JP2016203877A - 潜水機 - Google Patents

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Abstract

【課題】 突出部を有する機器を搭載する機体の推進性能の向上化を図る。【解決手段】 潜水機は、機体1の下面側に凹部として備えた機器設置領域6に、機体表面から突出する突出部pを有する音響通信機5aと音響測位装置5bが設けられる。機体1における機器設置領域6の前側には、剥離流形成部7が設けられて、剥離流形成部7の後縁と機器設置領域6の前縁が繋がる境界部分に、屈曲部が形成されている。機体1の前方からの水の流れの中で、剥離流形成部7の表面に沿って流れる水の流れの主流fは、屈曲部で機体表面から剥離させて、機器設置領域6に設けた突出部pの外側を通過させる。これにより、突出部pに作用する流体抵抗を、これらの突出部pに水の流れの主流fが当たるときの流体抵抗に比して大幅に低減させる。【選択図】図1

Description

本発明は、水面下を航走可能な潜水機に関するものである。
水面下(水中)にて広範囲の探査や大深度の探査を行う場合の手法の一つとしては、自律航走式の潜水機である水中航走体(AUV(Autonomous Underwater Vehicle)、UUV(Unmanned Underwater Vehicle)とも称される)を用いる探査手法が開発されてきている。
この種の水中航走体には、母船等の別の機器との間で音波(超音波を含む)を用いて通信を行う音響通信機や、音波(超音波を含む)を用いて自機と別の機器との相対位置を測位する音響測位装置が搭載されることが多い。また、水中情報を収集する装置が搭載されることもある(たとえば、特許文献1参照)。
音響通信機や音響測位装置等の音波の送受波を行う装置は、送受波する音波の伝搬経路上に物体があると、音波の伝搬が乱れて音響通信や音響測位の性能や精度の低下につながることがある。そのために、この種の音波の送受波を行う装置を水中航走体に搭載する場合は、音波の送受波部が水中航走体の本体の表面から外部に突出する状態で設けられることが多い。
特開2009−227086号公報
ところが、水中を航走(移動)しながら周囲の状況を調査する巡航型(クルージング型)の潜水機(水中航走体)は、通常、略円柱形状の機体を備えて、航走時の流体抵抗を低減させることが望まれる。
そのため、音波の送受波部やその他の機器が潜水機の機体表面よりも外方に突出して設けられていると、機器等が潜水機の機体表面よりも突出している部分の突出部には、潜水機の水中航走時に機体の表面に沿って流れる水の流れの主流が直接当たる。そのため、突出部が水流から受ける流体抵抗が大となり、潜水機の推進性能の低下につながることがある。
そこで、本発明は、機器を機体に搭載して機体表面から突出させても、推進性能の低下を抑えることができる潜水機を提供しようとするものである。
本発明は、前記課題を解決するために、水中を航走する潜水機であって、機体と、前記機体に設けられた機器設置領域と、前記機器設置領域に突出して設けられた機器と、前記機器設置領域に対し航走方向の前側に設けられた剥離流形成部とを備え、前記剥離流形成部は、前記機体の前方からの水の流れの中で境界層剥離を生じさせる構成を有する潜水機とする。
前記機器設置領域は、前記剥離流形成部に対し凹部として設けられた構成としてある。
前記機器設置領域は、前記機体の外形よりも窪む凹部となる構成としてある。
前記機体には、機体中心軸を中心として前記剥離流形成部に対し反対側となる個所に、前記剥離流形成部により前記機体に作用するモーメントを抑制する手段が備えられる構成としてある。
前記モーメントを抑制する手段は、膨出部とされた構成としてある。
前記モーメントを抑制する手段は、機体表面より突出する突出部とされた構成としてある。
