JP2015181370A - 植物の次世代におけるストレス抵抗性強化法およびストレス抵抗性を強化された種苗 - Google Patents

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裕之 下野
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修司 横井
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Abstract

【課題】当代の植物の栄養成長期にストレス処理をかけることで、ストレス抵抗性が強化された次世代の植物を生産することを課題とする。
【解決手段】少なくとも当代の植物の栄養成長期においてストレス処理をかける工程を含む。
【選択図】図2

Description

本発明は、植物の次世代におけるストレス抵抗性強化法およびストレス抵抗性を強化された種苗に関するものである。
近年、地球温暖化に伴う気象変動が拡大しており、植物のストレス抵抗性の強化は極めて重大な課題になりつつある。コメは我が国の主食であり、唯一、高い自給率を維持している作物である。コメの生産の30%以上は北海道、東北の寒冷地域で行われ、生産された米の高い品質が評価されている。しかしながら、寒冷地においては、地球温暖化が進行していても冷害が大きな問題であり続けている。1993年の大冷害では、作況指数が北海道において40、東北地方においては56まで低下し、約5000億円の損害が生じ、またコメを緊急輸入した経緯がある。その後も、2003年の冷害では、北海道、東北地方の作況指数がそれぞれ73、80まで低下し、2009年にも北海道において冷害が発生した。進行している地球温暖化にともなう気候変動の拡大により、今後も冷害の危険性が継続することは容易に予測され、その対応技術の開発は喫緊の課題である。
冷害軽減のためには、耐冷性を強化した品種の育成が強く求められる。これまで、寒冷地の各県や国の試験場において、耐冷性を強化した品種が数多く育成され成功を収めている。例えば、東北地方の品種「ササニシキ」(耐冷性やや弱)から「ひとめぼれ」(耐冷性極強)への転換を例にとっても、その役割が非常に高いことを示している。
しかしながら、従来の交配育種による耐冷性強化においては、以下の3点の問題が指摘される。第一の問題は、耐冷性の強い母本からの遺伝子の導入に、交配から十年弱の時間が必要となる時間の問題である。第二の問題は、耐冷性の強い母本からの遺伝子の導入にともなう玄米品質や収量性の低下等の不良形質の導入の問題である。新規品種の育成にDNAマーカーを用いた場合においても、導入遺伝子からの不良形質の切り分けには、なお数世代の時間を要することが指摘される。
上記第一、第二の問題を課題解決する手段として、遺伝子組換え技術を利用し、植物の環境ストレス抵抗性を向上させる方法が提案されている(例えば、特許文献1、2を参照)。
特許文献1には、生物のシグナル伝達系の作用発現を統括的に制御する遺伝子を利用して、生物の成長阻害をもたらす各種外部刺激や環境ストレスに対する多様なシグナル伝達系を遮断もしくは制御する技術が記載されている。また、特許文献2には、チロシンフォスファターゼ遺伝子(At1g71860)の発現量を変動させることで、植物体に環境ストレス抵抗性を付与する方法が記載されている。
このように、遺伝子組換え技術を利用することで、交配育種よりも短時間で所望の形質を獲得した品種を得ることは可能になった。しかしながら、第三の問題として、優良な品種を導入する際に、これまで築いてきた既存の品種のブランドを一度捨てざるをえないことが指摘される。すなわち、従来の植物の品種改良法や遺伝子組換え技術を利用することで得られた新規品種では、ゲノム塩基配列が変化するため元の品種とは別品種となる。このため、優良品種を育成しても元の品種のブランドを生かすことが出来ず、普及が進まないというギャップを生み出すことが懸念される。
ところで、本発明者らは、塩類ストレスや寡照ストレス等の環境ストレスが植物の耐冷性に及ぼす影響について鋭意検討を進めており、当代の植物の栄養成長期に環境ストレス処理をかけることによって、当代の植物の耐冷性が弱まることを報告している(非特許文献1、2)。しかしながら、当代の植物の栄養成長期に環境ストレス処理をかけることによって、次世代の植物にどのような影響が生じるかについては全く検討がなされていなかった。
