JP2016204659A - 接着部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】接着力に比較的強い方向依存性を有する接着部材を提供する。【解決手段】表面間力により被着体203に接着する接着部材201である。接着面202に平行な第一の方向205に力209をかけた場合の前記接着部材の第一の剥離箇所207における歪みエネルギー解放率をG1c、第一の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ1cとし、第一の方向とは逆方向の第二の方向206に第一の方向にかけた力と同じ大きさの力210をかけた場合の接着部材の第二の剥離箇所208における歪みエネルギー解放率をG2c、第二の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ2cとする。接着部材201は、G1c/Δγ1c≠G2c/Δγ2cを満たすようにΔγ1cとΔγ2cとに差を有している。【選択図】 図2

Description

本発明は、接着部材に関する。特には、特定方向の力に対しては強く接着し、別の方向の力に対しては弱い接着力を示す、接着力に方向依存性を有する接着部材に関する。
接着部材は、より強い接着力、高い耐久性・耐熱性が求められる場合が多く、これを満足する方向での開発が進められてきた。しかしながら、限り有る資源を有効に活用しようとするリサイクルの面では、剥がしたいときには容易に剥がせ、再利用できるものが有用である。そのため、力をかける方向によって接着力が大きく変化し、力をかける方向を適切に選ぶことで強固に接着しつつ容易に剥離できる接着部材、すなわち接着力に方向依存性を有する接着部材が求められてきている。生物界においては、ヤモリの足の接着力が方向依存性を有しており、ヤモリは、その特長を活かして高速に接着と剥離を繰り返して歩行していることが知られている。そこで、ヤモリの足表面の微細構造を模倣した人工的な接着部材として、接着部材の接着面の表面形状に特徴を持たせた例が幾つか報告されている。
非特許文献1には、垂直断面形状を非対称化した傾斜柱状構造物の集合体を有する接着部材が開示されている。これによると、接着面に対して平行な方向への接着力に或る程度の方向依存性があり、柱状構造物を引っ張るような水平方向の力をかけた場合には強く接着し、柱状構造物を圧縮するような水平方向の力をかけた場合には接着力が弱いことが示されている。
また、特許文献1には、同じく傾斜した柱状構造物の集合体を有する接着部材が開示されており、これによると、糊残りすることなく接着部材が被着体から比較的容易に剥離できるとされている。一方、非特許文献2および特許文献2には、先端をくさび形にカットした柱状構造物の集合体を有する接着部材が開示されている。この接着部材では、くさび形形状の先端部が変形して被着体に接着する際に生じる内部応力を利用して接着力の方向依存性を高めている。
これらの手法は、接着部材表面の多数の柱状構造物の構造に特徴を持たせるように加工する必要があり、多くの時間と労力が費やされることになり易い。したがって、より簡便な方法で接着力の方向依存性を実現することが望まれる。
特開2009−70883号公報 特開2012−245748号公報
M. Murphy, B. Aksak, and M. Sitti, "Adhesion and Anisotropic Friction Enhancement of Angled Heterogeneous Micro−Fiber Arrays with Spherical and Spatula Tips" Journal of Adhesion Science and Technology, vol. 21, no. 12−13, pp. 1281−1296, 2007. D. Santos, M. Spenko, A. Parness, S. Kim, and M. Cutkosky, "Directional adhesion for climbing: theoretical andpractical considerations" Journal of Adhesion Science and Technology, vol. 21, no. 12−13, 1317−1341, 2007.
上述した従来の、単に傾斜した柱状構造物を用いて被着体に接着させるという手法では、接着力の方向依存性を高くすることが容易とは言い難い。また、先端をくさび形にカットした柱状構造物の集合体を有する接着部材は、作製に多くの労力と時間を要することになり易い。本発明は、上記課題に鑑み、接着力に比較的強い方向依存性を有する接着部材をより簡便に提供することを目的とする。
本発明による接着部材は、表面間力により被着体に接着する接着部材であって、次の特徴を有する。接着面に平行な第一の方向に力をかけた場合の当該接着部材の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG1、前記第一の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ1とし、前記第一の方向とは逆方向の第二の方向に前記第一の方向にかけた力と同じ大きさの力をかけた場合の当該接着部材の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG2、前記第二の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ2として、G1/Δγ1≠G2/Δγ2を満たすようにΔγ1とΔγ2とに差を有している。
本発明によれば、第一の方向へ力をかけた場合と逆方向の第二の方向へ力をかけた場合の接着力に差を生じさせることができ、接着力に比較的強い方向依存性を有する接着部材を実現できる。つまり、第一の方向へ力をかけた場合と第二の方向へ力をかけた場合の接着力に差を生じさせたので、異なる方向(前記第一の方向や前記第二の方向に限らない)の接着力に方向依存性を生み出すことができる。
実施形態における接着部材の接着力の方向依存性と接着部材の使用例を説明する図。 実施形態における接着部材の構成例について説明する図。 弾性率の不均一化で接着力に方向依存性が出る理由を説明する図。 複数の突起部を支持する基材部を含む接着部材の構成例を説明する図。 非対称化した水平断面形状の例を示す図。 水平断面形状の非対称化で接着力に方向依存性が出る理由を説明する図。 接着面が均一な接着エネルギーを持つ複数の領域を含む接着部材の例の図。 垂直断面形状が左右対称であると仮定した仮想的な接着部材の定義の説明図。 実施例及び参考例における歪みエネルギー解放率の算出方法の説明図。 実施例及び参考例で歪みエネルギー解放率を算出する際の、モデル全体の領域分割方法の説明図。 実施例及び参考例における接着部材の接着プロファイルの算出方法の説明図。 実施例及び参考例における解析モデル形状を示す図。 接着部材の接着プロファイルの解析結果を示す図。 接着部材の接着プロファイルの解析結果を示す図。 接着部材の接着プロファイルの解析結果を示す図。 接着部材の接着プロファイルの解析結果を示す図。 接着部材の接着プロファイルの解析結果を示す図。 接着部材の接着プロファイルの解析結果を示す図。 接着部材の接着プロファイルの解析結果を示す図。 接着部材の接着プロファイルの解析結果を示す図。 接着部材の接着プロファイルの解析結果を示す図。 接着部材の接着プロファイルの解析結果を示す図。 突起部を備えた接着部材のSEM観察像を示す図。 VUV照射により、接着面の第一と第二の剥離箇所間に接着エネルギー差を生む方法の説明図。 接着部材の接着プロファイルの測定方法を説明する図。 接着部材の接着プロファイルの測定結果を示す図。 参考例の弾性率を不均一化した接着部材の構成について説明する図。 参考例の弾性率を不均一化した接着部材の作製工程について説明する図。 参考例の弾性率を不均一化した接着部材の接着力の評価方法を説明する図。
本発明の接着部材について具体的に説明する前に、本発明と密接に関連する接着力の方向依存性の定義について図1を用いて説明する。まず、図1(A)に示すように、ある接着部材と被着体からなる複合体(101)に対し、接着界面(103)と任意の角度をなす方向へ引っ張った際の接着力(106)を考える。図1(B)は、図1(A)の断面図である。さらに、この接着力を水平方向成分の力(104)と垂直方向成分の力(105)に分解し、図1(C)〜(E)に示すように二次元平面内にプロットする(107〜109、以下この二次元プロットを接着プロファイルと呼ぶ)。
水平方向をどのようにとってもその方向について形状や物性等の非対称性を有しない複合体の場合、この接着プロファイルは常に水平方向に左右対称なものとなる(図1(C))。一方で、ある水平方向について何らかの非対称性を有する複合体の場合は、この接着プロファイルが水平方向に非対称になる場合がある(図1(D))。このような非対称な接着プロファイルを示す性質を接着力の方向依存性と呼ぶものとする。適切に複合体を設計して接着力の方向依存性を高めることができれば、例えば図1(E)に示したような接着プロファイルを持つ接着複合体を実現できる。この場合、110の範囲の角度で引っ張った際には強い接着力を示すが、ほぼ逆方向の111の範囲の角度で引っ張った際には弱い接着力しか示さない。すなわち、力をかける方向を適切に選ぶことで、強く接着させたり弱い力で剥離したりできる。本発明は、このような接着力に比較的高い方向依存性をもつ接着部材を提供するものである。
接着力に方向依存性を有する接着部材としては、110の範囲内における最大の接着力が111の範囲内における最小の接着力の2倍以上であるものが好適に用いられる。さらに好適には、この比が5倍以上のものが用いられる。
本発明の接着力に方向依存性を有する接着部材は、様々な活用方法が挙げられる。例えば、重力等の外力や慣性力(113)の向きと平行な面(114)上に物体(112)を脱着可能な形で固定したい時に、物体に接着部材(115)を取り付けて使用する(図1(F))。垂直な壁に物体を一時的に貼り付ける、あるいは物体の高加速度運搬において把持具や運搬ステージと物体との間のズレを防ぐといった状況がこれに相当する。この場合、外力や慣性力の方向が、接着部材の接着力が強い範囲に含まれるように接着部材を取り付けるのが良い。さらに別の例として、複数の接着部材を組み合わせることで特開2014−107319号公報のような接着デバイスとしても使用できる。この使用方法は、外力や慣性力の方向に対して直交する面上に物体を固定する際に特に有効である。いずれの例についても接着部材が図1(E)の110の範囲に有意な接着力を示す必要があり、この範囲内における最大の接着強さが1g/cm以上あるのが望ましい。
次に、本発明の参考例における接着部材の構成について、実施形態を踏まえつつ説明する。この参考例の接着部材は、表面間力により被着体に接着する接着部材である。そして、接着面に平行な第一の方向に力をかけた場合の接着部材の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG1、第一の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ1とする。また、第一の方向とは逆方向の第二の方向に第一の方向にかけた力と同じ大きさの力をかけた場合の接着部材の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG2、第二の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ2とする。このとき、G1/Δγ1≠G2/Δγ2を満たすように接着部材の弾性率または/およびポアソン比を不均一化している。
図2を用いて、この参考例における接着部材の構成について、実施形態を踏まえつつ説明する。接着部材(201)は、接着面(202)と被着体(203)の表面(204)との間の表面間力によって被着体に接着する。ここで、表面間力とは、2つの物体間の相互作用力のうち、物体の重心間距離ではなく表面間距離に強く依存する力を指す。例えば、典型的な例としては、分子間力による相互作用力が挙げられる。本発明の典型例においては、接着部材は弾性体構造物とすることができる。弾性体構造物とは、粘性的挙動より弾性的挙動の方が支配的な構造物である。このような構造物であれば粘性的挙動によるエネルギーの散逸が相対的に少なくなるので、後述するメカニズムにより接着力の方向依存性が出やすい。
大よその目安として、実用的な観点から設定した観測時間(接着部材の剥離にかけられる時間)や温度において、接着部材の損失係数tanδの値が0.3以下であるのが望ましい。高分子樹脂は適度な弾性率を持つ上に、広い歪み範囲にわたって弾性的挙動を示すため、接着部材に弾性的性質を付与する成分として適している。接着部材を構成する材料としては、好適には、ポリジメチルシロキサン(Polydimethylsiloxane:PDMS)、ポリウレタン(Polyurethane:PU)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(Polymethyl methacrylate:PMMA)やその類縁体を挙げることができる。
なお、接着部材は、複数のパーツに分けて構成することもできる。その場合、パーツの集合体を接着部材とみなす。このような構成であれば、パーツ毎に物性や形状を変えれば良いので、本明細書に記述する種々の物性の不均一化や形状の非対称化を簡便に実現できる。
