JP2016190813A - 新規膜透過性ペプチド - Google Patents

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Abstract

【課題】ドラッグデリバリーキャリアとして有用な新規な細胞膜透過性ペプチド及びそれを構成する非天然型アミノ酸の提供。【解決手段】下式(I)で表される非天然型アミノ酸、及び全アミノ酸残基の少なくとも20%以上が該非天然型アミノ酸に由来するオリゴペプチド。(n1は1〜3;n2は1〜6;R1〜R3はH又はアミノ基の保護基;R4はH、アミノ基の保護基等;R5はアミノ酸残基等)【選択図】なし

Description

本発明は、新規な膜透過性ペプチドに関する。より詳しくは、側鎖にカチオン性官能基を有する非天然型アミノ酸から構成されるドラッグデリバリーキャリアとして機能する膜透過性ペプチドに関する。
タンパク質や遺伝子などを細胞内に導入する技術に関する研究が盛んに行われている。それらの研究では、高分子やペプチドなどを用いたデリバリーシステムや、超音波や電気などの物理刺激を利用したものが開発されている。試薬として実用化されているものもあるが、タンパク質中から見出されたオリゴペプチドを利用したもの、または既知のペプチド配列を参考にして天然のアミノ酸を利用したものが大勢を占める。
ポリエチレンイミンに代表されるように、エチレンジアミン構造を有するポリカチオンは、効率的な遺伝子送達キャリアであるとよく知られており(非特許文献1)、また、これらのキャリアの高いトランスフェクション効率をさらに上昇させ、細胞毒性を低減させる為に多数の研究がなされてきた(非特許文献2)。エチレンジアミン構造を有するポリカチオンによる効率的なトランスフェクションに関与する詳細な機構が最近報告された(非特許文献3)。高いエンドソーム脱出能力にはプロトン化の度合いが決定的な役割を果たす。中性pHでのモノプロトン化されたゴーシュ型構造の膜不安定化能力は低い。一方、酸性pHでのジプロトン化されたアンチ型構造の膜不安定化能力は高く、細胞毒性を殆ど示さずに高いエンドソーム脱出を引き起こす。高いカチオン電荷密度を備えるジプロトン化されたエチレンジアミン構造は、細胞膜に相互作用して、積荷を細胞へ送達する能力を有する。更に、アルギニン(Arg)に富んだペプチドが、薬剤、タンパク質、核酸及びナノサイズの物質の送達において最も効率的な細胞膜透過性ペプチド(CPPs)の一つとして同定された(非特許文献4、5)。Arg側鎖におけるカチオン性グアニジノ基は、細胞透過性のために重要である。従って、Argに富んだペプチド及びその誘導体に基づいて、新規のCPPが開発されている(非特許文献6,7)。
しかしながら、低毒性かつ高効率(低濃度)ですべてを満足できるようなデリバリーシステムの開発は未だ達成されていない。
O. Bussif, F. Lezoualc’h, M. A. Zanta, M. D. Mergny, D. Scherman, B. Demeneix, J. P. Behr, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1995, 92, 7297-7301 Y. Lee, K. Kataoka, Adv. Polym. Sci. 2012, 249, 95-134 K. Miyata, M. Oba, M. Nakanishi, S. Fukushima, Y. Yamasaki, H. Koyama, N. Nishiyama, K. Kataoka, J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 16287-16294 P. A. Wender, D. J. Mitchell, K. Pattabiraman, E. T. Pelkey, L. Steinman, J. B. Rothbard, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2000, 97, 13003-13008 S. Futaki, T. Suzuki, W. Ohashi, T. Yagami, S. Tanaka, K. Ueda, Y. Sugiura, J. Biol. Chem. 2001, 276, 5836-5840 N. Umezawa, M. A. Gelman, M. C. Haigis, R. T. Raines, S. H. Gellman, J. Am. Chem. Soc. 2001, 124, 368-369 Y. A. Fillon, J. P. Anderson, J. Chmielewski, J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 11798-11803
本発明の目的は、ドラッグデリバリーキャリアとして機能し得る、新規な細胞膜透過性ペプチド及びそれを構成する非天然型アミノ酸を提供することにある。
本発明者らは、上記課題に鑑み、生理的なpHにおいても高い細胞透過性能力を有する細胞膜透過性ペプチドを合成するのに適した非天然型アミノ酸を種々設計・合成した。結果、側鎖にカチオン性官能基としてグアニジニルアルキルアミノ基を有するアミノ酸を利用することで、既存の膜透過性ペプチドの機能を超えるペプチドを開発することに成功して、本発明を完成するに至った。
本願発明は、以下に示す通りである。
[1]式(I):
[式中、nは1〜3の整数を表し;nは1〜6の整数を表し;R〜Rは同一又は異なって、水素原子またはアミノ基の保護基であり;Rは水素原子、アミノ基の保護基、アミノ酸残基またはアセチル基であり;Rはアミノ酸残基、−NR、−ORまたは−SR(式中、Rは水素原子または低級アルキル基を表す)である]
で表される化合物。
[2]R〜Rが同一又は異なってアミノ基の保護基である、上記[1]記載の化合物。
[3]R〜Rが水素原子である、上記[1]記載の化合物。
[4]5〜15個のアミノ酸残基からなるオリゴペプチドであって、該ペプチドの全アミノ酸残基の少なくとも20%以上が上記[1]〜[3]のいずれかに記載の化合物に由来するものである、オリゴペプチド。
[5]全アミノ酸残基の少なくとも20%以上のアミノ酸残基が、式(I’):
(式中、各記号の定義は上記[1]と同義である)
で表される化合物に由来するものである、上記[4]記載のオリゴペプチド。
[6]式(II):
(Xaa)n (II)
[式中、nは5〜15の任意の整数であり;n個のXaaは同一又は異なって任意のアミノ酸残基である]
で表されるオリゴペプチドであって、
n=5の場合少なくとも1つ、n=6〜10の場合少なくとも2つ、n=11〜15の場合少なくとも3つのXaaが式(1):
(式中、nは1〜3の整数を表し;nは1〜6の整数を表し;R〜Rは同一又は異なって、水素原子またはアミノ基の保護基であり;*は結合部位を示す)
で表される部分構造を有する、オリゴペプチド。
[7]上記[4]〜[6]のいずれかに記載のオリゴペプチドと分子X(Xは生理活性物質又は標識用化合物を示す)とを結合してなる化合物。
[8]上記[4]〜[6]のいずれかに記載のオリゴペプチドと分子X(Xは生理活性物質又は標識用化合物を示す)とを配合してなる組成物。
[9]Xが生理活性物質である、上記[7]記載の化合物。
[10]Xが生理活性物質である、上記[8]記載の組成物。
[11]上記[9]記載の化合物及び/又は上記[10]記載の組成物を含む医薬組成物。
[12]Xが標識用化合物である、上記[7]記載の化合物。
[13]Xが標識用化合物である、上記[8]記載の組成物。
[14]上記[12]記載の化合物及び/又は上記[10]記載の組成物を含む細胞標識用試薬。
[15]側鎖にグアニジニルアルキルアミン(アルキルは炭素数1〜3)構造を有する細胞膜透過性ペプチド。
側鎖にカチオン性官能基であるグアニジニルアルキルアミノ基(アルキルは炭素数1〜3)を有する本発明の非天然型アミノ酸から合成されるペプチドは、従来の膜透過性ペプチドに比べて、低濃度でそのドラッグデリバリーキャリアとしての機能を発揮することができる。従って、毒性等の副作用のないドラッグデリバリーキャリアとして用いることができる。本発明により抗体などのタンパク質やプラスミドDNAやsiRNAなどの遺伝子を細胞内に導入する試薬ならびにより安全かつ効果的な医薬品の開発が可能となる。
ペプチド1〜4及び、化合物19及び22の構造を示した図である。 ペプチド1のMALDI−TOF−MS結果及びHPLCチャートを示した図である。 ペプチド2のMALDI−TOF−MS結果及びHPLCチャートを示した図である。 ペプチド3のMALDI−TOF−MS結果及びHPLCチャートを示した図である。 ペプチド4のMALDI−TOF−MS結果及びHPLCチャートを示した図である。 電位差滴定によって得られた、化合物19・2HCl(○)及び化合物22(●)のα/pH曲線を示したグラフである。 Huh−7細胞(a,b)、HeLa細胞(c,d)及びCHO−K1細胞(e,f)を用いたペプチド1〜4の細胞内の取り込み(a,c,e)及び細胞の生存率(b,d,f)を調べた結果を示すグラフである。2時間のインキュベーションを行った状態のペプチド濃度依存性を調べた。エラーバーは標準偏差を示し、n=3(a,c,e)及びn=5(b,d,f)である。 Huh−7細胞(a)及びHeLa細胞(b)に対するペプチド1〜4の細胞取り込みを調べた結果を表わすグラフである。1μMのペプチド濃度の状態におけるインキュベーション時間依存性を調べた。エラーバーは標準偏差を示し、n=3である。 ペプチド2(a)及びペプチド4(b)の内在化における様々なエンドサイトーシス阻害剤の効果(ペプチド濃度:1μM)を調べた結果を表わすグラフである。エラーバーは標準偏差を示し、n=3である。*P<0.05及び**P<0.01である。 ペプチド5とペプチド2又は4との細胞内共局在について調べた結果を示すグラフである。ペプチド5と共局在しているペプチド2又は4を定量化した。Huh−7細胞での結果を(a)に、HeLa細胞での結果を(b)に、CHO-K1細胞の結果を(c)に示す。エラーバーは標準偏差を示し、n=20である。***P<0.001である。 ペプチド2及び4の細胞内分布を調べた結果を示すグラフである。リソトラッカーグリーンと共局在しているペプチド2又は4を定量化した。エラーバーは標準偏差を示し、n=18である。 ペプチド1〜4の遺伝子導入効率を調べた結果を示すグラフである。導入遺伝子としてはルシフェラーゼタンパク質をコードしたpDNAを用いた。Huh−7細胞とCHO−K1細胞の二種類を用い、ポジティブコントロールとして、市販の遺伝子導入試薬のTurboFectを用いた。上段に遺伝子導入効率の結果を下段に細胞毒性の結果を示す。pDNAに対するペプチドの濃度を1倍(1)、2倍(2)、4倍(4)及び8倍(8)と変えて評価した。バックグランドとしてpDNAを単独で投与したものを用いた。ペプチド1(Lys)、ペプチド2(Arg)、ペプチド3(Lys(Aet))、ペプチド4(Lys(GEt))。
以下、本発明をより具体的に説明する。
