本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
<空気調和機の構成>
図1は、本実施形態に係る空気調和機の室内機、室外機、及びリモコンの正面図である。図1に示すように、空気調和機Aは、室内機100と、室外機200と、リモコンReと、を備えている。室内機100と室外機200とは冷媒配管(図示せず)を介して接続され、周知の冷媒サイクルによって、室内機100が設置される室内(被空調空間)を空調する。また、室内機100と室外機200とは、通信ケーブル(図示せず)を介して互いに情報を送受信するようになっている。
リモコンReはユーザによって操作され、その操作に応じて室内機100のリモコン受信部Qに対して赤外線信号を送信する。当該信号の内容は、運転要求、設定温度の変更、タイマ、運転モードの変更、停止要求などの指令である。空気調和機Aは、これらの信号に基づいて冷房モード、暖房モード、除湿モードなどの空調運転を行う。
撮像手段120は、室内機100の左右方向中央に位置し、外部に露出している。なお、撮像手段120の詳細については後記する。
図2は、室内機の側断面図である。筐体ベース101は、室内熱交換器102、送風ファン103、フィルタ108などの内部構造体を収容している。また、前面パネル106は、室内機100の前面を覆うように設置されている。
室内熱交換器102は複数本の伝熱管102aを有し、送風ファン103によって室内機100に取り込まれた空気を、伝熱管102aを通流する冷媒との熱交換によって加熱又は冷却する。なお、伝熱管102aは、前記した冷媒配管(図示せず)と連通し、周知のヒートポンプサイクル(図示せず)の一部を構成している。
送風ファン103は、一端側に設置される送風ファン駆動部103a(図3参照)が駆動することによって回転し、室内機100に室内空気を取り入れつつ送風する。
左右風向板104は、下部に設けた回動軸(図示せず)を支点にして、左右風向板駆動部104a(図3参照)によって回動される。
上下風向板105は、両端部に設けた回動軸(図示せず)を支点にして、上下風向板駆動部105a(図3参照)によって回動される。
なお、前記した送風ファン駆動部103a、左右風向板駆動部104a、及び上下風向板駆動部105aは、駆動制御部137(図3参照)からの指令に従って駆動する。
撮像手段120は、室内機100が設置される室内を撮像する装置であり、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラである。図2に示すように、撮像手段120は、露受皿110よりも下方において左右方向に延びる固定部111に設置される。
また、撮像手段120は、レンズ(図示せず)の光軸P(図7(a)参照)が水平面に対して俯角ε(図7(a)参照)だけ下方を向くように設置され、室内機100が設置される室内を適切に撮像できるようになっている。
図2に示す送風ファン103が回転することによって、空気吸込み口107及びフィルタ108を介して室内空気が取り込まれ、室内熱交換器102で熱交換された空気が吹出し風路109aに導かれる。さらに、吹出し風路109aに導かれた空気は、左右風向板104及び上下風向板105によって風向きを調整され、空気吹出し口109bから外部に送り出され、室内を空調する。
図3は、空気調和機の制御手段を含む構成図である。制御手段130は、撮像手段120から入力される画像情報や、各種センサ(図示せず)から入力されるセンサ信号などに応じて、空気調和機Aの動作を統括制御する。
記憶手段140は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)など含んで構成される。そして、ROMに記憶されたプログラムが制御手段130のCPU(Central Processing Unit)によって読み出されてRAMに展開され、各種処理が実行される。
送風ファン駆動部103aは、制御手段130からの指令に従って、所定回転速度で送風ファン103を回転させるモータである。左右風向板駆動部104aは、制御手段130からの指令に従って左右風向板104(図2参照)を左右方向に回動させるモータである。上下風向板駆動部105aは、制御手段130からの指令に従って上下風向板105(図2参照)を上下方向に回動させるモータである。
その他、制御手段130によって制御される対象として、撮像手段120を左右方向に回動させる撮像手段駆動部(図示せず)、圧縮機(図示せず)を駆動するモータ(図示せず)、運転状態を表示する表示ランプ(図示せず)などがある。
<制御手段の構成>
図3に示すように、制御手段130は、人体検出部131と、座標変換部132と、移動距離算出部133と、活動量算出部134と、移動軌跡推定部135と、体感温度推定部136と、駆動制御部137と、を備えている。
人体検出部131は、撮像手段120から所定時間ごとに入力される画像情報に基づいて人体の位置を検出し、その検出結果を座標変換部132に出力する。ちなみに、前記した検出結果には、検出したそれぞれの人体の顔中心の座標(画面上の座標)と、顔の大きさ(画面上での縦方向の長さ)と、が含まれる。
座標変換部132は、前記した人体の検出結果に関して、撮像画面のピクセル数で特定される画面上の座標系から実空間の座標系に変換し、移動距離算出部133に出力する。
ちなみに、座標変換部132から移動距離算出部133に出力される情報には、人体中心のX、Y、Z座標の値が含まれる。
移動距離算出部133は、座標変換部132から入力される各人体の位置と、過去(例えば、1sec前)に算出した人体の位置と、で想定される全ての組み合わせについて移動速度を算出し、それぞれに識別記号を付して活動量算出部134に出力する。
活動量算出部134は、移動距離算出部133によって算出される各移動距離に基づいて活動量を算出する。なお、「活動量」とは、人体の単位表面積あたりの代謝量[W/m2]を意味し、人体の移動速度と正の相関がある。活動量算出部134は、算出した活動量を前記した識別記号と対応付けて、移動軌跡推定部135及び体感温度推定部136に出力する。
移動軌跡推定部135は、人体検出部131によって今回検出された人体の位置と、過去に検出された人体の位置との想定される組み合わせについて、それぞれに対応する活動量を比較し、当該比較結果に基づいて人体の移動軌跡を推定する。
そして、移動軌跡推定部135は、推定した移動軌跡を各人体の活動量に反映させ、当該活動量と各人体の現在位置とを対応付けて、駆動制御部137に出力する。
体感温度推定部136は、活動量算出部134から入力される情報と、各種センサから入力されるセンサ信号と、に基づいて体感温度の平均値を推定し、駆動制御部137に出力する。ちなみに、体感温度の平均値は、空調室内の各在室者の体感温度を平均した値である。
また、前記した各種センサ信号に対応する情報は、例えば、室内温度センサ(図示せず)によって検出される室内温度や、湿度センサ(図示せず)によって検出される室内の湿度である。
駆動制御部137は、移動軌跡推定部135から入力される情報(つまり、空調室内での活動量の分布)と、体感温度推定部136から入力される体感温度の平均値と、前記したセンサ信号とに基づいて、空調制御のパラメータを変更する。
なお、「空調制御のパラメータ」とは、送風ファン103の回転速度、左右風向板104の回動角度、及び上下風向板105の回動角度を含んでいる。図3に示すように、駆動制御部137から入力される指令信号に応じて、送風ファン駆動部103a、左右風向板駆動部104a、及び上下風向板駆動部105aがそれぞれ駆動する。
<撮像領域について>
図4(a)は、撮像手段によって撮像される上下方向の撮像領域の説明図(側面図)である。図4(a)に示すように、撮像手段120が有するレンズ(図示せず)の焦点120aを通り、室内機100が設置される壁面Wに垂直な直線(室内側が正)をZ軸とする。また、室内機100の背面から、レンズの焦点120aまでの距離をΔdとする。
また、レンズの焦点120aよりも距離Δdだけ後方に位置する原点Oを通り、水平面と垂直な直線(室内機100の下側が正)をY軸とする。
撮像手段120は、レンズの光軸が水平面から俯角ε(図7(a)参照)だけ下方を向くように設置されている。なお、側面視で扇状に広がる撮像手段120の視野の上端は、前記したZ軸に略一致している。
本実施形態では、レンズ(図示せず)の焦点120aを通る水平面と、焦点120aを通るとともに水平面に対し所定の傾きを有する4つの仮想平面a1、a2、a3、a4、a5とによって、撮像領域を上下方向に5分割する。
すなわち、水平面と仮想平面a1とによって挟まれる領域をA1とし、仮想平面anと仮想平面a(n+1)とによって挟まれる領域をA(n+1)とする(ただし、n=1、…、4)。
なお、前記した領域A1、…、A5は、人体の検出結果などに応じて、駆動制御部137が上下風向板105の角度を制御する際に用いられる。
図4(b)は、撮像手段によって撮像される左右方向の撮像領域の説明図(平面図)である。なお、図4(b)では、室内機100を省略している。
前記した原点Oを通り、Y軸及びZ軸に対して垂直な直線(室内機100に向かって左側が正)をX軸とする。
撮像手段120の視野角は、例えば、平面視で60°である。制御手段130は、前記した撮像手段駆動部(図示せず)を駆動することによって、撮像手段120を回動軸(図示せず)周りで左右方向に往復させる。すなわち、制御手段130は、所定時間(例えば、30sec)ごとに左→中央→右→中央→左→…のように撮像手段120を往復させる。
本実施形態では、X軸に垂直であり、Z軸を含む平面に対して所定の傾きを有する10個の仮想平面b1、…、b10によって、撮像領域を左右方向に10分割する。すなわち、仮想平面b(n−1)と仮想平面b(n)とによって挟まれる領域をBnとする(ただし、n=1、…、10)。
なお、領域B1、…、B10は、人体の検出結果に応じて駆動制御部137が左右風向板104の角度を制御する際に用いられる。
平面視で扇形に広がる領域B1、…、B10に関し、それぞれの扇形の中心角θ2は、例えば15°である。
図4(b)に示すように、左領域は、領域B1、…、B4で構成される。当該左領域とは、撮像手段120によって撮像される3つの領域のうち、室内機100に向かって左側の領域である。なお、領域B1、…、B4の中心角θ2の合計(15°×4=60°)は、撮像手段120の視野角に等しい。
中央領域は、領域B4、…、B7で構成される。当該中央領域とは、撮像手段120によって撮像される3つの領域のうち、中央に位置する領域である。ちなみに、領域B4は、左領域に属するとともに、中央領域にも属する。このように、左領域の右端に位置する領域B4と、中央領域の左端に位置する領域B4とを共通にすることで、人体の検出漏れなどを防止している。
右領域は、領域B7、…、B10で構成される。前記した領域B4と同様の理由により、領域B7は、中央領域に属するとともに、右領域にも属するように設定される。
撮像手段120によって左領域→中央領域→右領域(又はその逆順序)のように順次撮像することで、空調室内において平面視で角度θ1(例えば、150°)の領域を撮像できる。
ちなみに、前記した上下方向に連なる領域A1、…、A5と、左右方向に連なる領域B1、…、B10とによって、空調室内は仮想的に50(=5×10)個の領域に分割される。制御手段130は、これら50個の領域における活動量の分布に応じて、左右風向板104及び上下風向板105の角度を調整する。
<空調制御処理の概要>
図5は、制御手段が実行する空調制御処理の概要を示す説明図である。図5に示す時刻t0は、人体検出に基づく空調制御の開始時刻である。また、図5は、左から右に向かうにつれて時間が経過するように記載している。
