JP2016182094A - 植物の次世代における開花制御法および開花時期を制御した種苗 - Google Patents

植物の次世代における開花制御法および開花時期を制御した種苗 Download PDF

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Abstract

【課題】当代の植物の栄養成長期にストレス処理をかけることで、開花時期が制御された次世代の植物を生産することを課題とする。
【解決手段】少なくとも当代の植物の栄養成長期においてストレス処理をかける。
【選択図】図2

Description

本発明は、植物の次世代における開花制御法および開花時期を制御した種苗に関するものである。
近年、地球温暖化に伴う気象変動が拡大しており、植物の環境適応性の改良が極めて重要な課題になりつつある。その適応策の一つとして、開花時期の制御が挙げられる。例えば、寒冷地においては、植物の生育可能期間が制約されており、生殖成長に最適な時期に開花することができない場合、次世代に子孫を残すことができず、特にイネをはじめとする作物の場合、次世代の種籾を得られないだけではなく、人にとっての可食部であるコメなどを得られないおそれがある。このような理由から、寒冷地においては、地球温暖化が進行していてもコメの障害型の冷害が大きな問題であり続けている。
イネにおいては、冷害の影響を受けやすい時期は、全生育期間5カ月以上にわたる期間のうち、わずか10日程度の生殖成長期の中期の穂ばらみ期に当たる。穂ばらみ期と低温に曝される時期が合致した場合、コメの収量は大きく低下する。冷害の被害程度としては、1993年の大冷害では作況指数が北海道において40、東北地方においては56まで低下し、約5000億円の損害が生じ、またコメを緊急輸入した経緯がある。その後も、2003年の冷害では、北海道、東北地方の作況指数がそれぞれ73、80まで低下し、2009年にも北海道において冷害が発生した。進行している地球温暖化にともなう気候変動の拡大により、今後も冷害の危険性が継続することは容易に予測され、その対応技術の開発は喫緊の課題である。
冷害軽減のためには、異なる開花時期や熟期の品種の作付けが強く求められる。これまで、寒冷地の各県や国の試験場において、開花時期や熟期の異なるイネの品種が数多く育成されて成功を収めている。
しかしながら、従来の交配育種による開花時期や熟期の制御においては、以下の3点の問題があると考えられる。第一の問題は、母本からの遺伝子の導入に、交配から十年弱の時間が必要となる時間の問題である。第二の問題は、母本からの遺伝子の導入にともなう玄米品質や収量性の低下等の不良形質の導入の問題である。新規品種の育成にDNAマーカーを用いた場合においても、導入遺伝子からの不良形質の切り分けには、なお数世代の時間を要する。
上記第一、第二の問題を課題解決する手段として、交配又は遺伝子組み換え技術を利用し、植物の開花制御法および開花時期を制御する方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
特許文献1には、植物の生長を制御する新規遺伝子の提供、該遺伝子を利用した植物の生長の制御(開花期又は出穂期の改変)方法を提供する技術が開示されている。
このように、特定の遺伝子を標的とした交配又は遺伝子組換え技術を利用することで、短時間で所望の形質を獲得した品種を得ることは可能になった。
しかしながら、第三の問題として、優良な品種を導入する際に、これまで築いてきた既存の品種のブランドを一度捨てざるをえないことが挙げられる。すなわち、従来の植物の品種改良法や遺伝子組換え技術を利用することで得られた新規品種では、ゲノム塩基配列が変化するため元の品種とは別品種となる。このため、実際の市場での取引を考えた場合、遺伝子組み換えを伴うものは受け入れられず、優良品種を育成しても元の品種のブランドを生かすことが出来ず、普及が進まないというギャップを生み出すことが懸念される。
ところで、本発明者らは、低水温、塩や寡照ストレス等の環境ストレスが植物の次世代の開花時期に及ぼす影響について鋭意検討を進めており、当代の植物の栄養成長期に環境ストレス処理をかけることによって、次世代の植物の環境ストレス耐性が高まることを報告している(非特許文献1)。ただ、当代の植物の栄養成長期に環境ストレス処理をかけることによって、次世代の植物の開花時期にどのような影響が生じるかについては全く検討されていなかった。
特開2004−290190号公報
日本作物学会講演会要旨・資料集、237、346−347(2014)
上記のとおり、植物に対し交配や遺伝子組換え技術などを適用することなく、元の品種のブランドを生かして、次世代の植物の開花時期を制御する方法は、これまで全く知られていない。
