[実施形態の概要]
第1実施形態乃至第4実施形態に係るユーザ端末は、移動通信システムにおいて、無線信号を送信先に送信する。前記ユーザ端末は、複数の送信電力制御パラメータを通信制御装置から受信する受信部と、前記複数の送信電力制御パラメータに基づいて前記無線信号の送信電力を制御する制御部と、を備える。前記複数の送信電力制御パラメータは、1つの無線信号を単独で送信する単独送信に適用される第1の送信電力制御パラメータと、周波数が異なる複数の無線信号を複数の送信先に同時に送信する同時送信、及び/又は前記同時送信が発生し得る特定通信モードに適用される第2の送信電力制御パラメータと、を含む。
第1実施形態乃至第4実施形態では、前記第2の送信電力制御パラメータは、前記複数の無線信号の送信電力差を低減するように構成されている。
第1実施形態に係る動作パターン1では、前記制御部は、前記同時送信及び/又は前記特定通信モードにおいて、前記第1の送信電力制御パラメータを適用せずに、前記第2の送信電力制御パラメータを適用して、前記複数の無線信号それぞれの送信電力を制御する。
第1実施形態に係る動作パターン2では、前記第2の送信電力制御パラメータは、前記第1の送信電力制御パラメータからの差分を示すパラメータである。前記制御部は、前記同時送信及び/又は前記特定通信モードにおいて、前記第1の送信電力制御パラメータ及び前記第2の送信電力制御パラメータを適用して、前記複数の無線信号それぞれの送信電力を制御する。
第1実施形態乃至第4実施形態では、前記第1の送信電力制御パラメータは、前記複数の送信先それぞれに対応して設けられている。前記制御部は、前記単独送信において、前記1つの無線信号の送信先に対応する前記第1の送信電力制御パラメータを適用して、前記1つの無線信号の送信電力を制御する。
第3実施形態に係る動作パターン1では、前記受信部は、前記第1の送信電力制御パラメータを受信した後において、前記特定通信モードに移行する場合に、前記第2の送信電力制御パラメータを受信する。前記制御部は、前記受信部が受信した前記第1の送信電力制御パラメータを保存した後において、前記第1の送信電力制御パラメータを破棄することなく、前記受信部が受信した前記第2の送信電力制御パラメータを保存する。
第3実施形態に係る動作パターン2では、前記制御部は、前記同時送信及び/又は前記特定通信モードに関連する能力を示す能力情報を前記通信制御装置に送信する。前記受信部は、前記能力情報に応じて前記通信制御装置から送信された前記第2の送信電力制御パラメータを受信する。
第3実施形態に係る動作パターン3では、前記制御部は、前記第2の送信電力制御パラメータの送信要求を前記通信制御装置に送信する。前記受信部は、前記送信要求に応じて前記通信制御装置から送信された前記第2の送信電力制御パラメータを受信する。
第4実施形態に係る動作パターン1では、前記制御部は、前記第2の送信電力制御パラメータを適用する場合において、前記第2の送信電力制御パラメータを適用する或いは適用開始することを示す情報を前記通信制御装置及び前記複数の送信先のうち少なくとも1つに送信する。
第4実施形態に係る動作パターン1では、前記制御部は、前記第2の送信電力制御パラメータの適用を解除する場合において、前記第2の送信電力制御パラメータの適用を解除する或いは前記第1の送信電力制御パラメータを適用することを示す情報を前記通信制御装置及び前記複数の送信先のうち少なくとも1つに送信する。
第4実施形態に係る動作パターン2では、前記制御部は、前記第2の送信電力制御パラメータを適用しても前記同時送信及び/又は前記特定通信モードが不可能であると判断した場合において、前記同時送信及び/又は前記特定通信モードが不可能であることを示す情報を前記通信制御装置に送信する。
第4実施形態に係る動作パターン3では、前記制御部は、前記特定通信モードでの通信を開始する場合において、前記特定通信モードでの通信を開始することを示す情報を前記通信制御装置に送信する。前記制御部は、前記特定通信モードでの通信を終了する場合において、前記特定通信モードでの通信を終了することを示す情報を前記通信制御装置に送信する。
第1実施形態乃至第4実施形態に係る通信制御装置は、無線信号を送信先に送信するユーザ端末を有する移動通信システムにおいて用いられる。前記通信制御装置は、複数の送信電力制御パラメータを前記ユーザ端末に送信する送信部を備える。前記複数の送信電力制御パラメータは、1つの無線信号を単独で送信する単独送信に適用される第1の送信電力制御パラメータと、周波数が異なる複数の無線信号を複数の送信先に同時に送信する同時送信、及び/又は前記同時送信が発生し得る特定通信モードに適用される第2の送信電力制御パラメータと、を含む。
第1実施形態乃至第4実施形態に係るプロセッサは、移動通信システムにおいて、無線信号を送信先に送信するユーザ端末に備えられる。前記プロセッサは、複数の送信電力制御パラメータを通信制御装置から受信する処理と、前記複数の送信電力制御パラメータに基づいて前記無線信号の送信電力を制御する処理と、を実行する。前記複数の送信電力制御パラメータは、1つの無線信号を単独で送信する単独送信に適用される第1の送信電力制御パラメータと、周波数が異なる複数の無線信号を複数の送信先に同時に送信する同時送信、及び/又は前記同時送信が発生し得る特定通信モードに適用される第2の送信電力制御パラメータと、を含む。
[第1実施形態]
以下において、本発明をLTEシステムに適用する場合の実施形態を説明する。
(システム構成)
図1は、第1実施形態に係るLTEシステムの構成図である。図1に示すように、第1実施形態に係るLTEシステムは、UE(User Equipment)100、EUTRAN(Evolved−UMTS Terrestrial Radio Access Network)10、及びEPC(Evolved Packet Core)20を備える。
UE100は、ユーザ端末に相当する。UE100は、移動型の通信装置であり、接続先のセル(サービングセル)との無線通信を行う。UE100の構成については後述する。
E−UTRAN10は、無線アクセスネットワークに相当する。E−UTRAN10は、eNB200(evolved Node−B)を含む。eNB200は、基地局に相当する。eNB200は、X2インターフェイスを介して相互に接続される。eNB200の構成については後述する。
eNB200は、1又は複数のセルを管理しており、自セルとの接続を確立したUE100との無線通信を行う。eNB200は、無線リソース管理(RRM)機能、ユーザデータのルーティング機能、モビリティ制御・スケジューリングのための測定制御機能などを有する。「セル」は、無線通信エリアの最小単位を示す用語として使用される他に、UE100との無線通信を行う機能を示す用語としても使用される。
EPC20は、コアネットワークに相当する。E−UTRAN10及びEPC20によりLTEシステムのネットワークが構成される。EPC20は、MME(Mobility Management Entity)/S−GW(Serving−Gateway)300を含む。MMEは、UE100に対する各種モビリティ制御などを行う。SGWは、ユーザデータの転送制御を行う。MME/S−GW300は、S1インターフェイスを介してeNB200と接続される。