次に、剥離箇所について説明する。接着部材は、接着部材に対し接着面(202)に平行な第一の方向(205)に力をかけて被着体から剥離する場合と、第一の方向とは逆方向の第二の方向(206)に力をかけて被着体から剥離する場合とで、異なる箇所から剥離が始まる。この剥離箇所を、それぞれ第一の剥離箇所(207)及び第二の剥離箇所(208)と定義する。このような力をかける方向によって異なる剥離箇所を有するという性質は、接着部材が表面間力により被着体と接着するという特徴に由来する。接着部材の接着面に平行な第一の方向は、接着部材の接着面が平面である場合には文字通り平面に平行な方向であるが、接着面が曲面の場合には、曲面の接線方向と解して差支えない。例えば、接着面が円柱側面や球面またはそれらの一部に近い形状である場合、円柱や球の中心周りにトルクを発生させる方向と考えることができる。
ここで、第一の方向への力(209)をかけた場合の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率と接着エネルギーをG1とΔγ1と定義する。そして、第一の方向への力と同じ大きさで第二の方向への力(210)をかけた場合の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率と接着エネルギーをG2とΔγ2と定義する。本発明において、歪みエネルギー解放率とは、1単位面積の剥離が進展した際に失われる弾性歪みエネルギーの量と定義する。具体的には、微小面積dSの剥離が進展した際に失われる弾性歪みエネルギー量をdUとし、dU/dSにより求まる。
また、接着エネルギーとは、1単位面積の接着面で互いに接着している2つの物体A、Bを引き離して新しい表面が形成される際の表面自由エネルギーの変化量と定義する。物体A、Bの表面自由エネルギーをΔγA、ΔγB、物体Aと物体Bの間の界面自由エネルギーをΔγABとし、ΔγA+ΔγB−ΔγABにより求まる。
この参考例の接着部材では、これらの物性値がG1/Δγ1≠G2/Δγ2を満たすように弾性率または/およびポアソン比が不均一化されている。弾性率とは、弾性変形における応力と歪みとの間の比例定数(応力/歪み)と定義する。粘性的挙動も示す場合には、エネルギーを蓄積する効果を表す貯蔵弾性率を指すものとする。また、ポアソン比とは、物体に単軸応力を加え弾性変形させた時の単軸応力方向に沿った歪みと、二次的に発生する単軸応力に直交する方向の歪みとの比と定義する。ここで、ポアソン比と比較して弾性率の方が材料に依存して大きく値が変わるので、弾性率を不均一化したものが好適に用いられる。また、接着部材内に空隙を設けたようなものも、空隙部の弾性率がゼロであると考えることができるので、本参考例における不均一化の手法の一つである。例えば、接着部材の一部分に多数の空隙を設けた場合には、その領域の平均的な弾性率が下がるので、実質的には弾性率が異なる材料を使用したのと同等の効果が得られる。
上記の構成により接着力に方向依存性が出る理由を以下に説明する。まず、歪みエネルギー解放率G1およびG2を与える第一の方向への力と第二の方向への力の大きさをFとし、第一の方向への接着力をF1、第二の方向への接着力をF2とする。歪みエネルギー解放率の値は、かけた力の2乗に比例し、G1およびG2はそれぞれ第一および第二の方向へFの力をかけたとき解放率である。よって、第一の方向へF1の力をかけたときの第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率はG1(F1/F)、第二の方向へF2の力をかけたときの第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率はG2(F2/F)となる。
線形破壊力学における理論とのアナロジーから考えると、歪みエネルギー解放率が接着エネルギーと等しくなるときに接着部材が被着体から剥離する。よって、G1(F1/F)=Δγ1およびG2(F2/F)=Δγ2を解くことで、第一の方向と第二の方向への接着力はそれぞれF1=F(G1/Δγ1−1/2とF2=F(G2/Δγ2−1/2と求まる。以上により、G1/Δγ1≠G2/Δγ2であれば第一の方向と第二の方向への接着力が異なるという効果が発現することが理解される。
G1/Δγ1<G2/Δγ2であれば第一の方向の接着力が強く、G1/Δγ1>G2/Δγ2であれば第二の方向の接着力が強い。G1/Δγ1とG2/Δγ2の差が大きいほど接着部材の方向依存性が大きくなるため、例えば、G1/Δγ1とG2/Δγ2の差が2倍以上のものが好適に用いられ、5倍以上のものがさらに好適に用いられる。
歪みエネルギー解放率G1とG2は接着部材と被着体の形状・弾性率・ポアソン比に依存し、これらの情報に基づいて有限要素法や境界要素法などによる構造解析から容易に算出可能である。これには、例えば、応力拡大係数から求める方法、J積分を求める方法、微小な仮想剥離を進展させる方法(破壊力学における仮想亀裂進展法に相当)などが挙げられる。
表面間力が分子間力に基づく相互作用力の場合には、接着エネルギーΔγ1とΔγ2は表面の化学状態に依存する。例えば、接触角測定により接着部材の剥離箇所および被着体表面の表面自由エネルギーを求め、分散成分・極性成分・水素結合成分の値から拡張Fowkes式により求めることができる。他にも、接着部材の剥離箇所や被着体の表面を形成する化学種が分かれば、分子動力学的シミュレーションにより推測することも可能であるし、JKR試験等により実験的に計測することも可能である。
表面間力が分子間力以外の相互作用力の場合であっても、表面間力が働く表面同士を接着状態から無限遠まで離すのに必要な仕事量を求め、単位接着面積あたりに換算することで接着エネルギーを求めることができる。
本参考例においては上述のように歪みエネルギー解放率と接着エネルギーは推測ないし計測が可能なものであるため、当業者は容易にG1/Δγ1≠G2/Δγ2を満たすように弾性率または/およびポアソン比の不均一分布を設計することができる。
ここで、ある方向に力をかけた場合の接着部材の剥離箇所は、例えば、構造解析に基づき推測することが可能である。具体的には、接着部材の接着面における歪みエネルギー解放率Gの分布を求め、さらに接着エネルギーΔγの分布を加味して、G/Δγが最大となる箇所を求めればよい。また、実際に実験的に観察して決定することもできる。よって、力をかける方向によって異なる剥離箇所を有するような接着部材は当業者には容易に設計が可能である。なお、ある方向が第一の方向であればその際の剥離箇所が第一の剥離箇所であり、ある方向が第二の方向であればその際の剥離箇所が第二の剥離箇所となる。
接着部材の弾性率を不均一化することで接着力に方向依存性がでるのは、以下の理由による。説明を簡単にするために、接着部材が円柱形状であると仮定し、図3(A)に示すように円柱(301)の底面(接着面)が被着体と接着して固定されている状態を考える。なお、図3は円柱を側面から見た図を示している。円柱に対し第一の方向(304)や第二の方向(305)へ力をかけると、円柱には、互いに逆方向の曲げモーメント(302、303)がかかる。弾性率が均一な場合には、先端に曲げモーメント(302、303)をかけたときに歪みや応力がゼロになる中立面(309)は接着部材の中央であり、歪みの絶対値は曲げの外側と内側とで同じ値となる。よって、曲げの方向によらず最大の引っ張り応力は同じ値となり、接着力には方向依存性が出ない。
次に、弾性率が不均一な円柱(306)として、例えば第一の方向(304)の側の半分の領域(307)の弾性率が第二の方向(305)の側の半分の領域(308)の弾性率より大きい場合について考える(図3(B))。この場合、中立面(309)が第一の方向の側にずれるため、歪みの絶対値は第一の方向の側が小さくなるものの、応力の絶対値は、弾性率の効果が支配的となり第一の方向の側の方が大きくなる。この効果により、第一の方向の側が外側となる曲げモーメント(311)により第二の剥離箇所(313)に生じる引っ張り応力の方が、第二の方向の側が外側となる曲げモーメント(310)により第一の剥離箇所(312)に生じる引っ張り応力より大きくなる。よって、G1/Δγ1<G2/Δγ2となり、上記第一の方向と第二の方向への接着力の議論から分かる様に、接着力に第一の方向への接着力の方が強くなるような方向依存性が出る。弾性率の大小関係が逆であれば、接着力の方向依存性も逆になる。
上記の議論では、説明を簡単にするために接着部材が円柱形状であると仮定した。しかし、この議論は、断面が円形ではない柱状の接着部材はもちろんのこと、定性的には柱状以外のあらゆる形状の接着部材にも拡張できる議論である。よって、本参考例における接着部材の形状は円柱形状に限定されるものではない。また、接着部材と被着体との間の接着エネルギーが均一であるという仮定をおいた。しかし、接着エネルギーが不均一な場合であっても、弾性率の分布を適切に設計することで接着部材内の応力分布を変化させ接着力に方向依存性を生じさせることができるのは明らかである。よって、本参考例は、接着部材と被着体との間の接着エネルギーが均一な場合に限定されるものではない。
以上の議論から明らかなように、接着部材の水平断面内の弾性率の分布に関して、第一の方向の側の半分の領域の平均的な弾性率と、第二の方向の側の半分の領域の平均的な弾性率が異なるようなものが好適に用いられる。より拡張して言えば、接着部材の弾性率は、接着部材を第一の方向に垂直な方向に沿って、二分した一方の平均弾性率と、他方の平均弾性率と、が異なるように不均一化することが好ましい。これらの差が5倍以上のものがさらに好適に用いられる。接着部材全体の水平断面で弾性率がこのような分布を示すのが望ましいが、一部分の水平断面のみで弾性率がこのような分布を示す場合も、本参考例に包含される。
弾性率または/およびポアソン比を不均一化した接着部材は、次のような手法で作製することができる。例えば、接着部材の一部を物理的に改質することによって弾性率または/およびポアソン比を不均一化する。より具体的には、均一な材料で作製した接着部材に対し部分的に電子またはイオンビームや紫外光を照射することで、接着部材の一部が改質され弾性率または/およびポアソン比が不均一化した接着部材が得られる。また、弾性率または/およびポアソン比が異なる材料を用いて逐次的に接着部材を作製することによって弾性率または/およびポアソン比を不均一化する。より具体的には、別々に作製した材料を貼り合わせる方法や、光・熱造形技術を用いて2段階で接着部材を作る方法などが挙げられる。あるいは、高分子樹脂で形成された接着部材内の硬化度や化学結合状態に分布を持たせることによっても弾性率または/およびポアソン比を不均一化できる。さらには、弾性率または/およびポアソン比が異なる物体を接着部材内で一方向に偏らせる方法なども考えられる。物体の沈降現象を利用すれば接着部材内で物体を一方向に偏らせることができる。どのような手法が適しているかは、接着部材に求められる仕様等を踏まえて適宜判断すればよい。
また、例えば図4に示すように、接着部材が、被着体に接着する複数の突起部を備えている構成とすることも好適である。すなわち、接着部材が、被着体に接着する複数の突起部(402)と突起部を支持する基材部(401)とを含み、弾性率または/およびポアソン比の不均一化が少なくとも基材部においてなされている形態が好ましい。この場合、接着部材の接着面(403)は、個々の突起部の個々の接着面を集合した面と考えるものとする。また、第一の剥離箇所(408)や第二の剥離箇所(409)は基材部ではなく突起部に存在すると考えてよい。なお、本明細書に記載の突起部を備えた全ての実施形態や参考例において、基材部と突起部は別体として構成することも可能だが、一体物として構成することもできる。このような形態であれば、接着部材の接着面近傍の剛性が低下するため、被着体の表面粗さに対する追従性が高まり、ヤモリのように様々な被着体への接着が期待できる。また、接着力の方向依存性を有する材料という観点では、本参考例では基材部の弾性率または/およびポアソン比を不均一化しており、従来例の無数の傾斜柱状構造物を備えた接着材料と比較して作製が簡便であるというメリットもある。
複数の突起部と基材部を備えている接着部材における歪みエネルギー解放率は、全ての形状を反映した構造での構造解析により求めることができる。しかしながら、突起部のサイズが基材部と比較して非常に小さい接着部材、あるいは非常に多くの突起部を有する接着部材の場合には、計算コストの面から全ての形状を反映した構造解析が困難な場合がある。この場合、例えばマルチスケールシミュレーションにより歪みエネルギー解放率を求めるのが適している。すなわち、まず基材部のみで構造解析を行なって基材部内の応力分布を求め、この応力分布を反映した境界条件で突起部の構造解析を実施するのが好ましい。突起部は、実質的に柱状の弾性体構造物、さらにはアスペクト比が高い微繊毛状の弾性体構造物とすることが好適である。これにより、突起部の剛性が大きく低下するため、さらに高い接着力が実現される。
突起部の成形は、例えば、3Dプリンターを含む各種の光・熱造形技術、結晶成長などの自己組織化的成形技術、削り出しといった機械加工成形技術などにより直接的に行うことができる。また、これらの直接的な成形技術により作製した型を用いて高分子樹脂を成形する手法も、量産化の面では非常に効率的である。
次に、他の参考例として、接着部材の水平断面形状を非対称化することによっても接着力の方向依存性をもつ接着部材を提供できる。この参考例の接着部材は、表面間力により被着体に接着する接着部材である。そして、接着面に平行な第一の方向に力をかけた場合の接着部材の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG1、第一の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ1とする。また、第一の方向とは逆方向の第二の方向に第一の方向にかけた力と同じ大きさの力をかけた場合の接着部材の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG2、第二の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ2とする。このとき、接着部材を接着面に平行に切断した水平断面がG1/Δγ1≠G2/Δγ2を満たすように非対称化した形状をなしている。
