JP2016195265A - レーザダイシング装置及び方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ウェーハ、特に50μm以下の薄いウェーハに対してレーザダイシングを行う場合であっても、アブレーションを防止し、ワークディスタンスを一定にでき、照射効率を向上できるので、精度の良いレーザダイシングを行うことができるレーザダイシング装置及び方法を提供する。
【解決手段】レーザ光を照射するレーザ照射手段と、レーザ光を透過可能に形成されウェーハを保持するウェーハテーブルと、レーザ照射手段の集光レンズ面とウェーハテーブルの間隙にある透明の液膜と、を備え、レーザ照射手段は、ウェーハテーブルと液膜とを介してウェーハにレーザ光を照射し、ウェーハの内部に改質層を形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、ウェーハを処理するレーザダイシング装置及び方法に関する。
表面に複数のデバイス(半導体素子)が形成されたウェーハを個々のチップに分割する方法として、レーザを用いたダイシング方法(レーザダイシング)が知られている。レーザダイシングは、ストリート(分割予定ライン)に沿ってウェーハにレーザ光を入射することにより、ウェーハの内部に多光子吸収による改質層を形成する方法である。レーザダイシングされたウェーハは、その後、ウェーハに外的応力を印加することにより、改質層を起点として個々のチップに分割される。このレーザダイシングによれば、チッピングをほとんど発生させることなく、分割できるという利点がある。
このようなレーザダイシングを行う方法及び装置は、例えば特許文献1〜3がある。
特許文献1は、ウェーハをダイシングテープ及びリングフレームにて貼合支持固定し、その状態でダイシングテープ側からウェーハ裏面側にレーザ光を入射させレーザダイシングすることが記載されている。
特許文献2では、一対の透明ガラス板でウェーハを挟んで支持し、ウェーハの表裏両側からレーザ光を入射できるようにすることが提案されている。
特許文献3では、ウェーハ表面の周縁部に設けられたデバイスが形成されていない領域を接触保持する環状の保持面を有する保持手段を備え、デバイス形成領域に触れずにウェーハを保持し、ウェーハの裏面からダイシングテープ越しにレーザ光を入射して、ウェーハ内部に改質層を形成することが提案されている。
特許文献1〜3から分かるように、一般的にウェーハの表面側には回路パターン等が形成されており、ストリート付近に回路パターン等の金属膜が形成されているとレーザ光を反射してしまうため、ウェーハの裏面からレーザ光を入射させることが行われている。
また、特許文献4では、屈折液(例えば水)で満たされた浸漬槽の底部に設けられたステージ上にウェーハを配置し、レーザヘッドの集光レンズを屈折液に浸漬させた状態でレーザダイシング加工することが記載されている。また、浸漬槽内の屈折液は水の噴射により流動させると記載されている。これにより、レーザ光の反射を抑制することができるので、レーザ光の照射効率を向上できるとされている。
これら特許文献1〜4の何れの場合にも、レーザダイシングは、ウェーハ厚みの一定の集光点深度(焦点深度ともいう)位置にレーザ光を照射効率よく照射し、ストリートに沿って一定深さ位置に改質層を連続的に形成することが重要になる。
ところで、近年においては、例えばTSV(シリコン貫通ビア)用等のウェーハのような厚みが極めて薄い、例えば50μm以下のウェーハについてレーザダイシングを行うことが要求されている。
特開2007−123404号公報 特開2005−109045号公報 特開2010−029927号公報 特開2007−136482号公報
しかしながら、特許文献1〜4の方法及び装置では、薄いウェーハ、例えば50μm以下のウェーハに対してレーザダイシングを行う際に発生し易い以下の問題を解決できないという欠点がある。
(1)薄いウェーハはアブレーションが生じ易い。
アブレーションとは、ウェーハに照射されたレーザ光による溶融によって、ウェーハ内部からウェーハのレーザ光入射面(ウェーハ裏面から照射する場合にはウェーハ裏面)まで連続した孔が形成されてしまう現象を言う。アブレーションが生じると、溶融した溶融物が飛散してウェーハに付着し、付着した部分の素子を破壊してしまう。
(2)薄いウェーハはレーザ光の照射効率が悪くなる。
ウェーハの厚みが薄い場合には、ウェーハ内部におけるレーザ光の集光点深度を浅くせざるをえないため、幅広い角度からレーザ光を入射させる必要がある。しかし、幅広い角度からレーザ光を入射させると、空気とウェーハとの屈折率差が大きいためにその界面(ウェーハ面)でレーザ光が反射し、その分、レーザ光の照射効率が低下する。これにより、改質を十分に行うことができない。そうかと言って、レーザパワーを大きくし過ぎると、アブレーションが生じ易くなる。
(3)薄いウェーハは極めて高い精度ワークディスタンスが要求される。
ここで、ワークディスタンスとは、集光レンズの先端とウェーハ内部に設定された集光点位置との距離を言う。ワークディスタンスが一定でなくなると、ウェーハのストリート(分割予定ライン)に沿ってレーザ光を照射した際に、レーザ光の集光点深度が変わるため、一定の深さ位置に改質層を形成できなくなる。これにより、ウェーハの分割性能が低下するだけでなく、ワークディスタンスが短くなる方向に変動する場合にはウェーハのレーザ光入射面近傍が溶融されるのでアブレーションの原因になる。したがって、ウェーハが薄い場合には、ワークディスタンスが僅かに短くなる方向に変動しただけでアブレーションが生じてしまう。
更には、薄いウェーハ特有の反りや撓みがワークディスタンスの一定化を阻害している。このウェーハの反りや撓みの問題に対しては、ウェーハをテーブルで保持してレーザ光の入射を行うことで矯正することは可能である。
しかし、特許文献1では、ウェーハの裏面にレーザ光を入射できるようにするために、ウェーハの表面側をテーブルで吸着保持する構成としている。このようにウェーハの表面側をテーブルで吸着保持すると、例えば、MEMS素子(Micro Electro Mechanical System)のように微細構造の素子等が形成されたウェーハの場合、吸着により素子が破壊されてしまうという欠点がある。このような問題は、透明ガラス板でウェーハを挟持する特許文献2のレーザダイシング装置でも生じる。
また、特許文献3に記載されるように、環状の保持面を有する保持手段でウェーハの周縁部のみを支持することも考えられるが、ウェーハの周縁部のみを支持すると、ウェーハに撓みが生じ、所定の領域に改質層を形成できないという欠点がある。
更には、一般にウェーハの裏面に貼着されるダイシングテープ(特に薄いテープの場合)の表面(テープ表面)は、ガラスのような硬質体のような平坦な平面を形成する場合は少なく、大体うねりを持つことが多い。また、物によっては、微小に荒れている場合が多い。このため、ウェーハの裏面からダイシングテープ越しにレーザ光を入射しようとすると、テープ表面における散乱の影響でレーザ光が効率的に入射しないという問題がある。
また、特許文献3では、保持手段に設けられた凹部とウェーハとで形成される空間内にブロー手段から空気を導入するとともに、反り矯正手段によりウェーハの裏面を押止することによって、ウェーハの反りやうねりを矯正しようとしている。しかし、このように特許文献3に開示される方法では、ウェーハの反りやうねりを完全に矯正することは原理的に困難である。このため、ウェーハの裏面からレーザ光を入射する際、ウェーハの内部の所定位置にレーザ光の集光点(フォーカス)を合わせることができず、ウェーハの内部にレーザ光による改質層を精度よく形成することができない。
また、ウェーハの裏面をガラス板で支持しながら、ウェーハの裏面からガラス板越しにレーザ光を入射する場合、ガラス面とウェーハの裏面(ダイシングテープの貼着された面)の間に空気層が介在すると、それらの界面において繰り返し反射が起こり、ウェーハの所望の部分以外のところに、レーザ光が散乱してしまい、レーザ焼けを起こすことになる。そうした散乱光によるロスは、そのロスした分だけ、その付近でエネルギーが消費されることになり、ガラス面における表面劣化や、劣化に伴う破片のダイシングテープへの付着など、その付近のレーザ光の散乱に伴う弊害を受けることになる。
更には、ガラス面とウェーハの裏面が密着していない場合、レーザパワーを大きくしてレーザを投入したとしても、ガラス面とウェーハの裏面との間におこる散乱の影響により、効率的にウェーハ内部に改質層が形成されないという問題がある。
また、ワークディスタンスが一定になりにくい別の要因としては、集光レンズとウェーハのレーザ光入射面との間のレーザ光路における屈折率の変動がある。特許文献4の場合、集光レンズを浸漬槽内の屈折液に浸漬させた状態でレーザ照射を行うので、屈折液の屈折率が変動し易く、反射防止は抑制できてもワークディスタンスが一定になりにくい。即ち、ストリートに沿ってレーザダイシングするためにステージを移動させたり、屈折液を噴射して浸漬槽内の屈折液を流動させたりすることによって、浸漬槽内の屈折液がゆらいだり、屈折液に渦や気泡が発生し易くなる。また、特許文献4は、集光レンズを浸漬槽内の屈折液に浸漬させた状態でレーザ照射を行うので、集光レンズの近傍の液温が他の部分に比べて高くなり、浸漬槽内に対流が生じる。これらの要因によって、集光レンズとウェーハのレーザ光入射面との間の光路上において屈折率が変動し易いため、ワークディスタンスが一定でなくなる。
即ち、特許文献4における屈折液は、反射を抑制して照射効率の上昇には寄与するが、ワークディスタンスの一定化にとっては悪く作用する。これにより、特許文献4の技術を単に使用しただけでは、薄いウェーハ、特に50μm以下のウェーハを精度良くレーザダイシングすることはできない。
特にワークディスタンスが一定でない場合、特に、薄いウェーハに対してもアブレーションを起こさずにウェーハ内部のみに精度よく改質層を形成するという課題に対応することができない。即ち、たとえオートフォーカスして表面形状に追従させながら、表面から一定深さに調整しようとしても、高速にスキャンする中では、表面から絶えず一定深さに改質層を形成することは難しく、また間に介在する液体のゆらぎによる屈折率変化などからも改質層が形成される高さ位置がばらつくことになる。特に非常に薄いウェーハに対して、精度よく一定深さ位置に改質層を形成する場合においては、改質層が形成される深さ位置がレーザ照射側の表面付近にずれると、ウェーハ内部の改質のみならず、ウェーハ表面からアブレーションを引き起こすことにつながる。このようなことになると、ウェーハ表面は無傷でウェーハ内部だけに改質層を形成する本願の目的には合致しなくなる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ウェーハ、特に50μm以下の薄いウェーハに対してレーザダイシングを行う場合であっても、アブレーションを防止し、ワークディスタンスを一定にでき、照射効率を向上できるので、精度の良いレーザダイシングを行うことができるレーザダイシング装置及び方法を提供する。
