JP2015199929A - 接着部材 - Google Patents
接着部材 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2015199929A JP2015199929A JP2015067074A JP2015067074A JP2015199929A JP 2015199929 A JP2015199929 A JP 2015199929A JP 2015067074 A JP2015067074 A JP 2015067074A JP 2015067074 A JP2015067074 A JP 2015067074A JP 2015199929 A JP2015199929 A JP 2015199929A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- adhesive
- force
- protrusion
- energy
- peeling
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Classifications
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C09—DYES; PAINTS; POLISHES; NATURAL RESINS; ADHESIVES; COMPOSITIONS NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; APPLICATIONS OF MATERIALS NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
- C09J—ADHESIVES; NON-MECHANICAL ASPECTS OF ADHESIVE PROCESSES IN GENERAL; ADHESIVE PROCESSES NOT PROVIDED FOR ELSEWHERE; USE OF MATERIALS AS ADHESIVES
- C09J7/00—Adhesives in the form of films or foils
-
- B—PERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
- B29—WORKING OF PLASTICS; WORKING OF SUBSTANCES IN A PLASTIC STATE IN GENERAL
- B29C—SHAPING OR JOINING OF PLASTICS; SHAPING OF MATERIAL IN A PLASTIC STATE, NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; AFTER-TREATMENT OF THE SHAPED PRODUCTS, e.g. REPAIRING
- B29C39/00—Shaping by casting, i.e. introducing the moulding material into a mould or between confining surfaces without significant moulding pressure; Apparatus therefor
- B29C39/02—Shaping by casting, i.e. introducing the moulding material into a mould or between confining surfaces without significant moulding pressure; Apparatus therefor for making articles of definite length, i.e. discrete articles
- B29C39/026—Shaping by casting, i.e. introducing the moulding material into a mould or between confining surfaces without significant moulding pressure; Apparatus therefor for making articles of definite length, i.e. discrete articles characterised by the shape of the surface
-
- B—PERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
- B29—WORKING OF PLASTICS; WORKING OF SUBSTANCES IN A PLASTIC STATE IN GENERAL
- B29C—SHAPING OR JOINING OF PLASTICS; SHAPING OF MATERIAL IN A PLASTIC STATE, NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; AFTER-TREATMENT OF THE SHAPED PRODUCTS, e.g. REPAIRING
- B29C39/00—Shaping by casting, i.e. introducing the moulding material into a mould or between confining surfaces without significant moulding pressure; Apparatus therefor
- B29C39/02—Shaping by casting, i.e. introducing the moulding material into a mould or between confining surfaces without significant moulding pressure; Apparatus therefor for making articles of definite length, i.e. discrete articles
- B29C39/04—Shaping by casting, i.e. introducing the moulding material into a mould or between confining surfaces without significant moulding pressure; Apparatus therefor for making articles of definite length, i.e. discrete articles using movable moulds not applied
- B29C39/08—Introducing the material into the mould by centrifugal force
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C09—DYES; PAINTS; POLISHES; NATURAL RESINS; ADHESIVES; COMPOSITIONS NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; APPLICATIONS OF MATERIALS NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
- C09J—ADHESIVES; NON-MECHANICAL ASPECTS OF ADHESIVE PROCESSES IN GENERAL; ADHESIVE PROCESSES NOT PROVIDED FOR ELSEWHERE; USE OF MATERIALS AS ADHESIVES
- C09J2301/00—Additional features of adhesives in the form of films or foils
- C09J2301/30—Additional features of adhesives in the form of films or foils characterized by the chemical, physicochemical or physical properties of the adhesive or the carrier
- C09J2301/31—Additional features of adhesives in the form of films or foils characterized by the chemical, physicochemical or physical properties of the adhesive or the carrier the adhesive effect being based on a Gecko structure
-
- Y—GENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
- Y10—TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC
- Y10T—TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER US CLASSIFICATION
- Y10T428/00—Stock material or miscellaneous articles
- Y10T428/24—Structurally defined web or sheet [e.g., overall dimension, etc.]
- Y10T428/24479—Structurally defined web or sheet [e.g., overall dimension, etc.] including variation in thickness
- Y10T428/24612—Composite web or sheet
Landscapes
- Chemical & Material Sciences (AREA)
- Organic Chemistry (AREA)
- Laminated Bodies (AREA)
- Adhesives Or Adhesive Processes (AREA)
Abstract
【課題】 比較的強い接着力の方向依存性を有する接着部材を提供する。
【解決手段】 部材の表面より突起する突起部を備え、前記突起部の端面と被着体との間の表面間力により、前記端面が前記被着体に接着する接着部材であって、前記表面に平行な第一の方向に力をかけた場合の前記突起部の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG1c、第一の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ1cとし、第一の方向とは逆方向の第二の方向に第一の方向にかけた力と同じ大きさの力をかけた場合の前記突起部の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG2c、第二の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ2cとして、G1c/Δγ1c≠G2c/Δγ2cを満たすようにΔγ1cとΔγ2cとに差を有している接着部材。
【選択図】 図2
【解決手段】 部材の表面より突起する突起部を備え、前記突起部の端面と被着体との間の表面間力により、前記端面が前記被着体に接着する接着部材であって、前記表面に平行な第一の方向に力をかけた場合の前記突起部の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG1c、第一の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ1cとし、第一の方向とは逆方向の第二の方向に第一の方向にかけた力と同じ大きさの力をかけた場合の前記突起部の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG2c、第二の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ2cとして、G1c/Δγ1c≠G2c/Δγ2cを満たすようにΔγ1cとΔγ2cとに差を有している接着部材。
【選択図】 図2
Description
本発明は、接着部材に関する。特には、特定方向の力に対しては強く接着し、別の方向の力に対しては弱い接着力を示す、接着力に方向依存性を有する接着部材に関する。
接着部材は、より強い接着力、高い耐久性・耐熱性が求められ場合が多く、これを満足する方向での開発が進められてきた。しかしながら、限り有る資源を有効に活用しようとするリサイクルの面では、剥がしたいときには容易に剥がせ、再利用できるものが有用である。そのため、力をかける方向によって接着力が大きく変化し、力をかける方向を適切に選ぶことで強固に接着しつつ容易に剥離できる接着部材、すなわち接着力に方向依存性を有する接着部材が求められてきている。このような接着部材としては、接着部材の接着面の表面形状に特徴を持たせた例がいくつか報告されている。
非特許文献1には、垂直断面形状を非対称化した傾斜柱状構造物の集合体を有する接着部材が開示されている。これによると接着面に対して水平な方向への接着力にある程度の方向依存性があり、柱状構造物を引っ張るような水平方向の力をかけた場合には強く接着し、柱状構造物を圧縮するような水平方向の力をかけた場合には接着力が弱いことが示されている。また、特許文献1には、同じく傾斜した柱状構造物の集合体を有する接着部材が開示されており、これによると糊残りすることなく被着体から比較的容易に剥離できるとされている。
一方、非特許文献2および特許文献2には先端をくさび形にカットした柱状構造物の集合体を有する接着部材が開示されている。この接着部材では、くさび形形状の先端部が変形して被着体に接着する際に生じる内部応力を利用して接着力の方向依存性を高めている。そのため、この手法では接着力を発揮するために前もって接着材料を被着体に押しつけてから使用する必要がある上に、接着面に対して垂直な方向の接着力が弱くなるという不都合が生ずる。
よって、先端をくさび形化する手法とは異なる手法で接着力の方向依存性を実現することが望ましい。
M. Murphy,B. Aksak,and M. Sitti, "Adhesion and Anisotropic Friction Enhancement of Angled Heterogeneous Micro−Fiber Arrays with Spherical and Spatula Tips" Journal of Adhesion Science and Technology,vol. 21,no. 12−13,pp. 1281−1296,2007.
D. Santos,M. Spenko,A. Parness, S. Kim,and M. Cutkosky, "Directional adhesion for climbing: theoretical andpractical considerations" Journal of Adhesion Science and Technology,vol. 21,no. 12−13,1317−1341,2007.
上述した従来の、単に傾斜した柱状構造物を用いて被着体に接着させるという手法では、接着力の方向依存性を高くできないという課題を有している。本発明は、上記課題に鑑み、比較的強い接着力の方向依存性を有する接着部材を提供することを目的とする。
本発明により提供される接着部材は、部材の表面より突起する突起部を備え、前記突起部の端面と被着体との間の表面間力により、前記端面が前記被着体に接着する接着部材であって、前記表面に平行な第一の方向に力をかけた場合の前記突起部の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG1c、第一の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ1cとし、第一の方向とは逆方向の第二の方向に第一の方向にかけた力と同じ大きさの力をかけた場合の前記突起部の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG2c、第二の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ2cとして、G1c/Δγ1c≠G2c/Δγ2cを満たすようにΔγ1cとΔγ2cとに差を有していること特徴とする。
本発明によれば、第一の方向へ力をかけた場合と第二の方向へ力をかけた場合の接着力に差を生じさせることができ、接着力に比較的強い方向依存性を有する接着部材を実現できる。
本発明の接着部材について具体的に説明する前に、本発明と密接に関連する接着力の方向依存性の定義について図1を用いて説明する。まず、図1(A)に示すように、ある接着部材と被着体からなる複合体(101)に対し、接着界面(103)と任意の角度をなす方向へ引っ張った際の接着力(106)を考える。図1(B)は、図1(A)の断面図である。さらに、この接着力を水平方向成分の力(104)と垂直方向成分の力(105)に分解し、図1(C)〜(E)に示すように二次元平面内にプロットする(107〜109、以下この二次元プロットを接着プロファイルと呼ぶ)。水平方向をどのようにとってもその方向について形状や物性等の非対称性を有しない複合体の場合、この接着プロファイルは常に水平方向に左右対称なものとなる(図1(C))。一方で、ある水平方向について何らかの非対称性を有する複合体の場合は、この接着プロファイルが水平方向に非対称になる場合がある(図1(D))。このような非対称な接着プロファイルを示す性質を接着力の方向依存性と呼ぶものとする。適切に複合体を設計し接着力の方向依存性を高めることができれば、例えば図1(E)に示したような接着プロファイルを持つ接着複合体を実現できる。この場合、110の範囲の角度で引っ張った際には強い接着力を示すが、ほぼ逆方向の111の範囲の角度で引っ張った際には弱い接着力しか示さない。すなわち、力をかける方向を適切に選ぶことで強く接着させたり弱い力で剥離したりできる。本発明は、このような高い接着力の方向依存性をもつ接着部材を提供するものである。
つぎに、本発明の実施形態における接着部材の構成について説明する。本発明の接着部材は、部材の表面より突起する突起部を備え、前記突起部の端面と被着体との間の表面間力により、前記端面が前記被着体に接着する接着部材である。そして、前記表面に平行な第一の方向に力をかけた場合の前記突起部の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG1a、第一の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ1aとし、第一の方向とは逆方向の第二の方向に第一の方向にかけた力と同じ大きさの力をかけた場合の前記突起部の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG2a、第二の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ2aとして、G1a/Δγ1a≠G2a/Δγ2aを満たすように前記突起部の弾性率または/およびポアソン比を不均一化している。
図2を用いて本実施形態における接着部材の構成について、説明する。接着部材は、部材(201)の表面(202)より突起する1つまたは複数の突起部(203)を備えている。また、接着部材は、突起部の端面(204)と被着体(205)との間の表面間力によって被着体205に接着する。ここで、表面間力とは、2つの物体間の相互作用力のうち物体の重心間距離ではなく表面間距離に強く依存する力を指す。例えば、典型的な例としては分子間力による相互作用力が挙げられる。
