JP2016190813A - 新規膜透過性ペプチド - Google Patents
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Abstract
Description
ポリエチレンイミンに代表されるように、エチレンジアミン構造を有するポリカチオンは、効率的な遺伝子送達キャリアであるとよく知られており(非特許文献1)、また、これらのキャリアの高いトランスフェクション効率をさらに上昇させ、細胞毒性を低減させる為に多数の研究がなされてきた(非特許文献2)。エチレンジアミン構造を有するポリカチオンによる効率的なトランスフェクションに関与する詳細な機構が最近報告された(非特許文献3)。高いエンドソーム脱出能力にはプロトン化の度合いが決定的な役割を果たす。中性pHでのモノプロトン化されたゴーシュ型構造の膜不安定化能力は低い。一方、酸性pHでのジプロトン化されたアンチ型構造の膜不安定化能力は高く、細胞毒性を殆ど示さずに高いエンドソーム脱出を引き起こす。高いカチオン電荷密度を備えるジプロトン化されたエチレンジアミン構造は、細胞膜に相互作用して、積荷を細胞へ送達する能力を有する。更に、アルギニン(Arg)に富んだペプチドが、薬剤、タンパク質、核酸及びナノサイズの物質の送達において最も効率的な細胞膜透過性ペプチド(CPPs)の一つとして同定された(非特許文献4、5)。Arg側鎖におけるカチオン性グアニジノ基は、細胞透過性のために重要である。従って、Argに富んだペプチド及びその誘導体に基づいて、新規のCPPが開発されている(非特許文献6,7)。
しかしながら、低毒性かつ高効率(低濃度)ですべてを満足できるようなデリバリーシステムの開発は未だ達成されていない。
本願発明は、以下に示す通りである。
[1]式(I):
で表される化合物。
[2]R1〜R3が同一又は異なってアミノ基の保護基である、上記[1]記載の化合物。
[3]R1〜R3が水素原子である、上記[1]記載の化合物。
[4]5〜15個のアミノ酸残基からなるオリゴペプチドであって、該ペプチドの全アミノ酸残基の少なくとも20%以上が上記[1]〜[3]のいずれかに記載の化合物に由来するものである、オリゴペプチド。
[5]全アミノ酸残基の少なくとも20%以上のアミノ酸残基が、式(I’):
で表される化合物に由来するものである、上記[4]記載のオリゴペプチド。
[6]式(II):
(Xaa)n (II)
[式中、nは5〜15の任意の整数であり;n個のXaaは同一又は異なって任意のアミノ酸残基である]
で表されるオリゴペプチドであって、
n=5の場合少なくとも1つ、n=6〜10の場合少なくとも2つ、n=11〜15の場合少なくとも3つのXaaが式(1):
で表される部分構造を有する、オリゴペプチド。
[7]上記[4]〜[6]のいずれかに記載のオリゴペプチドと分子X(Xは生理活性物質又は標識用化合物を示す)とを結合してなる化合物。
[8]上記[4]〜[6]のいずれかに記載のオリゴペプチドと分子X(Xは生理活性物質又は標識用化合物を示す)とを配合してなる組成物。
[9]Xが生理活性物質である、上記[7]記載の化合物。
[10]Xが生理活性物質である、上記[8]記載の組成物。
[11]上記[9]記載の化合物及び/又は上記[10]記載の組成物を含む医薬組成物。
[12]Xが標識用化合物である、上記[7]記載の化合物。
[13]Xが標識用化合物である、上記[8]記載の組成物。
[14]上記[12]記載の化合物及び/又は上記[10]記載の組成物を含む細胞標識用試薬。
[15]側鎖にグアニジニルアルキルアミン(アルキルは炭素数1〜3)構造を有する細胞膜透過性ペプチド。
本発明は、側鎖にカチオン性官能基として、グアニジニルアルキルアミノ基(アルキルは炭素数1〜3)を有する非天然型アミノ酸を提供する(以下、本発明の非天然型アミノ酸とも称する)。該非天然型アミノ酸は具体的には下記式(I)で表される(以下、本発明の非天然型アミノ酸(I)とも称する)。
該オリゴペプチドは好ましくは5〜15、より好ましくは6〜14、更に好ましくは7〜13、特に好ましくは8〜12個のアミノ酸残基からなり、該ペプチドの全アミノ酸残基の少なくとも20%以上がグアニジニルアルキルアミノ基(アルキルは炭素数1〜3)を有する非天然型アミノ酸である。その一例として、全アミノ酸残基の少なくとも20%以上のアミノ酸残基が、式(I)で表される非天然型アミノ酸に由来するものであるオリゴペプチドが挙げられる。
(Xaa)n (II)
[式中、nは5〜15の任意の整数であり;n個のXaaは同一又は異なって任意のアミノ酸残基である]
で表される化合物が挙げられる。当該化合物は、本発明の非天然型アミノ酸(I)に由来する下記部分構造を、n=5の場合少なくとも1つ、n=6〜10の場合少なくとも2つ、n=11〜15の場合少なくとも3つ有する。
