JP2016202113A - 組換え麻疹ウイルス - Google Patents

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Abstract

【課題】パラミクソウイルス科のウイルスによる感染症のワクチン及びパラミクソウイルス科のウイルスによる感染症の治療用薬のスクリーニング方法に使用するための組換え麻疹ウイルスの提供。【解決手段】ウイルス粒子の外側に、パラミクソウイルス科のウイルスのFタンパク質に由来するアミノ酸配列を有する変異型Fタンパク質と、パラミクソウイルス科のウイルスのHNタンパク質、Hタンパク質又はGタンパク質に由来するアミノ酸配列を有する変異型Hタンパク質と、を有する組換え麻疹ウイルス。【選択図】なし

Description

本発明は、パラミクソウイルス科のウイルスによる感染症のワクチン及びパラミクソウイルス科のウイルスによる感染症の治療用薬のスクリーニング方法に使用するための組換え麻疹ウイルスに関する。
パラミクソウイルス科のウイルスには、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)が属するニューモウイルス、麻疹ウイルスが属するモルビリウイルス、ムンプスウイルスの属するルブラウイルスなどの、一本鎖(−)鎖RNAをゲノムとするエンベロープウイルスが含まれる。ウイルス粒子は外殻にエンベロープを有し、エンベロープには2種類のタンパク質を有する。この2種類のタンパク質のうちの1つが、細胞融合活性を有する膜融合(Fusion:F)タンパク質である。パラミクソウイルス科のウイルスは、Fタンパク質の細胞融合の働きによって隣接する細胞に感染が拡大する。そして、細胞融合活性を有するFタンパク質が重要な感染防御抗原と考えられている(非特許文献11)。もう一種類のタンパク質が、細胞に吸着する活性を有するタンパク質である、ヘマグルチニン(Hemagglutinin:H)タンパク質、ヘマグルチニン・ノイラミニダーゼ(hemagglutinin neuraminidase:HN)タンパク質、又はラージグリコプロテイン(large glycoprotein:G)タンパク質である。麻疹ウイルスはHタンパク質、ムンプスウイルスはHNタンパク質、RSVはGタンパク質を有する。
RSVは1955年に分離され、1960年代にホルマリン不活化全粒子ワクチンがアメリカで開発されたが、ワクチン接種者がその後にRSVに罹患するとかえって重症化し、80%が入院し死亡例も認められた(非特許文献1)。RSV全粒子不活化ワクチンの失敗の原因は、ワクチンの作製工程において行ったホルマリン不活化の過程でFタンパク質が変性し、結合抗体は誘導できるが、感染防御に有効な中和抗体は誘導できず、粘膜局所にIgA抗体を誘導できずにRSV感染を防ぐことができなかったことにある。Fタンパク質は、Th1応答を誘導し、Gタンパク質は、Th2応答を誘導する事が知られており、Fタンパク質が変性する事でTh1応答が誘導されず、Th2応答に偏った免疫を誘導し、RSV感染時には好中球・好酸球の浸潤した細気管支炎、間質性肺炎を起こし、重症化したものと考えられる(非特許文献2)。
その後、低温馴化株を選択する方法で弱毒株の選択や、遺伝子改変による弱毒化がこころみられ、遺伝子改変による研究がなされていたが、弱毒化された生ワクチン株を樹立する事ができなった(非特許文献3,4,5)。牛のパラインフルエンザウイルス遺伝子をウイルスベクターとして、ヒトのパラインフルエンザウイルスのHN遺伝子とRSVのFタンパク遺伝子を組込んだ組換えウイルスは、サルの実験では良好な免疫原性を示したが、ヒトでのphase II試験では、免疫原性が弱く、臨床試験は頓挫している。不活化ワクチンは、Fタンパク質を精製し,もしくはサブユニット抗原にアジュバントを添加したワクチンが考えられている。しかしながら未だに有効なワクチンは開発されていない(非特許文献6)。
RSVのGタンパク質は、細胞のグリコプロテイン(glycoprotein)/ヘパリン(heparin)に結合するが、その中和活性は低い。一方、Fタンパク質の受容体は不明であったが、最近になって、ヌクレオリン(nucleolin)がFタンパク質の結合タンパク質である事が明らかとなりRSVの主たる感染防御抗原はFタンパク質と考えられている(非特許文献7)。このため、Fタンパク質に対するヒト化単クローン抗体が予防薬として用いられるようになった(非特許文献8)。しかしながら、流行期に毎月1回筋注で投与され、未熟児、循環系又は呼吸器系に異常をもつ児、及びダウン症に使用は制限されているものであり、また、高価なものである。また、RSV感染をおこした小児へ投与してもウイルス増殖は軽減できず、その治療効果に関しての有効性は確立されていない(非特許文献9)。このため、RSVに対して有効なワクチンと治療薬の開発が望まれている。
RSV感染症は2歳までにはほぼ全員が感染を経験するが、特に新生児期から6ヶ月までの感染は重症化し細気管支炎、間質性肺炎をおこし不幸な転帰をとる事が知られている。WHOの統計では世界中で年間に3000万人が下気道感染をおこし、300万人が入院し、未熟児で出生し肺疾患、心疾患、免疫不全等の基礎疾患を有する小児は重症化し16万人が死亡しているものと推定されている(非特許文献10)。小児だけでなく65歳以上の老人でもインフルエンザに次いで下気道感染症の起因ウイルスとなっている。
一方、麻疹ウイルスは、有効なワクチンが開発されており世界中で使用され、その免疫原性と安全性が確立されている。分子生物学的手法が進化し、麻疹ウイルス全長RNAをcDNAに変換して回収するreverse genetics法が確立され、麻疹ワクチンAIK−C株の全塩基配列の決定と共に、感染性麻疹ワクチンウイルスを作製する方法が確立された(非特許文献12,13)。
麻疹ウイルスのFタンパク質及びHタンパク質は、ウイルス粒子膜に膜貫通領域(transmembrane domain: TM)でanchoringし、粒子内では、Membrane(M)タンパク質と結合して粒子形成をしているものと考えられている。麻疹ウイルスの感染後には、粒子内のNucleocapsid(N)タンパク質と、Phospho(P)タンパク質と、Large(L)タンパク質との複合体がゲノムRNAと結合し、ウイルスの転写複製を担っている(非特許文献14)。Pタンパク質翻訳領域からはPタンパク以外にもVタンパク質及びCタンパクが翻訳されウイルスの転写・複製活性を修飾している。
麻疹ウイルスRNAをcDNAに変換し、感染性ウイルスを回収するreverse geneticsの手法は既に開発されており、弱毒麻疹ウイルスを生ワクチンウイルスベクターとして利用する方法は既に報告されている(非特許文献15,16)。そして、RSVのFタンパク質を挿入したウイルスが作製されたが、アカゲザルに対する実験において、このウイルスの免疫原性は十分ではないということが分かった。(非特許文献17)。
発明者らは、既にAIK−Cの麻疹ウイルスベクターを用いてRSVのF,G,NP,M2タンパク質の遺伝子を麻疹ウイルス全長cDNAのPタンパク質を規定する領域と、Mタンパク質を規定する領域の間のP/M junction部位に挿入する方法で組換えウイルスを作製し中和抗体、細胞性免疫を誘導する事を報告している(非特許文献18,19)。このウイルスが感染した細胞では、麻疹ウイルスFタンパク質及びHタンパク質と共に、RSVのFタンパク質及びGタンパク質も発現するが、感染細胞から放出されるウイルス粒子のエンベロープには、麻疹ウイルスFタンパク質及びHタンパク質が含まれるが、RSVのFタンパク質及びGタンパク質は含まれないため、麻疹ウイルスの感染スペクトラムを有する。
麻疹ウイルスのFタンパク質及びHタンパク質をコードする領域をゲノムから除去しFタンパク質の細胞内領域にsimian immunodeficiency virus (SIV)のgp160タンパク質を発現するようにデザインしたキメラウイルスも報告されている(非特許文献20)。
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RSVは乳幼児の気道感染症の中でインフルエンザに次いで重要なウイルス感染症である。通常2歳まですべての小児が罹患し、特に未熟児で出生し呼吸器系の基礎疾患を有する小児や、心血管系の基礎疾患を持つ小児が感染すると重症の肺炎、細気管支炎を起こし、時に死亡に至る感染症である。世界中で毎年3000万人が感染し16万人が死亡している。小児だけはなく、高齢者においても肺炎、気管支炎の原因ウイルスで細菌性肺炎を合併し高齢者においても注目されている。その予防には乳幼児期にはRSVの外殻タンパク質であるFタンパク質に対するヒト型単クローン抗体が使用されている。しかしながら、高価な薬剤でありその使用は限定されている。また、多くのワクチン候補株が作成されてきたが、安全性と免疫原性に優れたワクチンはいまだ開発されていない。また、その治療薬も開発されていない。そして、これらの問題は、RSVに限らず、パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスに共通する問題である。
