以下、本実施形態の系統連系制御装置10を図面に基づいて説明する。なお、図面は、概念図であり、細部構造の寸法まで規定するものではない。
図1に示すように、本実施形態の系統連系制御装置10は、直流電源11、コンバータ12、インバータ13、フィルタ回路14、検出器15および制御装置16を備えている。また、検出器15は、リアクトル電流検出器15a、系統電圧検出器15b、直流電圧検出器15cおよび出力電流検出器15dを備えている。
直流電源11は、直流電力を出力する。直流電源11は、直流電力を出力することができれば良く、限定されない。直流電源11は、例えば、燃料電池を用いることができる。燃料電池は、燃料と酸化剤ガスとによって発電する発電装置であり、種々の燃料電池(例えば、公知の固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)など)を用いることができる。また、直流電源11は、燃料電池以外の発電装置(例えば、太陽光発電装置)を用いることもできる。さらに、直流電源11は、鉛蓄電池(バッテリ)、リチウムイオン電池などを用いることもできる。また、直流電源11は、ガスエンジン発電機などを用いることもできる。この場合、直流電源11は、交流発電機が出力する交流電力を平滑回路等で平滑して、直流電力を生成することができる。同図に示すように、直流電源11は、出力側端子11a,11bを備えている。出力側端子11aは、直流電源11の正極(+)に接続されており、出力側端子11bは、直流電源11の負極(−)に接続されている。
コンバータ12は、直流電源11から出力される直流電力を昇圧して、インバータ13に出力する。コンバータ12は、入力側端子12a,12bおよび出力側端子12c,12dを備えている。直流電源11の出力側端子11aと、コンバータ12の入力側端子12aとの間には、電路17aが形成されている。また、直流電源11の出力側端子11bと、コンバータ12の入力側端子12bとの間には、電路17bが形成されている。直流電源11から出力された直流電力は、電路17a,17bを介してコンバータ12に入力される。そして、コンバータ12によって昇圧された直流電力は、出力側端子12c,12dから出力される。電路17a,17bは、例えば、公知の電力用電線を用いることができる。このことは、以降に示す電路についても同様である。
コンバータ12は、リアクトル12e、ダイオード12f、スイッチング素子12gおよびコンデンサ12hを備えている。これらの素子は、公知の電力用デバイスを用いることができる。例えば、スイッチング素子12gは、公知の電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)などを用いることができる。コンデンサ12hは、公知の電解コンデンサを用いることができる。
コンバータ12の入力側端子12aと出力側端子12cとの間には、電路17cが形成されている。また、コンバータ12の入力側端子12bと出力側端子12dとの間には、電路17dが形成されている。電路17cには、入力側端子12a側から順に、リアクトル12e、ダイオード12fが設けられている。また、リアクトル12eとダイオード12fとの間の電路17cには、接続点12iが設けられており、接続点12iには、スイッチング素子12gのドレイン12g1が接続されている。スイッチング素子12gのソース12g2は、電路17dに設けられる接続点12jに接続されており、接続点12iと接続点12jとの間には、電路17eが形成されている。なお、スイッチング素子12gのゲート12g3は、駆動回路16eを介して、後述する制御装置16に接続されている。駆動回路16eは、公知のドライバ回路を用いることができる。
また、ダイオード12fと出力側端子12cとの間の電路17cには、接続点12kが設けられており、接続点12kには、コンデンサ12hの一端側(正極側端子)が接続されている。コンデンサ12hの他端側(負極側端子)は、電路17dに設けられる接続点12lに接続されている。なお、コンバータ12は、直流電源11から出力される直流電力を昇圧することができれば良く、上述の構成に限定されるものではない。
コンバータ12の出力側端子12cと、インバータ13の入力側端子13aとの間には、電路17fが形成されている。また、コンバータ12の出力側端子12dと、インバータ13の入力側端子13bとの間には、電路17gが形成されている。電路17fと電路17gとの間には、コンバータ12の出力電圧(インバータ13に入力される直流電圧)を検出する直流電圧検出器15cが設けられている。
直流電圧検出器15cは、例えば、電路17fと電路17gとの間の直流電圧を、抵抗値が既知の抵抗器によって分圧して、分圧された電圧値に基づいてコンバータ12の出力電圧(インバータ13に入力される直流電圧)を検出することができる。なお、上述の抵抗器によって分圧された直流電圧を、制御装置16に入力して、制御装置16によってコンバータ12の出力電圧(直流電圧)を算出することもできる。
制御装置16は、出力電力の目標値に基づいて、コンバータ12のスイッチング素子12gを駆動させるパルス信号のデューティ比を決定する。制御装置16は、駆動回路16e(ドライバ回路)を介して、当該デューティ比に基づくパルス信号をスイッチング素子12gのゲート12g3に付与する。スイッチング素子12gのゲート12g3に付与される電圧がハイレベルのときには、スイッチング素子12gのドレイン12g1とソース12g2との間が導通状態になり、リアクトル12eに電磁エネルギーが蓄えられる。
スイッチング素子12gのゲート12g3に付与される電圧がローレベルのときには、スイッチング素子12gのドレイン12g1とソース12g2との間が遮断された開放状態になり、リアクトル12eに蓄えられた電磁エネルギーがコンデンサ12hに充電されて、コンバータ12の出力電力は増大する。このようにして、制御装置16は、コンバータ12の出力電力を所望の電力値(出力電力の目標値)に制御することができる。
インバータ13は、直流電源11と交流の系統電源20との間に配設されており、直流電源11から出力された直流電力を交流電力に変換する。本実施形態では、インバータ13は、コンバータ12を介して直流電源11に接続されているが、直流電源11が必要な直流電力を出力可能な場合には、コンバータ12を省略することができる。
インバータ13は、入力側端子13a,13bおよび出力側端子13c,13dを備えている。インバータ13の出力側端子13cと、系統電源20の接続端子20aとの間には、電路21が形成されている。また、インバータ13の出力側端子13dと、系統電源20の接続端子20bとの間には、電路22が形成されている。電路21,22は、インバータ13と系統電源20との間を電気的に接続する。つまり、インバータ13から出力された交流電力は、電路21,22を介して系統電源20側に出力される。系統電源20側には、負荷(図示略)が接続可能になっており、インバータ13から出力された交流電力は、負荷に供給可能である。なお、系統電源20は、電力会社が保有する商用の配電線網から供給される電源をいう。
インバータ13は、複数(本実施形態では、4つ)のスイッチング素子(第一スイッチング素子13e〜第四スイッチング素子13h)を備えている。第一スイッチング素子13e〜第四スイッチング素子13hは、コンバータ12のスイッチング素子12gと同様に、公知の電界効果トランジスタ(FET)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などを用いることができる。図1に示すように、これらのスイッチング素子には、還流ダイオードがそれぞれ設けられている。還流ダイオードは、スイッチング素子のボディダイオード(寄生ダイオード)を用いることができる。また、還流ダイオードは、別途設けることもでき、スイッチング素子にそれぞれ並列接続することができる。
