JP2016189375A - 磁気抵抗効果素子 - Google Patents

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淳 志村
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Takumi Aoki
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Abstract

【課題】高い発振出力が得られ、かつ、高Q値の発振が得られる磁気抵抗効果素子を提供する。【解決手段】磁気抵抗効果素子100は、第1の磁性層4と、第2の磁性層2と、第1の磁性層4と第2の磁性層2とを電気的に接続する少なくともひとつの導電部32及び絶縁部31を有するスペーサ層3と、を有する。第1の磁性層4と第2の磁性層2の少なくともどちらか一方は、その中を流れる電流によってその磁化が振動する磁化振動層であり、スペーサ層3は、第1の磁性層4と第2の磁性層2との間に配置され、スペーサ層3は、外縁部からの幅が第1の磁性層4と第2の磁性層2の交換長の最大長である外側領域と、その内側の内側領域34の2つに分けられ、外側領域の膜面に平行な断面における導電部32の合計面積は、内側領域の膜面に平行な断面における導電部32の合計面積よりも小さい。【選択図】図1

Description

本発明は、磁気抵抗効果素子に関する。
磁気抵抗効果素子に電流を印加すると、スピン偏極した電流によって磁化の回転を引き起こし、素子抵抗が高周波で変化することが知られている。これは発振の現象であり、従来の半導体を用いなくても金属を基本とした素子でも高周波発振をすることが可能である(非特許文献1参照)。
逆に、高周波電流を磁気抵抗効果素子に通電すると、磁気抵抗効果素子の強磁性状態に対応して直流電流が生じるスピンダイオード効果も知られている。磁気抵抗効果素子を用いた高周波発振素子では、磁化自由層の強磁性共鳴周波数に対応した数GHzの発振・検波が一般的である。
特許文献1には、安定した発振動作を保つために、CCP−CPP(Current−Confined−Path CPP)発振素子が提案されている。このCCP−CPP発振素子では、局所的な高い電流密度により効率的に発振を生じさせることを可能にしている。また、電流密度の高い領域が局所化されているため磁化反転を起こしにくくなり、動作安定性も可能にしている。
特許第4886268号
S. I. Kiselev et al., Nature, 425, 308 (2003)
しかし、これらは実用的なデバイスとしての動作を確保するのが困難であり、その理由は、発振信号の出力が極端に小さいこと、および発振信号の発振純度が悪いことである。
特許文献1に記載の手法では、積層方向に電流を流した場合、電流によって磁化が振動する磁性層の側面に近い外縁部側の領域では、外部磁界が印加されても、その領域内における磁気モーメントの平行性が保たれず純度の高い発振(高Q値の発振)が得られずに、高い発振出力が得られないことが問題となる。
本発明は、かかる課題を解決すべくなされたものであり、高い発振出力が得られ、かつ高Q値の発振が得られる磁気抵抗効果素子を提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明に係る磁気抵抗効果素子は、第1の磁性層と、第2の磁性層と、前記第1の磁性層と前記第2の磁性層とを電気的に接続する少なくともひとつの導電部および絶縁部を有するスペーサ層と、を有し、前記第1の磁性層と前記第2の磁性層の少なくともどちらか一方は、その中を流れる電流によってその磁化が振動する磁化振動層であり、前記スペーサ層は、前記第1の磁性層と前記第2の磁性層との間に配置され、前記スペーサ層は、外縁部からの幅が前記第1の磁性層と前記第2の磁性層の交換長の最大長である外側領域と、その内側の内側領域の2つに分けられ、前記外側領域の膜面に平行な断面における前記導電部の合計面積は、前記内側領域の膜面に平行な断面における前記導電部の合計面積よりも小さいことを第1の特徴とする。
磁気抵抗効果素子における磁性層は、静磁エネルギーを減らそうとすることで磁気モーメントの平行性が失われる外側の領域(磁性層の外縁部側の領域)と、外部磁界によって磁気モーメントの平行性が保たれる内側の領域とに分けられるが、その2つの領域の境界は交換長によって定義される。第1の磁性層および第2の磁性層の交換長は、それぞれの磁性層に印加される外部磁界が無い場合に最も長くなる。従って、第1の磁性層と第2の磁性層の交換長の最大長は、それぞれの磁性層に印加される外部磁界が無い場合の第1の磁性層の交換長と第2の磁性層の交換長のうちの大きい方のことである。
この特徴の磁気抵抗効果素子によれば、スペーサ層に導電部の合計面積が小さい外側領域を設けることによって、第1の磁性層と第2の磁性層の磁気モーメントの平行性が失われる領域には電流が流れ込みにくくなるように制御することが可能となる。その結果、一方向にスピン偏極された伝導電子によるスピン偏極電流が多く発生し、さらにそのスピン偏極電流の多くが磁化振動層の磁気モーメントの平行性が保たれる領域に流れ、磁化振動層の磁化の一貫性のある歳差運動を生み出すことができる。その結果、高い発振出力が得られ、かつ高Q値の発振が得られる磁気抵抗効果素子を提供できる。
さらに、本発明に係る磁気抵抗効果素子は、前記スペーサ層の膜面に平行な断面における前記導電部の合計面積のうち、前記外側領域の前記導電部の合計面積が占める割合は10%以下であることを第2の特徴とする。
この磁気抵抗効果素子によれば、第1の磁性層と第2の磁性層の磁気モーメントの平行性が失われる領域には電流がより流れ込みにくくなるように制御することが可能となる。したがって、より高い発振出力が得られ、より高Q値の発振が得られる磁気抵抗効果素子を提供できる。
さらに、本発明に係る磁気抵抗効果素子は、前記割合は0%であることを第3の特徴とする。
この磁気抵抗効果素子によれば、第1の磁性層と第2の磁性層の磁気モーメントの平行性が失われる領域には電流がほとんど流れなくなるように制御することが可能となる。したがって、さらに高い発振出力が得られ、さらに高Q値の発振が得られる磁気抵抗効果素子を提供できる。
さらに、本発明に係る磁気抵抗効果素子は、前記第1の磁性層と前記第2の磁性層のどちらか一方は磁化方向が実質的に一方向に固定されていることを第4の特徴とする。
この磁気抵抗効果素子によれば、磁化方向が実質的に一方向に固定された磁性層の局在スピンにスピン偏極された伝導電子により、磁化振動層の磁化はスピントルクを受け、磁化振動層の磁化の一貫性のある歳差運動が生じやすくなる。その結果、より高い発振出力が得られ、より高Q値の発振が得られる磁気抵抗効果素子を提供できる。
また、本発明に係る磁気抵抗効果素子は、第1の磁性層と、スペーサ層と、第2の磁性層と、隣接する上下の層を電気的に接続する少なくともひとつの導電部および絶縁部を有する電流狭窄層と、を有し、前記第1の磁性層と前記第2の磁性層の少なくともどちらか一方は、その中を流れる電流によって磁化が振動する磁化振動層であり、前記スペーサ層は、前記第1の磁性層と前記第2の磁性層との間に配置され、前記電流狭窄層は、外縁部からの幅が前記第1の磁性層と前記第2の磁性層の交換長の最大長である外側領域と、その内側の内側領域の2つに分けられ、前記外側領域の膜面に平行な断面における前記導電部の合計面積は、前記内側領域の膜面に平行な断面における前記導電部の合計面積よりも小さいことを第5の特徴とする。