本発明の目的は、パラミクソウイルス科のウイルスによる感染症のワクチン及びパラミクソウイルス科のウイルスによる感染症の治療用薬のスクリーニングに使用するための組換え麻疹ウイルスを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために、麻疹ワクチンについて鋭意研究を行った。その結果、本願発明者は、麻疹ウイルスの外殻タンパク質であるFタンパク質及びHタンパク質について、ウイルス粒子の外側のアミノ酸配列を、特定のパラミクソウイルス科のウイルスの外殻タンパク質のウイルス粒子の外側のアミノ酸配列に組み換えることによって、そのパラミクソウイルス科のウイルスの感染可能な細胞に対して感染能を有し、感染細胞において増殖能の高い組換え麻疹ウイルスを作製できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1]エンベロープ貫通型タンパク質である変異型Fタンパク質と、
エンベロープ貫通型タンパク質である変異型Hタンパク質と、
を有する組換え麻疹ウイルスであって、
前記変異型Fタンパク質は、
ウイルス粒子の外側に、パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスのFタンパク質の、ウイルス粒子の外側のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列であって、かつ、前記パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスのFタンパク質が有する、特定の細胞に対する細胞融合活性を、前記組換え麻疹ウイルスの変異型Fタンパク質に付与する、アミノ酸配列の領域を有し、
ウイルス粒子の内側に、麻疹ウイルスのFタンパク質の、ウイルス粒子の内側のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列であって、かつ、麻疹ウイルスのMタンパク質と結合可能なアミノ酸配列の領域を有し、
前記変異型Hタンパク質は、
ウイルス粒子の外側に、前記パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスの、HNタンパク質、Hタンパク質又はGタンパク質の、ウイルス粒子の外側のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列であって、かつ、前記パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスの、HNタンパク質、Hタンパク質又はGタンパク質が有する、特定の細胞に対する細胞吸着活性を、前記組換え麻疹ウイルスの変異型Hタンパク質に付与する、アミノ酸配列の領域を有し、
ウイルス粒子の内側に、麻疹ウイルスのHタンパク質の、ウイルス粒子の内側のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列であって、かつ、麻疹ウイルスのMタンパク質と結合可能なアミノ酸配列の領域を有する、
組換え麻疹ウイルス。
[2]AIK−Cの組換え麻疹ウイルスである、[1]に記載の組換え麻疹ウイルス。
[3]前記パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスが、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)である、[1]又は[2]に記載の組換え麻疹ウイルス。
[4]前記変異型Fタンパク質は、ウイルス粒子の外側に、RSVのFタンパク質のウイルス粒子の外側のアミノ酸配列、または、RSVのFタンパク質のウイルス粒子の外側のアミノ酸配列のうち1個若しくは数個のアミノ酸残基が置換されてなるアミノ酸配列であって、かつ、ヒト気道上皮細胞に対する細胞融合活性を組換え麻疹ウイルスの前記変異型Fタンパク質に付与するアミノ酸配列の領域を有する、
[1]〜[3]のいずれか1項に記載の組換え麻疹ウイルス。
[5]前記変異型Fタンパク質は、ウイルス粒子の外側に、配列番号4に記載のアミノ酸配列の第1位〜第524位の領域のアミノ酸配列、または、配列番号4に記載のアミノ酸配列の第1位〜第524位の領域のアミノ酸配列のうち1個若しくは数個のアミノ酸残基が置換されてなるアミノ酸配列を有する、[4]に記載の組換え麻疹ウイルス。
[6]前記変異型Fタンパク質のアミノ酸配列が、配列番号25に記載のアミノ酸配列、または、配列番号25に記載のアミノ酸配列のうち1個若しくは数個のアミノ酸残基が置換されてなるアミノ酸配列である、[5]に記載の組換え麻疹ウイルス。
[7]前記変異型Hタンパク質は、ウイルス粒子の外側に、RSVのGタンパク質のウイルス粒子の外側のアミノ酸配列、または、RSVのGタンパク質のウイルス粒子の外側のアミノ酸配列のうち1個若しくは数個のアミノ酸残基が置換されてなるアミノ酸配列であって、かつ、ヒト気道上皮細胞に対する細胞吸着活性を前記変異型Hタンパク質に付与するアミノ酸配列の領域を有する、
[1]〜[6]のいずれか1項に記載の組換え麻疹ウイルス。
[8]前記変異型Hタンパク質は、ウイルス粒子の外側に、配列番号2に記載のアミノ酸配列の第67位〜第298位の領域のアミノ酸配列、または、配列番号2に記載のアミノ酸配列の第67位〜第298位の領域のアミノ酸配列のうち1個若しくは数個のアミノ酸残基が置換されてなるアミノ酸配列を有する、[7]に記載の組換え麻疹ウイルス。
[9]前記変異型Hタンパク質のアミノ酸配列が、配列番号26に記載のアミノ酸配列、または、配列番号26に記載のアミノ酸配列のうち1個若しくは数個のアミノ酸残基が置換されてなるアミノ酸配列である、[8]に記載の組換え麻疹ウイルス。
[10] [1]〜[9]に記載の組換え麻疹ウイルスのゲノムである、組換え麻疹ウイルスのゲノムRNA。
[11]蛍光タンパク質を規定する領域を有する、[10]に記載の組換え麻疹ウイルスのゲノムRNA。
[12] [10]又は[11]に記載の組換え麻疹ウイルスのゲノムRNAから調製された、組換え麻疹ウイルスのゲノムをコードするDNA。
[13]配列番号5に記載の塩基配列、または、配列番号5に記載の塩基配列と90%以上の塩基配列相同性を有する塩基配列からなる、組換え麻疹ウイルスのゲノムをコードするDNA。
[14] [1]〜[9]のいずれか1項に記載の組換え麻疹ウイルスを有効成分として含む、パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスによる感染症のワクチン。
[15]被験物質の存在下で、[1]〜[9]のいずれか1項に記載の組換え麻疹ウイルスを細胞と培養する第一工程と、
前記第一工程の前記組換え麻疹ウイルスの前記細胞に対する感染レベルを測定する第二工程と、
前記第二工程において測定した感染レベルを、前記被験物質の非存在下で細胞と培養した組換え麻疹ウイルスの感染レベルと比較し、前記被験物質の存在下で細胞と培養した前記組換え麻疹ウイルスの感染レベルが、前記被験物質の非存在下で細胞と培養した組換え麻疹ウイルスの感染レベルよりも小さい場合は、前記被験物質を選択する第三工程と、
を有する、パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスによる感染症の治療用薬のスクリーニング方法。
[16]前記組換え麻疹ウイルスは蛍光タンパク質を規定する遺伝子を有し、
前記組換え麻疹ウイルスの感染レベルを蛍光タンパク質の蛍光強度で測定する、
[15]に記載のパラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスによる感染症の治療用薬のスクリーニング方法。
本発明の組換え麻疹ウイルスは、パラミクソウイルス科のウイルスが細胞に感染する際に機能する外殻タンパク質のウイルス粒子の外側に突出するアミノ酸配列を有するため、そのアミノ酸配列の由来するパラミクソウイルス科のウイルスが感染可能な細胞に対して感染できる。また、本発明の組換え麻疹ウイルスは、麻疹ウイルスのウイルス粒子を形成する上で重要な役割を有する、Fタンパク質及びHタンパク質とMタンパク質との結合構造を有し、感染細胞においてウイルス粒子形成を円滑に行うことができるため、高い増殖能を有する。
本発明の組換え麻疹ウイルスは、以上のような特徴を有することにより感染先で免疫を十分に誘導できるため、これを用いたパラミクソウイルス科のウイルスによる感染症のワクチンを提供することができる。また、本発明の組換え麻疹ウイルスは治療用薬の対象とするウイルスと同様の感染スペクトラムを有するため、これを用いた治療用薬のスクリーニング方法を提供することもできる。
図1は、実施例1において変異型Fタンパク質の構築に用いた領域を示す模式図である。 図2は、実施例1で構築した変異型Fタンパク質の塩基配列を表す図である。 図3は、実施例2において変異型Hタンパク質の構築に用いた領域を示す模式図である。 図4は、実施例2で構築した変異型Hタンパク質の塩基配列を表す図である。 図5は、実施例3における、組換え麻疹ウイルス全長遺伝子を構築する際の組み込み領域を示す模式図である。 図6は、実施例4で組換え麻疹ウイルスを回収した方法を表す模式図である。 図7は、実施例4で作製した組換え麻疹ウイルスを表す模式図である。 図8は、Vero細胞及びA549細胞における麻疹ウイルス、組換え麻疹ウイルス、RSVの増殖能を示す図である。 図9は、リンパ球系細胞における麻疹ウイルス及び組換え麻疹ウイルスの増殖能を示す図である。 上皮細胞系における麻疹ウイルス、組換え麻疹ウイルス及びRSVの増殖能を示す図である。 リンパ球系細胞における麻疹ウイルス、組換え麻疹ウイルス及びRSVの増殖能を示す図である。 組換え麻疹ウイルスが、A549細胞に感染後に発現するタンパク質を表す図である。