図2は、UE100のブロック図である。図2に示すように、UE100は、複数のアンテナ101、無線送受信機110、ユーザインターフェイス120、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機130、バッテリ140、メモリ150、及びプロセッサ160を備える。メモリ150及びプロセッサ160は、制御部を構成する。UE100は、GNSS受信機130を有していなくてもよい。また、メモリ150をプロセッサ160と一体化し、このセット(すなわち、チップセット)をプロセッサ160’としてもよい。
複数のアンテナ101及び無線送受信機110は、無線信号の送受信に用いられる。無線送受信機110は、プロセッサ160が出力するベースバンド信号(送信信号)を無線信号に変換して複数のアンテナ101から送信する。また、無線送受信機110は、複数のアンテナ101が受信する無線信号をベースバンド信号(受信信号)に変換してプロセッサ160に出力する。
ユーザインターフェイス120は、UE100を所持するユーザとのインターフェイスであり、例えば、ディスプレイ、マイク、スピーカ、及び各種ボタンなどを含む。ユーザインターフェイス120は、ユーザからの操作を受け付けて、該操作の内容を示す信号をプロセッサ160に出力する。GNSS受信機130は、UE100の地理的な位置を示す位置情報を得るために、GNSS信号を受信して、受信した信号をプロセッサ160に出力する。バッテリ140は、UE100の各ブロックに供給すべき電力を蓄える。
メモリ150は、プロセッサ160により実行されるプログラム、及びプロセッサ160による処理に使用される情報を記憶する。プロセッサ160は、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号などを行うベースバンドプロセッサと、メモリ150に記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行うCPU(Central Processing Unit)と、を含む。プロセッサ160は、さらに、音声・映像信号の符号化・復号を行うコーデックを含んでもよい。プロセッサ160は、後述する各種の処理及び各種の通信プロトコルを実行する。
図3は、eNB200のブロック図である。図3に示すように、eNB200は、複数のアンテナ201、無線送受信機210、ネットワークインターフェイス220、メモリ230、及びプロセッサ240を備える。メモリ230及びプロセッサ240は、制御部を構成する。
複数のアンテナ201及び無線送受信機210は、無線信号の送受信に用いられる。無線送受信機210は、プロセッサ240が出力するベースバンド信号(送信信号)を無線信号に変換して複数のアンテナ201から送信する。また、無線送受信機210は、複数のアンテナ201が受信する無線信号をベースバンド信号(受信信号)に変換してプロセッサ240に出力する。
ネットワークインターフェイス220は、X2インターフェイスを介して隣接eNB200と接続され、S1インターフェイスを介してMME/S−GW300と接続される。
ネットワークインターフェイス220は、X2インターフェイス上で行う通信及びS1インターフェイス上で行う通信に用いられる。
メモリ230は、プロセッサ240により実行されるプログラム、及びプロセッサ240による処理に使用される情報を記憶する。プロセッサ240は、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号などを行うベースバンドプロセッサと、メモリ230に記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行うCPUと、を含む。プロセッサ240は、後述する各種の処理及び各種の通信プロトコルを実行する。
図4は、LTEシステムにおける無線インターフェイスのプロトコルスタック図である。図4に示すように、無線インターフェイスプロトコルは、OSI参照モデルの第1層乃至第3層に区分されており、第1層は物理(PHY)層である。第2層は、MAC(Media Access Control)層、RLC(Radio Link Control)層、及びPDCP(Packet Data Convergence Protocol)層を含む。第3層は、RRC(Radio Resource Control)層を含む。
物理層は、符号化・復号、変調・復調、アンテナマッピング・デマッピング、及びリソースマッピング・デマッピングを行う。UE100の物理層とeNB200の物理層との間では、物理チャネルを介してユーザデータ及び制御信号が伝送される。
MAC層は、データの優先制御、及びハイブリッドARQ(HARQ)による再送処理などを行う。UE100のMAC層とeNB200のMAC層との間では、トランスポートチャネルを介してユーザデータ及び制御信号が伝送される。eNB200のMAC層は、上下リンクのトランスポートフォーマット(トランスポートブロックサイズ、変調・符号化方式)、UE100への割当リソースブロックを決定(スケジューリング)するスケジューラを含む。
RLC層は、MAC層及び物理層の機能を利用してデータを受信側のRLC層に伝送する。UE100のRLC層とeNB200のRLC層との間では、論理チャネルを介してユーザデータ及び制御信号が伝送される。
PDCP層は、ヘッダ圧縮・伸張、及び暗号化・復号化を行う。
RRC層は、制御信号を取り扱う制御プレーンでのみ定義される。UE100のRRC層とeNB200のRRC層との間では、各種設定のための制御信号(RRCメッセージ)が伝送される。RRC層は、無線ベアラの確立、再確立及び解放に応じて、論理チャネル、トランスポートチャネル、及び物理チャネルを制御する。UE100のRRCとeNB200のRRCとの間に接続(RRC接続)がある場合、UE100は接続状態(RRC接続状態)であり、そうでない場合、UE100はアイドル状態(RRCアイドル状態)である。
RRC層の上位に位置するNAS(Non−Access Stratum)層は、セッション管理及びモビリティ管理などを行う。
図5は、LTEシステムで使用される無線フレームの構成図である。LTEシステムは、下りリンク(DL)にはOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiplexing Access)、上りリンク(UL)にはSC−FDMA(Single Carrier Frequency Division Multiple Access)がそれぞれ適用される。
図5に示すように、無線フレームは、時間方向に並ぶ10個のサブフレームで構成される。各サブフレームは、時間方向に並ぶ2個のスロットで構成される。各サブフレームの長さは1msであり、各スロットの長さは0.5msである。各サブフレームは、周波数方向に複数個のリソースブロック(RB)を含み、時間方向に複数個のシンボルを含む。
各リソースブロックは、周波数方向に複数個のサブキャリアを含む。1つのサブキャリア及び1つのシンボルによりリソースエレメントが構成される。
UE100に割り当てられる無線リソースのうち、周波数リソースはリソースブロックにより構成され、時間リソースはサブフレーム(又はスロット)により構成される。