前記したように、制御手段130は、撮像手段120を往復させることによって、左領域→中央領域→右領域→中央領域→左領域→…のように空調室内を順次撮像する(撮像領域G1を参照)。
時刻t0において空調制御を開始すると、制御手段130は、例えば1secごとに左領域(領域B1、…、B4:図4(b)参照)を30回撮像する。そして、当該撮像結果を用いて左領域の在室者の人数、位置、及び活動量を算出し、記憶手段140に格納する(領域判定α1L:符号G2を参照)。
次に、時刻t1において制御手段130は、撮像手段120を右向きに回動させ、例えば1secごとに中央領域(領域B4、…、B7:図4(b)参照)を30回撮像する。
そして、当該撮像結果を用いて中央領域の在室者の人数、位置、及び活動量を算出し、記憶手段140に格納する(区間判定α1M:符号G2を参照)。
次に、時刻t2において制御手段130は、撮像手段120をさらに右向きに回動させ、例えば1secごとに右領域(領域B7、…、B10:図4(b)参照)を30回撮像し、右領域の在室者の人数、位置、及び活動量を算出し、記憶手段140に格納する(区間判定α1R:符号G2を参照)。
このように制御手段130は、撮像手段120を右回りに回動させて左・中央・右領域を順次撮像し、撮像によって取得される画像情報を用いて各領域に存在する人体の活動量などを算出する(1回目の撮像:符号G3を参照)。
また、制御手段130は、左・中央・右領域のそれぞれについて算出した在室者の人数、位置、及び活動量を記憶手段140から読み出し、空調室内に存在する全在室者の人数、位置、及び活動量を算出する(最終判定β1:符号G4を参照)。なお、人体検出処理などの詳細については、後記する。
さらに、制御手段130は、1回目の検出処理が終了するまでは、左右風向板104及び上下風向板105を全幅で回動させる(符号G6、G7を参照)。
1回目の撮像(左・中央・右領域)が完了すると、制御手段130は、検出した在室者の人数に応じて表示ランプ(図示せず)を点灯させる(符号G5を参照)。例えば、制御手段130は、室内機100の所定箇所に配置された3個の表示ランプ(図示せず)を、在室者が1人の場合は1個、2〜3人の場合は2個、4人以上の場合は3個点灯させる。
これによって、ユーザ(つまり、在室者)は、制御手段130が適切に在室者を検出していることを容易に確認できる。
さらに、制御手段130は、1回目の処理結果に応じて左右風向板104(符号G6を参照)、及び上下風向板105(符号G7を参照)を制御する際のパラメータを更新し、それぞれの風向を制御する。なお、図5では省略したが、制御手段130は、1回目の処理結果に応じて送風ファン103の回転速度も制御する。
そして、1回目の人体検出処理に応じた風向制御を行いつつ、制御手段130は時刻t3〜t5において2回目の人体検出処理を実行する。2回目の人体検出処理を行う際、制御手段130は撮像手段120を左回りに回動させ、右・中央・左領域を順次撮像する(符号G3を参照)。
ここで、2回目の最初に撮像する右領域の画像情報は、1回目に撮像した右領域の画像情報(30枚分の画像)をそのまま用いる。これによって、撮像手段120を往復運動させつつ、空調室内を連続的かつスムーズに撮像できる。
2回目以後の撮像(右・中央・左領域)の結果を用いた空調制御は、前記した1回目の撮像を行う場合と同様である。このように制御手段130は、右・中央・左領域の画像情報を順次取得して人体検出処理を実行し、その検出結果を空調制御に反映させる。
<人体検出結果を用いた空調制御処理>
図6は、制御手段が行う処理の流れを示すフローチャートである。なお、図6の処理は、例えば、人体検出を行う運転モードがユーザによって選択され、リモコンReから室内機100のリモコン受信部Q(図1参照)に所定の指令信号が入力されることによって開始される。
また、図6に示す「START」時は、前記した図5に示す時刻t0に対応し、撮像手段120は、空調室内の左領域を撮像する向きであるとする。
ステップS101において制御手段130は、nの値を1に設定し(n=1)、記憶手段140に格納する。ちなみに、nの値は、撮像手段120から画像情報が入力されるたびに逐次インクリメントされる(S111)。
ステップS102において制御手段130は、撮像手段120から画像情報の入力を受け付ける。撮像手段120から入力される画像情報は、例えば、A/D変換されたデジタル信号である。当該画像情報は、画素を特定するピクセル数(縦方向・横方向)と、画素値と、を含んでいる。
ステップS103において制御手段130は、撮像手段120から入力される画像情報から、空調室内に存在する在室者の人数及び位置を検出する。
制御手段130は、まず、撮像手段120から入力される画像情報を用いて人体の頭部及び肩部を検出する。当該検出処理は、例えば、エッジ抽出処理及びパターンマッチングによって実行できる。
次に、制御手段130は、検出した人体ごとに顔中心の位置を算出するとともに、頭部の大きさ(縦方向の長さ)D0を算出する。そして、制御手段130は、前記算出結果を、検出時の時刻情報及び所定の識別情報と対応付けて、記憶手段140に格納する。
また、制御手段130は、検出した人体の数(つまり、人数)と検出時の時刻情報とを対応付けて記憶手段140に格納する。
次に、図6のステップS104において制御手段130は、座標変換処理を実行する。
図7(a)は、光軸Pと垂直面Sとの関係を示す説明図である。図7(a)に示すように、撮像手段120の光軸Pは、水平面に対して俯角εを有している。垂直面Sは、光軸Pに垂直であるとともに、在室者の顔中心を通る仮想平面である。距離Lは、撮像手段120が有するレンズ(図示せず)の焦点120aと、在室者の顔中心との距離である。
なお、前記したように、室内機100が設置される壁面Wとレンズの焦点120aとの距離はΔdである。
図7(b)は、画像面に撮像される画像と、実空間に存在する在室者との関係を示す説明図である。図7(b)に示す画像面Rは、撮像手段120が有する複数の受光素子(図示せず)を通る平面である。算出した頭部の大きさD0に対応する縦方向の画角γyは、以下に示す(数式1)で表される。ちなみに、角度βy[deg/pixel]は、1ピクセル当たりの画角(y方向)の平均値であり、既知の値である。
そうすると、レンズ(図示せず)の焦点120aから顔中心までの距離L[m]は、顔の縦方向の長さの平均値をD1[m](既知の値)とすると、以下に示す(数式2)で表される。前記したように、俯角εは、レンズの光軸が水平面となす角度である。
図7(c)は、レンズの焦点から顔中心までの距離Lと、画角δx、δyとの関係を示す説明図である。
画像面Rの中心から画像上の顔中心までのX方向、Y方向の画角をそれぞれδx、δyとすると、これらは以下に示す(数式3)、(数式4)で表される。ここで、xc、ycは、画像内の人体中心の位置(画像内でのX座標、Y座標)である。また、Tx[pixel]は撮像画面の横サイズであり、Ty[pixel]は撮像画面の縦サイズであり、それぞれ既知の値である。
したがって、実空間における人体中心の位置は、以下に示す(数式5)〜(数式7)によって表される。
再び、図6に戻って説明を続ける。ステップS105において制御手段130は、ノイズ除去処理1を実行する。すなわち制御手段130は、前記した人体中心の位置(X、Y、Z)が、適切に在室者を検出した場合には想定されない値であったとき、誤検出(つまり、ノイズ)であると判定し、これに対応する画像情報を削除する。
例えば、Y≦0である場合や(通常、人体中心が水平面よりも上方に位置することはない)、Y≧2である場合(通常、人体中心が床面よりも下方に位置することはない)の画像情報を削除する。前記ノイズの例として、テレビ画面やポスターに映っている人物が挙げられる。
このように、誤検出した場合の画像情報を早期に削除することで、移動軌跡推定処理(S109)などを行う際の演算量を低減できる。
次に、ステップS106において制御手段130は、ステップS105の処理によって残った人体の位置座標と、過去に撮像した人体の位置情報と、で想定される全ての組み合わせについて移動距離を算出する。例えば、図9(a)に示す検出結果として、所定時刻に人体が位置A及びBにあり、次の撮像で人体が位置Cにあり、さらに次の撮像で人体が位置D及びEにあったとする。
今回の撮像によって位置Cを検出した場合、制御手段130は、過去に検出した位置A、Bと、今回検出した位置Cとの間で想定される全ての組み合わせについて、移動距離を算出する。すなわち、制御手段130は、在室者が位置Aから位置Cに移動した場合の距離LACと、位置Bから位置Cに移動した場合の距離LBCとを算出する。なお、本実施形態では撮像を1secごとに行っているため、距離LAC、LBCを移動速度とみなすことができる(他の移動距離についても同様である)。
このように、制御手段130は、今回検出した一つ又は複数の人体と、過去に検出した一つ又は複数の人体と、の想定される全ての組み合わせについて移動速度を算出する。なお、この時点において、今回検出した人体と過去に検出した人体との対応関係は判明していない。
次に、ステップS107において制御手段130は、ノイズ除去処理2を実行する。すなわち、制御手段130は、移動距離が所定値以上となる組み合わせを、移動軌跡の推定対象から除外する。
図8は、在室者の移動速度と活動量との関係を示すグラフである。図8に示すグラフの横軸は、在室者の移動速度[m/s]であり、縦軸は在室者の活動量[W/m2]である。図8に示すように、すなわち、移動速度が0.5m/s未満の領域において活動量は1(在室者は概ね静止している)である。また、移動速度が0.5m/s以上の領域において活動量は、移動速度に略比例して増加する。
ちなみに、図8に示す情報(移動速度と活動量との対応関係)は、予め記憶手段140(図3参照)に格納されている。
また、在室者が1.5[m/s]以上の速度で移動することは稀であるため、当該領域を無効領域(図8の斜線部分)とした。したがって、ステップS107において制御手段130は、移動距離が1.5[m/s]以上となる組み合わせ(今回の検出結果と、過去の検出結果との組み合わせ)を、処理対象から除外する。
このように、所定条件を満たす組み合わせを予め除去することによって、過去に検出できなかった別の人体との取り違いを防止できる。また、後記する移動軌跡推定処理を行う際の演算負荷を軽減できる。
次に、ステップS108において制御手段130は、活動量を算出する。すなわち、制御手段130は、移動速度と活動量との対応関係を示す情報(図8参照)を参照し、ステップS106で算出した各移動距離(ただし、S107の処理で残ったもの)に対応して活動量を算出する。
なお、この時点においても、今回検出した人体と過去に検出した人体との対応関係は判明していない。
次に、ステップS109において制御手段130は、移動軌跡推定処理(トラッキング)を実行する。すなわち、制御手段130は、候補となる複数の移動軌跡の中から在室者の実際の移動軌跡を推定する。なお、図9(a)で示す例では、検出した人体の移動軌跡として次の2通りが考えられる。
1.在室者(1人目)が、位置Aから位置Cに移動した。
2.在室者(2人目)が、位置Bから位置Cに移動した。
制御手段130は、今回検出される人体の位置と、過去に検出された一つ又は複数の人体の位置と、の想定される組み合わせのうち、対応する活動量が最小となる組み合わせを特定する。
すなわち、制御手段130は、前記した1、2のいずれが正しいかを、距離LACに対応する活動量MACと、距離LBCに対応する活動量MACとの大小を比較することによって判定する。前記したように、本実施形態では撮像を1secごとに行っているため、距離LAC、LBCを移動速度とみなすことができる。また、図8より、移動速度と活動量とは正の相関を有する。したがって、活動量の大小は、移動距離の長短にそのまま対応する。
