JP2016189459A - コイル用線材、コイル用電線、及びコイル用電線の製造方法 - Google Patents

コイル用線材、コイル用電線、及びコイル用電線の製造方法 Download PDF

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慎一 飯塚
Shinichi Iizuka
慎一 飯塚
有吉 剛
Takeshi Ariyoshi
剛 有吉
鉄也 桑原
Tetsuya Kuwabara
鉄也 桑原
亮 丹治
Akira Tanji
亮 丹治
和宏 後藤
Kazuhiro Goto
和宏 後藤
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Abstract

【課題】低損失で、絶縁被覆を形成し易いコイル用線材、コイル用電線及びコイル用電線の製造方法を提供する。【解決手段】導体線と、強磁性体を含む材料から構成され、前記導体線の外周に配置される磁性部と、前記強磁性体よりも抵抗率が大きい材料から構成される高抵抗部とを備え、前記磁性部は、前記導体線の外周面を部分的に露出させることで、前記導体線の長手方向及び周方向の少なくとも一方の方向に分断され、前記高抵抗部は、前記導体線の露出箇所と前記磁性部との段差を埋めることで平滑な最外面を形成するコイル用線材。【選択図】図1

Description

本発明は、螺旋状に巻回されるなどして形成されるコイルに用いられるコイル用線材、コイル用電線、及びコイル用電線の製造方法に関する。特に、低損失で、絶縁被覆を形成し易いコイル用線材、低損失で製造性に優れるコイル用電線に関する。
各種の電気機器の一部品として、コイルが利用されている。コイルを備える電気機器としては、例えばモータ、トランス(変圧器)、リアクトルなどが挙げられる。一般に、コイルは、導体線を有する巻線を螺旋状に巻回することによって形成される。巻線は、エナメル線といった、導体線の上に絶縁被覆を備えるものが代表的である。
特許文献1は、巻線ではなく、信号などの伝達に利用されるシールドケーブルを開示している。シールドケーブルは、外部からのノイズ電波の侵入や外部へのノイズ電波の放出を防止するために、導体線の全周に亘ってシールド層を備える。
特開2007−059150号公報
コイルに用いられる線材に対して、導体線に生じる渦電流を低減できて低損失であることが望まれる。
上述の巻線を螺旋状に巻回して形成されるコイルでは、小型化や高占積率などの目的から隣り合うターン間の間隔を狭くしており、ターンをつくる導体線同士が近接配置される。このようなコイルに高周波の交流電流を通電すると、あるターンの導体線Aの周囲に存在する別のターンの導体線Bがつくる磁界が導体線Aに鎖交して、導体線Aに渦電流が生じ得る。渦電流が生じると、導体線A内を流れる電流が導体線Aの中心を挟んで両側に偏在する現象、いわゆる近接効果が生じる。そのため、交流抵抗が増加して損失の増大を招き得る。近年、各種の電気機器、例えばモータなどの高性能化・高効率化に伴い大電流化が進んでいる。大電流化に伴い発生する交番磁界が増大すると、コイルに発生する渦電流も増大し、損失の増加が顕著になる。従って、コイルに用いられる線材として、導体線の渦電流を低減できて、損失をより低くできるものが望まれる。
また、絶縁被覆を備える線材から形成されたコイルは周囲部品との絶縁性に優れる。このような絶縁性に優れるコイルが得られるように、上記線材には、絶縁被覆を形成し易いことも望まれる。
そこで、本発明の目的の一つは、低損失で、絶縁被覆を形成し易いコイル用線材、及び低損失で製造性にも優れるコイル用電線を提供することにある。また、本発明の他の目的は、絶縁被覆を容易に形成できる上に、低損失なコイル用電線を製造できるコイル用電線の製造方法を提供することにある。
本発明の一態様に係るコイル用線材は、導体線と、強磁性体を含む材料から構成され、前記導体線の外周に配置される磁性部と、前記強磁性体よりも抵抗率が大きい材料から構成される高抵抗部とを備える。
前記磁性部は、前記導体線の外周面を部分的に露出させることで、前記導体線の長手方向及び周方向の少なくとも一方の方向に分断される。
前記高抵抗部は、前記導体線の露出箇所と前記磁性部との段差を埋めることで平滑な最外面を形成する。
本発明の一態様に係るコイル用電線は、上記の一態様に係るコイル用線材と、前記コイル用線材の外周に形成された絶縁被覆とを備える。
本発明の一態様に係るコイル用電線の製造方法は、以下の準備工程と、複合工程と、加工工程と、被覆工程とを備える。
(準備工程)強磁性体から構成される磁性帯部と前記強磁性体よりも抵抗率が大きい材料から構成される高抵抗帯部とが段差なく配置されて、平滑な表面を有する複合帯材と、導体素材とを準備する。
(複合工程)前記導体素材の全周を前記複合帯材で覆った複合中間材を作製する。
(加工工程)前記複合中間材に伸線加工及び圧延加工の少なくとも一方を施して、加工材を作製する。
(被覆工程)前記加工材の外周に絶縁被覆を形成する。
上記のコイル用線材は、低損失で、絶縁被覆を形成し易い。上記のコイル用電線は、低損失で、製造性にも優れる。上記のコイル用電線の製造方法は、絶縁被覆を容易に形成できる上に、低損失なコイル用電線を製造できる。
実施形態1のコイル用線材及びコイル用電線(長手分断形態)を示す概略斜視図である。 実施形態2のコイル用線材及びコイル用電線(周分断形態)を示す概略斜視図である。 実施形態3のコイル用線材及びコイル用電線(内包形態)を示す横断面図である。 実施形態4のコイル用線材及びコイル用電線(螺旋形態)を示す概略斜視図である。 実施形態5のコイル用線材及びコイル用電線(格子形態)を示す概略斜視図である。 実施形態6のコイル用線材及びコイル用電線(嵌め込み形態)を示す概略斜視図である。 実施形態7のコイル用線材及びコイル用電線(介在絶縁層を備える周分断形態)を示す横断面図である。 試験例1で損失の測定に用いた測定回路を示す概略構成図である。 参考例1のコイル用線材(長手分断形態)を示す概略斜視図である。 参考例2のコイル用線材(周分断形態)を示す概略斜視図である。 介在絶縁層を備える参考例3のコイル用線材(長手分断形態)を示す横断面図である。 介在絶縁層を備える参考例4のコイル用線材(周分断形態)を示す横断面図である。 参考例5のコイル用電線(長手分断形態)を示す概略斜視図である。 参考例6のコイル用電線(周分断形態)を示す概略斜視図である。 参考例7のコイル用電線(長手分断+周分断形態)を示す概略斜視図である。
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
(1)本発明の一態様に係るコイル用線材は、導体線と、強磁性体を含む材料から構成され、上記導体線の外周に配置される磁性部と、上記強磁性体よりも抵抗率が大きい材料から構成される高抵抗部とを備える。
上記磁性部は、上記導体線の外周面を部分的に露出させることで、上記導体線の長手方向及び周方向の少なくとも一方の方向に分断される。
上記高抵抗部は、上記導体線の露出箇所と上記磁性部との段差を埋めることで平滑な最外面を形成する。
上記のコイル用線材は、導体線の外周に、強磁性体を含む材料から構成される磁性部を備える。そのため、高周波の交流電流を通電するなどして外部磁界(交番磁界)が印加された場合、磁束が磁性部に集中して流れることで、導体線に鎖交する磁束を低減できる。磁性部が導体線に対する磁気遮蔽部として機能して、導体線に生じる渦電流を低減できる。このように外部磁界の印加によって導体線に発生し得る渦電流を低減できるため、上記のコイル用線材は、渦電流に起因する損失を低減でき、低損失である。
また、上記のコイル用線材は、導体線の全周を鉄などの強磁性体で覆った構成、即ち導体線の長手方向及び周方向の双方に連続して、導体線の外周を一体に覆う全周磁性層が存在する構成ではない。上記のコイル用線材は、いわば、全周磁性層を、高抵抗部によって、導体線の長手方向及び周方向の少なくとも一方の方向に分断した構成であり、導体線の外周の一部に磁性部が存在しない領域(露出箇所)を含む。導体線における磁性部に覆われない露出箇所は、磁性部に含む強磁性体よりも抵抗率(比抵抗)が大きい高抵抗部に覆われる。高抵抗部は、金属で構成される場合でも磁性部よりも渦電流が生じ難く、非金属などの絶縁材で構成される場合には実質的に渦電流が生じない。このような高抵抗部を備えることで、強磁性体が鉄などの金属であり、磁性部自体に渦電流が生じる場合でも、導体線の長手方向(軸方向)に沿って渦電流が流れたり、導体線の周方向に沿って渦電流が流れたりすることを低減できる。また、高抵抗部によって、磁性部に生じた渦電流のループを短くでき、磁性部自体に流れる渦電流を低減できる。上記のコイル用線材は、導体線の外周に部分的に磁性部を備えて、磁性部を高抵抗部によって区切ることで、渦電流が流れる範囲を制限できることからも、渦電流に起因する損失を低減でき、低損失である。
更に、上記のコイル用線材は、導体線の一部が磁性部に覆われないために磁性部との間に形成される段差を高抵抗部によって埋められて、平滑な外表面を有する。従って、上記のコイル用線材の外周に絶縁被覆を形成する場合に、平滑な外表面の上に絶縁被覆を容易に設けられて、コイル用電線を生産性よく製造できる。
(2)上記のコイル用線材の一例として、上記導体線の直上と上記磁性部間に介在され、導体線よりも抵抗率が大きい材料から構成される介在絶縁層を備える形態が挙げられる。
上記形態は、導体線よりも高抵抗な材料で構成される介在絶縁層を導体線の直上と磁性部との間に備えるため、磁性部に生じた渦電流が磁性部を経て導体線に流れることを抑制できる。従って、上記形態は、渦電流に起因する損失を更に低減でき、更に低損失である。介在絶縁層が導体線の直上の全周を覆っており、介在絶縁層の構成材料が磁性部に含む強磁性体よりも抵抗率が大きい場合、更には高抵抗部よりも抵抗率が大きい場合、磁性部から導体線に渦電流が流れること、更には磁性部及び高抵抗部から導体線に渦電流が流れることを更に抑制し易い。また、上記形態は、介在絶縁層を備えることで、その外周に設けられる磁性部の曲げ半径を介在絶縁層の厚さ分だけ大きくできて曲げ易く、コイル成形性にも優れると期待される。
(3)上記のコイル用線材の一例として、上記磁性部が、上記露出箇所が螺旋状となるように設けられている形態が挙げられる。
上記形態では、螺旋状である導体線の露出箇所に倣って、磁性部も螺旋状である。この磁性部は、導体線の軸に対して螺旋を描いて、コイル用線材の一端から他端に連続して存在する場合がある。この場合でも、導体線の周方向には露出箇所が存在する。また、導体線の側面を導体線の長手方向にみれば、導体線の軸に交差するように斜めに配置される高抵抗部によって磁性部が長手方向に分断されて、導体線の長手方向にも露出箇所が存在するといえる。従って、上記形態は、高抵抗部によって磁性部が導体線の長手方向及び周方向に区切られて、上述のように磁性層における渦電流が流れる範囲を制限できるため、渦電流に起因する損失を低減できる。
(4)上記のコイル用線材の一例として、上記磁性部が上記導体線の長手方向に間隔をあけて断続的に形成されており、各磁性部における上記導体線の長手方向に沿った長さが上記導体線の幅よりも小さい形態が挙げられる。
導体線の幅とは、導体線の横断面形状が円形、長方形、楕円、正多角形などの線対称な形状である場合には対称軸の長さのうち最大値とし、それ以外の形状である場合には包絡円の直径とする。導体線の横断面形状が円形である丸線では直径が導体線の幅に該当する。上記横断面形状が長方形状である平角線や楕円形状といった偏平な線材では長辺の長さが導体線の幅に該当する。導体線の横断面とは、導体線の長手方向(軸方向)に直交する平面で切断した断面をいう。コイル用線材の横断面、コイル用電線の横断面も同様である。
上記形態は、代表的には複数の筒状の磁性部が導体線の長手方向に間隔をあけて断続的に存在し、磁性部と高抵抗部とが導体線の長手方向に交互に配置される。各磁性部における導体線の長手方向に沿った長さ(以下、単に長さと呼ぶことがある)は、上述の全周磁性層に比較して短い。特に上記形態では、各磁性部の長さが導体線の幅未満であり、十分に短い。従って、各磁性部自体に生じる渦電流を低減できる。各磁性部が例えば筒状であれば、導体線の周方向の全周を覆うことができる上に、特に隣り合う磁性部間の間隔を十分に小さくすれば、導体線の外周を複数の磁性部で覆うことによる導体線への磁気遮蔽効果を十分に得られる。これらのことから、上記形態は、導体線及び磁性部の双方に生じ得る渦電流に起因する損失を低減できて低損失である。更に、上記形態は、一つの磁性部が導体線の長手方向に連続しておらず高抵抗部によって分断されているため曲げ易く、コイル成形性にも優れると期待される。
(5)上記のコイル用線材の一例として、上記磁性部が上記導体線の周方向に間隔をあけて形成されている形態が挙げられる。
上記形態は、代表的には磁性部が導体線の周方向に連続した環状体ではなく途切れた形状であり、磁性部の周方向の一部に所定の大きさの隙間が設けられる。この隙間の大きさに応じて、磁性部における導体線の周方向に沿った長さ(以下、周長と呼ぶことがある)が上述の全周磁性層よりも短い。また、この隙間を埋めるように高抵抗部を備える。従って、磁性部自体に生じる渦電流を低減できる上に、磁性部の周方向に流れようとする渦電流を高抵抗部によって低減でき、好ましくは遮断でき、渦電流のループを小さくできる。磁性部が導体線の周方向に複数に分割されている場合には各磁性部の周長を更に小さくでき、各磁性部に生じる渦電流をより低減できる。上述の(4)のように、磁性部が、導体線の長手方向にも複数に分割されている場合には、各磁性部をより一層小さくでき、各磁性部に生じる渦電流をより低減できる。分割数を更に多くするなどして、導体線の周方向において磁性部に覆われない領域をできるだけ少なくすれば、導体線の外周に磁性部を備えることによる導体線への磁気遮蔽効果を十分に得られる。これらのことから、上記形態は、導体線及び磁性部の双方に生じ得る渦電流に起因する損失を低減できて低損失である。また、上記形態は、一つの磁性部が導体線の周方向に連続しておらず高抵抗部によって分断されているため曲げ易く、コイル成形性にも優れると期待される。上記形態のうち、磁性部が導体線の長手方向に連続して存在する場合には磁気遮蔽効果を得易いものの、磁性部自体に生じ得る渦電流が多くなり易い。
(6)上記のコイル用線材の一例として、上記導体線が上記導体線の周方向に並列する複数の凹部を備え、上記磁性部が各凹部に配置される帯状体であり、上記高抵抗部が各磁性部の全周を覆っており、各凹部と上記磁性部間の隙間をなくすように各凹部に配置されている形態が挙げられる。
上記形態の高抵抗部の一部は、隣り合う磁性部間の区画として機能し、その他部は、導体線よりも高抵抗であり、上述の(2)の介在絶縁層として機能する。上記形態は、磁性部における渦電流が流れる範囲を制限すると共に、磁性部に生じた渦電流が導体線に流れることを低減できる。好ましくは磁性部から導体線に渦電流が実質的に流れない。従って、上記形態は、渦電流に起因する損失をより低減できる。また、上記形態は、導体線が凹部を有し、凹部に磁性部が嵌め込まれるものの、凹部と磁性部間に生じる段差や隙間を高抵抗部によって埋められて平滑な外表面を有するため、絶縁被覆を形成し易い。
(7)本発明の一態様に係るコイル用電線は、上述の(1)〜(6)のいずれか一つに記載のコイル用線材と、上記コイル用線材の外周に形成された絶縁被覆とを備える。
上記のコイル用電線は、上述の渦電流を低減できて低損失な上記のコイル用線材を芯線として備えるため、低損失である。また、上記のコイル用電線は、平滑な外表面を有するコイル用線材を芯線として備えるため、製造過程で絶縁被覆を形成し易く、製造性にも優れる。
(8)本発明の一態様に係るコイル用電線の製造方法は、以下の準備工程と、複合工程と、加工工程と、被覆工程とを備える。
