以下、図面を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明が図示されるものに限られないことは勿論である。
図1は本発明の栓開閉工具の一例を示す正面図であり、図2はその側面図、図3はその平面図である。図1〜図3において、20は本発明の栓開閉工具であり、栓開閉工具20は回転力受部21と回転力出力部22とから構成されている。回転力受部21と回転力出力部22とは、同じ材料で構成された単一の部材であっても良いし、それぞれが同じ又は異なる材料で構成された別体の部材が結合されたものであっても良い。
回転力受部21は六角ボルトの頭部分が長く伸びた形状の六角柱であり、回転力出力部22は一枚の平板状部材から構成されている。回転力受部21が六角柱である場合には、汎用されているラチェットレンチやスパナ等の回転力伝達工具によって回転力受部21に回転力を加えることができるので便利である。ただし、回転力受部21の形状は六角柱に限られるものではなく、三角柱や四角柱等、使用する回転力伝達工具と係合することが可能な形状の多角形柱状であればどのようなものであっても良い。
Xは回転軸であり、図1の上下方向を鉛直方向とした場合、図2、図3に示すとおり六角柱である回転力受部21の水平断面中心をとおり、平板状の回転力出力部22の幅方向中心及び厚さ方向中心をとおって、回転力受部21及び回転力出力部22を鉛直方向に貫いている。換言すれば、六角柱である回転力受部21は、回転軸Xと同心であり、回転力出力部22とは反対側に突出していることになる。
回転力出力部22は、回転軸Xの回転力受部21とは反対側、すなわち、回転軸Xの軸方向先端部に、小栓回転用突出片23と一対の大栓回転用突出片24、24を有している。小栓回転用突出片23は、図1に示すとおり、回転軸Xを含み、回転力出力部22の軸方向先端部の中央に位置している。一対の大栓回転用突出片24、24は、小栓回転用突出片23を挟んでその両側に、小栓回転用突出片23との間に間隙Rをあけて配置されている。r1は間隙Rの幅であり、r2は間隙Rの高さ(深さ)である。
図1〜図3に示す例においては、一対の大栓回転用突出片24、24と小栓回転用突出片23とは直線状に配置されており、一対の大栓回転用突出片24、24は、回転軸Xの回りの回転の円周方向に互いに180度離れた位置にある。大栓の被係合部材と係合して効率良く大栓を回転させる上では、一対の大栓回転用突出片24、24は、回転軸Xの回りの回転の円周方向に互いに180度離れた位置にあるのが好ましい。
なお、図1に示すとおり、回転軸Xは小栓回転用突出片23の幅方向中心(図1中左右方向中心)を通っており、一対の大栓回転用突出片24、24は同形、同大で、回転軸Xからの距離も同じである。したがって、本例においては、小栓回転用突出片23及び一対の大栓回転用突出片24、24から構成される回転力出力部22の三つ叉状の先端部は、間隙Rを含めて、回転軸Xを挟んで左右対称であり、また左右対称であるのが好ましいが、栓開閉工具としての機能が保たれる限り、左右非対称であっても良い。
また、図1に示すとおり、一対の大栓回転用突出片24、24の回転軸X方向先端面24a、24aは、回転軸Xと直交する同一平面P上にある。一対の大栓回転用突出片24、24の回転軸X方向先端面24a、24aが同一平面P上にある場合には、後述するように、一対の大栓回転用突出片24、24を大栓の胴部内に挿入したときに、各大栓回転用突出片24、24の先端面24a、24aを均等に大栓の底面に密着させることができるので有利である。これにより、一対の大栓回転用突出片24、24の各々を大栓の被係合部に確実にかつ安定的に係合させて回転モーメントをより確実に大栓に伝達することが可能となる。なお、本例においては、小栓回転用突出片23の回転軸方向先端面23aも、一対の大栓回転用突出片24、24の先端面24a、24aと同一平面P上にあるが、小栓回転用突出片23の先端面23aは平面P上になくても良い。