前述の通り、第一の方向と第二の方向への接着力はそれぞれF(G1/Δγ1−1/2とF(G2/Δγ2−1/2と求まる。よって、本参考例においては、G1/Δγ1≠G2/Δγ2を満たすように接着部材の水平断面形状を非対称化することで、第一の方向と第二の方向への接着力が異なるという接着力の方向依存性を実現する。接着部材を接着面に平行(水平)な面で切断した水平断面形状は、点対称でない形状もしくは第一の方向と直交する軸に関して線対称でない形状であるのが好適である。また、接着部材全体に渡って水平断面形状が非対称化されているのが望ましいが、一部分のみが非対称化されている場合も本参考例に包含される。
前述のとおり歪みエネルギー解放率と接着エネルギーは推測ないし計測が可能なので、当業者は容易にG1/Δγ1≠G2/Δγ2を満たすように水平断面形状を設計でき、前述のとおり接着力に方向依存性が出る。G1/Δγ1とG2/Δγ2の差が大きいほど接着部材の方向依存性が大きくなるため、例えばG1/Δγ1とG2/Δγ2の差が2倍以上のものが好適に用いられ、5倍以上のものがさらに好適に用いられる。
水平断面形状を非対称化することで接着力に方向依存性がでるのは、以下の理由による。すなわち、図5(A)に示すように、第一の方向(501)に直交しかつ水平断面形状の断面一次モーメントがゼロとなる軸(503)の位置が水平断面の第一の方向の端部(504)と第二の方向の端部(505)の中央(506)からずれるためである。説明を簡単にするために、接着部材が均一な弾性率を有する柱状形状の構造物であると仮定した上で、図6に示すように柱状物(602)の底面(接着面)が被着体と接着して固定されている状態を考える。なお、図6は柱状物を側面から見た図を示している。この図の場合、断面一次モーメントがゼロとなる軸の位置(601)が第二の方向(606)側にずれている。なお、弾性率が均一であると仮定しているので、中立軸の位置は断面一次モーメントがゼロとなる軸の位置と一致する。
柱状物に対し第一の方向(605)や第二の方向(606)へ力をかけると、柱状物には、互いに逆方向の曲げモーメント(603、604)がかかる。先端に曲げモーメント(603、604)がかかった場合の応力分布を考えると、図6に示すように歪みの絶対値は第一の方向の側の方が第二の方向の側より大きくなる。その結果、応力の絶対値も第一の方向の側の方が第二の方向の側より大きくなる。この効果により、第一の方向の側が外側となる曲げモーメント(604)で第二の剥離箇所(608)に生じる引っ張り応力の方が、第二の方向の側が外側となる曲げモーメント(603)で第一の剥離箇所(607)に生じる引っ張り応力より大きくなる。よって、G1/Δγ1<G2/Δγ2となり、第一の方向への接着力の方が強くなるような方向依存性が出る。断面一次モーメントがゼロとなる軸の位置が第一の方向側にずれていれば、接着力の方向依存性も逆になる。
なお、上記の議論では断面一次モーメントがゼロになる軸の位置と中立軸の位置を一致させるために、接着部材の弾性率が均一という仮定をおいた。また、接着部材と被着体との間の接着エネルギーに関しても均一であると仮定した。しかし、弾性率や接着エネルギーが不均一な場合であっても、水平断面形状を適切に非対称化することで中立軸の位置を変化させて接着力の方向依存性を高めることができるのは明らかである。よって、本参考例は、接着部材の弾性率や接着エネルギーが均一な場合に限定されるものではない。また、接着部材の形状についても、一様な断面をもつ柱状形状を仮定したが、定性的には他のあらゆる形状の接着部材にも拡張できる議論であり、本参考例は、柱状形状の接着部材に限定されるものではない。
以上の議論より明らかなように、水平断面形状の断面一次モーメントがゼロとなる軸の位置のずれが大きいほど接着力の方向依存性が高まる。よって、このずれの大きさが第一の方向の端部と第二の方向の端部の間の距離の5%以上であるものが好適に用いられる。例えば、断面一次モーメントがゼロとなる軸が第二の方向へ大きくずれた水平断面形状としては、図5(B)に示すような形状もしくはその類似形状が挙げられる。いずれも、水平断面形状の第一の方向(501)に直交する方向の幅(507)が第二の方向(502)へ向かって実質的に単調に増加し、断面一次モーメントがゼロとなる軸の位置が効果的に第二の方向の側にずれている。ここで、実質的に単調に増加するとは、部分的には水平断面形状の幅が減少する部位を含んでいてもよく、例えば扇形の断面形状(508)もその範囲内である。さらに好適には、水平断面形状の幅が第一の方向から第二の方向へ向かって実質的に加速度的に増加する断面形状(509)が用いられる。
断面一次モーメントがゼロとなる軸の位置が接着部材全体にわたって同じ側へずれているのが望ましいが、接着部材の一部分のみにおいてずれている場合も本参考例に包含される。また、接着部材が、被着体に接着する複数の突起部を備えている構成とすることも好適である。すなわち、接着部材が、被着体に接着する複数の突起部と突起部を支持する基材部とを含み、水平断面の非対称化が少なくとも基材部においてなされている形態が好ましい。前述した様に、このような形態であれば、接着部材の接着面近傍の剛性が低下するため被着体の表面粗さに対する追従性が高まり、ヤモリのように様々な被着体への接着が期待できる。また、接着力の方向依存性を有する材料という観点では、本参考例では基材部の水平断面形状を非対称化しており、従来例の無数の傾斜柱状構造物を備えた接着材料と比較して作製が簡便であるというメリットもある。また、突起部は、実質的に柱状の弾性体構造物、さらにはアスペクト比が高い微繊毛状の弾性体構造物とすることが好適である。これにより、突起部の剛性が大きく低下するためさらに高い接着力が実現される。
本発明の実施形態として、接着部材と被着体の間の接着エネルギーを不均一化することによっても接着力の方向依存性をもつ接着部材を提供できる。本実施形態の接着部材は、表面間力により被着体に接着する接着部材である。そして、接着面に平行な第一の方向に力をかけた場合の接着部材の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG1、第一の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ1とする。また、第一の方向とは逆方向の第二の方向に第一の方向にかけた力と同じ大きさの力をかけた場合の接着部材の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG2、第二の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ2とする。このとき、G1/Δγ1≠G2/Δγ2を満たすように、Δγ1とΔγ2とに差を有している。前述のとおり、第一の方向と第二の方向への接着力はそれぞれF(G1/Δγ1−1/2とF(G2/Δγ2−1/2と求まる。よって、本実施形態においては、G1/Δγ1≠G2/Δγ2を満たすように、Δγ1とΔγ2に差をもたせることで、第一の方向と第二の方向への接着力が異なるという接着力の方向依存性を実現する。
歪みエネルギー解放率は構造解析等により推測可能なので、当業者は容易にG1/Δγ1≠G2/Δγ2を満たすように接着エネルギーΔγ1とΔγ2の値を設計できる。G1/Δγ1とG2/Δγ2の差が大きいほど接着部材の方向依存性が大きくなるため、例えば、G1/Δγ1とG2/Δγ2の差が2倍以上のものが好適に用いられ、5倍以上のものがさらに好適に用いられる。Δγ1とΔγ2もその差が大きいものが好適に用いられ、望ましくは差が2倍以上、さらに望ましくは差が5倍以上である。
表面間力が分子間力に基づく相互作用力の場合には、接着エネルギーΔγ1とΔγ2は接触角測定や分子動力学的シミュレーション、JKR試験等により求めることができる。表面間力が分子間力以外の相互作用力の場合であっても、表面間力がはたらく表面同士を接着状態から無限遠まで離すのに必要な仕事量を求め、単位接着面積あたりに換算することで接着エネルギーを求めることができる。接着エネルギーは接着面における接着部材と被着体との相互作用エネルギーとして定義される物理量なので、接着部材の表面状態のみならず、被着体の表面状態を変えることによってもΔγ1とΔγ2に差をもたせることができる。
また、表面粗さを変えて第一の剥離箇所と第二の剥離箇所の接触状態に差をもたせることによっても、接着力の方向依存性を実現することができる。表面粗さによって接触状態を変えることは、接着部に接着エネルギーがゼロとみなせる空隙を設けていると考えることができる。つまり、表面粗さを大きくすることで見かけ上の平均的な接着エネルギーを下げているということになる。よって、接着部材や被着体の表面粗さを不均一化することで接着力の方向依存性を実現した接着部材も、本実施形態に包含される。好適な実施形態として、G1とG2およびΔγ1とΔγ2が、G1<G2かつΔγ1>Δγ2、またはG1>G2かつΔγ1<Δγ2を満たすような接着部材が挙げられる。
この理由は以下のとおりである。G1/Δγ1<G2/Δγ2であれば第一の方向への接着力が強く、G1/Δγ1>G2/Δγ2であれば第二の方向への接着力が強い。よって、G1<G2かつΔγ1>Δγ2とすることで、接着部材や被着体のバルク物性・形状に依存する歪みエネルギーと表面物性に依存する接着エネルギーによる効果が強め合って、第一の方向への接着力が強いような接着力の方向依存性がさらに高まる。また逆に、G1>G2かつΔγ1<Δγ2とすることで、第二の方向への接着力が強いような接着力の方向依存性がさらに高まる。
また、接着エネルギーの値を変えられる範囲は、接着部材の作製プロセス等の制約により上限や下限がある場合が多い。このような場合においては、第一の剥離箇所と第二の剥離箇所における接着エネルギーを以下のように設定するのがより望ましい。G1>G2の場合には、第一の剥離箇所の接着エネルギーを下限に設定し、第二の剥離箇所の接着エネルギーを上限に設定するのが最も効果的である。また、G1<G2の場合には、第一の剥離箇所の接着エネルギーを上限に設定し、第二の剥離箇所の接着エネルギーを下限に設定するのが最も効果的である。G1=G2の場合には、第一の剥離箇所と第二の剥離箇所のいずれかの接着エネルギーを下限に、他方の接着エネルギーを上限に設定するのが最も効果的である。
よって、まとめると、好適な実施形態として、G1≧G2であって、接着面の任意の場所における接着エネルギーΔγが、Δγ1≦Δγまたは/およびΔγ2≧Δγを満たす接着部材があげられる。また、別の好適な実施形態として、G1≦G2であって、接着面の任意の場所における接着エネルギーΔγが、Δγ1≧Δγまたは/およびΔγ2≦Δγを満たす接着部材が挙げられる。
また、他の好適な実施形態としては、接着面が実質的に均一な接着エネルギーを有する複数の領域からなっており、第一の剥離箇所を含む領域の接着エネルギーがΔγ1で、第二の剥離箇所を含む領域の接着エネルギーがΔγ2であるものが挙げられる。この形態によれば、接着部材や被着体の表面状態を制御する作製プロセスが容易になる、あるいは構造解析等により第一の剥離箇所や第二の剥離箇所を特定する設計プロセスが容易になるといった利点がある。作製プロセスや設計プロセスの容易性という観点では領域の個数は少ない方が望ましく、2個の領域からなる構成が最良である。
接着部材と被着体との間の接着エネルギーを不均一化してΔγ1とΔγ2に差を持たせる手法としては、例えば次のようなものが挙げられる。均一な材料で作製した接着部材や被着体に対し、エネルギー量をコントロールしながら部分的に電子またはイオンビーム、紫外光やプラズマを照射することで、接着部材の接着面や被着体の表面の一部を改質して接着エネルギーを不均一化できる。各種の物理的・化学的プロセスにより、接着部材の接着面や被着体の表面に部分的に新たな原子・分子層を設けることも可能である。
また、弾性率または/およびポアソン比を不均一化した最初の参考例の説明において複数種の材料からなる接着部材を作製する手法を例示したが、この手法は接着部材と被着体との間の接着エネルギーを不均一化する手法としても有用である。第一の剥離箇所と第二の剥離箇所の表面粗さを変えて見かけ上のΔγ1とΔγ2とに差を持たせる手法としては、光・電子ビーム・イオンビーム・機械加工等で接着部材の接着面や被着体の表面を部分的に加工する手法が考えられる。どのような手法が適しているかは、接着部材に求められる仕様等を踏まえて適宜判断すればよい。
また、前述した様に、接着部材が、被着体に接着する複数の突起部を備えている構成とすることも好適である。すなわち、接着部材が、被着体に接着する複数の突起部と、突起部を支持する基材部とを含み、突起部と被着体の間の接着エネルギーが不均一化されている形態が好ましい。このような形態であれば、接着部材の接着面近傍の剛性が低下するため被着体の表面粗さに対する追従性が高まり、ヤモリのように様々な被着体への接着が期待できる。また、接着力の方向依存性を有する材料という観点では、本実施形態では従来例の無数の傾斜柱状構造物を備えた接着材料と比較して作製が簡便であるというメリットもある。また、突起部は、実質的に柱状の弾性体構造物、さらにはアスペクト比が高い微繊毛状の弾性体構造物とすることが好適である。これにより、突起部の剛性が大きく低下するためさらに高い接着力が実現される。被着体に接着する複数の突起部を備えた接着部材の場合、前述のように、第一の剥離箇所や第二の剥離箇所は基材部ではなく突起部に存在すると考えてよい。よって、Δγ1およびΔγ2は、各方向に力を加えたときに剥離が発生する突起部と被着体との間の接着エネルギーを指す。