更に本発明は、ウェーハ表面に形成された微細構造のデバイスを破壊することなくウェーハの反りや撓みを矯正してワークディスタンスを一定化することができるので、ウェーハ、特に50μm以下の薄いウェーハであってもウェーハ内部に改質層を精度良く形成することができるレーザダイシング装置及び方法を提供することを目的とする。
本発明のレーザダイシング装置は、前記目的を達成するために、ウェーハに対してレーザ光を照射し、ウェーハの内部に改質層を形成するレーザダイシング装置において、レーザ光を照射するレーザ照射手段と、レーザ光を透過可能に形成されウェーハを保持するウェーハテーブルと、レーザ照射手段の集光レンズ面とウェーハテーブルの間隙にある透明の液膜と、を備え、レーザ照射手段は、ウェーハテーブルと液膜とを介してウェーハにレーザ光を照射し、ウェーハの内部に改質層を形成する。
また、本発明のレーザダイシング方法は、レーザ照射手段からウェーハに対してレーザ光を照射し、ウェーハの内部に改質層を形成するレーザダイシング方法において、レーザ光を透過可能に形成されウェーハを保持するウェーハテーブルと、レーザ照射手段の集光レンズ面とウェーハテーブルとの間隙にある透明の液膜と、を介して、レーザ照射手段からウェーハに対してレーザ光を照射して、ウェーハの内部に改質層を形成する。
本発明のレーザダイシング装置及び方法は、ウェーハの厚みに関係なく適用できるが、特に50μm以下の薄いウェーハの場合に有効である。ウェーハ厚みの下限は設けなかったが30μm以上であることが好ましい。
また、「平坦な保持面」における平坦とは、完全な平坦を意味するものではなく、ウェーハを密着してウェーハの反りや撓みを矯正できる平坦性を言う。更に、ウェーハテーブルの一方面がレーザ光入射面であり、他方面が保持面である。
本発明のレーザダイシング装置及び方法によれば、レーザ照射手段の集光レンズ面とウェーハテーブルのレーザ光入射面との間の間隙には、空気よりも屈折率の大きな屈折液Aの液膜が界面張力によって保持されている。
このように、集光レンズ面とウェーハテーブルのレーザ光入射面との間の間隙に空気よりも屈折率の大きな屈折液Aの液膜が存在するよりも開口数を大きくすることができるので、ウェーハテーブルに入射するレーザ光の入射角を大きくできるとともに、ウェーハテーブルに入射したレーザ光の屈折角を大きくできる。
レーザ光の入射角が小さくなることによって、集光レンズの両端から出たレーザ光が全反射することを防止でき、ウェーハテーブルを介してウェーハ内部に入射させることができるので、照射効率を向上できる。照射効率が良くなることによって、小さなレーザ光のエネルギーでウェーハ内部の改質を行えるので、アブレーションが起こりにくくなる。
また、ウェーハテーブルに入射するレーザ光の屈折角が大きくなることによって幅広い角度からレーザ光を集光して集光点を結ぶことができるので、浅い集光点深度位置にレーザ光の集光点を結び易くなる。これにより、薄いウェーハのレーザダイシングに対応させることができる。更には、幅広い角度からレーザ光を集光して集光点を結ぶことによって、ウェーハのレーザ光入射面における照射面積を大きくして単位面積当りのエネルギーを小さくし、これによりウェーハのレーザ光入射面での溶融を防止できる。その一方、ウェーハ内部の集光点位置でのレーザ光を絞り込むことができ、集光点領域での照射面積を小さくして単位面積当りのエネルギーを大きくすることができる。これにより集光点領域での溶融を促進することができる。この結果、薄いウェーハ、特に50μm以下のウェーハであってもウェーハ内部の集光点領域、即ち改質を行う領域のみが溶融するので、アブレーションが発生しない。
また、屈折液Aの液膜は、集光レンズ面とウェーハテーブルのレーザ光入射面との間の間隙のみに界面張力によって保持されている。これにより、ストリートに沿ってウェーハ内部の一定深さ位置に精度よく改質層を連続的に形成するために、集光レンズとウェーハテーブルとが相対的に高速移動しても、液膜が波立ったり、ゆらいだりすることはない。これにより、屈折液Aによる屈折率の変動がないので、ワークディスタンスを一定化させることに寄与する。
更に、本発明のレーザダイシング装置及び方法によれば、レーザダイシングされるウェーハは、レーザ光を透過可能に形成され、ウェーハの裏面側を密着保持する平坦な保持面を有するウェーハテーブルによって保持されるので、ウェーハの反りや撓みが矯正される。
また、本発明のレーザダイシング装置及び方法によれば、集光レンズからウェーハまでのレーザ光路のうち、屈折液Aを薄膜にして、大部分のレーザ光路をウェーハテーブルのように固体媒質にすることによって、光路途中における屈折率の変動を極めて小さくすることが可能となる。
上記したように、開口数を高めて屈折角を大きくし、液膜における屈折率の変動を抑制し、ウェーハの反りや撓みを矯正し、レーザ光路全般での屈折率の変動を抑制することによって、小さなレーザパワーでウェーハの浅い集光点深度位置に一定のワークディスタンスでレーザ光を照射することができるので、一定のウェーハ深さに改質層を精度良く連続形成することができる。
これにより、本発明のレーザダイシング装置及び方法は、ウェーハ、特に50μm以下の薄いウェーハに対してレーザダイシングを行う場合であっても、アブレーションを防止し、ワークディスタンスを一定にでき、照射効率を向上できるので、精度の良いレーザダイシングを行うことができる。
また、ウェーハ表面に形成された微細構造のデバイスを破壊することなくウェーハの反りや撓みを矯正してワークディスタンスを一定化することができるので、ウェーハ、特に50μm以下の薄いウェーハであってもウェーハ内部に改質層を精度良く形成することができる。
本発明においては、集光レンズ面とウェーハテーブルのレーザ光入射面との間の間隙は、最短距離が0.01〜2mmの範囲であることが好ましい。更に好ましくは、特に装置の動作精度にもよるが、集光レンズ面とウェーハテーブルのレーザ光入射面とが接触しない限度において0.2mm以下程度であることが望ましい。この範囲において、集光レンズ、ウェーハテーブル、屈折液Aとの間に界面張力が効果的に作用し易いからである。すなわち、高速に相対的に動作しても、屈折液Aが界面張力によって、集光レンズに追従するからである。ここで「最短距離」としたのは、集光レンズは凸状をしているためである。
なお、屈折液Aの表面張力や粘度、集光レンズ、ウェーハテーブルの材質や表面状態によって界面張力は異なるので、最短距離を0.01〜2mmに限定するものではなく、要は界面張力を効果的に発生させる間隙距離を設定することが重要である。
ただし、この集光レンズとウェーハテーブルの距離そのものは一定に設定する必要がある。レーザの波長や、材料の屈折率、集光点の位置によって、ワークディスタンスの設定は微小に変わる。しかし、それによって、屈折液Aの厚みの設定が大きく変化してはならない。屈折液Aの厚みは、集光レンズとウェーハテーブルの間が相互に高速に移動したとしても、透明性を維持しながら潤滑性を高め、界面張力によって相互の移動に追従する必要性があるためである。
また、ウェーハテーブルの表面状態も、液体の界面張力による屈折液Aの移動を安定化させる上で一定の状態にしておく必要がある。
例えば、引用文献4に記載の技術において、レーザによる加工対象のウェーハ等の基板材料やその上の膜材料について特段の制約は記載されていない。様々な基板材料に対して同じ要領でレーザ加工をする必要がある。そこで、集光レンズと基板の間に屈折液を入れて基板を屈折液で満たす条件では、基板表面が親水性の材料から構成される場合と、基板表面が疎水性の材料から構成される場合とでは、集光レンズと基板とが相互に高速に動作する状況下で屈折液の追従性は大きく変化し、屈折率のゆらぎも大きく変化することがある。場合によっては、疎水性の表面を有する場合、屈折液をはじいてしまう等の問題もあり、安定した高屈折媒質内に光を通すという目論見に対し意味を成さないこともある。本願発明の場合は、集光レンズとウェーハテーブルという透明な固体と固体によって近接して微小隙間を持って構成された状態に、極少量の屈折液Aを介在させることで、高速動作においても屈折液Aが双方の表面に支持され、屈折液Aの安定した界面張力を巧みに利用して、相互の固体の直接接触を防ぎつつ潤滑しながら安定した光の経路を確保している。また、ウェーハテーブルと集光レンズともに同じガラスとして屈折率を1.5に近い材料で構成し、その上で、その間を埋める屈折液Aも1.5に近い液体を使用することで、集光レンズからウェーハテーブルまでほとんど同じ屈折率とすることができる。この屈折率の一定化は、途中の反射による光導入の損失を防ぎながら、高い開口数NAを確保し、レーザ集光点における見込み角を大きくすることで、厚みの薄いウェーハ等の基板材料であってもアブレーションしない条件にすることに大きく貢献している。なお、「見込み角」については、後述する開口数NAの説明の中で説明しているので、参照されたい。
また、ウェーハテーブルのレーザ光入射面を粗面処理することが好ましい。粗面処理により、ウェーハテーブルのレーザ光入射面の実質的な表面積が大きくなり、その大きい表面積に働く個液間の界面張力も大きくなる。これにより、屈折液Aの液膜が集光レンズとウェーハテーブルのレーザ光入射面との間の間隙に保持され易くなる。屈折液Aとしては、イソプロピルアルコールを含む液体であることが好ましい。水と比べてイソプロピルアルコール(IPA)は表面張力が低いため、集光レンズとウェーハテーブルとの間の隙間にくまなく入り込み、集光レンズとウェーハテーブルとの間に屈折液Aを保持し易くなる。
本発明においては、ウェーハテーブルは、レーザ光が透過可能であって表裏面が平坦なテーブル板を有し、該テーブル板は石英ガラス、ゲルマニウム、シリコン、プラスチック樹脂の何れかで形成されていることが好ましい。特に、ゲルマニウム、シリコンのようにレーザ光路の屈折率がウェーハの屈折率に近い材質でウェーハテーブルを形成することが好ましい。この場合、ゲルマニウム、シリコンは、レーザ光の透過性のものを選択することが重要である。
本発明においては、ウェーハの裏面側が空気よりも屈折率の大きな屈折液Bが介在された状態でウェーハテーブルの保持面に密着保持されることが好ましい。
