JP2016204292A - Bmp7変異体とアルブミンとの融合体、及び該融合体を含む腎疾患治療剤 - Google Patents

Bmp7変異体とアルブミンとの融合体、及び該融合体を含む腎疾患治療剤 Download PDF

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Toru Maruyama
徹 丸山
博志 渡邊
Hiroshi Watanabe
博志 渡邊
翔太 戸田
Shota Toda
翔太 戸田
優樹 小田切
Masaki Odagiri
優樹 小田切
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Abstract

【課題】 本発明は新規な腎疾患治療薬を提供することを目的とする。本発明は特には、腎臓修復機能を有するが腎臓への低い集積性の問題のために連日投与が必要なBMP7を改良した新規な腎疾患治療薬を提供することを目的とする。【解決手段】 本発明により糖鎖欠損型のBMP7変異体と、ヒト血清アルブミンとの融合体からなる融合タンパク質(ここで、BMP7変異体とヒトアルブミンは直接または2〜20のアミノ酸からなるスペーサーを介して結合している)が提供される。本発明によりまた、糖鎖欠損型のBMP7変異体と、ヒト血清アルブミンと、腎標的ペプチドの融合体からなる融合タンパク質が提供される。【選択図】 図1

Description

本発明はBMP7変異体とヒト血清アルブミンとの融合体に関し、さらには、該融合体を含む腎疾患治療剤に関する。
生活習慣病の増加や高齢化社会を背景として慢性腎臓病の患者数は年々増加しており、国内で成人人口の13%、1300万人以上にも達し、また、透析患者も約30万人に達している。慢性腎臓病は、末期腎不全ならびに心血管疾患(例えば、脳卒中や冠動脈疾患)のリスクが高く、その治療法の開発が望まれている。末期腎不全になると、腎線維化が起こり、慢性腎臓病の病態の増悪に重大な影響を与えている。
しかし、慢性腎臓病の進展機序については未解明な点が多く、既存の治療方法では疾患の抑制を十分に達成できていない。例えば、現在、腎疾患に対する薬物治療としては降圧薬やステロイドなどが使用されているが、これらの腎疾患治療薬は予防的側面が強く、病態進行を改善または回復させる薬剤は未だ存在しない。
このような中、腎臓修復機能を有する機能性タンパク質に注目が集まっており、骨形成因子であるBMP7(Bone Morphogenetic Protein 7)が注目されている。BMP7は抗アポトーシス作用や抗炎症作用を示す上に、腎臓の修復に関与する間葉上皮転換誘導作用を示す。事実、腎臓病モデル動物にBMP7を連日投与することで障害を受けた腎臓が修復され腎機能が回復することが報告されている(非特許文献1)。しかしながら、BMP7は血中滞留性が低く、腎臓への集積率が投与量の0.5%以下と低いことが報告されている(非特許文献2)。そのため、連日の繰り返しの静脈内投与が必要となり、患者のQOLの低下をもたらすので、臨床応用に向けてのボトルネックになっている。また、BMP7は、骨形成を促進する因子として知られており、例えば、心血管疾患など、その副作用も懸念される。
BMPは、TGF−βスーパーファミリーに属するタンパク質であり、骨の形成、心臓、歯、目、軟骨の形成などの器官の形成において重要な役割を担っている。BMPは、TGF−βスーパーファミリーと同じく、システイン7個を含むドメインとして産生され、ジスルフィド結合を介して2量体化して活性型タンパク質となる。BMP7は、OP−1(Osteogenic Protein-1;骨誘導因子−1)とも呼ばれ、骨の成長を促すタンパク質として発見された。BMP7は、BMP7遺伝子がコードするアミノ酸431個の前駆タンパク質として合成され、ホモもしくはヘテロ2量体を形成し、糖化された後にプロテアーゼによる切断を受け、C末端139個のアミノ酸からなる2量体を形成し、活性を示す。
組み換えヒトBMP7として、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)によって生産された組み換えヒトBMP7、原核生物細胞によって産生された組み換えヒトBMP7のいずれも市販されている。