(1)組換え麻疹ウイルス
本発明により提供される組換え麻疹ウイルスは、
エンベロープ貫通型タンパク質である変異型Fタンパク質と、
エンベロープ貫通型タンパク質である変異型Hタンパク質と、
を有する組換え麻疹ウイルスであって、
前記変異型Fタンパク質は、
ウイルス粒子の外側に、パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスのFタンパク質の、ウイルス粒子の外側のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列であって、かつ、前記パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスのFタンパク質が有する、特定の細胞に対する細胞融合活性を、前記組換え麻疹ウイルスの変異型Fタンパク質に付与する、アミノ酸配列の領域を有し、
ウイルス粒子の内側に、麻疹ウイルスのFタンパク質の、ウイルス粒子の内側のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列であって、かつ、麻疹ウイルスのMタンパク質と結合可能なアミノ酸配列の領域を有し、
前記変異型Hタンパク質は、
ウイルス粒子の外側に、前記パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスの、HNタンパク質、Hタンパク質又はGタンパク質の、ウイルス粒子の外側のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列であって、かつ、前記パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスの、HNタンパク質、Hタンパク質又はGタンパク質が有する、特定の細胞に対する細胞吸着活性を、前記組換え麻疹ウイルスの変異型Hタンパク質に付与する、アミノ酸配列の領域を有し、
ウイルス粒子の内側に、麻疹ウイルスのHタンパク質の、ウイルス粒子の内側のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列であって、かつ、麻疹ウイルスのMタンパク質と結合可能なアミノ酸配列の領域を有する。
本明細書において、「エンベロープ」とは、パラミクソウイルス科のウイルスに見られる、ヌクレオキャプシドをとり巻く脂質二重層を基本とする膜構造であり、パラミクソウイルス科のウイルスのゲノムにコードされた、ウイルス粒子膜を貫通する、エンベロープ貫通型タンパク質からなる小突起構造物と、宿主細胞由来の脂質と、を有するものを意味する。
本明細書において、「ウイルス粒子の外側」とは、そのエンベロープを有するパラミクソウイルス科のウイルス粒子のエンベロープのうちウイルス粒子の外側に位置する層の親水表面から、ウイルス粒子の外側を意味する。本明細書において、「ウイルス粒子の外側のアミノ酸配列」とは、エンベロープのうちウイルス粒子の外側に位置する層の親水表面から、ウイルス粒子の外側に向けて突出しているアミノ酸の配列を意味する。例えば、RSV、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、メタニューモウイルス及びニパウイルスのFタンパク質の場合は、膜貫通領域よりもN末端側の領域の領域を意味し、RSV、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、メタニューモウイルス及びニパウイルスのGタンパク質、Hタンパク質又はHNタンパク質の場合は、膜貫通領域よりもC末端側の領域を意味する。
本明細書において、「ウイルス粒子の内側」とは、そのエンベロープを有するウイルス粒子のエンベロープのうちウイルス粒子の内側に位置する層の親水表面から、ウイルス粒子中心側を意味する。本明細書において、「ウイルス粒子の内側のアミノ酸配列」とは、エンベロープのうちウイルス粒子の内側に位置する層の親水表面から、ウイルス粒子の中心部に向けて突出しているアミノ酸の配列を意味する。例えば、RSV、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、メタニューモウイルス及びニパウイルスのFタンパク質の場合は、膜貫通領域よりもC末端側の親水性の領域を意味し、RSV、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、メタニューモウイルス及びニパウイルスのGタンパク質、Hタンパク質又はHNタンパク質の場合は、疎水性の膜貫通領域よりもN末端側の領域を意味する。
タンパク質の膜貫通領域とは疎水性の領域である。RSV、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、メタニューモウイルス及びニパウイルスのFタンパク質の膜貫通領域はC末端付近に位置し、RSV、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、メタニューモウイルス及びニパウイルスのGタンパク質、Hタンパク質又はHNタンパク質の膜貫通領域はN末端付近に位置する。
タンパク質の疎水性領域及び親水性領域、並びに膜貫通領域は、配列解析ソフト、具体的にはVector NTI、GENETYX-MACや公共のデータベースで提供される解析ツールを用いて推定できる。

由来する麻疹ウイルス
本発明の組換え麻疹ウイルスは、安全性の高い麻疹ワクチンウイルスに由来することが好ましい。例えば、CAM-70、Schwarz FF8、AIK-C、AIK-HDC、TD97、Moraten、Connaught、Schwarz、Edmonston B、Edmonston-Zagreb、Leningrad-16、Shanghai-191、Changchum-47、及びBeijingなどに由来することが好ましく、Schwarz、Moraten及びAIK-Cに由来することがより好ましい。AIK-Cは39℃以上では増殖しない性状特徴を有し、安全性が特に高いため、AIK-Cを用いることが最も好ましい。
本発明の組換え麻疹ウイルスは、変異型Hタンパク質及び変異型Fタンパク質以外のタンパク質のNucleocapsid(N)タンパク質, Phospho(P)タンパク質,Vタンパク質,Cタンパク質、Large(L)タンパク質及びMembrane(M)タンパク質については、麻疹ウイルスと同様のタンパク質を有することが好ましい。麻疹ウイルスの安全性や増殖能等の特性を、組換え麻疹ウイルスでも維持することができる。
パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルス
本明細書において、パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスは、例えば、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ムンプスウイルス、メタニューモウイルス及びニパウイルスなどを意味する。
変異型Fタンパク質及び変異型Hタンパク質
本発明の組換え麻疹ウイルスが有する変異型Hタンパク質及び変異型Fタンパク質は、エンベロープ貫通型タンパク質である。変異型Hタンパク質及び変異型Fタンパク質は、ウイルス粒子の内側のアミノ酸配列の領域と、ウイルス粒子の外側のアミノ酸配列の領域と、エンベロープ膜貫通領域と、を有する。そして、変異型Fタンパク質及び変異型Hタンパク質には、同一種のパラミクソウイルス由来のアミノ酸を組み込む。組換え麻疹ウイルスに発現した変異型Hタンパク質及び変異型Fタンパク質について以下に説明する。

変異型Hタンパク質
変異型Hタンパク質は、ウイルス粒子の内側のアミノ酸配列の領域に、本発明の組換え麻疹ウイルスの発現するMembrane(M)タンパク質と結合可能なアミノ酸配列を有する。このアミノ酸配列は、例えば、麻疹ウイルスのHタンパク質の、ウイルス粒子の内側に位置するアミノ酸配列を有することが好ましいが、このアミノ酸配列のうち少数の(好ましくは、1個、2個又は数個の)アミノ酸残基が置換されたアミノ酸配列であって、Mタンパク質と結合可能なアミノ酸配列を有してもよい。例えば、配列番号1に示すAIK−CのHタンパク質のアミノ酸配列のうち第1位〜第34位のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有するか、このアミノ酸配列のうち少数の(好ましくは、1個、2個又は数個の)アミノ酸残基が置換された、Mタンパク質と結合可能なアミノ酸配列を有してもよい。
変異型Hタンパク質は、ウイルス粒子の外側に、パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスのHNタンパク質、Hタンパク質又はGタンパク質のウイルス粒子の外側のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を有する。そのHNタンパク質、Hタンパク質又はGタンパク質が有する、特定の細胞に対する細胞吸着活性を、変異型Hタンパク質に付与できるアミノ酸配列を有すれば制限されない。本明細書において、「細胞吸着活性」とは、パラミクソウイルス科のウイルスのHNタンパク質、Hタンパク質及びGタンパク質が有する、細胞側のウイルス受容体(レセプター)と結合する活性をいう。また、変異型Hタンパク質が、「パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスの、HNタンパク質、Hタンパク質又はGタンパク質が有する、特定の細胞に対する細胞吸着活性を、前記組換え麻疹ウイルスの変異型Hタンパク質に付与する、アミノ酸配列の領域を有する」とは、その変異型Hタンパク質のウイルス粒子の外側のアミノ酸配列が由来するウイルス種が感染可能な細胞種に対する細胞吸着活性を意味する。