このように屈折液Bによりウェーハがウェーハテーブルに密着保持されることにより、ウェーハが撓みなく平坦な状態で保持される。これにより、ワークディスタンスを一層一定化することができる。そして、レーザ光をウェーハの裏面側からウェーハテーブルを介して照射することにより、ウェーハの内部に改質層を精度良く形成することが可能となる。また、ウェーハの表面に一切触れることなく、ダイシング処理を行うことができる。したがって、ウェーハの表面に形成されたデバイスを破壊することなく、ダイシング処理を行うことが可能となる。
特に、ウェーハとウェーハテーブルの微小な隙間に屈折液Bを導入させ介在させることにより、屈折液Bは微小な隙間に毛細管現象によって自動的に一様に広がる。また、屈折液Bとウェーハテーブルの保持面の界面間で作用する界面張力や、屈折液とウェーハ(テープが貼着される場合にはテープが貼着される面)の界面間で作用する界面張力の影響により、ウェーハは全面一様に隙間なく、ウェーハテーブルに密着するようになる。
これにより、ウェーハテーブルを介してレーザ光を照射し、ウェーハ内部に改質層を形成する場合、レーザ光は途中経路で大きくエネルギーロスすることなく、効率的にウェーハ内部で結像して改質層を形成することが可能となる。
また、本発明においては、ウェーハの裏面にレーザ光を透過可能なテープが貼着されていてもよいし、貼着されていなくてもよい。前者の場合、一般にテープは表面が荒れている場合が多く、空気が介在すると散乱を起こしやすい。しかし、本発明のように液体(屈折液B)を介在させると荒れている面を持つ面の方がかえって、表面積が広くなる影響で界面張力が大きくなり、濡れ性は高まる。また、微小な粗さも液体がその微小な粗さの凹凸を埋めることになるため、かえって荒らされたテープ表面に対して、液体が一様に広がり、一層、屈折率の分布が小さくなって散乱を起こしにくく、より効率的にレーザ光が透過するという利点も有する。
また、屈折液A及び屈折液Bとしては、水、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)などを用いることが可能である。なお、本発明では、エタノールやIPAが好ましく用いられるが、水 (屈折率は1.3)であっても、空気(屈折率1)と比べて一般的に屈折率が高く、屈折液として用いることができる。
屈折液A及び屈折液Bの種類は異なっていてもよいが、同じであることがより好ましい。
また、ウェーハテーブルはレーザ光を透過するが、例えば、ウェーハテーブルとして石英ガラスが用いられる場合、その屈折率は1.45であるため、気体よりも液体の方が、これらのウェーハテーブルやテープに対して屈折率は近い値を持つ。屈折率が近い場合、それだけその界面において反射や散乱が少なくなり、レーザ光を照射する際のエネルギーロスを大幅に減らすことが可能となる。
また、屈折液A及び屈折液Bとして、ウェーハテーブルやテープと同等の屈折率を有する液体を使用すると、界面でのレーザ光のロスはほとんどなくなり、効率よくレーザ光を透過し、ウェーハ内部に改質層を形成することが可能となる。
このように本発明によれば、ウェーハの表面に形成されたデバイスを破壊することなく、ウェーハの裏面からレーザ光を照射しつつもウェーハ内部に精度よく一定の深さ位置に改質層を形成し、また、レーザ光の途中経路における散乱を低減して効率よく安定した改質層をウェーハ内部に形成するとともに、途中経路の散乱により、レーザ光の散乱によるレーザ焼けをなくし、レーザ焼けによる各部品の劣化、性能低下を防ぐことが可能となる。
また、屈折液Bは、イソプロピルアルコールを含む液体であることが好ましい。これにより、ウェーハにウォーターマークが発生するのを抑止することができるとともに、屈折液Aで述べたと同様の理由から、ウェーハの裏面とウェーハテーブルの間を更に一様に密着させることが可能となる。
また、ウェーハの裏面とウェーハテーブルの間を一様に密着させることに加えて、これらの間に一様な液体が介在することで、レーザ光の経路中における屈折率のウェーハ面内におけるばらつきもほとんどなく、面内一様な状態を形成することができる。
本発明においては、ウェーハテーブルの保持面は、粗面処理されていることが好ましい。これにより大きな密着力でウェーハを密着保持することが可能となる。即ち、ウェーハテーブルの粗面処理により、ウェーハテーブルの実質的な表面積が大きくなり、その大きい表面積に働く個液間の界面張力も大きくなる。よって、ウェーハの裏面(テープが貼着される場合にはテープが貼着される面)とウェーハテーブルとは更に密着するともに、ウェーハの裏面とウェーハテーブル間の屈折率差はなくなり、効率よくレーザ光による改質層をウェーハ内部に形成することが可能となる。
本発明においては、前記ウェーハテーブルは、前記保持面を下に向けて水平に設置され、前記レーザ照射手段は、前記ウェーハテーブルの上方から前記ウェーハテーブルに保持されたウェーハにレーザ光を照射することが好ましい。
本発明では、集光レンズとウェーハテーブルとの間の間隙に屈折液Aを界面張力によって保持する必要があるため、集光レンズよりも面積の大きなウェーハテーブルが集光レンズの下方に配置されていた方が屈折液Aを保持し易い。
本発明においては、前記保持面から離間した位置にレーザ反射防止板が設置されることが好ましい。
これにより、ウェーハを透過したレーザ光の不要な反射が防止でき、反射焼け等の不具合が生じるのを効果的に防止することができる。
本発明のウェーハ処理方法は、前記目的を達成するために、表面に複数のデバイスが形成されるとともに、裏面に貼着されたテープを介してフレームにマウントされたウェーハに対して、レーザ光を照射し、該ウェーハの内部に改質層を形成するレーザダイシング工程と、レーザダイシング処理された前記ウェーハの前記テープをエキスパンドすることにより、前記テープ上で個々のチップに分割するエキスパンド工程と、を有するウェーハ処理方法において、前記レーザダイシング工程では、請求項10から17の何れか1項に記載のレーザダイシング方法を用いることを特徴とする。
本発明によれば、レーザダイシング工程では、請求項10から17の何れか1項に記載のレーザダイシング方法を用いるようにしたので、ウェーハ、特に50μm以下の薄いウェーハに対してレーザダイシングを行う場合であっても、精度の良いレーザダイシングを行うことができる。したがって、その後のエキスパンド工程においてウェーハを個々のチップに分割する際にも精度良く分割することができる。
本発明によれば、ウェーハ、特に50μm以下の厚みの薄いウェーハに対してレーザダイシングを行う場合であっても、アブレーションを防止し、照射効率を向上でき、ワークディスタンスを一定にできるので、精度の良いレーザダイシング加工を行うことができる。
また、本発明によれば、ウェーハ表面に形成された微細構造のデバイスを破壊することなくウェーハの反りや撓みを矯正してワークディスタンスを一定化することができるので、ウェーハ、特に50μm以下の薄いウェーハであってもウェーハ内部に改質層を精度良く形成することができる。
本発明に係るレーザダイシング装置の一実施形態を示す概略構成図 本発明に係るレーザダイシング装置によってウェーハに改質層を形成している断面図 集光レンズの周りに屈折液を閉じ込める囲い部材を設けた要部拡大図 ダイシングフレームにマウントされた状態のウェーハを示す斜視図 薄いウェーハがアブレーションを発生し易い説明図 アブレーションと見込み角との関係を説明する模式図 屈折液Aと空気とによるレーザ光路の違いを説明する説明図 レーザダイシング装置の他の実施の形態を示す概略構成図 ウェーハテーブルの保持面の粗面処理の一態様を示す説明図 エキスパンド処理の説明図 ウェーハユニットの作成方法 ウェーハユニットの剥離方法
以下、添付図面に従って本発明のレーザダイシング装置及び方法並びにウェーハ処理方法の好ましい実施の形態について説明する。
[レーザダイシング装置]
図1は、本発明に係るレーザダイシング装置の一実施形態を示す概略構成図である。また、図2は、本発明に係るレーザダイシング装置によってウェーハに改質層を形成している断面図である。
図1及び図2に示すように、本実施の形態のレーザダイシング装置10は、主として、ウェーハWを保持するウェーハテーブル20と、ウェーハテーブル20に保持されたウェーハWにレーザ光を入射するレーザ照射装置60と、レーザ照射装置60の集光レンズ66のレンズ面66A(レーザ光出射面)とウェーハテーブル20のテーブル板22のテーブル面22B(レーザ光入射面)との間の間隙のみに界面張力によって保持され、空気よりも屈折率の大きな屈折液Aで形成された液膜26Aと、レーザ反射防止板50と、で構成される。
まず、本実施の形態のレーザダイシング装置10で加工対象とするウェーハWについて説明する。
本実施の形態のレーザダイシング装置10で加工対象とするウェーハWは、表面に複数のデバイス(例えばMEMS素子等)が形成されたウェーハWであり、ダイシングフレームFにマウントされた状態で加工処理される。
図3は、ダイシングフレームFにマウントされた状態のウェーハWを示す斜視図である。
図3に示すように、ウェーハWは、ダイシングテープTを介してダイシングフレームFにマウントされる。ダイシングフレームFは、枠状に形成され、その内部にダイシングテープTが貼り付けられる。ウェーハWは、その裏面をダイシングテープTに貼着されて、ダイシングフレームFにマウントされる。
ここで、このダイシングフレームFに貼り付けられるダイシングテープTは、延性を有する素材で形成されるとともに、レーザ照射装置60から出射されるレーザ光を透過可能な素材で形成される。本例では、延性を有し、透明な素材で形成される。なお、通気性を有することが更に好ましい。
ダイシングフレームFにマウントされたウェーハWは、そのダイシングテープTが貼着された面(裏面)をウェーハテーブル20に保持される。
ウェーハテーブル20は、図1に示すように、主として、テーブル板22と、そのテーブル板22を保持するテーブル板保持フレーム24とで構成される。
テーブル板22は、加工対象とするウェーハWに対応した円盤状に形成され、その表面及び裏面は共に平坦に形成される。テーブル板22は、加工対象とするウェーハWの全面を支持できるように、加工対象とするウェーハWよりも大径の円盤状に形成される。このテーブル板22は、レーザ照射装置60から出射されるレーザ光を透過可能な素材で形成される。一例として、本実施の形態では、透明な石英ガラスで形成される。また、このテーブル板22は、加工対象とするウェーハWを撓みなく保持することができるように、必要十分な厚さを持って形成される。
テーブル板22は、図1の下面側がウェーハWを保持するための保持面22Aとされる。保持面22AとウェーハWのダイシングテープTが貼着された面(裏面)との間には屈折液Bによる均一かつ薄膜状の液膜26Bが介在しており、ウェーハWが液膜26Bを介してテーブル板22に密着保持される。なお、後で詳しく説明するが、屈折液Bの一例としては、水、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)などがある。