(準備工程)強磁性体から構成される磁性帯部と上記強磁性体よりも抵抗率が大きい材料から構成される高抵抗帯部とが段差なく配置されて、平滑な表面を有する複合帯材と、導体素材とを準備する。
(複合工程)前記導体素材の全周を前記複合帯材で覆った複合中間材を作製する。
(加工工程)前記複合中間材に伸線加工及び圧延加工の少なくとも一方を施して、加工材を作製する。
(被覆工程)前記加工材の外周に絶縁被覆を形成する。
上記のコイル用電線の製造方法は、上記の磁性帯部を含む複合帯材を用いて、上記の工程を経ることで、以下のコイル用線材を芯線として備え、この芯線の外周が絶縁被覆に覆われたコイル用電線を製造できる。このコイル用線材は、導体素材に塑性加工が施されることで所定の線径、形状に形成された導体線と、磁性帯部から形成され、最終的に導体線の外周の一部に配置される磁性部と、高抵抗帯部から形成され、最終的に導体線の外周の他部に配置される高抵抗部とを備える。高抵抗部は、導体線の長手方向及び周方向の少なくとも一方の方向に磁性部を分断するように設けられる。このコイル用線材の外表面は、複合帯材の平滑な表面から最終的に形成されて平滑である。このコイル用線材は、上述の(1)のコイル用線材に該当する。
上記のコイル用電線の製造方法は、平滑な外表面を備えるコイル用線材を芯線とするため、絶縁被覆を容易に形成できる。平滑な表面を有する複合帯材を用いることで、平滑な外表面を備えるコイル用線材自体も容易に製造できる。従って、上記のコイル用電線の製造方法は、低損失で絶縁性に優れるコイルを構築できるコイル用電線を生産性よく製造できる。また、上記のコイル用電線の製造方法は、長尺なコイル用線材を製造でき、工業的量産にも適する。
(9)上記のコイル用電線の製造方法の一例として、上記複合帯材が上記高抵抗帯部の一部に上記磁性帯部が埋め込まれたものであり、上記複合工程では、上記導体素材に対して上記磁性帯部を向けて上記複合帯材を巻回することで上記導体素材の外周を覆う形態が挙げられる。
上記形態の複合帯材は、その一面が磁性帯部と高抵抗帯部とで構成され、他面が高抵抗帯部で構成される。上記形態では、この他面を導体素材から離れる外周側に配置するため、製造するコイル用線材の外表面を、例えば、実質的に高抵抗部のみで構成され、継ぎ目のない一様な面であり、絶縁被覆を形成し易い面とすることができる。磁性帯部が鉄などの酸化腐食し易い金属で構成され、高抵抗部が耐食性にも優れる材料で構成される場合には、高抵抗部における磁性部を覆う外周部分は、防食層としても機能する。この場合、磁性部の酸化腐食による磁気特性の劣化を防止でき、長期に亘り、磁性部による磁気遮蔽効果を得られるコイル用電線を製造できる。
(10)本発明の一態様に係るコイル用電線の製造方法は、以下の準備工程と、嵌合工程と、加工工程と、被覆工程とを備える。
(準備工程)強磁性体から構成される磁性帯材と、上記磁性帯材の全周を覆って、上記強磁性体よりも抵抗率が大きい材料から構成される高抵抗層とを備える被覆帯材と、導体素材として、その周方向に並列する複数の凹部を備える溝付き素線とを準備する。
(嵌合工程)各凹部に上記被覆帯材を嵌め込んで、上記高抵抗部によって上記各凹部と上記被覆帯材との段差を埋めることで平滑な表面を有する嵌合中間材を作製する。
(加工工程)上記嵌合中間材に伸線加工及び圧延加工の少なくとも一方を施して、加工材を作製する。
(被覆工程)上記加工材の外周に絶縁被覆を形成する。
上記のコイル用電線の製造方法は、上記の溝付き素線と、磁性帯材が高抵抗層に覆われた被覆帯材とを用いて、上記の工程を経ることで、以下のコイル用線材を芯線として備え、この芯線の外周が絶縁被覆に覆われたコイル用電線を製造できる。このコイル用電線は、溝付き素線に塑性加工が施されることで所定の断面積に形成され、周方向に並列する複数の凹部を備える導体線と、各磁性帯材から形成され、最終的に導体線の各凹部に配置される帯状の磁性部と、各高抵抗帯部から形成され、最終的に帯状の磁性部の全周を覆うと共に、各凹部と各磁性部間を隙間なく埋める高抵抗部とを備える。このコイル用線材の外表面は、嵌合中間材の平滑な外表面から最終的に形成されて平滑である。このコイル用線材は、上述の(6)のコイル用線材に該当する。
上記のコイル用線材の製造方法は、上述の(8)のコイル用電線の製造方法と同様に、平滑な外表面を備えるコイル用線材を芯線とするため、絶縁被覆を容易に形成できる。従って、上記のコイル用線材の製造方法は、上述の(8)のコイル用電線の製造方法と同様に、低損失なコイルを構築できるコイル用線材を生産性よく製造できる。また、上記のコイル用線材の製造方法は、長尺なコイル用線材を製造でき、工業的量産にも適する。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るコイル用線材、コイル用電線、コイル用電線の製造方法の具体例を説明する。図中、同一符号は同一名称物を示す。図1〜図7では、分かり易いように導体線11の外周に設けられる部材を誇張して示す。導体線11、磁性部12、介在絶縁層14、高抵抗部13、絶縁被覆15について、形状、厚さ、幅、長さなどは実際とは異なることがある(後述する図9〜図15についても同様である)。
[コイル用線材]
実施形態に係るコイル用線材1は、導体線11と、強磁性体を含む材料から構成され、導体線11の外周に配置される磁性部12と、強磁性体よりも抵抗率が大きい材料から構成される高抵抗部13とを備える。コイル用線材1は、導体線11の長手方向及び周方向の双方に連続して形成されて導体線11の全周を覆う全周磁性層を備えるのではなく、導体線11の外周の一部を覆う磁性部12と、他部を覆う高抵抗部13とを備える。磁性部12は、導体線11の外周面を部分的に覆わずに露出させることで、導体線11の長手方向に分断される(例えば、図1)、又は導体線11の周方向に分断される(例えば、図2〜図7)、又は導体線11の長手方向(軸方向)及び周方向の双方に分断される(例えば、図4,図5)。コイル用線材1は、導体線11の外周に対して、部分的に磁性部12を備えると共に、導体線11における磁性部12からの露出箇所と磁性部12とで形成される段差を埋めて、平滑な外周面を形成する高抵抗部13を備える点を特徴の一つとする。
まず、コイル用線材1の具体例の概略を説明する。
実施形態のコイル用線材1として、導体線11の外表面が凹凸の無い平滑な面であって、この外周に磁性部12及び高抵抗部13を備える形態が挙げられる。例えば、導体線11の外周のうち、導体線11の長手方向の一部が磁性部12によって覆われ、他部が環状の高抵抗部13で覆われた形態(例えば図1。以下、長手分断形態と呼ぶことがある)、導体線11の周方向の一部が磁性部12よって覆われ、他部が高抵抗部13に覆われた形態(例えば図2,図3。以下、周分断形態と呼ぶことがある)、磁性部12と高抵抗部13とが導体線11の軸に対して螺旋を描いて配置される形態(例えば図4。以下、螺旋形態と呼ぶことがある)、長手方向の一部かつ周方向の一部が磁性部12よって覆われ、他部が格子状の高抵抗部13で覆われた形態(例えば図5。以下、格子形態と呼ぶことがある)などが挙げられる。別のコイル用線材1として、導体線11の外表面が凹凸形状であり、この凹凸を無くすように磁性部12及び高抵抗部13を備える形態(例えば図6。以下、嵌め込み形態と呼ぶことがある)が挙げられる。
実施形態のコイル用線材1は、導体線11の外周が複数の異なる部材(磁性部12,高抵抗部13)で覆われるものの、その全長、全周に亘って、凹凸が実質的に無く平滑な外周面を備える(図1〜図7参照)。代表的には、コイル用線材1の外表面は、磁性部12及び高抵抗部13の両者で形成される(以下のコイル用線材1A,1B,1D,1E)。
長手分断形態である実施形態1のコイル用線材1Aは、図1に示すように導体線11の長手方向にみると、導体線11の周方向に連続する環状又は筒状の磁性部12及び高抵抗部13を少なくとも一つずつ備え、好ましくは複数備える。
周分断形態である実施形態2のコイル用線材1Bは、図2に示すように導体線11の周方向にみると、横断面形状がC字状、U字状、樋状、]状、L字状などである磁性部12を一つ、又は複数備え、かつ磁性部12がつくる周方向の隙間を埋める高抵抗部13を備える。
周分断形態の別例として、図3に示す実施形態3のコイル用線材1Cが挙げられる。コイル用線材1Cは、高抵抗部13が導体線11の外周だけでなく、磁性部12,12の外周を覆う外周部分を有する。そのため、線材1Cの外表面は、高抵抗部13によって形成される。以下、この形態を内包形態と呼ぶことがある。内包形態に類似の形態として、図3に示す磁性部12と高抵抗部13とを入れ替えて、磁性部12で形成される外表面を備える形態などが挙げられる。
螺旋形態である実施形態4のコイル線材1Dは、図4に示すように導体線11の長手方向にみると導体線11の軸方向に交差して斜めに配置され、導体線11の周方向にみると、横断面形状が上記周分断形態と同様である磁性部12及び高抵抗部13を少なくとも一つずつ備え、好ましくは複数備える。
格子形態である実施形態5のコイル用線材1Eは、図5に示すように導体線11の長手方向の一部及び周方向の一部を覆う複数の磁性部12と、導体線11の長手方向に隣り合う磁性部12,12間の隙間及び磁性部12がつくる周方向の隙間を埋める格子状の高抵抗部13を有する。
嵌め込み形態である実施形態6のコイル用線材1Fは、図6に示すように、導体線11の外周に複数の凹部が設けられ、各凹部に配置される帯状の磁性部12及び各帯状の磁性部12を覆う高抵抗部13を備える。線材1Fの外表面は、代表的には、導体線11と高抵抗部13との二者で形成される。
以下、構成要素ごとに詳細に説明する。
(導体線)
導体線11は、実施形態のコイル用線材1において主として電流が流れる部分である。
・組成
導体線11の構成材料は、金属、特に導電性に優れる金属である銅、銅基合金、アルミニウム及びアルミニウム基合金から選択される少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。上記に列挙した金属を含む導体線11は、導電率が高く、電気抵抗も小さいため、所定の電流を低損失で流すことができる。低損失化の観点からは、上記構成材料は、銅又は銅基合金が好ましく、軽量化の観点からはアルミニウム又はアルミニウム基合金が好ましい。上記に列挙した金属は、一般に非磁性材であるため、コイル用線材1は、磁性部12を備えて、磁気遮蔽を行う。
ここでの「銅」とは、Cuを99.9質量%以上含有する純銅である。具体的にはタフピッチ銅、脱酸銅(例、リン脱酸銅)、無酸素銅(OFC)が挙げられる。
ここでの「銅基合金」とは、Cuを50質量%以上、好ましくは90質量%以上含有し、Cu以外の添加元素を含有するものである。銅基合金の添加元素は、例えばSn,Zr,Fe,Zn,Ag,Cr,P,Si,Mn,Ti,Mg,Niなどが挙げられる。
ここでの「アルミニウム」は、Alを99質量%以上含有する純アルミニウムである。
ここでの「アルミニウム基合金」は、Alを50質量%以上、好ましくは90質量%以上含有し、Al以外の添加元素を含有するものである。アルミニウム基合金の添加元素は、例えばSi,Cu,Mg,Zn,Fe,Mn,Ni,Ti,Cr,Ca,Zr,Liなどが挙げられる。
その他、いずれの金属も不可避不純物を含み得る。
上記添加元素の含有量は、所望の導電率が得られる範囲で、添加元素の種類に応じて適宜設定するとよい。添加元素の合計含有量は、例えば0.1質量%以上30質量%以下、更に0.1質量%以上5.0質量%以下が挙げられる。導電率を高くする観点からは、添加元素の含有量は少ない方が好ましい。
導電率、低損失、延性、磁気的特性などを考慮すると、導体線11の構成材料は、純銅、特に酸素や水素などの不純物をほとんど含まず、純度が最も高い無酸素銅が好ましい。銅の導体線11を備える場合、電力損失を低減できることから、小径化も期待できる。
・組織
導体線11の構成金属は、微細な結晶組織であると機械的特性に優れて好ましい。具体的には、平均結晶粒径が200μm以下を満たすことが挙げられる。上記構成金属の平均結晶粒径が200μm以下であれば、強度(降伏応力や0.2%耐力)や延性(破断伸び)といった機械的特性が優れる。ここでの「平均結晶粒径」は、JIS H 0501(1986年)に規定された「伸銅品結晶粒度試験方法」に記載の切断法に準拠して測定した平均結晶粒度である。平均結晶粒径の測定は、コイル用線材1の横断面をとり、導体線11の断面の結晶組織を顕微鏡で観察することにより行う。平均結晶粒径は、100μm以下、更に50μm以下が挙げられ、下限は特に問わない。製造上の観点から、平均結晶粒径は1μm以上が挙げられる。
・形状
導体線11の形状は、適宜選択できる。図1〜図5,図7では、横断面形状が円形状の丸線を示す。丸線は、曲げ易く、コイル成形性に優れる。横断面形状が長方形状である平角線は、占積率が高いコイルを得易い。その他、導体線11の横断面形状は、楕円形状、レーストラック形状、三角形状や六角形状といった多角形状など種々の形状が挙げられる。代表的には、導体線11の横断面形状とコイル用線材1の横断面形状とは相似であるが、製造方法によっては、図6に示すような凹凸形状などとすることができる。
・大きさ
導体線11をその長手方向(軸方向)に直交する平面で切断した横断面積は、電流値に応じて適宜選択できる。例えば、2A以上といった大電流を流す用途では、上記横断面積は、0.4mm以上、更に0.5mm以上、0.8mm以上とすることができる。低電流用途では、上記横断面積は、0.4mm未満、更に0.3mm以下とすることができる。上記横断面積の上限は特に問わないが50mm以下であれば、導体線11の剛性が過度に高くならずコイル成形性に優れたり、占積率が高いコイルが得られたりする。
導体線11の幅W11も適宜選択できる。例えば、導体線11が図1に示すような丸線の場合には、幅W11=直径φは0.5mm以上8mm以下程度が挙げられる。
導体線11が上述の平角線の場合には、その厚さ(短辺の長さ)は0.2mm以上5mm以下程度、幅W11(長辺の長さ)は0.5mm以上10mm以下程度が挙げられる。
・導電率
導体線11は導電率が高いほど低損失で電流を流せて好ましい。具体的な導電率は、70%IACS以上、更に80%IACS以上、90%IACS以上が挙げられる。
(磁性部)
磁性部12は、主として外部磁界からの磁束が導体線11に通過することを阻止する磁気遮蔽部として機能する。外部磁界がコイル用線材1に印加された際に、外部磁界による磁束が磁性部12に流れることで、導体線11に鎖交する磁束を減らすことができる。しかし、導体線11の全周及び全長を例えば鉄などの強磁性金属で覆うと、全周磁性層自体に生じる渦電流が大きくなり、この渦電流が導体線11に流れて、損失の増大を招く恐れがある。また、全周磁性層によって線材の剛性が高められるなどして曲げ難くなり、コイル成形性に劣る場合が考えられる。剛性が高いことで、コイル成形後、スプリングバックによって、コイルが所定の寸法を満たし難くなる恐れもある。そこで、実施形態のコイル用線材1は、導体線11の外周の一部のみを覆う磁性部12を備える。具体的には導体線11の外周のうち、その長手方向の一部を覆う磁性部12や、導体線11の外周のうち、その周方向の一部を覆う磁性部12を備える。
・長手分断形態
図1に示す実施形態1のコイル用線材1Aは、磁性部12が導体線11の長手方向に所定の間隔をあけて断続的に配置される長手分断形態である。線材1Aは、導体線11の周方向に連続する筒状の磁性部12を複数備え、導体線11の長手方向に隣り合う磁性部12,12間にそれぞれ高抵抗部13(後述)を備える。この例の線材1Aは、導体線11の直上に各磁性部12及び各高抵抗部13を備える。各高抵抗部13は、導体線11における磁性部12に覆われず露出された箇所と磁性部12との段差を埋めるように設けられている。そのため、線材1Aは、上記段差による凹凸のない平滑な外周面を有する。線材1Aは、導体線11と磁性部12とを有する横断面(図1に示す端面に等しい)と、磁性部12を有さず、導体線11と高抵抗部13とを有する横断面とを含む。上記間隔は、各高抵抗部13における導体線11の長手方向に沿った長さL13に等しい。各磁性部12における導体線11の長手方向に沿った長さをL12とすると、線材1Aの側面を導体線11の長手方向にみれば、長さL12の長方形状の磁性部12と長さL13の長方形状の高抵抗部13とが交互に並ぶ。
