JP2016210653A - 脆性材料の切断装置、脆性材料の切断方法及び切断脆性材料の製造方法 - Google Patents

脆性材料の切断装置、脆性材料の切断方法及び切断脆性材料の製造方法 Download PDF

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宏幸 多門
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Abstract

【課題】折り割り工程を経ることなく、厚みのある場合であっても、搬送を停止させずにフルボディ切断することができる脆性材料の切断装置及び脆性材料の切断方法を提供する。
【解決手段】本発明は、脆性材料2を搬送する搬送機構20と、前記搬送機構20により搬送される前記脆性材料2が通過する領域に対して、前記脆性材料2の搬送方向Xと垂直な方向Yに赤外線をライン状に集光照射する赤外線ラインヒータ10と、前記赤外線ラインヒータ10を、前記搬送機構20による前記脆性材料2の搬送と同方向に且つ同速度で移動させるヒータ移動機構30と、を備える脆性材料2の切断装置1を提供する。
【選択図】図1

Description

本発明は、脆性材料の切断装置、脆性材料の切断方法及び切断脆性材料の製造方法に関するものである。
従来、一定方向に搬送される板ガラス等の脆性材料を切断する装置として、板ガラスの幅方向にレーザを照射し、予備亀裂を入れる方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
この装置は、レーザを板ガラスに照射しつつ、板ガラスの搬送速度に合わせて搬送方向下流側に傾いた方向にレーザ発生装置を移動させることにより、板ガラス上に搬送方向と垂直な幅方向に切断線を形成する。その後、板ガラスに曲げモーメントを加えることで、板ガラスを切断線に沿って折り割るものである。
しかし、曲げモーメントを加えて折り割る方法は、折り割り時にガラス同士が接触し「キリコ」と呼ばれる小破片が発生し、切断した板ガラスの表面や切断面を汚染する。また、折り割りによって、切断面に「マイクロクラック」と呼ばれる無数の微小な傷が発生し、切断した板ガラスの機械的な強度が低下する。
さらに、主にビル用などに使用される、厚板ガラス(例えば、板厚で15mmを超えるようなもの)では、折り割り時に、切断予定線上に均等な曲げ応力が加えにくく、「そげ」、「角」、「切り口のかけ」、「はま欠け」、「逃げ」などのJIS R3202に記載されるような切り口欠点が生じやすい。
このため、例えば同じくレーザを用いて、板ガラスをフルボディ切断する技術もある(特許文献2参照)
特開平8−231239号公報 特許4179314号公報
特許文献2によれば、2.8mmの無アルカリガラスの切断に必要なレーザ出力は200Wである。しかし、板ガラスの厚みが厚くなると200Wよりも高出力のレーザが必要となり、そのようなレーザを用意することは技術的に困難である。
本発明は、折り割り工程を経ることなく、厚みのある場合であっても、搬送を停止させずにフルボディ切断することができる脆性材料の切断装置、脆性材料の切断方法及び切断脆性材料の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、脆性材料をある程度透過する波長域帯の光を発光し、レーザに比べ高出力化が容易な近赤外線ラインヒータによる脆性材料の熱処理を研究する過程で、近赤外線を、脆性材料上にライン状に集光させることにより、脆性材料を折り割り工程を経ることなくフルボディ切断可能であることを見出した。
すなわち、本発明の一形態によると、脆性材料(2)を搬送する搬送機構(20)と、前記搬送機構(20)により搬送される前記脆性材料(2)が通過する領域に対して、前記脆性材料(2)の搬送方向(X)と垂直な方向(Y)に赤外線をライン状に集光照射する赤外線ラインヒータ(10)と、前記赤外線ラインヒータ(10)を、前記搬送機構(20)による前記脆性材料(2)の搬送と同方向に且つ同速度で移動させるヒータ移動機構(30)と、を備える脆性材料(2)の切断装置(1)を提供する。
