与した場合、標的指向性リガンドが標的とする疾患組織、細胞に結合し、蛍光プローブが疾患組織等に蓄積される。蓄積された蛍光プローブにレーザー光等の光エネルギーを照射すると、酸化グラフェン微粒子が励起されて蛍光発光する。発光した蛍光は、例えば蛍光顕微鏡を用いてイメージングすることができる。これにより疾患部位の位置を検出することができるとともに、蛍光強度によってその疾患程度も把握することができる。また、発光波長の異なる複数の酸化グラフェン微粒子を用いると、複数の疾患組織や細胞を同時に検出することができる(多色蛍光イメージング)。この場合には、上述した変動係数が特に20%以下と小さいと、異なる蛍光プローブ間での蛍光発光ピークの重なりが低減され、多色蛍光イメージングの際のSN比がよりいっそう向上しうる。
本発明を、以下の実施例および比較例を用いて具体的に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに限定されるわけではない。なお、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。また特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行った。
≪鋳型メソポーラスシリカの作製≫
<粒径2nm炭素ドット作製用鋳型メソポーラスシリカの作製>
シリカ源としてテトラエトキシシラン(TEOS)14g、界面活性剤として臭化ドデシルトリメチルアンモニウム12.4g、および塩酸(pH1.0)3.6gを混合し、1時間室温下で撹拌した後、60℃にて14日間静置することで、ゲルを得た。続いて、得られたゲルを600℃で3時間焼成することで、粒径2nm炭素ドット作製用の鋳型メソポーラスシリカを作製した。
<粒径0.5nm炭素ドット作製用鋳型メソポーラスシリカの作製>
界面活性剤として、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム12.4gに代えて臭化トリメチルフェニルアンモニウム8.7gを用いたこと以外は、上述した「粒径2nm炭素ドット作製用鋳型メソポーラスシリカの作製」と同様の手法により、粒径0.5nm炭素ドット作製用の鋳型メソポーラスシリカを作製した。
<粒径10nm炭素ドット作製用鋳型メソポーラスシリカの作製>
撹拌装置付き耐圧容器を十分に窒素置換した後、充分に脱水したα−メチルスチレン172g、シクロヘキサン258.1g、n−ヘキサン28.8gおよびテトラヒドロフラン5.9gを各々投入した。続いて、sec−ブチルリチウム(1.3M、シクロヘキサン溶液)17.5mLを添加し、−10℃で5時間重合した。5時間重合後のポリα−メチルスチレンの数平均分子量を測定したところ、6400であった。次いで、1,3−ブタジエン27gを添加し、30分間撹拌後、シクロヘキサン1703gを加えた。ポリ1,3−ブタジエンブロックの数平均分子量は3640であった。次いで、1,3−ブタジエンを303g添加し、温度を60℃まで上昇させながら2時間重合した後、α、α’−ジクロロ−p−キシレン(0.3M、トルエン溶液)27.0mLを加え、60℃で15分間撹拌してカップリング反応を行い、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体(mSEBmS)を合成した。得られたmSEBmSの数平均分子量は15000であった。
続いて、得られたブロック共重合体(mSEBmS)100gを、攪拌装置付きガラス製反応容器中にて1時間真空乾燥し、窒素置換した後、塩化メチレン1000mLを添加し、35℃にて2時間攪拌して溶解させた。次に別途、塩化メチレン41.8mL中、0℃にて無水酢酸21.0mLと硫酸9.34mLとを混合して得られたスルホン化剤を、20分かけて徐々に滴下した。滴下終了後、25℃にて7時間攪拌し、2Lの蒸留水の中に攪拌しながら重合体溶液を注ぎ、重合体を析出させた。析出した固形分を90℃の蒸留水で30分間洗浄し、ろ過した。この洗浄およびろ過の操作を洗浄水のpHに変化がなくなるまで繰り返し、最後にろ取した重合体を真空乾燥してスルホン化物(ブロック共重合体(Z−1))を得た。
続いて、0.1M塩酸0.15gをテトラエトキシシラン0.5gに添加して、大気雰囲気下、25℃にて5分間、マグネティックスターラーを用いて撹拌することでシリカ前駆体水溶液を調製した。次に、上記で得られたブロック共重合体(Z−1)0.125gにテトラヒドロフラン2.5mLを添加し、大気雰囲気下、25℃にて1時間、マグネティックスターラーを用いて攪拌することで完全にポリマーを溶解させてブロック共重合体溶液を調製した。このブロック共重合体溶液に上記で得られたシリカ前駆体水溶液を添加した後、大気雰囲気下、25℃にて1時間、マグネティックスターラーを用いて攪拌した。得られた混合液を大気雰囲気下、25℃にて1時間乾燥することで固形分を得た。これを大気雰囲気下において電気炉(光洋サーモシステム製、KBF442N1)を用いて1℃/minの昇温速度で600℃まで昇温し、4時間保持した。その後、室温まで冷却することで粒径10nm炭素ドット作製用の鋳型メソポーラスシリカを作製した。