即ち、式(II)で表されるオリゴペプチドは、そのアミノ酸配列中に、グアニジニルアルキルアミノ基(アルキルは炭素数1〜3)を有する非天然型アミノ酸(好ましくは本発明の非天然型アミノ酸(I))を全アミノ酸残基の少なくとも20%以上有し、該非天然型アミノ酸が複数存在する場合には連続又は非連続でそのアミノ酸配列中に含まれる。グアニジニルアルキルアミノ基(アルキルは炭素数1〜3)を有する非天然型アミノ酸(好ましくは本発明の非天然型アミノ酸(I))以外のアミノ酸残基は、α−アミノ酸とそれ以外のアミノ酸のいずれであってもよく上記した各種アミノ酸残基が挙げられる。
式(II)で表されるオリゴペプチドの両末端は所望により修飾されていてもよく、例えばアミノ保護基で保護されていてもよく、アセチル化されていてもよい。
「生理活性物質」としては、例えば、細胞内に導入された場合に該細胞の機能又は状態に影響を与えることができる物質であればよく、例えば、核酸、ペプチド、タンパク質、脂質、ペプチド脂質、糖、低分子化合物、その他の合成もしくは天然化合物等が挙げられる。より具体的には、酵素、抗体又はその断片、糖タンパク質等も分子Xとして使用され得る。細胞内への送達が疾患の治療および/または予防を目的とする場合、該物質は該疾患の治療および/または予防活性を有するものであり、例えば、抗高血圧剤、抗低血圧剤、抗精神病剤、鎮痛剤、抗鬱剤、抗躁剤、抗不安剤、鎮静剤、催眠剤、抗癲癇剤、オピオイドアゴニスト、喘息治療剤、麻酔剤、抗不整脈剤、関節炎治療剤、鎮痙剤、ACEインヒビター、鬱血除去剤、抗生物質、抗狭心症剤、利尿剤、抗パーキンソン病剤、気管支拡張剤、分娩促進剤、抗利尿剤、抗高脂血症剤、免疫抑制剤、免疫調節剤、制吐剤、抗感染症剤、抗新生物剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗糖尿病剤、抗アレルギー剤、解熱剤、抗腫瘍剤、抗痛風剤、抗ヒスタミン剤、止痒剤、骨調節剤、心血管剤、コレステロール低下剤、抗マラリア剤、喫煙を中止するための薬剤、鎮咳剤、去痰剤、粘液溶解剤、鼻詰り用薬剤、ドパミン作動剤、消化管用薬剤、筋弛緩剤、神経筋遮断剤、副交感神経作動剤、プロスタグランジン、興奮薬、食欲抑制剤、甲状腺剤又は抗甲状腺剤、ホルモン、抗偏頭痛剤、抗肥満剤、抗炎症剤などとして作用し得るものが挙げられる。
測定装置は以下のものを用いた。
NMR:JEOL AL 400 (400 MHz)
旋光度:JASCO DIP-370, 0.5 dmのセルを使用
質量分析:FAB-MS (JEOL JMS-700N); DART-MS (JEOL JMS-T1000TD)
デスマーチンペルヨージナン(DMP; 9.08 g, 21.4 mmol)を2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−1−エタノール(化合物6)(2.88 g, 17.8 mmol)のCH2Cl2(100 mL)撹拌溶液に添加し、該溶液を室温で2時間撹拌した。NaHCO3−Na2S2O3の飽和水溶液(100 mL)を添加し、室温で30分撹拌した。該溶液をCHCl3を用いて抽出し、MgSO4上で乾燥し、減圧留去して粗アルデヒドを得た。粗アルデヒド、Cbz−L−Lys−OMe(5.25 g, 17.8 mmol)及びMS4Å(1 g)のCH2Cl2(100 mL)溶液を0℃で1時間撹拌した。トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(4.80 g, 22.7 mmol)を撹拌溶液に加え、その後、室温で一晩撹拌した。該溶液をCHCl3で抽出しMgSO4上で乾燥した。溶媒を除去して残留物を得、該残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(10%MeOH、CHCl3中)で精製して無色の油としてCbz−L−Lys[AEt(Boc)]−OMe(化合物8)(2.63 g, 34%)を得た。
[α]D 25= +2.92 (c 1.35, CHCl3); IR (neat) ν 3345, 2955, 1715, 1697, 1520, 1454, 1400, 1254, 1215, 1169, 1049 cm-1; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.29-7.36 (m, 5H), 5.75 (br s, 1H), 5.69 (br s, 1H), 5.10 (s, 2H), 4.35 (m, 1H), 3.74 (s, 3H), 3.44 (br s, 1H), 3.31-3.35 (m, 2H), 2.84-2.90 (m, 2H), 2.74 (t, J = 7.10 Hz, 2H), 1.96-1.98 (m, 2H), 1.83 (m, 1H), 1.60-1.71 (m, 3H), 1.43 (s, 9H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 172.7, 156.5, 156.1, 136.2, 128.5, 128.13, 128.09, 80.0, 67.0, 53.6, 52.6, 48.5, 47.8, 37.3, 31.7, 28.4, 25.5, 22.4; FAB(+)HRMS calcd for C22H36N3O6[M+ + H]: 438.2604; found: 438.2596.