例えば、図9(a)に示す距離LACと距離LBCとを比較すると、距離LACのほうが短い(LAC<LBC)。したがって、活動量MACと活動量MBCとを比較すると、活動量MACのほうが小さくなる(MAC<MBC)。
制御手段130は、相対的に小さい活動量を与える移動軌跡を、在室者の実際の移動軌跡であると推定する。すなわち、制御手段130は、位置Aから位置Cに1人目の人体が移動したと推定し(図9(b)参照)、当該位置(A→C)と活動量MACとを対応付けて記憶手段140に格納する。
このように、最も距離の短い移動軌跡を実際の移動軌跡であると推定することによって、適切かつ容易に移動軌跡を特定できる。
ちなみに、前回の撮像で位置Bに存在した2人目の人体に対応する人体が、今回の撮像では検出されていない(図9(b)参照)。この場合、制御手段130は、位置Bと撮像時刻とを対応付け、後の移動軌跡推定処理の候補として記憶手段140に格納する。このように、今回検出漏れした可能性がある候補は、次回から所定回数(例えば、5回)の撮像が終わるまで残しておく。
次の撮像において図9(a)に示す位置D、Eで人体を検出すると、制御手段130は、距離LCD、距離LCE、距離LBD、及び距離LBEにそれぞれ対応する活動量の大小を比較する。ここでは、移動軌跡推定処理の候補として、前記した位置Bが記憶手段140から読み出される。
図9(a)に示すように、移動距離の長短は、LCD<LCE<LBE<LBDとなっている。したがって、対応する活動量の大小は、MCD<MCE<MBE<MBDとなる。そして、制御手段130は、相対的に小さい活動量を与える移動軌跡、つまり、C→Dと活動量MCDとを対応付けて記憶手段140に格納する。
そうすると、1人目の人体はA→C→Dのように移動したと推定される(図9(b)参照)。したがって、制御手段130は、B→Dの移動、及びC→Eの移動を移動軌跡の推定対象から除外する。その結果、制御手段130は、2人目の人体が位置B→□→Eのように移動したと推定する(図9(b)参照)。
このようにして、制御手段130は、撮像手段120から画像情報が入力されるたびに在室者を検出し、その移動軌跡を推定する。
なお、移動軌跡を推定する際、過去に検出された一つ又は複数の人体に関して、前記過去の検出時までの活動量が小さい人体から順に移動軌跡を推定することが好ましい。ここで、「前記した過去の検出時までの活動量」は、前々回から前回までの移動に伴う活動量であってもよいし、それより前の移動も考慮して現在に近づくほど重み付けした活動量の和であってもよい。
一般に、人間は急に動作速度を変えることはできない。例えば、過去に動いていなかった人体は、現在でも動きがないか、又は動きがあったとしても移動距離が比較的短い可能性が高い。また、過去に動いていた人体は、現在も動き続けている可能性が高い。
活動量の小さい人体から順に、移動軌跡を推定することによって、過去の動作履歴を活動量に反映させ、より効率的かつ適切に移動軌跡を推定できる。
別の例として、図10(a)に示すように、所定時刻に人体が位置A及びBで検出され、次の撮像で人体が位置C、Dで検出され、さらに次の撮像で人体が位置E及びFで検出されたとする。
また、図10に示す距離LAD、LBD、LDE、LDFは、それぞれ1.5m以上である(つまり、移動速度が1.5m/s以上である)とする。
この場合、前記したステップS107のノイズ除去処理2(図6参照)において、移動速度が1.5m/s以上であるA→D、B→D、D→E、及びD→Fの組み合わせは、移動軌跡の候補から除外される。
したがって、制御手段130は、図9(a)の場合と同様の方法を用いて、1人目がA→C→Eのように移動し、2人目がB→□→Eのように移動したと推定する(図10(b)参照)。また、位置Dで検出した人体については、前記二者とは異なる人体(3人目)であると推定し(図10(b)参照)、記憶手段140に格納する。
なお、図6に示すステップS102〜S110は、図5に示す時刻t0〜t1(左領域の撮像:符号G3参照)で実行するN回の撮像うち、1回ぶんの画像情報を用いた処理に相当する。
次に、図6のステップS110において制御手段130は、n=Nであるか否かを判定する。なお、Nは予め設定された値(例えば、N=30)であり、左・中央・右領域のそれぞれにおいて室内を撮像する回数である。
n=Nである場合(S110→Yes)、制御手段130の処理はステップS112に進む。一方、n=Nでない、つまりn<Nである場合(S110→No)、制御手段130の処理はステップS111に進む。ステップS111において制御手段130は、nの値をインクリメントし、ステップS102の処理に戻る。
次に、ステップS112において制御手段130は、以下のようにして領域判定処理αを実行する(図5に示す領域判定α1Lに対応)。
すなわち、制御手段130は、在室者の人数を、途中で見失った人体、及び最後まで追跡できた人体のうち、その検出率が20%以上である人体の数とする。図10(b)に示す例では、1人目の検出回数は30回の撮像のうち27回であり、検出率は90%である。同様に、2人目の検出率は50%であり、3人目の検出率は10%(<20%)である。
したがって、制御手段130は、3人目を誤検出であった(又は、途中で空調室内から退出した)とみなし、処理の対象外とする。
また、30回の撮像のうち連続して5回検出できなかった人体についても、制御手段130は誤検出であった(又は、途中で空調室内から退出した)とみなし、処理の対象外とする。
また、制御手段130は、それぞれの在室者の位置を、その領域(今回は左領域)において最後に検出できた位置とする。
さらに、制御手段130は、ステップS109で推定した移動軌跡に対応する活動量に関し、現在時刻に近いほど重み付けして和を算出し、在室者の位置と対応付けて記憶手段140に格納する。
次に、ステップS113において制御手段130は、左・中央・右領域の全てを所定回数N回ずつ撮像したか否かを判定する。左・中央・右領域の全てを所定回数N回ずつ撮像した場合(S113→Yes)、制御手段130の処理はステップS115に進む。一方、左・中央・右領域のうち少なくとも一つを撮像していない場合、制御手段130の処理はステップS114に進む。
ステップS114において制御手段130は、撮像手段120を所定角度だけ回動させ、次の領域の撮像を開始し、ステップS101の処理に戻る。例えば、左領域の撮像が完了した場合、制御手段130は撮像手段120を右向きに回動させ、中央領域の撮像を開始する。
ステップS115において制御手段130は、以下のようにして最終判定βを実行する(図5に示す1回目の最終判定β1に対応)。
すなわち、左・中央・右領域で取得した活動量を、それぞれの位置に対応付けて重ね合わせる。なお、検出領域が重なっている領域B4、B7(図4(b)参照)の両方で人体が検出され、かつ、人体の間隔が所定距離(例えば、2m)以内の場合、制御手段130は同一人物であると判定する。
この場合、検出時からの経過時間が短いほうを採用し、重複したぶん人数を減らす。
このように、制御手段130は、空調室内における活動量(過去から現在までの活動量について重み付けされたもの)を、ステップS115の位置情報と対応付けることによって、活動量の分布を正確に把握できる。
さらに制御手段130は、前記した上下方向の5つの領域(図4(a)参照)と、左右方向の10個の領域(図4(b)参照)とによって区画される50(=5×10)の各領域と、前記した活動量の分布とを対応付けて、記憶手段140に格納する。
次に、図6のステップS116において制御手段130は、風向・風量の制御処理を実行する。つまり、制御手段130は、前記した50個の領域における活動量の分布を参照し、当該分布に応じて左右風向板104及び上下風向板105の角度を制御する。また、空調室内における活動量の分布、体感温度の平均値、及び各種センサから入力される信号に応じて、送風ファン103の回転速度を調整する。
ちなみに、冷房運転を実行している場合、制御手段130は、活動量の大きい領域に向けて重点的に冷風を送風する。一方、暖房運転を実行している場合、制御手段130は、活動量の小さい領域に向けて重点的に温風を送風する。
図11(a)は、活動量の分布に応じた上下方向の風向制御の説明図(側面図)である。冷房運転を実行する際、上下方向において図4(a)の領域A1での活動量が相対的に大きい場合、制御手段130は次のように風向を制御する。すなわち、制御手段130は、図11(a)の符号c1で示す方向に冷風を送風するように、上下風向板105を回動させる。
同様に、上下方向において図4(a)の領域An(n=2、…、5)での活動量が大きい場合、制御手段130は、符号cnで示す方向に冷風を送風するように上下風向板105を回動させる。
一方、暖房運転を実行する際、上下方向において図4(a)の領域An(n=1、…、5)での活動量が相対的に小さい場合、制御手段130は、図11(a)の符号hnで示す方向に温風を送風するように上下風向板105を回動させる。
図11(b)は、活動量の分布に応じた左右方向の風向制御の説明図(平面図)である。冷房運転を実行する際、左右方向において図4(a)の領域B1での活動量が相対的に大きい場合、制御手段130は、次のような制御を実行する。すなわち、制御手段130は、図11(a)の符号f1で示す方向に重点的に冷風を送風するように上下風向板105を回動させる。
同様に、左右方向において図4(a)の領域An(n=2、…、10)での活動量が大きい場合、制御手段130は、符号fnで示す方向に重点的に冷風を送風するように左右風向板104を回動させる。
一方、暖房運転を実行する際、左右方向において図4(a)の領域An(n=1、…、10)での活動量が相対的に小さい場合、制御手段130は、図12(a)の符号fnで示す方向に重点的に温風を送風するように左右風向板104を回動させる。
このように、空調室内の活動量の分布、及び空調モードに応じて上下風向板105、左右風向板104の向きを制御する。
<効果>
本実施形態に係る空気調和機Aによれば、撮像手段120から入力される画像情報を用いて人体検出を行うことによって、在室者の検出確率を高めることができる。
例えば、前記した特許文献1に記載の技術のように、顔検出機能を用いることによって在室者を検出する場合、顔検出を行うために高い解像度の撮像手段を用いても在室者の検出確率が低くなってしまう。この場合、撮像手段を用いて所定時間(例えば、1sec)ごとに室内を撮像しても在室者の移動軌跡を適切に推定できず、顔検出の結果が空調制御に有効に反映されない。
これに対して、本実施形態に係る空気調和機Aによれば、在室者の顔の向きによらず、また、逆光であるか否かに関わらず、人体(在室者の上半身)を高確率で検出できる。このように、人体検出を使用することによって検出確率を高め、個人を特定することなく移動軌跡の推定(トラッキング)を適切に行うことができる。
また、人体検出を行う場合、顔検出を行う場合よりも低い解像度で対応できる。したがって、撮像手段120にかかるコストを低減できる。
また、本実施形態において制御手段130は、今回検出した人体の位置と、過去に検出した複数の人体の位置とで想定される組み合わせのうち、対応する活動量が最小となる組み合わせを順次特定して移動軌跡を推定することとした。
このように、活動量の小さい組み合わせ(つまり、単位時間当たりの移動距離が短い組み合わせ)から移動軌跡を順次特定することによって、適切かつ効率的に移動軌跡を推定できる。
また、本実施形態では、人体中心(X、Y、Z)が所定範囲に位置する場合や、人体の移動速度が1.5m/s以上である場合、制御手段130はこれらを処理対象から除外する(S105、S107:図6参照)。
