JP2016186123A - ステンレス鋼摺動部材 - Google Patents

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Hideki Iso
英機 居相
浩介 居相
Kosuke Iso
浩介 居相
善一 青木
Zenichi Aoki
善一 青木
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Abstract

【課題】ステンレス鋼摺動部材の摺動部の表面にFeおよびCrを主体とする酸化物および/または水酸化物の表面皮膜を形成することにより、無潤滑で摺動部材の締結をする場合でも、かじり、焼き付きが生じにくく、且つトルク係数のバラつきを抑え、摺動部の締め付け軸力の管理を容易にさせた、安価なステンレス鋼摺動部材を提供する。【解決手段】本発明であるステンレス鋼摺動部材は、ステンレス鋼摺動部材の摺動部の表面に形成され、FeおよびCrを主体とする酸化物および/または水酸化物からなり、厚さが0.1μm以上で3.0μm以下の表面皮膜を有する。【選択図】図1

Description

この発明は、ステンレス鋼摺動部材に関し、特に、摺動部の締め付け軸力の管理を容易にさせた、たとえば、ガスケット式面シール用のねじ込み式ステンレス鋼摺動部材に関する。
化学プラントあるいは半導体製造の分野での装置や機械で高圧や腐食性の強いガス、液体等が多用されている。特に半導体製造分野においては、使用されるガス、液体等は腐食性が強いだけでなく人の生命、健康に影響を与えるため、その配管あるいは容器の継ぎ手の気密性、安全性の確保が課題となっている。さらに、高純度ガスや超高真空技術等の使用を前提に、最近では、気密性の点からフェルール、ダブルフェルール等のガスケット式面シールの採用が増えており、また耐食性の点からネジ締め付け部にステンレスの使用が増加している。
これらの摺動部材は安全性の観点から取替時は摺動部材そのものも新品に取り替えることが多い。
しかし、ステンレスは熱伝導率が小さく、オーステナイト系ステンレスにおいては熱膨張係数が大きいため、ねじ込み式摺動部材の締結時にかじり、焼き付きが生じ易く、そのため締め付け軸力が低くなりガスケット式面シールでのシール性が低下するという問題がある。
この問題に対し、潤滑剤の使用などの対策が挙げられるものの、その後の高清浄な環境での操業を考慮すると無潤滑でもこれらの問題が生じない摺動部材が望まれている。
従来技術として、ボルトやナットなどのねじ込み式摺動部材のかじりを防止するために、摺動部としてのネジ面締め付け部の表面に銀めっきを施す技術が知られている。
特許文献1(特許第5428319号公報)では、ステンレス鋼に無光沢銀めっきをおこない、その表面にPTFEパウダーを接触させ、熱処理によりPTFEを定着形成し、一層の耐食性と摩擦力を低減する技術も開示されている。
特許文献2(特開2008−202101号公報)では、ステンレスのボルトやナットのネジ部に金被覆を施し、潤滑を向上させる技術も開示されている。
しかし、これらの技術では貴金属を使用するため、高価になるという欠点がある。
特許文献3(特許第2974344号公報)には、ステンレス表面にNi及びCu下地めっきを施した後SnあるいはSnZn合金めっきを施し、熱拡散処理にて金属間化合物を作り、耐食性、かじり、焼き付きの改善する技術が開示されている。
特許文献4(特許第3099119号公報)には、ステンレス表面に直接SnまたはSnZn合金めっきを施し、熱拡散処理を施し金属間化合物を形成し、耐食性、かじり、焼き付きの改善する技術が開示されている。
特許文献5(特許第2844255号公報)には、ステンレス製ボルトにSnめっきを施した後、熱拡散処理を行い、さらにフッ素樹脂コーテイングを行い、かじりや焼き付き防止技術が開示されている。
特許第5428319号公報 特開2008−202101号公報 特許第2974344号公報 特許第3099119号公報 特許第2844255号公報
