JP2016186036A - ストロンチウムアパタイト微粒子分散液の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】コーティング用途に好適である、有機溶媒中で安定に分散したストロンチウムアパタイト微粒子分散液を得るための、簡便で生産性の良好なストロンチウムアパタイト微粒子分散液の製造方法を与えること。
【解決手段】ハロゲンを含まない有機溶剤中において、繰り返し単位中にL−乳酸単位またはD−乳酸単位を20〜80モル%の範囲で含み該有機溶媒に可溶性のポリ乳酸共重合体の存在下、ストロンチウムアパタイトにメディアミルを使用して湿式分散処理を行う。
【選択図】なし
【解決手段】ハロゲンを含まない有機溶剤中において、繰り返し単位中にL−乳酸単位またはD−乳酸単位を20〜80モル%の範囲で含み該有機溶媒に可溶性のポリ乳酸共重合体の存在下、ストロンチウムアパタイトにメディアミルを使用して湿式分散処理を行う。
【選択図】なし
Description
本発明はコーティング用途に好適である、有機溶媒中で安定に分散したストロンチウムアパタイト微粒子分散液を得るための、簡便で生産性の良好なストロンチウムアパタイト微粒子分散液の製造方法に関する。
ヒドロキシアパタイトに代表される種々のアパタイトは生体親和性が高く、特に骨伝導性を示すことから、骨欠損部への充填剤としての用途や、或いは種々の生体インプラントとして人工関節、人工歯根等の表面にヒドロキシアパタイトをコートした材料が広く用いられている。一方で、ヒドロキシアパタイトに含まれるカルシウムイオンがストロンチウムに置き換わったストロンチウムアパタイトは、生体適合性や生体に対する安全性が確認されており、さらにストロンチウムアパタイトのユニークな特性の一つとしてX線造影性に優れることが挙げられる。このようなストロンチウムアパタイトの用途の一つとして、生体インプラントへの適用が挙げられる。例えば生体インプラントの表面コートに利用するなどのコーティング素材としての利用が可能であり、その場合、コートされた表面が生体親和性を示すと共に、X線造影性を付与出来るという利点が出てくる。コーティングする際の基材としては、チタンなどの金属や、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などのプラスチック材料が挙げられる。それらの表面にストロンチウムアパタイトを含む層をコーティングにより形成する場合、表面コート層の厚みや性状が均一であることが必要とされ、コーティング適性として、ストロンチウムアパタイトが出来るだけ微細で均一な微粒子であることと、ストロンチウムアパタイト微粒子の分散物を含有するコーティング液中においてストロンチウムアパタイト微粒子が安定に分散し、経時により沈降することや、沈殿物や凝集物を発生させることのない適性が要求される。従来の様々な製造方法で得られるストロンチウムアパタイトは粒状もしくは塊状の粉体として得られ、これらは有機溶媒等各種媒体中において安定で微粒子状に分散した分散物として得ることが困難で、コーティング用途に適用することが困難であった。
ストロンチウムの薬理作用に関して、例えば骨粗鬆症に対する予防効果が認められている。即ち、ストロンチウムイオンは生体内において骨芽細胞の働きを活性化し、一方で破骨細胞の活動を抑制する作用を有するとされ、実際にストロンチウムイオンの適切な濃度範囲において骨粗鬆症の予防に適用可能である。すでに欧州において医薬品として認可されているストロンチウムラネレートなどの投与により破骨細胞による過剰な骨吸収を抑制し、同時に骨芽細胞の増殖を促し、骨形成を促進する効果のあることが知られている(例えば、非特許文献1および非特許文献2等)。ストロンチウムイオンの上記のような作用を利用する観点から、例えば骨折や骨欠損部などの修復を目的とした整形外科、形成外科等の分野における臨床用途においても、ストロンチウムイオンの好ましい効果を利用することが想定される。具体的には、例えば生体内において用いられるインプラントからストロンチウムイオンが放出されれば、インプラント表面における新生骨の形成を促し、骨伝導性を飛躍的に向上させることが期待される。インプラントとしては、人工関節などに用いられるチタンおよびその合金やステンレス鋼等の種々の金属製インプラントや、人工骨などに利用されるリン酸カルシウム系セラミックス材料やバイオガラス、A−Wガラスセラミックなどの生体活性ガラス、或いは骨接合材に利用されるポリ乳酸や脊椎ケージにおけるPEEK、或いは人工靱帯に利用されるポリエステル繊維などのプラスチック材料に対しても、これらのインプラントと骨との接合を促進することが求められる用途においては、ストロンチウムイオンの骨形成促進効果を適用することが期待される。従って、これら各種インプラントの表面にストロンチウムを含む層を形成することが有効と考えられ、そのための方法として、コーティングによりストロンチウムアパタイト微粒子の層を形成する方法が考えられるが、具体的な方法は見出されておらず、そのためにストロンチウムを含むアパタイト微粒子分散液を得るための、簡便で生産性の良好なストロンチウムアパタイト微粒子分散液の製造方法が求められているのが現状である。
ストロンチウムアパタイトの製造方法やこれを利用したインプラントの製造に関しては様々な方法が用いられてきた。特許文献1にはストロンチウムアパタイト及び/またはリン酸ストロンチウムを含むリン酸ストロンチウム系失透ガラスからなる生体インプラント材料が開示されている。このリン酸ストロンチウム系失透ガラスの製造方法として例示される方法は、酸化ストロンチウムを五酸化燐とともにガラス原料成分として二酸化珪素およびアルミナ等を含む各種酸化物を加えて1600℃の高温で溶融し、冷却することで失透ガラスを製造するものである。この際、酸化ストロンチウムとともに酸化カルシウムを任意の割合で混合することで、アパタイト中にストロンチウムとカルシウムが任意の割合で含まれる固溶体が得られることが開示されている。この方法で得られる生体インプラント材料はストロンチウムアパタイトを含有するガラスもしくはその粉体であることから、使用方法としては充填剤などのバルク状態での利用方法に限られ、コーティング用途には適用出来ない問題があった。
特許文献2には、同様にストロンチウムアパタイト及び/またはリン酸ストロンチウムを含むリン酸ストロンチウム系失透ガラス粉末と練和剤を用いた医科用または歯科用硬化性組成物が開示されている。特に、歯科用セメント材料として、良好な硬化特性とX線造影能を備えることから好ましいが、この方法では、ガラス粉末中にストロンチウムアパタイト粒子が含まれているセメント材料であって、有機溶剤中に微粒子状態で分散液を作製することが困難であり、コーティング用途には適用出来ない問題があった。
特許文献3には、ストロンチウムアパタイトの製造方法として、リン酸水素ストロンチウムと水酸化ストロンチウムまたは炭酸ストロンチウムを、ポットミルを用いて混合、攪拌しメカノケミカル的な反応によりストロンチウムアパタイトの前駆体を得た後に、これを800℃程度の温度で仮焼することでストロンチウムアパタイトを合成する方法が開示されている。この方法では、高温でストロンチウムアパタイト粒子が凝結し塊状の凝集体を形成することから、有機溶剤中に微粒子状態で分散液を作製することが困難であり、コーティング用途には適用出来ない問題があった。
特許文献4には水系コーティング用途に好適であるストロンチウムアパタイトとその微粒子の製造方法が開示されている。これによると、高純度で、水中において分散安定性に優れたストロンチウムアパタイト微粒子の製造方法が開示されるが、分散媒体が水に限られることから、コーティングに利用する際、ストロンチウムアパタイトをインプラント表面に固定するために、水に可溶性もしくは分散性であるバインダーを選択する必要があった。一方で、インプラントに対するコーティングに好ましく用いられる材料としては、生体適合性と安全性が確認されている材料が好ましく、具体的にはポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリトリメチレンカーボネート等の生分解性を有するポリマーや、或いはポリジメチルシロキサン等の生体不活性である合成ポリマーが好ましく用いられる。これらのポリマーは何れも水に不溶性であり、コーティングに用いるためにはこれらを溶解する有機溶媒を使用する必要があった。従って、コーティング用途にストロンチウムアパタイトをこれらの有機溶媒可溶性ポリマーとともに利用するためには、必然的に有機溶媒中に安定に分散したストロンチウムアパタイト微粒子分散液が必要であり、そのための簡便で生産性の良好なストロンチウムアパタイト微粒子分散液の製造方法が求められていた。
P.J.Meunier, et al., New England Journal of Medicine, 350, 459−468 (2004).