特開2001−333779号公報 特開2013−220078号公報
日本作物学会講演会要旨・資料集、235、344−345(2013) 日本作物学会講演会要旨・資料集、235、342−343(2013)
そこで、本発明者らは、当代の植物の栄養成長期に環境ストレス処理をかけることで得られた種苗を引き続き育成し、次世代の植物において耐冷性が強化されることを見出した。これは、1年という非常に短期間で、不良形質の導入リスクを抑え、また、品種のもつブランドを活かしながら、耐冷性を強化した同一品種の種苗を生産することが可能となることを意味する。
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、当代の植物の栄養成長期にストレス処理をかけることで、ストレス抵抗性が強化された次世代の植物を生産することを課題とする。
本発明の植物の次世代におけるストレス抵抗性強化法は、少なくとも当代の植物の栄養成長期においてストレス処理をかける工程を含むことを特徴とする。
本発明の植物の次世代におけるストレス抵抗性強化法においては、ストレス処理が、塩類ストレス、寡照ストレス、強光ストレス、乾燥ストレス、過湿ストレス、高温ストレス、低温ストレス、栄養ストレス、重金属ストレス、病害ストレス、酸素欠乏ストレス、オゾンストレス、 COストレス、強風ストレスからなる群のうち少なくとも一つであることが好ましい。
また、本発明の植物の次世代におけるストレス抵抗性強化法においては、ストレス処理をかける期間の長さが1週間から3週間の範囲であることが好ましい。
本発明の植物の次世代におけるストレス抵抗性強化法においては、植物が、イネ科、アブラナ科、ナス科、マメ科、セリ科、ネギ科、ユリ科、キク科、バラ科からなる群から選ばれることが好ましい。
また、本発明の植物の次世代におけるストレス抵抗性強化法においては、植物がイネ科の場合、栄養成長期が、イネ科植物の幼穂形成7週間前から1週間前までの範囲であることが好ましい。
そして、本発明のストレス抵抗性を強化された種苗は、上記の植物の次世代におけるストレス抵抗性強化法によって得られることを特徴とする。
本発明の植物の次世代のストレス抵抗性強化法によれば、当代の植物の栄養成長期にストレス処理をかけることにより、わずか1年という短期間で、不良形質の導入リスクを抑え、ストレス抵抗性を強化した同一品種の種子または球根を生産する手段が提供される。また、本発明の植物の次世代のストレス抵抗性強化法によれば、元の品種のゲノム塩基配列には変化を引き起こさないと考えられるため、元の品種の持つブランドを活かしながら、ストレス抵抗性を強化した同一品種の種苗を生産することが可能となる。
そのストレス抵抗性としては、塩類ストレス、寡照ストレス、強光ストレス、乾燥ストレス、過湿ストレス、高温ストレス、低温ストレス、栄養ストレス、重金属ストレス、病害ストレス、酸素欠乏ストレス、オゾンストレス、 COストレス、強風ストレスからなる群のうち、1つもしくは複数の組み合わせ条件への抵抗性を意味する。
イネに塩類ストレス処理をかける際の試験方法を示す図である。 当代のイネの栄養成長期に塩類ストレス処理をかけることで得られた次世代の種子の不稔歩合を示すグラフである。 イネに寡照ストレス処理をかける際の試験方法を示す図である。 当代のイネの栄養成長期に寡照ストレス処理をかけることで得られた次世代の種子の不稔歩合を示すグラフである。
本明細書における用語の定義などは以下のとおりである。
本明細書において「植物の次世代」の用語には、草本植物において、当代の植物から得られた種苗と、その種苗から生育した植物体の一部または全体を含んでいる。
本明細書において「種苗」の用語には、農業において植物の繁殖に用いる植物体の一部または全体を含んでおり、例えば、種子、種籾、果実、球根等が例示される。また、苗や栄養生殖に利用する各種の地上茎、地下茎も種苗に含まれる。
本明細書において「栄養成長期」の用語には、根茎葉の栄養器官を成長させる発芽から幼穂分化までの期間を含んでいる。
本明細書において「ストレス」の用語には、生物の成長阻害をもたらす外部刺激または各種環境要因を含んでいる。
本明細書において「強化」の用語には、本来植物が備えているストレス抵抗性を強めることを意味する。また、本来ストレス抵抗性を備えていない植物にストレス抵抗性を付与することも含んでいる。
以下、本発明を詳細に説明する