これによって、誤検出を防止するとともに、その後の移動軌跡推定処理などに要する演算量を低減できる。
また、本実施形態によれば、撮像手段120を左右方向に往復させて部屋全体を撮像し、右回りで撮像手段120を回動させて撮像した右領域の画像情報を、次に撮像手段120を左回りに回動させて撮像する際にそのまま用いる(左領域も同様である)。したがって、撮像手段120を往復運動させつつ、空調室内を連続的かつスムーズに撮像できる。
また、本実施形態によれば、人体の移動軌跡を推定する(トラッキングを行う)ことによって、検出した人体それぞれの活動量を時間的に連続して検出することができる。したがって、検出したそれぞれの人体の活動量及び体感温度を適切に推定し、人体の位置と対応付けて空調制御に適切に反映させることができる。
例えば、暖房運転時に活動量が小さい(体感温度が低い)人体に向けて重点的に温風を送風するように、送風ファン103の回転速度、左右風向板104の角度、及び上下風向板105の角度を制御する。これによって、体感温度の平均値よりも体感温度の低い在室者の快適性を保ちながら、設定温度を体感温度の平均値に応じて低くすることで消費電力を低減し、節電することができる。
<変形例>
以上、本発明に係る空気調和機Aについて前記実施形態により説明したが、本発明の実施態様はこれに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、前記実施形態では、活動量に基づいて移動軌跡を推定する場合について説明したが、これに限らない。すなわち、人体の移動距離を直接的に用いることによって、移動軌跡を推定してもよい。
前記したように、所定時間当たりの人体の移動距離(つまり、移動速度が速いほど)とは、活動量とは正の相関がある(図8参照)。したがって、今回検出される人体の位置と、過去に検出された一つ又は複数の人体の位置と、の想定される組み合わせのうち、対応する移動距離が最小となる組み合わせを、今回検出される一つ又は複数の人体ごとに順次特定することで移動軌跡を推定できる。
また、移動軌跡を推定する際、過去に検出された一つ又は複数の人体に関して、当該過去の検出時までの移動距離(移動速度)が小さい人体から順に移動軌跡を推定してもよい。これによって、過去の動作履歴を反映させ、効率的かつ適切に移動軌跡を推定できる。
また、人体検出部131による検出結果を用いることによって、空調室内における在室者の密度(単位面積当たりに存在する人数)を求めることができる。在室者の体感温度は、活動量の他、前記した密度によっても変動する(密度と正の相関を有する)。この場合、制御手段130は、空調室内(左・中央・右領域)を撮像するたびに、室内に存在する人体の密度分布を算出し、当該密度を在室者の体感温度に反映させる。
例えば、暖房運転を行う際、前記密度によって在室者の体感温度が比較的高くなっていると推定した場合、制御手段130は、体感温度の上昇を相殺するように設定温度を低くし、圧縮機(図示せず)の回転速度を低下させる。これによって、在室者の快適性を保ちつつ、電力消費を低減することができる。
また、制御手段130が、上下風向板105及び左右風向板104の回動角度を調整し、人体の密度が高い領域を避けるように送風するようにしてもよい。
また、前記実施形態では、撮像手段120(視野角60°)を回動させることによって左・中央・右領域を順次撮像し、平面視で150°の領域を撮像する場合について説明したが、これに限らない。
撮像手段120が十分な視野角を有する場合、撮像手段120を回動させることなく人体検出処理を行うことができる。この場合の移動軌跡の推定処理方法は、前記実施形態と同様の方法で行うことができる。
また、前記実施形態では、撮像手段120を室内機100の固定部111に設置する場合について説明したが、これに限らない。すなわち、空調室内を撮像できるのであれば、撮像手段120を室内機100の他の箇所に設置してもよい。
また、前記各実施形態では、移動軌跡推定処理の結果に応じて、送風ファン103の回転速度、左右風向板104の角度、及び上下風向板105の角度を変更する場合について説明したが、これに限らない。すなわち、送風ファン103の回転速度、左右風向板104の角度、及び上下風向板105の角度のうち少なくとも一つを変更してもよい。
また、移動軌跡推定処理の結果に応じて空気調和機Aの設定温度を適宜変更し、これに伴って圧縮機(図示せず)に設置されるモータ(図示せず)の回転速度を変更してもよい。
次に、本発明の実施の形態2に係る空気調和機について説明する。
実施の形態2では、室内が熱中症、低体温症に罹る恐れが大きい温度、湿度になった時に、これを報知し、何らかの対処を促すアラームを発信する空気調和機について図12〜図20を用いて説明する。図12はWBGTと気温、湿度との関係である。図13は実施の形態2に係る空気調和機の温湿度警報機能の概略制御フロー図前段である。図14は実施の形態2に係る空気調和機の温湿度警報機能の概略制御フロー図中段である。図15は実施の形態2に係る空気調和機の温湿度警報機能の概略制御フロー図後段である。図16はリモコンの表示説明部である。図17はリモコンの操作説明部である。図18はリモコンの機能選択順説明図である。
WBGT(湿球黒球温度)とは、人体の熱収支に影響の大きい湿度、輻射熱、気温の3つを取り入れた指標で、乾球温度、湿球温度、黒球温度の値を使って以下のように計算される。
屋外のWBGT = 0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度
屋内のWBGT = 0.7×湿球温度+0.3×黒球温度
尚、WBGTは、労働環境においては「WBGT(湿球黒球温度)指数に基づく作業者の熱ストレス」に関して、日本ではJIS Z 8504 、世界的にはISO7243として規格化されている。
温度基準が31度以上の場合は危険度が高いので、外出はなるべく避け、涼しい室内で過ごす。
(28〜31度)厳重警戒
外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意する。
(25〜28度)警戒 中等度以上の生活活動でおこる危険性
運動や激しい作業をする際は定期的に十分に休息を取り入れる。
(25度未満)注意 強い生活活動でおこる危険性
一般に危険性は少ないが激しい運動や重労働時には発生する危険性がある。
熱中症の発症し易さの目安として、WBGT:湿球黒球温度(Wet−bulb globe temperature)が提唱されていて、これを、図12のように、簡易的に気温と湿度で表すことも行われている。これに依れば、気温30℃の場合、湿度45%を超えると熱中症に警戒が必要となり、湿度65%を超えると、厳重な警戒が必要となる。更に、湿度85%を超えると危険な状態になるので、涼しくするなどの行動を起こす必要が出てくる。
同様に、湿度65%の場合、室温が27℃を超えると警戒が必要となり、室温が30℃を超えると、厳重な警戒が必要となる。更に、室温が33℃を超えると危険な状態になるので、涼しくするなどの行動を起こす必要が出てくる。
実施形態2の空気調和機のリモコンReは、室内が熱中症、低体温症に罹る恐れが大きい温度、湿度になった時に、これを報知し、空気調和機の運転を促す温湿度警報機能をボタン操作で設定できるようになっている。他方、空気調和機には、温湿度警報機能の実行を制御する制御ソフトが用意されている。
温湿度警報機能は、図17に示すように、リモコンReに設けられた機能選択ボタン10を押し、リモコン表示部20の機能マーク22a〜22hを図18の矢印の順に順送りボタン15、又は、逆送りボタン16で順次選択し、温湿度警報機能マーク22dを表示させて選択し、設定ボタン17を押すことで設定される。この機能を取消す場合は、上記と同様に、温湿度警報機能マーク22dを表示させて選択し、取消ボタン18を押すことで機能が取消される。
空気調和機Aが使用者によって運転操作されている場合は、空気調和機Aは当然の事ながら、その設定にしたがって運転する。空気調和機Aが使用者によって停止されると、空気調和機は図13のステップS10で空気調和機自身が手動操作又はタイマー動作で停止状態か否かをチェックし、否であればステップ35に進み、温湿度警報機能の制御を終了し、停止状態であればステップS15に進む。
ステップS15でリモコンReにより温湿度警報機能が設定されているか否かをチェックし、否であればステップ35に進み、温湿度警報機能の制御を終了し、温湿度警報機能が設定されていればステップS20に進む。ステップS20では、リモコンの手動操作や使用者が入り/切り時間を変更できるタイマーでの入/切動作が行われてから、又は、室内の温湿度が厳重警戒範囲にから抜けてから、所定日数(例えば、2週間)以内か否かをチェックする。
温湿度警報機能の設定が行われてから、又は、空気調和機の他の操作が行われてから所定日数を超える時は、空気調和機Aの使用時期、熱中症の恐れが強い時期が過ぎたとして、ステップ35に進み、温湿度警報機能の制御を終了する。ステップS20で、温湿度警報機能の設定が行われてから、又は、空気調和機の他の操作が行われてから所定日数以内の時は、ステップS21に進む。
ステップS21で室内の温湿度の監視体制に入り、周期的に室内温湿度の計測を行うなかでの待機に入る。待機時間は室内の温湿度が図12の警戒範囲に有る時の室内温度・湿度の適正な計測間隔となるように、例えば、17分とする。このように設定すると後述する室内温湿度の計測の時に、必要な温湿度計測部と室内空気とのなじみ時間3分間と合わせて、計測間隔が20分となる。
計測間隔が長過ぎると、室内の温湿度の変化に適切に対応できなくなり、計測間隔が短過ぎると、計測に先立つ室内空気とのなじみ運転で送風機を回転させるエネルギーの消費が増えるので、短過ぎる計測間隔も避けたほうが良い。本実施形態では、WBGTが28度(厳重警戒レベルの下限)より低い領域では、計測を一時間に3回行えば十分と考え、計測間隔を20分とした。
この場合、WBGTが28度(厳重警戒レベルの下限)より高い熱中症の恐れが大きい時には、計測間隔を短くし、室内の温湿度の変化に適切な対応ができるようにするのも良い。
ステップS21で17分が経過後、ステップS22に進み、送風ファン103に超微風運転を指示し、送風ファン103を運転して、室内温度・湿度検出部に室内空気を流通させ、ステップS25に進む。ステップS25で、超微風運転開始から3分以内か否かをチェックする。
ステップS25で超微風運転開始から3分以内の時は、室内温度・湿度検出部の温度・湿度が充分に室内温度・湿度に接近していないとして、超微風運転を継続し、室内温度・湿度検出部の温度・湿度が充分に室内温度・湿度に接近するように、3分間の経過を待つ。
ステップS25で超微風運転開始から3分間が経過した時は、室内温度・湿度検出部の温度・湿度が充分に室内温度・湿度に接近したとして、ステップS26に進み、室内温度・湿度を計測し、ステップS27に進み、送風機の運転を停止して、使用者の意図である空気調和機Aの停止の状態に近づく。
次に、図14のステップS30に進み、室内温度・湿度が熱中症、低体温症の厳重警戒温湿度範囲か否かをチェックする。否の時は室内の温度・湿度が熱中症、低体温症の厳重警戒レベルではないとして、室内の温度・湿度の監視を続けるべくEを介して図13のステップS10に戻り、20分毎に、ステップS10〜S30を繰返す。
なお、実施の形態の空気調和機では厳重警戒温湿度範囲を数度の幅で上下できるようにした。これは、空気調和機が検出する温湿度と、在室者周囲の温湿度との間には差があり、空気調和機と在室者の間の気流が適切に流れている場合は、差はあまり大きくなく、気流が適切に流れていないと、差が大きくなる。空気調和機と在室者の間の空気の流れは空気調和機の据付位置や在室者の室内における居場所や家具の配置で大きく異なり、これに伴い、空気調和機が検出する温湿度と、在室者周囲の温湿度との間の差も無視できないほど変動するので、この差を考慮して空気調和機を適切に制御するためである。