テーブル板保持フレーム24は、円環状に形成される。テーブル板22は、このテーブル板保持フレーム24の内周部に保持される。
テーブル板保持フレーム24は、図示しない回転駆動機構によって軸周りに回転するとともに、図示しない昇降駆動機構によって上下方向(Z方向)に昇降する。また、図示しない前後駆動機構によって水平面上を前後方向(Y方向)に移動するとともに、図示しない左右駆動機構によって水平面上を左右方向(X方向)に移動する。
これにより、テーブル板22は、テーブル板保持フレーム24が回転することにより、軸回りに回転する。また、テーブル板保持フレーム24が昇降することにより、上下に昇降する。更に、テーブル板保持フレーム24が前後方向に移動することにより、前後に移動し、左右方向に移動することにより、左右に移動する。
レーザ照射装置60は、ウェーハテーブル20の上方に設置され、ウェーハテーブル20に向けてレーザ光を垂直に出射する。
図2に示すように、レーザ照射装置60は、主として、レーザ発振装置62と、コリメータレンズ64と、集光レンズ(コンデンサレンズ)66と、アクチュエータ68とで構成される。
そして、集光レンズ66のレンズ面66A(レーザ光出射面)と、テーブル板22のテーブル面22B(レーザ光入射面)との間の間隙には、界面張力によって保持され、空気よりも屈折率の大きな屈折液Aで形成された液膜26Aが介在される。
テーブル板22のテーブル面22Bは粗面処理されていることが好ましい。粗面処理としては、例えば、GC砥粒の#2000番を使用し、テーブル面22Bを20分程度ラッピング加工しても良い。また、#500番程度の砥粒を使用してもよい。GC以外でもWAなどの砥粒を使用して、テーブル面22Bを荒らしてもよい。このようにすることで、テーブル面22Bはすりガラス上になって、空気中では表面の荒れによって散乱し、曇ったようになる。表面粗さとしては、Raで0.1mm以下であればよいが、これに縛られず、界面張力が増大するように粗さの隙間に液体が埋まり込み、表面積が大きいほどよい。
このようにテーブル板22のテーブル面22Bに粗面処理を施しておくことによって、集光レンズ66とテーブル板22との間には、微小な間隙空間が形成され、毛細管現象によって屈折液Aが間隙に一様に且つ効率的に広がる。その結果、屈折液Aを集光レンズ66とテーブル板22との間の間隙に界面張力でしっかりと保持し易くなる。この屈折液Aについても、後で詳しく説明するが、上記した屈折液Bと同様に、水、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)などを使用することができる。
また、屈折液Aと屈折液Bとは、異なる種類のものを使用することもできるが、同じものであることがより好ましい。
レーザ発振装置62は、ウェーハWの加工条件に従ったレーザ光を発振する。レーザ発振装置62から発振されたレーザ光は、コリメータレンズ64によって平行光とされた後、集光レンズ66で集光点Pに集光される。これにより、集光点PをウェーハWの内部に設定して、ウェーハWにレーザ光を入射すると、ウェーハWの内部に改質領域が形成される。この状態でウェーハWを水平に移動させると、集光点Pの移動軌跡に沿って改質領域が連続的に形成され、改質層Lが形成される。ウェーハの分割時は、この改質層をストリート(分割予定ライン)に沿って形成する。
アクチュエータ68は、集光レンズ66を光軸方向(Z軸方向)に微小移動させる。即ち、集光レンズ66は、図示しないレンズ枠に保持されて、光軸方向に移動自在に支持されており、このアクチュエータ68に駆動されて、光軸方向に微小移動する。
アクチュエータ68を駆動して、集光レンズ66を光軸方向に移動させることにより、レーザ光の集光点Pの位置がZ方向に変位する。これにより、改質層Lを形成する位置(Z方向の位置)を調整することができる。また、集光点PのZ方向の位置を変えて、ウェーハWに複数回レーザ光を入射することにより、ウェーハWの内部に複数の改質層Lを形成することができる。
この集光点PのZ方向の位置調整に加えて、集光レンズ66のレンズ面66Aと、テーブル板22のテーブル面22Bとの間の間隙の距離を調整し、上記した液膜26Aが界面張力によって間隙に保持されるように調整する。即ち、集光レンズ66、テーブル板22、及び屈折液Aの表面張力並びに集光レンズ66と屈折液A、及びテーブル板22と屈折液Aとの界面張力、更には屈折液Aの粘度等の物性にもよるが、集光レンズ66のレンズ面66Aと、テーブル板22のテーブル面22Bとの間隙の最短距離D(図2参照)を0.01〜2mmの範囲になるように設定する。
なお、集光点Pが所定位置になるように集光レンズ66の位置を調整したときに、間隙距離が1mmを超える場合には、テーブル板22の厚みを厚くすることで調整することができる。予め、予備試験を行ってテーブル板22の厚みを決定しておけばよい。
レーザ反射防止板50は、ウェーハテーブル20の下部に設置される。このレーザ反射防止板50は、上面部にレーザ光の反射防止処理(たとえば、黒色処理)が施された平板状に形成され、ウェーハテーブル20の保持面22Aから所定距離離れた位置に水平に設置される。即ち、ウェーハテーブル20の保持面22Aとレーザ反射防止板50との間には所定の空間が形成される。
レーザ照射装置60から出射されてウェーハWを透過したレーザ光は、このレーザ反射防止板50に入射する。これにより、不要な反射が防止でき、反射焼け等が生じるのを防止できる。
本実施の形態のレーザダイシング装置10は、以上のように構成される。
なお、レーザダイシング装置10の動作は、図示しない制御装置で制御される。制御装置は、所定の制御プログラムを実行して、各部の動作を制御し、ウェーハWの加工処理を実行する。
[レーザダイシング方法]
次に、上記の如く構成されたレーザダイシング装置10を用いたレーザダイシング方法について説明する。
上記のように、ウェーハWは、ダイシングフレームFにマウントされた状態で加工処理される。ウェーハWは、裏面(デバイスが形成されていない面)をダイシングテープTに貼着されて、ダイシングフレームFにマウントされる。
ダイシングフレームFにマウントされたウェーハWは、図示しない搬送装置(例えば、ロボットのアーム)によって、ウェーハテーブル20の下部まで搬送される。この際、ウェーハWは、ダイシングテープTが貼着された面を上向きにし、表面は非接触の状態でウェーハテーブル20の下部位置まで搬送される。
ウェーハテーブル20の下部位置まで搬送されたウェーハWは、搬送装置からウェーハテーブル20に受け渡される。受け渡しは、ウェーハWの裏面をウェーハテーブル20の保持面22Aで密着保持することにより行われる。具体的には、次のように行われる。
まず、ウェーハWの位置決めが行われる。即ち、ウェーハWの中心が、ウェーハテーブル20の中心と一致するように位置決めされる。その後、屈折液Bを滴下或いは塗布する屈折液B供給手段(不図示)を用いて、ウェーハWの裏面に対して屈折液Bを均一に供給し液膜26Bを形成する。なお、屈折液Bを供給して液膜26Bを形成してから、ウェーハWの位置決めを行ってもよい。また、屈折液Bは、ウェーハWの裏面に代えて、或いは、ウェーハWの裏面とともに、ウェーハテーブル20の保持面22Aに供給し、保持面22Aに液膜26Bを形成するようにしてもよい。その後、ウェーハWの裏面にウェーハテーブル20の保持面22Aを所定の圧力で押圧する。これにより、ウェーハWの裏面とウェーハテーブル20の保持面22Aとの間に屈折液Bが均一かつ薄膜状になって全体的に広がり、ウェーハWがウェーハテーブル20に液膜26Bを介して密着保持される。
このようにしてウェーハテーブル20の保持面22Aには、ウェーハWのダイシングテープTが貼着された面が屈折液Bの液膜26Bを介在させた状態で密着保持される。これにより、ウェーハWを撓ませることなく平坦な状態で保持することができる。また、ウェーハWは、ダイシングテープTを介して裏面が密着保持されるため、表面を固体物(空気以外)に非接触の状態で保持することができる。これにより、ウェーハ表面に形成された複数のデバイス(例えばMEMS素子等)が破損することはない。
ウェーハWを受け渡した搬送装置は、ウェーハテーブル20の下部から退避する。この後、所定の前処理及びアライメント処理が行われ、レーザダイシングが開始される。
レーザダイシングは、レーザ照射装置60から出射されるレーザ光をストリートに沿ってウェーハWに入射することにより行われる。
しかし、従来のレーザダイシングでは、ウェーハWが薄い場合、特に50μm以下の薄いウェーハWの場合には、アブレーションが発生し易いという問題がある。
ここで、図4を使用して、薄いウェーハWの場合にアブレーションが発生し易い理由を説明する。図4は集光レンズ66とウェーハWとの2つの関係で示しており、ウェーハテーブル20は省略している。
図4(A)は理想状態のレーザダイシングを示し、図4(B)が実際のレーザダイシングを示す。また、図4(i)はレーザ光路を示す断面図であり、(ii)はレーザ光の集光状態の立体的模式図であり、(iii)はレーザ光によるウェーハの溶融状態を示した断面図である。
図4(A)の(i)及び(ii)に示すように、理想状態のレーザダイシングは、集光レンズ66から出射されたレーザ光は、ウェーハWの内部にピンポント(点状)に集光されて集光点Pを結ぶ。これにより、図4(A)の(iii)に示すように、集光点Pの位置がピンポイントで溶融されて改質状態になる。
しかし、実際のレーザダイシングは理想状態となることはなく、図4(B)の(i)に示すように、レーザ光路は設定された集光点Pの位置近傍までは直線的に進むが、集光点位置近傍において湾曲した光路を形成し、再び直線的に進む。これにより、図4(B)の(ii)に示すように、レーザ光は集光点位置においてピンポイントで集光せずに楕円状の面積を有して集光する。この結果、ウェーハWのレーザ光入射面(本実施ではウェーハ裏面)における照射面積S1と、ウェーハ内部の集光点領域での照射面積S2との面積差が小さくなる。このように面積差が小さい場合には、ウェーハ内部の集光点領域で溶融が起きると、ウェーハWのレーザ光入射面aまでレーザ光のエネルギー吸収が連鎖的に起こる。この結果、図4(B)の(iii)に示すように、ウェーハWには、集光点領域からレーザ光入射面aまで連続した孔が形成される、所謂アブレーションが発生する。アブレーションが発生すると、溶融した溶融物が周りに飛散してウェーハWに付着する。これにより、付着したウェーハ部分が不良品になる。
ところで、上記の湾曲したレーザ光路部分の長さをレイリー長(L)といい、高質なレーザ光である1064mm波長のYAGレーザ光の場合であっても、レイリー長(L)が約20μm程度になる。
