JP2016205749A - 潜熱蓄熱材の過冷却解除素子及び過冷却解除装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 従来の潜熱蓄熱材の過冷却解除素子は、潜熱蓄熱材の過冷却解除の信頼性が低いという問題点があった。【解決手段】 過冷却解除素子は、横方向の寸法よりも縦方向の寸法の方が短い1枚の弾性を有する板片を備え、板片の横方向における略中央部位に切り目が形成されている。板片に外力が加えられた場合、板片は、飛び移り座屈によって、潜熱蓄熱材の結晶の種を保持する第1形状から保持した結晶の種を放出する第2形状へと変形し得るように形成されている。また、過冷却解除装置は、過冷却解除素子と過冷却解除素子を駆動するアクチュエータとを備え、過冷却解除素子及びアクチュエータが曲げ可能なワイヤで連結されている。【選択図】 図7
Description
この発明は、潜熱蓄熱材の過冷却解除素子及びそれを用いた過冷却解除装置に関するものである。
液相から固相へ向かって相変化すべき温度以下になっても液相の状態が保たれている過冷却状態の潜熱蓄熱材を用いて熱を取り出す技術が知られている。潜熱蓄熱材の過冷却状態を解除した場合、液状の潜熱蓄熱材は凝固を開始し、凝固熱が放出される。放出によって取り出された熱は、様々な目的の温度管理に使用することが可能となる。
潜熱蓄熱材の凝固を開始させる結晶核の種となる物質が存在した場合、潜熱蓄熱材の凝固が開始され易くなる。そこで、潜熱蓄熱材の過冷却状態を解消するために用いる過冷却解除素子として、結晶核の種となる固相の潜熱蓄熱材を密集させるための手段を具備した弾性材料からなる素子が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この過冷却解除素子は、一対の開放素子材を鋭角状に配置して開放素子を形成し、間に微小空間を形成し、且つその微小空間を小さくする方向に移動可能に形成してある。この過冷却解除素子の構成は、空間を縮小させることによって固相の潜熱蓄熱材を小空間に密集して生じさせ、生じた結晶核の種をトリガとして液状の潜熱蓄熱材の凝固を促し、潜熱蓄熱材の過冷却状態を解除(発核)しようとするものである。
しかしながら、潜熱蓄熱材の過冷却解除を促す程度に結晶核の種を密集させるためには、所定の時間が必要となってくる。また、過冷却解除を促す程度に結晶核の種が密集して既に存在しているか否か、判断することは困難である。そのためこのような従来の過冷却解除素子では、潜熱蓄熱材の過冷却解除に対する信頼性が比較的高くないという問題点があった。
この発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであり、潜熱蓄熱材の凝固を開始させる結晶核の種の供給精度を高め、過冷却状態の潜熱蓄熱材に対する過冷却解除の信頼性を向上させることができる過冷却解除素子及び過冷却解除装置を提供することを目的としている。
この発明に係る過冷却解除素子は、縦方向及び横方向のうちの一方向の寸法が他方向の寸法よりも長い弾性の板片を備え、潜熱蓄熱材の過冷却状態を解除するように構成されている。板片の一方向の中央部位には、他方向に伸び、板片の高さ方向の一方側に開く切り目が形成されている。板片に外力が加えられた場合、板片は切り目を含む一部が飛び移り座屈によって、第1形状から第1形状が反転した形状である第2形状へと変形するように構成してある。切り目の開度は、第1形状の場合よりも第2形状の場合の方が大きい。