例えば、変異型Hタンパク質のウイルス粒子の外側のアミノ酸配列がRSV、ムンプスウイルス、又はメタニューモウイルスに由来する場合、この変異型Hタンパク質は、RSVのGタンパク質、ムンプスウイルスのHNタンパク質、又はメタニューモウイルスのGタンパク質が有する「ヒト気道粘膜上皮細胞に対する細胞吸着活性」を有する。
RSVのGタンパクは糖鎖が付着しケモカイン(CX3C: fractalkine)に類似しているため、CX3CRに結合する。また、RSVのGタンパク質はheparin、annexin IIにも結合する。このため、組換え麻疹ウイルスの変異型Hタンパク質がRSVのGタンパク質由来のアミノ酸配列を有する場合、組換え麻疹ウイルスは、CX3CR、heparin、又はannexin IIに結合する機能を有する。
例えば、HNタンパク質、Hタンパク質又はGタンパク質のウイルス粒子の外側のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有するか、または、このアミノ酸配列のうち少数の(好ましくは、1個、2個又は数個の)アミノ酸残基が置換されたアミノ酸配列を有してもよい。例えば、配列番号2に示すRSV/Ohta/1998株のGタンパク質のアミノ酸配列のうち第67位〜第298位のアミノ酸配列を、変異型Hタンパク質がウイルス粒子の外側に有してもよく、又は、このアミノ酸配列のうち少数の(好ましくは、1個、2個又は数個の)アミノ酸残基が置換されたアミノ酸配列であって、かつ、特定の細胞に対する細胞吸着活性を変異型Hタンパク質に付与できるアミノ酸配列を、変異型Hタンパク質がウイルス粒子の外側に有してもよい。
変異型Hタンパク質の、エンベロープ膜貫通領域のアミノ酸配列は、エンベロープ膜貫通領域として機能可能なアミノ酸配列を有する。特に制限されないが、パラミクソウイルス科のウイルスのHNタンパク質、Hタンパク質又はGタンパク質のエンベロープ膜貫通領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有することが好ましいが、このアミノ酸配列のうち少数の(好ましくは、1個、2個又は数個の)アミノ酸残基が置換されたアミノ酸配列であって、疎水性を有し、ウイルス粒子内での変異型Hタンパク質とMタンパク質との結合を阻害しないアミノ酸配列を有してもよい。例えば、配列番号1に示すAIK−CのHタンパク質のアミノ酸配列のうち第35位〜第58位のアミノ酸配列を有することが好ましいが、このアミノ酸配列のうち少数の(好ましくは、1個、2個又は数個の)アミノ酸残基が置換されたアミノ酸配列であって、疎水性を有し、ウイルス粒子内での変異型Hタンパク質とMタンパク質との結合を阻害しないアミノ酸配列を有してもよい。
変異型Fタンパク質
変異型Fタンパク質のウイルス粒子の内側のアミノ酸配列の領域に、本発明の組換え麻疹ウイルスのMembrane(M)タンパク質と結合可能なアミノ酸配列を有する。このアミノ酸配列は、例えば、麻疹ウイルスのFタンパク質の、ウイルス粒子の内側に位置するアミノ酸配列を有することが好ましいが、このアミノ酸配列のうち少数の(好ましくは、1個、2個又は数個の)アミノ酸残基が置換されたアミノ酸配列であって、Mタンパク質と結合可能なアミノ酸配列を有してもよい。例えば、配列番号3に示すAIK−CのFタンパク質のアミノ酸配列のうち第521位〜第553位のアミノ酸配列、又は、そのアミノ酸配列を有することが好ましいが、このアミノ酸配列のうち少数の(好ましくは、1個、2個又は数個の)アミノ酸残基が置換されたアミノ酸配列であって、Mタンパク質と結合可能なアミノ酸配列を有してもよい。
変異型Fタンパク質は、ウイルス粒子の外側に、パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスのFタンパク質のウイルス粒子の外側に位置するアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を有する。そのFタンパク質が有する、特定の細胞に対する細胞融合活性を、変異型Fタンパク質に付与できるアミノ酸配列を有すれば制限されない。本明細書において、「細胞融合活性」とは、パラミクソウイルス科のウイルスのFタンパク質が有する、Fタンパク質の作用によって細胞膜脂質二重構造を一時崩壊させて、その回復過程で、接近した細胞の細胞膜に融合を起こさせる活性をいう。細胞融合は、例えば次のように生じる。Fタンパクの疎水性アミノ酸が並んでいるfusion domainが細胞の脂質二重膜に突き刺さる。この構造は安定していないため元の構造に戻ろうとする。この時に細胞膜同士が細胞融合を起こす。また、変異型Fタンパク質が、「パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスのFタンパク質が有する、特定の細胞に対する細胞融合活性を、前記組換え麻疹ウイルスの変異型Fタンパク質に付与する、アミノ酸配列の領域を有する」場合は、感染した細胞が細胞融合を起こす。このことは顕微鏡下で観察することにより確認できる。また、本明細書において、変異型Fタンパク質の「特定の細胞に対する細胞融合活性」とは、その変異型Fタンパク質のウイルス粒子の外側のアミノ酸配列が由来するウイルス種が感染可能な細胞種に対する細胞融合活性を意味する。
例えば、変異型Fタンパク質のウイルス粒子の外側のアミノ酸配列がRSVに由来する場合、この変異型Fタンパク質は、RSVのFタンパク質が有する「ヒト気道上皮細胞に対する細胞融合活性」を有する。また、変異型Fタンパク質のウイルス粒子の外側のアミノ酸配列がムンプスウイルスに由来する場合、この変異型Fタンパク質は、ムンプスウイルスのFタンパク質が有する「Vero細胞に対する細胞融合活性」を有する。
例えば、Fタンパク質のウイルス粒子の外側のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有するか、または、このアミノ酸配列のうち少数の(好ましくは、1個、2個又は数個の)アミノ酸残基が置換されたアミノ酸配列を有してもよい。
例えば、配列番号4に示すRSV/Nao/1998株のFタンパク質のアミノ酸配列のうち第1位〜第524位のアミノ酸配列を、変異型Fタンパク質がウイルス粒子の外側に有してもよい。又は、これらのアミノ酸配列のうち少数の(好ましくは、1個、2個又は数個の)アミノ酸残基が置換されたアミノ酸配列であって、かつ、ヒト気道上皮細胞に対する細胞融合活性を変異型Fタンパク質に付与できるアミノ酸配列を、変異型Fタンパク質がウイルス粒子の外側に有してもよい。
変異型Fタンパク質の、エンベロープ膜貫通領域のアミノ酸配列は、エンベロープ膜貫通領域として機能可能なアミノ酸配列を有する。特に制限されないが、パラミクソウイルス科のウイルスのFタンパク質のエンベロープ膜貫通領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有することが好ましい。または、このアミノ酸配列のうち少数の(好ましくは、1個、2個又は数個の)アミノ酸残基が置換されたアミノ酸配列であって、疎水性を有し、ウイルス粒子内での変異型Fタンパク質とMタンパク質との結合を阻害しないアミノ酸配列を有してもよい。例えば、配列番号3に示すAIK−CのFタンパク質のアミノ酸配列のうち第498位〜第520位のアミノ酸配列を有することが好ましい。または、このアミノ酸配列のうち少数の(好ましくは、1個、2個又は数個の)アミノ酸残基が置換されたアミノ酸配列であって、疎水性を有し、ウイルス粒子内での変異型Fタンパク質とMタンパク質との結合を阻害しないアミノ酸配列を有してもよい。
変異型Fタンパク質としては、例えば、配列番号25に記載の配列を有することが好ましい。
組換え麻疹ウイルス
本発明の組換え麻疹ウイルスは、後述するように、パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスによる感染症のワクチンとしての用途や、パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスによる感染症の治療用薬のスクリーニングの用途に用いることができる。
(2)組換え麻疹ウイルスのゲノム
本発明は、上記組換え麻疹ウイルスをコードするcDNAを提供する。
組換え麻疹ウイルスのゲノムRNAは、一本鎖(マイナス鎖)RNAである。そのゲノム上には、麻疹ウイルスの、Nucleocapsid(N)タンパク質, Phospho(P)タンパク質,Large(L)タンパク質及びMembrane(M)タンパク質、並びに、上記の変異型Fタンパク質、及び上記の変異型Hタンパク質の6つの遺伝子、又は、これらの遺伝子の塩基配列と好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の塩基配列相同性を有し、かつ、これらのタンパク質と同じ機能を有するタンパク質を規定する遺伝子が規定されている。