前述した次のものについても、被着体に接着する複数の突起部を備えている構成とすることができる。すなわち、G1<G2かつΔγ1>Δγ2を満たす接着部材、G1>G2かつΔγ1<Δγ2を満たす接着部材。また、G1≧G2であって接着面の任意の場所における接着エネルギーΔγがΔγ1≦Δγまたは/およびΔγ2≧Δγを満たす接着部材。また、G1≦G2であって接着面の任意の場所における接着エネルギーΔγがΔγ1≧Δγまたは/およびΔγ2≦Δγを満たす接着部材。前述の通り、接着部材の接着面は個々の突起部の個々の接着面を集合した面である。よって、接着面の任意の場所とは、任意の突起部の接着面内における任意の場所と解するものとする。
また、接着面が実質的に均一な接着エネルギーを有する複数の領域からなり、第一の剥離箇所を含む領域の接着エネルギーがΔγ1で、第二の剥離箇所を含む領域の接着エネルギーがΔγ2である接着部材でも、複数の突起部をもつ構成とできる。例えば、図7に示す構成である。前述の通り、接着部材の接着面(705)は個々の突起部(702)の個々の接着面を集合した面であるので、この個々の接着面を集合した面が、実質的に均一な接着エネルギーを有する複数の領域(706)からなっていると解するものとする。さらに、第一の剥離箇所を含む領域の接着エネルギーをΔγ1とし、第二の剥離箇所を含む領域の接着エネルギーをΔγ2とする。この形態によれば、接着部材や被着体の表面状態を制御する作製プロセスが容易になる、あるいは構造解析等により第一の剥離箇所や第二の剥離箇所を特定する設計プロセスが容易になるといった利点がある。作製プロセスや設計プロセスの容易性という観点では領域の個数は少ない方が望ましく、2個の領域からなる構成が最良である。
接着部材と被着体との間の接着エネルギーの不均一化に対して、接着部材の弾性率または/およびポアソン比の不均一化、接着部材の水平断面形状の非対称化はそれぞれ適切に組み合わせることでさらに接着力の方向依存性を高めることができる。また、傾斜した柱状形状のように接着部材の垂直断面形状を左右対称でない形にすることによっても接着力の方向依存性を実現できることが知られているが、これも適切に組み合わせれば接着力の方向依存性を高めることができる。
ここで、接着部材の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG1、第一の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ1と表記し、第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG2、第二の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ2と表記する。すると、前述のとおり、第一の方向と第二の方向への接着力はそれぞれF(G1/Δγ1)−1/2とF(G2/Δγ2)−1/2と求まる。ここで、接着力の方向依存性の強さをR=(第二の方向への接着力)/(第一の方向への接着力)で表わすと、R=(G1Δγ2/G2Δγ1)1/2となる。R<1すなわちG1Δγ2/G2Δγ1<1の範囲では第一の方向への接着力が強く、G1Δγ2/G2Δγ1の値が小さいほど接着力の方向依存性が高い。また逆に、R>1すなわちG1Δγ2/G2Δγ1>1であれば第二の方向への接着力が強く、G1Δγ2/G2Δγ1の値が大きいほど接着力の方向依存性が高い。
よって、接着エネルギーの不均一化に対して、弾性率または/およびポアソン比の不均一化、水平断面形状の非対称化、垂直断面形状の非対称化という特徴を組み合わせる際に、次のようにすれば接着力の方向依存性を高めることができる。すなわち、G1Δγ2/G2Δγ1<1の条件下でさらに小さくする、またはG1Δγ2/G2Δγ1>1の条件下でさらに大きくするように適切に設計することで接着力の方向依存性をさらに高めることができる。
参考例として、例えば、弾性率または/およびポアソン比の不均一化と水平断面形状の非対称化を組み合わせることができる。この参考例における接着部材は、表面間力により被着体に接着する接着部材であり、弾性率または/およびポアソン比が不均一化されていて、且つ接着面に平行な面で切断した水平断面が非対称化した形状をなしている。さらに、次のようになっている。接着面に平行な第一の方向に力をかけた場合の前記接着部材の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG1a,b、第一の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ1a,bとする。また、第一の方向とは逆方向の第二の方向に第一の方向にかけた力と同じ大きさの力をかけた場合の前記接着部材の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG2a,b、第二の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ2a,bとする。すると、G1a,b/Δγ1a,b≠G2a,b/Δγ2a,bを満足している。
そして更に、前記歪みエネルギー解放率G1a,b、前記接着エネルギーΔγ1a,b、前記歪みエネルギー解放率G2a,b、及び前記接着エネルギーΔγ2a,bについて、次のように表記する。すなわち、前記接着部材の弾性率およびポアソン比を均一と仮定した場合にそれぞれG1a−,b、Δγ1a−,b、G2a−,b、Δγ2a−,bと表記する。このとき、G1a,bΔγ2a,b/G2a,bΔγ1a,b<G1a−,bΔγ2a−,b/G2a−,bΔγ1a−,b<1またはG1a,bΔγ2a,b/G2a,bΔγ1a,b>G1a−,bΔγ2a−,b/G2a−,bΔγ1a−,b>1を満足する。ここで、接着部材の弾性率およびポアソン比を均一と仮定した場合のそれらの値は、接着部材の不均一な弾性率または/およびポアソン比を平均化した値を指す。また、接着部材の弾性率およびポアソン比を均一と仮定した場合とは、接着部材の弾性率およびポアソン比以外の特徴は全て同一で、かつ接着部材全体の弾性率およびポアソン比がこの平均化した値である場合を指す。G1a−,bΔγ2a−,b/G2a−,bΔγ1a−,b<1を満たす場合は、弾性率およびポアソン比が均一な値であっても接着部材は第一の方向への接着力が強くなる方向依存性を示す。これに加えてさらに弾性率または/およびポアソン比を不均一化してG1a,bΔγ2a,b/G2a,bΔγ1a,b<G1a−,bΔγ2a−,b/G2a−,bΔγ1a−,b<1を満たすようにすれば、さらに接着力の方向依存性を高めることができる。
また同様に、G1a−,bΔγ2a−,b/G2a−,bΔγ1a−,b>1を満たす場合は、弾性率およびポアソン比が均一な値であっても接着部材は第二の方向への接着力が強くなる方向依存性を示す。これに加えてさらに弾性率または/およびポアソン比を不均一化してG1a,bΔγ2a,b/G2a,bΔγ1a,b>G1a−,bΔγ2a−,b/G2a−,bΔγ1a−,b>1を満たすようにすれば、さらに接着力の方向依存性を高めることができる。
つまり、この構成によれば、接着部材の弾性率または/およびポアソン比を不均一化したことによる効果と接着部材の水平断面形状を非対称化したことによる効果が強め合って、より高い接着力の方向依存性が発揮される。なお、前述のとおり、G1a,bΔγ2a,b/G2a,bΔγ1a,bやG1a−,bΔγ2a−,b/G2a−,bΔγ1a−,bは構造解析や実験による計測を組み合わせて求めることが可能であり、当業者は容易にこの参考例における接着部材を設計することができる。これは以下の全ての組み合わせ例についても同様である。
また、本発明の別の実施形態として、弾性率または/およびポアソン比の不均一化と接着エネルギーの不均一化を組み合わせることができる。この実施形態における接着部材は、表面間力により被着体に接着する接着部材であり、弾性率または/およびポアソン比が不均一化されている。さらに、次のようになっている。接着面に平行な第一の方向に力をかけた場合の前記接着部材の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG1a,c、第一の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ1a,cとする。また、第一の方向とは逆方向の第二の方向に第一の方向にかけた力と同じ大きさの力をかけた場合の前記接着部材の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG2a,c、第二の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ2a,cとする。すると、Δγ1a,cとΔγ2a,cとに差を有しており、且つG1a,c/Δγ1a,c≠G2a,c/Δγ2a,cを満足している。
そして更に、前記歪みエネルギー解放率G1a,c、前記接着エネルギーΔγ1a,c、前記歪みエネルギー解放率G2a,c、及び前記接着エネルギーΔγ2a,cについて、前記接着部材の弾性率およびポアソン比を均一と仮定した場合に次のように表記する。すなわち、それぞれG1a−,c、Δγ1a−,c、G2a−,c、Δγ2a−,cと表記する。このとき、G1a,cΔγ2a,c/G2a,cΔγ1a,c<G1a−,cΔγ2a−,c/G2a−,cΔγ1a−,c<1またはG1a,cΔγ2a,c/G2a,cΔγ1a,c>G1a−,cΔγ2a−,c/G2a−,cΔγ1a−,c>1を満足する。この構成によれば、接着部材の弾性率または/およびポアソン比を不均一化したことによる効果と接着部材と被着体との間の接着エネルギーに差をもたせたことによる効果が強め合って、より高い接着力の方向依存性が発揮される。
また、別の参考例としては、弾性率または/およびポアソン比の不均一化と垂直断面形状の非対称化を組み合わせることができる。すなわち、接着部材を接着面に垂直で第一の方向に平行な面で切断した断面(垂直断面形状)が、左右非対称化した形状をなすものとの組み合わせである。この参考例における接着部材は、表面間力により被着体に接着する接着部材であり、弾性率または/およびポアソン比が不均一化されていて、且つ接着面に垂直で第一の方向に平行な面で切断した垂直断面が左右非対称化した形状をなしている。そして、次のようになっている。前記接着面に平行な第一の方向に力をかけた場合の前記接着部材の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG1a,d、第一の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ1a,dとする。また、第一の方向とは逆方向の第二の方向に第一の方向にかけた力と同じ大きさの力をかけた場合の前記接着部材の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG2a,d、第二の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ2a,dとする。すると、G1a,d/Δγ1a,d≠G2a,d/Δγ2a,dを満足している。
そして更に、前記歪みエネルギー解放率G1a,d、前記接着エネルギーΔγ1a,d、前記歪みエネルギー解放率G2a,d、及び前記接着エネルギーΔγ2a,dについて、次のように表記する。すなわち、前記接着部材の弾性率およびポアソン比を均一と仮定した場合にそれぞれG1a−,d、Δγ1a−,d、G2a−,d、Δγ2a−,dと表記する。このとき、G1a,dΔγ2a,d/G2a,dΔγ1a,d<G1a−,dΔγ2a−,d/G2a−,dΔγ1a−,d<1またはG1a,dΔγ2a,d/G2a,dΔγ1a,d>G1a−,dΔγ2a−,d/G2a−,dΔγ1a−,d>1を満足する。この構成によれば、接着部材の弾性率または/およびポアソン比を不均一化したことによる効果と接着部材の垂直断面形状を非対称化したことによる効果が強め合って、より高い接着力の方向依存性が発揮される。
また、本発明の別の実施形態としては、水平断面形状の非対称化と接着エネルギーの不均一化を組み合わせることができる。この実施形態における接着部材は、表面間力により被着体に接着する接着部材であり、接着面に平行な面で切断した水平断面が非対称化した形状をなしている。さらに、次のようになっている。すなわち、前記接着面に平行な第一の方向に力をかけた場合の前記接着部材の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG1b,c、第一の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ1b,cとする。また、第一の方向とは逆方向の第二の方向に第一の方向にかけた力と同じ大きさの力をかけた場合の前記接着部材の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG2b,c、第二の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ2b,cとする。このとき、Δγ1b,cとΔγ2b,cとに差を有しており、且つG1b,c/Δγ1b,c≠G2b,c/Δγ2b,cを満足している。
そして更に、前記歪みエネルギー解放率G1b,c、前記接着エネルギーΔγ1b,c、前記歪みエネルギー解放率G2b,c、及び前記接着エネルギーΔγ2b,cについて、次のように表記する。すなわち、Δγ1b,cとΔγ2b,cとが等しいと仮定した場合にそれぞれG1b,c−、Δγ1b,c−、G2b,c−、Δγ2b,c−と表記する。このとき、G1b,cΔγ2b,c/G2b,cΔγ1b,c<G1b,c−Δγ2b,c−/G2b,c−Δγ1b,c−<1またはG1b,cΔγ2b,c/G2b,cΔγ1b,c>G1b,c−Δγ2b,c−/G2b,c−Δγ1b,c−>1を満足する。