同図に示すように、インバータ13の入力側端子13aと、第一スイッチング素子13eのドレイン13e1と、第三スイッチング素子13gのドレイン13g1との間には、電路17hが形成されている。また、インバータ13の入力側端子13bと、第二スイッチング素子13fのソース13f2と、第四スイッチング素子13hのソース13h2との間には、電路17iが形成されている。
第一スイッチング素子13eおよび第二スイッチング素子13fは、電路17hと電路17iとの間において直列接続されており、第一スイッチング素子13eのソース13e2と、第二スイッチング素子13fのドレイン13f1との間には、電路17jが形成されている。また、第三スイッチング素子13gおよび第四スイッチング素子13hは、電路17hと電路17iとの間において直列接続されており、第三スイッチング素子13gのソース13g2と、第四スイッチング素子13hのドレイン13h1との間には、電路17kが形成されている。つまり、直列接続された第一スイッチング素子13eおよび第二スイッチング素子13fと、直列接続された第三スイッチング素子13gおよび第四スイッチング素子13hとは、電路17hと電路17iとの間において並列接続されている。
電路17jには、接続点13iが設けられており、接続点13iと、インバータ13の出力側端子13cとの間には、電路17lが形成されている。また、電路17kには、接続点13jが設けられており、接続点13jとインバータ13の出力側端子13dとの間には、電路17mが形成されている。以上のようにして、第一スイッチング素子13e〜第四スイッチング素子13hは、フルブリッジ接続されている。
第一スイッチング素子13e〜第四スイッチング素子13hの各ゲート13e3〜13h3は、駆動回路16fを介して、制御装置16に接続されている。駆動回路16fは、公知のドライバ回路を用いることができる。第一スイッチング素子13e〜第四スイッチング素子13hは、制御装置16から出力される駆動信号(開閉信号)に基づいて開閉制御される。例えば、第一スイッチング素子13eのゲート13e3にハイレベルが付与されると、第一スイッチング素子13eのドレイン13e1とソース13e2との間が導通状態になる。また、第四スイッチング素子13hのゲート13h3にハイレベルが付与されると、第四スイッチング素子13hのドレイン13h1とソース13h2との間が導通状態になる。
このとき、第二スイッチング素子13fのゲート13f3には、ローレベルが付与され、第二スイッチング素子13fのドレイン13f1とソース13f2との間が遮断された開放状態になる。また、第三スイッチング素子13gのゲート13g3には、ローレベルが付与され、第三スイッチング素子13gのドレイン13g1とソース13g2との間が遮断された開放状態になる。
この場合、コンバータ12から出力された直流電流は、インバータ13の入力側端子13a、電路17h、第一スイッチング素子13e、電路17j、接続点13i、電路17l、インバータ13の出力側端子13c、電路21上に設けられるフィルタ回路14のリアクトル14a、フィルタ回路14のコンデンサ14c、電路22上に設けられるフィルタ回路14のリアクトル14b、インバータ13の出力側端子13d、電路17m、接続点13j、電路17k、第四スイッチング素子13h、電路17i、インバータ13の入力側端子13bの順に流れる。上述の第一スイッチング素子13e〜第四スイッチング素子13hの状態を第一状態とする。また、このときにリアクトル14aおよびリアクトル14bに流れる電流(以下、リアクトル電流という。)の電流方向を正極方向とする。なお、フィルタ回路14の詳細は、後述する。
次に、第一スイッチング素子13eのゲート13e3にローレベルが付与され、第一スイッチング素子13eのドレイン13e1とソース13e2との間が遮断された開放状態になる。また、第四スイッチング素子13hのゲート13h3にローレベルが付与され、第四スイッチング素子13hのドレイン13h1とソース13h2との間が遮断された開放状態になる。
一定時間(デッドタイムTdという。)経過後に、第二スイッチング素子13fのゲート13f3には、ハイレベルが付与され、第二スイッチング素子13fのドレイン13f1とソース13f2との間が導通状態になる。また、第三スイッチング素子13gのゲート13g3には、ハイレベルが付与され、第三スイッチング素子13gのドレイン13g1とソース13g2との間が導通状態になる。
この場合、コンバータ12から出力された直流電流は、インバータ13の入力側端子13a、電路17h、第三スイッチング素子13g、電路17k、接続点13j、電路17m、インバータ13の出力側端子13d、電路22上に設けられるフィルタ回路14のリアクトル14b、フィルタ回路14のコンデンサ14c、電路21上に設けられるフィルタ回路14のリアクトル14a、インバータ13の出力側端子13c、電路17l、接続点13i、電路17j、第二スイッチング素子13f、電路17i、インバータ13の入力側端子13bの順に流れる。上述の第一スイッチング素子13e〜第四スイッチング素子13hの状態を第二状態とする。また、このときのリアクトル電流の電流方向を負極方向とする。
このように、第二状態のときのリアクトル電流は、第一状態のときのリアクトル電流の電流方向に対して、逆方向に流れる。インバータ13は、第一状態および第二状態(より正確には、後述する4つのスイッチングモードで表される4つの状態)を順に繰り返すことによって、インバータ13の入力側端子13a,13bから入力された直流電力を交流電力に変換することができる。なお、制御装置16は、種々の開閉制御を行うことができる。制御装置16は、例えば、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)によりデューティ比を可変して、当該デューティ比に基づいて第一スイッチング素子13e〜第四スイッチング素子13hの導通時間および遮断時間を制御することができる。
インバータ13と系統電源20との間には、フィルタ回路14が配設されている。フィルタ回路14は、インバータ13の出力側端子13c,13dから出力されたインバータ13の出力電流に含まれる高調波成分を低減し、インバータ13の出力電流を正弦波状に整形する。フィルタ回路14は、リアクトル14a、リアクトル14bおよびコンデンサ14cを備えている。これらの素子は、公知の電力用デバイスを用いることができる。
図1に示すように、リアクトル14aは、インバータ13と系統電源20との間を電気的に接続する複数(本実施形態では、2つ)の電路21,22のうちの一の電路21に設けられている。リアクトル14bは、インバータ13と系統電源20との間を電気的に接続する複数(2つ)の電路21,22のうちの他の一の電路22に設けられている。コンデンサ14cは、複数(2つ)の電路21,22の間に設けられている。具体的には、コンデンサ14cは、一端側が一のリアクトル14aの系統電源20側の端部14dに接続され、他端側が他の一のリアクトル14bの系統電源20側の端部14eに接続されている。既述のとおり、インバータ13から出力される電力は、交流電力であるので、端部14dと端部14eとの間には、電路23が形成される。なお、フィルタ回路14は、インバータ13の出力電流を正弦波状に整形することができれば良く、上述の構成に限定されるものではない。フィルタ回路14は、例えば、リアクトル14aおよびリアクトル14bのうちの少なくとも一方のリアクトルと、コンデンサ14cとを備えることができる。
検出器15は、リアクトル電流検出器15a、系統電圧検出器15b、既述の直流電圧検出器15cおよび出力電流検出器15dを備えている。リアクトル電流検出器15aは、フィルタ回路14のリアクトル14a,14bに流れるリアクトル電流を検出する。本実施形態では、リアクトル電流検出器15aは、リアクトル14bの系統電源20側の端部14e付近の電路22に設けられている。リアクトル電流検出器15aは、公知の電流検出器を用いることができる。リアクトル電流検出器15aは、例えば、カレントトランスを使用した電流検出器を用いることができる。