組換え麻疹ウイルスのゲノムは、GFP、BFP、YFP等の蛍光タンパク質を規定する領域を有してもよい。
組換え麻疹ウイルスの全長ゲノムの例として、RSVであるRS/Nao/1998株由来のタンパク質を組み込んで作製した、麻疹ウイルスであるAIK−Cの組換え体の全長ゲノムのcDNA配列を配列番号5に示す。また、GFPを規定する領域も有する組換え体の全長ゲノムのcDNA配列を配列番号6に示す。
野生型麻疹ウイルスのゲノムから組換え麻疹ウイルスを作製するには、PCR法や市販の変異導入キットを用いることができる。PCR法としては、例えば、野生型のパラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスのゲノムRNAのcDNAをクローン化したベクターを鋳型とし、HNタンパク質、Hタンパク質若しくはGタンパク質又はFタンパク質の、ウイルス粒子の外側のアミノ酸配列を規定する領域をターゲットにする1組のプライマーを用いたPCRを実施することによって、目的の配列部分を増幅することができる。合成した核酸の各末端を制限酵素で切断し、同じ酵素で切断した野生型の麻疹ウイルスゲノムRNAのcDNAをクローン化したベクターに連結することにより、目的の変異を導入できる。これにより得られたキメラ麻疹ウイルスcDNAを、N,P,Lタンパク質の発現プラスミドを導入した細胞に導入して、組換え麻疹ウイルスを取得する。
(3)ワクチン
本発明は、上記組換え麻疹ウイルスを有効成分として含む、パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスによる感染症のワクチンを提供する。
ワクチンは、ワクチンの有効成分に含まれる変異型Fタンパク質及び変異型Hタンパク質が、上述のように、一種類のパラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスのタンパク質に由来しており、その種類のパラミクソウイルス科のウイルスによる感染症のワクチンとして機能する。例えば、RSVのFタンパク質及びGタンパク質に由来するアミノ酸配列を、変異型Fタンパク質及び変異型Hタンパク質に有する組換え麻疹ウイルスは、RSVの感染症のワクチンの有効成分として機能する。
本発明のワクチンに含まれる組換え麻疹ウイルス粒子の表面上に、パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスの、Fタンパク質のウイルス粒子の外側の領域のアミノ酸配列と、HNタンパク質、Hタンパク質又はGタンパク質のウイルス粒子の外側の領域のアミノ酸配列と、を発現しているため、被験者に対してTh1応答とTh2応答とを両方誘導可能である。また、本発明のワクチンに含まれる組換え麻疹ウイルスはウイルス粒子を形成できるため、感染細胞から離れた細胞に新たに感染できる。こうしてウイルスが広く増殖することで、被験者に対する抗体の誘導や細胞性免疫能の誘導が効率的に生じ、生ワクチンとして高い効果を発揮する。さらに、ワクチンに含まれる本発明の組換え麻疹ウイルスが、AIK−Cに由来し、かつ、変異型Fタンパク質及び変異型Hタンパク質が、RSVのFタンパク質及びGタンパク質に由来する場合は、AIK−Cと同様の温度感受性を示し、RSVよりは増殖能が低い。このため、経鼻生ワクチンとして応用できる。
ワクチンは、溶液、懸濁液、又は凍結乾燥製剤の形態をとりうる。また、投与剤形に適した方法で、そして予防及び治療効果を有する量で投与する。そして、鼻腔内、粘膜、経口、皮下、筋肉内投与経路などの経路によって投与できる。例えば、RSVのFタンパク質及びGタンパク質のウイルス粒子の外側のアミノ酸配列を組み込んだ変異型Fタンパク質及びFタンパク質を含むワクチンや、それらのタンパク質を規定する構築物を含むワクチンの場合は、鼻腔内に投与することができる。
ワクチンは、健常人に投与し、健常人にパラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスに対する免疫応答を誘導し、感染症に対して予防的に使用する方法がある。
ワクチンは、上記組換え麻疹ウイルス、上記組換え麻疹ウイルスのゲノムRNA、又は上記麻疹ウイルスのゲノムRNAのcDNAを有効成分として含む場合、医薬として、医薬上許容される溶解剤、添加剤、安定剤、バッファーなどをさらに有してもよい。
(4)抗パラミクソウイルス薬のスクリーニング方法
本発明は、被験物質の存在下で、上記の組換え麻疹ウイルスを細胞と培養する第一工程と、前記第一工程の前記組換え麻疹ウイルスの前記細胞に対する感染レベルを測定する第二工程と、前記第二工程において測定した感染レベルを、前記被験物質の非存在下で細胞と培養した組換え麻疹ウイルスの感染レベルと比較し、前記被験物質の存在下で細胞と培養した前記組換え麻疹ウイルスの感染レベルが、前記被験物質の非存在下で細胞と培養した組換え麻疹ウイルスの感染レベルよりも小さい場合は、パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスによる感染症の治療薬の候補として、前記被験物質を選択する第三工程と、を有する、パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスによる感染症の治療用薬のスクリーニング方法を提供する。
感染レベルの測定は、感染細胞の細胞変性効果を比較することにより行ってもよい。例えば、細胞同士が融合して形成される巨細胞数を数えて感染レベルを測定してもよい。例えば、被験物質の存在する条件と、非存在の条件において、細胞と組換え麻疹ウイルスを、およそ1週間培養した後に、両条件の巨細胞数を確認して感染レベルを比較する。そして、被験物質の存在する培養条件の巨細胞数のほうが被験物質の非存在の培養条件の巨細胞数よりも少ない場合には、被験物質をパラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスに対する薬の候補にできる。
蛍光タンパク質を規定する遺伝子を有する組換え麻疹ウイルスを用いた場合は、組換え麻疹ウイルスの感染レベルを蛍光タンパク質の蛍光強度で測定することができる。例えば、被験物質の存在する条件と、非存在の条件において、細胞と組換え麻疹ウイルスを、およそ1週間培養した後に、両条件におけるGFPの蛍光量を測定して、感染レベルを比較する。そして、被験物質の存在する培養条件の蛍光量のほうが被験物質の非存在の培養条件の蛍光量よりも小さい場合には、被験物質をパラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスに対する薬の候補にできる。
以下の実施例に示すとおり、本発明の組換え麻疹ウイルスは、ウイルス粒子の外側のアミノ酸配列に由来するウイルスが感染可能である細胞に対して感染能を有し、また、麻疹ウイルスと同様に高い増殖能を有する。このため、本発明の組換え麻疹ウイルスは高い免疫原性を有すると考えられる。また、本発明の組換え麻疹ウイルスは、安全性が確認されているAIK−C株等の麻疹ウイルスのウイルス粒子の外側のアミノ酸配列以外を組み換えずに作製すると、安全面において特に優れると考えられる。このため、本発明の組換え麻疹ウイルスは、パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスによる感染症のワクチンとして有用であり、また、パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスによる感染症の治療用薬のスクリーニング方法に用いる場合に有用であると考えられる。
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。但し、これらの実施例は説明のためのものであり、本発明の技術的範囲を制限するものではない。
[実施例1]変異型Fタンパク質を規定する遺伝子の作製
実施例1では、麻疹ウイルスAIK-CのFタンパク質のウイルス粒子の内側の領域のアミノ酸配列及びエンベロープ膜貫通領域のアミノ酸配列と、パラミクソウイルスであるRSV(RSV/Nao/1998株、1998年臨床分離株)のFタンパク質のウイルス粒子の外側の領域のアミノ酸配列とを有する変異型Fタンパク質である変異型Fタンパク質を規定する遺伝子を作製した。図1に、変異型Fタンパク質の構築に用いた領域を示す。
まず、非特許文献18で作製した、RSV Fタンパク質の全長をコードする塩基配列(配列番号28)が組み込まれたプラスミド(pMVAIK/RSV/F)を鋳型にして、プライマーMV/RSF ATG+(5’- ATCAAGACTCATCCAATGGAGTTGCCAATC -3’(配列番号8))と、プライマーRSF−AIK F TM−(5’- CAGGATGTAGACTATATTTGTGGTGGATTT -3’ (配列番号9))を用いてPCRによってターゲット配列を増幅した。これをフラグメントAとした。フラグメントAは、RSV Fタンパク質のウイルス粒子の外側に位置する領域をコードする塩基配列(配列番号10)である。
非特許文献12で作製した、AIK-C株の全長をコードする塩基配列(配列番号27)が組み込まれたプラスミドを鋳型にして、麻疹ワクチン株AIK−Cの全長cDNA(配列番号27)の4922位のNar I制限酵素切断部位を含む領域をターゲットにするプライマーMV4866(5’- ACAAAACTTAGGGCCAAGGAACATACACAC -3’ (配列番号11))と、プライマーMV RS F ATG−(5’- GATTGGCAACTCCATTGGATGAGTCTTGAT -3’ (配列番号12))を用いてPCRによってターゲット配列を増幅した。得られたフラグメントをフラグメントB(配列番号13)とした。