ここで、Δγ1b,cとΔγ2b,cとが等しいと仮定した場合とは、接着部材の接着エネルギー以外の要件については全て同一である場合を前提としている。この場合のG1b,c−Δγ2b,c−/G2b,c−Δγ1b,c−はやはり構造解析や実験による計測を組み合わせて求めることが可能である。この構成によれば、接着部材の水平断面形状を非対称化したことによる効果と接着部材と被着体との間の接着エネルギーに差をもたせたことによる効果が強め合って、より高い接着力の方向依存性が発揮される。
また、別の参考例としては、水平断面形状の非対称化と垂直断面形状の非対称化を組み合わせることができる。この参考例における接着部材は、表面間力により被着体に接着する接着部材であり、接着面に平行な面で切断した水平断面が非対称化した形状をなしている。且つ前記接着部材は、前記接着面に垂直で第一の方向に平行な面で切断した垂直断面が左右非対称化した形状をなしている。
そして、次のようになっている。前記接着面に平行な第一の方向に力をかけた場合の前記接着部材の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG1b,d、第一の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ1b,dとする。また、第一の方向とは逆方向の第二の方向に第一の方向にかけた力と同じ大きさの力をかけた場合の前記接着部材の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG2b,d、第二の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ2b,dとする。このとき、G1b,d/Δγ1b,d≠G2b,d/Δγ2b,dを満足する。
そして更に、前記歪みエネルギー解放率G1b,d、前記接着エネルギーΔγ1b,d、前記歪みエネルギー解放率G2b,d、及び前記接着エネルギーΔγ2b,dについて、次のように表記する。すなわち、前記接着部材を前記接着面に垂直で第一の方向に平行な面で切断した断面が左右対称な形状をなすと仮定した場合にそれぞれG1b,d−、Δγ1b,d−、G2b,d−、Δγ2b,d−と表記する。このとき、G1b,dΔγ2b,d/G2b,dΔγ1b,d<G1b,d−Δγ2b,d−/G2b,d−Δγ1b,d−<1またはG1b,dΔγ2b,d/G2b,dΔγ1b,d>G1b,d−Δγ2b,d−/G2b,d−Δγ1b,d−>1を満足する。
ここで、接着部材を接着面に垂直で第一の方向に平行な面で切断した断面が左右対称な形状をなすと仮定した場合とは、次のとおりである。まず、接着部材を、接着面に平行な方向に無限に薄くスライスした断片の積層体と考える。そして、各断片を接着面に対し平行に移動して再度積層し、接着部材の接着面に垂直で第一の方向に平行な面で切断した断面が左右対称となるようにする。こうしてできる仮想的な接着部材を、断面が左右対称な形状をなすと仮定した場合と定義する。
図8を用いて、より詳細な手順を説明する。接着部材(801)の接着面の図心(802)を通り第一の方向(809)に平行な直線を引き、この直線と接着部材の接着面の外周との2つ交点の中点(803)をとる。この中点を原点とし、第一の方向に向いたx軸、接着部材の接着面に垂直な方向に向いたz軸、x軸とz軸の両方に直交するy軸を設ける。すると、接着部材の外周は方程式F(x,y,z)=0で表わせ、さらに座標(x,y,z)における接着部材の各種物性値を示すベクトル量はP(x,y,z)で表わすことができる。
次に、接着部材をz=hで定義される平面(804)で切断した断面(805)の図心(806)を通り第一の方向に平行な直線を引き、この直線と断面の外周との2つの交点の中点(807)の座標を(a(h),b(h),h)とする。こうして得られる中点がz軸上に来るように各断面をxy平面に平行に移動させたものを、仮想的な接着部材(808)とする。この仮想的な接着部材は、接着部材の接着面に垂直で第一の方向に平行な面で切断した断面が左右対称な形状をなしている。よって、断面が左右対称な形状をなすと仮定した場合の仮想的な接着部材の外周は、方程式F(x+a(z),y+b(z),z)=0で定義できる。さらに、座標(x,y,z)における仮想的な接着部材の各種物性値を示すベクトル量をP(x+a(z),y+b(z),z)と定義することで、物性値の分布も保持することができる。
以上にように定義した仮想的な接着部材を用いれば、G1b,d−Δγ2b,d−/G2b,d−Δγ1b,d−はやはり構造解析や実験による計測を組み合わせて求めることが可能である。この構成によれば、接着部材の水平断面形状を非対称化したことによる効果と接着部材の垂直断面形状を非対称化したことによる効果が強め合って、より高い接着力の方向依存性が発揮される。
また、本発明の別の実施形態としては、接着エネルギーの不均一化と垂直断面形状の非対称化を組み合わせることができる。この実施形態における接着部材は、表面間力により被着体に接着する接着部材であり、接着面に垂直で第一の方向に平行な面で切断した垂直断面が左右非対称化した形状をなしている。そして、次のようになっている。前記接着面に平行な第一の方向に力をかけた場合の前記接着部材の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG1c,d、第一の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ1c,dとする。また、第一の方向とは逆方向の第二の方向に第一の方向にかけた力と同じ大きさの力をかけた場合の前記接着部材の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG2c,d、第二の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ2c,dとする。このとき、Δγ1c,dとΔγ2c,dとに差を有しており、且つG1c,d/Δγ1c,d≠G2c,d/Δγ2c,dを満足する。
そして更に、前記歪みエネルギー解放率G1c,d、前記接着エネルギーΔγ1c,d、前記歪みエネルギー解放率G2c,d、及び前記接着エネルギーΔγ2c,dについて、次のように表記する。すなわち、Δγ1c,dとΔγ2c,dとが等しいと仮定した場合にそれぞれG1c−,d、Δγ1c−,d、G2c−,d、Δγ2c−,dと表記する。このとき、G1c,dΔγ2c,d/G2c,dΔγ1c,d<G1c−,dΔγ2c−,d/G2c−,dΔγ1c−,d<1またはG1c,dΔγ2c,d/G2c,dΔγ1c,d>G1c−,dΔγ2c−,d/G2c−,dΔγ1c−,d>1を満足する。
この構成によれば、接着部材と被着体との間の接着エネルギーに差をもたせたことによる効果と接着部材の垂直断面形状を非対称化したことによる効果が強め合って、より高い接着力の方向依存性が発揮される。
さらに、本発明の別の実施形態としては、接着エネルギーの不均一化に対して、弾性率または/およびポアソン比の不均一化、水平断面形状の非対称化、垂直断面形状の非対称化という特徴のうち、1つ以上の特徴を組み合わせることもできる。1つ以上の特徴を組み合わせる際に、G1Δγ2/G2Δγ1<1の条件下でさらに小さくする、またはG1Δγ2/G2Δγ1>1の条件下でさらに大きくするように適切に設計して組み合わせることで、接着力の方向依存性を特に高めることができる。
また、上記の複数の特徴を組み合わせた場合においても、接着部材が被着体に接着する複数の突起部を備えている構成とすることが好適である。すなわち、接着部材が、被着体に接着する複数の突起部と、突起部を支持する基材部とを含む形態が好ましい。このような形態であれば、前述した様に、接着部材の接着面近傍の剛性が低下するため被着体の表面粗さに対する追従性が高まり、ヤモリのように様々な被着体への接着が期待できる。また、接着力の方向依存性を有する材料という観点では、従来例の無数の傾斜柱状構造物を備えた接着材料と比較して作製が簡便であるというメリットもある。また、突起部は、実質的に柱状の弾性体構造物、さらにはアスペクト比が高い微繊毛状の弾性体構造物とすることが好適である。これにより、突起部の剛性が大きく低下するためさらに高い接着力が実現される。
以下、具体的な実施例及び参考例を挙げて、より詳細に説明する。
(実施例1)
接着部材の構成例について説明する前に、シミュレーションによる歪みエネルギー解放率の算出方法の例、およびシミュレーションによる接着プロファイルの算出方法の例を説明する。
<シミュレーションによる歪みエネルギー解放率の算出>
例えば、接着部材の剥離箇所における歪みエネルギー解放率は、破壊力学における仮想亀裂進展法と同様の手法(以下、仮想剥離進展法と呼ぶ)により求めることができる。仮想剥離進展法で使用する仮想剥離部の表面力や相対変位は、例えば境界要素法に基づく構造解析により求める。積分方程式はSomiglianaの境界積分方程式を、基本解は二相接合体の基本解であるRongvedの解を使用する。この基本解を使用することで複雑な応力が発生する接着部材と被着体の接着部に節点を設ける必要がなくなるので、より精度が高い計算が可能となる。
ここで、説明を簡単にするため、接着部材は接着面に平行かつ第一の方向に垂直な方向に関して対称な形状をとっていると仮定する。この場合、第一の方向と接着面に垂直な方向からなる二次元平面内で接着部材の挙動を解析することができる。もちろん、以下に述べる手法は三次元に容易に拡張することができる。
第一の方向への力をかけた場合の接着部材の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率を算出するために、図9に示すように接着部材(901)の第一の剥離箇所(902)に微小な仮想剥離部(903)を設定する。まず、接着面の仮想剥離部以外が被着体(904)と接着し仮想剥離部は接着していない状態(剥離時)で、接着部材上面(905)の節点に第一の方向(906)への変位ベクトルU又は接着面に垂直な方向への変位ベクトルUを与えたときの構造解析を行なう。これにより、変位Uもしくは変位Uによって仮想剥離部に発生する接着部材の接着面と被着体表面との間の相対変位ベクトルuとuを求める。次に、仮想剥離部を含む接着部材の接着面全体が被着体と接着した状態(非剥離時)で、やはり接着部材上面の節点に変位Uもしくは変位Uを与えたときの構造解析を行なう。これにより、変位Uもしくは変位Uによって接着部材の仮想剥離部表面に発生する表面力ベクトルtとt、および接着部材上面に発生する反力ベクトルRFとベクトルRFを求める。
以上の結果を線形的に足し合わせる。これにより、二次元平面内の任意の方向への変位ベクトルU=aU+bUにより接着部材の仮想剥離部表面に発生する表面力ベクトルt、接着部材の接着面と被着体表面との間の相対変位ベクトルu、接着部材上面に発生する反力ベクトルRFは以下の如くなる。
t=at+bt
u=au+bu
RF=aRF+bRF
こうして与えられる力ベクトルRFに対する第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率Gは、次のように求められる。すなわち、仮想剥離部表面の表面力ベクトルtと相対変位ベクトルuの内積を仮想剥離部全体にわたって積分した値を仮想剥離部の面積Sで割ることで、次式のようにaとbの関数として求められる。
G=∫(au+bu)(at+bt)dS/S
よって、第一の方向へ大きさFの力をかけたときの歪みエネルギー解放率G1は、RFの第一の方向への成分がFで、部材の接着面に垂直な方向への成分が0となるaとbを求め、この値を上式に代入することで求められる。第二の方向への力をかけた場合の接着部材の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率G2も、同様にして第二の剥離箇所に仮想剥離部を設けることで求めることができる。
ここで、上記の構造解析は領域分割法によって行なうのが望ましい。領域分割法は、構造解析を行なうモデル全体を複数の領域に分割して領域ごとに境界積分方程式を作成して計算する手法である。さらに、領域同士の境界部分が剥離しない場合にはその部分の変位解が等しくなる拘束条件を設け、領域同士の境界部分が剥離する場合にはその部分に拘束条件を設けず自由表面として計算する。歪みエネルギー解放率の算出時には、図10に示すように仮想剥離部(1001)の接着部材(1002)側の面と被着体(1003)側の面とが異なる領域の表面となるように2つ以上の領域(1004、1005)に分割する。このように領域分割するのは、境界積分方程式を作成する際に接着部材の接着面の節点と被着体の表面の節点とで節点間距離が0となる組み合わせが生じて計算が不可能となってしまうのを防ぐためである。なお、境界積分方程式の基本解として二相接合体の基本解を使用しているので、物性値の異なる接着部材と被着体にまたがって領域を設定することができる。
<シミュレーションによる接着プロファイルの算出>
接着プロファイルの算出方法を図11に示す。まず、上記のようにして、接着部材(1101)にベクトルRFで表わされる力を加えたときの第一の剥離箇所(1103)における歪みエネルギー解放率Gを求める。さらに、実験的手法や分子動力学的シミュレーション等により第一の剥離箇所における接着エネルギーΔγ1を求める。G<Δγ1となる場合に第一の剥離箇所からの剥離が起こらないので、この不等式を解くことで接着状態を保つためにaとbが満たすべき条件を求める。
この条件をRF=aRF+bRFに代入することで第一の剥離箇所から剥離が起こらない力ベクトルの大きさや角度の範囲を求めることができる。また、同様にして、第二の剥離箇所(1104)から剥離が起こらない力ベクトルの範囲も求める。最後に、両者の力ベクトルの範囲の重なる部分について、接着部材の接着面に平行な水平方向成分と垂直な垂直方向成分を軸とする二次元座標にプロットすることで接着プロファイルが得られる。
(参考例1)