この特徴の磁気抵抗効果素子によれば、電流狭窄層に導電部の合計面積が小さい外側領域を設けることによって、第1の磁性層と第2の磁性層の磁気モーメントの平行性が失われる領域には電流が流れ込みにくくなるように制御することが可能となる。その結果、一方向にスピン偏極された伝導電子によるスピン偏極電流が多く発生し、さらにそのスピン偏極電流の多くが磁化振動層の磁気モーメントの平行性が保たれる領域に流れ、磁化振動層の磁化の一貫性のある歳差運動を生み出すことができる。その結果、高い発振出力が得られ、かつ高Q値の発振が得られる磁気抵抗効果素子を提供できる。
さらに、本発明に係る磁気抵抗効果素子は、前記電流狭窄層の膜面に平行な断面における前記導電部の合計面積のうち、前記外側領域の前記導電部の合計面積が占める割合は10%以下であることを第6の特徴とする。
この磁気抵抗効果素子によれば、第1の磁性層と第2の磁性層の磁気モーメントの平行性が失われる領域には電流がより流れ込みにくくなるように制御することが可能となる。したがって、より高い発振出力が得られ、より高Q値の発振が得られる磁気抵抗効果素子を提供できる。
さらに、本発明に係る磁気抵抗効果素子は、前記割合は0%であることを第7の特徴とする。
この特徴の磁気抵抗効果素子によれば、第1の磁性層と第2の磁性層の磁気モーメントの平行性が失われる領域には電流がほとんど流れなくなるように制御することが可能となる。したがって、さらに高い発振出力が得られ、さらに高Q値の発振が得られる磁気抵抗効果素子を提供できる。
さらに、本発明に係る磁気抵抗効果素子は、前記第1の磁性層と前記第2の磁性層のどちらか一方は、磁化方向が実質的に一方向に固定されていることを第8の特徴とする。
この磁気抵抗効果素子によれば、磁化方向が実質的に一方向に固定された磁性層の局在スピンにスピン偏極された伝導電子により、磁化振動層の磁化はスピントルクを受け、磁化振動層の磁化の一貫性のある歳差運動が生じやすくなる。その結果より高い発振出力が得られ、より高Q値の発振が得られる磁気抵抗効果素子を提供できる。
本発明によれば、高い発振出力が得られ、かつ高Q値の発振が得られる磁気抵抗効果素子を提供できる。
実施形態1の磁気抵抗効果素子の構成例を示す膜面に垂直に切断した断面を示す模式図である。 実施形態1の磁気抵抗効果素子においてスペーサ層を膜面に平行に切断した断面を示す模式図である。 実施形態1の他の例の磁気抵抗効果素子においてスペーサ層を膜面に平行に切断した断面を示す模式図である。 実施形態1のさらに他の例の磁気抵抗効果素子の構成例を示す膜面に垂直に切断した断面を示す模式図である。 磁気抵抗効果素子の磁性層において磁気モーメントの平行性が保たれている領域を示す模式図である。 実施形態2の磁気抵抗効果素子の構成例を示す膜面に垂直に切断した断面を示す模式図である。 実施形態3の磁気抵抗効果素子の構成例を示す膜面に垂直に切断した断面を示す模式図である。 実施形態3の磁気抵抗効果素子において電流狭窄層を膜面に平行に切断した断面を示す模式図である。 実施形態3の他の例の磁気抵抗効果素子において電流狭窄層を膜面に平行に切断した断面を示す模式図である。 実施例および比較例における、外側領域の導電部の面積が占める割合X(%)と出力された信号の半値幅との関係を示す図である。 実施例および比較例における、外側領域の導電部の面積が占める割合X(%)と出力された信号のQ値との関係を示す図である。 実施例および比較例における、外側領域の導電部の面積が占める割合X(%)と出力された信号の発振出力との関係を示す図である。
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、形態が本発明の技術的思想を有するものである限り、本発明の範囲に含まれる。各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせなどは一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
(実施形態1)
まず、実施形態1の磁気抵抗効果素子100の構成例について、図面を参照しつつ説明を行う。図1は、磁気抵抗効果素子100の構成例を示す膜面に垂直に切断した断面を示す模式図である。図1に示すように、磁気抵抗効果素子100は、磁化方向が実質的に一方向に固定されている第1の磁性層4と、その中を流れる電流によって磁化が振動する磁化振動層である第2の磁性層2と、第1の磁性層4と第2の磁性層2とを電気的に接続する少なくともひとつの導電部32および絶縁部31を有するスペーサ層3と、を有している。スペーサ層3は、第1の磁性層4と第2の磁性層2との間に配置されている。磁気抵抗効果素子100は、磁気抵抗効果素子100の近傍に設置された磁界印加機構(図示せず)により外部磁界が印加される。
図2Aはスペーサ層3の膜面に平行な断面を示す模式図である。図2Aに示すようにスペーサ層3は、外縁部からの幅が第1の磁性層4と第2の磁性層2の交換長の最大長である外側領域33と、その内側の内側領域34の2つに分けられる。第1の磁性層4および第2の磁性層2の交換長は、それぞれの磁性層に印加される外部磁界が無い場合に最も長くなる。従って、第1の磁性層4と第2の磁性層2の交換長の最大長は、それぞれの磁性層に印加される外部磁界が無い場合の第1の磁性層4の交換長と第2の磁性層2の交換長のうちの大きい方のことである。磁気抵抗効果素子100では、それぞれの磁性層に印加される外部磁界が無い場合に、第1の磁性層4の交換長が第2の磁性層2の交換長よりも小さくなっている。したがって、磁気抵抗効果素子100の外側領域33のスペーサ層3の外縁部からの幅は、第2の磁性層2に印加される外部磁界が無い場合の第2の磁性層2の交換長Lex2となっている。外側領域33の膜面に平行な断面における全ての導電部32の合計面積は、内側領域34の膜面に平行な断面における全ての導電部32の合計面積よりも小さくなっている。また、膜面に平行な断面における、外側領域33の導電部32の合計面積の外側領域33の面積に対する比率は、内側領域34の導電部32の合計面積の内側領域34の面積に対する比率よりも小さくなっている。
より具体的には、実施形態1の磁気抵抗効果素子100は、図1のように、上部電極1、キャップ層7、第2の磁性層2、スペーサ層3、第1の磁性層4、非磁性層8、第3の磁性層9、反強磁性層10、シード層11、バッファ層12および下部電極5がこの順に配置されており、キャップ層7、第2の磁性層2、スペーサ層3、第1の磁性層4、非磁性層8、第3の磁性層9、反強磁性層10、シード層11およびバッファ層12の各層および上部電極1と下部電極5の一部の周縁部を囲むように絶縁体6が配置されている。
上部電極1および下部電極5の間に電流が流され、磁気抵抗効果素子100を構成する各層の面に対して垂直な方向(積層方向)に電流が流される。磁気抵抗効果素子100では、上部電極1から下部電極5の方向(第2の磁性層2から第1の磁性層4の方向)に電流が流される。
上部電極1および下部電極5は、磁気抵抗効果を担う第1の磁性層4、スペーサ層3および第2の磁性層2の3層に電流を流す役割を有している。上部電極1および下部電極5の材料は非磁性かつ導電性を有したものであればよく、例えばPt、Au、CuまたはAlなどを用いることができる。上部電極1および下部電極5は、例えばスパッタリング装置によって作製され、膜厚は5nm〜500nmであることが望ましい。