系統電圧検出器15bは、系統電圧(系統電源20の接続端子20aと接続端子20bとの間の電圧)を検出する。系統電圧検出器15bは、公知の電圧検出器を用いることができる。系統電圧検出器15bは、例えば、系統電圧を変圧器によって降圧して、降圧された電圧値に基づいて、系統電圧(電圧値、位相等)を検出することができる。
出力電流検出器15dは、系統連系制御装置10の出力電流を検出する。系統連系制御装置10の出力電流は、フィルタ回路14を通過後の電流をいう。本実施形態では、出力電流検出器15dは、フィルタ回路14のリアクトル14bの系統電源20側の端部14eと、系統電源20の接続端子20bとの間の電路22に設けられている。出力電流検出器15dは、リアクトル電流検出器15aと同様に、公知の電流検出器を用いることができる。また、出力電流検出器15dは、省略することもできる。なお、検出器15は、上記の検出器に限定されるものではなく、系統連系制御装置10において用いられる種々の検出器を備えることができる。
制御装置16には、検出器15の各検出値が入力される。具体的には、リアクトル電流検出器15aによって検出されたリアクトル電流の検出値と、系統電圧検出器15bによって検出された系統電圧の検出値と、直流電圧検出器15cによって検出されたインバータ13に入力される直流電圧の検出値と、出力電流検出器15dによって検出された系統連系制御装置10の出力電流の検出値とがそれぞれ制御装置16に入力される。制御装置16は、入力された各検出値に基づいて、インバータ13の複数(本実施形態では、4つ)のスイッチング素子(第一スイッチング素子13e〜第四スイッチング素子13h)を開閉制御する。
図2に示すように、制御装置16は、公知の中央演算装置16a、記憶装置16bおよび入出力インターフェース16cを備えており、これらは、バス16dを介して接続されている。制御装置16は、これらを用いて、種々の演算処理を行うことができ、外部機器との間で、入出力信号(駆動信号を含む)の授受を行うことができる。
中央演算装置16aは、CPU:Central Processing Unitであり、種々の演算処理を行うことができる。記憶装置16bは、第一記憶装置16b1および第二記憶装置16b2を備えている。第一記憶装置16b1は、読み出しおよび書き込み可能な揮発性の記憶装置(RAM:Random Access Memory)であり、第二記憶装置16b2は、読み出し専用の不揮発性の記憶装置(ROM:Read Only Memory)である。入出力インターフェース16cは、外部機器との間で、入出力信号(駆動信号を含む)の授受を行う。
例えば、中央演算装置16aは、第二記憶装置16b2に記憶されているインバータ13の駆動制御プログラムを第一記憶装置16b1に読み出して、当該駆動制御プログラムを実行する。中央演算装置16aは、当該駆動制御プログラムに基づいて、インバータ13の駆動信号(第一スイッチング素子13e〜第四スイッチング素子13hの開閉信号)を生成する。生成された駆動信号は、入出力インターフェース16cおよび駆動回路16f(ドライバ回路)を介して、インバータ13の第一スイッチング素子13e〜第四スイッチング素子13hの各ゲート13e3〜13h3に付与される。このようにして、インバータ13は、制御装置16によって開閉制御される。以上のことは、コンバータ12についても同様であり、コンバータ12は、制御装置16によって駆動制御される。
図3に示すように、制御装置16は、制御ブロックとして捉えると、位相同期制御部31、スイッチングモード判定部32、第一電圧算出部33、第二電圧算出部34、出力電圧目標値算出部35および開閉信号生成部36を備えている。制御装置16は、図4に示すフローチャートに従って駆動制御プログラムを実行することにより、インバータ13の複数(本実施形態では、4つ)のスイッチング素子(第一スイッチング素子13e〜第四スイッチング素子13h)を開閉制御することができる。駆動制御プログラムは、所定時間毎に繰り返し実行される。
図4に示すように、制御装置16は、まず、検出器15から入力されたリアクトル電流、系統電圧、直流電圧および系統連系制御装置10の出力電流の各検出値をA/D変換する(ステップS11)。次に、位相同期制御部31は、リアクトル電流の目標値を生成する(ステップS12)。そして、スイッチングモード判定部32は、スイッチングモードを判定する(ステップS13)。次に、第一電圧算出部33は、第一電圧を算出し(ステップS14)、第二電圧算出部34は、第二電圧を算出する(ステップS15)。
出力電圧目標値算出部35は、インバータ13の出力電圧の目標値を算出する(ステップS16)。そして、開閉信号生成部36は、第一スイッチング素子13e〜第四スイッチング素子13hの開閉信号を生成する(ステップS17)。なお、ステップS15は、ステップS14より先に実行することもできる。また、ステップS14およびステップS15は、並行して実行することもできる。さらに、駆動制御プログラムは、上記以外にも種々の演算処理を含めることができる。以下、各制御ブロックについて、詳細に説明する。
(位相同期制御部31)
位相同期制御部31は、系統電圧の検出値の位相と同期した位相に対して、位相が進められたリアクトル電流の目標値を生成する。まず、系統電圧と、系統連系制御装置10の出力電流と、リアクトル電流(リアクトル電流の目標値)との間の位相差について説明する。
図5Aは、系統電圧の経時変化の一例を示す図である。曲線CL1は、系統電圧を示している。横軸は、時刻を示し、縦軸は、電圧を示している。曲線CL1は、系統電圧検出器15bによって検出された検出値から取得することができる。同図に示すように、系統電圧は、正弦波状に変化する。系統電圧は、時刻t11において0になっており、系統電圧の極性は、時刻t11を境界にして、負極から正極に変化する。そして、系統電圧は、時刻t13において再び0になっており、系統電圧の極性は、時刻t13を境界にして、正極から負極に変化する。時刻t11以前および時刻t13以降においても、系統電圧の極性は、同様に変化する。なお、直線L11は、図の時刻t11の位置を示し、直線L12は、図の時刻t12の位置を示し、直線L13は、図の時刻t13の位置を示している。図5Bおよび図5C並びに図8Aおよび図8Bにおいても同様である。
図5Bは、系統連系制御装置10の出力電流の経時変化の一例を示す図である。曲線CL2は、系統連系制御装置10の出力電流を示している。横軸は、時刻を示し、縦軸は、電流を示している。曲線CL2は、出力電流検出器15dによって検出された検出値から取得することができる。同図に示すように、系統連系制御装置10の出力電流は、正弦波状に変化し、系統電圧と同期するように制御される。
力率を改善するため、本実施形態の系統連系制御装置10は、力率改善制御を行う。具体的には、系統連系制御装置10は、力率が1になるように、系統連系制御装置10の出力電流の位相を系統電圧の位相と同期させる。曲線CL2は、系統連系制御装置10が力率改善制御を行ったときの系統連系制御装置10の出力電流を示している。
図5Cは、リアクトル電流の目標値の経時変化の一例を示す図である。曲線CL3は、リアクトル電流の目標値を示している。横軸は、時刻を示し、縦軸は、電流を示している。同図に示すように、リアクトル電流の目標値は、正弦波状に変化し、系統電圧(系統連系制御装置10の出力電流も同じ。)に対して、位相が進められている。具体的には、リアクトル電流は、時刻t11より早い時刻0において0になっており、リアクトル電流は、時刻0を境界にして、負極から正極に変化する。そして、リアクトル電流は、時刻t13より早い時刻t12において再び0になっており、リアクトル電流は、時刻t12を境界にして、正極から負極に変化する。時刻0以前および時刻t12以降においても、リアクトル電流の目標値の極性は、同様に変化する。