前記モーメントを抑制する手段は、前記剥離流形成部及び機器設置領域とは別の剥離流形成部及び機器設置領域とされた構成としてある。
本発明の潜水機によれば、機器を機体に搭載して機体表面から突出させても、推進性能の低下を抑えることができる。
潜水機の第1実施形態を示すもので、(a)は概略側面図、(b)は潜水機の流体抵抗が低減される基本的な機体形状を例示する概略側面図である。 第1実施形態の潜水機における機体の機首寄りの部分を拡大して示すもので、(a)は切断側面図、(b)は(a)のA−A方向矢視図である。 第1実施形態の比較例を示す概要図である。 第1実施形態の応用例を示すもので、(a)(b)(c)はそれぞれ機体中心軸を中心として剥離流形成部と反対側にそれぞれ異なるモーメント抑制部材を備えた構成を示す概略側面図である。 潜水機の第2実施形態を示す概略側面図である。 潜水機の第3実施形態を示す概略側面図である。
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
図1は、潜水機の第1実施形態を示すもので、図1(a)は概略側面図、図1(b)は潜水機の流体抵抗が低減される基本的な機体形状を例示する概略側面図である。図2は、本実施形態における機体の機首寄りの部分を拡大して示すもので、図2(a)は切断側面図、図2(b)は図2(a)のA−A方向矢視図である。図3は比較例として、図1(b)の基本機体形状の機体の表面よりも外方に機器の突出部がある場合に、機体の前方からの水の流れの中で生じる抵抗を説明するための概要図である。
本実施形態の潜水機は、図1(a)に示すように、円筒状の胴体2と、胴体2の前側の機首3と、胴体2の後側の尾部4とからなる機体1を備えている。以下、胴体2に対し機首3が存在する側(図1(a)では左側)を前といい、胴体2に対し尾部4が存在する側(図1(a)では右側)を後という。
機体1には、機体表面から、たとえば音響通信機5aや音響測位装置5bが突出して設けられていて、これらの機体表面から突出する部分により突出部pが構成されている。
更に、機体1には、たとえば機首3側の表面に機器設置領域6が備えられていて、この機器設置領域6に音響通信機5aと音響測位装置5bの突出部pが設置されている。機体1における機器設置領域6の機首3側は、機体1の前方からの水の相対的な流れ(以下、単に水の流れという)の中で境界層剥離を発生させる剥離流形成部7とされている。突出部pは、剥離流形成部7で剥離される水の流れの主流fの内側に位置するように配置されている。
ここで、図1(b)を用いて、巡航型の潜水機に一般的に採用される流体抵抗を低減させるための基本的な機体形状について概説する。以下、この図1(b)に示す機体1xの形状を、基本機体形状(流線形モデル)Xという。
潜水機が水中を航走する際に生じる流体抵抗を低減するという観点から考えると、潜水機の基本的な機体1xの形状は、円筒状の胴体2xの前側に、先細り形状の機首3xを備え、胴体2xの後ろ側には、緩やかな傾斜で次第に細くなる尾部4xを備えることが好ましい。更に、機首3xの先細り形状は、たとえば、機体中心軸Oに沿う平面内での機首3xの表面に対する接線が、胴体2x側から機首3xの前端側へ行くにしたがって、機体中心軸Oに対する傾きが次第に大となるようにすることが好ましい。これにより、図1(b)に示した機体1xの形状は、機体1xの前方からの水の流れの中で、機体1xの表面に沿って形成される境界層は剥離せず、よって、渦や乱流が生じないか、又は、渦や乱流の発生が抑制される形状、いわゆる流線形状となる。
図1(a)に示す本実施形態の潜水機は、たとえば、水面Wから数メートルの設定された深度に潜水した状態で水中を航走(巡航)して、より深い深度の水中を航走する水中航走体AUVと、母船又は陸上拠点に備えた司令手段Sとの通信を中継する移動式中継機Vに適用した例を示している。