回転力受部21に外力が加えられ、回転力受部21とともに回転力出力部22が回転軸Xの回りに回転すると、小栓回転用突出片23及び一対の大栓回転用突出片24、24も回転軸Xの回りに回転する。このとき、小栓回転用突出片23と一対の大栓回転用突出片24、24との間には間隙Rが存在するので、小栓回転用突出片23と一対の大栓回転用突出片24、24との間には、回転中においても、幅r1で、高さ(深さ)r2の円環状の空間が確保される。後述するとおり、この円環状の空間内に、ドラム缶等の天板から立ち上がる小口金の筒部や小栓の胴部を収容することができる。換言すれば、間隙Rは栓開閉工具20が回転軸Xの周りに回転したときに、小栓回転用突出片23の回転軌跡と一対の大栓回転用突出片24、24の回転軌跡の間に残される間隙に相当する。
間隙Rの幅r1は、ドラム缶などの天板から立ち上がる小栓の胴部や小口金部分を合わせた円環状部分を間隙R内に収容できる大きさであれば良い。また、間隙Rの高さ(深さ)r2は、小栓の被係合部材と係合させることができる程度に小栓回転用突出片23を小栓内に挿入することができる限り、いくらであっても良いが、小栓回転用突出片23を小栓内に挿入して、小栓の被係合部材と係合させたときに、図1にRuで示す間隙Rの上端がドラム缶などの天板から立ち上がる小栓の胴部や小口金部分を合わせた円環状部分と接触しない高さ(深さ)とするのが望ましい。
なお、図1に示す例では、間隙Rの形状は正四角形であり、r1=r2で幅r1は間隙Rの下端から上端まで均一であるが、間隙Rの形状は、正四角形に限られず、長方形、半円状、半長円状、台形などの他の形状であっても良く、幅r1は必ずしも間隙Rの下端から上端まで均一でなくても良い。但し、幅r1が不均一である場合には、間隙R内にドラム缶などの天板から立ち上がる小栓の胴部や小口金部分を合わせた円環状部分を収容することができる高さ(深さ)が間隙Rの高さ(深さ)r2ということになる。
また、図1〜図3に示す栓開閉工具においては、回転力出力部22が一枚の平板状部材から形成されているので、小栓回転用突出片23及び一対の大栓回転用突出片24、24の回転軸Xと直交する水平面での断面形状は、いずれも四角形である。しかし、小栓回転用突出片23を小栓の被係合部材に係合させることができる限り、小栓回転用突出片23の水平断面形状は四角形には限られず、六角形、楕円形あるいは長円形であってもよい。また、一対の大栓回転用突出片24、24についても、大栓の被係合部材に係合させることができる限り、その水平断面形状は四角形には限られず、三角形、五角形、六角形、円形、楕円形、長円形又は半円形であってもよい。
なお、本明細書において、四角形や六角形等の各形状には、実質的にその形状と同等と見なすことができる形状も含まれる。例えば、本明細書において四角形には、4つの辺のいずれか1つ以上が曲線を含む線である形状や、4つの角のいずれか1つ以上が面取りされていたり丸みを帯びている形状も含まれる。
次に、図1〜図3に示す栓開閉工具を用いて小栓13を着脱、開閉する場合の動作を図4、図5を参照しながら説明する。図4は栓開閉工具20の小栓回転用突出片23を小口金12aに取り付けられている小栓13の胴部13b内且つ一対の被係合部材13d、13d間に挿入した状態の部分断面正面図、図5は図4におけるI−I矢視の部分断面平面図である。
図4、図5に示すように、小栓用回転部材23と一対の大栓用回転部材24、24との間には間隙Rが存在するので、小栓用回転部材23を小栓13の胴部13b内に挿入する際、小栓の胴部13b及び小口金12aを一対の間隙R、R内に収容することができる。換言すれば、間隙Rの幅r1は、互いに螺合しているときの小栓の胴部13b及び小口金12aを合わせた厚さsよりも大きく設定されている。また、間隙Rの高さ(深さ)r2は、小栓回転用突出片23の先端面23aが到達できる小栓13の最深面から上方に立ち上がる小栓13の胴部13bの高さよりも高く設定されており、小栓回転用突出片23を小栓13内に挿入して、その先端面23aを小栓13の最深面と接触させた状態で、互いに螺合している小栓の胴部13b及び小口金12aが間隙Rの上端Ruと接触しない。よって、小栓回転用突出片23の両側に一対の大栓回転用突出片24、24が位置していても、何らの支障なく、小栓回転用突出片23を小栓13内に挿入して、一対の被係合部材13d、13dと係合させることができる。