下りリンクにおいて、各サブフレームの先頭数シンボルの区間は、主に下りリンク制御信号を伝送するための物理下りリンク制御チャネル(PDCCH)として使用される領域である。また、各サブフレームの残りの部分は、主に下りリンクユーザデータを伝送するための物理下りリンク共有チャネル(PDSCH)として使用できる領域である。
上りリンクにおいて、各サブフレームにおける周波数方向の両端部は、主に上りリンク制御信号を伝送するための物理上りリンク制御チャネル(PUCCH)として使用される領域である。各サブフレームにおける残りの部分は、主に上りリンクユーザデータを伝送するための物理上りリンク共有チャネル(PUSCH)として使用できる領域である。
(D2D通信)
第1実施形態に係るLTEシステムは、直接的な端末間通信(UE間通信)であるD2D通信をサポートする。第1実施形態においてD2D通信は特定通信モードに相当する。
ここでは、D2D通信を、LTEシステムの通常の通信であるセルラ通信と比較して説明する。
セルラ通信は、データパスがネットワーク(E−UTRAN10、EPC20)を経由する通信モードである。データパスとは、ユーザデータの通信経路である。これに対し、D2D通信は、UE間に設定されるデータパスがネットワークを経由しない通信モードである。相互に近接する複数のUE100は、eNB200のセルにおいて、低送信電力で直接的に無線通信を行う。このように、近接する複数のUE100が低送信電力で直接的に無線通信を行うことにより、セルラ通信と比べて、UE100の消費電力を削減し、かつ、隣接セルへの干渉を低減できる。
(第1実施形態に係る動作)
次に、第1実施形態に係る動作について説明する。
(1)動作概要
D2D通信をサポートするLTEシステムにおいては、周波数が異なる複数の無線信号をUE100から複数の送信先に対して同時に送信することが生じ得る。図6は、第1実施形態に係る動作環境を説明するための図である。図7は、第1実施形態に係る動作環境において生じる問題点を説明するための図である。
図6に示すように、eNB200が管理するセル(以下、単に「eNB200のセル」という。)にUE100−1及びUE100−2が在圏している。UE100−1は、eNB200の制御下で、eNB200とのセルラ通信を行うとともに、UE100−2とのD2D通信を行う。
第1に、eNB200は、セルラ通信における無線信号SG1の送信電力を制御するための送信電力制御(TPC)パラメータAと、D2D通信における無線信号SG2の送信電力を制御するためのTPCパラメータBと、をUE100−1に設定する。TPCパラメータA及びBは、1つの無線信号を単独で送信する単独送信に適用される第1のTPCパラメータに相当する。TPCパラメータA及びBは、同じパラメータが設定されてもよく、異なるパラメータが設定されてもよい。
第2に、eNB200は、セルラ通信を行うためのセルラ無線リソースと、D2D通信を行うためのD2D無線リソースと、をUE100−1に割り当てる。セルラ無線リソースは、例えばPUCCHリソース及びPUSCHリソースを含む。D2D無線リソースは、例えば物理D2D共有チャネル(PD2DSCH)リソースを含む。
UE100−1は、無線信号SG1をeNB200に送信し、無線信号SG2をUE100−2に送信する。UE100−1は、セルラ無線リソース及びD2D無線リソースが時間方向において重複する場合に、無線信号SG1及び無線信号SG2を同時に送信する。この場合、UE100−1は、無線信号SG1をeNB200(第1の送信先)に送信するとともに無線信号SG2をUE100−2(第2の送信先)に送信する。無線信号SG1及び無線信号SG2は、周波数が異なっている。UE100−2は、無線信号SG2を受信するが、その際に無線信号SG1も受信してしまう。
図6に示す動作環境では、UE100−1は、eNB200から遠方に位置する。また、UE100−1は、D2D通信の通信相手であるUE100−2の近傍に位置する。よって、UE100−1は、TPCパラメータAに従って、高い送信電力で無線信号SG1を送信する。これに対し、UE100−1は、TPCパラメータBに従って、低い送信電力で無線信号SG2を送信する。その結果、UE100−2は、高い受信電力で無線信号SG1を受信し、低い受信電力で無線信号SG2を受信する。
図7に示すように、無線信号SG1及び無線信号SG2における電力差が大きい場合に、電力が大きい無線信号SG1による干渉の影響により、電力が小さい無線信号SG2の信号雑音比(SNR)が劣化し、正常な信号伝送が困難になり得る。具体的には、送信側のUE100−1において、無線信号SG1の送信歪みにより、無線信号SG1の漏洩電力によるノイズが無線信号SG2に混入し、UE100−2において無線信号SG2のSNRが劣化することがある。或いは、UE100−1においてノイズが無線信号SG2に混入しない場合であっても、UE100−2において、無線信号SG1による受信歪み(受信ブロッキング及びIM応答)により、無線信号SG2のSNRが劣化することがある。
このように、周波数が異なる複数の無線信号をUE100から複数の送信先に対して同時に送信する場合において、当該複数の無線信号の送信電力差が大きいと、正常な信号伝送ができなくなる虞がある。
そこで、上述した第1のTPCパラメータ(TPCパラメータA及びB)に加えて、新たに第2のTPCパラメータ(TPCパラメータC)を導入する。第1実施形態では、第2のTPCパラメータ(TPCパラメータC)は、周波数が異なる複数の無線信号を複数の送信先に同時に送信する同時送信に適用される。第1実施形態に係るeNB200(通信制御装置)は、第1のTPCパラメータ(TPCパラメータA及びB)と、第2のTPCパラメータ(TPCパラメータC)と、をUE100−1に送信する。UE100−1は、第1のTPCパラメータ(TPCパラメータA及びB)と、第2のTPCパラメータ(TPCパラメータC)と、をeNB200から受信する。
このような同時送信用の第2のTPCパラメータ(TPCパラメータC)を導入することにより、同時送信時の送信電力を、単独送信時の送信電力とは別に制御可能となり、同時送信時の送信電力を適切に制御できる。
(2)TPCパラメータの具体例
次に、TPCパラメータの具体例について説明するが、以下に示す各パラメータは一例であって、各種変更を加えてもよい。
TPCパラメータAは、セルラ通信における無線信号SG1の送信電力を制御するためのTPCパラメータである。UE100−1は、TPCパラメータAに従って、セルラ通信における無線信号SG1の送信電力を決定する。UE100−1は、例えば、セルラ通信のPUSCHにおける送信電力PPUSCHを、以下の算出式により決定する。
ここで、PCMAXはUE最大送信電力を示し、MPUSCHはリソースブロック数から算出された瞬時PUSCH帯域幅を示し、P0_PUSCHは所望受信電力を示し、αはパスロス補正値を示し、ΔTFは送信フォーマットに応じた補正値であり、fは電力制御コマンドによる補正値を示す。例えば、P0_PUSCH及びαは、システム情報(SIB)の一部として報知されるセル固有のTPCパラメータである。ここで、P0_PUSCH及びαは、TPCパラメータAに相当する。なお、PO_PUSCHは、実際にはSIBで報知されるセル固有のPO_Nominal_PUSCHと、RRCメッセージで通知されるUE固有のPO_UE_PUSCHとの和で表される。