本発明は、側鎖にカチオン性官能基として、グアニジニルアルキルアミノ基(アルキルは炭素数1〜3)を有する非天然型アミノ酸を提供する(以下、本発明の非天然型アミノ酸とも称する)。該非天然型アミノ酸は具体的には下記式(I)で表される(以下、本発明の非天然型アミノ酸(I)とも称する)。
[式中、nは1〜3の整数を表わし;nは1〜6の整数を表わし;R〜Rは同一又は異なって、水素原子またはアミノ基の保護基であり;Rは水素原子、アミノ基の保護基、アミノ酸残基またはアセチル基であり;Rはアミノ酸残基、−NR、−ORまたは−SR(式中、Rは水素原子または低級アルキル基を表す)である]
「アミノ基の保護基」としては、特に制限はなく、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、tert−ブチルオキシカルボニル(Boc)、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル(Npys)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、ダンシル(DNS)、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、クロロギ酸ベンジル(Cl−Cbz)、ブロモギ酸ベンジル(Br−Cbz)、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル等が用いられる。R〜Rにおけるアミノ基の保護基は同一でも異なっていてもよいが、R〜Rがアミノ基の保護基である場合には、R〜RはBocであることが好ましく、RはFmocであることが好ましい。
「低級アルキル基」としては、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が挙げられ、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、1−メチルプロピル、ペンチル、イソペンチル、1,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、1,2−ジメチルブチル等が挙げられるが、好ましくはメチルである。
「アミノ酸残基」としては、α−アミノ酸とそれ以外のアミノ酸のいずれの場合もあり得る。α−アミノ酸残基としては、L−アルギニン、L−アラニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン、L−グルタミン酸、グリシン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、L−バリン、またはL−システインなどのアミノ酸やこれらの光学異性体(D体)の残基があげられ、それ以外のアミノ酸残基としては、オルニチン、シトルリン、ヒドロキシプロリン、ホモセリン、フェニルグリシン、タウリン、ヨードチロシン、2,4−ジアミノ酪酸、α−アミノイソ酪酸、4−アミノ酪酸、2−アミノ酪酸、γ−アミノ酪酸、ε−アミノヘキサン酸、6−アミノヘキサン酸、2−アミノイソ酪酸、3−アミノプロピオン酸、ノルロイシン、ノルバリン、サルコシン、ホモシトルリン、システイン酸、τ−ブチルグリシン、τ−ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β−アラニン、フルオロアミノ酸、β−メチルアミノ酸、C−メチルアミノ酸、N−メチルアミノ酸などのアミノ酸の残基が挙げられるが、いずれもこれらに限定されるものではない。
本発明の非天然型アミノ酸(I)として好ましくは、R〜Rがアミノ基の保護基(例、Boc)であり、Rはアミノ基の保護基(例、Fmoc)であり、Rが−OR(例、−OH)である下記化合物である。
(式中、各記号の定義は上述の通りである)
本発明の非天然型アミノ酸(I)としては、R〜Rが全て水素原子であり、Rが−OR(Rは水素原子)である下記化合物もまた好ましい。
(式中、各記号の定義は上述の通りである)
本発明は、側鎖にカチオン性官能基として、グアニジニルアルキルアミノ基(アルキルは炭素数1〜3)を有する非天然型アミノ酸を有するオリゴペプチドを提供する(以下、本発明のオリゴペプチドとも称する)。グアニジニルアルキルアミノ基(アルキルは炭素数1〜3)を有する非天然型アミノ酸としては、例えば本発明の非天然型アミノ酸(I)が挙げられる。
該オリゴペプチドは好ましくは5〜15、より好ましくは6〜14、更に好ましくは7〜13、特に好ましくは8〜12個のアミノ酸残基からなり、該ペプチドの全アミノ酸残基の少なくとも20%以上がグアニジニルアルキルアミノ基(アルキルは炭素数1〜3)を有する非天然型アミノ酸である。その一例として、全アミノ酸残基の少なくとも20%以上のアミノ酸残基が、式(I)で表される非天然型アミノ酸に由来するものであるオリゴペプチドが挙げられる。
本発明のオリゴペプチドの一実施態様として式(II):
(Xaa)n (II)
[式中、nは5〜15の任意の整数であり;n個のXaaは同一又は異なって任意のアミノ酸残基である]
で表される化合物が挙げられる。当該化合物は、本発明の非天然型アミノ酸(I)に由来する下記部分構造を、n=5の場合少なくとも1つ、n=6〜10の場合少なくとも2つ、n=11〜15の場合少なくとも3つ有する。
(式中、nは1〜3の整数を表し;nは1〜6の整数を表し;*は結合部位を示す)
即ち、式(II)で表されるオリゴペプチドは、そのアミノ酸配列中に、グアニジニルアルキルアミノ基(アルキルは炭素数1〜3)を有する非天然型アミノ酸(好ましくは本発明の非天然型アミノ酸(I))を全アミノ酸残基の少なくとも20%以上有し、該非天然型アミノ酸が複数存在する場合には連続又は非連続でそのアミノ酸配列中に含まれる。グアニジニルアルキルアミノ基(アルキルは炭素数1〜3)を有する非天然型アミノ酸(好ましくは本発明の非天然型アミノ酸(I))以外のアミノ酸残基は、α−アミノ酸とそれ以外のアミノ酸のいずれであってもよく上記した各種アミノ酸残基が挙げられる。
式(II)で表されるオリゴペプチドの両末端は所望により修飾されていてもよく、例えばアミノ保護基で保護されていてもよく、アセチル化されていてもよい。
本発明のペプチドの末端もしくは側鎖は、該ペプチドの使用目的に応じて分子Xと連結していてもよい。また、分子Xをナノ粒子として該ペプチドと連結させることもできる。分子Xは、本発明のペプチドのその細胞膜透過性を利用して細胞内への取り込みが所望される物質であれば特に限定されないが、生理活性物質及び標識用化合物が挙げられる。Xが生理活性物質の場合は、本発明のペプチドは医薬組成物とすることができ、Xが標識用化合物の場合は、本発明のペプチドは細胞標識用試薬とすることができる。
「生理活性物質」としては、例えば、細胞内に導入された場合に該細胞の機能又は状態に影響を与えることができる物質であればよく、例えば、核酸、ペプチド、タンパク質、脂質、ペプチド脂質、糖、低分子化合物、その他の合成もしくは天然化合物等が挙げられる。より具体的には、酵素、抗体又はその断片、糖タンパク質等も分子Xとして使用され得る。細胞内への送達が疾患の治療および/または予防を目的とする場合、該物質は該疾患の治療および/または予防活性を有するものであり、例えば、抗高血圧剤、抗低血圧剤、抗精神病剤、鎮痛剤、抗鬱剤、抗躁剤、抗不安剤、鎮静剤、催眠剤、抗癲癇剤、オピオイドアゴニスト、喘息治療剤、麻酔剤、抗不整脈剤、関節炎治療剤、鎮痙剤、ACEインヒビター、鬱血除去剤、抗生物質、抗狭心症剤、利尿剤、抗パーキンソン病剤、気管支拡張剤、分娩促進剤、抗利尿剤、抗高脂血症剤、免疫抑制剤、免疫調節剤、制吐剤、抗感染症剤、抗新生物剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗糖尿病剤、抗アレルギー剤、解熱剤、抗腫瘍剤、抗痛風剤、抗ヒスタミン剤、止痒剤、骨調節剤、心血管剤、コレステロール低下剤、抗マラリア剤、喫煙を中止するための薬剤、鎮咳剤、去痰剤、粘液溶解剤、鼻詰り用薬剤、ドパミン作動剤、消化管用薬剤、筋弛緩剤、神経筋遮断剤、副交感神経作動剤、プロスタグランジン、興奮薬、食欲抑制剤、甲状腺剤又は抗甲状腺剤、ホルモン、抗偏頭痛剤、抗肥満剤、抗炎症剤などとして作用し得るものが挙げられる。
好ましい一実施態様において、細胞内に導入され得る生理活性物質は核酸である。核酸としては、特に制限はなく、DNA、RNA、DNAとRNAのキメラ核酸、DNA/RNAのハイブリッド等いかなるものであってもよい。また、核酸は1〜3本鎖のいずれも用いることができるが、好ましくは1本鎖又は2本鎖である。核酸は、プリンまたはピリミジン塩基のN−グリコシドであるその他のタイプのヌクレオチド、あるいは非ヌクレオチド骨格を有するその他のオリゴマー(例えば、市販のペプチド核酸(PNA)等)または特殊な結合を含有するその他のオリゴマー(但し、該オリゴマーはDNAやRNA中に見出されるような塩基のペアリングや塩基の付着を許容する配置をもつヌクレオチドを含有する)などであってもよい。さらには公知の修飾の付加されたもの、例えば当該分野で知られた標識のあるもの、キャップの付いたもの、メチル化されたもの、1個以上の天然のヌクレオチドを類縁物で置換したもの、分子内ヌクレオチド修飾のされたもの、例えば非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)を持つもの、電荷を有する結合または硫黄含有結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を持つもの、例えば蛋白質(ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ・インヒビター、トキシン、抗体、シグナルペプチドなど)や糖(例えば、モノサッカライドなど)などの側鎖基を有しているもの、インターカレント化合物(例えば、アクリジン、プソラレンなど)を持つもの、キレート化合物(例えば、金属、放射活性をもつ金属、ホウ素、酸化性の金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された結合を持つもの(例えば、αアノマー型の核酸など)であってもよい。
例えば、DNAの種類は、使用の目的に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、例えばプラスミドDNA、cDNA、アンチセンスDNA、染色体DNA、PAC、BAC等が挙げられ、好ましくはプラスミドDNA、cDNA、アンチセンスDNAである。プラスミドDNA等の環状DNAは適宜制限酵素等により消化され、線形DNAとして用いることもできる。また、RNAの種類は、使用の目的に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、例えばsiRNA、miRNA、shRNA、アンチセンスRNA、メッセンジャーRNA、一本鎖RNAゲノム、二本鎖RNAゲノム、RNAレプリコン、トランスファーRNA、リボゾーマルRNA等が挙げられ、好ましくはsiRNA、miRNA、shRNA、mRNA、アンチセンスRNA、RNAレプリコンである。