斯かる状態で、ラチェットレンチやスパナ等の図示しない回転力伝達工具を栓開閉工具20の回転力受部21と係合させて、反時計回りの回転力を回転力受部21に加えると、回転力受部21は回転し、それとともに回転力出力部22は回転軸Xの回りに反時計回りに回転する。その結果、図5に示すように、小栓回転用突出片23も図中矢印で示す反時計回りに回転して小栓13の被係合部材13d、13dと当接するので、小栓13には反時計回りの回転モーメントが加わり、小栓13は反時計回りに回転して小栓13と小口金12aとの間の螺着が緩み、小栓13を取り外すことができる。
逆に、小口金12aに小栓13を取り付ける場合には、小栓回転用突出片23を小栓13の胴部13b内に挿入するとともに一対の被係合部材13d、13dと係合させる。この状態で、図示しない適宜の回転力伝達工具を用いて、回転力受部21に時計回りの回転力を加えると、小栓回転用突出片23は回転軸Xの回りに時計回りに回転し、一対の被係合部材13d、13dを介して小栓13に時計回りの回転モーメントを加える。その結果、小栓13は時計回りに回転して、小口金12aにねじ込まれ取り付けられる。
次に、図1〜図3に示す栓開閉工具を用いて大栓14を着脱、開閉する場合の動作を図6、図7を参照しながら説明する。図6は栓開閉工具20の一対の大栓回転用突出片24、24を大口金12bに取り付けられている大栓14の胴部14b内に挿入し且つ一対の被係合部材14d、14dに係合させた状態の部分断面正面図、図7は図6におけるII−II矢視の部分断面平面図である。
一対の大栓回転用突出片24、24は回転軸Xの回りの回転の円周方向に互いに180度離れた位置にあるので、互いに180度離れた位置にある一対の被係合部材14d、14dと一対一の対応で係合、当接することができる。また、一対の大栓回転用突出片24、24及び小栓回転用突出片23の回転軸X方向先端面24a、24a、及び23aは、回転軸Xと直交する同一平面P(図1参照)上にあるので、各突出片の先端面を均等に大栓14の底部14aに密着させ、一対の大栓回転用突出片24、24を安定した状態で確実に被係合部材14d、14dと係合させることができる。
斯かる状態で、ラチェットレンチやスパナ等の図示しない回転力伝達工具を栓開閉工具20の回転力受部21と係合させて、反時計回りの回転力を回転力受部21に加えると、回転力受部21は回転し、それとともに回転力出力部22は回転軸Xの回りに反時計回りに回転する。その結果、図7に示すように、大栓回転用突出片24、24も図中矢印で示す反時計回りに回転して大栓14の被係合部材14d、14dと当接するので、大栓14には反時計回りの回転モーメントが加わり、大栓14は反時計回りに回転して大栓14と小口金12bとの間の螺着が緩み、大栓14を取り外すことができる。
逆に、大口金12bに大栓14を取り付ける場合には、一対の大栓回転用突出片24、24を大栓14の胴部14b内に挿入するとともに一対の被係合部材14d、14dと係合させる。この状態で、図示しない適宜の回転力伝達工具を用いて、回転力受部21に時計回りの回転力を加えると、一対の大栓回転用突出片24、24は回転軸Xの回りに時計回りに回転し、一対の被係合部材14d、14dを介して大栓14に時計回りの回転モーメントを加える。その結果、大栓14は時計回りに回転して、大口金12bにねじ込まれ取り付けられる。
このように、本発明の栓開閉工具20を用いれば、小栓又は大栓を着脱した後に大栓又は小栓を着脱する際、栓開閉工具を反転させたり栓開閉工具を構成する部材をスライド移動させたりすることなく、単に、本発明の栓開閉工具を小栓13の上部又は大栓14の上部に移動させて、小栓13又は大栓14内に挿入、回転させるだけで良く、迅速かつ効率的に大栓及び小栓の開閉作業を行うことができる。