TPCパラメータBは、D2D通信における無線信号SG2の送信電力を制御するためのTPCパラメータである。UE100−1は、TPCパラメータBに従って、D2D通信における無線信号SG2の送信電力を決定する。UE100−1は、例えば、D2D通信のPD2DSCHにおける送信電力PPD2DSCHを、上記算出式と同様の算出式(PUSCHをPD2DSCHに置き換えたもの)により決定する。
TPCパラメータCは、セルラ通信における無線信号SG1及びD2D通信における無線信号SG2を同時に送信する同時送信において、無線信号SG1及び無線信号SG2の送信電力差を低減するためのTPCパラメータである。TPCパラメータCは、システム情報の一部として報知されてもよく、個別のRRCメッセージにより通知されてもよい。
第1実施形態に係る動作パターン1では、TPCパラメータCは、同時送信時においてTPCパラメータA又はBの代わりに適用されるTPCパラメータである。
例えば、TPCパラメータCがTPCパラメータAの代わりに適用されるものである場合に、TPCパラメータCは、同時送信用のP0_PUSCH(P0−UE−PUSCH−simultaneous)、及び同時送信用のα(alpha−PUSCH−simultaneous)である。ここで、同時送信用のP0_PUSCHは、単独送信用のP0_PUSCHよりも小さく設定される。また、同時送信用のαは、単独送信用のαよりも小さく設定される。これにより、同時送信時のPUSCH送信電力PPUSCHを単独送信時のPUSCH送信電力PPUSCHよりも小さくすることができるため、同時送信時おける送信電力差を低減できる。
或いは、TPCパラメータCがTPCパラメータBの代わりに適用されるものである場合に、TPCパラメータCは、同時送信用のP0_PD2DSCH(P0−UE−PD2DSCH−simultaneous)、及び同時送信用のα(alpha−PD2DSCH−simultaneous)である。ここで、同時送信用のP0_PD2DSCHは、単独送信用のP0_PD2DSCHよりも大きく設定される。また、同時送信用のαは、単独送信用のαよりも大きく設定される。これにより、同時送信時のPD2DSCH送信電力PPD2DSCHを単独送信時のPD2DSCH送信電力PPD2DSCHよりも大きくすることができるため、同時送信時おける送信電力差を低減できる。
このように、第1実施形態に係る動作パターン1では、UE100−1は、同時送信において、TPCパラメータA又はBを適用せずに、TPCパラメータCを適用して、無線信号SG1及び無線信号SG2それぞれの送信電力を制御する。
第1実施形態に係る動作パターン2では、TPCパラメータCは、TPCパラメータA又はBからの差分を示すTPCパラメータである。UE100−1は、同時送信において、TPCパラメータA(又はB)とTPCパラメータCとを適用して、無線信号SG1及び無線信号SG2それぞれの送信電力を制御する。
例えば、TPCパラメータCがTPCパラメータAからの差分値を示すものである場合に、TPCパラメータCは、P0_PUSCHに付加される負のオフセット値、及びαに付加される負のオフセット値である。これにより、同時送信時のPUSCH送信電力PPUSCHを単独送信時のPUSCH送信電力PPUSCHよりも小さくすることができるため、同時送信時おける送信電力差を低減できる。
或いは、TPCパラメータCがTPCパラメータBからの差分値を示すものである場合に、TPCパラメータCは、P0_PD2DSCHに付加される正のオフセット値、及びαに付加される正のオフセット値である。これにより、同時送信時のPD2DSCH送信電力PPD2DSCHを単独送信時のPD2DSCH送信電力PPD2DSCHよりも大きくすることができるため、同時送信時おける送信電力差を低減できる。
(3)動作シーケンス
図8は、第1実施形態に係るシーケンス図である。ここでは、第1実施形態に係る動作パターン2を例に説明する。
図8に示すように、ステップS101において、eNB200は、セルラ通信用のTPCパラメータAをUE100−1に送信する。TPCパラメータAを受信したUE100−1は、TPCパラメータAを保存する。
ステップS102において、eNB200は、D2D通信用のTPCパラメータBをUE100−1に送信する。TPCパラメータBを受信したUE100−1は、TPCパラメータBを保存する。なお、TPCパラメータA及びBとして同じパラメータが設定される場合には、ステップS102を省略可能である。
ステップS103において、eNB200は、同時送信用のTPCパラメータCをUE100−1に送信する。TPCパラメータCを受信したUE100−1は、TPCパラメータCを保存する。なお、ステップS101乃至S103の順序はこの通りでなくてもよい。
ステップS104において、eNB200は、UE100−1に割り当てるセルラ無線リソース及びD2D無線リソースを決定し、決定したセルラ無線リソース及びD2D無線リソースをUE100−1に通知する。
ステップS105において、UE100−1は、通知されたセルラ無線リソース及びD2D無線リソースに基づいて、セルラ通信における無線信号SG1及びD2D通信における無線信号SG2を同時に送信する同時送信が発生するか否かを判断する。例えば、UE100−1は、セルラ無線リソースを構成するサブフレームとD2D無線リソースを構成するサブフレームとが重複する場合に、同時送信が発生すると判断する。
同時送信が発生すると判断した場合(ステップS105:YES)、ステップS106において、UE100−1は、TPCパラメータA、B、Cを適用して、無線信号SG1及び無線信号SG2それぞれの送信電力を決定する。そして、ステップS108において、UE100−1は、決定した送信電力で無線信号SG1及び無線信号SG2を同時に送信する。
これに対し、同時送信が発生しない(すなわち、単独送信を行う)と判断した場合(ステップS105:NO)、ステップS107において、UE100−1は、TPCパラメータCを適用することなく、TPCパラメータA及びBを適用して、無線信号SG1及び無線信号SG2それぞれの送信電力を決定する。そして、ステップS108(の実線の矢印)及びS109において、UE100−1は、決定した送信電力で無線信号SG1及び無線信号SG2のそれぞれを単独で送信する。
(第1実施形態のまとめ)
上述したように、第1実施形態では、同時送信用の第2のTPCパラメータ(TPCパラメータC)を導入することにより、同時送信時の送信電力を、単独送信時の送信電力とは別に制御可能となり、同時送信時の送信電力を適切に制御できる。
第1実施形態では、第2のTPCパラメータ(TPCパラメータC)は、無線信号SG1及び無線信号SG2の送信電力差を低減するように構成されている。よって、無線信号SG1から無線信号SG2への干渉の影響によるSNR劣化を抑制できるため、同時送信を行う場合であっても正常な信号伝送を実現できる。
第1実施形態に係る動作パターン1では、UE100−1は、同時送信において、第1のTPCパラメータ(TPCパラメータA又はB)を適用せずに、第2のTPCパラメータ(TPCパラメータC)を適用して、無線信号SG1及び無線信号SG2それぞれの送信電力を制御する。