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、当代の植物の栄養成長期にストレス処理をかけることで、開花期を制御された次世代の植物を生産することを課題とする。
以上の課題について、本発明者らは、当代の植物の栄養成長期に環境ストレス処理をかけることで得られた種苗を引き続き育成し、次世代の植物において開花時期を制御できることを見出した。このような知見に基づき、本発明者らは、1年という非常に短期間で、不良形質の導入リスクを抑え、また、品種のもつブランドを活かしながら、開花時期を制御した同一品種の種苗を生産することが可能となることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下のことを特徴とする。
本発明の植物の次世代における開花時期の制御法は、少なくとも当代の植物の栄養成長期においてストレス処理をかけることを特徴とする。
本発明の植物の次世代における開花時期の制御法においては、ストレス処理が、塩類ストレス、寡照ストレス、強光ストレス、乾燥ストレス、過湿ストレス、高温ストレス、低温ストレス、栄養ストレス、重金属ストレス、病害ストレス、酸素欠乏ストレス、オゾンストレス、 COストレス、強風ストレスからなる群のうち少なくとも一つであることが好ましい。
また、本発明の植物の次世代における開花時期の制御法においては、ストレス処理をかける期間の長さが1週間から3週間の範囲であることが好ましい。
本発明の植物の次世代における開花時期の制御法においては、植物が、イネ科、アブラナ科、ナス科、マメ科、セリ科、ネギ科、ユリ科、キク科、バラ科からなる群から選ばれることが好ましい。
また、本発明の植物の次世代における開花時期の制御法においては、植物がイネ科の場合、栄養成長期が、イネ科植物の幼穂形成7週間前から1週間前までの範囲であることが好ましい。
そして、本発明の開花時期を制御された種苗は、上記の植物の次世代における開花時期の制御法によって得られることを特徴とする。
本発明の植物の次世代の開花時期の制御法によれば、当代の植物の栄養成長期にストレス処理をかけることにより、わずか1年という短期間で、不良形質の導入リスクを抑え、開花時期を制御した同一品種の種子または球根を生産する手段が提供される。また、本発明の植物の次世代の開花時期の制御法によれば、元の品種のゲノム塩基配列には変化を引き起こさないと考えられるため、元の品種の持つブランドを活かしながら、開花時期を制御した同一品種の種苗を生産することが可能となる。
そのストレス処理としては、塩類ストレス、寡照ストレス、強光ストレス、乾燥ストレス、過湿ストレス、高温ストレス、低温ストレス、栄養ストレス、重金属ストレス、病害ストレス、酸素欠乏ストレス、オゾンストレス、 COストレス、強風ストレスからなる群のうち、1つもしくは複数の組み合わせ条件を意味する。
実施例1の試験方法を示す図である。 Aは、実施例1の当代のイネ品種ひとめぼれ、Bは、実施例1の当代のイネ品種ササニシキを異なる2地点(札幌と東京)で生育させて得られた次世代のイネの播種後同一日数経過時点における穂を示す図である。 実施例1の当代のイネ品種ひとめぼれ,ササニシキを異なる2地点(札幌と東京)で生育させて得られた次世代のイネの出穂日、草丈および葉齢を示す図である。なお、次世代の生育環境として4組み合わせ条件で行い、上方に栄養成長期の2つの環境として野外の自然環境で生育させた「自然」と野外で水温を25度に制御した「25度」の環境ならびに、左に生殖成長期に冷害処理を加えない温室環境で生育させた「温室」と冷害処理を冷水19.0度(ササニシキ)もしくは18.5度(ひとめぼれ)で行った「冷害」の2つの環境を示した。 実施例2の試験方法を示す図である。 実施例2の当代のイネ品種ササニシキを異なる3地点(札幌、盛岡および東京)で生育させて得られた次世代のイネの出穂日、草丈および葉齢を示す図である。 実施例3の試験方法を示す図である。 実施例3の当代のイネ品種ひとめぼれ、ササニシキの栄養成長期に異なる水温環境(20度、25度、30度)で生育させて得られた次世代のイネの出穂日、草丈および葉齢を示すグラフである。なお、次世代での生育環境は1条件とし、栄養成長期は野外で水温を25度に制御した「25度」の環境で生育させた。
本明細書における用語の定義などは以下のとおりである。
本明細書において「植物の次世代」の用語には、草本植物において、当代の植物から得られた種苗と、その種苗から生育した植物体の一部または全体を含んでいる。