本発明においては、突起部203は、弾性体構造物とすることができる。弾性体構造物とは、粘性的挙動より弾性的挙動の方が支配的な構造物である。このような構造物であれば粘性的挙動によるエネルギーの散逸が相対的に少なくなるので、後述するメカニズムにより接着力の方向依存性が出やすい。大よその目安として、実用的な観点から設定した観測時間(接着部材の剥離にかけられる時間)や温度において、損失係数tanδの値が0.3以下であるのが望ましい。高分子樹脂は適度な弾性率を持つ上に広い歪み範囲にわたって弾性的挙動を示すため、突起部に弾性的性質を付与する成分として適している。突起部を構成する材料としては、好適には、ポリジメチルシロキサン(Polydimethylsiloxane:PDMS)、ポリウレタン(Polyurethane:PU)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(Polymethyl methacrylate:PMMA)やその類縁体を挙げることができる。本発明においては、部材201と突起部203は、別体として構成することも可能だが、一体物として構成することもできる。部材の表面202が複数の突起部を有する場合においても、接着部材の接着特性は個々の突起部の接着特性の総和で表わされる。よって、接着部材に接着力の方向依存性をもたせるためには、以下のように個々の突起部を適切に設計すればよい。
すなわち、突起部は、接着部材に対し部材の表面202に平行な第一の方向(206)に力をかけて被着体から剥離する場合と、第一の方向とは逆方向の第二の方向(207)に力をかけて被着体から剥離する場合とで、異なる箇所から剥離が始まる。ここで部材の表面に平行な第一の方向は、部材の表面が平面である場合には文字通り平面に平行な方向であるが、表面が曲面の場合には、突起部が存在する位置における曲面の接線方向と解して差支えない。例えば、突起部に隣接して表出した表面から、突起部が存在する位置における曲面の接線方向を特定することが可能である。
この剥離箇所を、それぞれ第一の剥離箇所(208)と第二の剥離箇所(209)と定義する。なお、このような力をかける方向によって異なる剥離箇所を有するという性質は、突起部が端面で表面間力により被着体と接着するという特徴に由来する。ここで、第一の方向への力(210)をかけた場合の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率と接着エネルギーをG1aとΔγ1aと定義する。そして、第一の方向への力と同じ大きさで第二の方向への力(211)をかけた場合の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率と接着エネルギーをG2aとΔγ2aと定義する。
本発明において、歪みエネルギー解放率とは、1単位面積の剥離が進展した際に失われる弾性歪みエネルギーの量と定義する。具体的には、微小面積dSの剥離が進展した際に失われる弾性歪みエネルギー量をdUとし、dU/dSにより求まる。また、接着エネルギーとは、1単位面積の接着面で互いに接着している2つの物体A、Bを引き離して新しい表面が形成される際の表面自由エネルギーの変化量と定義する。物体A、Bの表面自由エネルギーをΔγA、ΔγB、物体AとBの間の界面自由エネルギーをΔγABとし、ΔγA+ΔγB−ΔγABにより求まる。本発明の接着部材は、これらの物性値がG1a/Δγ1a≠G2a/Δγ2aを満たすように突起部の弾性率または/およびポアソン比が不均一化されている。
本発明において、弾性率とは、弾性変形における応力と歪みとの間の比例定数(応力/歪み)と定義する。粘性的挙動も示す場合には、エネルギーを蓄積する効果を表す貯蔵弾性率を指すものとする。また、ポアソン比とは、物体に単軸応力を加え弾性変形させた時の単軸応力方向に沿った歪みと、二次的に発生する単軸応力に直交する方向の歪みの比と定義する。ここで、ポアソン比と比較して弾性率の方が材料に依存して大きく値が変わるので、弾性率を不均一化したものが好適に用いられる。
また、突起部内に空隙を設けたようなものも、空隙部の弾性率がゼロであると考えることができるので本実施形態における不均一化の手法の一つである。例えば、突起部の一部分に多数の空隙を設けた場合にはその領域の平均的な弾性率が下がるので、実質的には弾性率が異なる材料を使用したのと同等の効果が得られる。
上記の構成により接着力に方向依存性が出る理由は以下のとおりである。まず、歪みエネルギー解放率G1aおよびG2aを与える第一の方向への力と第二の方向への力の大きさをFとし、第一の方向への接着力をF1、第二の方向への接着力をF2とする。歪みエネルギー解放率の値はかけた力の2乗に比例するので、第一の方向へF1の力をかけたときの第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率はG1a(F1/F)2、第二の方向へF2の力をかけたときの第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率はG2a(F2/F)2となる。線形破壊力学における理論とのアナロジーから考えると、歪みエネルギー解放率が接着エネルギーと等しくなるときに突起部が被着体から剥離する。よって、G1a(F1/F)2=Δγ1aおよびG2a(F2/F)2=Δγ2aを解くことで、第一の方向と第二の方向への接着力はそれぞれF1=F(G1a/Δγ1a)−1/2とF2=F(G2a/Δγ2a)−1/2と求まる。以上により、G1a/Δγ1a≠G2a/Δγ2aであれば第一の方向と第二の方向への接着力が異なるという効果が発現することが理解される。
G1a/Δγ1a<G2a/Δγ2aであれば第一の方向の接着力が強く、G1a/Δγ1a>G2a/Δγ2aであれば第二の方向の接着力が強い。G1a/Δγ1aとG2a/Δγ2aの差が大きいほど接着部材の方向依存性が大きくなるため、例えばG1a/Δγ1aとG2a/Δγ2aの差が2倍以上のものが好適に用いられ、5倍以上のものがさらに好適に用いられる。
歪みエネルギー解放率G1aとG2aは突起部と被着体の形状・弾性率・ポアソン比に依存し、これらの情報に基づいて有限要素法や境界要素法などによる構造解析から容易に算出可能である。これには、例えば、応力拡大係数から求める方法、J積分を求める方法、微小な仮想剥離を進展させる方法(破壊力学における仮想亀裂進展法に相当)などが挙げられる。表面間力が分子間力に基づく相互作用力の場合には、接着エネルギーΔγ1aとΔγ2aは表面の化学状態に依存する。例えば、接触角測定により突起部の剥離箇所および被着体表面の表面エネルギーを求め、分散成分・極性成分・水素結合成分の値から拡張Fowkes式により求めることができる。他にも、突起部の剥離箇所や被着体表面を形成する化学種が分かれば分子動力学的シミュレーションにより推測することも可能であるし、JKR試験等により実験的に計測することも可能である。表面間力が分子間力以外の相互作用力の場合であっても、表面間力がはたらく表面同士を接着状態から無限遠まで離すのに必要な仕事量を求め、単位接着面積あたりに換算することで接着エネルギーを求めることができる。
本実施形態においては上述のように歪みエネルギー解放率と接着エネルギーは推測ないし計測が可能なものであるため、当業者は容易にG1a/Δγ1a≠G2a/Δγ2aを満たすように弾性率または/およびポアソン比の分布を設計することができる。以上のように、本実施形態においては、力をかける方向によって突起部が被着体から剥離する際の剥離箇所が異なるという性質を利用して接着力の方向依存性を実現している。
よって、突起部の端面は被着体に対してほぼ平行な平面であることが望ましい。このような形態であれば、さらなる副次的な効果として、接着力を発揮させるために前もって接着部材を強く被着体に押しつける必要がない、接着面に対して垂直な方向の接着力が弱くなりにくいといったメリットがある。しかし、必ずしも被着体に対して完全に平行かつ平面である必要はなく、力をかける方向によって異なる剥離箇所を有する限り本発明に包含される。ここで、ある方向に力をかけた場合の突起部の剥離箇所は、例えば、構造解析に基づき推測することが可能である。具体的には、突起部の端面における歪みエネルギー解放率Gaの分布を求め、さらに接着エネルギーΔγaの分布を加味して、Ga/Δγaが最大となる箇所を求めればよい。また、実際に実験的に観察して決定することもできる。よって、力をかける方向によって異なる剥離箇所を有するような突起部は当業者には容易に設計が可能である。なお、ある方向が第一の方向であればその際の剥離箇所が第一の剥離箇所であり、ある方向が第二の方向であればその際の剥離箇所が第二の剥離箇所となる。逆に、Kendallの剥離モデルのような突起部の側面で接着する状態が支配的となる形状は突起部の形状として望ましくない。この場合、一度接着すると力をかける方向によらず剥離箇所が実質的に同一の箇所となるため、本発明と同様の設計思想に基づいて接着力の方向依存性を高めることは難しい。よって、このような接着状態を示す場合は本発明の包含するところではない。
ここで、突起部の弾性率を不均一化することで接着力に方向依存性がでるのは、以下の理由による。説明を簡単にするために突起部が円柱形状であると仮定し、図3(A)に示すように円柱(301)の端面(底面)が被着体と接着して固定されている状態を考える。円柱に対し第一の方向(304)や第二の方向(305)へ力をかけると、円柱には逆方向の曲げモーメント(302、303)がかかる。弾性率が均一な場合には、先端に曲げモーメント(302、303)をかけたときに歪みや応力がゼロになる中立面(309)は突起部の中央であり、歪みの絶対値は曲げの外側と内側とで同じ値となる。よって、曲げの方向によらず最大の引っ張り応力は同じ値となり、接着力には方向依存性が出ない。
次に、弾性率が不均一な円柱(306)として、例えば第一の方向(304)の側の半分の領域(307)の弾性率が第二の方向(305)の側の半分の領域(308)の弾性率より大きい場合について考える(図3(B))。この場合、中立面(309)が第一の方向の側にずれるため歪みの絶対値は第一の方向の側が小さくなるものの、応力の絶対値は弾性率の効果が支配的となり第一の方向の側の方が大きくなる。この効果によって、第一の方向の側が外側となる曲げモーメント(311)に対する引っ張り応力の方が、第二の方向の側が外側となる曲げモーメント(310)に対する引っ張り応力より大きくなる。よって、G1a/Δγ1a<G2a/Δγ2aとなり、第一の方向への接着力の方が強くなるような方向依存性が出る。なお、弾性率の大小関係が逆であれば、接着力の方向依存性も逆になる。
上記の議論では、説明を簡単にするために構造物が円柱形状であると仮定した。しかし、この議論は、断面が円形ではない柱状の構造物はもちろんのこと、定性的には柱状以外のあらゆる形状の構造物にも拡張できる議論である。よって、本実施形態における突起部の形状は円柱形状に限定されるものではない。また、突起部と被着体との間の接着エネルギーが均一であるという仮定をおいた。しかし、接着エネルギーが不均一な場合であっても、弾性率の分布を適切に設計することで突起部内の応力分布を変化させ接着力の方向依存性を高めることができるのは明らかである。よって、本実施形態は、突起部と被着体との間の接着エネルギーが均一な場合に限定されるものではない。
以上の議論から明らかなように、突起部の水平断面内の弾性率の分布に関して、第一の方向の側の半分の領域の平均的な弾性率と、第二の方向の側の半分の領域の平均的な弾性率が異なるようなものが好適に用いられる。すなわち、突起部の弾性率は、突起部を第一の方向に垂直な方向に沿って、二分した一方の平均弾性率と、他方の平均弾性率と、が異なるように不均一化することが好ましい。これらの差が5倍以上のものがさらに好適に用いられる。突起部全体の水平断面で弾性率がこのような分布を示すのが望ましいが、一部分の水平断面のみで弾性率がこのような分布を示す場合も本実施形態に包含される。
また、突起部は、実質的に柱状の弾性体構造物とすることが好適である。これにより、突起部の剛性が低下するため被着体の表面粗さに対する追従性が高まり高い接着力が実現される。突起部の成形は、例えば、3Dプリンターを含む各種の光・熱造形技術、結晶成長などの自己組織化的成形技術、削り出しといった機械加工成形技術などにより直接的に行うことができる。また、これらの直接的な成形技術により作製した型を用いて高分子樹脂を成形する手法も、量産化の面では非常に効率的である。
弾性率または/およびポアソン比を不均一化した突起部は、次のような手法で作製することができる。例えば、突起部の一部を物理的に改質することによって弾性率または/およびポアソン比を不均一化する。より具体的には、均一な材料で作製した突起部に対し部分的に電子またはイオンビームや紫外光を照射することで、突起部の一部が改質され弾性率または/およびポアソン比が不均一化した突起部が得られる。また、弾性率または/およびポアソン比が異なる材料を用いて逐次的に突起部を作製することによって弾性率または/およびポアソン比を不均一化する。より具体的には、別々に作製した材料を貼り合わせる方法や、光・熱造形技術を用いて2段階で突起部を作る方法などが挙げられる。あるいは、高分子樹脂で形成された突起部内の硬化度や化学結合状態に分布を持たせることによっても弾性率または/およびポアソン比を不均一化できる。
さらには、弾性率または/およびポアソン比が異なる物体を突起部内で一方向に偏らせる方法なども考えられる。物体の沈降現象を利用すれば突起部内に物体を一方向に偏らせることができる。どのような手法が適しているかは、接着部材に求められる仕様等を踏まえて適宜判断すればよい。
他の実施形態として、突起部の水平断面形状を非対称化することによっても接着力の方向依存性をもつ接着部材を提供できる。本発明の接着部材は、部材の表面より突起する突起部を備え、前記突起部の端面と被着体との間の表面間力により、前記端面が前記被着体に接着する接着部材である。
本実施形態では、前記表面に平行な第一の方向に力をかけた場合の前記突起部の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG1b、第一の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ1bとし、第一の方向とは逆方向の第二の方向に第一の方向にかけた力と同じ大きさの力をかけた場合の前記突起部の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG2b、第二の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ2bとして、G1b/Δγ1b≠G2b/Δγ2bを満たすように前記突起部を前記表面に平行に切断した断面が非対称化した形状をなしている。尚、この突起部を部材の表面に平行に切断した断面の形状は、水平断面形状とも表記する。前述のとおり、第一の方向と第二の方向への接着力はそれぞれF(G1b/Δγ1b)−1/2とF(G2b/Δγ2b)−1/2と求まる。よって、本実施形態においては、G1b/Δγ1b≠G2b/Δγ2bを満たすように突起部の水平断面形状を非対称化することで、第一の方向と第二の方向への接着力が異なるという接着力の方向依存性を実現する。
突起部を突起部が突起する部材の表面に平行(水平)な面で切断した水平断面形状は、点対称でない形状もしくは第一の方向と直交する軸に関して線対称でない形状であるのが好適である。また、突起部全体に渡って水平断面形状が非対称化されているのが望ましいが、一部分のみが非対称化されている場合も本実施形態に包含される。前述のとおり歪みエネルギー解放率と接着エネルギーは推測ないし計測が可能なので、当業者は容易にG1b/Δγ1b≠G2b/Δγ2bを満たすように水平断面形状を設計でき、前述のとおり接着力に方向依存性が出る。G1b/Δγ1bとG2b/Δγ2bの差が大きいほど接着部材の方向依存性が大きくなるため、例えばG1b/Δγ1bとG2b/Δγ2bの差が2倍以上のものが好適に用いられ、5倍以上のものがさらに好適に用いられる。
ここで、水平断面形状を非対称化することで接着力に方向依存性がでるのは、以下の理由による。すなわち、図4(A)に示すように、第一の方向(401)に直交しかつ水平断面形状の断面一次モーメントがゼロとなる軸(403)の位置が水平断面の第一の方向の端部(404)と第二の方向の端部(405)の中央(406)からずれるためである。説明を簡単にするために突起部が均一な弾性率を有する柱状形状の構造物であると仮定した上で、図5に示すように柱状物(502)の端面(底面)が被着体と接着して固定されている状態を考える。この図の場合、断面一次モーメントがゼロとなる軸の位置(501)が第二の方向(506)側にずれている。なお、弾性率が均一であると仮定しているので、中立軸の位置は断面一次モーメントがゼロとなる軸の位置と一致する。柱状物に対し第一の方向(505)や第二の方向(506)へ力をかけると、柱状物には逆方向の曲げモーメント(503、504)がかかる。先端に曲げモーメント(503、504)がかかった場合の応力分布を考えると、歪みの絶対値は第一の方向の側の方が第二の方向の側より大きくなる。その結果、応力の絶対値も第一の方向の側の方が第二の方向の側より大きくなる。この効果によって、第一の方向の側が外側となる曲げモーメント(504)に対する引っ張り応力の方が、第二の方向の側が外側となる曲げモーメント(503)に対する引っ張り応力より大きくなる。よって、G1b/Δγ1b<G2b/Δγ2bとなり、第一の方向への接着力の方が強くなるような方向依存性が出る。なお、断面一次モーメントがゼロとなる軸の位置が第一の方向側にずれていれば、接着力の方向依存性も逆になる。なお、上記の議論では断面一次モーメントがゼロになる軸の位置と中立軸の位置を一致させるために、突起部の弾性率が均一という仮定をおいた。また、突起部と被着体との間の接着エネルギーに関しても均一であると仮定した。しかし、弾性率や接着エネルギーが不均一な場合であっても、水平断面形状を適切に非対称化することで中立軸の位置を変化させて接着力の方向依存性を高めることができるのは明らかである。よって、本実施形態は、突起部の弾性率や接着エネルギーが均一な場合に限定されるものではない。また、突起部の形状についても一様な断面をもつ柱状形状を仮定したが、定性的には他のあらゆる形状の突起部にも拡張できる議論であり、本実施形態は、柱状形状の突起部に限定されるものではない。
以上の議論より明らかなように、水平断面形状の断面一次モーメントがゼロとなる軸の位置のずれが大きいほど接着力の方向依存性が高まる。よって、このずれの大きさが第一の方向の端部と第二の方向の端部の間の距離の5%以上であるものが好適に用いられる。例えば、断面一次モーメントがゼロとなる軸が第二の方向へ大きくずれた水平断面形状としては、図4(B)に示すような形状もしくはその類似形状が挙げられる。いずれも、水平断面形状の第一の方向(401)に直行する方向の幅(407)が第二の方向(402)へ向かって実質的に単調に増加し、断面一次モーメントがゼロとなる軸の位置が効果的に第二の方向の側にずれる。ここで、実質的に単調に増加するとは、部分的には水平断面形状の幅が減少する部位を含んでいてもよく、例えば扇形の断面形状(408)もその範囲内である。さらに好適には、水平断面形状の幅が第一の方向から第二の方向へ向かって実質的に加速度的に増加する断面形状(409)が用いられる。断面一次モーメントがゼロとなる軸の位置が突起部全体にわたって同じ側へずれているのが望ましいが、突起部の一部分のみにおいてずれている場合も本実施形態に包含される。また、突起部としては、実質的に柱状の弾性体構造物が好適に用いられる。これにより、突起部の剛性が低下するため被着体の表面粗さに対する追従性が高まり高い接着力が実現される。