このような移動式中継機Vは、より深い深度で運用される水中航走体AUVを音響通信機5aによる通信、及び、音響測位装置5bによる測位の対象としている。そのため、音響通信機5aと音響測位装置5bが配置された機器設置領域6は、機体1の下面側に備えられている。又、移動式中継機Vの航走時に音響通信機5aと音響測位装置5bの突出部pによる造波抵抗をできるだけ回避するという観点からも、機器設置領域6は、機体1の下面側に設けられていることが好ましい。更に、図1(a)では、機器設置領域6は、機体1の機首3から胴体2にかかる位置に設けられている。なお、図1(a)における一点鎖線は、図1(b)の基本機体形状Xを示している。
機器設置領域6は、図1(a)に示すように、剥離流形成部7の後縁の表面よりも機体中心軸O側へ窪んだ凹部として設けられている。更に、本実施形態では、機器設置領域6は、機体1の胴体2部分の外形となる円筒形状から機体中心軸O側に窪む凹部として設けられている。これにより、剥離流形成部7で剥離される水の流れの主流fが胴体2の表面からあまり離れていなくても、その内側に突出部pを配置できるようにしてある。
更に、音響測位装置5bの突出部pの機体表面からの突出量が、音響通信機5aの突出部pの機体表面からの突出量に比して大となっているため、機器設置領域6は、音響測位装置5bの設置個所を頂点とした円錐形状の凹部として設けられている。なお、音響通信機5a及び音響測位装置5bは、通常、音波の送受波が有効な領域(範囲)の頂角がそれぞれ決まっている。そのため、機器設置領域6の円錐形状の凹部の頂角は、音響通信機5a及び音響測位装置5bの音波の送受波が有効な領域の頂角よりも大きな角度に設定されている。これにより、音響通信機5a及び音響測位装置5bが機器設置領域6の凹部の内側に配置されていても、音響通信機5a及び音響測位装置5bによる音波の送受波に機体1が干渉する虞は防止される。
剥離流形成部7は、図1にドットのハッチングを付して示すように、機器設置領域6の前側で、機体1の下面側を、一点鎖線で示す基本機体形状Xよりも下方に突出するように膨らませて設けられている。この剥離流形成部7の後縁と機器設置領域6の前縁が繋がる境界部分に、屈曲部が形成されている。この屈曲部の曲率及び屈曲角度は、移動式中継機Vを設定された運用速度の範囲内で航走させるときに生じる機体1の前方からの水の流れの中で、屈曲部に剥離流が形成されて境界層剥離が生じる曲率及び屈曲角度に設定されている。
剥離流形成部7は、図2(a)(b)に示すように、機首3及び胴体2の表面に対して滑らかに繋がれていて、機器設置領域6側を除く方向については、機体1の表面に沿う水の流れを乱さない形状とされている。
更に、剥離流形成部7の後部側は、図2(a)に矢印dで示す後縁に向かう角度(向き)が、機器設置領域6で機体表面から突出しているすべての突出部pよりも外向きとなる角度に形成されている。
これにより、移動式中継機Vを、設定された運用速度で水中航走させると、図1(a)、図2(a)に示すように、機体1の前方からの水の流れの中で剥離流形成部7の後側で境界層剥離が生じて、水の流れの主流fが機体表面から剥離する。この剥離した水の流れの主流fは、機器設置領域6に設けられた突出部pよりも外側を通過する。
ここで、図3に比較例を示すように、図1(b)の基本機体形状Xを有する機体1xに、音響通信機5aと音響測位装置5bの突出部pが機体表面から外方に突出するように設けられている場合は、機体1xの前方からの水の流れの中で、主流fが突出部pに直接当たる。
このため、図3の比較例では、突出部pの後方に、水の流れの主流fの流速に応じた大きさ(範囲)で渦(カルマン渦)が生じることになり、突出部pに生じる流体抵抗は非常に大きくなる。
これに対し、本実施形態では、前述したように剥離流形成部7の後側で水の流れの主流fが剥離するため、主流fよりも内側となる機器設置領域6では、流れが乱流となって流速が低下する。よって、機器設置領域6に設けられた突出部pに生じる流体抵抗は、図3に示す比較例のように主流fが突出部pに直接当たる場合に比して大幅に低減される。