「標識用化合物」としては、種々の酵素、蛍光物質、発光物質、生物発光物質及び放射性物質を挙げることができるが、これらに限定されない。適当な酵素の例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、及びアセチルコリンエステラーゼを挙げることができる。適当な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、テトラローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド及びフィコエリスリンを挙げることができる。発光物質の例としては、ルミノールを挙げることができる。生物発光物質の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリンを挙げることができる。適当な放射性物質の例としては、 125I、 131I、 35S、及び3Hを挙げることができる。
分子Xの細胞内への取り込みは、上述の如く、本発明のオリゴペプチドに分子Xを連結して、得られた化合物を細胞に供する方法以外に、分子Xと本発明のオリゴペプチドを単に混合して、それを細胞に供する方法によっても実施され得る。
分子Xはそのまま本発明のオリゴペプチドと連結あるいは混合してもよいが、ナノ粒子として、それを本発明のオリゴペプチドと連結あるいは混合することもできる。
本発明の非天然型アミノ酸(I)は、例えば下記スキームに示す方法によって製造することができる。原料の反応に関与すべきでない官能基の保護ならびに保護基、およびその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化等は公知の基または公知の手段から適宜選択しうる。下記スキームでは、一例として特定の原料、特定の試薬及び反応条件が記載されているが、他の同様の原料、試薬に代替可能であり、反応条件も用いる原料や試薬によって適宜設定されることは当業者には明らかである。
本発明のオリゴペプチドの合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれによってもよい。すなわち、本発明のオリゴペプチドを構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のオリゴペプチドを製造することができる。
より具体的には、本発明のオリゴペプチドの合成には、通常市販のペプチド合成用樹脂を用いることができる。そのような樹脂としては、例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニルヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂等を挙げることができる。
上記した保護アミノ酸の縮合に関しては、ペプチド合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、ウロニウム類が良い。ウロニウム類としては、COMU、HATU、HBTU等が用いられる。これらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt、HOOBt)とともに保護アミノ酸を直接樹脂に添加するか、または、対称酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護アミノ酸の活性化を行った後に樹脂に添加することができる。
保護アミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒としては、ペプチド縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の酸アミド類、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノール等のアルコール類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、ピリジン、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類あるいはこれらの適宜の混合物等が用いられる。
反応温度は、ペプチド結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約−20℃から100℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常1.5から4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行うことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行うことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化することができる。
原料のアミノ基の保護基としては、例えば、Z、Boc、tert−ペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl−Z、Br−Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmoc等が用いられる。
カルボキシル基は、例えば、アルキルエステル化(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、tert−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、2−アダマンチル等の直鎖状、分枝状もしくは環状アルキルエステル化)、アラルキルエステル化(例えば、ベンジルエステル、4−ニトロベンジルエステル、4−メトキシベンジルエステル、4−クロロベンジルエステル、ベンズヒドリルエステル化)、フェナシルエステル化、ベンジルオキシカルボニルヒドラジド化、tert−ブトキシカルボニルヒドラジド化、トリチルヒドラジド化等によって保護することができる。
セリン、スレオニン等が有する水酸基は、例えば、エステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては、例えば、アセチル等の低級アルカノイル基、ベンゾイル等のアロイル基、ベンジルオキシカルボニル、エトキシカルボニル等の炭酸から誘導される基等が用いられる。また、エーテル化に適する基としては、例えば、ベンジル、テトラヒドロピラニル、tert−ブチル等である。
チロシン等が有するフェノール性水酸基の保護基としては、例えば、Bzl、Cl−Bzl、2−ニトロベンジル、Br−Z、tert−ブチル等が用いられる。
ヒスチジン等が有するイミダゾールの保護基としては、例えば、Tos、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、ベンジルオキシメチル、Bum、Boc、Trt、Fmoc等が用いられる。
トリプトファン等が有するインドールの保護基としては、例えば、ホルミル、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニル、2,4,6−トリメトキシベンゼンスルホニル、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル、β,β,β−トリクロルエチルオキシカルボニル、ジフェニルホスフィノチオイルt−ブトキシカルボニル等が用いられる。
システイン等が有するチオール基の保護基としては、例えば、パラメトキシベンジル、4−メチルベンジル、ベンジル、t−ブチル、アダマンチル、トリチル、アセトアミドメチル、カルボメトキシスルフェニル、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル等が用いられる。
アルギニン等が有するグアニジノ基の保護基としては、例えば、ニトロ、トシル、p−メトキシベンゼンスルホニル、メシチレンスルホニル、ペンタメチルベンゼンスルホニル、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル、カルボベンゾキシ、イソボルニルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル等が用いられる。
メチオニン残基等が有するメルカプト基の保護基としては、ベンジル、p−メトキシベンジル等の置換ベンジル基;トリチル;ベンズヒドリル;アセタミドメチル;カルボメトキシスルフェニル等が用いられる。
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、例えば、対応する酸無水物、アジド、活性エステル[アルコール(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N−ヒドロキシスクシミド、HOBt)とのエステル]等が用いられる。原料のアミノ基の活性化されたものとしては、例えば、対応するリン酸アミドが用いられる。
保護基の除去(脱離)方法としては、例えば、Pd黒あるいはPd−炭素等の触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液等による酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジン等による塩基処理、また、液体アンモニア中ナトリウムによる還元等も用いられる。上記酸処理による脱離反応は、一般に約−20℃から40℃の温度で行われるが、酸処理においては、例えば、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4−ブタンジチオール、1,2−エタンジチオール等のようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4−ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記1,2−エタンジチオール、1,4−ブタンジチオール等の存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム溶液、希アンモニア等によるアルカリ処理によっても除去される。
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護ならびに保護基、およびその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化等は公知の基または公知の手段から適宜選択しうる。
また、反応後は通常の精製法、例えば、溶媒抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、再結晶等を組み合わせて目的のオリゴペプチドを単離精製することができる。上記方法で得られるペプチドが遊離体である場合は、公知の方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に塩で得られた場合は、公知の方法によって遊離体に変換することができる。