図8は本発明の栓開閉工具の他の例を示す正面図、図9はその側面図、図10はその平面図である。これまでと同じ部材には同じ符号を付してある。
図8〜図10に示す例は、回転力出力部22が、回転軸Xの軸方向先端部に、小栓用回転突出片23を挟んでその両側に第2の大栓回転用突出片25、25を有している点で、先に説明した例とは異なっている。また、図10に示すとおり、一対の第2の大栓回転用突出片25、25は、一対の大栓回転用突出片24、24と回転軸Xを回転中心とする回転の円周方向に90度ずれた位置にある。なお、先に述べた一対の大栓回転用突出片24、24と同様に一対の第2の大栓回転用突出片25、25も互いに同形、同大であり、回転軸Xを挟んで左右対称である。
図9に示すとおり、一対の第2の大栓回転用突出片25、25と中央の小栓回転用突出片23との間には間隙Qが存在するが、この間隙Qの大きさは、小栓回転用突出片23及び一対の大栓回転用突出片25、25が回転軸Xの回りに回転したときに、小栓回転用突出片23の回転軌跡と一対の第2の大栓回転用突出片25、25の回転軌跡との間に、先に述べた間隙Rと同様の間隙Tが残されるような大きさに選ばれる。すなわち、図9において、小栓回転用突出片23の回転軌跡に相当するものとして、回転軸Xの回りに90度回転した状態の小栓回転用突出片23を破線dで示してあるが、この90度回転した状態の小栓回転用突出片23と、その両側に位置する一対の第2の大栓回転用突出片25、25との間には間隙Tが残されている。この間隙Tは、栓開閉工具20が回転軸Xの回りに回転したときに、小栓回転用突出片23の回転軌跡と一対の第2の大栓回転用突出片25、25の回転軌跡との間に残される間隙に相当し、先に図1〜図3に示す例において説明した間隙Rと同様に、小栓回転用突出片23を小栓13内に挿入して、被係合部材13d、13dと係合させたときに、ドラム缶等の天板から立ち上がる小口金の筒部や小栓の胴部を収容するための間隙である。したがって、間隙T及びその幅t1、高さ(深さ)t2については、先に間隙R及びその幅r1、高さ(深さ)r2について述べたと同様のことが当てはまる。
一対の第2の大栓回転用突出片25、25を、一対の第1の大栓回転用突出片24、24と90度ずれた位置に配置する場合であっても、小栓回転用突出片23と一対の第2の大栓回転用突出片25、25との間に上記のような間隙Q、つまりは間隙Tが存在するので、栓開閉工具を回転軸Xの回りに回転させたとき、小栓回転用突出片23と一対の大栓回転用突出片24、24との間に確保される幅r1、高さ(深さ)r2の円環状の空間とほぼ同様の、幅t1、高さ(深さ)t2の円環状の空間が、小栓回転用突出片23と一対の第2の大栓回転用突出片25、25との間にも確保される。そして、この円環状の空間内に、ドラム缶等の天板から立ち上がる小口金の筒部や小栓の胴部を収容することができるので、小栓回転用突出片23の両側に一対の大栓回転用突出片24、24に加えて一対の第2の大栓回転用突出片25、25が位置していても、何らの支障なく、小栓回転用突出片23を小栓13内に挿入して一対の被係合部材13d、13dと係合させることができる。なお、r1とt1、r2とt2は同じであっても異なっていても良い。
また、図8に示すように、一対の大栓回転用突出片24、24の先端面24a、24a及び一対の第2の大栓回転用突出片25、25の先端面25a、25aは、回転軸Xと直交する同一平面P上にある。このように本例の栓開閉工具20においては、一対の大栓回転用突出片24、24の先端面24a、24aに加えて一対の第2の大栓回転用突出片25、25の先端面25a、25aが回転軸Xと直交する同一平面P上にあるので、本例の栓開閉工具20は大栓14の底部14a上及び天板12上、さらには他の平面上で自立することができ、極めて座りが良く、取り扱いが容易であるという優れた利点を備えている。加えて、本例の栓開閉工具においては、一対の大栓回転用突出片24、24と一対の第2の大栓回転用突出片25、25とが回転軸Xを中心として90度間隔で放射状に広がっているので、その座りの良さ、安定した自立性は格別である。