各磁性部12の長さL12、上記間隔(高抵抗部13の長さL13)は、適宜選択できる。コイル用線材1Aの長手方向における磁性部12の分割数(個数)が少ない場合、各磁性部12の長さL12が長く、かつ上記間隔が小さいほど、導体線11が強磁性体を含む材料に覆われる領域が大きい。そのため、導体線11への磁束の通過を低減して、高い磁気遮蔽効果を期待できる。一方、磁性部12の分割数が多い場合、各磁性部12の長さL12が短くても、磁性部12の個数が多く、上記間隔が短ければ、導体線11における強磁性体を含む材料による被覆領域を多くできて、高い磁気遮蔽効果を期待できる。また、磁性部12が金属で構成される場合でも、長さL12が短ければ、各磁性部12における渦電流が流れる範囲が小さく制限されて、渦電流に起因する損失を効果的に低減できる。分割数が多いことで曲げ易く、コイル成形性にも優れると期待される。磁気遮蔽効果、低損失化などを考慮すると、磁性部12の長さL12は、導体線11の幅W11よりも小さいことが好ましい。具体的な長さL12は、導体線11の幅W11の0.5倍以下、更に幅W11の0.25倍以下程度が挙げられる。上記間隔(高抵抗部13の長さL13)は、導体線11の幅W11よりも小さいこと、具体的には幅W11の20%未満、更に幅W11の10%以下程度が挙げられる。磁性部12の厚さt12は後述する。
・周分断形態
図2に示す実施形態2のコイル用線材1Bは、磁性部12が導体線11の周方向に所定の間隔をあけて配置される周分断形態である。この例の線材1Bは、導体線11の長手方向に連続する複数(ここでは二つ)の磁性部12を備え、導体線11の周方向に隣り合う磁性部12,12間にそれぞれ高抵抗部13,13を備える。各磁性部12はいずれも、横断面円弧状(樋状)である。また、この例の線材1Bは、導体線11の直上に各磁性部12及び各高抵抗部13を備える。各高抵抗部13は、実施形態1と同様に、導体線11における磁性部12からの露出箇所と磁性部12との段差を埋めており、線材1Bは上記段差による凹凸のない平滑な外周面を有する。線材1Bは、任意にとった横断面の形状が等しく、各横断面における磁性部12の配置位置が同じである。上記間隔は、各高抵抗部13における周長p13に等しい。各磁性部12における導体線11の周方向に沿った長さ(周長)をp12(図3参照)とすると、線材1Bの横断面を周方向にみれば、周長p12の円弧状の磁性部12と周長p13の円弧状の高抵抗部13とが周方向に隣り合って並び(この例では交互に並び)、両者で一つの円環体を形成する。
周分断形態の磁性部12の横断面形状は、導体線11の周方向に配置される個数(分割数)に応じて選択できる。例えば、磁性部12の個数を一つとする場合、横断面C字状などとすると、上記間隔(高抵抗部13の周長p13)を小さくし易く、磁性部12の周長p12を長くし易い。図2に示すように磁性部12の個数が二つ、更には三つ以上などである場合には、各磁性部12の形状、周長p12が等しく、各磁性部12における導体線11に対する配置位置を、導体線11の外周を均等分割した位置などとすると、磁気遮蔽効果を均一的に得られる。導体線11の周方向に配置される磁性部12及び高抵抗部13の個数(分割数)を多くし、かつ高抵抗部13の周長p13を短くすれば、高い磁気遮蔽効果と、渦電流が流れる範囲の制限による低損失化を期待できる。分割数が多いことで曲げ易くコイル成形性にも優れると期待される。磁気遮蔽効果、低損失化などを考慮すると、周分断形態の高抵抗部13の周長p13(導体線11の周方向に複数の高抵抗部13が存在する場合には合計周長)は、導体線の幅W11の30%以下、更に20%未満、10%以下とすることが挙げられる。後述する試験例に示すように、形態によっては、周長p13が導体線の幅W11よりも長くても、低損失化を十分にはかることができる。
・格子形態
導体線11の長手方向に高抵抗部13を含むと共に周方向にも高抵抗部13を含み、複数の磁性部12を備える格子形態とすることができる。図5に示す実施形態5のコイル用線材1Eでは、導体線11の周方向に所定の間隔(一つの高抵抗部13の周長p13)をあけて横断面C字状の磁性部12が配置され、かつ導体線11の長手方向に所定の間隔(高抵抗部13の長さL13)をあけて上記C字状の磁性部12が複数配列された例を示す。線材1Eは、導体線11の長手方向に隣り合う磁性部12,12間及び周方向に隣り合う磁性部12,12間のそれぞれに高抵抗部13が配置される。また、線材1Eは、実施形態1,2と同様に、導体線11における露出箇所と磁性部12との段差を各高抵抗部13で埋めて、上記段差による凹凸のない平滑な外周面を有する。磁性部12と高抵抗部13とは、導体線11の長手方向及び周方向のそれぞれに隣り合って並び、両者で一つの円環体を形成する。格子形態における磁性部12の長さL12、長手方向の間隔(高抵抗部13の長さL13)、周方向の間隔(高抵抗部13の周長p13)などは、上述の長手分断形態、周分断形態を参照するとよい。
・螺旋形態
図4に示す実施形態4のコイル用線材1Dは、導体線11の周方向に所定の間隔(一つの高抵抗部13の周長p13)をあけて配置され、導体線11の軸に対して螺旋を描いて連続する磁性部12を備える螺旋形態である。磁性部12は導体線11における磁性部12に覆われない露出箇所が螺旋状となるように設けられている。その結果、高抵抗部13も螺旋状に設けられている。
図4に示す磁性部12は、横断面C字状であり、磁性部12がつくる周方向の隙間に高抵抗部13が介在される。導体線11の周方向に磁性部12及び高抵抗部13が並び、両者で一つの円環体を形成する点で、図2の実施形態2(周分断形態)と類似する。コイル用線材1Dの側面を導体線11の長手方向にみれば、長さL12の平行四辺形状の磁性部12と長さL13(周長p13に等しい)の平行四辺形状の高抵抗部13とが交互に並ぶ点で、図1の実施形態1(長手分断形態)と類似する。線材1Dは、磁性部12と高抵抗部13とが斜めの縞模様を描く点で、縦縞を描く図1の実施形態1とは異なる。また、線材1Dは、導体線11の直上に磁性部12及び高抵抗部13を備え、実施形態1,2と同様に、導体線11における露出箇所と磁性部12との段差を高抵抗部13で埋めて、上記段差による凹凸のない平滑な外周面を有する。この線材1Dは、任意にとった横断面における磁性部12の配置位置が周方向にずれる点で、図2の実施形態2とは異なる。
螺旋形態は、磁性部12が螺旋を描いて連続することがあるものの、長手分断形態に類似するため、磁性部12の長さL12、長手方向の間隔(高抵抗部13の長さL13=周長p13)などについては長手分断形態を参照できる(L12,L13<W11)。上記間隔(L13=p13)は、磁性部12の長さL12の0.5倍以下程度(幅W11の25%以下程度)とすることができる。また、螺旋形態は、周分断形態に類似するため、磁性部12の周長p12、分割数、横断面形状などについては周分断形態を参照できる。本例では周方向の分割数を1とするが、2以上とすることができる。
・嵌め込み形態
図6に示す実施形態6のコイル用線材1Fは、導体線11の周方向に並列する複数の凹部を備え、各凹部に配置される帯状の磁性部12と、磁性部12の全周を覆う高抵抗部13を備える嵌め込み形態である。この例の各磁性部12は、導体線11の長手方向に連続する帯状体であり、横断面滴状である。各磁性部12を覆う高抵抗部13は、各凹部と磁性部12間の隙間を無くすように各凹部に配置される。ここで、高抵抗部13が無い場合、導体線11の凹部において磁性部12に覆われない露出箇所と磁性部12との間、この例では更に導体線11の凸部と磁性部12との間にそれぞれ段差が生じる。高抵抗部13がこれらの段差を無くすことで、線材1Fは、凹凸のない平滑な外周面を有する。図6は、高抵抗部13で覆われた磁性部12(以下、被覆付の磁性部12と呼ぶことがある)が導体線11に縦添えされ、複数の被覆付の磁性部12が導体線11の周方向に並べられて、一つの円環体を形成する例を示す。縦添えに代えて、螺旋形態のように、被覆付の磁性部12が導体線11の軸に対して螺旋を描くように配置された形態とすることができる。
嵌め込み形態は、導体線11の周方向に隣り合う磁性部12,12間に、各磁性部12を覆う高抵抗部13,13の一部が介在される点で、図2の実施形態2(周分断形態)と類似する。また、嵌め込み形態では、磁性部12が導体線11に直接接触せず、高抵抗部13の一部を介して配置される。この部分は、後述する介在絶縁層14と同様な効果を奏する(詳細な効果は後述する)。なお、嵌め込み形態では、導体線11の凹部に起因して、隣り合う被覆付の磁性部12,12間に導体線11の一部が介在することを許容する。この導体線11の外表面近傍における介在量が少ない(介在する周長が短い)ことが好ましい。
嵌め込み形態では、磁性部12の合計横断面積や、磁性部12の周長p12(この形態ではコイル用線材1Fの周方向に沿った最大長さとする)の合計周長が大きいほど、線材1Fに占める磁性部12の割合が大きく、高い磁気遮蔽効果を期待できる。この場合に、被覆付の磁性部12の個数が多く、かつ各磁性部12の横断面積が小さかったり、周長p12が短かったりすれば、凹部の具備による導体線11の大径化を招き難く、小径の線材1Fとし易い。個数(分割数)や周長p12などは、上述の周分断形態を参照できる。各磁性部12の横断面積は、例えば、後述する磁性部12の面積割合の範囲を満たす横断面積を、磁性部12の個数で除した値が挙げられる。各磁性部12の横断面積を小さくするには、周長p12及び厚さt12(ここでは各磁性部12における最大厚さ)の少なくとも一方を小さくすることが挙げられる。嵌め込み形態は、線材1Fに占める磁性部12の割合を高め易い。
磁性部12の形状は、コイル用線材1の外表面が凹凸のない平滑な平面を形成する範囲内で適宜選択できる。磁性部12は、製造過程で用いる原料の帯材が塑性加工などを受けて変形することで種々の形状をとり得る。代表的には、凹部側の面は凹部に沿った形状をなし(図6では導体線11の中心に向かって張り出た湾曲形状)、凹部に嵌め込まれていない外側の面は、線材1の外周面に沿った形状(図6では円弧状)をなす。図6の横断面滴状は例示である。
・その他の形態
コイル用線材1は、長手分断形態、周分断形態、格子形態、螺旋形態、及び嵌め込み形態から選択される2種以上の形態を組み合わせて備えることができる。例えば、線材1の長手方向の一部に長手分断形態を含み、他部に螺旋形態を含む形態などとすることができる。又は、例えば、長手分断形態における磁性部12の分断数が異なる部分や、周分断形態における磁性部12の分断数が異なる部分などを備えることができる。
その他、磁性部12が強磁性金属で構成される場合などにおいて、磁性部12に少なくも一つの窓部(図示せず)を備え、高抵抗部13は、導体線11における上記窓部からの露出箇所と磁性部12との段差を埋める部分を含むことができる。特に、窓部の個数が多かったり、窓部が大きかったりすれば、窓部に応じて、コイル用線材1における磁性部12の割合を少なく、かつ高抵抗部13の割合を多くできて、磁性部12に生じる渦電流を低減できる。磁性部12に対する窓部の形成位置や大きさ、形状、個数は適宜選択できる。高抵抗部13によって磁性部12が複数の領域に区画される場合(図4の螺旋形態を含む)、各磁性部12に窓部を備える形態、一部の磁性部12にのみ窓部を備える形態、窓部の大きさ・形状・個数・導体線11に対する周方向の位置などが異なる磁性部12を備える形態などとすることができる。
・組成
磁性部12の構成材料は、磁性材料を含む。特に、上記構成材料は、高い磁気遮蔽効果が期待できる強磁性体を含む。磁性部12は、実質的に磁性材料から構成される形態(以下、基本形態と呼ぶことがある)、磁性材料と非磁性材料とを含む形態(以下、非磁性含有形態)が挙げられる。非磁性含有形態は、例えば、磁性体粉末と、磁性体粉末を分散した状態で保持する樹脂とを含む複合材である形態が挙げられる。基本形態は、磁性材料、好ましくは強磁性体の含有割合が高く、高い磁気遮蔽効果が得られる。非磁性含有形態は、樹脂といった絶縁性材料を含むと、金属磁性体粉末を含む場合でも、磁性部12で生じる渦電流を低減できる。また、非磁性含有形態は、樹脂などの柔軟な材料を含むことで曲げ易く、コイル成形性に優れる。
強磁性体は、Feを含む鉄系材料、Coを含むコバルト系材料(純金属、合金など)、Niを含むニッケル系材料(純金属、合金など)などの軟磁性材料が挙げられる。特に、鉄系材料を含むと、磁性部12の比透磁率、飽和磁束密度を高くでき、外部磁界の磁束が磁性部12に集中して流れ易くなって、導体線11に鎖交しようとする磁束を効果的に低減できて好ましい。
「鉄系材料」は、Feを含有する金属やFeを含有する化合物などである。具体的には、鉄、鉄系合金、及び鉄系化合物から選択される少なくとも1種の軟磁性材料が挙げられる。
ここでの「鉄」とは、Feを99.8質量%以上含有する純鉄である。
鉄系合金は、例えばパーマロイ(Fe−Ni合金)、珪素鋼(Fe−Si合金、例:3質量%Si−Fe)、炭素鋼などのFe−C合金、パーメンジュール(Fe−Co合金、例:49質量%Co−2質量%V−Fe)、鉄系アモルファス合金、センダスト(Fe−Si−Al合金)などが挙げられる。
鉄系化合物は、例えばフェライト(Fe)、FeO,Feといった鉄酸化物(酸化鉄)などが挙げられる。
特に、飽和磁束密度(飽和磁化)が1.5T以上の磁性材料を含むと、上述のように高い磁気遮蔽効果を期待できる。飽和磁束密度は、1.6T以上が好ましく、1.8T以上がより好ましい。飽和磁束密度が高い磁性材料は、Fe及びCoの少なくとも一方を合計で90質量%以上含有する軟磁性材料、例えば、鉄、珪素鋼、パーメンジュールなどが挙げられる。飽和磁束密度及び後述の抵抗率は、室温(20℃程度)における値とする。
非磁性含有形態で含む非磁性材料は、渦電流の低減を考慮すると、アルミニウムなどの金属といった導電性材料よりも樹脂といった絶縁性材料が好ましい。この樹脂は、後述する介在絶縁層14や絶縁被覆15の構成材料に用いる絶縁性樹脂が挙げられる。電気絶縁性を有する樹脂を含むことで、磁性部12に電気絶縁機能を付与することができる。
非磁性含有形態で含む磁性材料は、粉末状であると、非磁性材料と混合し易く製造性に優れる。磁性体粉末の各粒子は、薄板状や針状、棒状などといった横断面形状が偏平であると、磁性部12の周方向に沿って磁束が流れ易い経路が形成され易く、磁気遮蔽効果を高められて好ましい。偏平とは、例えば、以下のアスペクト比が5以上を満たすことが挙げられる。アスペクト比は、コイル用線材1の横断面をとり、この横断面を顕微鏡などで観察し、観察像における磁性部12内に存在する磁性体粉末の各粒子の短軸の長さ(厚さ)及び長軸の長さ(幅)を測定し、短軸の長さに対する長軸の長さの比、即ち、長軸/短軸とする。磁性体粉末のアスペクト比は、50個以上の粒子についてアスペクト比を求め、得られた50個以上の値の平均とする。磁性部12の製造性を考慮すると、アスペクト比の上限は、50が挙げられる。
上記短軸の長さが短いほど(厚さが薄いほど)、厚さt12が均一的な磁性部12や厚さt12が薄い磁性部12を形成し易く、磁気遮蔽効果も得られる。また、曲げなどが行い易いコイル用線材1とすることができる。短軸の長さは10μm以下が好ましく、下限は0.1μm程度が挙げられる。磁性体粉末の短軸の長さも、50個以上の値の平均とする。