フィルタ回路14のコンデンサ14cの影響により、系統電圧(系統連系制御装置10の出力電流も同じ。)に対して、リアクトル電流の位相が進む。そのため、リアクトル電流の目標値(インバータ13から出力させるインバータ13の出力電流)は、系統電圧(系統連系制御装置10の出力電流も同じ。)に対して、位相を進ませる必要がある。換言すれば、リアクトル電流の目標値を系統電圧(系統連系制御装置10の出力電流も同じ。)に対して所定位相差分、進ませることにより、系統連系制御装置10の出力電流は、系統電圧と同期する。
図3に示すように、位相同期制御部31には、リアクトル電流の目標値(電流値)と、系統周波数とが入力される。位相同期制御部31は、位相と電流値が設定されたリアクトル電流の目標値を生成する。リアクトル電流の目標値は、系統電圧(系統電圧の検出値)の位相と同期した位相に対して、所定位相差分、位相が進められる。
位相同期制御部31は、位相同期器31a、位相調整器31b、正弦波発生器31cおよび混合器31dを備えている。位相同期器31aは、PLL回路(Phase Locked Loop Circuit)ともいい、入力信号に同期した出力信号を生成することができる。また、位相調整器31bは、入力信号の位相を進相または遅相させることができる。本実施形態の位相調整器31bは、位相同期器31aによって生成された信号の位相を進ませる。さらに、正弦波発生器31cは、正弦波状の信号を生成することができる。また、混合器31dは、周波数が異なる二つの入力信号の各周波数を加算した出力信号を生成することができる。位相同期器31a、位相調整器31b、正弦波発生器31cおよび混合器31dは、公知の信号形成器、信号発生器を用いることができる。これらの機能は、ハードウエア(アナログ回路およびデジタル回路のうちの少なくとも一方)で構成しても良く、ソフトウエアで処理しても良く、これらを混在させても良い。
制御装置16は、例えば、系統電圧検出器15bによって検出された系統電圧のゼロクロスを順次検出する。図5Aに示す例では、制御装置16は、時刻t11および時刻t13において、系統電圧のゼロクロスを検出する。制御装置16は、検出されたゼロクロスの周期から系統電源20の系統周波数を算出することができる。系統周波数は、図4に示すフローチャートが繰り返される周期(以下、キャリア周期という。)より遅い周期で算出することができる。
系統周波数の算出結果は、位相同期器31aに出力され、位相同期の基準周波数になる。位相同期器31aは、入力された系統周波数に同期した信号を生成する。位相同期器31aによって生成された信号は、位相調整器31bに出力される。位相調整器31bは、系統周波数に同期した信号を、リアクトル電流の目標値(電流値)に応じた位相差分、進ませる。
まず、リアクトル電流の目標値(電流値)と上記位相差との関係について説明する。図6は、リアクトル電流の目標値の有効電力Pと無効電力Qとの関係の一例を示す図である。実線の矢印CL4aおよび破線の矢印CL4bは、リアクトル電流の目標値を示している。横軸は、有効電力Pを示し、縦軸は、無効電力Qを示している。実線の矢印CL4aで示されるリアクトル電流の目標値は、有効電力Pが有効電力P1であり、無効電力Qが無効電力Q1である。無効電力Q1は、コンデンサ14cに供給する無効電力であり、力率を1にするためには、インバータ13の出力電力(皮相電力)のうちの無効電力を無効電力Q1と等しくしなければならない。一方、破線の矢印CL4bで示されるリアクトル電流の目標値は、実線の矢印CL4aで示されるリアクトル電流の目標値と比べて、電流値が大きく、有効電力Pが有効電力P2であり、無効電力Qが無効電力Q1である。有効電力P2は、有効電力P1と比べて大きい。
本実施形態の系統連系制御装置10は、力率改善制御を行っているので、リアクトル電流の電流値が大きくなると、有効電力Pが増加し、無効電力Qは、ほとんど増加しない。そのため、リアクトル電流の電流値が大きくなる程、リアクトル電流と、系統電圧(系統連系制御装置10の出力電流も同じ。)との間の位相差は、小さくなる。同図では、実線の矢印CL4aで示されるリアクトル電流の目標値と、系統電圧(系統連系制御装置10の出力電流も同じ。)との間の位相差は、位相差φ1で示されている。また、破線の矢印CL4bで示されるリアクトル電流の目標値と、系統電圧(系統連系制御装置10の出力電流も同じ。)との間の位相差は、位相差φ2で示されている。位相差φ2は、位相差φ1と比べて小さい。
このように、リアクトル電流の目標値(電流値)によって、上記位相差が異なる。そのため、リアクトル電流の目標値(電流値)に応じて、リアクトル電流の目標値と、系統電圧との間の位相差を予め算出しておくと良い。これらの関係は、マップ、テーブル、関係式などにより表され、図2に示す第二記憶装置16b2に記憶されている。これらの関係は、インバータ13の駆動制御プログラムとともに、起動時に第二記憶装置16b2から第一記憶装置16b1に読み出される。位相調整器31bは、これらの関係から、リアクトル電流の目標値(電流値)に応じたリアクトル電流の目標値と、系統電圧との間の位相差を取得することができる。そして、位相調整器31bは、位相同期器31aによって生成された信号に対して、取得した位相差分、位相を進ませる。なお、出力電流検出器15dによって検出された系統連系制御装置10の出力電流と、系統電圧検出器15bによって検出された系統電圧の検出値との間の位相差が0になるように、位相調整器31bが進ませる位相量(位相角)を調整することもできる。
直流電圧の目標値は、例えば、系統電圧の最大値(ピーク値)に基づいて、設定することができる。例えば、実効値が200Vの系統電圧では、系統電圧の最大値(ピーク値)は、200×√2(=約283V)になる。制御装置16は、系統電圧の最大値(ピーク値)に、フィルタ回路14のリアクトル14a,14bによる電圧降下分、および、インバータ13のスイッチング素子(第一スイッチング素子13e〜第四スイッチング素子13h)による電圧降下分を加算して、直流電圧の目標値の下限値とすることができる。
また、系統連系制御装置10の出力電力の目標値が大きくなると、コンバータ12の出力電力も大きくなり、コンバータ12の出力電圧(直流電圧)が上昇する。このように、コンバータ12の出力電圧(直流電圧)は変動するので、リアクトル電流の目標値(電流値)の最大値は、例えば、直流電圧検出器15cによって検出された直流電圧の検出値に応じて、増減させることもできる。この場合、制御装置16は、例えば、直流電圧検出器15cによって検出された直流電圧の検出値と、直流電圧の目標値との偏差をPI制御して、リアクトル電流の目標値(電流値)の最大値を設定することができる。これにより、コンバータ12の出力電圧(直流電圧)が一定に保たれる。なお、上記PI制御は、キャリア周期および系統周波数の算出周期と比べて、遅い周期で行うことができる。上記PI制御は、例えば、系統周波数(50Hzまたは60Hz)の周期で行うことができる。
正弦波発生器31cは、位相調整器31bによって設定された位相に基づいて、正弦波状の信号を生成する。正弦波発生器31cによって生成される正弦波を基準正弦波という。基準正弦波の振幅の最大値は、1(単位量)に設定されている。図3に示すように、混合器31dには、正弦波発生器31cによって生成された基準正弦波と、リアクトル電流の目標値(電流値)とが入力される。混合器31dは、基準正弦波に同期した出力信号(正弦波)を出力する。出力信号(正弦波)の振幅の最大値は、リアクトル電流の目標値(電流値)に設定される。このようにして、図5Cの曲線CL3で示すリアクトル電流の目標値が生成される。
(スイッチングモード判定部32)
位相同期制御部31によって生成されたリアクトル電流の目標値は、スイッチングモード判定部32に出力される。また、スイッチングモード判定部32には、系統電圧の検出値(瞬時値)が入力される。スイッチングモード判定部32は、位相同期制御部31によって生成されたリアクトル電流の目標値の極性と、系統電圧の検出値の極性とに基づいて、複数(本実施形態では、4つ)のスイッチングモードのうちの一のスイッチングモードを判定する。複数(4つ)のスイッチングモードは、複数(本実施形態では、4つ)のスイッチング素子(第一スイッチング素子13e〜第四スイッチング素子13h)の開閉状態を表す。