M.E.Arlot, et al., J. Bone Miner Res, 23(2), 215−222 (2008).
本発明はコーティング用途に好適である、有機溶媒中で安定に分散したストロンチウムアパタイト微粒子分散液を得るための、簡便で生産性の良好なストロンチウムアパタイト微粒子分散液の製造方法を与えることを課題とする。
本発明の課題は、下記の製造方法を用いることで基本的に解決される。
1.ハロゲンを含まない有機溶剤中において、繰り返し単位中にL−乳酸単位またはD−乳酸単位を20〜80モル%の範囲で含み該有機溶媒に可溶性のポリ乳酸共重合体の存在下、ストロンチウムアパタイトにメディアミルを使用して湿式分散処理を行うストロンチウムアパタイト微粒子分散液の製造方法。
2.上記有機溶剤がアセトニトリルである上記1記載のストロンチウムアパタイト微粒子分散液の製造方法。
1.ハロゲンを含まない有機溶剤中において、繰り返し単位中にL−乳酸単位またはD−乳酸単位を20〜80モル%の範囲で含み該有機溶媒に可溶性のポリ乳酸共重合体の存在下、ストロンチウムアパタイトにメディアミルを使用して湿式分散処理を行うストロンチウムアパタイト微粒子分散液の製造方法。
2.上記有機溶剤がアセトニトリルである上記1記載のストロンチウムアパタイト微粒子分散液の製造方法。
本発明により、コーティング用途に好適である、有機溶媒中で安定に分散したストロンチウムアパタイト微粒子分散液を得るための、簡便で生産性の良好なストロンチウムアパタイト微粒子分散液の製造方法を与えることが出来る。
本発明において好ましく用いることの出来るストロンチウムアパタイトの合成方法として、例えば前述の特許文献4に示される方法が挙げられる。即ち、ストロンチウムアパタイトを合成する際に、その前駆体としてリン酸水素ストロンチウム(SrHPO4)を予め合成し、これをアルカリ条件下水中で40〜100℃の範囲で加熱することで、ストロンチウムアパタイトを製造する方法である。この方法により得られるストロンチウムアパタイトは微細な針状の結晶粒子の集合体であることが特徴で、これを用いて後述する有機溶剤中で、さらに後述するポリ乳酸共重合体とともに湿式分散処理を行うことで、分散安定性に優れたストロンチウムアパタイト微粒子分散液が得られる。また、製造に際して目的とするストロンチウムアパタイト以外の副生成物やその他不純物が含まれることなく、高純度のストロンチウムアパタイトが製造出来るため、安全性に優れたインプラントへのコーティング用途に好適なストロンチウムアパタイト微粒子分散液が得られることから、好ましく用いることが出来る。
本発明において、ストロンチウムアパタイトとしては、アパタイトを構成する金属元素としてストロンチウム以外にカルシウムが種々の比率で含まれていてもよい。この場合、ストロンチウムに対するカルシウムの比率は80モル%未満であることが好ましく、これ以上の比率でカルシウムが含まれている場合、ストロンチウムアパタイトとしての効果が認められない場合がある。
カルシウムを併せて含むストロンチウムアパタイト微粒子分散液の製造方法としては、前駆体としてストロンチウムとともに種々の割合でカルシウムを含むリン酸水素塩(HPO4 2−)を予め製造し、これを用いて同様にアルカリ処理を施し、さらに湿式分散処理を行うことで、カルシウムイオンを種々の割合で含むストロンチウムアパタイトを高純度で得ることが出来、これを用いて後述する有機溶剤中で、さらに後述するポリ乳酸共重合体とともに湿式分散処理を行うことで、分散安定性に優れたストロンチウムアパタイト微粒子分散液が得られる。
上記のストロンチウムアパタイトにおいて、さらにアパタイト中のリン酸基の一部が炭酸イオンに置換したストロンチウム炭酸アパタイトも本発明において好適に用いることが出来る。その具体的な合成方法としては、上記のリン酸水素ストロンチウムを原料に用いて、これと炭酸塩または炭酸水素塩を水中にて混合して反応を行うことでストロンチウム炭酸アパタイトが高純度で得られる。リン酸水素ストロンチウムと、炭酸塩または炭酸水素塩を水中にて混合して反応を行う際、用いる炭酸塩または炭酸水素塩としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム等の10℃の水に対する溶解性が1質量%以上である水溶性の高い炭酸塩または炭酸水素塩が特に好ましい。さらに、反応の際の条件として室温(25℃)もしくは室温以上の温度である場合が好ましく、さらに40℃以上である場合が好ましい。反応の際の温度が室温より低い場合には、リン酸水素ストロンチウムが完全にストロンチウム炭酸アパタイトに変換されずに生成物中に残存する場合がある。反応温度の上限としては100℃以下であることが好ましく、より好ましくは90℃以下である。
或いは、ストロンチウムアパタイトの別の合成方法として、ストロンチウムイオンとリン酸イオンを含む水溶液中から一段階の反応でストロンチウムアパタイト微粒子を合成することも出来、この場合、ストロンチウムイオンとともに種々の割合でカルシウムイオンを共存させて反応を行うことで、カルシウムを種々の割合で含むストロンチウムアパタイトを得ることが出来る(この場合、ストロンチウムに対するカルシウムの比率は80モル%未満であることが好ましい)。或いは、後述する実施例において示すように、リン酸イオンとともにフッ素イオンを加えて反応を行うことで、一段階の反応でストロンチウムフッ素アパタイトを製造することも出来る。これらを用いて後述するハロゲンを含まない有機溶剤中での湿式分散処理を行うことで、分散安定性に優れたストロンチウムアパタイト微粒子分散液が得られるため、本発明に好適に用いることが出来る。
本発明において用いることの出来るストロンチウムアパタイトには、さらにアパタイトを構成する全元素に対して1質量%を超えない範囲で、種々の割合でストロンチウムやカルシウム以外にも、マグネシウムや亜鉛、ナトリウム、カリウム等の、低濃度において生体に対する安全性が確認されている様々な金属イオンを含んでいても良く、また、水酸基に換えてストロンチウムアパタイト中にフッ素や塩素を含む場合であってもよい。或いは前述したような炭酸イオンを含む炭酸アパタイトであってもよく、或いはケイ酸イオンを含んでいてもよい。特に、本発明においては、ストロンチウム炭酸アパタイトを用いた場合に、生体内において適度な溶解性を示すことから極めて好ましく用いることが出来る。さらに、これら該アパタイトには生体に対して安全性が懸念される不純物を含んでいないことが重要であり、インプラントに対して適用した場合に、安全性に優れたインプラントを提供出来ることから高純度のストロンチウムアパタイト微粒子を用いることが重要である。
本発明において得られるストロンチウムアパタイト微粒子は、有機溶剤中に分散した状態において、光回折法や光散乱法で測定される体積平均粒子径が50〜500nmの範囲にあることが好ましい。また、粒子径分布曲線において、500nmを超える大きさの粒子の比率が1%未満であることが好ましい。この範囲の体積平均粒子径を有するストロンチウムアパタイト微粒子分散液を用いてコート液を作製すると、コート液中に含まれるストロンチウムアパタイト微粒子の分散安定性が良好で長時間に亘るコート液の使用に際しても、凝集物や沈降物の発生がない均一なコートが出来ることから極めて好ましい。
本発明で用いることの出来るストロンチウムアパタイト微粒子分散液としては、体積平均粒子径が50nm以上である場合が好ましい。ストロンチウムアパタイトの体積平均粒子径が50nm未満である場合には、これを用いてインプラント表面にコートした場合に、体液中にストロンチウムアパタイトが容易に溶解し、比較的短期間のうちにインプラント表面から消失してその効果が失われる場合がある。
本発明ではハロゲンを含まない有機溶剤中において、該有機溶剤に可溶性である後述するポリ乳酸共重合体とともに、ストロンチウムアパタイトに以下に述べるメディアミル装置を用いた湿式分散処理を行うことで、分散安定性に優れたストロンチウムアパタイト微粒子分散液を製造することが出来る。本発明においてストロンチウムアパタイト微粒子分散液を製造する際にハロゲンを含まない有機溶剤を分散媒に用いる理由は、クロロホルムやジクロロエタン、トリクロロエタンなどのハロゲンを含む有機溶剤を使用して下記に述べる湿式分散処理を行った場合、分散が進みにくく粗大粒子が残存し、さらに分散液の粘度が上昇することから、この場合作製された分散液はコーティング用途には適さないためである。これに対して後述するポリ乳酸共重合体を溶解するハロゲンを含まない有機溶剤を使用して湿式分散処理を行った場合、分散安定性が良好でコーティング用途に好適なストロンチウムアパタイト微粒子分散液が、簡便で生産性の良好な方法で製造出来るためである。