なお、本例の栓開閉工具においては、小栓回転用突出片23の先端面23aも、一対の大栓回転用突出片24、24の先端面24a、24a及び一対の第2の大栓回転用突出片25、25の先端面25a、25aと同一平面P上にあるが、小栓回転用突出片23を小栓13の被係合部材13d、13dに係合させることができ、一対の大栓回転用突出片24、24又は一対の第2の大栓回転用突出片25、25を大栓14の被係合部材14d、14dに係合させることができる限り、小栓回転用突出片23の先端面23aは、一対の大栓回転用突出片24、24の先端面24a、24a及び一対の第2の大栓回転用突出片25、25の先端面25a、25aと同一平面P上になくても良い。
なお、一対の第2の大栓回転用突出片25、25は、通常、一対の大栓回転用突出片24、24と同じ厚さの平板状部材からなるのが好ましい。一対の第2の大栓回転用突出片25、25の大きさ、形状は、一対の大栓回転用突出片24、24と同じであるのが好ましいが、異なっていても良い。
また、図10の平面図に示すとおり、大栓回転用突出片が2対存在する場合、回転力受部21の側、すなわち上方から見るときには、小栓回転用突出片23がどの方向に設けられているかすぐには判別できない。そこで、一対の大栓回転用突出片24、24を構成する板状部材又は一対の第2の大栓回転用突出片25、25を構成する板状部材の回転力受部21側の面、すなわち上面に、図10に示すように、小栓回転用突出片23の設置方向を示す印mをつけておくのが望ましい。斯かる印mが付されている場合には、栓開閉工具20を回転力受部21の側から見たときにも、いずれの方向に小栓回転用突出片23が設置されているのかが直ちに判別できるので、より迅速に小栓回転用突出片23を小栓13が有する被係合部材13dに係合させることが可能となるので便利である。このような印をつける手段の一例としては着色が挙げられる。
このような図8〜図10に示す栓開閉工具20によれば、図1〜図3に示す栓開閉工具20と同様に、小栓回転用突出片23を小栓13の一対の被係合部材13d、13dに係合させた状態で、回転力受部21に回転力を加え栓開閉工具20を回転させることによって、小栓13を回転させて着脱することができる。また、一対の大栓回転用突出片24、24又は一対の第2の大栓回転用突出片25、25いずれかを大栓14の一対の被係合部材14d、14dに係合させた状態で、回転力受部21に回転力を加え栓開閉工具20を回転させることによって、大栓14を回転させて着脱することができる。本例の栓開閉工具によれば、2対ある大栓回転用突出片のいずれか一方を大栓14の一対の被係合部材14d、14dに係合させればよいので、より迅速に大栓14の着脱、開閉が可能となる。
図11は本発明の栓開閉工具のさらに他の例を示す正面図、図12はその平面図、図13は図11のIII−III矢視断面図である。これまでと同じ部材には同じ符号を付してある。
図11〜図13に示す栓開閉工具20は、まず第1に、回転力受部21がその端部に、回転軸Xと同心で回転力出力部22と反対方向に突出する六角柱に加えて、回転軸Xと同心で回転力出力部22の方向に陥没する六角形穴21aを有している点で、図1〜図3に示した例とは異なっている。図11に点線で示すとおり、本例における六角形穴21aは有底の穴であるが、回転力出力部22の回転軸X方向先端部に到達する栓開閉工具20を貫通する穴であっても良い。
本例の栓開閉工具20においては、回転力受部21が、回転力伝達工具と係合する凸部である六角柱に加えて、回転力を加える工具と係合する凹部として六角形穴21aを有しているので、ラチェットレンチやスパナ等はもちろん、六角棒スパナによっても回転力を与えることができるので便利である。なお、凹部である穴の形状は六角形には限られず、四角形又は三角形等の多角形穴であっても良い。このような多角形穴を有する場合、四角形又は三角形等の断面形状を有し先端を曲げた棒からなる工具を回転力受部に回転力を加える工具として使用することができる。