原核生物細胞によって産生する組み換えヒトBMPは、糖鎖を含まないために培養自体が容易であるとともに、増殖能に優れた原核生物細胞を製造に使用できるという利点がある。さらに、異種真核生物細胞で作られた組み換えヒトBMPの場合に見られるようなヒト型糖鎖と異なる糖鎖によるネガティブな影響を考えなくても良いという利点がある。しかしながら、原核生物細胞で産生された組み換えヒトBMPは、凝集しやすくかつ溶解性が非常に低いという欠点があり、実用化の障害になっている。また、糖鎖を含まない組み換えヒトBMPは、凝集性や溶解性の問題に加えて、貯蔵時の安定性や、生体内での骨の再生や修復という持続的機能に関して課題がある。そのため、原核生物で産生された組み換えヒトBMPを、特定の範囲濃度の塩酸溶液に溶解する工程を含む組み換えBMPを製造する方法が提案されている(特許文献1)。
BMP7の骨成長を促す作用を応用して、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)によって生産された組み換えヒトBMP7が、骨折の修復を促進する医薬品として臨床治療に用いられている。
本発明者らは、ピキア酵母発現系を用いて、ヒト血清アルブミンとチオレドキシンの融合体(HSA−Trx融合タンパク質)を作成し、シスプラチン誘導腎症マウスに対する効果を確認し、報告している(非特許文献3)。そこでは、HSA−Trx融合タンパク質は、HSAと同様の薬物動態特性を示したが、Trxの半減期の10倍の半減期を示したことを報告している。また、HSA−Trxは、他の臓器に比べ、肺及び腎臓により多く見られたことを記載している。
腎臓に対して集積性を有するペプチドとしていくつかのペプチドが報告されている。非特許文献4は、Cys-Leu-Pro-Val-Ala-Ser-Cysというアミノ酸配列を有する腎集積型ペプチドを開示している。非特許文献5は、His-Thr-Thr-His-Arg-Glu-Proというアミノ酸配列を有する腎集積型ペプチドを開示している。特許文献2は、His-Gly-Val-Gln-Ala-Arg-Leu、Arg-Ile-Gly-Gly-Met-Ser-Asn、及びVaol-Met-Ala-Thr-Gly-Gly-Valというアミノ酸配列を有する腎集積型ペプチドを開示している。
WO2010/098421号公報 特開2013−224283号公報
Zeisberg M. et al., Nat. Med. 2003, Jul:9(7): 964-8 Vukicevic S. et. al., J Clin Invest. 1998, 102: 202-214 Azusa Kodama, et al., Biochem. Biophys. Act 1840 (2014) 1152-1162 Renata. Pasquailiniら, Nature, Vol.380, 364-366, (1996) Laura Denbyら,, Human Gene Therapy. November 2004, Vol.15, No.11: 1054-1064
本発明は新規な腎疾患治療薬を提供することを目的とする。本発明は特には、腎臓修復機能を有するが腎臓への低い集積性の問題のために連日投与が必要なBMP7を改良した新規な腎疾患治療薬を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討を行った結果、血中滞留性が改善し生理活性が持続可能な、BMP7とアルブミンとの融合体の作製に成功し、本発明を完成した。本発明は以下のものを含む。
(1)配列番号1に記載のヒトBMP7の10番目のアスパラギン、29番目のアスパラギン、および80番目のアスパラギンが任意のアミノ酸に置換され、糖欠損型のBMP7であるBMP7変異体と、ヒト血清アルブミンとの融合体からなる融合タンパク質、ここで、BMP7変異体とヒトアルブミンは直接または2〜20(好ましくは2〜10)のアミノ酸からなるスペーサーを介して結合している。
(2)前記BMP7変異体が、配列番号2で示されるアミノ酸配列であるBMP7変異体である上記(1)に記載の融合タンパク質。