以下、実施例及び参考例では、接着部材についての接着力の方向依存性の強さや接着プロファイルを説明する。まず、詳細な接着力の解析の前に簡単な応力解析を行なうことで剥離箇所を見積もった。いずれの例においても、第一の剥離箇所(1203)は接着部材(1205)の接着面の第二の方向(1202)の端部で、第二の剥離箇所(1204)は接着面の第一の方向(1201)の端部と考えて差し支えない(図12(A)〜(F))。なお、接着部材が被着体に接着する複数の突起部と基材部とを含む構成として、例えば、図12(A)〜(F)の(1205)の下部に複数の突起部を有しているものが考えられる。突起部が接着面と平行な面内において等方的であれば、この構成の接着部材の接着力の方向依存性は(1205)の形状における応力分布と接着面の接着エネルギー分布に左右される。よって、突起部を含む接着部材においても以下の実施例や参考例と同様に接着力の方向依存性が出ると考えて差し支えない。
<弾性率を不均一化した場合の接着プロファイルの解析>
解析のモデル形状を図12(A)に示す。接着部材(1205)の形状を直径10cm、高さ10cmの円柱形状とした。接着面からの高さが1mm以上の部分について、第一の方向(1201)側の幅2cmの領域(1207)の弾性率とポアソン比を29MPaと0.45とした。残りの領域の弾性率とポアソン比を0.29MPaと0.45とした。また、被着体の弾性率とポアソン比は80GPaと0.21とし、構造解析時の被着体(1206)の形状は直径11cm、高さ1cmの円柱形状とした。接着部材と被着体との間の接着エネルギーは接着面全体で一様とした。
第一の方向(1201)へ1Nの力を加えた場合の第一の剥離箇所(1203)における歪みエネルギー解放率G1は3.0mJ/mであった。第二の方向(1202)へ1Nの力を加えた場合の第二の剥離箇所(1204)における歪みエネルギー解放率G2は49mJ/mであった。第一の剥離箇所と第二の剥離箇所における接着エネルギーΔγ1とΔγ2がともに70mJ/mである場合、G1/Δγ1=0.042、G2/Δγ2=0.69となる。よって、G1/Δγ1≠G2/Δγ2を満足する。第一の方向への接着力は1×(G1/Δγ1−1/2=4.9N、第二の方向への接着力は1×(G2/Δγ2−1/2=1.2Nとなり、接着力に方向依存性が出た。この場合、第二の方向への接着力と比較して第一の方向への接着力の方が強い。この接着部材の接着プロファイルを図13に示す。よって、本例によれば、接着部材の弾性率を不均一化したことによる効果により接着部材の接着力に方向依存性が出る。
(参考例2)
<水平断面形状を非対称化した場合の接着プロファイルの解析>
解析のモデル形状を図12(B)に示す。接着部材(1205)の形状を、水平断面が底辺10cmで高さ10cmの二等辺三角形で、高さが10cmの三角柱形状とし、弾性率とポアソン比を0.29MPaと0.45とした。また、被着体の弾性率とポアソン比は80GPaと0.21とし、構造解析時の被着体(1206)の形状は断面が底辺11cmで高さ11cmの二等辺三角形で、高さが2cmの三角柱形状とした。なお、第一の方向(1201)は水平断面の底辺と垂直で、二等辺三角形の頂点の方向とする。接着部材と被着体との間の接着エネルギーは接着面全体で一様とした。
第一の方向(1201)へ1Nの力を加えた場合の第一の剥離箇所(1203)における歪みエネルギー解放率G1は25mJ/mであった。第二の方向(1202)へ1Nの力を加えた場合の第二の剥離箇所(1204)における歪みエネルギー解放率G2は62mJ/mであった。第一の剥離箇所と第二の剥離箇所における接着エネルギーΔγ1とΔγ2がともに70mJ/mである場合、G1/Δγ1=0.36、G2/Δγ2=0.89となる。よって、G1/Δγ1≠G2/Δγ2を満足する。
第一の方向への接着力は1×(G1/Δγ1−1/2=1.7N、第二の方向への接着力は1×(G2/Δγ2−1/2=1.1Nとなり、接着力に方向依存性が出た。この場合、第二の方向への接着力と比較して第一の方向への接着力の方が強い。この接着部材の接着プロファイルを図14に示す。よって、本例によれば、接着部材の水平断面形状を非対称化したことによる効果により接着部材の接着力に方向依存性が出る。
(実施例2)
<接着エネルギーを不均一化した場合の接着プロファイルの解析>
解析のモデル形状を図12(C)に示す。接着部材(1205)の形状を直径10cm、高さ10cmの円柱形状とし、弾性率とポアソン比を0.29MPaと0.45とした。また、被着体の弾性率とポアソン比は80GPaと0.21とし、構造解析時の被着体(1206)の形状は直径11cm、高さ2cmの円柱形状とした。また、接着部材と被着体との間の接着エネルギーは、接着面の第一の方向(1201)側の半分の領域で7mJ/m、第二の方向(1202)側の半分の領域で70mJ/mとした。
よって、第一の剥離箇所(1203)と第二の剥離箇所(1204)における接着エネルギーΔγ1とΔγ2は70mJ/mと7mJ/mとなり、Δγ1とΔγ2に差が出ている。接着部材の形状・物性とも回転対称であるため、第一の剥離箇所と第二の剥離箇所の歪みエネルギー解放率は同じ値となる。第一の方向もしくは第二の方向へ1Nの力を加えた場合、歪みエネルギー解放率G1とG2はともに11mJ/mであった。よって、G1/Δγ1=0.16、G2/Δγ2=1.6となり、G1/Δγ1≠G2/Δγ2を満足する。
第一の方向への接着力は1×(G1/Δγ1−1/2=2.5N、第二の方向への接着力は1×(G2/Δγ2−1/2=0.80Nとなり、接着力に方向依存性が出た。この場合、第二の方向への接着力と比較して第一の方向への接着力の方が強い。この接着部材の接着プロファイルを図15に示す。よって、本例によれば、接着部材と被着体との間の接着エネルギーに差をもたせたことによる効果により接着部材の接着力に方向依存性が出る。
(実施例3)
<弾性率を不均一化し、接着エネルギーを不均一化した場合の接着プロファイルの解析>解析のモデル形状は参考例1と同じものを用いた(図12(A))。接着部材(1205)と被着体(1206)との間の接着エネルギーは、接着面の第一の方向(1201)側の半分の領域で7mJ/m、第二の方向(1202)側の半分の領域で70mJ/mとした。よって、第一の剥離箇所(1203)と第二の剥離箇所(1204)における接着エネルギーΔγ1a,cとΔγ2a,cは70mJ/mと7mJ/mとなり、Δγ1a,cとΔγ2a,cに差が出ている。
参考例1と同じく、第一の方向へ1Nの力を加えた場合の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率G1a,cは3.0mJ/m、第二の方向へ1Nの力を加えた場合の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率G2a,cは49mJ/mとなる。 よって、G1a,c/Δγ1a,c=0.042、G2a,c/Δγ2a,c=6.9となる。G1a,cΔγ2a,c/G2a,cΔγ1a,c=0.0061であり、G1a,cΔγ2a,c/G2a,cΔγ1a,c≠1を満足する。
接着部材の弾性率およびポアソン比が均一な値であると仮定した場合、接着部材は形状・物性とも回転対称となるのでG1a−,c=G2a−,cである。Δγ1a−,c=Δγ1a,c=70mJ/m、Δγ2a−,c=Δγ2a,c=7mJ/mよりG1a−,cΔγ2a−,c/G2a−,cΔγ1a−,c=0.1となり、G1a,cΔγ2a,c/G2a,cΔγ1a,c<G1a−,cΔγ2a−,c/G2a−,cΔγ1a−,c<1を満足する。第一の方向への接着力は1×(G1a,c/Δγ1a,c−1/2=4.9N、第二の方向への接着力は1×(G2a,c/Δγ2a,c−1/2=0.38Nとなり、接着力に方向依存性が出た。この場合、第二の方向への接着力と比較して第一の方向への接着力の方が強い。
この接着部材の接着プロファイルを図16に示す。ここで、接着力の方向依存性の強さを、R=(第二の方向への接着力)/(第一の方向への接着力)で表わす。第一の方向への接着力が強い場合にはこの値が小さいほど、第二の方向への接着力が強い場合にはこの値が大きいほど、接着力の方向依存性が強い。本例の接着部材の場合はR=0.078となり、高い方向依存性を示した。一方、接着部材の弾性率およびポアソン比が均一な値であると仮定するとR={1×(G2a−,c/Δγ2a−,c−1/2}/{1×(G1a−,c/Δγ1a−,c−1/2}=0.32である。つまり、弾性率の不均一化と接着エネルギーの不均一化が効果的に接着力の方向依存性を高めている。よって、本例によれば、接着部材の弾性率を不均一化したことによる効果と接着部材の接着エネルギーに差をもたせたことによる効果が強め合って、接着部材の接着力により高い方向依存性が出る。
(実施例4)
<水平断面形状を非対称化し、接着エネルギーを不均一化した場合の接着プロファイルの解析>
解析のモデル形状は参考例2と同じものを用いた(図12(B))。接着部材(1205)と被着体(1206)との間の接着エネルギーは、接着面の第一の方向(1201)側の半分の領域で7mJ/m、第二の方向(1202)側の半分の領域で70mJ/mとした。
よって、第一の剥離箇所(1203)と第二の剥離箇所(1204)における接着エネルギーΔγ1b,cとΔγ2b,cは70mJ/mと7mJ/mとなり、Δγ1b,cとΔγ2b,cに差が出ている。参考例2と同じく、第一の方向へ1Nの力を加えた場合の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率G1b,cは25mJ/m、第二の方向へ1Nの力を加えた場合の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率G2b,cは62mJ/mとなる。よって、G1b,c/Δγ1b,c=0.36、G2b,c/Δγ2b,c=8.9となる。G1b,cΔγ2b,c/G2b,cΔγ1b,c=0.040であり、G1b,cΔγ2b,c/G2b,cΔγ1b,c≠1を満足する。
第一の剥離箇所における接着エネルギーと第二の剥離箇所における接着エネルギーが等しいと仮定した場合、Δγ1b,c−=Δγ2b,c−である。G1b,c−=G1b,c=25mJ/m、G2b,c−=G2b,c=62mJ/mよりG1b,c−Δγ2b,c−/G2b,c−Δγ1b,c−=0.40となり、G1b,cΔγ2b,c/G2b,cΔγ1b,c<G1b,c−Δγ2b,c−/G2b,c−Δγ1b,c−<1を満足する。第一の方向への接着力は1×(G1b,c/Δγ1b,c−1/2=1.7N、第二の方向への接着力は1×(G2b,c/Δγ2b,c−1/2=0.34Nとなり、接着力に方向依存性が出た。この場合、第二の方向への接着力と比較して第一の方向への接着力の方が強い。
この接着部材の接着プロファイルを図17に示す。接着力の方向依存性の強さは、本例についてはR=0.20となり、高い方向依存性を示した。第一の剥離箇所における接着エネルギーと第二の剥離箇所における接着エネルギーが等しいと仮定するとR={1×(G2b,c−/Δγ2b,c−−1/2}/{1×(G1b,c−/Δγ1b,c−−1/2}=0.63である。つまり、水平断面形状の非対称化と接着エネルギーの不均一化が効果的に接着力の方向依存性を高めている。よって、本例によれば、接着部材の水平断面形状を非対称化したことによる効果と接着部材と被着体との間の接着エネルギーに差をもたせたことによる効果が強め合って、接着部材の接着力により高い方向依存性が出る。
(参考例3)
<水平断面形状を非対称化し、垂直断面形状を非対称化した場合の接着プロファイルの解析>
解析のモデル形状を図12(D)に示す。接着部材(1205)の形状を高さ10cmの傾斜した三角柱形状とし、軸(1208)と第一の方向(1201)とがなす角度を60度とした。水平断面の形状は底辺10cmで高さ10cmの二等辺三角形で、断面の向きは二等辺三角形の底辺が第一の方向と垂直で頂点が第一の方向へ向くようにした。接着部材の垂直断面は平行四辺形形状であり左右非対称化されている。接着部材の弾性率とポアソン比は0.29MPaと0.45とした。また、被着体の弾性率とポアソン比は80GPaと0.21とし、構造解析時の被着体(1206)の形状は断面が底辺11cmで高さ11cmの二等辺三角形で、高さが2cmの三角柱形状とした。接着部材と被着体との間の接着エネルギーは接着面全体で一様とした。
第一の方向(1201)へ1Nの力を加えた場合の第一の剥離箇所(1203)における歪みエネルギー解放率G1b,dは7.0mJ/mであった。第二の方向(1202)へ1Nの力を加えた場合の第二の剥離箇所(1204)における歪みエネルギー解放率G2b,dは290mJ/mであった。第一の剥離箇所と第二の剥離箇所における接着エネルギーΔγ1b,dとΔγ2b,dがともに70mJ/mである場合、G1b,d/Δγ1b,d=0.10、G2b,d/Δγ2b,d=4.1となる。 G1b,dΔγ2b,d/G2b,dΔγ1b,d=0.024であり、G1b,dΔγ2b,d/G2b,dΔγ1b,d≠1を満足する。
接着部材の第一の方向に平行な垂直断面形状が左右対称であると仮定した場合、参考例2よりG1b,d−=25mJ/m、G2b,d−=62mJ/mである。 Δγ1b,d−=Δγ1b,d=Δγ2b,d−=Δγ2b,d=70mJ/mよりG1b,d−Δγ2b,d−/G2b,d−Δγ1b,d−=0.40となり、G1b,dΔγ2b,d/G2b,dΔγ1b,d<G1b,d−Δγ2b,d−/G2b,d−Δγ1b,d−<1を満足する。第一の方向への接着力は1×(G1b,d/Δγ1b,d−1/2=3.2N、第二の方向への接着力は1×(G2b,d/Δγ2b,d−1/2=0.49Nとなり、接着力に方向依存性が出た。この場合、第二の方向への接着力と比較して第一の方向への接着力の方が強い。