また、本例の栓開閉工具20は、小栓回転用突出片23が、回転軸Xを挟んだ両側に位置する一対2個の小栓回転用突出片23、23である点でも、図1〜図3に示した例とは異なっている。すなわち、本例の回転力出力部22は、回転軸Xの軸方向先端部に一対の小栓回転用突出片23、23を有しており、両者の間には空間Uが存在している。斯かる一対の小栓回転用突出片23、23は、回転力受部21の六角柱の下端部分と一体的に形成されたものであっても良いし、別体で用意された片状部材を回転力出力部の六角柱の下端に接合したものであっても良い。
栓開閉工具20が、このように2つに分離された一対の小栓回転用突出片23、23を有する場合には、例えば図21に示すような胴内に一対の被係合部材13d、13dを有する小栓を開閉することができることに加えて、例えば図23に示すような胴内の中央に一つの平板状被係合部材13eだけを有する小栓の開閉も可能となるので便利である。
すなわち、一対の小栓回転用突出片23、23の間に存在する空間Uを、図23に示す平板状被係合部13eを跨いで収容することができる大きさに設定することによって、栓開閉工具20は、一対の小栓回転用突出片23、23が平板状被係合部材13eとこれを両側面から押圧するように係合し、回転力受部21に加えられた回転力に応じて小栓13に回転モーメントを加え、小栓13を回転させることができる。
なお、本例において、一対の小栓回転用突出片23、23の水平断面形状は、図13に示すとおり四角形であるが、小栓13が有する被係合部材13d、13d又は後述する被係合部13eに係合し、回転モーメントを加えることができる形状であればどのような形状であっても良く、例えば、三角形、五角形、六角形、円形、楕円形、長円形あるいは半円形とすることができる。
さらに、本例の栓開閉工具20は、一対の大栓回転用突出片24、24がコの字状に曲折された一本の棒状部材から形成されている点でも、図1〜図3に示した例とは異なっている。すなわち、図11に示すとおり、一対の大栓回転用突出片24、24は、回転力受部21の六角柱の部分を側方から回転軸Xと直交に貫通する一本の棒材の両端部を回転軸Xの先端部方向(図11では下方)に略90度の角度で折り曲げて得られる棒材の先端部であり、一枚の平板状部材から構成されるものではない点で、図1〜図3に示される一対の大栓回転用突出片とは異なっている。
但し、本例の栓開閉工具20においても、小栓回転用突出片23と大栓回転用突出片24との間に間隙Rが設けられている点では先に説明した例と同じであり、斯かる間隙Rが存在することにより、栓開閉工具20の回転時に、小栓13の胴部13b及び小口金12aの筒部を収容する円環状の空間が確保されることも、先に述べた例におけると同様である。因みに、r1は間隙Rの幅であり、r2は間隙Rの高さ(深さ)である。
なお、一対の大栓回転用突出片24、24の水平断面形状は、図13に示すとおり四角形であるが、大栓14の一対の被係合部14d、14dに係合し、回転モーメントを加えることができる形状であればどのような形状であっても良く、例えば、三角形、五角形、六角形、円形、楕円形、長円形あるいは半円形とすることができる。
また、図示はしないが、本例の栓開閉工具20においても、一対の大栓回転用突出片24、24と90度ずれた位置に第2の一対の大栓回転用突出片25、25を設けても良いことは勿論である。
図11に示すとおり、一対の大栓回転用突出片24、24の回転軸X方向先端面24a、24aと、一対の小栓回転用突出片23、23の回転軸X方向先端面23a、23aは、共に、回転軸Xと直交する同一平面P上にあるが、先端面24a、24a、又は先端面23a、23aがそれぞれ回転軸Xと直交する同一平面上にあれば良く、一対の大栓回転用突出片24、24の回転軸X方向先端面24a、24aと、一対の小栓回転用突出片23、23の先端面23a、23aとは、必ずしも同一平面上になくても良い。