また、AIK-Cのウイルス粒子の内側の領域とエンベロープ膜貫通領域からPac I 制限酵素領域までのフラグメントCの作製は以下のPCR産物を結合させた。AIK-C株の全長をコードする塩基配列(配列番号27)が組み込まれたプラスミドを鋳型にして、プライマーRSF−AIK F TM+(5’-AAATCAACCACAAATATAGTCTACATCCTG-3’(配列番号30))と、プライマーAIK F TGATAG NotI−(5’-TTATATGCGGCCGCCTATCAGAGCGACCTTA -3’ (配列番号31))を用いて、PCRにより作製したフラグメントをBluescript SK II-に組み込む。この組換えRSVF/MVFタンパクの遺伝子にAIK-Cの非翻訳領域を付加するためにAIK-C cDNAを鋳型としてプライマーAIK F stop-UTR(5' -GAGAGTTGTAGAGGACTATCAGAGCGACCT- 3’(配列番号32))とプライマーAIK Pac- (5’- TTGCACCCTAAGTTTTAATTAACTACCGAT -3’ (配列番号33))で PCRを行い結合することでフラグメントCを作成した。AIK−C Fタンパク質のエンベロープ膜貫通領域とウイルス粒子の内側に位置する領域をコードする塩基配列(配列番号14)である。
次に、フラグメントA,B及びCを混合し、ライゲーションし、得られた構築物の塩基配列を確認した。Nar I制限酵素切断部位を5’末端に、Pac I制限酵素切断部位を3’末端に含み、両制限酵素切断部位の間に、RSV Fタンパク質のウイルス粒子の外側に位置する領域と、AIK−C Fタンパク質のエンベロープ膜貫通領域と、AIK−C Fタンパク質のウイルス粒子の内側に位置する領域と、を含む、変異型Fタンパク質の遺伝子(配列番号7)が含まれるポリヌクレオチドが得られた。
そして、得られた変異型Fタンパク質を規定する遺伝子が含まれるポリヌクレオチドを、Nar I及び Pac Iで処理した、特許文献18で作製したpMVAIK/20-77プラスミドに挿入した。大腸菌への形質転換後、2YTプレート培地にて37℃で一晩培養した。翌日、生えたコロニーから数クローンを選んで2YT培地にて培養後、プラスミドの抽出を行った。
図2には、変異型Fタンパク質のRSV Fタンパク質のウイルス粒子の外側に位置する領域と、AIK−C Fタンパク質のエンベロープ膜貫通領域と、AIK−C Fタンパク質のウイルス粒子の内側に位置する領域と、をコードする領域の塩基配列(配列番号7)を示す。大文字で示す塩基はRSV Fタンパク質のウイルス粒子の外側の領域をコードする部分の塩基、小文字で示す塩基はAIK−C Fタンパク質のエンベロープ膜貫通領域とウイルス粒子の内側の領域をコードする部分の塩基である。ウイルス粒子の外側の領域を規定する領域は1位から1572位の領域であり、ウイルス粒子の内側の領域と膜貫通領域を規定する領域は1573位から1743位の領域である。
[実施例2]変異型Hタンパク質を規定する遺伝子の作製
実施例2では、麻疹ウイルスであるAIK−CのHタンパク質のウイルス粒子の内側の領域とエンベロープ膜貫通領域とパラミクソウイルスであるRSV(RS/Ohta/1998株)のGタンパク質のウイルス粒子の外側の領域とを有する変異型Hタンパク質を規定する遺伝子を作製した。
図3は、AIK−CのHタンパク質のウイルス粒子の内側の領域及びエンベロープ膜貫通領域と、RSV Gタンパク質のウイルス粒子の外側の領域とを結合する手順を示す。AIK−Cの全長ゲノムのcDNA(配列番号27)が組み込まれた、非特許文献18で作製したプラスミドpMVAIKをSalIで制限酵素処理し、セルフライゲーションさせたプラスミドを鋳型として用いて、プライマーMV TM RSG−(5’- TGTGACTTTGTGAATGCCTGCAAT -3’ (配列番号15)とプライマーMV3071+(5’- TGACAAATGGACGGACCAGT-3’ (配列番号16))を用いてPCRによってターゲット配列を増幅した。得られたフラグメントをフラグメントAとした。フラグメントAは、AIK−C Hタンパク質の、エンベロープ膜貫通領域をコードする塩基配列からSal I制限酵素切断部位を含む塩基配列(配列番号17)である。
AIK−Cの全長ゲノムのcDNA(配列番号27)が組み込まれた、非特許文献18で作製したプラスミドをSalIで制限酵素処理し、セルフライゲーションさせたプラスミドを鋳型として用いて、プライマーRSV G stop +(5’- AACGAGTAGTGAGGCTGCTAGTGA -3’ (配列番号18))と、プライマーMV9175−(5’- ATTAACTAGTGGGTATGCCTGATG -3’ (配列番号19))を用いて、PCRによってターゲット配列を増幅した。得られたフラグメントをフラグメントBとした。フラグメントBは、AIK−C HAタンパク質の、終始コドン及びSpe I制限酵素切断部位を含む塩基配列(配列番号20)である。
RSV Gタンパク質の全長をコードする塩基配列(配列番号29)が組み込まれた、先行文献18に記載のプラスミド(pMVAIK/RSV/G)を鋳型として用いて、RSVのGタンパク質の領域は、プライマーMV TM RSG +(5’- ATTGCAGGCATTCACAAAGTCACA -3’ (配列番号21))及びプライマーRSV G stop −(5’- TCACTAGCAGCCTCACTACTCGTT -3’(配列番号22)を用いて、PCRによってターゲット配列を増幅した。得られたフラグメントをフラグメントCとした。フラグメントCは、RSV Gタンパク質のウイルス粒子の外側に位置する領域をコードする塩基配列(配列番号23)である。
次に、フラグメントA、B及びCを混合してライゲーションし、得られた構築物の塩基配列を確認した。Sal I制限酵素切断部位を5’末端に、Spe I制限酵素切断部位を3’末端に含み、両制限酵素切断部位の間に、AIK−C HAタンパク質のウイルス粒子の内側に位置する領域と、AIK−C HAタンパク質のエンベロープ膜貫通領域と、RSV Gタンパク質のウイルス粒子の外側に位置する領域と、を含む、変異型Hタンパク質を規定する遺伝子が含まれるポリヌクレオチドが得られた(配列番号24)。
そして、得られた変異型Hタンパク質を規定する遺伝子が含まれるポリヌクレオチドを、AIK−Cの全長ゲノムのcDNA(配列番号27)が組み込まれた、非特許文献18で作製したプラスミド(pMVAIK)をSalIで制限酵素処理し、セルフライゲーションさせたプラスミドに挿入した。大腸菌への形質転換後、2YT寒天プレート培地にて37℃で一晩培養した。翌日、生えたコロニーから数クローンを選んで2YT培地にて培養後、プラスミドの抽出を行った。
図4には、この遺伝子のAIK−C Hタンパク質のウイルス粒子の内側に位置する領域と、AIK−C Hタンパク質のエンベロープ膜貫通領域と、RSV Gタンパク質のウイルス粒子の外側に位置する領域と、をコードする領域の塩基配列を示す。小文字で示す塩基はAIK−C Hタンパク質の、エンベロープ膜貫通領域とウイルス粒子の内側の領域、大文字で示す塩基はRSV Gタンパク質のウイルス粒子の外側の領域をコードする部分の塩基である。ウイルス粒子の内側の領域を規定する領域は1位から174位の領域であり、ウイルス粒子の外側の領域と膜貫通領域を規定する領域は175位から876位の領域である。
[実施例3]GFP遺伝子を組み込んだ、組換えウイルス全長遺伝子の作成
実施例3では、GFP遺伝子を組み込んだ、組換えウイルス全長遺伝子を作製した。作製手順を図5に示す。
まず、非特許文献18に記載の、P/C/V遺伝子、GFP、Mタンパク質、Fタンパク質、Hタンパク質の入ったプラスミド(pMVAIK/20-77)を以下のように作製した。
AIK−Cの全長ゲノムのcDNA(配列番号27)をSac II(2040位)、EcoT22I(7761位)で切断しpBluescript SK-のmulti-cloning situe(SacII, Pst I)に挿入しpMVAIK/20-77を作成した。麻疹ウイルスAIK−CのP/M junction のgenome position3433位のCの前にggcgcgを挿入しAscI部位を導入しatgの上流にR1配列GGCGCGCCGGTCGCCACCatgg(配列番号34)(ccatggはNcoI siteで、この中のATGを開始コドンとして用いる)、終止コドンの下流にNot I配列(GCGGCCGC) 及びAscI(GGCGCGCC)を含むR2配列(TAGCGGCCGCACCCTCCATCATTGTTATAAAAAACTTAGGAACCAGGTCCACACAGCGGCGCGCC(配列番号35))を付加した。GFP(緑色蛍光タンパク質)遺伝子はNcoI NotI部位を使って挿入した。(図5)
そして、このプラスミドと、実施例1で得た、変異型Fタンパク質が挿入されたプラスミドを、制限酵素Nar Iと制限酵素Pac Iで処理し、回収した変異型Fタンパク質の遺伝子を含む断片を、塩基配列(MVAIK/20-77)のNar I制限酵素切断部位とPac I制限酵素切断部位との間に挿入し、塩基配列(MVAIK/20-77/F chimera)を有するプラスミドを作製した。