この発明に係る過冷却解除装置は、潜熱蓄熱材を保持する容器と縦方向及び横方向のうちの一方向の寸法が他方向の寸法よりも長い弾性の板片を有する過冷却解除素子と過冷却解除素子に外力を加える外力付加機構とを備え、潜熱蓄熱材の過冷却状態を解除するように構成されている。板片の一方向の中央部位には、他方向に伸び、板片の高さ方向の一方側に開く切り目が形成されている。外力付加機構が板片に外力を加えた場合、板片は切り目を含む一部が飛び移り座屈によって、第1形状から第1形状が反転した形状である第2形状へと変形するように構成してある。切り目の開度は、第1形状の場合よりも第2形状の場合の方が大きい。
この発明に係る過冷却解除素子によれば、外力が加えられた場合に飛び移り座屈によって第1形状から第2形状へと一部が変形する板片を備える。第2形状は第1形状を反転させた形状であり、第2形状における切り目の開度は第1形状における切り目の開度よりも大きい。そのため、過冷却解除に係る潜熱蓄熱材の凝固を開始させる結晶核の種を第1形状の切り目の空間内に保持することが可能となり、板片を第2形状に変形させることによってその保持した結晶核の種を過冷却状態の潜熱蓄熱材へと放出することも可能となる。したがって、過冷却状態の潜熱蓄熱材に対する結晶核の種の供給精度が高まり、過冷却状態の潜熱蓄熱材に対する過冷却解除の信頼性を向上させることができる。また、飛び移り座屈可能な形状を有していることによって、第1形状では切り目の空間に圧縮応力が働くことになり、第1形状で保持された結晶核の種となる潜熱蓄熱材を固相の状態として維持し易くなる。したがって、過冷却状態の潜熱蓄熱材に対する結晶核の種の供給精度が更に高まり、過冷却状態の潜熱蓄熱材に対する過冷却解除の信頼性を更に向上させることができる。
以下、添付図面を参照して、本願が開示する過冷却解除素子及び過冷却解除装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は一例であり、これらの実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る過冷却解除素子を示す平面図であり、図2は図1の過冷却解除素子を示す断面正面図であり、図3は図2の過冷却解除素子の切り目を示す拡大断面図であり、図4は図3の過冷却解除素子の変形した切り目を示す拡大断面図である。
図1はこの発明の実施の形態1に係る過冷却解除素子を示す平面図であり、図2は図1の過冷却解除素子を示す断面正面図であり、図3は図2の過冷却解除素子の切り目を示す拡大断面図であり、図4は図3の過冷却解除素子の変形した切り目を示す拡大断面図である。
過冷却解除素子1は、剛性と弾性を有する1枚の板バネを用いて形成された板片11からなり、潜熱蓄熱材の過冷却状態を解除するために用いられる。板片11の材質として、たとえばステンレス鋼の薄板を用いることができる。
本実施の形態で用いる潜熱蓄熱材は、液相から固相へ向かって相変化すべき温度以下になっても相状態が変化せずに液状を保つことができる過冷却型の潜熱蓄熱材であって、例えば、酢酸ナトリウム、パラフィン、エリスリトール等である。
過冷却状態で液状の潜熱蓄熱材に対して結晶核の種が供給された場合、生成した種をトリガとして潜熱蓄熱材が一気に固相へと相変化を開始し、凝固熱が周囲に放出される。例えば、潜熱蓄熱材を車両に搭載した場合には、車両のエンジンが停止中であっても、過冷却解除素子1を用いて潜熱蓄熱材から凝固熱を取り出し、車内温度の上昇に使用することができる。
板片11は、縦方向(図1のy軸方向)の寸法よりも横方向(図1〜4のx軸方向)の寸法が長くなるように形成されている。つまり、板片11は、縦方向及び横方向のうちの一方向である横方向の寸法が他方向である縦方向の寸法よりも長くなるように形成されている。