なお、本実施形態では、剥離流形成部7を備えることに伴い、機体1の下部側の前面投影面積が基本機体形状Xに比して増加している。このため、機体1の下部側の流体抵抗は、基本機体形状Xに比して増加している。更に、剥離流形成部7の後側で境界層剥離が生じると機器設置領域6に圧力低下が生じるため、水の流れの中で剥離流形成部7の前面側に作用する圧力と、機器設置領域6の低下した圧力との圧力差によって、機体1には圧力抵抗(粘性圧力抵抗)が生じるようになる。
この流体抵抗と圧力抵抗は、機体中心軸Oよりも下側に作用するため、移動式中継機Vを航走させている状態では、機体1に対し、機首3側を機体中心軸Oよりも下方に向ける方向に回転させるモーメントが発生する。
この点に鑑みて、本実施形態の移動式中継機Vは、機体1における機体中心軸Oを中心として剥離流形成部7に対して反対側となる個所、すなわち、機体1の上部側に、剥離流形成部7の存在に起因して生じる前記のモーメントを抑制するモーメント抑制手段12を備えている。
モーメント抑制手段12は、たとえば、図1(a)、図2(a)(b)に示すように、機体1の上部における機首3から胴体2にかけての部分を、基本機体形状Xよりも上方に膨出させた膨出部13を備えた構成としてある。この構成によれば、膨出部13によって機体1の上部側の前面投影面積が、図2(b)に一点鎖線で示す基本機体形状Xに比して大きくなるため、機体1の上部側の流体抵抗が増加する。この機体1の上部側の流体抵抗により、機体1には、機首3側を機体中心軸Oよりも上方に向ける方向に回転させるモーメントが発生する。
したがって、この膨出部13の存在に起因して生じる機体1を上方に向ける方向のモーメントが、剥離流形成部7の存在に起因して生じる機体1を下方に向ける方向のモーメントと釣り合うようにすれば、機体1に作用するモーメントは解消される。
又、この膨出部13の存在に起因して生じる機体1を上方に向ける方向のモーメントが、剥離流形成部7の存在に起因して生じる機体1を下方に向ける方向のモーメントよりも小さいとしても、機体1を下方に向ける方向のモーメントは抑制することができる。この場合に残る機体1を下方に向ける方向のモーメントは、後述する横舵(エレベータ)15を制御して当て舵を行うこと等で打ち消すようにすればよい。
更に、膨出部13を設けた構成は、機器設置領域6を凹部として設けたことによる機体1の基本機体形状Xに対する内容積の減少分を、膨出部13の内容積を付加することによって補うことが可能になる。したがって、この膨出部13を備えた構成は、機体1に音響通信機5aと音響測位装置5bやその他の内部機器を搭載するための空間の確保に有利なものとすることができる。
本実施形態では、前述した剥離流形成部7の存在に起因する圧力抵抗と、剥離流形成部7及び膨出部13による前面投影面積の増加に伴う流体抵抗が、基本機体形状Xに比して増加している。
しかし、これらの抵抗の増加量は、剥離流形成部7と機器設置領域6、及び、膨出部13の形状やサイズを数値解析(数値シミュレーション)を用いて適宜設定することにより、前述したように突出部pに水の流れの主流fが直接当たらなくなることで図3の比較例に比して低減される流体抵抗の低減量よりも小さくすることができる。
よって、本実施形態による移動式中継機Vは、設定された運用速度で航走するときに作用する総抵抗の低減化を図ることができて、機体1に搭載した音響通信機5aと音響測位装置5bに機体表面から突出する突出部pがあるとしても、推進性能の低下を抑えることができる。
なお、機体1の前方からの水の流れが機器設置領域6に側方から回り込んで流入することを抑えるためには、機器設置領域6の両側部の前側でも境界層剥離が生じるようにすることが好ましい。