他の実施形態として、突起部と被着体の間の接着エネルギーを不均一化することによっても接着力の方向依存性をもつ接着部材を提供できる。本発明の接着部材は、部材の表面より突起する突起部を備え、前記突起部の端面と被着体との間の表面間力により、前記端面が前記被着体に接着する接着部材である。本実施形態では、前記表面に平行な第一の方向に力をかけた場合の前記突起部の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG1c、第一の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ1cとし、第一の方向とは逆方向の第二の方向に第一の方向にかけた力と同じ大きさの力をかけた場合の前記突起部の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG2c、第二の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ2cとして、G1c/Δγ1c≠G2c/Δγ2cを満たすようにΔγ1cとΔγ2cとに差を有している。前述のとおり、第一の方向と第二の方向への接着力はそれぞれF(G1c/Δγ1c)−1/2とF(G2c/Δγ2c)−1/2と求まる。よって、本実施形態においては、G1c/Δγ1c≠G2c/Δγ2cを満たすようにΔγ1cとΔγ2cに差をもたせることで、第一の方向と第二の方向への接着力が異なるという接着力の方向依存性を実現する。
歪みエネルギー解放率は構造解析等により推測可能なので、当業者は容易にG1c/Δγ1c≠G2c/Δγ2cを満たすように接着エネルギーΔγ1cとΔγ2cの値を設計できる。G1c/Δγ1cとG2c/Δγ2cの差が大きいほど接着部材の方向依存性が大きくなるため、例えば、G1c/Δγ1cとG2c/Δγ2cの差が2倍以上のものが好適に用いられ、5倍以上のものがさらに好適に用いられる。Δγ1cとΔγ2cもその差が大きいものが好適に用いられ、望ましくは差が2倍以上、さらに望ましくは差が5倍以上である。表面間力が分子間力に基づく相互作用力の場合には、接着エネルギーΔγ1cとΔγ2cは接触角測定や分子動力学的シミュレーション、JKR試験等により求めることができる。表面間力が分子間力以外の相互作用力の場合であっても、表面間力がはたらく表面同士を接着状態から無限遠まで離すのに必要な仕事量を求め、単位接着面積あたりに換算することで接着エネルギーを求めることができる。接着エネルギーは突起部の端面と被着体との相互作用エネルギーとして定義される物理量なので、突起部の端面の表面状態のみならず被着体の表面状態を変えることによってもΔγ1cとΔγ2cに差をもたせることができる。また、表面粗さを変えて第一の剥離箇所と第二の剥離箇所の接触状態に差をもたせることによっても、接着力の方向依存性を実現することができる。表面粗さによって接触状態を変えることは、接着部に接着エネルギーがゼロとみなせる空隙を設けていると考えることができる。つまり、表面粗さを大きくすることで見かけ上の平均的な接着エネルギーを下げているということになる。よって、突起部の端面(底面)や被着体の表面粗さを不均一化することで接着力の方向依存性を実現した接着部材も、本実施形態に包含される。
好適な実施形態として、G1cとG2cおよびΔγ1cとΔγ2cが、G1c<G2cかつΔγ1c>Δγ2c、またはG1c>G2cかつΔγ1c<Δγ2cを満たすような接着部材が挙げられる。この理由は以下のとおりである。G1c/Δγ1c<G2c/Δγ2cであれば第一の方向への接着力が強く、G1c/Δγ1c>G2c/Δγ2cであれば第二の方向への接着力が強い。よって、G1c<G2cかつΔγ1c>Δγ2cとすることで、突起部や被着体のバルク物性に依存する歪みエネルギーと表面物性に依存する接着エネルギーによる効果が強め合って、第一の方向への接着力が強いような接着力の方向依存性がさらに高まる。
また逆に、G1c>G2cかつΔγ1c<Δγ2cとすることで、第二の方向への接着力が強いような接着力の方向依存性がさらに高まる。接着エネルギーの値を変えられる範囲は、突起部の作製プロセス等の制約により上限や下限がある場合が多い。このような場合においては、第一の剥離箇所と第二の剥離箇所における接着エネルギーを以下のように設定するのがより望ましい。G1c>G2cの場合には、第一の剥離箇所の接着エネルギーを下限に設定し、第二の剥離箇所の接着エネルギーを上限に設定するのが最も効果的である。
また、G1c<G2cの場合には、第一の剥離箇所の接着エネルギーを上限に設定し、第二の剥離箇所の接着エネルギーを下限に設定するのが最も効果的である。G1c=G2cの場合には、第一の剥離箇所と第二の剥離箇所のいずれかの接着エネルギーを下限に、他方の接着エネルギーを上限に設定するのが最も効果的である。
よって、まとめると、好適な実施形態として、G1c≧G2cであって、突起部の端面の任意の場所における接着エネルギーΔγcが、Δγ1c≦Δγcまたは/およびΔγ2c≧Δγcを満たす接着部材があげられる。また、別の好適な実施形態として、G1c≦G2cであって、突起部の端面(底面)の任意の場所における接着エネルギーΔγcが、Δγ1c≧Δγcまたは/およびΔγ2c≦Δγcを満たす接着部材が挙げられる。
また、突起部としては、実質的に柱状の弾性体構造物が好適な例として挙げられる。これにより、突起部の剛性が低下するため被着体の表面粗さに対する追従性が高まり高い接着力が実現される。また、他の好適な実施形態としては、端面(底面)が実質的に均一、もしくは略均一な接着エネルギーを有する2つの領域からなっており、第一の剥離箇所を含む領域の接着エネルギーがΔγ1cで、第二の剥離箇所を含む領域の接着エネルギーがΔγ2cであるものが挙げられる。この形態によれば、突起部の端面(底面)や被着体の表面状態を制御する作製プロセスが容易になる、あるいは構造解析等により第一の剥離箇所や第二の剥離箇所を特定する設計プロセスが容易になるといった利点がある。
突起部と被着体との間の接着エネルギーを不均一化してΔγ1cとΔγ2cに差を持たせる手法としては、例えば次のようなものが挙げられる。均一な材料で作製した突起部に対し、エネルギー量をコントロールしながら部分的に電子またはイオンビーム、紫外光やプラズマを照射することで、端面(底面)の一部の最表面のみを改質して接着エネルギーを不均一化できる。各種の物理的・化学的プロセスにより突起部の端面に部分的に新たな原子・分子層を設けることも可能である。
また、前述の弾性率または/およびポアソン比を不均一化した実施形態の説明において複数種の材料からなる突起部を作製する手法を例示したが、この手法は突起部と被着体との間の接着エネルギーを不均一化する手法としても有用である。第一の剥離箇所と第二の剥離箇所の表面粗さを変えて見かけ上のΔγ1cとΔγ2cとに差を持たせる手法としては、光・電子ビーム・イオンビーム・機械加工等で突起部の端面(底面)を部分的に加工する手法が考えられる。どのような手法が適しているかは、接着部材に求められる仕様等を踏まえて適宜判断すればよい。
前述の突起部の弾性率または/およびポアソン比の不均一化、突起部の水平断面形状の非対称化、突起部と被着体との間の接着エネルギーの不均一化はそれぞれ適切に組み合わせることでさらに接着力の方向依存性を高めることができる。また、傾斜した柱状形状のように突起部の垂直断面形状を左右対称でない形にすることによっても接着力の方向依存性を実現できることが知られているが、これも適切に組み合わせれば接着力の方向依存性を高めることができる。
ここで、突起部の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG1、第一の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ1と表記し、第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG2、第二の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ2と表記すると、前述のとおり、第一の方向と第二の方向への接着力はそれぞれF(G1/Δγ1)−1/2とF(G2/Δγ2)−1/2と求まる。ここで、接着力の方向依存性の強さをR=(第二の方向への接着力)/(第一の方向への接着力)で表わすと、R=(G1Δγ2/G2Δγ1)1/2となる。
R<1すなわちG1Δγ2/G2Δγ1<1の範囲では第一の方向への接着力が強く、G1Δγ2/G2Δγ1の値が小さいほど接着力の方向依存性が高い。また逆に、R>1すなわちG1Δγ2/G2Δγ1>1であれば第二の方向への接着力が強く、G1Δγ2/G2Δγ1の値が大きいほど接着力の方向依存性が高い。よって、弾性率または/およびポアソン比の不均一化、水平断面形状の非対称化、接着エネルギーの不均一化、垂直断面形状の非対称化という特徴を組み合わせる際に、G1Δγ2/G2Δγ1<1の条件下でさらに小さくする、またはG1Δγ2/G2Δγ1>1の条件下でさらに大きくするように適切に設計することで接着力の方向依存性をさらに高めることができる。
例えば、弾性率または/およびポアソン比の不均一化と水平断面形状の非対称化を組み合わせることができる。すなわち、本実施形態における接着部材は、部材の表面より突起する突起部を備え、前記突起部の端面と被着体との間の表面間力により、前記端面が前記被着体に接着する接着部材である。そして、突起部の弾性率または/およびポアソン比が不均一化されている。且つ前記突起部は、前記表面に平行な面で切断した断面が非対称化した形状をなしている。
前記表面に平行な第一の方向に力をかけた場合の前記突起部の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG1a,b、第一の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ1a,bとし、第一の方向とは逆方向の第二の方向に第一の方向にかけた力と同じ大きさの力をかけた場合の前記突起部の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG2a,b、第二の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ2a,bとして、G1a,b/Δγ1a,b≠G2a,b/Δγ2a,bを満足している。
そして、前記歪みエネルギー解放率G1a,b、前記接着エネルギーΔγ1a,b、前記歪みエネルギー解放率G2a,b、及び前記接着エネルギーΔγ2a,bについて、前記突起部の弾性率およびポアソン比を均一と仮定した場合にそれぞれG1a−,b、Δγ1a−,b、G2a−,b、Δγ2a−,bと表記して、G1a,bΔγ2a,b/G2a,bΔγ1a,b<G1a−,bΔγ2a−,b/G2a−,bΔγ1a−,b<1またはG1a,bΔγ2a,b/G2a,bΔγ1a,b>G1a−,bΔγ2a−,b/G2a−,bΔγ1a−,b>1を満足する。ここで、突起部の弾性率およびポアソン比を均一と仮定した場合のそれらの値は、突起部の不均一な弾性率または/およびポアソン比を平均化した値を指す。また、突起部の弾性率およびポアソン比を均一と仮定した場合とは、突起部の弾性率およびポアソン比以外の特徴は全て同一で、かつ突起部全体の弾性率よびポアソン比がこの平均化した値である場合を指す。
G1a−,bΔγ2a−,b/G2a−,bΔγ1a−,b<1を満たす場合は、弾性率およびポアソン比が均一な値であっても接着部材は第一の方向への接着力が強くなる方向依存性を示す。これに加えてさらに弾性率または/およびポアソン比を不均一化してG1a,bΔγ2a,b/G2a,bΔγ1a,b<G1a−,bΔγ2a−,b/G2a−,bΔγ1a−,b<1を満たすようにすれば、さらに接着力の方向依存性を高めることができる。また同様に、G1a−,bΔγ2a−,b/G2a−,bΔγ1a−,b>1を満たす場合は、弾性率およびポアソン比が均一な値であっても接着部材は第二の方向への接着力が強くなる方向依存性を示す。これに加えてさらに弾性率または/およびポアソン比を不均一化してG1a,bΔγ2a,b/G2a,bΔγ1a,b>G1a−,bΔγ2a−,b/G2a−,bΔγ1a−,b>1を満たすようにすれば、さらに接着力の方向依存性を高めることができる。つまり、この構成によれば、突起部の弾性率または/およびポアソン比を不均一化したことによる効果と突起部の水平断面形状を非対称化したことによる効果が強めあって、より高い接着力の方向依存性が発揮される。なお、前述のとおり、G1a,bΔγ2a,b/G2a,bΔγ1a,bやG1a−,bΔγ2a−,b/G2a−,bΔγ1a−,bは構造解析や実験による計測を組み合わせて求めることが可能であり、当業者は容易に本実施形態における接着部材を設計することができる。これは以下の全ての組み合わせ例についても同様である。
また、別の例としては、弾性率または/およびポアソン比の不均一化と接着エネルギーの不均一化を組み合わせることができる。すなわち、本実施形態における接着部材は、部材の表面より突起する突起部を備え、前記突起部の端面と被着体との間の表面間力により、前記端面が前記被着体に接着する接着部材である。そして、突起部の弾性率または/およびポアソン比が不均一化されている。
前記表面に平行な第一の方向に力をかけた場合の前記突起部の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG1a,c、第一の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ1a,cとし、第一の方向とは逆方向の第二の方向に第一の方向にかけた力と同じ大きさの力をかけた場合の前記突起部の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG2a,c、第二の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ2a,cとして、Δγ1a,cとΔγ2a,cとに差を有しており、且つG1a,c/Δγ1a,c≠G2a,c/Δγ2a,cを満足している。そして、前記歪みエネルギー解放率G1a,c、前記接着エネルギーΔγ1a,c、前記歪みエネルギー解放率G2a,c、及び前記接着エネルギーΔγ2a,cについて、前記突起部の弾性率およびポアソン比を均一と仮定した場合にそれぞれG1a−,c、Δγ1a−,c、G2a−,c、Δγ2a−,cと表記して、G1a,cΔγ2a,c/G2a,cΔγ1a,c<G1a−,cΔγ2a−,c/G2a−,cΔγ1a−,c<1またはG1a,cΔγ2a,c/G2a,cΔγ1a,c>G1a−,cΔγ2a−,c/G2a−,cΔγ1a−,c>1を満足する。この構成によれば、突起部の弾性率または/およびポアソン比を不均一化したことによる効果と突起部と被着体との間の接着エネルギーに差をもたせたことによる効果が強めあって、より高い接着力の方向依存性が発揮される。
また、別の例としては、弾性率または/およびポアソン比の不均一化と垂直断面形状の非対称化を組み合わせることができる。すなわち、突起部を前記表面に垂直で第一の方向に平行な面で切断した断面が、左右非対称化した形状をなすものとの組み合わせである。尚、この突起部を部材の表面に垂直で第一の方向に平行な面で切断した断面の形状は、垂直断面形状とも表記する。本実施形態における接着部材は、部材の表面より突起する突起部を備え、前記突起部の端面と被着体との間の表面間力により、前記端面が前記被着体に接着する接着部材である。そして、突起部の弾性率または/およびポアソン比が不均一化されている。且つ前記突起部は、前記表面に垂直で第一の方向に平行な面で切断した断面が左右非対称化した形状をなしている。そして、前記表面に平行な第一の方向に力をかけた場合の前記突起部の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG1a,d、第一の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ1a,dとし、第一の方向とは逆方向の第二の方向に第一の方向にかけた力と同じ大きさの力をかけた場合の前記突起部の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG2a,d、第二の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ2a,dとして、G1a,d/Δγ1a,d≠G2a,d/Δγ2a,dを満足している。そして、前記歪みエネルギー解放率G1a,d、前記接着エネルギーΔγ1a,d、前記歪みエネルギー解放率G2a,d、及び前記接着エネルギーΔγ2a,dについて、前記突起部の弾性率およびポアソン比を均一と仮定した場合にそれぞれG1a−,d、Δγ1a−,d、G2a−,d、Δγ2a−,dと表記して、G1a,dΔγ2a,d/G2a,dΔγ1a,d<G1a−,dΔγ2a−,d/G2a−,dΔγ1a−,d<1またはG1a,dΔγ2a,d/G2a,dΔγ1a,d>G1a−,dΔγ2a−,d/G2a−,dΔγ1a−,d>1を満足する。この構成によれば、突起部の弾性率または/およびポアソン比を不均一化したことによる効果と突起部の垂直断面形状を非対称化したことによる効果が強めあって、より高い接着力の方向依存性が発揮される。
また、別の例としては、水平断面形状の非対称化と接着エネルギーの不均一化を組み合わせることができる。すなわち、本実施形態における接着部材は、部材の表面より突起する突起部を備え、前記突起部の端面と被着体との間の表面間力により、前記端面が前記被着体に接着する接着部材である。そして、突起部は、前記表面に平行な面で切断した断面が非対称化した形状をなしている。前記表面に平行な第一の方向に力をかけた場合の前記突起部の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG1b,c、第一の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ1b,cとし、第一の方向とは逆方向の第二の方向に第一の方向にかけた力と同じ大きさの力をかけた場合の前記突起部の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG2b,c、第二の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ2b,cとして、Δγ1b,cとΔγ2b,cとに差を有しており、且つG1b,c/Δγ1b,c≠G2b,c/Δγ2b,cを満足している。そして、前記歪みエネルギー解放率G1b,c、前記接着エネルギーΔγ1b,c、前記歪みエネルギー解放率G2b,c、及び前記接着エネルギーΔγ2b,cについて、Δγ1b,cとΔγ2b,cとが等しいと仮定した場合にそれぞれG1b,c−、Δγ1b,c−、G2b,c−、Δγ2b,c−と表記して、G1b,cΔγ2b,c/G2b,cΔγ1b,c<G1b,c−Δγ2b,c−/G2b,c−Δγ1b,c−<1またはG1b,cΔγ2b,c/G2b,cΔγ1b,c>G1b,c−Δγ2b,c−/G2b,c−Δγ1b,c−>1を満足する。ここで、Δγ1b,cとΔγ2b,cとが等しいと仮定した場合とは、突起部の接着エネルギー以外の要件については全て同一である場合を前提としている。この場合のG1b,c−Δγ2b,c−/G2b,c−Δγ1b,c−はやはり構造解析や実験による計測を組み合わせて求めることが可能である。この構成によれば、突起部の水平断面形状を非対称化したことによる効果と突起部と被着体との間の接着エネルギーに差をもたせたことによる効果が強めあって、より高い接着力の方向依存性が発揮される。