塩としては、生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、シュウ酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩等が用いられる。また、無機塩基(例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウムまたはアンモニウム等)との塩、有機塩基(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6−ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン等)との塩等も挙げられる。
かくして得られた本発明のオリゴペプチドは、細胞膜透過性に優れ、ドラッグデリバリーキャリアとして機能し得る。従って、本発明のオリゴペプチドは所望により分子X(生理活性物質、標識用化合物)と連結させ、あるいは混合して使用する。本発明のオリゴペプチドと連結あるいは混合して、細胞に供することによって、該オリゴペプチドの細胞膜透過性により分子Xは細胞内に好適に取り込まれる。
本発明のオリゴペプチドは、単独で、あるいは薬理学上許容されうる担体とともに常套手段に従って製剤化し、医薬組成物もしくは試薬組成物(例、細胞標識用試薬)として使用することができる。本発明のペプチドを試薬組成物として製剤化する場合は、該ペプチドは、そのままで、あるいは例えば水もしくはそれ以外の生理学的に許容し得る液(例えば、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、通常の細胞培養で用いられる培地(例えばRPMI1640、DMEM、HAM F−12、イーグル培地等)等の水性溶媒、エタノール、メタノール、DMSOなどの有機溶媒もしくは水性溶媒と有機溶媒との混合液等)との無菌性溶液もしくは懸濁液として提供され得る。該試薬組成物は適宜、自体公知の生理学的に許容し得る賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤等を含むことができる。
また、本発明のオリゴペプチドを医薬組成物として製剤化する場合は、該ペプチドは、そのままで、あるいは医薬上許容される担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに、一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって経口剤(例えば顆粒剤、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等)あるいは非経口剤(例えば注射剤(例、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤)、点滴剤、外用剤(例、スプレー剤、貼付剤、軟膏剤)、坐剤等)として製造することができる。
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチンなどのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射剤用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例:エタノール)、ポリアルコール(例:プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例:ポリソルベート80TM、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。
また、上記医薬組成物は、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液など)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤(例えばアスコルビン酸など)などと配合してもよい。
上記医薬組成物の対象への投与方法は、標的細胞へ該組成物が到達・接触し、該組成物に含まれる生理活性物質等を細胞内へ導入可能な範囲で特に限定されず、薬物の種類や、標的細胞の種類や部位等を考慮して、自体公知の投与方法(経口投与、非経口投与(静脈内投与、筋肉内投与、局所投与、経皮投与、皮下投与、腹腔内投与、スプレー等)等)を適宜選択することができる。
上記医薬組成物の投与量は、生理活性物質等の細胞内への導入を達成可能な範囲で特に限定されず、投与対象の種類、投与方法、生理活性物質等の種類、標的細胞の種類や部位等を考慮して適宜選択することができるが、経口投与の場合、一般的に例えばヒト(体重60kgとして)においては、その1回投与量は複合体として約0.001mg〜10000mgである。非経口的に投与する場合(例えば静脈内投与等)は、一般的に例えばヒト(体重60kgとして)においては、その1回投与量は複合体として約0.0001mg〜3000mgである。
投与対象としては、ヒトを含む哺乳類(ヒト、サル、マウス、ラット、ハムスター、ウシ等)、鳥類(ニワトリ、ダチョウ等)、両生類(カエル等)、魚類(ゼブラフィッシュ、メダカ等)などの脊椎動物が挙げられるが、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトである。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。特に示されない場合、用いる試薬等は商業的に入手可能である。
測定装置は以下のものを用いた。
NMR:JEOL AL 400 (400 MHz)
旋光度:JASCO DIP-370, 0.5 dmのセルを使用
質量分析:FAB-MS (JEOL JMS-700N); DART-MS (JEOL JMS-T1000TD)
実施例1:本発明の非天然型アミノ酸(I)の合成
[1]N−α−ベンジルオキシカルボニル−N−ε−tert−ブトキシカルボニル−2’−アミノエチル−L−リジン メチルエステル{Cbz−L−Lys[AEt(Boc)]−OMe,化合物8}の合成
デスマーチンペルヨージナン(DMP; 9.08 g, 21.4 mmol)を2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−1−エタノール(化合物6)(2.88 g, 17.8 mmol)のCHCl(100 mL)撹拌溶液に添加し、該溶液を室温で2時間撹拌した。NaHCO−Naの飽和水溶液(100 mL)を添加し、室温で30分撹拌した。該溶液をCHClを用いて抽出し、MgSO上で乾燥し、減圧留去して粗アルデヒドを得た。粗アルデヒド、Cbz−L−Lys−OMe(5.25 g, 17.8 mmol)及びMS4Å(1 g)のCHCl(100 mL)溶液を0℃で1時間撹拌した。トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(4.80 g, 22.7 mmol)を撹拌溶液に加え、その後、室温で一晩撹拌した。該溶液をCHClで抽出しMgSO上で乾燥した。溶媒を除去して残留物を得、該残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(10%MeOH、CHCl中)で精製して無色の油としてCbz−L−Lys[AEt(Boc)]−OMe(化合物8)(2.63 g, 34%)を得た。
[α]D 25= +2.92 (c 1.35, CHCl3); IR (neat) ν 3345, 2955, 1715, 1697, 1520, 1454, 1400, 1254, 1215, 1169, 1049 cm-1; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.29-7.36 (m, 5H), 5.75 (br s, 1H), 5.69 (br s, 1H), 5.10 (s, 2H), 4.35 (m, 1H), 3.74 (s, 3H), 3.44 (br s, 1H), 3.31-3.35 (m, 2H), 2.84-2.90 (m, 2H), 2.74 (t, J = 7.10 Hz, 2H), 1.96-1.98 (m, 2H), 1.83 (m, 1H), 1.60-1.71 (m, 3H), 1.43 (s, 9H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 172.7, 156.5, 156.1, 136.2, 128.5, 128.13, 128.09, 80.0, 67.0, 53.6, 52.6, 48.5, 47.8, 37.3, 31.7, 28.4, 25.5, 22.4; FAB(+)HRMS calcd for C22H36N3O6[M+ + H]: 438.2604; found: 438.2596.
[2]N−α−ベンジルオキシカルボニル−N−ε−(tert−ブトキシカルボニル−2’−アミノエチル)−N−ε−tert−ブトキシカルボニル−L−リジン メチルエステル{Cbz−L−Lys[Boc,AEt(Boc)]−OMe,化合物9}の合成
BocO(583 mg, 2.67 mmol)及びEtN(270 mg, 2.67 mmol)を化合物8(973 mg, 2.22 mmol)のCHCl(30 mL)撹拌溶液に加え、該溶液を室温で5時間撹拌した。溶媒を除去して残留物を得、該残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(40%EtOAc n−ヘキサン中)で精製して、無色の油としてCbz−L−Lys[Boc,AEt(Boc)]−OMe(化合物9)(820 mg, 69%)を得た。
[α]D 25= +1.99 (c 2.06, CHCl3); IR (neat) ν 3345, 2974, 1725, 1710, 1686, 1520, 1416, 1366, 1250, 1169, 1065 cm-1; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.28-7.36 (m, 5H), 5.37-5.52 (m, 1H), 5.10 (s, 2H), 4.80-5.04 (m, 1H), 4.35 (m, 1H), 3.74 (s, 3H), 3.17-3.24 (m, 6H), 1.84 (m, 1H), 1.69 (m, 1H), 1.50-1.53 (m, 2H), 1.44 (s, 9H), 1.43 (s, 9H), 1.24-1.36 (m, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 172.8, 156.0, 155.8, 136.2, 128.3, 79.7, 69.1, 66.8, 53.7, 52.2, 47.3, 46.3, 39.4, 32.2, 31.7, 28.2, 27.4, 22.3; FAB(+)HRMS calcd for C27H44N3O8[M+ + H]: 538.3128; found: 538.3132.