ステップS30で、室内温度・湿度が熱中症、低体温症の厳重警戒温湿度範囲である時は、ステップS40に進み、在室者がいるかどうかをチェックする。在室者がいる場合はステップS46、S47、S51に進み後述する30分、5分、3分の各タイマーの計時を開始し、S52に進んで再度超微風運転を指示し、超微風運転を再開する。これは、次回の室内温湿度の計測に備えた処置であり、ステップ25の説明で前述したように、空気調和機の温湿度検出手段の温度を室内の温湿度になじませるために行うものである。ついで、ステップS53に進んで室内の温湿度が厳重警戒範囲になっていることを報知・発信する。
ステップS40で在室者がいない場合はステップS45に進み、在室者がいない時でも温湿度警報を発する機能が設定されているかを否かをチェックする。これは、常時、在室者がいることが判っている場合や、在室者がカメラの死角に居ることが多い場合など、人体検出手段の検出結果に頼らずに温湿度警報を報知・発信したい場合などに使用することで、温湿度警報機能をフルに活用する方法である。
ステップS45で在室者がいない時の温湿度警報機能が設定されていない場合は室内の温度・湿度の監視を続けるべくEを介して図13のステップS10に戻り、在室者がいない時の温湿度警報機能が設定されている場合は前述したようにステップS46、S47、S51で各タイマーの計時を開始し、S52で超微風運転を再開する。また、実施の形態3で詳述するが、ステップS52に相当する部分で警報運転を指示し、空気調和機を送風、冷房、除湿、暖房などの適切な運転モードで運転し、室内の温湿度を熱中症、低体温症の虞の少ない方向に誘導するのも効果的である。
上述の温湿度警報の報知・発信の手段・方法は、表示やブザー、音声、映像などその手段・方法は問わない。また、伝送線、無線により、他室に居る同居者に報知するようにするのも良く、更に、インターネットを介して、訪問介護業者などに報知することでも良い。また、表示、ブザー、音声、映像等の継続時間は、上記報知・発信の停止指示があるまで、断続又は連続しても良く、また、最初の数十秒間だけの、断続又は連続でも良く、手段・方法に応じて使い分けても良く、また、これらを組合わせても良い。
次に、ステップS55に進み、リモコンの手動操作や使用者が入り/切り時間を変更できるタイマーでの入/切動作による送風運転開始、冷房運転開始、暖房運転開始、温湿度警報停止等の指示が有ったか否かをチェックする。リモコンの手動操作が有った場合は、在室者によって温湿度警報に対する処置が為されたとして、又、タイマーによる運転等の指示が有った場合は、室内の温湿度の環境が改善されるとして、Eを介して図13のステップS10に戻り、ステップS10、S15、S20で空気調和機の状態をチェックし、温湿度警報機能を終了又は継続する。
ステップS55で、リモコンの手動操作又はタイマーによる送風運転開始、冷房運転開始、暖房運転開始、温湿度警報停止等の指示の何れもなかった時は、温湿度警報に気付いていないとして、繰返し温湿度警報を報知・発信するべくステップS60に進み、ステップS51の3分タイマーの起動から3分が経過したか否かをチェックする。3分を経過していなければステップS55に戻り、リモコンの手動操作などの有無のチェックを繰返す。
この間、ステップS52の指示により、次の室内温湿度の計測が適切に行われるように超微風運転は継続する。ステップS60で3分経過後はステップS61に進んで室内の温湿度を計測し、ついで、ステップS62に進んで超微風運転中の送風機の運転停止を指示して、超微風運転を停止し、ステップS63で温湿度警報の報知・発信を一旦停止する。
次に、ステップS65、S70、S75でステップS30、S40、S45と同じ手順で、ステップS65で室内温度・湿度が熱中症、低体温症の厳重警戒温湿度範囲か否かをチェックし、ステップS70で在室者がいるかどうかをチェックし、ステップS75で在室者がいない時でも温湿度警報を発する機能が設定されているかを否かをチェックする。
ステップS70で在室者がいる場合はステップS85に進み、ステップS47の5分タイマーの起動から5分が経過したか否かをチェックする。これは、室内の温湿度が厳重警戒温湿度範囲なので、繰返し温湿度警報を報知・発信するべく、一旦温湿度警報を中断する時間を設けるためであり、実施例ではこの中断時間を2分とし、3分タイマーのタイムアップから2分を計時するように5分タイマーを使用した。
ステップS75で、在室者がいない時の温湿度警報機能が設定されている場合はステップS80に進み、更に、温湿度警報が初回のみ報知・発信されるように設定されているか否かをチェックする。ここで、温湿度警報が初回のみ報知・発信されるように設定されている場合は、自動的に在室者がいない時の温湿度警報機能が設定されているものとする。
これは、在室者はいないが、室内の温湿度が厳重警戒範囲に入った時に、念のため、初回の一回だけ温湿度警報を報知・発信するもので、その後の温湿度警報を報知・発信の繰返しを止めるものであり、毎回、温湿度警報を報知・発信するためのエネルギーを節約するものである。
ステップS80で温湿度警報が初回のみ報知・発信されるように設定されている場合は、既にステップS53で温湿度警報が報知・発信されているので、今回の温湿度警報の報知・発信は行わず、引き続き室内の温湿度の監視を行うべく、Eを介して図13のステップS10に戻る。
ステップS80で温湿度警報が初回のみ報知・発信されるように設定されていない場合は、在室者がいない時でも、室内が厳重警戒温湿度範囲になった時には、繰返し温湿度警報を報知・発信するべく、ステップS85に進み、前述したように、繰返し温湿度警報を報知・発信するための中断時間に入る。
ステップS85で5分タイマーがタイムアップしていない場合は、ステップS95に進み、ステップS55と同様にリモコンの手動操作などが有ったか否かをチェックする。手動操作などが有った場合はステップS55と同様にEを介してステップS10の戻り、室内の温湿度の監視を続ける。手動操作などがなかった場合は繰返し温湿度警報を報知・発信すべく、ステップS65に戻り、ステップS65、S70、S75、S80、S85、S95を繰返し、温湿度警報の中断時間が経過するのを待つ。
ステップS85で5分タイマーがタイムアップした場合はステップS90に進み、30分タイマーがタイムアップしたか否かをチェックする。ステップS90で30分タイマーがタイムアップしない間は、Bを介してステップS47に戻り、温湿度警報の3分間の報知・発信と2分間の中断を交互に繰返し、在室者又は/及び外部に繰返し、温湿度警報を報知・発信する。
このようにすることで、温湿度警報を受けたけれども、他事にまぎれて、対処を失念しても、再度、再々度の温湿度警報を受けることで、対処することを思い出すので、空気調和機を運転するなどして室内の温湿度を厳重警戒範囲から安全側に変化させることができる。
ステップS90で30分タイマーがタイムアップした時は、ステップS46の30分タイマーの起動から30分を経過し、その間に繰返し温湿度警報を報知・発信してもリモコンの手動操作などの応答がないのは在室者が居ない場合であるとして、Eを介して図13のステップS10に戻り、室内の温度・湿度の監視を続ける。
このように、一旦は在室者が居ないと判断しても、室内の温湿度が熱中症の警戒範囲に有り続ける間、20分の運転監視を挟んで、5分毎の温湿度警報の報知・発信とその中断が30分続くサイクルを繰返し、万が一、温湿度警報の報知・発信が見過ごされても、熱中症の警戒範囲を脱するまでは温湿度警報が執拗に出され、見逃しを防ぐので、熱中症を予防する適切な処置をとることができる。
このように、実施の形態の空気調和機は、人体検出手段、並びに、温度又は/及び湿度計測手段を有し、空調運転の停止中に、人体が検出され且つ計測された室内の温度又は/及び湿度が、在室者が熱中症又は低体温症に陥る恐れがある所定の範囲にある場合、これを報知する又は/及び空気調和機の運転を開始する機能を備える。
これにより、空気調和機が使用者の意図的な停止、または、制御上の停止である場合も、例えば冷房時期で、室温が30℃で湿度が65%を超えたときに、空気調和機の運転を勧めるメッセージ(温湿度警報)を使用者に報知する。報知の手段・方法は、表示やブザー、音声、映像などその手段・方法は問わない。また、伝送線、無線により、他室に居る同居者に発信するようにするのも良く、更に、インターネットなどの無線通信網を介して、外出中の家族の携帯電話端末や外部の福祉関係者などに発信することでも良い。
また、報知するときの室温、湿度のレベルは上記の1点にとどまらず、例えば、25℃100%、35℃35%などの図12で示す、厳重警戒が必要な範囲の下側境界の点も記憶しておき、室温湿度がこれらの点を結ぶ線より高温高湿側になる場合に報知動作が開始するようにしても良い。
このようにすることにより、使用者や同居者、訪問介護業者などに室内が厳重警戒が必要な温湿度状態になっていることが知らされ、使用者、同居者、または、駆けつけた訪問介護スタッフなどの福祉関係者が空気調和機の運転を開始することで、熱中症の予防ができる。
暖房シーズンの場合は、着衣の量で体温の調節ができるので、熱中症予防のときよりも制御が複雑になるが、例えば、外気温に応じて、着衣の量を推定し、在室者の活動量と組合わせて、暖房おすすめ温度を自動設定し、室温がこれより所定値以上に低い範囲を厳重警戒範囲とし、室温がこの範囲まで低下したときに、運転おすすめの報知を行うようにしても良い。
また、報知に替え又は加えて、空気調和機の運転を行うのも良く、この場合は、室内の温湿度がより安全な方向に変化するようになり、在室者が熱中症又は低体温症に陥る恐れが少なくなる。
このため、熱中症、低体温症の予防を報知して熱中症、低体温症に陥る人を少なくすることができる空気調和機を提供することができる。
また、実施の形態の空気調和機は、空気調和機のリモコンに前記所定の範囲の変更機能を備える。
これにより、例えば、通常の冷暖房運転で空気調和機が検出する温湿度と、在室者周囲の温湿度との間の差が大きいと感じている場合は、所定の範囲を高温高湿側に変更し、差が小さいと感じている場合は、所定の範囲を低温低湿側に変更する。
これにより、在室者の周囲の温度をより適切に判断して、在室者が熱中症又は低体温症に陥る恐れがある温度範囲に達した場合に、速やかに、この旨を報知又は/及び空気調和機の運転を開始することで、在室者が熱中症又は低体温症に陥ることを予防することができる。
このため、熱中症、低体温症の予防を報知して熱中症、低体温症に陥る人を少なくすることができる空気調和機を提供することができる。
また、実施の形態の空気調和機は、人体検出を撮像手段からの画像情報を基に行う。
一般に、在室者の有無を検出する人体検出手段としては、精度はさておき、コストと故障の少なさから赤外線センサが多用されている。その主なものとして、焦電型赤外線センサやサーモパイルが有り、空気調和機はもとより、監視機器、安全装置など多方面で使用され、その有用性については疑問の余地はない。
しかし、焦電型赤外線センサは背景の温度が体温に近づくと人体と背景との区別がつきにくくなり、また、サーモパイルでは、雰囲気の温度が体温に近くなると同様に人体が雰囲気に溶け込んで、検出が困難になってしまう。従って、これらの点を考慮して使用法を限定する必要があり、これらの点を補完するソフト的、ハード的な対処が欠かせない。