第1実施形態に係る動作パターン2では、第2のTPCパラメータ(TPCパラメータC)は、第1のTPCパラメータ(TPCパラメータA又はB)からの差分を示すパラメータである。UE100−1は、同時送信において、第1のTPCパラメータ(TPCパラメータA及びB)と第2のTPCパラメータ(TPCパラメータC)とを適用して、無線信号SG1及び無線信号SG2それぞれの送信電力を制御する。
よって、動作パターン1及び2の何れにおいても、無線信号SG1及び無線信号SG2の送信電力差を低減できる。
第1のTPCパラメータは、複数の送信先(eNB200及びUE100−2)それぞれに対応して設けられている。第1実施形態では、第1のTPCパラメータは、eNB200を送信先とするTPCパラメータAと、UE100−2を送信先とするTPCパラメータBと、を含む。UE100−1は、単独送信において、無線信号の送信先に対応する第1のTPCパラメータを適用して、当該無線信号の送信電力を制御する。すなわち、UE100−1は、無線信号SG1の単独送信において、TPCパラメータAを適用して無線信号SG1の送信電力を制御する。また、UE100−1は、無線信号SG2の単独送信において、TPCパラメータBを適用して無線信号SG2の送信電力を制御する。よって、単独送信時の送信電力を適切に制御できる。
[第2実施形態]
第2実施形態について、第1実施形態との相違点を主として説明する。第2実施形態は、システム構成については、第1実施形態と同様である。
(二重接続) 第2実施形態に係るLTEシステムは、二重接続(Dual connectivity)をサポートする。第2実施形態において二重接続は特定通信モードに相当する。図9は、第2実施形態に係る動作環境を説明するための図である。
図9に示すように、UE100は、一対のeNB200(MeNB200−1及びPeNB200−2)との二重接続を確立している。MeNB200−1は、大型のセルを管理する大型基地局(マクロeNB)である。PeNB200−2は、小型のセルを管理する小型基地局(ピコeNB)である。
MeNB200−1は、UE100のモビリティ制御(Mobility management)を行う。MeNB200−1は、UE100とのRRC接続を確立し、UE100のハンドオーバ制御などを行う。これに対し、PeNB200−2は、UE100のモビリティ制御を行わない。PeNB200−2は、少なくともMAC層又はRLC層までの接続(L2接続)をUE100と確立すればよく、必ずしもRRC接続(L3接続)を確立しなくてもよい。
二重接続では、UE100が一対のeNB200とのセルラ通信を行うことにより、1つのeNB200とのみセルラ通信を行う場合に比べて、高速・大容量のセルラ通信を行うことができる。
(第2実施形態に係る動作)
次に、第2実施形態に係る動作について説明する。
(1)動作概要
図9に示すように、UE100は、MeNB200−1の制御下でMeNB200−1とのセルラ通信を行うとともに、PeNB200−2の制御下でPeNB200−2とのセルラ通信を行う。
第1に、MeNB200−1は、MeNB200−1に対する無線信号SG1の送信電力を制御するためのTPCパラメータAをUE100に設定する。PeNB200−2は、PeNB200−2に対する無線信号SG2の送信電力を制御するためのTPCパラメータBをUE100に設定する。TPCパラメータA及びBは、1つの無線信号を単独で送信する単独送信に適用される第1のTPCパラメータに相当する。
第2に、MeNB200−1は、上りリンク通信を行うためのセルラ無線リソース1をUE100に割り当てる。PeNB200−2は、上りリンク通信を行うためのセルラ無線リソース2をUE100に割り当てる。セルラ無線リソース1及び2のそれぞれは、例えばPUCCHリソース及びPUSCHリソースを含む。
UE100は、無線信号SG1をMeNB200−1に送信し、無線信号SG2をPeNB200−2に送信する。UE100は、セルラ無線リソース1及びセルラ無線リソース2が時間方向において重複する場合に、無線信号SG1及び無線信号SG2を同時に送信する。この場合、UE100は、無線信号SG1をMeNB200−1(第1の送信先)に送信するとともに無線信号SG2をPeNB200−2(第2の送信先)に送信する。無線信号SG1及び無線信号SG2は、周波数が異なっている。PeNB200−2は、無線信号SG2を受信するが、その際に無線信号SG1も受信してしまう。
図9に示す動作環境では、UE100は、MeNB200−1から遠方に位置する。また、UE100は、PeNB200−2の近傍に位置する。よって、UE100は、TPCパラメータAに従って、高い送信電力で無線信号SG1を送信する。これに対し、UE100は、TPCパラメータBに従って、低い送信電力で無線信号SG2を送信する。その結果、PeNB200−2は、高い受信電力で無線信号SG1を受信し、低い受信電力で無線信号SG2を受信する。
第1実施形態で説明したように、無線信号SG1及び無線信号SG2における電力差が大きい場合に、電力が大きい無線信号SG1による干渉の影響により、電力が小さい無線信号SG2の信号雑音比(SNR)が劣化し、正常な信号伝送が困難になり得る。
そこで、第1実施形態と同様に、第1のTPCパラメータ(TPCパラメータA及びB)に加えて、新たに第2のTPCパラメータ(TPCパラメータC)を導入する。第2実施形態では、第2のTPCパラメータ(TPCパラメータC)は、周波数が異なる複数の無線信号を複数の送信先に同時に送信する同時送信に適用される。
第2実施形態に係るMeNB200−1(通信制御装置)は、第1のTPCパラメータ(TPCパラメータA)及び第2のTPCパラメータ(TPCパラメータC)をUE100に送信する。また、PeNB200−2は、第1のTPCパラメータ(TPCパラメータB)をUE100に送信する。
UE100は、第1のTPCパラメータ(TPCパラメータA)及び第2のTPCパラメータ(TPCパラメータC)をMeNB200−1から受信する。また、UE100は、第1のTPCパラメータ(TPCパラメータB)をPeNB200−2から受信する。
このような同時送信用の第2のTPCパラメータ(TPCパラメータC)を導入することにより、同時送信時の送信電力を、単独送信時の送信電力とは別に制御可能となり、同時送信時の送信電力を適切に制御できる。よって、同時送信を行う場合であっても正常な信号伝送を実現できる。
TPCパラメータ(TPCパラメータA、B、C)の具体例については、第1実施形態に係るTPCパラメータBにおいてPD2DSCHをPUSCHに置き換えることが必要であるが、その他の点は第1実施形態と同様である。また、第1実施形態に係る動作パターン1及び2の何れも第2実施形態に適用できる。すなわち、TPCパラメータCは、同時送信時においてTPCパラメータA又はBの代わりに適用されるTPCパラメータ、又は、TPCパラメータA又はBからの差分を示すTPCパラメータである。TPCパラメータCは、無線信号SG1及び無線信号SG2の送信電力差を低減するように構成されている。
(2)動作シーケンス
図10は、第2実施形態に係るシーケンス図である。ここでは、TPCパラメータCがTPCパラメータA又はBからの差分を示すTPCパラメータである一例について説明する。