図7に示すように、複数(4つ)のスイッチングモードは、例えば、テーブルとして、図2に示す第二記憶装置16b2に記憶されている。複数(4つ)のスイッチングモードは、インバータ13の駆動制御プログラムとともに、起動時に第二記憶装置16b2から第一記憶装置16b1に読み出される。スイッチングモード判定部32は、図7に示すテーブルに基づいて、複数(4つ)のスイッチングモードのうちの一のスイッチングモードを判定することができる。
具体的には、図7に示すように、系統電圧の検出値の極性が正極「+」であり、かつ、リアクトル電流の目標値の極性が正極「+」のとき、スイッチングモード判定部32は、スイッチングモード2を選択する。このとき、第一スイッチング素子13eは、「ON」であり、第一スイッチング素子13eは、閉状態(ドレイン13e1とソース13e2との間が導通状態)に保持される。第四スイッチング素子13hは、「PWM」であり、第四スイッチング素子13hは、パルス幅変調(PWM)制御により、開状態(ドレイン13h1とソース13h2との間が遮断状態)または閉状態(ドレイン13h1とソース13h2との間が導通状態)とが繰り返される。一方、第二スイッチング素子13fおよび第三スイッチング素子13gは、いずれも「OFF」であり、第二スイッチング素子13fは、開状態(ドレイン13f1とソース13f2との間が遮断状態)に保持され、第三スイッチング素子13gは、開状態(ドレイン13g1とソース13g2との間が遮断状態)に保持される。
この場合、既述の第一状態と同様に、リアクトル電流は、正極方向に流れる。具体的には、図1に示すリアクトル14aには、インバータ13の出力側端子13c側からリアクトル14aの系統電源20側の端部14d側に向かって、リアクトル電流が流れる。同図に示すリアクトル14bには、リアクトル14bの系統電源20側の端部14e側からインバータ13の出力側端子13d側に向かって、リアクトル電流が流れる。なお、第一スイッチング素子13eを「PWM」とし、第四スイッチング素子13hを「ON」とすることもできる。この場合も、リアクトル電流は、正極方向に流れる。
また、図7に示すように、系統電圧の検出値の極性が負極「−」であり、かつ、リアクトル電流の目標値の極性が負極「−」のとき、スイッチングモード判定部32は、スイッチングモード4を選択する。このとき、第二スイッチング素子13fは、「PWM」であり、第二スイッチング素子13fは、パルス幅変調(PWM)制御により、開状態(ドレイン13f1とソース13f2との間が遮断状態)または閉状態(ドレイン13f1とソース13f2との間が導通状態)とが繰り返される。第三スイッチング素子13gは、「ON」であり、第三スイッチング素子13gは、閉状態(ドレイン13g1とソース13g2との間が導通状態)に保持される。一方、第一スイッチング素子13eおよび第四スイッチング素子13hは、いずれも「OFF」であり、第一スイッチング素子13eは、開状態(ドレイン13e1とソース13e2との間が遮断状態)に保持され、第四スイッチング素子13hは、開状態(ドレイン13h1とソース13h2との間が遮断状態)に保持される。
この場合、既述の第二状態と同様に、リアクトル電流は、負極方向に流れる。具体的には、図1に示すリアクトル14aには、リアクトル14aの系統電源20側の端部14d側からインバータ13の出力側端子13c側に向かって、リアクトル電流が流れる。同図に示すリアクトル14bには、インバータ13の出力側端子13d側からリアクトル14bの系統電源20側の端部14e側に向かって、リアクトル電流が流れる。なお、第三スイッチング素子13gを「PWM」とし、第二スイッチング素子13fを「ON」とすることもできる。この場合も、リアクトル電流は、負極方向に流れる。
既述のとおり、フィルタ回路14のコンデンサ14cの影響により、系統電圧(系統連系制御装置10の出力電流も同じ。)に対して、リアクトル電流の位相が進むので、リアクトル電流の目標値の位相が進められる。そのため、図5A〜図5Cに示すように、系統電圧の極性が負極のときにリアクトル電流の目標値の極性が正極になる期間(期間A)と、系統電圧の極性が正極のときにリアクトル電流の目標値の極性が負極になる期間(期間B)とが生じる。
仮に、期間Aにおいて、スイッチングモード判定部32が、スイッチングモード4を選択した場合を考える。この場合、リアクトル電流の目標値は、リアクトル電流が負極方向に流れるように設定される。期間Aでは、リアクトル電流の目標値の電流方向は、正極方向に設定する必要があり、リアクトル電流を所望の方向に流すことができない。その結果、系統連系制御装置10の出力電流は、ゼロクロス付近で歪む可能性がある。図5Bの曲線CL2aは、リアクトル電流が負極方向に流れるように設定された場合のゼロクロス付近の系統連系制御装置10の出力電流を示している。図5Cの曲線CL3は、リアクトル電流の目標値を示している。また、図5Cの曲線CL3aは、リアクトル電流が負極方向に流れるように設定された場合の期間Aでのリアクトル電流を示している。
以上のことは、期間Bについても同様であり、図5Bの曲線CL2bは、リアクトル電流が正極方向に流れるように設定された場合のゼロクロス付近の系統連系制御装置10の出力電流を示している。また、図5Cの曲線CL3bは、リアクトル電流が正極方向に流れるように設定された場合の期間Bでのリアクトル電流を示している。なお、図6に示すように、系統連系制御装置10の出力電力が小さくなると、出力電力(皮相電力)のうちの有効電力Pの大きさと、無効電力Qの大きさとの差が小さくなり、リアクトル電流と、系統電圧(系統連系制御装置10の出力電流も同じ。)との間の位相差が増大する。その結果、リアクトル電流の電流方向を所望の方向に流すことができない期間(期間Aおよび期間B)が長くなり、その影響は大きくなる。
本実施形態の系統連系制御装置10によれば、複数(4つ)のスイッチングモードは、リアクトル電流の目標値の極性と、系統電圧の検出値の極性とが異なるときに、リアクトル電流の目標値の極性に合わせてリアクトル電流を流させるスイッチングモードを含む。図7に示すように、本実施形態では、複数(4つ)のスイッチングモードは、スイッチングモード1およびスイッチングモード3を備えている。
具体的には、系統電圧の検出値の極性が負極「−」であり、かつ、リアクトル電流の目標値の極性が正極「+」のとき、スイッチングモード判定部32は、スイッチングモード1を選択する。このとき、第一スイッチング素子13eは、「PWM」であり、第一スイッチング素子13eは、パルス幅変調(PWM)制御により、開状態(ドレイン13e1とソース13e2との間が遮断状態)または閉状態(ドレイン13e1とソース13e2との間が導通状態)とが繰り返される。また、第四スイッチング素子13hは、「PWM」であり、第四スイッチング素子13hは、パルス幅変調(PWM)制御により、開状態(ドレイン13h1とソース13h2との間が遮断状態)または閉状態(ドレイン13h1とソース13h2との間が導通状態)とが繰り返される。
第一スイッチング素子13eが開状態または閉状態に切り替わるタイミングは、第四スイッチング素子13hが開状態または閉状態に切り替わるタイミングと同期している。つまり、第一スイッチング素子13eが開状態から閉状態に切り替わるとき、第四スイッチング素子13hも開状態から閉状態に切り替わる。第一スイッチング素子13eが閉状態から開状態に切り替わるとき、第四スイッチング素子13hも閉状態から開状態に切り替わる。
一方、第二スイッチング素子13fおよび第三スイッチング素子13gは、いずれも「OFF」であり、第二スイッチング素子13fは、開状態(ドレイン13f1とソース13f2との間が遮断状態)に保持され、第三スイッチング素子13gは、開状態(ドレイン13g1とソース13g2との間が遮断状態)に保持される。この場合、リアクトル電流は、正極方向に流れ、リアクトル電流の目標値の極性である正極「+」と一致している。