実施の形態の空気調和機では、人体検出を撮像手段からの画像情報を基に行うので、室温や壁、床の温度が体温に近くなる、在室者が熱中症に罹りやすくなる状況でも、確実に人体を検出して、これを報知又は/及び空気調和機の運転を開始する。これにより、熱中症が多発する夏場でも、精度よく、人体を検出し、在室者が熱中症に罹らないようにすることができる。
また、冬場も暖房機からの温風や熱輻射によって、人体の検出が妨げられないので、人体検出の精度が低下することがなく、一年を通して、確実な人体検出で、危ない状態を報知又は/及び空気調和機の運転を開始ことで、熱中症又は低体温症に陥る恐れを事前に防ぐことができる。
このため、熱中症、低体温症の予防を報知して熱中症、低体温症に陥る人を少なくすることができる空気調和機を提供することができる。
また、実施の形態の空気調和機は、前記報知した又は/及び空気調和機の運転を開始した後も制御装置に対する手動操作又は使用者がタイマーの入り/切り時間を変更できるタイマーによる入/切動作が加えられない場合には、前記報知又は/及び運転の中断を挟んで前記報知又は/及び運転を複数回繰返す。
これにより、熱中症又は低体温症の厳重警戒範囲にあるにも拘らず、温湿度警報の発信後も何の操作も行われない場合は、在室者が温湿度警報に気付いていない恐れが強いので、目覚まし時計のスヌーズ機能さながらに繰り返し温湿度警報を発信(実施例では圧縮機を運転する場合は6分間隔、圧縮機を運転しない場合は5分間隔で発信)するので、在室者は温湿度警報を停めるため何らかの操作を空気調和機に為さなければならず、否応なく熱中症又は低体温症を回避する行動を起こし、そのことで熱中症又は低体温症を予防することができる。
このため、熱中症、低体温症の予防を報知して熱中症、低体温症に陥る人を確実に少なくすることができる空気調和機を提供することができる。
また、実施の形態の空気調和機は、前記報知が空気調和機の室内機又は/及びリモコンから、又は/及び、空気調和機の室内機又は/及びリモコンから発信された情報に基づき他室に設置された報知端末、外部の携帯電話、スマートフォン等の携帯情報端末又はパソコンから為される。
これにより、空気調和機に通常備えられている発信機能(表示灯の点灯又は点滅、ブザーの鳴動、音声(合成音声含む)による報知、伝送線による他室への伝達、インターネットを介した他所への配信機能などを含む)の何れかを使用し、制御ソフトを変更するだけで、新たな部品を追加することなしに、低コストで、熱中症、低体温症を予防情報を発信することができる。
このため、低コストで、熱中症、低体温症の予防を報知して熱中症、低体温症に陥る人を少なくすることができる空気調和機を提供することができる。
また、実施の形態の空気調和機は、前記報知の手段・方法は、表示灯の点灯又は点滅、文字表示、ブザーの鳴動又は振動、音声での通知又はこれらの手段・方法の組合せによるものである。
これにより、空気調和機に通常備えられている発信機能の何れかを使用し、制御ソフトを変更するだけで、新たな部品を追加することなしに、低コストで、熱中症、低体温症の予防を発信できる。
このため、低コストで、熱中症、低体温症の予防を報知して熱中症、低体温症に陥る人を少なくすることができる空気調和機を提供することができる。
また、実施の形態の空気調和機は、前記他室に設置された報知端末、外部のパソコン又は携帯電話に発信する情報に、前記撮像手段により得られた画像情報を含める。
これにより、定型的な文字情報や、音声情報あるいは機械的は表示灯、ブザーに加え、室内の画像情報を外部で受けることができ、百聞は一見にしかずで、瞬時に室内の危険度を認識でき、適切な処置を素早く行う一助になるので、他室で用事をするため部屋を留守にする場合でも、安心して部屋を留守にできる。
このため、熱中症、低体温症の予防を報知して熱中症、低体温症に陥る人を少なくすることができる空気調和機を提供することができる。
また、実施の形態の空気調和機は、前記報知する又は/及び空気調和機の運転を開始する機能の設定/取消が選択可能である。
これにより、熱中症、低体温症の恐れのある季節には温湿度警報を発信する機能を使用して、熱中症、低体温症を未然に防ぎ、熱中症、低体温症の恐れのない季節や、旅行などで長期に不在になるときには温湿度警報を発信する機能を不使用にして、空気調和機停止中の室内温度、湿度の計測をやめ、計測に先立つ超微風での送風機の運転に要するエネルギーを節約することができる。
このため、余分なエネルギーの消費を抑えながら、熱中症、低体温症の予防を報知して熱中症、低体温症に陥る人を少なくすることができる空気調和機を提供することができる。
また、実施の形態の空気調和機は、前記機能と、在室者がいない場合にも、計測された室内の温度又は/及び湿度が、熱中症又は低体温症に陥る恐れがある所定の範囲にある場合、在室者がいる場合と同様に前記報知する又は/及び空気調和機の運転を開始する機能とを、リモコンで選択できる。
これにより、在室者が人体検出手段の死角に入り込むなど、実際には人は居るけれども、空気調和機が不在と誤判断して不適切な運転を行うのを防ぐことができる。また常時在室者がいると判っている場合は人体検出手段の人体の検出を待たずに前記報知又は/及び空気調和機の運転開始できるので、いち早く室内を安全な状態に戻すことができる。
このため、熱中症、低体温症の予防を報知して熱中症、低体温症に陥る人を少なくすることができる空気調和機を提供することができる。
また、実施の形態の空気調和機は、前記在室者がいない場合の前記機能の前記報知した又は/及び空気調和機の運転を開始した後も制御装置に対する手動操作又は使用者がタイマーの入り/切り時間を変更できるタイマーによる入/切動作が加えられない場合に、前記報知又は/及び運転の中断を挟んで前記報知又は/及び運転する回数を、リモコンで増減できる。
これにより、室内に人は居ないが、ペットなどがいる場合、ペットなどが熱中症や低体温症に罹る恐れを他室や外部に発信できるので、ペットなどを飼っていても安心してペットを残して、他の部屋で仕事をしたり、外出して留守にすることができる。また、報知又は/及び運転する回数を減ずることで、報知又は/及び運転に要するエネルギーを節約することができる。
このため、余分なエネルギーの消費を抑えながら、ペットなどに対しても優しく、熱中症、低体温症の予防を報知して熱中症、低体温症に陥ることを少なくすることができる空気調和機を提供することができる。
また、実施の形態の空気調和機は、前記報知する又は/及び空気調和機の運転を開始する機能を設定した場合、制御装置に対する直近の手動操作から所定日数経過した時点、使用者がタイマーの入り/切り時間を変更できるタイマーによる直近の入/切動作から所定日数経過した時点、又は、前記温度又は/及び湿度計測手段で熱中症又は低体温症に陥る恐れがある所定の範囲の温度又は/及び湿度が計測された直近の時点から、所定日数経過した時に前記機能が設定から取消に切換わる。
これにより、熱中症、低体温症の恐れのある季節には温湿度警報を発信する機能を使用して、熱中症、低体温症を未然に防ぎ、日が経過して熱中症、低体温症の恐れのない季節になったり、旅行などで長期に不在になったときには、所定の日数が経過した時点で温湿度警報を発信する機能が取消され、計測に先立つ超微風での送風機の運転に要するエネルギーを節約することができる。
リモコンの手動操作やタイマーによる入/切があった場合は、使用者が空気調和機の運転を意図している場合であり、空気調和機の使用期間が過ぎていない時期であるので、その時から所定の日数(実施例では季節の移ろいを実感できる2週間)が経過した時点で、温湿度警報を発信する機能が取消される。
上記リモコンの手動操作があった場合とは、空気調和機のリモコンに限らず、携帯電話・スマートフォン等の携帯情報端末から空気調和機を操作できる場合の、携帯電話・スマートフォン等の携帯情報端末の手動操作による空気調和機の操作があった場合を含むものである。
これは、使用者が空気調和機の運転を必要としなくなった時は、そこから、例えば2週間は室内が厳重警戒温湿度範囲になるか否かを監視し、室内が厳重警戒温湿度範囲に入らなかった場合は、この2週間の間、何の操作も空気調和機に加えられなかったのは使用者が温湿度警報を発信する機能を消し忘れているとして、温湿度警報を発信する機能を自動的に取消し、温湿度警報を発信するための冷暖房運転時等のエネルギーを節約する。
また、室内が厳重警戒温湿度範囲に入った場合は温湿度警報を発信し、まだ、季節が移ろいきっていないとして、上述の温湿度警報を発信する機能の自動取消しを、この時点から2週間先に延ばし、その間も室内の温湿度の監視を続け、室内の温湿度が完全に厳重警戒温湿度範囲から外れるのを待って、上述の温湿度警報を発信する機能を自動的に取消し、エネルギーを節約する。
このため、余分なエネルギーの消費を抑えながら、熱中症、低体温症の予防を報知して熱中症、低体温症に陥る人を少なくすることができる空気調和機を提供することができる。
また、実施の形態の空気調和機は、前記計測された室内の温度又は/及び湿度が熱中症又は低体温症の厳重警戒範囲にある場合は、計測された室内の温度又は/及び湿度が熱中症又は低体温症の厳重警戒範囲にない場合よりも、室内の温度又は/及び湿度を計測する間隔を長くする。
これにより、熱中症又は低体温症の厳重警戒範囲にある場合は、室内の温湿度を短い間隔で計測して室内環境の急速な悪化をいち早く捉えて、例えば、より強力なメッセージを発信するとか、強制的に空気調和機を運転するなどの処置をとることが可能となり、室内の温湿度が熱中症又は低体温症の厳重警戒範囲外にある場合には、室内の温湿度をより長い間隔で計測して、温湿度警報を発信するエネルギーの消費を少なくすることができる。
このため、余分なエネルギーの消費を抑えながら、熱中症、低体温症の予防を報知して熱中症、低体温症に陥る人を少なくすることができる空気調和機を提供することができる。
また、実施の形態の空気調和機は、前記室内の温度又は/及び湿度を計測するのに先立ち、室内送風機を所定時間の間、空気調和機の外郭に位置する風向制御装置の位置を空気調和機停止時の位置にして、定格運転時よりも低速で運転する。
これにより、運転停止中の空気調和機の外観を継続したまま、室内送風機を騒音をほとんど感じられないほどの極低速で回転させて、室内温湿度の検出器の周りに室内空気を流通させ、室内温湿度の検出器が室内の温湿度を適確に検出できるようにする。
このとき、空気調和機の外観は運転停止中のままで、送風騒音も極めて小さくできるので、在室者が温湿度の計測に気づくことはなく、「停止中の空気調和機が独りでに動き出す」と言ったナンセンスコールを受ける恐れもない。実施例では、所定時間として、室内温湿度の検出器の温度が周りに流通する室内空気と馴染み、室内の温湿度を適確に検出できるように3分間とした。
このため、ナンセンスコールを回避して、熱中症、低体温症の予防を報知して熱中症、低体温症に陥る人を少なくすることができる空気調和機を提供することができる。
次に、本発明の実施の形態3に係る空気調和機について説明する。
実施の形態3では、温湿度警報を報知・発信と、空気調和機が有している空気調和機能を利用して室内環境の改善を図る空気調和機について図19、図20を用いて説明する。
図19は実施の形態3に係る空気調和機の温湿度警報機能の概略制御フロー図中段である。図20は実施の形態3に係る空気調和機の温湿度警報機能の概略制御フロー図後段である。
実施の形態2の空気調和機では温湿度警報を報知・発信する時に、空気調和機があたかも運転停止しているかのごとく見えるように、空気調和機の外郭に位置する風向制御装置の位置を空気調和機停止時の位置にして、定格運転時よりも低速で運転し、送風騒音も低くしている。これに対して、実施の形態3の空気調和機は温湿度警報を報知・発信する時に、通常の送風、冷房、除湿又は暖房と同様の運転を行って、悪化した室内の温湿度を改善しつつ、温湿度警報を報知・発信するようにした。