本明細書において「種苗」の用語には、農業において植物の繁殖に用いる植物体の一部または全体を含んでおり、例えば、種子、種籾、果実、球根等が例示される。また、苗や栄養生殖に利用する各種の地上茎、地下茎も種苗に含まれる。
本明細書において「栄養成長期」の用語には、根茎葉の栄養器官を成長させる発芽から幼穂分化までの期間を含んでいる。
本明細書において「ストレス」の用語には、生物の成長阻害をもたらす外部刺激または各種環境要因を含んでいる。
本明細書において「開花時期の制御」の用語には、植物の開花時期を早くすること、または遅くすることを意味する。
また、本明細書において、植物としてイネを用いる場合、出穂時期が開花時期と同義である。
以下、本発明を詳細に説明する
本発明は、植物の次世代における開花時期の制御法であって、少なくとも当代の植物の栄養成長期においてストレス処理をかけることを特徴とする。
また、本発明の植物の次世代における開花時期の制御法においては、当代の植物にストレス処理をかけることに加えて、次世代の植物に対してストレス処理をかけてもよい。
このストレス処理において、対象とする植物は、食用に限らず、農作物とて利用可能な草本である限り、何ら制限されない。例えば、イネ科、アブラナ科、ナス科、マメ科、セリ科、ネギ科、ユリ科、キク科、バラ科等が例示される。特に、我が国における主要作目であるイネや、世界における主要作目であるコムギを含むイネ科作物は本発明の次世代における開花時期の制御法を適用する対象として好適である。
植物の栽培環境は、機械的に制御されたファイトトロン内であってもよいし、屋外であってもよい。さらにまた、植物の栽培方法は、土耕栽培であっても、水耕栽培であってもよい。
植物にかけるストレス処理としては、例えば、塩類、寡照、光障害、乾燥、高温、低温、凍結、過湿、酸欠等の環境ストレスが例示される。また、栄養欠乏、栄養過多、重金属汚染等の土壌由来のストレス、植物種同士のアレロパシーや農業害虫による摂食、吸汁等の生物的ストレス等が例示される。好ましくは、高温又は低温ストレスが例示される。
温度ストレスの強度としては、15℃から35℃の範囲内が例示される。温度ストレス処理は、気温の制御や水温の制御によって行うことができるが、特に水温の制御において処理することが好ましい。
このように、植物にストレスをかける方法は、電気的に制御された空調設備や給水設備によって、水温や土壌に対して温度ストレス条件などを制御してもよいし、ストレスとなる自然環境を利用し植物を暴露することでストレス処理をかけてもよい。例えば、平均気温の異なる地域に、植物の種苗を播種することによって、高温ストレスや低温ストレスを付与することが可能である。ここでいう平均気温の異なる地域とは、単に水平方向における緯度や経度の異なる地域に限らず、同一の緯度や経度の地域であって、標高等の地理的差異がある地域をも包含するものである。
土耕栽培に用いる土壌は、それぞれの作物の生育に適した土壌であってもよいし、上記ストレスをかけるために特定の肥料成分が不足または過剰の状態であってよい。肥料成分としては、例えば、窒素、リン酸、カリウム、カルシウム、マグネシウム、硫黄、ホウ素、鉄、マンガン、銅、亜鉛、モリブデン、塩素、ケイ素、ナトリウム等が例示される。
また、土耕栽培に用いる土壌は、特定の重金属を含む土壌汚染物質を含有していてもよい。土壌汚染物質としては、揮発性有機化合物類、重金属類、農薬類、PCB、ダイオキシン類及び油類が挙げられる。揮発性有機化合物類としては、四塩化炭素、1、2-ジクロロエタン、1、1-ジクロロエチレン、シス-1、2-ジクロロエチレン、1、3-ジクロロプロプロペン、ジクロロメタン、テトラクロロエチレン、1、1、1-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、ベンゼンなどが挙げられる。重金属類としては、ヒ素、鉛、カドミウム及びその化合物、六価クロム化合物、シアン化合物(遊離シアン)、水銀及びその化合物、アルキル水銀、セレン及びその化合物、鉛及びその化合物、砒素及びその化合物、ふっ素及びその化合物、ほう素及びその化合物などが挙げられる。農薬類としては、シマジン、チオベンカルブ、チウラム、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、有機リン化合物などが挙げられる。
水耕栽培に用いる液体肥料においても、上記の肥料成分が不足または過剰の状態であってよい。また、特定の土壌汚染物質を含有していてもよい。
植物の栄養成長期は、根茎葉の栄養器官を成長させる発芽から幼穂分化までの期間であれば、何ら制限されない。例えば、植物がイネ科植物である場合、幼穂形成7週間前から1週間前までの範囲であることが好ましく、より好ましくは、栄養成長期の後期にあたる、幼穂形成4週間前から1週間前までの範囲が例示される。