磁性体粉末の各粒子は、磁性部12を構成する樹脂全体に亘って均一に分散して存在し、更には磁性部12の厚さ方向に少なくとも一部が重なり合って存在することができる。上記粒子が重なり合うことで、磁性部12に形成される磁束の経路を導体線11の周方向や長手方向に連続させられて、導体線11への磁束を低減できる。同じ理由から、磁性体粉末の各粒子は長軸の配列方向が導体線11の周方向と同一、又は実質的に同一であること、薄板状である場合には板表面が導体線11の外周面と平行、又は実質的に平行であることとすることができる。
磁性部12中の磁性体粉末の含有量が多いほど、磁性部12に占める磁性材料の含有割合が高められて、基本形態と同程度の高い磁気遮蔽効果を期待できる。具体的な磁性体粉末の含有量は、体積割合で、10体積%以上90体積%以下が挙げられる。上記含有量が90体積%以下であれば、樹脂中に磁性体粉末を分散した状態で保持し易い。磁気遮蔽効果と分散性とを考慮すると、上記含有量は、20体積%以上80体積%以下、更に30体積%以上70体積%以下が好ましい。上記含有量は、例えば、磁性部12の横断面の顕微鏡観察像から、磁性部12の横断面に占める磁性体粉末の面積比率を測定し、その面積比率から体積比率(体積含有率)を換算することで求められる。簡略的には、この面積比率を上記の体積含有率とみなすことができる。
・磁性部の厚さ
磁性部12の厚さt12が厚いほど、磁路断面積を大きく確保できて磁気飽和を抑制し、高い磁気遮蔽効果を期待できる。厚さt12が薄いほど、磁性部12自体に生じる渦電流を低減できる。また、厚さt12が薄いほど、曲げ易くコイル成形性に優れる上に、磁性部12の厚肉化によるコイル用線材1の大径化(大型化)を抑制し、導体割合が高いコイルを形成できる。高い磁気遮蔽効果、低損失、良好なコイル成形性、コイルの高占積率化などを考慮すると、磁性部12の厚さt12は、10μm超500μm以下が挙げられ、15μm以上400μm以下、20μm以上300μm以下、20μm以上200μm以下が好ましい。特に磁性部12自体の渦電流の低減を考慮すると、厚さt12は200μm以下、更に150μm以下が好ましい。
磁性部12の厚さt12は、磁性部12について導体線11の周方向に沿って等間隔に10点以上測定した値の平均とする。複数の磁性部12を備える場合には、3個以上の磁性部12の厚さを求め、その平均を厚さt12とする。図1〜図5,図7に示すコイル用線材1はいずれも、磁性部12の厚さt12が長手方向かつ周方向に一定である例を示す。図6に示す嵌め込み形態の磁性部12の厚さt12(最大厚さ)は、3個以上の磁性部12における最大厚さの平均とする。
・面積割合
コイル用線材1の横断面における磁性部12の面積割合が高いほど、高い磁気遮蔽効果が期待できる。上記面積割合が低いほど、磁性部12自体に生じる渦電流を低減できる。また、磁性部12に起因する剛性の向上を抑制してコイル成形性に優れる上に、占積率が高いコイルを得易い。高い磁気遮蔽効果、磁性部12自体に生じる渦電流の増大抑制、良好なコイル成形性、コイルの高占積率化などを考慮すると、上記面積割合は、1.5%以上60%以下が挙げられ、2%以上、更に3%以上が好ましく、40%以下、更に30%以下が好ましい。特に磁性部12自体の渦電流の低減を考慮すると、上記面積割合は8%以上、更に10%以上20%以下が好ましいと考えられる。上記面積割合は、線材1の横断面において、導体線11の断面積と磁性部12の断面積(複数の場合には合計断面積)とを合わせた線材断面積に対する磁性部12の断面積の比率、
{磁性部の断面積/(導体線の断面積+磁性部の断面積)}×100とする。
・物理特性
磁性部12の飽和磁束密度は、上述のように高いほど、磁気遮蔽効果を高められ、0.5T以上、更に1.0T以上が好ましい。基本形態では、磁性部12を構成する磁性材料の飽和磁束密度が実質的に磁性部12の飽和磁束密度となる。非磁性含有形態では、磁性部12全体としての飽和磁束密度が樹脂などの非磁性材料を含むために磁性材料の飽和磁束密度よりも小さくなることから、飽和磁束密度が高い磁性材料を含むことが好ましい。渦電流をより低減するためには電気絶縁性に優れることが好ましく、飽和磁束密度が同じであれば抵抗率が大きい方が好ましい。具体的な抵抗率は、0.1μΩ・m以上、より好ましくは1μΩ・m以上、更に9μΩ・cm以上、10μΩ・cm以上が好ましい。
磁性部12、及び後述の高抵抗部13の飽和磁束密度、比抵抗などの物理特性は、代表的には構成材料の組成に依存する。そのため、簡略的な測定方法として、例えば、コイル用線材1の成分分析を行い、各層の構成成分が公知のものであれば公知の物性値を参照することができる。その他、磁性部12の比抵抗の測定方法として、四探針法などを利用できる。測定の際、後述の絶縁被覆15などを除去して、磁性部12や高抵抗部13を露出させる。
・磁性部の仕様
磁性部12は、単層構造、2層以上の多層構造のいずれでもよい。多層構造の場合、各層の仕様を異ならせることができる。例えば、基本形態では、各層の組成や厚さを異ならせることができる。例えば、磁性部12のうち、内側(導体線11に近い側)の領域が鉄で形成され、外側(コイル用線材1の最表面に近い側)の領域が鉄の酸化物(酸化鉄)で形成された形態などとすることができる。非磁性含有形態では、例えば、各層に含まれる磁性体粉末の組成、樹脂の組成、磁性体粉末の含有率・形状・大きさ、各層の厚さなどを異ならせることができる。磁性材料のみからなる層の上に、磁性体粉末と樹脂とを含む複合材からなる層を備える多層構造などとすることもできる。
コイル用線材1が複数の磁性部12を備える場合、全ての磁性部12の仕様(組成、積層数、厚さなど)が等しい形態の他、一部の磁性部12の仕様(組成、積層数、厚さなど)が他部とは異なる形態とすることができる。例えば、複数の磁性部12のうち、一部の磁性部12が実質的に磁性材料から構成され、他部の磁性部12が複合材から構成される形態、各磁性部12の厚さt12が異なる形態、長手分断形態や格子形態において各磁性部12の面積割合(上述)が異なる形態などとすることができる。外部磁界による影響を受け易い箇所に、磁性材料のみから構成される領域や厚い磁性部12を備える領域、上記面積割合が高い領域などを配置すると、高い磁気遮蔽効果が期待できる。なお、各磁性部12の厚さt12の厚さが異なることで生じ得る凹凸は、高抵抗部13の厚さt13を磁性部12の厚さt12に応じて変えることで、凹凸のない平滑な外表面を有する線材1とすることができる。又は、曲げ半径が小さい箇所、代表的には曲げの内側となる箇所に複合材から構成される領域や薄い磁性部12を備える領域、上記面積割合が小さい領域などを配置することで、磁性部12に生じ得る渦電流の低減効果、磁気遮蔽効果が得られる上にコイル成形性にも優れることが期待できる。
(高抵抗部)
実施形態のコイル用線材1は、高抵抗部13を備えることで、磁性部12に生じた渦電流が導体線11の長手方向や周方向に沿って流れて大きなループが形成されることを低減する。この目的から、高抵抗部13の構成材料は、磁性部12に含む強磁性体よりも抵抗率が大きい材料(以下、高抵抗材料と呼ぶことがある)とする。また、高抵抗部13は、磁性部12を備えることで生じる導体線11と磁性部12との間の段差を埋めて、線材1の外表面を凹凸のない平滑な面とすることにも機能する。
・組成
高抵抗部13を構成する高抵抗材料は、磁性部12が複数種の強磁性体を含む場合には、抵抗率が最も大きい強磁性体よりも抵抗率が大きい材料とする。強磁性体よりも高抵抗である高抵抗材料は、通常、導電性に優れる金属から構成される導体線11よりも抵抗率が大きい。高抵抗材料の抵抗率が導体線11、更には強磁性体よりも大きいことで、磁性部12で生じた渦電流が高抵抗部13を介して導体線11に流れることを抑制できる。また、高抵抗部13自体に渦電流が生じ難いため、渦電流が高抵抗部13を介して導体線11に流れることを更に抑制し易い。
上記高抵抗材料は、有機材料、無機材料のいずれも利用できる。無機材料は、磁性部12に含む強磁性体よりも抵抗率が大きければ、金属でも非金属でもよく、磁性材料でも非磁性材料でもよい。有機材料の具体例、無機材料の具体例は、後述の介在絶縁層14の項でまとめて行う。
・物理特性
・・抵抗率
高抵抗部13の抵抗率は高いことが好ましい。磁性部12に生じた渦電流が高抵抗部13に流れて大きなループをつくることを低減し易い上に、高抵抗部13自体に渦電流が生じ難くなるからである。上記高抵抗材料の抵抗率は10μΩ・cm以上が好ましく、20μΩ・cm以上、45μΩ・cm以上、更に50μΩ・cm以上がより好ましい。樹脂といった有機材料は、抵抗率が非常に高く、上記の下限を満たす。無機材料のうち、金属では、純金属よりも合金の方が高抵抗であり、上記の下限を満たすものが多い。非金属では、上記の下限を満たすものが多い。高抵抗部13がこのような高抵抗材料で構成されることで、磁性部12の構成材料を抵抗率が比較的小さいものとすることができる。
・・飽和磁束密度
上記高抵抗材料が磁性材料である場合、飽和磁束密度がある程度低いものでよい。磁気遮蔽部材として、別途、磁性部12を備えるからである。高抵抗材料の飽和磁束密度は、例えば、1.0T未満が挙げられる。又は、高抵抗材料は、比透磁率が1である非磁性材とすることができる。又は、高抵抗材料は、飽和磁束密度が1.0T以上の強磁性体とすることができる。非磁性材は、後述のアルミニウム、アルミニウム基合金、Al化合物が挙げられる。後述の鉄系合金やニッケル基合金のなかには非磁性材もある。
・高抵抗部の厚さ
高抵抗部13は、代表的には、磁性部12と面一に設けられる。そのため、高抵抗部13の厚さt13は磁性部12の厚さt12に実質的に等しい形態(図1,図2,図4,図5,図7)が挙げられる。図3に示す内包形態では、高抵抗部13は磁性部12の外周を覆う外周部分を含むため、最大厚さt13は磁性部の厚さt12よりも大きい。即ち、高抵抗部13は、磁性部12よりも厚い部分を含むことがある。内包形態の最大厚さt13が薄いほど、コイル用線材1の大径化(大型化)を抑制して、占積率の高いコイルを形成できる。そのため、内包形態の最大厚さt13は、磁性部12の厚さt12との差が小さいことが好ましく、外周部分を含んだ場合にも、10μm超500μm以下、更に15μm以上400μm以下、20μm以上300μm以下、20μm以上200μm以下が好ましい。
図6に示す嵌め込み形態における高抵抗部13の厚さt13は、磁性部12の周方向にみて均一的な厚さである形態(本例)が挙げられる。この形態は、製造過程で、磁性部12の原料となる磁性帯材の外周に、高抵抗材料を均一的な厚さで被覆した被覆帯材を用いれば容易に製造でき(後述の<溝付き素線及び被覆帯材を用いる方法>参照)、製造性に優れる。又は、高抵抗部13の厚さt13は、磁性部12の周方向にみて、部分的に異なる形態とすることができる。例えば、高抵抗部13のうち、導体線11の凹部に嵌め込まれて、導体線11と磁性部12との間に介在される介在部分が厚く、凹部から露出されて、コイル用線材1Fの外表面を形成する外周部分が薄い形態、逆に介在部分が薄く、外周部分が厚い形態が挙げられる。介在部分が厚い形態は、磁性部12に生じた渦電流が導体線11に流れることを高抵抗部13の介在部分によって低減し易く、低損失な線材1Fとすることができる。
嵌め込み形態において、高抵抗部13の厚さt13(厚さが異なる部分を有する場合には最大厚さ)は、磁性部12の厚さt12と等しくすることができる。但し、この場合、磁性部12の厚さt12が厚ければ、凹部を深くする必要がある。その結果、導体線11の大径化(大型化)、ひいてはコイル用線材1Fの大型化を招く。従って、嵌め込み形態における高抵抗部13の厚さt13は、磁性部12の厚さt12よりも薄いことが好ましいと考えられる。具体的な厚さは、後述する介在絶縁層14の厚さt14(図3,図7)を参照するとよい。
・面積割合
コイル用線材1の横断面における高抵抗部13の面積割合が高いほど、相対的に磁性部12の面積割合を低減でき、磁性部12自体に流れる渦電流を低減できる。上記面積割合が低いほど、相対的に磁性部12の面積割合を増大でき、高い磁気遮蔽効果を期待できる。この面積割合は、線材1の横断面において、線材1の断面積に対する高抵抗部13の断面積(複数の場合には合計断面積)の比率、(高抵抗部の断面積/コイル用線材の断面積)×100とする。
・防食層
図3に示す内包形態や、図6に示す嵌め込み形態の高抵抗部13は、磁性部12の外周面を覆う外周部分を含む。この外周部分の構成材料が磁性部12の構成材料よりも耐食性に優れる場合、上記外周部分は、磁性部12の防食層としても機能する。磁性部12が鉄などの金属を含む場合、鉄などが酸化腐食すると、磁性部12の磁気特性が劣化し、上述の磁気遮蔽効果を十分に得られなくなる恐れがある。高抵抗部13の一部(外周部分)が防食層を兼ねることで、磁性部12による磁気遮蔽効果を長期に亘り保持できる。防食層機能を期待する場合には、高抵抗部13の外周部分の構成材料は、有機材料、又は無機材料のうち非金属が好ましい。なお、防錆油の塗布などによっても磁性部12の酸化腐食を抑制できる。しかし、絶縁被覆15を形成する場合、通常、防錆油を除去する脱脂工程が必要となる。高抵抗部13の一部を防食層とすれば、この防食層の上に絶縁被覆15を形成できて、製造性に優れる。
・介在絶縁層
実施形態のコイル用線材1は、導体線11の直上に配置された介在絶縁層14を備え、介在絶縁層14の外周に磁性部12を備える形態とすることができる。介在絶縁層14が導体線11の直上と磁性部12間に介在され、導体線11よりも抵抗率が大きい材料から構成されると、磁性部12に生じた渦電流が導体線11に流れることを効果的に抑制でき、この渦電流による損失の増大を低減して、更なる低損失化を実現できる。ここでは、介在絶縁層14を備える例として、図3に示す実施形態3のコイル用線材1C、図5に示す実施形態5のコイル用線材1E、図7に示す実施形態7のコイル用線材1Gを示す。上述のように図6に示す嵌め込み形態のコイル用線材1Fは、高抵抗部13の一部(介在部分)が介在絶縁層14として機能する。
・・組成
介在絶縁層14の構成材料は、導体線11よりも抵抗率が大きい材料であればよく、有機材料でも無機材料でもよい。無機材料は、金属でも非金属でもよく、磁性材料でも非磁性材料でもよい。特に、介在絶縁層14の構成材料は、磁性部12に含む強磁性体よりも抵抗率が大きければ、磁性部12に生じた渦電流が導体線11に流れることを更に抑制できる。この場合、介在絶縁層14の構成材料と高抵抗部13の構成材料とが同じ形態、又は異なる形態のいずれでもよい。介在絶縁層14の構成材料が高抵抗部13の構成材料よりも抵抗率が高いと、磁性部12及び高抵抗部13に生じた渦電流が導体線11に流れることを更に抑制し易く、低損失化を図れる。
樹脂に代表される有機材料は、抵抗率が非常に高く、実質的に渦電流が生じないため、渦電流に起因する損失をより低減し易い介在絶縁層14を構築できる。
無機材料は、一般に樹脂よりも耐熱性に優れ、コイル用線材1の製造過程で熱処理を行う場合に、熱処理温度を高めても熱損傷や熱変性し難い。熱処理温度を高めると、熱処理による特性改善などを良好に行えて、導電性やコイル成形性に優れるコイル用線材1となる。無機材料のうち、純金属や合金などの金属であれば、塑性加工性に優れ、製造過程で種々の塑性加工を行い易い。無機材料のうち、化合物などの非金属であれば、一般に金属よりも高抵抗であり、絶縁性に優れて渦電流に起因する損失を低減し易い介在絶縁層14を構築できる。
以下、有機材料、無機材料の具体例を説明する。
<有機材料>
高抵抗部13や介在絶縁層14を構成する有機材料として、絶縁性樹脂が挙げられる。具体的には、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂などが挙げられるが、その限りではない。公知のエナメル線の絶縁被覆に利用されている絶縁性樹脂などの利用が考えられる。絶縁性樹脂から構成される高抵抗部13を備える場合、導体線11の長手方向及び周方向の少なくとも一方の方向に磁性部12を電気的に分断でき、渦電流が流れる範囲を良好に制限できる。絶縁性樹脂から構成される介在絶縁層14を導体線11と磁性部12との間に介在することで、導体線11と磁性部12との間を電気的に絶縁できる。