上述の切断装置(1)でおいて、前記ヒータ移動機構(30)は、前記赤外線ラインヒータ(10)を、前記搬送機構(20)による前記脆性材料(2)の搬送と逆方向に前記赤外線ラインヒータ(10)を移動可能であってもよい。
本発明は、上述の切断装置(1)であって、前記赤外線ラインヒータ(10)により照射される赤外線のラインの長さは、前記搬送機構(20)により搬送される脆性材料(2)の幅以上であってもよい。
上述の切断装置(1)において、前記赤外線ラインヒータ(10)は、前記脆性材料(2)の搬送方向(X)と垂直な方向(Y)に、複数台連結されていてもよい。
上述の切断装置(1)において、前記脆性材料(2)は、ガラス板またはアルミナ基板であってもよい。
上述の切断装置(1)において、前記脆性材料(2)は、ガラスリボンであってもよい。
上述の切断装置(1)において、前記脆性材料(2)は、幅方向端部が、前記脆性材料(2)の切断予想ラインに沿って加傷されていてもよい。
本発明の他の形態によると、搬送機構(20)により搬送される脆性材料(2)に対して、赤外線ラインヒータ(10)により、前記脆性材料(2)の搬送方向(X)と垂直な方向(Y)に赤外線をライン状に集光照射しつつ、前記搬送機構(20)による前記脆性材料(2)の搬送と同方向且つ同速度で移動させる脆性材料(2)の切断方法を提供する。
本発明の他の形態によると、搬送機構により搬送される脆性材料に対して、赤外線ラインヒータにより、前記脆性材料の搬送方向と垂直な方向に赤外線をライン状に集光照射しつつ、前記搬送機構による前記脆性材料の搬送と同方向且つ同速度で移動させる脆性材料の切断工程を含む、切断脆性材料の製造方法を提供する。
上記製造方法において、前記脆性材料(2)はガラスリボンであってもよい。
本発明によれば、折り割り工程を経ることなく、厚みのある場合であっても、搬送を停止させずにフルボディ切断することができる脆性材料の切断装置及び脆性材料の切断方法を提供することができる。
ガラス切断装置の概略図であり、ガラスが搬送されている状態を示す。 ガラス切断装置の赤外線ラインヒータを説明する図である。 ガラス切断装置の動作を示すフローチャートである。 実際に測定したガラス内の板厚方向のYZ断面の温度分布の写真であり、(a)はガラスの切断直前の温度分布で、(b)は(a)の0.1秒後のガラスの切断時の温度分布である。 (a)は、ガラスリボン内の温度分布であり、(b)は、(a)の場合にガラス内で発生する応力場を有限要素法で解析して得られた結果である。
以下、本実施形態では、脆性材料として、赤外線を吸収して熱割れする脆性材料であるガラスリボン2を切断し、切断ガラス2´を製造するガラス切断装置1について説明する。
図1はガラス切断装置1の概略図であり、ガラスリボン2が搬送されている状態を示す。
図2はガラス切断装置1の赤外線ラインヒータ10を説明する図である。
以下、赤外線ラインヒータ10の搬送方向をX方向、X方向と垂直且つ水平な方向をY方向、ガラスリボン2の厚さ方向をZ方向として説明する。また、ガラスリボン2のY方向長さをガラスリボン2の幅とする。
(用語の説明)
まず、本明細書において用いる用語について説明する。
本明細書において、「フルボディ切断」とは、物体を2分割することを指す。また、「2分割」は、1本の切断予定線Lに対して2つに分割することを指す。「切断予定線」とは、図1に示すようにガラスリボン2上の切断が行われる予定の個所を指す。
本明細書において、「非接触切断」とは、例えば従来の折り割り工程のように、ガラスに装置や人の手等を接触させ力を加えて切断するような、加熱を除く外力を人為的に加えない切断を指す。
本明細書において、「脆性材料」とは、赤外線を吸収して熱割れを生じる材料を指す。
本明細書において、「ガラスリボン」とは、ガラス原料を溶融した後に板状に成型したものを指す。このガラスリボンを幅方向に切断する事によって、ガラスリボンから切断部分を分離する。
本明細書において、「切断ガラス」とは、少なくともガラスリボンの状態から切断工程を経て分離されたガラス板を指す。ガラスリボンからの分離後に複数回切断された場合であっても、「切断ガラス」としてよい。