第1の磁性層4、スペーサ層3および第2の磁性層2の各層は、例えばスパッタリング装置を用いて成膜する。スパッタリング装置としては、複数の物理蒸着(PVD:Physical Vapor Deposition)チャンバと、酸化チャンバとを有する装置が好ましい。複数のPVDチャンバのうちの少なくとも一つは同時スパッタリングが可能であることが好ましい。スパッタ成膜は、例えば、Arスパッタガスを用いて金属または合金からなるターゲットをスパッタして、超高真空下で基板上に成膜することにより行う。
バッファ層12は、下部電極層5のラフネスを改善するために下部電極5と第1の磁性層4との間に配置される層である。シード層11は、下部電極5と第1の磁性層4との間に配置され、下部電極5の結晶性を遮断することにより、第1の強磁性層4の配向・粒径を制御する機能を持つ。バッファ層12およびシード層11の材料は、例えばTaとNiCrとの膜や、TaとRuとの膜が好ましい。バッファ層12およびシード層11の各膜厚は、例えば2〜6nm程度とすることが好ましい。いずれも膜厚が小さすぎると所望の効果が得られず、大きすぎると磁気抵抗効果に寄与しない寄生抵抗が増加してしまう。
第1の磁性層4は、その磁化方向が実質的に一方向に固定された磁化固定層であり、その中を流れる電流が第1の磁性層4の磁化、すなわち局在スピンによってスピン偏極され、スペーサ層3を介して第2の磁性層2にスピン偏極された伝導電子が注入される際に、角運動量の保存(局在スピンと伝導スピンの相互作用)により第2の磁性層2の磁化にスピントルクを生じさせる効果を与える。具体的には、第1の磁性層4は好適な形態として、反強磁性層10、第3の磁性層9、非磁性層8および第1の磁性層4が順次積層された構成、すなわちシンセティックピンド層を反強磁性層10、第3の磁性層9および非磁性層8とともに構成している。
第1の磁性層4および第3の磁性層9は、例えば、CoまたはFeを含む強磁性材料からなる強磁性層を有して構成される。第1の磁性層4と第3の磁性層9は、非磁性層8を介して反強磁性的に結合し、互いの磁化の方向が逆方向になるように固定されている。
第1の磁性層4および第3の磁性層9は、例えば、CoFe合金、組成の異なるCoFe合金の積層構造またはCoFeB合金とCoFe合金との積層構造により構成されることが好ましい。第1の磁性層4の膜厚は2〜10nm、第3の磁性層9の膜厚は1〜7nm程度とすることが好ましい。第1の磁性層4は、ホイスラー合金を含んでいても良い。
非磁性層8は、例えば、Ru、Rh、Ir、Re、CrおよびZrCuのグループから選ばれた少なくとも1種を含む非磁性材料から構成される。非磁性層8の膜厚は、例えば0.35nm〜1.0nm程度とされる。非磁性層8は、第1の磁性層4の磁化と第3の磁性層9の磁化とを互いに逆方向に固定するために設けられており、膜厚が大きすぎると、非磁性層8を介した第1の磁性層4と第3の磁性層9の磁気結合が弱くなる。
スペーサ層3は、第2の磁性層2と第1の磁性層4の磁化を相互作用させて磁気抵抗効果を得るための役割を有している。また、スペーサ層3は、第1の磁性層4と第2の磁性層2とを電気的に接続する複数の導電部32と、導電部32を取り囲む絶縁部31によって構成されており、電流による電子の流れを導電部32により狭窄することで電流密度の大きい電流を第2の磁性層2に流し、信号を高出力化させる役割を有している。導電部32の材料としてはAl、CuまたはMgなどの導電材料、絶縁部31の材料としてはAl、酸化マグネシウム(MgO)またはSiOなどが望ましい。また、スペーサ層3の膜厚は0.5〜2.5nm程度とすることが望ましい。
絶縁部31に酸化物を用いる場合、非磁性金属を成膜後、自然酸化あるいはIon−Assisted−Oxidation(IAO)処理によって非磁性金属を酸化させて酸化物とすることができる。自然酸化は例えば、IBD装置内で非磁性金属を成膜後、IBD装置内に酸素ガスを流すことにより行う。IAO処理は例えば、IBD装置内に酸素ガスあるいは酸素イオンを非磁性金属に照射すると同時に低エネルギーのArイオンを非磁性金属に照射することにより行う。自然酸化の場合、酸素流量1〜10sccmもしくは酸素分圧1.0×10−3Pa〜5.0×10−1Paの条件下で5sec〜200sec放置することが望ましい。IAO処理の場合、酸素流量を1sccm〜5sccm、処理時間を5sec〜100secとすることが望ましい。
導電部32の直径は0.1nm〜20nmであることが望ましく、隣接する複数の導電部32の間隔は10nm〜100nmであることが望ましい。
内側領域34と外側領域33の導電部32の合計面積が違う二つの領域は、例えば、それぞれ別の酸化処理を成膜された非磁性金属に施すことによって形成される。具体的には、成膜された非磁性金属の内側領域34となる領域以外の最表面をレジストパターンで覆い、内側領域34となる領域のみが露出されている状態で第1の酸化処理を行って内側領域34を形成する。第1の酸化処理後、今度は内側領域34の最表面のみをレジストパターンで覆い、内側領域34以外の部分の第2の酸化処理を行う。このとき、第2の酸化処理条件を第1の酸化処理条件より強い酸化条件にすることにより内側領域34と外側領域33を形成する。非磁性金属が酸化された箇所が絶縁部31となり、酸化されずに金属として残存した箇所が導電部32となる。第2の酸化処理条件を第1の酸化処理条件より強い酸化条件にすることにより、外側領域33における導電部32の合計面積は、内側領域34における導電部32の合計面積よりも小さくなる。
第2の磁性層2は、その中を流れる電流(スピン偏極電流)によって磁化が振動する磁化振動層である。第2の磁性層2は、膜面内方向に磁化容易軸を有する材料を選定する場合、例えば、CoFe、CoFeB、CoFeSi、CoMnGe、CoMnSiまたはCoMnAl等からなる厚さ1〜15nm程度の強磁性体の膜により構成される。この膜に、磁歪調整層として例えばNiFe等からなる厚さ1〜9nm程度の軟磁性膜を付加してもよい。
第2の磁性層2は、膜面法線方向に磁化容易軸を有する材料を選定する場合、例えば、Co、Co/非磁性層積層膜、CoCr系合金、Co多層膜、CoCrPt系合金、FePt系合金、希土類を含むSmCo系合金、TbFeCo合金またはホイスラー合金により構成される。
また、第2の磁性層2とスペーサ層3との間に、高スピン分極材料を挿入しても良い。これによって、高い磁気抵抗変化率を得ることが可能となる。高スピン分極材料としては、CoFe合金またはCoFeB合金が挙げられる。CoFe合金およびCoFeB合金のいずれの膜厚も0.2nm以上1nm以下とすることが好ましい。また、第2の磁性層2の成膜時に膜面垂直方向に一定磁界を印加することにより誘導磁気異方性を導入しても良い。
キャップ層7は、第2の磁性層2の上に積層される。キャップ層7の材料は、CuあるいはRuである。キャップ層7は直下の磁性層を保護する機能を有する。キャップ層7の膜厚は0.5〜10nm程度が好ましい。キャップ層7として、Cu層あるいはRu層の代わりに他の金属層を設けてもよい。キャップ層7の構成は特に限定されず、キャップ効果を発揮できるものであれば他の材料を用いてもよい。