本発明は、植物の次世代におけるストレス抵抗性強化法であって、少なくとも当代の植物の栄養成長期においてストレス処理をかける工程を含むことを特徴とする。
また、本発明の植物の次世代におけるストレス抵抗性強化法においては、当代の植物にストレス処理をかけることに加えて、次世代の植物に対してストレス処理をかけてもよい。
この工程において、対象とする植物は、食用に限らず、農作物とて利用可能な草本である限り、何ら制限されない。例えば、イネ科、アブラナ科、ナス科、マメ科、セリ科、ネギ科、ユリ科、キク科、バラ科等が例示される。特に、我が国における主要作目であるイネや、世界における主要作目であるコムギを含むイネ科作物は本発明のストレス抵抗性強化法を適用する対象として好適である。
植物の栽培環境は、機械的に制御されたファイトトロン内であってもよいし、屋外であってもよい。さらにまた、植物の栽培方法は、土耕栽培であっても、水耕栽培であってもよい。
植物にかけるストレス処理としては、例えば、塩類、寡照、光障害、乾燥、高温、低温、凍結、過湿、酸欠等の環境ストレスが例示される。また、栄養欠乏、栄養過多、重金属汚染等の土壌由来のストレス、植物種同士のアレロパシーや農業害虫による摂食、吸汁等の生物的ストレス等が例示される。好ましくは、塩類ストレスまたは寡照ストレスが例示される。
塩類ストレスの強度としては、土耕栽培におけるEc値(電気伝導度)が1〜10mS/cmの範囲内が例示される。Ec値は、電気伝導率計を用いることで測定できる。Ec値が上記の範囲内であれば、植物が枯死しない程度に塩類ストレスをかけることが可能となる。その強度は地上部がさらされている気温や湿度環境の影響を多大に受け、高温、乾燥条件ほど低いEc条件でも強度のストレスを加えることが可能である。
寡照ストレスとしては、植物の生育に必要な日中の光強度を制限した条件が例示される。これらの日射強度の制御は、自然光を遮断したファイトトロン内で、照明器具の点灯強度等によって制御することができる。また、屋外においては、黒色の農業用マルチシートを上記の時間植物上に覆いかぶせること等によって日射強度を制御することができる。その強度は、植物が要求する維持呼吸による消費と光エネルギーを使った光合成での生産のバランスにより決定され、温度条件が高い場合には維持呼吸による消費が生産に比べて相対的に大きくなり、弱い寡照ストレスでも植物に大きなストレスを引き起こす。
このように、植物にストレスをかける方法は、電気的に制御された空調設備や給水設備によって、ストレス条件を制御してもよいし、ストレスとなる自然環境に植物を暴露することでストレス処理をかけてもよい
土耕栽培に用いる土壌は、それぞれの作物の生育に適した土壌であってもよいし、上記ストレスをかけるために特定の肥料成分が不足または過剰の状態であってよい。肥料成分としては、例えば、窒素、リン酸、カリウム、カルシウム、マグネシウム、硫黄、ホウ素、鉄、マンガン、銅、亜鉛、モリブデン、塩素、ケイ素、ナトリウム等が例示される。
また、土耕栽培に用いる土壌は、特定の重金属を含む土壌汚染物質を含有していてもよい。土壌汚染物質としては、揮発性有機化合物類、重金属類、農薬類、PCB、ダイオキシン類及び油類が挙げられる。揮発性有機化合物類としては、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,1-ジクロロエチレン、シス-1,2-ジクロロエチレン、1,3-ジクロロプロプロペン、ジクロロメタン、テトラクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、ベンゼンなどが挙げられる。重金属類としては、ヒ素、鉛、カドミウム及びその化合物、六価クロム化合物、シアン化合物(遊離シアン)、水銀及びその化合物、アルキル水銀、セレン及びその化合物、鉛及びその化合物、砒素及びその化合物、ふっ素及びその化合物、ほう素及びその化合物などが挙げられる。農薬類としては、シマジン、チオベンカルブ、チウラム、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、有機リン化合物などが挙げられる。
水耕栽培に用いる液体肥料においても、上記の肥料成分が不足または過剰の状態であってよい。また、特定の土壌汚染物質を含有していてもよい。
植物の栄養成長期は、根茎葉の栄養器官を成長させる発芽から幼穂分化までの期間であれば、何ら制限されない。例えば、植物がイネ科植物である場合、幼穂形成7週間前から1週間前までの範囲であることが好ましく、より好ましくは、栄養成長期の後期にあたる、幼穂形成4週間前から1週間前までの範囲が例示される。