本発明で用いることの出来るハロゲンを含まない有機溶剤としては、後述するポリ乳酸共重合体を溶解するハロゲンを含まない有機溶剤であれば特に制限はないが、好ましい有機溶剤として、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル化合物や、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの各種ケトン類、トルエン、キシレンなどの芳香族溶剤、およびアセトニトリル、ジメチルホルムアミドなどの極性溶剤を挙げることが出来、これらの有機溶剤を単独或いは複数の種類を組み合わせて用いても良い。これらの有機溶剤のうち、特にアセトニトリルを用いた場合には、後述するポリ乳酸共重合体を溶解し、これを用いて作製されるストロンチウムアパタイト微粒子分散液の分散安定性が良好であることに加えて、ポリスチレンなどの各種有機溶剤に易溶性のプラスチック基材に対してコーティングを行う際に、アセトニトリルが基材を溶解しないことから均一なストロンチウムアパタイト微粒子のコーティングが可能であるため、極めて好ましく用いることが出来る。
本発明においてメディアミル装置を利用した湿式分散処理とは、具体的には、ハロゲンを含まない有機溶剤中に後述するポリ乳酸共重合体とともにストロンチウムアパタイトを添加し、メディアとしてガラスビーズやアルミナビーズ、その他のセラミックビーズ等を加えて振盪や攪拌を行い、該アパタイト粉体と該ビーズが機械的に衝突し、微粉砕されることでストロンチウムアパタイトの微粒子分散液を得る方法である。メディアを含まないで例えば超音波照射下で湿式分散処理を行った場合には、分散が十分に進行せず、粗大粒子が混在するため用いることが出来ない。或いは、ホモジナイザーなどの高速攪拌装置を使用した場合でも、同様に粗大粒子が混在することから用いることが出来ない。
メディアミル装置の具体的な例を挙げると、少量をバッチ方式で処理を行う場合には、メディアミル装置としてペイントコンディショナーを使用して数時間に亘る振盪を行うことで湿式分散処理を行うことが出来る。また上記したメディアミル装置として、ダイノーミル(WAB社製)に代表される横型ビーズミルのような連続方式での湿式分散処理が可能である装置を用いて、これを複数台用いて直列に配置して1パスで湿式分散処理を行っても良く、或いは1台のメディアミルを用いて複数回処理を繰り返すことも好ましく行うことが出来る。このような湿式分散処理を行うことで、アセトニトリル中においてストロンチウムアパタイト微粒子の分散液を製造することが出来る。
上記したメディアを利用してストロンチウムアパタイトの湿式分散処理を行う場合に、使用するメディアはセラミックビーズを用いることが好ましい。特に、ビーズが研磨されるなどしてビーズ由来の不純物が分散液中に混入することを防止することが好ましく、仮に、微細に粉砕されたビーズ由来の成分が混入した場合であっても、これが生体内において安全性が確認されていることが好ましい。こうした目的で利用出来るセラミックビーズとして、具体的にはZrO、立方晶ジルコニア、イットリウム安定化ジルコニア、ジルコニア強化アルミナなどのジルコニアを含有するセラミックビーズを最も好ましく用いることが出来る。また、メディアの平均直径は0.01〜10mmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.1〜5mmである。こうしたメディアを使用したメディアミルを用いる湿式分散処理の条件は、通常行われる室温での処理であり、特に処理時間や温度等に関する制限はない。また、パス回数については1回で十分である場合もあるが、2〜7回程度のパス回数で処理を行うことで、より粒子径分布が狭く、かつ分散安定性に優れたストロンチウムアパタイト微粒子分散液を製造することが出来る。
上記の方法を用いてハロゲンを含まない有機溶剤中においてストロンチウムアパタイト微粒子分散液を製造する際に、分散剤としてハロゲンを含まない有機溶剤に可溶性であるポリ乳酸共重合体を添加して湿式分散処理を行うことで、分散安定性に極めて優れたストロンチウムアパタイト微粒子分散液を製造することが出来る。ここで、ハロゲンを含まない有機溶剤中において可溶性であるとは、室温で5質量%以上の濃度で溶解するポリ乳酸共重合体である場合を意味する、ハロゲンを含まない有機溶剤に可溶性であるポリ乳酸共重合体としては、繰り返し単位中にL−乳酸単位またはD−乳酸単位を20〜80モル%の範囲で含み、該有機溶媒に可溶性のポリ乳酸共重合体であることが必要である。繰り返し単位中にL−乳酸単位またはD−乳酸単位が80モル%を超えて含まれるポリ乳酸を用いた場合、湿式分散処理に際して、分散が進みにくく粗大粒子が残存し、さらに分散液の粘度が上昇することから、この場合作製された分散液はコーティング用途には適さない。繰り返し単位中にL−乳酸単位またはD−乳酸単位が20モル%未満の割合で含まれている場合には、ポリ乳酸の分散剤としての好ましい効果が現れない。本発明で用いることの出来るポリ乳酸共重合体の例としては、ポリ乳酸共重合体中の繰り返し単位であるD−乳酸とL−乳酸の両方を含むポリ乳酸共重合体としてのポリ−D,L−乳酸が好ましく、この場合、繰り返し単位中に含まれるD体とL体の比率はモル比で2:8〜8:2の範囲である場合が好ましく、さらにD体とL体の比率が当モルで含まれている場合が最も好ましい。或いは、別の好ましいポリ乳酸共重合体の例として、ポリ乳酸共重合体の繰り返し単位中に、L−乳酸単位またはD−乳酸以外に、グリコール酸、ε−カプロラクトン、トリメチレンカーボネート等の繰り返し単位を併せて含むポリ乳酸共重合体であり、これらの乳酸以外の繰り返し単位の比率が80モル%未満であり、ハロゲンを含まない有機溶剤中において室温で5質量%以上の濃度で溶解するポリ乳酸共重合体である場合に用いることが出来る。
上記のポリ乳酸共重合体を用いてストロンチウムアパタイトの湿式分散処理を行う際の、ストロンチウムアパタイトに対する割合は、質量比でストロンチウムアパタイトに対して5〜200質量%の範囲で含まれることが好ましく、さらに5〜100質量%の範囲で含まれる場合がさらに好ましい。この比率を超えてポリ乳酸共重合体を用いた場合、得られるストロンチウムアパタイト微粒子分散液を用いてインプラント表面にコーティングを行った場合、インプラント表面のストロンチウムアパタイト微粒子がポリ乳酸共重合体に埋没してその性質が現れない場合がある。また、ポリ乳酸共重合体はストロンチウムアパタイトに対して5質量%以上の比率で含まれていることが好ましく、この場合において得られるストロンチウムアパタイト微粒子分散液の分散安定性が良好であり好ましい。
本発明においてインプラントの表面にコートする目的に好適であるための条件として、上記のハロゲンを含まない有機溶剤中に分散したストロンチウムアパタイト微粒子分散液において、該微粒子の分散安定性が良好であり、長期間(例えば室温に於いて1ヶ月間の静置条件下)の保存に際してもストロンチウムアパタイト微粒子の凝集や沈降が発生しないことが挙げられる。加えて、ストロンチウムアパタイト微粒子分散液を用いてコーティングを行った場合に、得られるコート層中に含まれるストロンチウムアパタイト微粒子同士の凝集が発生しておらず、微粒子がコート層中においても均一に分散して存在していることが好ましく、具体的にはコート液をその保存前後の状態で使用して透明なポリエステルフィルム表面に10μmの厚みでコート層を形成した際に、何れの場合においても可視光の透過度が80%以上である場合が好ましい。これ以下の透過度である場合には、ストロンチウムアパタイト微粒子の凝集がコート層内で形成されており、均一なコート層が形成されていない場合がある。