<粒径30nm炭素ドット作製用鋳型メソポーラスシリカの作製>
カップリング反応の時間を45分間とすることで数平均分子量45000のmSEBmSを合成したこと以外は、上述した「粒径10nm炭素ドット作製用鋳型メソポーラスシリカの作製」と同様の手法により、粒径30nm炭素ドット作製用の鋳型メソポーラスシリカを作製した。
<粒径40nm炭素ドット作製用鋳型メソポーラスシリカの作製>
カップリング反応の時間を60分間とすることで数平均分子量60000のmSEBmSを合成したこと以外は、上述した「粒径10nm炭素ドット作製用鋳型メソポーラスシリカの作製」と同様の手法により、粒径40nm炭素ドット作製用の鋳型メソポーラスシリカを作製した。
≪炭素ドット蛍光プローブ分散液の調製≫
<実施例1>
(炭素ドットのリン酸バッファー分散液の調製)
上記で作製した粒径2nm炭素ドット作製用鋳型メソポーラスシリカ1.5g、および1.2Mクエン酸水溶液4.5gを混合し、室温下で24時間静置した。次いで、ろ紙を用いてろ過を行い、エタノールで余分なクエン酸水溶液を洗い流した。その後、細孔にクエン酸水溶液が浸透したメソポーラスシリカを400℃で2時間焼成した。この際、焼成時の400℃までの昇温速度を3℃/分とした。
続いて、0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.4、ナカライテスク社製)4.5gを添加し、1時間超音波処理することで炭素ドットを鋳型シリカからリン酸バッファー中に取り出した。次いで、炭素ドットが分散したリン酸バッファーに0.2μm径のメンブレンフィルターをかけ、余分な鋳型シリカを除去した。最後に0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.4、ナカライテスク社製)を適宜加えることで、0.1質量%の炭素ドットリン酸バッファー分散液を調製した。
(炭素ドット−抗体複合体のリン酸バッファー分散液の調製)
上記で調製した分散液4.5gに、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド0.002gおよびHER2認識抗体である4B5(Roche社製)を50μL加え、1分間ボルテックスで振動を与えた後、1時間放置することで、炭素ドットのカルボン酸部と抗体のアミノ基末端とを脱水縮合させて蛍光プローブ(炭素ドット−抗体複合体)を得た。最後に、0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.4、ナカライテスク社製)を適宜加えることで、蛍光プローブの1.0質量%リン酸バッファー分散液(1)を調製した。なお、分散液(1)に含まれる蛍光プローブを励起波長320nmで励起させた際の蛍光ピーク波長(発光波長)は460nmであった。
<実施例2>
細孔にクエン酸水溶液が浸透したメソポーラスシリカの焼成時の400℃までの昇温速度を5℃/分としたこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、蛍光プローブの1.0質量%リン酸バッファー分散液(2)を調製した。なお、分散液(2)に含まれる蛍光プローブを励起波長320nmで励起させた際の蛍光ピーク波長(発光波長)は455nmであった。
<実施例3>
細孔にクエン酸水溶液が浸透したメソポーラスシリカの焼成時の400℃までの昇温速度を7℃/分としたこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、蛍光プローブの1.0質量%リン酸バッファー分散液(3)を調製した。なお、分散液(3)に含まれる蛍光プローブを励起波長320nmで励起させた際の蛍光ピーク波長(発光波長)は450nmであった。
<実施例4>
クエン酸水溶液の濃度を0.6Mに変更し、かつ、細孔にクエン酸水溶液が浸透したメソポーラスシリカの焼成時の400℃までの昇温速度を5℃/分としたこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、蛍光プローブの1.0質量%リン酸バッファー分散液(4)を調製した。なお、分散液(4)に含まれる蛍光プローブを励起波長320nmで励起させた際の蛍光ピーク波長(発光波長)は455nmであった。