(ガラス切断装置1)
図1に示すように、ガラス切断装置1は、赤外線ラインヒータ10と、ガラスリボン2を搬送方向Xに搬送する搬送機構20と、赤外線ラインヒータ10を搬送方向Xに搬送するヒータ移動機構30と、制御部40と、図示しない赤外線ラインヒータフィラメントを冷却するための循環冷却装置を備える。
(赤外線ラインヒータ10)
赤外線ラインヒータ10は、図2に示すように、筐体11と、筐体11の中に配置された赤外線ランプ12と、赤外線ランプ12の外周に配置された集光部13とを備える。
(筐体11)
筐体11は、長方形の箱型であり下面が開口し、筐体11の内部に赤外線ランプ12と集光部13とが保持されている。
(集光部13)
集光部13としては、例えば反射鏡が用いられる。反射鏡は、矩形の板部材を湾曲させた凹面鏡である。
楕円の第一の焦点に赤外線ランプ12が配置され、楕円の長軸(二焦点通る線分と一致)は赤外線ランプ12から放射される赤外線の照射軸と一致している。
赤外線ランプ12から発する赤外線光を無駄なく集光するために、反射鏡の長さは、赤外線ランプ12よりも長いものを使用するのが好ましい。また、反射鏡表面を金メッキ処理すると反射率が向上し、より赤外線光を無駄なく集光することができる。
なお、集光部13としては、反射鏡に限定されず、シリンドリカルレンズ等の各種レンズを用いてもよい。シリンドリカルレンズを用いる場合は、赤外線ランプ12とガラスリボン2との間に設置する。
また、集光部13を用いて赤外線を集光する際、フルボディ切断の精度を上げるために焦点における集光幅を狭くするのが好ましい。本実施形態においては、集光幅は3mmである。また、さらに集光幅を狭くさせるため、図示しない遮光スリットを用いてもよい。
(赤外線ランプ12)
赤外線ランプ12が発生する赤外線としては、近赤外線、中赤外線、遠赤外線等が挙げられるが、赤外線のピーク波長の領域が780〜2500nmである近赤外線が好ましい。
その理由は、建築用に用いられる板ガラスであるソーダライムシリケートガラスは、近赤外線領域において透過率が約30〜85%であり、他の領域の赤外線と比べて透過性及び吸収性が高いからである。
すなわち、近赤外線を用いた場合、ガラスリボン2の厚み方向において、ガラス表面から裏面に亘る全板厚で赤外線の吸収が可能で、より効果的に短時間で切断することが可能となる。
このため、ガラスリボン2の全板厚方向に好適な温度分布を板幅の範囲に形成することが可能となり、切り口に欠陥のない良好な切断面を得ることができる。
本実施形態において、赤外線ランプ12は、ガラスリボン2の幅と同じ又はそれよりも長いものを用いる。しかし、赤外線ランプ12はガラスリボン2の幅より多少短くてもよい。例えば、ガラスリボン2のそれぞれの両端よりも約5cm短くてもガラスリボン2の切断は可能である。
また、赤外線ランプ12の長さがガラスリボン2の幅よりかなり短い場合、複数の赤外線ラインヒータ10をガラスリボン2の幅方向に直列に連結してもよい。2以上の赤外線ラインヒータ10を連結する場合、赤外線ランプ12同士は極力近付けるのが好ましいが、切断に影響のない程度であれば赤外線ランプ12間の距離が開いていてもよい。当該距離は、例えば2cm程度開いていた場合であっても、ガラスリボン2の切断において支障は生じない。
なお、本実施形態では赤外線ラインヒータ10はガラスリボン2の上側に設置したが、これに限らず、赤外線ラインヒータ10を搬送機構20の下側に設けることも、上下両側に設置することも可能である。
(循環冷却装置50)
また、本実施形態のガラス切断装置1は、図1に示すように循環冷却装置50を備える。循環冷却装置50は、循環水ポンプ51と、循環水タンク52と、給水管53と、排水管54とを備える。循環冷却装置50は、さらに、図2に示すように赤外線ラインヒータ10の筐体11の内部に、循環水が流れる流路55を備える。流路55の一端には給水管53が取り付けられ、他端には配水管54が取り付けられている。