又、機器設置領域6の後部側は、胴体2の円筒形状に対して滑らかに連続することが好ましい。これは、機器設置領域6から機体1の後方側へ水が流れるときに、急激な圧力変化が生じないようにして、機器設置領域6よりも後側で境界層剥離や抵抗が生じることを防止するためである。
移動式中継機Vは、前述したように、水中航走体AUVと司令手段Sとの通信を中継するものである。そのため、図1(a)に示すように、胴体2の上側には、上下方向に延びる中空構造のストラット8の下端側が取り付けられている。ストラット8の上下方向寸法は、移動式中継機Vを所定の設定深度に潜水させるときに、ストラット8の上端が水面W付近に配置されるように設定されている。なお、後述する信号ケーブル9が水中で生じる抵抗を抑えるという観点から考えると、ストラット8の上端側が水面Wよりも上方へ突出して配置されるようにすることがより好ましい。この場合であっても、水面Wに生じる波浪等の影響によってストラット8が上端まで水没した配置となるとしても何ら問題はない。
ストラット8は、波浪の影響を受け難くするために、水線面積をできるだけ小さくすることが好ましい。又、移動式中継機Vの航走時にストラット8に生じる抵抗の低減化を図るためには、長手方向に垂直な断面が、涙滴形や翼形等の流線形状とされていることが好ましい。
ストラット8の内側には、基端側が機体1に接続された信号ケーブル9が挿通して配置されている。信号ケーブル9の先端側は、ストラット8の上端より外部に引きだされると共に、フロート11に取り付けられた無線通信用のアンテナ10に接続されている。
ストラット8への信号ケーブル9の挿通個所のうち、たとえば、ストラット8の上端側では、信号ケーブル9との隙間が水密にシールされている。これにより、ストラット8全体が水没したとしても、ストラット8の内部を通して機体1側へ浸水することはない。
移動式中継機Vは、機体1を所定の設定深度に潜水させた状態で、信号ケーブル9の先端側に接続されたフロート11付きのアンテナ10を水面Wに配置することができる。更に、水面Wに波浪が生じていて、機体1と水面Wとの距離が変化しても、ストラット8より外部に引き出してある信号ケーブル9の可動範囲内であれば、フロート11の浮力によってアンテナ10を常に水面Wに浮上させた状態に配置することができる。このため、移動式中継機Vは、水面Wから数メートルの設定された深度に潜水させて運用するときに、司令手段Sと直接的な無線通信、又は、図示しない衛星等を中継した無線通信によって、常に相互通信を行うことが可能である。
したがって、移動式中継機Vは、無線通信による司令手段Sと相互通信を確保した状態で、所定の設定深度に潜水させて運用することができる。よって、移動式中継機Vは、船のように風の影響を受けて動揺することはなく、又、水面Wの波浪の影響を受けて姿勢が乱される虞が低減されるため、水中航走体AUVを対象とする音響測位と音響通信を、常時安定して行うことが可能になる。
移動式中継機Vは、図1(a)に示すように、機体1における胴体2の後半部分から尾部4にかけての形状は、図1(b)に示した基本機体形状Xと同様とされている。
尾部4の後端側には、縦舵(ラダー)14と横舵(エレベータ)15と図示しないスラスタ(メインスラスタ)が設けられている。更に、図示しないが、移動式中継機Vは、スラスタと各舵14,15を制御する制御装置を備えている。これにより、移動式中継機Vは、水中航走体AUVの航走に追従して、水中航走体AUVの上方に位置するように航走可能となっている。したがって、移動式中継機Vは、音響通信機5a及び音響測位装置5bの音波の送受波が有効な領域に水中航走体AUVが常に配置されるように、水中航走体AUVに対する移動式中継機V自身の相対位置を調整することができる。