板片11は、横方向の略中央部位に、縦方向に伸長する切り目12が形成されている。切り目12は、板片11の高さ方向(図2〜4のz軸方向)の一方側(図2〜4の下方側)が開口するように形成されている。縦方向における切り目12の長さは、縦方向における板片11の長さよりも短い。また切り目12には、板片11の横方向の両端から切り目12に向かって、つまり板片11の横方向の両端から図3のx軸方向内向き(板片11の横方向内向き)に圧縮応力が加えられ、撓みが形成されている。この撓みは、板片11の横方向の一方側から切り目12に向かいつつ板片11の高さ方向の他方側へと伸びるように形成された半弧状の第1撓み部位と、板片11の横方向の他方側から切り目12に向かいつつ前述した板片11の高さ方向の他方側へと伸びるように形成された半弧状の第2撓み部位とを含む。第1撓み部位及び第2撓み部位は、切り目12を通過する高さ方向の仮想軸線に対して線対称となっている。つまり板片11は、切り目12を含む一部分が、高さ方向の他方側(図2及び3においては、上方側)へ突出する第1形状となっている。
板片11の第1形状部分は凸面を有しており、高さ方向の他方側(図3の上方側)へ突出する切れ目12の近傍を一方側(図3の下方側)に押し戻すように外力を板片11へ加えた場合、飛び移り座屈によって、板片11の第1形状部分は凹面となるように湾曲した第2形状へと変形する。加える外力を除去した場合、板片11の第2形状部分は、再び最初の第1形状に戻る(自己復帰する)。そのため第2形状は、切り目12を中心として第1形状が反転した形状となっている。また図3及び図4に示してあるように、板片11の高さ方向の一方側(図3においては、下方側)の切り目12の開度は、第1形状の場合よりも飛び移り座屈によって生じた第2形状の場合の方がよりも大きい。
ここで「飛び移り座屈」とは、安定な状態である構成物に外力を加え、加える外力を次第に増加させた場合に、その構成物が不安定な状態となり、加える外力を更に増加させて外力が所定の極値を超えた場合に、大きな撓みを生じる変形が構成物に起こり、構成物が安定な別形状になる現象を言う。
上述したように構成された切り目12の近傍は、第1形状において変形量が大きいが、切り目12の近傍に連続している連続部分は、切り目12の近傍から横方向外向きに離れるほど変形量が小さい。このため第1形状の場合、切り目12の開度が小さくなる方向に圧縮応力が働くことになる。このような第1形状部分を有している板片11に対し、他方側に突出する切り目12を一方側に押し込むような外力を加えた場合、連続部分を変形させる力が増加して、連続部分が変形することになる。この変形に対する復元力が働くため、切り目12を含む一部分は不安定な状態となる。更に外力を加えて外力が所定の極値を超えた場合、第1形状部分が変形して凸面が無くなり、切り目12が一方側にある程度突出する形状へと変形する。この状態では、切り目12に加わる圧縮応力と連続部分に加わる引っ張り応力とが低下し、外力を更に加えずとも切り目12が一方側へ更に突出する形状へと変形が更に自動的に進み、反転した第2形状で安定となり、変形が停止する。このようにして、「飛び移り座屈」が起こると考えられる。
上述したように構成された切り目12の近傍は、第1形状において変形量が大きいが、切り目12の近傍に連続している連続部分は、切り目12の近傍から横方向外向きに離れるほど変形量が小さい。このため第1形状の場合、切り目12の開度が小さくなる方向に圧縮応力が働くことになる。切り目12の近傍が引っ張られる形になって引っ張り応力が生じ、切り目12には圧縮応力が残留する。つまり、圧縮応力が切り目12において内向き方向に集中することになり、切り目12の両側部分が撓むことになる。