Boc2O(583 mg, 2.67 mmol)及びEt3N(270 mg, 2.67 mmol)を化合物8(973 mg, 2.22 mmol)のCH2Cl2(30 mL)撹拌溶液に加え、該溶液を室温で5時間撹拌した。溶媒を除去して残留物を得、該残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(40%EtOAc n−ヘキサン中)で精製して、無色の油としてCbz−L−Lys[Boc,AEt(Boc)]−OMe(化合物9)(820 mg, 69%)を得た。
[α]D 25= +1.99 (c 2.06, CHCl3); IR (neat) ν 3345, 2974, 1725, 1710, 1686, 1520, 1416, 1366, 1250, 1169, 1065 cm-1; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.28-7.36 (m, 5H), 5.37-5.52 (m, 1H), 5.10 (s, 2H), 4.80-5.04 (m, 1H), 4.35 (m, 1H), 3.74 (s, 3H), 3.17-3.24 (m, 6H), 1.84 (m, 1H), 1.69 (m, 1H), 1.50-1.53 (m, 2H), 1.44 (s, 9H), 1.43 (s, 9H), 1.24-1.36 (m, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 172.8, 156.0, 155.8, 136.2, 128.3, 79.7, 69.1, 66.8, 53.7, 52.2, 47.3, 46.3, 39.4, 32.2, 31.7, 28.2, 27.4, 22.3; FAB(+)HRMS calcd for C27H44N3O8[M+ + H]: 538.3128; found: 538.3132.
化合物9(387 mg, 0.720 mmol)の4M HCl/ジオキサン(7.2 mL)溶液を室温で2時間撹拌した。溶媒を除去して無色の結晶としてCbz−L−Lys(AEt)−OMe・2HCl(化合物13)(289 mg, 98%)を得た。
M.p. 149-151℃; [α]D 27 = -14.3 (c 1.11, MeOH); IR (KBr) ν 3341, 2978, 2936, 1720, 1524, 1450, 1420, 1366, 1250, 1165, 1076 cm-1; 1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.22-7.29 (m, 5H), 5.02 (s, 2H), 4.13 (m, 1H), 3.65 (s, 3H), 3.23-3.33 (m, 4H), 3.01 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 1.62-1.85 (m, 4H), 1.37-1.50 (m, 2H); 13C NMR (100 MHz, CD3OD) δ 174.3, 158.6, 138.1, 129.5, 129.0, 128.8, 67.7, 55.2, 52.8, 49.6, 45.7, 36.9, 31.9, 26.7, 23.8; FAB(+)HRMS calcd for C17H28N3O4[M+ + H]: 338.2080; found: 338.2032.
化合物13(289 mg, 0.681 mmol)を、1,3−ビス(tert−ブトキシカルボニル)−2−(トリフルオロメタンスルホニル)グアニジン(320 mg, 0.817 mmol)及びEt3N(83 mg, 0.817 mmol)のCH2Cl2(10 mL)撹拌溶液に加え、室温で一晩攪拌した。溶媒を除去して残留物を得、該残留物をシリカゲル上のショートカラムクロマトグラフィー(8%MeOH CHCl3中)で迅速に精製し、無色の油としてCbz−L−Lys[GEt(Boc)2]−OMe(化合物14)(362 mg, 89%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CHCl3) δ 11.42 (br s, 1H), 8.76 (br s, 1H), 7.29-7.36 (m, 5H), 5.54 (br s, 1H), 5.53 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 5.11 (s, 2H), 4.35 (m, 1H), 3.74 (s, 3H), 3.53-3.60 (m, 2H), 2.98-3.04 (m, 2H), 2.75-2.79 (m, 2H), 1.85 (m, 1H), 1.66-1.75 (m, 3H), 1.50 (s, 9H), 1.48 (s, 9H), 1.21-1.58 (m, 2H).
化合物14(1.88 g, 3.24 mmol)、Boc2O(849 mg, 3.89 mmol)及びEt3N(394 mg, 3.89 mmol)の混合物を室温で4時間撹拌した。溶媒を除去して残留物を得、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(40%EtOAc、n−ヘキサン中)で精製して、無色の油としてCbz−L−Lys[Boc,GEt(Boc)2]−OMe(化合物15)(1.94 g, 88%)を得た。
[α]D 21= +4.59 (c 1.14, CHCl3); IR (neat) ν 3333, 2978, 2936, 1728, 1690, 1682, 1630, 1616, 1574, 1535, 1415, 1366, 1335, 1254, 1231, 1157, 1134, 1096, 1060, 1022 cm-1; 1H NMR (400 MHz, CHCl3) δ 11.48 (br s, 1H), 8.44 (m, 1H), 7.31-7.36 (m, 5H), 5.36-5.52 (m, 1H), 5.10 (s, 2H), 4.34 (m, 1H), 3.73 (s, 3H), 3.50-3.56 (m, 2H), 3.34-3.42 (m, 2H), 3.12-3.24 (m, 1H), 1.84 (m, 1H), 1.70 (m, 1H), 1.49 (s, 9H), 1.48 (s, 9H), 1.44 (s, 9H), 1.27-1.40 (m, 4H); 13C NMR (100 MHz, CHCl3) δ 172.8, 163.4, 156.3, 155.9, 155.6, 153.0, 136.2, 128.4, 128.0, 83.0, 79.9, 79.1, 66.8, 53.7, 52.2, 46.0, 45.6, 39.4, 31.8, 28.23, 28.18, 28.1, 27.9, 27.3, 22.2; FAB(+)HRMS calcd for C33H54N5O10[M+ + H]: 680.3871; found: 680.3863.