また、ストレス処理をかける期間の長さは、上記植物の栄養成長期であれば、何ら制限されない。例えば、1週間から3週間の範囲が例示される。ストレス処理をかける期間が上記の範囲内であれば、植物の次世代において所望の開花時期を制御することが可能となる。特に、栄養成長期の後期において上記の期間ストレス処理をかけることによって、開花時期の制御は顕著である。
上記の方法によって、当代の植物の栄養成長期にストレス処理をかけることで、植物の次世代の開花時期が制御される。
植物の次世代の開花時期を評価する方法としては、当代の植物から得られた種苗を、当代の植物に再度播種や移植することで検定することが可能である。
以下に実施例を示すが、本発明の植物の次世代の開花時期の制御法および開花時期が制御された種苗は、実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
(1)種子の作成:採種(地域間):岩手大学圃場(岩手県盛岡市)で採種した「ひとめぼれ」(2008年産)と「ササニシキ」(2009年産)を供試し、図1のスキーム図に示すように、2013年に東京大学・生態調和農学機構(東京都西東京市)、農研機構北海道農業研究センター(北海道札幌市)にて、2品種2地点の計4種類を栽培し、採種した(比重選無し)。
(2)次世代の出穂調査:(1)で採種したイネの種子を用いて岩手大学圃場(岩手県盛岡市)で、図1の写真に示すように、同一の1/5000a ポットの半分に前年度の生育地域の異なる苗を16個体ずつ移植し(2013/5/16)した。これらの苗を、図1のスキーム図に示すように、栄養成長期に当たる時期に、岩手大学内(岩手県盛岡市)の屋外条件で無制御および水温25℃に制御された水槽内で2品種2処理の計4種類栽培した。ポットには「ほくほく培土」(鹿沼産業社製)を3.3L(N3.2g、P3.6g、K1.5g)充填した。分げつは順次除去した。また、これらの苗の生殖成長期には、温室条件と水温18.8℃に制御された冷害条件の水槽内で2品種2処理の計4種類栽培し、イネの主茎の出穂日、草丈、葉齢を随時記録した。
(3)結果:図2は、実施例1で得られた次世代のイネの出穂期の様子を示す図である。左側の写真の赤枠内を拡大した写真が、右側の写真である。また、右側の写真において、白矢印で図示したものが出穂した穂である。Aのひとめぼれ、Bのササニシキのいずれにおいても、年間の平均気温および自然環境下での水温が低い札幌で栽培したイネの方が、移植後の日数が少ないにも関わらず先に出穂することが確認された。また、図3に示すように、当代のイネを札幌で育てた場合、当代のイネを岩手で栽培した場合と比較して、次世代のイネが平均2〜7日早く出穂することが確認された。一方、当代のイネを東京で育てた場合、当代のイネを岩手で栽培した場合と比較して、次世代のイネが平均2〜7日遅く出穂することが確認された。このことは、異なる地点で採種した種子の出穂日の違いの要因の一つとして、栄養成長期の水温が次世代の出穂制御に関わる可能性を示唆するものである。
一般に、出穂時期が3日以上早い、あるいは3日以上遅い場合、早生または晩生の評価基準が一段階変わることが知られている。さらに、移植時の草丈や葉齢と出穂日の間に統計上の有意な相関関係が認められなかったことから、移植までの生育速度の違いではないことが示唆された。
したがって、本発明では、ひとめぼれ、ササニシキという消費者の需要が高く、食味にも優れたブランド品種に対して、遺伝子組換え技術を用いることなくわずか1年という比較的短期間で開花時期を制御することができる。
<実施例2>
(1)種子の作成:採種(地域間):岩手大学圃場(岩手県盛岡市)で採種した「ササニシキ」(2009年産)を供試し、図4に示すように、2013年に東京大学・生態調和農学機構(東京都西東京市)、岩手大学圃場(岩手県盛岡市) 、農研機構北海道農業研究センター(北海道札幌市)にて、2品種3地点の計6種類を栽培し、採種した(比重選無し)。
(2)次世代の出穂調査:(1)で採種したイネの種子を用いて岩手大学圃場(岩手県盛岡市)で1/5000a ポットに16個体ずつ移植し(2013/5/16)、図4に示すように、栄養成長期に当たる時期に、岩手大学内(岩手県盛岡市)の屋外条件で水温25℃に制御された水槽内で1品種1処理の計1種類を栽培した。ポットには「ほくほく培土」(鹿沼産業社製)を3.3L(N3.2g、P3.6g、K1.5g)充填した。分げつは順次除去した。生殖成長期には、屋外の自然条件と水温18.8℃に制御された冷害条件の水槽内で1品種2処理の計2種類を栽培し、イネの主茎の出穂日、草丈、葉齢を随時記録した。