<無機材料>
・・Cu含有材
高抵抗部13や介在絶縁層14を構成する無機材料は、例えば、Cuと非金属元素(例、酸素など)とを含むCu化合物、又は銅基合金といったCu含有材が挙げられる。
ここでの「Cu化合物」は、例えば、CuO,CuOといった銅酸化物(酸化銅)などが挙げられる。銅酸化物の抵抗率は、1×10Ω・cm以上、更に1×10Ω・cm以上が挙げられる。
ここでの「銅基合金」は、上述の導体線11の組成の項で列記したものが挙げられる。特に、添加元素がNi,Mn及びZnから選択される1種以上を含む銅基合金が挙げられる。これら銅基合金の抵抗率は、5μΩ・cm以上、更に40μΩ・cm以上が挙げられる。
Cu化合物や銅基合金はCuを含むため、銅や銅基合金との密着性に優れる。従って、Cu化合物又は銅基合金から構成される高抵抗部13や介在絶縁層14を導体線11が銅である場合に導体線11の直上に備えると、導体線11との密着性に優れて好ましい。また、Cu化合物又は銅基合金から構成される介在絶縁層14は、例えば、後述するように製造過程で、銅又は銅基合金からなる導体素材や導体線11に表面処理を施すことで容易に形成でき、製造性にも優れる。
・・Fe含有材、その他
別の無機材料として、例えば、Feを含むFe含有材、Niを含むNi含有材、Alを含むAl含有材が挙げられる。詳しくは、鉄系合金、Feを含むFe化合物、ニッケル、ニッケル基合金、アルミニウム、アルミニウム基合金、及びAlを含むAl化合物から選択される1種以上が挙げられる。
ここでの「鉄系合金」は、上述の磁性部12の組成の項で列挙したものが挙げられる。特に、抵抗率が大きいものとして、Fe−Ni合金、Fe−Si合金、Fe−C合金、鉄系アモルファス合金などが挙げられる。
Fe−Ni合金の抵抗率は、50μΩ・cm以上、更に55μΩ・cm以上が挙げられる。
Fe−Si合金は、Siの含有量が多いほど抵抗率が大きい傾向にあり、20μΩ・cm以上、更に30μΩ・cm以上が挙げられる。
Fe−C合金では、抵抗率が大きいものとしてステンレス鋼やマンガン鋼などが挙げられ、抵抗率が40μΩ・cm以上、更に50μΩ・cm以上が挙げられる。
鉄系アモルファス合金の抵抗率は、100μΩ・cm以上、更に120μΩ・cm以上が挙げられる。
鉄系合金は金属であることから塑性加工性に優れ、コイル成形性にも優れる。
ここでの「Fe化合物」は、上述の磁性部12の組成の項で列挙した鉄酸化物、その他、Feを含む塩、例えばリン酸鉄などのリン酸塩などが挙げられる。鉄酸化物やリン酸塩の抵抗率は、1×10Ω・cm以上、更に1×10Ω・cm以上が挙げられる。
Fe化合物は非金属であり、金属に比較して、抵抗率が大きい、耐食性に優れる、といった利点がある。
ここでの「ニッケル」とは、Niを99質量%以上含有する純ニッケルである。ニッケルの抵抗率は7.24μΩ・cmである。
ここでの「ニッケル基合金」とは、Niを60質量%以上含有し、Ni以外の添加元素を含有する。ニッケル基合金の抵抗率は、50μΩ・cm以上が挙げられる。
ニッケルやニッケル基合金は、抵抗率が大きめである、耐食性に優れる、銅や銅基合金、鉄系合金との密着性に優れる、といった利点がある。
ここでの「アルミニウム」及び「アルミニウム基合金」は、上述の導体線11の組成の項で列挙したものが挙げられる。アルミニウム基合金では、特に添加元素がMn,Si,Mg及びZnから選択される1種以上を含むものが挙げられる。アルミニウムの抵抗率は、2.75μΩ・cmである。アルミニウム基合金の抵抗率は、3μΩ・cm以上、更に6μΩ・cm以上が挙げられる。
アルミニウムやアルミニウム基合金は金属であることから塑性加工性に優れ、コイル成形性にも優れる。また、FeやNiといった鉄族元素よりも比重が小さく、軽量化を図ることができる。
ここでの「Al化合物」は、Alといったアルミニウム酸化物(酸化アルミニウム)などが挙げられる。アルミニウム酸化物の抵抗率は、1×1014Ω・cm以上が挙げられる。
Al化合物は非金属であり、金属に比較して、抵抗率が大きい、耐食性に優れる、といった利点がある。
図6に示す嵌め込み形態において、鉄系合金やFe化合物からなる高抵抗層13とすると、後述するように製造過程で、強磁性体からなる素材(磁性帯材)に表面処理を施すことで容易に形成でき、製造性に優れる。
・・厚さ
介在絶縁層14の厚さt14(嵌め込み形態では高抵抗部13の介在部分の厚さ)は、厚いほど導体線11と磁性部12との間の絶縁性を高められて、導体線11と磁性部12間の渦電流の導通をより確実に低減でき、損失を低減できる。一方、構成材料の抵抗率が十分に大きければ、厚さt14が薄くても、上記渦電流の導通を低減できる。また、厚さt14が薄いほどコイル用線材1における導体割合を大きくできて占積率が高いコイルが得られる。更に、曲げ易く、コイル成形性に優れることも期待できる。具体的な厚さt14は、例えば1μm以上500μm以下、更に5μm以上100μm以下、50μm以下、30μm以下が挙げられる。この厚さの範囲内で、介在絶縁層14を異種材料から構成される多層構造とすることができる。
・・多層構造
コイル用線材1は、磁性部12を構成する強磁性体よりも抵抗率が高い無機材料や、上述の絶縁性樹脂などから構成される絶縁層を介して、磁性部12を多層に備えることができる(図示せず)。線材1の内側から順に、導体線11、介在絶縁層14、磁性部12、絶縁層、磁性部12、…を備える形態とすることができる(高抵抗部13は磁性部12に応じて備える)。上記絶縁層は、内包形態の高抵抗部13の外周部分とすることもできる。磁性部12の外周に設ける絶縁層の厚さは、介在絶縁層14の厚さt14の項を参照するとよい。介在絶縁層14、後述の絶縁被覆15を含む複数の絶縁層を備える場合、各絶縁層の厚さが等しい形態又は異なる形態、各絶縁層の構成材料が等しい形態又は異なる形態のいずれでもよい。
・線材の機械的特性
コイル用線材1は、コイル成形時に割れたり破断したり過度に変形したりし難いこと、コイル使用時にへたり難いことなどが望まれる。このような線材1として、降伏応力が60MPa以上、破断伸びが5%以上を満たすものが好ましい。降伏応力は、70MPa以上、更に80MPa以上がより好ましく、破断伸びは、10%以上、更に15%以上がより好ましい。
・その他の構成層
コイル用線材1は、その最外層に潤滑性向上剤などの添加剤を配合した潤滑層(図示せず)を備えたり、導体線11と介在絶縁層14との間、又は介在絶縁層14や上述の多層構造の場合の絶縁層と磁性部12との間に密着性向上剤などの添加剤を配合した密着層(図示せず)を備えたりすることができる。
密着性向上剤は、例えば、アセチレン類(1−ヘキシンなど)、アルキノール類(プロパルギルアルコール、1−ヘキシン−3−オールなど)、アルデヒド類(ベンズアルデヒド、桂皮アルデヒドなど)、アミン類(ラウリルアミン、N,N´−ジメチルセチルアミン、トリメチルセチルアンモニウムプロミドなど)、メルカプタン類(セチルメルカプタン、2−メルカプトイミダゾール、5−アミノ−1,3,4−チアジアゾール−2−チオールなど)、チオ尿素類(チオ尿素、フェニルチオ尿素など)、メラミンなどが挙げられる。特にメルカプタン類のうち、2−メルカプトイミダゾールや5−アミノ−1,3,4−チアジアゾール−2−チオールは、密着性向上の効果が大きく好ましい。
(コイル用電線)
実施形態に係るコイル用電線10(10A〜10Gのいずれか)は、図1〜図7に示すように上述の実施形態のコイル用線材1(1A〜1Gのいずれか)と、線材1の外周に形成された絶縁被覆15とを備える。
絶縁被覆15の構成材料、厚さなどについては、上述の介在絶縁層14の項を参照するとよい。代表的な構成材料は、エナメル線の絶縁被覆に利用される絶縁性樹脂(上述の有機材料の項参照)が挙げられる。絶縁被覆15の最外層に上述の潤滑性向上剤などの添加剤を配合して、潤滑性を高めたり、絶縁被覆15に上述の密着性向上剤などの添加剤を配合して、磁性部12などとの密着性を高めたりすることができる。
(コイル用線材の効果、コイル用電線の効果)
実施形態のコイル用線材1及び実施形態のコイル用電線10は、高周波の交流電流を通電するなどして外部磁界(交番磁界)が印加された場合に、導体線11の外周に備える磁性部12に磁束が集中して流れるため、導体線11に鎖交する磁束を低減できる。従って、コイル用線材1及びコイル用電線10は、外部磁界によって導体線11に発生する渦電流を低減できる。かつ、磁性部12は、上述の全周磁性層よりも体積が小さいことから、磁性部12自体に生じる渦電流を低減できる。また、磁性部12は、高抵抗部13によって導体線11の長手方向及び周方向の少なくとも一方の方向に分断されるため、磁性部12に流れる渦電流が上記長手方向や周方向に連続して大きなループとなることを抑制できる。更に、高抵抗部13は、磁性部12の主要な構成材料よりも高抵抗な材料から構成されるため、磁性部12よりも渦電流が生じ難い。これらのことから、コイル用線材1及び実施形態のコイル用電線10は、渦電流に起因する損失を低減でき、低損失である。
特に、上述の介在絶縁層14や高抵抗部13の介在部分を備える場合には、磁性部12に生じる渦電流が導体線11に流れることを効果的に低減でき、後述する試験例1に示すように損失を極めて低減できる。
また、高抵抗部13は、コイル用線材1の外表面を凹凸の無い平滑な面とすることにも機能する。このようなコイル用線材1の外周には、絶縁被覆15を容易に、かつ均一的な厚さに精度よく形成できる。従って、実施形態のコイル用線材1は、実施形態のコイル用電線10の素材に好適に利用できる。また、実施形態のコイル用電線10は、コイル用線材1を芯線に用いることで、低損失である上に、製造性に優れる。
更に、実施形態のコイル用線材1及び実施形態のコイル用電線10は、導体線11の全周を磁性材料で覆うのではなく、導体線11の長手方向や周方向に高抵抗部13を備えて、磁性材料が存在しない領域を含む。そのため、磁性材料による剛性の過大を抑制できる。従って、コイル用線材1及びコイル用電線10は、曲げ易く、例えばエッジワイズコイルのようなコイルであっても良好にコイルを形成でき、コイル成形性に優れると期待される。
このような実施形態のコイル用線材1及び実施形態のコイル用電線10を用いることで低損失なコイルを容易に形成でき、コイル用線材1及びコイル用電線10は、モータなどの各種電気機器のコイルに好適に利用できる。コイル用電線10を用いた場合には、ターン間の絶縁性、コイルの周辺部品との絶縁性に優れるコイルが得られる。
(コイル用線材の製造方法、コイル用電線の製造方法)
実施形態のコイル用線材1のうち、線材1の横断面の輪郭と、導体線11の横断面の輪郭とが実質的に相似である形態、代表的には図1の長手分断形態、図2,図7の周分断形態、図3の内包形態、図4の螺旋形態、図5の格子形態などは、例えば、導体線11の外周に磁性部12及び高抵抗部13を形成することで製造できる(後述する<その他の方法>参照)。磁性部12及び高抵抗部13の形成には、例えば、磁性部12の原料となる磁性帯部と、高抵抗部13の原料となる高抵抗帯部とを備える複合帯材を利用することができる。この複合帯材を含む複合中間材に伸線加工などの塑性加工を施すと、長尺なコイル用線材1を連続して製造できる。長尺な線材1に絶縁被覆15を連続して形成すれば、実施形態のコイル用電線10も連続して製造できる上に、長尺材とすることができる。従って、この方法は、線材1や電線10の工業的な量産に適すると期待される。
<複合帯材を用いる方法>
実施形態のコイル用電線の製造方法は、上述の複合帯材を用いる方法であり、以下の準備工程と、複合工程と、加工工程と、被覆工程とを備える。準備工程から加工工程までを行うことで、実施形態のコイル用線材1を製造できる。以下、工程ごとに説明する。
(準備工程)強磁性体から構成される磁性帯部と上記強磁性体よりも抵抗率が大きい材料から構成される高抵抗帯部とが段差なく配置されて、平滑な表面を有する複合帯材と、導体素材とを準備する。
(複合工程)上記導体素材の全周を上記複合帯材で覆った複合中間材を作製する。
(加工工程)上記複合中間材に伸線加工及び圧延加工の少なくとも一方を施して、加工材を作製する。
(被覆工程)上記加工材の外周に絶縁被覆を形成する。
・準備工程、被覆工程
上述の製造方法において、導体素材の製造、介在絶縁層14や絶縁被覆15の形成方法は、公知のエナメル線の製造方法を参照できる。導体素材の代表的な製造工程は、鋳造⇒熱間加工(圧延、鍛造、押出)⇒冷間加工(圧延、伸線)、適宜熱処理が挙げられる。介在絶縁層14や絶縁被覆15の代表的な製造工程は、絶縁材料の塗布⇒焼付が挙げられる。一般に、塗布及び焼付を複数回繰り返し行う。この場合の介在絶縁層14,絶縁被覆15は、上述の有機材料から構成される。上記の工程で作製した導体素材の外表面や、平滑な表面を有する複合帯材を用いた複合中間材に塑性加工を行った加工材の外表面は、実質的に凹凸が無く平滑である。そのため、介在絶縁層14や絶縁被覆15を容易に設けられ、コイル用電線10の製造性に優れる。
・・導体素材
導体素材は、代表的には平滑な表面を有する線材、例えば、丸線や平角線などが挙げられる。
導体素材として、以下の表面処理によって、無機材料から構成される無機被覆層を備える被覆素線とすることができる。無機被覆層は、最終的に介在絶縁層14とすることができる。表面処理には、以下の(A)めっき、(B)熱処理、(C)溶液処理などが挙げられる。表面処理の種類によって形成される無機材料が異なる。所定の組成の介在絶縁層14が得られるように表面処理を選択するとよい。表面処理前に、導体素材の表面に酸洗浄や脱脂処理などの前処理を行うことができる。
無機被覆層の厚さは、加工工程で行う塑性加工に伴って、変化する場合がある。最終的に所定の厚さの介在絶縁層14が得られるように、加工度(減面率)などを考慮して、所定の厚さの無機被覆層が得られるように、表面処理の条件を調整する。調整する条件としては、(A)めっきでは浸漬時間や電流密度、溶液濃度など、(B)熱処理では雰囲気ガスの種類や濃度、温度、保持時間など、(C)溶液処理では浸漬時間や溶液濃度などが挙げられる。無機被覆層の厚さが塑性加工によって実質的に変化しない場合には、無機被覆層の厚さが介在絶縁層14の厚さt14に該当するため、所定の厚さt14となるように、上記の表面処理の条件を調整する。この段落の内容は、後述する<溝付き素線及び被覆帯材を用いる方法>で表面処理を行う場合も同様である。
(A)めっき
導体素材よりも抵抗率が大きいめっき層を形成できるように、めっき液の組成などを調整する。めっき層が無機被覆層になる。めっきを利用する場合、無機被覆層を構成する無機材料は、介在絶縁層14の組成の項で説明した金属(銅基合金、鉄系合金、ニッケル、ニッケル基合金、アルミニウム、アルミニウム基合金など)が挙げられる。具体的なめっきの種類は、電気めっき、溶融めっき、化学(無電解)めっきなどが挙げられる。金属種に応じてめっきの種類を選択するとよい。複数の金属めっき層を備える多層構造の無機被覆層を形成してもよい。アルミナイズ(伸光金属株式会社の商品名)といった溶融めっきを利用して、アルミニウム層の最表面にアルミナ層を備えるといった、金属層と非金属層とを備える多層構造の無機被覆層を形成してもよい。多層構造の無機被覆層とすると、最終的に多層構造の介在絶縁層14が得られる。
(B)熱処理
導体素材を、酸素元素を含む雰囲気(例、大気など)で加熱して、導体素材の構成金属元素を含む酸化物を形成する。導体素材が銅又は銅基合金から構成される場合には、銅酸化物を形成できる。導体素材がアルミニウム又はアルミニウム基合金から構成される場合には、アルミニウム酸化物を形成できる。
銅酸化物の形成条件は、熱処理温度120℃以上300℃以下、保持時間1分以上500時間以下が挙げられる。