このように、本実施形態の移動式中継機Vによれば、機体1を所定の設定深度に潜水させた状態で航走させることができる。その際、突出部pが機体表面から突出していても、突出部pに機体1前方からの水の流れの主流fが当たることを防止して、突出部pが生じる流体抵抗の大幅な低減化を図ることができる。そのため、剥離流形成部7と機器設置領域6、及び、膨出部13の存在により抵抗が生じるとしても、移動式中継機V全体では、航走時の抵抗の低減化を図ることができる。このため、移動式中継機Vは、音響通信機5aや音響測位装置5bを機体1に搭載してそれらの突出部pが機体表面から突出していても、推進性能の低下を抑えることができる。
[第1実施形態の応用例]
図4は、第1実施形態の応用例を示すもので、(a)(b)(c)はそれぞれ異なるモーメント抑制手段を備えた構成を示す概略側面図である。
なお、図4(a)(b)(c)において、第1実施形態に示したものと同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
第1実施形態では、モーメント抑制手段12を膨出部13とした構成を示したが、剥離流形成部7の存在に起因して生じる機体1を下方に向ける方向のモーメントを抑制することができれば、モーメント抑制手段12は、図4(a)(b)(c)に示すような構成としてもよい。
図4(a)に示すモーメント抑制手段12は、機体1の上部側の表面に凹凸部16を設けた構成としてある。このモーメント抑制手段12によれば、機体1の前方からの水の流れの中で、機体1の上部側の凹凸部16により流体抵抗が増加する。よって、この機体1の上部側の流体抵抗により、機体1には、機首3側を機体中心軸Oよりも上方に向ける方向に回転させるモーメントが発生するため、剥離流形成部7の存在に起因して生じる機体1を下方に向ける方向のモーメントを抑制することができる。この凹凸部16の凹凸の好ましい大きさや、機体1に凹凸部16を設ける好ましい範囲は、数値解析によって求めるようにすればよい。
又、図4(b)に示すように、移動式中継機Vに、機体表面から突出する突出部pを有する別の機器17を機体1の上部側に設ける必要がある場合は、この突出部pを有する別の機器17を、モーメント抑制手段12として、機体1の上部側に突出部pを突出させた状態で設ける構成としてもよい。
この構成によれば、機体1の上部側に設けられた別の機器17の突出部pが、機体1の前方からの水の流れの中で流体抵抗を生じるようになるため、この機体1の上部側の流体抵抗により、機体1には、機首3側を機体中心軸Oよりも上方に向ける方向に回転させるモーメントが発生する。よって、この構成によっても、剥離流形成部7の存在に起因して生じる機体1を下方に向ける方向のモーメントを抑制することができる。
更に、図4(b)に示した構成では、機体1の前方からの水の流れの中で別の機器17の突出部pで生じる流体抵抗が過大(過剰)となる場合は、図4(c)に示すように、機体1の上部側に設けるモーメント抑制手段12を、第1実施形態における剥離流形成部7及び機器設置領域6と同様の剥離流形成部7a及び機器設置領域6aとしてもよい。この場合は、機器設置領域6aに、突出部pを有する別の機器17を設ける構成とすればよい。
図4(c)の構成によれば、機体1の前方からの水の流れの中で、機体1の上部側に設けられた剥離流形成部7aの後側で境界層剥離が生じ、機器設置領域6aに圧力低下が生じるため、機体1の上部側に圧力抵抗が生じるようになる。
したがって、この機体1の上部側の剥離流形成部7aの存在に起因して生じる機体1を上方に向ける方向のモーメントが、機体1の下部側の剥離流形成部7の存在に起因して生じる機体1を下方に向ける方向のモーメントと釣り合うため、機体1には、上下方向のモーメントが生じることはない。
[第2実施形態]
図5は潜水機の第2実施形態を示す概略側面図である。
なお、図5において、第1実施形態に示したものと同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態は、図1(a)、図2(a)(b)に示したと同様の移動式中継機Vにおいて、モーメント抑制手段12を備えない構成としたものである。