(3)結果:図5に示すように、当代のイネを東京、岩手、札幌で育てた場合、それぞれの栽培地の気温および自然環境下での水温が低いほど次世代のイネが早く出穂することが確認された。一方、当代のイネの栽培地の気温および自然環境下での水温が高いほど次世代のイネの出穂が遅れることが確認された。最も出穂が速かった札幌と、最も出穂が遅かった東京とを比較すると2〜7日程度、出穂時期に差が生じることが確認された。また、実施例1と同様にして、移植時の草丈や葉齢と出穂日の間に統計上の有意な相関関係が認められなかったことから、移植までの生育速度の違いではないことが示唆された。
したがって、本発明では、ササニシキという消費者の需要が高く、食味にも優れたブランド品種に対して、遺伝子組換え技術を用いることなくわずか1年という比較的短期間で開花時期を制御することができる。
<実施例3>
(1)採種(水温処理):実施例1、2で供試したのと同一の2品種の種子(ただし「ひとめぼれ」は2010年産)を用いて岩手大学圃場(岩手県盛岡市)で1/5000a ポットに16個体ずつ移植し(2013/5/16) 、図6に示すように、岩手大学内(岩手県盛岡市)の屋外条件で20℃、25℃、30℃に水温制御された水槽内で2品種3処理の計6種類を栽培した。ポットには「ほくほく培土」(鹿沼産業社製)を3.3L(N3.2g、P3.6g、K1.5g)充填した。分げつは順次除去した。生殖成長期は自然条件で登熟させ、採種(1.06の比重選)した。
(2)次世代の出穂調査:図6に示すように、栄養成長期に当たる時期に、岩手大学内(岩手県盛岡市)の屋外条件で水温25℃に制御された水槽内で2品種1処理の計2種類を栽培した。ポットには「ほくほく培土」(鹿沼産業社製)を3.3L(N2.0g、P3.6g、K1.5g)充填した。分げつは順次除去した。イネの主茎の出穂日、草丈、葉齢を随時記録した。
(3)結果:図7に示すように、前年度に、同一地点で栄養成長期に異なる水温で生育させ採種した種子の出穂日をみると、低温条件で採種したほうが高温条件で採種した場合より出穂が0〜7日、早まることが確認された。このことは異なる地点で採種した種子の出穂日の違、いの要因の一つとして、栄養成長期の水温が次世代の出穂制御に関わる可能性を示唆するものである。また、岩手大学内(岩手県盛岡市)の屋外条件で20℃、25℃、30℃に水温制御された水槽内でポット試験した結果、前年の履歴時期の温度が低いほど出穂が早く、高いほど出穂が遅くなることが確認された。このことは、採種地点の相違は履歴時期の温度の差異と認識されることが大きな要因であり、履歴時期の温度の差異を次世代まで記憶していることを示唆している。
また、実施例1、2と同様にして、移植時の草丈や葉齢と出穂日の間に統計上の有意な相関関係が認められなかったことから、移植までの生育速度の違いではないことが示唆された。
したがって、本発明では、ひとめぼれ、ササニシキという消費者の需要が高く、食味にも優れたブランド品種に対して、遺伝子組換え技術を用いることなくわずか1年という比較的短期間で開花時期を制御することができる。

Claims (6)

  1. 少なくとも当代の植物の栄養成長期においてストレス処理をかけることを特徴とする植物の次世代における開花時期の制御法。
  2. 前記ストレス処理が、栽培環境中に起因する塩類ストレス、寡照ストレス、強光ストレス、乾燥ストレス、過湿ストレス、高温ストレス、低温ストレス、栄養ストレス、重金属ストレス、病害ストレス、酸素欠乏ストレス、オゾンストレス、COストレス、強風ストレスからなる群から選択される少なくとも1種類のストレス処理であることを特徴とする請求項1に記載の植物の次世代における開花時期の制御法。
  3. 前記ストレス処理をかける期間の長さが1週間から3週間の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の植物の次世代における開花時期の制御法。
  4. 前記植物が、イネ科、アブラナ科、ナス科、マメ科、セリ科、ネギ科、ユリ科、キク科、バラ科からなる群から選択されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の植物の次世代における開花時期の制御法。
  5. 前記植物がイネ科の場合、前記栄養成長期が、イネ科植物の幼穂形成7週間前から1週間前までの範囲であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の植物の次世代における開花時期の制御法。
  6. 請求項1〜5に記載の方法で開花時期を制御された種苗。
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