また、別の例としては、水平断面形状の非対称化と垂直断面形状の非対称化を組み合わせることができる。すなわち、本実施形態における接着部材は、部材の表面より突起する突起部を備え、前記突起部の端面と被着体との間の表面間力により、前記端面が前記被着体に接着する接着部材である。そして、前記突起部は、前記表面に平行な面で切断した断面が非対称化した形状をなしている。且つ前記突起部は、前記表面に垂直で第一の方向に平行な面で切断した断面が左右非対称化した形状をなしている。前記表面に平行な第一の方向に力をかけた場合の前記突起部の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG1b,d、第一の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ1b,dとし、第一の方向とは逆方向の第二の方向に第一の方向にかけた力と同じ大きさの力をかけた場合の前記突起部の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG2b,d、第二の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ2b,dとして、G1b,d/Δγ1b,d≠G2b,d/Δγ2b,dを満足する。そして、前記歪みエネルギー解放率G1b,d、前記接着エネルギーΔγ1b,d、前記歪みエネルギー解放率G2b,d、及び前記接着エネルギーΔγ2b,dについて、前記突起部を前記表面に垂直で第一の方向に平行な面で切断した断面が左右対称な形状をなすと仮定した場合にそれぞれG1b,d−、Δγ1b,d−、G2b,d−、Δγ2b,d−と表記して、G1b,dΔγ2b,d/G2b,dΔγ1b,d<G1b,d−Δγ2b,d−/G2b,d−Δγ1b,d−<1またはG1b,dΔγ2b,d/G2b,dΔγ1b,d>G1b,d−Δγ2b,d−/G2b,d−Δγ1b,d−>1を満足する。ここで、突起部を表面に垂直で第一の方向に平行な面で切断した断面が左右対称な形状をなすと仮定した場合とは、次のとおりである。まず、突起部を、表面に平行な方向に無限に薄くスライスした断片の積層体と考える。そして、各断片を表面に対し平行に移動して再度積層し、突起部の表面に垂直で第一の方向に平行な面で切断した断面が左右対称となるようにする。こうしてできる仮想的な突起部を、断面が左右対称な形状をなすと仮定した場合と定義する。
図6を用いて、より詳細な手順を説明する。突起部(601)の端面の図心(602)を通り第一の方向(609)に平行な直線をひき、この直線と突起部の端面の外周との2つ交点の中点(603)をとる。この中点を原点とし、第一の方向に向いたx軸、部材の表面に垂直な方向に向いたz軸、x軸とz軸の両方に直交するy軸を設ける。すると、突起部の外周は方程式F(x,y,z)=0で表わせ、さらに座標(x,y,z)における突起部の各種物性値を示すベクトル量はP(x,y,z)で表わすことができる。次に、突起部をz=hで定義される平面(604)で切断した断面(605)の図心(606)を通り第一の方向に平行な直線をひき、この直線と断面の外周との2つの交点の中点(607)の座標を(a(h),b(h),h)とする。こうして得られる中点がz軸上にくるように各断面をxy平面に平行に移動させたものを、仮想的な突起部(608)とする。この仮想的な突起部は、部材の表面に垂直で第一の方向に平行な面で切断した断面が左右対称な形状をなしている。よって、断面が左右対称な形状をなすと仮定した場合の仮想的な突起部の外周は、方程式F(x+a(z),y+b(z),z)=0で定義できる。さらに、座標(x,y,z)における仮想的な突起部の各種物性値を示すベクトル量をP(x+a(z),y+b(z),z)と定義することで、物性値の分布も保持することができる。以上にように定義した仮想的な突起部を用いれば、G1b,d−Δγ2b,d−/G2b,d−Δγ1b,d−はやはり構造解析や実験による計測を組み合わせて求めることが可能である。この構成によれば、突起部の水平断面形状を非対称化したことによる効果と突起部の垂直断面形状を非対称化したことによる効果が強めあって、より高い接着力の方向依存性が発揮される。
また、別の例としては、接着エネルギーの不均一化と垂直断面形状の非対称化を組み合わせることができる。すなわち、本実施形態における接着部材は、部材の表面より突起する突起部を備え、前記突起部の端面と被着体との間の表面間力により、前記端面が前記被着体に接着する接着部材である。そして、突起部は、前記表面に垂直で第一の方向に平行な面で切断した断面が左右非対称化した形状をなしている。前記表面に平行な第一の方向に力をかけた場合の前記突起部の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG1c,d、第一の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ1c,dとし、第一の方向とは逆方向の第二の方向に第一の方向にかけた力と同じ大きさの力をかけた場合の前記突起部の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG2c,d、第二の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ2c,dとして、Δγ1c,dとΔγ2c,dとに差を有しており、且つG1c,d/Δγ1c,d≠G2c,d/Δγ2c,dを満足する。そして、前記歪みエネルギー解放率G1c,d、前記接着エネルギーΔγ1c,d、前記歪みエネルギー解放率G2c,d、及び前記接着エネルギーΔγ2c,dについて、Δγ1c,dとΔγ2c,dとが等しいと仮定した場合にそれぞれG1c−,d、Δγ1c−,d、G2c−,d、Δγ2c−,dと表記して、G1c,dΔγ2c,d/G2c,dΔγ1c,d<G1c−,dΔγ2c−,d/G2c−,dΔγ1c−,d<1またはG1c,dΔγ2c,d/G2c,dΔγ1c,d>G1c−,dΔγ2c−,d/G2c−,dΔγ1c−,d>1を満足する。この構成によれば、突起部と被着体との間の接着エネルギーに差をもたせたことによる効果と突起部の垂直断面形状を非対称化したことによる効果が強めあって、より高い接着力の方向依存性が発揮される。
さらに、別の例としては、弾性率または/およびポアソン比の不均一化、水平断面形状の非対称化、接着エネルギーの不均一化、垂直断面形状の非対称化という特徴のうち、3つ以上の特徴を組み合わせることもできる。3つ以上の特徴を組み合わせる際に、G1Δγ2/G2Δγ1<1の条件下でさらに小さくする、またはG1Δγ2/G2Δγ1>1の条件下でさらに大きくするように適切に設計して組み合わせることで接着力の方向依存性を特に高めることができる。
以下、具体的な実施例及び参考例を挙げて本発明をより詳細に説明する。
接着部材の構成例について説明する前に、シミュレーションによる歪みエネルギー解放率の算出方法の例、およびシミュレーションによる接着プロファイルの算出方法の例を説明する。
<シミュレーションによる歪みエネルギー解放率の算出>
例えば、突起部(弾性体構造物)の剥離箇所における歪みエネルギー解放率は、破壊力学における仮想亀裂進展法と同様の手法(以下、仮想剥離進展法と呼ぶ)により求めることができる。仮想剥離進展法で使用する仮想剥離部の表面力や相対変位は、例えば境界要素法に基づく構造解析により求める。積分方程式はSomiglianaの境界積分方程式を、基本解は二相接合体の基本解であるRongvedの解を使用する。この基本解を使用することで複雑な応力が発生する突起部と被着体の接着部に節点を設ける必要がなくなるので、より精度が高い計算が可能となる。ここで、説明を簡単にするため、突起部は突起部が突起する部材の表面に平行かつ第一の方向に垂直な方向に関して対称な形状をとっていると仮定する。この場合、第一の方向と表面に垂直な方向からなる二次元平面内で構造物の挙動を解析することができる。もちろん、以下に述べる手法は三次元に容易に拡張することができる。第一の方向への力をかけた場合の突起部(弾性体構造物)の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率を算出するために、図7に示すように弾性体構造物(701)の第一の剥離箇所(702)に微小な仮想剥離部(703)を設定する。
例えば、突起部(弾性体構造物)の剥離箇所における歪みエネルギー解放率は、破壊力学における仮想亀裂進展法と同様の手法(以下、仮想剥離進展法と呼ぶ)により求めることができる。仮想剥離進展法で使用する仮想剥離部の表面力や相対変位は、例えば境界要素法に基づく構造解析により求める。積分方程式はSomiglianaの境界積分方程式を、基本解は二相接合体の基本解であるRongvedの解を使用する。この基本解を使用することで複雑な応力が発生する突起部と被着体の接着部に節点を設ける必要がなくなるので、より精度が高い計算が可能となる。ここで、説明を簡単にするため、突起部は突起部が突起する部材の表面に平行かつ第一の方向に垂直な方向に関して対称な形状をとっていると仮定する。この場合、第一の方向と表面に垂直な方向からなる二次元平面内で構造物の挙動を解析することができる。もちろん、以下に述べる手法は三次元に容易に拡張することができる。第一の方向への力をかけた場合の突起部(弾性体構造物)の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率を算出するために、図7に示すように弾性体構造物(701)の第一の剥離箇所(702)に微小な仮想剥離部(703)を設定する。
まず、突起部端面(底面)の仮想剥離部以外が被着体(704)と接着し仮想剥離部は接着していない状態(剥離時)で、構造物上面(705)の節点に第一の方向(706)への変位ベクトルULもしくは部材の表面に垂直な方向への変位ベクトルUNを与えたときの構造解析を行なう。これにより、変位ULもしくは変位UNによって仮想剥離部に発生する構造物底面と被着体表面との間の相対変位ベクトルuLとuNを求める。次に、仮想剥離部を含む構造物の底面全体が被着体と接着した状態(非剥離時)で、やはり構造物上面の節点に変位ULもしくは変位UNを与えたときの構造解析を行なう。これにより、変位ULもしくは変位UNによって構造物の仮想剥離部表面に発生する表面力ベクトルtLとtN、および構造物上面に発生する反力ベクトルRFLとベクトルRFNを求める。
以上の結果を線形的に足し合わせることにより、二次元平面内の任意の方向への変位ベクトルU=aUL+bUNによって構造物の仮想剥離部表面に発生する表面力ベクトルt、構造物底面と被着体表面との間の相対変位ベクトルu、構造物上面に発生する反力ベクトルRFは以下のようになる。
t=atL+btN
u=auL+buN
RF=aRFL+bRFN
こうして与えられる力ベクトルRFに対する第一の剥離部における歪みエネルギー解放率Gは、仮想剥離部表面の表面力ベクトルtと相対変位ベクトルuの内積を仮想剥離部全体にわたって積分した値を仮想剥離部の面積Sで割ることで、次式のようにaとbの関数として求められる。
G=∫(auL+buN)(atL+btN)dS/S
よって、第一の方向へ大きさFの力をかけたときの歪みエネルギー解放率G1は、RFの第一の方向への成分がFで部材の表面に垂直な方向への成分が0となるaとbを求め、この値を上式に代入することで求められる。なお、第二の方向への力をかけた場合の構造物の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率G2も、同様にして第二の剥離箇所に仮想剥離部を設けることで求めることができる。
t=atL+btN
u=auL+buN
RF=aRFL+bRFN
こうして与えられる力ベクトルRFに対する第一の剥離部における歪みエネルギー解放率Gは、仮想剥離部表面の表面力ベクトルtと相対変位ベクトルuの内積を仮想剥離部全体にわたって積分した値を仮想剥離部の面積Sで割ることで、次式のようにaとbの関数として求められる。
G=∫(auL+buN)(atL+btN)dS/S
よって、第一の方向へ大きさFの力をかけたときの歪みエネルギー解放率G1は、RFの第一の方向への成分がFで部材の表面に垂直な方向への成分が0となるaとbを求め、この値を上式に代入することで求められる。なお、第二の方向への力をかけた場合の構造物の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率G2も、同様にして第二の剥離箇所に仮想剥離部を設けることで求めることができる。
ここで、上記の構造解析は領域分割法によって行なうのが望ましい。領域分割法は、構造解析を行なうモデル全体を複数の領域に分割して領域ごとに境界積分方程式を作成して計算する手法である。さらに、領域同士の境界部分が剥離しない場合にはその部分の変位解が等しくなる拘束条件を設け、領域同士の境界部分が剥離する場合にはその部分に拘束条件を設けず自由表面として計算する。歪みエネルギー解放率の算出時には、図8に示すように仮想剥離部(801)の弾性体構造物(802)側表面と被着体(803)側表面とが異なる領域の表面となるように2つ以上の領域(804、805)に分割する。このように領域分割するのは、境界積分方程式を作成する際に弾性体構造物側表面の節点と被着体側表面の節点とで節点間距離が0となる組み合わせが生じて計算が不可能となってしまうのを防ぐためである。なお、境界積分方的式の基本解として二相接合体の基本解を使用しているので、物性値の異なる構造物と被着体にまたがって領域を設定することができる。
<シミュレーションによる接着プロファイルの算出>
接着プロファイルの算出方法を図9に示す。まず、上記のようにして、突起部(弾性体構造物)(901)にベクトルRFで表わされる力を加えたときの第一の剥離箇所(903)における歪みエネルギー解放率Gを求める。さらに、実験的手法や分子動力学的シミュレーション等により第一の剥離箇所における接着エネルギーΔγ1を求める。G<Δγ1となる場合に第一の剥離箇所からの剥離がおこらないので、この不等式を解くことで接着状態を保つためにaとbが満たすべき条件を求める。この条件をRF=aRFL+bRFNに代入することで第一の剥離箇所から剥離がおこらない力ベクトルの大きさや角度の範囲を求めることができる。また、同様にして第二の剥離箇所(904)から剥離がおこらない力ベクトルの範囲も求める。最後に、両者の力ベクトルの範囲の重なる部分について、部材の表面に平行な水平方向成分と垂直な垂直方向成分を軸とする二次元座標にプロットすることで接着プロファイルが得られる。
接着プロファイルの算出方法を図9に示す。まず、上記のようにして、突起部(弾性体構造物)(901)にベクトルRFで表わされる力を加えたときの第一の剥離箇所(903)における歪みエネルギー解放率Gを求める。さらに、実験的手法や分子動力学的シミュレーション等により第一の剥離箇所における接着エネルギーΔγ1を求める。G<Δγ1となる場合に第一の剥離箇所からの剥離がおこらないので、この不等式を解くことで接着状態を保つためにaとbが満たすべき条件を求める。この条件をRF=aRFL+bRFNに代入することで第一の剥離箇所から剥離がおこらない力ベクトルの大きさや角度の範囲を求めることができる。また、同様にして第二の剥離箇所(904)から剥離がおこらない力ベクトルの範囲も求める。最後に、両者の力ベクトルの範囲の重なる部分について、部材の表面に平行な水平方向成分と垂直な垂直方向成分を軸とする二次元座標にプロットすることで接着プロファイルが得られる。
(参考例1)
以下、実施例及び参考例では、単独の突起部(弾性体構造物)についての接着力の方向依存性の強さや接着プロファイルを説明する。弾性体構造物を複数有する接着部材の接着特性は個々の弾性体構造物の接着特性の総和で表わされるので、接着部材としてもこれらの実施例及び参考例と同等の接着力の方向依存性を示す。また、以下の実施例及び参考例では、詳細な接着力の解析の前に簡単な応力解析を行なうことで剥離箇所を見積もった。いずれの例においても、第一の剥離箇所(1003)は弾性体構造物(1005)の底面の第二の方向(1002)の端部で、第二の剥離箇所(1004)は底面の第一の方向(1001)の端部と考えてよい(図10(A)〜(F))。
以下、実施例及び参考例では、単独の突起部(弾性体構造物)についての接着力の方向依存性の強さや接着プロファイルを説明する。弾性体構造物を複数有する接着部材の接着特性は個々の弾性体構造物の接着特性の総和で表わされるので、接着部材としてもこれらの実施例及び参考例と同等の接着力の方向依存性を示す。また、以下の実施例及び参考例では、詳細な接着力の解析の前に簡単な応力解析を行なうことで剥離箇所を見積もった。いずれの例においても、第一の剥離箇所(1003)は弾性体構造物(1005)の底面の第二の方向(1002)の端部で、第二の剥離箇所(1004)は底面の第一の方向(1001)の端部と考えてよい(図10(A)〜(F))。
<弾性率を不均一化した場合の接着プロファイルの解析>
解析のモデル形状を図10(A)に示す。接着部材の表面に存在する突起部(弾性体構造物)(1005)の形状を直径10μm、高さ10μmの円柱形状とした。底面からの高さが100nm以上の部分について、第一の方向(1001)側の幅2μmの領域(1007)の弾性率とポアソン比を29MPaと0.45とした。残りの領域の弾性率とポアソン比を0.29MPaと0.45とした。また、被着体の弾性率とポアソン比は80GPaと0.21とし、構造解析時の被着体(1006)の形状は直径11μm、高さ1μmの円柱形状とした。弾性体構造物と被着体との間の接着エネルギーは底面全体で一様とした。第一の方向へ1μNの力を加えた場合の第一の剥離箇所(1003)における歪みエネルギー解放率G1aは3.0mJ/m2、第二の方向(1002)へ1μNの力を加えた場合の第二の剥離箇所(1004)における歪みエネルギー解放率G2aは49mJ/m2であった。第一の剥離箇所と第二の剥離箇所における接着エネルギーΔγ1aとΔγ2aがとも70mJ/m2である場合、G1a/Δγ1a=0.042、G2a/Δγ2a=0.69となる。よって、G1a/Δγ1a≠G2a/Δγ2aを満足する。第一の方向への接着力は1×(G1a/Δγ1a)−1/2=4.9μN、第二の方向への接着力は1×(G2a/Δγ2a)−1/2=1.2μNとなり、接着力に方向依存性が出た。なお、この場合、第二の方向への接着力と比較して第一の方向への接着力の方が強い。この弾性体構造物の接着プロファイルを図11に示す。よって、本例によれば、突起部の弾性率を不均一化したことによる効果により接着部材の接着力に方向依存性が出る。
解析のモデル形状を図10(A)に示す。接着部材の表面に存在する突起部(弾性体構造物)(1005)の形状を直径10μm、高さ10μmの円柱形状とした。底面からの高さが100nm以上の部分について、第一の方向(1001)側の幅2μmの領域(1007)の弾性率とポアソン比を29MPaと0.45とした。残りの領域の弾性率とポアソン比を0.29MPaと0.45とした。また、被着体の弾性率とポアソン比は80GPaと0.21とし、構造解析時の被着体(1006)の形状は直径11μm、高さ1μmの円柱形状とした。弾性体構造物と被着体との間の接着エネルギーは底面全体で一様とした。第一の方向へ1μNの力を加えた場合の第一の剥離箇所(1003)における歪みエネルギー解放率G1aは3.0mJ/m2、第二の方向(1002)へ1μNの力を加えた場合の第二の剥離箇所(1004)における歪みエネルギー解放率G2aは49mJ/m2であった。第一の剥離箇所と第二の剥離箇所における接着エネルギーΔγ1aとΔγ2aがとも70mJ/m2である場合、G1a/Δγ1a=0.042、G2a/Δγ2a=0.69となる。よって、G1a/Δγ1a≠G2a/Δγ2aを満足する。第一の方向への接着力は1×(G1a/Δγ1a)−1/2=4.9μN、第二の方向への接着力は1×(G2a/Δγ2a)−1/2=1.2μNとなり、接着力に方向依存性が出た。なお、この場合、第二の方向への接着力と比較して第一の方向への接着力の方が強い。この弾性体構造物の接着プロファイルを図11に示す。よって、本例によれば、突起部の弾性率を不均一化したことによる効果により接着部材の接着力に方向依存性が出る。