0.1M NaOH(30.4 mL, 3.04 mmol)水溶液を化合物15(1.88 g, 2.76 mmol)のMeOH(30 mL)撹拌溶液に添加し、該溶液を室温で24時間撹拌した。MeOH除去後、クエン酸を用いて溶液のpH2〜3に酸性化し、EtOAcで抽出し、Na2SO4上で乾燥し、減圧留去して粗カルボン酸(化合物16)(1.66 g, 90%)を得た。MeOH(30 mL)中の、化合物16(1.66 g, 2.49 mmol)及び5%Pd−C(500 mg)の混合物をH2雰囲気下室温で激しく撹拌した。一晩撹拌した後、Pd−C触媒を濾去し、ろ液を減圧留去してして粗アミノ酸(化合物17)(1.33 g、定量的)を得た。Fmoc−OSu(925 mg, 2.74 mmol)のジオキサン(20 mL)溶液を、化合物17(1.33 g, 2.49 mmol)及びNaHCO3(628 mg, 7.48 mmol)の水(20 mL)撹拌溶液に添加し、該溶液を室温で一晩撹拌した。ジオキサン除去後、クエン酸を用いて溶液を酸性化し、EtOAcで抽出し、Na2SO4上で乾燥した。溶媒を除去して白い固形物を得、この固形物を、シリカゲル上のクロマトグラフィーで精製した。3%MeOH(CHCl3中)で溶出したフラクションからFmoc−L−Lys[Boc,GEt(Boc)2]−OH(化合物18)(972 mg, 52%)を無色の結晶として得た。
M.p. 93-94℃; [α]D 20 = +12.1 (c 1.41, CHCl3); IR (KBr) ν 3333, 2979, 2936, 1721, 1686, 1639, 1620, 1420, 1366, 1331 cm-1; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 11.53 (br s, 1H), 8.49 (m, 1H), 7.76 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 7.60 (d, J = 6.0 Hz, 2H), 7.39 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 7.31 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 6.23 (br s, 1H), 5.61 (m, 1H), 4.35-4.50 (m, 3H), 4.22 (t, J = 6.8 Hz, 1H), 3.16-3.51 (m, 6H), 1.89-1.97 (m, 2H), 1.48 (s, 9H), 1.47 (s, 9H), 1.45 (s, 9H), 1.20-1.60 (m, 4H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 174.8, 163.1, 156.5, 156.0, 155.7, 152.8, 143.9, 143.8, 141.3, 127.7, 127.0, 119.9, 83.3, 80.4, 79.6, 67.0, 53.5, 47.1, 46.5, 46.0, 39.6, 31.1, 28.3, 28.2, 27.3, 21.7; FAB(+)HRMS calcd for C39H56N5O10[M+ + H]: 754.4027; found: 754.4050.
標準の市販のRinkアミド樹脂及びFmocアミノ酸を用いるFmoc固相法によって固相担体上で各種ペプチドを合成した。以下に、10μmol規模での代表的なカップリング及び脱保護のサイクルを説明する。
まず、26.3mgのCLEARアミド樹脂(ローディング 0.38 mmol/g)を一晩DMFに浸漬した。DMF除去後、脱保護のために20%ピペリジン(DMF中)を樹脂に加えた。ピペリジンを除去し洗い落とした後、DMF(1.0 mL)中に溶解した、Fmocアミノ酸又は5(6)−テトラメチルローダミンカルボン酸(3当量)、カップリング試薬としてのCOMU(3当量)及び塩基としてのDIPEA(6当量)を加えてカップリング反応を行った。Fmocアミノ酸としては、Fmoc−Gly−OH及び実施例1で合成したFmoc−L−Lys[Boc,GEt(Boc)2]−OH(化合物18)を用いた。次いで、樹脂を開裂カクテル(TFA: 1.9 mL; H2O: 50 μL; TIS: 50 μL)に懸濁した。容積を小さくする為にTFA溶液を留去し、冷ジエチルエーテルに添加してペプチドを沈殿させた。乾燥させた粗ペプチドを、アセトニトリル及び/又はH2O中に溶解し、次いで、COSMOSIL Packed Column 5C18-AR-II(20 ID x 250 mm)(ナカライ)を用いるRP−HPLCにより精製した。フリーズドライによって赤色の結晶を得て、この結晶を分析用RP−HPLC(COSMOSIL Packed Column 5C18-AR-II, 4.6 ID x 250 mm)及びMALDI−TOF−MS(Bruker Daltonics Ultraflex, Fremont, CA)により同定した。RP−HPLCは、検出器としてJASCO-2075-Plusを備えたJASCO-PU-2089 Plus(JASCO)を利用した。溶媒A:0.05%TFA(H2O中)、溶媒B:0.05%TFA(アセトニトリル中)。精製は、流速1.0mL/min、220nmでの検出、勾配(95%〜50%の溶媒A、20分間)の条件で行った。最終化合物の純度は、流速1.0mL/minで、同様のRP−HPLC条件(95%〜35%の溶媒Aで20分間、その後、35%〜10%の溶媒Aで5分間)を用いて更に確認した。
合成したペプチドを、その後、RP−HPLCを用いて精製した。精製したペプチドの均質性を、分析用RP−HPLC及びMALDI−TOF/MSによって検証した。結果を図2Dに示す。得られた標識ペプチドを、以下、TMR−Gly−[L−Lys(GEt)]9−NH2(ペプチド4)とも略記する場合がある。