上述したように、板片11は、縦方向の寸法よりも横方向の寸法が長くなるように形成されている。この構成は、比較的小さな外力で容易に飛び移り座屈及び自己復帰を引き起こせるようにすべく採用してある。そのため、縦方向の短い寸法と横方向の長い寸法との比率は、飛び移り座屈及び自己復帰を引き起こし易い比率であれば特に限定されることはない。
上述したように、縦方向における切り目12の長さは、縦方向における板片11の長さよりも短い。切り目12の縦方向の長さは、後述する飛び移り座屈及び自己復帰が生じ得るのであれば、例えば板片11の縦方向の長さの半分以上としてもよい。
外力を加えない状態でも第2形状が安定である場合には、第1形状に戻すために、高さ方向の一方側(図3の下方側)へ突出する切れ目12の近傍を他方側(図3の上方側)に押し戻すように外力を板片11へ加える必要がある。しかしながら、切り目12の変形量と切り目12が存在しない端部の変形量とを調整することによって、外力が加わった状態では安定であるが外力を除くと不安定な第2形状となるように板片11の切り目12を含む一部分を形成してある。そのため、外力を除くことで第2形状から第1形状に戻る(自己復帰する)ことが可能であり、一方向の外力の調整のみで第1形状と第2形状との変形の繰り返しを実現することができる。
切り目12を備えた板片11は、例えば、プレス加工によって形成することができる。特に切り目12は、例えば、タガネのような刃を用い、板片11の高さ方向の一方側(図2においては、下方側)から他方側(図2においては、上方側)に向けたプレス圧力を調整することによって形成することができる。
過冷却解除素子1を用いた過冷却解除の方法について説明する。まず、固相の潜熱蓄熱材の中に過冷却解除素子1を配置する。配置した過冷却解除素子1に外力を加え、過冷却解除素子1の板片11の一部を切り目12の開度が第1形状よりも大きい第2形状にする。その後、過冷却解除素子1に加える外力を除去する。過冷却解除素子1の板片11は、自己復帰能力を備えているため、外力の除去によってその一部が最初の撓み状態(つまり第1形状の状態)に戻る。この操作によって、過冷却解除素子1の切り目12には、潜熱蓄熱材の凝固を開始させる結晶核の種が取り込まれて保持される。具体的には、切り目12の両側に微視的な凹凸が存在するため、第1形状となった板片11の一部が有する切り目12には、外界と隔絶して固相の潜熱蓄熱材を閉じ込めることができる箇所が生じる。潜熱蓄熱材の凝固を開始させる結晶核の種を取り込むに際し、この操作は、少なくとも1回行えばよい。
結晶核の種を取り込んだ第1形状の過冷却解除素子1を固相の潜熱蓄熱材の中へ入れ、過冷却解除素子1の周囲にある固相の潜熱蓄熱材を融点以上に加熱する。これにより、過冷却解除素子1の周囲にある潜熱蓄熱材は溶融する。
一方、結晶核の種として過冷却解除素子1の切り目12に取り込まれる潜熱蓄熱材には、飛び移り座屈によって第2形状へと変形し得る第1形状の撓みにより、高い圧縮応力が加わっている。そのため、切り目12に取り込まれた結晶核の種となる潜熱蓄熱材の融点は上昇する。したがって、取り込まれた潜熱蓄熱材は、過冷却解除素子1の周囲にある圧縮応力を受けていない潜熱蓄熱材が溶融する温度に至っても、固相のまま維持され得る。以上の理由により、過冷却状態の潜熱蓄熱材に対する結晶核の種の供給精度が更に高まることになり、過冷却状態の潜熱蓄熱材に対する過冷却解除の信頼性を更に向上させることができる。