上記のポリ乳酸共重合体の分子量には好ましい範囲が存在し、重量平均分子量で1〜100万の範囲である場合が好ましく、さらに3〜30万の範囲である場合が最も好ましい。重量平均分子量が1万未満である場合には、これを用いて得られるストロンチウムアパタイト微粒子分散液の分散安定性が不十分で、経時によりストロンチウムアパタイト微粒子が沈降し、均一なコーティング液が作製出来ない場合がある。或いは、ポリ乳酸共重合体の重量平均分子量が100万を超える場合には、該分散液の粘度が高くなり、コーティング用途に用いた場合、均一なコーティングが出来ない場合がある。
上記のように、ストロンチウムアパタイトにポリ乳酸共重合体を用いてハロゲンを含まない有機溶剤中で湿式分散処理を行うことにより、体積平均粒子径が50〜500nmの範囲にあるストロンチウムアパタイト微粒子分散液を得ることが出来る。このようにして作製した該分散液を用いることで、本発明の目的とするコート液が得られ、このコート液を用いてインプラントの表面にコートすることで、ストロンチウムアパタイト微粒子を含む層を設けたインプラントが製造出来る。この際、インプラント表面におけるコート層の耐久性や密着性、力学的性質等をさらに改善する目的で、ポリ乳酸共重合体以外に他のポリマーをコート液に添加して用いることも好ましく行うことが出来る。こうした目的で用いることの出来るポリマーの具体的な例としては、ポリ−L−乳酸、ポリグリコール酸、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリトリメチレンカーボネート等の生分解性を有するポリマーや、或いはポリジメチルシロキサン等の生体不活性である合成ポリマーが好ましく用いられる。
本発明で得られるストロンチウムアパタイト微粒子分散液をコート液に用いてインプラントの表面にコート層を形成する場合、コート層の厚みには好ましい範囲が存在する。コート層の厚みを表す尺度として、表面の単位面積あたりにコートされたストロンチウムアパタイト微粒子とポリ乳酸共重合体の双方を足し合わせた乾燥質量を以て表した場合、好ましい範囲は単位平方メートル当たり0.05〜50gの範囲にある場合が好ましく、さらに0.5〜50gの範囲にある場合がさらに好ましい。
インプラント表面にストロンチウムアパタイト微粒子分散液を含むコート液を用いてコートを行う方法としては、インプラントの大きさや形状にあわせて種々の好適な方法を用いることが出来る。例えば、一つの方法として、コート液中にインプラントを浸漬して引き上げ、余分なコート液を除いた後、コート液を乾燥して表面層を形成する方法や、或いは該コート液をスプレー噴霧やカーテン塗布などの方法でインプラント表面にコート液を満遍なく付着させてコートを行い、その後に含まれる有機溶剤の乾燥を行って表面層を形成する方法など、既知の様々なコーティング方法を利用することが可能である。
上記のコート液中に含まれるストロンチウムアパタイト微粒子の固形分濃度については好ましい範囲が存在し、0.1質量%から20質量%の範囲に含まれることが好ましく、この範囲より低い濃度でストロンチウムアパタイト微粒子分散液を含むコート液を用いてインプラントに表面層を形成した場合に、表面層の厚みを上記した好ましい範囲に制御することが困難である。また、20質量%を超える濃度でストロンチウムアパタイト微粒子が含まれる場合、コート液の粘度が高くなり、インプラント表面に均一にコートすることが困難になる場合がある。
以下に実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の百分率は断りのない限り質量基準である。
実施例1
(ストロンチウムアパタイトの合成)
塩化ストロンチウム六水和物215g(0.8モル)および塩化カルシウム二水和物30g(0.2モル)を1000mlの三角フラスコ内に秤取り、蒸留水400gを加えて溶解した。これとは別に、500mlのガラスビーカー内にリン酸水素二アンモニウム132g(1モル)を秤取り、蒸留水300gを加えて溶解した。上記で作製した塩化ストロンチウムと塩化カルシウムを共に溶解した水溶液を導入した三角フラスコを50℃に調整した水浴上に移し、攪拌しながら滴下漏斗を用いて、リン酸水素二アンモニウムを溶解した水溶液を1時間に亘って徐々に滴下した。反応時の反応系のpHは6.5であった。水浴上から三角フラスコを移し、室温まで冷却した後、グラスフィルターを用いて吸引濾過を行った。フィルター上の白色沈殿は更に繰り返し蒸留水で洗浄を行った後、60℃に調節した乾燥器内で1昼夜乾燥を行い、白色の粉体を得た。生成物を、広角X線回折装置を用いて解析を行いリン酸水素ストロンチウムに由来するピークが観察され、それ以外の化合物に起因するピークは認められなかった。得られた粉体を、蛍光X線測定装置(ZSX primus、リガク社製)を用いて元素分析を行ったところ、カルシウムとストロンチウムのモル比が2:8で含まれていることが分かった。収量測定より収率95%でカルシウムを含むリン酸水素ストロンチウムが得られていることが判った。
(ストロンチウムアパタイトの合成)
塩化ストロンチウム六水和物215g(0.8モル)および塩化カルシウム二水和物30g(0.2モル)を1000mlの三角フラスコ内に秤取り、蒸留水400gを加えて溶解した。これとは別に、500mlのガラスビーカー内にリン酸水素二アンモニウム132g(1モル)を秤取り、蒸留水300gを加えて溶解した。上記で作製した塩化ストロンチウムと塩化カルシウムを共に溶解した水溶液を導入した三角フラスコを50℃に調整した水浴上に移し、攪拌しながら滴下漏斗を用いて、リン酸水素二アンモニウムを溶解した水溶液を1時間に亘って徐々に滴下した。反応時の反応系のpHは6.5であった。水浴上から三角フラスコを移し、室温まで冷却した後、グラスフィルターを用いて吸引濾過を行った。フィルター上の白色沈殿は更に繰り返し蒸留水で洗浄を行った後、60℃に調節した乾燥器内で1昼夜乾燥を行い、白色の粉体を得た。生成物を、広角X線回折装置を用いて解析を行いリン酸水素ストロンチウムに由来するピークが観察され、それ以外の化合物に起因するピークは認められなかった。得られた粉体を、蛍光X線測定装置(ZSX primus、リガク社製)を用いて元素分析を行ったところ、カルシウムとストロンチウムのモル比が2:8で含まれていることが分かった。収量測定より収率95%でカルシウムを含むリン酸水素ストロンチウムが得られていることが判った。
上記で得られたカルシウムを含むリン酸水素ストロンチウムの全量を1000ml三角フラスコへ移し、純水600gを加えて攪拌を行いながら、水酸化ナトリウムを35g添加した。反応系のpHは13であった。これをホットプレート上で攪拌しながら反応系の温度を70℃に上昇し、この温度で3時間加熱攪拌を行った。その後室温まで冷却し、吸引濾過を行って生成物をグラスフィルター上に回収した。純水により十分に洗浄を行った後、80℃に調節した乾燥器内で1昼夜加熱乾燥を行い白色の粉体を得た。得られた粉体は広角X線回折により解析を行い結晶性の高いストロンチウムアパタイトであることが判った。得られた粉体を先と同様に蛍光X線測定装置を用いて元素分析を行ったところ、カルシウムとストロンチウムのモル比が2:8で含まれていることが分かった。さらに、走査型電子顕微鏡により観察したところ、ナノメートルサイズの微細な針状のストロンチウムアパタイト微粒子が集合して粉体を形成していることが明確になった。
(ストロンチウムアパタイト微粒子分散液の製造と評価結果)