本発明の栓開閉工具20が有する回転力受部21の形状は、これまで述べてきたものには限られず、図14、図15に例示するような形状とすることができる。例えば、図14(A)に示すような回転力受部21の側部から回転軸Xと直交する方向に突出するキー状凸部21b、又は図14(B)に示すような回転力受部21の端部から回転軸Xと平行な方向に突出する凸部21bとすることができる。あるいは、図15(A)に示すような回転力受部21の側部から回転軸Xと直交する方向に陥没するキー溝状凹部21c、又は図15(B)に示すような回転力受部21の端部から回転軸Xと平行な方向に陥没する凹部21cとすることができる。これらの凸部あるいは凹部の数は一つであっても複数であっても良いことはもちろんである。
図16は本発明の栓開閉工具のさらに他の例を示す正面図、図17は図16に示す栓開閉工具20の使用状態におけるIV−IV矢視部分断面図であり、回転力伝達工具としてラチェットレンチWを用いた場合が示されている。これまでと同じ部材には同じ符号を付してある。
図16に示す例は、栓開閉工具20全体が1枚の平板状部材から構成されており、平板状部材の回転軸X方向中間部に回転力受部21を有し、この回転力受部21に回転軸Xと直交する方向に栓開閉工具20を貫通する貫通孔である凹部21dを有している。回転力出力部22は、回転軸Xの先端部に、図1〜図3に示したのと同様の小栓回転用突出片23と一対の大栓回転用突出片24、24とを有している。
図16に示す栓開閉工具20は、図17に示すように、ラチェットレンチWの柄を凹部21dに挿入して回転力受部21と係合させた状態で、矢印で示すようにラチェットレンチWに回転軸X回りの力を加えることで、回転力受部21を回転させ、回転力出力部22を回転させて、小栓回転用突出片23又は一対の大栓回転用突出片24、24を介して、小栓13の一対の被係合部材13d、13d又は大栓14の一対の被係合部材14d、14に回転モーメントが加えられ、各栓を回転させて着脱、開閉することが可能である。
図18は本発明の栓開閉工具のさらに他の例を回転力伝達工具であるラチェットレンチと組み合わせた状態を示す部分断面正面図であり、栓開閉工具20とラチェットレンチWがワンセットになった一組の組み合わせ工具が示されている。なお、ラチェットレンチWは、筒形回転体送り方向を切り替えることができる公知の爪車駆動機構を有しているが、その構造の詳細な説明及び図示は省略する。これまでと同じ部材には同じ符号を付してある。
なお、本例における栓開閉工具20は、基本的に先に図1〜図3に示したものと同じであるが、回転力受部21の端部表面に円盤状の磁石21eを有している。組み合わせ工具を構成するラチェットレンチWは筒形回転体が炭素鋼で形成されているので、磁石21eを有する回転力受部21と筒形回転体は互いに吸着する。なお、磁石21eは、回転力伝達工具の係合部に磁力を及ぼし、回転力受部21と回転力伝達工具の係合部が吸着することができる位置であればどこに設置されていても良い。また、回転力受部21が図11に示す六角形穴21aや、図15に例示されるキー溝状凹部21cのような凹部を有している場合、磁石を当該凹部に設けても良いことはもちろんである。
このような栓開閉工具20とラチェットレンチWとを両者を組み合わせて一組の工具とした組み合わせ工具として用いる場合には、天板がボルト、ナット等の締結部材でドラム缶胴部に取り付けられているいわゆるオープンドラムにおける天板の開閉や、小栓、大栓の開閉を一組の組み合わせ工具で行うことができるので非常に便利である。
すなわち、オープンドラムの天板の開閉時には、栓開閉工具20をラチェットレンチWから取り外し、ラチェットレンチWを単独で使用して、天板締結部材のナット等を回転させ、締結部材を緩めたり、締めたりすれば良い。栓開閉工具20はラチェットレンチWの筒形回転体に係合、取り付けられているだけであるので、ラチェットレンチWの単独使用時には、ラチェットレンチWから容易に取り外すことができる。