循環水ポンプ51は、循環水タンク52から循環水を給水し、給水管53をから流路55へと循環水を送り出す。循環水は、流路55を流れることにより赤外線ラインヒータフィラメントを冷却し、排水管54より循環水タンク52へ排水される。
赤外線ラインヒータフィラメントの発熱が過ぎると、ランプの寿命を短くしたり、装置の故障等の原因となるが、本実施形態によると、循環冷却装置50が設けられているため、赤外線ラインヒータフィラメントの過度の発熱を抑制することができる。
なお、循環冷却装置は、赤外線ラインヒータフィラメントを冷やす事が出来ればよく、本実施形態に限らず、他の既存のものであっても良く、例えば風冷装置等であってもよい。
(搬送機構20)
搬送機構20としては、これに限定されるものではないが、本実施形態では、回転ローラ21の間に輪状の幅広のベルト22を架け渡したベルト搬送台20を用いる。
ベルト22は、赤外線に曝されることから、耐熱性の部材を用いるのが好ましい。また、ガラスリボン2の切断される部分と接する面にグラスウール等の断熱材を設置することで赤外線による搬送機構の直接加熱を防止するようにしてもよい。また、回転ローラ21を連続させてガラスリボン2を搬送するようにしてもよい。
(ヒータ移動機構30)
ヒータ移動機構30は、赤外線ラインヒータ10を支持する支持フレーム31と、支持フレーム31を移動する移動部32(32A,32B)とを備える。
支持フレーム31は、赤外線ラインヒータ10の筐体11の背面に一端が取り付けられて垂直方向に延びる2本の棒状の垂直部31aと、その垂直部31aの他端が固定されるとともにガラスリボン2の幅方向に延びる棒状の水平部31bと、を備える。
移動部32は、搬送機構20の幅方向の両側にそれぞれ配置された一対の第1移動部32Aと第2移動部32Bとを備える。
第1移動部32Aと第2移動部32Bとは同様の構成を有するので、以下、区別して説明する必要がある場合以外、移動部32として説明する。
移動部32は、それぞれ、固定台33と、固定台33から上方に延びる2本の支柱34と、支柱34の間に配置されるとともに搬送方向Xと平行に延びるレール35と、レール35に沿って移動するスライダ36とを備える。
スライダ36は、レール35の移動開始位置Sと移動終了位置Eとの間を往復移動可能である。第1移動部32Aのスライダ36Aと第2移動部32Bのスライダ36Bの往復移動は、同時且つ同様に行われる。
支持フレーム31の水平部31bの両端は、両側のスライダ36A,36Bの間に架け渡されている。レール35に沿ってスライダ36が搬送方向Xに往復移動すると、水平部31b、すなわち支持フレーム31も往復移動し、支持フレーム31に固定された赤外線ラインヒータ10も往復移動する。
(制御部40)
制御部40は、搬送機構20、ヒータ移動機構30、循環水ポンプ51及び赤外線ラインヒータ10の動作を制御する。
制御部40には、操作部41が設けられており、作業者が操作部41を操作することにより、搬送機構20の搬送開始、停止及び速度調整、ヒータ移動機構30の駆動による赤外線ラインヒータ10の搬送方向Xの往復移動、赤外線ラインヒータ10のオンオフ等が行われる。
(ガラスリボン2)
ガラス切断装置1の切断対象の脆性材料はガラスリボン2である。
ガラスリボン2の材料としては、赤外線光を吸収するガラスであれば特に限定するものではないが、例えばソーダライムガラス、石英ガラス、ホウ珪酸ガラス、アルミノシリケートガラス等が挙げられる。なお、上記のガラスの他にも、赤外線光を吸収し、熱割れを生じる材料であればガラス同様に切断可能である。例えばアルミナ板等のセラミックス材料の板が挙げられる。
本実施形態において切断するガラスリボン2は、一般的な建築用板ガラス(例えばJIS R3202に記載の板ガラス)として用いられる、厚み2mm以上、25mm以下の板状のガラスリボン2である。ただし、この厚みに限定されるものではない。また、板幅は本実施形態では約3mであるが、板幅もこれに限定されるものではない。