上記で得たカルシウムを含むストロンチウムアパタイト20gを500mlのポリプロピレン容器に移し、これにポリ乳酸共重合体(ポリ−D,L−乳酸、D体:L体=1:1(モル比)、重量平均分子量12万)を2g添加し、これにアセトニトリルを118gおよび粒径0.3mmのジルコニアビーズを160g加えて密閉し、ペイントコンディショナーを使用して連続して激しく振とう(シェイク)しながら6時間湿式分散処理を行った。その後、濾布を使用して分散物からジルコニアビーズを分離した。得られた分散物を用いて、分散しているストロンチウムアパタイト微粒子の大きさをレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(LA−910、堀場製作所社製)を用いて、アセトニトリルに分散液をさらに希釈してバッチ式セル内で測定し、図1に示す結果を得た。図1は、実施例1で得られた、ストロンチウムアパタイトに湿式分散処理を行って得られたストロンチウムアパタイト微粒子分散物の粒子径分布曲線を表す。求められた体積平均粒子径は、メジアン径として169nmで、標準偏差は31nmであった。上記で得られたストロンチウムアパタイト微粒子分散液の分散安定性を評価するために、分散液を透明ガラス製容器内に入れて1ヶ月間室温で静置しておき、静値後の分散物の様子を目視で観察したが、沈殿物や凝集物の発生もなく、安定に分散していることが確認された。さらに、経時保存後の分散液を用いて、これを透明ポリエステルフィルム上に乾燥塗布膜厚が約10μmになるよう塗布を行った。乾燥後に塗膜を観察したところ、500nmの可視光に対する透過度が85%である均一な塗布膜が形成されていることが確認された。さらに、細胞培養用ポリスチレン製シャーレの内面に対して上記と同じ経時保存後の分散液をコートしたところ、シャーレ内面に透明で均一なコート膜が形成されることを確認した。なお、実施例1で用いたポリ乳酸共重合体は、室温で5質量%以上の濃度でアセトニトリルに可溶であった。
上記で得たカルシウムを含むストロンチウムアパタイト20gを500mlのポリプロピレン容器に移し、これにポリ乳酸共重合体(ポリ−D,L−乳酸、D体:L体=1:1(モル比)、重量平均分子量12万)を2g添加し、これにアセトニトリルを118gおよび粒径0.3mmのジルコニアビーズを160g加えて密閉し、ペイントコンディショナーを使用して連続して激しく振とう(シェイク)しながら6時間湿式分散処理を行った。その後、濾布を使用して分散物からジルコニアビーズを分離した。得られた分散物を用いて、分散しているストロンチウムアパタイト微粒子の大きさをレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(LA−910、堀場製作所社製)を用いて、アセトニトリルに分散液をさらに希釈してバッチ式セル内で測定し、図1に示す結果を得た。図1は、実施例1で得られた、ストロンチウムアパタイトに湿式分散処理を行って得られたストロンチウムアパタイト微粒子分散物の粒子径分布曲線を表す。求められた体積平均粒子径は、メジアン径として169nmで、標準偏差は31nmであった。上記で得られたストロンチウムアパタイト微粒子分散液の分散安定性を評価するために、分散液を透明ガラス製容器内に入れて1ヶ月間室温で静置しておき、静値後の分散物の様子を目視で観察したが、沈殿物や凝集物の発生もなく、安定に分散していることが確認された。さらに、経時保存後の分散液を用いて、これを透明ポリエステルフィルム上に乾燥塗布膜厚が約10μmになるよう塗布を行った。乾燥後に塗膜を観察したところ、500nmの可視光に対する透過度が85%である均一な塗布膜が形成されていることが確認された。さらに、細胞培養用ポリスチレン製シャーレの内面に対して上記と同じ経時保存後の分散液をコートしたところ、シャーレ内面に透明で均一なコート膜が形成されることを確認した。なお、実施例1で用いたポリ乳酸共重合体は、室温で5質量%以上の濃度でアセトニトリルに可溶であった。
実施例2
上記実施例1において、ストロンチウムアパタイトの前駆体であるリン酸水素ストロンチウムの合成の際に、塩化カルシウム二水和物を加えず、塩化ストロンチウム六水和物267g(1.0モル)を用いた以外は実施例1と同様にしてリン酸水素ストロンチウムを合成した。さらに実施例1と同様にして水酸化ナトリウムを添加してアルカリ処理を行うことで高純度の結晶性であるストロンチウムアパタイトを合成した。これを用いて実施例1と同様にしてアセトニトリル中においてポリ乳酸共重合体(ポリ−D,L−乳酸、D体:L体=1:1(モル比)、重量平均分子量12万)を加えて湿式分散処理を行い、ストロンチウムアパタイト微粒子分散液を製造した。実施例1と同様にして分散液中のストロンチウムアパタイト微粒子分散物の粒子径分布を測定した結果、図2に示す粒子径分布曲線を得た。図2は、実施例2で得られた、ストロンチウムアパタイトに湿式分散処理を行って得られたストロンチウムアパタイト微粒子分散物の粒子径分布曲線を表す。求められた体積平均粒子径は、メジアン径として206nmで、標準偏差は50nmであった。分散液を透明ガラス製容器内に入れて1ヶ月間室温で静置しておき、静値後の分散物の様子を目視で観察したが、沈殿物や凝集物の発生もなく、安定に分散していることが確認された。さらに、経時保存後の分散液を用いて、これを透明ポリエステルフィルム上に乾燥塗布膜厚が約10μmになるよう塗布を行った。乾燥後に塗膜を観察したところ、500nmの可視光に対する透過度が85%である均一な塗布膜が形成されていることが確認された。
上記実施例1において、ストロンチウムアパタイトの前駆体であるリン酸水素ストロンチウムの合成の際に、塩化カルシウム二水和物を加えず、塩化ストロンチウム六水和物267g(1.0モル)を用いた以外は実施例1と同様にしてリン酸水素ストロンチウムを合成した。さらに実施例1と同様にして水酸化ナトリウムを添加してアルカリ処理を行うことで高純度の結晶性であるストロンチウムアパタイトを合成した。これを用いて実施例1と同様にしてアセトニトリル中においてポリ乳酸共重合体(ポリ−D,L−乳酸、D体:L体=1:1(モル比)、重量平均分子量12万)を加えて湿式分散処理を行い、ストロンチウムアパタイト微粒子分散液を製造した。実施例1と同様にして分散液中のストロンチウムアパタイト微粒子分散物の粒子径分布を測定した結果、図2に示す粒子径分布曲線を得た。図2は、実施例2で得られた、ストロンチウムアパタイトに湿式分散処理を行って得られたストロンチウムアパタイト微粒子分散物の粒子径分布曲線を表す。求められた体積平均粒子径は、メジアン径として206nmで、標準偏差は50nmであった。分散液を透明ガラス製容器内に入れて1ヶ月間室温で静置しておき、静値後の分散物の様子を目視で観察したが、沈殿物や凝集物の発生もなく、安定に分散していることが確認された。さらに、経時保存後の分散液を用いて、これを透明ポリエステルフィルム上に乾燥塗布膜厚が約10μmになるよう塗布を行った。乾燥後に塗膜を観察したところ、500nmの可視光に対する透過度が85%である均一な塗布膜が形成されていることが確認された。
比較例1
上記実施例1で得られたストロンチウムアパタイトに湿式分散する際に、ポリ乳酸共重合体を加えない以外は同様にして、アセトニトリル中において実施例1と同様に湿式分散処理を行い、得られた分散液中のストロンチウムアパタイトの粒子径分布を測定したところ図3に示す結果を得た。図3は、比較例1で作製した、ポリ乳酸共重合体を用いずに湿式分散処理して得たストロンチウムアパタイト微粒子分散物の粒子径分布曲線を表す。分散処理は進行しておらず、求められた体積平均粒子径は、メジアン径として3.14μmで、標準偏差は1.25μmであった。分散物を透明ガラス製容器内に入れて1ヶ月間室温で静置しておき、静値後の分散物の様子を目視で観察したところ、底面に沈殿物が確認され、再分散することのない凝集物が堆積していた。さらに、製造直後の分散液を用いて、これを透明ポリエステルフィルム上に乾燥塗布膜厚が約10μmになるよう塗布を行ったところ、表面が粗面化され白色の不均一な層が形成された。
上記実施例1で得られたストロンチウムアパタイトに湿式分散する際に、ポリ乳酸共重合体を加えない以外は同様にして、アセトニトリル中において実施例1と同様に湿式分散処理を行い、得られた分散液中のストロンチウムアパタイトの粒子径分布を測定したところ図3に示す結果を得た。図3は、比較例1で作製した、ポリ乳酸共重合体を用いずに湿式分散処理して得たストロンチウムアパタイト微粒子分散物の粒子径分布曲線を表す。分散処理は進行しておらず、求められた体積平均粒子径は、メジアン径として3.14μmで、標準偏差は1.25μmであった。分散物を透明ガラス製容器内に入れて1ヶ月間室温で静置しておき、静値後の分散物の様子を目視で観察したところ、底面に沈殿物が確認され、再分散することのない凝集物が堆積していた。さらに、製造直後の分散液を用いて、これを透明ポリエステルフィルム上に乾燥塗布膜厚が約10μmになるよう塗布を行ったところ、表面が粗面化され白色の不均一な層が形成された。