(3)前記融合タンパク質が、配列番号3に示される、BMP7変異体とヒト血清アルブミンとの融合体からなる融合タンパク質である上記(2)に記載の融合タンパク質。
(4)さらに、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるペプチドを、前記融合体のN末端側またはC末端側に含む、上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の融合タンパク質、ここで前記ペプチドは融合タンパク質中にいずれの向きで含まれていてもよい。
(5)前記融合タンパク質が、配列番号5に示される、BMP7変異体と、ヒト血清アルブミンと、配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるペプチド、との融合体からなる融合タンパク質である、上記(4)に記載の融合タンパク質。
(6)前記(1)から(5)のいずれかひとつに記載の融合タンパク質を含む腎疾患治療剤。
(7)週1回投与されることを特徴とする前記(6)に記載の腎疾患治療剤。
本発明により、血中滞留性が改善し生理活性が持続可能なBMP7を含む融合タンパク質が提供される。本発明によりまた、腎臓細胞を標的とした、血中滞留性が改善し生理活性が持続可能なBMP7を含む融合タンパク質が提供される。これらの融合タンパク質は、低い骨形成活性しか持たないので、副作用の懸念が少ない。
図1は、実施例3において、本発明のBMP7変異体とヒト血清アルブミンとの融合タンパク質(HSA−BMP7)の一側尿管結紮(UUO)マウスにおける腎保護効果を、組織形態学的観察(マッソントリクローム染色)により確認した結果である。 図2は、実施例3において、HSA−BMP7のUUOマウスにおける腎保護効果を、ヒドロキシプロリン量の測定により確認した結果である。 図3は、実施例4において、HSA−BMP7のシスプラチン腎症マウスにおける腎保護効果を、血清クレアチニンと血中尿素窒素含量により確認した結果である。 図4は、実施例4において、HSA−BMP7のシスプラチン腎症マウスにおける腎保護効果を、腎組織の形態学的観察(PAS染色)により確認した結果である。 図5は、実施例4において、HSA−BMP7のシスプラチン腎症マウスにおける腎保護効果を、腎組織の形態学的観察(TUNEL染色)により確認した結果である。 図6は、実施例5において、HSA−BMP7の骨形成活性を、マウス筋芽細胞(C2C12)を用いた骨芽細胞への分化誘導モデルにてアルカリフォスファターゼ(ALP)活性を指標として確認した結果である。 図7は、実施例6において、HSA−BMP7によるBMP7シグナル伝達を、ウェスタンブロットを用いて、Smad1/5/8のリン酸化により確認した結果である。 図8は、実施例7において、本発明の腎標的ペプチド−HSA−BMP7の融合タンパク質のUUOマウスにおける腎保護効果を、ヒドロキシプロリン量の測定により確認した結果である。 図9は、実施例7において、本発明の腎標的ペプチド−HSA−BMP7の融合タンパク質のUUOマウスにおける腎保護効果を、腎組織の形態学的観察(筋繊維芽細胞マーカーであるα−SMAの免疫染色)により確認した結果である。
以下、本発明を、例示的な実施態様を例として、本発明の実施において使用することができる好ましい方法および材料とともに説明する。
なお、文中で特に断らない限り、本明細書で用いるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味をもつ。また、本明細書に記載されたものと同等または同様の任意の材料および方法は、本発明の実施において同様に使用することができる。
また、本明細書に記載された発明に関連して本明細書中で引用されるすべての刊行物および特許は、例えば、本発明で使用できる方法や材料その他を示すものとして、本明細書の一部を構成するものである。
本発明の一つの態様は、配列番号1に記載のヒトBMP7の10番目のアスパラギン、29番目のアスパラギン、および80番目のアスパラギンが任意のアミノ酸に置換され、糖欠損型のBMP7であるBMP7変異体(以下、単に「BMP7」という場合がある)と、ヒト血清アルブミン(以下、「HSA」という場合がある)との融合体からなる融合タンパク質(以下、「HSA−BMP7」という場合がある)である