図10に示すように、ステップS201において、MeNB200−1は、セルラ通信用のTPCパラメータAをUE100に送信する。TPCパラメータAを受信したUE100は、TPCパラメータAを保存する。
ステップS202において、PeNB200−2は、セルラ通信用のTPCパラメータBをUE100に送信する。TPCパラメータBを受信したUE100は、TPCパラメータBを保存する。なお、TPCパラメータA及びBとして同じパラメータが設定される場合には、ステップS202を省略可能である。
ステップS203において、MeNB200−1は、同時送信用のTPCパラメータCをUE100に送信する。TPCパラメータCを受信したUE100は、TPCパラメータCを保存する。なお、ステップS201乃至S203の順序はこの通りでなくてもよい。
ステップS204において、MeNB200−1は、UE100に割り当てるセルラ無線リソース1を決定し、決定したセルラ無線リソース1をUE100に通知する。
ステップS205において、PeNB200−2は、UE100に割り当てるセルラ無線リソース2を決定し、決定したセルラ無線リソース2をUE100に通知する。
ステップS206において、UE100は、通知されたセルラ無線リソース1及びセルラ無線リソース2に基づいて、MeNB200−1に対する無線信号SG1及びPeNB200−2に対する無線信号SG2を同時に送信する同時送信が発生するか否かを判断する。例えば、UE100は、セルラ無線リソース1を構成するサブフレームとセルラ無線リソース2を構成するサブフレームとが重複する場合に、同時送信が発生すると判断する。
同時送信が発生すると判断した場合(ステップS206:YES)、ステップS207において、UE100は、TPCパラメータA、B、Cを適用して、無線信号SG1及び無線信号SG2それぞれの送信電力を決定する。そして、ステップS209において、UE100は、決定した送信電力で無線信号SG1及び無線信号SG2を同時に送信する。
これに対し、同時送信が発生しない(すなわち、単独送信を行う)と判断した場合(ステップS206:NO)、ステップS208において、UE100は、TPCパラメータCを適用することなく、TPCパラメータA及びBを適用して、無線信号SG1及び無線信号SG2それぞれの送信電力を決定する。そして、ステップS209(の実線の矢印)及びS210において、UE100は、決定した送信電力で無線信号SG1及び無線信号SG2のそれぞれを単独で送信する。
(第2実施形態のまとめ)
上述したように、第2実施形態では、第1実施形態と同様に、同時送信用の第2のTPCパラメータ(TPCパラメータC)を導入することにより、同時送信時の送信電力を、単独送信時の送信電力とは別に制御可能となり、同時送信時の送信電力を適切に制御できる。
また、第2のTPCパラメータ(TPCパラメータC)は、無線信号SG1及び無線信号SG2の送信電力差を低減するように構成されている。よって、無線信号SG1から無線信号SG2への干渉の影響によるSNR劣化を抑制できるため、同時送信を行う場合であっても正常な信号伝送を実現できる。
[第3実施形態]
第3実施形態について、第1実施形態及び第2実施形態との相違点を主として説明する。第3実施形態は、システム構成及び動作環境については、第1実施形態と同様である。
但し、第3実施形態は、第2実施形態に係る動作環境にも応用可能である。
(第3実施形態に係る動作)
第3実施形態では、複数のTPCパラメータ(TPCパラメータA、B、C)の設定手順の具体例について説明する。
(1)動作パターン1
図11は、第3実施形態に係る動作パターン1のシーケンス図である。第3実施形態に係る動作パターン1では、TPCパラメータは、必要に応じて順次設定される。
図11に示すように、ステップS301において、eNB200(通信制御装置)は、セルラ通信用のTPCパラメータAをUE100−1に送信する。ステップS302において、TPCパラメータAを受信したUE100−1は、TPCパラメータAを保存する。ステップS303において、UE100−1は、アイドル状態であれば、eNB200とのRRC接続を確立する。
ステップS304において、UE100−1は、UE100−2へ送信すべきデータ(D2Dパケット)が発生したか否かを判断する。ここでは、UE100−2へ送信すべきデータが発生したと仮定して説明を進める。
ステップS305において、UE100−1は、D2D無線リソースの割り当て要求(D2D scheduling Request)をeNB200に送信する。
ステップS306において、D2D無線リソースの割り当て要求を受信したeNB200は、D2D通信用のTPCパラメータBをUE100−1に設定しているか否かを判断する。TPCパラメータBをUE100−1に設定していない場合、ステップS307において、eNB200は、TPCパラメータBをUE100−1に送信する。eNB200は、UE100−1のセルラ送信電力値を把握している場合に、セルラ送信電力値に応じてTPCパラメータBの値を算出してもよい。ステップS308において、TPCパラメータBを受信したUE100は、TPCパラメータBを保存する。
ステップS309において、eNB200は、UE100−1に割り当てるD2D無線リソースを決定(スケジューリング)する。ステップS310において、eNB200は、決定したD2D無線リソースをUE100−1に通知する。
ステップS311において、UE100−1は、TPCパラメータBを適用して無線信号SG2の送信電力を決定し、決定した送信電力で無線信号SG2をUE100−2に送信(単独送信)する。
ステップS312において、UE100−1は、eNB200へ送信すべきデータ(セルラパケット)及びUE100−2へ送信すべきデータ(D2Dパケット)が発生したか否かを判断する。ここでは、eNB200へ送信すべきデータ及びUE100−2へ送信すべきデータが発生したと仮定して説明を進める。
ステップS313において、UE100−1は、セルラ無線リソースの割り当て要求(Cellular scheduling Request)をeNB200に送信する。ステップS314において、UE100−1は、D2D無線リソースの割り当て要求(D2D scheduling Request)をeNB200に送信する。なお、ステップS313及びS314は同時に行なわれてもよい。
ステップS315において、セルラ無線リソースの割り当て要求及びD2D無線リソースの割り当て要求を受信したeNB200は、同時送信用のTPCパラメータCをUE100−1に設定しているか否かを判断する。TPCパラメータCをUE100−1に設定していない場合、ステップS316において、eNB200は、TPCパラメータCをUE100−1に送信する。ステップS317において、TPCパラメータCを受信したUE100は、TPCパラメータCを保存する。
ステップS318において、eNB200は、UE100−1に割り当てるセルラ無線リソース及びD2D無線リソースを決定(スケジューリング)する。ステップS319において、eNB200は、決定したセルラ無線リソース及びD2D無線リソースをUE100−1に通知する。ここでは、セルラ無線リソースを構成するサブフレームとD2D無線リソースを構成するサブフレームとが重複すると仮定する。