しかしながら、上記特許文献1,2の技術においては、貴金属を使用するため、高価になるという欠点があり、上記特許文献3,4,5の技術においては、いずれもめっき層の厚さが5μm以上であり、また、製造工程も長く、煩雑であり高価という問題があった。
ステンレスは低熱伝導率及び高熱膨張率であり、無潤滑で摺動部材をねじ込み式で締結する場合にトルク係数が変動しやすいため、トルク法、回転角法等の締め付け方法で管理する場合での締め付け軸力の変動が大きく、摺動部材の締め付け作業における管理上の問題となっている。
したがって、ガスケット式面シールのねじ込み式ステンレス摺動部材において、無潤滑で摺動部材の締結をする場合、かじり、焼き付きが生じにくく、且つトルク係数のバラつきが小さくなるような締め付け作業で、目標締め付け軸力の管理が容易で且つ安価な摺動部材が求められていた。
それゆえに、この発明の主たる目的は、無潤滑で摺動部材の締結をする場合でも、かじり、焼き付きが生じにくく、且つトルク係数のバラつきを抑え、摺動部の締め付け軸力の管理を容易にさせた、安価なステンレス鋼摺動部材を提供することである。
本発明者らは、ステンレス鋼摺動部材の締め付け時において、かじり性および焼き付きが生じにくく、且つトルク係数のバラつきを抑え、摺動部の締め付け軸力の管理を容易にさせた、FeおよびCrを主体とする酸化物および/または水酸化物からなる所定の厚さの表面皮膜を安価なステンレス鋼摺動部材の摺動部の表面に形成することが有効なことを見出した。
また、本発明者らは、安価なステンレス鋼摺動部材の締め付け時において、かじり性および焼き付きが生じにくく、且つトルク係数のバラつきを抑え、摺動部の締め付け軸力の管理を容易にさせるには、上述の表面皮膜が原子%として10%以上のCrを含有することがさらに有効なことも見出した。
この発明にかかるステンレス鋼摺動部材は、摺動部の表面に形成され、FeおよびCrを主体とする酸化物および/または水酸化物からなり、厚さが0.1μm以上で3.0μm以下の表面皮膜を有する、ステンレス鋼摺動部材である。
この発明にかかるステンレス鋼摺動部材では、表面皮膜は、原子%としてCrを10%以上含有し残分が実質的にFeであり、厚さが0.1μm以上で3.0μm以下の酸化皮膜および/または水酸化皮膜を有することが好ましい。
この発明にかかるステンレス鋼摺動部材において、摺動部の表面に形成される表面皮膜の厚さなどを限定した理由について説明する。
表面皮膜の厚さが0.1μm未満の場合、摺動部材の締め付け時に、かじりや焼き付きが生じやすく、トルク係数がバラ付きやすくなり、摺動部の締め付け軸力の管理が困難になる。
一方、表面皮膜の厚さが3.0μmを超える場合、摺動部材の締め付け時に、表面皮膜が割れやすく、トルク係数がバラ付きやすくなり、摺動部の締め付け軸力の管理が困難になる。また、皮膜厚みの増大は経済的に高価になる。
それに対して、この発明のようにFeおよびCrを主体とする表面皮膜の厚さが0.1μm以上で3.0μm以下の場合、耐かじり性および耐焼き付き性が良好になり、且つトルク係数のバラつきが抑えられるので、摺動部の締め付け軸力の管理が容易になり、さらに製造工程を短く、簡潔にして安価とすることができる。
なお、表面皮膜となる酸化物および水酸化物は、どちらであっても表面皮膜による効果が変わらないので、それらの比率については限定しない。
また、この発明にかかるステンレス鋼摺動部材において、表面皮膜に含有するCrが10原子%以上の場合、表面皮膜に含有するCrが10原子%未満の場合と比べて、ステンレス鋼摺動部材の材料が一般的な金型の材料と著しく異なるようになるので、耐かじり性および耐焼き付き性が向上し、さらに、表面皮膜中の塩素イオンの浸透性が抑えられ、耐食性も向上する。
この発明によれば、ステンレス鋼摺動部材の摺動部の表面にCr(水)酸化物および/または水酸化物の表面皮膜を形成することにより、摺動部材の締め付け時において、耐かじり性および耐焼き付き性に優れ、且つトルク係数のバラ付きを抑え、摺動部の締め付け軸力の管理を容易にさせた、安価なステンレス鋼摺動部材が得られる。