ガラスリボン2は、例えばフロート法で製造される。フロート法では、溶解窯でガラス原料を溶融して溶融ガラスとし、溶融ガラスを溶融スズ浴槽上に流し出す事によって、溶融ガラスを溶融スズ表面に平面状に広げて成型し、板状のガラスリボンとする。一般的にガラスはスズより軽いので、溶融ガラスやガラスリボンが溶融スズ上に浮いた状態になる。次に、溶融窯と反対方向からガラスリボンを引き出して徐々に冷却を行う。この時、引き出す速度によってガラスリボンの厚みを調節する事が出来る。厚みは溶融スズ上に流し出す溶融ガラスの量との兼ね合いで決まるが、例えば、引き出す速度が遅いとガラスリボンの厚みが厚くなり、速いとガラスリボンの厚みが薄くなる。また、上記の冷却後、赤外線ラインヒータ10の照射直前のガラスリボン2の表面温度が50〜60℃以下程度で、切断を行うことが可能である。なお、切断直前の温度はこれに限らず、歪点から−100℃以下程度であれば、切断可能だと考えられる。冷却を終えた後、本実施形態のガラス切断装置1にて所望の長さに切断され、切断ガラス2′となる。
(ガラス切断装置1の動作)
図3は、ガラス切断装置1の動作を示すフローチャートである。
作業者の操作部41の操作により、ガラス切断装置1のスイッチがONになる(ステップS1)と、制御部40は、搬送機構20の駆動を開始する(ステップS2)。
搬送機構20の駆動により、搬送方向Xの上流方向よりガラスリボン2が搬送される。ガラスリボン2は、搬送方向Xに連続する長い板である。
ガラスリボン2の搬送速度Vは、上述したフロート法を用いて成型したガラスリボン2を切断する際は、ガラスリボン2の厚さを所望なものとする為に、ある程度決まった速度にせざるを得ず、自由に変更するのは難しい。ただし、上記のようなガラスリボン2を用いるのでなければ、これに限定されるわけではない。
スライダ36は、レール35上の図1に示す移動開始位置Sに配置されている。図1に示すように、この状態での赤外線ラインヒータ10による赤外線照射位置を位置S’とする。
制御部40は、ガラス2が搬送機構20上を搬送され、位置S’に、ガラスリボン2の切断予定線Lが到達したとき、赤外線ラインヒータ10の赤外線照射を開始する(ステップS3)。
そして、それと同時にスライダ36のレール35に沿った移動を開始する。スライダ36の移動速度は、ガラスリボン2の搬送速度Vと同じであるので、スライダ36間の支持フレーム31に支持されている赤外線ラインヒータ10も、ガラスリボン2の搬送速度Vと同じ速度で搬送方向Xに移動を開始する(ステップS4)。
なお、切断予定線Lが位置S’に到達したかどうかの判断方法は、特に限定されない。
例えば、ガラスリボン2の先端を検知するセンサを配置し、ガラスリボン2の先端を検知した時間から、所望のガラス長さM,搬送速度Vとしたときに、M/Vとなる時間が経過したときに、切断予定線Lが位置S’に到達したと判断してもよい。
また、例えばガラスリボン2上に集光の効率を上げるために、切断予定線L上に例えば黒色ペン等により赤外線吸収層を形成してもよく、このように引かれたラインを検出する検出部を設けてもよい。そしてこの検出部により切断予定線Lが位置S’に到達したかどうかの判断をしてもよい。なお、赤外線吸収層は集光幅以下とするのが好ましい。
また、上述したように、フロート法を用いて成型したガラスリボン2の場合は、ガラスリボン2の搬送速度Vは大きく変動しない為、一定間隔を開けて切断を開始させるように予め設定するのでもよい。
また、切断時間の短縮や、切断を安定化させる目的で、ガラスリボン2の端部表面又は断面にカッターや砥石等で予め傷を入れたり、端部の強度を低下させてもよい。特に、切断予定線L上の片側のみ端部表面や断面等に傷を入れておくことで、初期亀裂の発生位置を制御することが可能であるため好ましい。このようにガラスリボン2の端部に傷を入れたとしても、幅方向に切断された後の切断ガラス2′は、通常この後に端部から数mm幅を切断(=耳切り)するため、最終製品には何ら影響がない。なお、「耳切り」とは、切断ガラス2′の端部のX方向の切断であり、製造過程で品質を上げることを目的として行われる手法である。