ステップS320及びS321において、UE100−1は、同時送信が発生すると判断し、TPCパラメータA及び/又はTPCパラメータBと、TPCパラメータCと、を適用して無線信号SG1及び無線信号SG2それぞれの送信電力を決定し、決定した送信電力で無線信号SG1及び無線信号SG2を同時に送信する。
(2)動作パターン2
図12は、第3実施形態に係る動作パターン2のシーケンス図である。第3実施形態に係る動作パターン2では、TPCパラメータは、UE能力(UE Capability)に応じて設定される。
図12に示すように、ステップS401において、eNB200(通信制御装置)は、セルラ通信用のTPCパラメータAをUE100−1に送信する。ステップS402において、TPCパラメータAを受信したUE100−1は、TPCパラメータAを保存する。
ステップS403において、UE100−1は、同時送信及び/又は特定通信モードに関連する能力を示す能力(UE Capability)情報をeNB200に送信する。第3実施形態では、能力情報は、UE100−1がD2D通信をサポートするか否かを示す情報(FGIビット)である。能力情報は、UE100−1が二重接続をサポートするか否かを示す情報(FGIビット)であってもよい。
ステップS404において、能力情報を受信したeNB200は、能力情報に基づいて、UE100−1がD2D通信をサポートするか否かを判断する。
UE100−1がD2D通信をサポートすると判断した場合(ステップS404:YES)、ステップS405において、eNB200は、D2D通信用のTPCパラメータBをUE100−1に送信する。eNB200は、UE100−1のセルラ送信電力値を把握している場合に、セルラ送信電力値に応じてTPCパラメータBの値を算出してもよい。ステップS406において、TPCパラメータBを受信したUE100−1は、TPCパラメータBを保存する。また、ステップS407において、eNB200は、同時送信用のTPCパラメータCをUE100−1に送信する。ステップS408において、TPCパラメータCを受信したUE100−1は、TPCパラメータCを保存する。なお、ステップS405及びS407は、同時に行なわれてもよい。
(3)動作パターン3
図13は、第3実施形態に係る動作パターン3のシーケンス図である。第3実施形態に係る動作パターン3では、TPCパラメータは、UEからの要求に応じて設定される。
図13に示すように、ステップS501において、eNB200(通信制御装置)は、セルラ通信用のTPCパラメータAをUE100−1に送信する。ステップS502において、TPCパラメータAを受信したUE100−1は、TPCパラメータAを保存する。
ステップS503において、D2D通信を開始しようとするUE100−1は、D2D通信用のTPCパラメータBの送信要求をeNB200に送信する。ステップS504において、D2D通信用のTPCパラメータBの送信要求を受信したeNB200は、D2D通信用のTPCパラメータBをUE100−1に送信する。ステップS505において、TPCパラメータBを受信したUE100−1は、TPCパラメータBを保存する。
ステップS506において、UE100−1は、同時送信用のTPCパラメータCの送信要求をeNB200に送信する。ステップS507において、同時送信用のTPCパラメータCの送信要求を受信したeNB200は、同時送信用のTPCパラメータCをUE100−1に送信する。ステップS508において、TPCパラメータCを受信したUE100−1は、TPCパラメータCを保存する。
(第3実施形態のまとめ)
第3実施形態に係る動作パターン1では、UE100−1は、第1のTPCパラメータ(TPCパラメータA、B)を受信した後において、第2のTPCパラメータ(TPCパラメータC)を受信する。UE100−1は、第1のTPCパラメータを保存した後において、第1のTPCパラメータを破棄することなく、第2のTPCパラメータを保存する。よって、第1のTPCパラメータ及び第2のTPCパラメータを併用できる。
第3実施形態に係る動作パターン2では、UE100−1は、同時送信及び/又はD2D通信(又は二重接続)に関連する能力を示す能力情報をeNB200に送信する。UE100−1は、能力情報に応じてeNB200から送信された第2のTPCパラメータ(TPCパラメータC)を受信する。よって、適切なUE100に対して第2のTPCパラメータを設定できる。
第3実施形態に係る動作パターン3では、UE100−1は、第2のTPCパラメータ(TPCパラメータC)の送信要求をeNB200に送信する。UE100−1は、送信要求に応じてeNB200から送信された第2のTPCパラメータを受信する。よって、適切なUE100に対して第2のTPCパラメータを設定できる。
[第4実施形態]
第4実施形態について、第1実施形態乃至第3実施形態との相違点を主として説明する。第4実施形態は、システム構成については第1実施形態と同様であり、動作環境については第2実施形態と同様である。
(第4実施形態に係る動作)
第2実施形態で説明したように、二重接続では、UE100は、異なるeNB200からスケジューリングを受ける。この場合、UE100がTPCパラメータCを適用することで無線信号SG1又は無線信号SG2の送信電力を低下又は上昇させると、そのような送信電力の変更を受信側で把握していないことがあり、予期せぬエラーが生じる虞がある。よって、第4実施形態では、そのような予期せぬエラーを防止するための動作について説明する。
(1)動作パターン1
図14は、第4実施形態に係る動作パターン1のシーケンス図である。UE100は、MeNB200−1及びPeNB200−2のそれぞれと接続を確立している。
図14に示すように、ステップS601において、MeNB200−1は、UE100に割り当てるセルラ無線リソース1を決定し、決定したセルラ無線リソース1をUE100に通知する。
ステップS602において、PeNB200−2は、UE100に割り当てるセルラ無線リソース2を決定し、決定したセルラ無線リソース2をUE100に通知する。
ステップS603において、UE100は、通知されたセルラ無線リソース1及びセルラ無線リソース2に基づいて、MeNB200−1に対する無線信号SG1及びPeNB200−2に対する無線信号SG2を同時に送信する同時送信が発生するか否かを判断する。
同時送信が発生すると判断した場合(ステップS603:YES)、ステップS604において、UE100は、同時送信用のTPCパラメータCを適用する或いは適用開始することを示す情報(同時送信フラグ)を無線信号(送信信号)SG1及び無線信号(送信信号)SG2に含める。そして、ステップS605において、UE100は、TPCパラメータA及び/又はTPCパラメータBと、TPCパラメータCと、を適用して無線信号SG1及び無線信号SG2それぞれの送信電力を決定し、決定した送信電力で無線信号SG1及び無線信号SG2を同時に送信する。
これに対し、同時送信が発生しない(すなわち、単独送信を行う)と判断した場合(ステップS603:NO)、UE100は、TPCパラメータCを適用することなく、TPCパラメータA及びBを適用して、無線信号SG1及び無線信号SG2それぞれの送信電力を決定する。そして、ステップS605(の実線の矢印)及びS606において、UE100は、決定した送信電力で無線信号SG1及び無線信号SG2のそれぞれを単独で送信する。なお、UE100は、単独送信用のTPCパラメータ(TPCパラメータA、B)を適用することを示す情報(単独送信フラグ)を無線信号SG1及び無線信号SG2のそれぞれに含めてもよい。