本発明の他の一つの態様は、配列番号2に示されるBMP7変異体、ヒト血清アルブミンとの融合体からなる融合タンパク質である。
配列番号2に示されるBMP7変異体は、139アミノ酸からなるヒトBMP7の配列において、糖鎖の結合部位である10番目のアスパラギン、29番目のアスパラギン、および80番目のアスパラギンをグルタミンに変更した配列である。これにより、BMP7変異体は糖鎖欠損型となる。
BMP7変異体とヒト血清アルブミンとの結合は、直接結合しても、両者の間にペプチドのスペーサーを介して結合してもよいが、スペーサーを介して結合するのが好ましい。スペーサーとしては、アミノ酸数、2〜20,好ましくは2〜10の長さのペプチドが用いられ、アミノ酸としては主としてグリシンから構成されるのが好ましい。具体的には、−(Gly)n−Ser−(Gly)n−で表されるペプチドが好ましく用いられ、nは、それぞれ独立に、1〜10、好ましくは2〜5、特に好ましくは4である。
BMP7変異体とヒト血清アルブミンとの融合タンパク質は、例えば、配列番号3に示される配列のように、ヒト血清アルブミンの配列−スペーサー配列−BMP7変異体配列のアミノ酸配列をコードする遺伝子をもつベクターを作製し、それを例えば酵母に形質転換して、酵母に発現させ、次いでそれを精製することにより得ることができる。
融合タンパク質の発現系としては、原核生物細胞または真核生物細胞を用いた公知の発現系を適宜用いることができるが、好ましくは、ピキア酵母発現系である。ピキア酵母発現系での融合タンパク質の作製は、公知の方法、例えば、生田らの報告(S. Ikuta et al., J. Control. Release 147 (2010) 189-195)や本発明者らによる報告(非特許文献3)に基づいて行うことができる。
なお、融合タンパク質におけるBMP7とHSAの配置は、N末端−HSA−BMP7−C末端であっても、N末端−BMP7−HSA−C末端であっても良いが好ましくは、N末端−HSA−BMP7−C末端である。
本発明の別の態様は、配列番号1に記載のヒトBMP7の10番目のアスパラギン、29番目のアスパラギン、および80番目のアスパラギンが任意のアミノ酸に置換され、糖欠損型のBMP7であるBMP7変異体と、ヒト血清アルブミンと、配列番号4に示されるアミノ酸配列のペプチドが融合した融合タンパク質である(以下「ペプチド−HSA−BMP7」という場合がある)。
本発明のもう一つの別の態様は、配列番号2に示されるBMP7変異体と、ヒト血清アルブミンと、配列番号4に示されるアミノ酸配列のペプチドが融合した融合タンパク質である。
配列番号2に示されるBMP7変異体、及びBMP7とHSAを融合するためのペプチドのスペーサーについては、前記の通りである。
配列番号4に示されるアミノ酸配列のペプチドは、腎標的ペプチドとして本発明者らにより発見されたペプチド(以下、腎標的ペプチドという場合がある)である。配列番号4のペプチドは、いずれの向きで融合タンパク質中に配置されてもよい。例えば、ペプチド(His-Gly-Val-Gln-Ala-Arg-Leu)−HSA−BMP7であっても、ペプチド(Leu-Arg-Ala-Gln-Val-Gly-His)−HSA−BMP7であってもよい。また、融合タンパク質中の、ペプチド、HSA,BMP7の配列順は、ペプチドがN末端側またはC末端側に配置されていれば、それ以外はいずれの配置でもよい。
ペプチド−HSA−BMP7からなる融合タンパク質は、上記と同様にして、例えば、配列番号5に示される融合タンパク質のアミノ酸配列をコードする遺伝子をもつベクターを作製し、それを酵母に形質転換して、酵母に発現させ、次いでそれを精製することにより得ることができる。
本発明の融合タンパク質であるHSA−BMP7またはペプチド−HSA−BMP7の投与量は、疾患の程度、症状などにより異なり、疾患の程度、症状、患者の状態、投与方法により適宜選択される。例えば、これに限定されないが、全身投与では、1日あたり体重1kgあたり0.01mg〜mg/患者、好ましくは0.1mg〜60mg/患者の範囲である。投与方法は、限定されないが、好ましくは間歇投与であり、特には1回/数日〜2週が好ましく、さらには1回/週が好ましい。なお、投与方法及び投与量は、患者の性別、年齢、体重、ならびに症状や状態により適宜選択される。