この発明によれば、摺動部材の締め付け時に、かじりが生じにくく、焼き付き防止に優れ、且つトルク係数のバラ付きを抑え、摺動部の締め付け軸力の管理を容易にさせたことにより、気密性、安全性が向上した、安価なステンレス鋼摺動部材を提供することにより、金属加工業界に大いに寄与する。
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための形態の説明から一層明らかとなろう。
この発明にかかるステンレス鋼摺動部材であるガスケット式面シール用のねじ込み式摺動部材の分解図である。 この発明にかかるステンレス鋼摺動部材であるガスケット式面シール用のねじ込み式摺動部材の斜視図である。 この発明にかかるステンレス鋼摺動部材であるボルトの斜視図である。 図3に示すボルトの断面図である。 この発明にかかるステンレス鋼摺動部材であるナットの斜視図である。 図5に示すナットの断面図である。
以下、添付図面を参照して本願発明の実施の形態について説明し、本願発明の理解に供する。
(実施の形態1)
(実施の形態1に係る構造)
図1は、ステンレス鋼摺動部材であるガスケット式面シール用のねじ込み式摺動部材の分解図の一例である。
図2は、ステンレス鋼摺動部材であるガスケット式面シール用のねじ込み式摺動部材の斜視図の一例である。
以下、図1と図2を参照して、実施の形態1に係るガスケット式面シール用のねじ込み式摺動部材について説明する。
実施の形態1に係るステンレス鋼摺動部材であるガスケット式面シール用のねじ込み式摺動部材10は、規格品の他に、JIS規格、ISO規格に準じた規格品の他に、規格品にはない要求に応じた形状や性質を持たせたオーダーメイド品であってもよい。
ガスケット式面シール用のねじ込み式摺動部材10は、「雄ナット12a」に「第1のグランド14a」を挿入させたものと、「雌ナット12b」に「第2のグランド14b」を挿入させたものと、を「ガスケット16」で結合させたものを含む。このガスケット式面シール用のねじ込み式摺動部材10の少なくとも摺動部の全表面、例えば「雄ナット12a」、「雌ナット12b」などの少なくともねじ部全表面に表面皮膜(図示せず)が形成される。
ガスケット式面シール用のねじ込み式摺動部材10の摺動部としては例えば、「雄ナット12a」であり、「雄ナット12a」以外の部分を摺動部としてもよい。
摺動部である「雄ナット12a」に表面皮膜を形成することで、摺動部の潤滑性が向上し、それに伴い、トルク係数の値は低くなり、同じ軸力を得るために必要なトルクは少なくて済むことになる。
実施の形態1においては、ステンレス鋼摺動部材において使用されるステンレス鋼としては、たとえば、オ−ステナイト系、フライト系等の鋼種に影響されず、また、2D、2B、BA、ハ−ド材、鏡面材のいずれでもよく、鋼種および表面仕上げについては特に限定されない。
なお、ステンレス鋼としてオ−ステナイト系のステンレス鋼を用いる場合、酸化皮膜または水酸化皮膜などの表面皮膜の形成方法によって酸化皮膜または水酸化皮膜などの表面皮膜の中に「Ni」が混入しても何ら影響がなく、特にその量については限定しない。
また、高耐食性ステンレスとして、フェライト系ステンレスにあっては高CrのMo添加ステンレス、オーステナイト系ステンレスにあっては高Cr、高Ni、MoやN添加などの高耐食性ステンレスが開発されているが、表面皮膜の中に「Mo」が混入しても何ら影響がなく、特にその量については限定しない。しかし、ステンレス素材中のCr、Ni、Mo含有量が高くなると共に成形品への加工性が低下するので、Crは30%以下、Niは40%以下、Moは10%以下の組成のステンレスを用いるのが好ましい。
なお、皮膜の成分分析においてはオージェ分光分析による定量分析を用いた。
表面皮膜は、FeおよびCrを主体とする酸化物および/または水酸化物からなり、厚さが0.1μm以上で3.0μm以下の表面皮膜である。また、この表面皮膜は、原子%としてCrを10%以上含有し残分が実質的にFeであり、厚さが0.1μm以上で3.0μm以下の酸化皮膜および/または水酸化皮膜を有する。