UE100は、同時送信を行う度に同時送信フラグを無線信号(送信信号)SG1及び無線信号(送信信号)SG2に含めてもよい。この場合、同時送信フラグは、同時送信用のTPCパラメータCを適用することを示す情報である。
或いは、UE100は、同時送信用のTPCパラメータCの適用を開始する際に、同時送信フラグを無線信号(送信信号)SG1及び無線信号(送信信号)SG2に含めてもよい。この場合、同時送信フラグは、同時送信用のTPCパラメータCを適用開始することを示す情報である。また、UE100は、同時送信用のTPCパラメータCの適用を解除する際に、同時送信解除フラグを無線信号(送信信号)SG1及び無線信号(送信信号)SG2に含めてもよい。同時送信解除フラグは、同時送信用のTPCパラメータCの適用を解除することを示す情報、或いは単独送信用のTPCパラメータ(TPCパラメータA、B)を適用することを示す情報である。
(2)動作パターン2
図15は、第4実施形態に係る動作パターン2のシーケンス図である。
図15に示すように、ステップS701において、UE100は、同時送信用のTPCパラメータCを適用したと仮定した場合に同時送信(又は二重接続通信)が可能であるか否かを判断する。当該判断は、例えばUE100の性能(無線送受信機110の性能)、無線信号SG1及びSG2の送信電力差又は周波数間隔などに基づいて行われる。
同時送信用のTPCパラメータCを適用しても同時送信(又は二重接続通信)が不可能であると判断した場合(ステップS701:NO)、ステップS702において、UE100は、同時送信(又は二重接続通信)が不可能であることを示す情報をMeNB200−1に送信する。当該情報は、新しいTPCパラメータCの設定要求、二重接続の中止要求、又は送信不可の通知とみなすことができる。送信不可の通知とは、リソース割り当て(Uplink Grant)がされても送信を行わないことを示す警告通知である。
同時送信(又は二重接続通信)が不可能であることを示す情報を受信したMeNB200−1は、ステップS703において、新しいTPCパラメータCをUE100に送信する。例えば、新しいTPCパラメータCは、元のTPCパラメータCに比べて、無線信号SG1及びSG2の送信電力差を低減する度合いが大きくなるように設定されている。
(3)動作パターン3
図16は、第4実施形態に係る動作パターン3のシーケンス図である。
図16に示すように、ステップS801において、MeNB200−1との接続を確立しているUE100は、さらにPeNB200−2との接続を確立する手順(すなわち、二重接続の開始手順)を開始する。
ステップS802において、UE100は、二重接続の開始に応じて、TPCパラメータCの適用を開始する。ステップS803において、UE100は、PeNB200−2との接続を確立する。
このように、第4実施形態に係る動作パターン3では、UE100は、二重接続(特定通信モード)での通信を行う場合には、実際に同時送信が発生したか否かに拘わらず、常にTPCパラメータCを適用する。
ステップS804において、UE100は、二重接続を開始することを示す情報(二重接続確立通知)をMeNB200−1に送信する。
その後、ステップS805において、UE100は、PeNB200−2との接続を解放し、二重接続を終了する。なお、UE100は、MeNB200−1との接続を維持している。
ステップS806において、UE100は、TPCパラメータCの適用を終了し、TPCパラメータAの適用を開始する。
ステップS807において、UE100は、二重接続を開始することを示す情報(二重接続解放通知)をMeNB200−1に送信する。
なお、第4実施形態に係る動作パターン3に係る二重接続確立通知及び二重接続解放通知は、UE100からMeNB200−1に送信する場合に限らず、PeNB200−2からMeNB200−1に送信してもよい。この場合、二重接続確立通知及び二重接続解放通知は、UE100に割り当てられた識別子を含むことが好ましい。或いは、EPC20とeNB200との間で二重接続確立通知及び二重接続解放通知を送受信してもよい。
或いは、D2D通信及び二重接続の両方を行うUE100は、D2D通信の通信相手に対して二重接続確立通知及び二重接続解放通知を送信してもよい。
(第4実施形態のまとめ)
第4実施形態に係る動作パターン1では、UE100は、第2の送信電力制御パラメータ(TPCパラメータC)を適用する場合において、第2の送信電力制御パラメータを適用する或いは適用開始することを示す情報をMeNB200−1及びPeNB200−2に送信する。また、第4実施形態に係る動作パターン1では、UE100は、第2の送信電力制御パラメータの適用を解除する場合において、第2の送信電力制御パラメータの適用を解除する或いは第1の送信電力制御パラメータ(TPCパラメータA、B)を適用することを示す情報をMeNB200−1及びPeNB200−2に送信する。よって、予期せぬエラーが発生することを防止できる。
第4実施形態に係る動作パターン2では、UE100は、第2のTPCパラメータを適用しても同時送信(又は二重接続)が不可能であると判断した場合において、同時送信(又は二重接続)が不可能であることを示す情報をMeNB200−1に送信する。よって、MeNB200−1は、新しいTPCパラメータCをUE100などの対応を行うことができる。
第4実施形態に係る動作パターン3では、UE100は、二重接続を開始する場合において、二重接続を開始することを示す情報をMeNB200−1に送信する。また、UE100は、二重接続を終了する場合において、二重接続を終了することを示す情報をMeNB200−1に送信する。よって、予期せぬエラーが発生することを防止できる。
[その他の実施形態]
上述した第1実施形態では、UE100−1は、セルラ通信における無線信号SG1及びD2D通信における無線信号SG2を同時に送信していた。しかしながら、UE100−1は、D2D通信における無線信号SG1及びD2D通信における無線信号SG2を同時に送信してもよい。図17は、その他の実施形態に係る動作環境を説明するための図である。図17に示すように、eNB200のセルにUE100−1乃至UE100−3が在圏している。UE100−1は、eNB200(通信制御装置)の制御下で、UE100−2及びUE100−3とのD2D通信を行う。UE100−1は、D2D通信における無線信号SG1をUE100−2に送信するとともに、D2D通信における無線信号SG2をUE100−3に送信する。無線信号SG1及び無線信号SG2は、周波数が異なっている。図17に示す動作環境では、UE100−2は、UE100−1から遠方に位置する。UE100−3は、UE100−1の近傍に位置する。よって、UE100−1は、高い送信電力で無線信号SG1を送信し、低い送信電力で無線信号SG2を送信する。このような動作環境に対して、上述した各実施形態に係る動作を応用してもよい。
上述した各実施形態では、セルラ通信システムの一例としてLTEシステムを説明したが、LTEシステムに限定されるものではなく、LTEシステム以外のシステムに本発明を適用してもよい。