これにより、ウェーハWの厚みが薄い場合には、ウェーハ厚みとレイリー長(L)との差が小さくなるので、照射面積S1と照射面積S2との面積差が小さくなる。これにより、ウェーハWのレーザ光入射面aにおける溶融エネルギーと、ウェーハ内部の集光点領域における溶融エネルギーとの差が小さくなるので、アブレーションが発生し易い。このため、レーザダイシングを行うことのできるウェーハの厚み限界は30μm位が限度と言われている。
したがって、薄いウェーハW、特に50μm以下のウェーハWにおいてアブレーションを防止し、精度良くレーザダイシングを行うには、レイリー長(L)の影響をできだけなくして理想状態に近づけることが必要になる。そして、理想状態に近づけるためには以下の3つの条件が重要になる。
(条件A)見込み角を大きくして幅広い角度からレーザ光を集光させて集光点を結ばせることによって、ウェーハWのレーザ光入射面a(本実施ではウェーハ裏面)からウェーハ内部への集光点深度を浅くするとともに、上記した照射面積S1と照射面積S2との面積差が大きくなるようにする。このためには、レーザ光が出射されてからウェーハ内の集光点へ到達するまでの絞り(集光)の過程で、幅広い面積から急激に絞り込むための大きな屈折角が必要であり、高い開口数NAが要求される。
(条件B)ワークディスタンスを一定化して集光点深度が変動しないようにする。薄いウェーハの場合には、ワークディスタンスの僅かな変動による集光点深度の変動がアブレーションの原因になる。換言すると、薄いウェーハの場合には、大きな屈折角が要求されるだけでなく、レーザ光が出射されてからウェーハ内の集光点へ到達するまでの光路において屈折率が変動しないことが要求される。
(条件C)ウェーハの厚みが薄い場合には、ウェーハ内部におけるレーザ光の集光点深度を浅くせざるをえないため、幅広い角度からレーザ光を入射させる必要がある。したがって、幅広い角度からレーザ光を集光させても、集光レンズの端から出たレーザ光が界面で反射しないようにする。
ここで上記した条件A〜Cの更なる詳細な説明として、アブレーションの発生と開口率NAに関連する見込み角との関係について説明する。
すなわち、アブレーションの防止には開口数NAの影響も重要な要素となる。
ここで開口数NAは、集光レンズ66から物体に出射する光線の光軸に対する最大角度をθとし、物体と集光レンズとの間の媒質の屈折率nとしたときに、次式で表される。
開口数NA=n*sinθ
通常、空気の場合は、屈折率が1であるため、開口数NAは理論上最大でも1となるが、実際は0.95程度が限界となる。すなわち、レーザ光の集光レンズから光の媒質が空気であれば、開口数NAは、1以上になることはない。従来は、集光するレーザ光において、そのレーザ光が通過する媒質は、空気を介するので自ずと低い開口数NAの条件でレーザダイシング加工していた。
図5(A)に示すように、開口数NAに関連する項目として、θを2倍した2θは見込み角と呼ばれ、集光点Pからみた仰角となる。見込み角が大きい場合、広い角度から、レーザ光を絞ることになり、レーザ光を照射するウェーハ表面上(ウェーハのレーザ光入射面上)の照射面積に対して集光点の面積を極力小さくできる。
これに対して、見込み角が小さい場合は、レーザ光を照射するウェーハ表面上の照射面積に対して集光点の面積がさほど変わらない場合もある。
先ほどの開口数NAとの関係で、開口数NAが大きいとは、すなわち見込み角が大きいことに対応する。
ここで、アブレーションが起こるメカニズムによれば、シリコンなどの基板材料はレーザ光の吸収係数に温度依存性があることが一つの要因になる。
図5(B)及び(C)は、レーザ光の吸収係数に温度依存性があることによってアブレーションがどのように異なるかを、見込み角との関係で説明した図である。
図5(B)は見込み角が小さい場合にウェーハWに起こる事象である。レーザダイシングにおいて、パルスレーザによるウェーハWに対する照射時間は、通常100ns程度である。
その100ns内の照射時間で、まずウェーハ内部に集光されたレーザ光は、最初その集光点Pで最もエネルギーが吸収される。その最も集光された一点で局所的にレーザ光のエネルギーが消費されるため、その一点で爆発的に内部改質が起こる。
次の瞬間、見込み角が小さいと、その集光点Pの少し上部も集光点付近に続いて大きいエネルギーが消費されるとともに急激に温度上昇する。その結果、集光点Pの直上付近においてレーザ光のエネルギー吸収が上昇し、集光点Pの内部改質から少し時間が遅れて、集光点Pの直上でも内部改質が起こる。続いて、そのまた上部の温度が上昇しレーザエネルギーが吸収されて、引き続き内部改質が起こるというように順々に上部に向かって連鎖的に内部改質が起こる。すなわち、初期の集光点Pからその上部に向けて、急激な温度上昇に伴う急激なレーザエネルギー吸収が連鎖的に起こるため、最終的にその連鎖反応がウェーハW表面(レーザ光入射面)に達した際に、ウェーハの表面部分が吹き飛ぶ形で穴が開くようになる。これがアブレーションのメカニズムである(参考:大村悦二,日本学術振興会第145委員会第125回研究会資料P.9)。
上記したメカニズムによるアブレーションを防ぐために重要になることは、レーザ光の集光点Pにおける見込み角である。すなわち、見込み角が小さい場合、集光点Pの内部改質エリアは、その直上のレーザ照射面積とさほど領域面積が変わらない。これにより、すぐさま集光点Pの直上付近の温度が上昇して急激にレーザエネルギーが吸収され、それが連鎖的に上部のエネルギー吸収を助長していくため、ウェーハ表面に至るまで連鎖的に内部改質が進行する。
これに対して、図5(C)は見込み角が大きい場合にウェーハWに起こる事象である。
レーザ光の集光点Pにおいて見込み角が大きい場合、集光点Pで内部改質が起こったとしても、その直上のレーザ照射面積は急に大きくなるため、さほど急激に温度上昇しない。そのため、集光点Pの近傍での急激なエネルギー吸収は起こらず、集光点P付近だけが改質されるに留まる。その結果、ウェーハの集光点Pからウェーハ表面に向けての連鎖的な内部改質を阻止することができる。
こうしたアブレーション発生のメカニズムによると、より薄いウェーハWをアブレーションさせずに加工する場合、ウェーハWに対するレーザ入射のための見込み角を大きく取ることが重要である。少しでも見込み角を大きくすれば連鎖的なレーザ吸収がウェーハ表面まで到達することで生じるアブレーション現象を防ぐことが可能となる。
また、レーザ光が集光するウェーハ表面からの集光点深度(d)は、下記式の如く、波長λに比例し開口数NAの2乗に反比例する。
d=λ/NA
したがって、集光点深度dを浅くするためには、開口数NAを高く取ることが重要になる。
そして、集光点深度dの大きさもアブレーションには影響する。すなわち、集光点を結ぶ範囲である楕円球部分が深さ方向に細長い形状である場合、連鎖的に改質が起こりやすいが、深さ方向に対してコンパクトな楕円球である場合、改質領域は一部の局所域に限定され、局所的な改質だけで済む。
また、ウェーハ内部の局所的なエリアだけに大きいエネルギーを集中させるためには、解像度も重要になる。解像度δは次式で示される。
δ=0.61*λ/NA
解像度δは、波長λに比例し開口数NAに反比例する。解像度δをより小さくするためには開口数NAを大きくする方がよい。この点においても空気を介在させるのではなく、屈折率の高い媒質を介在させて開口数NAの高いレンズを使用した方が開口数NAを大きく取ることができ、より局所的なエネルギーを一箇所に集中させることに寄与する。
そこで、本実施の形態のレーザダイシング方法では、集光レンズ66のレンズ面66Aとテーブル板22のテーブル面22Bとの間に、空気よりも屈折率の大きな屈折液Aの液膜26Aを介在させることによって開口数(NA)を高めるようにした。
即ち、制御装置(図示せず)は、ウェーハWの内部の所定位置に集光点Pが設定されるように、アクチュエータ68を駆動して、集光レンズ66の位置を調整するとともに、調整後の集光レンズ66の出射側のレンズ面と、テーブル板22の面との間隙距離が0.01〜2mmの範囲になるように設定する。
そして、上記の0.01〜2mmの間隙に、毛細管現象により屈折液Aを供給し、間隙のみに屈折液Aの液膜26Aを形成する。この場合、屈折液Aの液滴をテーブル板22の集光レンズ真下位置に滴下してから、集光レンズ66をテーブル板22側に接近移動させることによって、集光レンズ66とテーブル板22との間に液膜26Aを形成してもよい。
上記の前準備が終了した後にレーザ光を出射し、出射されたレーザ光が、ストリートに沿ってウェーハWに入射するように、ウェーハテーブル20を移動する。
図6は、集光レンズ66のレンズ面66Aと、テーブル板22のテーブル面22Bとの間隙に屈折液Aの液膜26Aが介在される場合(図6中央の想像線右側)と、比較として集光レンズ66のレンズ面66Aと、テーブル板22のテーブル面22Bとの間に空気が介在される場合(図6中央の想像線左側)での、レーザ光路を比較した図である。
図6では、屈折液Aとして屈折率が1.5のものを使用した。また、集光レンズ66(屈折率1.5)、テーブル板22(屈折率1.5)、屈折液B(屈折率1.5)、ダイシングテープT(屈折率1.5)、及びウェーハW(屈折率3.6)は、図5中央の想像線の左側及び右側ともに共通である。
屈折率の異なる界面における屈折角は次式で表される。
*sinθ1=n*sinθ2
屈折により材料内部に光が届くためには、屈折率の影響は大きい。
図6から分かるように、集光レンズ66とテーブル板22との間に空気が介在される場合、集光レンズ66の端から出たレーザ光は、集光レンズ66と空気との界面で大きく屈折する。これにより、テーブル板22への入射角度θが大きくなるので、空気とテーブル板22との界面で全反射してしまいテーブル板22の内部には入射されない。
これに対して、集光レンズ66とテーブル板22との間に屈折液Aが介在される場合、集光レンズ66の端から出たレーザ光は、集光レンズ66と屈折液Aとの界面で空気の場合よりも小さく屈折する。これにより、テーブル板22への入射角度θ1が小さくなるので、空気とテーブル板22との界面で全反射することなくテーブル板22の内部に入射される。
また、集光レンズ66とテーブル板22との間に空気が介在される場合、テーブル板22の内部に入射されたレーザ光の屈折角θ2は、テーブル板22への入射角θ1よりも小さくなるので、レーザ光が立った状態でウェーハWに進入する。これにより、ウェーハWに対して幅広い角度からレーザ光を集光することができなくなる。
これに対して、集光レンズ66とテーブル板22との間に屈折液Aが介在される場合、テーブル板22の内部に入射されたレーザ光の屈折角θ2は、テーブル板22への入射角θ1よりも大きくなるので、レーザ光が寝た状態でウェーハWに進入する。図6の場合には、集光レンズ66、テーブル板22、屈折液B、ダイシングテープTの屈折率が全て1.5で同じなので、集光レンズ66から出射されたレーザ光は、直線的なレーザ光路を形成する。