塩基配列(MVAIK/20-77/F chimera)を有するプラスミドと、実施例2で得た、変異型Hタンパク質が挿入されたプラスミドを、制限酵素Sac II及び制限酵素Pac Iで処理した。回収した変異型Hタンパク質の遺伝子を含む断片を、塩基配列(MVAIK/20-77/F chimera)のSac II制限酵素切断部位とPac I制限酵素切断部位との間に挿入し、塩基配列(MVAIK/RSV FG GFP chimera)を有するプラスミドを作製した。塩基配列(MVAIK/RSV FG GFP chimera)は、GFP遺伝子を有する組換えAIK−Cのゲノム全長配列である。
[実施例4]組換えAIK−Cのウイルス粒子の回収
実施例4では、実施例3で作製した組換えAIK-Cのゲノムを用いて、組換えAIK−Cのウイルス粒子の回収を行った。
塩基配列(MVAIK/RSV FG GFP chimera)はP/M junctionにGFP遺伝子が挿入されており制限酵素Asc Iで処理後、セルフライゲーションさせることでGFPを欠失した塩基配列(MVAIK/RSV FG chimera)を得た。感染性ウイルスを回収するために必要なAIK−CのN,P,Lタンパク質発現プラスミド(pAIK−N,pAIK−P,pAIK−L)(非特許文献12、13、18、19)を使用した。これらのプラスミドでは、pAIK−N,pAIK−P,pAIK−LがT7 RNA promoterの下流に挿入してある。
T7 RNA polymeraseを発現させる組換えワクシニアウイルスを293T細胞に感染させた。pAIK−N,pAIK−P,pAIK−Lのヘルパープラスミドと共に組換えAIK−Cのゲノム全長が挿入されたプラスミドを、TransIT−LT1 Reagent(Mirus Bio Corporation, US))と共に混和し、ワクシニアウイルスを感染させた293T細胞へのトランスフェクションを行った。混和後3時間後に上清を捨てて、5%胎児血清を含んだMEM培養液を加えた。
細胞にワクシニアウイルスが感染すると、細胞内でT7 RNA polymeraseが発現してヘルパープラスミドのT7 プロモーターに結合し、麻疹ウイルスのNタンパク質,Pタンパク質,及びLタンパク質を発現させる。実施例3で作製した組換えAIK-Cのゲノムを含むプラスミドにT7 RNA polymerase、N−P−L複合体が結合し、ウイルスゲノム複製が始まる。
培養3日後に293T細胞を剥離した。新鮮Vero細胞と混合培養を行い、3日毎に培地交換を行った。AIK−Cに特異的な細胞変性効果の有るものを回収し、組換えウイルス(F/F H/G MV P/M GFP)を得た(図6)。
図7は、得られた組換えAIK−Cを模式的に説明する図である。図7の上部には、上から、変異型Fタンパク質の模式図、変異型Hタンパク質の模式図、及び、組換えAIK−Cのゲノムを含むプラスミドの模式図が記載されている。変異型Fタンパク質は、N末端側にRS/Nao/1998株のFタンパク質のウイルス粒子の外側の領域を有し、C末端側にAIK-Cの膜貫通領域からFタンパク質のウイルス粒子の内側の領域を有している。変異型Hタンパク質は、N末端側にAIK-CのHタンパク質のウイルス粒子の内側から膜貫通領域の領域を有し、C末端側にRS/Ohta/1998株のGタンパク質のウイルス粒子の外側の領域を有している。組換えAIK−Cのゲノムは、AIK−CのNタンパク質、Pタンパク質、Vタンパク質、Cタンパク質、Mタンパク質及びLタンパク質の遺伝子と、変異型Fタンパク質及び変異型Hタンパク質の遺伝子と、GFPタンパク質の遺伝子と、を有する。図7中、下部左図は、AIK−Cのウイルス粒子断面図及びAIK−Cのエンベロープの模式図であり、下部右図は、組換えAIK−Cのウイルス粒子断面図及び組換えAIK−Cのエンベロープの模式図である。AIK−Cのエンベロープでは、Fタンパク質及びHタンパク質がMタンパク質にウイルス粒子の内側で結合している。組換えAIK−Cの変異型Fタンパク質及びHタンパク質は、AIK−CのFタンパク質及びHタンパク質のウイルス粒子の内側の領域を有している。このため、組換えAIK−Cも、変異型Fタンパク質及びHタンパク質がMタンパク質に結合する。
[実施例5]組換えAIK−C(F/F H/G MV P/M GFP)の性状および増殖性の検討
実施例5では、組換えAIK−Cの性状及び増殖性を、MVAIK及びRSV−Longと比較した。
麻疹ウイルスは、Vero細胞及びリンパ球系細胞のいずれの細胞にも感染し増殖することが知れられている。一方、RSVは、Vero細胞やヒト気道上皮細胞のA549細胞には感染するが、リンパ球系の細胞には感染しないことが知られている。
Vero細胞、A549細胞を、24穴プレートに培養し、実施例4で回収した組換えAIK−C(F/F H/G MV P/M GFP)、麻疹ワクチンAIK−C、及び、RSVであるRSV−Longを感染させ、1,3,5,7日後の培養上清を採取しTCID50法により細胞への感染価を測定した。即ち、サンプル液を10倍段階希釈し、各希釈液の一定量と、細胞の一定数を、96穴の細胞培養プレートで培養し、50%細胞感染を示すウイルス希釈倍数の逆数をTCID50値とした。Vero細胞についての結果を図8の左図に示し、A549細胞についての結果を図8の右図に示す。図8の横軸は培養後の日数を表し、縦軸はTCID50法によるウイルス感染価の測定値に基づく値を表す。
麻疹ウイルスMVAIKは、Vero細胞にはRSV−Longと同様に感染し、培養5日後に増殖ピークが認められた。組換えAIK−Cは、麻疹ウイルスMVAIK及びRSV−Longよりも早期に増殖が認められた。
A549細胞に対する感染価については、麻疹ウイルスMVAIKは増殖しなかった。RSV−Longは培養5日後に増殖のピークが認められた。組換えAIK−C(F/F H/G MV P/M GFP)も感染が認められ、増殖パターンはRSV−Longと同様であった。
次に、B95a細胞(マーモセットのBリンパ球をEBVでトランスフォーメーションした株化細胞)、Jurkat細胞(ヒトリンパ腫細胞)、U937細胞(ヒト単球株化細胞)に対するMVAIK及び組換えAIK−C(F/F H/G MV P/M GFP)の感染価を調べた。リンパ球系細胞には麻疹ウイルスは感染するが、RSVは感染しないことが知られている。
B95a細胞、Jurkat細胞、U937細胞を24穴プレートに培養し各ウイルスを接種し1,3,5,7日後の培養上清を採取し上記と同様に感染価を測定した。結果を図9に示す。図9の右図はMVAIKについての結果を示し、左図は、組換えAIK−C及びRSV−Longについての結果を示す。各図の横軸は培養後の日数を表し、縦軸はTCID50法によるウイルス感染価の測定値に基づく値を表す。
MVAIKは、B95a細胞,Jurkat細胞ではよく増殖しているがU937細胞では5日後に増殖が認められたが7日後には減少した。一方、RSV−Long及び組換えAIK−Cは、いずれの細胞に対しても感染せずウイルス増殖は認められなかった。
[実施例6]上皮細胞系に対する細胞変性効果
実施例6では、組換えAIK−Cの上皮細胞系に対する細胞変性効果を、MVAIK及びRSV−Longと比較した。
A549細胞及びVero細胞に感染させ、その細胞変性効果を観察した。細胞の顕微鏡撮影画像を図10に示す。RSV−Longを感染させたA549細胞及びVero細胞には細胞変性効果が観察され、RSV−LongはA549細胞及びVero細胞のいずれに対しても細胞融合効果が認められた。一方、MVAIKはVero細胞に細胞融合を示し巨細胞を形成したが、A549細胞に対する細胞変性効果は顕著ではなかった。組換えAIK−C(F/F H/G MV P/M GFP)は、RSV−Longと同様に、A549細胞及びVero細胞に感染し細胞変性効果を示した。
[実施例7]リンパ球系細胞に対する細胞変性効果
実施例7では、組換えAIK−Cのリンパ球系細胞に対する細胞変性効果を調べた。
リンパ球系細胞である、B95a細胞,Jurkat細胞,U937細胞に対する、組換えAIK−C(F/F H/G MV P/M GFP)の細胞変性効果を検討した。細胞の顕微鏡撮影画像を図11に示す。B95a細胞,Jurkat細胞、又はU937細胞にMVAIKを感染させた場合、細胞融合が生じ、巨細胞が認められた。一方、RSV−Long及び組換えAIK−Cについては、どのリンパ球系細胞においても細胞変性効果が観察されなかった(図11)。
[実施例8]A549細胞感染時に発現するタンパク質の解析
実施例8では、組換えAIK−C(F/F H/G MV P/M GFP)がA549細胞に感染した場合に発現するタンパク質を解析した。
まず、組換えAIK−C(F/F H/G MV P/M GFP)をA549細胞に感染させた。そして、RSVのGタンパク質に対するモノクローナル抗体(HyTest;3ReS21)、RSVのFタンパク質に対するモノクローナル抗体(abcam;ab43812)、麻疹ウイルスのNタンパク質に対するモノクローナル抗体(Novus Biologicals;NB100−1856)、及び麻疹ウイルスのHタンパク質に対するモノクローナル抗体(国立感染症研究所 ウイルス3部 佐藤先生から分与)を使用した。また、抗RSVポリクローナル抗体(abcam;ab20745)を用いた。各一次抗体を反応させて洗浄した後、二次抗体(Alexa Fluor(R) 488 Goat Anti-Mouse IgG (H+L) Antibody; Molecular Probes)を反応させた。GFPの発現は、細胞を固定せずに観察した。