比較例2
上記実施例1で得られたストロンチウムアパタイトに湿式分散する際に、アセトニトリルに換えてクロロホルムを同量用いた以外は実施例1と同様に湿式分散処理を行い、得られた分散液中のストロンチウムアパタイトの粒子径分布を測定したところ図4に示す結果を得た。図4は、比較例2で作製した、クロロホルム中で湿式分散処理して得たストロンチウムアパタイト微粒子分散物の粒子径分布曲線を表す。分散処理の途中で系の粘度が上昇することが観察され、分散処理は十分には進行しておらず、二峰性の粒子径分布曲線を示し、求められた体積平均粒子径は、メジアン径として472nmであったが、標準偏差は4.0μmと極めてブロードであった。分散物を透明ガラス製容器内に入れて1ヶ月間室温で静置しておき、静値後の分散物の様子を目視で観察したところ、底面に沈殿物が確認され、再分散することのない凝集物が堆積していた。さらに、製造直後の分散液を用いて、これを透明ポリエステルフィルム上に乾燥塗布膜厚が約10μmになるよう塗布を行ったところ、表面が粗面化され白色の不均一な層が形成された。なお、比較例2で用いたポリ乳酸共重合体は、室温で5質量%以上の濃度でクロロホルムに可溶であった。
上記実施例1で得られたストロンチウムアパタイトに湿式分散する際に、アセトニトリルに換えてクロロホルムを同量用いた以外は実施例1と同様に湿式分散処理を行い、得られた分散液中のストロンチウムアパタイトの粒子径分布を測定したところ図4に示す結果を得た。図4は、比較例2で作製した、クロロホルム中で湿式分散処理して得たストロンチウムアパタイト微粒子分散物の粒子径分布曲線を表す。分散処理の途中で系の粘度が上昇することが観察され、分散処理は十分には進行しておらず、二峰性の粒子径分布曲線を示し、求められた体積平均粒子径は、メジアン径として472nmであったが、標準偏差は4.0μmと極めてブロードであった。分散物を透明ガラス製容器内に入れて1ヶ月間室温で静置しておき、静値後の分散物の様子を目視で観察したところ、底面に沈殿物が確認され、再分散することのない凝集物が堆積していた。さらに、製造直後の分散液を用いて、これを透明ポリエステルフィルム上に乾燥塗布膜厚が約10μmになるよう塗布を行ったところ、表面が粗面化され白色の不均一な層が形成された。なお、比較例2で用いたポリ乳酸共重合体は、室温で5質量%以上の濃度でクロロホルムに可溶であった。
実施例3
(ストロンチウム炭酸アパタイトの合成と湿式分散処理)
実施例1で作製したカルシウムとストロンチウムのモル比が2:8で含まれているリン酸水素ストロンチウムの全量を1000ml三角フラスコへ移し、純水600gを加えて攪拌を行いながら、炭酸ナトリウムを54g添加した。これをホットプレート上で攪拌しながら反応系の温度を70℃に上昇し、この温度で3時間加熱攪拌を行った。その後室温まで冷却し、吸引濾過を行って生成物をグラスフィルター上に回収した。純水により十分に洗浄を行った後、80℃に調節した乾燥器内で1昼夜加熱乾燥を行い白色の粉体を得た。得られた粉体は広角X線回折により解析を行い結晶性の高いストロンチウムアパタイトであることが判った。得られた粉体を先と同様に蛍光X線測定装置を用いて元素分析を行ったところ、カルシウムとストロンチウムのモル比が2:8で含まれていることが分かった。さらに、FT−IRを利用して生成物の赤外吸収スペクトルを測定したところ1460cm−1,1405cm−1および870cm−1付近に炭酸アパタイトに含まれる炭酸イオンに特徴的な吸収が確認され、生成物はストロンチウム炭酸アパタイトであることが分かった。さらに、実施例3で得られたストロンチウム炭酸アパタイト中に含まれる炭酸イオンの比率(質量%)について、Feathersotone等の方法に従い(J.D.B.Featherstone, Caries Res., 18, 63−66 (1984))1001cm−1付近のリン酸基に基づく吸収ピーク強度に対する1405cm−1の炭酸イオンに基づく吸収ピーク強度の比率から定量を行った結果、炭酸ストロンチウムアパタイト中に含まれる炭酸イオンの比率として20質量%の値が得られた。これを用いて実施例1と同様にしてアセトニトリル中においてポリ乳酸共重合体(ポリ−D,L−乳酸、D体:L体=1:1(モル比)、重量平均分子量12万)を加えて湿式分散処理を行い、ストロンチウムアパタイト微粒子分散液を製造した。実施例1と同様にして分散液中のストロンチウムアパタイト微粒子分散物の粒子径分布を測定した結果、図5に示す粒子径分布曲線を得た。図5は、実施例3で得られた、ストロンチウム炭酸アパタイトに湿式分散処理を行って得られたストロンチウムアパタイト微粒子分散物の粒子径分布曲線を表す。求められた体積平均粒子径は、メジアン径として204nmで、標準偏差は48nmであった。分散液を透明ガラス製容器内に入れて1ヶ月間室温で静置しておき、静値後の分散物の様子を目視で観察したが、沈殿物や凝集物の発生もなく、安定に分散していることが確認された。さらに、経時保存後の分散液を用いて、これを透明ポリエステルフィルム上に乾燥塗布膜厚が約10μmになるよう塗布を行った。乾燥後に塗膜を観察したところ、500nmの可視光に対する透過度が90%である均一な塗布膜が形成されていることが確認された。
(ストロンチウム炭酸アパタイトの合成と湿式分散処理)
実施例1で作製したカルシウムとストロンチウムのモル比が2:8で含まれているリン酸水素ストロンチウムの全量を1000ml三角フラスコへ移し、純水600gを加えて攪拌を行いながら、炭酸ナトリウムを54g添加した。これをホットプレート上で攪拌しながら反応系の温度を70℃に上昇し、この温度で3時間加熱攪拌を行った。その後室温まで冷却し、吸引濾過を行って生成物をグラスフィルター上に回収した。純水により十分に洗浄を行った後、80℃に調節した乾燥器内で1昼夜加熱乾燥を行い白色の粉体を得た。得られた粉体は広角X線回折により解析を行い結晶性の高いストロンチウムアパタイトであることが判った。得られた粉体を先と同様に蛍光X線測定装置を用いて元素分析を行ったところ、カルシウムとストロンチウムのモル比が2:8で含まれていることが分かった。さらに、FT−IRを利用して生成物の赤外吸収スペクトルを測定したところ1460cm−1,1405cm−1および870cm−1付近に炭酸アパタイトに含まれる炭酸イオンに特徴的な吸収が確認され、生成物はストロンチウム炭酸アパタイトであることが分かった。さらに、実施例3で得られたストロンチウム炭酸アパタイト中に含まれる炭酸イオンの比率(質量%)について、Feathersotone等の方法に従い(J.D.B.Featherstone, Caries Res., 18, 63−66 (1984))1001cm−1付近のリン酸基に基づく吸収ピーク強度に対する1405cm−1の炭酸イオンに基づく吸収ピーク強度の比率から定量を行った結果、炭酸ストロンチウムアパタイト中に含まれる炭酸イオンの比率として20質量%の値が得られた。これを用いて実施例1と同様にしてアセトニトリル中においてポリ乳酸共重合体(ポリ−D,L−乳酸、D体:L体=1:1(モル比)、重量平均分子量12万)を加えて湿式分散処理を行い、ストロンチウムアパタイト微粒子分散液を製造した。実施例1と同様にして分散液中のストロンチウムアパタイト微粒子分散物の粒子径分布を測定した結果、図5に示す粒子径分布曲線を得た。図5は、実施例3で得られた、ストロンチウム炭酸アパタイトに湿式分散処理を行って得られたストロンチウムアパタイト微粒子分散物の粒子径分布曲線を表す。求められた体積平均粒子径は、メジアン径として204nmで、標準偏差は48nmであった。分散液を透明ガラス製容器内に入れて1ヶ月間室温で静置しておき、静値後の分散物の様子を目視で観察したが、沈殿物や凝集物の発生もなく、安定に分散していることが確認された。さらに、経時保存後の分散液を用いて、これを透明ポリエステルフィルム上に乾燥塗布膜厚が約10μmになるよう塗布を行った。乾燥後に塗膜を観察したところ、500nmの可視光に対する透過度が90%である均一な塗布膜が形成されていることが確認された。
実施例4
(ストロンチウムフッ素アパタイトの合成と湿式分散処理)