下部電極5の一部からキャップ層7までの積層部分は、レジストパターニング後にイオンビームエッチングにより所望の形状に加工される。エッチング工程後、スパッタリング装置などにより絶縁体6を配置し、有機溶剤などを用いてレジストパターンを除去するリフトオフ工程を行う。リフトオフ工程後、スパッタリング装置などにより上部電極1となる膜を成膜し、フォトリソグラフィーおよびレジスト剥離工程により最終的な上部電極1を形成する。絶縁体6の材料はSiO、Alなどが望ましい。
下部電極の一部から上部電極の一部までの積層部分の積層方向に対して垂直な面の形状は、特に限定されず円でも楕円でも、多角形でもよい。
磁気抵抗効果素子100により、高い発振出力かつ高Q値が得られる理由を、図面を参照しつつ説明をする。図4に、外部磁界Hextが印加されている磁性層において磁気モーメントの平行性が保たれている領域44を示す模式図を示す。マイクロ磁気学に基づいて考えると、無限に細長い強磁性体ではその長手方向に磁化が向いて、磁気モーメントがすべて平行に並んでいる状態が最も安定な状態である。しかし、磁化をもつ強磁性体が有限な形状をもつときにこのような磁気モーメントの分布をとると、その表面に磁極が現れ、静磁エネルギーUmagが増加する。この静磁エネルギーUmagはかなり大きいので、強磁性体内部の磁気モーメントはその分布を変え、静磁エネルギーUmagを減らそうとする。その結果、磁気モーメントの平行性は失われ、交換エネルギーUexと磁気異方性エネルギーUや磁気弾性エネルギーUλが増すことになる。そして安定な磁気モーメントの分布は、式(1)で表されるこれらのエネルギーの総和を極小にするような条件できまる。
U= Umag + Uex + U + Uλ ・・・(1)
有限の形状をもつ磁性層の側面には磁極が現れ、静磁エネルギーUmagが増加するが、この静磁エネルギーUmagを減少させるように、側面に近い外縁部側の領域における磁気モーメントが側面に沿った向きとなる。すなわち、磁性層は、図4に示すように、静磁エネルギーを減らそうとすることで磁気モーメントの平行性が失われる外縁部を含む外側の領域43と、外部磁界によって磁気モーメントの平行性が保たれる内側の領域44とに分けられる。領域43と領域44の境界は、磁性層の交換長によって決まり、磁気モーメントの平行性が失われる外側の領域43の磁性層の外縁部からの幅は磁性層の交換長となる。
磁性層の交換長Lexは、以下の式(2)で表される。
ex = (2A/HM)1/2 ・・・(2)
ここで、A(erg/cm)は、磁性層の交換スティフネス定数である。M(emu/cm)は、磁性層の飽和磁化である。 H(Oe)は、外部磁界と異方性磁界との和である。
図2Aに示すように、磁気抵抗効果素子100において、スペーサ層3は外縁部からの幅が第1の磁性層4と第2の磁性層2の交換長の最大長である外側領域33と、その内側の内側領域34の2つに分けられ、外側領域33の膜面に平行な断面における導電部32の合計面積は、内側領域34の膜面に平行な面における導電部32の合計面積よりも小さくなっている。スペーサ層3の外側領域33が、磁性層における静磁エネルギーを減らそうとすることで磁気モーメントの平行性が失われる領域43に対応し、スペーサ層3の内側領域34が、磁性層における外部磁界によって磁気モーメントの平行性が保たれる領域44に対応する。
磁化固定層である第1の磁性層4における磁気モーメントの平行性が失われている領域43に電流を流した場合、さまざまな向きのスピンを有する伝導電子による電流が発生し、スペーサ層3を介し第2の磁性層2の磁化に不均一なスピントルクを与える。一方で、第1の磁性層4における磁気モーメントの平行性が保たれている領域44に電流を流した場合、一方向にスピン偏極された伝導電子によるスピン偏極電流が多く発生し、スペーサ層3を介し第2の磁性層2の磁化に均一なスピントルクを与える。第1の磁性層4における磁気モーメントの平行性が失われる領域43に対応する外側領域33の膜面に平行な断面における導電部32の合計面積が、第1の磁性層4における磁気モーメントの平行性が保たれる領域44に対応する内側領域34の膜面に平行な断面における導電部32の合計面積よりも小さくなっているため、第1の磁性層4における磁気モーメントの平行性が失われる領域43にスピン電流が流れにくくなる。その結果、一方向にスピン偏極された伝導電子によるスピン偏極電流が多く発生する。
磁化固定層(第1の磁性層4)から磁化振動層(第2の磁性層2)に伝導電子が流れる際に、伝導電子は第1の磁性層4の磁化(局在スピン)によってスピン偏極される。第1の磁性層4の磁化方向にスピン偏極された伝導電子のスピンは第2の磁性層2を通る際に、第2の磁性層2の局在スピンによって第2の磁性層2の磁化方向にスピン偏極され、そのときに角運動量の保存(局在スピンと伝導スピンの相互作用)により第2の磁性層2の磁化にトルクを与える。このときに生じる力がスピントランスファートルクとなる。一方、第2の磁性層2の磁化には、第2の磁性層が受ける有効磁界に起因するダンピングトルクが働く。例えば、第2の磁性層2に第1の磁性層4の磁化方向とは異なる向きの外部磁界を印加しておくことで、スピントランスファートルクの向きとダンピングトルクの向きが異なる向きとなり、このスピントランスファートルクとダンピングトルクがつりあうときに、第2の磁性層2の磁化(磁気モーメント)の持続的な歳差運動が生じる。
磁化振動層である第2の磁性層2における磁気モーメントの平行性が失われている領域43にスピン偏極電流を流した場合、磁気モーメントの歳差運動の一貫性が失われ、磁気モーメントの歳差運動の周期にばらつきがみられ純度の高い発振が得られない。一方で、第2の磁性層2における磁気モーメントの平行性が保たれている領域44にスピン偏極電流を流した場合、一律にそろった磁気モーメントの歳差運動により一貫性のある純度の高い発振が得られる。第2の磁性層2における磁気モーメントの平行性が失われる領域43に対応する外側領域33の膜面に平行な断面における導電部32の合計面積が、第2の磁性層2における磁気モーメントの平行性が保たれる領域44に対応する内側領域34の膜面に平行な断面における導電部32の合計面積よりも小さく形成されているため、第2の磁性層2における磁気モーメントの平行性が失われる領域43にスピン偏極電流が流れ込みにくくなる。その結果、第2の磁性層2における磁気モーメントの平行性が保たれている領域44での磁気モーメントの歳差運動が支配的になり、高い発振出力かつ高Q値の発振が得られる。
第1の磁性層4および第2の磁性層2に外部磁界が印加されると、外部磁界が印加されない場合に比べて各磁性層の交換長は小さくなるので、各磁性層の磁気モーメントの平行性が失われる領域43は小さくなり、各磁性層の磁気モーメントの平行性が保たれる領域44は大きくなる。外側領域33の幅は第1の磁性層4と第2の磁性層2の交換長の最大長であるので、外部磁界が印加される場合であっても、各磁性層の磁気モーメントの平行性が失われる領域43には電流が流れ込みにくくなるようにすることができる。従って、磁化振動層である第2の磁性層2の磁化の一貫性のある歳差運動を生み出すことができ、その結果、高い発振出力かつ高Q値の発振が得られる。