0.1M NaOH(27.1 mL, 2.71 mmol)水溶液を化合物9(1.22 g, 2.26 mmol)のMeOH(10 mL)撹拌溶液に添加し、該溶液を室温で2時間撹拌した。MeOH除去後、1M NaHSO4水溶液を用いて溶液のpH2〜3に酸性化し、EtOAcを用いて抽出し、Na2SO4上で乾燥し、減圧留去して粗カルボン酸(化合物10)(1.00 g, 84%)を得た。MeOH(30 mL)中の、化合物10(1.00 g, 1.91 mmol)及び5%Pd−C(300 mg)の混合物をH2雰囲気下室温で激しく撹拌した。一晩撹拌した後、Pd−C触媒を濾去し、ろ液を減圧留去して粗アミノ酸(化合物11)(719 mg, 97%)を得た。Fmoc−OSu(685 mg, 2.03 mmol)のジオキサン(10 mL)溶液を、化合物11(719 mg, 1.85 mmol)及びNaHCO3(465 mg, 5.54 mmol)の水(30 mL)撹拌溶液に添加し、該溶液を室温で一晩撹拌した。ジオキサン除去後、クエン酸を用いて溶液を酸性化し、EtOAcを用いて抽出し、Na2SO4上で乾燥した。溶媒除去により白い固形物を得、この固形物を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィーで精製した。10%MeOH(CHCl3中)で溶出したフラクションからFmoc−L−Lys[Boc,AEt(Boc)]−OH(化合物12)(670 mg, 48%)を無色の結晶として得た。
M.p. 67-69℃; [α]D 26 = +13.9 (c 0.86, CHCl3); IR (KBr) ν 3329, 3233, 2936, 2766, 2731, 2704, 2442, 1740, 1690, 1543, 1504, 1454, 1273, 1169, 1038, 999 cm-1; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.57 (s, 1H), 7.74 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 7.53-7.70 (m, 2H), 7.37 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 7.28 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 5.72-6.13 (m, 1H), 4.92-5.23 (m, 1H), 4.35-4.46 (m, 3H), 4.20 (t, J = 6.8 Hz, 1H), 3.15-3.26 (m, 3H), 1.25-1.91 (m, 6H), 1.44 (s, 9H), 1.42 (s, 9H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 175.2, 156.4, 156.1, 143.8, 143.7, 141.2, 127.6, 127.0, 125.1, 119.9, 80.1, 79.5, 67.0, 53.6, 47.0, 46.2, 39.3, 31.6, 28.3, 27.5, 22.2; FAB(+)HRMS calcd for C33H46N3O8 [M+ + H]: 612.3285; found: 612.3292.
合成されたペプチドを、その後、RP−HPLCを用いて精製した。精製されたペプチドの均質性を、分析用RP−HPLC及びMALDI−TOF/MSによって検証した。結果を図2Cに示す。
Fmocアミノ酸としてFmoc−Gly−OH及びFmoc−L−Lys(Boc)−OHを用いた以外は実施例2と同様にして下記構造を有するペプチドを合成した。得られた標識ペプチドを、以下、TMR−Gly−(L−Lys)9−NH2(ペプチド1)とも略記する場合がある。
合成されたペプチドを、その後、RP−HPLCを用いて精製した。精製されたペプチドの均質性を、分析用RP−HPLC及びMALDI−TOF/MSによって検証した。結果を図2Aに示す。
Fmocアミノ酸としてFmoc−Gly−OH及びFmoc−L−Arg(Pbf)−OHを用いた以外は実施例2と同様にして下記構造を有するペプチドを合成した。得られた標識ペプチドを、以下、TMR−Gly−(L−Arg)9−NH2(ペプチド2)とも略記する場合がある。
合成されたペプチドを、その後、RP−HPLCを用いて精製した。精製されたペプチドの均質性を、分析用RP−HPLC及びMALDI−TOF/MSによって検証した。結果を図2Bに示す。
5(6)−テトラメチルローダミンカルボン酸の代わりに5(6)−カルボキシフルオレセインを用いた以外は比較例3と同様にして、カルボキシフルオレセイン(CF)標識されたArgペプチドを合成した。得られた標識ペプチドを、以下、CF−Gly−(L−Arg)9−NH2(ペプチド5)とも略記する場合がある。
モデル化合物として標題化合物を合成した。
N−エチルエチレンジアミン(化合物19)(205 mg, 2.32 mmol)を、1,3−ビス(tert−ブトキシカルボニル)−2−(トリフルオロメタンスルホニル)グアニジン(1000 mg, 2.56 mmol)及びEt3N(259 mg, 2.32 mmol)のCH2Cl2(20 mL)撹拌溶液に加え、室温で一晩撹拌した。溶媒を除去して残留物を得、該残留物をシリカゲル上のショートカラムクロマトグラフィー(8%MeOH CHCl3中)で迅速に精製し、化合物20(768 mg、定量的)を得た。Boc2O(760 mg, 3.49 mmol)及びEt3N(353 mg, 3.49 mmol)を、化合物20(768 mg, 2.32 mmol)のCH2Cl2(30 mL)撹拌溶液に加え、室温で2時間撹拌した。溶媒を除去して残留物が得、該残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(10%EtOA n−ヘキサン中)によって精製し、無色の結晶として化合物21(654 mg, 65%)を得た。
M.p 102-103℃; IR (KBr) ν 3321, 3136, 2978, 2932, 1813, 1740, 1686, 1628, 1562, 1477, 1420, 1362, 1319, 1288, 1254, 1157 cm-1; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 11.32 (br s, 1H), 8.23-8.29 (m, 1H), 3.33-3.36 (m, 2H), 3.19-3.23 (m, 2H), 3.00-3.10 (m, 2H), 1.32 (s, 9H), 1.28 (s, 9H), 1.25 (s, 9H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 163.5, 156.3, 152.9, 82.9, 79.7, 79.1, 45.2, 41.8, 39.6, 28.2, 28.0, 27.4, 13.4; FAB(+)HRMS calcd for C20H39N4O6[M+ + H]: 431.2870; found: 431.2870.