塩化ストロンチウム六水和物134g(0.5モル)を1000mlの三角フラスコ内に秤取り、イオン交換水350gを加えて溶解した。これとは別に、500mlのガラスビーカー内にリン酸水素二アンモニウム40g(0.3モル)、炭酸ナトリウム11g(0.1モル)、およびフッ化ナトリウム4.2g(0.1モル)を秤取り、イオン交換水300gを加えて溶解した。上記で作製した塩化ストロンチウム水溶液を導入した三角フラスコを50℃に調整した水浴上に移し、攪拌しながら滴下漏斗を用いて、リン酸水素二アンモニウム、炭酸ナトリウムおよびフッ化ナトリウムを溶解した水溶液を1時間に亘って徐々に滴下した。反応時の反応系のpHは4であった。滴下終了後さらに1時間加熱攪拌を行った。その後水浴上から三角フラスコを移し、室温まで冷却した後、グラスフィルターを用いて生成した白色沈殿を吸引濾過した。フィルター上の白色沈殿は更に繰り返しイオン交換水で洗浄を行った後、60℃に調節した乾燥器内で1昼夜乾燥を行い、白色の粉体を得た。生成物の収量は、ストロンチウムフッ素アパタイトとして計算した理論収量に対してほぼ100質量%の収量であった。
(ストロンチウムフッ素アパタイトの合成と湿式分散処理)
塩化ストロンチウム六水和物134g(0.5モル)を1000mlの三角フラスコ内に秤取り、イオン交換水350gを加えて溶解した。これとは別に、500mlのガラスビーカー内にリン酸水素二アンモニウム40g(0.3モル)、炭酸ナトリウム11g(0.1モル)、およびフッ化ナトリウム4.2g(0.1モル)を秤取り、イオン交換水300gを加えて溶解した。上記で作製した塩化ストロンチウム水溶液を導入した三角フラスコを50℃に調整した水浴上に移し、攪拌しながら滴下漏斗を用いて、リン酸水素二アンモニウム、炭酸ナトリウムおよびフッ化ナトリウムを溶解した水溶液を1時間に亘って徐々に滴下した。反応時の反応系のpHは4であった。滴下終了後さらに1時間加熱攪拌を行った。その後水浴上から三角フラスコを移し、室温まで冷却した後、グラスフィルターを用いて生成した白色沈殿を吸引濾過した。フィルター上の白色沈殿は更に繰り返しイオン交換水で洗浄を行った後、60℃に調節した乾燥器内で1昼夜乾燥を行い、白色の粉体を得た。生成物の収量は、ストロンチウムフッ素アパタイトとして計算した理論収量に対してほぼ100質量%の収量であった。
得られた生成物を、広角X線回折装置を用いて解析を行い、ストロンチウムフッ素アパタイトに由来するピークのみが観察され、それ以外の不純物に起因するピークは認められなかった。さらに生成物をFT−IRを用いて解析を行い、生成物はストロンチウムアパタイトであり、炭酸イオンは結晶中に含まれておらず高純度のストロンチウムフッ素アパタイトが得られていることが明らかとなった。また、走査型電子顕微鏡による観察の結果、生成物は、微細な六角柱状の長細いナノメートルサイズの微結晶の集合体から構成されていることが明らかとなった。断面の長さは30ナノメートル前後であり、長軸側の長さは、大凡200〜300ナノメートルであった。蛍光X線測定による元素分析を行った結果、高純度のストロンチウムフッ素アパタイトであることが確認された。これを用いて実施例1と同様にしてアセトニトリル中においてポリ乳酸共重合体(ポリ−D,L−乳酸、D体:L体=1:1(モル比)、重量平均分子量12万)を加えて湿式分散処理を行い、ストロンチウムアパタイト微粒子分散液を製造した。実施例1と同様にして分散液中のストロンチウムアパタイト微粒子分散物の粒子径分布を測定した結果、図6に示す粒子径分布曲線を得た。図6は、実施例4で得られた、ストロンチウムフッ素アパタイトに湿式分散処理を行って得られたストロンチウムアパタイト微粒子分散物の粒子径分布曲線を表す。求められた体積平均粒子径は、メジアン径として224nmで、標準偏差は88nmであった。分散液を透明ガラス製容器内に入れて1ヶ月間室温で静置しておき、静値後の分散物の様子を目視で観察したが、沈殿物や凝集物の発生もなく、安定に分散していることが確認された。さらに、経時保存後の分散液を用いて、これを透明ポリエステルフィルム上に乾燥塗布膜厚が約10μmになるよう塗布を行った。乾燥後に塗膜を観察したところ、500nmの可視光に対する透過度が90%である均一な塗布膜が形成されていることが確認された。
実施例5〜11および比較例3〜7
実施例2で作製したストロンチウムアパタイトを用いて、実施例1と同様にして分散剤としてポリ乳酸共重合体(ポリ−D,L−乳酸、D体:L体=1:1(モル比)、重量平均分子量12万)を加えて湿式分散処理を行い、ストロンチウムアパタイト微粒子分散液を製造した。実施例5では有機溶剤に1,4−ジオキサン、実施例6では有機溶剤にテトラヒドロフラン、実施例7では有機溶剤にメチルエチルケトン、実施例8では有機溶剤にメチルイソブチルケトン、実施例9では有機溶剤にトルエン、実施例10では有機溶剤にジメチルホルムアミド、実施例11では有機溶剤にN−メチル−2−ピロリドンを各々実施例1におけるアセトニトリルに替えて同量使用して湿式分散処理を行った。実施例5〜11で用いたポリ乳酸共重合体は、室温で5質量%以上の濃度で、各々で用いた有機溶剤に可溶であった。また、比較例3として、有機溶剤にジクロロメタン、比較例4として、有機溶剤に1,2−ジクロロエタン、比較例5として、有機溶剤にトリクロロエタンの各含ハロゲン有機溶剤を各々実施例1におけるアセトニトリルに替えて同量使用して湿式分散処理を行った。比較例3〜5で用いたポリ乳酸共重合体は、室温で5質量%以上の濃度で、各々で用いた有機溶剤に可溶であった。さらに、比較例6として、有機溶剤にポリ乳酸共重合体を溶解しないシクロヘキサン、比較例7として、有機溶剤にポリ乳酸共重合体を溶解しないイソプロパノールを用いて、各々実施例1におけるアセトニトリルに替えて同量使用して湿式分散処理を行った。各々の実施例について、実施例1と同様にして分散液中のストロンチウムアパタイト微粒子分散物の粒子径分布を測定した。その結果、実施例5〜11の場合には求められた体積平均粒子径は、メジアン径として何れの場合も250〜400nmの範囲にあり、標準偏差は50〜75nmの範囲であった。分散液を透明ガラス製容器内に入れて1ヶ月間室温で静置しておき、静値後の分散物の様子を目視で観察したが、沈殿物や凝集物の発生もなく、安定に分散していることが確認された。さらに、経時保存後の分散液を用いて、これを透明ポリエステルフィルム上に乾燥塗布膜厚が約10μmになるよう塗布を行った。乾燥後に塗膜を観察したところ、500nmの可視光に対する透過度が80%以上である均一な塗布膜が形成されていることが確認された。これに対して、比較例3〜5では分散処理の途中で系の粘度が上昇することが観察され、分散処理は十分には進行しておらず、目視で凝集物が多量に存在していることが確認された。また、比較例6および7ではストロンチウムアパタイトの分散は進行せず、液中に粉体のまま残存する結果であった。さらに、細胞培養用ポリスチレン製シャーレの内面に対して実施例5〜11の分散液をコートしたところ、シャーレが溶解してコート膜を形成することは出来なかった。実施例1では有機溶剤としてアセトニトリルを使用し、ポリスチレン基材への均一なコートが出来たが、これ以外の有機溶剤を使用した場合は、何れも不可であった。