この接着部材の接着プロファイルを図18に示す。接着力の方向依存性の強さは、本例についてはR=0.15となり、高い方向依存性を示した。接着部材の第一の方向に平行な垂直断面形状が左右対称であると仮定するとR={1×(G2b,d−/Δγ2b,d−−1/2}/{1×(G1b,d−/Δγ1b,d−−1/2}=0.63である。つまり、水平断面形状の非対称化と垂直断面形状の非対称化が効果的に接着力の方向依存性を高めている。よって、本例によれば、接着部材の水平断面形状を非対称化したことによる効果と接着部材の垂直断面形状を非対称化したことによる効果が強め合って、接着部材の接着力により高い方向依存性が出る。
(実施例5)
<接着エネルギーを不均一化し、垂直断面形状を非対称化した場合の接着プロファイルの解析>
解析のモデル形状を図12(E)に示す。接着部材(1205)の形状を直径10cmで高さ10cmの傾斜した円柱形状とし、軸(1208)と第一の方向(1201)とがなす角度を60度とした。接着部材の垂直断面は平行四辺形形状であり左右非対称化されている。接着部材の弾性率とポアソン比は0.29MPaと0.45とした。また、被着体の弾性率とポアソン比は80GPaと0.21とし、構造解析時の被着体(1206)の形状は直径11cm、高さ1cmの円柱形状とした。
さらに、接着部材と被着体との間の接着エネルギーは、接着面の第一の方向側の半分の領域で7mJ/m、第二の方向(1202)側の半分の領域で70mJ/mとした。よって、第一の剥離箇所(1203)と第二の剥離箇所(1204)における接着エネルギーΔγ1c,dとΔγ2c,dは70mJ/mと7mJ/mとなり、Δγ1c,dとΔγ2c,dに差が出ている。第一の方向へ1Nの力を加えた場合の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率G1c,dは1.7mJ/m、第二の方向へ1Nの力を加えた場合の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率G2c,dは30mJ/mであった。よって、G1c,d/Δγ1c,d=0.024、G2c,d/Δγ2c,d=4.3となる。G1c,dΔγ2c,d/G2c,dΔγ1c,d=0.0055であり、G1c,dΔγ2c,d/G2c,dΔγ1c,d≠1を満足する。
第一の剥離箇所における接着エネルギーと第二の剥離箇所における接着エネルギーが等しいと仮定した場合、Δγ1c−,d=Δγ2c−,dである。G1c−,d=G1c,d=1.7mJ/m、G2c−,d=G2c,d=30mJ/mよりG1c−,dΔγ2c−,d/G2c−,dΔγ1c−,d=0.055となり、G1c,dΔγ2c,d/G2c,dΔγ1c,d<G1c−,dΔγ2c−,d/G2c−,dΔγ1c−,d<1を満足する。第一の方向への接着力は1×(G1c,d/Δγ1c,d−1/2=6.5N、第二の方向への接着力は1×(G2c,d/Δγ2c,d−1/2=0.48Nとなり、接着力に方向依存性が出た。この場合、第二の方向への接着力と比較して第一の方向への接着力の方が強い。
この接着部材の接着プロファイルを図19に示す。接着力の方向依存性の強さは、本例についてはR=0.074となり、高い方向依存性を示した。第一の剥離箇所における接着エネルギーと第二の剥離箇所における接着エネルギーが等しいと仮定するとR={1×(G2c−,d/Δγ2c−,d−1/2}/{1×(G1c−,d/Δγ1c−,d−1/2}=0.23である。つまり、接着エネルギーの不均一化と垂直断面形状の非対称化が効果的に接着力の方向依存性を高めている。よって、本例によれば、接着部材と被着体との間の接着エネルギーに差をもたせたことによる効果と接着部材の垂直断面形状を非対称化したことによる効果が強め合って、接着部材の接着力により高い方向依存性が出る。
(参考例4)
<弾性率を不均一化し、水平断面形状を非対称化し、垂直断面形状を非対称化した場合の接着プロファイルの解析>
解析のモデル形状を図12(F)に示す。接着部材(1205)の形状を高さ10cmの傾斜した三角柱形状とし、軸(1208)と第一の方向(1201)とがなす角度を60度とした。水平断面の形状は底辺10cmで高さ10cmの二等辺三角形で、断面の向きは二等辺三角形の底辺が第一の方向と垂直で頂点が第一の方向へ向くようにした。接着部材の垂直断面は平行四辺形形状であり左右非対称化されている。接着部材の弾性率とポアソン比は、接着面からの高さが1mm以上で且つ水平断面の第一の方向側の5cmの領域(1207)について29MPaと0.45とした。残りの領域については、0.29MPaと0.45とした。
また、被着体の弾性率とポアソン比は80GPaと0.21とし、構造解析時の被着体(1206)の形状は断面が底辺11cmで高さ11cmの二等辺三角形で、高さが2cmの三角柱形状とした。接着部材と被着体との間の接着エネルギーは接着面全体で一様とした。第一の方向(1201)へ1Nの力を加えた場合の第一の剥離箇所(1203)における歪みエネルギー解放率G1は0.090mJ/mであった。第二の方向(1202)へ1Nの力を加えた場合の第二の剥離箇所(1204)における歪みエネルギー解放率G2は97mJ/mであった。
第一の剥離箇所と第二の剥離箇所における接着エネルギーΔγ1とΔγ2がとも70mJ/mである場合、G1/Δγ1=0.0013、G2/Δγ2=1.4となる。G1Δγ2/G2Δγ1=9.3×10−4であり、G1Δγ2/G2Δγ1≠1を満足する。
詳細は省略するが、本例においては、G1Δγ2/G2Δγ1の値がG1Δγ2/G2Δγ1<1の条件下でより小さくなるように弾性率の不均一化・水平断面形状の非対称化・垂直断面形状の非対称化の3つの特徴が適切に組み合わされている。第一の方向への接着力は1×(G1/Δγ1)−1/2=28N、第二の方向への接着力は1×(G2/Δγ2)−1/2=0.85Nとなり、接着力に方向依存性が出た。この場合、第二の方向への接着力と比較して第一の方向への接着力の方が強い。
この接着部材の接着プロファイルを図20に示す。本例における接着力の方向依存性の強さはR=0.030となり、非常に高い方向依存性を示した。これは、本例において、G1Δγ2/G2Δγ1の値がG1Δγ2/G2Δγ1<1の条件下でより小さくなるように弾性率の不均一化・水平断面形状の非対称化・垂直断面形状の非対称化の3つの特徴が適切に組み合わされているためである。つまり、それぞれの特徴が効果的に接着力の方向依存性を高めている。よって、本例によれば、接着部材の弾性率を不均一化したことによる効果、接着部材の水平断面形状を非対称化したことによる効果、接着部材の垂直断面形状を非対称化したことによる効果が強め合って、接着部材の接着力に非常に高い方向依存性が出る。
(実施例6)
<水平断面形状を非対称化し、接着エネルギーを不均一化し、垂直断面形状を非対称化した場合の接着プロファイルの解析>
解析のモデル形状は参考例3と同じものを用いた(図12(D))。接着部材(1205)と被着体(1206)との間の接着エネルギーは、接着面の第一の方向(1201)側の半分の領域で7mJ/m、第二の方向(1202)側の半分の領域で70mJ/mとした。よって、第一の剥離箇所(1203)と第二の剥離箇所(1204)における接着エネルギーΔγ1とΔγ2は70mJ/mと7mJ/mとなり、Δγ1とΔγ2に差が出ている。参考例3と同じく、第一の方向へ1Nの力を加えた場合の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率G1は7.0mJ/m、第二の方向へ1Nの力を加えた場合の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率G2は290mJ/mとなる。よって、G1/Δγ1=0.10、G2/Δγ2=41となる。G1Δγ2/G2Δγ1=0.0024であり、G1Δγ2/G2Δγ1≠1を満足する。
詳細は省略するが、本例においては、G1Δγ2/G2Δγ1の値がG1Δγ2/G2Δγ1<1の条件下でより小さくなるように水平断面形状の非対称化・接着エネルギーの不均一化・垂直断面形状の非対称化の3つの特徴が適切に組み合わされている。第一の方向への接着力は1×(G1/Δγ1)−1/2=3.2N、第二の方向への接着力は1×(G2/Δγ2)−1/2=0.16Nとなり、接着力に方向依存性が出た。この場合、第二の方向への接着力と比較して第一の方向への接着力の方が強い。
この接着部材の接着プロファイルを図21に示す。本例における接着力の方向依存性の強さはR=0.049となり、非常に高い方向依存性を示した。これは、本例において、G1Δγ2/G2Δγ1の値がG1Δγ2/G2Δγ1<1の条件下でより小さくなるように水平断面形状の非対称化・接着エネルギーの不均一化・垂直断面形状の非対称化の3つの特徴が適切に組み合わされているためである。つまり、それぞれの特徴が効果的に接着力の方向依存性を高めている。よって、本例によれば、以下の効果が強め合って、接着部材の接着力に非常に高い方向依存性が出る。接着部材の水平断面形状を非対称化したことによる効果。接着部材と被着体との間の接着エネルギーに差をもたせたことによる効果。接着部材の垂直断面形状を非対称化したことによる効果。
(実施例7)
<弾性率を不均一化し、水平断面形状を非対称化し、接着エネルギーを不均一化し、垂直断面形状を非対称化した場合の接着プロファイルの解析>
解析のモデル形状は参考例4と同じものを用いた(図12(F))。接着部材(1205)と被着体(1206)との間の接着エネルギーは、接着面の第一の方向(1201)側の半分の領域で7mJ/m、第二の方向(1202)側の半分の領域で70mJ/mとした。よって、第一の剥離箇所(1203)と第二の剥離箇所(1204)における接着エネルギーΔγ1とΔγ2は70mJ/mと7mJ/mとなり、Δγ1とΔγ2に差が出ている。参考例4と同じく、第一の方向へ1Nの力を加えた場合の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率G1は0.090mJ/m、第二の方向へ1Nの力を加えた場合の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率G2は97mJ/mとなる。 よって、G1/Δγ1=0.0013、G2/Δγ2=14となる。G1Δγ2/G2Δγ1=9.3×10−5であり、G1Δγ2/G2Δγ1≠1を満足する。
詳細は省略するが、本例では、G1Δγ2/G2Δγ1の値がG1Δγ2/G2Δγ1<1の条件下でより小さくなる様に弾性率の不均一化・水平断面形状の非対称化・接着エネルギーの不均一化・垂直断面形状の非対称化の4つの特徴が適切に組み合わされている。第一の方向への接着力は1×(G1/Δγ1)−1/2=28N、第二の方向への接着力は1×(G2/Δγ2)−1/2=0.27Nとなり、接着力に方向依存性が出た。この場合、第二の方向への接着力と比較して第一の方向への接着力の方が強い。
この接着部材の接着プロファイルを図22に示す。本例における接着力の方向依存性の強さはR=0.0096となり、特に高い方向依存性を示した。これは、本例で、G1Δγ2/G2Δγ1の値がG1Δγ2/G2Δγ1<1の条件下でより小さくなるように弾性率の不均一化・水平断面形状の非対称化・接着エネルギーの不均一化・垂直断面形状の非対称化の4つの特徴が適切に組み合わされているためである。つまり、それぞれの特徴が効果的に接着力の方向依存性を高めている。よって、本例によれば、以下の効果が強め合って、接着部材の接着力に特に高い方向依存性が出る。接着部材の弾性率を不均一化したことによる効果。接着部材の水平断面形状を非対称化したことによる効果。接着部材と被着体との間の接着エネルギーに差をもたせたことによる効果。接着部材の垂直断面形状を非対称化したことによる効果。
(実施例8)
続いて、被着体に接着する複数の突起部を備えた接着部材の作製方法の例、および接着プロファイルの実測評価結果の例を説明する。
<突起部を有する接着部材の作製方法>
複数の突起部を有する接着部材は、突起部の形状を模した鋳型を用いて高分子樹脂を成型することで作製する。鋳型の作製方法は、以下の通りである。
まず、ガラスウエハ上に突起部の形やパターンに応じたクロムマスクを定法により作製する。次に、クロム面上にフォトレジスト(商品名AZP4903、AZ Electronic Materials)をスピンコートする。さらに、フォトレジストをガラスウエハ側から露光し、定法により現像することで鋳型となるレジストのパターンを得る。高分子樹脂の成型方法は、以下の通りである。
レジストパターン上にポリジメチルシロキサン(商品名Sylgard 184、Dow Corning Toray、以下PDMS)のベース、キャタリストの10:1混合液をスピンコートした後、100°Cで1時間かけて熱硬化する。アセトンでレジストを溶解しPDMSのシートを単離し、さらにアセトンで数回洗浄し真空乾燥する。
以上により、複数の突起部と基材部とを含む接着部材を一体物として作製した。接着部材に存在する突起部の形状は、直径10μm、高さ10μmの円柱形状とし、隣り合うそれら突起部の円柱底面の中心間距離を30μmとした。また、基材部は、1cm角サイズで100μmの厚さとした。接着部材の走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、以下SEM)による観察像を図23に示す。
<接着エネルギーを不均一化した接着部材の作製方法>
接着部材の接着エネルギーを不均一化する方法は、以下の通りである。ここでは、複数の突起部を有する接着部材の接着面を、第一の剥離箇所と第二の剥離箇所をそれぞれ含む2つの領域に分けて、2つの領域の接着エネルギーに差を持たせる方法について記載する。なお、接着部材の接着力が強い方向を第一の方向とした。
本例では、図24(A)に示すように、接着部材は複数の突起部(2402)と基材部(2401)を備えている。さらに、接着面は第一の剥離箇所(2403)を含む領域(2404)と第二の剥離箇所(2405)を含む領域(2406)とに2分されており、それぞれの領域は実質的に均一な接着エネルギーを有している。