化合物21(568 mg, 1.72 mmol)の4M HCl/ジオキサン(5 mL)溶液を室温で一晩撹拌した。溶媒除去により、無色の結晶として化合物22(299 mg, 86%)を得た。
M.p. 67-68℃; IR (KBr) ν 3470, 3150, 2980, 2810, 2460, 2360, 2190, 2060, 1650, 1440 cm-1; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 3.56 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 3.19 (t, J = 6.1 Hz, 2H), 3.08 (q, J = 7.3 Hz, 2H), 1.31 (t, J = 7.3 Hz, 3H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 158.9, 47.0, 44.5, 39.1, 11.5; FAB(+)HRMS calcd for C5H15N4[M+ + H]: 131.1275; found: 131.1300.
試験例1:GEtアミン構造とAEtアミン構造におけるプロトン化の度合い
(材料と方法)
Lys(GEt)のためのモデル化合物である化合物22(比較例2)及びLys(AEt)のためのモデル化合物19を用いた。
電位差滴定
N−エチルエチレンジアミン 塩酸塩(化合物19・2HCl;80.5 mg, 0.5 mmol)及び1−エチルアミノ−2−グアニジニルエタン 塩酸塩(化合物22;101.5 mg, 0.5 mmol)を別々に100mM HCl(10 mL)に溶解し、100mMアミン及び/又はグアニジン溶液を得た。その後、20℃において100mM NaOHを用いて電位差滴定を行った。滴定はpHメーターD−52(Horiba, Kyoto, Japan)を用いて行った。この実験では、pH値が安定した後、100μLの分量の滴定剤を加えた。
(結果)
化合物19は、典型的な二段階のプロトン化反応を示した(pH5.5におけるα=0.97、また、pH7.4におけるα=0.66;pKa17.1、pKa210.3)(図3、○)。一方、化合物22は、高pH側にシフトしたものの、同様の典型的な2段階のプロトン化反応を示した(pH5.5におけるα=0.99、pH7.4におけるα=0.96。pKa18.8、pKa212.0)(図3、●)。これらの結果よりGEtアミン構造は、中性付近のpH7.4においてもジプロトン化された構造を取り得ることがわかった。
(材料と方法)
Huh−7細胞、HeLa細胞又はCHO−K1細胞を24ウェルの培養プレートに播種し(1ウェル当たり40,000細胞)、10%ウシ胎児血清(FBS)を含有する400μLのDMEMでインキュベートした。その後、培地を、10%FBSを含有する新鮮な培地に交換し、各ペプチド溶液を各ウェルに所定の濃度(図4a、c及びe)で加えた。2時間のインキュベーション後、培地を除去し、細胞にヘパリン(20単位/mL)を添加し、トリプシン処理し、氷冷PBSを用いて洗浄した。10%FBSを含む培養液を加えた後、細胞を1600rpm、3分間4℃で遠心分離した。得られた細胞ペレットを、ヘパリンを添加した氷冷PBSで懸濁し、1600rpm、3分間4℃で遠心分離した。その後、細胞溶解バッファーMを用いて処理した。各溶解物の蛍光強度は、蛍光光度計(ND-3300, NanoDrop, Wilmington, DE)を用いて測定した。各ウェルのタンパク質量を、BCAタンパク質分析試薬キットを用いて同時に測定した。結果を3サンプルから得られた平均及び標準偏差として示した。
また、Huh−7細胞及びHeLa細胞を用いて、ペプチドの濃度を1μMと一定にし、一方で所定のインキュベーション時間で同様にして各種ペプチドの細胞内取込みを調べた(図5a及びb)。
(結果)
Huh−7細胞(図4a)、HeLa細胞(図4c)及びCHO−K1細胞(図4e)への細胞のペプチド1〜4の取り込みが異なる濃度において評価された。ペプチド2は、1μM(Huh−7及びHeLa細胞)または2μM(CHO−K1細胞)以上の濃度において最も効率的な細胞内への取り込みを示した。一方、0.5、0.25及び0.125μMの低濃度においてペプチド4の取り込みは、他のペプチドの取り込みより著しく高かった(例えば、P<0.05、ペプチド2対ペプチド4、ペプチド濃度:0.5μM、図4a)。細胞のペプチド1、2及び3の取り込みは、それぞれ0.5未満、0.5未満及び1μM未満の濃度において検出できなかった。
また、1μMのペプチド濃度におけるHuh−7細胞及びHeLa細胞による細胞内の取り込みの順位は、すべてのインキュベーション時間において同じだった(図5)。
(材料と方法)