本発明の融合タンパク質は、良好な血中滞留性と生理活性の持続性を有するので、週1回程度の投与でも十分な効果が発揮できる。また、BMP7に由来する骨形成活性がBMP7に比べて低いので、副作用の懸念が少なく、BMP7に比べて高用量および/または長期の投与が可能である。
以下、実施例を例に本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(材料および方法)
全ての動物事件は、熊本大学の実験動物指針に従って行った。
Pichia pastoris発現キットは、Invitrogen(USA)から購入した。
シスプラチンは、日本化薬から購入した。
(実施例1)HSA−BMP7融合タンパク質の作製
HSA−BMP7融合タンパク質の作製は、生田らの方法に従って行った。具体的には、配列番号3に記載のアミノ酸配列をコードする遺伝子を組み込んだpPIC9ベクターにより形質転換したPichia pastorisをBMGY培地で培養した後、BMMY培地に交換後、タンパク質発現誘導因子、炭素源およびメタノールを添加してさらに培養を続けた。メタノールは毎日添加してタンパク質発現誘導効果を維持した。融合タンパク質の精製は、アフィニティカラムを用い、次いで、疎水性カラムを用いたクロマトグラフィーにより行った。精製した融合タンパク質は、SDS−PAGEを行い分子量により確認した。
(実施例2)ペプチド−HSA−BMP7融合タンパク質の作製
実施例1と同様にして行った。但し、配列番号5に記載のアミノ酸配列をコードする遺伝子を組み込んだpPIC9ベクターにより形質転換したPichia pastorisを用いた。
(実施例3)一側尿管結紮(UUO)マウスによる腎保護効果の確認
4週齢のICR雄マウスを用い、尿管(左腎側)を2箇所結束して(一側尿管結紮(UUO)により)マウス腎間質線維化モデルを作製した。線維化の程度は、UUO処置7日後と14日後の組織形態学的観察(マッソントリクローム染色)と14日後のヒドロキシプロリン量の測定により評価した。
結束時点(0日目)および7日目に、実施例1で調製したHSA−BMP7、HSAまたはBMP7のそれぞれをマウスに、100 nmol/kgにて静脈内投与した。対照として、生理食塩水のみを投与した。また、尿管結束をしていないマウスをcontrolとした。
UUO処置14日後のマッソントリクローム染色の結果を図1に示す。生理食塩水投与群で観察された膠原繊維(青く染まる)は、HSA−BMP7投与群では顕著に抑制された。一方、HSAまたはBMP7投与群では膠原繊維の抑制効果は観察されなかった。
ヒドロキシプロリン量の測定結果を図2に示す。HSA−BMP7により、有意に低下しているのが判る。
これらの結果より、1週間に1回の投与でも、HSA−BMP7により腎繊維化が抑制できることが判った。
(実施例4)シスプラチン腎症マウスによる腎保護効果の確認
4週齢のICR雄マウスを用い、シスプラチンを投与する30分前に、実施例1で調製したHSA−BMP7を100 nmol/kgにて静脈内投与した。対照として、生理食塩水のみを投与した。また、シスプラチンを投与していないマウスをcontrolとした。シスプラチンは、15mg/kgにて腹腔内投与した。シスプラチン投与96時間後に、腎機能および腎組織学的評価を行った。具体的には、血清クレアチニンと血中尿素窒素含量を測定するとともに、腎組織の形態学的観察をPAS染色およびTUNEL染色により行った。
結果を図3〜図5に示す。HSA−BMP7投与により、血清クレアチニンおよび血中尿素窒素含量の有意な抑制並びにクレアチニンクリアランスの上昇が観察された。また、組織形態学的観察(PAS/TUNEL染色)からも顕著な腎保護効果が観察された。
(実施例5)骨形成活性の測定
融合タンパク質であるHSA−BMP7の骨形成活性を確認した。