第一の方向(2407)への接着力の方が強くなるような方向依存性が出る接着部材を作製する場合は、第一の剥離箇所(2403)を含む領域の接着エネルギーを、第二の剥離箇所(2405)を含む領域の接着エネルギーよりも大きくする必要がある。そこで、接着部材に部分的に真空紫外光(Vacuum Ultra Violet、以下VUV)を照射し、第一の剥離箇所を含む領域の接着エネルギーを大きくした。
具体的には、図24(B)に示すように、1cm角の接着部材の半分のエリア(2409)のみにVUVを照射し、残り半分のエリア(2410)は、フォトマスクによりVUVを遮光した。VUV照射は、エキシマランプ(製品名EX‐Mini、浜松ホトニクス株式会社、波長172nm)を用い、照射強度50mW/cm2、ランプから接着部材までの距離約10mmの条件下で60秒間行なった。VUV照射による接着エネルギーの変化を確認するため、別途ガラスウエハ上に作製したPDMS平面を使用して、VUV照射後の水接触角を測定した。
VUV未照射のPDMS平面は108°の水接触角を示し、一方でVUVを照射したPDMS平面は10°以下の水接触角を示した。水接触角が小さくなることは、PDMS表面が親水的に改質され、高い表面自由エネルギー、すなわち高い接着エネルギーを有していることを意味する。
以上により、第一の剥離箇所を含む領域の接着エネルギーを、第二の剥離箇所を含む領域の接着エネルギーより高くした接着部材を得た。
<接着プロファイルの実測評価>
接着部材の接着力の測定は、テクスチャーアナライザー(TA.XT Plus、Stable Micro Systems Ltd.)により行なった。本装置は1軸の力センサと1軸駆動のリニアアクチュエータを有している。1cm角のサイズの接着部材を使用し、被着体は平坦なガラス板とした。図25に示すように、接着部材(2503)を固定したサンプルステージ(2505)の設置角度(2502)を変えることで被着体を引き上げる力(2506)と接着面(2501)との間の角度を変え、接着部材が被着体(2504)から剥離した際の力を測定した。得られた接着力を接着部材の面積で割って規格化し、垂直方向成分の力と水平方向成分の力に分解してプロットすることで接着プロファイルを得た。VUV照射により第一の剥離箇所と第二の剥離箇所の接着面の接着エネルギーに差を持たせた本例の接着部材と、比較例としてVUV照射前の接着エネルギーが均一な接着部材の接着プロファイルを計測した。
まず、接着面の接着エネルギーが均一な接着部材の接着プロファイルを図26(A)に示す。この接着プロファイルは左右対称的であり、突起部の高さ方向に引っ張った場合に接着力が強い。次に、VUV照射により第一の剥離箇所と第二の剥離箇所の接着面の接着エネルギーに差を持たせた接着部材の接着プロファイルを図26(B)に示す。この接着プロファイルは左右非対称であり、接着部材が接着力の方向依存性を示すことが分かった。水平方向の正負の接着力はそれぞれ絶対値で単位面積当たり4.0N/cm2、2.3N/cm2であり、接着力の方向依存性の強さはR=0.57であった。
これにより、本例によれば、第一の剥離箇所と第二の剥離箇所の接着エネルギーに差を持たせた効果によって、接着部材の接着力が高い方向依存性を示すことを確認した。
(参考例5)
<弾性率を不均一化した接着部材の作製方法>
接着部材の弾性率を不均一化する方法は、以下の通りである。ここでは、複数の突起部を有する接着部材について、第一の剥離箇所と第二の剥離箇所をそれぞれ含む2つの部位の間で弾性率に差を持たせる方法について記載する。なお、接着部材の接着力が強い方向を第一の方向とした。
作製上の都合により、本参考例における接着部材の大まかな構成は図27に示すようなものとした。すなわち、複数の突起部(2701)を有するA部(2702)とB部(2703)とを備えており、さらにA部とB部を固定するための基板部(2704)を有している。A部を第二の方向(2706)側に、B部を第一の方向(2705)側に配置した場合、第一の剥離箇所(2707)はA部突起部、第二の剥離箇所(2708)はB部突起部に存在する。そして、A部の弾性率をB部の弾性率よりも低くすれば第一の方向(2705)への接着力の方が強くなるような方向依存性が出る。そこで、A部を作製する際には弾性率の低い材料を、B部を作製する際には弾性率の高い材料を用いた。これにより、弾性率を不均一化した接着部材を得ることができる。
より詳細な作製工程について、図28を用いて説明する。最初に、PDMSのベース及びキャタリストの混合比を調節することで、A部またはB部の構成部材であるPDMSシート(2801、2802)を作製した。
A部におけるPDMSシートの作製については、次の通りである。まず、突起部の鋳型となるレジストパターン上にPDMSのベース、キャタリストの10:0.3混合液をスピンコートした後、100℃で1時間かけて熱硬化させ、このサイクルを5回繰り返す。そして、アセトンでレジストを溶解し、PDMSシート(2801)を単離し、さらにアセトンで数回洗浄し真空乾燥する。歪み量10%時の引っ張り荷重値から弾性率を求めると、このPDMSシートの弾性率は0.22MPaであった。
B部におけるPDMSシートの作製については、次の通りである。まず、レジストパターン上にPDMSのベース、キャタリストの10:3混合液をスピンコートした後、100℃で1時間かけて熱硬化させ、このサイクルを7回繰り返す。そして、アセトンでレジストを溶解し、PDMSシート(2802)を単離し、さらにアセトンで数回洗浄し真空乾燥する。歪み量10%時の引っ張り荷重値から弾性率を求めると、このPDMSシートの弾性率は1.8MPaであった。よって、B部のPDMSシートは、A部のPDMSシートの8.2倍の弾性率を有していることを確認した。
次いで、このA部およびB部それぞれに含まれる突起部の先端の高さを揃えるためのプロセスを行なった。このプロセスは最終的な接着部材の接着力向上のためのものである。図28(A)に示すように、ガラスウエハ(2803)にPDMSのベース、キャタリストの10:1混合液を質量比で10%含むオクタン溶液(2804)をスピンコートし、この表面に突起部が接触するようにそれぞれのPDMSシートをのせる。真空下でオクタンを蒸発・除去した後に、100℃で1時間かけて熱硬化する。それぞれのPDMSシートの上面に少量のPDMSのベース、キャタリストの10:1混合液(2805)を滴下し、ガラス基板(2806)をのせて再び同様な条件で熱硬化させる。その後、エタノール中で突起部と接着している方のガラスウエハを剥離させて、真空乾燥させる。最後に、図28(B)に示すようにそれぞれのPDMSシートが1cm角になるようにカッターで切りだすことで、同等なサイズを有するA部(2807)およびB部(2808)を作製した。
次に図28(C)に示すように、A部およびB部(2807、2808)が隣り合うようにガラスウエハ(2809)と突起部を接触させた上で、それぞれのガラス基板の上面にエポキシ系接着剤(2810)を少量滴下し、A部およびB部の上面が全体的に固定できるような大きさのガラス基板(2811)をのせて3者を接着させる。これにより、A部とB部の突起部の先端の高さが揃い、高い接着力を持つ接着部材が得られる。最終的に、ガラスウエハ(2809)を脱離させて、弾性率を不均一化した接着部材を得た。
<接着プロファイルの実測評価>
本参考例の接着部材の接着力評価は、トライボロジーテスター(UMT TriboLab、Bruker Co.)により行った。本装置は、3軸の力センサーと3軸駆動のリニアアクチュエータを有している。図29に示すように、先に説明した弾性率を不均一化した接着部材(2901)を上部のプローブホルダ側に固定した。この際、ゲル材料(2902)を介して接着部材を固定した。また、被着体としてガラスウエハ(2903)を使用し、これを下部のサンプルステージ側に固定した。
リニアアクチュエータを駆動させて、接着部材と被着体を接触させ、10Nの圧縮荷重で接着させた。その後、3Nの引っ張り荷重が発生するまで引きあげた。そして、第一の方向(2904)または第二の方向(2905)に0.1mm/secの速度でスライドして、接着部材が被着体から剥離した際の力を接着力として測定した。
本例の接着部材を第一の方向にスライドさせた場合において、接着力の垂直方向成分の力は3.5/Ncm−2であり、水平方向成分の力は5.1/Ncm−2であった。一方で、第二の方向に操作させた場合において、接着力の垂直方向成分の力は2.7/Ncm−2であり、水平方向成分の力は−2.6/Ncm−2であった。これは、実質的に接着面に対して左右40度程度の方向に引上げた時の接着力について示している。水平方向の接着力を絶対値で比べた比は0.51であり、接着部材の接着力が方向依存性を示すことが分かった。
これにより、本例によれば、第一の剥離箇所を含む領域と第二の剥離箇所を含む領域の弾性率に差を持たせた効果によって、接着部材の接着力が高い方向依存性を示すことが確認された。
201:接着部材、202:接着面、203:被着体、205:第一の方向、206:第二の方向、207:第一の剥離箇所、208:第二の剥離箇所、209:第一の方向への力、210:第二の方向への力

Claims (9)

  1. 表面間力により被着体に接着する接着部材であって、
    接着面に平行な第一の方向に力をかけた場合の前記接着部材の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG1、前記第一の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ1とし、前記第一の方向とは逆方向の第二の方向に前記第一の方向にかけた力と同じ大きさの力をかけた場合の前記接着部材の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG2、前記第二の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ2として、
    G1/Δγ1≠G2/Δγ2を満たすようにΔγ1とΔγ2とに差を有していることを特徴とする接着部材。
  2. 前記歪みエネルギー解放率G1、G2および前記接着エネルギーΔγ1、Δγ2が、G1<G2かつΔγ1>Δγ2、またはG1>G2かつΔγ1<Δγ2を満たすことを特徴とする請求項1に記載の接着部材。
  3. 前記歪みエネルギー解放率G1とG2がG1≧G2であって、前記接着面の任意の場所における接着エネルギーΔγが、Δγ1≦Δγまたは/およびΔγ2≧Δγを満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の接着部材。
  4. 前記歪みエネルギー解放率G1とG2がG1≦G2であって、前記接着面の任意の場所における接着エネルギーΔγが、Δγ1≧Δγまたは/およびΔγ2≦Δγを満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の接着部材。
  5. 前記接着面が、実質的に均一な接着エネルギーを有する複数の領域からなり、前記第一の剥離箇所を含む領域の接着エネルギーがΔγ1で、前記第二の剥離箇所を含む領域の接着エネルギーがΔγ2であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の接着部材。
  6. 前記接着部材が、前記被着体に接着する複数の突起部と、前記突起部を支持する基材部とを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の接着部材。
  7. 表面間力により被着体に接着する接着部材であって、
    前記接着部材は、接着面に垂直で第一の方向に平行な面で切断した垂直断面が左右非対称化した形状をなしており、
    前記接着面に平行な前記第一の方向に力をかけた場合の前記接着部材の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG1c,d、前記第一の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ1c,dとし、前記第一の方向とは逆方向の第二の方向に前記第一の方向にかけた力と同じ大きさの力をかけた場合の前記接着部材の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG2c,d、前記第二の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ2c,dとして、
    Δγ1c,dとΔγ2c,dとに差を有しており、
    且つG1c,d/Δγ1c,d≠G2c,d/Δγ2c,dを満足しており、前記歪みエネルギー解放率G1c,d、前記接着エネルギーΔγ1c,d、前記歪みエネルギー解放率G2c,d、及び前記接着エネルギーΔγ2c,dについて、Δγ1c,dとΔγ2c,dとが等しいと仮定した場合にそれぞれG1c−,d、Δγ1c−,d、G2c−,d、Δγ2c−,dと表記して、
    G1c,dΔγ2c,d/G2c,dΔγ1c,d<G1c−,dΔγ2c−,d/G2c−,dΔγ1c−,d<1またはG1c,dΔγ2c,d/G2c,dΔγ1c,d>G1c−,dΔγ2c−,d/G2c−,dΔγ1c−,d>1を満足することを特徴とする接着部材。
  8. 前記接着部材が、前記被着体に接着する複数の突起部と、前記突起部を支持する基材部とを含み、前記垂直断面の前記左右非対称化が少なくとも前記基材部においてなされていることを特徴とする請求項7に記載の接着部材。
  9. 前記突起部は、柱状の形状をなすことを特徴とする請求項6または8に記載の接着部材。
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