高圧下で融点が上昇することは、クラペイロンの式により知られている。すなわち、固相の潜熱蓄熱材に配置した過冷却解除素子1に外力を加えて板片11の一部を第1形状から第2形状へと若干変形させた状態(切り目12が少し開いた状態)の場合、潜熱蓄熱材は大気圧を受けることになり、切り目12に取り込まれて第1形状の切り目12の空間に保持された場合、潜熱蓄熱材は圧縮応力を受けることになり、圧力との圧力変化ΔPと融点Tmpの温度変化ΔTとの間には、下記の式(1)に示すクラペイロンの式が成り立つ。
上記の式(1)において、ΔTは温度変化、ΔPは圧力変化、Tmpは融点、Vsは固相比体積、Vlは液相比体積、Lは潜熱である。
上記の式(1)における圧力変化ΔPと融点Tmpの温度変化ΔTとの関係は、例えば、図5に示されている。潜熱蓄熱材の融点TmpにΔTを加えた温度で加熱して過冷却解除素子1の周囲にある潜熱蓄熱材を溶融させる場合、第1形状の切り目12に取り込まれて圧縮応力を受けることになる潜熱蓄熱材を固相のまま保持できるようにするため、取り込まれた潜熱蓄熱材に対し温度上昇ΔTに対応する圧力変化ΔP以上の圧縮応力が加わるような切り目12を板片11に形成すればよい。
圧縮応力は、厳密に考えた場合ΔPと大気圧との和である。しかしながら、ΔPは大気圧よりもはるかに大きいので、圧縮応力をΔPであると近似して考えてよい。例えば、潜熱蓄熱材を酢酸ナトリウム3水和塩とし、ΔTを42Kとした場合(大気圧での溶融温度58℃に42Kを加えて、100℃で加熱する場合に相当)、必要圧力変化ΔPは、約0.4GPaとなる。
図6は、板片11の板厚に関して厚板(高さ方向である厚み:約0.5mm)、薄板(高さ方向である厚み:約0.1mm)、厚板と薄板の中間である中板(高さ方向である厚み:約0.3mm)とした場合について、切り目12の撓みの程度をその曲率半径ρで表し、曲率半径ρと圧縮応力σとの関係を示したものである。
板片11はばね鋼から構成されており、図5から、必要圧縮応力を得るための板厚と曲率半径とが求められる。いずれの板厚の場合も、曲率半径ρが数十mm程度以下で必要圧縮応力が得られる。これらの板厚及び曲率半径の値は、実用に供することが可能な値である。
過冷却解除の動作について以下に説明する。過冷却解除素子1の周囲にあって高温となった潜熱蓄熱材は、一般には自然冷却され、凝固点以下の温度でも液状を保った過冷却状態になる。この過冷却状態である潜熱蓄熱材に対して過冷却解除を行い、潜熱の取り出しを行う。
過冷却の解除を行うに際し、過冷却状態の潜熱蓄熱材中に配置した過冷却解除素子1に外力を加え、板片11の一部を第1形状から第2形状へと変形させる。この外力を加える方法としては、作業者の指で過冷却解除素子1に外力を加える方法、または、アクチュエータを用いて過冷却解除素子1に外力を加える方法などが考えられる。
過冷却解除素子1に外力を加え、切り目12の撓みを押し戻すように板片11の一部を変形させた場合、つまり、過冷却解除素子1に外力を加えて板片11の一部を第1形状から第2形状へと変形させた場合、切り目12に閉じ込められていた結晶核の種が切り目12から放出される。放出された結晶核の種は、過冷却解除素子1の周囲にある過冷却状態で液状の潜熱蓄熱材と接触する。過冷却状態の潜熱蓄熱材が結晶核の種と接触した場合、過冷却の解除が行われ、凝固が開始され、凝固熱が放出されることになる。
潜熱蓄熱材の過冷却解除(発核)を行うにあたり、ハンマーで潜熱蓄熱材を叩く等の物理的刺激又は潜熱蓄熱材に電圧を印加する等の電気的刺激を使用する方法も知られている。しかしながら上で説明したように、本発明では、飛び移り座屈を引き起こす程度の外力を板片11に与えるだけで潜熱蓄熱材の凝固を開始させる結晶核の種を放出し得る。そのため、物理的刺激または電気的刺激を用いた方法と比べて、本発明の方法はより容易で確実に過冷却を解除する方法となる。