ここで、ガラスリボン2と赤外線ラインヒータ10は同じ速度で移動するので、両者の相対速度はゼロであり、赤外線ラインヒータ10は、搬送されるガラスリボン2上の切断予定線Lを照射し続ける。
赤外線ラインヒータ10は、時間tの間、ガラスリボン2とともに移動する。この時間tは、ガラスリボン2が切断されるため十分な時間である。例えば、ガラスリボン2が20〜30秒ほど赤外線を照射した場合に切断されるとすると、ガラスリボン2とともに移動する時間tはそれ以上の、例えば35〜60秒程度が好ましい。切断速度を速くする場合には、赤外線ランプ12の単位長さあたりの出力を上げることで適宜対応可能である。
赤外線ラインヒータ10が、ガラスリボン2の切断予定線Lに赤外線を照射すると、ガラスリボン2への赤外線照射の開始から20〜30秒ほど、初期亀裂が発生してからは1〜2秒程度でガラスリボン2は全幅に亘ってフルボディ切断される。このフルボディ切断は、折り割り工程を経ておらず、切断の全工程において非接触切断が可能である。
そして、ガラスリボン2の切断が終了し、スライダ36が移動終了位置Eに来たとき、制御部40は、赤外線ラインヒータ10をOFFにする(ステップS5)。また、連続して稼動させる場合は、必ずしもOFFにする必要はなく、例えば該赤外線ラインヒータ10とガラスリボン2との距離が焦点距離より長くなるように、赤外線ラインヒータ10を上昇させる事によって、意図しない切断を抑制するものでもよい。
制御部40は、スライダ36を搬送方向Xと逆方向に移動し、スライダ36を移動開始位置Sに戻す(ステップS6)。この時、逆方向への移動速度はガラスリボン2の搬送速度Vと異なってもよく、所望の速度にすればよいが、搬送速度Vより速い方が生産性や作業性等を考慮すると好ましい。制御部40は、作業者が操作部41を操作してガラス切断装置1のスイッチをオフにしない限り、ステップS3に戻る。
本実施形態のように、折り割り工程を経ることなく非接触でガラスリボン2をフルボディ切断できる原理については以下のように考える。
赤外線ラインヒータ10の集光照射によって、ガラスリボン2が局所的に加熱され、ガラスリボン2に温度分布が発生する。
図4は実際に測定したガラスリボン2内の板厚方向のYZ断面の温度分布の写真である。(a)はガラスリボン2の切断直前の温度分布で、(b)は(a)の0.1秒後のガラスリボン2の切断時の温度分布である。
また、図5(a)は、赤外線ラインヒータ10よって加熱されたガラスリボン2内で発生した温度分布であり、図5(b)は、図5(a)の温度分布が生じた時に、ガラスリボン2内で発生する応力場を、有限要素法(FEM)にて3次元解析して得られた結果である。
図4(a)及び図5(a)に示すように、赤外線ラインヒータ10よって加熱されたガラスリボン2内には、温度勾配が発生する。この温度勾配により、図5(b)に示すように、切断予定線L上のエッジの表層および下層に、30〜34MPa程度の引っ張り応力が、X軸方向へ誘起される。また、エッジの表層および下層の他にも、切断予定線L上のガラスリボン2の表面および裏面に10〜20MPa程度の引っ張り応力が誘起される。
このエッジ部分の引っ張り応力が、ガラスリボン2の破壊強度を超えると、切断予定線L上のガラスリボン2の端部に初期亀裂が発生し、該初期亀裂の発生と同時に亀裂がガラスリボン2の全幅方向へ進展し、フルボディ切断を生じる。この初期亀裂の進展は、前述したように予めガラスリボン2の切断予定線の表面および裏面に引っ張り応力が誘起されている事に起因して生じると考えられる。通常のガラスリボン2であれば、初期亀裂の発生と同時に、大きな遅延なく上記の亀裂の進展が生じると予想される。
以上、本実施形態によると以下の効果を有する。
(1)ガラスリボン2は、材料の溶融、板状への成形を経て製造される。本実施形態の場合、搬送を停止することなく、所望の長さにガラスリボン2を切断し、切断ガラス2′を得ることが可能である。したがって、材料の溶融、板状への成形、所望長さへの切断を一つのラインで行うことができ、製造効率がよい。
(2)ガラスリボン2を切断予定線L上の表面を傷つけることなく、ガラスリボン2と非接触でフルボディ切断によって分割することができる。そして、厚板ガラスであっても切断可能である。