また、系統電圧の検出値の極性が正極「+」であり、かつ、リアクトル電流の目標値の極性が負極「−」のとき、スイッチングモード判定部32は、スイッチングモード3を選択する。このとき、第二スイッチング素子13fは、「PWM」であり、第二スイッチング素子13fは、パルス幅変調(PWM)制御により、開状態(ドレイン13f1とソース13f2との間が遮断状態)または閉状態(ドレイン13f1とソース13f2との間が導通状態)とが繰り返される。また、第三スイッチング素子13gは、「PWM」であり、第三スイッチング素子13gは、パルス幅変調(PWM)制御により、開状態(ドレイン13g1とソース13g2との間が遮断状態)または閉状態(ドレイン13g1とソース13g2との間が導通状態)とが繰り返される。
第二スイッチング素子13fが開状態または閉状態に切り替わるタイミングは、第三スイッチング素子13gが開状態または閉状態に切り替わるタイミングと同期している。つまり、第二スイッチング素子13fが開状態から閉状態に切り替わるとき、第三スイッチング素子13gも開状態から閉状態に切り替わる。第二スイッチング素子13fが閉状態から開状態に切り替わるとき、第三スイッチング素子13gも閉状態から開状態に切り替わる。
一方、第一スイッチング素子13eおよび第四スイッチング素子13hは、いずれも「OFF」であり、第一スイッチング素子13eは、開状態(ドレイン13e1とソース13e2との間が遮断状態)に保持され、第四スイッチング素子13hは、開状態(ドレイン13h1とソース13h2との間が遮断状態)に保持される。この場合、リアクトル電流は、負極方向に流れ、リアクトル電流の目標値の極性である負極「−」と一致している。
本実施形態の系統連系制御装置10によれば、制御装置16は、リアクトル電流の目標値の極性と、系統電圧の検出値の極性とに基づいて、複数(4つ)のスイッチング素子(第一スイッチング素子13e〜第四スイッチング素子13h)の開閉状態を表す複数(4つ)のスイッチングモード(スイッチングモード1〜スイッチングモード4)のうちの一のスイッチングモードを判定するスイッチングモード判定部32を備える。これにより、スイッチングモード判定部32は、系統電圧の検出値の極性のみならず、リアクトル電流の目標値の極性をも考慮してスイッチングモードを判定することができる。そのため、本実施形態の系統連系制御装置10は、系統電圧の極性が正極のときにリアクトル電流の目標値の極性を負極にすることが必要な期間(例えば、図5A〜図5Cに示す期間B)において、リアクトル電流を負極方向に流すことができる。同様に、本実施形態の系統連系制御装置10は、系統電圧の極性が負極のときにリアクトル電流の目標値の極性を正極にすることが必要な期間(例えば、図5A〜図5Cに示す期間A)において、リアクトル電流を正極方向に流すことができる。よって、本実施形態の系統連系制御装置10は、出力電流のゼロクロス付近で生じる歪みを低減することができる。
(第一電圧算出部33)
例えば、リアクトル14a,14b等の部品に、特性のばらつき(例えば、インダクタンス等のばらつき)が存在すると、リアクトル電流がリアクトル電流の目標値に追従できなくなる可能性がある。そこで、本実施形態の系統連系制御装置10は、これを考慮してインバータ13の出力電圧の目標値を算出する。具体的には、図3に示すように、第一電圧算出部33には、リアクトル電流の目標値とリアクトル電流の検出値とが入力され、第一電圧算出部33は、フィードバック制御により第一電圧を算出すると好適である。第一電圧算出部33は、第一電圧を算出することができれば良く、その構成は限定されない。例えば、第一電圧算出部33は、比例演算器、積分演算器および加算器を備えていると好適である。
比例演算器は、リアクトル電流の目標値と、リアクトル電流の検出値との偏差に比例ゲインを乗じた演算結果を出力する。また、積分演算器は、当該偏差を積分した値に積分ゲインを乗じた演算結果を出力する。さらに、加算器は、少なくとも比例演算器の演算結果と積分演算器の演算結果とを加算する。そして、第一電圧算出部33は、加算器の演算結果を第一電圧とする。なお、第一電圧算出部33は、当該偏差を微分した値に微分ゲインを乗じた演算結果を出力する微分演算器を備えることもできる。この場合、加算器は、比例演算器の演算結果と、積分演算器の演算結果と、微分演算器の演算結果とを加算する。
このように、第一電圧算出部33は、比例制御(P制御)、積分制御(I制御)および微分制御(D制御)のうち、少なくとも比例制御(P制御)および積分制御(I制御)を行うことによって、第一電圧を算出することができる。なお、伝達関数G(s)は、下記数1で表すことができる。KPは比例ゲインを示し、KIは積分ゲインを示し、sは、ラプラス演算子を示している。
(数1)
G(s)=KP+KI×1/s
比例ゲインKPおよび積分ゲインKIは、図2に示す第二記憶装置16b2に記憶されている。これらの制御ゲインは、インバータ13の駆動制御プログラムとともに、起動時に第二記憶装置16b2から第一記憶装置16b1に読み出される。比例ゲインKPを大きくする程、上記偏差を短時間に小さくすることができる。また、積分ゲインKIを大きくする程、上記偏差によるオフセット(定常偏差)を短時間に0にすることができる。さらに、微分ゲインを大きくする程、上記偏差の振動を短時間に小さくすることができ、外乱に対して強くなる。これらの制御ゲインは、例えば、シミュレーション、実機による調整などによって予め取得することができる。
図8Aは、第一電圧の経時変化の一例を示す図である。曲線CL5aは、第一電圧算出部33によって算出された第一電圧を示している。横軸は、時刻を示し、縦軸は、電圧を示している。時刻0、時刻t11、時刻t12および時刻t13は、図5A〜図5Cに示す時刻と一致している。曲線CL5aに示すように、第一電圧は、特性のばらつきを打ち消すように、経時変化している。また、第一電圧の最大値(ピーク値)は、後述する第二電圧の最大値(ピーク値)と比べて極めて小さい。
本実施形態の系統連系制御装置10によれば、第一電圧算出部33には、リアクトル電流の目標値とリアクトル電流の検出値とが入力され、第一電圧算出部33は、フィードバック制御により第一電圧を算出する。そのため、例えば、リアクトル14a,14b等の部品に、特性のばらつきが存在しても、本実施形態の系統連系制御装置10は、リアクトル電流をリアクトル電流の目標値に追従させることができる。
(第二電圧算出部34)
インバータ13の出力電圧の目標値は、第一電圧と第二電圧とを加算した電圧に設定されていると好適である。第二電圧算出部34は、第二電圧を算出する。図8Bは、第二電圧の経時変化の一例を示す図である。曲線CL5bは、第二電圧算出部34によって算出された第二電圧を示している。横軸は、時刻を示し、縦軸は、電圧を示している。時刻0、時刻t11、時刻t12および時刻t13は、図5A〜図5Cおよび図8Aに示す時刻と一致している。曲線CL5bに示すように、第二電圧算出部34は、スイッチングモードが切り替わるタイミング(時刻t11、時刻t13)で、第二電圧を不連続に変化させる。以下、第二電圧について、詳細に説明する。
例えば、時刻t11において、スイッチングモード1からスイッチングモード2にスイッチングモードが切り替わる場合を考える。このとき、図7に示すように、第一スイッチング素子13eは、「PWM」から「ON」に制御状態が切り替わる。つまり、第一スイッチング素子13eは、パルス幅変調(PWM)制御から閉状態(ドレイン13e1とソース13e2との間が導通状態)に保持される制御に切り替わる。そのため、インバータ13が出力する出力電圧の変動幅は、スイッチングモードが切り替わる前と比べて、小さくなる。