(参考例2)
<水平断面形状を非対称化した場合の接着プロファイルの解析>
解析のモデル形状を図10(B)に示す。接着部材の表面に存在する突起部(弾性体構造物)(1005)の形状を、水平断面が底辺10μmで高さ10μmの二等辺三角形で、高さが10μmの三角柱形状とし、弾性率とポアソン比を0.29MPaと0.45とした。また、被着体の弾性率とポアソン比は80GPaと0.21とし、構造解析時の被着体(1006)の形状は断面が底辺11μmで高さ11μmの二等辺三角形で、高さが2μmの三角柱形状とした。なお、第一の方向(1001)は断面の底辺と垂直で、二等辺三角形の頂点の方向とする。弾性体構造物と被着体との間の接着エネルギーは底面全体で一様とした。第一の方向へ1μNの力を加えた場合の第一の剥離箇所(1003)における歪みエネルギー解放率G1bは25mJ/m2、第二の方向(1002)へ1μNの力を加えた場合の第二の剥離箇所(1004)における歪みエネルギー解放率G2bは62mJ/m2であった。第一の剥離箇所と第二の剥離箇所における接着エネルギーΔγ1bとΔγ2bがとも70mJ/m2である場合、G1b/Δγ1b=0.36、G2b/Δγ2b=0.89となる。よって、G1b/Δγ1b≠G2b/Δγ2bを満足する。第一の方向への接着力は1×(G1b/Δγ1b)−1/2=1.7μN、第二の方向への接着力は1×(G2b/Δγ2b)−1/2=1.1μNとなり、接着力に方向依存性が出た。なお、この場合、第二の方向への接着力と比較して第一の方向への接着力の方が強い。この弾性体構造物の接着プロファイルを図12に示す。よって、本例によれば、突起部の水平断面形状を非対称化したことによる効果により接着部材の接着力に方向依存性が出る。
<水平断面形状を非対称化した場合の接着プロファイルの解析>
解析のモデル形状を図10(B)に示す。接着部材の表面に存在する突起部(弾性体構造物)(1005)の形状を、水平断面が底辺10μmで高さ10μmの二等辺三角形で、高さが10μmの三角柱形状とし、弾性率とポアソン比を0.29MPaと0.45とした。また、被着体の弾性率とポアソン比は80GPaと0.21とし、構造解析時の被着体(1006)の形状は断面が底辺11μmで高さ11μmの二等辺三角形で、高さが2μmの三角柱形状とした。なお、第一の方向(1001)は断面の底辺と垂直で、二等辺三角形の頂点の方向とする。弾性体構造物と被着体との間の接着エネルギーは底面全体で一様とした。第一の方向へ1μNの力を加えた場合の第一の剥離箇所(1003)における歪みエネルギー解放率G1bは25mJ/m2、第二の方向(1002)へ1μNの力を加えた場合の第二の剥離箇所(1004)における歪みエネルギー解放率G2bは62mJ/m2であった。第一の剥離箇所と第二の剥離箇所における接着エネルギーΔγ1bとΔγ2bがとも70mJ/m2である場合、G1b/Δγ1b=0.36、G2b/Δγ2b=0.89となる。よって、G1b/Δγ1b≠G2b/Δγ2bを満足する。第一の方向への接着力は1×(G1b/Δγ1b)−1/2=1.7μN、第二の方向への接着力は1×(G2b/Δγ2b)−1/2=1.1μNとなり、接着力に方向依存性が出た。なお、この場合、第二の方向への接着力と比較して第一の方向への接着力の方が強い。この弾性体構造物の接着プロファイルを図12に示す。よって、本例によれば、突起部の水平断面形状を非対称化したことによる効果により接着部材の接着力に方向依存性が出る。
<接着エネルギーを不均一化した場合の接着プロファイルの解析>
解析のモデル形状を図10(C)に示す。接着部材の表面に存在する突起部(弾性体構造物)(1005)の形状を直径10μm、高さ10μmの円柱形状とし、弾性率とポアソン比を0.29MPaと0.45とした。また、被着体の弾性率とポアソン比は80GPaと0.21とし、構造解析時の被着体(1006)の形状は直径11μm、高さ2μmの円柱形状とした。また、弾性体構造物と被着体との間の接着エネルギーは、底面の第一の方向(1001)側の半分の領域で7mJ/m2、第二の方向(1002)側の半分の領域で70mJ/m2とした。よって、第一の剥離箇所(1003)と第二の剥離箇所(1004)における接着エネルギーΔγ1cとΔγ2cは70mJ/m2と7mJ/m2となり、Δγ1cとΔγ2cに差が出ている。弾性体構造物の形状・物性とも回転対称であるため、第一の剥離箇所と第二の剥離箇所の歪みエネルギー解放率は同じ値となる。第一の方向もしくは第二の方向へ1μNの力を加えた場合、歪みエネルギー解放率G1cとG2cはともに11mJ/m2であった。よって、G1c/Δγ1c=0.16、G2c/Δγ2c=1.6となり、G1c/Δγ1c≠G2c/Δγ2cを満足する。第一の方向への接着力は1×(G1c/Δγ1c)−1/2=2.5μN、第二の方向への接着力は1×(G2c/Δγ2c)−1/2=0.80μNとなり、接着力に方向依存性が出た。なお、この場合、第二の方向への接着力と比較して第一の方向への接着力の方が強い。この弾性体構造物の接着プロファイルを図13に示す。よって、本例によれば、突起部と被着体との間の接着エネルギーに差をもたせたことによる効果により接着部材の接着力に方向依存性が出る。
解析のモデル形状を図10(C)に示す。接着部材の表面に存在する突起部(弾性体構造物)(1005)の形状を直径10μm、高さ10μmの円柱形状とし、弾性率とポアソン比を0.29MPaと0.45とした。また、被着体の弾性率とポアソン比は80GPaと0.21とし、構造解析時の被着体(1006)の形状は直径11μm、高さ2μmの円柱形状とした。また、弾性体構造物と被着体との間の接着エネルギーは、底面の第一の方向(1001)側の半分の領域で7mJ/m2、第二の方向(1002)側の半分の領域で70mJ/m2とした。よって、第一の剥離箇所(1003)と第二の剥離箇所(1004)における接着エネルギーΔγ1cとΔγ2cは70mJ/m2と7mJ/m2となり、Δγ1cとΔγ2cに差が出ている。弾性体構造物の形状・物性とも回転対称であるため、第一の剥離箇所と第二の剥離箇所の歪みエネルギー解放率は同じ値となる。第一の方向もしくは第二の方向へ1μNの力を加えた場合、歪みエネルギー解放率G1cとG2cはともに11mJ/m2であった。よって、G1c/Δγ1c=0.16、G2c/Δγ2c=1.6となり、G1c/Δγ1c≠G2c/Δγ2cを満足する。第一の方向への接着力は1×(G1c/Δγ1c)−1/2=2.5μN、第二の方向への接着力は1×(G2c/Δγ2c)−1/2=0.80μNとなり、接着力に方向依存性が出た。なお、この場合、第二の方向への接着力と比較して第一の方向への接着力の方が強い。この弾性体構造物の接着プロファイルを図13に示す。よって、本例によれば、突起部と被着体との間の接着エネルギーに差をもたせたことによる効果により接着部材の接着力に方向依存性が出る。
<弾性率を不均一化し、接着エネルギーを不均一化した場合の接着プロファイルの解析>
解析のモデル形状は参考例1と同じものを用いた(図10(A))。突起部(弾性体構造物)(1005)と被着体(1006)との間の接着エネルギーは、底面の第一の方向(1001)側の半分の領域で7mJ/m2、第二の方向(1002)側の半分の領域で70mJ/m2とした。よって、第一の剥離箇所(1003)と第二の剥離箇所(1004)における接着エネルギーΔγ1a,cとΔγ2a,cは70mJ/m2と7mJ/m2となり、Δγ1a,cとΔγ2a,cに差が出ている。参考例1と同じく、第一の方向へ1μNの力を加えた場合の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率G1a,cは3.0mJ/m2、第二の方向へ1μNの力を加えた場合の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率G2a,cは49mJ/m2となる。よって、G1a,c/Δγ1a,c=0.042、G2a,c/Δγ2a,c=6.9となる。G1a,cΔγ2a,c/G2a,cΔγ1a,c=0.0061であり、G1a,cΔγ2a,c/G2a,cΔγ1a,c≠1を満足する。弾性体構造物の弾性率およびポアソン比が均一な値であると仮定した場合、弾性体構造物は形状・物性とも回転対称となるのでG1a−,c=G2a−,cである。Δγ1a−,c=Δγ1a,c=70mJ/m2、Δγ2a−,c=Δγ2a,c=7mJ/m2よりG1a−,cΔγ2a−,c/G2a−,cΔγ1a−,c=0.1となり、G1a,cΔγ2a,c/G2a,cΔγ1a,c<G1a−,cΔγ2a−,c/G2a−,cΔγ1a−,c<1を満足する。第一の方向への接着力は1×(G1a,c/Δγ1a,c)−1/2=4.9μN、第二の方向への接着力は1×(G2a,c/Δγ2a,c)−1/2=0.38μNとなり、接着力に方向依存性が出た。なお、この場合、第二の方向への接着力と比較して第一の方向への接着力の方が強い。この弾性体構造物の接着プロファイルを図14に示す。ここで、接着力の方向依存性の強さを、R=(第二の方向への接着力)/(第一の方向への接着力)で表わす。第一の方向への接着力が強い場合にはこの値が小さいほど、第二の方向への接着力が強い場合にはこの値が大きいほど接着力の方向依存性が強い。本例の弾性体構造物の場合はR=0.078となり、高い方向依存性を示した。一方、弾性体構造物の弾性率およびポアソン比が均一な値であると仮定するとR={1×(G2a−,c/Δγ2a−,c)−1/2}/{1×(G1a−,c/Δγ1a−,c)−1/2}=0.32である。つまり、弾性率の不均一化と接着エネルギーの不均一化が効果的に接着力の方向依存性を高めている。よって、本例によれば、突起部の弾性率を不均一化したことによる効果と突起部の接着エネルギーに差をもたせたことによる効果が強めあって、接着部材の接着力により高い方向依存性が出る。
解析のモデル形状は参考例1と同じものを用いた(図10(A))。突起部(弾性体構造物)(1005)と被着体(1006)との間の接着エネルギーは、底面の第一の方向(1001)側の半分の領域で7mJ/m2、第二の方向(1002)側の半分の領域で70mJ/m2とした。よって、第一の剥離箇所(1003)と第二の剥離箇所(1004)における接着エネルギーΔγ1a,cとΔγ2a,cは70mJ/m2と7mJ/m2となり、Δγ1a,cとΔγ2a,cに差が出ている。参考例1と同じく、第一の方向へ1μNの力を加えた場合の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率G1a,cは3.0mJ/m2、第二の方向へ1μNの力を加えた場合の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率G2a,cは49mJ/m2となる。よって、G1a,c/Δγ1a,c=0.042、G2a,c/Δγ2a,c=6.9となる。G1a,cΔγ2a,c/G2a,cΔγ1a,c=0.0061であり、G1a,cΔγ2a,c/G2a,cΔγ1a,c≠1を満足する。弾性体構造物の弾性率およびポアソン比が均一な値であると仮定した場合、弾性体構造物は形状・物性とも回転対称となるのでG1a−,c=G2a−,cである。Δγ1a−,c=Δγ1a,c=70mJ/m2、Δγ2a−,c=Δγ2a,c=7mJ/m2よりG1a−,cΔγ2a−,c/G2a−,cΔγ1a−,c=0.1となり、G1a,cΔγ2a,c/G2a,cΔγ1a,c<G1a−,cΔγ2a−,c/G2a−,cΔγ1a−,c<1を満足する。第一の方向への接着力は1×(G1a,c/Δγ1a,c)−1/2=4.9μN、第二の方向への接着力は1×(G2a,c/Δγ2a,c)−1/2=0.38μNとなり、接着力に方向依存性が出た。なお、この場合、第二の方向への接着力と比較して第一の方向への接着力の方が強い。この弾性体構造物の接着プロファイルを図14に示す。ここで、接着力の方向依存性の強さを、R=(第二の方向への接着力)/(第一の方向への接着力)で表わす。第一の方向への接着力が強い場合にはこの値が小さいほど、第二の方向への接着力が強い場合にはこの値が大きいほど接着力の方向依存性が強い。本例の弾性体構造物の場合はR=0.078となり、高い方向依存性を示した。一方、弾性体構造物の弾性率およびポアソン比が均一な値であると仮定するとR={1×(G2a−,c/Δγ2a−,c)−1/2}/{1×(G1a−,c/Δγ1a−,c)−1/2}=0.32である。つまり、弾性率の不均一化と接着エネルギーの不均一化が効果的に接着力の方向依存性を高めている。よって、本例によれば、突起部の弾性率を不均一化したことによる効果と突起部の接着エネルギーに差をもたせたことによる効果が強めあって、接着部材の接着力により高い方向依存性が出る。
<水平断面形状を非対称化し、接着エネルギーを不均一化した場合の接着プロファイルの解析>
解析のモデル形状は参考例2と同じものを用いた(図10(B))。突起部(弾性体構造物)(1005)と被着体(1006)との間の接着エネルギーは、底面の第一の方向(1001)側の半分の領域で7mJ/m2、第二の方向(1002)側の半分の領域で70mJ/m2とした。よって、第一の剥離箇所(1003)と第二の剥離箇所(1004)における接着エネルギーΔγ1b,cとΔγ2b,cは70mJ/m2と7mJ/m2となり、Δγ1b,cとΔγ2b,cに差が出ている。参考例2と同じく、第一の方向へ1μNの力を加えた場合の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率G1b,cは25mJ/m2、第二の方向へ1μNの力を加えた場合の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率G2b,cは62mJ/m2となる。よって、G1b,c/Δγ1b,c=0.36、G2b,c/Δγ2b,c=8.9となる。G1b,cΔγ2b,c/G2b,cΔγ1b,c=0.040であり、G1b,cΔγ2b,c/G2b,cΔγ1b,c≠1を満足する。第一の剥離箇所における接着エネルギーと第二の剥離箇所における接着エネルギーが等しいと仮定した場合、Δγ1b,c−=Δγ2b,c−である。G1b,c−=G1b,c=25mJ/m2、G2b,c−=G2b,c=62mJ/m2よりG1b,c−Δγ2b,c−/G2b,c−Δγ1b,c−=0.40となり、G1b,cΔγ2b,c/G2b,cΔγ1b,c<G1b,c−Δγ2b,c−/G2b,c−Δγ1b,c−<1を満足する。第一の方向への接着力は1×(G1b,c/Δγ1b,c)−1/2=1.7μN、第二の方向への接着力は1×(G2b,c/Δγ2b,c)−1/2=0.34μNとなり、接着力に方向依存性が出た。なお、この場合、第二の方向への接着力と比較して第一の方向への接着力の方が強い。この弾性体構造物の接着プロファイルを図15に示す。接着力の方向依存性の強さは、本例についてはR=0.20となり、高い方向依存性を示した。第一の剥離箇所における接着エネルギーと第二の剥離箇所における接着エネルギーが等しいと仮定するとR={1×(G2b,c−/Δγ2b,c−)−1/2}/{1×(G1b,c−/Δγ1b,c−)−1/2}=0.63である。つまり、水平断面形状の非対称化と接着エネルギーの不均一化が効果的に接着力の方向依存性を高めている。よって、本例によれば、突起部の水平断面形状を非対称化したことによる効果と突起部と被着体との間の接着エネルギーに差をもたせたことによる効果が強めあって、接着部材の接着力により高い方向依存性が出る。
解析のモデル形状は参考例2と同じものを用いた(図10(B))。突起部(弾性体構造物)(1005)と被着体(1006)との間の接着エネルギーは、底面の第一の方向(1001)側の半分の領域で7mJ/m2、第二の方向(1002)側の半分の領域で70mJ/m2とした。よって、第一の剥離箇所(1003)と第二の剥離箇所(1004)における接着エネルギーΔγ1b,cとΔγ2b,cは70mJ/m2と7mJ/m2となり、Δγ1b,cとΔγ2b,cに差が出ている。参考例2と同じく、第一の方向へ1μNの力を加えた場合の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率G1b,cは25mJ/m2、第二の方向へ1μNの力を加えた場合の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率G2b,cは62mJ/m2となる。よって、G1b,c/Δγ1b,c=0.36、G2b,c/Δγ2b,c=8.9となる。G1b,cΔγ2b,c/G2b,cΔγ1b,c=0.040であり、G1b,cΔγ2b,c/G2b,cΔγ1b,c≠1を満足する。第一の剥離箇所における接着エネルギーと第二の剥離箇所における接着エネルギーが等しいと仮定した場合、Δγ1b,c−=Δγ2b,c−である。G1b,c−=G1b,c=25mJ/m2、G2b,c−=G2b,c=62mJ/m2よりG1b,c−Δγ2b,c−/G2b,c−Δγ1b,c−=0.40となり、G1b,cΔγ2b,c/G2b,cΔγ1b,c<G1b,c−Δγ2b,c−/G2b,c−Δγ1b,c−<1を満足する。第一の方向への接着力は1×(G1b,c/Δγ1b,c)−1/2=1.7μN、第二の方向への接着力は1×(G2b,c/Δγ2b,c)−1/2=0.34μNとなり、接着力に方向依存性が出た。なお、この場合、第二の方向への接着力と比較して第一の方向への接着力の方が強い。この弾性体構造物の接着プロファイルを図15に示す。接着力の方向依存性の強さは、本例についてはR=0.20となり、高い方向依存性を示した。第一の剥離箇所における接着エネルギーと第二の剥離箇所における接着エネルギーが等しいと仮定するとR={1×(G2b,c−/Δγ2b,c−)−1/2}/{1×(G1b,c−/Δγ1b,c−)−1/2}=0.63である。つまり、水平断面形状の非対称化と接着エネルギーの不均一化が効果的に接着力の方向依存性を高めている。よって、本例によれば、突起部の水平断面形状を非対称化したことによる効果と突起部と被着体との間の接着エネルギーに差をもたせたことによる効果が強めあって、接着部材の接着力により高い方向依存性が出る。
(参考例3)
<水平断面形状を非対称化し、垂直断面形状を非対称化した場合の接着プロファイルの解析>