したがって、機体1は、機首3の上部側が、図1(b)に示した基本機体形状Xと同様の形状とされている。
本実施形態による移動式中継機Vによっても、第1実施形態の移動式中継機Vと同様に使用して同様の効果を得ることができる。
又、機体1の前方からの水の流れの中で、機体1の下部側の剥離流形成部7の存在に起因して生じる機体1を下方に向ける方向のモーメントは、横舵15を制御して当て舵を行うこと等で打ち消すようにすればよい。
[第3実施形態]
図6は潜水機の第3実施形態を示す概略側面図である。
なお、図6において、第1実施形態に示したものと同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態は、第1実施形態と同様の移動式中継機Vにおいて、剥離流形成部7とその後側の機器設置領域6を、機体1の機首3から胴体2にかかる位置に設けた構成に代えて、胴体2の前後方向の中間部に設けた構成としたものである。
本実施形態における移動式中継機Vは、図1(b)に示した基本機体形状Xを有する機体1を備えており、機体1の下部側に取り付ける別体の取付部材18に、機器設置領域6と剥離流形成部7が備えられている。
取付部材18は、胴体2の下部に沿って前後方向に延びるように取り付けられている。取付部材18の長手方向の中央部の下面側には、第1実施形態と同様の凹部となる機器設置領域6が形成されている。この機器設置領域6に、音響通信機5aと音響測位装置5bが設けられている。この際、音響通信機5aと音響測位装置5bは、突出部pの長さ寸法に応じて、取付部材18を上下方向に貫通させて胴体2の内側に搭載してよいことは勿論である。
取付部材18における機器設置領域6の前側には、第1実施形態と同様の剥離流形成部7が設けられている。
取付部材18の剥離流形成部7の前方となる前端側の表面は、胴体2に取り付けられた上面側を除いた部分が先細り形状の曲面とされている。又、取付部材18の機器設置領域6の後方となる後端側の表面は、緩やかな傾斜で次第に細くなる形状とされている。これにより、取付部材18の形状は、機体1の前方からの水の流れの中で、剥離流形成部7以外の部分では、取付部材18の表面に沿って形成される境界層は剥離せず、剥離流形成部7以外の部分では渦や乱流が生じないか、又は、渦や乱流の発生が抑制される形状となっている。
本実施形態による移動式中継機Vによっても、第1実施形態の移動式中継機Vと同様に使用して同様の効果を得ることができる。
なお、図示してないが、移動式中継機Vは、機体1の上部側に、第1実施形態又はその応用例のいずれかと同様の構成のモーメント抑制手段12を備えていることが好ましい。これにより、本実施形態によっても、機体1の下部側の剥離流形成部7の存在に起因して生じる機体1を下方に向ける方向のモーメントは抑制できる。
又、モーメント抑制手段12は省略した構成としてもよい。この場合は、第2実施形態と同様に、機体1の下部側の剥離流形成部7の存在に起因して生じる機体1を下方に向ける方向のモーメントは、横舵15を制御して当て舵を行うこと等で打ち消すようにすればよい。
なお、本発明は前記各実施形態とその応用例にのみ限定されるものではなく、機体表面から突出する突出部pを有する機器は、カメラやライト、その他、音響通信機5aと音響測位装置5b以外の任意の機器であってもよい。この場合、機器が機体表面の外部に取り付けられていて、機器全体が突出部pとなっていてもよい。
1つの機器設置領域6,6aに設ける突出部pを有する機器は、音響通信機5aと音響測位装置5bのいずれか一方のように、任意の単一の機器であってもよく、又、任意の複数の機器の組み合わせであってもよい。
機器設置領域6,6a及びその前側の剥離流形成部7,7aは、突出部pを有する機器の所望される配置に応じて、機体1の前後方向の任意の個所に設けられていてもよい。