表面皮膜を形成するための電解としては、ガスケット式面シール用のねじ込み式摺動部材10を表面皮膜形成用水溶液中に浸し、陽極電解および陰極電解を交互に繰り返して行って酸化物からなる酸化皮膜および水酸化物からなる水酸化皮膜を有する表面皮膜を形成する「交番電解法」、陽極電解のみを行って酸化物からなる酸化皮膜を有する表面皮膜を形成する「陽極電解法」が用いられる。
なお、表面皮膜を形成する部位として、ガスケット式面シール用のねじ込み式摺動部材10の表面全体でなく、例えば、ガスケット式面シール用のねじ込み式摺動部材10の「雄ナット12a」など部分的に表面皮膜を形成してもよい。
このような表面皮膜をガスケット式面シール用のねじ込み式摺動部材10の摺動部の表面に形成するためには、ガスケット式面シール用のねじ込み式摺動部材10を、たとえば硫酸若しくは燐酸を含む酸性のまたは水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウムを含むアルカリ性の表面皮膜形成用水溶液中に浸し、電解によって形成される。
(実施の形態2)
(実施の形態2に係る構造)
図3は、ステンレス鋼摺動部材であるボルト30の斜視図である。
図4は、図3に示すボルト30の断面図である。
以下、図3と図4を参照して、実施の形態2に係るボルト30について説明する。
実施の形態2に係るステンレス鋼摺動部材であるボルト30は、ボルト本体32を含む。ボルト本体32は、JIS規格、ISO規格に準じた規格品の他に、規格品にはない要求に応じた形状や性質を持たせたオーダーメイド品であってもよい。
ボルト本体32は、ボルトの頭である「頭部34」と、頭部34と連結している軸36である「首部38a」と、軸36においてねじ山を有する「雄ねじ部38b」、を含む。このボルト本体32の全面には、「表面皮膜40」が形成されている。
頭部34の形状によって、六角形ボルトの他、六角穴付きボルト、フランジボルト、アイボルト、ノブボルトなどに分類され、本発明においてはこれらを用いることもある。
ボルト本体32の摺動部としては例えば、「雄ねじ部38b」であり、「雄ねじ部38b」以外の部分を摺動部としてもよい。
摺動部である「雄ねじ部38b」に表面皮膜40を形成することで、摺動部の潤滑性が向上し、それに伴い、トルク係数の値は低くなり、同じ軸力を得るために必要なトルクは少なくて済むことになる。
実施の形態2においても、上記実施の形態1と同種類のステンレス鋼が用いられる。
また、酸化皮膜または水酸化皮膜などの表面皮膜40の形成方法と膜厚についても、上記実施の形態1と同様の形成方法とする。
なお、表面皮膜40を形成する部位として、ボルト本体32の全表面でなく、例えば、ボルト本体32の「雄ねじ部38b」、ボルト本体32の「頭部34」など部分的に表面皮膜40を形成してもよい。
(実施の形態3)
(実施の形態3に係る構造)
図5は、この発明にかかるステンレス鋼摺動部材であるナット50の斜視図である。
図6は、図5に示すナット50の断面図である。
以下、図5と図6を参照して、実施の形態3に係るナット50について説明する。
実施の形態3に係るステンレス鋼摺動部材であるナット50は、ナット本体52を含み、ナット本体52は、JIS規格、ISO規格に準じた規格品の他に、規格品にはない要求に応じた形状や性質を持たせたオーダーメイド品であってもよい。
ナット本体52は、座面に相当する「頭部54」と、ねじ山をもつ「雌ねじ部56」と、を含む。このナット本体52の全面には、「表面皮膜50」が形成されている。
「頭部54」の形状によって、六角ナットの他、フランジ付き六角ナット、アイナット、蝶ナット、四角ナットなどを用いることもある。
ナット本体50の摺動部としては例えば、「雌ねじ部56」であり、「雌ねじ部56」以外の部分を摺動部としてもよい。
摺動部である「雌ねじ部56」に表面皮膜60を形成することで、摺動部の潤滑性が向上し、それに伴い、トルク係数の値は低くなり、同じ軸力を得るために必要なトルクは少なくて済むことになる。
実施の形態3においても、上記実施の形態1と同種類のステンレス鋼が用いられる。
また、酸化皮膜または水酸化皮膜などの表面皮膜60の形成方法と膜厚についても、上記実施の形態1と同様の形成方法とする。