具体的には、スイッチングモード1では、第一スイッチング素子13eおよび第四スイッチング素子13hは、いずれも「PWM」であり、パルス幅変調(PWM)制御される。また、第二スイッチング素子13fおよび第三スイッチング素子13gは、いずれも「OFF」であり、開状態に保持される。そのため、第一スイッチング素子13eおよび第四スイッチング素子13hが、いずれも閉状態のときに、図1に示すコンバータ12のコンデンサ12hの正極側から出力された電流は、第一スイッチング素子13e、リアクトル14a、コンデンサ14c、リアクトル14b、第四スイッチング素子13hの順に流れ、コンバータ12のコンデンサ12hの負極側に戻る。このときに、リアクトル14aの両端に印加される電圧と、リアクトル14bの両端に印加される電圧とを加算した電圧(第一加算電圧とする。)は、コンバータ12が出力する直流電圧Vdcからコンデンサ14cの両端に印加される電圧(系統電源20の系統電圧と同じ電圧であり電圧V20とする。)を減じた電圧(=Vdc−V20)と略一致する。なお、スイッチング素子における電圧降下分は無視している。また、インバータ13の入力側端子13a,13b、出力側端子13c,13d、電路17h等の電路、接続点13i等の接続点などは、記載を省略している(以下、同様とする)。
第一スイッチング素子13eおよび第四スイッチング素子13hが、いずれも開状態になり、第一スイッチング素子13e〜第四スイッチング素子13hのすべてのスイッチング素子が開状態になっても、リアクトル14aおよびリアクトル14bは、上述の方向に電流を流し続けようとする。そのため、コンバータ12のコンデンサ12hの負極側から流れ出た還流電流は、第二スイッチング素子13fの還流ダイオード、リアクトル14a、コンデンサ14c、リアクトル14b、第三スイッチング素子13gの還流ダイオードの順に流れ、コンバータ12のコンデンサ12hの正極側に戻る。このときに、リアクトル14aの両端に印加される電圧と、リアクトル14bの両端に印加される電圧とを加算した電圧(第二加算電圧とする。)は、コンバータ12が出力する直流電圧Vdcの逆極性(つまり、−Vdc)からコンデンサ14cの両端に印加される電圧(電圧V20)を減じた電圧(=−Vdc−V20)と略一致する。
一方、図7に示すように、スイッチングモード2では、第一スイッチング素子13eは、「ON」であり、閉状態に保持される。第二スイッチング素子13f〜第四スイッチング素子13hの開閉状態は、スイッチングモード1と同様である。そのため、第四スイッチング素子13hが閉状態のときに、図1に示すコンバータ12のコンデンサ12hの正極側から出力される電流の電流経路は、スイッチングモード1において、第一スイッチング素子13eが閉状態の場合に既述した電流経路と同様である。そのため、このときに、リアクトル14aの両端に印加される電圧と、リアクトル14bの両端に印加される電圧とを加算した電圧(第三加算電圧とする。)は、第一加算電圧と同じ電圧になり、コンバータ12が出力する直流電圧Vdcからコンデンサ14cの両端に印加される電圧(電圧V20)を減じた電圧(=Vdc−V20)と略一致する。
スイッチングモード2では、第一スイッチング素子13eは、「ON」であり、閉状態に保持されている。そのため、第四スイッチング素子13hが開状態になったときに、リアクトル14aおよびリアクトル14bに流れる還流電流は、リアクトル14aの端部14dを起点にすると、コンデンサ14c、リアクトル14b、第三スイッチング素子13gの還流ダイオード、第一スイッチング素子13eの順に流れ、リアクトル14aに戻る。このときに、リアクトル14aの両端に印加される電圧と、リアクトル14bの両端に印加される電圧とを加算した電圧(第四加算電圧とする。)は、コンデンサ14cの両端に印加される電圧の逆極性の電圧(つまり、−V20)と略一致する。
スイッチングモード1では、第一加算電圧と第二加算電圧との電圧差は、2×Vdcになる。一方、スイッチングモード2では、第三加算電圧と第四加算電圧との電圧差は、Vdcになる。つまり、スイッチングモード2は、スイッチングモード1と比べて、直流電圧Vdc分、インバータ13が出力する出力電圧の変動幅が小さくなる。
また、リアクトル14aに流れるリアクトル電流の電流勾配di/dtと、リアクトル14aの両端に印加される印加電圧V14aとの間には、下記数2で示す関係がある。但し、リアクトル14aのインダクタンスをLaとする。既述のとおり、スイッチングモード2のときの印加電圧V14aは、スイッチングモード1のときの印加電圧V14aと異なる。そのため、デューティ比(キャリア周期のうちのスイッチング素子が閉状態の割合)が同じであっても、スイッチングモード2のときのリアクトル電流の電流勾配は、スイッチングモード1のときのリアクトル電流の電流勾配と異なる。
(数2)
V14a=La×di/dt
図9は、リアクトル電流の電流勾配の経時変化の一例を示す図である。曲線CL6aは、スイッチングモード1のときのリアクトル電流を示し、直線CL6bは、スイッチングモード1のときのリアクトル電流の電流勾配を示している。また、曲線CL6cは、スイッチングモード2のときのリアクトル電流を示し、直線CL6dは、スイッチングモード2のときのリアクトル電流の電流勾配を示している。横軸は、時刻を示し、縦軸は、電流を示している。なお、時刻t21〜時刻t22までの時間は、スイッチング素子は、開状態とし、時刻t22〜時刻t23までの時間は、スイッチング素子は、閉状態とし、時刻t23〜時刻t24までの時間は、スイッチング素子は、開状態とする。また、時刻t21〜時刻t24までの時間は、キャリア周期の一周期分に相当するものとする。さらに、直線L21は、図の時刻t21の位置を示し、直線L22は、図の時刻t22の位置を示し、直線L23は、図の時刻t23の位置を示し、直線L24は、図の時刻t24の位置を示している。
同図に示すように、スイッチングモードの切り替わりの前後でデューティ比は同じとする。このとき、スイッチングモードの切り替わり後のリアクトル電流の電流勾配(この場合、スイッチングモード2であり、直線CL6dで示される)は、スイッチングモードの切り替わり前のリアクトル電流の電流勾配(この場合、スイッチングモード1であり、直線CL6bで示される)と比べて異なっている。そのため、スイッチングモードの切り替わりの前後で、リアクトル電流が不連続に変化し、系統連系制御装置10の出力電流の歪みが増加する。以上のことは、リアクトル14bに流れるリアクトル電流についても同様であり、スイッチングモード3からスイッチングモード4に切り替わる場合(図8Bの時刻t13)においても同様である。
そこで、本実施形態の第二電圧算出部34は、図8Bの曲線CL5bに示す第二電圧を算出する。具体的には、第二電圧算出部34には、リアクトル電流の目標値と、リアクトル電流の検出値と、系統電圧の検出値と、直流電圧の検出値と、スイッチングモード判定部32によって判定された一のスイッチングモードとが入力される。第二電圧算出部34は、これらの入力値からフィードフォワード制御により第二電圧を算出する。第二電圧算出部34は、第二電圧を算出することができれば良く、その構成は限定されない。
第二電圧算出部34は、例えば、リアクトル14aのインダクタンスLaを用いて、数2に基づいて、リアクトル電流がリアクトル電流の目標値に追従するインバータ13の最適な出力電圧の目標値を算出することができる。リアクトル14bのインダクタンスLbを用いる場合も同様である。これにより、本実施形態の系統連系制御装置10は、リアクトル電流を正弦波状のリアクトル電流の目標値に追従させることができる。
(出力電圧目標値算出部35)
出力電圧目標値算出部35は、インバータ13の出力電圧の目標値を算出する。出力電圧目標値算出部35は、第一電圧算出部33によって算出された第一電圧と、第二電圧算出部34によって算出された第二電圧とを加算して、インバータ13の出力電圧の目標値を算出する。
(開閉信号生成部36)
開閉信号生成部36は、スイッチングモード判定部32によって判定された一のスイッチングモードに従って、複数(本実施形態では、4つ)のスイッチング素子(第一スイッチング素子13e〜第四スイッチング素子13h)の開閉信号を生成する。開閉信号生成部36は、出力電圧目標値算出部35によって算出されたインバータ13の出力電圧の目標値を、直流電圧検出器15cによって算出された直流電圧で除して変調率を算出する。開閉信号生成部36は、算出された変調率に基づいて、パルス幅変調(PWM)制御におけるパルス信号を生成する。