実施の形態3の空気調和機の温湿度警報機能の制御フローの前段は実施の形態2の温湿度警報機能の制御フローの前段(図13)と同じであるので説明を省略する。また、中段の制御フロー(図19)も実施の形態2の制御フローの中段(図14)とステップS47の5分タイマーがステップS47*の6分タイマーに、ステップS52の超微風運転がステップS52*の警報運転に変わり、ステップS53*とステップS60*の間に記号Cが追加になったのみで他の部分は同じであるので、変わった部分のみを説明する。
なお、実施の形態3のステップ記号は同様の内容の、実施の形態2のステップ記号の後ろに*を付けて対照しやすくした。図19のステップS47*では、6分タイマーを起動し実施の形態2で2分とした温湿度警報の中断時間を3分に変更した。これは、実施の形態3では、空気調和機を実際に運転して室内の温湿度を安全方向に変更するためで、温湿度警報の断続に伴い冷凍サイクルも断続するため、冷凍サイクルの信頼性の確保に必要な停止時間を確保するためである。
図19のステップS52*では、警報運転の指示を出し、空気調和機を通常の運転時と同様の強さの送風、冷房、除湿又は暖房運転を行う。こうすることで、送風による室内気流の制御で在室者に冷涼感与え、又は/及び冷暖房(除湿を含む)運転で室内の温湿度を警戒範囲から抜出す方向に改善する。
このように、室内の温湿度を安全方向に変化させると共に、停止しているはずの空気調和機を突然運転させることで在室者の注意を引き、表示灯の点滅やブザーの鳴動なども行って、室内の温湿度が厳重警戒範囲であることを強調して報知し、在室者に否が応でも室内の温湿度が厳重警戒範囲であることを報せることができる。
この場合、警報運転と警報運転の中断が交互に訪れることから、室内の温湿度は改善と悪化を交互に繰返し、このことで在室者に、不快感や、苛立ちを感じさせるが、不快感や、苛立ちを感じることで、室内の温湿度環境の改善の必要性が痛感でき、早い段階での熱中症・低体温症の予防行動につなげることができる。
また、実施の形態3では、実施の形態2で温湿度警報の報知・発信の都度行っている室内の温湿度の計測を止め、図13のステップS26での室内温湿度の計測のみとした。一般に、室内への熱の出入りは壁や床などの構造物を通して行われるので、空気調和機が停止中に室内の温湿度が厳重警戒範囲に入った場合、壁や床などの温度も厳重警戒範囲又はこれに近い温度になっている。
この状態で、空気調和機を運転すると、室内の温湿度は急激に改善されるが、壁や床などの構造物は熱容量が大きいため、その温度は急激には変化せず、短い間隔で室内の温湿度を計測して、厳重警戒範囲を脱したと言う結果が出ても、空気調和機の運転を止めると壁や床などからの熱移動で室内の温湿度が直ぐに悪化してしまう。
このため、実施の形態3の空気調和機では、温湿度警報の報知・発信の都度の温湿度の計測を止め、図13のステップS26での室内温湿度の計測のみとし、警報運転と警報運転の中断を単純に交互に繰返すように、温湿度警報機能の制御フローの後段を図20の如くにした。
図19のステップS60*で3分タイマーがタイムアップした場合は、図20のステップS62*に進み、それまで行ってきた警報運転の停止を指示し、空気調和機の運転を止め、ステップS63*で温湿度警報の報知・発信動作も停止する。次に、ステップS70*で在室者がいるかどうかをチェックし、在室者がいる場合はステップS85*に進み、ステップS47*の6分タイマーの起動から6分が経過したか否かをチェックする。
これは、室内の温湿度が厳重警戒温湿度範囲なので、繰返し温湿度警報を報知・発信するべく、一旦温湿度警報を中断する時間を設けるためであり、実施例ではこの中断時間を3分とし、3分タイマーのタイムアップから3分を計時するように5分タイマーを使用した。
ステップS70*で在室者がいない場合は、ステップS80*に進み、在室者がいない時でも温湿度警報が初回のみ報知・発信されるように設定されているか否かをチェックする。ステップS80*で温湿度警報が初回のみ報知・発信されるように設定されている場合は、既に図19のステップS53*で温湿度警報が報知・発信されているので、今回の温湿度警報の報知・発信は行わず、引き続き室内の温湿度の監視を行うべく、Eを介して図13のステップS10に戻る。
ステップS80*で温湿度警報が初回のみ報知・発信されるように設定されていない場合は、在室者がいない時でも、室内が厳重警戒温湿度範囲になった時には、繰返し温湿度警報を報知・発信するべく、ステップS85*に進み、前述したように、繰返し温湿度警報を報知・発信するための中断時間に入る。
ステップS85*で6分タイマーがタイムアップしていない場合は、繰返し温湿度警報を報知・発信するべくCを介してステップS55*の戻り、ステップS55*、S60*、S62*、S63*、S70*、S80*、S85*を繰返し、温湿度警報の中断時間が経過するのを待つ。
ステップS85*で6分タイマーがタイムアップした場合はステップS90*に進み、30分タイマーがタイムアップしたか否かをチェックする。ステップS90*で30分タイマーがタイムアップしない間は、Bを介して図19のステップS47*に戻り、温湿度警報の3分間の報知・発信と3分間の中断を交互に繰返し、在室者又は/及び外部に繰返し、温湿度警報を報知・発信する。
このようにすることで、温湿度警報を受けたけれども、他事にまぎれて、対処を失念しても、再度、再々度の温湿度警報を受けることで、対処することを思い出すので、空気調和機を運転するなどして室内の温湿度を厳重警戒範囲から安全側に変化させることができる。
ステップS90*で30分タイマーがタイムアップした時は、図19のステップS46*の30分タイマーの起動から30分を経過し、その間に繰返し温湿度警報を報知・発信してもリモコンの手動操作などの応答がないのは在室者が居ない場合であるとして、Eを介して図13のステップS10に戻り、室内の温度・湿度の監視を続ける。
このように、一旦は在室者が居ないと判断しても、室内の温湿度が熱中症の警戒範囲に有り続ける間、20分の運転監視を挟んで、6分毎の温湿度警報の報知・発信とその中断が30分続くサイクルを繰返し、万が一、温湿度警報の報知・発信が見過ごされても、熱中症の警戒範囲を脱するまでは温湿度警報が執拗に出され、見逃しを防ぐので、熱中症を予防する適切な処置をとることができる。
また、在室者が温湿度警報に気付かなかったり、無視したり、運転操作ができない状態であっても室内の温湿度を警戒範囲から安全な方向に改善できる。特に、他室や、外部に温湿度警報を伝えるようにしている場合は、温湿度警報に気付いた人が駆けつける間、十分とは言えないまでも、室内の温湿度を警戒範囲から安全な方向に改善できるので、熱中症や低体温症の弊害を小さくすることができる。
このように、実施の形態の空気調和機は、前記発信が、前記空気調和運転の開始後に行われる。
これにより、在室者がいて、室内の温度又は/及び湿度が、在室者が熱中症又は低体温症に陥る恐れがある所定の範囲にある場合は、何はともあれ、空気調和機の運転を開始して、室内の温湿度の変化を安全な方向に向かわせる。その後、室内に報知又は/及び他室に設置された報知端末、外部のパソコン又は携帯電話に情報を発信する。
このため、いち早く、室内の温湿度を改善して、熱中症、低体温症の予防を報知して熱中症、低体温症に陥る人を少なくすることができる空気調和機を提供することができる。
また、実施の形態の空気調和機は、前記室内の温度又は/及び湿度を計測するのに先立ち、空気調和機を所定時間の間、送風、除湿、冷房又は暖房運転する。
これにより、表示やブザー、音声、映像等による温湿度警報の報知、発信に加え、空気調和機を実際に運転し、悪化した室内の温湿度環境を改善しつつ、風や冷房空気、暖房空気でも在室者に厳重警戒温湿度範囲であることを知らせ、目や耳の不自由な人にも熱中症や低体温症の恐れを告げることができる。このとき、冷房シーズンであれば冷房、暖房シーズンであれば暖房を自動的選択するのは当然のことである。
このため、熱中症、低体温症の予防を報知して熱中症、低体温症に陥る人を確実に少なくすることができる空気調和機を提供することができる。
以上説明したように、請求項1記載の空気調和機によれば、人体検出手段、並びに、温度又は/及び湿度計測手段を有し、空調運転の停止中に、人体が検出され且つ計測された室内の温度又は/及び湿度が、在室者が熱中症又は低体温症に陥る恐れがある所定の範囲にある場合、これを報知する又は/及び空気調和機の運転を開始する機能を備える。
これにより、空気調和機が使用者の意図的な停止、または、制御上の停止である場合も、例えば冷房時期で、室温が30℃で湿度が65%を超えたときに、空気調和機の運転を勧めるメッセージ(温湿度警報)を使用者に報知する。報知の手段・方法は、表示やブザー、音声、映像などその手段・方法は問わない。また、伝送線、無線により、他室に居る同居者に発信するようにするのも良く、更に、インターネットなどの無線通信網を介して、外出中の家族の携帯電話端末や外部の福祉関係者などに発信することでも良い。
また、報知するときの室温、湿度のレベルは上記の1点にとどまらず、例えば、25℃100%、35℃35%などの図12で示す、厳重警戒が必要な範囲の下側境界の点も記憶しておき、室温湿度がこれらの点を結ぶ線より高温高湿側になる場合に報知動作が開始するようにしても良い。
このようにすることにより、使用者や同居者、訪問介護業者などに室内が厳重警戒が必要な温湿度状態になっていることが知らされ、使用者、同居者、または、駆けつけた訪問介護スタッフなどの福祉関係者が空気調和機の運転を開始することで、熱中症の予防ができる。
暖房シーズンの場合は、着衣の量で体温の調節ができるので、熱中症予防のときよりも制御が複雑になるが、例えば、外気温に応じて、着衣の量を推定し、在室者の活動量と組合わせて、暖房おすすめ温度を自動設定し、室温がこれより所定値以上に低い範囲を厳重警戒範囲とし、室温がこの範囲まで低下したときに、運転おすすめの報知を行うようにしても良い。
また、報知に替え又は加えて、空気調和機の運転を行うのも良く、この場合は、室内の温湿度がより安全な方向に変化するようになり、在室者が熱中症又は低体温症に陥る恐れが少なくなる。
このため、熱中症、低体温症の予防を報知して熱中症、低体温症に陥る人を少なくすることができる空気調和機を得ることができる。
また、本実施の形態の空気調和機によれば、空気調和機のリモコンに前記所定の範囲の変更機能を備える。
これにより、例えば、通常の冷暖房運転で空気調和機が検出する温湿度と、在室者周囲の温湿度との間の差が大きいと感じている場合は、所定の範囲を高温高湿側に変更し、差が小さいと感じている場合は、所定の範囲を低温低湿側に変更する。
これにより、在室者の周囲の温度をより適切に判断して、在室者が熱中症又は低体温症に陥る恐れがある温度範囲に達した場合に、速やかに、この旨を報知又は/及び空気調和機の運転を開始することで、在室者が熱中症又は低体温症に陥ることを予防することができる。
このため、熱中症、低体温症の予防を報知して熱中症、低体温症に陥る人を少なくすることができる空気調和機を得ることができる。
また、本実施の形態の空気調和機によれば、人体検出を撮像手段からの画像情報を基に行う。
これにより、人体検出を撮像手段からの画像情報を基に行うので、室温や壁、床の温度が体温に近くなる、在室者が熱中症に罹りやすくなる状況でも、確実に人体を検出して、これを報知又は/及び空気調和機の運転を開始する。これにより、熱中症が多発する夏場でも、精度よく、人体を検出し、在室者が熱中症に罹らないようにすることができる。
また、冬場も暖房機からの温風や熱輻射によって、人体の検出が妨げられないので、人体検出の精度が低下することがなく、一年を通して、確実な人体検出で、危ない状態を報知又は/及び空気調和機の運転を開始ことで、熱中症又は低体温症に陥る恐れを事前に防ぐことができる。