このように、磁気抵抗効果素子100によれば、スペーサ層3に導電部32の合計面積が小さい外側領域33を設けることによって、第1の磁性層4と第2の磁性層2の磁気モーメントの平行性が失われる領域43には電流が流れ込みにくくなるように制御することが可能となる。その結果、一方向にスピン偏極された伝導電子によるスピン偏極電流が多く発生し、さらにそのスピン偏極電流の多くが磁化振動層である第2の磁性層2の磁気モーメントの平行性が保たれる領域44に流れ、磁化振動層である第2の磁性層2の磁化の一貫性のある歳差運動を生み出すことができる。その結果、高い発振出力が得られ、かつ高Q値の発振が得られる磁気抵抗効果素子を提供できる。
第1の磁性層4および第2の磁性層2の磁気モーメントの平行性が失われる領域43には電流がより流れ込みにくくなる効果を得るために、スペーサ層3の膜面に平行な断面における導電部32の合計面積のうち、外側領域33の膜面に平行な断面における導電部32の合計面積が占める割合は10%以下であることが好ましい。
第1の磁性層4および第2の磁性層2の磁気モーメントの平行性が失われる領域43に電流がほとんど流れなくなる効果を得るために、図2Bに示すようにスペーサ層3の膜面に平行な断面における導電部32の合計面積のうち、外側領域33の膜面に平行な面における導電部32の合計面積が占める割合は0%であることがより好ましい。
また、磁気抵抗効果素子100は、第1の磁性層4は磁化方向が実質的に一方向に固定されているので、第1の磁性層4の局在スピンにスピン偏極された伝導電子により、磁化振動層である第2の磁性層2はスピントルクを受け、磁化振動層である第2の磁性層2の磁化の一貫性のある歳差運動が生じやすくなる。その結果、より高い発振出力が得られ、より高Q値の発振が得られる。
なお、磁気抵抗効果素子に対する電流の流れは上部電極1から下部電極5に限定するものではなく、電流を逆方向に流した場合でも効果は得られる。この場合、第2の磁性層2から第1の磁性層4に伝導電子が流れる際に、スペーサ層3と第1の磁性層4の境界にて第1の磁性層4の磁化方向に追従できない、すなわちスピン偏極されない伝導電子のスピンがスピン蓄積効果によって跳ねかえる。その際に、第2の磁性層2にはスペーサ層3から第1の磁性層4の磁化方向と逆方向のスピンが流れることになり、角運動量保存により第2の磁性層2の磁化にトルク(スピントランスファートルク)が与えられる。例えば、第2の磁性層2に第1の磁性層4の磁化方向の反対方向とは異なる向きの外部磁界を印加しておくことで、スピントランスファートルクの向きとダンピングトルクの向きが異なる向きとなり、このスピントランスファートルクとダンピングトルクがつりあうときに、第2の磁性層2の磁化の持続的な歳差運動が生じることとなる。
図1に示す磁気抵抗効果素子100では、第1の磁性層4、非磁性層8、第3の磁性層9および反強磁性層10によりシンセティックピンド層が形成されているが、磁化方向が実質的に一方向に固定されていれば、図3に示す磁気抵抗効果素子101のように、第1の磁性層4の下に反強磁性層10が積層される単純なピンド層構造をとってもよい。また、磁気抵抗効果素子100では、スペーサ層3は複数の導電部32を有しているが、スペーサ層3は少なくとも1つの導電部32を有していれば良い。
なお本発明においては、磁気抵抗効果素子の積層構造は実施形態1の限りではなく、積層の順序を逆にしてもよく、本発明の効果が得られる場合において各層の間に薄い層を配置してもよい。
(実施形態2)
次に、実施形態2の磁気抵抗効果素子200の構成例について、図面を参照しつつ実施形態1の磁気抵抗効果素子100と異なる点について説明を行う。図5は磁気抵抗効果素子200の構成例を示す膜面に垂直に切断した断面を示す模式図である。図1に示す実施形態1に係る磁気抵抗効果素子100との異なる点は、以下の2点である。1点目は、磁気抵抗効果素子100における非磁性層8、第3の磁性層9および反強磁性層10が無く、第1の磁性層4の磁化方向が実質的に一方向に固定されていない点である。2点目は第1の磁性層4の磁化方向が実質的に一方向に固定されていないため、第1の磁性層4と第2の磁性層2の2つの磁性層それぞれに発生する磁気双極子による磁界、すなわちダイポール磁界が、2つの磁性層それぞれに相互作用を及ぼす点である。それ以外の点は実施形態1の磁気抵抗効果素子100と同様である。
より具体的には、上部電極1、キャップ層7、第2の磁性層2、スペーサ層3、第1の磁性層4、シード層11、バッファ層12および下部電極5がこの順に配置されており、キャップ層7、第2の磁性層2、スペーサ層3、第1の磁性層4、シード層11およびバッファ層12の各層および上部電極1と下部電極5の一部の周縁部を囲むように絶縁体6が配置されている。第1の磁性層4の膜厚は第2の磁性層2の膜厚より厚く、厚さ4〜40nm程度である。第2の磁性層2の膜厚は第1の磁性層4の膜厚より薄く、厚さ1〜20nm程度である。
磁気抵抗効果素子200においては、第1の磁性層4の磁化方向と第2の磁性層2の磁化方向が反平行状態になっている。電流が上部電極1から下部電極5の方向に流れる場合、すなわち電流が第2の磁性層2から第1の磁性層4の方向に流れ、伝導電子が第1の磁性層4から第2の磁性層2の方向に流れる場合を想定する。その場合、伝導電子が第1の磁性層4の磁化、すなわち局在スピンによってスピン偏極され、スペーサ層3を介して第2の磁性層2にスピン偏極された伝導電子が注入される際に角運動量の保存(局在スピンと伝導スピンの相互作用)により第2の磁性層2の磁化にスピントルクが与えられる。
第1の磁性層4における磁気モーメントの平行性が失われている領域43に電流を流した場合、さまざまな向きのスピンを有する伝導電子による電流が発生し、スペーサ層3を介し第2の磁性層2の磁化に不均一なスピントルクを与える。一方で、第1の磁性層4における磁気モーメントの平行性が保たれている領域44に電流を流した場合、一方向にスピン偏極された伝導電子によるスピン偏極電流が多く発生し、スペーサ層3を介し第2の磁性層2の磁化に均一なスピントルクを与える。第1の磁性層4における磁気モーメントの平行性が失われる領域43に対応する外側領域33の膜面に平行な断面における導電部32の合計面積が、第1の磁性層4における磁気モーメントの平行性が保たれる領域44に対応する内側領域34の膜面に平行な断面における導電部32の合計面積よりも小さくなっているため、第1の磁性層4における磁気モーメントの平行性が失われる領域43にスピン電流が流れにくくなる。その結果、一方向にスピン偏極された伝導電子によるスピン偏極電流が多く発生する。このスピン偏極電流が与えるスピントルクにより、実施形態1の磁気抵抗効果素子100と同様に、第2の磁性層2の磁化(磁気モーメント)の持続的な歳差運動が生じる。
第2の磁性層2における磁気モーメントの平行性が失われている領域43にスピン偏極電流を流した場合、磁気モーメントの歳差運動の一貫性が失われ、磁気モーメントの歳差運動の周期にばらつきがみられ純度の高い発振が得られない。一方で、第2の磁性層2における磁気モーメントの平行性が保たれている領域44にスピン偏極電流を流した場合、一律にそろった磁気モーメントの歳差運動により一貫性のある純度の高い発振が得られる。第2の磁性層2における磁気モーメントの平行性が失われる領域43に対応する外側領域33の膜面に平行な断面における導電部32の合計面積が、第2の磁性層2における磁気モーメントの平行性が保たれる領域44に対応する内側領域34の膜面に平行な断面における導電部32の合計面積よりも小さく形成されているため、第2の磁性層2における磁気モーメントの平行性が失われる領域43にスピン偏極電流が流れ込みにくくなる。その結果、第2の磁性層2における磁気モーメントの平行性が保たれている領域44での磁気モーメントの歳差運動が支配的になり、高い発振出力かつ高Q値の発振が得られる。