機体1に生じる圧力抵抗を低減するという観点から考えると、機器設置領域6,6a及び剥離流形成部7,7aは、機体1の一個所のみに設けることが好ましいが、複数設けてもよい。機器設置領域6,6a及び剥離流形成部7,7aを機体1の複数個所に設ける場合は、図4(c)と同様に機体中心軸Oを中心に反対側となる位置に配置して、それぞれ生じる圧力抵抗に起因して機体1に生じるモーメントを互いに打ち消すようにすることが好ましいが、この配置に限定されるものではない。
本発明の潜水機は、移動式中継機Vとして説明したが、水中を航走するものであれば、水中航走体のように使用される深度が任意の潜水機に適用してもよい。又、本発明の潜水機は、サイズは任意であり、有人機又は無人機のいずれであってもよい。
機器設置領域6,6aは、剥離流形成部7,7aに対して凹部となっていれば、機器設置領域6,6aよりも後方の機体表面に対しては凹部となっていなくてもよい。
機器設置領域6,6aは、球面や回転放物面、その他、円錐以外の任意の曲面で凹部が形成されていてもよい。
本発明の潜水機は、機体表面から突出する突出部pを有する機器のすべてが機器設置領域6,6aに配置されている構成に限定されるものではない。
各実施形態と各応用例に示した移動式中継機Vは、遠隔操作型の探査機(ROV)や、その他、水中航走体AUV以外の任意の水中機器について、通信の中継や音響測位を行うものであってもよい。
機体1の胴体2は、完全な円筒状でなくてもよい。又、本発明の潜水機は、円筒状以外の胴体2を有する潜水機に適用してもよい。
機体1の前後長や、胴体2の径等の機体の各部の寸法や寸法比、及び、機首3や剥離流形成部7,7a等の各部曲面の形状、曲率、及び、尾部4の傾斜角度、剥離流形成部7,7aの後部の後縁に向かう角度等の各部の角度は、図示するための便宜上のものであり、実際の各部の寸法や寸法比、各部曲面の形状や曲率、各部の角度を反映したものではない。
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
1 機体、5a 音響通信機(機器)、5b 音響測位装置(機器)、6,6a 機器設置領域、7,7a 剥離流形成部、12 モーメント抑制手段(モーメントを抑制する手段)、13 膨出部、17 別の機器、p 突出部、V 移動式中継機(潜水機)、O 機体中心軸

Claims (7)

  1. 水中を航走する潜水機であって、
    機体と、
    前記機体に設けられた機器設置領域と、
    前記機器設置領域に突出して設けられた機器と、
    前記機器設置領域に対し航走方向の前側に設けられた剥離流形成部とを備え、
    前記剥離流形成部は、前記機体の前方からの水の流れの中で境界層剥離を生じさせること
    を特徴とする潜水機。
  2. 前記機器設置領域は、前記剥離流形成部に対し凹部として設けられていること
    を特徴とする請求項1記載の潜水機。
  3. 前記機器設置領域は、前記機体の外形よりも窪む凹部となっていること
    を特徴とする請求項1又は2記載の潜水機。
  4. 前記機体には、機体中心軸を中心として前記剥離流形成部に対し反対側となる個所に、前記剥離流形成部により前記機体に作用するモーメントを抑制する手段が備えられていること
    を特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の潜水機。
  5. 前記モーメントを抑制する手段は、膨出部であること
    を特徴とする請求項4記載の潜水機。
  6. 前記モーメントを抑制する手段は、機体表面より突出する突出部であること
    を特徴とする請求項4記載の潜水機。
  7. 前記モーメントを抑制する手段は、前記剥離流形成部及び機器設置領域とは別の剥離流形成部及び機器設置領域であること
    を特徴とする請求項4に記載の潜水機。
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