このため、熱中症、低体温症の予防を報知して熱中症、低体温症に陥る人を少なくすることができる空気調和機を得ることができる。
また、本実施の形態の空気調和機によれば、前記報知した又は/及び空気調和機の運転を開始した後も制御装置に対する手動操作又は使用者がタイマーの入り/切り時間を変更できるタイマーによる入/切動作が加えられない場合には、前記報知又は/及び運転の中断を挟んで前記報知又は/及び運転を複数回繰返す。
これにより、熱中症又は低体温症の厳重警戒範囲にあるにも拘らず、温湿度警報の発信後も何の操作も行われない場合は、在室者が温湿度警報に気付いていない恐れが強いので、目覚まし時計のスヌーズ機能さながらに繰り返し温湿度警報を発信(実施例では圧縮機を運転する場合は6分間隔、圧縮機を運転しない場合は5分間隔で発信)するので、在室者は温湿度警報を停めるため何らかの操作を空気調和機に為さなければならず、否応なく熱中症又は低体温症を回避する行動を起こし、そのことで熱中症又は低体温症を予防することができる。
このため、熱中症、低体温症の予防を報知して熱中症、低体温症に陥る人を確実に少なくすることができる空気調和機を得ることができる。
また、本実施の形態の空気調和機によれば、前記報知が空気調和機の室内機又は/及びリモコンから、又は/及び、空気調和機の室内機又は/及びリモコンから発信された情報に基づき他室に設置された報知端末、外部の携帯電話、スマートフォン等の携帯情報端末又はパソコンから為される。
これにより、空気調和機に通常備えられている発信機能(表示灯の点灯又は点滅、ブザーの鳴動、音声(合成音声含む)による報知、伝送線による他室への伝達、インターネットを介した他所への配信機能などを含む)の何れかを使用し、制御ソフトを変更するだけで、新たな部品を追加することなしに、低コストで、熱中症、低体温症を予防情報を発信することができる。
このため、低コストで、熱中症、低体温症の予防を報知して熱中症、低体温症に陥る人を少なくすることができる空気調和機を得ることができる。
また、本実施の形態の空気調和機によれば、前記発信が、前記空気調和運転の開始後に行われる。
これにより、在室者がいて、室内の温度又は/及び湿度が、在室者が熱中症又は低体温症に陥る恐れがある所定の範囲にある場合は、何はともあれ、空気調和機の運転を開始して、室内の温湿度の変化を安全な方向に向かわせる。その後、室内に報知又は/及び他室に設置された報知端末、外部のパソコン又は携帯電話に情報を発信する。
このため、いち早く、室内の温湿度を改善して、熱中症、低体温症の予防を報知して熱中症、低体温症に陥る人を少なくすることができる空気調和機を得ることができる。
また、本実施の形態の空気調和機によれば、前記報知の手段・方法は、表示灯の点灯又は点滅、文字表示、ブザーの鳴動又は振動、音声での通知又はこれらの手段・方法の組合せによるものである。
これにより、空気調和機に通常備えられている発信機能の何れかを使用し、制御ソフトを変更するだけで、新たな部品を追加することなしに、低コストで、熱中症、低体温症の予防を発信できる。
このため、低コストで、熱中症、低体温症の予防を報知して熱中症、低体温症に陥る人を少なくすることができる空気調和機を得ることができる。
また、本実施の形態の空気調和機によれば、前記他室に設置された報知端末、外部のパソコン又は携帯電話に発信する情報に、前記撮像手段により得られた画像情報を含める。
これにより、定型的な文字情報や、音声情報あるいは機械的は表示灯、ブザーに加え、室内の画像情報を外部で受けることができ、百聞は一見にしかずで、瞬時に室内の危険度を認識でき、適切な処置を素早く行う一助になるので、他室で用事をするため部屋を留守にする場合でも、安心して部屋を留守にできる。
このため、熱中症、低体温症の予防を報知して熱中症、低体温症に陥る人を少なくすることができる空気調和機を得ることができる。
また、本実施の形態の空気調和機によれば、前記報知する又は/及び空気調和機の運転を開始する機能の設定/取消が選択可能である。
これにより、熱中症、低体温症の恐れのある季節には温湿度警報を発信する機能を使用して、熱中症、低体温症を未然に防ぎ、熱中症、低体温症の恐れのない季節や、旅行などで長期に不在になるときには温湿度警報を発信する機能を不使用にして、空気調和機停止中の室内温度、湿度の計測をやめ、計測に先立つ超微風での送風機の運転に要するエネルギーを節約することができる。
このため、余分なエネルギーの消費を抑えながら、熱中症、低体温症の予防を報知して熱中症、低体温症に陥る人を少なくすることができる空気調和機を得ることができる。
また、本実施の形態の空気調和機によれば、前記機能と、在室者がいない場合にも、計測された室内の温度又は/及び湿度が、熱中症又は低体温症に陥る恐れがある所定の範囲にある場合、在室者がいる場合と同様に前記報知する又は/及び空気調和機の運転を開始する機能とを、リモコンで選択できる。
これにより、在室者が人体検出手段の死角に入り込むなど、実際には人は居るけれども、空気調和機が不在と誤判断して不適切な運転を行うのを防ぐことができる。また常時在室者がいると判っている場合は人体検出手段の人体の検出を待たずに前記報知又は/及び空気調和機の運転開始できるので、いち早く室内を安全な状態に戻すことができる。
このため、熱中症、低体温症の予防を報知して熱中症、低体温症に陥る人を少なくすることができる空気調和機を得ることができる。
また、本実施の形態の空気調和機によれば、前記在室者がいない場合の前記機能の前記報知した又は/及び空気調和機の運転を開始した後も制御装置に対する手動操作又は使用者がタイマーの入り/切り時間を変更できるタイマーによる入/切動作が加えられない場合に、前記報知又は/及び運転の中断を挟んで前記報知又は/及び運転する回数を、リモコンで増減できる。
これにより、室内に人は居ないが、ペットなどがいる場合、ペットなどが熱中症や低体温症に罹る恐れを他室や外部に発信できるので、ペットなどを飼っていても安心してペットを残して、他の部屋で仕事をしたり、外出して留守にすることができる。また、報知又は/及び運転する回数を減ずることで、報知又は/及び運転に要するエネルギーを節約することができる。
このため、余分なエネルギーの消費を抑えながら、ペットなどに対しても優しく、熱中症、低体温症の予防を報知して熱中症、低体温症に陥ることを少なくすることができる空気調和機を得ることができる。
また、本実施の形態の空気調和機によれば、前記報知する又は/及び空気調和機の運転を開始する機能を設定した場合、制御装置に対する直近の手動操作から所定日数経過した時点、使用者がタイマーの入り/切り時間を変更できるタイマーによる直近の入/切動作から所定日数経過した時点、又は、前記温度又は/及び湿度計測手段で熱中症又は低体温症に陥る恐れがある所定の範囲の温度又は/及び湿度が計測された直近の時点から、所定日数経過した時に前記機能が設定から取消に切換わる。
これにより、熱中症、低体温症の恐れのある季節には温湿度警報を発信する機能を使用して、熱中症、低体温症を未然に防ぎ、日が経過して熱中症、低体温症の恐れのない季節になったり、旅行などで長期に不在になったときには、所定の日数が経過した時点で温湿度警報を発信する機能が取消され、計測に先立つ超微風での送風機の運転に要するエネルギーを節約することができる。
リモコンの手動操作やタイマーによる入/切があった場合は、使用者が空気調和機の運転を意図している場合であり、空気調和機の使用期間が過ぎていない時期であるので、その時から所定の日数(実施例では季節の移ろいを実感できる2週間)が経過した時点で、温湿度警報を発信する機能が取消される。
上記リモコンの手動操作があった場合とは、空気調和機のリモコンに限らず、携帯電話・スマートフォン等の携帯情報端末から空気調和機を操作できる場合の、携帯電話・スマートフォン等の携帯情報端末の手動操作による空気調和機の操作があった場合を含むものである。
これは、使用者が空気調和機の運転を必要としなくなった時は、そこから、例えば2週間は室内が厳重警戒温湿度範囲になるか否かを監視し、室内が厳重警戒温湿度範囲に入らなかった場合は、この2週間の間、何の操作も空気調和機に加えられなかったのは使用者が温湿度警報を発信する機能を消し忘れているとして、温湿度警報を発信する機能を自動的に取消し、温湿度警報を発信するための冷暖房運転時等のエネルギーを節約する。
また、室内が厳重警戒温湿度範囲に入った場合は温湿度警報を発信し、まだ、季節が移ろいきっていないとして、上述の温湿度警報を発信する機能の自動取消しを、この時点から2週間先に延ばし、その間も室内の温湿度の監視を続け、室内の温湿度が完全に厳重警戒温湿度範囲から外れるのを待って、上述の温湿度警報を発信する機能を自動的に取消し、エネルギーを節約する。
このため、余分なエネルギーの消費を抑えながら、熱中症、低体温症の予防を報知して熱中症、低体温症に陥る人を少なくすることができる空気調和機を得ることができる。
また、本実施の形態の空気調和機によれば、前記計測された室内の温度又は/及び湿度が熱中症又は低体温症の厳重警戒範囲にある場合は、計測された室内の温度又は/及び湿度が熱中症又は低体温症の厳重警戒範囲にない場合よりも、室内の温度又は/及び湿度を計測する間隔を長くする。
これにより、熱中症又は低体温症の厳重警戒範囲にある場合は、室内の温湿度を短い間隔で計測して室内環境の急速な悪化をいち早く捉えて、例えば、より強力なメッセージを発信するとか、強制的に空気調和機を運転するなどの処置をとることが可能となり、室内の温湿度が熱中症又は低体温症の厳重警戒範囲外にある場合には、室内の温湿度をより長い間隔で計測して、温湿度警報を発信するエネルギーの消費を少なくすることができる。
このため、余分なエネルギーの消費を抑えながら、熱中症、低体温症の予防を報知して熱中症、低体温症に陥る人を少なくすることができる空気調和機を得ることができる。
また、本実施の形態の空気調和機によれば、前記室内の温度又は/及び湿度を計測するのに先立ち、室内送風機を所定時間の間、空気調和機の外郭に位置する風向制御装置の位置を空気調和機停止時の位置にして、定格運転時よりも低速で運転する。
これにより、運転停止中の空気調和機の外観を継続したまま、室内送風機を騒音をほとんど感じられないほどの極低速で回転させて、室内温湿度の検出器の周りに室内空気を流通させ、室内温湿度の検出器が室内の温湿度を適確に検出できるようにする。
このとき、空気調和機の外観は運転停止中のままで、送風騒音も極めて小さくできるので、在室者が温湿度の計測に気づくことはなく、「停止中の空気調和機が独りでに動き出す」と言ったナンセンスコールを受ける恐れもない。実施例では、所定時間として、室内温湿度の検出器の温度が周りに流通する室内空気と馴染み、室内の温湿度を適確に検出できるように3分間とした。
このため、ナンセンスコールを回避して、熱中症、低体温症の予防を報知して熱中症、低体温症に陥る人を少なくすることができる空気調和機を得ることができる。
また、本実施の形態の空気調和機によれば、前記室内の温度又は/及び湿度を計測するのに先立ち、空気調和機を所定時間の間、送風、除湿、冷房又は暖房運転する。
これにより、表示やブザー、音声、映像等による温湿度警報の報知、発信に加え、空気調和機を実際に運転し、悪化した室内の温湿度環境を改善しつつ、風や冷房空気、暖房空気でも在室者に厳重警戒温湿度範囲であることを知らせ、目や耳の不自由な人にも熱中症や低体温症の恐れを告げることができる。このとき、冷房シーズンであれば冷房、暖房シーズンであれば暖房を自動的選択するのは当然のことである。
このため、熱中症、低体温症の予防を報知して熱中症、低体温症に陥る人を確実に少なくすることができる空気調和機を得ることができる。