この結果、図6から分かるように、集光レンズ66とテーブル板22との間に屈折液Aが介在される場合には、ウェーハ内部においてレーザ光が集光する集光点P1の深度を、集光レンズ66とテーブル板22との間に空気が介在される場合の集光点P2の深度に比べて浅くすることができる。
このように、集光レンズ66から同様の角度から出たレーザ光であっても、途中で空気を介在した場合、途中経路における全反射の影響で有効な角度は限られてしまい、狭いエリアのレーザ光しか材料内部に入り込まない。そのため見込み角は小さくなる。
一方、集光レンズ66から空気を介さず、同等の屈折率の媒質を通って、最後に材料内部に入り込む場合、全反射の影響を排除でき、広い角度からレーザ光を絞り込むことができ、見込み角は大きくなる。結果として、薄いウェーハWであってもアブレーションは起こらない。
また、本実施の形態では、集光レンズ66とテーブル板22との間に空気よりも屈折率の大きな屈折液Aを介在させたことのみならず、テーブル板22、ダイシングテープT、及びウェーハWの裏面をテーブル板22に密着させるための屈折液Bの全てについて高い屈折率の媒質とした。これにより、集光レンズ66からウェーハWに至るレーザ光路の全てについて高い開口数を確保するようにした。
このように、集光レンズ66から出たレーザ光がウェーハ内の設定された集光点に達するまでの光路を全て空気よりも高い高屈折率の媒質とすることで、ウェーハWに対して幅広い角度からのレーザ光を集光することができるので、ウェーハWのレーザ光入射面aから浅い集光点深度位置に集光点を結ぶことができる。
こうした高屈折媒質において、高拡大率、高開口数を達成する集光レンズは、ソリッドイマージョンレンズとも呼ばれる。
例えば、こうしたレンズとしては、特開2004−061589に示されるような液浸集光レンズなどは顕微鏡用のレンズとして使用されるものであるが、高開口数を達成する点で適用しうる。また、オリンパス製のシリコン浸集光レンズUPLSAPO30X等も、生物顕微鏡向けの集光レンズであるが、高開口数を確保できる点で本願の集光レンズとして適用しうるものである。
以上の集光レンズは、通常空気を媒質とする従来の場合、レンズの開口数として1以上の数値を取ることは理論上存在しないが、媒質を集光レンズ66のガラスと同等の屈折率とすることで1以上の大きい開口数NAを取ることができる。
また、本実施の形態では、集光レンズ66とテーブル板22との間の間隙のみに界面張力によって屈折液Aの薄い液膜26Aを保持するようにしたので、特許文献4で説明したような屈折液Aの屈折率変動に伴うワークディスタンスの変動がない。
即ち、屈折液Aの薄い液膜26Aの上面と下面は、集光レンズ66とテーブル板22との2つの固体媒質に接触した状態で挟持されているので、屈折液Aは集光レンズ66とテーブル板22との間に安定的に保持される。
この場合、図2Aに示すように、集光レンズ66の近い周囲を囲むとともにその先端がテーブル板22に近接する位置(テーブル板には接触しない)まで延設された筒状の囲い部材69を設けることが好ましい。これにより、集光レンズ66がどのような形状であったとしても、上記した界面張力と相俟って集光レンズ66とテーブル板22との間に屈折液Aを確実に保持できる。したがって、ストリートに沿ってレーザ照射するためにウェーハテーブル20を水平方向に高速移動させても、囲い部材69の狭い空間内に屈折液Aを閉じ込めることができるので、高速移動に伴って屈折液Aがおいていかれることがない。
また、屈折液Aの液膜26Aは、上記の通り集光レンズ66とテーブル板22との2つの固体媒質に接触した状態で挟持されているので、特許文献4の浸漬槽内に貯留された屈折液のような自由液面を有しない。したがって、ストリートに沿ってレーザ照射するためにウェーハテーブル20を水平方向に高速移動させても液膜26Aは波打ったり、ゆらいだりすることはない。更に、屈折液Aの液膜26Aは、集光レンズ66とテーブル板22との相対的な移動を円滑にする潤滑剤の役目も行う。
これにより、ウェーハテーブル20を水平方向に高速移動させても、屈折液Aが波立つことはなく屈折液Aのゆらぎも抑制された状態で集光レンズ66とテーブル板22との間の間隙において作用する界面張力によって安定的に保持され続ける。
ここで、特許文献4の特開2007−136482においては、レーザの照射効率を向上させるため、すなわち反射率を低減させるために、レーザ出射部と基板面(ウェーハ面)の間に水を入れている。しかし、その課題目的は、あくまでレーザ光の照射効率を上げるためだけである。薄いウェーハのレーザダイシングにおいてアブレーションを起こさずに加工するという課題は本願独自の課題であり特許文献4はこうした課題を設定していない。
また、本発明では、屈折液Aの全てが集光レンズ66に接触されており、レーザ光の照射による集光レンズ66の熱で屈折液Aが温まったとしても、特許文献4のように屈折液Aに温度差が生じにくい。
このように、集光レンズ66とテーブル板22との間の間隙のみに界面張力によって屈折液Aの薄い液膜26Aを保持することによって、屈折液Aが波打ったり、ゆらいだり、対流したりすることを効果的に抑制することができる。これにより、屈折液Aの屈折率が変動することもないので、ワークディスタンスを一定にすることができる。
集光レンズ66とテーブル板22との間の間隙はできるだけ狭くすることが好ましいが、ストリートに沿ってレーザ照射するために集光レンズ66とテーブル板22とは相対的に高速移動する。したがって、集光レンズ66とテーブル板22とが接触しない0.1mm以上の間隙距離が必要であり、屈折液Aが間隙内に界面張力で保持されるためには1mm以下であることが好ましい。集光レンズ66とテーブル板22とを0.1mm以上、1mm以下の間隙になるように配置し、この間隙に屈折液Aを微量挿入して液膜を形成することにより、集光レンズ66とテーブル板22との相対的な高速移動時の接触を防止し、レーザ照射の開口数を高めることができる。
また、ワークディスタンスの一定化は、屈折液Aの液膜26Aのみならず、集光レンズ66からウェーハWに至るまでのレーザ光路において屈折率の変動がないことが重要になる。この点において本発明の実施の形態では、レーザ光路の大部分を固体媒質であるテーブル板22(例えば石英ガラス)で形成したので、ワークディスタンスをより一定化することができる。即ち、固体媒質はレーザ光路途中における屈折率の変動を極めて小さくすることが可能であり、再現性良く安定した屈折率を有するレーザ透過状態を確保することができる。
このように本発明の実施の形態では、集光レンズ66からウェーハWに至るまでのレーザ光路において屈折率の変動を極力防止し、ワークディスタンスを一定化するための工夫をしたので、ウェーハが例えば50μm以下の薄い場合であってもアブレーションを抑制しつつ精度良くレーザダイシングを行うことができる。
ワークディスタンスの変動は、レーザ光路での屈折率の変動以外にウェーハWが薄く反りや撓みが生じることによっても起こることは前述した通りである。
しかし本実施の形態において、ウェーハWは、屈折液Bの液膜26Bを介在させることによってウェーハテーブル20の保持面22Aに密着し、反りや撓みのない状態で保持面22Aに保持されているため、ワークディスタンスを一定化できる。これにより、ストリートに沿って正確に改質層Lを形成することができる。
また、ウェーハWは、表面に触れることなくウェーハテーブル20に保持されるため、表面に形成されたデバイス(MEMS素子等)を破壊することなく加工処理することができる。
また、ウェーハWの表面を密着保持していると、ウェーハWを透過したレーザ光によって保持面22Aが焼けたり、溶融物が付着したりして、保持面22Aの平滑性を保てないが、表面に触れることなくウェーハWを密着保持することにより、このような不具合が発生することも防止することができる。これにより、継続して加工しても、常に平坦にウェーハWを密着保持することができる。
更に、レーザ光は、ウェーハWの裏面に入射されるため、表面に形成されたデバイスに影響されることなく、正確かつ確実に所定の位置に改質層Lを形成することができる。
レーザ光をストリートに沿ってウェーハWに入射し、加工処理が終了すると、ウェーハWはウェーハテーブル20から搬送装置に受け渡され、搬送装置によって次工程へと搬送される。
〈屈折液A及び屈折液B〉
次に、本実施の形態で用いられる屈折液A及び屈折液Bについて説明する。
本実施の形態では、上記のように、屈折液Aは、集光レンズ66とウェーハテーブル20のテーブル板22との間の間隙に液膜26Aとして保持される。
また、ウェーハWは、そのダイシングテープTが貼着された面(裏面)を屈折液Bの液膜26Bを介在させた状態でウェーハテーブル20の保持面22Aに密着保持され、レーザ光は、ウェーハWの裏面側から屈折液Bを介して入射される。
このため、屈折液A及び屈折液Bとして用いられる液体は、少なくともレーザ光を透過可能な液体であればよく、例えば水、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)などを用いることが可能である。これらの液体の中でも、エタノールやIPAが好ましい。エタノールやIPAは、水に比べて表面張力が低く、集光レンズ66、テーブル板22、及びダイシングテープTに対する濡れ性が高い。このため、これらの液体(即ち、エタノールやIPA)は、集光レンズ66とテーブル板22との間隙に介在された際に液滴にならず薄膜状に濡れ広がって集光レンズ66とテーブル板22との間に保持される。これにより、屈折液Aは密着性の高い状態で集光レンズ66とテーブル板22との間に保持することができる。
また、これらの液体(即ち、エタノールやIPA)は、ウェーハWのダイシングテープTが貼着された面(裏面)とウェーハテーブル20の保持面22Aとの間に均一かつ薄膜状になって全体的に濡れ広がる。これにより屈折液Bは、より密着性の高い状態でウェーハWを密着保持することが可能となる。
特に本実施の形態では、屈折液BとしてIPAを用いる態様が好適である。IPAは、他の液体に比べて揮発性が高く、ウェーハWにウォーターマークが発生するのを抑止することができる。また、ウェーハテーブル20やその周辺部の有機物汚染を防止することもできる。なお、IPAの代わりに、IPAと他の液体との混合液(例えばIPAと水又はエタノールの混合液)を用いる態様も好ましい。
また本実施の形態では、屈折液Aは、集光レンズ66やテーブル板22と同程度の屈折率を有する液体を用いる態様が好適である。この態様によれば、集光レンズ66やテーブル板22との界面での屈折率差をなくすことができ、レーザ光の透過率を向上させることに加えて、レーザ光の屈折角の変化をなくすることが可能となる。