(3)さらに、本実施形態によれば、折り割り工程がなく、ガラスリボン2を切断する際に切断ガラス2′の切断面とガラスリボン2の切断面とが触れることが無いため、切断ガラス2′の切断面に、「マイクロクラック」の発生が無く、エッジ強度の低下を抑制することができる。
(4)切断によってカレットが発生しないため、切断面及び切断ガラス2′の表面に「キリコ」の付着を無くすことが可能である。また、「キリコ」が無いためガラス面内キズも低減することができる。
(5)また、本実施形態により、切り口欠陥(「そげ」、「角」、「切り口のかけ」、「はま欠け」、「逃げ」など)のない切断面を得ることが可能である。
(変形形態)
また、本実施形態では、脆性材料としてガラスリボン2を用いたが、これに限らず、既に一度ガラスリボン2から分離された切断ガラスを所望のサイズに分割してもよい。この場合、該切断ガラスの搬送速度Vは切断装置より上流の工程の影響を受け難いので、自在に搬送速度Vを変更する事が可能である。
1:ガラス切断装置、2:ガラスリボン、2′:切断ガラス、10:赤外線ラインヒータ、20:ベルト搬送台、20:搬送機構、30:ヒータ移動機構、35:レール、36:スライダ、36A:スライダ、36B:スライダ、40:制御部、41:操作部、50:循環冷却装置

Claims (10)

  1. 脆性材料を搬送する搬送機構と、
    前記搬送機構により搬送される前記脆性材料が通過する領域に対して、前記脆性材料の搬送方向と垂直な方向に赤外線をライン状に集光照射する赤外線ラインヒータと、
    前記赤外線ラインヒータを、前記搬送機構による前記脆性材料の搬送と同方向に且つ同速度で移動させるヒータ移動機構と、
    を備える脆性材料の切断装置。
  2. 請求項1に記載の切断装置において、
    前記ヒータ移動機構は、前記赤外線ラインヒータを、前記搬送機構による前記脆性材料の搬送と逆方向に前記赤外線ラインヒータを移動可能であること、
    を特徴とする脆性材料の切断装置。
  3. 請求項1または2に記載の切断装置において、
    前記赤外線ラインヒータにより照射される赤外線のラインの長さは、前記搬送機構により搬送される脆性材料の幅以上であること、
    を特徴とする脆性材料の切断装置。
  4. 請求項1または2に記載の切断装置において、
    前記赤外線ラインヒータは、前記脆性材料の搬送方向と垂直な方向に、複数台連結されていること、
    を特徴とする脆性材料の切断装置。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載の脆性材料の切断装置において、
    前記脆性材料は、ガラス板またはアルミナ基板であること、
    を特徴とする脆性材料の切断装置。
  6. 請求項1から4のいずれか1項に記載の脆性材料の切断装置において、
    前記脆性材料は、ガラスリボンであること、
    を特徴とする脆性材料の切断装置。
  7. 請求項1から6のいずれか1項に記載の脆性材料の切断装置において、
    前記脆性材料は、幅方向端部の断面または表面が、前記脆性材料の切断予想ラインに沿って加傷されていること、
    を特徴とする脆性材料の切断装置。
  8. 搬送機構により搬送される脆性材料に対して、赤外線ラインヒータにより、前記脆性材料の搬送方向と垂直な方向に赤外線をライン状に集光照射しつつ、前記搬送機構による前記脆性材料の搬送と同方向且つ同速度で移動させる脆性材料の切断方法。
  9. 搬送機構により搬送される脆性材料に対して、赤外線ラインヒータにより、前記脆性材料の搬送方向と垂直な方向に赤外線をライン状に集光照射しつつ、前記搬送機構による前記脆性材料の搬送と同方向且つ同速度で移動させる脆性材料の切断工程を含む、切断脆性材料の製造方法。
  10. 請求項9に記載の製造方法であって、前記脆性材料がガラスリボンであることを特徴とする切断脆性材料の製造方法。
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