制御装置16は、駆動回路16f(ドライバ回路)を介して、生成されたパルス信号を複数(本実施形態では、4つ)のスイッチング素子(第一スイッチング素子13e〜第四スイッチング素子13h)の各ゲート(13e3〜13h3)に付与する。これにより、制御装置16は、複数(本実施形態では、4つ)のスイッチング素子(第一スイッチング素子13e〜第四スイッチング素子13h)を開閉制御することができる。
本発明は、上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施することができる。例えば、本発明に係る系統連系制御装置は、多相(例えば、三相)の系統電源およびインバータに適用することもできる。また、例えば、複数のスイッチングモードは、図7に示すスイッチングモードに限定されるものではない。複数のスイッチングモードは、例えば、相補パルス幅変調を行うスイッチングモードを含むことができる。
ここで、複数(本実施形態では、4つ)のスイッチング素子(第一スイッチング素子13e〜第四スイッチング素子13h)のうち、直流電源11の正極側に接続される一のスイッチング素子(例えば、第一スイッチング素子13e)を正極側スイッチング素子とする。また、直流電源11の負極側に接続され且つ正極側スイッチング素子(例えば、第一スイッチング素子13e)と直列接続される一のスイッチング素子(この場合、第二スイッチング素子13f)を負極側スイッチング素子とする。
図10Aは、正極側スイッチング素子の開閉信号の経時変化の一例を示す図である。曲線CL7aは、正極側スイッチング素子(例えば、第一スイッチング素子13e)の開閉信号を示している。横軸は、時刻を示し、縦軸は、ハイレベル(正極側スイッチング素子が閉状態)またはローレベル(正極側スイッチング素子が開状態)を示している。曲線CL7aに示すように、正極側スイッチング素子の開閉信号は、時刻0から時刻t31までの間、ハイレベル(閉状態)に設定され、時刻t31から時刻t34までの間、ローレベル(開状態)に設定され、時刻t34から時刻t35までの間、ハイレベル(閉状態)に設定される。時刻0から時刻t35までの間は、キャリア周期の一周期分に相当する。
図10Bは、負極側スイッチング素子の開閉信号の経時変化の一例を示す図である。曲線CL7bは、負極側スイッチング素子(例えば、第二スイッチング素子13f)の開閉信号を示している。横軸は、時刻を示し、縦軸は、ハイレベル(負極側スイッチング素子が閉状態)またはローレベル(負極側スイッチング素子が開状態)を示している。曲線CL7bに示すように、負極側スイッチング素子の開閉信号は、時刻0から時刻t32までの間、ローレベル(開状態)に設定され、時刻t32から時刻t33までの間、ハイレベル(閉状態)に設定され、時刻t33から時刻t35までの間、ローレベル(開状態)に設定される。なお、正極側スイッチング素子の開閉信号を曲線CL7bに示すように設定し、負極側スイッチング素子の開閉信号を曲線CL7aに示すように設定することもできる。
時刻t31から時刻t32までの間、および、時刻t33から時刻t34までの間は、正極側スイッチング素子および負極側スイッチング素子の両方がローレベル(開状態)に設定されている。これにより、直流電源11の正極側と負極側とが、正極側スイッチング素子および負極側スイッチング素子を介して、短絡してしまうことが抑制されている。図10Aおよび図10Bでは、上述の時間は、デッドタイムTdとして表されている。また、直線L31は、図の時刻t31の位置を示し、直線L32は、図の時刻t32の位置を示し、直線L33は、図の時刻t33の位置を示し、直線L34は、図の時刻t34の位置を示し、直線L35は、図の時刻t35の位置を示している。
このように、複数のスイッチングモードは、正極側スイッチング素子および負極側スイッチング素子のうちの一方のスイッチング素子を開状態にするときに他方のスイッチング素子を閉状態にし、正極側スイッチング素子および負極側スイッチング素子のうちの一方のスイッチング素子を閉状態にするときに他方のスイッチング素子を開状態にする相補パルス幅変調を行うスイッチングモードを含むと好適である。
例えば、正極側スイッチング素子を第一スイッチング素子13eとし、負極側スイッチング素子を第二スイッチング素子13fとし、スイッチングモード1のときに、相補パルス幅変調を行う場合を考える。まず、負極側スイッチング素子(第二スイッチング素子13f)は、「OFF」とする。このとき、第一スイッチング素子13e〜第四スイッチング素子13hの開閉状態は、図7に示すスイッチングモード1と同様の状態である。そのため、第一スイッチング素子13eおよび第四スイッチング素子13hが、いずれも閉状態のときに、図1に示すコンバータ12のコンデンサ12hの正極側から出力された電流は、第一スイッチング素子13e、リアクトル14a、コンデンサ14c、リアクトル14b、第四スイッチング素子13hの順に流れ、コンバータ12のコンデンサ12hの負極側に戻る。
第一スイッチング素子13eおよび第四スイッチング素子13hが、いずれも開状態になり、第一スイッチング素子13e〜第四スイッチング素子13hのすべてのスイッチング素子が開状態になっても、リアクトル14aおよびリアクトル14bは、上述の方向に電流を流し続けようとする。そのため、コンバータ12のコンデンサ12hの負極側から流れ出た還流電流は、第二スイッチング素子13fの還流ダイオード、リアクトル14a、コンデンサ14c、リアクトル14b、第三スイッチング素子13gの還流ダイオードの順に流れ、コンバータ12のコンデンサ12hの正極側に戻る。
このように、第一スイッチング素子13e〜第四スイッチング素子13hのすべてのスイッチング素子が開状態になったときに、還流電流は、還流ダイオードを流れる。還流電流が還流ダイオードを流れると、還流電流がスイッチング素子を流れる場合と比べて、損失が大きくなる。そこで、還流電流が還流ダイオードを流れるタイミングで、当該還流ダイオードが設けられるスイッチング素子を閉状態にする。これにより、導通損失を低減することができる。
上述の例では、第一スイッチング素子13e〜第四スイッチング素子13hのすべてのスイッチング素子が開状態になり、デッドタイムTdを経過した後に、負極側スイッチング素子である第二スイッチング素子13fを閉状態にする。これにより、コンバータ12のコンデンサ12hの負極側から流れ出た還流電流は、第二スイッチング素子13fのドレイン13f1とソース13f2との間を流れる。そのため、系統連系制御装置10は、還流電流が第二スイッチング素子13fの還流ダイオードを流れる場合と比べて、導通損失を低減することができる。以上のことは、正極側スイッチング素子を第三スイッチング素子13gとし、負極側スイッチング素子を第四スイッチング素子13hとする場合においても同様である。また、以上のことは、他のスイッチングモード(スイッチングモード2〜スイッチングモード4)においても同様である。
複数のスイッチングモードは、正極側スイッチング素子および負極側スイッチング素子のうちの一方のスイッチング素子を開状態にするときに他方のスイッチング素子を閉状態にし、正極側スイッチング素子および負極側スイッチング素子のうちの一方のスイッチング素子を閉状態にするときに他方のスイッチング素子を開状態にする相補パルス幅変調を行うスイッチングモードを含むと好適である。これにより、系統連系制御装置10は、複数(例えば、4つ)のスイッチング素子(第一スイッチング素子13e〜第四スイッチング素子13h)のすべてのスイッチング素子が開状態になったときに還流ダイオードに流れる還流電流を、当該還流ダイオードが設けられるスイッチング素子を介して流すことができる。そのため、系統連系制御装置10は、還流電流が還流ダイオードを流れる場合と比べて、導通損失を低減することができる。