アルミニウム酸化物については、導体線11や導体素線がアルミニウム又はアルミニウム基合金から構成される場合に酸素を含む雰囲気(例、大気など)で、室温(例、20℃)にある程度保持しておくことで形成できる。更に加熱を行えば、所望の厚さの酸化物層を形成し易い。
(C)溶液処理
導体素材を、各種の溶液に浸漬などすることで、導体素材の構成金属元素を含む酸化物や塩などの化合物を形成する。
例えば、シルブライト(日本カーリット株式会社製)を用いた黒化処理を利用すれば、銅や銅基合金からなる導体素材の表面に銅酸化物を形成できる。
例えば、パルコート(日本パーカライジング株式会社製)を用いた化成処理を利用すれば、アルミニウムやアルミニウム基合金からなる導体素材の表面にアルミニウム酸化物を形成できる。
導体素材として、例えば、その表面に凹凸処理を施したものを利用できる。導体素材の表面に凹凸を有することで、最終的に介在絶縁層14又は磁性部12、高抵抗部13と導体線11との接触面積を増大できて、これらの密着性を高められる。上述の無機被覆層を備える被覆素線とする場合、凹凸処理後に表面処理を行うと、凹凸処理によって無機被覆層が剥離したり損傷したりせず好ましい。無機被覆層が十分に薄ければ(例、3μm程度以下)、無機被覆層の表面は、導体素材の凹凸に沿った凹凸を有する。凹凸処理は、例えば、ブラスト処理、研磨、レーザー処理などが挙げられる。
・・複合帯材
複合帯材における磁性帯部が最終的に磁性部12を構成し、高抵抗帯部が最終的に高抵抗部13を構成する。従って、所望の組成の磁性部12及び高抵抗部13が得られるように、磁性帯部及び高抵抗帯部の組成を選択するとよい。この複合帯材を備える複合中間材に塑性加工を施すため、磁性帯部及び高抵抗帯部の構成材料はいずれも、塑性加工性に優れるもの、又は塑性加工により剥離などし難いものが好ましい。複合帯材が例えば薄板状の金属帯材であれば、一般に、非金属無機材料で構成される場合よりも破断し難く加工性に優れる上に、複合帯材自体も製造し易い。具体的な金属は、上述の磁性部12の組成の項、無機材料の項で列挙したものが挙げられる。
複合帯材は、例えば、複数種の金属帯材が並列配置された状態で圧延されて一体化されたものが利用できる。公知のエッジレイ型クラッド材、又は公知のエッジレイ型クラッド材の製造方法によって製造したものなどが利用できる。例えば、縦縞模様のエッジレイ型クラッド材は、長手分断形態、周分断形態、螺旋形態などに利用できる。又は、高抵抗帯部の一部に磁性帯部が埋め込まれた複合帯材、例えば、公知のインレイ型クラッド材は、内包形態などに利用できる。インレイ型クラッド材の一面は、一様な材料(ここでは高抵抗材料)で構成されて凹凸のない平滑な表面を有する。この平滑な面を導体素材に対して外周側に向けて、導体素線に複合帯材を巻回などすることで、最終的に、平滑な外周面を有するコイル用線材を容易に製造できる。その他の複合帯材として、強磁性体と、強磁性体よりも抵抗率が大きい材料とで縞模様、格子模様や螺旋模様などが描かれたプリント板が挙げられる。上記プリント板は、模様に応じて、長手分断形態、周分断形態だけでなく、格子形態や螺旋形態などに利用できる。
複合帯材の幅に対する磁性帯部の幅と高抵抗帯部の幅との割合は、使用する複合帯材の幅や、導体素材に対する複合帯材の配置状態、加工度などを考慮して、最終的に長さL12,L13、周長p12、p13が所定の大きさとなるように選択するとよい。複合帯材の厚さは、加工度などを考慮して、最終的に厚さt12,t13が所定の厚さとなるように選択するとよい。
複合帯材の一面、又は両面に上述の表面処理を施して、表面に無機被覆層を備える被覆複合帯材を利用することができる。表面処理は、上述の(A)めっき、(B)熱処理、(C)溶液処理のうち、複合帯材を構成する磁性帯部及び高抵抗帯部の双方に適用可能なものが利用できる。また、無機被覆層の構成材料が、導体素材よりも抵抗率が高い無機材料、更には磁性帯部の強磁性体よりも抵抗率が高い無機材料となるような表面処理を利用できる。例えば、(B)熱処理を利用すれば、磁性帯部の表面にFe化合物など、高抵抗帯部の表面にCu化合物などを備える被覆複合帯材が得られると考えられる。この場合、導体線11の長手方向及び周方向の少なくとも一方の方向に異なる材料によって構成された部分が並ぶ介在絶縁層14を備えるコイル用線材1が得られる。両面に表面処理を施した場合には、例えば一方を介在絶縁層14、他方を防食層に利用できる。
・複合工程
導体素材、又は表面処理及び凹凸処理の少なくとも一方が施された導体素材の全周を複合帯材で覆って、複合中間材を作製する。複合帯材による被覆方法は、コイル用線材1の形態に応じて選択するとよい。
例えば、長手分断形態のコイル用線材1A、周分断形態のコイル用線材1Bなどを製造する場合には、上記の導体素材などの周長に対応した幅を有するエッジレイ型クラッド材を用意して、導体素材などの外周に沿って巻き付けることなどが挙げられる。
又は、周分断形態のコイル用線材1Bなどを製造する場合には、所定の幅を有する複数のエッジレイ型クラッド材を用意して、上記の導体素材などに縦添えすることなどが挙げられる。
又は、螺旋形態のコイル用線材1Dなどを製造する場合には、所定の幅を有する複数のエッジレイ型クラッド材を用意して、上記の導体素材などに螺旋状に巻回したり、縦添えしておき、加工工程で適宜捻回したりすることなどが挙げられる。
又は、内包形態のコイル用線材1Cなどを製造する場合には、上述の磁性帯部が埋め込まれたインレイ型クラッド材を用い、導体素材などに対して、磁性帯部を向けて複合帯材を巻回して、導体素材などの外周を覆うことが挙げられる。
上述の複合帯材は、溶接やロウ付けなどを利用して、導体素材などに接合することで固定できる。固定することで複合中間材を取り扱い易く、次の加工工程で伸線機や圧延機などに安定して供給できる。
上述の被覆素線を用いた場合、又は上述の被覆複合帯材を用いた場合、又は被覆素線及び被覆複合帯材の双方を用いた場合には、導体素材と磁性帯部及び高抵抗帯部との間に無機被覆層を備える複合中間材となる。被覆素線及び被覆複合帯材の双方を用いた場合には、最終的に、多層構造の介在絶縁層14を備えるコイル用線材1が得られる。
・加工工程
複合中間材に、所定の寸法となるまで伸線加工及び圧延加工の少なくとも一方の塑性加工を施す。所定の厚さの磁性部12及び高抵抗部13が得られるように、加工度(減面率、圧下率など)を調整する。所定の寸法となるまで塑性加工を繰り返し行う場合は、加工間(パス間)に中間熱処理を行うことができる。中間熱処理を行うことで、加工歪みを除去でき、その後の加工性を高められる。ここで、複合中間材の構成材料が全て金属や非金属無機材料であれば、熱処理温度を高められ、歪み除去を十分に行える。中間熱処理の条件は、主として導体素材の組成に応じて調整するとよい。具体的な条件は、後述の熱処理工程の条件を参照できる。
・熱処理工程
最終寸法を有する加工材に熱処理(最終熱処理)を行うことができる。熱処理によって、上述のように加工歪みを除去して、導電性を高めたり、軟化してコイル成形性を高めたりするなどができる。熱処理条件は、導電性やコイル成形性などを考慮すると、導体線11を構成する結晶の粗大化を招かない範囲で選択することが好ましい。例えば、熱処理温度は150℃以上900℃以下、保持時間は1秒以上10時間以下が挙げられる。
<溝付き素線及び被覆帯材を用いる方法>
実施形態のコイル用線材1のうち、線材1の横断面の輪郭と、導体線11の横断面の輪郭とが非相似である形態、具体的には図6の嵌め込み形態などでは、複数の凹部を備える溝付き素線と、磁性部12の原料となる磁性帯材の全周が高抵抗部13の原料となる高抵抗層で覆われた被覆帯材を利用することで製造できる。溝付き素線の各凹部に被覆帯材が嵌め込まれた嵌合中間材に伸線加工などの塑性加工を施すと、長尺なコイル用線材1Fを連続して製造できる。長尺な線材1Fに絶縁被覆15を連続して形成すれば、実施形態のコイル用電線10Fも連続して製造できる上に、長尺材とすることができる。従って、この方法は、線材1Fや電線10Fの工業的な量産に適すると期待される。
実施形態のコイル用電線の製造方法は、上述の溝付き素線と被覆帯材とを用いるものであり、以下の準備工程と、嵌合工程と、加工工程と、被覆工程とを備える。準備工程から加工工程までを行うことで、実施形態6のコイル用線材1Fを製造できる。なお、加工工程後、被覆工程前に、上述の熱処理工程を備えることができる。
(準備工程)強磁性体から構成される磁性帯材と、磁性帯材の全周を覆って強磁性体よりも抵抗率が大きい材料から構成される高抵抗層とを備える被覆帯材を準備する。また、導体素材として、その周方向に並列する複数の凹部を備える溝付き素線を準備する。
(嵌合工程)各凹部に上記被覆帯材を嵌め込んで、上記高抵抗層によって上記各凹部と上記被覆帯材との段差を埋めることで平滑な表面を有する嵌合中間材を作製する。
(加工工程)上記嵌合中間材に伸線加工及び圧延加工の少なくとも一方を施して、加工材を作製する。
(被覆工程)上記加工材の外周に絶縁被覆を形成する。
・準備工程
・・溝付き素線
導体素材の基本的な製造方法は、上述の<複合帯材を用いる方法>を参照するとよい。溝付き素線の製造には、例えば以下の(1),(2)の方法などが利用できる。コイル用線材1Fにおける磁性部12の厚さt12や周長p12、面積割合、高抵抗部13の厚さt13などは、溝付き素線の各凹部の形状、大きさなどに依存する。従って、溝付き素線の各凹部の形状、大きさなどは、所定の磁性部12及び高抵抗部13が得られるように、加工度などを考慮して選択するとよい。
(1)基本的な製造方法によって製造した凹部を有さない素材(丸線など)に、切削加工などによって凹部を形成する。
(2)基本的な製造方法の加工工程において、凹部を形成可能な異形ダイスなどを用いて伸線加工を行う。
溝付き素線には、上述の<複合帯材を用いる方法>で説明した、表面処理や凹凸処理を施すことができる。溝付き素線に表面処理を施した場合、溝付き素線に備える無機被覆層と後述の被覆帯材に備える高抵抗層とに基づいて、最終的に多層の介在絶縁層14(高抵抗部13の一部から構成される場合を含む)を備えるコイル用線材1Fが得られる。
・・被覆帯材
被覆帯材における磁性帯材が最終的に磁性部12を構成し、高抵抗層が最終的に高抵抗部13を構成する。所望の組成の磁性部12及び高抵抗部13が得られるように、磁性帯材及び高抵抗層の組成を選択するとよい。この被覆帯材を備える嵌合中間材に塑性加工を施すため、<複合帯材を用いる方法>と同様に、磁性帯材及び高抵抗層の構成材料はいずれも、塑性加工性に優れるもの、又は塑性加工により剥離などし難いものが好ましく、上述のように金属が好ましい。具体的な金属は、上述の磁性部12の組成の項、無機材料の項で列挙したものが挙げられる。
一方、磁性帯材の表面全体に、上述の(A)めっき、(B)熱処理、(C)溶液処理などといった表面処理を施して、無機材料から構成される無機被覆層を高抵抗層とすることができる。無機被覆層は、最終的に高抵抗部13(一部が介在絶縁層14として機能することがある)となるため、所定の組成の高抵抗部13が得られるように表面処理の種類を選択する。表面処理前に上述の前処理を行うことができる。無機被覆層の基本的事項は、上述の<複合帯材を用いる方法>を参照するとよい。
(A)めっき
この製造方法では、特に、磁性帯材を構成する強磁性体よりも抵抗率が大きいめっき層を形成できるように、めっき液の組成などを調整する。
(B)熱処理
この製造方法では、磁性帯材に対して、上述のように酸素元素の含有雰囲気で熱処理を行うことで、磁性帯材の構成金属元素を含む酸化物を形成する。磁性帯材が鉄又は鉄系合金から構成される場合には、鉄酸化物を形成できる。具体的な条件は例えば以下が挙げられる。
(鉄酸化物の形成)熱処理温度130℃以上150℃以下、保持時間30分以上60分以下
又は、鉄酸化物は酸素を含む雰囲気中で高周波焼入れを行うことが挙げられる。
(C)溶液処理
この製造方法では、磁性帯材に対して、上述のように各種の溶液に浸漬することで、磁性帯材の構成元素を含む酸化物や塩などの化合物を形成する。
例えば、リン酸塩皮膜処理(パーカー処理と呼ばれることがある)などの化成処理を利用すれば、鉄や鉄系合金からなる磁性帯材の表面にリン酸鉄などを形成できる。
例えば、四三酸化鉄処理(黒染処理と呼ばれることがある)などのアルカリ処理を利用すれば、鉄や鉄系合金からなる磁性帯材の表面に鉄酸化物を形成できる。
磁性帯材の厚さ、周長、高抵抗層の厚さなどは、加工度などを考慮して、最終的に厚さt12、t13、長さL12、周長p12などが所定の大きさとなるように選択するとよい。
・嵌合工程
溝付き素線の周方向に並列される各凹部に被覆帯材を嵌め込んで嵌合中間材を作製する。各被覆帯材は、上述のように溶接やロウ付けなどを利用して、溝付き素線などに接合することで固定でき、取り扱い易い。上述のように表面処理や凹凸処理を施した溝付き素線を利用できる。
・加工工程
嵌合中間材に、所定の寸法となるまで伸線加工及び圧延加工の少なくとも一方の塑性加工を施す。嵌合中間材が、複数の被覆帯材を溝付き素線に縦添えしたものである場合、加工間(パス間)に適宜捻回を行うことで、螺旋形態のように、磁性部12が導体線11の軸に対して螺旋を描くように配置された形態とすることができる。その他の事項は<複合帯材を用いる方法>の加工工程を参照するとよい。
<その他の方法>
実施形態のコイル用線材1は、磁性部12と高抵抗部13とをそれぞれ独立して形成することで製造できる。代表的には、以下のようにして導体線11の外周に磁性部12を備える磁性層付き導体を作製し、その後に高抵抗部13を形成することができる。以下の製造方法において、導体線11の製造方法、凹凸処理、介在絶縁層14(無機被覆層)を形成する表面処理に関しては、上述の<複合帯材を用いる方法>の準備工程などを参照できる(特に、導体素材を導体線11に読み替えるとよい)。
(α)導体線11の外周に磁性部12を直接形成する方法
(β)導体線11の全周に磁性材料からなる全周磁性層を形成し、全周磁性層の一部を除去して磁性部12を形成する方法
(γ)導体素材の全周に全周磁性層を形成した準備材を用意し、準備材に塑性加工を施した後に全周磁性層の一部を除去して磁性部12を形成する方法
この方法(γ)では、用意した導体素材が最終的に導体線11を構成する。
(δ)介在絶縁層14を備える場合には、導体線11の外周に介在絶縁層14を形成した後、上述の(α)又は(β)によって、磁性部12を形成する方法。
コイル用線材1やコイル用電線10を長尺材とする場合、巻き取られた導体線11などの対象材を用意し、巻き戻した対象材に磁性部12及び高抵抗部13、介在絶縁層14、絶縁被覆15などを形成した後リールに巻き取ると、搬送やコイル形成機への設置などが行い易い。線材1や電線10を短尺材とする場合、リールに巻き取らずにそのままでもコイルの成形に利用できる。この場合、例えば、上述の(α)を利用して線材1を製造するに当たり、短い導体線11を用意すればよい。導体線11が短いことで、所定の領域にのみ磁性部12及び高抵抗部13を容易に、かつ精度よく形成できる。
(磁性部の形成)
・基本形態
上述の基本形態のコイル用線材1を製造する場合、磁性部12の形成には、めっき法や嵌合法などが利用できる。その他、導体線11の外周における所定の領域に、磁性体粉末を押し付けたり、粉体塗装したりする、強磁性体を溶射したりすることなどが考えられる。
・・めっき法
めっき法を利用する場合、例えば、導体線11の外周に磁性部12(めっき層)を形成しない所定の箇所にマスキングを施した後、めっきを行うことで、導体線11の外周に磁性部12を直接形成できる(α)。
又は、導体線11の全周にめっきを施して全周磁性層(めっき層)を形成した後、全周磁性層の所定の箇所についてめっきを除去することで、導体線11の外周に磁性部12を直接形成できる(β)。
又は、導体素材の全周にめっきを施して全周磁性層(めっき層)を形成した準備材を作製し、準備材が所定の寸法になるまで準備材に伸線加工や圧延加工といった塑性加工を施した後、塑性加工後の全周磁性層の所定の箇所についてめっきを除去することで、導体素材を出発材とする導体線11の外周に、全周磁性層を出発材とする磁性部12を形成できる(γ)。