<実施例5>
粒径2nm炭素ドット作製用鋳型メソポーラスシリカに代えて、上記で作製した粒径0.5nm炭素ドット作製用鋳型メソポーラスシリカを用いたこと以外は、上述した実施例2と同様の手法により、蛍光プローブの1.0質量%リン酸バッファー分散液(5)を調製した。なお、分散液(5)に含まれる蛍光プローブを励起波長320nmで励起させた際の蛍光ピーク波長(発光波長)は435nmであった。
<実施例6>
粒径2nm炭素ドット作製用鋳型メソポーラスシリカに代えて、上記で作製した粒径10nm炭素ドット作製用鋳型メソポーラスシリカを用いたこと以外は、上述した実施例2と同様の手法により、蛍光プローブの1.0質量%リン酸バッファー分散液(6)を調製した。なお、分散液(6)に含まれる蛍光プローブを励起波長320nmで励起させた際の蛍光ピーク波長(発光波長)は500nmであった。
<実施例7>
粒径2nm炭素ドット作製用鋳型メソポーラスシリカに代えて、上記で作製した粒径30nm炭素ドット作製用鋳型メソポーラスシリカを用いたこと以外は、上述した実施例2と同様の手法により、蛍光プローブの1.0質量%リン酸バッファー分散液(7)を調製した。なお、分散液(7)に含まれる蛍光プローブを励起波長320nmで励起させた際の蛍光ピーク波長(発光波長)は550nmであった。
<実施例8>
粒径2nm炭素ドット作製用鋳型メソポーラスシリカに代えて、上記で作製した粒径40nm炭素ドット作製用鋳型メソポーラスシリカを用いたこと以外は、上述した実施例2と同様の手法により、蛍光プローブの1.0質量%リン酸バッファー分散液(8)を調製した。なお、分散液(8)に含まれる蛍光プローブを励起波長320nmで励起させた際の蛍光ピーク波長(発光波長)は600nmであった。
<比較例1>
細孔にクエン酸水溶液が浸透したメソポーラスシリカの焼成時の焼成温度を150℃に変更した(昇温速度:5℃/分)こと以外は、上述した実施例2と同様の手法により、蛍光プローブの1.0質量%リン酸バッファー分散液(9)を調製した。なお、分散液(9)に含まれる蛍光プローブを励起波長320nmで励起させた際の蛍光ピーク波長(発光波長)は460nmであった。
<比較例2>
特開2014−5216号公報の実施例1に記載の手法により、ディスク形状の炭素ドットを得た。そして、このディスク形状の炭素ドットを用いたこと以外は、上述した実施例2と同様の手法により、蛍光プローブの1.0質量%リン酸バッファー分散液(10)を調製した。なお、分散液(10)に含まれる蛍光プローブを励起波長320nmで励起させた際の蛍光ピーク波長(発光波長)は465nmであった。
≪炭素ドット蛍光プローブ分散液の評価≫
上記で調製した炭素ドット−抗体複合体のリン酸バッファー分散液(1)〜(10)またはこれらの抗体との複合化前の炭素ドットリン酸バッファー分散液について、下記の評価を行った。結果を下記の表1に示す。
<結晶性の確認>
抗体との複合化前の炭素ドットリン酸バッファー分散液について、透過型電子顕微鏡(TEM)(JEM−2500SE、JEOL製)を用い、分散液中に存在する炭素ドット粒子の画像観察を行い、結晶性の高さを示す平行な斜線状の格子間隔(0.2〜0.4nm)が観察されるか否かを指標として、炭素ドット粒子の結晶性の有無を確認した。
<炭素ドット粒子の長径/短径比の測定>
抗体との複合化前の炭素ドットリン酸バッファー分散液をスライドガラス上に滴下し、乾燥させることで、Z軸方向が短径となるように炭素ドットを固定化した。続いて、透過型電子顕微鏡(TEM)(JEM−2500SE、JEOL製)を用いて炭素ドット粒子のX軸・Y軸面から画像観察を行って、100個の粒子の平均値として炭素ドット粒子の長径(b)の値を算出した。続いて、原子間力顕微鏡(AFM)(Dimension Icon、BRUKER社製)を用いて画像観察を行って、100個の粒子の平均値として炭素ドット粒子の短径(a)を算出した。このようにして得られた長径(b)および短径(a)の値に基づき、炭素ドット粒子のアスペクト比(長径(b)/短径(a)の比の値)を算出した。なお、TEM観察による長径(b)の測定の際、各粒子の長径(b)の値の変動係数(標準偏差/長径(b))の値についても算出した。
<蛍光量子収率評価>
炭素ドット−抗体複合体のリン酸バッファー分散液について、絶対PL量子収率測定装置(Quantaurus−QY C11347−01、浜松ホトニクス社製)を用いて蛍光量子収率測定を行い、下記の基準で蛍光量子収率を評価した。なお、量子収率の値が大きいほど、蛍光プローブとしての感度が高いことを意味する。:
〇:量子収率50%以上
△:量子収率30%以上50%未満
×:量子収率30%未満。