また、オープンドラムの天板に設けられている小栓又は大栓を開閉するときには、回転力受部21を介して栓開閉工具20をラチェットレンチWに取り付けて使用すれば良い。すなわち、栓開閉工具20をラチェットレンチWに取り付け、栓開閉工具20の小栓回転用突出片23又は大栓回転用突出片24を小栓13又は大栓14内に挿入して、それらの一対の被係合部材と係合させ、ラチェットレンチWを介して栓開閉工具20の回転力受部21に回転力を加えることにより、容易に小栓13又は大栓14を開閉することができる。
つまり、栓開閉工具20とラチェットレンチWを組み合わせて一組としたこの組み合わせ工具によれば、単に栓開閉工具20とラチェットレンチWを取付たり取り外したりするだけで、小栓13及び大栓14の着脱、開閉と、天板固定用の締結部材を回転させて天板の開閉の双方を行うことができるので非常に便利である。
また、図18に示す栓開閉工具20は回転力受部21に磁石を備えているので、ラチェットレンチWと栓開閉工具20とが磁石21eの磁力によって互いに吸着し、小栓又は大栓の開閉作業中や、栓開閉工具20ともどもラチェットレンチWを小栓と大栓との間で移動させる最中に、ラチェットレンチWと栓開閉工具20との係合が不用意に解除され、栓開閉工具20がラチェットレンチWから脱落してしまうことを防止することができる。
なお、一組の組み合わせ工具として使用する回転力伝達工具はラチェットレンチには限られず、スパナ、六角棒スパナ等の回転力伝達工具であっても良いことはもちろんである。また、一組の組み合わせ工具として使用する栓開閉工具は回転力受部に磁石を有するものに限られず、例えば図1〜図3、図8〜図17に示す磁石を有していない栓開閉工具であっても良いことはもちろんである。
次に、本発明の栓開閉工具のさらに他の例を図19に示す。図19は栓開閉工具20の正面図である。これまでと同じ部材には同じ符号を付してある。
図19に示す例は、回転力受部21がこれまでに述べた凸部や凹部に代えてアーム21fを有している一方、回転力伝達工具の係合部と係合する六角柱形状の部位を有していない点で、図1〜図3に示した例とは異なっている。
アーム21fは円形断面の棒からなり、その中間部が栓開閉工具20の回転軸Xと直交するように、栓開閉工具20の回転力受部21に結合されている。なお、栓開閉工具20は回転軸Xを挟んで180度対向する2方向に延在する1本のアーム21fを有しているが、アームは回転軸Xから1方向のみに延在するものや、回転軸Xから3以上の方向に延在するものであっても良いことはもちろんである。
このような図19に示す栓開閉工具20によれば、小栓回転用突出片23を小栓13の一対の被係合部材13d、13dに係合させた状態で、アーム21fを介して回転力受部21に回転力を加え栓開閉工具20を回転させることによって、小栓13を回転させて着脱、開閉することができる。また、一対の大栓回転用突出片24、24を大栓14の一対の被係合部材14d、14dに係合させた状態で、アーム21fを介して回転力受部21に回転力を加え栓開閉工具20を回転させることによって、大栓14を回転させて着脱、開閉することができる。
このように、図19に示す栓開閉工具20を用いれば、回転力受部21に回転力を加えるための工具を用いることなく栓開閉工具20単体で、小栓13及び大栓の開閉作業を行うことができる。
なお、回転力受部21は、これまでに図示したものに限られないのは言うまでもなく、図1に示される六角柱状の凸部、図11に示される六角形穴、図14に示される各凸部及び図15、図16に示される各凹部のいずれか2つ以上を併せ持っていても良いことはもちろんである。例えば、図1に示される六角柱状の凸部が回転軸Xに直交する貫通穴である凹部を有するものであっても良い。このようにすることで、回転力受部に適合する回転力伝達工具の種類が増え、多様な工具によって栓開閉工具に回転力を与えることができるようになるので極めて便利である。