第2の磁性層2と第1の磁性層4の磁化は、外部磁界やダイポール磁界などの有効磁界を受ける。ダイポール磁界とは、有限形状の磁性薄膜において、磁気双極子をつくる場合に発生する空間的な漏洩磁界のことである。実施形態2の場合、磁気抵抗効果素子200において、第1の磁性層4の磁気モーメントと第2の磁性層2の磁気モーメントは、それぞれの磁性層からダイポール磁界を発生する。また、一方の磁性層は、他方の磁性層から発生するダイポール磁界を受ける。第1の磁性層4の磁化方向は実質的に一方向に固定されていないため、有効磁界は、ある程度外部磁界が小さい場合にはダイポール磁界の影響が支配的となる。
第2の磁性層2は、磁化がスピントルクを受け歳差運動し、磁化の歳差運動に伴いダイポール磁界が変化する。このダイポール磁界が形状などに由来する数百エルステッドの比較的強い磁界である場合、ダイポール磁界よりも弱い外部磁界を与えた時に、ダイポール磁界が支配的となり、第1の磁性層4の磁気モーメントと、第2の磁性層2の磁気モーメントとがダイポール結合して、お互いが反平行状態を維持するように歳差運動する。すなわち、第1の磁性層4と第2の磁性層2の両方が磁化振動層として機能する。
電流が下部電極5から上部電極1の方向に流れる場合、すなわち電流が第1の磁性層4から第2の磁性層2の方向に流れ、伝導電子が第2の磁性層2から第1の磁性層4の方向に流れる場合は、第1の磁性層4と第2の磁性層2の役割は逆になる。
(実施形態3)
次に、実施形態3の磁気抵抗効果素子300の構成例について、図面を参照しつつ実施形態1と異なる点について説明を行う。図6は磁気抵抗効果素子300の構成例を示す膜面に垂直に切断した断面を示す模式図である。図1に示す実施形態1に係る磁気抵抗効果素子100との異なる点は、隣接する上下の層を電気的に接続する少なくともひとつの導電部332および絶縁部331を有する電流狭窄層13が設けられている点とスペーサ層30の構成である。それら以外の点は実施形態1に係る磁気抵抗効果素子1と同様である。
磁気抵抗効果素子300では、電流狭窄層13は上部電極1と第2の磁性層2の間に設けられている。図7Aは、電流狭窄層13の膜面に平行な断面を示す模式図である。図6および図7Aに示すように、電流狭窄層13は隣接する上下の層を電気的に接続する複数の導電部332と、導電部332を取り囲む絶縁部331を有して構成されており、電流による電子の流れを導電部332により狭窄することで電流密度の大きい電流を第2の磁性層2に流し、信号を高出力化させる役割を有している。導電部332の材料としてはAl、CuまたはMgなどの導電材料、絶縁部331の材料としてはAlや酸化マグネシウム(MgO)またはSiOなどが望ましい。
図7Aに示すように、磁気抵抗効果素子300において、電流狭窄層13は外縁部からの幅が第1の磁性層4と第2の磁性層2の交換長の最大長である外側領域333と、その内側の内側領域334の2つに分けられ、外側領域333の膜面に平行な断面における導電部332の合計面積は、内側領域334の膜面に平行な面における導電部332の合計面積よりも小さくなっている。また、膜面に平行な断面における、外側領域333の導電部32の合計面積の外側領域333の面積に対する比率は、内側領域334の導電部32の合計面積の内側領域334の面積に対する比率よりも小さくなっている。
絶縁部331に酸化物を用いる場合、非磁性金属を成膜後、自然酸化あるいはIon−Assisted−Oxidation(IAO)処理によって非磁性金属を酸化させて酸化物とすることができる。自然酸化は例えば、IBD装置内で非磁性金属を成膜後、IBD装置内に酸素ガスを流すことにより行う。IAO処理は例えば、IBD装置内に酸素ガスあるいは酸素イオンを非磁性金属に照射すると同時に低エネルギーのArイオンを非磁性金属に照射することにより行う。自然酸化の場合、酸素流量1〜10sccmもしくは酸素分圧1.0×10−3Pa〜5.0×10−1Paの条件下で5sec〜200sec放置することが望ましい。IAO処理の場合、酸素流量を1sccm〜5sccm、処理時間を5sec〜100secとすることが望ましい。
導電部332の直径は0.1nm〜20nmであることが望ましく、隣接する複数の導電部332の間隔は10nm〜100nmであることが望ましい。
内側領域334と外側領域333の導電部332の合計面積が違う二つの領域は、例えば、それぞれ別の酸化処理を施すことによって形成される。具体的には、成膜された非磁性金属の内側領域334となる領域以外の最表面をレジストパターンで覆い、内側領域334となる領域のみが露出されている状態で第1の酸化処理を行って内側領域334を形成する。第1の酸化処理後、今度は内側領域334の最表面のみをレジストパターンで覆い、内側領域334以外の部分の第2の酸化処理を行う。このとき、第2の酸化処理条件は第1の酸化処理条件より強い酸化条件にすることにより内側領域334と外側領域333を形成する。非磁性金属が酸化された箇所が絶縁部331となり、酸化されずに金属として残存した箇所が導電部332となる。第2の酸化処理条件を第1の酸化処理条件より強い酸化条件にすることにより、外側領域333における導電部332の合計面積は、内側領域334における導電部332の合計面積よりも小さくなる。
スペーサー層30は、第1の磁性層4と第2の磁性層2の磁化を相互作用させて磁気抵抗効果を得るための役割を有しており、スペーサー層30の材料は絶縁体でも金属でもよく、絶縁体であればAlまたは酸化マグネシウム(MgO)などの非磁性体が好ましく、金属であれば、Cu,AuまたはAgなどの非磁性の導電性材料が好ましい。スペーサー層30の膜厚は0.5〜2.5nm程度とすることが望ましい。
電流狭窄層13の外側領域333が、磁性層における静磁エネルギーを減らそうとすることで磁気モーメントの平行性が失われる領域43に対応し、電流狭窄層13の内側領域334が、磁性層における外部磁界によって磁気モーメントの平行性が保たれる領域44に対応する。
磁化固定層である第1の磁性層4における磁気モーメントの平行性が失われている領域43に電流を流した場合、さまざまな向きのスピンを有する伝導電子による電流が発生し、スペーサ層30を介し第2の磁性層2の磁化に不均一なスピントルクを与える。一方で、第1の磁性層4における磁気モーメントの平行性が保たれている領域44に電流を流した場合、一方向にスピン偏極された伝導電子によるスピン偏極電流が多く発生し、スペーサ層30を介し第2の磁性層2の磁化に均一なスピントルクを与える。第1の磁性層4における磁気モーメントの平行性が失われる領域43に対応する外側領域333の膜面に平行な断面における導電部332の合計面積が、第1の磁性層4における磁気モーメントの平行性が保たれる領域44に対応する内側領域334の膜面に平行な断面における導電部332の合計面積よりも小さくなっているため、第1の磁性層4における磁気モーメントの平行性が失われる領域43にスピン電流が流れにくくなる。その結果、一方向にスピン偏極された伝導電子によるスピン偏極電流が多く発生する。