Huh−7細胞、HeLa細胞又はCHO−K1細胞を96ウェル培養プレートへ播種し(10,000細胞/ウェル)、10%FBSを含む100μLのDMEMでインキュベートした。その後、培地を、10%FBSを含む新鮮な培地に交換し、各ペプチド溶液を所定の濃度で各ウェルに加えた。2時間のインキュベーション後、製品のプロトコルに従ってcell-counting Kit-8を用いて測定した。各ウェルからのホルマザンの吸光度に基づいて、細胞生存率を評価した。ここでは、ペプチドを含まないウェルの吸光度を100%として細胞生存率を算出した。結果を5サンプルから得られた平均及び標準偏差として示した。
(結果)
いずれの細胞に対しても、ペプチド4は高濃度でわずかな細胞毒性を示した(図4b、d及びf)。ジプロトン化されたGEtアミン構造を有するペプチド4は、プロトン化された1級アミン構造を有するペプチド1、プロトン化されたグアニジン構造を有するペプチド2及びモノプロトン化されたエチレンジアミン構造を有するペプチド3に比べて細胞膜に強く結合するように思われ、このことが、低濃度における効率的な細胞内の取り込みと、高濃度における細胞毒性の増大の原因と考えられた。
ペプチド2及びペプチド4のHuh−7細胞への細胞内の取り込みの経路を明確化するため、特定のエンドサイトーシス阻害剤(マクロピノサイトーシス阻害剤であるAm:アミロリド。クラスリン介在型エンドサイトーシス阻害剤であるCh:クロルプロマジン及びSu:スクロース。カベオラ介在型エンドサイトーシス阻害剤であるNy:ナイスタチン及びFi:フィリピン)を用いて細胞内の取り込み実験を行った。
(材料と方法)
Huh−7細胞を24ウェル培養プレート(40,000細胞/ウェル)に播種し、10%FBSを含む400μLのDMEMでインキュベートした。アミロリド(5 mM)、クロルプロマジン(10 μg/mL)、スクロース(0.4 M)、ナイスタチン(25 μg/mL)又はフィリピン(5 μg/mL)を含む、あるいは含まない、10%FBSを含む新鮮な培地に培地交換した後、細胞を37℃で30分間プレインキュベートした。ペプチド溶液を各ウェルに1μMの濃度で添加した。2時間のインキュベーション後、培地を除去し、細胞にヘパリン(20単位/mL)を添加し、トリプシン処理し、氷冷PBSを用いて洗浄した。10%FBSを含む培養液を加えた後、細胞を1600rpm、3分間4℃で遠心分離した。得られた細胞ペレットを、ヘパリンを添加した氷冷PBSで懸濁し、1600rpm、3分間4℃で遠心分離した。その後、細胞溶解バッファーMを用いて処理した。各溶解物の蛍光強度は、蛍光光度計(ND-3300)を用いて測定した。各ウェルのタンパク質量を、BCAタンパク質分析試薬キットを用いて同時に測定した。結果を3サンプルから得られた平均値及び標準偏差として示した。
(結果)
結果を図6に示す。図6aは、阻害剤の存在下におけるペプチド2の取り込みを示す。Am処理は、細胞内の取り込み量を30%以上減少させた(P<0.01)。また、Ch及びSuもペプチド2の取り込みを著しく減少させた(P<0.05)。これらの結果は、ペプチド2はマクロピノサイトーシスがメインで一部がクラスリン介在型エンドサイトーシスによって取り込まれることを示している。図6bに示すように、細胞内のペプチド4の取り込みは、Ch及びSuを用いて処理した細胞においてコントロールに比べておよそ30%低い(P<0.01)。Am存在下でのインキュベーションは、細胞内の取り込みに著しく影響を与えた(およそ15%の減少、P<0.05)。これらの結果は、ペプチド4はクラスリン介在型エンドサイトーシスがメインで一部がマクロピノサイトーシスで取り込まれていることを示している。Ny及びFiを用いたHuh−7細胞の処理は、ペプチド2または4のいずれかの取り込みにも大きな影響を与えなかった。このようにペプチド2及び4の細胞内の取り込み経路の間には、わずかな違いが観察された。
ペプチド4の、異なる細胞内取り込み機構についての更なる見識を得るため、共焦点レーザー走査顕微鏡法(CLSM)を用いてペプチド2及び4の細胞内分布を調べた。CF標識されたペプチド5とともにTMR標識されたペプチド2またはペプチド4を用いて処理したHuh−7細胞のCLSM観察を行うことにより、それらの異なった細胞内分布についての直接的な情報を得た。
(材料と方法)
Huh−7細胞又はHeLa細胞を、8ウェルのカバーガラスチャンバー(Iwaki, Tokyo, Japan)上に播種し(20,000細胞/ウェル)、10%FBSを含む200μLのDMEMで一晩インキュベートした。培地を、その後、10%FBSを含む新鮮な培地に交換した。ペプチド2又は4とペプチド5とは、1μMの濃度で各ウェルに添加した。2時間のインキュベーション後、培地を除去し、細胞にヘパリン(20単位/mL)を添加し、氷冷PBSを用いて3回洗浄した。ヘキスト33342を用いた核染色後、細胞内分布をCLSMによって観察した。CLSM観察は、ヘキスト33342のための励起波長405nm(UVレーザー)、ペプチド5のための励起波長488nm(Arレーザー)、及びペプチド2及び4のための励起波長543nm(He−Neレーザー)で、Plan-Apochromat 63x/1.4 (Carl Zeiss)対物レンズを備えたLSM710(Carl Zeiss, Oberlochen, Germany)を用いて行った。ペプチド5と共局在したペプチド2又は4の割合を定量した。共局在化の割合は以下のとおり定量した。