また、高開口数にすれば、集光レンズ66の中心から端まで使用することになり、集光レンズ66の使用範囲が広くなると、球面収差の問題が大きくなる。球面収差は、結果的に、集光点Pにおける改質層が深さ方向に大きなバラツキを持つことにつながる。特に薄いウェーハWにおいてアブレーションを防ぎながら、レーザ光を浅い集光点Pに集光させたい場合は、球面収差をできるだけ小さくする必要がある。この球面収差を低減する方法として、集光レンズ66からの屈折率差を小さくすることが望ましい。特に球面収差は、媒質内の界面における屈折率差によって屈折角が変化することによって更に大きくなる。屈折率差がなければ、光学的に媒質内の界面が存在しないよう同一媒質内を進行するように振舞うため、当然ながら入射角に対する屈折角はほぼ同じになる。
このように屈折率差の小さい屈折液Aとして、例えば、市販されているものとして株式会社モリテックスが販売しているカーギル標準屈折液Aなどが好適に使用される。これは、イマージョンオイルとも呼ばれ、ガラス同士をマウントするための液体として使用される。例えば、カーギル標準屈折液のTypeA,ないしはTypeBなどは、屈折率が1.51である。標準的な集光レンズ66などに使用されるガラスの屈折率も1.5程度であるため、ほとんど屈折率差が存在しない。そのため、集光レンズ66から出たてにおいての屈折角変化も小さく、集光レンズ66の球面収差の影響を受けにくい。
また、ウェーハWを支持するウェーハテーブル20の材料も石英ガラスを使用した場合、屈折率は1.46程度であり、屈折液Aとほとんど同等の屈折率となる。そのため、屈折角の変化がほとんどなく、球面収差の影響による集光点Pの深さ方向バラツキを小さくすることができる。
なお、屈折液Aとして好適に使用されるイマージョンオイルに、特許文献4のように基板(ウェーハ)そのものを浸漬すると、基板がイマージョンオイルで汚染してしまい、基板が使用できなくなる。対象とする基板はシリコンのみならず、サファイアやSiCなど、様々な場合が考えられるが、それらの基板に対してイマージョンオイルのなじみや汚染などは異なる。また、基盤に対して直接屈折液Aが接触することは、屈折率安定化の点からも問題は多い。
それに対して、集光レンズ66がガラスである一方、ウェーハWを支持するウェーハテーブル20もガラスとし、その間に同じガラス素材の屈折率と同等の屈折率を有する屈折液Aを使用する場合では、ほとんど屈折角は変化せず、集光レンズ66の球面収差の影響も小さくすることができる。また、絶えずガラス同士の同一素材の相互運動を潤滑し、その界面張力によって移動する透明液体によって屈折率の変化を極小化できるので、安定した光路を確保することが可能となる。その結果、高開口でレーザ光を集光できるとともに、レーザエネルギーの吸収による基板表面(ウェーハ表面)への連鎖的な改質層形成により生じるアブレーションを防ぐことが可能となる。
上記した屈折液Aと同様の理由から、屈折液Bとして、ダイシングテープTの屈折率と同程度の屈折率を有する液体を用いる態様が好適である。この態様によれば、ダイシングテープTとの界面での屈折率差をなくすことができ、レーザ光の透過率を向上させることが可能となる。例えば、ダイシングテープTがポリオレフィン系のポリエチレンフィルム(屈折率:約1.54)からなる場合には、屈折液B26としては例えばジクロロトルエン(屈折率:1.546)を好ましく用いることができる。
なお、このように所定の屈折率を有する液体は、例えば京都電子工業製の屈折率標準液や島津製作所製の接触液(屈折液)、モリテックス製のカーギル標準屈折液などを使用できる。
〈ウェーハテーブル〉
また本実施の形態では、上述したように、ウェーハテーブル20のテーブル板22は透明な石英ガラスで構成されているが、これに限らず、例えばゲルマニウム板、シリコン板、プラスチック樹脂板などで構成されていてもよい。また、ウェーハWとテーブル板22が同一素材で構成される態様によれば、その素材と同程度の屈折率を有する屈折液26を用いることにより、屈折の影響を受けることなく、レーザ光の透過率を更に向上させることが可能となる。
また、テーブル板22の素材として用いられる石英ガラスなどは、赤外光領域において、吸収帯を有し、透過率が低下する場合もある。このような場合には、テーブル板22は、石英ガラスでなくても、例えばアクリルなどの透明な樹脂材料で構成されていてもよい。
このようにテーブル板22の素材としては、レーザ光の選択する波長において透過率が好ましい。
また本実施の形態では、上述のように、テーブル板22は、加工対象とするウェーハWを撓みなく保持することができるように、必要十分な厚さを持って形成される。また、テーブル板22は、均一な厚みであることも必要とされる。
このようにウェーハテーブル20のテーブル板22の厚みを一様とし、且つ、撓みをなくすことにより、レーザ照射装置60の集光レンズ66の位置から、ウェーハテーブル20及びダイシングテープTを介して貼り付けられたウェーハ表面までの距離がほとんど一定となる。これにより、ワークディスタンスを一定化することができるので、薄いウェーハであっても一定の集光点深度位置に改質層を精度良く形成することが可能となる。
テーブル板22を形成するガラスの厚み精度は、ワークディスタンスのばらつきに大きく影響するため、200mmの石英ガラスであっても、通常TTV(Total Thickness Variation)は1μm以下、実際には0.5μm以下になるように高精度に研磨されている。
また、テーブル板22を、レーザ光源の集光レンズ66に対して動作させる相対高さ精度も0.5μm程度にまで抑えている。それらによって、オートフォーカスを使用せずとも、高精度に一定深さ位置にレーザ光を集光させることができ、アブレーションを伴わないレーザダイシングが可能となる。
なお、テーブル板22に単独で撓みが生じるような場合には、例えば図7に示すように、テーブル板22のレーザ光入射面(保持面22Aとは反対側の面)22B上に外周部に沿って円環状のリム部材30を設けるようにしてもよい。このようにテーブル板22の外周部をリム部材30などの補強部材により補強することによって、テーブル板22の撓みを抑えることが可能となる。
なお、図7に示した構成例では、テーブル板保持フレーム24の下面(ダイシングフレームF側の面)の外周部には複数の吸着穴(不図示)が形成されており、ダイシングフレームFは、吸着穴を介して真空吸着されることにより、テーブル板保持フレーム24に密着した状態で保持されている。
また本実施の形態では、ウェーハテーブル20の保持面22Aが粗面処理されていることが好ましい。また、ウェーハテーブル20の保持面22Aに代えて、或いは、ウェーハテーブル20の保持面22Aとともに、ウェーハWに貼着されるダイシングテープTの被保持面(ウェーハWとは反対側の面)が粗面処理されていてもよい。このようにウェーハテーブル20の保持面22A及びダイシングテープTの被保持面の少なくとも一方の面に粗面処理を施しておくことによって、これらの間には、微小な空間が形成され、毛細管現象によって屈折液Bが隙間なく効率的に広がる。その結果、粗面処理が施された面と屈折液Bとの接触面積が大きくなり、より大きな密着力でウェーハWが密着保持される。
こうしたウェーハテーブル20の保持面22Aを荒らす(粗面処理)手法の一つに、テクスチャリング(フェーシングによる)方法がある。例えば図8に示すように、ガラス製のウェーハテーブル20の保持面22Aに小さい溝32を同心円状ないしは螺旋状に形成しておくことにより、屈折液26が溝32に沿って一様に広がるようになる。
テクスチャリングの溝は、屈折液やウェーハテーブル20(テーブル板22)の材料にもよるが、約0.2mmの溝幅で0.4mmピッチ程度、0.1mmの溝幅で0.2mmピッチ程度でよく、ウェーハテーブル20の保持面22A上でウェーハ径に対応する面全体に形成された溝でよい。
また、テクスチャリング以外でも単純にウェーハテーブル20の保持面22Aを均等に荒らす方法がある。例えば、GC砥粒の#2000番を使用し、保持面22Aを20分程度ラッピング加工しても良い。また、#500番程度の砥粒を使用してもよい。GC以外でもWAなどの砥粒を使用して、保持面22Aを荒らしてもよい。このようにすることで、保持面22Aはすりガラス上になって、空気中では表面の荒れによって散乱し、曇ったようになる。表面粗さとしては、Raで0.1mm以下であればよいが、これに縛られず、界面張力が増大するように粗さの隙間に液体が埋まり込み、表面積が大きいほどよい。
このようにウェーハテーブル20の保持面22Aをテクスチャリングなどの手法によって荒らしておくことにより、屈折率を補償する屈折液Bを保持面22Aに滴下して、ウェーハWの裏面(ダイシングテープTが貼着された面)と保持面22Aをリンギングさせると、屈折液26は保持面22Aをくまなく一様に拡がり、ウェーハWの面内で均一な屈折率分布を得ることができる。
以上説明したように、本実施の形態のレーザダイシング装置10によれば、ウェーハ、特に50μm以下の厚みの薄いウェーハに対してレーザダイシングを行う場合であっても、アブレーションを防止し、照射効率を向上でき、ワークディスタンスを一定にできるので、精度の良いレーザダイシング加工を行うことができる。
また、ウェーハ表面に形成された微細構造のデバイスを破壊することなくウェーハの反りや撓みを矯正してワークディスタンスを一定化することができるので、ウェーハ、特に50μm以下の薄いウェーハであってもウェーハ内部に改質層を精度良く形成することができる。
[ウェーハ処理方法]
上記のレーザダイシング方法によってダイシング処理されたウェーハWは、その後、外的応力が印加されて、チップに分割される。この処理は、例えば、エキスパンド装置によって行われる。
図9は、エキスパンド装置によるエキスパンド処理の概略を示す工程図である。
レーザダイシングされたウェーハWは、図9(a)に示すように、表面を上にして剥離テーブル110の上に載置される。また、ダイシングフレームFが、図示しないフレーム固定機構によって所定位置に固定される。
ウェーハWが剥離テーブル110の上に載置され、ダイシングフレームFが固定されると、図9(b)に示すように、剥離テーブル110の周部を囲むように配置されたリング112が、図示しない昇降機構により押し上げられて上昇する。これにより、ウェーハWの裏面側に貼着されたダイシングテープTが放射状にエキスパンド(伸張)される。そして、このダイシングテープTがエキスパンドされることにより、ウェーハWに外的応力が印加され、改質層Lを起点として、ウェーハWが分割される。改質層Lはストリートに沿って形成されているので、ウェーハWはストリートに沿って分割される。ストリートは、個々のチップの間に設定されるので、ウェーハWは、個々のチップに分割される。