また、ストレス処理をかける期間の長さは、上記植物の栄養成長期であれば、何ら制限されない。例えば、1週間から3週間の範囲が例示される。ストレス処理をかける期間が上記の範囲内であれば、植物の次世代において所望のストレス抵抗性を強化することが可能となる。特に、栄養成長期の後期において上記の期間ストレス処理をかけることによって、ストレス抵抗性の強化は顕著である。
上記の方法によって、当代の植物の栄養成長期にストレス処理をかけることで、植物の次世代のストレス抵抗性が強化される。
植物の次世代のストレス抵抗性を評価する方法としては、当代の植物から得られた種苗を、当代の植物に人為的にストレス処理をかけた環境に再度播種や移植することで検定することが可能である。また、当代の植物から得られた種苗を、人為的にストレス処理をかけていない環境に播種や移植し、検定することも可能である。
植物次世代のストレス抵抗性の指標としては、生殖成長期に達した際の植物の草丈等の計数可能な指標や外観で判断可能な障害の特徴等を指標とすることができる。可食部が種苗として利用される植物においては、不稔歩合(%)を算出、計数することによってストレス抵抗性を評価することが可能である。特に、植物がイネ科植物である場合、コメの収量に対する影響が大きい穂ばらみ期における耐冷性を評価することが好ましい。
不稔歩合(%)の算出方法は、以下のとおりである。
[式1]
不稔歩合(%)=不稔籾数/全籾数×100
以下に実施例を示すが、本発明の植物の次世代のストレス抵抗性強化法およびストレス抵抗性が強化された種苗は、実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
(1)種子の作成:水稲品種「ひとめぼれ」(耐冷性:極強)と「ササニシキ」(耐冷性:やや弱)を1/5000aのポットに9個体ずつ移植し(2012年5月26日)、岩手県盛岡市の屋外条件で21.5℃に水温制御された水槽内で土耕栽培した。ポットには、「ほくほく培土」(鹿沼産業社製)を3.3L(N1.4g、P3.6g、K1.5g含有)充填した。移植から幼穂形成(幼穂長1mm)を確認後、冷害誘導のための2段階の冷水深水処理(19℃と18.5℃、30cm)を実施した。移植から幼穂形成期の数日前までの栄養成長期を、時期I(5月14日〜6月1日)、時期II(6月2日〜6月20日)、時期III(6月21日〜7月10日)の3 時期に区分し、塩処理(土耕栽培したポットをEc 9.0mS/cm、NaClの溶液に浸す。Ec値はECメーター<Eutech instruments社製、Oakton ECTestr 11 dual-range, pin-style pocket conductivity tester、型番:EW-35662-30>を用いて測定した。)を各19日間ずつ行い(塩類ストレス処理)、冷害誘導および通常条件で登熟させた。分げつは順次除去した。収穫期に不稔歩合(%、不稔籾数/全籾数×100)を計測した。両品種において不稔歩合に影響が強かった時期IIと時期IIIの冷害誘導処理を行わない通常条件の種子を使用し2013年の耐冷性試験を行った(図1)。
(2)次世代の耐冷性試験:2013年7月-8月に、前年度の時期IIにおける塩類ストレス処理(塩処理II)、時期IIIにおける塩類ストレス処理(塩処理III)と無処理の3種類の2品種(計6種類)について、2地点にて穂ばらみ期耐冷性を検定した。岩手県北上市では、4反復無作為に15 cm×30 cm各5個体を1本植えで移植した。また、秋田県大曲市では、3反復無作為に15 cm×30 cm各1個体を1本植えで移植した。岩手県北上市と秋田県大曲市のそれぞれの設定温度は、18.7℃と19.3℃で冷害誘導を行った。岩手県北上市では、中央3個体を収穫し不稔歩合と一株当たりの稔実数を測定した。また、秋田県大曲市では、全個体を収穫し不稔歩合と一株当たりの稔実数を測定した。
(3)結果:図2に示すように、当代の栄養成長期に塩類ストレス処理したひとめぼれから得られた種籾を、翌年岩手県北上市において生育させ、イネ穂ばらみ期に冷害誘導すると、対照区と比較して不稔歩合が低下することが確認された。一方、同様にして得られたひとめぼれの種籾を、翌年秋田県大曲市において生育させ、イネ穂ばらみ期に冷害誘導すると、いずれの試験区においても不稔歩合は10%強にとどまることが確認された。これは、秋田県大曲市における設定温度が、ひとめぼれの冷害を引き起こす温度よりも高かったためだと考えられる。