磁化振動層である第2の磁性層2における磁気モーメントの平行性が失われている領域43にスピン偏極電流を流した場合、磁気モーメントの歳差運動の一貫性が失われ、磁気モーメントの歳差運動の周期にばらつきがみられ純度の高い発振が得られない。一方で、第2の磁性層2における磁気モーメントの平行性が保たれている領域44にスピン偏極電流を流した場合、一律にそろった磁気モーメントの歳差運動により一貫性のある純度の高い発振が得られる。第2の磁性層2における磁気モーメントの平行性が失われる領域43に対応する外側領域333の膜面に平行な断面における導電部332の合計面積が、第2の磁性層2における磁気モーメントの平行性が保たれる領域44に対応する内側領域34の膜面に平行な断面における導電部332の合計面積よりも小さくなっているため、第2の磁性層2における磁気モーメントの平行性が失われる領域43にスピン偏極電流が流れ込みにくくなる。その結果、第2の磁性層2における磁気モーメントの平行性が保たれている領域44での磁気モーメントの歳差運動が支配的になり、高い発振出力かつ高Q値の発振が得られる。
このように、磁気抵抗効果素子300によれば、電流狭窄層13に導電部332の合計面積が小さい外側領域333を設けることによって、第1の磁性層4と第2の磁性層2の磁気モーメントの平行性が失われる領域43には電流が流れ込みにくくなる。その結果、一方向にスピン偏極された伝導電子によるスピン偏極電流が多く発生し、さらにそのスピン偏極電流の多くが磁化振動層である第2の磁性層2の磁気モーメントの平行性が保たれる領域44に流れ、磁化振動層である第2の磁性層2の磁化の一貫性のある歳差運動を生み出すことができる。その結果、高い発振出力が得られ、かつ高Q値の発振が得られる磁気抵抗効果素子を提供できる。
第1の磁性層4および第2の磁性層2の磁気モーメントの平行性が失われる領域43に電流がより流れ込みにくくなる効果を得るために、電流狭窄層13の膜面に平行な断面における導電部332の合計面積のうち、外側領域333の膜面に平行な断面における導電部332の合計面積が占める割合は10%以下であることが好ましい。
第1の磁性層4および第2の磁性層2の磁気モーメントの平行性が失われる領域43に電流がほとんど流れなくなる効果を得るために、図7Bに示すように電流狭窄層13の膜面に平行な断面における導電部332の合計面積のうち、外側領域333の膜面に平行な面における導電部332の合計面積が占める割合は0%であることがより好ましい。
また、磁気抵抗効果素子300は、第1の磁性層4は磁化方向が実質的に一方向に固定されているので、第1の磁性層4の局在スピンにスピン偏極された伝導電子により、磁化振動層である第2の磁性層2はスピントルクを受け、磁化振動層である第2の磁性層2の磁化の一貫性のある歳差運動が生じやすくなる。その結果、より高い発振出力が得られ、より高Q値の発振が得られる。
実施形態3の磁気抵抗効果素子300では、電流狭窄層13は上部電極1と第2の磁性層2の間に設けられているが、電流狭窄層13は他の箇所に設けられていても良い。例えば、電流狭窄層13はシード層11とバッファ層12の間に設けられていても良い。また、磁気抵抗効果素子300では、電流狭窄層13は複数の導電部332を有しているが、電流狭窄層13は少なくとも1つの導電部32を有していれば良い。
実施形態3の磁気抵抗効果素子300は、実施形態1の磁気抵抗効果素子100と同様に、第1の磁性層4が磁化固定層であり、第2の磁性層2が磁化振動層であるが、磁気抵抗効果素子300において、実施形態2の磁気抵抗効果素子200と同様に、第1の磁性層4と第2の磁性層2の両方が磁化振動層として機能する層としてもよい。このような形態の磁気抵抗効果素子においても、実施形態2および3と同様にして、高い発振出力が得られ、かつ高Q値の発振が得られる。
次に、実施例を挙げて本発明の実施の形態を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
上記の実施形態1において説明した磁気抵抗効果素子100を作製した。熱酸化Si基板上に、下部電極5としてCu(100nm)を、スパッタリング装置を用いて成膜した。その後、フォトリソグラフィーおよびイオンミリングにより下部電極5をCPW形状に形成した。
次に、スパッタリング装置およびIBD装置を用いてバッファ層12、シード層11、第1の磁性層4、スペーサ層3、第2の磁性層2、キャップ層7および上部電極1をこの順に作製した。各層の膜構成は、バッファ層12をTa(2nm)、シード層11をRu(2nm)、第1の磁性層4をIrMn(7nm)/90CoFe(2.4nm)、スペーサ層3をIAO処理(第1のIAO処理条件:酸素ガス1sccm、Arガス10sccm、20sec、第2のIAO処理条件:酸素ガス1sccm、Arガス6sccm、200sec)した70AlCu(1.3nm)、第2の磁性層2を90CoFe(10nm)、キャップ層7をRu(2nm)、上部電極1をCu(100nm)とした。括弧内の数値は各層の厚さである。
内側領域34の導電部32は以下の方法により作製した。スペーサ層3となる膜として70AlCuを成膜後に、70AlCu膜上にレジスト膜を形成し、直径100nmの円形状の部分の70AlCu膜が露出するようにレジストパターンを形成した。この状態において、第1のIAO処理(Oガス1sccm、Arガス10sccm、20sec)を行い、内側領域34を作製した。このIAO処理工程では、Alは酸化されやすいが、Cuは酸化されにくいので、Alからなる絶縁部31とCuからなる導電部32とを有するスペーサ層3の内側領域34が形成される。その後、内側領域34の直上に内側領域34を覆うように直径100nmの円形状のレジストパターニングを行い、内側領域34以外の領域の70AlCu膜を露出させて第2のIAO処理(Oガス1sccm、Arガス6sccm、200sec)を施し、外側領域33を形成した。このIAO処理工程では、内側領域34の形成時のIAO処理条件よりも酸素流量比が大きく処理時間が長いので、AlだけでなくCuも酸化され、AlとCu酸化物からなる絶縁部31からなり、導電部32を有さないスペーサ層3の外側領域33が形成される。
磁気抵抗効果素子100の円柱形状部は以下の方法により作成した。フォトリソグラフィーおよびイオンミリングを行い、キャップ層7からバッファ層12までの各層の大きさをφ200nmの円形にパターニングした。内側領域34の円形の中心軸と、外側領域33の円形の中心軸が一致するように作製した。続いて、スパッタ法、リフトオフ法により絶縁体6を形成した。絶縁体6にはAlを用いた。
次に、フォトリソグラフィー、スパッタ法およびリフトオフ法により上部電極1を形成した。上部電極1はCu(100nm)とした。
この磁気抵抗効果素子100の磁化振動層である第2の磁性層2の交換スティフネス定数A(erg/cm)、飽和磁化M(emu/cm)、異方性磁界 H(Oe)は、A=1.5×10−6(erg/cm)、M=1500(emu/cm)、H=80(Oe)であるため、外部磁界が加わってない状態の第2の磁性層2の交換長は50nmとなる。また、第1の磁性層4の交換スティフネス定数A(erg/cm)、飽和磁化M(emu/cm)、異方性磁界 H(Oe)は、A=1.5×10−6(erg/cm)、M=1700(emu/cm)、H=100(Oe)であるため、外部磁界が加わってない状態の第1の磁性層4の交換長は42nmとなる。