<半値幅評価>
炭素ドット−抗体複合体のリン酸バッファー分散液について、蛍光光度計(F−7000;日立製作所製)を用いて蛍光スペクトル測定を行い、下記の基準で半値幅を評価した。なお、半値幅(full width at half maximum(FWHM))とは、蛍光スペクトル分布において、相対強度がピークにおける強度の50%の値になる波長の幅である。なお、半値幅の値が小さいほど、ピークがシャープであることを意味する:
◎:半値幅が40nm未満
〇:半値幅が40nm以上50nm未満
△:半値幅が50nm以上60nm未満
×:半値幅が60nm以上。
<単色のSN比評価>
細胞膜にHER2タンパク質が発現した乳がん細胞切片(HER2 IHC、パソロジー研究所製)に、上記で調製した炭素ドット−抗体複合体のリン酸バッファー分散液を滴下し、4℃で40分間放置した。その後、リン酸バッファー槽に漬けて余分な蛍光プローブを除去した。次いで、エタノール槽、キシレン槽の順に漬け込み、細胞切片を低極性溶媒環境とした。続いて、封入材(エンテランニュー、Merck社製)で細胞切片を封入して観察用サンプルを作製した。この観察用サンプルについて、蛍光顕微鏡(オリンパス社製)を用いて、励起波長320nmとして観察を行った。このとき、細胞膜部に特異的に発現させたHER2を蛍光プローブが正しく認識できているかを、「細胞膜部での蛍光強度/細胞全体での蛍光強度」の割合(SN比)から、下記の基準で評価した:
◎:SN比が0.98以上
○:SN比が0.95以上0.98未満
△:SN比が0.92以上0.95未満
×:SN比が0.92未満
<低濃度染色時の蛍光強度評価>
上述した「単色のSN比評価」と同様の手法により、炭素ドット−抗体複合体のリン酸バッファー分散液の濃度が0.1質量%のものを用いて細胞切片染色および蛍光顕微鏡観察を行った。そして、実施例1の細胞膜部蛍光強度の値に対する相対値として、下記の基準で評価した:
○:細胞膜部蛍光強度の相対値が0.95以上
△:細胞膜部蛍光強度の相対値が0.90以上0.95未満
×:細胞膜部蛍光強度の相対値が0.90未満。
<細胞低裂傷性評価>
上述した「単色のSN比評価」を行った細胞切片サンプルを光学顕微鏡(オリンパス社製)で倍率90倍にて10個の細胞を観察した際に、細胞膜部に裂傷があるかを確認し、下記の基準で評価した。
○:細胞膜部に裂傷がある細胞はなかった
△:1〜3個の細胞で細胞膜部に裂傷がみられた
×:4個以上の細胞で細胞膜部に裂傷がみられた。
表1に示す結果から、本発明に係る蛍光プローブは、比較例のものと比較して、生体に対する安全性が高く、しかもバイオイメージングに必要とされる程度に十分な輝度を示すことができることがわかる。

Claims (7)

  1. 粒子の短径(a)に対する長径(b)の比の値(b/a)として定義されるアスペクト比の平均値が1.0〜5.0であり、結晶性を有する酸化グラフェン微粒子と、
    前記酸化グラフェン微粒子に共有結合を介して結合した標的指向性リガンドと、
    を有する、蛍光プローブ。
  2. 前記酸化グラフェン微粒子のアスペクト比が1.0〜1.5である、請求項1に記載の蛍光プローブ。
  3. 前記酸化グラフェン微粒子の長径(b)が0.5〜30nmである、請求項1または2に記載の蛍光プローブ。
  4. 前記酸化グラフェン微粒子の長径(b)の変動係数が20%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の蛍光プローブ。
  5. 前記標的指向性リガンドが、抗体またはその親和性物質、細胞膜親和性物質、ウイルス細胞認識部位、親油性トレーサー、複製機能のないウイルス粒子、細胞小器官親和性物質、葉酸、トランスフェリン、トランスフェリン結合型ペプチド、および、糖鎖と結合性を有するタンパク質からなる群から選択される1種または2種以上の分子である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の蛍光プローブ。
  6. 水または緩衝液を分散媒とする分散液の形態である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の蛍光プローブ。
  7. 孔内のサイズが制御されたメソポーラスシリカを鋳型として用い、原料炭素化合物を300℃以上の温度で焼結させて、結晶性を有する酸化グラフェン微粒子を得る工程と、
    前記酸化グラフェン微粒子に標的指向性リガンドを共有結合を介して結合させて蛍光プローブを得る工程と、
    を含む、蛍光プローブの製造方法。
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