このように、レーザダイシングされたウェーハWは、外的応力を印加することにより、個々のチップに分割される。
[レーザダイシング装置の別態様]
図1等で説明したレーザダイシング装置では、装置に付属するウェーハテーブル20に高精度な一様厚みのテーブル板22を搭載し、そのテーブル板22のテーブル面を基準にウェーハWを貼り付けることで、ワークディスタンスを一定にするという方法である。
しかし、薄いウェーハ内部に改質層を、アブレーションを起こすことなく形成する方法として、予め薄いウェーハWを高精度な一様厚みの透明板(以下、「透明サポート基板202」という)に貼り付けた一体物として準備してもよい。この場合は、装置に搭載されたウェーハテーブル20の代わりに、透明サポート基板202にウェーハWが貼り付けられて一体となったウェーハユニット200として扱われる。したがって、透明サポート基板202がウェーハテーブル20の役割を果たす。
ただし、ウェーハユニット200のうち透明サポート基板202はダミー部分であり、改質層を形成する真の部分は透明サポート基板に貼り付けられた薄いウェーハWである。
このウェーハユニット200を、ウェーハユニット200の周縁部を保持可能なステージ装置(図示せず)に搭載する。そして、ステージ装置を上記したウェーハテーブル20の場合と同様に動作・制御を行うことでウェーハ内部にアブレーションを発生させることなく精度よく改質層を形成することができる。
このウェーハユニット200を用いる方法は、例えばTSV(シリコン貫通ビア)用等のウェーハWのように、ウェーハ表面に電極等の突起物であるバンプ204が形成されているために、表面自体に凹凸があり平面ではない場合などに特に有効である。
次に、図10により、ウェーハユニット200を作成する工程について説明する。
まず、図10(A)に示すように、薄いウェーハWを支えるための透明サポート基板202を用意する。
次に、図10(B)に示すように、レーザダイシングを行うウェーハWのバンプ204が形成された側を下にして透明サポート基板202の上に載置する。
次に、図10(C)に示すように、ウェーハWと透明サポート基板202との外周部を、封止材206、例えばテープやワックス剤で封止することによって、ウェーハWと透明サポート基板202との当接面に形成される隙間を囲む。
封止材206として使用されるテープは、ポリオレフィン系のフィルムやポリエチレン系のフィルムを好ましく使用することができる。そして、このテープでウェーハWの外周部と透明サポート基板202の外周部とに跨るように貼着して外周部を封止する。
この状態をユニット中間体200Aという。封止材206には、後記する屈折液Bを前記隙間に注入するための注入細管222を挿通するための微細孔(図示せず)が形成されている。
次に、図10(D)に示すように、ユニット中間体200Aを、真空チャンバ208内の載置台210に載置する。真空チャンバ208には、真空チャンバ内を減圧する真空ポンプ212が配管214を介して接続されるとともに、配管214には開閉バルブ216が設けられる。真空チャンバ208には、ユニット中間体200Aを出し入れする開閉扉は省略して図示してある。
また、真空チャンバ208には、ウェーハWと透明サポート基板202との当接面に形成される隙間に屈折液Bを注入するための注入装置218が設けられる。注入装置218は、屈折液Bが貯留される貯留瓶220と、貯留瓶220から屈折液Bを前記隙間に注入する注入細管222と、貯留瓶220に屈折液Bを補充する補充管224とで構成される。
そして、まず真空チャンバ208内が真空ポンプ212によって減圧される。これにより、ウェーハWと透明サポート基板202との当接面に形成される隙間が減圧される。
次に、図10(E)に示すように、注入装置218の注入細管222を封止材206の微細孔から挿入し、減圧状態にある隙間に屈折液Bを注入する。この隙間はバンプ204によって形成されるものであり、隙間の間隔もバンプ高さ程度であり、極めて小さい。したがって、屈折液Bは、毛細管現象により隙間内に充填されていく。この注入工程では、真空ポンプ212は停止しておくことが好ましい。
隙間に屈折液Bが充填されたら、テープの微小孔はワックス等で塞ぐ。これにより、ウェーハWと透明サポート基板202とが屈折液Bの液膜26Bによる界面張力で密着されたウェーハユニット200が形成される。
次に、図10(F)に示すように、ウェーハユニット200を真空チャンバ208から取り出す。ウェーハユニット200は、外部から大気圧がかかっても、ウェーハWと透明サポート基板202との間に屈折液Bが充填されていて極度に撓むことはなく、界面張力によって両者は密着している。
このように形成されたウェーハユニット200は、レーザダイシング装置の上記したステージ装置に保持され、レーザダイシング処理がなされる。
そして、レーザダイシング処理が終了したウェーハユニット200は、図11に示す方法によって、透明サポート基板202からウェーハWを剥離する。
まず、図11(A)に示すように、封止材206を取り除いたウェーハユニット200を、ウェーハ側を下にして剥離用の耐圧容器300内に載置する。耐圧容器300は容器本体302と蓋304とで構成される。容器本体302の底部には、ウェーハユニット200のウェーハWよりも一回り大きな円板状の窪み306が形成される。また、容器本体302には、容器内を減圧する真空ポンプ308が配管310を介して接続される。更に、前記した窪み306には、液体(例えば水)を窪み306に供給する液体供給配管312の先端部が開口される。
そして、図11(B)に示すように、この窪み306に嵌まるように、ウェーハユニット200のウェーハ面が載置される。
この状態で、真空ポンプ308を駆動して耐圧容器300内を減圧する。この減圧によって、ウェーハWと透明サポート基板202との間に介在される液膜26Bを形成する屈折液Bが蒸発して除かれる。これにより、ウェーハWと透明サポート基板202との間の界面張力がなくなる。
次に、図11(C)に示すように、液体供給配管312から僅かの液体を窪み306に供給してウェーハ面と窪み面との間に液膜314を形成する。これによって、ウェーハ面と窪み面との間が液膜314の界面張力によって密着する。
この状態で、耐圧容器300の蓋304を外して、別途設けた吸着パッド316で透明サポート基板202の上面を吸着し、吸着パッド316を上昇させる。これにより、ウェーハWから透明サポート基板202が剥離される。
本発明は、上記説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念を逸脱しない範囲で含まれる。
(付記)
上記に詳述した実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
(付記1)本発明のレーザダイシング装置は、前記目的を達成するために、表面に複数のデバイスが形成されたウェーハに対して、レーザ光を照射し、該ウェーハの内部に改質層を形成するレーザダイシング装置において、前記レーザ光を透過可能に形成され、前記ウェーハの裏面側を密着保持する平坦な保持面を有するウェーハテーブルと、前記レーザ光を前記ウェーハの裏面側から前記ウェーハテーブルを介して照射するレーザ照射手段と、を備え、前記レーザ照射手段の集光レンズ面と前記ウェーハテーブルのレーザ光入射面との間の間隙には、空気よりも屈折率の大きな屈折液Aの液膜が界面張力によって保持されていることを特徴とする。
(付記2)本発明のレーザダイシング方法は、前記目的を達成するために、表面に複数のデバイスが形成されたウェーハに対して、レーザ照射手段からレーザ光を照射し、該ウェーハの内部に改質層を形成するレーザダイシング方法において、前記レーザ光を透過可能に形成されるとともに、前記ウェーハの裏面側を密着保持する平坦な保持面を有するウェーハテーブルによって前記ウェーハを保持するウェーハ保持工程と、前記レーザ照射手段の集光レンズ面と前記ウェーハテーブルのレーザ光入射面との間が所定距離の間隙となるように前記レーザ照射手段及び/又は前記ウェーハテーブルを接近移動させる移動工程と、前記間隙に空気よりも屈折率の大きな屈折液Aを供給して液膜を形成する液膜形成工程と、前記レーザ光を前記ウェーハの裏面側から前記ウェーハテーブルを介して照射する照射工程と、を備えたことを特徴とする。
10…レーザダイシング装置、20…ウェーハテーブル、22…テーブル板、22A…保持面、22B…テーブル面(レーザ光入射面)、24…テーブル板保持フレーム、26A…屈折液Aの液膜、26B…屈折液Bの液膜、50…レーザ反射防止板、60…レーザ照射装置、62…レーザ発振装置、64…コリメータレンズ、66…集光レンズ、66A…レンズ面(レーザ光出射面)、68…アクチュエータ、69…囲い部材、110…剥離テーブル、112…リング、200…ウェーハユニット、202…透明サポート基板、204…バンプ、206…封止材、208…減圧チャンバ、210…載置台、212…真空ポンプ、214…配管、216…開閉弁、218…注入装置、220…貯留瓶、222…注入細管、224…補充配管、300…剥離用の耐圧容器、302…容器本体、304…蓋、306…窪み、308…真空ポンプ、310…配管、312…液体供給配管、314…液膜、W…ウェーハ、T…ダイシングテープ、F…ダイシングフレーム、A…屈折液、B…屈折液、a…ウェーハのレーザ光入射面、P…集光点

Claims (2)

  1. ウェーハに対してレーザ光を照射し、該ウェーハの内部に改質層を形成するレーザダイシング装置において、
    前記レーザ光を照射するレーザ照射手段と、
    前記レーザ光を透過可能に形成され前記ウェーハを保持するウェーハテーブルと、
    前記レーザ照射手段の集光レンズ面と前記ウェーハテーブルの間隙にある透明の液膜と、
    を備え、
    前記レーザ照射手段は、前記ウェーハテーブルと前記液膜とを介して前記ウェーハに前記レーザ光を照射し、前記ウェーハの内部に前記改質層を形成するレーザダイシング装置。
  2. レーザ照射手段からウェーハに対してレーザ光を照射し、該ウェーハの内部に改質層を形成するレーザダイシング方法において、
    前記レーザ光を透過可能に形成され前記ウェーハを保持するウェーハテーブルと、前記レーザ照射手段の集光レンズ面と前記ウェーハテーブルとの間隙にある透明の液膜と、を介して、前記レーザ照射手段から前記ウェーハに対して前記レーザ光を照射して、前記ウェーハの内部に前記改質層を形成するレーザダイシング方法。
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