解析のモデル形状を図10(D)に示す。接着部材の表面面に存在する突起部(弾性体構造物)(1005)の形状を高さ10μmの傾斜した三角柱形状とし、軸(1008)と第一の方向(1001)とがなす角度を60度とした。水平断面の形状は底辺10μmで高さ10μmの二等辺三角形で、断面の向きは二等辺三角形の底辺が第一の方向と垂直で頂点が第一の方向へ向くようにした。弾性体構造物の垂直断面は平行四辺形形状であり左右非対称化されている。弾性体構造物の弾性率とポアソン比は0.29MPaと0.45とした。また、被着体の弾性率とポアソン比は80GPaと0.21とし、構造解析時の被着体(1006)の形状は断面が底辺11μmで高さ11μmの二等辺三角形で、高さが2μmの三角柱形状とした。弾性体構造物と被着体との間の接着エネルギーは底面全体で一様とした。第一の方向へ1μNの力を加えた場合の第一の剥離箇所(1003)における歪みエネルギー解放率G1b,dは7.0mJ/m2、第二の方向(1002)へ1μNの力を加えた場合の第二の剥離箇所(1004)における歪みエネルギー解放率G2b,dは290mJ/m2であった。第一の剥離箇所と第二の剥離箇所における接着エネルギーΔγ1b,dとΔγ2b,dがともに70mJ/m2である場合、G1b,d/Δγ1b,d=0.10、G2b,d/Δγ2b,d=4.1となる。G1b,dΔγ2b,d/G2b,dΔγ1b,d=0.024であり、G1b,dΔγ2b,d/G2b,dΔγ1b,d≠1を満足する。構造物の第一の方向に平行な垂直断面形状が左右対称であると仮定した場合、参考例2よりG1b,d−=25mJ/m2、G2b,d−=62mJ/m2である。Δγ1b,d−=Δγ1b,d=Δγ2b,d−=Δγ2b,d=70mJ/m2よりG1b,d−Δγ2b,d−/G2b,d−Δγ1b,d−=0.40となり、G1b,dΔγ2b,d/G2b,dΔγ1b,d<G1b,d−Δγ2b,d−/G2b,d−Δγ1b,d−<1を満足する。第一の方向への接着力は1×(G1b,d/Δγ1b,d)−1/2=3.2μN、第二の方向への接着力は1×(G2b,d/Δγ2b,d)−1/2=0.49μNとなり、接着力に方向依存性が出た。なお、この場合、第二の方向への接着力と比較して第一の方向への接着力の方が強い。この弾性体構造物の接着プロファイルを図16に示す。接着力の方向依存性の強さは、本例についてはR=0.15となり、高い方向依存性を示した。構造物の第一の方向に平行な垂直断面形状が左右対称であると仮定するとR={1×(G2b,d−/Δγ2b,d−)−1/2}/{1×(G1b,d−/Δγ1b,d−)−1/2}=0.63である。つまり、水平断面形状の非対称化と垂直断面形状の非対称化が効果的に接着力の方向依存性を高めている。よって、本例によれば、突起部の水平断面形状を非対称化したことによる効果と突起部の垂直断面形状を非対称化したことによる効果が強めあって、接着部材の接着力により高い方向依存性が出る。
<水平断面形状を非対称化し、垂直断面形状を非対称化した場合の接着プロファイルの解析>
解析のモデル形状を図10(D)に示す。接着部材の表面面に存在する突起部(弾性体構造物)(1005)の形状を高さ10μmの傾斜した三角柱形状とし、軸(1008)と第一の方向(1001)とがなす角度を60度とした。水平断面の形状は底辺10μmで高さ10μmの二等辺三角形で、断面の向きは二等辺三角形の底辺が第一の方向と垂直で頂点が第一の方向へ向くようにした。弾性体構造物の垂直断面は平行四辺形形状であり左右非対称化されている。弾性体構造物の弾性率とポアソン比は0.29MPaと0.45とした。また、被着体の弾性率とポアソン比は80GPaと0.21とし、構造解析時の被着体(1006)の形状は断面が底辺11μmで高さ11μmの二等辺三角形で、高さが2μmの三角柱形状とした。弾性体構造物と被着体との間の接着エネルギーは底面全体で一様とした。第一の方向へ1μNの力を加えた場合の第一の剥離箇所(1003)における歪みエネルギー解放率G1b,dは7.0mJ/m2、第二の方向(1002)へ1μNの力を加えた場合の第二の剥離箇所(1004)における歪みエネルギー解放率G2b,dは290mJ/m2であった。第一の剥離箇所と第二の剥離箇所における接着エネルギーΔγ1b,dとΔγ2b,dがともに70mJ/m2である場合、G1b,d/Δγ1b,d=0.10、G2b,d/Δγ2b,d=4.1となる。G1b,dΔγ2b,d/G2b,dΔγ1b,d=0.024であり、G1b,dΔγ2b,d/G2b,dΔγ1b,d≠1を満足する。構造物の第一の方向に平行な垂直断面形状が左右対称であると仮定した場合、参考例2よりG1b,d−=25mJ/m2、G2b,d−=62mJ/m2である。Δγ1b,d−=Δγ1b,d=Δγ2b,d−=Δγ2b,d=70mJ/m2よりG1b,d−Δγ2b,d−/G2b,d−Δγ1b,d−=0.40となり、G1b,dΔγ2b,d/G2b,dΔγ1b,d<G1b,d−Δγ2b,d−/G2b,d−Δγ1b,d−<1を満足する。第一の方向への接着力は1×(G1b,d/Δγ1b,d)−1/2=3.2μN、第二の方向への接着力は1×(G2b,d/Δγ2b,d)−1/2=0.49μNとなり、接着力に方向依存性が出た。なお、この場合、第二の方向への接着力と比較して第一の方向への接着力の方が強い。この弾性体構造物の接着プロファイルを図16に示す。接着力の方向依存性の強さは、本例についてはR=0.15となり、高い方向依存性を示した。構造物の第一の方向に平行な垂直断面形状が左右対称であると仮定するとR={1×(G2b,d−/Δγ2b,d−)−1/2}/{1×(G1b,d−/Δγ1b,d−)−1/2}=0.63である。つまり、水平断面形状の非対称化と垂直断面形状の非対称化が効果的に接着力の方向依存性を高めている。よって、本例によれば、突起部の水平断面形状を非対称化したことによる効果と突起部の垂直断面形状を非対称化したことによる効果が強めあって、接着部材の接着力により高い方向依存性が出る。
<接着エネルギーを不均一化し、垂直断面形状を非対称化した場合の接着プロファイルの解析>
解析のモデル形状を図10(E)に示す。接着部材の表面に存在する突起部(弾性体構造物)(1005)の形状を直径10μmで高さ10μmの傾斜した円柱形状とし、軸(1008)と第一の方向(1001)とがなす角度を60度とした。弾性体構造物の垂直断面は平行四辺形形状であり左右非対称化されている。弾性体構造物の弾性率とポアソン比は0.29MPaと0.45とした。また、被着体の弾性率とポアソン比は80GPaと0.21とし、構造解析時の被着体(1006)の形状は直径11μm、高さ1μmの円柱形状とした。さらに、弾性体構造物と被着体との間の接着エネルギーは、底面の第一の方向側の半分の領域で7mJ/m2、第二の方向(1002)側の半分の領域で70mJ/m2とした。よって、第一の剥離箇所(1003)と第二の剥離箇所(1004)における接着エネルギーΔγ1c,dとΔγ2c,dは70mJ/m2と7mJ/m2となり、Δγ1c,dとΔγ2c,dに差が出ている。第一の方向へ1μNの力を加えた場合の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率G1c,dは1.7mJ/m2、第二の方向へ1μNの力を加えた場合の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率G2c,dは30mJ/m2であった。よって、G1c,d/Δγ1c,d=0.024、G2c,d/Δγ2c,d=4.3となる。G1c,dΔγ2c,d/G2c,dΔγ1c,d=0.0055であり、G1c,dΔγ2c,d/G2c,dΔγ1c,d≠1を満足する。第一の剥離箇所における接着エネルギーと第二の剥離箇所における接着エネルギーが等しいと仮定した場合、Δγ1c−,d=Δγ2c−,dである。G1c−,d=G1c,d=1.7mJ/m2、G2c−,d=G2c,d=30mJ/m2よりG1c−,dΔγ2c−,d/G2c−,dΔγ1c−,d=0.055となり、G1c,dΔγ2c,d/G2c,dΔγ1c,d<G1c−,dΔγ2c−,d/G2c−,dΔγ1c−,d<1を満足する。第一の方向への接着力は1×(G1c,d/Δγ1c,d)−1/2=6.5μN、第二の方向への接着力は1×(G2c,d/Δγ2c,d)−1/2=0.48μNとなり、接着力に方向依存性が出た。なお、この場合、第二の方向への接着力と比較して第一の方向への接着力の方が強い。この弾性体構造物の接着プロファイルを図17に示す。接着力の方向依存性の強さは、本例についてはR=0.074となり、高い方向依存性を示した。第一の剥離箇所における接着エネルギーと第二の剥離箇所における接着エネルギーが等しいと仮定するとR={1×(G2c−,d/Δγ2c−,d)−1/2}/{1×(G1c−,d/Δγ1c−,d)−1/2}=0.23である。つまり、接着エネルギーの不均一化と垂直断面形状の非対称化が効果的に接着力の方向依存性を高めている。よって、本例によれば、突起部と被着体との間の接着エネルギーに差をもたせたことによる効果と突起部の垂直断面形状を非対称化したことによる効果が強めあって、接着部材の接着力により高い方向依存性が出る。
解析のモデル形状を図10(E)に示す。接着部材の表面に存在する突起部(弾性体構造物)(1005)の形状を直径10μmで高さ10μmの傾斜した円柱形状とし、軸(1008)と第一の方向(1001)とがなす角度を60度とした。弾性体構造物の垂直断面は平行四辺形形状であり左右非対称化されている。弾性体構造物の弾性率とポアソン比は0.29MPaと0.45とした。また、被着体の弾性率とポアソン比は80GPaと0.21とし、構造解析時の被着体(1006)の形状は直径11μm、高さ1μmの円柱形状とした。さらに、弾性体構造物と被着体との間の接着エネルギーは、底面の第一の方向側の半分の領域で7mJ/m2、第二の方向(1002)側の半分の領域で70mJ/m2とした。よって、第一の剥離箇所(1003)と第二の剥離箇所(1004)における接着エネルギーΔγ1c,dとΔγ2c,dは70mJ/m2と7mJ/m2となり、Δγ1c,dとΔγ2c,dに差が出ている。第一の方向へ1μNの力を加えた場合の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率G1c,dは1.7mJ/m2、第二の方向へ1μNの力を加えた場合の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率G2c,dは30mJ/m2であった。よって、G1c,d/Δγ1c,d=0.024、G2c,d/Δγ2c,d=4.3となる。G1c,dΔγ2c,d/G2c,dΔγ1c,d=0.0055であり、G1c,dΔγ2c,d/G2c,dΔγ1c,d≠1を満足する。第一の剥離箇所における接着エネルギーと第二の剥離箇所における接着エネルギーが等しいと仮定した場合、Δγ1c−,d=Δγ2c−,dである。G1c−,d=G1c,d=1.7mJ/m2、G2c−,d=G2c,d=30mJ/m2よりG1c−,dΔγ2c−,d/G2c−,dΔγ1c−,d=0.055となり、G1c,dΔγ2c,d/G2c,dΔγ1c,d<G1c−,dΔγ2c−,d/G2c−,dΔγ1c−,d<1を満足する。第一の方向への接着力は1×(G1c,d/Δγ1c,d)−1/2=6.5μN、第二の方向への接着力は1×(G2c,d/Δγ2c,d)−1/2=0.48μNとなり、接着力に方向依存性が出た。なお、この場合、第二の方向への接着力と比較して第一の方向への接着力の方が強い。この弾性体構造物の接着プロファイルを図17に示す。接着力の方向依存性の強さは、本例についてはR=0.074となり、高い方向依存性を示した。第一の剥離箇所における接着エネルギーと第二の剥離箇所における接着エネルギーが等しいと仮定するとR={1×(G2c−,d/Δγ2c−,d)−1/2}/{1×(G1c−,d/Δγ1c−,d)−1/2}=0.23である。つまり、接着エネルギーの不均一化と垂直断面形状の非対称化が効果的に接着力の方向依存性を高めている。よって、本例によれば、突起部と被着体との間の接着エネルギーに差をもたせたことによる効果と突起部の垂直断面形状を非対称化したことによる効果が強めあって、接着部材の接着力により高い方向依存性が出る。
(参考例4)
<弾性率を不均一化し、水平断面形状を非対称化し、垂直断面形状を非対称化した場合の接着プロファイルの解析>
解析のモデル形状を図10(F)に示す。接着部材の表面に存在する突起部(弾性体構造物)(1005)の形状を高さ10μmの傾斜した三角柱形状とし、軸(1008)と第一の方向(1001)とがなす角度を60度とした。水平断面の形状は底辺10μmで高さ10μmの二等辺三角形で、断面の向きは二等辺三角形の底辺が第一の方向と垂直で頂点が第一の方向へ向くようにした。弾性体構造物の垂直断面は平行四辺形形状であり左右非対称化されている。弾性体構造物の弾性率とポアソン比は、底面からの高さが100nm以上で且つ水平断面の第一の方向側の5μmの領域(1007)について29MPaと0.45とした。残りの領域については、0.29MPaと0.45とした。また、被着体の弾性率とポアソン比は80GPaと0.21とし、構造解析時の被着体(1006)の形状は断面が底辺11μmで高さ11μmの二等辺三角形で、高さが2μmの三角柱形状とした。弾性体構造物と被着体との間の接着エネルギーは底面全体で一様とした。第一の方向へ1μNの力を加えた場合の第一の剥離箇所(1003)における歪みエネルギー解放率G1は0.090mJ/m2、第二の方向(1002)へ1μNの力を加えた場合の第二の剥離箇所(1004)における歪みエネルギー解放率G2は97mJ/m2であった。第一の剥離箇所と第二の剥離箇所における接着エネルギーΔγ1とΔγ2がとも70mJ/m2である場合、G1/Δγ1=0.0013、G2/Δγ2=1.4となる。G1Δγ2/G2Δγ1=9.3×10−4であり、G1Δγ2/G2Δγ1≠1を満足する。詳細は省略するが、本例においては、G1Δγ2/G2Δγ1の値がG1Δγ2/G2Δγ1<1の条件下でより小さくなるように弾性率の不均一化・水平断面形状の非対称化・垂直断面形状の非対称化の3つの特徴が適切に組み合わされている。第一の方向への接着力は1×(G1/Δγ1)−1/2=28μN、第二の方向への接着力は1×(G2/Δγ2)−1/2=0.85μNとなり、接着力に方向依存性が出た。なお、この場合、第二の方向への接着力と比較して第一の方向への接着力の方が強い。
<弾性率を不均一化し、水平断面形状を非対称化し、垂直断面形状を非対称化した場合の接着プロファイルの解析>
解析のモデル形状を図10(F)に示す。接着部材の表面に存在する突起部(弾性体構造物)(1005)の形状を高さ10μmの傾斜した三角柱形状とし、軸(1008)と第一の方向(1001)とがなす角度を60度とした。水平断面の形状は底辺10μmで高さ10μmの二等辺三角形で、断面の向きは二等辺三角形の底辺が第一の方向と垂直で頂点が第一の方向へ向くようにした。弾性体構造物の垂直断面は平行四辺形形状であり左右非対称化されている。弾性体構造物の弾性率とポアソン比は、底面からの高さが100nm以上で且つ水平断面の第一の方向側の5μmの領域(1007)について29MPaと0.45とした。残りの領域については、0.29MPaと0.45とした。また、被着体の弾性率とポアソン比は80GPaと0.21とし、構造解析時の被着体(1006)の形状は断面が底辺11μmで高さ11μmの二等辺三角形で、高さが2μmの三角柱形状とした。弾性体構造物と被着体との間の接着エネルギーは底面全体で一様とした。第一の方向へ1μNの力を加えた場合の第一の剥離箇所(1003)における歪みエネルギー解放率G1は0.090mJ/m2、第二の方向(1002)へ1μNの力を加えた場合の第二の剥離箇所(1004)における歪みエネルギー解放率G2は97mJ/m2であった。第一の剥離箇所と第二の剥離箇所における接着エネルギーΔγ1とΔγ2がとも70mJ/m2である場合、G1/Δγ1=0.0013、G2/Δγ2=1.4となる。G1Δγ2/G2Δγ1=9.3×10−4であり、G1Δγ2/G2Δγ1≠1を満足する。詳細は省略するが、本例においては、G1Δγ2/G2Δγ1の値がG1Δγ2/G2Δγ1<1の条件下でより小さくなるように弾性率の不均一化・水平断面形状の非対称化・垂直断面形状の非対称化の3つの特徴が適切に組み合わされている。第一の方向への接着力は1×(G1/Δγ1)−1/2=28μN、第二の方向への接着力は1×(G2/Δγ2)−1/2=0.85μNとなり、接着力に方向依存性が出た。なお、この場合、第二の方向への接着力と比較して第一の方向への接着力の方が強い。
この弾性体構造物の接着プロファイルを図18に示す。本例における接着力の方向依存性の強さはR=0.030となり、非常に高い方向依存性を示した。これは、本例において、G1Δγ2/G2Δγ1の値がG1Δγ2/G2Δγ1<1の条件下でより小さくなるように弾性率の不均一化・水平断面形状の非対称化・垂直断面形状の非対称化の3つの特徴が適切に組み合わされているためである。つまり、それぞれの特徴が効果的に接着力の方向依存性を高めている。よって、本例によれば、突起部の弾性率を不均一化したことによる効果、突起部の水平断面形状を非対称化したことによる効果、突起部の垂直断面形状を非対称化したことによる効果が強めあって、接着部材の接着力に非常に高い方向依存性が出る。
<水平断面形状を非対称化し、接着エネルギーを不均一化し、垂直断面形状を非対称化した場合の接着プロファイルの解析>
解析のモデル形状は参考例3と同じものを用いた(図10(D))。突起部(弾性体構造物)(1005)と被着体(1006)との間の接着エネルギーは、底面の第一の方向(1001)側の半分の領域で7mJ/m2、第二の方向(1002)側の半分の領域で70mJ/m2とした。よって、第一の剥離箇所(1003)と第二の剥離箇所(1004)における接着エネルギーΔγ1とΔγ2は70mJ/m2と7mJ/m2となり、Δγ1とΔγ2に差が出ている。参考例3と同じく、第一の方向へ1μNの力を加えた場合の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率G1は7.0mJ/m2、第二の方向へ1μNの力を加えた場合の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率G2は290mJ/m2となる。よって、G1/Δγ1=0.10、G2/Δγ2=41となる。G1Δγ2/G2Δγ1=0.0024であり、G1Δγ2/G2Δγ1≠1を満足する。詳細は省略するが、本例においては、G1Δγ2/G2Δγ1の値がG1Δγ2/G2Δγ1<1の条件下でより小さくなるように水平断面形状の非対称化・接着エネルギーの不均一化・垂直断面形状の非対称化の3つの特徴が適切に組み合わされている。第一の方向への接着力は1×(G1/Δγ1)−1/2=3.2μN、第二の方向への接着力は1×(G2/Δγ2)−1/2=0.16μNとなり、接着力に方向依存性が出た。なお、この場合、第二の方向への接着力と比較して第一の方向への接着力の方が強い。
解析のモデル形状は参考例3と同じものを用いた(図10(D))。突起部(弾性体構造物)(1005)と被着体(1006)との間の接着エネルギーは、底面の第一の方向(1001)側の半分の領域で7mJ/m2、第二の方向(1002)側の半分の領域で70mJ/m2とした。よって、第一の剥離箇所(1003)と第二の剥離箇所(1004)における接着エネルギーΔγ1とΔγ2は70mJ/m2と7mJ/m2となり、Δγ1とΔγ2に差が出ている。参考例3と同じく、第一の方向へ1μNの力を加えた場合の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率G1は7.0mJ/m2、第二の方向へ1μNの力を加えた場合の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率G2は290mJ/m2となる。よって、G1/Δγ1=0.10、G2/Δγ2=41となる。G1Δγ2/G2Δγ1=0.0024であり、G1Δγ2/G2Δγ1≠1を満足する。詳細は省略するが、本例においては、G1Δγ2/G2Δγ1の値がG1Δγ2/G2Δγ1<1の条件下でより小さくなるように水平断面形状の非対称化・接着エネルギーの不均一化・垂直断面形状の非対称化の3つの特徴が適切に組み合わされている。第一の方向への接着力は1×(G1/Δγ1)−1/2=3.2μN、第二の方向への接着力は1×(G2/Δγ2)−1/2=0.16μNとなり、接着力に方向依存性が出た。なお、この場合、第二の方向への接着力と比較して第一の方向への接着力の方が強い。
この弾性体構造物の接着プロファイルを図19に示す。本例における接着力の方向依存性の強さはR=0.049となり、非常に高い方向依存性を示した。これは、本例において、G1Δγ2/G2Δγ1の値がG1Δγ2/G2Δγ1<1の条件下でより小さくなるように水平断面形状の非対称化・接着エネルギーの不均一化・垂直断面形状の非対称化の3つの特徴が適切に組み合わされているためである。つまり、それぞれの特徴が効果的に接着力の方向依存性を高めている。よって、本例によれば、突起部の水平断面形状を非対称化したことによる効果、突起部と被着体との間の接着エネルギーに差をもたせたことによる効果、突起部の垂直断面形状を非対称化したことによる効果が強めあって、接着部材の接着力に非常に高い方向依存性が出る。