なお、表面皮膜60を形成する部位として、ナット本体52の全表面でなく、例えば、ナット本体52の「雌ねじ部56」、ナット本体52の「頭部54」など部分的に表面皮膜60を形成してもよい。
(実験例)
上記実施の形態1に係る「ガスケット式面シール用のねじ込み式摺動部材」は、オーリ
ング、フェルール、ダブルフェルール等をメスナット及びオスナットの両側から挟み込み、ねじ式で締結したものである。この場合、「オスナット」の代わりに、上記実施の形態2に係る「ボルト」を、また「メスナット」の代わりに、上記実施の形態3に係る「ナット」を用いて評価してもガスケット式面シール用のねじ込み摺動部材の締め付け評価に原理的に同一と見做されるため、下記の実験例を行った。
実験例では、SUS316製の呼び径M10、1.5mmピッチ、呼び長さ50mmの「六角ボルト」、及び呼び径M10、呼び高さ8mmの「六角ナット」、これらの2種をサンプル(ステンレス鋼摺動部材)として用いた。
(実施例)
まず、「実施例1、2、4、5」のボルトの摺動部(雄ねじ部)及びナットの摺動部(雌ねじ部)の表面に、下記の表1に示す表面皮膜形成条件(薬液、皮膜形成条件種別および電解条件)でクロム(水)酸化物からなる種々の膜厚の表面皮膜を形成した。
「実施例3」については、ボルトの摺動部(雄ねじ部)の表面に表面皮膜を形成し、ナットについては、表面皮膜を形成していない。
表面皮膜の厚さは下記のとおりである。
実施例1の皮膜厚さは、ボルトが「0.10μm」、ナットが「0.16μm」である。
実施例2の皮膜厚さは、ボルトが「0.27μm」、ナットが「0.23μm」である。
実施例3の皮膜厚さは、ボルトが「0.32μm」、ナットは表面皮膜を形成しない。
実施例4の皮膜厚さは、ボルトが「0.98μm」、ナットが「1.07μm」である。
実施例5の皮膜厚さは、ボルトが「2.53μm」、ナットが「3.00μm」である。
(比較例)
「比較例1」のボルト、ナットについては、アルカリ脱脂、洗浄、乾燥後、表面皮膜が無い比較材として試験に供した。
「比較例2,3」のボルト、ナットについては、表1に示した表面皮膜形成条件で、ボルトの摺動部(雄ねじ部)及びナットの摺動部(雌ねじ部)の表面にクロム(水)酸化物の種々の膜厚の表面皮膜を形成した。
表面皮膜の厚さは下記のとおりである。
比較例2の皮膜厚さは、ボルトが「0.05μm」、ナットが「0.07μm」である。
比較例3の皮膜厚さは、ボルトが「3.45μm」、ナットが「3.20μm」である。
表1において、「薬液」は、表面皮膜を形成するための表面皮膜形成用水溶液に用いられる薬液を示す。また、「皮膜形成条件種別」は、表面皮膜を形成するために用いられる電解の種類を示す。
さらに、表1の「電解条件」の「極性」において、「直流」は、陽極電解を行うが陰極電解を行わないことを意味し、「反転」は、陽極電解と陰極電解とを交互に繰り返して行うことを意味する。また、表1において、「陽極時間」は、1回の陽極電解の時間を示し、「陽極電流」は、陽極電解によってステンレス鋼に流す電流密度を示す。さらに、表1において、「反応時間」は、電解処理の全時間を示す。
いずれの表面皮膜も原子%でCrは約35%、Niは約11%、Moは約1%、残部の主成分は金属成分としてFe、非金属成分として酸素から構成されていることをオージェ分光分析で確認した。また、表面皮膜の厚みは高周波グロー放電発光表面分析装置によりスパッタリングし測定した。
これらのボルト、ナットを用い、日本計測システム社製NST−1000MNを使用して無潤滑で締め付け試験を行った。また、2mm厚の32mm角のM10用の角座金を用いた。試験回転速度は20rpmで行い、降伏締め付けトルクを10%超えるトルクまで各試験片の組合せに対し10本の締め付け試験を行い、トルク係数を測定し、その標準偏差を求めた。また、試験後顕微鏡観察を行い、摺動部の表面におけるかじり、焼き付きの有無を観察した。
その結果を表2に示す。
表2において、「トルク」とは、物体(ステンレス鋼摺動部材)を回転させるための力のこと、「締め付けトルク(T)」とは、物体を締め付けるときに回転させるための力のこと、「トルク係数(K)」とは、締め付けようとするボルトの座面やねじ面の抵抗を示すこと、であり、接触面の状態により変化する。