[3]N−α−ベンジルオキシカルボニル−N−ε−2’−アミノエチル−L−リジン メチルエステル 二塩酸塩{Cbz−L−Lys(AEt)}−OMe・2HCl,化合物13}の合成
化合物9(387 mg, 0.720 mmol)の4M HCl/ジオキサン(7.2 mL)溶液を室温で2時間撹拌した。溶媒を除去して無色の結晶としてCbz−L−Lys(AEt)−OMe・2HCl(化合物13)(289 mg, 98%)を得た。
M.p. 149-151℃; [α]D 27 = -14.3 (c 1.11, MeOH); IR (KBr) ν 3341, 2978, 2936, 1720, 1524, 1450, 1420, 1366, 1250, 1165, 1076 cm-1; 1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.22-7.29 (m, 5H), 5.02 (s, 2H), 4.13 (m, 1H), 3.65 (s, 3H), 3.23-3.33 (m, 4H), 3.01 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 1.62-1.85 (m, 4H), 1.37-1.50 (m, 2H); 13C NMR (100 MHz, CD3OD) δ 174.3, 158.6, 138.1, 129.5, 129.0, 128.8, 67.7, 55.2, 52.8, 49.6, 45.7, 36.9, 31.9, 26.7, 23.8; FAB(+)HRMS calcd for C17H28N3O4[M+ + H]: 338.2080; found: 338.2032.
[4]N−α−ベンジルオキシカルボニル−N−ε−[N’,N’’−ビス(tert−ブトキシカルボニル)−2’−グアニジニル]エチル−L−リジンメチルエステル{Cbz−L−Lys[GEt(Boc) ]−OMe,化合物14}の合成
化合物13(289 mg, 0.681 mmol)を、1,3−ビス(tert−ブトキシカルボニル)−2−(トリフルオロメタンスルホニル)グアニジン(320 mg, 0.817 mmol)及びEtN(83 mg, 0.817 mmol)のCHCl(10 mL)撹拌溶液に加え、室温で一晩攪拌した。溶媒を除去して残留物を得、該残留物をシリカゲル上のショートカラムクロマトグラフィー(8%MeOH CHCl中)で迅速に精製し、無色の油としてCbz−L−Lys[GEt(Boc)]−OMe(化合物14)(362 mg, 89%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CHCl3) δ 11.42 (br s, 1H), 8.76 (br s, 1H), 7.29-7.36 (m, 5H), 5.54 (br s, 1H), 5.53 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 5.11 (s, 2H), 4.35 (m, 1H), 3.74 (s, 3H), 3.53-3.60 (m, 2H), 2.98-3.04 (m, 2H), 2.75-2.79 (m, 2H), 1.85 (m, 1H), 1.66-1.75 (m, 3H), 1.50 (s, 9H), 1.48 (s, 9H), 1.21-1.58 (m, 2H).
[5]N−α−ベンジルオキシカルボニル−N−ε−[N’,N’’−ビス−(tert−ブトキシカルボニル)−2’−グアニジニル]エチル−N−ε−tert−ブトキシカルボニル−L−リジンメチルエステル{Cbz−L−Lys[Boc,GEt(Boc) ]−OMe,化合物15)}の合成
化合物14(1.88 g, 3.24 mmol)、BocO(849 mg, 3.89 mmol)及びEtN(394 mg, 3.89 mmol)の混合物を室温で4時間撹拌した。溶媒を除去して残留物を得、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(40%EtOAc、n−ヘキサン中)で精製して、無色の油としてCbz−L−Lys[Boc,GEt(Boc)]−OMe(化合物15)(1.94 g, 88%)を得た。
[α]D 21= +4.59 (c 1.14, CHCl3); IR (neat) ν 3333, 2978, 2936, 1728, 1690, 1682, 1630, 1616, 1574, 1535, 1415, 1366, 1335, 1254, 1231, 1157, 1134, 1096, 1060, 1022 cm-1; 1H NMR (400 MHz, CHCl3) δ 11.48 (br s, 1H), 8.44 (m, 1H), 7.31-7.36 (m, 5H), 5.36-5.52 (m, 1H), 5.10 (s, 2H), 4.34 (m, 1H), 3.73 (s, 3H), 3.50-3.56 (m, 2H), 3.34-3.42 (m, 2H), 3.12-3.24 (m, 1H), 1.84 (m, 1H), 1.70 (m, 1H), 1.49 (s, 9H), 1.48 (s, 9H), 1.44 (s, 9H), 1.27-1.40 (m, 4H); 13C NMR (100 MHz, CHCl3) δ 172.8, 163.4, 156.3, 155.9, 155.6, 153.0, 136.2, 128.4, 128.0, 83.0, 79.9, 79.1, 66.8, 53.7, 52.2, 46.0, 45.6, 39.4, 31.8, 28.23, 28.18, 28.1, 27.9, 27.3, 22.2; FAB(+)HRMS calcd for C33H54N5O10[M+ + H]: 680.3871; found: 680.3863.
[6]N−α−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)−N−ε−[N’,N’’−ビス−(tert−ブトキシカルボニル)−2’−グアニジニル]エチル−N−ε−tert−ブトキシカルボニル−L−リジン メチルエステル{Fmoc−L−Lys[Boc,GEt(Boc) ]−OH,化合物18}の合成
0.1M NaOH(30.4 mL, 3.04 mmol)水溶液を化合物15(1.88 g, 2.76 mmol)のMeOH(30 mL)撹拌溶液に添加し、該溶液を室温で24時間撹拌した。MeOH除去後、クエン酸を用いて溶液のpH2〜3に酸性化し、EtOAcで抽出し、NaSO上で乾燥し、減圧留去して粗カルボン酸(化合物16)(1.66 g, 90%)を得た。MeOH(30 mL)中の、化合物16(1.66 g, 2.49 mmol)及び5%Pd−C(500 mg)の混合物をH雰囲気下室温で激しく撹拌した。一晩撹拌した後、Pd−C触媒を濾去し、ろ液を減圧留去してして粗アミノ酸(化合物17)(1.33 g、定量的)を得た。Fmoc−OSu(925 mg, 2.74 mmol)のジオキサン(20 mL)溶液を、化合物17(1.33 g, 2.49 mmol)及びNaHCO(628 mg, 7.48 mmol)の水(20 mL)撹拌溶液に添加し、該溶液を室温で一晩撹拌した。ジオキサン除去後、クエン酸を用いて溶液を酸性化し、EtOAcで抽出し、NaSO上で乾燥した。溶媒を除去して白い固形物を得、この固形物を、シリカゲル上のクロマトグラフィーで精製した。3%MeOH(CHCl中)で溶出したフラクションからFmoc−L−Lys[Boc,GEt(Boc)]−OH(化合物18)(972 mg, 52%)を無色の結晶として得た。
M.p. 93-94℃; [α]D 20 = +12.1 (c 1.41, CHCl3); IR (KBr) ν 3333, 2979, 2936, 1721, 1686, 1639, 1620, 1420, 1366, 1331 cm-1; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 11.53 (br s, 1H), 8.49 (m, 1H), 7.76 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 7.60 (d, J = 6.0 Hz, 2H), 7.39 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 7.31 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 6.23 (br s, 1H), 5.61 (m, 1H), 4.35-4.50 (m, 3H), 4.22 (t, J = 6.8 Hz, 1H), 3.16-3.51 (m, 6H), 1.89-1.97 (m, 2H), 1.48 (s, 9H), 1.47 (s, 9H), 1.45 (s, 9H), 1.20-1.60 (m, 4H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 174.8, 163.1, 156.5, 156.0, 155.7, 152.8, 143.9, 143.8, 141.3, 127.7, 127.0, 119.9, 83.3, 80.4, 79.6, 67.0, 53.5, 47.1, 46.5, 46.0, 39.6, 31.1, 28.3, 28.2, 27.3, 21.7; FAB(+)HRMS calcd for C39H56N5O10[M+ + H]: 754.4027; found: 754.4050.