骨形成活性は、常法に従い、マウス筋芽細胞(C2C12)を用いてBMP7による骨芽細胞への分化誘導モデルにて骨芽細胞への分化の指標であるアルカリフォスファターゼ(ALP)活性を測定した。結果を図6に示す。HSA−BMP7は、BMP7に比べてALP活性を示さないこと、すなわち骨形成活性が低下していることが示された。
(実施例6)BMP7シグナル伝達の確認
ヒト尿細管上皮細胞(HK−2)を用いて、BMPシグナル伝達に関わるSmad1/5/8のリン酸化をウェスタンブロットにより確認した。
BMP7(Prospec社 CYT−276:CHO細胞由来糖鎖あり)は10nMの濃度にて、HSA−BMP7は100nMの濃度にて培地中に添加した。結果を図7に示す。糖鎖のない本発明の融合タンパク質HSA−BMP7は、BMPシグナル伝達に関わるSmad1/5/8のリン酸化活性がBMP7(糖鎖あり)に比べて低いものの、Smad1/5/8をリン酸化することが確認できた。このことは、BMP7活性がHSAと融合化しても保持されていることを示している。
(実施例7)UUOマウスによる腎保護効果の確認(ペプチド−HSA−BMP7)
実施例3と同様にして、実施例2で作製したペプチド−HSA−BMP7の腎繊維化の抑制効果を確認した。
結束時点(0日目)および7日目に、ペプチド−HSA−BMP7、HSA−BMP7のそれぞれを100 nmol/kgにて静脈内投与した。対照として、生理食塩水のみを投与した。また、尿管結束をしていないマウスとcontrol(Normal)とした。14日目のヒドロキシプロリン量の測定結果を図8に示す。腎繊維化抑制効果の組織形態学的観察は、筋繊維芽細胞マーカーであるα−SMAの免疫染色により確認した。その結果を図9に示す。
これらの結果より、ペプチド−HSA−BMP7は、HSA−BMP7に比べて高い腎繊維化抑制効果を示した。
以上の知見より、本発明のBMP7変異体とヒト血清アルブミンとの融合体からなる融合タンパク質は、腎間質線維化の抑制効果とともに腎保護効果を示すことが判った。このような腎疾患治療剤は報告がなく、新しいものであり、新規腎疾患治療剤としての開発が期待され得る。
上記の詳細な記載は、本発明の目的及び対象を単に説明するものであり、添付の特許請求の範囲を限定するものではない。添付の特許請求の範囲から離れることなしに、記載された実施態様に対しての、種々の変更及び置換は、本明細書に記載された教示より当業者にとって明らかである。
本発明により提供される融合タンパク質は、腎疾患治療剤として有用である。

Claims (7)

  1. 配列番号1に記載のヒトBMP7の10番目のアスパラギン、29番目のアスパラギン、および80番目のアスパラギンが任意のアミノ酸に置換されて糖欠損型のBMP7であるBMP7変異体と、ヒト血清アルブミンとの融合体からなる融合タンパク質、ここで、BMP7変異体とヒトアルブミンは直接または2〜20のアミノ酸からなるスペーサーを介して結合している。
  2. 前記BMP7変異体が、配列番号2で示されるアミノ酸配列であるBMP7変異体である請求項1に記載の融合タンパク質。
  3. 前記融合タンパク質が、配列番号3に示される、BMP7変異体とヒト血清アルブミンとの融合体からなる融合タンパク質である請求項2に記載の融合タンパク質。
  4. さらに、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるペプチドを、前記融合体のN末端側またはC末端側に含む、請求項1〜3のいずれか一つに記載の融合タンパク質、ここで前記ペプチドは融合タンパク質中にいずれの向きで含まれていてもよい。
  5. 前記融合タンパク質が、配列番号5に示される、BMP7変異体と、ヒト血清アルブミンと、配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるペプチド、との融合体からなる融合タンパク質である、請求項4に記載の融合タンパク質。
  6. 請求項1〜5のいずれかひとつに記載の融合タンパク質を含む腎疾患治療剤。
  7. 週1回投与されることを特徴とする請求項6に記載の腎疾患治療剤。
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