特許文献1の過冷却解除素子にあっては、過冷却状態にある潜熱蓄熱材の発核を誘発できる程度に空間を縮小させるために、大きな押圧力を空間に加える装置が必要であり、装置が複雑化するという問題点があった。しかしながら、実施の形態1の過冷却解除素子1にあっては、横方向の長さが縦方向の長さよりも長い板バネ材の板片11を用い、板片11には縦方向に伸長する切り目12が形成してあり、板片11はその切り目12を含む部分が突出するという単純な構造である。このため、比較的小さな外力を加えることによっても飛び移り座屈による変形を容易に生じさせて結晶核の種を放出することが可能となり、過冷却状態にある潜熱蓄熱材の発核に必要な装置の複雑化を抑制することができる。
第2形状となった板片11の一部は、加える外力を除去した場合、自己復帰能力により第1形状へと復帰する。そのため、第2形状から第1形状へと変形させるために外力を新たに加える必要がなく、装置の複雑化を更に抑制することができる。
実施の形態1では、飛び移り座屈に必要な外力を小さくするために、板片11における中央部分に切り目12が形成された構成について説明したが、飛び移り座屈が生じるのであれば、切り目12の位置はこの位置でなくてもよい。また、飛び移り座屈の生じ易さを考慮し、板片11に一つの切り目12が形成された構成について説明したが、飛び移り座屈が生じるのであれば、切り目12を並べて複数個配置してもよい。
切り目12は、自己復帰可能に撓んでいる構成について説明したが、自己復帰可能でなくてもよい。この場合には、第2形状から第1形状へと戻るよう、板片11へ外力を加えるようにすればよい。
板片11について、一例として短冊状の板片11を図示したが、板片11の形状は短冊状に限定されない。板片11は、例えば、楕円形状等の他の形状であってもよい。
切り目12の長さに比べて数倍(たとえば2倍)以上切り目12から離れた板片11の離隔部分は、第1形状及び第2形状間の変形に対する影響が小さい。そのため板片11は、その離隔部分で縦方向の長さが大きくなるように形成してもよい。その場合、切り目12の周辺部分では縦方向の長さが比較的小さくなり、切り目12から離れた板片11の離隔部分では縦方向の長さが比較的大きくななる。このような板片11では、切り目12の周辺部分のみを過冷却解除素子1の板片と見なすことができる。
幅広の板片11を用い、その板片11の内部に複数のスリットを形成し、それらのスリットで挟まれた細長の部分に切り目12を形成したような素子も、過冷却解除素子1として使用することができる。このような形状の板片11を備える場合には、スリットで挟まれた間の部分を過冷却解除素子1の板片11と見なすことができる。
板片11について、横方向及び縦方向を用いて一方向が長手である形状であることを説明したが、板片11における長手方向の略中央部位に、概ね長手方向と直交する方向に伸びる切り目12が形成されていればよい。板片11の長手方向の寸法が十分に長ければ、切り目12は必ずしも略中央部位に形成されてなくともよく、略中央部位から少し離れた部位に形成されていても良い。
過冷却解除素子1の横方向の両端部でない左右2箇所の中間部を保持した状態で切り目12を含んだ部分に外力を加える場合、保持した両中間部の間における概ね中央付近に切り目12が形成されていればよい。この場合には、切り目12からみて保持した各中間部より遠方となる遠方部は切り目12の変形に大きく影響しないため、保持した両中間部の間にある過冷却解除素子1(板片11)の部分を過冷却解除素子1(板片11)と見なすことができる。
実施の形態2.