さらに、リソトラッカーグリーンを用いたCLSM観察は以下のようにして行った。
Huh−7細胞を、8ウェルのカバーガラスチャンバー(Iwaki)上に播種し(20,000細胞/ウェル)、10%FBSを含む200μLのDMEMで一晩インキュベートした。その後、培地を、10%FBSを含む新鮮な培地に交換した、ペプチド溶液を、1μMの濃度で各ウェルに添加した。2時間のインキュベーション後、培地を除去し、細胞に、ヘパリン(20単位/mL)を添加し、氷冷PBSを用いて3回洗浄した。後期エンドソーム/リソソームを、リソトラッカーグリーンを用いて染色し、核をヘキスト33342を用いて染色した後、細胞内分布をCLSMによって観察した。CLSM観察は、ヘキスト33342のための励起波長405nm(UVレーザー)、リソトラッカーグリーンのための励起波長488nm(Arレーザー)、ペプチド2及び4のための励起波長543nm(He−Neレーザー)でPlan-Apochromat 63x/1.4 (Carl Zeiss)対物レンズを備えたLSM710(Carl Zeiss)を用いて行った。リソトラッカーグリーンと共局在しているペプチド2又は4の割合を定量した。共局在化の割合は以下のとおり定量した。
(結果)
定量した共局在化の割合は、70%のペプチド2及び47%のペプチド4がペプチド5と共局在した(図7a)。ペプチド2及び4の間において著しい差異が観察された(P<0.001)。この結果より、Huh−7細胞におけるペプチド2及び4の最終的な行先が異なることが示唆された。ペプチド2及び4を用いて処理されたHeLa細胞及びCHO−K1細胞もまた、ペプチド5とともに、それぞれ83%及び67%(HeLa細胞,図7b)、87%及び75%(CHO−K1細胞,図7c)の共局在化率を示した(P<0.001)。
しかしながら、リソトラッカーグリーン染色を行った状態のペプチド2及びペプチド4のCLSM観察を行うことにより、酸性の後期エンドソーム/リソソームにおいて同様の共局在化率となることが明らかになった(図8)。
以上の結果より、ペプチド4は、ペプチド2よりも細胞膜に強く結合することができ、わずかに異なる機構により、低濃度においてより効率的に細胞へ取り込まれることがわかった。
(材料と方法)
Huh−7細胞とCHO−K1細胞の二種類を用いて、ルシフェラーゼタンパク質をコードしたpDNAを使って、発現したタンパク質の量を定量(=遺伝子導入効率)した。ポジティブコントロールとして、市販の遺伝子導入試薬のTurboFectを用いた。また、同時に試験例3と同様にして細胞毒性についても調べた。
(結果)
ペプチド4は低濃度で高い遺伝子導入効率を示しており、特にHuh−7細胞においてはTuboFectと同程度の効率を示した。
図9下段は、同条件での細胞毒性を評価した結果を示す。ペプチド4は高濃度で用いた場合に僅かな毒性が出てくるが、当該濃度で、TurboFectはかなりの毒性が出ている。
これらの結果より、本発明のペプチドは高い遺伝子導入効率を示す濃度範囲では毒性は問題とならないことが示された。
Claims (15)
- 式(I):
で表される化合物。 - R1〜R3が同一又は異なってアミノ基の保護基である、請求項1記載の化合物。
- R1〜R3が水素原子である、請求項1記載の化合物。
- 5〜15個のアミノ酸残基からなるオリゴペプチドであって、該ペプチドの全アミノ酸残基の少なくとも20%以上が請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物に由来するものである、オリゴペプチド。
- 全アミノ酸残基の少なくとも20%以上のアミノ酸残基が、式(I’):
で表される化合物に由来するものである、請求項4記載のオリゴペプチド。 - 式(II):
(Xaa)n (II)
[式中、nは5〜15の任意の整数であり;n個のXaaは同一又は異なって任意のアミノ酸残基である]
で表されるオリゴペプチドであって、
n=5の場合少なくとも1つ、n=6〜10の場合少なくとも2つ、n=11〜15の場合少なくとも3つのXaaが式(1):
で表される部分構造を有する、オリゴペプチド。 - 請求項4〜6のいずれか1項に記載のオリゴペプチドと分子X(Xは生理活性物質又は標識用化合物を示す)とを結合してなる化合物。
- 請求項4〜6のいずれか1項に記載のオリゴペプチドと分子X(Xは生理活性物質又は標識用化合物を示す)とを配合してなる組成物。
- Xが生理活性物質である、請求項7記載の化合物。
- Xが生理活性物質である、請求項8記載の組成物。
- 請求項9記載の化合物及び/又は請求項10記載の組成物を含む医薬組成物。
- Xが標識用化合物である、請求項7記載の化合物。
- Xが標識用化合物である、請求項8記載の組成物。
- 請求項12記載の化合物及び/又は請求項10記載の組成物を含む細胞標識用試薬。
- 側鎖にグアニジニルアルキルアミン(アルキルは炭素数1〜3)構造を有する細胞膜透過性ペプチド。
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