なお、一般に、ねじにおけるトルクと軸力との関係は下記の(1)式で与えられる。
T = K・d・Ff・・・(1)
Tは締め付けトルク(N・m)、Kはトルク係数、dは呼び径(直径)(mm)、Ffは締め付け軸力(N)である。締め付けトルクTは、呼び径dおよび締め付け軸力Ffに比例する。
表2の結果において、「実施例1〜5」、「比較例3」では、いずれも、かじり、焼き付きが観察されなかった。
ボルト及びナットの摺動部の表面にクロム(水)酸化物が無い「比較例1」、及びクロム(水)酸化皮膜の膜厚の厚さが0.1μm未満の「比較例2」においては、締め付け時にかじり、焼き付きが発生し、かつトルク係数の変動(トルク係数の標準偏差)の値が大きい。
これに対し「実施例1〜5」においては、いずれも締め付け時にかじり、焼き付きが発生することはなく、かつトルク係数の変動(トルク係数の標準偏差)の値が小さい。
また、クロム(水)酸化皮膜が3μmを超える「比較例3」においては、締め付け時にかじり、焼き付きが発生することはないが、トルク係数の変動(トルク係数の標準偏差)の値が大きくなる。
以上の結果から、ステンレス鋼摺動部材であるボルト、ナットの摺動部の表面に形成するクロム(水)酸化皮膜の膜厚としては、「0.1μm以上3.0μm以下」が最も表面皮膜として、摺動部の締め付け軸力の管理が容易になる膜厚の値といえる。
上記実施例と比較例においては、ボルトの摺動部(雄ねじ部)及びナットの摺動部(雌ねじ部)の表面に表面皮膜を形成したが、摺動部(ねじ部)の表面以外の部分、例えば、頭部などに表面皮膜を形成してもよい。
なお、この実験結果は、サンプルとして、実験例で用いたSUS316製の「ガスケット式面シール用のねじ込み式摺動部材」を用いたとしても、同様の結果が得られることは原理的に明らかである。
(その他)
本発明のステンレス鋼摺動部材としては、上記実施の形態における「ガスケット式面シール用のねじ込み式摺動部材」、「ボルト」、「ナット」に限らず、ワッシャー、配管、フランジなどのあらゆる摺動部材に用いられる。
また、上記実施例においては、冷間加工を施していないが、冷間加工を施すことにより、ステンレス鋼摺動部材を硬化させることができる。
その結果、ステンレス鋼摺動部材の摺動部の表面に形成した上記「0.1μm以上3.0μm以下」の表面皮膜と相まって、摺動部材の締め付け時にかじりが生じにくく、焼き付き防止に優れ、かつトルク係数の変動(トルク係数の標準偏差)の値が小さく、摺動部の締め付け軸力の管理を容易にさせた、安価なステンレス鋼摺動部材を形成することができる。
この発明にかかるステンレス鋼摺動部材は、ガスケット式面シール用のねじ込み式摺動部材などの摺動部材に利用される。
また、この発明によれば、摺動部材の締め付け時に、かじりが生じにくく、焼き付きに優れ、且つトルク係数のバラ付きを抑え、摺動部の締め付け軸力の管理を容易にさせたことにより、気密性、安全性が向上した、安価なステンレス鋼摺動部材を提供することにより、金属加工業界に大いに寄与する。
10 ガスケット式面シール用のねじ込み式摺動部材
12a 雄ナット
12b 雌ナット
14a 第1のグランド
14b 第2のグランド
16 ガスケット
30 ボルト
32 ボルト本体
34 頭部
36 軸
38a 首部
38b 雄ねじ
40 表面皮膜
50 ナット
52 ナット本体
54 頭部
56 雌ねじ
60 表面皮膜

Claims (2)

  1. 摺動部の表面に形成され、FeおよびCrを主体とする酸化物および/または水酸化物からなり、厚さが0.1μm以上で3.0μm以下の表面皮膜を有する、ステンレス鋼摺動部材。
  2. 前記表面皮膜は、原子%としてCrを10%以上含有し残分が実質的にFeであり、厚さが0.1μm以上で3.0μm以下の酸化皮膜および/または水酸化皮膜を有する、請求項1に記載のステンレス鋼摺動部材。
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