図7はこの発明の実施の形態2に係る過冷却解除装置を示す構成図である。過冷却解除装置は、実施の形態1に係る過冷却解除素子1と、潜熱蓄熱材2を保持する容器3と、蓄熱材が外部に漏出することを防止するシール機構4と、容器3の外部から過冷却解除素子1に外力を加える外力付加機構であるアクチュエータ51とを備えている。
図7はこの発明の実施の形態2に係る過冷却解除装置を示す構成図である。過冷却解除装置は、実施の形態1に係る過冷却解除素子1と、潜熱蓄熱材2を保持する容器3と、蓄熱材が外部に漏出することを防止するシール機構4と、容器3の外部から過冷却解除素子1に外力を加える外力付加機構であるアクチュエータ51とを備えている。
過冷却解除素子1は、容器3の外壁に固定してあり、容器3に保持された潜熱蓄熱材2が漏出しないようにシール機構4によってシールされている。
シール機構4は、過冷却解除素子1を覆うように設けられたシール性を有する柔軟シート41、例えば、シリコンシートなどの樹脂シートなどからなり、容器の外から過冷却解除素子1と柔軟シート41を覆い押圧してシールする押え板42とを有している。押え板42は、柔軟シート41を介して過冷却解除素子1を変形するための開口部を有し、容器3に固定され、密閉されている。
柔軟シート41は、変形可能な薄い金属シートなどでもよく、容器3にパッキン密閉、接着材、溶接などにより密閉してもよい。また、柔軟シート41の変形範囲内であれば、過冷却解除素子1は、容器3の内壁に固定されてもよい。
アクチュエータ51は、フランジ42の開口部から柔軟シート41を介して過冷却解除素子1を押圧できるように形成され、フランジ42に固定されている。
アクチュエータ51は、例えば、ソレノイドに電力を供給することで過冷却解除素子1を変形させて、潜熱蓄熱材の過冷却状態を解除する。また例えば、柔軟シート41を押圧することで過冷却解除素子1を変形させて、潜熱蓄熱材の過冷却状態を解除する。
以上説明したように、この発明の実施の形態2に係る過冷却解除装置によれば、潜熱蓄熱材を保持する容器3と、圧縮応力を保有するように撓んだ切り目12が板片11に形成され、飛び移り座屈により第1形状から第2形状へと変形し得る過冷却解除素子1と、容器3の外部から過冷却解除素子1に変形させる外力を加えるアクチュエータ51とを備えているので、容器3の外部から小さな外力を過冷却解除素子1に加えることによって潜熱蓄熱材の過冷却解除を行うことができる。
実施の形態3.
図8はこの発明の実施の形態3に係る過冷却解除装置を示す構成図である。過冷却解除装置は、実施の形態1に係る過冷却解除素子1と、潜熱蓄熱材2を保有する容器3と、容器3の外部から過冷却解除素子1に外力を加える外力付加機構4とを備えている。
図8はこの発明の実施の形態3に係る過冷却解除装置を示す構成図である。過冷却解除装置は、実施の形態1に係る過冷却解除素子1と、潜熱蓄熱材2を保有する容器3と、容器3の外部から過冷却解除素子1に外力を加える外力付加機構4とを備えている。
過冷却解除素子1は、容器3の内壁に固定されている。
外力付加機構5は、容器3外に設けられたアクチュエータ51と、過冷却解除素子1及びアクチュエータ51を連結する湾曲変形可能なワイヤ52と、容器3に対して固定されたアクチュエータ取付部53とを有している。過冷却解除素子1は、ワイヤ52によって、容器3から隔離された位置に設けられたアクチュエータ51に連結されている。ワイヤ52には、例えば、自動車用ブレーキに使用されるような、外側が巻ばねで内側にワイヤ本体が設けられている曲げ可能なワイヤが用いられる。
容器3は、ワイヤ52が通された開口部が形成された容器本体31と、容器本体31の開口部を塞ぐシール32とを有している。これにより、容器本体31の開口部から潜熱蓄熱材が外部に漏出することが防止される。図7では、シール32は、容器本体31の外壁に設けられているが、シール32は、容器本体31の内壁に設けられてもよい。
ワイヤ52は、簡単のために、過冷却解除素子1とアクチュエータ51との間に直線状に配置されている。なお、ワイヤ52は、湾曲変形可能であるので、必ずしも直線状に配置する必要はない。ワイヤ52の長さは、アクチュエータ51の設置場所に応じて調整すればよいので、所望の場所にアクチュエータ51を配置することができる。
以上説明したように、この発明の実施の形態3に係る過冷却解除装置によれば、潜熱蓄熱材を保持する容器3と、板片11には圧縮応力を保有するように撓んだ切り目12が形成され、飛び移り座屈により第1形状から第2形状へと変形し得る過冷却解除素子1と、容器3の外部から過冷却解除素子1に変形される外力を加える外力付加機構5とを備えているので、容器3の外部から比較的小さな外力を加えるだけで過冷却解除を行うことができる。
外力付加機構5は、容器3外に設けられたアクチュエータ51と、過冷却解除素子1とアクチュエータ51とを連結する湾曲変形可能なワイヤ52とを有しているので、所望の場所にアクチュエータ51を設置することができる。