所定の寸法となるまで塑性加工を繰り返し行う場合は、加工間に熱処理を行うことができる。加工後、熱処理を行うこともできる。これらの熱処理によって、加工歪みなどを除去して、その後の加工性(塑性加工性、コイル成形性など)を高められたり、導電性を高められたりする。熱処理条件は、導体線11や磁性部12の材質などに応じて選択するとよい。導体線11を構成する結晶の粗大化を招かない範囲で選択することが好ましく、例えば、熱処理の温度は150℃以上900℃以下、熱処理の時間は1秒以上10時間以下が挙げられる。
めっき層は、Feなどの軟磁性材料を含むめっき液に導体線11を浸漬して電着することによって導体線11の外周や導体素材の外周に形成する。めっき層の組成に応じてめっき液を選択するとよい。例えば、鉄をめっきする場合は、硫酸第1鉄を含有するめっき液、パーマロイをめっきする場合は、硫酸第1鉄及びスルファミン酸ニッケルを含有するめっき液を用いることが挙げられる。めっき層の厚さは、めっき時間や電流密度などを制御することによって調整できる。めっき層をそのまま磁性部12とする場合(α)、(β)には、設定した磁性部12の厚さt12を満たすように、めっき層の厚さを調整するとよい。めっき後に塑性加工を行う場合(γ)には、塑性加工後の磁性部12の厚さt12が所定の厚さとなるように、加工度を考慮して、めっき層の形成厚さを調整するとよい。その他、めっきの前処理として、導体線11表面や導体素材表面を酸洗浄したり、脱脂処理したりすることができる。脱脂処理は、例えば、水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウムなどを含有するアルカリ性の脱脂液に浸漬することによって行う。めっきの除去は、切削工具などを用いて切削や研削を行うとよい。
・・嵌合法
嵌合法を利用する場合、例えば、上述の強磁性体から構成されるシート材や複数の磁性線材を導体線11の外周の所望の領域に配置して溶接やロウ付けなどで接合することで、導体線11の外周に、シート材や複数の磁性線材などを出発材とする磁性部12を形成できる(α)。
シート材は、その厚さが設定した磁性部12の厚さt12を満たし、所定の広さを有するものを用意するとよい。磁性線材は、その線径が設定した磁性部12の厚さt12を満たし、所定の長さ(例えば長さL12)を有するものを用意するとよい。磁性線材の配置は、導体線11の長手方向又は周方向に縦添えすることが挙げられる。周分断形態では、例えば、シート材をC字状などに予め成形した成形材を用意して、導体線11を成形材に挿通配置することで、導体線11の外周に成形材を容易に配置できる。
なお、導体線11の全周や導体素材の全周にシート材や磁性線材などを利用して全周磁性層を形成し、後工程で全周磁性層の所定の箇所について磁性材料を除去すること(β)、(γ)も可能であるが除去作業性に劣る。シート材や磁性線材は塑性加工によって連続して製造されて比較的剛性が高く、部分的な除去を精度よく行うことが困難であるからである。嵌合法を利用する場合には、上述の(α)が好ましいと考えられる。
・・非磁性含有形態
上述の樹脂を含む非磁性含有形態のコイル用線材1を製造する場合、焼付法や押出法が利用できる。焼付法は、磁性体粉末と樹脂とを含む混合物を導体線11の外周に塗布して未固化層を形成した後、樹脂を固化して(硬化して)焼付けることで磁性部12(固化層)を形成できる。押出法は、熱可塑性樹脂に磁性体粉末を含有させて押し出すことによって、磁性部12を形成できる。導体線11の外周に設けられた磁性部12は、樹脂中に磁性体粉末が分散した複合材層である。
焼付法では、導体線11の外周に磁性部12(固化層)を形成しない所定の箇所にマスキングを施した後、部分的に未固化層を形成して焼付けることで、導体線11の外周に磁性部12を直接形成できる(α)。押出法では、押出前の導体線11における上記所定の箇所にマスキングを施したり、特殊形状のダイなどを利用したりするとよい。
焼付法で塗布する混合物(固化後に複合材となる原料)は、樹脂を溶剤に溶解又は分散させ、所定の体積比率で磁性体粉末を混合することで作製できる。導体線11に混合物を塗布した後、樹脂が未固化である状態で導体線11を塗布ダイスに通過させて、混合物の厚さ(塗布量)を調整する。導体線11が通過する塗布ダイスのダイス孔の寸法は、導体線11に塗布した混合物の厚さが通過前よりも通過後の方が薄くなるように設定する。塗布ダイスにはエナメル線の絶縁被覆の形成に利用されているものを利用できる。一般的な塗布ダイスは、ダイス孔の形状が導体線11の断面形状と同じ又は略同じであり、ダイス孔の入口側が広くなるようにテーパ状である。塗布ダイスを通過することで塗布ダイスからの圧力を受け、磁性体粉末を整列できる。例えば、混合物中の磁性体粉末が薄板状であれば、板表面が導体線11の外周面と平行又は実質的に平行するように配列できる。
導体線11を塗布ダイスに通過させる際、ダイス孔の中心軸に対して導体線11の中心軸を一致させると、導体線11の外周にその全周に亘って厚さが均一な層を形成できる。一方、ダイス孔の中心軸に対して導体線11の中心軸を偏心させると、導体線11の外周に、その周方向に厚さが異なる層を形成できる。偏心状態を調整することで、導体線11の周方向の一部に複合材が存在し、他部に複合材が実質的に存在しない周分断形態の磁性部12を形成できる。
焼付条件は、樹脂の材質に応じて適宜設定することができる。例えば、焼付温度は100℃以上500℃以下、焼付時間は1秒以上1時間以下が挙げられる。
複合材の塗布と焼付とは、複合材層の厚さが所定の厚さとなるまで、必要に応じて繰り返し行って、多層構造の複合材層とすることができる。この場合、層ごとに磁性体粉末の材質や含有量を異ならせることができる。
(高抵抗部の形成)
磁性部12がつくる隙間に、磁性部12に含む強磁性体よりも高抵抗な材料を適宜充填し、かつその表面が磁性部12と面一となるように高抵抗部13を形成する(長手分断形態、周分断形態、螺旋形態、格子形態など)。又は、隙間を埋めると共に、磁性部12の外周をも覆うように高抵抗部13を形成する(内包形態)。上記高抵抗な材料を、流動性を有する状態にすることで上記隙間に容易に充填できる。上記材料を充填後、適宜固化する。又は、上記隙間に対応した形状、大きさであって、上記高抵抗な材料から構成される線材などを用意して上記隙間に嵌め込み、適宜な接合材で接合することなどが挙げられる。
[試験例1]
導体線の外周に磁性材料から構成される磁性部を備えるコイル用線材を芯材とし、その外周に絶縁被覆を備えるコイル用電線について、磁性部の仕様を異ならせたものを用意し、外部から磁場を与えたときの損失を調べた。この試験では、市販のシミュレーション解析ソフト(株式会社JSOL、JMAG)を用いて、損失を調べた。
<全ての試料に共通事項>
(コイル用線材、導体線、絶縁被覆)
コイル用線材のサイズを直径2.6mmφで一定とした。
導体線は、無酸素銅(抵抗率:1.7μΩ・cm)から構成される銅丸線とした。
絶縁被覆の厚さは、30μmとした。
<試料No.1−1〜1−4>
試料No.1−1〜1−4のコイル用線材は、導体線と、磁性部及び高抵抗部と、適宜介在絶縁層とを備える試料である(表1の形状では絶縁被覆を省略)。
試料No.1−1は、横断面において一つの円弧状の磁性部及び高抵抗部とを備える周分断形態であり、かつ介在絶縁層を備える。
試料No.1−2は、横断面において一つの円弧状の磁性部及び高抵抗部とを備える螺旋形態であり、介在絶縁層を有していない(図4参照)。
試料No.1−3は、横断面において一つの円弧状の磁性部及び高抵抗部とを備える螺旋形態であり、かつ介在絶縁層を備える。
試料No.1−4は、横断面において二つの円弧状の磁性部と、隣り合う磁性部間を埋める部分と磁性部を覆う外周部分とを有する高抵抗部とを備える内包形態であり、かつ介在絶縁層を備える(図3参照)。
(磁性部)
磁性部は、いずれの試料も、鉄(飽和磁束密度:2T程度、抵抗率:14μΩ・cm)から構成されるものとした。
磁性部の厚さは、試料No.1−1〜1−3では180μm=0.18mmとし、試料No.1−4では、90μm=0.09mmとした。
磁性部の周長p12は、試料No.1−1では中心角が335°の弧の長さに対応し、試料No.1−2,No.1−3では中心角が347.5°の弧の長さに対応する。試料No.1−4は導体線の中心に対して均等な位置に各磁性部を備え、各磁性部の周長p12は、中心角が75°の弧の長さに対応する。
螺旋形態である試料No.1−2,1−3では、磁性部の長さL12(図4参照)を8mmとした。
磁性部の面積割合{(磁性部の断面積)/(導体線の断面積+磁性部の断面積))を表1に示す。括弧内の数値は、コイル用線材に対する磁性部の面積割合(磁性部の断面積)/(コイル用線材の断面積)を示す。この算出において試料No.1−4のコイル用線材の断面積は、高抵抗部のうち磁性部を覆う部分(厚さ90μmの環状部分)を除いた面積とした。
(高抵抗部)
高抵抗部は、いずれの試料も、44質量%のNiを含有する銅基合金(CuNi44、飽和磁束密度:1T未満、抵抗率:49μΩ・cm)から構成されるものとした。
高抵抗部の厚さは、試料No.1−1〜1−3では磁性部の厚さに等しく(180μm)、試料No.1−4では、最大厚さが180μmであり、磁性部を覆う箇所の厚さが90μmである。
高抵抗部の周長p13は、試料No.1−1では中心角が25°の弧の長さに対応する(導体線の幅の30%以下)。試料No.1−2,No.1−3では中心角が12.5°の弧の長さに対応する(導体線の幅の20%未満)。試料No.1−4は高抵抗部のうち、隣り合う磁性部に挟まれる各部分の周長p13は、中心角が75°の弧の長さに対応する(合計周長は導体線の幅よりも長い)。
高抵抗部の面積割合(高抵抗部の断面積)/(コイル用線材の断面積)を表1に示す。
(絶縁介在層)
試料No.1−1,1−3,1−4において、導体線の直上に備える介在絶縁層はいずれも、銅酸化物(CuO、抵抗率:100μΩ・cm、厚さ5μm)から構成されるものとした。
<試料No.1−100,1−200,1−300>
試料No.1−100は、磁性部を備えていない比較試料であり、導体線と絶縁被覆とから構成される。
試料No.1−200は、導体線の外周の全周を覆う全周磁性層を備える試料であり、内側から順に、導体線、全周磁性層、絶縁被覆を備える。
試料No.1−300は、介在絶縁層を備える試料であり、内側から順に、導体線、介在絶縁層、全周磁性層、絶縁被覆を備える。
これらの試料、及び後述する試料No.1−11〜1−15について、全周磁性層(磁性部)の構成材料は試料No.1−1などと同様の鉄(厚さ180μm)とし、介在絶縁層を備える場合、その構成材料は、(樹脂、厚さ30μm)とした。
試料No.1−11は、導体線の外周に、その長手方向に間隔をあけて断続的に形成された複数の部分磁性層(磁性部)を備える長手分断形態のコイル用線材(後述の図9参照)を備える試料であり、内側から順に、導体線、部分磁性層、外側絶縁層(絶縁被覆)を備える。各部分磁性層は、導体線の外形に沿った円筒状、長さL120は1.5mm(≦導体線の幅2.6mm)、隙間130Aの間隔glは0.03mm(30μm、導体線の幅2.6mmの1.5%未満)である。
試料No.1−12は、介在絶縁層を備える長手分断形態のコイル用線材(後述の図11,図13参照)を備える試料であり、内側から順に、導体線、介在絶縁層、部分磁性層(磁性部)、外側絶縁層(絶縁被覆)を備える。各部分磁性層の形状・大きさは試料No.1−11と同様である。
試料No.1−13は、導体線の外周に、その周方向に間隔をあけて形成された一対の部分磁性層(磁性部)を備える周分断形態のコイル用線材(後述の図10参照)を備える試料であり、内側から順に、導体線、部分磁性層、外側絶縁層(絶縁被覆)を備える。各部分磁性層は横断面円弧状であり、周方向に隣り合う二つの部分磁性層間につくられる隙間130Bの間隔gcはそれぞれ0.01mm(10μm)であり、合計間隔gcは0.02mm(20μm、導体線の幅2.6mmの1%未満)である。
試料No.1−14は、介在絶縁層を備える周分断形態のコイル用線材(後述の図12,図14参照)を備える試料であり、内側から順に、導体線、介在絶縁層、部分磁性層(磁性部)、外側絶縁層(絶縁被覆)を備える。各部分磁性層の形状、大きさは試料No.1−13と同様である。
試料No.1−15は、介在絶縁層を備える長手分断+周分断形態のコイル用線材を備える試料であり、内側から順に、導体線、介在絶縁層、部分磁性層(磁性部)、外側絶縁層(絶縁被覆)を備える(類似の構成として後述の図15)。試料No.1−15は、試料No.1−13と同様の一対の横断面円弧状の部分磁性層を備え、この一対の部分磁性層の組を試料No.1−11と同様に、導体線の長手方向に間隔をあけて複数備える。各部分磁性層の長さL120(図9参照)は1.5mm(≦導体線の幅2.6mm)、隙間130Aの間隔glは0.03mm(導体線の幅2.6mmの1.5%未満)、隙間130Bの間隔gcはそれぞれ0.01mmであり、合計間隔gcは0.02mm(導体線の幅2.6mmの1%未満)である。
・損失の測定
図8に示す測定回路を構成し、この測定回路を用いて各試料のコイル用電線の損失を調べた。図8に示す測定回路500は、ギャップ511が形成されたC字状の磁性コア510と、磁性コア510に巻回された1次コイル521及び2次コイル522と、信号発生器531を有するB−Hアナライザ530とを備える。
損失の測定は、次のように行う。
コイル用電線を短く切断した測定試料Sを磁性コア510のギャップ511に挿入する。B−Hアナライザ530の信号発生器531から励磁信号を発生させ、増幅器532を介して1次コイル521に励磁電流iを流し、ギャップ511に交流磁界を発生させる。交流磁界の測定周波数、磁束密度を変えたときに抵抗533に流れる励磁電流iと2次コイル522の両端に生じた誘起電圧Vとを測定して得られる交流抵抗成分から測定系の損失を解析する。
ここでは、全ての試料について、ある交流磁界の測定周波数におけるギャップ511の磁束密度が同じ値になるように1次コイル521の電流を調整したときの各試料の損失(W)を測定した。そして、磁性部を有さない試料No.1−100の損失を基準として、この基準に対する各試料の相対値を求めた。表1〜表3に、この相対値を損失低減率(%)として示す。損失低減率がマイナス(−)であれば、基準よりも損失が低減されていることを示し、損失低減率の絶対値が大きいほど、損失が低減されていることを意味する。
Figure 2016189459
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表1〜表3に示すように、磁性部を備える試料No.1−1〜1−4、No.1−11〜1−15,No.1−200,1−300はいずれも、磁性部を有さない試料No.1−100に比較して、損失が低減されており、低損失であることが分かる。この試験では、試料No.1−1〜1−4、No.1−11〜1−15,No.1−200,1−300はいずれも、試料No.1−100よりも損失を40%程度以上低減できている。この理由は、交流電流の通電によって生じた外部磁界からの磁束が磁性部に集中して流れて導体線に鎖交する磁束を低減でき、導体線に生じ得る渦電流を低減できたため、と考えられる。
磁性部及び高抵抗部を備える試料No.1−2と、全周磁性層を備え、高抵抗部を備えていない試料No.1−200と比較すると、高抵抗部を備える方が損失低減効果を高められることが分かる。この理由は、高抵抗部の具備によって磁性部の面積割合を低減できることで、磁性部自体に生じる渦電流を低減できると共に、磁性部に生じた渦電流が導体線の周方向に流れて、大きなループを形成することを抑制できたため、と考えられる。