実施例2:本発明のペプチド(II)の合成
標準の市販のRinkアミド樹脂及びFmocアミノ酸を用いるFmoc固相法によって固相担体上で各種ペプチドを合成した。以下に、10μmol規模での代表的なカップリング及び脱保護のサイクルを説明する。
まず、26.3mgのCLEARアミド樹脂(ローディング 0.38 mmol/g)を一晩DMFに浸漬した。DMF除去後、脱保護のために20%ピペリジン(DMF中)を樹脂に加えた。ピペリジンを除去し洗い落とした後、DMF(1.0 mL)中に溶解した、Fmocアミノ酸又は5(6)−テトラメチルローダミンカルボン酸(3当量)、カップリング試薬としてのCOMU(3当量)及び塩基としてのDIPEA(6当量)を加えてカップリング反応を行った。Fmocアミノ酸としては、Fmoc−Gly−OH及び実施例1で合成したFmoc−L−Lys[Boc,GEt(Boc)]−OH(化合物18)を用いた。次いで、樹脂を開裂カクテル(TFA: 1.9 mL; H2O: 50 μL; TIS: 50 μL)に懸濁した。容積を小さくする為にTFA溶液を留去し、冷ジエチルエーテルに添加してペプチドを沈殿させた。乾燥させた粗ペプチドを、アセトニトリル及び/又はHO中に溶解し、次いで、COSMOSIL Packed Column 5C18-AR-II(20 ID x 250 mm)(ナカライ)を用いるRP−HPLCにより精製した。フリーズドライによって赤色の結晶を得て、この結晶を分析用RP−HPLC(COSMOSIL Packed Column 5C18-AR-II, 4.6 ID x 250 mm)及びMALDI−TOF−MS(Bruker Daltonics Ultraflex, Fremont, CA)により同定した。RP−HPLCは、検出器としてJASCO-2075-Plusを備えたJASCO-PU-2089 Plus(JASCO)を利用した。溶媒A:0.05%TFA(HO中)、溶媒B:0.05%TFA(アセトニトリル中)。精製は、流速1.0mL/min、220nmでの検出、勾配(95%〜50%の溶媒A、20分間)の条件で行った。最終化合物の純度は、流速1.0mL/minで、同様のRP−HPLC条件(95%〜35%の溶媒Aで20分間、その後、35%〜10%の溶媒Aで5分間)を用いて更に確認した。
合成したペプチドを、その後、RP−HPLCを用いて精製した。精製したペプチドの均質性を、分析用RP−HPLC及びMALDI−TOF/MSによって検証した。結果を図2Dに示す。得られた標識ペプチドを、以下、TMR−Gly−[L−Lys(GEt)]−NH(ペプチド4)とも略記する場合がある。
比較例1:N−α−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)−N−ε−(tert−ブトキシカルボニル−2’−アミノエチル)−N−ε−tert−ブトキシカルボニル−L−リジン{Fmoc−L−Lys[Boc,AEt(Boc)]−OH}を原料にしたペプチドの合成
実施例1の[1]及び[2]と同様にして、Cbz−L−Lys[Boc,AEt(Boc)]−OMe(化合物9)を合成した。
0.1M NaOH(27.1 mL, 2.71 mmol)水溶液を化合物9(1.22 g, 2.26 mmol)のMeOH(10 mL)撹拌溶液に添加し、該溶液を室温で2時間撹拌した。MeOH除去後、1M NaHSO水溶液を用いて溶液のpH2〜3に酸性化し、EtOAcを用いて抽出し、NaSO上で乾燥し、減圧留去して粗カルボン酸(化合物10)(1.00 g, 84%)を得た。MeOH(30 mL)中の、化合物10(1.00 g, 1.91 mmol)及び5%Pd−C(300 mg)の混合物をH雰囲気下室温で激しく撹拌した。一晩撹拌した後、Pd−C触媒を濾去し、ろ液を減圧留去して粗アミノ酸(化合物11)(719 mg, 97%)を得た。Fmoc−OSu(685 mg, 2.03 mmol)のジオキサン(10 mL)溶液を、化合物11(719 mg, 1.85 mmol)及びNaHCO(465 mg, 5.54 mmol)の水(30 mL)撹拌溶液に添加し、該溶液を室温で一晩撹拌した。ジオキサン除去後、クエン酸を用いて溶液を酸性化し、EtOAcを用いて抽出し、NaSO上で乾燥した。溶媒除去により白い固形物を得、この固形物を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィーで精製した。10%MeOH(CHCl中)で溶出したフラクションからFmoc−L−Lys[Boc,AEt(Boc)]−OH(化合物12)(670 mg, 48%)を無色の結晶として得た。
M.p. 67-69℃; [α]D 26 = +13.9 (c 0.86, CHCl3); IR (KBr) ν 3329, 3233, 2936, 2766, 2731, 2704, 2442, 1740, 1690, 1543, 1504, 1454, 1273, 1169, 1038, 999 cm-1; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.57 (s, 1H), 7.74 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 7.53-7.70 (m, 2H), 7.37 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 7.28 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 5.72-6.13 (m, 1H), 4.92-5.23 (m, 1H), 4.35-4.46 (m, 3H), 4.20 (t, J = 6.8 Hz, 1H), 3.15-3.26 (m, 3H), 1.25-1.91 (m, 6H), 1.44 (s, 9H), 1.42 (s, 9H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 175.2, 156.4, 156.1, 143.8, 143.7, 141.2, 127.6, 127.0, 125.1, 119.9, 80.1, 79.5, 67.0, 53.6, 47.0, 46.2, 39.3, 31.6, 28.3, 27.5, 22.2; FAB(+)HRMS calcd for C33H46N3O8 [M+ + H]: 612.3285; found: 612.3292.
得られたFmoc−L−Lys[Boc,AEt(Boc)]−OHを用いて実施例2と同様にして下記構造を有するペプチドを合成した。得られた標識ペプチドを、以下、TMR−Gly−[L−Lys(AEt)]−NH(ペプチド3)とも略記する場合がある。
合成されたペプチドを、その後、RP−HPLCを用いて精製した。精製されたペプチドの均質性を、分析用RP−HPLC及びMALDI−TOF/MSによって検証した。結果を図2Cに示す。
比較例2:Fmoc−L−Lys(Boc)−OHを原料にしたペプチドの合成
Fmocアミノ酸としてFmoc−Gly−OH及びFmoc−L−Lys(Boc)−OHを用いた以外は実施例2と同様にして下記構造を有するペプチドを合成した。得られた標識ペプチドを、以下、TMR−Gly−(L−Lys)−NH(ペプチド1)とも略記する場合がある。
合成されたペプチドを、その後、RP−HPLCを用いて精製した。精製されたペプチドの均質性を、分析用RP−HPLC及びMALDI−TOF/MSによって検証した。結果を図2Aに示す。
比較例3:Fmoc−L−Arg(Pbf)−OHを原料にしたペプチドの合成
Fmocアミノ酸としてFmoc−Gly−OH及びFmoc−L−Arg(Pbf)−OHを用いた以外は実施例2と同様にして下記構造を有するペプチドを合成した。得られた標識ペプチドを、以下、TMR−Gly−(L−Arg)−NH(ペプチド2)とも略記する場合がある。
合成されたペプチドを、その後、RP−HPLCを用いて精製した。精製されたペプチドの均質性を、分析用RP−HPLC及びMALDI−TOF/MSによって検証した。結果を図2Bに示す。
比較例4 Fmoc−L−Arg(Pbf)−OHを原料にしたペプチドの合成
5(6)−テトラメチルローダミンカルボン酸の代わりに5(6)−カルボキシフルオレセインを用いた以外は比較例3と同様にして、カルボキシフルオレセイン(CF)標識されたArgペプチドを合成した。得られた標識ペプチドを、以下、CF−Gly−(L−Arg)−NH(ペプチド5)とも略記する場合がある。
比較例5:1−エチルアミノ−2−グアニジニルエタン 塩酸塩の合成
モデル化合物として標題化合物を合成した。
[1]1−[N’,N’’−ビス−(tert−ブトキシカルボニル)−グアニジニル]−2−[N’’’−(tert−ブトキシカルボニル)−N’’’−エチルアミノ]エタン(化合物21)の合成
N−エチルエチレンジアミン(化合物19)(205 mg, 2.32 mmol)を、1,3−ビス(tert−ブトキシカルボニル)−2−(トリフルオロメタンスルホニル)グアニジン(1000 mg, 2.56 mmol)及びEtN(259 mg, 2.32 mmol)のCHCl(20 mL)撹拌溶液に加え、室温で一晩撹拌した。溶媒を除去して残留物を得、該残留物をシリカゲル上のショートカラムクロマトグラフィー(8%MeOH CHCl中)で迅速に精製し、化合物20(768 mg、定量的)を得た。BocO(760 mg, 3.49 mmol)及びEtN(353 mg, 3.49 mmol)を、化合物20(768 mg, 2.32 mmol)のCHCl(30 mL)撹拌溶液に加え、室温で2時間撹拌した。溶媒を除去して残留物が得、該残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(10%EtOA n−ヘキサン中)によって精製し、無色の結晶として化合物21(654 mg, 65%)を得た。
M.p 102-103℃; IR (KBr) ν 3321, 3136, 2978, 2932, 1813, 1740, 1686, 1628, 1562, 1477, 1420, 1362, 1319, 1288, 1254, 1157 cm-1; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 11.32 (br s, 1H), 8.23-8.29 (m, 1H), 3.33-3.36 (m, 2H), 3.19-3.23 (m, 2H), 3.00-3.10 (m, 2H), 1.32 (s, 9H), 1.28 (s, 9H), 1.25 (s, 9H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 163.5, 156.3, 152.9, 82.9, 79.7, 79.1, 45.2, 41.8, 39.6, 28.2, 28.0, 27.4, 13.4; FAB(+)HRMS calcd for C20H39N4O6[M+ + H]: 431.2870; found: 431.2870.