蛍光顕微鏡で撮影した画像を図12に示す。Nタンパク質は二次抗体にローダミンでラベルした二次抗体(Alexa Fluor(R) 568 Goat Anti-Rabbit IgG (H+L) Antibody;Molecular Probes)を用いた。抗RSVポリクローナル抗体にはCF488A Donkey Anti-Goat IgG (H+L)を用いた。GFPと麻疹ウイルスのNタンパク質は同じレベルで発現していた。また、RSV−LongのGタンパク質及びFタンパク質のウイルス粒子の外側の領域が発現していた。そして、AIK−CのHタンパク質に由来する領域は、組換えAIK−Cのウイルス粒子の外側に存在しなかった。
麻疹ウイルスはゲノムオーダーで発現量が少なくなることが知られておりNタンパク質発現量が多く、ついでP/M junctionに挿入されたGFP、次いでFタンパク質及び、Gタンパク質の順に発現量は減少する。組換えAIK−Cのタンパク質は、麻疹ウイルスの構成タンパク質の転写・翻訳の原則通りに発現していることが確認された。
(結果)
以上より、本発明の組換え麻疹ウイルスは、ウイルス粒子の外側にパラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスのエンベロープ貫通型タンパク質のウイルス粒子の外側の領域を発現していれば、そのパラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスと同様の細胞親和性を示し、麻疹ウイルスと同様の特徴を持って増殖することがわかった。
本発明は、パラミクソウイルス科のウイルスによる感染症の予防及び治療に有用である。また、パラミクソウイルス科のウイルスによる感染症の治療用薬の開発にも有用である。

Claims (16)

  1. エンベロープ貫通型タンパク質である変異型Fタンパク質と、
    エンベロープ貫通型タンパク質である変異型Hタンパク質と、
    を有する組換え麻疹ウイルスであって、
    前記変異型Fタンパク質は、
    ウイルス粒子の外側に、パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスのFタンパク質の、ウイルス粒子の外側のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列であって、かつ、前記パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスのFタンパク質が有する、特定の細胞に対する細胞融合活性を、前記組換え麻疹ウイルスの変異型Fタンパク質に付与する、アミノ酸配列の領域を有し、
    ウイルス粒子の内側に、麻疹ウイルスのFタンパク質の、ウイルス粒子の内側のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列であって、かつ、麻疹ウイルスのMタンパク質と結合可能なアミノ酸配列の領域を有し、
    前記変異型Hタンパク質は、
    ウイルス粒子の外側に、前記パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスの、HNタンパク質、Hタンパク質又はGタンパク質の、ウイルス粒子の外側のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列であって、かつ、前記パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスの、HNタンパク質、Hタンパク質又はGタンパク質が有する、特定の細胞に対する細胞吸着活性を、前記組換え麻疹ウイルスの変異型Hタンパク質に付与する、アミノ酸配列の領域を有し、
    ウイルス粒子の内側に、麻疹ウイルスのHタンパク質の、ウイルス粒子の内側のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列であって、かつ、麻疹ウイルスのMタンパク質と結合可能なアミノ酸配列の領域を有する、
    組換え麻疹ウイルス。
  2. AIK−Cの組換え麻疹ウイルスである、請求項1に記載の組換え麻疹ウイルス。
  3. 前記パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスが、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)である、請求項1又は2に記載の組換え麻疹ウイルス。
  4. 前記変異型Fタンパク質は、ウイルス粒子の外側に、RSVのFタンパク質のウイルス粒子の外側のアミノ酸配列、または、RSVのFタンパク質のウイルス粒子の外側のアミノ酸配列のうち1個若しくは数個のアミノ酸残基が置換されてなるアミノ酸配列であって、かつ、ヒト気道上皮細胞に対する細胞融合活性を組換え麻疹ウイルスの前記変異型Fタンパク質に付与するアミノ酸配列の領域を有する、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の組換え麻疹ウイルス。
  5. 前記変異型Fタンパク質は、ウイルス粒子の外側に、配列番号4に記載のアミノ酸配列の第1位〜第524位の領域のアミノ酸配列、または、配列番号4に記載のアミノ酸配列の第1位〜第524位の領域のアミノ酸配列のうち1個若しくは数個のアミノ酸残基が置換されてなるアミノ酸配列を有する、請求項4に記載の組換え麻疹ウイルス。
  6. 前記変異型Fタンパク質のアミノ酸配列が、配列番号25に記載のアミノ酸配列、または、配列番号25に記載のアミノ酸配列のうち1個若しくは数個のアミノ酸残基が置換されてなるアミノ酸配列である、請求項5に記載の組換え麻疹ウイルス。
  7. 前記変異型Hタンパク質は、ウイルス粒子の外側に、RSVのGタンパク質のウイルス粒子の外側のアミノ酸配列、または、RSVのGタンパク質のウイルス粒子の外側のアミノ酸配列のうち1個若しくは数個のアミノ酸残基が置換されてなるアミノ酸配列であって、かつ、ヒト気道上皮細胞に対する細胞吸着活性を前記変異型Hタンパク質に付与するアミノ酸配列の領域を有する、
    請求項1〜6のいずれか1項に記載の組換え麻疹ウイルス。
  8. 前記変異型Hタンパク質は、ウイルス粒子の外側に、配列番号2に記載のアミノ酸配列の第67位〜第298位の領域のアミノ酸配列、または、配列番号2に記載のアミノ酸配列の第67位〜第298位の領域のアミノ酸配列のうち1個若しくは数個のアミノ酸残基が置換されてなるアミノ酸配列を有する、請求項7に記載の組換え麻疹ウイルス。
  9. 前記変異型Hタンパク質のアミノ酸配列が、配列番号26に記載のアミノ酸配列、または、配列番号26に記載のアミノ酸配列のうち1個若しくは数個のアミノ酸残基が置換されてなるアミノ酸配列である、請求項8に記載の組換え麻疹ウイルス。
  10. 請求項1〜9に記載の組換え麻疹ウイルスのゲノムである、組換え麻疹ウイルスのゲノムRNA。
  11. 蛍光タンパク質を規定する領域を有する、請求項10に記載の組換え麻疹ウイルスのゲノムRNA。
  12. 請求項10又は11に記載の組換え麻疹ウイルスのゲノムRNAから調製された、組換え麻疹ウイルスのゲノムをコードするDNA。
  13. 配列番号5に記載の塩基配列、または、配列番号5に記載の塩基配列と90%以上の塩基配列相同性を有する塩基配列からなる、組換え麻疹ウイルスのゲノムをコードするDNA。
  14. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の組換え麻疹ウイルスを有効成分として含む、パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスによる感染症のワクチン。
  15. 被験物質の存在下で、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組換え麻疹ウイルスを細胞と培養する第一工程と、
    前記第一工程の前記組換え麻疹ウイルスの前記細胞に対する感染レベルを測定する第二工程と、
    前記第二工程において測定した感染レベルを、前記被験物質の非存在下で細胞と培養した組換え麻疹ウイルスの感染レベルと比較し、前記被験物質の存在下で細胞と培養した前記組換え麻疹ウイルスの感染レベルが、前記被験物質の非存在下で細胞と培養した組換え麻疹ウイルスの感染レベルよりも小さい場合は、前記被験物質を選択する第三工程と、
    を有する、パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスによる感染症の治療用薬のスクリーニング方法。
  16. 前記組換え麻疹ウイルスは蛍光タンパク質を規定する遺伝子を有し、
    前記組換え麻疹ウイルスの感染レベルを蛍光タンパク質の蛍光強度で測定する、
    請求項15に記載のパラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスによる感染症の治療用薬のスクリーニング方法。
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