上記試料No.1−2と、磁性部が周方向に分断されている試料No.1−13とを比較すると、試料No.1−2の方が磁性部の面積割合が少ないものの、試料No.1−13と同程度の損失低減効果を有するといえる。また、試料No.1−2は、高抵抗部を備えることで、平滑な外表面を有しており、絶縁被覆が形成し易いといえる。更に、磁性部と高抵抗部とが導体線の周方向に並ぶという試料No.1−2は、例えば、上述の製造方法の項で説明したように、エッジレイ型クラッド材などを利用することで容易に製造できる上に、長尺なコイル用線材を連続して製造可能である。また、磁性部の低減によって曲げ易く、コイル成形性にも優れると期待される。このように試料No.1−2は、製造性に優れて工業的量産も行い易く、コイルも形成し易い点で、試料No.1−13よりも利用し易いと期待される。
介在絶縁層を備えると、損失低減効果が極めて高くなることが分かる。詳しくは、試料No.1−1,1−3,1−4と、全周磁性層及び介在絶縁層を備える試料No.1−300とを比較する。試料No.1−300は、上述の試料No.1−200と同程度以下の損失低減効果であるが、試料No.1−1,1−3は、損失低減効果が極めて高く、試料No.1−300の2倍程度以上の損失低減効果を奏する。また、試料No.1−1,1−3は、試料No.1−100よりも損失を80%以上低減できている。試料No.1−4は、試料No.1−300の1.5倍以上の損失低減効果を奏し、試料No.1−100よりも損失を60%以上低減できている。試料No.1−1,1−3,1−4は、介在絶縁層を備えていない試料No.1−2と比較しても損失低減効果が高い。試料No.1−1,1−3の損失がより一層低い理由として、上述のように磁性部自体に生じる渦電流を低減できたこと、高抵抗部によって磁性部に生じた渦電流が大きなループをつくり難いことに加えて、磁性部に生じた渦電流が導体線に流れることを抑制できたため、と考えられる。
なお、試料No.1−4の損失低減効果が試料No.1−1よりも低くなった理由は、磁性部の面積割合が少ないため、と考えられる。
その他、この試験からは、以下のことがいえる。
長手分断形態の試料No.1−11は、全周磁性層を備える試料No.1−200とを比較すると同程度の損失低減効果を有しつつ、コイル成形性に優れると期待される。周分断形態の試料No.1−13は、全周磁性層を備える試料No.1−200とを比較すると、損失低減効果により優れる上に、コイル成形性に優れると期待される。試料No.1−11,1−13の損失が低い理由として、磁性材料が導体線の長手方向又は周方向に分断されて存在することで、部分磁性層(磁性部)自体に生じ得る渦電流を低減できたため、と考えられる。
長手分断形態の試料No.1−11と全周磁性層及び介在絶縁層を備える試料No.1−300とは、損失低減効果が40%程度であるが、試料No.1−11と試料No.1−300とを合わせた構成である試料No.1−12は、損失低減効果が極めて高く、試料No.1−100よりも損失を80%以上低減できている。周分断形態の試料No.1−13と試料No.1−300とを合わせた構成である試料No.1−14も損失低減効果が極めて高く、試料No.1−100よりも損失を80%以上低減できている。試料No.1−12,1−14の損失がより一層低い理由として、上述のように部分磁性層(磁性部)自体に生じ得る渦電流を低減できたことに加えて、部分磁性層に生じた渦電流が導体線に流れることを抑制できたため、と考えられる。
長手分断形態と周分断形態とを組み合わせると、損失低減効果が極めて高くなることが分かる。詳しくは、長手分断形態の試料No.1−11と周分断形態の試料No.1−13とは、損失低減効果が40%〜47%程度であるが、試料No.1−11と試料No.1−13とを合わせた構成である試料No.1−15は、試料No.1−100よりも損失を80%以上低減できている。試料No.1−15の損失がより一層低い理由として、上述のように部分磁性層(磁性部)自体における渦電流の発生領域を狭い範囲に制限できたことで、部分磁性層自体に生じ得る渦電流をより一層低減できたため、と考えられる。この試験では、試料No.1−12,1−15の結果から、介在絶縁層を備える長手分断形態は、渦電流の低減効果が大きく、非常に低損失なコイルを提供できると考えられる。
この試験から、コイル用線材やコイル用電線として、導体線の外周に磁性部を備える場合に、導体線の長手方向及び周方向の少なくとも一方について、磁性部が分断されて導体線の外周の一部を覆っていれば、低損失であることが示された。また、磁性部を分断する箇所に磁性部に含む強磁性体よりも抵抗率が大きい高抵抗部を備えて、平滑な外表面を有するコイル用線材とすれば、低損失でありながら、絶縁被覆を形成し易く、製造性にも優れることが示された。
本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
[付記]
外部磁界が印加された際に、導体線に鎖交する磁束を低減できる上に、磁性部自体に生じる渦電流をも低減して、渦電流に起因する損失を低減できるコイル用線材、コイル用電線として、以下の構成が挙げられる。このコイル用線材及びコイル用電線は、磁性部が存在する被覆領域と、磁性部が存在しない露出領域とを備えるため、露出領域が曲げの容易性を高める領域として機能できる。従って、このコイル用線材及びコイル用電線は、鉄や鉄基合金などといった比較的高剛性な磁性材料から構成される磁性部を備える場合であっても曲げ易く、コイル成形性に優れると期待される。
(付記1)
導体線と、
前記導体線の外周のうち、長手方向の一部及び周方向の一部の少なくとも一方を覆う部分磁性層とを備えるコイル用線材。
(付記2)
前記導体線の直上に形成された介在絶縁層を備え、
前記部分磁性層を前記介在絶縁層の外周に備える付記1に記載のコイル用線材。
(付記3)
前記部分磁性層は、前記導体線の長手方向に間隔をあけて断続的に形成されており、各部分磁性層における前記導体線の長手方向に沿った長さが前記導体線の幅よりも小さい付記1又は付記2に記載のコイル用線材。
(付記4)
前記部分磁性層は、前記導体線の周方向に間隔をあけて形成されている付記1から付記3のいずれか1つに記載のコイル用線材。
(付記5)
付記1から付記4のいずれか1つに記載のコイル用線材と、
前記コイル用線材の外周に形成された外側絶縁層とを備えるコイル用電線。
上記のコイル用線材100は、図9〜図15に示すように導体線110の外周に対して、部分的に磁性層を備える。代表的には、導体線110の外周のうち、長手方向の一部が部分磁性層120によって覆われ、他部が環状に露出された長手分断形態(図9)、周方向の一部が部分磁性層120によって覆われ、他部が長手方向に沿って線状に露出された周分断形態(図10)、長手方向の一部かつ周方向の一部が部分磁性層120よって覆われ、他部が格子状に露出された格子形態(図15)をとる。導体線110における露出箇所は、所定の大きさの隙間130である。その他、図3に示す螺旋状の高抵抗部13に代えて、螺旋状の隙間を備える螺旋形態(図示せず)などが挙げられる。コイル用電線1000は、コイル用線材100の外周に外側絶縁層150を備える(図13など)。
長手分断形態のコイル用線材100Aは、図9に示すように導体線110の長手方向にみると、導体線110の周方向に連続する環状又は筒状の部分磁性層120Aを少なくとも一つ備え、好ましくは複数備える。図9は、複数の部分磁性層120Aを備え、導体線110の長手方向に隣り合う部分磁性層120A,120A間に隙間130Aを備える例を示す。隙間130Aから導体線110の外周面が露出する。線材100Aは、導体線110と部分磁性層120Aとを有する横断面(図9に示す端面に等しい)と、部分磁性層120Aを有さずに導体線110のみの横断面とを含む。
周分断形態のコイル用線材100Bは、図10に示すように導体線110の周方向にみると、導体線110の長手方向に連続するC字状又はU字状、樋状、]状、L字状などの部分磁性層120Bを一つ、又は複数備える。図10は、横断面円弧状(樋状)の部分磁性層120Bを二つ備え、部分磁性層120B,120B間にそれぞれ、隙間130B,130Bを備える例を示す。これらの二つの隙間130B,130Bから導体線110の外周面が導体線110の全長に亘って露出する。この線材100Bは、任意にとった横断面の形状が等しい。
格子形態のコイル用線材100Eは、図15に示すように、複数の部分磁性層120Eを備える。また、線材100Eは、導体線110の長手方向に隣り合う部分磁性層120E,120E間に隙間130Aを有する共に、C字状の部分磁性層120Eの開口部に1つの隙間130Eを有する。図15は、このコイル用線材100Eの外周に外側絶縁層150を備えるコイル用電線1000Eを示す。
図11は、導体線110と、筒状の部分磁性層120Aとの間に介在絶縁層140を備えるコイル用線材100Cを示す。
図12は、導体線110と、樋状の部分磁性層120Bとの間に介在絶縁層140を備えるコイル用線材100Dを示す。
図13は、図11に示すコイル用線材100Cの外周に外側絶縁層150を備えるコイル用電線1000Cを示す。
図14は、図12に示すコイル用線材100Dの外周に外側絶縁層150を備えるコイル用電線1000Dを示す。
導体線110の詳細は導体線11の項(幅W110は幅W11に読み替える)、部分磁性層120の詳細は磁性部12の項(厚さt120は厚さt12に、長さL120は長さL12に、隙間130Aの大きさglは高抵抗部13の長さL13に、隙間130Bの大きさgcは高抵抗部13の周長p13にそれぞれ読み替える)、介在絶縁層140は介在絶縁層14の項(厚さt140は厚さt14に読み替える)、外側絶縁層150は絶縁被覆15の項を参照するとよい。部分磁性層120を多層に備える場合に部分磁性層120の外周に設ける絶縁層の厚さ(部分磁性層120がつくる隙間に充填される部分を除く。外側絶縁層150についても同様)は、介在絶縁層14の厚さt14の項を参照するとよい。
コイル用線材100の製造方法には、上述の<その他の方法>(磁性部の形成)が利用できる。コイル用電線1000は、コイル用線材100の外周に外側絶縁層150を形成することで製造できる。
・隙間への充填材
コイル用線材100は、このままでもコイルの形成に利用できる。この場合、線材100の隙間130はそのままでもよいが、隙間130に上述の介在絶縁層140、外側絶縁層150、その他、部分磁性層120を多層に備える場合に部分磁性層120の外周に備える絶縁層を構成する絶縁性樹脂などを充填すると、隙間130から導体線110が露出せず、導体線110の酸化劣化などを防止できる。また、隙間130に絶縁性樹脂などが充填されることで、部分磁性層120間で渦電流が流れることを防止できる。更に、線材100を曲げると、隙間130内の樹脂が弾性変形して、曲げ応力を小さくできて曲げ易いと期待される。線材100の外周に外側絶縁層150を備える場合や絶縁層を介して部分磁性層120を多層に備える場合などには、隙間130に外側絶縁層150の構成材料が充填されるため、別途、充填する必要が無い場合がある。
本発明のコイル用線材及び本発明のコイル用電線は、モータ、リアクトル、トランス(変圧器)、IHヒータ(誘導加熱装置)などに備えるコイルに好適に利用できる。本発明のコイル用電線の製造方法は、コイル用線材、コイル用電線の製造に利用できる。
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G コイル用線材
10,10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G コイル用電線
11 導体線 12 磁性部 13 高抵抗部 14 介在絶縁層
15 絶縁被覆
500 測定回路 S 測定試料(コイル用電線)
510 磁性コア 511 ギャップ 521 1次コイル 522 2次コイル
530 B−Hアナライザ 531 信号発生器 532 増幅器 533 抵抗
100,100A,100B,100C,100D,100E コイル用線材
1000,1000C,1000D,1000E コイル用電線
110 導体線
120,120A,120B 部分磁性層
130,130A,130B,130E 隙間
140 介在絶縁層
150 外側絶縁層

Claims (10)

  1. 導体線と、
    強磁性体を含む材料から構成され、前記導体線の外周に配置される磁性部と、
    前記強磁性体よりも抵抗率が大きい材料から構成される高抵抗部とを備え、
    前記磁性部は、前記導体線の外周面を部分的に露出させることで、前記導体線の長手方向及び周方向の少なくとも一方の方向に分断され、
    前記高抵抗部は、前記導体線の露出箇所と前記磁性部との段差を埋めることで平滑な最外面を形成するコイル用線材。
  2. 前記導体線の直上と前記磁性部間に介在され、導体線よりも抵抗率が大きい材料から構成される介在絶縁層を備える請求項1に記載のコイル用線材。
  3. 前記磁性部は、前記露出箇所が螺旋状となるように設けられている請求項1又は請求項2に記載のコイル用線材。
  4. 前記磁性部は、前記導体線の長手方向に間隔をあけて断続的に配置されており、各磁性部における前記導体線の長手方向に沿った長さが前記導体線の幅よりも小さい請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のコイル用線材。
  5. 前記磁性部は、前記導体線の周方向に間隔をあけて配置されている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のコイル用線材。
  6. 前記導体線は、前記導体線の周方向に並列する複数の凹部を備え、
    前記磁性部は、各凹部に配置される帯状体であり、
    前記高抵抗部は、各磁性部の全周を覆っており、各凹部と前記磁性部間の隙間をなくすように各凹部に配置されている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のコイル用線材。
  7. 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のコイル用線材と、
    前記コイル用線材の外周に形成された絶縁被覆とを備えるコイル用電線。
  8. 強磁性体から構成される磁性帯部と前記強磁性体よりも抵抗率が大きい材料から構成される高抵抗帯部とが段差なく配置されて、平滑な表面を有する複合帯材と、導体素材とを準備する準備工程と、
    前記導体素材の全周を前記複合帯材で覆った複合中間材を作製する複合工程と、
    前記複合中間材に伸線加工及び圧延加工の少なくとも一方を施して、加工材を作製する加工工程と、
    前記加工材の外周に絶縁被覆を形成する被覆工程とを備えるコイル用電線の製造方法。
  9. 前記複合帯材は、前記高抵抗帯部の一部に前記磁性帯部が埋め込まれたものであり、
    前記複合工程では、前記導体素材に対して前記磁性帯部を向けて前記複合帯材を巻回することで前記導体素材の外周を覆う請求項8に記載のコイル用電線の製造方法。
  10. 強磁性体から構成される磁性帯材と、前記磁性帯材の全周を覆って、前記強磁性体よりも抵抗率が大きい材料から構成される高抵抗層とを備える被覆帯材と、導体素材として、その周方向に並列する複数の凹部を備える溝付き素線とを準備する準備工程と、
    各凹部に前記被覆帯材を嵌め込んで、前記高抵抗層によって前記各凹部と前記被覆帯材との段差を埋めることで平滑な表面を有する嵌合中間材を作製する嵌合工程と、
    前記嵌合中間材に伸線加工及び圧延加工の少なくとも一方を施して、加工材を作製する加工工程と、
    前記加工材の外周に絶縁被覆を形成する被覆工程とを備えるコイル用電線の製造方法。
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