[2]1−エチルアミノ−2−グアニジニルエタン 塩酸塩(化合物22)の合成
化合物21(568 mg, 1.72 mmol)の4M HCl/ジオキサン(5 mL)溶液を室温で一晩撹拌した。溶媒除去により、無色の結晶として化合物22(299 mg, 86%)を得た。
M.p. 67-68℃; IR (KBr) ν 3470, 3150, 2980, 2810, 2460, 2360, 2190, 2060, 1650, 1440 cm-1; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 3.56 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 3.19 (t, J = 6.1 Hz, 2H), 3.08 (q, J = 7.3 Hz, 2H), 1.31 (t, J = 7.3 Hz, 3H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 158.9, 47.0, 44.5, 39.1, 11.5; FAB(+)HRMS calcd for C5H15N4[M+ + H]: 131.1275; found: 131.1300.
実施例及び比較例で得られたペプチド1〜4及び、モデル化合物19及び22の構造を図1に示す。
試験例1:GEtアミン構造とAEtアミン構造におけるプロトン化の度合い
(材料と方法)
Lys(GEt)のためのモデル化合物である化合物22(比較例2)及びLys(AEt)のためのモデル化合物19を用いた。
電位差滴定
N−エチルエチレンジアミン 塩酸塩(化合物19・2HCl;80.5 mg, 0.5 mmol)及び1−エチルアミノ−2−グアニジニルエタン 塩酸塩(化合物22;101.5 mg, 0.5 mmol)を別々に100mM HCl(10 mL)に溶解し、100mMアミン及び/又はグアニジン溶液を得た。その後、20℃において100mM NaOHを用いて電位差滴定を行った。滴定はpHメーターD−52(Horiba, Kyoto, Japan)を用いて行った。この実験では、pH値が安定した後、100μLの分量の滴定剤を加えた。
(結果)
化合物19は、典型的な二段階のプロトン化反応を示した(pH5.5におけるα=0.97、また、pH7.4におけるα=0.66;pKa17.1、pKa210.3)(図3、○)。一方、化合物22は、高pH側にシフトしたものの、同様の典型的な2段階のプロトン化反応を示した(pH5.5におけるα=0.99、pH7.4におけるα=0.96。pKa18.8、pKa212.0)(図3、●)。これらの結果よりGEtアミン構造は、中性付近のpH7.4においてもジプロトン化された構造を取り得ることがわかった。
試験例2:各種ペプチドの細胞内取込み
(材料と方法)
Huh−7細胞、HeLa細胞又はCHO−K1細胞を24ウェルの培養プレートに播種し(1ウェル当たり40,000細胞)、10%ウシ胎児血清(FBS)を含有する400μLのDMEMでインキュベートした。その後、培地を、10%FBSを含有する新鮮な培地に交換し、各ペプチド溶液を各ウェルに所定の濃度(図4a、c及びe)で加えた。2時間のインキュベーション後、培地を除去し、細胞にヘパリン(20単位/mL)を添加し、トリプシン処理し、氷冷PBSを用いて洗浄した。10%FBSを含む培養液を加えた後、細胞を1600rpm、3分間4℃で遠心分離した。得られた細胞ペレットを、ヘパリンを添加した氷冷PBSで懸濁し、1600rpm、3分間4℃で遠心分離した。その後、細胞溶解バッファーMを用いて処理した。各溶解物の蛍光強度は、蛍光光度計(ND-3300, NanoDrop, Wilmington, DE)を用いて測定した。各ウェルのタンパク質量を、BCAタンパク質分析試薬キットを用いて同時に測定した。結果を3サンプルから得られた平均及び標準偏差として示した。
また、Huh−7細胞及びHeLa細胞を用いて、ペプチドの濃度を1μMと一定にし、一方で所定のインキュベーション時間で同様にして各種ペプチドの細胞内取込みを調べた(図5a及びb)。
(結果)
Huh−7細胞(図4a)、HeLa細胞(図4c)及びCHO−K1細胞(図4e)への細胞のペプチド1〜4の取り込みが異なる濃度において評価された。ペプチド2は、1μM(Huh−7及びHeLa細胞)または2μM(CHO−K1細胞)以上の濃度において最も効率的な細胞内への取り込みを示した。一方、0.5、0.25及び0.125μMの低濃度においてペプチド4の取り込みは、他のペプチドの取り込みより著しく高かった(例えば、P<0.05、ペプチド2対ペプチド4、ペプチド濃度:0.5μM、図4a)。細胞のペプチド1、2及び3の取り込みは、それぞれ0.5未満、0.5未満及び1μM未満の濃度において検出できなかった。
また、1μMのペプチド濃度におけるHuh−7細胞及びHeLa細胞による細胞内の取り込みの順位は、すべてのインキュベーション時間において同じだった(図5)。
試験例3:各種ペプチドの細胞毒性
(材料と方法)
Huh−7細胞、HeLa細胞又はCHO−K1細胞を96ウェル培養プレートへ播種し(10,000細胞/ウェル)、10%FBSを含む100μLのDMEMでインキュベートした。その後、培地を、10%FBSを含む新鮮な培地に交換し、各ペプチド溶液を所定の濃度で各ウェルに加えた。2時間のインキュベーション後、製品のプロトコルに従ってcell-counting Kit-8を用いて測定した。各ウェルからのホルマザンの吸光度に基づいて、細胞生存率を評価した。ここでは、ペプチドを含まないウェルの吸光度を100%として細胞生存率を算出した。結果を5サンプルから得られた平均及び標準偏差として示した。
(結果)
いずれの細胞に対しても、ペプチド4は高濃度でわずかな細胞毒性を示した(図4b、d及びf)。ジプロトン化されたGEtアミン構造を有するペプチド4は、プロトン化された1級アミン構造を有するペプチド1、プロトン化されたグアニジン構造を有するペプチド2及びモノプロトン化されたエチレンジアミン構造を有するペプチド3に比べて細胞膜に強く結合するように思われ、このことが、低濃度における効率的な細胞内の取り込みと、高濃度における細胞毒性の増大の原因と考えられた。
試験例4:各種ペプチドの細胞内取込みに及ぼすエンドサイドーシス阻害剤の影響
ペプチド2及びペプチド4のHuh−7細胞への細胞内の取り込みの経路を明確化するため、特定のエンドサイトーシス阻害剤(マクロピノサイトーシス阻害剤であるAm:アミロリド。クラスリン介在型エンドサイトーシス阻害剤であるCh:クロルプロマジン及びSu:スクロース。カベオラ介在型エンドサイトーシス阻害剤であるNy:ナイスタチン及びFi:フィリピン)を用いて細胞内の取り込み実験を行った。
(材料と方法)
Huh−7細胞を24ウェル培養プレート(40,000細胞/ウェル)に播種し、10%FBSを含む400μLのDMEMでインキュベートした。アミロリド(5 mM)、クロルプロマジン(10 μg/mL)、スクロース(0.4 M)、ナイスタチン(25 μg/mL)又はフィリピン(5 μg/mL)を含む、あるいは含まない、10%FBSを含む新鮮な培地に培地交換した後、細胞を37℃で30分間プレインキュベートした。ペプチド溶液を各ウェルに1μMの濃度で添加した。2時間のインキュベーション後、培地を除去し、細胞にヘパリン(20単位/mL)を添加し、トリプシン処理し、氷冷PBSを用いて洗浄した。10%FBSを含む培養液を加えた後、細胞を1600rpm、3分間4℃で遠心分離した。得られた細胞ペレットを、ヘパリンを添加した氷冷PBSで懸濁し、1600rpm、3分間4℃で遠心分離した。その後、細胞溶解バッファーMを用いて処理した。各溶解物の蛍光強度は、蛍光光度計(ND-3300)を用いて測定した。各ウェルのタンパク質量を、BCAタンパク質分析試薬キットを用いて同時に測定した。結果を3サンプルから得られた平均値及び標準偏差として示した。
(結果)
結果を図6に示す。図6aは、阻害剤の存在下におけるペプチド2の取り込みを示す。Am処理は、細胞内の取り込み量を30%以上減少させた(P<0.01)。また、Ch及びSuもペプチド2の取り込みを著しく減少させた(P<0.05)。これらの結果は、ペプチド2はマクロピノサイトーシスがメインで一部がクラスリン介在型エンドサイトーシスによって取り込まれることを示している。図6bに示すように、細胞内のペプチド4の取り込みは、Ch及びSuを用いて処理した細胞においてコントロールに比べておよそ30%低い(P<0.01)。Am存在下でのインキュベーションは、細胞内の取り込みに著しく影響を与えた(およそ15%の減少、P<0.05)。これらの結果は、ペプチド4はクラスリン介在型エンドサイトーシスがメインで一部がマクロピノサイトーシスで取り込まれていることを示している。Ny及びFiを用いたHuh−7細胞の処理は、ペプチド2または4のいずれかの取り込みにも大きな影響を与えなかった。このようにペプチド2及び4の細胞内の取り込み経路の間には、わずかな違いが観察された。