実施例2で作製したストロンチウムアパタイトを用いて、実施例1と同様にして分散剤としてポリ乳酸共重合体(ポリ−D,L−乳酸、D体:L体=1:1(モル比)、重量平均分子量12万)を加えて湿式分散処理を行い、ストロンチウムアパタイト微粒子分散液を製造した。実施例5では有機溶剤に1,4−ジオキサン、実施例6では有機溶剤にテトラヒドロフラン、実施例7では有機溶剤にメチルエチルケトン、実施例8では有機溶剤にメチルイソブチルケトン、実施例9では有機溶剤にトルエン、実施例10では有機溶剤にジメチルホルムアミド、実施例11では有機溶剤にN−メチル−2−ピロリドンを各々実施例1におけるアセトニトリルに替えて同量使用して湿式分散処理を行った。実施例5〜11で用いたポリ乳酸共重合体は、室温で5質量%以上の濃度で、各々で用いた有機溶剤に可溶であった。また、比較例3として、有機溶剤にジクロロメタン、比較例4として、有機溶剤に1,2−ジクロロエタン、比較例5として、有機溶剤にトリクロロエタンの各含ハロゲン有機溶剤を各々実施例1におけるアセトニトリルに替えて同量使用して湿式分散処理を行った。比較例3〜5で用いたポリ乳酸共重合体は、室温で5質量%以上の濃度で、各々で用いた有機溶剤に可溶であった。さらに、比較例6として、有機溶剤にポリ乳酸共重合体を溶解しないシクロヘキサン、比較例7として、有機溶剤にポリ乳酸共重合体を溶解しないイソプロパノールを用いて、各々実施例1におけるアセトニトリルに替えて同量使用して湿式分散処理を行った。各々の実施例について、実施例1と同様にして分散液中のストロンチウムアパタイト微粒子分散物の粒子径分布を測定した。その結果、実施例5〜11の場合には求められた体積平均粒子径は、メジアン径として何れの場合も250〜400nmの範囲にあり、標準偏差は50〜75nmの範囲であった。分散液を透明ガラス製容器内に入れて1ヶ月間室温で静置しておき、静値後の分散物の様子を目視で観察したが、沈殿物や凝集物の発生もなく、安定に分散していることが確認された。さらに、経時保存後の分散液を用いて、これを透明ポリエステルフィルム上に乾燥塗布膜厚が約10μmになるよう塗布を行った。乾燥後に塗膜を観察したところ、500nmの可視光に対する透過度が80%以上である均一な塗布膜が形成されていることが確認された。これに対して、比較例3〜5では分散処理の途中で系の粘度が上昇することが観察され、分散処理は十分には進行しておらず、目視で凝集物が多量に存在していることが確認された。また、比較例6および7ではストロンチウムアパタイトの分散は進行せず、液中に粉体のまま残存する結果であった。さらに、細胞培養用ポリスチレン製シャーレの内面に対して実施例5〜11の分散液をコートしたところ、シャーレが溶解してコート膜を形成することは出来なかった。実施例1では有機溶剤としてアセトニトリルを使用し、ポリスチレン基材への均一なコートが出来たが、これ以外の有機溶剤を使用した場合は、何れも不可であった。
実施例12〜14および比較例8〜10
実施例2で作製したストロンチウムアパタイトを用いて、実施例12では、実施例1の分散剤に替えてポリ乳酸共重合体(ポリ−D,L−乳酸、D体:L体=2:8(モル比)、重量平均分子量13万)を使用し、実施例13では、実施例1の分散剤に替えてポリ乳酸−グリコール酸共重合体(D体:L体:グリコール酸=2.5:2.5:5(モル比)、重量平均分子量15万)を使用し、実施例14では、実施例1の分散剤に替えてポリ乳酸−ε−カプロラクトン共重合体(ポリ−L−乳酸:ε−カプロラクトン=7:3(モル比)、重量平均分子量19万)を使用して実施例1と同様にして湿式分散処理を行い、ストロンチウムアパタイト微粒子分散液を製造した。一方、比較例8として、実施例1の分散剤に替えてポリ乳酸共重合体(ポリ−D,L−乳酸、D体:L体=1:9(モル比)、重量平均分子量16万)を使用し、比較例9として、実施例1の分散剤に替えてポリ−L−乳酸(L体100モル%、数平均分子量20万)を使用し、比較例10として、実施例1の分散剤に替えてポリ−ε−カプロラクトン(重量平均分子量10万)を使用して実施例1と同様に湿式分散処理を行った。その結果、実施例12〜14では実施例1と同様に良好な分散安定性と均一な塗布膜が形成されたが、比較例8〜10では分散処理が進行せず、凝集物が発生した。なお、実施例12〜14および比較例8〜10で用いた各分散剤は、室温で5質量%以上の濃度で、アセトニトリルに可溶であった。
実施例2で作製したストロンチウムアパタイトを用いて、実施例12では、実施例1の分散剤に替えてポリ乳酸共重合体(ポリ−D,L−乳酸、D体:L体=2:8(モル比)、重量平均分子量13万)を使用し、実施例13では、実施例1の分散剤に替えてポリ乳酸−グリコール酸共重合体(D体:L体:グリコール酸=2.5:2.5:5(モル比)、重量平均分子量15万)を使用し、実施例14では、実施例1の分散剤に替えてポリ乳酸−ε−カプロラクトン共重合体(ポリ−L−乳酸:ε−カプロラクトン=7:3(モル比)、重量平均分子量19万)を使用して実施例1と同様にして湿式分散処理を行い、ストロンチウムアパタイト微粒子分散液を製造した。一方、比較例8として、実施例1の分散剤に替えてポリ乳酸共重合体(ポリ−D,L−乳酸、D体:L体=1:9(モル比)、重量平均分子量16万)を使用し、比較例9として、実施例1の分散剤に替えてポリ−L−乳酸(L体100モル%、数平均分子量20万)を使用し、比較例10として、実施例1の分散剤に替えてポリ−ε−カプロラクトン(重量平均分子量10万)を使用して実施例1と同様に湿式分散処理を行った。その結果、実施例12〜14では実施例1と同様に良好な分散安定性と均一な塗布膜が形成されたが、比較例8〜10では分散処理が進行せず、凝集物が発生した。なお、実施例12〜14および比較例8〜10で用いた各分散剤は、室温で5質量%以上の濃度で、アセトニトリルに可溶であった。
本発明のストロンチウムアパタイト分散液を用いたコート液は各種プラスチック、セラミックスおよび金属表面にコートすることで表面を改質し、アパタイトの特性を利用したタンパクやDNA等各種有機物に対する吸着性能を有する材料として利用することが可能である。或いは、フィルムや繊維への表面処理を行うことで生体に親和性を有する各種親水性材料を提供することが可能である。
Claims (2)
- ハロゲンを含まない有機溶剤中において、繰り返し単位中にL−乳酸単位またはD−乳酸単位を20〜80モル%の範囲で含み該有機溶媒に可溶性のポリ乳酸共重合体の存在下、ストロンチウムアパタイトにメディアミルを使用して湿式分散処理を行うストロンチウムアパタイト微粒子分散液の製造方法。
- 上記有機溶剤がアセトニトリルである請求項1記載のストロンチウムアパタイト微粒子分散液の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015067041A JP2016186036A (ja) | 2015-03-27 | 2015-03-27 | ストロンチウムアパタイト微粒子分散液の製造方法 |
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JP2015067041A JP2016186036A (ja) | 2015-03-27 | 2015-03-27 | ストロンチウムアパタイト微粒子分散液の製造方法 |
Publications (1)
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ID=57203036
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JP2015067041A Pending JP2016186036A (ja) | 2015-03-27 | 2015-03-27 | ストロンチウムアパタイト微粒子分散液の製造方法 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2017035651A (ja) * | 2015-08-07 | 2017-02-16 | 学校法人 神野学園 | Dna吸着担体及びその利用方法 |
JP2018076223A (ja) * | 2016-10-29 | 2018-05-17 | 公立大学法人奈良県立医科大学 | ケイ酸ストロンチウムアパタイトおよびこれを含む細胞培養基材と生体活性インプラント |
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2015
- 2015-03-27 JP JP2015067041A patent/JP2016186036A/ja active Pending
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JP2018076223A (ja) * | 2016-10-29 | 2018-05-17 | 公立大学法人奈良県立医科大学 | ケイ酸ストロンチウムアパタイトおよびこれを含む細胞培養基材と生体活性インプラント |
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