<弾性率を不均一化し、水平断面形状を非対称化し、接着エネルギーを不均一化し、垂直断面形状を非対称化した場合の接着プロファイルの解析>
解析のモデル形状は参考例4と同じものを用いた(図10(F))。突起部(弾性体構造物)(1005)と被着体(1006)との間の接着エネルギーは、底面の第一の方向(1001)側の半分の領域で7mJ/m2、第二の方向(1002)側の半分の領域で70mJ/m2とした。よって、第一の剥離箇所(1003)と第二の剥離箇所(1004)における接着エネルギーΔγ1とΔγ2は70mJ/m2と7mJ/m2となり、Δγ1とΔγ2に差が出ている。参考例4と同じく、第一の方向へ1μNの力を加えた場合の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率G1は0.090mJ/m2、第二の方向へ1μNの力を加えた場合の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率G2は97mJ/m2となる。よって、G1/Δγ1=0.0013、G2/Δγ2=14となる。G1Δγ2/G2Δγ1=9.3×10−5であり、G1Δγ2/G2Δγ1≠1を満足する。詳細は省略するが、本例においては、G1Δγ2/G2Δγ1の値がG1Δγ2/G2Δγ1<1の条件下でより小さくなるように弾性率の不均一化・水平断面形状の非対称化・接着エネルギーの不均一化・垂直断面形状の非対称化の4つの特徴が適切に組み合わされている。第一の方向への接着力は1×(G1/Δγ1)−1/2=28μN、第二の方向への接着力は1×(G2/Δγ2)−1/2=0.27μNとなり、接着力に方向依存性が出た。なお、この場合、第二の方向への接着力と比較して第一の方向への接着力の方が強い。
解析のモデル形状は参考例4と同じものを用いた(図10(F))。突起部(弾性体構造物)(1005)と被着体(1006)との間の接着エネルギーは、底面の第一の方向(1001)側の半分の領域で7mJ/m2、第二の方向(1002)側の半分の領域で70mJ/m2とした。よって、第一の剥離箇所(1003)と第二の剥離箇所(1004)における接着エネルギーΔγ1とΔγ2は70mJ/m2と7mJ/m2となり、Δγ1とΔγ2に差が出ている。参考例4と同じく、第一の方向へ1μNの力を加えた場合の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率G1は0.090mJ/m2、第二の方向へ1μNの力を加えた場合の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率G2は97mJ/m2となる。よって、G1/Δγ1=0.0013、G2/Δγ2=14となる。G1Δγ2/G2Δγ1=9.3×10−5であり、G1Δγ2/G2Δγ1≠1を満足する。詳細は省略するが、本例においては、G1Δγ2/G2Δγ1の値がG1Δγ2/G2Δγ1<1の条件下でより小さくなるように弾性率の不均一化・水平断面形状の非対称化・接着エネルギーの不均一化・垂直断面形状の非対称化の4つの特徴が適切に組み合わされている。第一の方向への接着力は1×(G1/Δγ1)−1/2=28μN、第二の方向への接着力は1×(G2/Δγ2)−1/2=0.27μNとなり、接着力に方向依存性が出た。なお、この場合、第二の方向への接着力と比較して第一の方向への接着力の方が強い。
この弾性体構造物の接着プロファイルを図20に示す。本例における接着力の方向依存性の強さはR=0.0096となり、特に高い方向依存性を示した。これは、本例において、G1Δγ2/G2Δγ1の値がG1Δγ2/G2Δγ1<1の条件下でより小さくなるように弾性率の不均一化・水平断面形状の非対称化・接着エネルギーの不均一化・垂直断面形状の非対称化の4つの特徴が適切に組み合わされているためである。つまり、それぞれの特徴が効果的に接着力の方向依存性を高めている。よって、本例によれば、突起部の弾性率を不均一化したことによる効果、突起部の水平断面形状を非対称化したことによる効果、突起部と被着体との間の接着エネルギーに差をもたせたことによる効果、突起部の垂直断面形状を非対称化したことによる効果が強めあって、接着材料の接着部材に特に高い方向依存性が出る。
続いて、接着部材の作製方法の例、および接着力の測定方法の例を説明する。
<接着部材の作製方法>
接着部材は、鋳型を用いて高分子樹脂を成型することで作製する。鋳型の作製方法は、以下の通りである。まず、ガラスウエハ上に突起部の形やパターンに応じたクロムマスクを定法により作製する。次に、クロム面上にフォトレジスト(商品名AZP4620、AZ Electronic Materials)をスピンコートする。さらに、ガラスウエハ側から露光し、定法により現像することで鋳型となるレジストのパターンを得る。
高分子樹脂の成型方法は、以下の通りである。レジストパターン上にポリジメチルシロキサン(商品名Sylgard 184、Dow Corning Toray、以下PDMS)のベース、キャタリストの10:1混合液をスピンコートした後、100度で1時間かけて熱硬化する。アセトンでレジストを溶解しPDMSのシートを単離し、さらにアセトンで数回洗浄し真空乾燥する。
接着部材は、鋳型を用いて高分子樹脂を成型することで作製する。鋳型の作製方法は、以下の通りである。まず、ガラスウエハ上に突起部の形やパターンに応じたクロムマスクを定法により作製する。次に、クロム面上にフォトレジスト(商品名AZP4620、AZ Electronic Materials)をスピンコートする。さらに、ガラスウエハ側から露光し、定法により現像することで鋳型となるレジストのパターンを得る。
高分子樹脂の成型方法は、以下の通りである。レジストパターン上にポリジメチルシロキサン(商品名Sylgard 184、Dow Corning Toray、以下PDMS)のベース、キャタリストの10:1混合液をスピンコートした後、100度で1時間かけて熱硬化する。アセトンでレジストを溶解しPDMSのシートを単離し、さらにアセトンで数回洗浄し真空乾燥する。
弾性率または/およびポアソン比を不均一化した突起部を有する接着部材の製造方法は以下の通りである。突起部よりサイズが小さなシリカ微粒子(商品名MP−2040、日産化学工業株式会社、直径200nm)に対し、定法に従ってトリエトキシビニルシランで表面修飾し、さらに白金錯体触媒を用いて微粒子表面のビニル基をメチルヒドロシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマーで修飾する。得られた修飾微粒子をジ−n−ブチルエーテル中に重量分率30%になるように分散し、この分散液をレジストパターンにキャストしスピンコートする。このプロセスにより、レジストパターンの窪み内において片側にシリカ微粒子を寄せることができる。その後、レジストパターンから溶剤を真空下で除去し、これを鋳型として前記の方法に従って高分子樹脂を成型してシリカ微粒子を含む突起部を有する接着部材を得る。なお、本手法により作製した突起部の端面には窪みや凹凸が発生することがある。そこで、PDMSを用いたマイクロコンタクトプリンティングプロセスにより突起部の端面を成型するのも有効である。
水平断面形状を非対称化した突起部を有する接着部材は、前記の鋳型作製方法において、非対称な形状に応じたクロムマスクを使用して作製する。垂直断面形状を非対称化した接着部材は前記の鋳型作製方法において、ガラスウエハに対し斜め方向から露光することで作製する。弾性率の非対称化と垂直断面形状の非対称化を組み合わせた接着部材は、微粒子分散液をレジストパターン上のスピンコートする際、スピンコートの回転軸と突起部に相当する窪みの軸が平行になるようにレジストパターンを傾斜すれば良い。
<接着部材の接着力の測定方法>
単一の突起部の接着力は、光テコ方式によりカンチレバーのたわみとねじれを検出する機構、ならびに2軸駆動が可能なステージを有する測定装置で評価した。突起部より十分に大きな直径300μmのガラス球を被着体として用い、突起部を有するサンプルをステージ側に、ガラス球をカンチレバー側に設置した。突起部をガラス球に押し付け、0.5μm/sで垂直・水平方向に動かした。その際に突起部とガラス球間に働く垂直方向成分の力と水平方向成分の力を、カンチレバーのたわみとねじれ量から定法に従って求めた。突起部がガラス球と接着している場合には両者の間に力が働くので、測定点が存在する領域が接着プロファイルとなる。
単一の突起部の接着力は、光テコ方式によりカンチレバーのたわみとねじれを検出する機構、ならびに2軸駆動が可能なステージを有する測定装置で評価した。突起部より十分に大きな直径300μmのガラス球を被着体として用い、突起部を有するサンプルをステージ側に、ガラス球をカンチレバー側に設置した。突起部をガラス球に押し付け、0.5μm/sで垂直・水平方向に動かした。その際に突起部とガラス球間に働く垂直方向成分の力と水平方向成分の力を、カンチレバーのたわみとねじれ量から定法に従って求めた。突起部がガラス球と接着している場合には両者の間に力が働くので、測定点が存在する領域が接着プロファイルとなる。
複数の突起部を有する接着部材の接着力は、平坦なガラス板を被着体として用い、テクスチャーアナライザー(TA.XT Plus、Stable Micro Systems Ltd.)により行なった。本装置は1軸の力センサと1軸駆動のステージを有しており、センサやステージの軸と接着界面との間の角度を変えて接着部材が被着体から剥離した際の力を測定した。接着部材の接着面サイズは1cm角程度のものを用いた。得られた接着力を接着面の面積で割って規格化し、垂直方向成分の力と水平方向成分の力に分解してプロットすることで接着プロファイルを得た。なお、以下の参考例7および参考例11では、単一の突起部の接着力と複数の突起部を有する接着部材の接着力の両方を測定した。これにより、両者が同等の接着力の方向依存性の強さを示すことを確認した。
(参考例5)
<弾性率を不均一化した場合の接着プロファイルの実測評価>
実測評価に用いた突起部のSEM(Scanning Electron Microscope)による観察像とFIB(Focused Ion Beam)/SEMによる断面観察像を図21に示す。シリカ微粒子が片側に偏って分布していることが見てとれる。なお、別途測定したシリカ微粒子を充填したPDMSの弾性率は32MPa、PDMSの弾性率は0.58MPaであった(この弾性率の値は以下の実施例や参考例においても同様である)。以上のように、本突起部の弾性率は不均一化されており、突起部の全体形状・弾性率の値・分布状態は参考例1で解析したものに近い。
<弾性率を不均一化した場合の接着プロファイルの実測評価>
実測評価に用いた突起部のSEM(Scanning Electron Microscope)による観察像とFIB(Focused Ion Beam)/SEMによる断面観察像を図21に示す。シリカ微粒子が片側に偏って分布していることが見てとれる。なお、別途測定したシリカ微粒子を充填したPDMSの弾性率は32MPa、PDMSの弾性率は0.58MPaであった(この弾性率の値は以下の実施例や参考例においても同様である)。以上のように、本突起部の弾性率は不均一化されており、突起部の全体形状・弾性率の値・分布状態は参考例1で解析したものに近い。
この突起部の接着プロファイルを図22に示す。接着プロファイルは非対称であり、参考例1の解析と同じく突起部を弾性率が高い側へ引っ張った場合に接着力が強い。また、水平方向の正負接着力はそれぞれ絶対値で11μN、6.8μNであり、接着力の方向依存性の強さはR=0.62であった。よって、本例によれば、突起部の弾性率を不均一化したことによる効果により接着部材の接着力に方向依存性が出る。
(参考例6)
<水平断面形状を非対称化した場合の接着プロファイルの実測評価>
実測評価に用いた突起部のSEMによる観察像を図23に示す。突起部の水平断面形状は二等辺三角形で、全体形状は参考例2で解析したものに近い。この突起部の接着プロファイルを図24に示す。接着プロファイルは非対称であり、参考例2の解析と同じく突起部を二等辺三角形の頂点側へ引っ張った場合に接着力が強い。また、水平方向の正負接着力はそれぞれ絶対値で9.0μN、6.9μNであり、接着力の方向依存性の強さはR=0.77であった。よって、本例によれば、突起部の水平断面形状を非対称化したことによる効果により接着部材の接着力に方向依存性が出る。
<水平断面形状を非対称化した場合の接着プロファイルの実測評価>
実測評価に用いた突起部のSEMによる観察像を図23に示す。突起部の水平断面形状は二等辺三角形で、全体形状は参考例2で解析したものに近い。この突起部の接着プロファイルを図24に示す。接着プロファイルは非対称であり、参考例2の解析と同じく突起部を二等辺三角形の頂点側へ引っ張った場合に接着力が強い。また、水平方向の正負接着力はそれぞれ絶対値で9.0μN、6.9μNであり、接着力の方向依存性の強さはR=0.77であった。よって、本例によれば、突起部の水平断面形状を非対称化したことによる効果により接着部材の接着力に方向依存性が出る。
(参考例7)
<垂直断面形状を非対称化した場合の接着プロファイルの実測評価>
実測評価に用いた突起部のSEMによる観察像を図25に示す。突起部は軸が斜めに傾いており垂直断面形状が非対称化されている。この突起部の接着プロファイルを図26に示す。接着プロファイルは非対称であり、突起部を軸方向へ引っ張った場合に接着力が強い。また、水平方向の正負接着力はそれぞれ絶対値で15μN、9.4μNであり、接着力の方向依存性の強さはR=0.63であった。この突起部を25μmピッチで配列した接着部材の接着プロファイルを図27に示す。接着プロファイルは非対称であり、突起部を軸方向へ引っ張った場合に接着力が強い。また、水平方向の正負接着力はそれぞれ絶対値で1.2N/cm2、0.76N/cm2であり、接着力の方向依存性の強さはR=0.64であった。以上のように、突起部を複数有する接着部材の接着力の方向依存性の強さは、突起部の接着力の方向依存性の強さを良く反映している。
<垂直断面形状を非対称化した場合の接着プロファイルの実測評価>
実測評価に用いた突起部のSEMによる観察像を図25に示す。突起部は軸が斜めに傾いており垂直断面形状が非対称化されている。この突起部の接着プロファイルを図26に示す。接着プロファイルは非対称であり、突起部を軸方向へ引っ張った場合に接着力が強い。また、水平方向の正負接着力はそれぞれ絶対値で15μN、9.4μNであり、接着力の方向依存性の強さはR=0.63であった。この突起部を25μmピッチで配列した接着部材の接着プロファイルを図27に示す。接着プロファイルは非対称であり、突起部を軸方向へ引っ張った場合に接着力が強い。また、水平方向の正負接着力はそれぞれ絶対値で1.2N/cm2、0.76N/cm2であり、接着力の方向依存性の強さはR=0.64であった。以上のように、突起部を複数有する接着部材の接着力の方向依存性の強さは、突起部の接着力の方向依存性の強さを良く反映している。
(参考例8)
<弾性率を不均一化し、水平断面形状を非対称化した場合の接着プロファイルの実測評価>
実測評価に用いた突起部のSEMによる観察像とFIB/SEMによる断面観察像を図28に示す。シリカ微粒子が片側に偏って分布していることが見てとれる。また、突起部の水平断面形状は二等辺三角形である。この突起部の接着プロファイルを図29に示す。接着プロファイルは非対称であり、突起部を弾性率が高い側・二等辺三角形の頂点側へ引っ張った場合に接着力が強い。また、水平方向の正負接着力はそれぞれ絶対値で14μN、7.4μNであり、接着力の方向依存性の強さはR=0.53であった。以上のように、接着プロファイルの非対称性は参考例5や参考例6より強い。よって、本例によれば、突起部の弾性率を不均一化したことによる効果と突起部の水平断面形状を非対称化したことによる効果が強めあって、接着部材の接着力により高い方向依存性が出る。
<弾性率を不均一化し、水平断面形状を非対称化した場合の接着プロファイルの実測評価>
実測評価に用いた突起部のSEMによる観察像とFIB/SEMによる断面観察像を図28に示す。シリカ微粒子が片側に偏って分布していることが見てとれる。また、突起部の水平断面形状は二等辺三角形である。この突起部の接着プロファイルを図29に示す。接着プロファイルは非対称であり、突起部を弾性率が高い側・二等辺三角形の頂点側へ引っ張った場合に接着力が強い。また、水平方向の正負接着力はそれぞれ絶対値で14μN、7.4μNであり、接着力の方向依存性の強さはR=0.53であった。以上のように、接着プロファイルの非対称性は参考例5や参考例6より強い。よって、本例によれば、突起部の弾性率を不均一化したことによる効果と突起部の水平断面形状を非対称化したことによる効果が強めあって、接着部材の接着力により高い方向依存性が出る。
(参考例9)
<弾性率を不均一化し、垂直断面形状を非対称化した場合の接着プロファイルの実測評価>
実測評価に用いた突起部のSEMによる観察像とFIB/SEMによる断面観察像を図30に示す。シリカ微粒子が突起部の軸方向に沿って片側に偏って分布していることが見てとれる。また、突起部は軸が斜めに傾いており垂直断面形状が非対称化されている。
<弾性率を不均一化し、垂直断面形状を非対称化した場合の接着プロファイルの実測評価>
実測評価に用いた突起部のSEMによる観察像とFIB/SEMによる断面観察像を図30に示す。シリカ微粒子が突起部の軸方向に沿って片側に偏って分布していることが見てとれる。また、突起部は軸が斜めに傾いており垂直断面形状が非対称化されている。
この突起部を25μmピッチで配列した接着部材の接着プロファイルを図31に示す。接着プロファイルは非対称であり、突起部を弾性率が高い側・軸に沿う方向に引っ張った場合に接着力が強い。また、水平方向の正負接着力はそれぞれ絶対値で6.1N/cm2、1.7N/cm2であり、接着力の方向依存性の強さはR=0.28であった。以上のように、接着プロファイルの非対称性は参考例5や参考例7より強い。よって、本例によれば、突起部の弾性率を不均一化したことによる効果と突起部の垂直断面形状を非対称化したことによる効果が強めあって、接着部材の接着力により高い方向依存性が出る。
(参考例10)
<水平断面形状を非対称化し、垂直断面形状を非対称化した場合の接着プロファイルの実測評価>
実測評価に用いた突起部のSEMによる観察像を図32に示す。突起部の水平断面形状は二等辺三角形である。また、突起部は軸が斜めに傾いており垂直断面形状が非対称化されている。全体形状は参考例3で解析したものに近い。この突起部の接着プロファイルを図33に示す。接着プロファイルは非対称であり、参考例3の解析と同じく突起部を二等辺三角形の頂点側・軸に沿う方向に引っ張った場合に接着力が強い。また、水平方向の正負接着力はそれぞれ絶対値で13μN、7.0μNであり、接着力の方向依存性の強さはR=0.54であった。以上のように、接着プロファイルの非対称性は参考例6や参考例7より強い。よって、本例によれば、突起部の水平断面形状を非対称化したことによる効果と突起部の垂直断面形状を非対称化したことによる効果が強めあって、接着部材の接着力により高い方向依存性が出る。
<水平断面形状を非対称化し、垂直断面形状を非対称化した場合の接着プロファイルの実測評価>