試験例5:共焦点レーザー走査顕微鏡法による、ペプチドの細胞内取込み機構の解析
ペプチド4の、異なる細胞内取り込み機構についての更なる見識を得るため、共焦点レーザー走査顕微鏡法(CLSM)を用いてペプチド2及び4の細胞内分布を調べた。CF標識されたペプチド5とともにTMR標識されたペプチド2またはペプチド4を用いて処理したHuh−7細胞のCLSM観察を行うことにより、それらの異なった細胞内分布についての直接的な情報を得た。
(材料と方法)
Huh−7細胞又はHeLa細胞を、8ウェルのカバーガラスチャンバー(Iwaki, Tokyo, Japan)上に播種し(20,000細胞/ウェル)、10%FBSを含む200μLのDMEMで一晩インキュベートした。培地を、その後、10%FBSを含む新鮮な培地に交換した。ペプチド2又は4とペプチド5とは、1μMの濃度で各ウェルに添加した。2時間のインキュベーション後、培地を除去し、細胞にヘパリン(20単位/mL)を添加し、氷冷PBSを用いて3回洗浄した。ヘキスト33342を用いた核染色後、細胞内分布をCLSMによって観察した。CLSM観察は、ヘキスト33342のための励起波長405nm(UVレーザー)、ペプチド5のための励起波長488nm(Arレーザー)、及びペプチド2及び4のための励起波長543nm(He−Neレーザー)で、Plan-Apochromat 63x/1.4 (Carl Zeiss)対物レンズを備えたLSM710(Carl Zeiss, Oberlochen, Germany)を用いて行った。ペプチド5と共局在したペプチド2又は4の割合を定量した。共局在化の割合は以下のとおり定量した。
ここで、「ペプチド ピクセル(共局在)」は、細胞においてペプチド5と共局在するペプチド2又は4のピクセル数を示し、また、「ペプチド ピクセル(合計)」は、細胞における全ピクセル数を示す。結果を20細胞から得られた平均及び標準偏差として示した。
さらに、リソトラッカーグリーンを用いたCLSM観察は以下のようにして行った。
Huh−7細胞を、8ウェルのカバーガラスチャンバー(Iwaki)上に播種し(20,000細胞/ウェル)、10%FBSを含む200μLのDMEMで一晩インキュベートした。その後、培地を、10%FBSを含む新鮮な培地に交換した、ペプチド溶液を、1μMの濃度で各ウェルに添加した。2時間のインキュベーション後、培地を除去し、細胞に、ヘパリン(20単位/mL)を添加し、氷冷PBSを用いて3回洗浄した。後期エンドソーム/リソソームを、リソトラッカーグリーンを用いて染色し、核をヘキスト33342を用いて染色した後、細胞内分布をCLSMによって観察した。CLSM観察は、ヘキスト33342のための励起波長405nm(UVレーザー)、リソトラッカーグリーンのための励起波長488nm(Arレーザー)、ペプチド2及び4のための励起波長543nm(He−Neレーザー)でPlan-Apochromat 63x/1.4 (Carl Zeiss)対物レンズを備えたLSM710(Carl Zeiss)を用いて行った。リソトラッカーグリーンと共局在しているペプチド2又は4の割合を定量した。共局在化の割合は以下のとおり定量した。
ここで、「ペプチド ピクセル(共局在)」は、細胞においてリソトラッカーグリーンと共局在するペプチド2又は4のピクセル数を示し、また、「ペプチド ピクセル(合計)」は、細胞におけるすべてのピクセル数を示す。結果を、18細胞から得られた平均及び標準偏差として示した。
(結果)
定量した共局在化の割合は、70%のペプチド2及び47%のペプチド4がペプチド5と共局在した(図7a)。ペプチド2及び4の間において著しい差異が観察された(P<0.001)。この結果より、Huh−7細胞におけるペプチド2及び4の最終的な行先が異なることが示唆された。ペプチド2及び4を用いて処理されたHeLa細胞及びCHO−K1細胞もまた、ペプチド5とともに、それぞれ83%及び67%(HeLa細胞,図7b)、87%及び75%(CHO−K1細胞,図7c)の共局在化率を示した(P<0.001)。
しかしながら、リソトラッカーグリーン染色を行った状態のペプチド2及びペプチド4のCLSM観察を行うことにより、酸性の後期エンドソーム/リソソームにおいて同様の共局在化率となることが明らかになった(図8)。
以上の結果より、ペプチド4は、ペプチド2よりも細胞膜に強く結合することができ、わずかに異なる機構により、低濃度においてより効率的に細胞へ取り込まれることがわかった。
試験例6:プラスミドDNA(pDNA)を用いた遺伝子導入
(材料と方法)
Huh−7細胞とCHO−K1細胞の二種類を用いて、ルシフェラーゼタンパク質をコードしたpDNAを使って、発現したタンパク質の量を定量(=遺伝子導入効率)した。ポジティブコントロールとして、市販の遺伝子導入試薬のTurboFectを用いた。また、同時に試験例3と同様にして細胞毒性についても調べた。
(結果)
ペプチド4は低濃度で高い遺伝子導入効率を示しており、特にHuh−7細胞においてはTuboFectと同程度の効率を示した。
図9下段は、同条件での細胞毒性を評価した結果を示す。ペプチド4は高濃度で用いた場合に僅かな毒性が出てくるが、当該濃度で、TurboFectはかなりの毒性が出ている。
これらの結果より、本発明のペプチドは高い遺伝子導入効率を示す濃度範囲では毒性は問題とならないことが示された。
側鎖にカチオン性官能基であるグアニジニルアルキルアミノ基を有する本発明の非天然型アミノ酸から合成されるペプチドは、従来の膜透過性ペプチドに比べて、低濃度でそのドラッグデリバリーキャリアとしての機能を発揮することができる。従って、毒性等の副作用のないドラッグデリバリーキャリアとして用いることができる。本発明により抗体などのタンパク質やプラスミドDNAやsiRNAなどの遺伝子を細胞内に導入する試薬ならびにより安全かつ効果的な医薬品の開発が可能となる。

Claims (15)

  1. 式(I):
    [式中、nは1〜3の整数を表し;nは1〜6の整数を表し;R〜Rは同一又は異なって、水素原子またはアミノ基の保護基であり;Rは水素原子、アミノ基の保護基、アミノ酸残基またはアセチル基であり;Rはアミノ酸残基、−NR、−ORまたは−SR(式中、Rは水素原子または低級アルキル基を表す)である]
    で表される化合物。
  2. 〜Rが同一又は異なってアミノ基の保護基である、請求項1記載の化合物。
  3. 〜Rが水素原子である、請求項1記載の化合物。
  4. 5〜15個のアミノ酸残基からなるオリゴペプチドであって、該ペプチドの全アミノ酸残基の少なくとも20%以上が請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物に由来するものである、オリゴペプチド。
  5. 全アミノ酸残基の少なくとも20%以上のアミノ酸残基が、式(I’):
    (式中、各記号の定義は請求項1と同義である)
    で表される化合物に由来するものである、請求項4記載のオリゴペプチド。
  6. 式(II):
    (Xaa)n (II)
    [式中、nは5〜15の任意の整数であり;n個のXaaは同一又は異なって任意のアミノ酸残基である]
    で表されるオリゴペプチドであって、
    n=5の場合少なくとも1つ、n=6〜10の場合少なくとも2つ、n=11〜15の場合少なくとも3つのXaaが式(1):
    (式中、nは1〜3の整数を表し;nは1〜6の整数を表し;R〜Rは同一又は異なって、水素原子またはアミノ基の保護基であり;*は結合部位を示す)
    で表される部分構造を有する、オリゴペプチド。
  7. 請求項4〜6のいずれか1項に記載のオリゴペプチドと分子X(Xは生理活性物質又は標識用化合物を示す)とを結合してなる化合物。
  8. 請求項4〜6のいずれか1項に記載のオリゴペプチドと分子X(Xは生理活性物質又は標識用化合物を示す)とを配合してなる組成物。
  9. Xが生理活性物質である、請求項7記載の化合物。
  10. Xが生理活性物質である、請求項8記載の組成物。
  11. 請求項9記載の化合物及び/又は請求項10記載の組成物を含む医薬組成物。
  12. Xが標識用化合物である、請求項7記載の化合物。
  13. Xが標識用化合物である、請求項8記載の組成物。
  14. 請求項12記載の化合物及び/又は請求項10記載の組成物を含む細胞標識用試薬。
  15. 側鎖にグアニジニルアルキルアミン(アルキルは炭素数1〜3)構造を有する細胞膜透過性ペプチド。
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