以上の方法で作製した磁気抵抗効果素子100に対して、磁界印加方向を膜面平行方向に、第1の磁性層4の磁化固定方向から反時計回りに120度傾けた角度として、磁界強度200(Oe)の磁界を加え、発振出力の測定を行った。
磁気抵抗効果素子100に印加する電流を3.14mAに設定し、スペアナのRBW(Resolution Band Width)は3MHzとして発振出力を測定した。その結果、得られた最大のピークに対して、RBWおよび半値幅(半値全幅)を考慮して発振出力を計算した結果、発振出力は134[nW]となった。
(実施例2〜5、比較例1)
上記本発明の実施形態1において説明した磁気抵抗効果素子100について、スペーサ層3の膜面に平行な断面における導電部32の合計面積のうち、外側領域33の膜面に平行な断面における全ての導電部32の合計面積が占める割合をそれぞれ異ならせたものを、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5、および比較例1として作製した。作製方法は実施例1と一部異なり、外側領域33の導電部32の面積を変化させる目的で、外側領域33の導電部32の形成過程における第2のIAO処理において、IAO処理時のガス流量およびIAOの処理時間を変化させた。実施例1〜5および比較例1の作製過程における第2のIAO処理時のガス流量および第2のIAO処理時間を表1に示す。
Figure 2016189375
以上の方法で作製した磁気抵抗効果素子100に対して、実施例1と同様にして、発振出力の測定を行った。スペーサ層3の膜面に平行な断面における導電部32の合計面積のうち、外側領域33の膜面に平行な断面における導電部32の合計面積が占める割合をX(%)とし、X、発振出力、発振周波数、発振ピークの半値幅およびQ値(発振周波数/半値幅)の結果を表2に示す。
Figure 2016189375
図8、9は実施例1〜5および比較例1の発振測定結果に対して、外側領域33の導電部32の面積が占める割合X(%)と出力された信号の半値幅とQ値との関係をそれぞれ示している。
Xが10%以下の範囲で半値幅が減少し、Q値が明確に向上していることがわかる。これは、スペーサ層3の膜面に平行な断面における導電部32の合計面積のうち、外側領域33の膜面に平行な断面における導電部32の合計面積が占める割合が小さくなるにつれ、全体に流れる電流のうち、外側領域33に流れる電流の割合が小さくなる効果によるものと考えられる。より詳細には、第1の磁性層4における伝導電子がスピン偏極される領域と、第2の磁性層2におけるスピントルクが働く領域が、外部磁界により磁気モーメントの平行性が保たれる内側の領域に絞られることによって、発振周波数の均一性の向上につながったと考えられる。その結果、半値幅の減少、Q値の向上につながったと考えられる。
図10は実施例1〜5および比較例1の発振測定結果に対して、外側領域33の導電部32の面積が占める割合X(%)と出力された信号の発振出力との関係を示している。
Xが10%以下の範囲で発振出力が明確に向上していることがわかる。これは、スペーサ層3の膜面に平行な断面における導電部32の合計面積のうち、外側領域33の膜面に平行な断面における導電部32の合計面積が占める割合が小さくなるにつれ、全体に流れる電流のうち、外側領域33に流れる電流の割合が小さくなる効果によるものと考えられる。より詳細には、第1の磁性層4における伝導電子がスピン偏極される領域と、第2の磁性層2におけるスピントルクが働く領域が、外部磁界により磁気モーメントの平行性が保たれる内側の領域に絞られることによってスピントルクの大きさが増大し、結果的に発振出力の増大につながったと考えられる。
以上、本発明の好適な実施例について説明したが、上記で説明した実施例以外にも変更することが可能である。
本発明に係る磁気抵抗効果素子は、磁気抵抗効果素子の高周波特性を利用して、例えば、発振器、検波器、ミキサー、フィルターといったデバイスとして利用可能である。
1 上部電極
2 第2の磁性層
3、30 スペーサ層
4 第1の磁性層
5 下部電極層
6 絶縁体
7 キャップ層
8 非磁性層
9 強磁性層
10 反強磁性層
11 シード層
12 バッファ層
13 電流狭窄層
31、331 絶縁部
32、332 導電部
33、333 外側領域
34、334 内側領域
100、101、200、300 磁気抵抗効果素子

Claims (8)

  1. 第1の磁性層と、第2の磁性層と、前記第1の磁性層と前記第2の磁性層とを電気的に接続する少なくともひとつの導電部および絶縁部を有するスペーサ層と、を有し、
    前記第1の磁性層と前記第2の磁性層の少なくともどちらか一方は、その中を流れる電流によってその磁化が振動する磁化振動層であり、
    前記スペーサ層は、前記第1の磁性層と前記第2の磁性層との間に配置され、
    前記スペーサ層は、外縁部からの幅が前記第1の磁性層と前記第2の磁性層の交換長の最大長である外側領域と、その内側の内側領域の2つに分けられ、
    前記外側領域の膜面に平行な断面における前記導電部の合計面積は、前記内側領域の膜面に平行な断面における前記導電部の合計面積よりも小さいことを特徴とする磁気抵抗効果素子。
  2. 前記スペーサ層の膜面に平行な断面における前記導電部の合計面積のうち、前記外側領域の前記導電部の合計面積が占める割合は10%以下であることを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗効果素子。
  3. 前記割合は0%であることを特徴とする請求項2に記載の磁気抵抗効果素子。
  4. 前記第1の磁性層と前記第2の磁性層のどちらか一方は、磁化方向が実質的に一方向に固定されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の磁気抵抗効果素子。
  5. 第1の磁性層と、スペーサ層と、第2の磁性層と、隣接する上下の層を電気的に接続する少なくともひとつの導電部および絶縁部を有する電流狭窄層と、を有し、
    前記第1の磁性層と前記第2の磁性層の少なくともどちらか一方は、その中を流れる電流によって磁化が振動する磁化振動層であり、
    前記スペーサ層は、前記第1の磁性層と前記第2の磁性層との間に配置され、
    前記電流狭窄層は、外縁部からの幅が前記第1の磁性層と前記第2の磁性層の交換長の最大長である外側領域と、その内側の内側領域の2つに分けられ、
    前記外側領域の膜面に平行な断面における前記導電部の合計面積は、前記内側領域の膜面に平行な断面における前記導電部の合計面積よりも小さいことを特徴とする磁気抵抗効果素子。
  6. 前記電流狭窄層の膜面に平行な断面における前記導電部の合計面積のうち、前記外側領域の前記導電部の合計面積が占める割合は10%以下であることを特徴とする請求項5に記載の磁気抵抗効果素子。
  7. 前記割合は0%であることを特徴とする請求項6に記載の磁気抵抗効果素子。
  8. 前記第1の磁性層と前記第2の磁性層のどちらか一方は、磁化方向が実質的に一方向に固定されていることを特徴とする請求項5ないし7のいずれか一項に記載の磁気抵抗効果素子。
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