実測評価に用いた突起部のSEMによる観察像を図32に示す。突起部の水平断面形状は二等辺三角形である。また、突起部は軸が斜めに傾いており垂直断面形状が非対称化されている。全体形状は参考例3で解析したものに近い。この突起部の接着プロファイルを図33に示す。接着プロファイルは非対称であり、参考例3の解析と同じく突起部を二等辺三角形の頂点側・軸に沿う方向に引っ張った場合に接着力が強い。また、水平方向の正負接着力はそれぞれ絶対値で13μN、7.0μNであり、接着力の方向依存性の強さはR=0.54であった。以上のように、接着プロファイルの非対称性は参考例6や参考例7より強い。よって、本例によれば、突起部の水平断面形状を非対称化したことによる効果と突起部の垂直断面形状を非対称化したことによる効果が強めあって、接着部材の接着力により高い方向依存性が出る。
(参考例11)
<弾性率を不均一化し、水平断面形状を非対称化し、垂直断面形状を非対称化した場合の接着プロファイルの実測評価>
実測評価に用いた突起部のSEMによる観察像とFIB/SEMによる断面観察像を図34に示す。シリカ微粒子が突起部の軸方向に沿って片側に偏って分布していることが見てとれる。また、突起部の水平断面形状は二等辺三角形である。さらに、突起部は軸が斜めに傾いており垂直断面形状が非対称化されている。突起部の全体形状・弾性率の値・分布状態は参考例4で解析したものに近い。
<弾性率を不均一化し、水平断面形状を非対称化し、垂直断面形状を非対称化した場合の接着プロファイルの実測評価>
実測評価に用いた突起部のSEMによる観察像とFIB/SEMによる断面観察像を図34に示す。シリカ微粒子が突起部の軸方向に沿って片側に偏って分布していることが見てとれる。また、突起部の水平断面形状は二等辺三角形である。さらに、突起部は軸が斜めに傾いており垂直断面形状が非対称化されている。突起部の全体形状・弾性率の値・分布状態は参考例4で解析したものに近い。
この突起部の接着プロファイルを図35に示す。接着プロファイルは非対称であり、参考例4の解析と同じく突起部を弾性率が高い側・二等辺三角形の頂点側・軸に沿う方向に引っ張った場合に接着力が強い。また、水平方向の正負接着力はそれぞれ絶対値で34μN、8.9μNであり、接着力の方向依存性の強さはR=0.26であった。以上のように、接着プロファイルの非対称性は参考例8・参考例9・参考例10より強い。
この突起部を25μmピッチで配列した接着部材の接着プロファイルを図36に示す。接着プロファイルは非対称であり、突起部を弾性率が高い側・二等辺三角形の頂点側・軸に沿う方向に引っ張った場合に接着力が強い。また、水平方向の正負接着力はそれぞれ絶対値で9.5N/cm2、1.6N/cm2であり、接着力の方向依存性の強さはR=0.16であった。以上のように、やはり接着部材においても接着プロファイルの非対称性は参考例8・参考例9・参考例10より強い。よって、本例によれば、突起部の弾性率を不均一化したことによる効果、突起部の水平断面形状を非対称化したことによる効果、突起部の垂直断面形状を非対称化したことによる効果が強めあって、接着部材の接着力に非常に高い方向依存性が出る。
201 部材
202 表面
203 突起部
204 端面
205 被着体
206 第一の方向
207 第二の方向
208 第一の剥離箇所
209 第二の剥離箇所
210 第一の方向への力
211 第二の方向への力
301 円柱
302 第二の方向の側が外側となる曲げモーメント
303 第一の方向の側が外側となる曲げモーメント
304 第一の方向
305 第二の方向
306 弾性率が不均一な円柱
307 第一の方向の側の半分の領域
308 第二の方向の側の半分の領域
309 中立面
310 第二の方向の側が外側となる曲げモーメント
311 第一の方向の側が外側となる曲げモーメント
401 第一の方向
402 第二の方向
403 第一の方向に直交しかつ水平断面形状の断面一次モーメントがゼロとなる軸
404 第一の方向の端部
405 第二の方向の端部
406 第一の方向の端部と第二の方向の端部の中央
407 第一の方向に直行する方向の幅
408 扇形の断面形状
409 水平断面形状の幅が第一の方向から第二の方向へ向かって加速度的に増加する断面形状
501 断面一次モーメントがゼロとなる軸の位置
502 柱状物
503 第二の方向の側が外側となる曲げモーメント
504 第一の方向の側が外側となる曲げモーメント
505 第一の方向
506 第二の方向
601 突起部
602 端面の図心
603 直線と構造物の底面の外周との2つ交点の中点
604 z=hで定義される平面
605 z=hで定義される平面で切断した断面
606 断面の図心
607 直線と断面の外周との2つの交点の中点
608 仮想的な突起部
609 第一の方向
701 弾性体構造物
702 第一の剥離箇所
703 仮想剥離部
704 被着体
705 構造物上面
706 第一の方向
801 仮想剥離部
802 弾性体構造物
803 被着体
804 分割後の領域1
805 分割後の領域2
901 弾性体構造物
902 被着体
903 第一の剥離箇所
904 第二の剥離箇所
905 第一の方向
202 表面
203 突起部
204 端面
205 被着体
206 第一の方向
207 第二の方向
208 第一の剥離箇所
209 第二の剥離箇所
210 第一の方向への力
211 第二の方向への力
301 円柱
302 第二の方向の側が外側となる曲げモーメント
303 第一の方向の側が外側となる曲げモーメント
304 第一の方向
305 第二の方向
306 弾性率が不均一な円柱
307 第一の方向の側の半分の領域
308 第二の方向の側の半分の領域
309 中立面
310 第二の方向の側が外側となる曲げモーメント
311 第一の方向の側が外側となる曲げモーメント
401 第一の方向
402 第二の方向
403 第一の方向に直交しかつ水平断面形状の断面一次モーメントがゼロとなる軸
404 第一の方向の端部
405 第二の方向の端部
406 第一の方向の端部と第二の方向の端部の中央
407 第一の方向に直行する方向の幅
408 扇形の断面形状
409 水平断面形状の幅が第一の方向から第二の方向へ向かって加速度的に増加する断面形状
501 断面一次モーメントがゼロとなる軸の位置
502 柱状物
503 第二の方向の側が外側となる曲げモーメント
504 第一の方向の側が外側となる曲げモーメント
505 第一の方向
506 第二の方向
601 突起部
602 端面の図心
603 直線と構造物の底面の外周との2つ交点の中点
604 z=hで定義される平面
605 z=hで定義される平面で切断した断面
606 断面の図心
607 直線と断面の外周との2つの交点の中点
608 仮想的な突起部
609 第一の方向
701 弾性体構造物
702 第一の剥離箇所
703 仮想剥離部
704 被着体
705 構造物上面
706 第一の方向
801 仮想剥離部
802 弾性体構造物
803 被着体
804 分割後の領域1
805 分割後の領域2
901 弾性体構造物
902 被着体
903 第一の剥離箇所
904 第二の剥離箇所
905 第一の方向
Claims (9)
- 部材の表面より突起する突起部を備え、前記突起部の端面と被着体との間の表面間力により、前記端面が前記被着体に接着する接着部材であって、
前記表面に平行な第一の方向に力をかけた場合の前記突起部の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG1c、第一の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ1cとし、
第一の方向とは逆方向の第二の方向に第一の方向にかけた力と同じ大きさの力をかけた場合の前記突起部の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG2c、第二の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ2cとして、
G1c/Δγ1c≠G2c/Δγ2cを満たすようにΔγ1cとΔγ2cとに差を有していることを特徴とする接着部材。 - 複数の突起部を備えることを特徴とする請求項1に記載の接着部材。
- 前記歪みエネルギー解放率G1c、G2cおよび前記接着エネルギーΔγ1c、Δγ2cが、G1c<G2cかつΔγ1c>Δγ2c、またはG1c>G2cかつΔγ1c<Δγ2cを満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の接着部材。
- 前記歪みエネルギー解放率G1cとG2cがG1c≧G2cであって、前記端面の任意の場所における接着エネルギーΔγcが、Δγ1c≦Δγcまたは/およびΔγ2c≧Δγcを満たすことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の接着部材。
- 前記歪みエネルギー解放率G1cとG2cがG1c≦G2cであって、前記端面の任意の場所における接着エネルギーΔγcが、Δγ1c≧Δγcまたは/およびΔγ2c≦Δγcを満たすことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の接着部材。
- 前記突起部は、柱状の形状をなすことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の接着部材。
- 前記端面が略均一な接着エネルギーを有する2つの領域からなり、前記第一の剥離箇所を含む領域の接着エネルギーがΔγ1cで、前記第二の剥離箇所を含む領域の接着エネルギーがΔγ2cであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の接着部材。
- 部材の表面より突起する突起部を備え、前記突起部の端面と被着体との間の表面間力により、前記端面が前記被着体に接着する接着部材であって、
前記突起部は、前記表面に垂直で第一の方向に平行な面で切断した断面が左右非対称化した形状をなしており、
前記表面に平行な第一の方向に力をかけた場合の前記突起部の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG1c,d、第一の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ1c,dとし、
第一の方向とは逆方向の第二の方向に第一の方向にかけた力と同じ大きさの力をかけた場合の前記突起部の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG2c,d、第二の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ2c,dとして、
Δγ1c,dとΔγ2c,dとに差を有しており、且つG1c,d/Δγ1c,d≠G2c,d/Δγ2c,dを満足しており、
前記歪みエネルギー解放率G1c,d、前記接着エネルギーΔγ1c,d、前記歪みエネルギー解放率G2c,d、及び前記接着エネルギーΔγ2c,dについて、
Δγ1c,dとΔγ2c,dとが等しいと仮定した場合にそれぞれG1c−,d、Δγ1c−,d、G2c−,d、Δγ2c−,dと表記して、
G1c,dΔγ2c,d/G2c,dΔγ1c,d<G1c−,dΔγ2c−,d/G2c−,dΔγ1c−,d<1またはG1c,dΔγ2c,d/G2c,dΔγ1c,d>G1c−,dΔγ2c−,d/G2c−,dΔγ1c−,d>1を満足することを特徴とする接着部材。 - 部材の表面より突起する突起部を備え、前記突起部の端面と被着体との間の表面間力により、前記端面が前記被着体に接着する接着部材の製造方法であって、
前記表面に平行な第一の方向に力をかけた場合の前記突起部の第一の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG1c、第一の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ1cとし、
第一の方向とは逆方向の第二の方向に第一の方向にかけた力と同じ大きさの力をかけた場合の前記突起部の第二の剥離箇所における歪みエネルギー解放率をG2c、第二の剥離箇所における接着エネルギーをΔγ2cとして、
G1c/Δγ1c≠G2c/Δγ2cを満たすようにΔγ1cとΔγ2cとに差を生じさせることを特徴とする接着部材の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015067074A JP2015199929A (ja) | 2014-03-31 | 2015-03-27 | 接着部材 |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014074573 | 2014-03-31 | ||
JP2014074573 | 2014-03-31 | ||
JP2015067074A JP2015199929A (ja) | 2014-03-31 | 2015-03-27 | 接着部材 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2015199929A true JP2015199929A (ja) | 2015-11-12 |
Family
ID=54189083
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2015067074A Pending JP2015199929A (ja) | 2014-03-31 | 2015-03-27 | 接着部材 |
Country Status (2)
Country | Link |
---|---|
US (1) | US20150273734A1 (ja) |
JP (1) | JP2015199929A (ja) |
-
2015
- 2015-03-27 JP JP2015067074A patent/JP2015199929A/ja active Pending
- 2015-03-30 US US14/673,773 patent/US20150273734A1/en not_active Abandoned
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
US20150273734A1 (en) | 2015-10-01 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Xu et al. | Additive manufacturing of two-phase lightweight, stiff and high damping carbon fiber reinforced polymer microlattices | |
Minsky et al. | Achieving enhanced and tunable adhesion via composite posts | |
Hui et al. | Constraints on microcontact printing imposed by stamp deformation | |
Jeong et al. | Nanohairs and nanotubes: Efficient structural elements for gecko-inspired artificial dry adhesives | |
Kim et al. | Multifunctional inverted nanocone arrays for non‐wetting, self‐cleaning transparent surface with high mechanical robustness | |
JP2015199927A (ja) | 接着部材 | |
US20090130372A1 (en) | Adhesive structure and manufacturing method thereof | |
US10351733B2 (en) | Composite pillar structures | |
US20160312079A1 (en) | Adhesive member | |
Amirsadeghi et al. | A simulation study on the effect of cross-linking agent concentration for defect tolerant demolding in UV nanoimprint lithography | |
Shiotsu et al. | Simulation study on the template release mechanism and damage estimation for various release methods in nanoimprint lithography | |
Suzuki et al. | Crack growth analysis of a composite/adhesive interface toughened by in-mold surface preparation | |
Berardo et al. | An experimental-numerical study of the adhesive static and dynamic friction of micro-patterned soft polymer surfaces | |
Ito et al. | Investigation of fluorinated (meth) acrylate monomers and macromonomers suitable for a hydroxy-containing acrylate monomer in UV nanoimprinting | |
Yun et al. | Highly enhanced interfacial adhesion properties of steel-polymer composites by dot-shaped surface patterning | |
Huang et al. | Controllable wrinkle configurations by soft micro-patterns to enhance the stretchability of Si ribbons | |
Geng et al. | Fabrication of nanopatterns on silicon surface by combining AFM-based scratching and RIE methods | |
JP2015199928A (ja) | 接着部材 | |
Seok | Fabrication and modeling of nitride thin-film encapsulation based on anti-adhesion-assisted transfer technique and nitride/BCB bilayer wrinkling | |
Shi et al. | An analytic model of two-level compressive buckling with applications in the assembly of free-standing 3D mesostructures | |
JP2015199929A (ja) | 接着部材 | |
Monteiro et al. | Improving single-lap joint load bearing by bioinspired interlocking patterns on substrates | |
Landis et al. | Quantitative characterizations of a nanopatterned bonded wafer: force determination for nanoimprint lithography stamp removal | |
JP2016204658A (ja) | 接着部材 | |
US20160312072A1 (en) | Adhesive member |