また、ひとめぼれよりも耐冷性の弱いササニシキについて同様の生育試験を行ったところ、岩手県北上市と秋田県大曲市のいずれの地点においても、塩類ストレス処理が幼穂形成期に近いほど不稔歩合が低下、すなわち耐冷性が強化することが確認された。特に、当代における栄養成長期III(幼穂形成期4週間前から1週間前に相当する)に塩類ストレス処理をかけたイネにおいては、塩類ストレス処理をかけなかった対照区と比較して不稔歩合が約20%低下することが確認された。
<実施例2>
(1)種子の作成:移植から幼穂形成期の数日前までの栄養成長期の3時期に遮光処理(90%遮光)を各19日間ずつ行い(寡照ストレス処理)、冷害誘導および通常条件で登熟させたこと以外は、実施例1と同様にして種子の作成を行った(図3)。
(2)次世代の耐冷性試験:実施例1と同様にして穂ばらみ期耐冷性を検定した。
(3)結果:図4に示すように、当代の栄養成長期に寡照処理したひとめぼれから得られた種籾を、翌年岩手県北上市において生育させ、イネ穂ばらみ期に冷害誘導すると、寡照処理が幼穂形成期に近いほど不稔歩合が低下することが確認された。一方、同様にして得られたひとめぼれの種籾を、翌年秋田県大曲市において生育させ、イネ穂ばらみ期に冷害誘導すると、いずれの試験区においても不稔歩合は10%強にとどまることが確認された。これは、秋田県大曲市における設定温度が、ひとめぼれの冷害を引き起こす温度よりも高かったためだと考えられる。
また、ひとめぼれよりも耐冷性の弱いササニシキについて同様の生育試験を行ったところ、岩手県北上市と秋田県大曲市のいずれの地点においても、寡照処理が幼穂形成期に近いほど不稔歩合が低下、すなわち耐冷性を強化することが確認された。特に、当代における栄養成長期III(幼穂形成期4週間前から1週間前に相当する)に寡照ストレス処理をかけたイネにおいては、寡照ストレス処理をかけなかった対照区と比較して不稔歩合が約30%低下することが確認された。これは、耐冷性レベルを最大3ランク向上させる効果であって、例えば、耐冷性ランクが中から極強へと強化されるほど顕著な効果である。
以上の結果から、当代のイネの栄養成長期にストレス処理をかけることによって、次世代のイネの穂ばらみ期に冷害誘導を受けて不稔を発生させるものの、その程度が軽減されることから、イネの穂ばらみ期耐冷性が強化されることが明らかとなった。

Claims (6)

  1. 少なくとも当代の植物の栄養成長期においてストレス処理をかける工程を含むことを特徴とする植物の次世代におけるストレス抵抗性強化法。
  2. 前記ストレス処理が、栽培環境中に起因する塩類ストレス、寡照ストレス、強光ストレス、乾燥ストレス、過湿ストレス、高温ストレス、低温ストレス、栄養ストレス、重金属ストレス、病害ストレス、酸素欠乏ストレス、オゾンストレス、 COストレス、強風ストレスからなる群から選択される少なくとも1種類のストレス処理であることを特徴とする請求項1に記載の植物の次世代におけるストレス抵抗性強化法。
  3. 前記ストレス処理をかける期間の長さが1週間から3週間の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の植物の次世代におけるストレス抵抗性強化法
  4. 前記植物が、イネ科、アブラナ科、ナス科、マメ科、セリ科、ネギ科、ユリ科、キク科、バラ科からなる群から選択されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の植物の次世代におけるストレス抵抗性強化法。
  5. 前記植物がイネ科の場合、前記栄養成長期が、イネ科植物の幼穂形成7週間前から1週間前までの範囲であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の植物の次世代におけるストレス抵抗性強化法。
  6. 請求項1〜5に記載の方法でストレス抵抗性を強化された種苗
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2018105726A1 (ja) 2016-12-08 2018-06-14 Jnc株式会社 リバースモードの液晶デバイス
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