上記実施の形態3では、ワイヤ52が直線状に配置されている構成について説明したが、ワイヤ52が直線状に配置されなくてもよい。
上記実施の形態3では、1個の過冷却解除素子1を備えた過冷却解除装置の構成について説明したが、複数の過冷却解除素子1を備えた構成であってもよい。
更なる変形例及び効果は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように説明し且つ記述した特定の詳細および代表的な実施の形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲及びその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
1 過冷却解除素子、2 潜熱蓄熱材、3 容器、4 シール機構、5 外力付加機構、11 板片、12 切り目、31 容器本体、32 シール、41 柔軟シート、42 押え板、51 アクチュエータ 52 ワイヤ 53 アクチュエータ取付部
Claims (5)
- 潜熱蓄熱材の過冷却状態を解除する過冷却解除素子において、
縦方向及び横方向のうちの一方向の寸法が他方向の寸法よりも長い弾性の板片を備え、
前記板片の前記一方向の中央部位には、前記他方向に伸び、前記板片の高さ方向の一方側に開く切り目が形成され、
前記板片に外力が加えられた場合、前記板片は前記切り目を含む一部が飛び移り座屈によって、第1形状から該第1形状が反転した形状である第2形状へと変形するように構成してあり、
前記切り目の開度は、前記第1形状の場合よりも前記第2形状の場合の方が大きいことを特徴とする過冷却解除素子。 - 前記外力が取り除かれた場合、前記板片は、前記第2形状から前記第1形状へと自己復帰するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の過冷却解除素子。
- 前記他方向における前記切り目の長さは、前記他方向における前記板片の長さよりも短いことを特徴とする請求項1又は2に記載の過冷却解除素子。
- 潜熱蓄熱材の過冷却状態を解除する過冷却解除装置において、
前記潜熱蓄熱材を保持する容器と、
縦方向及び横方向のうちの一方向の寸法が他方向の寸法よりも長い弾性の板片を有する過冷却解除素子と、
前記過冷却解除素子に外力を加える外力付加機構とを備え、
前記板片の前記一方向の中央部位には、前記他方向に伸び、前記板片の高さ方向の一方側に開く切り目が形成され、
前記板片に外力が加えられた場合、前記板片は前記切り目を含む一部が飛び移り座屈によって、第1形状から該第1形状が反転した形状である第2形状へと変形するように構成してあり、
前記切り目の開度は、前記第1形状の場合よりも前記第2形状の場合の方が大きいことを特徴とすることを特徴とする過冷却解除装置。 - 前記外力付加機構は、前記容器外に設けられたアクチュエータと、前記過冷却解除素子及び前記アクチュエータを連結する湾曲変形可能なワイヤとを有していることを特徴とする請求項4に記載の過冷却解除装置。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2015090262A JP2016205749A (ja) | 2015-04-27 | 2015-04-27 | 潜熱蓄熱材の過冷却解除素子及び過冷却解除装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2015090262A JP2016205749A (ja) | 2015-04-27 | 2015-04-27 | 潜熱蓄熱材の過冷却解除素子及び過冷却解除装置 |
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JP2016205749A true JP2016205749A (ja) | 2016-12-08 |
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JP2015090262A Pending JP2016205749A (ja) | 2015-04-27 | 2015-04-27 | 潜熱蓄熱材の過冷却解除素子及び過冷却解除装置 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2016205749A (ja) |
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2015
- 2015-04-27 JP JP2015090262A patent/JP2016205749A/ja active Pending
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